説明

藻類培養装置及び方法

【課題】培養液を藻類担体に安定供給する。
【解決手段】帯状に形成された1つ或いは複数の藻類担体と、前記藻類担体を規定の搬送経路に沿って立ち向き姿勢で搬送させる担体搬送手段と、前記藻類担体の上部から培養液を供給する培養液供給手段とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、藻類培養装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、付着性微細藻類と培養液との懸濁液を貯留する培養槽の上方に担体を吊り下げ、懸濁液を曝気して懸濁液を飛散させることにより飛沫を発生させ、当該飛沫を担体に付着させることにより付着性微細藻類を大量培養する方法及び装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−80186号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術は、懸濁液を曝気して発生する飛沫を担体に付着させるものなので、懸濁液の飛沫を安定して担体に付着させることが困難である。すなわち、曝気によって発生する飛沫は飛散量や飛散方向が不安定であり、よって上記従来技術では、必要量の懸濁液つまり付着性微細藻類及び培養液を安定して担体に付着させることが困難であり、この結果として付着性微細藻類を安定して培養することができない。
【0005】
また、曝気によって発生する飛沫は飛散量や飛散方向が不安定なので、担体の表面温度つまり担体の表面に付着した付着性微細藻類の培養温度を所望温度に安定化することが困難である。さらには、上記従来技術では、懸濁液を曝気するために大型の曝気装置を必要とするので、初期設備コストやランニングコストが高いという問題もある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、以下の点を目的とするものである。
(1)培養液、あるいは微細藻類及び培養液を藻類担体に安定供給する。
(2)微細藻類の培養温度を安定化する。
(3)微細藻類の培養に関する初期設備コスト及びランニングコストを低減する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、藻類培養装置に係る第1の解決手段として、帯状に形成された1つ或いは複数の藻類担体と、前記藻類担体を規定の搬送経路に沿って立ち向き姿勢で搬送させる担体搬送手段と、前記藻類担体の上部から培養液を供給する培養液供給手段とを具備する、という手段を採用する。
【0008】
藻類培養装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記搬送経路の途中に設置され、搬送中の前記藻類担体を圧搾して藻類含有液体を回収する藻類回収手段を備える、という手段を採用する。
【0009】
藻類培養装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、前記藻類回収手段は、前記藻類担体の圧搾後に前記藻類担体の殺菌、洗浄及び乾燥処理を順次行う、という手段を採用する。
【0010】
藻類培養装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記培養液供給手段は、前記藻類担体の下方に設けられ、上部が開放する培養液貯槽と、前記培養液貯槽から前記培養液を汲み上げて前記藻類担体の上部に供給するポンプとを備える、という手段を採用する。
【0011】
藻類培養装置に係る第5の解決手段として、上記第1〜第4のいずれかの解決手段において、前記培養液供給手段は、前記培養液に含まれる雑菌を殺菌あるいは滅菌する殺菌装置を備える、という手段を採用する。
【0012】
藻類培養装置に係る第6の解決手段として、上記第1〜第5のいずれかの解決手段において、前記培養液供給手段は、前記培養液の温度を調節する温度調節装置を備える、という手段を採用する。
【0013】
藻類培養装置に係る第7の解決手段として、上記第1〜第6のいずれかの解決手段において、前記藻類担体を覆う防御シートをさらに備える、という手段を採用する。
【0014】
藻類培養装置に係る第8の解決手段として、上記第4〜第7のいずれかの解決手段において、前記培養液貯槽に代えて、前記藻類担体の下方に漏斗を設けて前記培養液を回収し、当該培養液を小型培養液貯槽に貯留する、という手段を採用する。
【0015】
藻類培養装置に係る第9の解決手段として、上記第1〜第8のいずれかの解決手段において、前記藻類担体は無端帯状に形成されており、前記担体搬送手段は、前記藻類担体を周回路状の前記搬送経路に沿って立ち向き姿勢で無端回送させる、という手段を採用する。
