説明

蛇口

【課題】ハンドルを回転させて放水する際、ハンドル操作に際し、勢い余って弁口を必要以上に開放させることなく、放水量を簡便に適正化できる蛇口を提供すること。
【解決手段】ハンドル(9)を回転させて、流入路(1)と流出路(2)とを連通する弁口(3)を開閉する開閉弁(4)を上下動させることで、止水、放水および流量調整を行うハンドル式の蛇口であって、弁口(3)を開放する方向にハンドル(9)を回転する際、放水速度が所定量に到達したときに、使用者の手が感知できる程度にハンドル(9)の回転抵抗を増大させる回転抵抗手段を備えてなることを特徴とする蛇口(100)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛇口に関し、さらに詳しくは放水流量(放水速度)を適正な範囲に調整できる蛇口に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハンドルを回転させて止水、放水および流量の調整を行うハンドル式の蛇口が使用されている。従来型のハンドル式の蛇口100は、例えば、図1の点線図示のように、水の流路となる本体部と、止水、放水および流量調整を行うための開閉部と該開閉部の制御手段とから構成されている。上記本体部は、不図示の水道管などの水源から水が流入される流入路1と、不図示の排水口を先端に有する流出路2と、これらを連通させる弁口3と、この弁口3を開閉する開閉弁4と該開閉弁4の制御手段であるコマ5などとから構成されている。
【0003】
上記開閉弁4は、合成ゴムなどの弾性体から形成されており、弁口3の上方に形成された筒部6内に収納されたコマ5の下端に係止されている。上記筒部6の内面と外面上方とには、それぞれネジ溝が設けられ、内面のネジ溝には、外面にネジ溝を有するこま5が螺合され、コマ5の上部はコマ軸7に連結されている。コマ軸7の頂部には、ビス8によりハンドル9が、その脚部9aによって固定され、このハンドル9の回転でコマ軸7およびコマ5を経由して開閉弁4が上下動して弁口3の開閉を行い、止水、放水および流速を制御する。コマ5の上方には、内部にパッキン10を内包しているパッキン押さえ11が設けられている。
【0004】
上記蛇口100は、通常、ハンドル9を左回りに回転させることで、これに連結しているコマ軸7およびコマ5を経由して開閉弁4を上昇させ、弁口3を開放して水路1,2を連通し、ハンドル9の回転量で流量を調整する。一方、止水する場合は、ハンドル9を右回りに回転させ、コマ軸7およびコマ5を経由して開閉弁4を降下させ弁口3を閉塞する。この止水に際しては、水漏れを防止すためにはハンドル9を右回りに回転させて、弾性材料で形成された開閉弁4を弁口3に堅く密着させる。
【0005】
上記従来の蛇口の使用に際しては、放水使用後に止水する場合、十分に止水させるため、開閉弁4を弁口3に堅く密着させるべく、ハンドル9を強く回転させる傾向にある。このため、再放水させる場合に、瞬間的に大きな力でハンドル9を回転させる必要があり、また、一旦弁口3が開放されると、水圧も加わることからハンドル9の回転が急激に軽くなり、使用者は勢い余って弁口3を必要以上に開放させてしまう傾向にあった。このため、放水量も必要以上に多くなり、放水量を適正にするために、ハンドル9を複数回右または左に回転させる必要があった。その間、不必要に放水が為され、節水の観点からも好ましくない状態が放置されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、ハンドルを回転させて放水する際、ハンドル操作に際し、勢い余って弁口を必要以上に開放させることなく、放水量を簡便に適正化できる蛇口を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は以下の本発明により解決される。すなわち、本発明は、ハンドル9を回転させて、流入路1と流出路2とを連通する弁口3を開閉する開閉弁4を上下動させることで、 止水、放水および流量調整を行うハンドル式の蛇口であって、弁口3を開放する方向にハンドル9を回転する際、放水速度が所定量に到達したときに、使用者の手が感知できる程度にハンドル9の回転抵抗を増大させる回転抵抗手段を備えてなることを特徴とする蛇口100を提供する。
【0008】
