説明

薬理学的活性物質またはその他の物質の二相放出用薄膜製剤

【課題】含有されている物質を液体環境に二相放出(biphasic release)するためのポリマー基材の薄膜製剤の提供。
【解決手段】薄膜製剤は、少なくとも2枚のポリマーマトリックス層を有しており、これらのポリマーマトリックス層は、そのポリマー組成の点で相違しており、これにより1枚の層からの放出は迅速に生じ、また少なくとも1枚の別の層からの放出が緩慢に生じる製剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そこに含有されている物質を液体環境に二相放出(biphasic release)することができる薄膜形態製剤に関する。本発明はまた、このような製剤の製造方法、および物質、特に医薬のヒトまたは動物体内の体液への放出におけるその使用を包含する。
【0002】
活性成分または構成成分の環境メジウムへの標的を定めた送達または放出に基づく施用は、或る場合、例えばデポット医薬製剤から医薬を投与する場合、ある期間にわたり一定であるが、低い次回用量または維持用量に先立つ出発時点で放出される高い初期用量に依存する。このような放出は、高い活性成分レベルを体液内に非常に迅速に確立する効果を有し、これにより維持用量の一定投与により所望のレベルを維持することができる。
【0003】
迅速放出を達成するためには、医薬などの製剤または組成物は、容積に対して広い表面積を有するようにデザインされなければならない。このことは、拡散経路ができるだけ短く、また活性成分の放出が非常に短い時間で生じることができることを意味する。さらに、このような放出系は、充分の強度および取り扱い易さを確保するために、できるだけコンパクトであるべきである。
溶解、乳化または懸濁形態で活性成分を含有する薄膜形態の剤型は、薄い層厚およびそれに対応した短い拡散経路の観点から、格別に短い放出時間を可能にし、これにより初期投与量の迅速な放出を可能にする。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性成分の放出は、その後の薄膜形態のマトリックス外への拡散により、または薄膜層の溶解または分解により生じさせることができ、これにより活性成分は環境内に導入される。
そのマトリックスが親水性ポリマーを基材とする活性成分含有薄膜は、すでに知られている。これらの薄膜形態の剤型はまた、当該薄膜の物理化学的パラメーターおよび味または化学的安定性を調整するために、その他の成分または助剤を含有することができる。この形式の薄膜は一般に、親水性ポリマーの活性成分−および助剤−含有溶液を不活性加工シート上にコーティングすることによって製造される。次いで溶媒を乾燥により除去すると、活性成分含有マトリックスが薄膜として後に残される。
【0005】
開示されているように、単相剤型(single-phase dose form)のみでも活性成分を迅速放出させることはできるが、この場合、初期用量の送達は通常、望ましくない急速な効果の低下を伴う。さらにまた、過剰投与の危険性、または−濃度依存性の排泄が大きいことを特徴とする活性成分の場合−用量計画が無駄になる危険性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、単相剤型の使用に関連して生じる欠点を回避するという目的に基づいている。本発明の目的は特に、成分を液体メジウムに二相放出することができる、詳細には、最初に物質が高い初期用量で環境に放出され、引続いて他の物質がより遅い放出速度で送達されるような様相で二相放出することができる薄膜形態放出系を提供することにある。
詳細に説明すると、この形式の放出系は、ヒトまたは動物体内または体外に医薬を放出することができなければならない。この望ましい放出特性に加えて、この形式の放出系はまた、取り扱いを容易にするために、適度の機械的安定性を有していなければならない。本発明の目的はまた、できるだけ簡単であり、費用効率が高く、また種々の変更に適応することができる製造方法を提示することにある。
【0007】
驚くべきことに、請求項1に記載の薄膜形態のポリマー基材製剤および本発明のさらなる有用な態様を具現する請求項2〜12に記載の製剤により、この目的が達成される。
本発明による薄膜形態製剤は、これらが、構造上ポリマーが異なっている少なくとも2枚のポリマーマトリックス層を包含することを特徴とする。このポリマー成分の相違は、活性成分または別の物質の放出が、層の1枚から迅速に生じ、また少なくとも1枚の他層から緩慢に生じる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、本発明による薄膜形態製剤(「ウエファー」)からのカフェインの水中への放出特性を示したグラフである。
【0009】
相違する薄膜層における相違する放出速度は、迅速放出性層のマトリックスを親水性ポリマーまたは水への高度の溶解性を有するポリマー、またはこれらの性質を有するポリマー混合物から構成し、および緩慢放出性層(1枚または2枚以上)のマトリックスをほとんど親水性でないポリマー、または水に対してほとんど不溶性であるか、または不溶性であるポリマー混合物から構成することによって、好ましく達成される。この結果として、上記第一層は水性環境において、瞬間放出製剤(flash release formulation)の様相で急速に溶解する。
