説明

薬液注出器

【課題】水洗トイレの手洗い付きタンク内に薬液を安定的に注出することができ、簡易な構造となる薬液注出器を提案する。
【解決手段】本発明の薬液注出器は、容器本体10の充填空間Mにつながる開口21aを有するホルダー20に、その開口21aに保持されて充填空間M内の薬液を浸透させて排出する多孔質体30を設け、ホルダー20を支持するベース50に、多孔質体30の直下に配される吸水体60を設け、ベース50の外側周壁53に、吸水体60に向けて手洗いカランから放水される水を導入する窓孔53aを設けるとともに、ホルダー20に設けた係合部24bを支持して多孔質体30の排出側端部30aと吸水体60との間に隙間gをあける被係合部53dを設けることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレの手洗い付きタンクの手洗い部に載置され、手洗い部の上方に設けた手洗いカランからの給水に伴って、各種の薬液をタンク内に供給するトイレ用の薬液注出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、水洗トイレの手洗い付きタンクの手洗い部に載置されて、タンク内の水に芳香剤や洗浄剤、殺菌剤等の薬液を供給する各種の薬液注出器が使用されている。このような薬液注出器としては、例えば特許文献1に記載のように、薬液収納箱に挿通される棒部にフロートを設けるとともに、棒部に薬液収納箱内の薬液を微少量収容する凹部を設け、手洗いカランから放出する水によって上下動するフロートの作用にて、上昇時に凹部内に薬液を収容し、下降時に凹部内の薬液をその水に流れ込ませるものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−280132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで上述した薬液注出器においては、手洗いカランから水が放出される毎に微少量の薬液を正確に供給できるものの、フロート等を設けたことによる部品点数の増加、構造の複雑化が避けられない。また、安定的に動作させるためには、構成部材の寸法精度の厳格な管理が必要となる。このため、フロート等の可動機構に頼らずとも薬液の注出を安定的に行うことができて、より簡易な構造となる新たな薬液注出器の出現が強く望まれていた。
【0005】
本発明の課題は、各種の薬液を、水洗トイレの手洗い付きタンク内に供給するトイレ用の薬液注出器に関し、簡単な構造で、しかも薬液を安定的に注出することができる新たな薬液注出器を提案するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、薬液の充填空間を備える容器本体と、該容器本体の口部に着脱自在に取り付けられ該充填空間につながる開口を有するホルダーと、該ホルダーを支持して該容器本体を倒立姿勢でもって保持するベースとを備え、該開口を通して注出する薬液を水洗トイレの手洗い付きタンクに供給する薬液注出器であって、
前記ホルダーは、前記開口に保持されて該充填空間内の薬液を浸透させて排出する多孔質体を有し、
前記ベースは、該多孔質体の直下に配される吸水体を有し、該吸水体を取り囲む外側周壁を備え、
該ベースの外側周壁に、該吸水体に向けて手洗いカランから放水される水を導入する窓孔を設けるとともに、該ホルダーに設けた係合部を支持して該多孔質体の排出側端部と該吸水体との間に隙間をあける被係合部を設けることを特徴とする薬液注出器である。
【0007】
前記ベースは、前記窓孔を前記外側周壁に沿って間隔をあけて複数個有し、該窓孔の相互間に、前記吸水体を下方から支持する複数個のリブを備えることが望ましい。
【0008】
前記窓孔は、前記吸水体の上面よりも下方側に位置する上端縁を備えることが望ましい。
【0009】
前記多孔質体の排出側端部を、前記ホルダーの開口面と同一面上に配置するとともに、該開口面に、該多孔質体の排出側端部を覆うシール材を貼着することが望ましい。なお貼着とは、接着剤やのり等によってシール材をホルダーに固着する接着の他、シール材に熱を加えて固着する溶着、融着も含む。
【0010】
前記多孔質体は、前記容器本体内の薬液注出に伴う液面の低下によって該液面から露出して薬液の交換時期を示す上方端部を有することが望ましい。
【0011】
前記ベースの外側周壁に、該吸水体の抜け出しを阻止する内向き凸部を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