上記本発明においては、上記回転抵抗手段が、コマ軸7の外側表面に設けられた突起9bと、該突起9bから離れた位置に固定されたバネ材14とからなり、コマ軸7が回転したとき、上記バネ材14の一方の端部14aが上記突起9bに引っ掛かり、コマ軸7の回転抵抗を増大させ、該抵抗の増大を、ハンドル9を操作する者に感知させる構成であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、放水する際のハンドル操作に際し、勢い余って弁口を必要以上に開放することなく、放水量を簡便に適正化できる蛇口を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の蛇口の一実施形態を説明する図。
【図2】回転抵抗手段の一実施形態を説明する図。
【図3】回転抵抗手段の部材を説明する図。
【図4】回転抵抗手段の部材を説明する図。
【図5】回転抵抗手段の部材を説明する図。
【図6】回転抵抗手段の部材を説明する図。
【図7】回転抵抗手段の部材を説明する図。
【図8】回転抵抗手段の部材を説明する図。
【図9】回転抵抗手段の部材を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に図面を参照にして本発明の実施例を詳細に説明する。図1は、本発明の蛇口の一実施例を示す断面図である。本発明の蛇口100は、図1に示すように、点線図示の従来の蛇口に、弁口3を開放する方向にハンドル9を回転させる際、放水速度(放水流量)が所定量に到達したときに、ハンドル9の回転抵抗を使用者が感知できる程度に増大させる回転抵抗手段を付加させたことを特徴としている。
【0012】
上記の回転抵抗手段以外の蛇口の構成は、図1の点線図示の通り従来の蛇口と同一である。上記回転抵抗手段の好適実施例は、コマ軸7の外側表面に設けられた突起9bと、該突起9bから離れた位置に固定されたバネ材14とからなり、コマ軸7が回転したとき、上記バネ材14の一方の端部14aが上記突起9bに引っ掛かり、コマ軸7の回転抵抗を増大させ、該抵抗の増大を、ハンドル9を操作する者に感知させる構成である。 以下に回転抵抗手段の1実施例を説明するが、回転抵抗手段は上記作用を有する限りは、以下の実施例に限定されるものではない。
【0013】
1実施例の回転抵抗手段を、それらの各部材を示す図1〜9を参照して説明する。図2は、回転抵抗手段を上方から見た説明図であり、符号12で示す収容部材は、図1に示すパッキン押え11に被せられる部材であり、図3および図4に示すように、上方12aが円筒状で、下方12bがパッキン押え11に丁度嵌合するように内面が6角形状に形成され、その中間に収容部材12が必要以上に降下せず、パッキン押え11の肩部に係止するためのストッパー12cが設けられている。以上の収容部材12は1実施例であり、上記作用を有する限り、その形状は問われない。なお、他の部材についても同様である。
【0014】
符号13は、後述の螺旋状のバネ材14を支持する支持枠であり、上下が開放されている5角形状である。 この支持枠13は、その各頂点が、前記収容部材12の上部円筒12a内に接触保持されるように、円筒12aの内面と同じか僅かに大きく形成されている。なお、図2に示す例では、円筒12aの内面に、小さな縦溝が形成され、支持枠13の少なくとも1個の頂点がそれらの溝に嵌め込み、支持枠13が円筒12aの内側に固定されるようになっている。なお、上記縦溝を多数設けることで、円筒12a内の支持枠13の位置を変更することができる。
【0015】
図2の符号7は、図1に示すコマ軸7の断面であり、コマ軸7は、ハンドル9の脚部9aがコマ軸7に固定できるように、その表面の多数の縦方向の凹凸(縦溝と縦山)が形成されている。符号9aは、ハンドル9の脚部の断面図であり、上記コマ軸7の外形と相似形状に、多数の縦方向の凹凸(縦溝と縦山)が形成されている。図5は、上記脚部9aの凹凸の縦山の一部を下方に延出させ、後述のバネ14の一端14aが引っ掛かる突起9bを示している。
【0016】
