説明

蛋白質の瘤

【課題】 蛋白質の特定部位に付着した瘤を含む組成物及びこれらの組成物を生成し使用する方法。
【解決手段】組成物は瘤、テール部分及び蛋白部分からなる。蛋白部分は置換システイン残基をラベリングの所望位置に含む。テール部分は蛋白部分の末端に位置する。瘤はテール部分の端部に連結され、そしてシステイン残基を含む。蛋白部分の置換システイン残基及び瘤のシステイン残基はジスルフィド結合を形成し、その結果所望の部位の蛋白部分を瘤で標識する。

【発明の詳細な説明】
【省益】
【0001】
本研究は国立衛生研究所助成金(National Institutes of Health Grants)NICHD HD14907及びNICHD HD38547により援助されたものである。本発明はアメリカ合衆国政府支援により行われたものである。政府は本発明において一定の権利を所有し得る。
【技術分野】
【0002】
本発明は蛋白質標識の技術分野に関する。
【序論】
【0003】
蛋白質−蛋白質相互作用の分析又は蛋白質の精製に使用する蛋白質を標識する方法は、蛋白質のカルボキシ−又はアミノ−末端に標識を融合するか、又は蛋白質のループ中へ残基を挿入することを現時点では必要とする。これらの方法はそれぞれ制約がある。例えば、蛋白質の端部に分子を付着させることに制約されるよりはむしろ蛋白質の特定の位置に蛋白質を標識することが、それが色素分子を伴うものであろうと蛋白質を伴うものであろうとも、望ましいであろう。これらとしては、巨大分子と蛋白質の相互作用を精査するように計画された研究が、hCGとその受容体の場合と同様に、挙げられる。更に、蛋白質の末端が蛋白質の機能に関与する場合、蛋白質の端を標識することは望ましくないであろう。蛋白質のループ中へ標識を挿入することに関しては、蛋白質ドメインの間に標識が挿入されない限り、標識の寸法は通常比較的小さくなくてはならないので(数残基)、この方法は制約される。蛋白質の表面上に様々なサイズのプローブを付着させることが望ましい場合がある。更に、蛋白質は保護を必要とする他のシステイン残基を含み得、或いはシステインはブロッキング残基を除去するときにブロックされるようになり、蛋白質変性が起こり得るので、システイン残基の使用を伴う修飾もまた困難である。その結果、これらの方法で生成された標識蛋白質は産業において制約された使用及び応用しか備えていない。
【0004】
例えば、ルトロピン受容体(LHR)と接触するヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)の部分を識別する試みは、ホルモンの複雑な構造や受容体と多部位にて相互作用する可能性によって、難航している。ヒト絨毛ゴナドトロピン(hCG)の結晶構造はそのβ−サブユニットのストランドが「シートベルト」のようにα−サブユニットを取り囲むことを明らかにした(Lapthorn,A.J.,Harris,D.C.,Littlejohn,A.,Lustbader,J,W.,Canfield,R.E.,Machin,K.J.,Morgan,F.J.&lsaacs,N.W.(1994)Nature369,455−461;Wu,H.,Lustbader,J.W.,Liu,Y.,Canfield,R.E.&Hendrickson,W.A.(1994)Structure2,545−558)。インターサブユニットの接触により完全に安定化されるたいていの二量体蛋白質とは異なり、hCGはそのシートベルトによって大部分が固定されるように見える;シートベルトのカルボキシ末端をβ−サブユニットコアのCys26へラッチするジスルフィドの除去が恐らくヘテロ二量体を不安定化することによりhCG分泌を乱すということが発見された(Suganuma,N.,Matzuk,M.M.&Boime,I.(1989)J.Biol.Chem.264,19302−19307)。この通常の構造的配置の進化的利点は依然未知のままであり、それがヘテロ二量体内部のサブユニットの動きを可能にするという結論をもたらし得、この現象はいくつかのhCGアナログをFSH受容体に結合する間に検出される(Wang,Y.H.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.(2000)Mol.Cell.Endocrinol.170,67−77)。
【0005】
