説明

薬品のための容器及びこの容器の製造方法

少なくとも1つのチャンバ(3)を有しており、少なくとも2つの凍結乾燥された活性物質及び/もしくは補助物質(W1、W3、W5、W7)が前記少なくとも1つのチャンバ(3)中に一緒に収容されることを特徴とする、薬品のための容器(1)が、提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前文に記載の薬品のための容器に関わる。
【背景技術】
【0002】
このような容器は周知である。前記容器は、活性物質及び/もしくは補助物質を収容するチャンバを、代表的に有している。このような活性物質及び/もしくは補助物質は、(例えば凍結乾燥された)固体の状態、もしくは溶液の状態であり得る。比較的多くの活性及び/もしくは補助物質が患者に与えられる場合、これら物質は、投与の直前に一緒に混ぜられることが有効である。このようにして、これら物質のより長い品質保持期間を得ることが、特にこれら物質が互いに反応し得る場合に、度々可能である。
【0003】
周知の容器には、このために、種々のチャンバが設けられており、互いに離間されているこれらのチャンバの各々には、それぞれ1つの活性物質及び/もしくは補助物資が、独立して収容されている。例えば、いわゆるデュアルチャンバシステムが、周知である。このデュアルチャンバシステムでは、2つのチャンバが互いに離間して収容されている。ここに、薬品の投与の直前に両チャンバを互いに結合させることを可能にする手段が、設けられており、この結果、予め離間されて収容されている複数の構成要素の混合が、行われ得る。第2の工程で、前記混合された薬品の1回の投与量が、患者に投与され得る。
【0004】
この周知のシステムの欠点は、各々の活性物質及び/もしくは補助物質のための薬品の複雑な構成において、別個のチャンバが設けられなければならないことである。このことは、種々の活性物質及び/もしくは補助物質を有する複数の個々の容器が多数用意されなければならないことを、あるいは、互いに結合された多数のチャンバを有する1つの非常に複雑な容器が設けられなければならないことを、意味する。
【発明の概要】
【0005】
従って、本発明の課題は、前述の欠点を有していない容器を提供することである。
この課題は、請求項1の特徴を備えた容器によって、果たされる。薬品のための容器は、少なくとも1つのチャンバを有しており、少なくとも2つの凍結乾燥された活性物質及び/もしくは補助物質が少なくとも1つのチャンバに一緒に収容されることを特徴としている。前記活性物質及び/もしくは補助物質が凍結乾燥された状態で収容されていることによって、分子の構成要素が、固定され、従って、不活性である。このことは、前記凍結乾燥された物質が互いに完全混和された状態(innig miteinander vermischt)であっても、前記活性物質及び/もしくは補助物質が非常にゆっくりと互いに反応することを、意味する。不利な保存状態、即ち、完全混和の状態であっても、前記物質は、溶液の状態で一緒に収容されている場合よりも、ずっと長く保存可能である。
【0006】
設けられる容器は、少なくとも2つの活性物質及び/もしくは補助物質が層を成して配置されていることが、特に好ましい。このような場合、個々の構成要素が、表面でのみ互いに接触しており、前記表面によってこれら構成要素は、互いに境を接している。この点において、前記構成要素間の反応が、制限された範囲でのみ、可能である。かくして、品質保持期間が、完全混和の状態に対して、更に明らかに向上される。
【0007】
また、前記容器は、少なくとも2つの活性物質及び/もしくは補助物質が少なくとも1つの凍結乾燥された中性物質によって互いに離間されていることが、好ましい。ここでは、1つの凍結乾燥された中性物質が、前記活性物質及び/もしくは補助物質を、空間的に互いに離間するように、対処されている。前記活性要素、即ち活性物質及び/もしくは補助物質は、互いに接触しているのではなく、前記中性物質にのみ接している。この時、前記中性物質は、この中性物質が、前記活性要素と非常にゆっくりとしか反応しないか、好ましくはほとんど反応しないように、選択される。このような方法で、前記品質保持期間は、更に明らかに向上され得る。
【0008】
