説明

蘇生における再灌流保護

【課題】心停止または正常な循環の中断される別の状態にある患者を蘇生させるための人工呼吸法において、心拍再開に続く期間における細胞傷害を防止するため、患者組織のpHを低減された状態に維持することのできる蘇生装置の提供。
【解決手段】心停止等の患者に混合ガスを送達するための人工呼吸器であって、COの分圧を調節し患者の肺からのCOの排出を遅らせるのに充分に高い1つ以上の分圧とすることによって、心拍再開に続く期間における患者組織のpHを低減された状態に維持するように構成された人工呼吸器を含む蘇生装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、心停止において使用される換気補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
心停止、即ち、突然死は、共通の心臓病因を有する種々の生理学的異常の集合を記述する用語であり、患者は通常、無脈、無呼吸および無意識の症状を示す。心停止は蔓延しており、米国のみでも年間300,000人の犠牲者があると推定され、世界中では同程度の追加の犠牲者があると推定される。突然の心停止の生存における主な要因は、早期の細動除去である。実際、細動除去によって治療されなかった心停止犠牲者が救助される場合はほとんどない。異常な心電図記録(ECG)リズムには様々な種類が存在し、それらのリズムには細動除去による治療が可能であるものと、可能でないものとがある。これに対する標準用語は、それぞれ“ショック可能(shockable)”、“ショック不可能(non−shockable)”なECGリズムである。さらに、ショック不可能なECGリズムは、血行力学的に安定なリズムと、血行力学的に不安定なリズムとに分類される。血行力学的に不安定なリズムは、適切な血流によって患者の生存を支持することが不可能(生存不可能)なリズムである。例えば、正常洞調律はショック不可能なリズムであると考えられるが、血行力学的に安定(生存可能)である。心停止中に遭遇される幾つかの一般的なECGリズムのうち、ショック不可能、かつ、血行力学的に不安定なものには、徐脈、心室固有調律、無脈性電気活動(PEA)および不全収縮がある。徐脈では、心臓の鼓動が遅過ぎ、ショック不可能、かつ、恐らくは生存不能である。患者が徐脈中に無意識である場合、ペーシングが利用可能となるまで胸部圧迫を行うことは有用であり得る。心室固有調律では、心筋収縮を開始する電気活動が心房ではなく心室で生じ、やはりショック不可能、かつ、生存不能であり得る(通常、電気的なパターンは心房において開始する)。通常、心室固有調律では、心拍が30または40拍/分と遅いため、患者が意識を消失することが多い。通常では心室が心房の活動に応答するが、心房が電気活動を停止するときには、心室においてより遅いバックアップリズムが生じるため、遅い心拍を生じる。電導収縮解離(EMD)の結果である無脈性電気活動(PEA)では、心臓にはリズミカルな電気活動が存在するが心筋収縮能は欠如しており、ショック不可能、かつ、生存不能であり、最初の対応として胸部圧迫が必要となる。不全収縮では、心臓に電気的活動および機械的活動が存在せず、やはり他のショック不可能、生存不能なリズムの場合のように、細動除去による治療の成功は不可能である。不全収縮にはペーシングが推奨される。また、そうした患者の支援を行うために高次的救命チームが実行可能な他の治療法(例えば、挿管、薬品など)が存在する。細動除去による治療の成功が可能であるショック可能リズムの主な例には、心室性細動、心室頻脈および心室粗動がある。
【0003】
通常では、ヒトの心臓内の電気化学活動によって、器官の筋繊維は同期して収縮・弛緩される。この心臓の筋肉組織の同期された作用によって、心室から身体の重要臓器へ血液の有効な送出(pumping)が生じる。しかしながら、心室性細動(VF)の場合には、心臓内の異常な電気活動によって、個々の筋繊維が同期されず無秩序に収縮される。この同期の損失の結果、心臓は有効に血液を送る能力を失う。除細動器は、心室性細動に関連した心臓の無秩序な電気活動を途絶させ、心臓の電気化学システムにその再同期の機会を提供する、大電流パルスを出力する。組織化された電気活動が回復されると、通常、同期された筋収縮が続き、有効な心臓の送出の回復に繋がる。
【0004】
最初に1956年にポール・ゾール(Paul Zoll)博士によってヒトにおける経胸腔的除細動が述べられると、経胸腔的除細動は心停止、心室頻脈(VT)および心房性細動(AF)に対する主要な療法となった。1996年までは一相性の波形が主流であ
ったが、1996年になると臨床用途において最初の二相性の波形が利用可能となった。また、多極電極系を用いて除細動効能を改良する試みも行われた。二相性の波形および多極電極系は一相性の除細動と比較して改良された効能を示すが、依然として相当な改良の余地が存在する。例えば、心室性細動(VF)におけるショック成功率は最新の二相性技術を用いても70%未満に留まる。この場合、ショック成功はショック可能リズムのショック不可能リズムへの転換と定義されており、ショック不可能リズムには生存不能なショック不可能リズムも含まれる。実際の生存退院率は実に低く、10パーセント以下に留まる。米国の大都市における心停止からの生存率は、広範かつ高度な前病院(prehospital)医療インフラによるものを含め、1〜3%の低さに留まる。
【0005】
心停止犠牲者のうちのほぼ40〜50%は特別救急隊員および救急救命士(EMT)によって現場で蘇生され、さらなる治療のために病院へ搬送される。しかしながら、心停止による犠牲者の重要臓器に対する傷害のため、典型的には、生存入院犠牲者のうち生存して退院するのは約25%(即ち、世界中の600,000人の心停止犠牲者のうちのほぼ40,000人)のみである。
【0006】
