薬液供給装置
【課題】種々の形状の便器に対応可能で、優れた洗浄効果を得ることができる薬液供給装置を提供する。
【解決手段】本発明は、便器のリムに取り付けられる薬液供給装置であって、
薬液を収容し、当該薬液の排出口を有する薬液容器と、排出口に接続され、前記薬液容器内の薬液を外部へと導く薬液排出機構と、薬液排出機構よりも下方に配置される支持部材と、薬液容器、薬剤排出機構、及び前記支持部材を便器のリムに吊り掛けるための吊掛部材と、を備え、支持部材は、薬液排出機構を経た薬液を受ける基部と、基部においてリムの内壁面と対向する側に連接される少なくとも1つの弾性部と、弾性部に連接され、リムの内壁面に向かって延びる可動部と、を備えている。
【解決手段】本発明は、便器のリムに取り付けられる薬液供給装置であって、
薬液を収容し、当該薬液の排出口を有する薬液容器と、排出口に接続され、前記薬液容器内の薬液を外部へと導く薬液排出機構と、薬液排出機構よりも下方に配置される支持部材と、薬液容器、薬剤排出機構、及び前記支持部材を便器のリムに吊り掛けるための吊掛部材と、を備え、支持部材は、薬液排出機構を経た薬液を受ける基部と、基部においてリムの内壁面と対向する側に連接される少なくとも1つの弾性部と、弾性部に連接され、リムの内壁面に向かって延びる可動部と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器のリムに取り付けられ、便器を洗浄する薬液を供給する薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器を洗浄したり、芳香効果を得るための薬液供給装置は、取付対象となる便器のタイプによって種々のものが提案されている。例えば、貯水タンクを有するタイプに対しては、タンク上部の手洗い部に配置される薬液供給装置が提案されており、この装置は、手洗い部に供給される水とともに、貯水タンク内に薬液を供給するように構成されている。
【0003】
一方、タンク上部に手洗い部がないものや、貯水タンク自体を設けないタイプの便器も販売されており、これに対しては、便器のリムに直接取り付ける薬液供給装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の薬液供給装置は、便器のリムに吊り掛けられるように薬液容器を設け、その下方に薬液を受けるプレートを取り付けている。そして、薬液容器から排出孔を介してプレート上に供給される薬液を、流水によってさらうことで、便器の内壁面に薬液を供給している。これによって、便器が洗浄されるとともに、薬液に含まれる芳香成分により、芳香効果も得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−517124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記薬液供給装置は、便器に対して適切な角度で取り付けられなければ、十分な洗浄効果を得られないという問題がある。すなわち、便器の形状は、多岐に亘るため、全ての便器に薬液供給装置を適切な角度で取り付けることはできない。例えば、プレートが下方に傾くと、プレート上に流水を導きにくくなるため、薬液を効率的にさらうことができない。一方、プレートが上方に傾きすぎて便器から離れると、流水をプレート上に流すことができなくなるという問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、種々の形状の便器に対応可能で、優れた洗浄効果を得ることができる薬液供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、便器のリムに取り付けられる薬液供給装置であって、薬液を収容し、当該薬液の排出口を有する薬液容器と、前記排出口に接続され、前記薬液容器内の薬液を外部へと導く薬液排出機構と、前記薬液排出機構よりも下方に配置される支持部材と、前記薬液容器、薬剤排出機構、及び前記支持部材を便器のリムに吊り掛けるための吊掛部材と、を備え、前記支持部材は、前記薬液排出機構を経た薬液を受ける基部と、前記基部においてリムの内壁面と対向する側に連接される少なくとも1つの弾性部と、前記弾性部に連接され、リムの内壁面に向かって延びる可動部と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、薬液容器から排出された薬液を受ける支持部材が、基部と、可動部と、これらに連接する弾性変形可能な弾性部とで構成されている。そのため、弾性部の弾性変形により、可動部の角度が変更可能であることから、取り付け対象となる便器の形状に関わらず、可動部を便器内壁面に当接させることができる。すなわち、可動部は、弾性部の弾性変形により、基部に対する傾斜角度が変化するので、例えば、便器内壁面と基部との距離が短いと、可動部が便器内壁面に押圧されることで、傾斜が大きくなりつつ便器内壁面と当接する。したがって、種々の形状の便器に対して、基部と便器内壁面と間に隙間を形成することなく、可動部が便器と接触するので、便器内壁面を伝う流水を確実に基部側へ導くことができる。
【0009】
また、上記薬液供給装置においては、例えば、可動部が基部に対して折り畳まれるように力が作用した場合でも、弾性部により反発するため、折り癖がつきにくくなる。したがって、輸送時に可動部が折り畳まれていたとしても、弾性力により初期状態に復帰しやすく、上述したように、便器形状に適合するように可動部が傾斜するという効果を得ることができる。なお、本発明における「弾性部」とは、基部から可動部へ向かってある程度の長さに渡って延びる部位をいい、例えば、溝により薄膜のヒンジ部を形成したものとは相違する。また、基部、弾性部、及び可動部は、樹脂などで一体的に形成することができる。
【0010】
上記薬液供給装置においては、弾性部を複数形成し、幅方向に隣接する弾性部の間に、貫通孔を形成することができる。このようにすると、基部から流れた薬液を貫通孔から便器へ落下させることができる。そのため、仮にフラッシュ時の流水が支持部材上に流れ込まないように設置された場合であっても、薬液は貫通孔を介して便器へ落下するため、薬液を便器に供給することできる。これにより、便器を流れる流水によって薬液をさらうことができる。なお、弾性部が1つの場合には、その両端に支持部材の幅方向の両端から切り込まれる切り欠き部が形成されることになり、その切り欠き部を介して薬液が便器へ落下する。
【0011】
また、基部から可動部側へ向かって前記貫通孔内へ延びる延出部をさらに設けることができる。この構成によれば、貫通孔内に延出部が延びているため、延出部にも薬液を保持することが可能となる。そのため、支持部材上に流れ込む流水によって薬液をさらにやすくなり、薬液を便器内に行き渡らせることができる。
【0012】
また、支持部材に対し、可動部側に凸のU字型の孔を施せば、1つの作業で、上記のような弾性部、貫通孔、及び延出部を形成することができ、製造工程が簡単になる。