【0010】
これに対して、緩慢放出性層は、その特殊なポリマー組成により、水系に対して比較的不活性であり、またその結果として、緩慢にのみ溶解する。従って、その層厚が薄いにもかかわらず、低い放出速度しか達成しない。二相放出特性を備えた放出系は、この方式を可能にし、また薄い層厚をもって達成することができ、従って例えば、製造および取り扱い上の利点を有する。
達成可能な放出速度の観点から、本発明の特に好適な態様は、迅速放出性層の溶解速度が、この層の少なくとも10cmの面積が15分間よりも短い時間、好ましくは5分間よりも短い時間、特に好ましくは1分間よりも短い時間で、生理学的液体中(またはその人工的模擬液体中)に溶解するような速度であるように調節されている。
【0011】
本発明のもう一つの特に好適な態様において、緩慢放出性層の溶解速度は、この層の10cmを超えない面積の生理学的液体(またはその人工的模擬液体)中における溶解に要する時間が、少なくとも15分間、好ましくは少なくとも60分間、特に好ましくは少なくとも120分間であるように調節されている。
迅速放出性層の特に適当なポリマー成分は、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、上記ポリマーのコポリマー、およびゼラチン、アルギネートおよびその他の天然または部分的合成ポリマーを包含する群から選択されるポリマーまたはポリマー混合物である。当業者にとって公知である種々の別種の合成、部分的合成および天然産出ポリマーもまた使用することができる。
【0012】
特に好ましい薄膜形態製剤は、迅速放出性層のマトリックスがポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール含有ポリマー混合物から構成されている製剤である。
もう一つの好適態様において、迅速放出性層のマトリックスは、セルロースエーテル、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはセルロースエーテルの混合物から構成されている。
緩慢放出性層(1枚または2枚以上)のマトリックスの構成に好ましく用いられるポリマーは、セルロースエーテル、好ましくはエチルセルロース、およびポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)および上記ポリマーの誘導体およびコポリマーを包含する群から選択されるポリマーである。
【0013】
水性メジウム中におけるポリマー薄膜の低溶解性または不溶性、もしくはその耐水性の構成は、その製剤が適当である場合、小さい拡散係数で拡散することによって活性成分の送達が緩慢にのみ生じる結果をもたらす。これは活性成分の緩慢な送達をもたらす。
緩慢放出性層(1枚または2枚以上)の溶解性または放出速度を減少させるために、ポリマー層は熱処理に付すことができる。すなわち、一例として、高度に加水分解されているポリビニルアルコールは、このポリマーが熱処理によって不溶化にされている場合、不溶性の緩慢放出性層用の基材ポリマーとして使用することができる。
【0014】
さらに、その他の調剤技術手法、例えば活性成分の粒子サイズを増大させること、活性成分粒子をコーティングすることに、または微小カプセル化することによって、活性成分の放出を遅延させることもできる。この種の方法はまた、薬理学的活性に関係なく、構成成分の遅延放出に用いることもできる。
本発明による薄膜形態製剤は、好ましくは5〜500μmの範囲、特に好ましくは10〜100μmの範囲の厚みを有する。薄膜ポリマーマトリックス中に存在する活性成分(1種または2種以上)は、真正溶液(分子分散液)、コロイド溶液、エマルジヨンまたは懸濁液の形態で、少なくとも2枚の層中に分布させる。
【0015】
例えば、製剤の安定性を増加させる、放出速度を調整する、またはヒトまたは動物の体に対する活性成分の吸収または浸透を改善することができる助剤または添加剤をさらに存在させることができる。助剤または添加剤には、中でも、崩壊促進剤、可塑剤、湿潤剤、構造形成剤および組織修飾剤が包含される。
本発明による薄膜形態製剤の好適態様は、少なくとも1枚の層に薬理学的活性成分または複数種のこのような活性成分を含有する。第二の層、または−多層構
造の場合−さらなる層は、発香剤、フレーバー、芳香剤またはその他の成分、または同様の医薬を含有することができる。この医薬は、第一層中の医薬と同一であることもできる。相違する医薬またはその他の成分との組み合わせもまた、有用であることを証明することができる。
【0016】
活性成分(または複数種の活性成分)を初期には迅速に、その後は緩慢に、2種の連続的な相により放出する可能性に加えて、複数の層の形で、活性成分を含有する異なる部分に空間的に分離することはまた、別の理由で有利である。すなわち、相互に不適合性である2種または3種以上の活性成分を層を分けることにより組合わせることができる。活性成分または複数種の活性成分をまた、追加的に存在する発香剤、芳香剤などと空間的に分離するさらなる可能性がある。この方式で、いくつかの不適合性を回避することができ、また本発明による薄膜形態の多層製剤により一緒に投与することができる活性成分の相互のおよび別種の構成成分との新しい種類の組み合わせが可能になる。