心停止に対し、除細動による電流治療、心肺蘇生術および変力性(例えば、エピネフリン)薬物療法を用いる治療のウィンドウは、非常に狭い。犠牲者の虚脱時間による長期生存率は、およそ2分の時定数で、ほぼ指数関数的に減少する。したがって、現在推奨されている治療プロトコルを用いる治療においては、わずか2分の遅延によって、長期生存率は30〜35%となる。15分後には、長期生存率は5%未満である。過去25年を通じて緊急医療体制の応答時間は著しく改善され、緊急呼び出しから犠牲者に到着するまでの平均時間は典型的には9分以下となったが、通常、傍に居る者の緊急呼び出しの遅れによって総停止時間に2〜3分が追加され、総停止時間は11〜12分となる。また、傍に居る緊急呼び出しを行う者が心停止を目撃しておらず、心停止が過去のある時点に起きている場合もある。目撃されていない心停止は、全心停止のうちの半分以上を占める。心停止のダウンタイムは目撃された心停止についてしか報告されない。しかしながら、目撃されていない心停止を含める場合、全犠牲者に対する平均ダウンタイムは15分を超えると推測される。初期の虚脱時には、ほとんど全ての心停止犠牲者のECGは、VFまたはVTなどショック可能リズムである。しかしながら、15分後には、ほとんどの心停止犠牲者のECGリズムは、PEAまたは不全収縮のショック不可能リズムへと退行する。AEDを広く普及させることによって、この応答時間を短縮する試みは、様々な経済的・社会的要因のために、ほとんど成功していない。したがって、長いダウンタイムにより深刻な虚血の状態にある心停止犠牲者に対処するために利用可能な治療方法を有することは有利である。
【0007】
心停止中、脳血流は停止し、数分以内に全体的な大脳低酸素性虚血の傷害が開始する。心筋・ニューロンの組織は、20分間もの長期間の虚血のあいだ生存可能のままであることが可能であるが、逆説的にも、循環および酸素処理の回復中に即座に損傷を受ける。組織レベルの動物モデルの様々な研究では、心拍再開(ROSC)を伴う蘇生の成功によって再潅流障害に関連する第2の傷害のカスケードが生じることが示されている。この再潅流障害は、ニューロン組織では特に深刻である。酸素欠乏の結果、ニューロン・筋細胞が嫌気性代謝に移るとき、ATP加水分解中には、乳酸塩は乳酸へ変換され、H+が生成されて、細胞内pHは低下する。これによってナトリウム/水素(NaH)交換イオンチャネルが活性化されるが、NaH交換イオンチャネルはATPを必要とするため、虚血中には抑制される。したがって、虚血中には細胞内のH+が増加する。再灌流中、増加したナトリウムイオンを体外へ排出するために、NaH交換チャネルが再び活性化されて、ナトリウムの正味の流入を引き起こすことよってナトリウム/カルシウム(NCX)交換チャネルによるカルシウムの正味の流入を引き起こす。細胞内のカルシウムの増加は、ミトコンドリアの浸透性遷移(MPT)の活性化によって、ミトコンドリアによるこのイオンの
蓄積を生じ得る。
【0008】
再灌流中、細胞内のグルタミン酸塩(シナプス前末端から放出される興奮性神経伝達物質)のレベルは、著しく増大する。グルタミン酸塩はイオンチャネル複合体、詳細にはN−メチル−D−アスパラギン酸塩(NMDA)レセプタを活性化し、イオンチャネル複合体が活性化されると、細胞外から細胞内への液のカルシウムコンダクタンスは増加する。ミトコンドリアのカルシウムが増加し、活性酸素種が形成される。ミトコンドリアのカルシウム過負荷およびROS産生の両方によって、ミトコンドリア膜に大きな孔の形成が開始される。ミトコンドリア内膜に高コンダクタンスのミトコンドリア遷移孔(MTP)が開くことによって、ミトコンドリア浸透性遷移(MPT)の発現が開始される。MTP孔は、1,500Daまでの正に帯電した溶質および負に帯電した溶質を導く。孔が開くことによって、ミトコンドリア膜電位は急低下し、ミトコンドリアATP産生は停止する。また、複数の生化学的なカスケードによって、酸素フリーラジカルの生成や、細胞膜および微小管など他の必須の細胞骨格構造の破壊を引き起こすプロテアーゼ、エンドヌクレアーゼ、ホスホリパーゼならびにキサンチンオキシダーゼの活性化を生じる。これらの出来事が細胞にとって即座に致命的でない場合にも、幾つかのニューロンは後にプログラムされた細胞死(アポトーシス)を起こす。
【0009】
心蘇生の成功およびROSCの後、数時間に渡って脳血流が異常に低いままである場合がある。カテコールアミンの循環レベルが高いことに起因する初期の充血の後、ちょうど脳酸素消費量の増加に従って、脳血流は減少する。これによって、長期間の相対的な脳虚血状態が生じ得る。この長期間の脳代謝率と血流との間のミスマッチ、および後のニューロンのアポトーシス・壊死による細胞死に関連する進行中の生化学的・分子的過程によって、心停止後の神経系保護の一形態としての人工低体温法に科学的な根拠が提供される。開発された一方法は、意識不明の心停止生存者を心停止発生の4時間以内にほぼ摂氏34度まで冷却することである。低体温法の治療効果の正確な機構は完全に理解されてはいないが、幾つかの研究においては、初期に蘇生された患者の生存率を向上させることが示されている(病院に到着する犠牲者のほぼ40〜50%)。低体温法は心臓の集中治療や、バイパス手術などの病院環境においては一般的であるが、低体温法には、前病院環境における広範な使用を妨げるような2つの関連する欠点が存在する。
【0010】