【0013】
なお、弾性部の弾性力は、種々の設定方法があるが、例えば、次のように設定することができる。すなわち、吊掛部材をリムに取り付けたとき、薬液供給装置は吊掛部材の張力に抗して自重により下方に下がっていくが、このとき、支持部材が弾性部の弾性力によってリムの内壁面を押圧するように設定する。これにより、装置は、その自重、吊掛部材の張力、及び支持部材による押圧力でバランスが保たれ、リムに固定される。このように装置がバランスよく支持されるように、弾性部の弾性力を設定することができる。
【0014】
また、弾性部は、次のように作成することもできる。例えば、支持部材に貫通孔を形成することで幅方向の両端に一対の弾性部を形成することができる。或いは、支持部材において薬液排出機構側からリム側に向かう一部に、厚みの薄い領域を形成し、これを弾性部とすることもできる。
【0015】
また、上記薬液供給装置においては、薬液容器が、フラッシュ時の流水の経路に配置されないような便器のリムにも取り付けられるようにすることができる。
【0016】
また、流出孔に、フラッシュ時の流水が到達しないような便器のリムに取り付けられるようにもすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る薬液供給装置によれば、種々の形状の便器に対応可能で、優れた洗浄効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る薬液供給装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1において薬液容器を取り外した断面図である。
【図3】図1の薬液供給装置の分解背面図である。
【図4】図1の薬液供給装置の分解側面図である。
【図5】装置本体の平面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】上部材の側面断面図、正面図、及び平面図である。
【図8】下部材の側面断面図、正面図、及び底面図である。
【図9】下部材の一部斜視図(a)及びそのB−B線断面図(b)ある。
【図10】薬液供給装置の取り付け状態を示す側面図である。
【図11】図5の装置本体の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る薬液供給装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る薬液供給装置の側面図、図2は図1において薬液容器を取り外した断面図、図3は図1の分解背面図、図4は図1の分解側面図である。
【0020】
この薬液供給装置は、便器のリムに吊り掛けて使用されるものであり、図1〜図4に示すように、薬液が収容された薬液容器1と、これを下方から支持する装置本体2と、装置をリムに吊り掛けるための吊掛部材3とを有している。また、装置本体2の内部には、薬液容器1から流れ出た薬液を装置本体2の底面へと供給する薬液排出機構4が配置されている。この薬液排出機構4は、後述するように、上部材と下部材とで構成されている。以下、上述した各部材をさらに詳細に説明する。
【0021】
図3に示すように、薬液容器1は、透明のドーム状に形成され、下面に排出口11を有している。そして、この排出口11には、キャップ13が取り付けられている。このキャップ13は、環状の本体部と、その中央の穴を塞ぐ薄膜部(図示省略)とで構成されており、使用に際しては、薄膜部を破断させて薬液を排出させる。薬液容器1に収容される薬液は、芳香及び便器の洗浄を行うためのものであり、例えば、25℃において80〜500mPa・s、5℃において200〜2000mPa・s、好ましくは、25℃において120〜300mPa・s、5℃において300〜1200mPa・sの粘度を有する薬液とすることができる。
【0022】
図5は装置本体の平面図、図6は図5のA−A線断面図である。図5及び図6に示すように、装置本体2は、薬液容器1を支持するカップ状の基台20と、この基台20の底面を構成しリム側に延びる支持プレート(支持部材)21とで構成されている。基台20は、平面視楕円状に形成され、その周囲を壁体22で囲まれている。壁体22のうち、長手方向の一辺は切り欠かれて開放されており、この開放部分231から支持プレート21が延びている。
【0023】
また、基台20の中央には、上方へ延びる支柱24が取り付けられており、この支柱24と後述するカバー部材411との間の空間に、吊掛部材3が上下動可能に取り付けられる。吊掛部材3は、弾性変形可能に2箇所で折り曲げられた帯状に形成されており、初期状態では、図1のように折り畳まれている。また、吊掛部材3は、上下動可能に構成されているため、装置とリムとが干渉しないように、リムに対する薬液容器1及び装置本体2の高さを調整することができる。また、図5に示すように、基台20には、台形状の貫通孔201が形成されている。貫通孔201は、後述する薬液排出機構4における薬液の流出孔428の直下の近傍に配置されている。また、基台20上には、貫通孔201を始点として、リム側に傾斜して延びる一対の遮壁202が形成されている。両遮壁202は、リム側に向かって互いに離れるように、裾広がりに延びている。また、貫通孔201の可動部212側の辺にも遮壁203が形成されている。これにより、3つの遮壁202,203が、貫通孔201と、流出孔428の直下の位置とを仕切るように配置されている。
【0024】
次に、支持プレート21についてさらに詳細に説明する。図5及び図6に示すように、支持プレート21は、基台20の底部を構成しリム側に突出する基部211を有し、この基部211の幅方向の両端にリム側へ延びる一対の弾性部213が接続されている。弾性部213は、弾性変形可能であり、上方に向けて湾曲している。そして、この弾性部213の端部には、便器の内壁面に当接可能な可動部212が接続されている。この構成により、可動部212は、弾性部213の弾性変形によって、基部211に対する傾斜角度を変更できるようになっている。また、両弾性部213の間には、貫通孔214が形成されており、この貫通孔214の基部211側から矩形状の延出部215が延びている。なお、基部211、弾性部213、延出部215、及び可動部212は、樹脂などで一体的に形成されており、図5に示すように、支持プレート21に対して、リム側に凸のU字型の孔を施すことで、弾性部213、延出部215、及び貫通孔214を一度に形成することができる。
【0025】
また、基部211は、可動部212側に向かって約6度で下方に傾斜しており、後述するように、薬液排出機構4から排出された薬液がリム側へ流れやすいようにしている。基部211の傾斜角度αは、これ以外に設定することも可能であり、例えば、0〜45度にすることができ、3〜30度であることが好ましい。また、初期状態では、図6に示すように、可動部212は基部211に対して、約30°の傾斜角度βで上方に傾斜しており、この状態から弾性部の弾性変形によって、基部211に対し約0〜90°程度の範囲で傾斜が可能となっている。