【0017】
本発明による薄膜形態製剤は原則的に、初期の迅速放出および引続く緩慢な放出を特徴とする二相方式により、1種または2種以上の物質を液体環境に放出する場合に常時的に適している。本発明による放出系は、構成成分、特に薬理学的活性成分の体液への放出に使用すると好ましい。この目的の場合、薄膜形態製剤は、ヒトまたは動物生物の体開口部、体腔または身体内部に投与される。周囲の体液(例えば、唾液、胃液)の影響により、各層に異なる速度の予め定められた溶解が生じ、医薬活性成分またはその他の構成成分の迅速放出または緩慢放出が得られる。
【0018】
薄膜形態の製剤がまた、体液の合成模擬液体に対する物質の送達に適することは、勿論のことである。医薬を二相放出特性で体液に送達する能力を有することから、本発明による薄膜製剤は広範な病理学的症状の医学的治療または予防に有利に使用することができる。
二相放出性を備えた薄膜形態製剤の製造には、本発明により提案される種々の変法を用いることができる。好適製造方法は、先ず、迅速溶解性で放出性の層の製造に適するポリマーまたはポリマー混合物を含有する薄膜形成性溶液を製造し、ここに放出させる活性成分またはその他の成分を添加する方法である。必要な場合、さらなる助剤または添加剤を添加することもできる。
【0019】
この方法で得られる溶液(この溶液は引続く処理に適する粘度を有していなければならない)を次いで、ナイフまたはローラー施用または噴霧処理により不活性基体上にコーティングし、次いで乾燥させ、溶媒を除去し、薄膜(以下の記載において、各場合、最初に形成される層をまた、「最初の薄膜」(“initial film”)と称する)を形成する。適当な不活性基体は、当業者に公知であり、例えば加工したシートまたは金属片の形態であることができる。連続コーティング方法およびバッチ式コーティング方法の両方が可能であり、原則的に任意の不活性表面上へのコーティングが可能である。
【0020】
緩慢放出性層の場合、適当なポリマーまたはポリマー混合物および活性成分および/または構成成分、ならびに所望により、助剤または添加剤を含有する溶液を、同様の方法で製造する。溶媒の選択は、これらが最初の層を攻撃しないものでなければならないという事実を考慮しなければならない。この溶液は、上記コーティング方法の一つによって、または印刷によって製造されている最初の薄膜上に施用し、次いで乾燥させ、これにより薄膜構造体または積層体を得る。対応する方法で、さらなる緩慢放出性層を付加することもできる。同様に、不活性担体上に第二の層または後続層を形成し、次いで最初の層上に積層することもできる。
【0021】
製造方法の特に有利な変法において、処理工程の順序を変更し、先ず、僅かに溶解性の、または緩慢放出性のポリマー溶液を「最初の層」として不活性担体に施用する。この層を乾燥させた後、易溶性または迅速放出性の薄膜をそこに施用する。この方法は、例えば僅かに溶解性の、または不溶性の層用の基礎ポリマーとして高度に加水分解されたポリビニルアルコールを使用することを可能にし、この場合、このポリマーは熱処理によって不溶化される。第二の(水溶性で迅速放出性の)薄膜は、例えば部分的に加水分解されたポリビニルアルコールから構成することができ、これを熱処理した(最初の)薄膜上に積層する。
【0022】
本発明による製造方法のさらなる変法は、ナイフまたはローラー施用によるか、または噴霧または押出し加工によってポリマー溶融物を不活性基体上にコーティングし、次いで乾燥および/または冷却させることによって最初の薄膜を形成する方法を提供する。次いで、この最初の層上に最初の層を攻撃または溶解しない溶媒を用いて、上記のとおりの溶液から第二のまたはさらなる層を施用する。
本発明を以下の例により詳細に説明する。
【0023】

例1
部分的に加水分解された低粘度のポリビニルアルコール(モビオール8−88(Mowiol)(登録商品名)、これはClariantにより供給される)を、熱水中に溶解する。当業者に公知の可塑剤、崩壊促進剤、湿潤剤および類似の添加剤などの適当な助剤および活性成分を添加することによって粘性組成物をそこから形成し、次いで不活性基体上にコーティングする。
乾燥させると、取り扱いやすく、水に容易に溶解し、また下記成分を含有する薄膜(「最初の薄膜」)が得られる:
モビオール8−88(登録商品名) 28.6重量%、
二酸化チタン 7.9重量%、
二酸化ケイ素 37.2重量%、
ポリエチレングリコール400 11.5重量%、
ポリエチレングリコール4000 4.6重量%、および
ソルビトール 10.2重量%。
【0024】
エチルセルロースを基材とする第二組成物を、対応する方法で、エタノール中に溶解して製造する。この第二組成物はまた、活性成分および最初の層と同様の適当な助剤、すなわち下記成分を含有する:
エチルセルロース 約57重量%、