それらのうち第1の欠点は、低体温法に関する基本的な生物医学工学の課題である。即ち、犠牲者の熱量が大きく、犠牲者を迅速かつ安全に冷却するのが困難であることである。心停止の4時間以内に適用される限り、低体温法は有益であることが示されており、また、研究では、蘇生に先立って冷却することによって付加的な治療の利点が提供されることも示されている。この理由は理論的なものでしかないが、因子のうちの1つは、恐らく蘇生の再灌流段階における低体温法の肯定的な効果である。実際的見地からは、適切な温度まで患者を冷却するために除細動および蘇生を遅らせることは非常に望ましくない。非侵襲性の冷却方法には最低でも10分〜1時間が必要であるのに対し、血液の抜き取りおよび冷却など侵襲性の方法には3〜5分しか必要でないが、特に前病院環境にある患者には危険である。除細動の場合には、3分の遅延によってさえ、生存は30%減少し得る。低体温法は虚血および再灌流に関するより長期的な有害な効果を打ち消すことに有効であり得るが、任意の目下の蘇生介入を遅らせることなく、同時に、再潅流障害に対し即座に防護効果を提供することの可能な処置を有することは望ましい。
【0011】
虚血中に長期間の細胞生存を可能とし、再灌流後の致命的な細胞傷害を最小限とする機構は、完全には理解されないままである。研究では、低体温症など自然に発生する虚血のアシドーシスが、虚血による細胞死から腎細胞、筋細胞および肝細胞を強く防御することが示されている。対照的に、細胞外pHが生理学的レベルまで回復する出来事によって、実際に致命的な細胞傷害が促される。これは“pHパラドックス”と呼ばれる。研究者ら
によって、再潅流障害のpH依存性はMTP開孔がpHに依存する結果であり得るとの仮説が立てられている。また、細胞外pHが7.0未満に減少されるとNMDAチャネルのコンダクタンスは著しく減少することが知られている。また、細胞内pHも重要であり得る。即ち、模擬的な虚血および再灌流中ならびにそれらの後の細胞内アシドーシスによって、培養された心筋細胞が傷害から防御されることが示されている。また、細胞外のプロトン濃度の増大によりNa−H交換イオンチャネルを介する内部のナトリウム流入を最小限とすることによって、細胞内のナトリウム濃度およびナトリウム−カルシウム交換チャネルを介するカルシウムの正味の流入を減少させるため、カルシウム過負荷を最小限とする。
【0012】
換気は、心停止の治療中の心肺蘇生術の重要な構成要素である。静脈血は、酸素(O)を失い二酸化炭素(CO)を満たされて、筋肉および器官から心臓へ戻る。身体の様々な部分からの血液は心臓において混合され(混合静脈血)、肺へ送られる。肺では、血管は小さな肺嚢(肺胞)を取り囲む小血管の網へ分かれる。肺胞を取り囲む血管の正味の総体はガスの濃度勾配に沿った拡散によるそれらのガスの交換のための大きな表面積を提供する。混合静脈血のCO分圧(PCO)(PvCO)と、肺胞PCOとの間には、濃度勾配が存在する。吸気の始めから、呼吸中のある時点にPvCOと肺胞PCOとの間の平衡に到達するまで、COが混合静脈血から肺胞へ拡散する。被験者が息を吐くとき、吐かれる最初のガスはガス交換の不可能な気管および気管支に由来するため、吸い込まれたガスと同様のガス組成を有する。この呼気の終わりのガスは肺胞に由来すると考えられ、毛細管と肺胞との間の平衡CO濃度を反映している。このガスのPCOを呼吸終期PCO(PECO)と呼ぶ。
【0013】
血液が肺胞を通過し、心臓によって動脈へ送られるときは、動脈PCO(PaCO)として知られている。動脈血のPCOは、毛細管と肺胞との間の平衡におけるPCOと等しい。呼吸毎に幾らかのCOが肺から除去され、COをほとんどまたは全く含まない新鮮な空気(CO濃度は0であると仮定)が吸い込まれ、残りの肺胞PCOを希釈して、混合静脈血から肺胞の中へ拡散する新たなCOの勾配を確立させる。通常L/分によって表現される呼吸数、即ち、毎分換気量(V)は、肺へ運ばれるCOを除去し、ほぼ40Torr(40mmHg)(正常なヒト)の平衡PCO(およびPaCO)を維持するためにちょうど必要な値である。より多くのCOを生成するとき(例えば、発熱または運動の結果)、より多くのCOが生成され、肺へ運ばれる。次いで、激しく呼吸(過換気)して肺胞から余分なCOを流し去ることによって、同じ平衡PaCOを維持する。しかしながら、CO生成が正常に留まり、かつ、過換気する場合、PaCOは低下する。反対に、CO生成が一定に留まり、換気が低下する場合、動脈PCOは上昇する。吸気体積の一部は、気道(気管、気管支)およびほとんど血液の潅流しない肺胞へ行くため、呼気中のCOの除去に寄与しない。この部分は“死腔”ガスと呼ばれる。Vのうち肺胞をよく潅流しガス交換に参加する部分は、肺胞換気量(VA)と呼ばれ、肺胞におけるガス交換に参加して吐き出されるガスは“肺胞ガス”と呼ばれる。
【0014】
測定される呼気性COの関数として換気パラメータを監視および制御することは、換気システムにおいて一般に用いられる。特許文献1には、レザバーサイズを調節して吸気のCO濃度を制御するための手段として肺胞ガスCO分圧の測定を用いる人工呼吸器が記載されている。特許文献2には、麻酔からの回復中に患者の自然な換気駆動を強めるように吸気CO濃度を調節する人工呼吸器が記載されている。特許文献3には、初期のキャリブレーションサンプルを利用してPaCOのよりよい精度を提供する方法が記載されている。特許文献4乃至6には、COレベルを一定に保持する(“等CO濃度(isocapnia)”)ように、レザバーを用いて後に吸気中に再び呼吸する際に用いる呼気を貯蔵する携帯可能な人工呼吸器が記載されている。さらに特許文献5は、特許文献7において、死腔ガスから肺胞ガスを分離し、後の再呼吸における呼気COを濃縮す
る方法を提供することによって洗練されている。特許文献8には、後に吸気ガス流へ放出される呼気COガスを吸収および貯蔵する空間効率的なCO交換器を利用して、CO濃度を高める人工呼吸器が記載されている。
【特許文献1】米国特許第4,112,938号明細書
【特許文献2】米国特許第5,320,093号明細書
【特許文献3】米国特許第5,402,796号明細書
【特許文献4】米国特許5,778,872号明細書
【特許文献5】米国特許6,612,308B2号明細書
【特許文献6】米国特許6,799,570B2号明細書
【特許文献7】米国特許第6,622,725B1号明細書