【0016】
また、本発明では、藻類培養方法に係る第1の解決手段として、帯状に形成された1つ或いは複数の藻類担体を規定の搬送経路に沿って立ち向き姿勢で搬送させながら、前記藻類担体の上部から培養液を供給する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、帯状に形成された1つ或いは複数の藻類担体を規定の搬送経路に沿って立ち向き姿勢で搬送させながら、前記藻類担体の上部から培養液を供給するので、従来の培養液の飛散による供給方法に比較して、培養液、あるいは微細藻類及び培養液を藻類担体に安定供給することが可能であると共に、微細藻類の培養温度を安定化することが可能である。
さらには、従来技術のように大型の曝気装置が不要なので、微細藻類の培養に関する初期設備コスト及びランニングコストを低減させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の第1実施形態に係る藻類培養装置の構成を示す模式図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る藻類培養装置の構成を示す模式図である。
【図3】各実施形態の変形例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の第1、第2実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る藻類培養装置は、図1に示すように、藻類担体1、担体搬送装置2、培養液滴下装置3、培養液貯槽4、ポンプ5、殺菌装置6、温度調節装置7、藻類回収装置8及び防御シート9によって構成されている。なお、図1(a)は藻類培養装置の上面図であり、図1(b)は藻類培養装置の側面図(図1(a)のA方向から視た図)である。
【0020】
藻類担体1は、微細藻類を担持する担体であり、例えばスポンジのような多孔質材料を無端帯状に形成したものである。以下では、この藻類担体1をスポンジベルトと称する。このスポンジベルト1は、後述の担体搬送装置2から与えられる駆動力によって、規定の搬送経路(ここでは周回路状の搬送経路)に沿って立ち向き姿勢で無端回走すると共に、後述の培養滴下装置3によって上部から培養液Xを供給(滴下)される。
【0021】
スポンジベルト1の表面には無数の微細な孔が存在しており、微細藻類はこれらの孔に付着し増殖する。従って、スポンジベルト1の材質は、微細藻類が付着し易いもの(表面に微細な孔が多数存在するもの)が好ましく、例えば安価な発砲ポリエステルやポリウレタンが好ましい。また、スポンジベルト1の色は、光透過性に優れた透明、或いは熱を吸収し難い色(白色系)が好ましい。スポンジベルト1の厚さは、光透過性を考慮して1〜10cm程度が好ましい。
【0022】
上記微細藻類は、食品や燃料等の原料になる産業上有用な植物性プランクトンであり、例えば体内で炭化水素(燃料)を生成するボトリオコッカス・ブラウニー(学名:Botryococcus braunii)やアオコ、または食品原料として有用なクロレラである。このような微細藻類は、スポンジベルト1の表面において培養液Xを供給されつつ照明光(例えば太陽光)を照射されることにより光合成を繰り返して増殖する。培養液Xは、例えばC培地(NIES-Collection.List of Strains Fifth Edition Microalgae and Protozoa, Nissei Eblo Co., 140pp(1997))に代表される藻類の培養に必要な栄養塩を含むものが好ましい。
【0023】
担体搬送装置2(担体搬送手段)は、上記スポンジベルト1を周回路状の搬送経路に沿って立ち向き姿勢で無端回走させるものであり、搬送経路上の複数箇所において立ち向き姿勢のスポンジベルト1を両側から挟み込むように立設された一対の搬送ローラ2a、2bと、これら搬送ローラ2a、2bを回転させるモータ等の回転駆動機構(図示省略)とから構成されている。これら搬送ローラ2a、2bによって、スポンジベルト1が立ち向き姿勢に維持されながら搬送経路に沿って搬送されることになる。
【0024】
搬送ローラ2a、2b間の距離は、搬送ローラ2a、2bに挟まれてスポンジベルト1が圧搾されないよう適切な値に設定することが好ましい。これにより、スポンジベルト1の搬送が困難となる場合には、搬送ローラ2a、2bの少なくとも一方の上端(下端でも良い)にスプロケットを同軸接続すると共に、スポンジベルト1の上端縁(下端縁でも良い)に沿って上記スプロケットの歯と噛合する孔を設け、上記スプロケットの回転によってスポンジベルト1を搬送する構成を採用しても良い。
