説明

虫除けシート

【課題】交換時期を確実に認識できる貼付タイプの虫除けシートを提供する。
【解決手段】揮発性の害虫忌避剤を含浸させたシート状基材10と、前記シート状基材10を被接着対象体に対して着脱可能とする接着部12とを有する虫除けシート1であって、前記害虫忌避剤の残留状態を示す表示部11を更に備えている。この虫除けシート1は、害虫忌避剤の残留状態を示す表示部11を備えているので、ユーザが表示部の表示を目視により確認して交換時期を確実に認識できる。よって、虫除け効果が無くなるときに必要な交換を行って、常に不快害虫を回避できる。また、使用できる虫除けシートを交換するという不経済を防止することもできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蚊、蜂、虻、蚋、蚤、ダニなどのように人の皮膚に取付いて、痒みや痛みを与える害虫(以下、不快害虫と称する)を回避するための虫除けシートに関する。より詳細には、不快害虫が忌避する(嫌って逃げる)臭いや味に調製した薬剤(以下、単に忌避剤と称する)を用いて虫除けをする(虫を回避する)ための虫除けシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から不快害虫を除ける(回避する)ために種々の手段が講じられている。例えば蚊については、蚊取り線香や電子式の香取マットなどがよく知られている。しかし、これらは火や電気に基づいた熱源を必要とするので携帯性に劣るという大きな欠点があった。
【0003】
上記の欠点を解消するものとして、不快害虫の忌避剤を肌に直接に付けるようにした虫除けクリームやスプレーなどが提案されていた。しかし、このタイプの虫除けの場合には害虫忌避剤を肌に直接、噴射したり、擦り込んで使用することになる。そのために採用できる薬剤やその濃度、また継続して使用可能な時間などにも限界がある。更に、ユーザのアレルギー反応などについても十分な配慮が必要となる。よって、この直付けタイプの虫除けは携帯性への要求は満たすものの、期待できる虫除けの効果が相対的に低く、肌が弱い人や乳幼児などには使用できないなどの制限があった。
【0004】
そこで、特許文献1や特許文献2では衣類や身の回り品など(被接着対象体)に貼付けできるように形成した防虫シール(虫除けパッチ)を提案している。これら虫除けのシートは忌避剤を含浸させた基材に接着層が設けられているので、任意の被接着対象体に貼り付けることができる。この貼付タイプの虫除けシートは携帯性があり、採用する忌避剤についても上記スプレータイプのものよりは相対的に強力であるものを採用できる。よって、例えば乳児の衣類や乳母車などに虫除けシートを貼付けておけば、不快害虫をより効果的に避けることができることになる。
【0005】
【特許文献1】特開平9−40508号公報
【特許文献2】特開2000−128720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の貼付タイプの虫除けシートは基材に含浸させた忌避剤が揮発性を有しており、徐々に発散させることで前述したような虫除け効果を発揮させるものである。よって、時間と共に残留している忌避剤が減少しくるので、忌避効果が得られなくなったときには新しいものに速やかに交換する必要がある。そのために、従来にあっては、貼付タイプの虫除けシートについては大凡の有効時間が明示されていた。しかし、虫除けシートを使用する環境(外気温、湿度、日当たりなど)により、基材に残留する忌避剤は変化する。忌避剤が完全に揮発してしまった虫除けシートをそのまま貼り付けておいても不快害虫を回避することはできない。
【0007】
しかしながら、従来の貼付タイプの虫除けシートには、ユーザが忌避剤の残留状態を確認できる手段がなかった。よって、確実に不快害虫からの被害を避けるためには早めに交換をしたり、シートの臭いを嗅いで忌避剤の存在を確認するなどの対処をする必要があった。しかし、未だ使用できるものを早めに交換することは不経済であり、また臭いを嗅いで忌避剤の状態を確認するというのはユーザにとって面倒あり、その判断自体もあいまいとなるので不快害虫を確実に避けることが困難となる。
【0008】
