説明

薬剤揮散用容器

【課題】本発明は、使い捨てとなる薬剤の容器を軟包装材料による容器とし、外部容器を繰り返し使用が可能な容器とした、全体として環境負荷の小さい薬剤揮散用容器を提案するものである。
【解決手段】揮発性を有する薬剤を含む液体を収納する軟包装袋と、該軟包装袋を収納し、前記液体を揮散させる揮散部材を備えた外部容器とからなる薬剤揮散用容器であって、前記軟包装袋は、収納された液体を吸い上げ、前記揮散部材に浸透させる吸い上げ部材と、該吸い上げ部材を固定する口栓と、口栓に螺合するキャップを有し、前記外部容器は、前記キャップを除去した前記軟包装袋を収容する容器本体と、前記口栓を固定する固定部材と、前記揮散部材を保持し、薬剤を揮散させる蓋とを有することを特徴とする薬剤揮散用容器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散性薬剤を用いた芳香剤、消臭剤等の容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来揮散性の薬剤を用いた液体の芳香剤や消臭剤の容器としては、薬液を収納する剛性の容器本体と、薬液を外部に導く吸い上げ用の芯材と、芯材によって吸い上げられた薬液を空気中に拡散させる拡散部材とを備え、上部を美観を考慮したカバーによって覆ったものが一般的である。
【0003】
特許文献1に記載された揮発性液体の揮散装置は、その代表的なものであり、揮発性液体を収容する容器と、容器内に浸漬しかつ容器口部で保持された芯材と、容器に着脱自在でかつ容器の口部より広い面積を有するフランジが形成された調節体と、調節体内に設けられた蓄香片と、フランジに嵌合する傘体等を備えた揮散装置である。この揮散装置は、芳香・防臭液等の揮散性薬液を、収容容器から芯材の毛細管現象によって吸い上げて、芯材に当接する吸水性を有する蓄香片に含浸させた後、薬液を持続かつ効率的に発散せしめるように構成した揮散装置である。
【0004】
特許文献2に記載された薬剤揮散用容器も、特許文献3に記載された芳香剤用容器も基本的な構成としては、特許文献1に記載された揮散装置と同様である。これら従来の薬剤揮散用容器は、いずれも容器本体が剛性の容器であって、デザイン上詰め替えが困難な構造であり、使用後は廃棄物として廃棄せざるを得ないものであった。容器本体として剛性の容器を使用する理由としては、従来揮発性の液体を収納した場合に、十分な気体遮断性を有し、製品としての保存性を確保できる容器としては、ガラス瓶や特殊なプラスチック容器に限られていたという事情によるところが大きい。
【0005】
しかし近年、消費者の地球環境保護に対する意識の高まりに伴い、環境負荷の大きな使い捨て容器に対する見直しが急務となり、芳香剤や消臭剤の容器についても例外ではなくなりつつある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭56-16968号公報
【特許文献2】実開平2-96147号公報
【特許文献3】実用新案登録第2576743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来の問題に鑑み、使い捨てとなる薬剤の容器を軟包装材料による容器とし、外部容器を繰り返し使用が可能な容器とした、全体として環境負荷の小さい薬剤揮散用容器を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、揮発性を有する薬剤を含む液体を収納する軟包装袋と、該軟包装袋を収納し、前記液体を揮散させる揮散部材を備えた外部容器とからなる薬剤揮散用容器であって、前記軟包装袋は、収納された液体を吸い上げ、前記揮散部材に浸透させる吸い上げ部材と、該吸い上げ部材を固定する口栓と、口栓に螺合するキャップを有し、前記外部容器は、前記キャップを除去した前記軟
包装袋を収容する容器本体と、前記口栓を固定する固定部材と、前記揮散部材を保持し、薬剤を揮散させる蓋とを有することを特徴とする薬剤揮散用容器である。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記軟包装袋が、透明なガスバリア層を含むことを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散用容器である。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記吸い上げ部材を保護する、口栓と一体となった保護部材を有することを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤揮散用容器である。