【特許文献8】米国特許第6,951,216B2号明細書
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
一般に、本発明は、心停止または正常な循環の中断される別の状態にある患者を蘇生させるための装置および方法を特徴とする。人工呼吸器は、患者に混合ガスを送達するために用いられる。この人工呼吸器は、COの分圧を調節し患者の肺からのCOの排出を遅らせるのに充分に高い1つ以上の分圧とすることによって、心拍再開に続く期間において患者の組織の低減されたpHを維持するように構成されている。
【0016】
好適な一実施形態では、次の1つ以上の特徴が組み込まれてよい。期間中、COの分圧は周囲のCO分圧より高くなるように調節され得る。COの分圧を調節することは患者の吸気する混合ガスへCOを加えることを含み得る。この装置は患者の生理学的状態を測定するためのセンサおよび関連する処理を含み、COの分圧は少なくとも部分的にはセンサの出力に応じて調節され得る。センサおよび関連する処理は心拍再開を検出するように構成されており、COの分圧は心拍再開の検知に応じて変更され得る。期間は30秒より長くてよい。期間は3分より長くてよい。センサはCOセンサを含み得る。COの分圧を調節することは心拍再開に続く期間において患者の組織のpHを7.0未満に維持する効果を有し得る。患者の組織のpHは6.8未満に維持され得る。患者の組織のpHは6.5未満に維持され得る。この装置は、除細動器と、胸部圧迫器と、注入器と、患者の組織のpHを判定するためのセンサおよび関連する処理とのうちの1つ以上を含み、COの分圧は少なくとも部分的には患者の組織のpHに応じて調節され得る。心拍再開に続く期間においてCOの分圧は組織のpHを6.8未満に維持するように調節され得る。患者の組織のpHを徐々に上昇させるように、期間のうちの少なくとも一部を通じてCOの分圧は徐々に低下され得る。この装置は、患者のCO停留と患者の組織のpHとの間の関係に関する数学モデルを用いる処理を含み得る。数学モデルはヘンダーソン−ハッセルバルヒの式を用いる処理を含み得る。この装置は、換気サイクルにおけるCOの吸気体積と呼気体積とを測定するための機器および処理と、吸気体積と呼気体積とを用いてCOの分圧を調節することと、ECOレベルを監視するための機器および処理とを含み、COの分圧は心停止前に心停止の犠牲者に見られるレベルより高くECOレベルを維持するように調節され得る。COの分圧を調節することは分圧を第1のサイクルにおけるより低いレベルと第2のサイクルにおけるより高いレベルとの間に調節することによって行われ得る。ここで、第1のサイクルにおいてCOの分圧は事前に測定されたECOレベルより低く、第2のサイクルにおいてCOの分圧は事前に測定されたECOレベルより高く、より低いレベルおよびより高いレベルはECOを所望のレベルに維持するように調節され得る。心拍再開に続く期間のうちの少なくとも一部において換気レートに対する胸部圧迫レートの比が15:2未満であるように、人工呼吸器および胸部圧迫器は制御され得る。比は5:1未満であり得る。比は6:2未満であり得る。この装置は輸液器具を含み得る。輸液器具は代謝物質を含む液体を再灌流中に注入するように構成され得る。代謝物質はアミノ酸を含み得る。アミノ酸はアスパラギン酸塩、ジヒドロキシアセトンリン酸塩またはグルタミン酸塩を含み得る。この装置は除
細動器、圧迫器および注入器を含み得る。除細動器、圧迫器、人工呼吸器および注入器は別個の器具であり、通信リンクによって接続され得る。別個の器具は追加のコンピューティングデバイスを用いて全て同期され得る。人工呼吸器による負圧および陽圧の両方が利用可能であり得る。人工呼吸器は酸素レベルを40%より高く上昇させるように構成され得る。期間は心拍再開の前に開始し得る。期間は心拍再開の直前に開始し得る。
【0017】
幾つかの実施形態では、二酸化炭素を吸気ガスへ加えることによって心拍再開(ROSC)の直前および心拍再開に続く0〜60分の期間中、組織pHを低く維持すると同時に、正常な室内気濃度と比較して酸素含有量を増大し、脳、心臓その他の重要臓器の酸素処理を強化することによって、再潅流障害が減少される。
【0018】
図1,2を参照する。図1のブロック図には、種々の蘇生の態様に対処するように設計されている構成要素、即ち、除細動器13、機械的な圧迫器12および人工呼吸器15を備える、統合蘇生システム(IRS)を示す。混合バルブ35を介して、換気ガス(詳細には酸素)、大気および二酸化炭素の分圧を制御することによって、IRSは、ほぼROSCの直前に存在する正常レベル未満に患者の組織pHを維持することが可能である。
【0019】
組織pHは次の周知の生理学的機構によって制御される。COの輸送は血液および組織の酸−塩基状態に有意な影響を及ぼすことが可能である。腎臓が1日あたり100モル当量未満の不揮発酸しか排出しないのと比較して、肺は1日あたり10,000モル当量を超える炭酸を排出する。したがって、肺胞換気量を変更することと、COの除去とによって、脳、心臓、腸その他の器官の組織の酸性度が変更され得る。血液中、COは3つの形態、即ち、溶解された形態、重炭酸イオンとしての形態、およびカルバミノ化合物などのタンパク質に結合した形態、にて運ばれる。溶液では、二酸化炭素は水和されて炭酸を形成する。
【0020】
【化1】

【0021】
血液中の二酸化炭素のうち最大の部分は重炭酸イオンの形態をしている。重炭酸イオンは炭酸のイオン化によって形成される。
【0022】
【化2】

【0023】
質量作用の法則を用いて、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式が導かれる。
【0024】
【化3】

【0025】
ここで、αPCO2はCOおよびHCOの全濃度である。ハッセルバルヒの式の対数形は次の形式となる。