hCGを含む糖蛋白質ホルモンの3つ全ての種類に対する受容体はG−蛋白質と連結し、重複高ロイシン繰り返し(multiple leucine−rich repeats)を含む大きな細胞外ドメインを有する(Segaloff,D.L.&Ascoli,M.(1993)Endocr.Rev.14,324−347)。後者の発見は細胞外ドメインが馬蹄型で、他の高ロイシン繰り返し蛋白質の部分と類似し得ることを示唆している(Kobe,B.&Deisenhofer,J.(1993)Nature366,751−756)。細胞外ドメインの2つの領域はリガンド結合親和性及び特異性に寄与するようである。細胞外ドメインの2−3番目のアミノ末端における残基が高親和性リガンド結合部位を形成するということが示唆されるので、交互にスプライスされ切断されたLHRアナログに対するhCGの親和性は無傷の受容体に対するものと同じである(Braun,T.,Schofield,P.R.&Sprengel,R.(1991)EMBO.J.10,1885−1890;Thomas,D.,Rozell,T.G.,Liu,X.&Segaloff,D.L.(1996)Mol.Endocrinol.10,760−768)。ヒトLHR細胞外ドメインの5番目のカルボキシ端における残基はヒトではない哺乳類のルトロピンの結合を妨げ、この発見は、ホルモンのこの部分と受容体との間の接触が事実上第一立体構造であるということを示す(Bernard,M.P.,Myers,R.V.&Moyle,W.R.(1998)Biochem.J.335,611−617)。
【0006】
LHR、FSHR及びTSHRに接触する可能性が最もあるhCG,hFSH及びhTSHの表面は依然議論が続いている。α−サブユニットのカルボキシ末端はヘテロ二量体のシートベルトの部分に隣接しており(Wu,H.,Lustbader,J.W.,Liu,Y.,Canfield,R.E.&Hendrickson,W.A.(1994)Structure2,545−558)、それらの受容体に対する全ての糖蛋白質ホルモンの親和性に影響することが発見されており(Lapthorn,A.J.,Harris,D.C.,Littlejohn,A.,Lustbader,J.W.,Canfield,R.E.,Machin,K.J.,Morgan,F.J.&Isaacs,N.W.(1994)Nature369,455−461;Bernard,M.P.,Myers,R.V.&Moyle,W.R.(1998)Biochem.J.335,611−617)、そして25年以上前に受容体接点が存在することが提案されていた(Lapthorn,A.J.,Harris,D.C.,Littlejohn,A.,Lustbader,J.W.,Canfield,R.E.,Machin,K.J.,Morgan,F.J.&Isaacs,N.W.(1994)Nature369,455−461)。ホルモンの構造及び機能のデータと共に、これらの観察結果は、ホルモンが受容体細胞外ドメインの凹状表面に接触するものから(Jiang,X.,Dreano,M.,Buckler,D.R.,Cheng,S.,Ythier,A.,Wu,H.,Hendrickson,W.A.,Tayar,N.E.&el Tayar,N.(1995)Structure3,1341−1353)、そのリムに接触するものまで(Moyle,W.R.,Campbell,R.K.,Rao,S.N.V.,Ayad,N.G.,Bernard,M.P.,Han,Y.&Wang,Y.(1995)J.Biol.Chem.270,20020−20031)、完全に異なるホルモン−受容体複合体の様子をもたらした(Moyle,W.R.,Campbell,R.K.,Rao,S.N.V.,Ayad,N.G.,Bernard,M.P.,Han,Y&Wang,Y.(1995)J.Biol.Chem.270,20020−20031)。hCG−LHR複合体の全ての様子は、α−サブユニットループ2の部分が受容体に対面していることを示唆しているが、ホルモンのこの部分が受容体接点に加わっているかどうか依然として確定されていない。このループの突然変異はhCGの活性を減少させることが報告されている(Peng,K.C.,Bousfield,G.R.,Puett,D.&Ward,D.N.(1996)Journal of Protein Chemistry15,547−552,Xia,H.,Chen,F.&Puett,D.(1994)Endocrinol.134,1768−1770)、これは、それが本質的なLHRの接触をもたらし得ること示唆する。
【0007】
蛋白質−受容体相互作用は細胞行動の機能及び調整を理解するカギである。蛋白質−受容体相互作用を深く理解することは、新規な薬剤の設計といった多くの試みにとって必要である。しかしながら、現在のところ蛋白質−受容体相互作用を理解することに対する多くの制約がある。蛋白質の機構がいかに受容体(これもまた一般的に蛋白質である)に相互作用するかということのみならず、蛋白質の立体構造の機構と蛋白質の機能との両方を理解することは有益である。知識及び経験を通じて、蛋白質の一局面は、別の局面が知られているならば、時々推定されることが可能である。蛋白質−受容体相互作用はコンピュータでモデル化することが可能であるが、分子は柔軟で、同じエネルギー由来のたくさんの立体構造が採択されるので、特にモデリングは複雑な仕事である。受容体、リガンド及び溶媒の特徴が考慮される必要があるので、蛋白質−受容体結合工程のモデリングもまた困難である。
【0008】