よって、本発明の目的は、交換時期を確実に認識できる貼付タイプの虫除けシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、揮発性の害虫忌避剤を含浸させたシート状基材と、前記シート状基材を被接着対象体に対して着脱可能とする接着部とを有する虫除けシートであって、前記害虫忌避剤の残留状態を示す表示部を更に備えていることを特徴とする虫除けシートにより達成できる。
【0010】
本発明による虫除けシートは害虫忌避剤の残留状態を示す表示部を備えているので、ユーザは表示部の表示を目視により確認して交換時期を確実に認識できる。よって、虫除け効果が無くなったときに必要な交換を行って、常に不快害虫を回避できる。また、使用できる虫除けシートを交換するという不経済を防止することもできる。
【0011】
前記表示部は、前記シート状基材内に残存する前記害虫忌避剤の量に応じて光に対する屈折率を変化させる素材で形成することができる。
【0012】
そして、前記光に対する屈折率を変化させる素材は、不織布及び/又は微粒粉体とすることができる。
【0013】
また、前記害虫忌避剤がクローブ油、シトロネラ油、コウスイガヤ、ガーリックオイル、シトロネラール、樟脳、樟脳油、その他の虫除け効果を有する揮発性油類から選択されたいずれか、又はこれらの2つ以上の混合物よりなる群から選択されたいずれかとすることができる。
【0014】
上記に記載の虫除けシートを衣類や身の回り品に貼着可能な大きさに裁断して所定の大きさのパッチ状とし、当該パッチを剥離紙上に複数を配列した携帯用の虫除けシートとすることができる。このようにすると持ち歩きに便利な携帯用の虫除けシートとなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、交換時期を確実に認識できる貼付タイプの虫除けシートを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態に係る虫除けシートについて説明する。図1は、実施形態に係る虫除けシート1の構成を拡大して示した図である。この虫除けシート1は、ベースとなるシート状基材10の片面(図1では上面)側に表示部11、この表示部11とは反対面(図1では下面)側に接着部12を設けて構成されている。
【0017】
シート状基材10は、不快害虫の忌避剤を含浸可能な素材を用いて形成されている。シート状基材10は、忌避剤に対して化学的に不活性で、これを含浸できるシート状の素材であれば特に限定はない。シート状基材10としては、例えば板紙、濾紙、合成繊維混抄紙等の紙材、不織布、フェルト状織物、無機繊維シート、セラミック系またはプラスチック系多孔質材など一般に多孔性構造材と称され、液体(忌避剤)保持能力があるものが好ましい。シート状基材10は、後述する表示部11との関係から必要に応じて適宜に着色を施してもよい。
【0018】
上記シート状基材10には、忌避剤として不快害虫が忌避する(嫌って逃げる)臭いや味に調製した揮発性を有する液状の薬剤が含浸される。このような忌避剤としては、クローブ油、シトロネラ油、コウスイガヤ、ガーリックオイル、シトロネラール、樟脳、樟脳油、その他の虫除け効果を有する天然植物由来の揮発性油類を採用するのが望ましい。また、これらの2つ以上をまぜた混合物によりシート状基材10に含浸させるべき忌避剤を構成してもよい。
【0019】
この虫除けシート1は、ユーザが不快害虫を回避したい場面で任意の箇所(被接着対象体)に貼り付けできるようにシート状基材10の片面に接着部12を設けてある。被接着対象体は、ユーザが身に着けている衣類や帽子、バッグなどの身の回り品が一般的である。また、ユーザが乳幼児である場合には、被接着対象体がベビー服、乳母車などとなる。ただし、この虫除けシート1は室外だけで使用することを想定したものではない、ベッドなどの家具や窓などに貼り付けて屋内で使用してもよい。このように、本実施例の虫除けシート1が貼り付けられる被接着対象体は、ユーザが不快害虫を回避したいときに貼り付けできるあらゆる箇所が含まれる。図1で示している構造例では、シート状基材10の下面に接着剤を塗布することにより接着部12が形成されている。接着部12の表面に剥離紙14を貼り付けておき、使用時に剥離紙14を剥がして使用できるようにしておくのがより好ましい形態である。
【0020】