【0011】
また、請求項4に記載の発明は、前記揮散部材が、吸水膨潤性材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤揮散用容器である。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る薬剤揮散用容器は、揮発性を有する薬剤を含む液体を収納する軟包装袋と、該軟包装袋を収納し、前記液体を揮散させる揮散部材を備えた外部容器とからなり、薬剤が消費されてなくなった時点で廃棄される容器は、軟包装袋の収納容器のみであり、外部容器は繰り返し使用が可能であるため、廃棄されるプラスチック量を削減でき、全体として環境に対する負荷が小さくて済む。
【0013】
薬剤の交換に際しては、新しい薬剤の入った軟包装袋のキャップを取り外し、外部容器の固定部材に口栓を取り付けるだけの簡単な操作で済み、液体を注入する操作がないので、薬剤に手が触れることもなく、また薬剤を直接空気中にさらすこともないため、安全にまた迅速に詰め替え操作を行うことができる。
【0014】
軟包装袋を透明なガスバリア層を含むものとした場合には、揮発性の高い薬剤を含む内容物に対しても高度な保存性を発揮することができる上、使用途中において、内容物の減り具合を目視で確認できるため使い勝手が良い。
【0015】
軟包装袋が、吸い上げ部材を保護する、口栓と一体となった保護部材を有する場合には、軟包装袋の取り扱いに当たって、不用意に吸い上げ部材を折ってしまったりする事故を防止することができる。
【0016】
液体を揮散させる揮散部材が、吸水膨潤性材料を含むものとした場合には、揮散効率を高めることができる。また同じ拡散効率であれば、揮散部材の面積を小さくすることが可能となるため、容器全体の大きさをコンパクトにできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る薬剤揮散用容器の一実施態様を示した斜視図である。
【図2】本発明に係る薬剤揮散用容器の一実施態様を示した分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下図面を参照しながら、本発明に係る薬剤揮散用容器について説明する。図1は、本発明に係る薬剤揮散用容器の一実施態様を示した斜視図である。また図2は、本発明に係る薬剤揮散用容器の一実施態様を示した分解斜視図である。
本発明に係る薬剤揮散用容器1は、揮発性を有する薬剤を含む液体10を収納する軟包装袋8と、軟包装袋8を収納し、前記液体を揮散させる揮散部材3を備えた外部容器とからなる。
【0019】
軟包装袋8は、収納された液体10を吸い上げ、揮散部材3に浸透させる吸い上げ部材6と、吸い上げ部材6を固定する口栓7と、口栓7に螺合するキャップ5を有する。
外部容器は、キャップ5を除去した軟包装袋8を収容する容器本体11と、口栓7を固定する固定部材4と、揮散部材3を保持し、薬剤を揮散させる蓋2とを有する。
【0020】
軟包装袋8は、内面にヒートシール性を有する熱可塑性樹脂層を有する積層体を用いて、周囲を熱シールし、口栓7を取り付けた構造である。ヒートシール性を有する熱可塑性樹脂層(シーラント層)としては、一般的に軟包装袋のシーラント層として用いられる材料を用いることができる。シーラント層としては、ポリオレフィン系樹脂が一般的に使用され、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・αオレフィン共重合体、エチレン−メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン・αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂やポリエステル系樹脂等が使用される。
【0021】
シーラント層を選択するに当たっては、口栓7の材質に応じて適当なものを選択する。例えば口栓の材質がポリエチレン樹脂であれば、ポリエチレン系のシーラント層を選択することが望ましい。同様に口栓の材質がポリプロピレン樹脂であれば、シーラント層もポリプロピレン系が望ましい。また口栓の材質がPET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂であれば、シーラント層もポリエステル系が望ましい。
【0022】