このような文脈で、前記少なくとも2つの活性物質及び/もしくは補助物質は、層を成して配置されていることと、凍結乾燥された中性物質の少なくとも1つの層によって互いに離間されていることとを特徴とすることが、特に好ましい。この場合、かくして、1つの前述の層があり、2つごとの活性要素の層の間に、凍結乾燥された中性要素の層がそれぞれ少なくとも1つ配置されており、この結果、前記活性要素が、互いに接触しない。このようにして、前記活性要素の非常に長い品質保持期間が、与えられる。
【0009】
前記容器は、基本的に、薬品のためのいかなる容器であっても良い。しかし、前記容器は注射器、カープル(Karpule)、デュアルもしくはマルチチャンバシステム、フラスコ、注入袋、注入瓶のいずれかであることが、好ましい。前記容器がシングルチャンバシステムである場合、前記活性要素を溶解させるために、投与の前に、溶剤を前記容器中に入れなければならない。そして、例えば、前記溶剤は、注射器中に吸い上げられ、患者に与えられることができる。また、患者は、このようにして用意された溶剤を、飲むか、例えば皮膚に塗布するように外用することが、当然可能である。これに対して、マルチチャンバシステムでは、通例、溶剤が1つの別個のチャンバ内に既に収容されている。このような場合、前記溶剤を有するチャンバと、前記活性要素を有するチャンバとを、流体的に結合させるだけで良く、この結果前記溶剤は、前記活性要素を溶解することができる。この後、この溶剤は、患者に投与され得る。
【0010】
前記容器の更なる形態が、従属請求項に起因する。
【0011】
本発明の更なる課題は、前述の容器の製造方法を提示することである。
【0012】
この課題を果たすために、本発明に係る容器を製造するための方法であり、請求項6に記載の特徴を有する方法が、提案される。この方法は、以下の工程を含み、これら工程の順序は、変更可能である。
【0013】
少なくとも1つのチャンバを有する薬品のための容器が、準備される。活性物質及び/もしくは補助物質の溶剤が、このチャンバに充填され、急速冷凍される。この後に、活性物質及び/もしくは補助物質の更なる溶剤が、少なくとも1つのチャンバに充填され、この後に、前記更なる溶剤もまた、急速冷凍される。この最後の2つの工程、即ち更なる溶剤の充填と前記更なる溶剤の急速冷凍とは、所望の数の活性物質及び/もしくは補助物質が、前記容器の少なくとも1つのチャンバに収容されるまで、何度も繰り返される。このようにして、急速冷凍された物質の代表的に上下に配置された層が、形成される。注入プロセスの終了後、凍結された前記溶剤は、前記容器中で一緒に凍結乾燥される。ここで、下側の更なる層からの前記溶剤の蒸気が、上側の更なる層を通って、昇華する。
【0014】
特に好ましくは、この方法は、活性物質及び/もしくは補助物質の溶剤の急速冷凍の後に、中性物質、好ましくは中性物質の溶剤が、前記少なくとも1つのチャンバ中にまず注入されることを特徴とする。この中性物質もしくは中性物質の溶剤は、次に、活性物質及び/もしくは補助物質の次の溶剤が前記少なくとも1つのチャンバ中に注入される前に、急速冷凍される。このようにして、前記活性要素のそれぞれの層を互いに離間させ得る中性物質の層が、形成される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、フラスコとして形成された容器の概略図を示している。
【図2】図2は、デュアルチャンバシステムとして形成された容器の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、図面に基づいて以下により詳しく説明される。
【0017】
図1は、薬品のための容器1を示している。この容器1は、薬品の収容に適しているチャンバ3を有している。このチャンバ3は、前記容器の外壁5によって囲まれており、従って、前記容器1は、ただ1つのチャンバ3のみを有する。また、例えば中間底面を前記チャンバ3中に設けることによって、前記容器中で前記チャンバ3を複数のチャンバ3に分けることも、可能である。
【0018】