そして、シート状基材10に含浸させた忌避剤が接着部12の接着剤と接触しない構造とするのが好ましい。よって、シート状基材10と接着部12との間には忌避剤を遮断するバリア層13を配備しておくのが好ましい。バリア層13としては樹脂のフィルム、例えばポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルのフィルムなど採用できる。このようなフィルムは忌避剤を通過させないので、シート状基材10に含浸させた忌避剤を表面側から揮発させる状態を形成できる。なお、バリア層13は、後述する表示部11との関係から必要に応じて着色したフィルムを選択してもよい
【0021】
以上で説明した構成は、従来の貼付タイプの虫除けシートと同様である。前述したように従来の虫除けシートの場合には忌避剤の残留状態を確認できないという不都合があった。本実施例の虫除けシート1は、忌避剤の残留状態を示す表示部11を新規に備えているので従来のような不都合が解消されている。以下、さらに表示部11について説明する。
【0022】
表示部11はシート状基材10に含浸された忌避剤に対して透過性を有し、シート状基材10内に残存する忌避剤の量に応じて光に対する屈折率を変化させるものである。より詳細に説明すると、虫除けシート1のシート状基材10に含浸させている忌避剤は揮発性の液体であり、時間と共に揮発するので存在している忌避剤(残留量)は徐々に減少する。そして、表示部11は揮発性の液体が存在する状態(残留量)に応じて光に対する屈折率を変化させる。すなわち、表示部11はインジケータ機能を呈するものである。このような表示部11は、シート状基材10に接して配置される不織布及又は微粒粉体により形成してもよいし、或いはこれら不織布及び微粒粉体により形成してもよい。
【0023】
上記表示部11を微粒粉体で形成する場合、例えば以下のように形成できる。忌避剤(液体)が存在するときには光に対し低屈折率を呈する無定形シリカ、カオリン、炭酸カルシウム等の白色無機顔料、プラスチックピグメント等の有機顔料の微粉粒体に、バインダーを混合した形成材を用いて表示部11を形成できる。バインダーとしては、酢酸ビニル、EVA、NBR、SBR、アクリル系その他のラテックス等を用いることができる。適宜に着色剤を添加してもよい。但し、忌避剤が存在して透明である時にはシート状基材10の表面の色が確認できるので、これと同系色あるいは視覚的に認識できない色とするのが望ましい。忌避剤が揮発して表示部11が不透明化したときはシート状基材10とのコントラストが大きいことが望ましい。シート状基材10を着色して、赤色、青色などとしたときには表示部11は白色ないし薄い色とするのが好ましい。
【0024】
なお、上記表示部11は文字、数字、記号、図形またはこれらの組合が表示させるように形成できる。表示部11上に忌避剤に対して不透過性があり、周辺に液体がない状態で実質的に無色透明な素材で文字、図形など描いておくことで表示部11自体が不透明化したときにその文字、図形などを出現させることができる。この文字、図形は、フッ素樹脂などの撥油剤、シリコン樹脂、アクリル樹脂などで描いておくことで、忌避剤が揮発したときに文字などが浮き出る構成とすることができる。すなわち、文字、図形などを描いた部分は、忌避剤が揮散して表示部11が不透明化したときに認識できる表示となる。
【0025】
上記表示部11は、従来において公知の塗布技術を適宜に選択して形成することができる。例えば、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビア印刷などの印刷法が用い、シート状基材10上に微粒粉体の塗膜を形成し、更に文字、図形を描くときには対応部分にフッ素樹脂等を塗布すればよい。なお、図1で例示する虫除けシート1は、シート状基材10上に表示部11を形成する基本タイプの構造例を示すものである。図2は、基本構造を変形した虫除けシート2を示している。この虫除けシート2は、シート状基材10に隣接させて表示部11を設けた構造としてある。なお、図2で示すように、表示部11を個別に複数設けてもよい。そして、忌避剤の残留状態で表示をする表示部を変更するようにしてもよい。例えば忌避剤が短時間で無くなるときに表示を出す第1の表示部、さらに忌避剤が完全に無くなった時に表示を出す第2の表示部などのように構成する。このようにすると、ユーザが交換時期をより確実に認識できる、より好ましい虫除けシートにすることができる。
【0026】