【0026】
続いて、薬液排出機構4について説明する。図2〜図4に示すように、薬液排出機構4は、薬液容器1と支持プレート21との間に配置されており、上側に配置される上部材41と、下側に配置される下部材42とで構成されている。上部材41は、平面視楕円型の筒状に形成されており、下方が開放している。一方、図8に示すように下部材42は、平面視楕円状の板状部421と、その周囲に上下方向に延びるように形成された低い壁部材423とで構成されており、上部材41の下部開口を塞ぐように配置される。そして、上部材41と下部材42とが組み合わされることで、両者の間には、薬液を保持する緩衝空間45が形成される(図2参照)。以下、上部材41及び下部材42についてさらに詳細に説明する。
【0027】
まず、上部材41について説明する。図7は上部材の断面図(a)、正面図(b)、及び平面図(c)である。同図に示すように、上部材41の側面には、上方に延びるレール状のカバー部材411が取り付けられており、このカバー部材411は、上述した通り、支柱24に当接し、吊掛部材3を収容する空間を形成する。また、上部材41の上面中央部には、先端が斜めに切りかかれて鋭利な円筒状の連通管412が設けられるとともに、上面の端部には合計4つの空気流出孔413が形成されている。連通管412は、上述した薬液容器1のキャップ13に突き刺され、薄膜部を破断させる役割を果たす。また、連通管412の周縁には、U字状の溝417が形成されており、この溝417にキャップ13が嵌るようになっている。一方、連通管412の内部底面には、下部材42側へ延びる円筒状の固定管414と、その近傍に配置された3個の連通孔415とが形成されている。そして、これら連通孔415と、上述した空気流出孔413とは、緩衝空間45と連通している。なお、連通孔415が複数個形成されている場合、複数の連通孔415のうち、最も大きい連通孔415の開口面積が0.6〜1.8mm2以上とすることが好ましい。
【0028】
続いて、下部材42について図8及び図9も合わせて説明する。図8は下部材の断面図(a)、正面図(b)、及び底面図(c)であり、図9は下部材の一部斜視図(a)及びそのB−B線断面図(b)ある。まず、図8に示すように、下部材42の中央には、上部材41の固定管414に嵌合する円筒状の案内管424と、その周囲を囲むように設けられた円形の固定壁425とが設けられている。そして、案内管424と固定壁425との間の隙間には、上述した固定管414が嵌るようになっている。案内管424の上部開口は、斜めに切り取られた形状となっており、その開口の低い側から案内管424の外周面に沿って上下方向に延びるV字状の案内溝426が形成されている。ここで、図8及び図9に示すように、案内管424は固定管414の内部に嵌っているため、固定管414の内壁面と、案内溝426とで薬液の通路、つまり案内路が形成される。また、案内管424と固定壁425との隙間の底面と固定管414の下端部との隙間にも薬液が通過する空間、つまり延長路427が形成される。より詳細に説明すると、上記隙間の底面においては、案内溝426の両側の各約90度が薬液の延長路427を構成するとともに、案内溝426とは反対側には、約180度に亘る半円形の流出孔428が形成されている。そして、延長路427を通過した薬液が流出孔428から支持プレート21側へ流れ出るようになっている。なお、各延長路427の容積は、0.05〜0.3mm3であることが好ましく、0.07〜0.15mm3であることがさらに好ましい。また、延長路427の断面積は、0.02〜0.1mm2であることが好ましく、0.03〜0.05mm2であることがさらに好ましい。
【0029】
図8に示すように、下部材42の下面には、上述した流出孔428の両端をと接触する板状の突条部43が設けられている。より詳細には、この突条部43は、流出孔428の両端を結ぶ基板431と、この基板431の両端から延びる一対の延長部432とで形成されている。そして、各延長部432は、互いに離間するように、可動部212側へ斜め方向に延びている(図2参照)。また、突条部43の上下方向の長さは、例えば、3〜10mmにすることができるが、図2に示すように、突条部43の下端部は、装置本体2の底面に接触していることが好ましい。さらに、図9に示すように、突条部43には、下向きに延びる複数の溝(排出促進部)が形成されている。このように突条部43に溝を形成すると、薬液が突条部43に保持されやすくなり、より多くの薬液を支持プレート21側へスムーズに供給することができる。なお、溝の深さは、例えば、0.15〜0.3mmにすることができ、溝の幅は0.4〜0.8mmにすることができる。
【0030】
次に、上記のように構成された薬液供給装置の使用方法について図10も参照しつつ説明する。図10は薬液供給装置の取り付け状態を示す側面図である。まず、薬液容器1を上部材41上に配置する。これにより、薬液容器1のキャップ13に連通管412が突き刺さり、薬液容器1が固定される。続いて、この装置を便器のリムに取り付ける際には、吊掛部材3を、支柱24から引き出して高さを調整しつつ、図1の状態からコ字状に押し広げる。そして、図10に示すように、リムRを挟むように配置する。このとき、可動部212は、便器の内壁面に当接するのであるが、基部211に対して揺動可能となっているため、基部211と便器内壁面Sとの距離に応じて、傾斜する。こうして、基部211と便器内壁面Sとの隙間は埋められる。その結果、基部211に流れ出た薬液を効率よくさらって、便器へ流すことができるため、便器の形状にかかわらず、優れた洗浄効果を得ることができる。
【0031】
続いて、薬液の流れについて説明する。連通管412によりキャップ13の薄膜部が破断されると、薬液は、薬液容器1から薬液排出機構4へと流れ出て、一部は連通管412及び連通孔415を介して緩衝空間45内に流れ込む。一方、残りの薬液は、図9に示すように、案内溝426を通過して下方へ流れた後、延長路427及び流出孔428を介して下部材42の下面側に流れ出る。そして、この薬液は、突条部43を伝って下方へ移動し、支持プレート21上へ移る。また、薬液容器1から案内溝426へ薬液が排出されると、薬液の排出に伴って薬液容器1内は負圧になる。これに伴って、緩衝空間45内の薬液及び空気は、連通孔415を介して薬液容器1内へ流入していく。こうして、薬液や空気が薬液容器1内に流れ込むと、薬液容器1内の薬液が押し出され、案内溝426へと流出していく。
【0032】
