説明

蛇登攀防止装置

【課題】粘着物や忌避剤を用いずに物理的な構造のみで蛇の登攀を効果的に防止することができ、また、電柱に網状物を付設することによってかえって凹凸が形成される不都合を回避することができる蛇登攀防止装置を提供する。
【解決手段】上方に向かうにつれて電柱2の軸心からの距離が長くなり、垂線が水平に対して下方に傾斜する円錐テーパを備えたネット取付具3と、このネット取付具3の円錐テーパを少なくとも覆うように取り付けられたネット5とを有して構成され、ネット取付具3に、接地線を挿通させる挿通部7を設け、ネット5を、ネット取付具3に対して着脱自在に添設すると共に、該ネットを構成する線材の適所に蛇の登攀を妨害する蛇登攀妨害突起12を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱等の柱状立設体に蛇が登攀することを防止するために有用な蛇登攀防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛇が電柱の上部の巣中にある卵や雛等を狙って電柱をよじ登り、その際に送電線や配電線に接触すると、地絡事故が発生して電力設備や電力供給先などに膨大な損害を与える恐れがある。このため、蛇の登攀を防止する有効な装置の開発が要請されており、従来においては、様々な蛇登攀防止装置が検討されている。
【0003】
例えば、下記する特許文献1においては、電柱の表面に蛇害防止用粘着テープを周回状に貼着し、さらに該蛇害防止用粘着テープより上方位置に碗形状に形成した登はん防止具を取り付け、蛇や野鼠等の小動物がよじ登って送配電線等に接触して惹起する事故を防止する装置が開示されている。
【0004】
また、下記する特許文献2においては、蛇の体表を覆っている多数の腹鱗を引掛けることができないようにし、また、体をS字型に湾曲させて押さえ板や突起物間に体を突張らせることができないようにし、さらに腹の中央部を窪ませて吸盤として用いることができないようにするために、横断面円形でかつ表面が平滑な線材によって網状物を構成し、この網状物を構成する線材を金属製または合成樹脂製として、太さを0.5〜2.5mm、網状物のメッシュを3〜8mmとして、これを電柱の回りに巻き付ける構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−231044号公報
【特許文献2】実用新案登録第3073585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の構成においては、蛇害防止用粘着テープを電柱の回りに粘着させるものであるため、長時間の風雨に晒されると剥離する不都合があり、一旦剥離すると再利用できないものであった。しかも、蛇害防止用粘着テープの忌避剤は、長年月に亘り効果を維持することができないものである。
【0007】
また、登はん防止具は碗形状に形成されているので、電柱の全周に径方向へ張り出すことになるので、作業員の昇降柱時や各種作業において支障になる不都合があり、また、その構造上、台風等の突風等の影響を受けやすく、破損する恐れがあり、破損した場合にはその破片が飛散して通行人に当たり、怪我させる恐れが懸念される。
【0008】
後者の構成においては、網状物を電柱の回りに巻き付けるものであるが、電柱には接地線等が表出しているため、電柱に密着して取り付けることは難しく、これら接地線等を覆うように取り付ける場合には、網状物の表面に凹凸が形成されてしまい、蛇が登攀できる状態を形成してしまう不都合がある。
【0009】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、粘着物や忌避剤を用いずに物理的な構造のみで蛇の登攀を効果的に防止することができ、また、電柱に網状物を付設することによってかえって凹凸が形成される不都合を回避することができる蛇登攀防止装置を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ところで、蛇の登攀運動について調査したところによれば、蛇は、図7の別表に示されるような登攀運動をすることが判明している。
すなわち、蛇は、
(1) 柱状立設体の中心軸が重力方向に対して前方へある程度傾いていれば、昇柱することが可能である。逆に、後方へある程度傾いていれば(蛇の背が下側にくるように傾いていれば)、昇柱することができない。