【0026】
【化4】

【0027】
ここで、Kは炭酸の解離定数であり、6.1に等しい。
正常なHCO濃度は24mmol/リットルであり、得られるpHは7.4である。心停止または外傷による全虚血中には、COレベルの増大の結果、pHは7未満に低下し、一般的には6.5〜6.8の範囲となる。肺胞における循環およびガス交換が再開すると、身体がCOレベルの減少を試みるので、一般的に用いられる呼気CO濃度計(カプノグラフ;capnograph)またはカプノメータによって測定される呼吸終期の二酸化炭素(ECO)値は、心停止中に典型的に見られる10Torr(10mmHg)未満の値から、正常値より高い50〜75Torr(50〜75mmHg)の値まで急速に増大する。正常値は、ほぼ35Torr(35mmHg)である。
【0028】
図3A,3Bを参照する。段階Iは気道死腔を表す。段階Iは誘導気道から吐き出される呼吸のうち、COのない部分である。段階IIは気道死腔ガスと肺胞ガスとの混合を表し、COの著しい上昇によって特徴づけられる。段階IIIは肺胞換気を表す。プラトー部分は肺胞の有効換気量のレベルを表す。グラフ上に2つの線が作図される。一方の線は段階IIIのスロープ部分の上に作図され、他方の線はp,qの面積が等しくなるように作図される。
【0029】
気道死腔は、呼気の開始から、呼気体積の軸と垂直線が交差する点までで測定される。呼吸におけるCO体積は、曲線の下の全面積である領域Xと等しい。個々の呼吸体積を加算することによって、ml/分での最小CO除去の計算が可能となる。また、動脈PCOが既知である場合、生理学的なVd/Vtや生理学的死腔および肺胞死腔を計算することも可能である。動脈PCO値を表す線は呼気体積の軸と平行に作図されて、領域Y,Zを作成する。領域Xは、呼気一回換気量におけるCOの体積を表す。領域Y,Zは、それぞれ肺胞死腔および気道死腔による無効換気を表す。
【0030】
図1,4A,4Bと、図5のフローチャートとを参照する。マイクロプロセッサなどの電子プロセッサやメモリおよびサポートロジックから構成される処理ユニット14は、次のような既知の手法のうちの1つまたはそれらの組み合わせによって、最初に、心停止が進行中であることを決定する。(1)心電図記録(ECG)が心室性細動、心室頻脈、PEAもしくは不全収縮によるリズムであるか、または正常洞調律など上室性起源のリズムであるかを判定するECG分析、(2)血流が存在するか否かを判定する経胸腔的インピーダンス信号の分析、(3)単純に、心停止が進行中であることを示す救助者4によるユーザインタフェース6を介する入力による。心停止が進行中であると判定される場合、差動流量制御(DFC)サブユニットにおける電子制御流れバルブ35を介して、吸気混合ガスが主に酸素である(60〜100%)ように調節される。心停止(CARDIAC ARREST)状態になると、処理ユニット14はROSCを規定する入力を待機する。この入力は、ROSCが生じたとの救助者によるユーザインタフェースを介する入力のように簡単であってもよいが、好適には、入力は、呼気における呼吸終期のCO(ECO)値2を測定するカプノメータ信号を含む。処理ユニット14は、ベースライン心停止ECO値の30%を超える30秒間の増加と25Torr(25mmHg)を超える値とを検出するとき、ROSC状態に入り、吸気混合ガスにCOを加える過程を開始する。
【0031】
幾つかの実施形態では、吸気混合ガスにおける所望のCO分圧は、ECO値単独の関数である。最初の換気では、CO分圧(CO2i)がECOの値の90%(C
2i)であるように、酸素、室内気およびCOの流量比がセットされる。次いで、処理ユニット14は呼吸終期の値がCO2iより高いことを確認するために、続く呼気のECO値を検査する。呼吸終期の値がCO2iより高い場合、次のCO2iは最近のECOの110%にセットされる。ECOがCO2iより高いことが見出されない場合、次の換気のCOの分圧は10%だけ減少される。3つのそうしたサイクルの後、ECOがCO2iより高いことが見出されない場合、呼気COのベースラインレベルを取得するために、CO2iは0まで減少される。CO2iがECOの値の110%(CO2i)にセットされた換気サイクルにおいて、続く呼気のECO値がCO2i未満でない場合、次の換気サイクルのCOの分圧は、さらに10%だけ増大される。
【0032】
図2を参照すると、人工呼吸器は、米国特許第5,664,563号明細書に記載のものなど2重ベンチュリ32によって、負圧・陽圧の両方を提供する。安全機構は遮断弁31および排気バルブ28によって提供される。加熱器/加湿器要素33は吸気回路へ入る前のガスを調整し、カプノメータセンサ22および一回換気量センサ21を用いてカプノメータ測定値が決定される。
【0033】
再び図3A,3Bを参照すると、流量およびCO濃度(分圧)の両方を測定することによって、吸気・呼気サイクルにおけるCOの量がCO流量を積算することにより追跡され得る。超過COの量は既知でない場合があるが、血流から肺胞へ移されるCOの量は、吸気・呼気サイクルにおけるCO体積の差を測定することによって正確に制御され得る。したがって、一定のCOレベルを達成するため、吸気・呼気サイクルにおけるCO体積が等しくなるようなレベルまでCO2iが増大される。精度を増すために、吸気・呼気サイクルに対する体積測定の測定値は幾つかのサイクルを通じて平均されてもよい。
【0034】