上記のように装置が設置された後、便器内に水が流されると、流された水は、図10に示すように、リムRの内側から便器内壁面Sを伝い、可動部212によって基部211側へ案内される(矢印X)。そして、基部211と可動部212との間の延出部215に貯まった薬液をさらいつつ、便器へと流れていく。こうして、薬液は流水とともに、便器内壁面Sに供給され、便器の清浄が行われる。なお、支持プレート21上に流れ込む水が薬液排出機構4を逆流して薬液容器1内に入り込むおそれもあるが、これについては次のように対処される。すなわち、本実施形態に係る装置では、薬液は、案内溝426及び延長路427を介して支持プレート21上に流れ出る。特に、延長路427は水平に延びているため、突条部43を介して上方に流れた水は、一旦水平に延びる延長路427を通過した後、さらに垂直に延びる案内溝426を通過しなければ、薬液容器1には到達しない。このように、この装置では、支持プレート21から薬液容器1に至る垂直方向の経路の中に水平に延びる経路を配置しているので、水の進入を防止することができる。
【0033】
また、貫通孔201は、次のような役割も果たす。例えば、装置がリムに対して傾いて取り付けられた場合、薬液が支持プレート21上でリムRとは反対側に流れたとしても、この薬液は貫通孔201から装置外部へ排出される。つまり、薬液が便器に流れるため、流水に接触させることができる。したがって、所望の角度で装置をリムに対して取り付けられていない場合であっても、薬液を流水に接触させることができ、所望の芳香、洗浄効果を得ることができる。また、流水が装置本体2内に流入しない場合であっても、薬液を貫通孔201を介して便器に流出させることができる。
【0034】
また、薬液が支持プレート21上に供給されても長時間流水がなければ、薬液が支持プレート21上で固まるおそれがある。この場合、上記のように、装置本体2の底面に貫通孔201が形成されていると、この貫通孔201を介して薬液を外部に排出することも可能となり、支持プレート21上で固まるのを防止することができる。
【0035】
また流出孔428の直下の位置と貫通孔201との間に遮壁203を設けているため、遮壁203を越えた薬液のみが貫通孔201から流れ出すため、装置が傾いていたとしても、ある程度の薬液は支持プレート21上に残ることになる。よって、薬液が過度に貫通孔201から排出されるのを防止することができ、流水によって支持プレート21上の薬液がさらわれるようになる。なお、薬液の外部への排出は、支持プレート21上に形成された貫通孔214によっても同様に行われ、同様の効果を得ることができる。
【0036】
以上のように本実施形態によれば、弾性部213の弾性変形により、可動部212の角度が変更可能であることから、取り付け対象となる便器の形状に関わらず、可動部212を便器内壁面に当接させることができる。すなわち、可動部212は、弾性部213の弾性変形により、基部211に対する傾斜角度が変化するので、例えば、便器内壁面と基部との距離が短いと、可動部212が便器内壁面に押圧されることで、傾斜が大きくなりつつ便器内壁面と当接する。したがって、種々の形状の便器に対して、基部211と便器内壁面と間に隙間を形成することなく、可動部212が便器と接触するので、便器内壁面を伝う流水を確実に基部211側へ導くことができる。
【0037】
また、上記薬液供給装置においては、弾性部213が弾性変形可能で、且つ湾曲した形状となっているため、弾性部213は弾性力を有する。そのため、輸送時に可動部212が基部211側に折り畳まれていたとしても、弾性力により初期状態に復帰しやすく、上述したように、便器形状に適合するように可動部212が傾斜するという効果を得ることができる。
【0038】
また、基部211から可動部212側へ向かって貫通孔214内へ延びる延出部215が設けられているため、延出部215にも薬液を保持することが可能となる。そのため、支持プレート21上に流れ込む流水によって薬液をさらいやすくなり、薬液を便器内に行き渡らせることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、弾性部213は、弾性変形可能で、上方に向かって湾曲する形状であれば、特には限定されない。例えば、図11に示す態様がある。図11(a)に示すように、幅方向に延びる1つの貫通孔214を形成し、その両端に弾性部213を形成することができる。また、図11(b)に示すように、支持プレート21にH字型の孔214を形成することで、支持プレート21の両端に一対の弾性部213を形成するとともに、基部211から可動部212へ延びる延出部215を形成することができる。図11(c)に示す態様では、支持プレート21の幅方向に並ぶ2つの貫通孔214を形成し、これによって、基部211の両端部及び中央部に、3つの弾性部213を形成している。また、図11(d)の態様では、支持プレート21の幅方向に並ぶ2つのU字型の孔214を形成し、これによって、基部211の両端部及び中央部に、3つの弾性部213を形成している。また、基部211から延びる2つの延出部215を形成している。
【0041】
また、薬液容器1、薬液排出機構4の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、薬液容器1から支持プレート21に対して薬液を供給できるものであれば、特には限定されない。また、支持プレート21は、必ずしもプレート状に形成していなくてもよく、薬液を受ける面が形成されていればよい。
【符号の説明】
【0042】
1 薬液容器
21 支持プレート(支持部材)
211 基部
212 可動部
213 弾性部
214 貫通孔
215 延出部
3 吊掛部材
4 薬液排出機構
【技術分野】
【0001】
本発明は、便器のリムに取り付けられ、便器を洗浄する薬液を供給する薬液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
便器を洗浄したり、芳香効果を得るための薬液供給装置は、取付対象となる便器のタイプによって種々のものが提案されている。例えば、貯水タンクを有するタイプに対しては、タンク上部の手洗い部に配置される薬液供給装置が提案されており、この装置は、手洗い部に供給される水とともに、貯水タンク内に薬液を供給するように構成されている。
【0003】