ラネット(Lanette)O(1−ヘキサデカノールと1−オクタデカノールとの混合物中にセチルステアリルアルコールを含有するワックス状軟膏基剤) 約5重量%、
二酸化ケイ素 約30重量%、および
二酸化チタン 約8重量%。
【0025】
上記最初の層(モビオール8−88(登録商品名))は、エタノールに不溶性であり、従って第二コーティング組成物に対して不活性である挙動を示し、モビオール薄膜上に施用することができる。この組成物を乾燥させると、二相放出性を備えた薄膜製剤(=薄膜形態製剤)が得られる。
15x15mmのサイズを有する薄膜形態製剤(これはまた、「ウエファー」とも称される)の場合、適切に組成することによって、−予定される−迅速溶解性層については60秒間よりも短い時間領域および緩慢溶解性層については数時間の期間領域の予定通りのインビトロ放出時間を、達成することができる。
【0026】
例2:二相放出系のための方式
活性成分としてクエン酸カフェインを含有する二相放出性を備えたポリマー薄膜。
活性成分としてカフェインを含有する二相放出性を備えた放出系(薄膜形態製剤)を、例1に記載の製造方法により製造した。この場合、第一コーティング組成物および第二コーティング組成物は、下記組成を有していた:
第一層(最初の薄膜)用のコーティング組成物:
“BMX0001”:固体含有量:50.41重量%
二酸化チタン 7.14重量%
ポリビニルアルコール 25.88重量%、
クエン酸カフェイン 9.52重量%、
ポリエチレングリコール4000 4.13重量%、
ポリエチレングリコール400 10.35重量%、
ソルビトール 9.32重量%、
二酸化ケイ素 33.65重量%、
溶媒としての水。
【0027】
第二層用のコーティング組成物:
“BMX0002”:固体含有量:22.49重量%
エチルセルロース 86.16重量%、
セチルステアリルアルコール 4.31重量%、
クエン酸カフェイン 9.53重量%、
溶媒としての水。
【0028】
これらのコーティング組成物を例1に記載のとおりの薄膜形態製剤(「ウエファー」)の製造に使用し、これらの薄膜形態製剤からのカフェインの水中への放出を評価した。この試験結果を図1にグラフで示す。
図1は、本発明による薄膜形態製剤(「ウエファー」)からのカフェインの水中への放出を示している。図1に示されている放出グラフは、二相放出特性を明確に示している:約10分以内の迅速放出(「初期噴出」)および残りの期間(特定の場合:5時間)にわたる緩慢な、しかし連続的な制御放出。
【0029】
示されている放出は、「パドルオーバーディスク」(“paddle over disc”)法および「ロータリイバスケット」(“rotary basket”)法により測定した。この放出グラフの各点は、相違する測定方法を用いる測定値の平均値である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
そこに含有されている物質を液体環境に二相放出させるための薄膜形態のポリマー基材製剤であって、該製剤が、少なくとも2枚のポリマーマトリックス層を有し、これらの層は、構造上ポリマーが異なっていて、その層の1枚からの放出は迅速で、また少なくとも1枚の他層からの放出は緩慢であることを特徴とする、上記薄膜形態製剤。
【請求項2】
迅速放出性層のマトリックスが親水性ポリマーまたは水中への高度の溶解性を有するポリマー、またはこれらの性質を備えたポリマー混合物から構成されており、および1枚または2枚以上の緩慢放出性層のマトリックスがほとんど親水性ではないポリマー、または水に僅かに溶解性であるかまたは不溶性であるポリマー混合物から構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の薄膜形態製剤。
【請求項3】
少なくとも1枚のポリマーマトリックス層が、1種または2種以上の医薬活性成分を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の薄膜形態製剤。
【請求項4】
少なくとも1枚のポリマーマトリックス層内に、フレーバー、発香剤、芳香剤および清涼効果を有する物質を包含する群から選択される1種または2種以上の放出可能な物質を含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の薄膜形態製剤。
【請求項5】
当該物質が放出される環境液体が、ヒトまたは動物の生理学的液体またはその人工的模擬液体を包含することを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の薄膜形態製剤。
【請求項6】
迅速放出性層の溶解速度は、この層の少なくとも10cmの面積が15分間よりも短く、好ましくは5分間よりも短く、特に好ましくは1分間よりも短い時間内に、生理学的液体またはその人工的模擬液体に溶解するように調節されていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の薄膜形態製剤。
【請求項7】
緩慢放出性層の溶解速度は、この層の10cmを超えない面積の生理学的液体または人工的模擬液体中における溶解に、少なくとも15分間、好ましくは少なくとも60分間、特に好ましくは少なくとも120分間を要するように調節されていることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の薄膜形態製剤。