軟包装袋8に用いられる積層体の構成としては、基材層、中間層、シーラント層からなる構成が一般的である。基材層としては、一般的な合成樹脂フィルムすなわち、低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂、高密度ポリエチレン(HDPE)樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリオレフィン系エラストマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂等のポリエステル系樹脂、セロハン、三酢酸セルロース(TAC)樹脂等のセルロース系樹脂、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)樹脂、エチレン−酢酸ビニル系共重合樹脂(EVA)、アイオノマー樹脂、ポリブテン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスチレン(PS)系樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、フッ素系樹脂、ウレタン系樹脂等の合成樹脂フィルムの他、紙なども使用できる。
【0023】
中間層としては、基材層に用いたものと同様の合成樹脂フィルムや紙の他、アルミニウム箔、無機物を蒸着したガスバリアフィルム等を用いることができる。ガスバリアフィルムとして、PETフィルムなどに酸化アルミニウムや酸化珪素などの金属酸化物を蒸着したものを使用すると、透明な包装袋が得られるので、本発明の用途のように、内容物が徐々に減っていくような使い方をするものには、好適である。中間層は必要に応じて複数層となる場合がある。
【0024】
軟包装袋8の形状としては、特に限定されるものではなく、表材と裏材をシーラント層同士を対向させ、周囲をシールしてなる最も単純なピロー形状の他、両側部に折り曲げ部を設けたガセット袋や、底部に底テープを用いたスタンディングパウチ形状等任意である。本発明に用いる軟包装袋は、外部容器に収納されるので、特に自立性は必須ではないが、店頭で販売される時点においては、自立性があった方が好ましい。図2の例では、自立性を有するスタンディングパウチ形状となっている。
【0025】
口栓7は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、PET樹脂等によるインジェクション成型によって効率的に作成することができる。口栓7には、外周面にキャップ5がねじによって螺合するように雄ねじを形成しておく。また軟包装袋の積層体と熱シールするためのシール部が必要である。口栓の中心の孔には、後に説明する吸い上げ部材6が挿入される。
【0026】
口栓7には、吸い上げ部材6を外側から覆って、保護する保護部材9を一体として成形しておくことができる。保護部材9は、単なるストロー状の筒でもよいし、図2に示したように筒を複数に割ったような形状でもよい。
【0027】
キャップ5は、口栓7と同様の材質でも良いが、保存性を高めるためにキャップ5の内部の口栓7が当たる面にアルミニウム箔等を使用したシールフィルムを挿入してもよい。
【0028】
吸い上げ部材6としては、パルプ、セルロース、絹、麻、羊毛、綿等の天然繊維や、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、アセテート繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維、レーヨン、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニル繊維等の合成樹脂繊維や、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維を材料として、これらを単独でまたは複合して用い、繊維を束ねて棒状としたものや、不織布やフェルト状としたもの、あるいはこれをさらに積層したもの等が用いられる。
【0029】
吸い上げ部材6は、これらの材料を用いて、口栓7の開口部の形状に合わせた断面形状に加工し、軟包装袋の底部まで届く長さとする。断面形状としては、円形、四角形、多角形状等任意である。吸い上げ部材6が折れやすい場合には、保護部材9によって周囲を保護するのが望ましい。
【0030】
容器本体11は、軟包装袋8を収納可能な大きさ、容積を有する合成樹脂製の容器である。好ましくは透明性を有するとよい。PET、PP、PE、ポリスチレン等のプラスチック材料を用いて一般的な成形方法によって成形することができる。上部には固定部材4が嵌合する突起などを設けておく。
【0031】
固定部材4は、軟包装袋8の口栓7を固定するための口栓固定孔12を中央部に有するドーナツ状の部材である。口栓固定孔12は、長孔とするか、円周部に達する切欠きとして、口栓7を簡単に引っ掛けて固定できるようにしてもよいし、キャップ5と同様の雌ねじを設けて、口栓7をねじ込むようにしても良い。固定部材4の材質は、容器本体11と同様であるが、透明である必要はない。