薬液の充填空間につながる開口を有するホルダーに、薬液を浸透させて排出する多孔質体を設け、ホルダーを介して容器本体を倒立姿勢で保持するベースに、多孔質体の直下に配される吸水体、及び吸水体を取り囲む外側周壁を設け、この外側周壁に、吸水体に向けて手洗いカランから放水される水を導入する窓孔を設けるとともに、ホルダーに設けた係合部を支持して該多孔質体の排出側端部と吸水体との間に隙間をあける被係合部を設けたので、多孔質体から染み出す薬液は、排出側端部と吸水体との間で水滴となって1滴ずつ吸水体に浸透する。これにより、多孔質体から染み出した薬液が直接吸水体に染みこむことがなく、吸水体が薬液の注出量に影響を与えることがなくなる(吸水体の乾燥状態等の変動に伴い、薬液の注出量が変化することがなくなる)ので、常時、定量の薬液を容器本体から注出させることができる。また、窓孔を通してベース内に導入される水と多孔質体との接触は、吸水体によって阻止されて、水滴の形成に対する影響を有効に抑えることができるので、薬液を安定的に注出させることができる。
【0013】
ベースに、外側周壁に沿って間隔をあけた複数個の窓孔を設け、窓孔の相互間に、吸水体を下方から支持する複数個のリブを設ける場合は、多孔質体の排出側端部と吸水体との隙間を、ホルダーの係合部及びベースの被係合部との関係に加え、リブの高さでも変化させることができるので、薬液の種類に応じた隙間の調整を容易に行うことができる。
【0014】
窓孔の上端縁を、吸水体の上面よりも下方側に位置させる場合は、ベース内に導入される水と多孔質体との接触を、より確実に阻止することができるので、薬液をさらに安定的に注出することができる。
【0015】
多孔質体の排出側端部を、ホルダーの開口面と同一面上に配置して、この開口面にシール材を貼着する場合は、簡易な構造でありながら、流通時等の未使用状態での薬液の漏れ出しを有効に阻止することができる。
【0016】
多孔質体は、容器本体内の薬液注出に伴う液面の低下によって液面から露出して薬液の交換時期を示す上方端部を有するものとする場合は、使用者は、この上方端部の露出にて薬液の交換時期を前もって知ることができるので使い勝手がよくなる。
【0017】
ベースの外側周壁に、吸水体の抜け出しを阻止する内向き凸部を設ける場合は、例えば容器本体内の薬液の残量が減って新たな容器本体に交換する際に、吸水体が脱落するおそれがなく、交換作業が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に従う薬液注出器の流通時の形態を示す、(a)は側面視での断面図であり、(b)は(a)に示すA−Aに沿う断面図である。
【図2】図1(b)に示す矢印Xからの矢視図である。
【図3】図1(b)に示すB−Bに沿う断面図である。
【図4】図1に示す薬液注出器の実施の形態を示す、上下を反転させた倒立姿勢で手洗い付きタンクに載置された断面図である。
【図5】図4に示す状態から薬液の注出を継続させて、多孔質体の上方端部が薬液の液面から露出している状態を示す断面図である。
【図6】本発明に従う他の薬液注出器につき、(a)は部分側面図であり、(b)は下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明をより具体的に説明する。
図1は、本発明に従う薬液注出器の流通時の形態を示す、(a)は側面視での断面図であり、(b)は(a)に示すA−Aに沿う断面図であって、図2は、図1(b)に示す矢印Xからの矢視図であって、図3は、図1(b)に示すB−Bに沿う断面図であって、図4は、図1に示す薬液注出器の実施の形態を示す、上下を反転させた倒立姿勢で手洗い付きタンクに載置された断面図であって、図5は、図4に示す状態から薬液の注出を継続させて、多孔質体の上方端部が薬液の液面から露出している状態を示す断面図である。
【0020】
図1(a)において、10は容器本体である。図示の例で容器本体10は、外側に向けて凸状となり容器本体10の底壁をなす湾曲壁11と、湾曲壁11の縁部を取り囲み内側に傾斜しながら起立する周壁12と、肩部13を介して周壁12に一体連結する口部14とからなり、これらで区画形成される充填空間Mに、芳香剤、洗浄剤、殺菌剤等の各種の薬液を充填している。また、口部14の外面には、ねじやアンダーカットで形成される結合部14a(図示の例ではねじ)が設けられている。ここで容器本体10は、薬液の残量が視認できるように、透明又は半透明であることが好ましい。なお、容器本体10の一部を透明又は半透明にして、この部位を残量確認用窓部として用いてもよい。
【0021】
20は、口部14に着脱自在に取り付けられるホルダーである。図示の例でホルダー20は、口部14の開口を覆う蓋壁21と、蓋壁21の端縁を取り囲む内側周壁22と、内側周壁22の下端と一体連結して径方向外側に向けて延在する段部23と、段部23の外側端縁から口部14を取り囲んで垂下される外側周壁24とを備えている。外側周壁24の内面には、結合部14aに対応する被結合部24aが形成されている。また、段部23の内側端縁には、環状のシール壁25が設けられている。シール壁25は、口部14の内面に液密に当接していて、充填空間M内の薬液が口部14の周囲から漏れ出すことを防止している。