(2) 電柱の上下で隣り合う昇降金具が斜めにずれて取り付けられている場合には、下側の昇降金具に身体を引っ掛けて固定し、斜め上方の昇降金具へ頭部を伸ばし、この上方の昇降金具に頭部が到達すれば、その昇降金具に頭部側の身体を引っ掛け固定し、下方側の身体を引き上げ、以後、当該運動を繰り返して電柱を登攀していく。
(3) 電柱の上下で隣り合う昇降金具が鉛直線上に取り付けられている場合には、下側の昇降金具に辿り着いた蛇は、昇降金具に身体を引っ掛けて固定し、真上方向の昇降金具に頭部を伸ばす。この際、蛇は、蛇行しながら腹鱗(腹板)を電柱表面の微細な凹凸部に引っ掛け、折れ曲がっている身体を徐々に伸ばしていき、頭部が、次の昇降金具に到達すれば、その昇降金具に身体を引っ掛けて固定し、下方側の身体を引き上げ、以後、当該運動を繰り返して電柱を登攀していく。
(4) 壁面に存在する多数の突起に,蛇の体表を覆っている多数の腹鱗(腹板)を引掛け,それを支えとして登っていく。尚、直径が0.05〜1[mm]程度の微細な球形状のものに腹鱗(腹板)を係合させることができない。
(5) 長い胴体をS字型に湾曲させ,壁面の突起物の間に体を突張らせて体を支えることにより登る。
(6) 腹部の中央を窪ませて吸盤状とすることにより体を支えて登る。
本発明者は、このような蛇の登攀習性を把握した上で、粘着物や忌避剤を用いずに物理的な構造のみで蛇の登攀を効果的に防止できる防止器具について鋭意研究を重ねた結果、蛇の登攀を防止するためには、前記図7の別表で示す(1)に対する対策と、(2)〜(6)のいずれかに対する対策とを併せ持つようにすれば、非常に優れた登攀防止が図れるとの知見を見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明に係る蛇登攀防止装置は、柱状立設体に取り付けられて、蛇の登攀を防止するものであって、前記柱状立設体の周方向の所定領域にかけて付設されると共に、上方に向かうにつれて柱状立設体の軸心からの距離が長くなり、垂線が水平に対して下方に傾斜する円錐テーパを備えたネット取付具と、このネット取付具の円錐テーパを少なくとも覆うように取り付けられたネットとを有して構成され、前記ネット取付具には、接地線を挿通させる挿通部が設けられ、前記ネットは、前記ネット取付具に対して着脱自在に添設されると共に、該ネットを構成する線材の適所に蛇の登攀を妨害する蛇登攀妨害突起を備えていることを特徴としている。
【0012】
したがって、ネット取付具には、上方に向かうにつれて柱状立設体の軸心からの距離が長くなり、垂線が水平に対して下方に傾斜する円錐テーパが設けられているので、前記(1)に対する対策が講じられており、また、ネット取付具の表面には蛇の登攀を妨害する蛇登攀妨害突起を備えたネットが添設されているので、前記(4)に対する対策が講じられている。このため、それぞれの物理的な構造による登攀防止機能により蛇の登攀は防止され、仮に、一方の登攀防止機能が不十分であっても、他の登攀防止機能も備えているので、蛇の登攀をより確実に防止することが可能となる。また、ネット取付具は、柱状立設体の周方向の所定領域にかけて付設されているので、作業員の昇降動作や各種作業の支障になることもなくなる。
【0013】
また、上述の構成に加えて、ネット取付具より下方において柱状立設体の側面に施設されて接地線を挿通させる接地線保護具を更に備え、前記接地線保護具を、前記接地線を挿通させる管状部と、この管状部の周面から前記柱状立設体の周面にかけて窪みが形成されないように(管状部の周面および前記柱状立設体の周面に対してほぼ接線をなすように)延設された裾部とを有して構成し、前記ネットを前記ネット取付具から下方に延設させて前記接地線保護具の少なくとも一部を覆うように取り付けてもよい。
【0014】
このような構成においては、接地線保護具の周面と柱状立設体との間に窪みがないため、前記(5)に対する対策が講じられており、蛇が窪みを利用して登攀することができなくなり、また、接地線保護具の表面の少なくとも一部には前記ネットが添設されていることと相まって、蛇の登攀をより確実に防止することが可能となる。
【0015】
尚、前記ネットは、前記ネット取付具を前記柱状立設体に固定する着脱可能なバンドによって前記ネット取付具に固定するようにし、また、前記柱状立設体に対して着脱可能なバンドによって前記接地線保護具に固定するようにしてもよい。このような構成によれば、強固な固定状態を形成することができるので、強風等で固定状態が解除されたりネット取付具が破損することを避けることが可能となる。