一方、タンク上部に手洗い部がないものや、貯水タンク自体を設けないタイプの便器も販売されており、これに対しては、便器のリムに直接取り付ける薬液供給装置が提案されている。例えば、特許文献1に記載の薬液供給装置は、便器のリムに吊り掛けられるように薬液容器を設け、その下方に薬液を受けるプレートを取り付けている。そして、薬液容器から排出孔を介してプレート上に供給される薬液を、流水によってさらうことで、便器の内壁面に薬液を供給している。これによって、便器が洗浄されるとともに、薬液に含まれる芳香成分により、芳香効果も得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2003−517124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記薬液供給装置は、便器に対して適切な角度で取り付けられなければ、十分な洗浄効果を得られないという問題がある。すなわち、便器の形状は、多岐に亘るため、全ての便器に薬液供給装置を適切な角度で取り付けることはできない。例えば、プレートが下方に傾くと、プレート上に流水を導きにくくなるため、薬液を効率的にさらうことができない。一方、プレートが上方に傾きすぎて便器から離れると、流水をプレート上に流すことができなくなるという問題が発生する。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、種々の形状の便器に対応可能で、優れた洗浄効果を得ることができる薬液供給装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、便器のリムに取り付けられる薬液供給装置であって、薬液を収容し、当該薬液の排出口を有する薬液容器と、前記排出口に接続され、前記薬液容器内の薬液を外部へと導く薬液排出機構と、前記薬液排出機構よりも下方に配置される支持部材と、前記薬液容器、薬剤排出機構、及び前記支持部材を便器のリムに吊り掛けるための吊掛部材と、を備え、前記支持部材は、前記薬液排出機構を経た薬液を受ける基部と、前記基部においてリムの内壁面と対向する側に連接される少なくとも1つの弾性部と、前記弾性部に連接され、リムの内壁面に向かって延びる可動部と、を備えている。
【0008】
この構成によれば、薬液容器から排出された薬液を受ける支持部材が、基部と、可動部と、これらに連接する弾性変形可能な弾性部とで構成されている。そのため、弾性部の弾性変形により、可動部の角度が変更可能であることから、取り付け対象となる便器の形状に関わらず、可動部を便器内壁面に当接させることができる。すなわち、可動部は、弾性部の弾性変形により、基部に対する傾斜角度が変化するので、例えば、便器内壁面と基部との距離が短いと、可動部が便器内壁面に押圧されることで、傾斜が大きくなりつつ便器内壁面と当接する。したがって、種々の形状の便器に対して、基部と便器内壁面と間に隙間を形成することなく、可動部が便器と接触するので、便器内壁面を伝う流水を確実に基部側へ導くことができる。
【0009】
また、上記薬液供給装置においては、例えば、可動部が基部に対して折り畳まれるように力が作用した場合でも、弾性部により反発するため、折り癖がつきにくくなる。したがって、輸送時に可動部が折り畳まれていたとしても、弾性力により初期状態に復帰しやすく、上述したように、便器形状に適合するように可動部が傾斜するという効果を得ることができる。なお、本発明における「弾性部」とは、基部から可動部へ向かってある程度の長さに渡って延びる部位をいい、例えば、溝により薄膜のヒンジ部を形成したものとは相違する。また、基部、弾性部、及び可動部は、樹脂などで一体的に形成することができる。
【0010】
上記薬液供給装置においては、弾性部を複数形成し、幅方向に隣接する弾性部の間に、貫通孔を形成することができる。このようにすると、基部から流れた薬液を貫通孔から便器へ落下させることができる。そのため、仮にフラッシュ時の流水が支持部材上に流れ込まないように設置された場合であっても、薬液は貫通孔を介して便器へ落下するため、薬液を便器に供給することできる。これにより、便器を流れる流水によって薬液をさらうことができる。なお、弾性部が1つの場合には、その両端に支持部材の幅方向の両端から切り込まれる切り欠き部が形成されることになり、その切り欠き部を介して薬液が便器へ落下する。
【0011】
また、基部から可動部側へ向かって前記貫通孔内へ延びる延出部をさらに設けることができる。この構成によれば、貫通孔内に延出部が延びているため、延出部にも薬液を保持することが可能となる。そのため、支持部材上に流れ込む流水によって薬液をさらにやすくなり、薬液を便器内に行き渡らせることができる。
【0012】
また、支持部材に対し、可動部側に凸のU字型の孔を施せば、1つの作業で、上記のような弾性部、貫通孔、及び延出部を形成することができ、製造工程が簡単になる。
【0013】
なお、弾性部の弾性力は、種々の設定方法があるが、例えば、次のように設定することができる。すなわち、吊掛部材をリムに取り付けたとき、薬液供給装置は吊掛部材の張力に抗して自重により下方に下がっていくが、このとき、支持部材が弾性部の弾性力によってリムの内壁面を押圧するように設定する。これにより、装置は、その自重、吊掛部材の張力、及び支持部材による押圧力でバランスが保たれ、リムに固定される。このように装置がバランスよく支持されるように、弾性部の弾性力を設定することができる。
【0014】
また、弾性部は、次のように作成することもできる。例えば、支持部材に貫通孔を形成することで幅方向の両端に一対の弾性部を形成することができる。或いは、支持部材において薬液排出機構側からリム側に向かう一部に、厚みの薄い領域を形成し、これを弾性部とすることもできる。
【0015】
また、上記薬液供給装置においては、薬液容器が、フラッシュ時の流水の経路に配置されないような便器のリムにも取り付けられるようにすることができる。
【0016】
また、流出孔に、フラッシュ時の流水が到達しないような便器のリムに取り付けられるようにもすることもできる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る薬液供給装置によれば、種々の形状の便器に対応可能で、優れた洗浄効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る薬液供給装置の一実施形態を示す側面図である。
【図2】図1において薬液容器を取り外した断面図である。
【図3】図1の薬液供給装置の分解背面図である。
【図4】図1の薬液供給装置の分解側面図である。
【図5】装置本体の平面図である。
【図6】図5のA−A線断面図である。
【図7】上部材の側面断面図、正面図、及び平面図である。
【図8】下部材の側面断面図、正面図、及び底面図である。
【図9】下部材の一部斜視図(a)及びそのB−B線断面図(b)ある。
【図10】薬液供給装置の取り付け状態を示す側面図である。
【図11】図5の装置本体の他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る薬液供給装置の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。図1は本実施形態に係る薬液供給装置の側面図、図2は図1において薬液容器を取り外した断面図、図3は図1の分解背面図、図4は図1の分解側面図である。
【0020】
この薬液供給装置は、便器のリムに吊り掛けて使用されるものであり、図1〜図4に示すように、薬液が収容された薬液容器1と、これを下方から支持する装置本体2と、装置をリムに吊り掛けるための吊掛部材3とを有している。また、装置本体2の内部には、薬液容器1から流れ出た薬液を装置本体2の底面へと供給する薬液排出機構4が配置されている。この薬液排出機構4は、後述するように、上部材と下部材とで構成されている。以下、上述した各部材をさらに詳細に説明する。