他の実施形態では、次の米国特許明細書に開示の方法などによって、組織のCOまたはpHが測定される。米国特許第6,055,447号明細書には、舌下組織COセンサが記載されている。米国特許第5,813,403号明細書、米国特許第6,564,088号明細書および米国特許第6,766,188号明細書には、近赤外線分光(NIRS)を介して組織pHを測定するための方法および装置が記載されている。NIRS技術では、組織のPO,PCO,pHを同時に測定することが可能となる。組織pHの測定における従来の方法の1つの欠点は、蘇生中を通じる一連の測定により与えられるベースライン測定における相対精度には優れるが、皮膚色素など患者固有のオフセットの結果、絶対精度は良好でなかったことである。本明細書に記載の実施形態の利点のうちの1つは、それらのpH測定値には蘇生中を通じてオフセットおよび利得が安定していることのみが必要であり、絶対精度は必要ないことである。多数の換気サイクルを通じて組織pHの応答は遅いので、主として以下の管理について組織pHを調整する目的でCO2iを調節することによって、ECOレベルの制御を増大するために用いられる。(1)ROSCに続く最初の5分間、pHは平坦なままであること、(2)5〜10分の期間、組織pHの増大は0.4pH単位/分未満であり、かつ、絶対数6.8を超えないように制限されること、(3)10〜15分の期間、pHが依然として6.8未満である場合、ほぼ0.4pH単位/分のレートでpHが増大するようにCO2iは調節され、組織pHが7より大きい場合、0.2pH単位/分より遅いレートにCO2iは調節されること、である。
【0035】
より短い虚血期間による心停止の場合など幾つかの場合、COレベルを増大させることによって、心停止犠牲者に存在するレベル未満にpHレベルを低下させることが所望されることがある。そうした場合、上述の管理の段階1中にpHが減少する。
【0036】
また、組織CO、したがってpHは、CO2iおよびCO2iのレベルを介して吸気COレベルを増大または減少させることによって調節される。例えば、両方のレベルを減少させると、追加のCOは吐き出されるため、組織pHは減少する。調節は毎分ほぼ3回、ほぼ10%の増分により行われる。CO2iおよびCO2iのレベルの更新レートが低いのは、CO2i変更によるpH変化の時定数も同様に遅いためである。
【0037】
他の実施形態では、Crit Care Med(Critical Care Medicine;クリティカル・ケア・メディシン)、2000年、第28巻、第11号(補遺)に記載の医学知識など、医学知識を閉ループフィードバックシステムに組み込み、蘇生中に組織pHを制御するための上述の方法を補う。この著者の記述など、微分方程式からなるシステムが幾つかの出版物に記載されている。この特定の例では、「ヒトの循環は、血液が流れ得る抵抗によって関連した、7つの伸展性の房(chamber)によって表現される。伸展性は、胸大動脈、腹大動脈、上大静脈および右心、腹部静脈および下肢静脈、頚動脈ならびに頚静脈に相当する。また、胸隔は肺血管および左心伸展性を表すポンプを含む。このポンプは、圧力が加えられて血液が心臓自体から大動脈弁まで搾り出される、心臓のような心臓ポンプとして機能するように構成されてもよく、圧力が加えられて血液が肺血管床から左心を通じて末梢部へ搾り出される、全胸部圧力ポンプとして機能するように構成されてもよい。教科書的な標準の“70kgのヒト”を記述する生理学的変数の値を用いて、モデルにおける伸展性および抵抗を指定する。脈管のコンダクタンス(1/抵抗)の頭蓋、胸郭および尾部の構成要素への分配は、様々な身体部位への心拍出量の教科書的な分配を反映している」。これらの方程式に加えて、複数の実施形態では、吸気体積測定および一般肺胞気道方程式、ヘンダーソン・ハッセルバルヒの式ならびに身体における二酸化炭素貯蔵に関する3隔室モデルが組み込まれてよい。最も時定数の低い隔室は脳、血液、腎臓、心臓の、よい潅流器官に相当し、第2の隔室は骨格筋に相当し、第3の隔室は他の全ての組織に相当する。
【0038】
図5を参照すると、閉ループフィードバック方法は、COおよびpHの効果を含めることにより補われる上述の生理学的モデルによって提供される、システム推定ブロック55による状態空間法を用いて行われる。当業者には知られているように、フィードバック制御器53は、比例、微分、積分(PID)など従来の制御系の方法を用いてもよく、状態フィードバック制御方法を用いてもよい。
【0039】
心停止犠牲者はROSC中に自発呼吸を行っており、中枢化学受容器はCOレベルの上昇およびpHの低下によって刺激されるので、人工呼吸器は犠牲者自身の吸気努力に応答する必要がある。患者の呼吸努力を判定するために、圧力感知が用いられる。同期式間欠的強制換気法(SIMV)と吸気の圧支持換気法(PSV)との組み合わせは、呼吸の必要な犠牲者に適切な応答性を提供すると同時に、CO2iを介してpCOを調整することが可能であるような充分な量の毎分換気量を提供するために用いられる。SIMVによって人工呼吸中に犠牲者が呼吸を行うことが可能となり、PSVによって、犠牲者が大部分は自身の制御によるパターンの吸気を行うことが補助される。PSVでは支持量は変数であり、ROSCの初期段階ではより多くの支持が提供され、ROSC中を通じて犠牲者の状態が改善するにつれ、支持が徐々に減少される。
【0040】
薬品注入器14は、pHの増大を可能とする前に、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩または他の代謝活性物質など、本発明のpH低下再灌流状態中に乳酸塩レベルを再正常化し、細胞質ゾルのカルシウム恒常性を回復するために必要なATP貯蔵を生成する際に特に有効な他の物質を送達するために用いられてもよい。
【0041】
胸部圧迫器12および人工呼吸器15は除細動器、また生理学的モニタ10から物理的に分離していてもよく、胸部圧迫器12および人工呼吸器15の制御は通信リンク16に