モデリングに加えて、蛋白質−受容体相互作用を理解するその他の試みは、蛋白質の機構、受容体の機構、又はそれらが実験設定において相互作用し、結合における変化の効果を測定し、そしてその結果蛋白質の機能又はその欠損における変化の効果を測定する条件に変化をもたらすことである。これらの実験技術もまた、蛋白質又は受容体を処理することに困難があるという理由の制約や、変化を測定する能力における制約を有している。従って、首尾一貫して蛋白質−受容体相互作用を引き起こすこと又は首尾一貫して蛋白質−受容体相互作用を阻害することによって実験データの精度を向上させることが可能であるという発明は、それによって引き起こされた機能又は機能の欠損の測定を可能とするので、技術における改良であろう。
【0009】
原則として、互いに接触するホルモン及び受容体の蛋白質の同定は部位特異的突然変異を用いて容易に解明されるはずである。残念なことに、α−サブユニットカルボキシル末端及びβ−サブユニットシートベルトの突然変異はヘテロ二量体内部のサブユニットの位置を変化させ(Jiang,X.,Dreano,M.,Buckler,D.R.,Cheng,S.,Ythier,A.,Wu,H.,Hendrickson,W.A.,Tayar,N.E.&el Tayar,N.(1995)Structure3,1341−1353;Pierce,J.G.&Parsons,T.F.(1981)Annu,Rev.Biochem.50,465−495)、そしてその機能においてホルモンのこれら鍵となる部分の影響を解明することを困難にしている。更に、hCG活性を変化させる突然変異は鍵となるLHR接点を変化させ、そのサブユニットの位置を変えることによって、又はその両方によってそうし得る。確かに、α−サブユニットカルボキシ末端への突然変異は、(Pierce,J,G.&Parsons,T.F.(1981)Annu,Rev.Biochem.50,465−495,Chen,F.,Wang,Y.&Puett,D.(1992)Mol.Endocrinol.6,914−919,and the seatbelt,Campbell,R.K.,Dean Emig,D.M.&Moyle,W.R.(1991)Pros.Natl.Acad.Sci.(USA)88,760−764;Campbell,R.K.,Bergert,E.R.,Wang,Y.,Morris,J.C.&Moyle,W.R.(1997)Nature Biotech.15,439−443;Grossmann,M.,Szkudlinski,M.W.,Wong,R.,Dias,J.A.,Ji,T.H.&Weintraub,B.D.(1997)J.Biol.Chem.272,15532−15540;Lindau−Shepard,B.,Roth,K.E.&Dias,J.A.(1994)Endocrinol.135,1235−1240)ホルモン−受容体相互作用に大きな影響を有しており、ヘテロ二量体のサブユニットの位置をも変えてしまう(Wang,Y.H.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.(2000)Mol.Cell.Endocrinol.170,67−77;Moyle,W.R.,Campbell,R.K.,Rao,S.N.V,Ayad,N.G.,Bernard,M.P.,Han,Y.&Wang,Y.(1995)J.Biol.Chem.270,20020−20031)。蛋白質の部分と受容体とが相互作用することの別の同定方法は、受容体と接触しない残基を同定することに関与する。これらの残基ははるかに高い確実性で同定されることが可能である。しかしながら、これらの残基の同定において使用するためのプローブを得ることは困難であった。従って、蛋白質相互作用の分析において使用するためにプローブを生成する改良された方法が必要である。
【0010】
蛋白質相互作用の分析においてそれを使用することに加えて、プローブ又は分子の特異部位に標識された蛋白質はすこぶる有益な研究道具を提供するものである。しかしながら、先に記載したとおり、現在の方法は分子の末端にプローブを標識又は付着させることを伴うので、その使用が制約されている。その他の方法は、他のアミノ酸及び機能蛋白質の機構を修飾することなく部位特異的修飾を生成する様々な反応や保護基を必要とする複雑な手順を伴う。従って、改良された部位特異的標識方法は望ましい。
【0011】
蛋白質精製は高い頻度で必要であるが、若干厄介な工程である。精製された蛋白質は科学実験の必須の中間生成物であり得、最終生成物であり得る。蛋白質の純度はしばしば実験上及び治療上の成功に対して重要である。場合によっては、注入可能蛋白質が食品医薬品局によって綿密に検査される場合、如何なる汚染物質も除去されているか無害であることが証明されていなくてはならない。純度に加えて、蛋白質はその生物学的活性を保持していなくてはならない。
【0012】
現在当技術分野で知られている蛋白質精製方法はたくさんあるが、全ての方法にいくらかの制約がある。寸法−排除クロマトグラフィはグロス分離(gross separation)に有効であるが、厳密な方法ではなく、サンプルを濃縮することが要求される。ゲル電気泳動では混合物の蛋白質の正確な分離が可能であるが、小さなサンプルにしか有効ではない。アフィニティクロマトグラフィは有効な方法であるが、概して初期汚染の一部が既に濾過されていることが要求される。従って、純度を犠牲にすることなくたくさんの量を精製するよう発明をスケールアップする場合、少ないステップからなる蛋白質の正確な分離に役立ち得る発明は当技術分野において著しい改良であるであろう。