【0021】
図3に示すように、薬液容器1は、透明のドーム状に形成され、下面に排出口11を有している。そして、この排出口11には、キャップ13が取り付けられている。このキャップ13は、環状の本体部と、その中央の穴を塞ぐ薄膜部(図示省略)とで構成されており、使用に際しては、薄膜部を破断させて薬液を排出させる。薬液容器1に収容される薬液は、芳香及び便器の洗浄を行うためのものであり、例えば、25℃において80〜500mPa・s、5℃において200〜2000mPa・s、好ましくは、25℃において120〜300mPa・s、5℃において300〜1200mPa・sの粘度を有する薬液とすることができる。
【0022】
図5は装置本体の平面図、図6は図5のA−A線断面図である。図5及び図6に示すように、装置本体2は、薬液容器1を支持するカップ状の基台20と、この基台20の底面を構成しリム側に延びる支持プレート(支持部材)21とで構成されている。基台20は、平面視楕円状に形成され、その周囲を壁体22で囲まれている。壁体22のうち、長手方向の一辺は切り欠かれて開放されており、この開放部分231から支持プレート21が延びている。
【0023】
また、基台20の中央には、上方へ延びる支柱24が取り付けられており、この支柱24と後述するカバー部材411との間の空間に、吊掛部材3が上下動可能に取り付けられる。吊掛部材3は、弾性変形可能に2箇所で折り曲げられた帯状に形成されており、初期状態では、図1のように折り畳まれている。また、吊掛部材3は、上下動可能に構成されているため、装置とリムとが干渉しないように、リムに対する薬液容器1及び装置本体2の高さを調整することができる。また、図5に示すように、基台20には、台形状の貫通孔201が形成されている。貫通孔201は、後述する薬液排出機構4における薬液の流出孔428の直下の近傍に配置されている。また、基台20上には、貫通孔201を始点として、リム側に傾斜して延びる一対の遮壁202が形成されている。両遮壁202は、リム側に向かって互いに離れるように、裾広がりに延びている。また、貫通孔201の可動部212側の辺にも遮壁203が形成されている。これにより、3つの遮壁202,203が、貫通孔201と、流出孔428の直下の位置とを仕切るように配置されている。
【0024】
次に、支持プレート21についてさらに詳細に説明する。図5及び図6に示すように、支持プレート21は、基台20の底部を構成しリム側に突出する基部211を有し、この基部211の幅方向の両端にリム側へ延びる一対の弾性部213が接続されている。弾性部213は、弾性変形可能であり、上方に向けて湾曲している。そして、この弾性部213の端部には、便器の内壁面に当接可能な可動部212が接続されている。この構成により、可動部212は、弾性部213の弾性変形によって、基部211に対する傾斜角度を変更できるようになっている。また、両弾性部213の間には、貫通孔214が形成されており、この貫通孔214の基部211側から矩形状の延出部215が延びている。なお、基部211、弾性部213、延出部215、及び可動部212は、樹脂などで一体的に形成されており、図5に示すように、支持プレート21に対して、リム側に凸のU字型の孔を施すことで、弾性部213、延出部215、及び貫通孔214を一度に形成することができる。
【0025】
また、基部211は、可動部212側に向かって約6度で下方に傾斜しており、後述するように、薬液排出機構4から排出された薬液がリム側へ流れやすいようにしている。基部211の傾斜角度αは、これ以外に設定することも可能であり、例えば、0〜45度にすることができ、3〜30度であることが好ましい。また、初期状態では、図6に示すように、可動部212は基部211に対して、約30°の傾斜角度βで上方に傾斜しており、この状態から弾性部の弾性変形によって、基部211に対し約0〜90°程度の範囲で傾斜が可能となっている。
【0026】
続いて、薬液排出機構4について説明する。図2〜図4に示すように、薬液排出機構4は、薬液容器1と支持プレート21との間に配置されており、上側に配置される上部材41と、下側に配置される下部材42とで構成されている。上部材41は、平面視楕円型の筒状に形成されており、下方が開放している。一方、図8に示すように下部材42は、平面視楕円状の板状部421と、その周囲に上下方向に延びるように形成された低い壁部材423とで構成されており、上部材41の下部開口を塞ぐように配置される。そして、上部材41と下部材42とが組み合わされることで、両者の間には、薬液を保持する緩衝空間45が形成される(図2参照)。以下、上部材41及び下部材42についてさらに詳細に説明する。
【0027】
まず、上部材41について説明する。図7は上部材の断面図(a)、正面図(b)、及び平面図(c)である。同図に示すように、上部材41の側面には、上方に延びるレール状のカバー部材411が取り付けられており、このカバー部材411は、上述した通り、支柱24に当接し、吊掛部材3を収容する空間を形成する。また、上部材41の上面中央部には、先端が斜めに切りかかれて鋭利な円筒状の連通管412が設けられるとともに、上面の端部には合計4つの空気流出孔413が形成されている。連通管412は、上述した薬液容器1のキャップ13に突き刺され、薄膜部を破断させる役割を果たす。また、連通管412の周縁には、U字状の溝417が形成されており、この溝417にキャップ13が嵌るようになっている。一方、連通管412の内部底面には、下部材42側へ延びる円筒状の固定管414と、その近傍に配置された3個の連通孔415とが形成されている。そして、これら連通孔415と、上述した空気流出孔413とは、緩衝空間45と連通している。なお、連通孔415が複数個形成されている場合、複数の連通孔415のうち、最も大きい連通孔415の開口面積が0.6〜1.8mm2以上とすることが好ましい。
【0028】