よって行われてもよい。通信リンク16は器具を接続するケーブルの形態であってもよいが、好適には、この通信リンク16は、ブルートゥース(登録商標)などの無線プロトコルまたは電気電子学会(IEEE)802.11などの無線ネットワークプロトコルによる通信リンクである。別個の胸部圧迫器12は、カリフォルニア州サニーヴェール所在のZOLL Circulatory Systemsによって市販されるAutopulse(商標)など、携帯可能な胸部圧迫器具であってよい。別個の人工呼吸器15は、ニューヨーク州パールリヴァー所在のVersamedによって市販されるiVent(商標)などの人工呼吸器であってよい。別個の薬品注入器14は、ペンシルバニア州プリマスミーティング所在のInfusion Dynamicsによって市販される、Power Infuser(商標)や、イリノイ州ラウンドレイク所在のBaxter Healthcare社によって市販されるColleague CX(商標)など、薬品輸液器具であってよい。また、胸部圧迫器12、人工呼吸器15、薬品注入器14および除細動器13は、カリフォルニア州サニーヴェール所在のZOLL Circulatory Systemsによって市販されるAutopulse(商標)用のハウジングなど、1つのハウジングへ組み込まれてよい。
【0042】
他の実施形態では、蘇生イベント全体と、様々な療法の送達との制御および協調は、デバイス17、即ち、胸部圧迫器、人工呼吸器または除細動器の外部にある処理要素、によって行われてよい。例えば、デバイス17は、除細動器からECGデータをダウンロードして処理し、ECG信号を分析し、その分析に基づき決定を行い、除細動器13を含む他の治療器具を制御するラップトップコンピュータもしくは他のハンドヘルドコンピュータまたは専用のコンピューティングデバイスであってよい。心停止に対するシステムを記載したが、このシステムは外傷犠牲者に、または特に犠牲者が全身虚血であり、蘇生には患者が再灌流の状態を経ることの必要な他の心停止の形態にも適用可能である。
【0043】
添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の内には、上述の実施形態以外の本発明の他の多くの実施形態が存在する。特許請求の範囲における“処理”の参照は、ソフトウェアを実行するマイクロプロセッサ(ならびに関連するメモリおよびハードウェア)を含む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】機械的な胸部圧迫器具に組み込まれた人工呼吸器と、除細動器とを含む、本発明の一態様の一実施形態のシステムのブロック図。
【図2】図1の場合の人工呼吸器のブロック図。
【図3A】典型的な呼吸終期のカプノグラフ測定カーブを表すプロット。
【図3B】典型的な呼吸終期のカプノグラフ測定カーブを表すプロット。
【図4A】吸気COレベルの上昇した呼吸終期のカプノグラフカーブ(点線)を表すプロット。
【図4B】吸気COレベルの上昇した呼吸終期のカプノグラフカーブ(点線)を表すプロット。
【図5】図1の実施形態の混合ガス制御ループのブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
心停止または正常な循環の中断される別の状態にある患者を蘇生させるための蘇生装置であって、
患者に混合ガスを送達するための人工呼吸器と、
人工呼吸器は、COの分圧を調節し患者の肺からのCOの排出を遅らせるのに充分に高い1つ以上の分圧とすることによって、心拍再開に続く期間において患者の組織の低減されたpHを維持するように構成されている機器を含むことと、からなる蘇生装置。
【請求項2】
前記期間中、COの分圧は周囲のCO分圧より高くなるように調節される請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項3】
COの分圧を調節することは患者の吸気する混合ガスへCOを加えることを含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項4】
患者の生理学的状態を測定するためのセンサおよび関連する処理と、
COの分圧は少なくとも部分的にはセンサの出力に応じて調節されることと、を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項5】
センサおよび関連する処理は心拍再開を検出するように構成されていることと、
COの分圧は心拍再開の検知に応じて変更されることと、を含む請求項4に記載の蘇生装置。
【請求項6】
前記期間は30秒より長い請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項7】
前記期間は3分より長い請求項6に記載の蘇生装置。
【請求項8】
センサはCOセンサを含む請求項5に記載の蘇生装置。
【請求項9】
COの分圧を調節することは心拍再開に続く期間において患者の組織のpHを7.0未満に維持する効果を有する請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項10】
患者の組織のpHは6.8未満に維持される請求項9に記載の蘇生装置。
【請求項11】
患者の組織のpHは6.5未満に維持される請求項10に記載の蘇生装置。
【請求項12】
除細動器を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項13】
胸部圧迫器を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項14】
注入器を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項15】
患者の組織のpHを判定するためのセンサおよび関連する処理と、
COの分圧は少なくとも部分的には患者の組織のpHに応じて調節されることと、を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項16】
心拍再開に続く期間においてCOの分圧は組織のpHを6.8未満に維持するように調節される請求項15に記載の蘇生装置。