また、搬送ローラ2a、2bによってスポンジベルト1を支持しきれずに、スポンジベルト1が下方に落下するような場合には、スポンジベルト1の下端縁をガイドレール等の支持部材によって支持するような構成を採用しても良い。
【0025】
なお、本実施形態では、図1(a)に示すように、スポンジベルト1の搬送経路上に、直線セクションと蛇行セクションとが設けられている場合を例示している。蛇行セクションを設けることにより、限られた敷地面積内でスポンジベルト1の全長を長くできるので、微細藻類の付着面積を拡大することができ、その結果、微細藻類の培養効率の向上に寄与できる。また、強い光の入射は、微細藻類の増殖阻害要因となるが、スポンジベルト1を蛇行させて、スポンジベルト1同士が対向する箇所を設けることにより、入射した光が反射や吸収によってほど良く弱光化し、日光のような強い光でも有効利用することができる。
【0026】
培養液滴下装置3は、搬送経路上の蛇行セクションを走行するスポンジベルト1の上部から培養液Xを供給(滴下)するものであり、蛇行セクションにおけるスポンジベルト1の直線走行部分に並行に延設された複数の培養液供給配管3aと、各培養液供給配管3aの下端に一定間隔で設けられた複数の培養液滴下ノズル3bとから構成されている。後述の培養液貯槽4、ポンプ5、殺菌装置6及び温度調節装置7を介して培養液供給配管3aに供給された培養液Xは、培養液滴下ノズル3bからスポンジベルト1へ向けて滴下される。なお、図1(a)中の三角印は、上記の培養液滴下装置3による培養液Xの滴下箇所を示している。
【0027】
培養液貯槽4は、スポンジベルト1の下方に設けられると共に上部が開放した貯留槽であり、スポンジベルト1から滴下した培養液Xを貯留する。ポンプ5は、上記培養液貯槽4から培養液Xを汲み上げ、殺菌装置6及び温度調節装置7を介して培養液滴下装置3(培養液供給配管3a)に供給する。このポンプ5によってスポンジベルト1の上部に供給される培養液Xの供給量は、スポンジベルト1の表面が乾かない程度、つまりスポンジベルト1の表面に付着している微細藻類が培養液Xに常に浸る程度を最小限とし、且つ、正常な増殖速度で微細藻類が増殖する際に消費する栄養塩を供給できる量に設定される。
【0028】
殺菌装置6は、上記ポンプ5の吐出口側に設けられており、培養液Xに含まれる雑菌を殺菌あるいは滅菌する装置であり、例えば紫外線やオゾンを用いて雑菌を死滅させるものである。温度調節装置7は、培養液Xの流れ方向において上記殺菌装置6の下流側に設けられており、培養液Xを所定温度、つまり微細藻類の増殖に適した温度に調節する。
これら各構成要素のうち、培養液滴下装置3、培養液貯槽4、ポンプ5、殺菌装置6及び温度調節装置7は、培養液供給手段を構成している。
【0029】
藻類回収装置8(藻類回収手段)は、搬送経路の途中、例えば直線セクションに設置され、直線セクションを走行中のスポンジベルト1を圧搾して藻類含有液体を回収するものであり、立ち向き姿勢のスポンジベルト1を両側から一定圧力で挟み込むように立設された一対の圧搾ローラ8a、8bを備えている。また、この藻類回収装置8は、圧搾ローラ8a、8bによるスポンジベルト1の圧搾後に、スポンジベルト1の殺菌、洗浄及び乾燥処理を順次行う後処理装置8cを備えている。
【0030】
防御シート9は、上記スポンジベルト1、担体搬送装置2、培養液滴下装置3、培養液貯槽4及び藻類回収装置8を覆う透明シートである。この防御シート9は、スポンジシート1の表面で増殖する微細藻類に外部から飛来する虫や気中物質が付着して増殖を阻害することを防止あるいは抑制する役割を担う。
【0031】
また、このような防御シート9を設けることにより、防御シート9の内部空間の雰囲気を微細藻類の増殖に適した雰囲気とすることが容易となる。すなわち、防御シート9の内部空間に酸素を含まないガスを積極的に供給することにより、或いは防御シート9の内部空間における酸素を他のガスに置換することにより、微細藻類が光合成によって生成する酸素の濃度が下がるので、微細藻類による光合成が活発になって微細藻類の増殖が促進される。
【0032】
次に、上記のように構成された第1実施形態に係る藻類培養装置を利用して実現される藻類培養方法について詳細に説明する。
藻類培養装置を稼働させて微細藻類を培養するに際して、初期的な微細藻類の植種方法には2つの方法が考えられる。すなわち、微細藻類をスポンジベルト1の表面に植種する方法と微細藻類を培養液Xに植種する方法とが考えられる。これら2つの植種方法のうち、スポンジベルト1に植種する方法はスポンジベルト1の全長が長いことを考慮すると作業が煩雑であり時間を要するが、培養液Xに植種する方法は、ポンプ5が作動することによって培養液Xがスポンジベルト1に供給され、これによって培養液X中の微細藻類がスポンジベルト1の表面に付着するので、作業性に優れている。