前記チャンバ3には、3つの異なる活性物質及び/もしくは補助物質W1、W3、W5が、凍結乾燥の状態で、層を成して上下に配置されている。また、前記活性物質及び/もしくは補助物質(以下では活性要素と称される)W1、W3、W5は、各々異なる位置に配置されることが可能である。特に、前記凍結乾燥された活性要素は、ひいて粉にされるか細かく砕かれ、互いに混合され得る。しかしながら、この場合、前記活性要素W1、W3、W5が互いに接する面が拡大され、この結果、生じる可能性のある反応が素早く行われる。前記活性要素W1、W3、W5の品質保持期間に関しては、これらが、層を成して、もしくは隣接して配置されていることが、有効である。このような場合、前記活性要素W1、W3、W5は、接触面7、9においてのみ互いに接し、これによって、一方では前記活性要素W1、W3間の反応が、もう一方では、前記活性要素W3、W5間の反応が、非常に減速された反応速度でしか、行われ得ない。前記要素W1の前記要素W5との反応は、これらが前記要素W3によって空間的に互いに離間されているので、行われ得ない。
【0019】
前記容器1は、ここではフラスコのように図示されているが、この容器1は、注射器、カープル、デュアルもしくはマルチチャンバシステム、注入袋、注入瓶のいずれかであり得る。しかしながら、少なくとも2つの凍結乾燥された活性物質及び/もしくは補助物質W1、W3、W5が少なくとも1つのチャンバ3中に一緒に収容されていることが、非常に重要である。
【0020】
図2は、デュアルチャンバシステムとして形成されている薬品のための容器1の、更なる実施形態を示している。同じ要素、及び機能的に同じ部材には、同じ参照符号が使用されており、従ってこの点に関しては、前述の説明が参照される。
【0021】
前記容器1は、第1のチャンバ3の隣に第2のチャンバ11を有している。両チャンバは、前記容器の外壁5によって区切られている。前記第1のチャンバ3は、前記容器1中に移動可能に配置されている中間栓13によって、前記第2のチャンバ11に対して分けられている。前記第2のチャンバ11は、(図2の観点で見ると)前記容器1の下端の方向に、前記容器1中に同じく移動可能に配置されている終端栓15によって、閉じられている。前記栓13、15は、前記容器1の外壁5に対して密接して当接されており、しかしこの外壁5上を摺動可能である。従って、これら栓は、移動可能である。
【0022】
本実施形態では、前記第1のチャンバ3中に、4つの異なる活性物質及び/もしくは補助物質W1、W3、W5、W7が、凍結乾燥の状態で、上下に層を成して配置されている。図1に示されている実施形態とは異なって、この実施形態では、前記活性要素W1、W3、W5、W7は、互いに直接的に接しておらず、凍結乾燥された中性物質N1、N3、N5の層、もしくは中性物質N1、N3、N5の凍結乾燥された溶液の層が、前記活性要素W1、W3、W5、W7間に配置されている。従って2つの前記活性要素W1、W3、W5、W7が互いに接している面が無く、前記活性要素W1、W3、W5、W7の各面は、前記チャンバ3の内壁に、あるいは、凍結乾燥された中性物質N1、N3、N5のうちの1つの外面に、接している。このようにして、前記活性要素W1、W3、W5、W7間の接触は、完全に防がれ、この結果、活性要素W1、W3、W5、W7間の化学反応もしくは生化学反応が起こり得ない。このことが、前記活性要素W1、W3、W5、W7の非常に長い品質保持期間をもたらす。基本的に、前記活性要素W1、W3、W5、W7及び前記中性物質N1、N3、N5は、前述の位置とは異なる位置に収容されても良い。しかしながら、中性物質N1、N3、N5が1つずつ活性要素W1、W3、W5、W7の面間に配置されていることによって、前記活性要素W1、W3、W5、W7の面間の直接的な接触が防がれることが、重要であり、さもなければ、これら活性要素は、互いに接してしまう。
【0023】
前記第2のチャンバ11は、少なくとも前記活性要素W1、W3、W5、W7を溶解し得る溶剤17を、収容している。好ましくは、前記中性物質N1、N3、N5もまた、この溶剤17によって溶解され得る。前記容器1のこのような保存状態では、前記第1のチャンバ3と第2のチャンバ11とが、中間栓13によって、互いに離間されており、この結果、前記溶剤17は、前記活性要素W1、W3、W5、W7及び前記中性物質N1、N3、N5と接し得ない。しかしながら、患者への薬品の投与の直前に、前記溶剤17は、前記活性要素W1、W3、W5、W7及び前記中性物質N1、N3、N5を溶解するために、前記チャンバ11から、前記チャンバ3中に移され得る。
【0024】