【0013】
これらの使用に加えて、瘤は蛋白質の特定部位を「被覆する」ために使用されることが可能である。この種の使用は多嚢胞性卵巣症候群と診断された不妊女性の卵巣に発見されたもののような好ましからざる組織又は標的腫瘍へ使用されることが可能なプロドラックの設計における用途を有する。従って、毒素又は毒性酵素の活性部位の近傍へ瘤を付着させることは毒性酵素を患者に使用されることが可能となる。瘤を付着させるリンカーを切断することが可能な酵素を含む組織にひとたび毒素又は酵素が到達すると、毒素又は酵素活性が回復するであろう。このストラテジでは毒素又は酵素の実用性を他の点で制限し得る望ましくない副作用の存在を減少させることが予期される。どのように、瘤はアポトーシスを促進するPTENのような剤の活性をブロックするために使用されることが可能である。
【発明の要旨】
【0014】
本発明は特定部位に瘤で標識された蛋白質からなる組成物及びこれらの組成物を作成し使用する方法に関する。瘤とは特定の使用のためにカスタマイズすることが可能な蛋白質に対する標識を指す。
【0015】
本発明の一つの態様において、瘤で蛋白質の特定部位に標識された蛋白質が開示される。部位特定標識蛋白質は瘤、テール部分及び蛋白部分を含む。瘤は蛋白質の標識又はプローブの局面からなり、システイン残基を有する。テール部分は瘤部分と蛋白部分との間に位置する。蛋白部分は天然型アミノ酸を置換したシステイン残基を標識の所望部位に有する。瘤及び蛋白部分のシステイン残基はジスルフィド結合を形成する。本発明の更なる態様において、テール部分はプロテアーゼ又はその他の切断部位を含み得る。
【0016】
本発明の別の態様において、瘤で部位特異的に標識された蛋白質を生成する方法が開示される。これらの方法は標識のための所望の蛋白質を選択し、標識のための所望の蛋白質の特定部位を位置決めし、所望の蛋白質を生成することを伴い、ここにおいてシステイン残基は所望の蛋白質に標識するため特定部位にて置換され、そしてここにおいて所望の蛋白質は更に蛋白質の一端のテール部分そしてテール部分の端部の瘤からなり、ここにおいて瘤はシステイン残基を含み、そしてここにおいて瘤のシステイン残基は蛋白部位のシステイン残基とジスルフィド結合を形成する。本発明の関連した態様において、瘤をhCGに特定部位にて付着させる方法が開示されている。これらの方法は天然型hCGβ又はhCGβ−S138C及び天然型hCGα又はhCGα−システイン置換アナログを発現することが可能な構成体を細胞中へ共発現(co−expression)のために挿入することと、瘤をhCGβの残基140又は145に融合することを伴う。
【0017】
本発明の別の態様において、本発明の部位特異的標識蛋白質を採用する蛋白質精製方法が開示される。これらの方法は、蛋白質をコードする構成体を細胞中へ挿入することと、ここにおいてコードされた蛋白質は標識のための所望部位にて置換されたシステイン残基と、テール部分と、これはシステイン残基及び切断部位を蛋白質の一端に有し、そしてテール部分の端の瘤部分とからなり、構成体が発現可能な条件を提供することと、細胞を溶解することと、蛋白質の瘤の特性に基づき蛋白質を精製することを伴う。
【0018】
本発明の別の態様において、部位特異的に修飾された蛋白質の瘤を使用した方法が開示される。蛋白質の瘤は、例えば蛋白質間の距離をマップし、蛋白質−蛋白質接合部分の表面を精査し、2つの関連しない蛋白質の間で複合体を形成し、蛋白質瘤蛋白質の機構及び機能を精査し、蛋白質を表面同士で固定し、細胞に蛋白質を標的蛋白質として届け、蛋白質を精製するために使用され得る。特定部位にカスタマイズされた標識で標識された蛋白質が広い範囲の用途に利用可能な研究道具であるということを当業者は認めるであろう。
【発明の詳細な説明】
【0019】
近年、蛋白質のアミノ末端又はカルボキシ末端に付加された標識或いは蛋白質ループ中へ挿入されたいくつかの残基で、たいていの標識蛋白質は融合蛋白質として調製される。端部の標識は如何なる寸法も可能であるが、蛋白質ループ中へ挿入された標識はそれらが蛋白質ドメインの間に挿入されない限り、通常比較的わずかなアミノ酸残基に制約される。蛋白質はまた、標識されるべき部位へのシステインの導入を介して異なる部位に標識されることが可能であり、その上システインのスルフヒドリル基をスルフヒドリル−特異的試薬と反応させることが可能である。しかしながら、蛋白質が別のシステインを含む場合や、蛋白質が真核細胞の中で発現する場合によくみられることだが、システインが「ブロックされる」ようになることをもたらす条件において調製される場合、これを成し遂げることは非常に困難であり得る。
【0020】