【請求項8】
迅速放出性層のマトリックスが、セルロースエーテル、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリビニルピロリドン、上記ポリマーのコポリマー、およびゼラチン、アルギネートおよびその他の天然または部分的合成ポリマーを包含する群から選択されるポリマーを含有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の薄膜形態製剤。
【請求項9】
迅速放出性層のマトリックスが、ポリビニルアルコールまたはポリビニルアルコール含有ポリマー混合物から構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の薄膜形態製剤。
【請求項10】
迅速放出性層のマトリックスが、セルロースエーテル、好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはセルロースエーテルの混合物から構成されていることを特徴とする、請求項8に記載の薄膜形態製剤。
【請求項11】
1枚または2枚以上の緩慢放出性層のマトリックスが、セルロースエーテル、好ましくはエチルセルロース、およびポリビニルアルコール、ポリウレタン、ポリメタクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)および上記ポリマーの誘導体またはコポリマーを包含する群から選択されるポリマーを含有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれかに記載の薄膜形態製剤。
【請求項12】
1枚または2枚以上の緩慢放出性層のマトリックスが、熱処理したポリビニルアルコール部分を有することを特徴とする、請求項1〜11のいずれかに記載の薄膜形態製剤。
【請求項13】
5〜500μmの範囲、特に好ましくは10〜100μmの範囲の厚みを有することを特徴とする、請求項1〜12のいずれかに記載の薄膜形態製剤。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の薄膜形態製剤の製造方法であって、下記工程:
a)放出される物質を添加しながら、迅速放出性層に適するポリマー溶液を製造する工程;
b)ナイフまたはローラー施用または噴霧処理によって、この溶液を不活性基体上にコーティングし、次いで乾燥させ、迅速放出性薄膜層を形成する工程;
c)放出される物質を添加しながら、緩慢放出性層に適するポリマー溶液を製造する工程;
d)ナイフまたはローラー施用または噴霧処理または印刷によって、この溶液を迅速放出性薄膜層上にコーティングし、次いで乾燥させ、緩慢放出性薄膜層を形成する工程;
を特徴とする、上記製造方法。
【請求項15】
工程a)およびb)において、最初に緩慢放出性薄膜層を製造し、次いで工程c)およびd)において、この層を迅速放出性薄膜層によりコーティングすることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第一薄膜層の製造が、ポリマー溶融物から出発し、このポリマー溶融物をナイフまたはローラー施用、または噴霧または押出し加工により不活性基体に施用し、次いで乾燥および/または冷却させ、追加の層をポリマー溶液からコーティングすることを特徴とする、請求項14または15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
緩慢放出性層(1枚または2枚以上)からの物質(1種または2種以上)の放出を、当該物質の粒子サイズを増大させることによって、当該物質または活性成分のコーティングまたは微小カプセル化により、または類似効果を有する調剤技術手法により、さらに遅延させることを特徴とする、請求項14〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
物質、好ましくは医薬活性成分のヒトまたは動物体液またはこのような体液の人工的模擬液体中への放出における、請求項1〜13のいずれかに記載の薄膜形態製剤の使用。
【請求項19】
ヒトまたは動物の疾患の医学的治療処置用の医薬製剤の製造における、請求項1〜13のいずれかに記載の薄膜形態製剤の使用。

【図1】
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【公開番号】特開2011−144193(P2011−144193A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51364(P2011−51364)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【分割の表示】特願2001−537927(P2001−537927)の分割
【原出願日】平成12年11月3日(2000.11.3)
【出願人】(300005035)エルテーエス ローマン テラピー−ジステーメ アーゲー (128)
【Fターム(参考)】