続いて、下部材42について図8及び図9も合わせて説明する。図8は下部材の断面図(a)、正面図(b)、及び底面図(c)であり、図9は下部材の一部斜視図(a)及びそのB−B線断面図(b)ある。まず、図8に示すように、下部材42の中央には、上部材41の固定管414に嵌合する円筒状の案内管424と、その周囲を囲むように設けられた円形の固定壁425とが設けられている。そして、案内管424と固定壁425との間の隙間には、上述した固定管414が嵌るようになっている。案内管424の上部開口は、斜めに切り取られた形状となっており、その開口の低い側から案内管424の外周面に沿って上下方向に延びるV字状の案内溝426が形成されている。ここで、図8及び図9に示すように、案内管424は固定管414の内部に嵌っているため、固定管414の内壁面と、案内溝426とで薬液の通路、つまり案内路が形成される。また、案内管424と固定壁425との隙間の底面と固定管414の下端部との隙間にも薬液が通過する空間、つまり延長路427が形成される。より詳細に説明すると、上記隙間の底面においては、案内溝426の両側の各約90度が薬液の延長路427を構成するとともに、案内溝426とは反対側には、約180度に亘る半円形の流出孔428が形成されている。そして、延長路427を通過した薬液が流出孔428から支持プレート21側へ流れ出るようになっている。なお、各延長路427の容積は、0.05〜0.3mm3であることが好ましく、0.07〜0.15mm3であることがさらに好ましい。また、延長路427の断面積は、0.02〜0.1mm2であることが好ましく、0.03〜0.05mm2であることがさらに好ましい。
【0029】
図8に示すように、下部材42の下面には、上述した流出孔428の両端をと接触する板状の突条部43が設けられている。より詳細には、この突条部43は、流出孔428の両端を結ぶ基板431と、この基板431の両端から延びる一対の延長部432とで形成されている。そして、各延長部432は、互いに離間するように、可動部212側へ斜め方向に延びている(図2参照)。また、突条部43の上下方向の長さは、例えば、3〜10mmにすることができるが、図2に示すように、突条部43の下端部は、装置本体2の底面に接触していることが好ましい。さらに、図9に示すように、突条部43には、下向きに延びる複数の溝(排出促進部)が形成されている。このように突条部43に溝を形成すると、薬液が突条部43に保持されやすくなり、より多くの薬液を支持プレート21側へスムーズに供給することができる。なお、溝の深さは、例えば、0.15〜0.3mmにすることができ、溝の幅は0.4〜0.8mmにすることができる。
【0030】
次に、上記のように構成された薬液供給装置の使用方法について図10も参照しつつ説明する。図10は薬液供給装置の取り付け状態を示す側面図である。まず、薬液容器1を上部材41上に配置する。これにより、薬液容器1のキャップ13に連通管412が突き刺さり、薬液容器1が固定される。続いて、この装置を便器のリムに取り付ける際には、吊掛部材3を、支柱24から引き出して高さを調整しつつ、図1の状態からコ字状に押し広げる。そして、図10に示すように、リムRを挟むように配置する。このとき、可動部212は、便器の内壁面に当接するのであるが、基部211に対して揺動可能となっているため、基部211と便器内壁面Sとの距離に応じて、傾斜する。こうして、基部211と便器内壁面Sとの隙間は埋められる。その結果、基部211に流れ出た薬液を効率よくさらって、便器へ流すことができるため、便器の形状にかかわらず、優れた洗浄効果を得ることができる。
【0031】
続いて、薬液の流れについて説明する。連通管412によりキャップ13の薄膜部が破断されると、薬液は、薬液容器1から薬液排出機構4へと流れ出て、一部は連通管412及び連通孔415を介して緩衝空間45内に流れ込む。一方、残りの薬液は、図9に示すように、案内溝426を通過して下方へ流れた後、延長路427及び流出孔428を介して下部材42の下面側に流れ出る。そして、この薬液は、突条部43を伝って下方へ移動し、支持プレート21上へ移る。また、薬液容器1から案内溝426へ薬液が排出されると、薬液の排出に伴って薬液容器1内は負圧になる。これに伴って、緩衝空間45内の薬液及び空気は、連通孔415を介して薬液容器1内へ流入していく。こうして、薬液や空気が薬液容器1内に流れ込むと、薬液容器1内の薬液が押し出され、案内溝426へと流出していく。
【0032】
上記のように装置が設置された後、便器内に水が流されると、流された水は、図10に示すように、リムRの内側から便器内壁面Sを伝い、可動部212によって基部211側へ案内される(矢印X)。そして、基部211と可動部212との間の延出部215に貯まった薬液をさらいつつ、便器へと流れていく。こうして、薬液は流水とともに、便器内壁面Sに供給され、便器の清浄が行われる。なお、支持プレート21上に流れ込む水が薬液排出機構4を逆流して薬液容器1内に入り込むおそれもあるが、これについては次のように対処される。すなわち、本実施形態に係る装置では、薬液は、案内溝426及び延長路427を介して支持プレート21上に流れ出る。特に、延長路427は水平に延びているため、突条部43を介して上方に流れた水は、一旦水平に延びる延長路427を通過した後、さらに垂直に延びる案内溝426を通過しなければ、薬液容器1には到達しない。このように、この装置では、支持プレート21から薬液容器1に至る垂直方向の経路の中に水平に延びる経路を配置しているので、水の進入を防止することができる。
【0033】
また、貫通孔201は、次のような役割も果たす。例えば、装置がリムに対して傾いて取り付けられた場合、薬液が支持プレート21上でリムRとは反対側に流れたとしても、この薬液は貫通孔201から装置外部へ排出される。つまり、薬液が便器に流れるため、流水に接触させることができる。したがって、所望の角度で装置をリムに対して取り付けられていない場合であっても、薬液を流水に接触させることができ、所望の芳香、洗浄効果を得ることができる。また、流水が装置本体2内に流入しない場合であっても、薬液を貫通孔201を介して便器に流出させることができる。
【0034】
また、薬液が支持プレート21上に供給されても長時間流水がなければ、薬液が支持プレート21上で固まるおそれがある。この場合、上記のように、装置本体2の底面に貫通孔201が形成されていると、この貫通孔201を介して薬液を外部に排出することも可能となり、支持プレート21上で固まるのを防止することができる。
【0035】
また流出孔428の直下の位置と貫通孔201との間に遮壁203を設けているため、遮壁203を越えた薬液のみが貫通孔201から流れ出すため、装置が傾いていたとしても、ある程度の薬液は支持プレート21上に残ることになる。よって、薬液が過度に貫通孔201から排出されるのを防止することができ、流水によって支持プレート21上の薬液がさらわれるようになる。なお、薬液の外部への排出は、支持プレート21上に形成された貫通孔214によっても同様に行われ、同様の効果を得ることができる。
【0036】
以上のように本実施形態によれば、弾性部213の弾性変形により、可動部212の角度が変更可能であることから、取り付け対象となる便器の形状に関わらず、可動部212を便器内壁面に当接させることができる。すなわち、可動部212は、弾性部213の弾性変形により、基部211に対する傾斜角度が変化するので、例えば、便器内壁面と基部との距離が短いと、可動部212が便器内壁面に押圧されることで、傾斜が大きくなりつつ便器内壁面と当接する。したがって、種々の形状の便器に対して、基部211と便器内壁面と間に隙間を形成することなく、可動部212が便器と接触するので、便器内壁面を伝う流水を確実に基部211側へ導くことができる。