【0016】
また、前記ネットは、その線材の太さを0.5〜1mmとし、メッシュの大きさを3mm程度とし、線材が交差する部位に直径0.5〜1mmの半球状の蛇登攀妨害突起を設けることが有用であり、さらに、柱状立設体へのネット取付具及びネットの取り付け位置は、足場ボルト等がない地表面から1.8mの範囲にするとよい。
【発明の効果】
【0017】
以上述べたように、本発明に係る蛇登攀防止装置によれば、柱状立設体の周方向の所定領域にかけて付設されて、上方に向かうにつれて柱状立設体の軸心からの距離が長くなり、垂線が水平に対して下方に傾斜する円錐テーパを備えたネット取付具と、このネット取付具の円錐テーパを少なくとも覆うように取り付けられたネットとを有し、ネット取付具に、接地線を挿通させる挿通部を設け、ネットを、このネット取付具に対して着脱自在に添設し、このネットを構成する線材の適所に蛇の登攀を妨害する蛇登攀妨害突起を設けたので、物理的な構造のみで複数の登攀防止機能を持たせて、蛇の柱状立設体の登攀を効果的に防止することができ、粘着物や忌避剤が不要になるため、耐久性や永続性に優れたものとなる。また、ネット取付具が柱状立設体の周方向の所定領域にかけて付設されるので、作業員の柱状立設体への昇降動作や各種作業の支障になることもなくなる。
【0018】
さらに、ネットをネット取付具を介して電柱に添設するようにしたので、ネットを電柱に直接添設する場合の不都合(接地線等によりネット表面に凹凸が形成されてしまう不都合)を回避することが可能となる。
【0019】
尚、柱状立設体の前記ネット取付具より下方に施設されて接地線を挿通させる接地線保護具を更に備え、この接地線保護具を前記接地線を挿通させる管状部と、この管状部の周面から前記柱状立設体の周面にかけて窪みが形成されないように延設された裾部とを有して構成し、ネットをネット取付具から下方に延設させて前記接地線保護具の少なくとも一部を覆うように添設すれば、蛇が接地線保護具と柱状立設体との間の窪みを利用して登攀する不都合も回避することができ、蛇が柱状立設体を登攀しようとする初期の段階で登攀を防止することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本発明に係る蛇登攀防止装置を電柱に取り付けた状態を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る蛇登攀防止装置を示す側断面図である。
【図3】図3は、ネット取付具の正面図である。
【図4】図4(a)は、電柱に取り付けられたネット取付具の上端部を示す端面図であり、図4(b)は、電柱に取り付けられたネット取付具の下端部を示す端面図である。
【図5】図5は、接地線防護具を示す図であり、(a)は電柱に取り付けられている状態を示す斜視図であり、(b)は電柱に対する取付状態を説明する平面図である。
【図6】図6は、ネットの示す図であり、(a)はその全体構成を示す図、(b)はネットの一部拡大図、(c)はネットの他の構成例を示す一部拡大図である。
【図7】図7は、蛇の登攀運動をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る蛇登攀防止装置の実施形態を添付図面を参照しながら説明する。この例では、柱状立設体として、送電線や配電線の電柱を例とし、蛇としては、体長2m、立ち上がる能力を体長の3/4(1.5m)とした場合を想定する。
【0022】
図1及び図2において、蛇登攀防止装置1は、電柱2の側面に付設されたネット取付具3と、このネット取付具3の下方において電柱2の側面に付設された接地線保護具4と、これらネット取付具3と接地線保護具4とを覆うように取り付けられたネット5とを有して構成されている。
【0023】
ネット取付具3は、図3及び図4にも示されるように、電柱2の周方向の所定領域、たとえば、電柱2の周面の約120°の範囲にかけて設けられ、上方に向かうにつれて電柱2の軸心Gからの距離が長くなり、垂線が水平に対して下方に傾斜する円錐テーパ6を備えている。このネット取付具3は、上下方向の長さを約50cmとし、円錐テーパ6の傾斜角を電柱2のテーパに合わせて、外側へ同程度の逆テーパが形成されるように設定されている。たとえば、1/75のテーパを有する電柱の場合であれば、外側へ1/75で張り出すように円錐テーパ6が形成されている。
【0024】