【0022】
蓋壁21には、その表裏を貫通して充填空間Mにつながる開口21aが形成されている。また、蓋壁21には、開口21aを取り囲んで充填空間Mに向けて延び、後述する多孔質体を嵌合保持する嵌合壁21bが設けられている。なお、嵌合壁21bで直接多孔質体を嵌合させてもよいが、図示のように周方向に間隔をあけて複数個設けられる嵌合リブ21cで嵌合するようにしてもよい。
【0023】
また、外側周壁24には、後述するベースに支持される係合部24bが設けられている。図示の例で係合部24bは、図1(a)、図2に示すように、外側周壁24の外面から外側に向けて突出する矩形状の凸部となっていて、周方向に均等配置で合計2個設けられている。
【0024】
30は、図示の例では嵌合リブ21cにて保持される棒状の多孔質体である。多孔質体30は、その内側に多数の孔を有し、容器本体10内の薬液を浸透させて開口21a側に位置する排出側端部30aから、浸透した薬液を注出することができる。多孔質体30は、例えばセラミックス等の粉体を成形して焼結したものを用いることができるが、スポンジやフェルト等も適用することが可能であり、使用目的に応じて適宜変更される。
【0025】
40は、薬液の未使用状態を維持するシール材である。シール材40を設けるに当たっては、図1に示すように、多孔質体30を、排出側端部30aがホルダー20の開口21aと同一面(蓋壁21の外側面)上に配されるように取り付けることが好ましい。これにより、シール材40と蓋壁21との間に隙間を生じさせることなく、シール材40を蓋壁21に確実に貼着できるので、充填空間M内を気密に維持することができる。なお、シール材40は、使用に際して取り外ししやすいように、その一部が蓋壁21からはみ出す形状にしておくことが好ましい。
【0026】
50は、ホルダー20を支持して容器本体10を倒立姿勢でもって手洗い付きタンクに載置するベースである。図1(a)に示すように、ベース50は、先端開口51aを有する先端筒体51と、段部52を介して先端筒体51に一体連結する外側周壁53とからなる。
【0027】
外側周壁53には、その表裏を貫く窓孔53aが形成されている。図示の例で窓孔53aは、図1(b)に示すように、周方向に間隔をおいて複数個(図示の例では、周方向に均等配置で合計4個)形成されている。また、外側周壁53の窓孔53aを形成した相互間には、図3に示すように、径方向内側に向けて先端筒体51の内面まで延びるリブ53bが、複数個(図示の例では、周方向に均等配置で合計4個)設けられている。また、図1(a)に示すように外側周壁53の内面には、径方向内側に向けて突出する内向きの凸部53cが少なくとも1つ設けられている。さらに、外側周壁53には、図2に示すように、ホルダー20の係合部24bに対応する被係合部53dが設けられている。被係合部53dは、図示の例では凹部となっている。
【0028】
60は、薬液や水等を浸透させることができる、例えば発泡材、高分子ポリマー等からなる円板状の吸水体である。図1に示す例で吸水体60は、外側周壁53の内側に、リブ53bと凸部53cとの間で抜け止め保持されている。
【0029】
上記のように構成される薬液注出器を使用するに当たっては、ホルダー20をベース50から取り外してシール材40を剥がしておき、図4に示すように、薬液注出器を、上下を反転させた倒立姿勢として、手洗いタンクTの上方に設けられる手洗いカランから放出される水をこのタンク内に導く導入口Hに、ベース50の先端筒体51を挿入させて、手洗いタンクT上に載置する。これにより、充填空間M内の薬液は、多孔質体30に浸透して、排出側端部30aから染み出す。ここで、ホルダー20は、係合部24bを被係合部53dに係合させて下方側から支持されて、排出側端部30aとその直下に位置する吸水体60との間には、隙間gを形成している。これにより、排出側端部30aから染み出した薬液は、図5に示すように水滴となって、1滴ずつ一定周期で落下して吸水体60に浸透する。
【0030】
そして、手洗いカランから給水を行うと、放出された水は図4の矢印に示すように、容器本体10の湾曲壁11を伝って流れ、窓孔53aからベース50内に導入される。導入された水は吸水体60の下面60aに接触しつつ流れ、吸水体60に浸透した薬液を伴って先端開口51aから排出されて、手洗いタンク内に薬液が供給される。
【0031】