【0033】
例えば、培養液Xに微細藻類を植種して培養を行う場合、培養開始時に培養液貯槽4に一定量の培養液Xを外部から供給すると共に当該培養液Xに一定量の微細藻類を植種用として添加した後、担体搬送装置2を作動させて(搬送ローラ2a、2bを回転させて)、スポンジベルト1を搬送経路に沿って無端回走させながら、ポンプ5を作動させて植種用の微細藻類が混じった培養液Xを培養液貯槽4からスポンジベルト1の上部に供給する。この結果、培養液Xは、スポンジベルト1の上部からその表面を経由して下方に徐々に垂下して最終的に培養液貯槽4に滴下する。
【0034】
そして、これによって植種用の微細藻類はスポンジベルト1の表面に徐々に付着するので、培養液X中における微細藻類の濃度は徐々に低下して、最終的に培養液Xには微細藻類が殆ど含まれない状態となる。そして、スポンジベルト1の表面に付着した微細藻類は、ポンプ5の作動によって順次供給される培養液X中の栄養塩及び照明光(太陽光)の照射により光合成を繰り返して増殖する。そして、一定期間(培養期間)に亘って培養液X中の供給と照明光(太陽光)の照射とを継続することにより、スポンジベルト1の表面に付着した微細藻類は、所望量まで増殖する。
【0035】
ここで、培養期間の経過とともに培養液X中の栄養塩の濃度が低下するので、培養期間においては、このような栄養塩の濃度低下を補うために、培養液貯槽4中の培養液X(栄養塩の度が低下したもの)を一定の割合で新品状態の培養液Xと入れ替える処理を行う必要がある。このような培養液Xの入れ替え方法については、種々の方法が考えられるが、例えばポンプ5の作動を停止することなく、培養液貯槽4中の培養液X(栄養塩の度が低下したもの)を所定流量で徐々に抜き取ると共に、当該所定流量で新品状態の培養液Xを培養液貯槽4に供給することを連続的に行うことにより、培養期間における培養液Xの栄養塩の濃度が所望値に維持されるようにすることが好ましい。
【0036】
また、培養期間においては植種用の微細藻類に初期的に含まれていたこと等に由来する雑菌も増殖するが、このような雑菌は、培養液Xがポンプ5によってスポンジベルト1の上部に供給される際に通過する殺菌装置6によって除去されるので、微細藻類の増殖を妨げることはない。なお、培養の初期段階においては、培養液X中に植種用の微細藻類が混じっているので、殺菌装置6を作動停止状態にすることが好ましい。
【0037】
また、培養期間において、培養液Xは、温度調節装置7によって微細藻類の増殖に適した温度に調節されるので、微細藻類の増殖環境は、温度環境として最適化される。例えば、太陽光を照明光とし屋外で微細藻類を培養する場合、季節や時間に応じて培養温度は著しく変動する。すなわち、夏場においては周囲温度が高くなり、冬場においては周囲温度が低くなるので、スポンジベルト1の表面温度つまり微細藻類の培養温度も、これに応じて変動する。このような状況に対して、温度調節装置7は、微細藻類の培養温度が所望温度を維持するように培養液Xの温度を調節する。さらに、培養期間においては、防御シート9によって外部から飛来する虫や気中物質が微細藻類に付着することが防止あるいは抑制される。
【0038】
なお、このような微細藻類の植種期間及び培養期間中において、藻類回収装置8によって微細藻類が回収されないように、藻類回収装置8の作動を停止させておく必要がある。具体的には、圧搾ローラ8a、8bをスポンジベルト1から離れた位置で待機させておくと共に、後処理装置8cの作動を停止させて、スポンジベルト1が藻類回収装置8内をフリーで通過するようにしておく。
【0039】
そして、微細藻類の培養期間が経過した後、藻類回収装置8を作動させて、圧搾ローラ8a、8bによってスポンジベルト1を圧搾して藻類含有液体を回収すると共に、必要に応じて後処理装置8cも作動させて、圧搾後のスポンジベルト1の殺菌、洗浄、及び乾燥処理を順次行い、スポンジベルト1を再生させる。この間も、担体搬送装置2によるスポンジベルト1の搬送、培養液滴下装置3による培養液Xの供給は継続されているので、再生後のスポンジベルト1は、微細藻類の培養に再利用される。このように、本藻類培養装置を用いることにより、微細藻類の植種、培養、回収という一連のプロセスを連続的且つ繰り返し実施することができるようになる。
【0040】
以上のような本第1実施形態によれば、担体搬送装置2によってスポンジベルト1を搬送経路に沿って無端回走させながら、培養液滴下装置3によってスポンジベルト1の上部から培養液Xを供給するので、培養液Xはスポンジベルト1の表面を上から下に向かって流れ、よってスポンジベルト1の各部位に所望量の培養液Xを均一かつ安定に供給することが可能である。