また、ネット取付具3の電柱2に接触させる中央部には、上下方向に沿って接地線を挿通させる挿通部7が形成されており、また、円錐テーパ6の上端部近傍、中間部、及び下端部近傍には、周方向に延びる溝3a,3b,3cが略平行に形成されている。この例において、上端部近傍および下端部近傍に形成される溝3a,3cは、中間部に形成される溝3bよりも深く形成されており、この上端部の溝3aと下端部の溝3cには、後述するネット5を構成する線材5cを嵌め入れると共に、その上からネット取付具3を電柱2に回し留めるためのステンレスバンド8を嵌入できるようになっており、中間部の溝3bには、ネット取付具3を電柱2に回し留めるステンレスバンド8のみが嵌入できるようなっている。したがって、上端部近傍、中間部、下端部近傍の3ヶ所の溝3a,3b,3cに取り付けられるステンレスバンド8によってネット取付具3が電柱2に固定され、また、上端部近傍と下端部近傍の2ヶ所の溝3a,3cに取り付けられるステンレスバンド8によってネット5がネット取付具3に取り付けられている(上端部近傍および下端部近傍の溝3a,3cに対してはネット5の上からステンレスバンド8を取り付けることで、ネット取付具3を電柱2に固定すると共にネット5をネット取付具3に固定し、中間部の溝3bに対してはネット5の下でステンレスバンド8を取り付けることにより、ネット取付具3を電柱2に固定するようにしている)。
【0025】
接地線保護具4は、図5に示されるように、接地線を挿通させる硬質ビルニ管などによって構成された管状部4aと、この管状部4aの周面から電柱2の周面にかけて窪みが形成されないように(管状部4aの周面および電柱2の周面に対してほぼ接線をなすように)延設された合成樹脂により形成される裾部4bとを有して構成されている。この例では、接地線保護具4の長さを1.4mとし、また、管状部を内径14mmとしている。
【0026】
ネット5は、所用径を有すると共に所定の強度および耐候性を有する線材、例えば、テグスまたはナイロン等の樹脂によって構成されており、線材同士を交差させて、例えば矩形の網目が形成されているものである。このネット5は、作業員の電柱への昇降時において、作業員が靴をかけても破損しない程度の強度に形成されており、この例においては、図6(a)に示されるように、前記ネット取付具の円錐テーパの表面全体を覆うことできるように逆三角形状に形成された拡大部5aと、この拡大部5aに続いて下方に延設され、接地線保護具4の中程にかけて該接地線保護具4の表面を覆うことができるように所定幅に形成された垂下部5bとを備え、垂下部5bの両側縁のそれぞれには、上部、下部、中間部の3か所にバンド取付用リング10が設けられ、このバンド取付用リング10を通したステンレスバンド11を電柱2に回し留めることで、ネット5の垂下部5bを接地線保護具4の表面及び電柱2の表面に固定するようにしている。
【0027】
また、ネット5の拡大部5aの上部(この例では上端)および下部の両側縁と垂下部5bに取り付けられたバンド取付用リング10とには、紐5d、5eが設けられている。拡大部5aの両側縁に設けられる紐5dは、ネット5を構成する線材5cを延長させて構成されているもので、拡大部5aをネット取付具3の表面に密着させた状態において、電柱2の後ろで互いに結ぶことができる程度の長さに形成されている。また、バンド取付用リング10に取り付けられる紐5eはバンド取付用リング10に結び留める等して取り付けられているもので、接地線保護具4の表面に密着させた状態において、電柱2の後ろで互いに結ぶことができる程度の長さに形成されている。
【0028】
さらに、ネット5を構成する線材5cの適所には、図6(b)に示されるように、蛇の登攀を妨害する蛇登攀妨害突起12が設けられている。この蛇登攀妨害突起12は、ネット5を構成する線材同士の各交差部に、例えば半球状の突起を形成することにより構成されており、接着剤等の樹脂を後付けすることにより、或いは線材の成形時に予め一体的に成形することなどにより形成されている。
【0029】
上述の例では、ネットの全長(上下方向の寸法)が1.5m、拡大部において0.5m、垂下部において1mに設定されており、ネット5の線材5cの太さを0.5〜1mm、網目の大きさを約3mm程度とし、蛇登攀妨害突起の直径を0.5〜1mmの半球状に形成している。
また、ネット取付具は、その上端が地表面から足場ボルトのない約1.8mまでの範囲に取り付けられ、したがって、ネットは、地表から1.8mまでの範囲に取り付けられている。