【0032】
蓋2は、揮散部材3を内部に保持し、揮散部材3に浸み込んだ液体が揮散し易いような孔を備えた部材である。孔の形状は、図1、2のようなスリット状に限らず、メッシュ状、蜂の巣状など任意である。蓋2の材質も、容器本体11と同様であるが、透明である必要はない。
【0033】
揮散部材3は、吸い上げ部材6によって吸い上げられた薬剤を含んだ液体10を効率的に揮散させるための部材であり、蓋2の内部に保持されている。揮散部材3の材質としては、吸い上げ部材6に用いた材料と同じものが使用可能であるが、形状が平面的であるため、シート状に成形しやすい材料が向いている。その例としては、各種繊維を用いた布や不織布やフェルト、濾紙などである。揮散部材3を吸水膨潤性材料を含むものとすることにより揮散効率を高めることができる。また同じ揮散効率であれば、面積をより小さくすることができる。吸水膨潤性材料としては、ポリアクリル酸ナトリウム、イソブチレン−無水マレイン酸共重合体のような公知の高吸水性樹脂が好適に使用できる。これらの高吸水性樹脂を全体の重量の50%程度、前記の繊維材料に抄き込んで担持させたものが好ましく使用できる。
【実施例1】
【0034】
基材層として厚さ12μmのPETフィルムを使用し、中間層として厚さ15μmのナイロンフィルムを使用し、シーラント層として厚さ100μmのLLDPEフィルムを使用した。3層をウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ、積層フィルムを作成した。この積層フィルムを表裏フィルムおよび底テープとして用いてシーラント層を対向させ、上端の開口部を除いて周縁部をシールすることによりスタンディングパウチを作成した。
【0035】
スタンディングパウチの上端の開口部に内容物を注出するためのLDPE製の口栓を挿入し、熱接着により口栓を開口部に固着させると同時に開口部を熱接着により密封した。内容液として香料、エタノール、界面活性剤、精製水を主な原料とする芳香剤を封入した。なお、口栓下部の保護部材中に収納される吸い上げ部材は、フェルト製とした。
芳香剤入りのスタンディングパウチを透明なPP製の容器本体に収納し、パルプ不織布製の拡散部材を収納した同じくPP製の固定部材と、蓋をセットして、製品とした。
【0036】
この芳香剤は、スタンディングパウチのキャップを外して、固定部材にセットし、容器本体に入れるだけの簡単な操作で使用できるものである。また内容液がなくなった段階では、スタンディングパウチを交換するだけでよく、容器本体は繰り返し使用することができるため、環境に対する負荷が小さくて済む。
【符号の説明】
【0037】
1・・・薬剤揮散用容器
2・・・蓋
3・・・揮散部材
4・・・固定部材
5・・・キャップ
6・・・吸い上げ部材
7・・・口栓
8・・・軟包装袋
9・・・保護部材
10・・・液体
11・・・容器本体
12・・・口栓固定孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性を有する薬剤を含む液体を収納する軟包装袋と、該軟包装袋を収納し、前記液体を揮散させる揮散部材を備えた外部容器とからなる薬剤揮散用容器であって、
前記軟包装袋は、収納された液体を吸い上げ、前記揮散部材に浸透させる吸い上げ部材と、該吸い上げ部材を固定する口栓と、口栓に螺合するキャップを有し、
前記外部容器は、前記キャップを除去した前記軟包装袋を収容する容器本体と、前記口栓を固定する固定部材と、前記揮散部材を保持し、薬剤を揮散させる蓋とを有する
ことを特徴とする薬剤揮散用容器。
【請求項2】
前記軟包装袋は、透明なガスバリア層を含むことを特徴とする請求項1に記載の薬剤揮散用容器。
【請求項3】
前記吸い上げ部材を保護する、口栓と一体となった保護部材を有することを特徴とする請求項1または2に記載の薬剤揮散用容器。
【請求項4】
前記揮散部材は、吸水膨潤性材料を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の薬剤揮散用容器。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−168305(P2011−168305A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−33457(P2010−33457)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】