【0041】
また、殺菌装置6によって雑菌が除去され、さらに温度調節装置7によって培養液Xが微細藻類の増殖に適した温度に調節されるので、スポンジベルト1の増殖速度を最大化することができる。さらには、従来のような大型の曝気装置が不要なので、初期設備コスト及びランニングコストを従来よりも低減することが可能である。
【0042】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る藻類培養装置は、図2に示すように、上述した第1実施形態の培養液貯槽4に代えて小型培養液貯槽4Aを設けると共に当該小型培養液貯槽4Aとスポンジベルト1との間に傾斜板10を介装したものである。
【0043】
微細藻類を産業上の原料として培養するためには膨大な量を必要とするが、この膨大な必要量の微細藻類を培養するためには、広大な用地に藻類培養装置を大量に配置して効率的に培養を行う必要がある。したがって、場合によっては、平地ではなく山間部等の傾斜地で微細藻類の培養を行うことも十分に想定される。上述した第1実施形態では、スポンジベルト1の下方全域に亘る培養液貯槽4を設けたが、傾斜地では、このような培養液貯槽4を設けることは難しい。
【0044】
このような事情から、本第2実施形態に係る藻類培養装置では、傾斜地の一部に小型培養液貯槽4Aを設け、かつ、当該小型培養液貯槽4Aとスポンジベルト1との間にスポンジベルト1の下方全域に亘る傾斜板10を介装することにより、スポンジベルト1から滴下した培養液Xを傾斜板10で受けて小型培養液貯槽4Aに導く。すなわち、傾斜板10は、スポンジベルト1から滴下した培養液Xを受ける大型の漏斗として機能する。
【0045】
また、このような第2実施形態に係る藻類培養装置を傾斜地に設置する場合、藻類培養装置を斜面に沿って多段に設けることが考えられる。すなわち、培養液Xを小型培養液貯槽4Aからポンプ5によって直接汲み上げるのではなく、小型培養液貯槽4Aの培養液Xを傾斜方向において下側つまり高さが低い側の藻類培養装置の培養液滴下装置3と接続することにより高低差による重力を利用して低い側の藻類培養装置のスポンジベルト1の上部に培養液Xを供給することが可能である。
【0046】
そして、最も低い所に位置する藻類培養装置の小型培養液貯槽4Aと最も高い所に位置する藻類培養装置の培養液滴下装置3とを接続することにより、培養液Xを各段の藻類培養装置全体で循環させる。なお、各段の藻類培養装置は、それぞれ斜面の等高線上をスポンジベルト1が走行するように配置し、蛇行セクションの折り返し部分でスポンジベルト1が等高線を横切るようにすることが好ましい。
【0047】
このような第2実施形態によれば、傾斜地を有効利用して微細藻類を培養することが可能であると共に、上述した第1実施形態と同様な効果を得ることが可能である。また、藻類培養装置を斜面に沿って多段に設ける場合には、高低差による重力を利用するので、ポンプ5、殺菌装置6及び温度調節装置7の台数を必要最小限の各1台に削減して初期設備コスト及びランニングコストを低減することが可能である。
【0048】
以上、本発明の第1及び第2実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記各実施形態では、微細藻類(植物性プランクトン)として、ボトリオコッカス・ブラウニーやアオコ)、またクロレラを例示したが、本発明はこれに限定されない。本発明はこれ以外の微細藻類についても有用である。また、上記各実施形態では、スポンジベルト1の上部から培養液Xを滴下する場合を例示したが、スプレー等を用いてスポンジベルト1の上部から培養液Xを吹き付ける構成を採用しても良い。
【0049】
(2)上記各実施形態では、搬送経路に沿って走行するスポンジベルト1が1つの場合を例示したが、複数のスポンジベルト1が搬送経路に沿って並列に走行するような構成を採用しても良い。これにより、微細藻類の付着面積(スポンジベルト1の表面積)を大幅に拡大できるので、微細藻類の培養効率を大幅に向上できる。
【0050】
(3)上記各実施形態では、1つの搬送経路に沿ってスポンジベルト1が走行する場合を例示したが、図3に示すように、複数(図3では2つ)の搬送経路のそれぞれでスポンジベルト1が走行するような構成を採用しても良い。これにより、微細藻類の付着面積(スポンジベルト1の表面積)を大幅に拡大できるので、微細藻類の培養効率を大幅に向上できる。さらに、上記変形例(2)で説明したように、複数のスポンジベルト1を重ねて走行させる構成を追加採用することで、より大きな培養効率を得ることができる。
【0051】