図2の符号15は、支持枠13の1隅の上下に設けられたバネ係止板であり、図6に示すように上下の係止板15のほぼ中央部にはバネ軸16の係止孔17が設けられている。図7に示すように、上記上下の係止孔17にはバネ軸16が係合され、該バネ軸16には螺旋状のバネ14が絡まっており、その一方の端部14aが、前記ハンドル9の適当な回転時に前記突起9bに引っ掛かり、一方の端部14bは、上記端部14aが上記突起9bに当たって図面上左方向に押されたときに、支持枠13の壁面に当接してバネ14の反発力を生じるようになっている。図8は、螺旋状バネ材14の他の実施例を示している。また、図9は図1に示すカバー部材18を示し、本発明においては必須ではないが、回転抵抗手段の内部を保護する意味で該カバー部材18を使用することが好ましい。
【0017】
次に本発明の蛇口の動作を図1を参照して説明する。蛇口が止水状態では、ハンドル9は右方向に堅く回転された状態であり、ハンドル9を左方向に回転して放水を開始する。該放水開始時には堅く閉まったハンドル9を左方向に回転するために、大きな力を要す。通常の注意力では大きな力が負荷されるため、その反動によりハンドル9が過剰に左回転し急激に放水され、放水量を調整するため、ハンドル9を右方向に、そして左方向に回転して放水量を調整する。この間の放水された水量は通常無駄になる。
【0018】
本発明においては、放水開始時にハンドル9を左方向に回転するが、ハンドル9を左方向にある程度回転させると、ハンドル脚部9aに設けられた前記突起9bに前記螺旋状バネ材の一方の端部14aが引っ掛かり、回転中のハンドル9の回転に抵抗が負荷され、ハンドル9を回す使用者の手にその感触が伝わる。この抵抗を感じた時が、ハンドル9の適正回転数であり、その時点でハンドル9の回転を停止することにより、適正放水量となる。さらに放水量を増大させる場合には、上記抵抗を無視してハンドル9をさらに左方向に回転させると、バネの端部14aは、前記突起9bを乗り越えて、さらに回転し放水量が増大する。
【0019】
蛇口を止水する場合には、従来と同様にハンドル9を右方向に回転させるが、この際、突起9bに対してバネ14の端部14aが当たるが、バネ14の他の端部14bの左回転方向は開放されている結果、ハンドル9の右回転には全く負荷は係らないので、止水操作に何らの支障もない。
【0020】
以上説明したように本発明の蛇口では、ハンドル9を回転させて放水する際、適正放水量のハンドル9の回転位置が、使用者の手に直接感知されるので、容易に適正放水量の位置でハンドル9の回転を止めることができることから、節水に非常に有効である。
【符号の説明】
【0021】
100:蛇口
1:流入路
2:流出路
3:弁口
4:開閉弁
5:コマ
6:筒部
7:コマ軸
8:ビス
9:ハンドル
10:パッキン
11:パッキン押え
12:収容部材
13:支持枠
14:バネ
15:バネ係止板
16:バネ軸
17:係止孔
18:カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドル(9)を回転させて、流入路(1)と流出路(2)とを連通する弁口(3)を開閉する開閉弁(4)を上下動させることで、止水、放水および流量調整を行うハンドル式の蛇口であって、弁口(3)を開放する方向にハンドル(9)を回転する際、放水速度が所定量に到達したときに、使用者の手が感知できる程度にハンドル(9)の回転抵抗を増大させる回転抵抗手段を備えてなることを特徴とする蛇口(100)
【請求項2】
回転抵抗手段が、コマ軸(7)の外側表面に設けられた突起(9b)と、該突起(9b)から離れた位置に固定されたバネ材(14)とからなり、コマ軸(7)が回転したとき、上記バネ材(14)の一方の端部(14a)が上記突起(9b)に引っ掛かり、コマ軸(7)の回転抵抗を増大させ、該抵抗の増大を、ハンドル(9)を操作する者に感知させる構成である請求項1に記載の蛇口(100)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−65526(P2010−65526A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−256511(P2009−256511)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【基礎とした実用新案登録】実用新案登録第3137197号
【原出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(595057188)
【Fターム(参考)】