このために、容器1の前記外壁5の直径が比較的大きい領域が、設けられている。この領域は、前記容器1の縦軸に沿った広がりを有しており、この広がりは、同じ軸に沿った中間栓13の広がりより大きい。このことによって、前記直径が比較的大きい領域は、バイパス19として作用し得る。この場合、前記直径が比較的大きい領域は、前記容器1の周方向に、小さな角の領域のみを覆っており、この結果、前記中間栓13は、前記バイパス19の領域でも、前記容器1の外壁5によって案内される。
【0025】
前記薬品が患者に投与されなければならない場合、以下のように行われる。まず、前記終端栓15は、(図2の観点で見ると)前記容器1の上端の方向に移動され、従って、このようにして前記第2のチャンバ11中に与えられた押力によって、前記中間栓13も、同じ方向に移動される。ここで、前記中間栓13は、この中間栓13が前記バイパス19の中間の領域に到達するまで移動され、この結果、前記第1のチャンバ3は、前記バイパス19によって前記第2のチャンバ11に接続される。前記終端栓15が更に同じ方向に移動される場合、前記溶剤17は、前記中間栓13の周りを流れ、かくして前記第1のチャンバ3に達する。ここで、前記溶剤17は、少なくとも前記活性要素W1、W3、W5、W7と、好ましくは前記中性物質N1、N3、N5とを、溶解する。前記終端栓15の前記中間栓13への更なる移動において、両前記栓13、15が互いに接する位置がある。前記終端栓15が(この図で見ると)前記容器1の上側の領域に更に移動される場合、この終端栓15は、前記中間栓13を一緒に移動させ、従って、前記中間栓13は、同じ方向に移動される。これに関して、前記第1のチャンバ3中に収容されている前記溶液は、前記容器1の上端21の方向に、押圧される。ここに、前記溶剤が通って取り出され得る開口部が、設けられ得る。例えば、前記容器1の上端21には、カニューレが備え付けられ得、このカニューレによって、患者に溶剤が注射され得る。しかしながら、この患者が前記第1のチャンバ3から前記溶剤を取り出し、これを飲むこともしくは外用すること、もしくは、前記溶剤が浣腸剤として患者に投与されることもまた、考えられ得る。医学では一般的な、投与の異なるやり方もまた、可能である。しかしながら、まず複数の活性物質及び/もしくは補助物質が凍結乾燥された状態で一緒に1つのチャンバに収容され、この結果、一方では、各活性要素のための別個のチャンバを有する複雑なマルチチャンバシステムが避けられ、他方では、前記活性要素が互いに化学反応もしくは生化学反応が行われ得ないことが、きわめて重要である。前記薬品の患者への投与の直前に、前記活性要素が前記溶剤中で溶解され、かくして投与され得る状態にされなければならない。
【0026】
以下に、本発明に係る容器の製造方法が、詳しく説明される。まず、少なくとも1つのチャンバ3を有する容器1が、用意される。そして、第1の活性物質/補助物質W1の溶剤が、前記チャンバ3に充填される。そして、この溶剤は、急速冷凍される。この急速冷凍は、例えば、急速冷凍ラインで、もしくは、液体窒素を有する溶液で、もしくは、類似した設備で、果たされ得る。しかしながら、第1の溶剤が凍結されることが、きわめて重要である。以下の工程の間、前記凍結された溶剤が再び溶けることが、防がれなければならない。前記容器1は、以下の全工程の間、前記第1の溶剤の融点より低い温度に維持されなければならない。
【0027】
前記第1の溶剤の冷凍の後に、活性物質及び/もしくは補助物質W3の第2の溶剤が、前記チャンバ3中に導入される。そして、前記溶剤は、可能な限り素早く急速冷凍され、従って、前記第1の溶剤と前記第2の溶剤との間の境界面では、重大な融解プロセス工程が行われ得ない。また、前記第2の凍結された溶剤は、前記更なる工程の間、融解されてはならず、従って、前記容器1は、好ましくは、全工程の間、前記容器1のチャンバ3中に導入される前記凍結された溶剤の最低の融点よりも低い温度に保たれる。
【0028】