【0030】
以上の構成において、蛇登攀防止装置1を電柱2に取り付けるには、まず、ネット取付具3の高さを調整すると共に、接地線の位置に合わせて周方向の位置を決め、挿通部7に接地線を配置した状態で中間部の溝3bにステンレスバンド8を嵌め入れて電柱2に回し留め、ネット取付具3を電柱2の側面に固定する。
また、接地線保護具4の管状部4aに接地線を挿通させて、接地線保護具4の背面を電柱2の側面に当接させて固定する。
【0031】
その後、ネット5をネット取付具3の全面と接地線保護具4の上半分を覆うように前面からあてがい、ネット5の上端部の位置をネット取付具3の上端部の位置に合わせて、ネット5の拡大部5aの上部を構成する線材5cをネット取付具3の上端部近傍の溝3aに嵌め入れると共に、拡大部5aの下部を構成する線材5cをネット取付具3の下端部近傍の溝3cに嵌め入れ、拡大部5aの両側に取り付けられている紐5dを電柱2の後ろに回して、同じ高さ位置の紐同士を拡大部5aがネット取付具3の表面に密着するようテンションをかけつつ電柱2の後ろで結び留める。また、垂下部5bの両側のバンド取付用リング10に取り付けられている紐5eを電柱の後ろに回して、同じ高さ位置の紐同士を垂下部5bが接地線保護具4の表面に密着するようテンションをかけつつ電柱2の後ろで結び留める。以上のようにしてネット5を仮止めした後、ネット取付具3の上端部近傍の溝3aにステンレスバンド8をネット5の上から嵌め付けて電柱2に回し留め、また、ネット取付具3の下端部近傍の溝3cに対しても、ネット取付具3の下端部近傍の溝3cにステンレスバンド8をネット5の上から嵌め付けて電柱2に回し留める。これによりネット取付具3を3本のステンレスバンド8によって電柱2に強固に固定すると共に、ネット5を上下2本のステンレスバンド8によってネット取付具3に脱落しないように密着固定する。
【0032】
また、ネット5の垂下部5bの上部及び中間部においては、ステンレスバンド11でネット5の垂下部5bを固定しつつ、ステンレスバンド11がネット5の前面に表出されないようにするために、ステンレスバンド11を、左右両側の一方のバンド取付用リング10に表側から裏側へ挿通させてネット5の裏側を通過させ、その後、他方のバンド取付用リング10に裏側から表側へ挿通させ、しかる後にステンレスバンドの両端を電柱2の後方へ回して電柱2に回し留める。
これに対して、ネット5の垂下部5bの下部においては、垂下部5bの下部を接地線保護具4の表面に密着固定させるために、ステンレスバンド11を、左右両側の一方のバンド取付用リング10に裏側から表側へ挿通させてネットの表面を渡し、その後、他方のバンド取付用リング10に表側から裏側へ挿通させ、しかる後にステンレスバンドの両端を電柱2の後方へ回して電柱2に回し留める。
【0033】
したがって、上述のように設置された蛇登攀防止装置1によれば、ネット取付具3の円錐テーパ6はその垂線が水平に対して下方に傾斜するように設けられているので、図7の(1)に対する対策が講じられており、蛇の登攀を防止することが可能となる。また、ネット5は、電柱2の表面に直接付設するのではなく、ネット取付具3の円錐テーパ6に付設させるので、ネット5の表面に接地線等により凹凸が形成されて蛇が登攀できる状態が形成されることがなくなる。
【0034】
また、ネット取付具3から接地線保護具4にかけては、その表面に蛇の登攀を妨害する蛇登攀妨害突起12を備えたネット5が添設されているので、図7の(4)に対する対策が講じられており、この点においても、蛇の登攀を防止することが可能となる。
【0035】
さらに、ネット取付具3の下方においては、電柱2との間に窪みが形成されないように接地線保護具4が添設されているので、図7の(5)に対する対策が講じられており、接地線保護具4を介して蛇が登攀することも防止され、また、接地線保護具4には、その上半分が前記ネット5で覆われているので、一層確実に蛇の登攀を防止でき、電柱2に登攀しようとする初期の段階から登攀を防止することが可能となる。
このため、上述のような物理的な構造による登攀防止機能により蛇の登攀を防止することが可能となるので、仮に、いずれかの登攀防止機能が不十分であっても、残りの登攀防止機能により蛇の登攀を確実に防止することが可能となる。
【0036】
また、上述の構成においては、ネット取付具3が、電柱2の周方向の所定領域(約120°の範囲)にかけて付設されているので、作業員の昇降動作や各種作業の支障になることもなくなる。