上記の説明から理解されるように、表示部11は種々の形態に設計できる。例えばシート状基材10を有色に形成する。そして、表示部11を液体と接触しているとき(忌避剤が存在するとき)には透明であり、忌避剤が揮発したときには不透明化して白色となるように形成する。この場合の虫除けシート1は忌避剤が徐々に減少するに従って白色化するので、ユーザは交換の目途とすることができる。
【0027】
また、図3で示すように表示部11にフッ素樹脂等で「交換時期です!」などの文字を記載しておく。シート状基材10に十分な忌避剤が存在するときには、表示部11が透明であり、図3の上段で示すように「交換時期です!」の文字を目視できない状態にある。しかし、忌避剤が揮発して表示部11が不透明化してくると、図3の下段で示すように色が相対的に変化して文字が確認できるようになる。よって、これによりユーザはこの虫除けシートが交換時期にあることを確実に知ることができる。
【0028】
以上の記載から明らかなように、本実施例の虫除けシート1は接着部を備えるので被接着対象体に簡単に貼り付けるできるため便利であり、しかも害虫忌避剤の残留状態を示す表示部を備えるので交換時期を知ることができる。よって、この虫除けシート1を利用するユーザは、効率良く経済的な交換を行って不快害虫を確実に回避することができる。
【0029】
図4は、更に好ましい虫除けシート1の形態例を示している図である。この虫除けシート1は衣類やバッグなどの身の回り品に貼付し易い大きさに裁断してパッチ(小片)状にしてある。このようなパッチは、例えば直径4〜5cm程度の円形状、一辺が4〜5cm程度の矩形形状である。そして、複数のパッチが剥離紙14上に複数配列してある。このようにパッチ状にした虫除けシートを台紙(剥離紙)に配列しておけば、携帯して素早く貼付できる。よって、利便性に富む虫除けシートとして提供できる。
【0030】
以上本発明の好ましい一実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係る虫除けシートの構成を拡大して示した図である。
【図2】変形した虫除けシートの構成を拡大して示した図である。
【図3】表示部の表示例について示した図である。
【図4】好ましい虫除けシートの形態例について示した図である。
【符号の説明】
【0032】
1、2 虫除けシート
10 シート状基材
11 表示部
12 接着部
13 バリア層
14 剥離紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮発性の害虫忌避剤を含浸させたシート状基材と、前記シート状基材を被接着対象体に対して着脱可能とする接着部とを有する虫除けシートであって、
前記害虫忌避剤の残留状態を示す表示部を更に備えている、ことを特徴とする虫除けシート。
【請求項2】
前記表示部は、前記シート状基材内に残存する前記害虫忌避剤の量に応じて光に対する屈折率を変化させる素材で形成してある、ことを特徴とする請求項1に記載の虫除けシート。
【請求項3】
前記光に対する屈折率を変化させる素材は、不織布及び/又は微粒粉体を含む、ことを特徴とする請求項2に記載の虫除けシート。
【請求項4】
前記害虫忌避剤がクローブ油、シトロネラ油、コウスイガヤ、ガーリックオイル、シトロネラール、樟脳、樟脳油、その他の虫除け効果を有する揮発性油類から選択されたいずれか、又はこれらの2つ以上の混合物よりなる群から選択されたいずれかである、ことを特徴とする請求項1に記載の虫除けシート。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載の虫除けシートを衣類や身の回り品に貼着可能な大きさに裁断して所定の大きさのパッチ状とし、当該パッチを剥離紙上に複数を配列した、ことを特徴とする携帯用の虫除けシート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−100932(P2008−100932A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−283628(P2006−283628)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000176637)三島製紙株式会社 (26)
【Fターム(参考)】