【0037】
また、上記薬液供給装置においては、弾性部213が弾性変形可能で、且つ湾曲した形状となっているため、弾性部213は弾性力を有する。そのため、輸送時に可動部212が基部211側に折り畳まれていたとしても、弾性力により初期状態に復帰しやすく、上述したように、便器形状に適合するように可動部212が傾斜するという効果を得ることができる。
【0038】
また、基部211から可動部212側へ向かって貫通孔214内へ延びる延出部215が設けられているため、延出部215にも薬液を保持することが可能となる。そのため、支持プレート21上に流れ込む流水によって薬液をさらいやすくなり、薬液を便器内に行き渡らせることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記各実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0040】
例えば、弾性部213は、弾性変形可能で、上方に向かって湾曲する形状であれば、特には限定されない。例えば、図11に示す態様がある。図11(a)に示すように、幅方向に延びる1つの貫通孔214を形成し、その両端に弾性部213を形成することができる。また、図11(b)に示すように、支持プレート21にH字型の孔214を形成することで、支持プレート21の両端に一対の弾性部213を形成するとともに、基部211から可動部212へ延びる延出部215を形成することができる。図11(c)に示す態様では、支持プレート21の幅方向に並ぶ2つの貫通孔214を形成し、これによって、基部211の両端部及び中央部に、3つの弾性部213を形成している。また、図11(d)の態様では、支持プレート21の幅方向に並ぶ2つのU字型の孔214を形成し、これによって、基部211の両端部及び中央部に、3つの弾性部213を形成している。また、基部211から延びる2つの延出部215を形成している。
【0041】
また、薬液容器1、薬液排出機構4の構成は、上記実施形態に限定されるものではなく、薬液容器1から支持プレート21に対して薬液を供給できるものであれば、特には限定されない。また、支持プレート21は、必ずしもプレート状に形成していなくてもよく、薬液を受ける面が形成されていればよい。
【符号の説明】
【0042】
1 薬液容器
21 支持プレート(支持部材)
211 基部
212 可動部
213 弾性部
214 貫通孔
215 延出部
3 吊掛部材
4 薬液排出機構
【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器のリムに取り付けられる薬液供給装置であって、
薬液を収容し、当該薬液の排出口を有する薬液容器と、
前記排出口に接続され、前記薬液容器内の薬液を外部へと導く薬液排出機構と、
前記薬液排出機構よりも下方に配置される支持部材と、
前記薬液容器、薬剤排出機構、及び前記支持部材を便器のリムに吊り掛けるための吊掛部材と、を備え、
前記支持部材は、
前記薬液排出機構を経た薬液を受ける基部と、
前記基部においてリムの内壁面と対向する側に連接される少なくとも1つの弾性部と、
前記弾性部に連接され、リムの内壁面に向かって延びる可動部と、
を備えている、薬液供給装置。
【請求項2】
前記弾性部が複数形成されており、
幅方向に隣接する前記弾性部の間に、貫通孔が形成されている、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記基部から前記可動部側へ向かって前記貫通孔内へ延びる延出部をさらに備えている、請求項2に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記支持部材に、前記可動部側に凸のU字型の孔が施されることで、前記弾性部、貫通孔、及び延出部が形成される、請求項3に記載の薬液供給装置。
【請求項5】
前記弾性部は、前記基部に対して上方に向かって傾斜するように湾曲している、請求項1から4のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項6】
前記薬液容器が、フラッシュ時の流水の経路に配置されないように便器のリムに取り付けられる、請求項1から5のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項7】
前記流出孔に、フラッシュ時の流水が到達しないように、便器のリムに取り付けられる、請求項1から5のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項1】
便器のリムに取り付けられる薬液供給装置であって、
薬液を収容し、当該薬液の排出口を有する薬液容器と、
前記排出口に接続され、前記薬液容器内の薬液を外部へと導く薬液排出機構と、
前記薬液排出機構よりも下方に配置される支持部材と、
前記薬液容器、薬剤排出機構、及び前記支持部材を便器のリムに吊り掛けるための吊掛部材と、を備え、
前記支持部材は、
前記薬液排出機構を経た薬液を受ける基部と、
前記基部においてリムの内壁面と対向する側に連接される少なくとも1つの弾性部と、
前記弾性部に連接され、リムの内壁面に向かって延びる可動部と、
を備えている、薬液供給装置。
【請求項2】
前記弾性部が複数形成されており、
幅方向に隣接する前記弾性部の間に、貫通孔が形成されている、請求項1に記載の薬液供給装置。
【請求項3】
前記基部から前記可動部側へ向かって前記貫通孔内へ延びる延出部をさらに備えている、請求項2に記載の薬液供給装置。
【請求項4】
前記支持部材に、前記可動部側に凸のU字型の孔が施されることで、前記弾性部、貫通孔、及び延出部が形成される、請求項3に記載の薬液供給装置。
【請求項5】
前記弾性部は、前記基部に対して上方に向かって傾斜するように湾曲している、請求項1から4のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項6】
前記薬液容器が、フラッシュ時の流水の経路に配置されないように便器のリムに取り付けられる、請求項1から5のいずれかに記載の薬液供給装置。
【請求項7】
前記流出孔に、フラッシュ時の流水が到達しないように、便器のリムに取り付けられる、請求項1から5のいずれかに記載の薬液供給装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2010−216192(P2010−216192A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67120(P2009−67120)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】
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