【0037】
さらにまた、ネット5をネット取付具3の全面と接地線保護具4の上半分を覆うように取り付けるに当たり、ネット5をその両側に設けられた紐5d、5eによって電柱2に仮止めするようにしているので、ネット5の取付作業が容易になると共にネット5をネット取付具3や接地線保護具4に密着させやすくなり、また、ステンレスバンド8,11が何らかの原因で破損した場合でも、ネット5の固定状態を維持することが可能となる。
【0038】
また、ネット取付具3は電柱2に対してステンレスバンドで着脱自在に固定され、また、ネット5はネット取付具3や接地線保護具4に対してステンレスバンド8,11で着脱自在に固定されているので、強固な固定状態を確保しつつ、除去したい場合には、ステンレスバンド8,11を除去することで除去が可能となり、その後、ネット取付具3やネット5は再利用が可能となる。
【0039】
さらに、ステンレスバンド8,11は、ネット5の拡大部5aの中間部と垂下部5bの上部及び中間部においてネット5の下側を通すようにしているので、ネット表面に対しても、図7の(4)、(6)に対する対策が講じられており、蛇の登攀をより確実に防止することが可能となる。
【0040】
尚、上記構成例においては、ネット5に設けられる蛇登攀妨害突起12をネット5を構成する線材5c同士の交差部に設けた例を示したが、図6(c)に示されるように、交差部に加えて隣接する交差部間に位置する線材の中間部分にも蛇登攀妨害突起を設けるようにしてもよい。また、ステンレスバンド8,11の数も、ネット5の大きさ等に応じて適宜増減させてもよい。
さらにネット取付具3の円錐テーパ6は、ネット取付具3を電柱2の径方向に大きく突出させないようにするために、僅かな傾斜角を有する逆テーパとすることが好ましいが、傾斜角は適宜変更してもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 蛇登攀防止装置
2 電柱
3 ネット取付具
4 接地線保護具
5 ネット
6 円錐テーパ
7 挿通部
8,11 ステンレスバンド


【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状立設体に取り付けられて、蛇の登攀を防止する蛇登攀防止装置であって、
前記柱状立設体の周方向の所定領域にかけて付設されると共に、上方に向かうにつれて柱状立設体の軸心からの距離が長くなり、垂線が水平に対して下方に傾斜する円錐テーパを備えたネット取付具と、このネット取付具の円錐テーパを少なくとも覆うように取り付けられたネットとを有して構成され、
前記ネット取付具には、接地線を挿通させる挿通部が設けられ、
前記ネットは、前記ネット取付具に対して着脱自在に添設されると共に、該ネットを構成する線材の適所に蛇の登攀を妨害する蛇登攀妨害突起を備えている
ことを特徴とする蛇登攀防止装置。
【請求項2】
前記ネット取付具より下方において前記柱状立設体の側面に施設され、前記接地線を挿通させる接地線保護具を更に備え、前記接地線保護具を、前記接地線を挿通させる管状部と、この管状部の周面から前記柱状立設体の周面にかけて窪みが形成されないように延設された裾部とを有して構成し、前記ネットを前記ネット取付具から下方に延設させて前記接地線保護具の少なくとも一部を覆うように取り付けることを特徴とする請求項1記載の蛇登攀防止装置。
【請求項3】
前記ネットは、前記ネット取付具を前記柱状立設体に固定する着脱可能なバンドによって前記ネット取付具に固定され、また、前記柱状立設体に対して着脱可能なバンドによって前記接地線保護具に固定されていることを特徴とする請求項2記載の蛇登攀防止装置。
【請求項4】
前記ネットは、線材の太さを0.5〜1mm、メッシュの大きさを3mm程度とし、線材が交差する部位に直径0.5〜1mmの半球状の蛇登攀妨害突起が設けられており、前記ネット取付具及び前記ネットの取り付け位置は、地表面から1.8mの範囲であることを特徴とする請求項1記載の蛇登攀防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−62084(P2011−62084A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212650(P2009−212650)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】