図1に記載の実施形態では、前記凍結された第2の溶剤に、活性物質及び/もしくは補助物質W5の第3の溶剤が与えられ、この第3の溶剤も同様に、急速冷凍される。かくして、互いに上下に配置された3つの急速冷凍された溶剤がある。当然、2つの急速冷凍された溶剤のみを互いに上下に配置することが、可能である。しかしながら、3つ以上の急速冷凍された溶剤を、互いに上下に配置することも、可能である。いくつの急速冷凍された溶剤が、前記容器1の前記チャンバ3中に、互いに上下に配置されるかは、一方では患者への所望の効果と、互いに重ねられた活性物質及び/もしくは補助物質の化学的もしくは生化学的適合性とによって、専ら決定される。かくして、例えば、複数の互いに反応しない活性物質及び/もしくは補助物質W1、W3、W5を、同じ溶剤中に与えて急速冷凍し、一方で、他の反応性の活性物質及び/もしくは補助物質W1、W3、W5が別個の急速冷凍された溶剤中に配置されることが、可能である。互いに接すると化学的にもしくは生化学的に反応してしまう活性物質及び/もしくは補助物質を分けることが、きわめて重要である。
【0029】
全ての所望の溶剤が前記容器1中で急速冷凍されて収容されると、この容器1は、凍結乾燥のための装置中に入れられ、前記容器3中に収容された凍結した溶剤は、前記容器1中で凍結乾燥される。この時、(図1の観点で見ると)下側の要素の前記溶剤の蒸気が、(図1の観点で見ると)上側の要素を通って昇華しなければならない。
【0030】
前記凍結乾燥プロセスの終了後、前記容器1のチャンバ3中には、凍結乾燥された活性要素W1、W3、W5が、互いに離間され、互いに上下に層を成して配置されている。図1に示されているように前記容器1がフラスコである場合、溶剤17が、外部から例えば注射器によって加えられ得る。前記活性要素W1、W3、W5の溶解の後に、前記溶剤は、例えば注射器によって前記フラスコから取り出され得、患者に投与され得る。また、このような場合、前記溶剤は、医療では一般的な他のやり方によって、当然患者に投与され得る。
【0031】
前記活性要素W1、W3、W5の品質保持期間と鮮度とを点検することができるように、これら要素は、個々に凍結乾燥された層を成して、一体化され得る。これら層は、溶剤17による溶解及び混合の際に、互いに反応し、この結果、化学ルミネセンスもしくは生物ルミネセンスを生じさせる。このような場合、前記活性要素W1、W3、W5が、保管されている間に互いに反応する機会がなかった場合に、使用者は、発光現象を見ることができる。これに対して反応が行われた場合、好ましくはより早く反応する反応性の発光要素は、すでに互いに反応しており、この結果、使用時には発光現象が見られ得ない。
【0032】
前記活性要素W1、W3、W5が互いとの反応において速い反応速度を有する非常に活性の活性物質及び/もしくは補助物質である場合は特に、図2に示されているように、前記中性物質N1、N3、N5の層を、前記活性要素W1、W3、W5、W7の間にそれぞれ配置することが、必要である。このことは、活性物質及び/もしくは補助物質W1、W3、W5、W7の溶剤の急速冷凍の後に、まず中性物質N1、N3、N5もしくは中性物質の溶剤が、前記容器1の前記第1のチャンバ3中に充填されることによって、果たされる。これに続いて、前記中性物質N1、N3、N5もしくは前記中性物質の溶剤が急速冷凍され、そして、この時初めて次の前記活性要素W1、W3、W5、W7が、充填される。必ずしもすべての活性要素W1、W3、W5、W7が、前記中性物質N1、N3、N5の層によって互いに離間されなければならないのではない、ということが明らかである。一般的に、前記容器1の保管の時間のスケールに対して重大な反応速度で互いに反応する活性要素のみを互いに離間すれば、十分である。かくして、例えば、要素W1と要素W3とは、中性要素N1によって互いに離間されることが可能であり、例えば、前記要素W3と要素W5とは、これらが互いに重大な反応速度を有していない場合、直接互いに上下に配置されることができる。この点では、活性要素W1、W3、W5、W7と中性物質N1、N3、N5の順序のいかなる変更が、考えられ得る。急速冷凍された中性物質が活性要素間に配置される場合、前記容器1のチャンバ3が完全に充填された後に、最後に、全ての要素が一緒に凍結乾燥されることが、見込まれる。
【0033】
前述の方法の個々の工程は、前述の順序とは異なる順序で実行されることも可能であり、前記方法の生産物として、少なくとも2つの凍結乾燥された活性物質及び/もしくは補助物質W1、W3、W5、W7が少なくとも1つのチャンバ3中に一緒に収容されることのみが、重要である。
【0034】