本発明は蛋白質をラベリング又はタギングするための改良された方法を提供するものである。本発明の方法はシステインの導入によってラベリング又はタギングすることに関連する上記のような厄介な問題を避け、様々な寸法のプローブ又は瘤を蛋白質の末端部以外の表面上へ付着させることが可能である。本発明はhCGの表面に決められた位置へ寸法を変えた「瘤」を追加する方法を提供するものである。瘤はシステイン残基1つと同じほど短いことが可能である。瘤は例えばhCGβ−サブユニット残基138を取り囲む残基のような短いペプチドであることが可能である。瘤はまた完全な蛋白質と同じほど大きいことも可能である。例えば、β−ラクタマーゼが瘤として使用されることが可能である。瘤は蛋白質合成の間に追加され、如何なるブロッキング残基を除去したり如何なる保護基を付着させたりすることを不要にするが、これは蛋白質変性を引き起こすことが可能な仕事である。
【0021】
本発明は広範囲のプローブ又は標識を蛋白質表面の特定部位へ付着させる新規のストラテジを採用しており、これは柔軟なβ−サブユニットテールはシステインによって交換されたいくつかのα−サブユニット残基の一つと架橋することが可能であるという発見に基づいている。瘤は例えば緑色蛍光蛋白質又は関連分子のような蛍光蛋白質であることが可能である。それらは別の分子に結合する能力を有することが可能である、これはリガンド又は受容体に見出される特性である。それらはプロテアーゼ、毒素、抗体又は抗体フラグメント、膜を通過して蛋白質を輸送し得るヒト免疫欠損ウィルスのTAT蛋白質に見出されるような配列、核酸又はオリゴ糖であることが可能である。
【0022】
ある実施の形態において、組成物は、蛋白部分、ここにおいて蛋白部分は標識されるべき所望位置に置換システイン残基を含み、蛋白部分の末端のテール部分及び瘤からなり、ここにおいて瘤はテール部分の自由末端に位置しそしてシステイン残基を含み、そしてここにおいて瘤のシステイン残基は蛋白部分の置換システインでジスルフィドを形成する。用語「蛋白部分」は如何なる蛋白質又はポリペプチドをも表す。用語「テール部分」は瘤のシステインが蛋白部分の置換システインとジスルフィドを形成することが可能なほど十分な長さのアミノ酸鎖を表す。テール部分は蛋白部分の蛋白質の天然型ポリペプチド部分からなり得、β−サブユニットカルボキシ端がhCGにて役に立つときは(図1参照)、蛋白部分の末端に付加された非天然型ポリペプチドからなり得る。テール蛋白質はまた残基を欠損することが望ましく、その結果、別の蛋白質によって結合のための部位を作り出す膜内外ドメイン又は残基のような置換システインに瘤が付着することを防止するであろう。用語「瘤」は1つのシステインとそのシステインのいずれか一方の側の如何なる残基とを表し、これはテールの自由末端に隣接して位置する。瘤としては単一のシステイン残基、1つのシステインを含む直鎖状アミノ酸鎖、蛋白質に融合した直鎖状アミノ酸鎖、ここにおいて1つのシステインがアミノ酸鎖中に位置し、又は1つのシステイン残基をその表面に含む蛋白質が挙げられ得る。瘤は特定目的又は使用のために設計されることが可能であり、結果としてカスタマイズされた標識又はプローブが生じる。例えば、瘤はエピトープ標識、シグナル配列、精製カラムのビーズに高特異的な配列、酵素又は標的蛋白質であってよい。
【0023】
本発明の別の実施の形態において、特定部位の蛋白質を標識する方法が開示されている。該方法は、所望の蛋白質を選択し、標識されるべき所望の蛋白質の部位を位置決めし、そして所望の瘤を選択することを伴う。所望の瘤はシステイン残基を含む必要がある。該方法は更に、所望の蛋白質、テール部分及び所望の瘤をコードする構成体を調製することを伴う。構成体によってコードされた所望の蛋白質は標識されるべき部位に置換されたシステイン残基を含む。構成体は次に標識された蛋白質の発現のために細胞中へ挿入され、ここにおいて瘤の中のシステイン及び所望の蛋白質の置換システインはジスルフィド結合を形成する。
【0024】
用語「構成体」は特定の蛋白質生成物をコードするよう設計された発現カセットに連結したプロモータからなる核酸ベクタを表す。構成体は更に必要な全ての配列を含み、その結果コードされた蛋白質を発現することが可能であり、カセットの発現を制御するために含み得る如何なる配列を含む。これらの配列はプロモータ又は開始配列、エンハンサー配列、終止配列、RNAプロセシングシグナル及び/又はポリアデニル化シグナル配列を含み得るがこれに限定されない。用語「発現カセットの発現に必要な配列」は蛋白生成物を生成するためのRNA転写及びそれに続く発現カセットの翻訳を確実にするのに必要な配列を表している。用語「プロモータ」はRNAポリメラーゼによって結合され遺伝子の開始RNA転写に必要なDNA配列を表す。遺伝子又は発現カセットの発現を高め或いは制御することが可能なものを含む、当技術分野において知られたたくさんのプロモータが存在する。本発明の構成体はPCR及びカセット式変異誘発によって修飾され得、所望の蛋白質の瘤をコードする構成体を創出する。
【0025】