なお、図4に示すように、窓孔53aの上端縁53eは、吸水体60の上面60bよりも下方側に位置することが好ましい。これにより、ベース50内に導入される水と多孔質体30の排出側端部30aとの接触が、より確実に防止できるので、薬液の水滴形成が所期した通りに維持されて、充填空間Mから安定的に注出される。
【0032】
また、排出側端部30aと吸水体60との隙間gは、ホルダー20の係合部24b及びベース50の被係合部53dとの関係に加え、リブ53bの高さでも変化させることができるので、薬液の種類に応じた隙間gの調整が容易に行えることとなる。
【0033】
薬液の注出が進むと、図5に示すようにその液面は低下し、多孔質体30の上方端部30bが露出する。この場合、多孔質体30の長さを薬液の種類に応じて変えておき(例えば、多孔質体30への浸透速度が速く、薬液が比較的速く排出される場合には長くしておく)、上方端部30bの露出時期を薬液の交換時期に合わせておくことで、使用者は、上方端部30bの露出をもって交換時期を前もって知ることができるので、使い勝手がよくなる。
【0034】
また、図1に示す先端筒体51に代えて、図6(a)、(b)に示すように、周方向に間隔をあける複数個の弾性片54(図示の例では、均等配置で合計4個)を設けてもよい。この場合、弾性片54を導入口Hよりも僅かに大きくしておき、弾性片54を撓ませて導入口Hに挿入することで、手洗いタンクT上に載置される薬液注出器を安定して保持できるので、使用中に誤って注出器を転倒させてしまうおそれを極力抑えることができる。
【0035】
なお、図示は省略するが、ホルダー20の嵌合壁21bには、蓋壁21付近に少なくとも1つの孔やスリット等を設けておくことが好ましい。これにより、内側周壁22と嵌合壁21bとの相互間に形成される環状空間の薬液も多孔質体30に浸透させることができるので、充填空間M内の薬液を無駄なく使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、薬液を水洗トイレの手洗い付きタンク内に安定的に注出することが可能であり、しかもその構造が簡単であって使い勝手もよい薬液注出器を提供することができる。
【符号の説明】
【0037】
10 容器本体
14 口部
20 ホルダー
21a 開口
24 外側周壁
24b 係合部
30 多孔質体
30a 排出側端部
30b 上方端部
40 シール材
50 ベース
53 外側周壁
53a 窓孔
53b リブ
53c 凸部
53d 被係合部
53e 上端縁
60 吸水体
M 充填空間
g 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液の充填空間を備える容器本体と、該容器本体の口部に着脱自在に取り付けられ該充填空間につながる開口を有するホルダーと、該ホルダーを支持して該容器本体を倒立姿勢でもって保持するベースとを備え、該開口を通して注出する薬液を水洗トイレの手洗い付きタンクに供給する薬液注出器であって、
前記ホルダーは、前記開口に保持されて該充填空間内の薬液を浸透させて排出する多孔質体を有し、
前記ベースは、該多孔質体の直下に配される吸水体を有し、該吸水体を取り囲む外側周壁を備え、
該ベースの外側周壁に、該吸水体に向けて手洗いカランから放水される水を導入する窓孔を設けるとともに、該ホルダーに設けた係合部を支持して該多孔質体の排出側端部と該吸水体との間に隙間をあける被係合部を設けることを特徴とする薬液注出器。
【請求項2】
前記ベースは、前記窓孔を前記外側周壁に沿って間隔をあけて複数個有し、該窓孔の相互間に、前記吸水体を下方から支持する複数個のリブを備える請求項1に記載の薬液注出器。
【請求項3】
前記窓孔は、前記吸水体の上面よりも下方側に位置する上端縁を備える請求項1又は2に記載の薬液注出器。
【請求項4】
前記多孔質体の排出側端部を、前記ホルダーの開口面と同一面上に配置するとともに、該開口面に、該多孔質体の排出側端部を覆うシール材を貼着してなる請求項1〜3の何れかに記載の薬液注出器。
【請求項5】
前記多孔質体は、前記容器本体内の薬液注出に伴う液面の低下によって該液面から露出して薬液の交換時期を示す上方端部を有する請求項1〜4の何れかに記載の薬液注出器。
【請求項6】
前記外側周壁に、該吸水体の抜け出しを阻止する内向き凸部を設けてなる請求項1〜5の何れかに記載の薬液注出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−28960(P2013−28960A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165932(P2011−165932)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】