【請求項17】
患者の組織のpHを徐々に上昇させるように、前記期間のうちの少なくとも一部を通じ
てCOの分圧は徐々に低下される請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項18】
患者のCO停留と患者の組織のpHとの間の関係に関する数学モデルを用いる処理を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項19】
前記数学モデルはヘンダーソン−ハッセルバルヒの式を用いる処理を含む請求項18に記載の蘇生装置。
【請求項20】
換気サイクルにおけるCOの吸気体積と呼気体積とを測定するための機器および処理と、
同吸気体積と呼気体積とを用いてCOの分圧を調節することと、を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項21】
COレベルを監視するための機器および処理と、
COの分圧は心停止前に心停止の犠牲者に見られるレベルより高くECOレベルを維持するように調節されることと、を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項22】
COの分圧を調節することは分圧を第1のサイクルにおけるより低いレベルと第2のサイクルにおけるより高いレベルとの間に調節することによって行われることと、
第1のサイクルにおいてCOの分圧は事前に測定されたECOレベルより低いことと、
第2のサイクルにおいてCOの分圧は事前に測定されたECOレベルより高いことと、
より低いレベルおよびより高いレベルはECOを所望のレベルに維持するように調節されることと、を含む請求項21に記載の蘇生装置。
【請求項23】
心拍再開に続く期間のうちの少なくとも一部において換気レートに対する胸部圧迫レートの比が15:2未満であるように、人工呼吸器および胸部圧迫器は制御される請求項13に記載の蘇生装置。
【請求項24】
前記比は5:1未満である請求項23に記載の蘇生装置。
【請求項25】
前記比は6:2未満である請求項24に記載の蘇生装置。
【請求項26】
輸液器具を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項27】
輸液器具は代謝物質を含む液体を再灌流中に注入するように構成されている請求項26に記載の蘇生装置。
【請求項28】
代謝物質はアミノ酸を含む請求項27に記載の蘇生装置。
【請求項29】
アミノ酸はアスパラギン酸塩、ジヒドロキシアセトンリン酸塩またはグルタミン酸塩を含む請求項28に記載の蘇生装置。
【請求項30】
除細動器、圧迫器および注入器を含む請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項31】
除細動器、圧迫器、人工呼吸器および注入器は別個の器具であり、通信リンクによって接続されていることを含む請求項30に記載の蘇生装置。
【請求項32】
前記別個の器具は追加のコンピューティングデバイスを用いて全て同期される請求項3
1に記載の蘇生装置。
【請求項33】
人工呼吸器による負圧および陽圧の両方が利用可能である請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項34】
人工呼吸器は酸素レベルを40%より高く上昇させるように構成されている請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項35】
前記期間は心拍再開の前に開始する請求項1に記載の蘇生装置。
【請求項36】
前記期間は心拍再開の直前に開始する請求項35に記載の蘇生装置。
【請求項37】
心停止または正常な循環の中断される別の状態にある患者の蘇生方法であって、
患者に人工呼吸器を適用する工程と、
人工呼吸器を用いて患者に混合ガスを送達する工程と、
人工呼吸器は、COの分圧を調節し患者の肺からのCOの排出を遅らせるのに充分に高い1つ以上の分圧とすることによって、心拍再開に続く期間において患者の組織の低減されたpHを維持するように構成されていることと、からなる方法。
【請求項38】
前記期間中、COの分圧は周囲のCO分圧より高くなるように調節される請求項37に記載の方法。
【請求項39】
COの分圧を調節することは患者の吸気する混合ガスへCOを加えることを含む請求項37に記載の方法。
【請求項40】
患者の生理学的状態を測定するためのセンサおよび関連する処理を提供する工程と、COの分圧は少なくとも部分的にはセンサの出力に応じて調節されることと、を含む請求項37に記載の方法。
【請求項41】
センサおよび関連する処理は心拍再開を検出するように構成されていることと、COの分圧は心拍再開の検知に応じて変更されることと、を含む請求項40に記載の方法。
【請求項42】
COの分圧を調節することは心拍再開に続く期間において患者の組織のpHを7.0未満に維持する効果を有する請求項37に記載の方法。
【請求項43】
患者の組織のpHを判定するためのセンサおよび関連する処理を用いる工程と、
少なくとも部分的には患者の組織のpHに応じてCOの分圧を調節する工程と、を含む請求項37に記載の方法。
【請求項44】
前記期間は心拍再開の前に開始する請求項37に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−195977(P2007−195977A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−12795(P2007−12795)
【出願日】平成19年1月23日(2007.1.23)
【出願人】(504242032)ゾール メディカル コーポレイション (42)
【氏名又は名称原語表記】ZOLL Medical Corporation