蛋白質の特定部位の瘤は、試験残基から受容体又はその他の蛋白質の接合部分までの距離を精査するために使用されることが可能である。例えば、瘤はhCGの受容体結合部位へのαサブユニット残基の近接性を測定するために利用することが可能である。結合ポケットに位置する残基へのプローブの付着は結合活性を無効にするであろう、これは標識が結合ポケットに位置することを示している。特定部位に瘤を使用するその他の利点は、大きなプローブが蛋白質−受容体接合部分に接近した残基を識別するために使用されることが可能であることである。この精査ストラテジはまた蛋白質表面の如何なる所望の部位にエピトープ標識又はシグナル配列を追加するために使用されることも可能である。更に、蛋白質瘤はまた蛋白質固定化及び蛋白質標的化に広く使用されることも可能である。プロテアーゼ認識部位が柔軟なテールの内部に設計される場合、架橋が達成された後にテールは続いて切断されることが可能であり、プローブがジスルフィドによって蛋白質表面に拘束された状態にし、しかしながらテールによって拘束されない。
【0026】
本発明の方法を使用して生成した蛋白質の瘤の用途は、単に蛋白質の部位の間の距離を推理することに限定されない。標的化されたプロテアーゼが求められた場合、融合蛋白質の調製について既に記載されているように(米国特許第6,300,099号明細書、Sledziewski等)、多くの異なるプロテアーゼを蛋白質のアミノ末端又はカルボキシ末端の何れかに単に修飾されるべき蛋白質のコード配列の5’又は3’末端にプロテアーゼのコード配列を融合することにより付着することが可能である。残念ながら、プロテアーゼの蛋白質への近接は結果として蛋白質を分解してしまう。
【0027】
蛋白質の瘤の使用はこの問題を解決する、なぜならここに記載するように瘤を蛋白質に付着させるストラテジを使用することで、プロテアーゼが付着される分子を付着できないようにする場所にプロテアーゼが保持され得るからである。更に、プロテアーゼの配向性はそれが受容体のような所望の基質の切断を触媒することを可能とし得る。プロテアーゼはここに記載されている方法を用いてhCGに設計され得、その結果プロテアーゼはLH受容体を他の蛋白質へと選択的に切断し、ルトロピンの活性の低下を引き起こす。このプロテアーゼ蛋白質の瘤はヒト不妊症全てのほぼ3分の1の原因である多嚢胞性卵巣症候群の治療に治療的に価値のある方法として使用され得る。
【0028】
本発明の別の実施の形態において、この発明の組成物及び方法は二つの蛋白質の安定した関連性を促進するために使用され得る。ここに示されたデータはhCGの架橋した蛋白質アナログが天然型hCGより低pHにおいてずっと安定していることを示している。インターサブユニットジスルフィドのhCGへの導入はヘテロ二量体の安定性を増加させる(Matzuk,M.M.&Boime,I.(1988)J.Cell Biol.106,1049−1059;Heikoop,J.C.;van,den Boogaart;Mulders,J.W.;Grootenhuis,P.D.,(1997),ゴナドトロピンにおけるインターサブユニットジスルフィド結合の構造に基づいた設計及び蛋白質エンジニアリング,Nature Biotechnology 15:658−662)。以前、インターサブユニットジスルフィド結合はその結晶構造に基づき蛋白質中へ導入されていた。本発明は、高分解性構造が利用できない場合に、インターサブユニットジスルフィドを2つの蛋白質中へそれらの合成の間に導入する方法を開示している。
【0029】
本発明の別の実施の形態において、組成物及び方法はDNAポリメラーゼのDNAへの安定的な関連を促進するために使用され得る。DNAを包み込み、ジスルフィド結合によってポリメラーゼに対して安定化させるリンカーの導入は、DNAに対してポリメラーゼを安定化させると予期されるであろう、その結果得られる転写物の長さを増加させる。
【0030】
本発明の更なる別の実施の形態において、本発明の組成物及び方法は一つ以上のそれらのオリゴ糖を欠損した糖蛋白質ホルモンの蛋白質ヘテロ二量体を生成するために使用され得る。hCGのα−サブユニットのループ2のグリコシル化シグナルの排除はヘテロ二量体を分泌し生物学的反応を導き出す哺乳類細胞の能力を減少させる(Einstein,M.,Lin,W.,Macdonald,G.J.&Moyle,W.R.(2001)Exp.Biol.Med.226,581−590;Slaughter,S.,Wang,Y.H.,Myers,R.V.&Moyle,W.R.(1995)Mol.Cell.Endocrinol.112,21−25;Yen,S.S.C.,Llerena,O.,Little,B.&Pearson,O.H.(1968)J.Clin.Endocrinol.Metab.28,1763−1767;Matzuk,M.M.;Boime,l.,(1989),突然変異誘発及び遺伝子導入はゴナドトロピンオリゴ糖の部位特異的な役割を規定する Biol.Reprod.40:48−53)。ここに示すように、hCGβS138C及びαN52Cの共発現、システインがα−サブユニット残基Asn52と置換したα−サブユニットアナログはhCGと比べても遜色ない量のヘテロ二量体の生成を可能とした。α−サブユニットのこの変異はそのグリコシル化シグナルを排除し、α−サブユニットループ2オリゴ糖がグリカナーゼ(glycanase)消化によって排除されたhCGのアナログよりも著しく高い効果を有するhCGアナログをもたらした。