概して、本発明が、種々の可能であれば反応性の活性物質及び/もしくは補助物質W1、W3、W5、W7を、これらが互いに反応しないように1つの容器3中に一緒に配置する方法と装置とを提供することが、明らかである。このようにして、各々の活性要素のために別個のチャンバが設けられる複雑なマルチチャンバシステムが、避けられ得る。あるいは、前記投与の前の混合プロセスを、間違えやすく複雑にする、個々の要素を備えた複数の別個のフラスコを、設ける必要がない。同時に、前記活性物質の非常に良好な品質保持期間が、得られる。このような概念は、非常に単純であり、各々の商慣習上の充填及び凍結乾燥ラインに適用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのチャンバ(3)を有する薬品のための容器であって、前記容器は、少なくとも2つの凍結乾燥された活性物質及び/もしくは補助物質(W1、W3、W5、W7)が、少なくとも1つのチャンバ(3)中に一緒に収容されることを特徴とする、少なくとも1つのチャンバ(3)を有する薬品のための容器。
【請求項2】
前記少なくとも2つの活性物質及び/もしくは補助物質(W1、W3、W5、W7)は、層を成して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記少なくとも2つの活性物質及び/もしくは補助物質(W1、W3、W5、W7)は、少なくとも1つの凍結乾燥された中性物質(N1、N3、N5)によって互いに離間されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記少なくとも2つの活性物質及び/もしくは補助物質(W1、W3、W5、W7)は、凍結乾燥された中性物質(N1、N3、N5)の少なくとも1つの層によって、互いに離間されていることを特徴とする請求項2又は3に記載の容器。
【請求項5】
前記容器(1)は、注射器、カープル、デュアルもしくマルチチャンバシステム、フラスコ、注入袋、注入瓶のいずれかであり得ることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか1に記載の容器。
【請求項6】
順序が変更され得る以下の工程、即ち、
−少なくとも1つのチャンバ(3)を有する薬品のための容器(1)を準備する工程と、
−第1の活性物質及び/もしくは補助物質の溶剤を、前記少なくとも1つのチャンバ(3)中に充填する工程と、
−前記第1の溶剤を急速冷凍する工程と、
−活性物質及び/もしくは補助物質の更なる溶剤を、前記少なくとも1つのチャンバ(3)中に充填する工程と、
−前記更なる溶剤を急速冷凍する工程と、
−場合によっては、所望の数の活性物質及び/もしくは補助物質(W1、W3、W5、W7)が前記少なくとも1つのチャンバ(3)に収容されるまで、最後の2つの工程を繰り返す工程と、
−前記容器(1)の凍結された溶剤を凍結乾燥する工程と、
によって特徴付けられる請求項1乃至5のいずれか1に記載の容器(1)の製造方法。
【請求項7】
活性物質及び/もしくは補助物質(W1、W3、W5、W7)の溶剤の急速冷凍の後、及び、活性物質及び/もしくは補助物質(W1、W3、W5、W7)の更なる溶剤の充填の前に、中性物質(N1、N3、N5)、好ましくは中性物質の溶剤が、前記少なくとも1つのチャンバ(3)中に充填され、前記中性物質(N1、N3、N5)もしくはこの溶剤は、前記充填の後に、急速冷凍されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−524226(P2011−524226A)
【公表日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−513948(P2011−513948)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2009/004385
【国際公開番号】WO2009/153039
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(503299192)アーツナイミッテル・ゲーエムベーハー・アポテーカー・フェッター・ウント・コンパニー・ラフェンスブルク (19)
【氏名又は名称原語表記】Arzneimittel Gmbh Apotheker Vetter & Co. Ravensburg
【Fターム(参考)】