(4)上記各実施形態では、殺菌装置6によって培養液Xの全部を殺菌あるいは滅菌するが、本発明はこれに限定されない。すなわち、スポンジベルト1の表面に付着した微細藻類の一部が脱落して培養液Xとともに培養液貯槽4あるいは小型培養液貯槽4Aに貯留することが考えられるので、このような事態を考慮すると、例えばポンプ5から殺菌装置6に供給される培養液Xを細孔径10μm程度のプランクトンネット等でろ過することにより、2μm以下の大きさである雑菌と10μm以上の大きさの微細藻類とを分別し、分別した微細藻類を殺菌装置6を迂回させて培養液滴下装置3に供給しても良い。
【0052】
(5)上記各実施形態では、直線セクションと蛇行セクションとからなる周回路状の搬送経路に沿ってスポンジベルト1が無端回走する場合を例示したが、本発明の搬送経路の形状はこれに限定されず、藻類培養装置の敷地面積や目標の培養量を考慮して、スポンジベルト1の表面積が最大化される(全長が最大化される)ように搬送経路の形状を設定すれば良い。また、藻類回収装置8を必ずしも搬送経路上の直線セクションに設置する必要はなく、蛇行セクションの途中に設置しても良い。
【0053】
(6)上記各実施形態では、藻類担体として無端帯状のスポンジベルト1を周回路状の搬送経路に沿って無端回走させる場合を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、長大な帯状(有端帯状)の藻類担体を巻取り機によって巻取り自在としておき、微細藻類の植種時及び培養時には、藻類担体を巻取り機から規定の搬送経路に沿って展開させて培養液Xの滴下を行い、微細藻類の回収時には、巻取り機によって藻類担体を巻き取りながら圧搾して藻類含有液体を回収するような構成を採用しても良い。
【符号の説明】
【0054】
1…スポンジベルト(藻類担体)、2…担体搬送装置、3…培養液滴下装置、4…培養液貯槽、4A…小型培養液貯槽、5…ポンプ、6…殺菌装置、7…温度調節装置、8…藻類回収装置、9…防御シート、10…傾斜板、X…培養液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状に形成された1つ或いは複数の藻類担体と、
前記藻類担体を規定の搬送経路に沿って立ち向き姿勢で搬送させる担体搬送手段と、
前記藻類担体の上部から培養液を供給する培養液供給手段と、
を具備することを特徴とする藻類培養装置。
【請求項2】
前記搬送経路の途中に設置され、搬送中の前記藻類担体を圧搾して藻類含有液体を回収する藻類回収手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の藻類培養装置。
【請求項3】
前記藻類回収手段は、前記藻類担体の圧搾後に前記藻類担体の殺菌、洗浄、乾燥処理を順次行うことを特徴とする請求項2に記載の藻類培養装置。
【請求項4】
前記培養液供給手段は、
前記藻類担体の下方に設けられ、上部が開放する培養液貯槽と、
前記培養液貯槽から前記培養液を汲み上げて前記藻類担体の上部に供給するポンプとを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の藻類培養装置。
【請求項5】
前記培養液供給手段は、前記培養液に含まれる雑菌を殺菌あるいは滅菌する殺菌装置を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の藻類培養装置。
【請求項6】
前記培養液供給手段は、前記培養液の温度を調節する温度調節装置を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の藻類培養装置。
【請求項7】
前記藻類担体を覆う防御シートをさらに備えることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の藻類培養装置。
【請求項8】
前記培養液貯槽に代えて、前記藻類担体の下方に漏斗を設けて前記培養液を回収し、当該培養液を小型培養液貯槽に貯留することを特徴とする請求項4〜7のいずれか一項に記載の藻類培養装置。
【請求項9】
前記藻類担体は無端帯状に形成されており、
前記担体搬送手段は、前記藻類担体を周回路状の前記搬送経路に沿って立ち向き姿勢で無端回送させることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の藻類培養装置。
【請求項10】
帯状に形成された1つ或いは複数の藻類担体を規定の搬送経路に沿って立ち向き姿勢で搬送させながら、前記藻類担体の上部から培養液を供給することを特徴とする藻類培養方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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