【0031】
更なる別の実施の形態において、この発明の組成物及び方法を使用する方法は、サブユニットが互いに親和性が殆んどないか全くない蛋白質多量体の形成を促進することが開示されている。例えば、図6にて提供されるデータは酵素β−ラクタマーゼがhCGへいくつかの異なる部位の一つにおいて付着することが可能であることを例証している。β−ラクタマーゼがhCGと結合することは知られていない。hCGβ−サブユニットとシートベルト上のシステインの間に蛋白質切断部位を導入し、β−サブユニットカルボキシ末端を切断することにより、β−ラクタマーゼ又は他の蛋白質がhCGのほぼ如何なる部位へも安定的に付着するヘテロ三量体を調製することが可能であろう。
【0032】
別の実施の形態において、瘤のシステインは瘤部分の表面の部位に移動し得る。このことは蛋白質上の所望の配向性及び部位において蛋白質へ瘤が直接付着することが可能であろう。
【0033】
別の実施の形態において、本発明の方法はエピトープ標識で蛋白質を標識するために採用され得る。エピトープ標識はしばしば蛋白質に付着し、蛋白質−蛋白質又は蛋白質−巨大分子相互作用の検出を促進する。かつて、エピトープ標識は蛋白質のアミノ末端又はカルボキシ末端に付着されていた。しかしながら、多くのエピトープ標識は蛋白質の一端のみで作用する。その上、蛋白質の端部が蛋白質の機能を伴う場合、蛋白質の端部へ追加されたエピトープ標識の有用性は著しく減少する。本発明の方法は蛋白質の端部以外の部位にエピトープ標識を配置することを可能とし、エピトープ標識をはるかに有用にする。テール部分中への切断部位の導入はエピトープ標識を分離しなくても蛋白質の端部を自由にするであろう。
【0034】
本発明の別の実施の形態において、アルデヒド残基は蛋白質の特定部位に導入され得る。アルデヒドは非常に望ましい反応性の官能基であり、蛋白質中に通常見出されず、例えば発蛍光団(fluorophor)のようないくつかの異なる反応物を蛋白質の表面に付着させるために使用されることが可能である。この処置はアミノ端セリン又はスレオニン残基の公知の反応性を利用し、過ヨウ素酸塩酸化を穏やかにする(Yoo,J.,Ji,I.&Ji,T.H.(1991)J.Biol.Chem.266,17741−17743;Geoghegan,K.F.;Stroh,J.G.,(1992)非ペプチド基のペプチドへの特定部位接合及び蛋白質と2−アミノアルコールの過ヨウ素酸塩酸化を経た蛋白質。N−端セリンにおける修飾の用途。 Bioconjug,Chem.3:138−146)。従って、セリン残基は蛋白質の酵素切断部位の後方に直ちに導入されることが可能である。例えば、エンテロキナーゼによって認識される部位は直ちにアミノ端をセリンへ導入されることが可能であり、これは標識されるべき部位の標的システインに瘤を架橋するために使用されるべきシステインのアミノ端であろう。このことは結果として配列Xl−Asp−Asp−Asp−Asp−Lys−Ser−Ym−Cys−Zn,(SEQ ID NO:56)ここにおいてX,Y,及びZは如何なるテール部分アミノ酸をも表し、そしてl,m及びnはテール部分アミノ酸の長さを表すという結果をもたらすであろう。蛋白質の生成は結果としてテール部分のシステインが蛋白質の所望の部位、なおこれはシステインに変化している、に架橋するようになるという結果をもたらすであろう。エンテロキナーゼによる切断は結果として穏やかな過ヨウ素酸塩処理によって容易に酸化されるアミノ端セリンが創出されるという結果をもたらすであろう。生成されたアルデヒドは様々な発蛍光団(fluorophor)及びビオチンを含む如何なる多種多様のヒドラジド誘導体化合物とも容易に反応することが可能である。この方法は未結合システインを含まない蛋白質において特に有効であろう。
【0035】
更なる別の実施の形態において、本発明の組成物を蛋白質の特定部位をブロックするために使用する方法が開示されている。例えば、細胞を殺す潜在能力を有する酵素又は毒素の活性部位をこの活性が要求されるまでブロックすることが望ましいであろう。癌治療は本発明の組成物及び方法を利用する卓越した分野であろう。従って、システインが酵素又は毒素中へ酵素又は毒素の活性部位の近傍の部位に導入されることが可能であろう。活性部位の近傍でシステインとジスルフィドを形成する能力を有する蛋白質のアミノ末端又はカルボキシ末端にシステインを含む瘤の付加は、活性部位がその標的と相互作用することを瘤に防止させるであろう。瘤はテール部位の端部に融合した標的蛋白質からなり得、これは酵素/毒素−標的蛋白質複合体が細胞の表面の特定の標的とドッキングすることを可能とする。テール部分を切断するプロテアーゼを備えた複合体の処理は酵素又は毒素の活性部位を露出させるであろう。このストラテジは酵素又は毒素の活性をテール部分を切断する酵素を含む部位にそれが到達するまで隠蔽するために使用することができ、その結果毒素が露出する。例えば、これは複合体が細胞中に内在化した後に起こり得る。
【0036】
瘤の別の用途は通常互いに複合体を形成する蛋白質の間に望ましくない関連を防止するであろう。従って、ジスルフィドは二つの蛋白質の間の接合部分の位置に瘤を保持するよう設計されるであろう。
【0037】
更なる別の実施の形態において、本発明はわずか数ステップで標的蛋白質を厳密に分離する方法を提供するものである。ここに記載された方法を採用することは、所定の蛋白質をコードする発現構成体、テール部分及び瘤が創出される。所定の蛋白質の標的システイン残基の位置はカルボキシ末端、アミノ末端又は所定の蛋白質の表面の如何なる所望の位置でもあり得る。ひとたび構成体が発現した後に瘤のカップリングシステインが所望の蛋白質のシステインと結合すると、結果として生じる蛋白質−瘤複合体がカラムを通り抜ける。硬く結合した瘤の適切な選択により、蛋白質−瘤複合体は親和性樹脂と結合し、未結合蛋白質と細胞成分が洗い落とされる。次に、複合体が溶離され瘤が切断され、そして精製された蛋白質のみが残る。例えば(ストラテジーンアフィニティ(Strategene’s Affinlty:商標))pCALベクタが使用され得、そしてカルモジュリン−結合ペプチド(CBP)が瘤として選択される。CBP−瘤はカルモジュリン樹脂に結合し、中性pHの2mM EDTAで溶離されることが可能であり、従って蛋白質を変性し得る過酷な溶離条件を避けることが可能である。しかしながら、本発明に利用し得る多くの可能性のあるベクタ及び瘤の組合せがある。
【0038】
蛋白質精製に関する発明の更なる態様において、所定の蛋白質が構成され得、その結果蛋白質の瘤は切断部位を備えた短いテールを有する。瘤テールは十分短くなくてはならず、その結果瘤は蛋白質それ自身と連結したジスルフィドを形成することが不可能である。代わりに、蛋白質及びテールの機構は、瘤が別の蛋白質とジスルフィド結合を形成することに対して貢献する。溶液中で、短いテールを供えた蛋白質はビーズの鎖のように一列に並び、第一の蛋白質の瘤のシステインと第二の蛋白質の蛋白部分のシステインとの間のジスルフィド結合によってつながるであろう。第二の蛋白質の瘤は次に第三の蛋白質の蛋白部分のシステイン等とジスルフィド結合を形成するであろう。その結果得られた蛋白質の鎖はショ糖密度勾配及び遠心分離にかけられ得、鎖はその重さによって勾配の最下層へ落下するであろう。最終的に、その他の重たい物質、例えば溶解された細胞膜のようなものから蛋白質の鎖を分離するために、鎖が存在する最下層は短いテールの切断部位に特異的な酵素で処理され、結果として単一の蛋白質が得られるであろう。混合物は次に再度遠心分離されるであろう。単一の蛋白質は勾配の頂点付近に存在し、除去及び精製が容易となるであろう。蛋白質のこの鎖はまた上記とは別の方法すなわち蛋白質精製の分野で知られた別の方法を用いて精製されることも可能である。
【0039】
この発明の別の態様において、所定の蛋白質が構成され得、その結果各蛋白質の瘤は別の蛋白質の瘤と相互作用し格子状構造を形成する。テールは構成されるべきであり、その結果瘤は蛋白部分のシステインと反応することができない、これは一連のビーズの方法のテールと類似している。蛋白質はまた蛋白質の両端にテール及び瘤を包含し得る。蛋白部分は多数の置換システイン残基を包含することが望ましく、その結果一つ以上の分離した蛋白質由来の瘤は蛋白質とジスルフィド結合を形成し得る。蛋白質の瘤の置換システインの数と位置は構成に先立ってコンピュータモデリングプログラム又はその他の方法を用いて決定済みである。溶液中で、一つの蛋白質が一つ以上の蛋白質とジスルフィド結合を形成し得るので、蛋白質は格子状構造を形成するであろう。蛋白質の瘤のこのマトリックスはその上、機構の高分子量によってそれが遠心分離技術の好ましい候補となるであろうということとの兼ね合いで、上記如何なる方法によっても精製されることが可能である。
【0040】
別の実施の形態において、本発明はシステインを蛋白質に付加するために使用され得る。蛋白質を表面同士で付着させ発蛍光団(fluorophore)のような別の分子を付加的なシステインを含む蛋白質に付着させるといったシステイン固有の反応性を利用してシステインを蛋白質中へ導入することはしばしば望ましいことである。多くの蛋白質はシステイン又はジスルフィドを含んでいるので、それが分子中に導入されているシステインを利用することを困難にしている。修飾されるべき蛋白質の部位に導入されたシステインに瘤を架橋するために使用されるシステインに隣接するテール中へトリプトファンを導入することによって、この困難性は回避されることが可能である。トリプトファン、チロシン及びフェニルアラニンの吸収スペクトルの違いによって、295nmの光での蛋白質の発光がトリプトファンを選択的に目標とする。これは、隣接するジスルフィドの崩壊を引き起こし、所望のシステインのチオール残基を活性化するであろう。蛋白質へ付着されるべき官能基の存在における発光は、いくつかの別のジスルフィドを含む蛋白質においてさえ、蛋白質を所望の部位にてラベルされるようにすることを可能にする。トリプトファン残基の近くの別のジスルフィドもまた反応性がもたらされると考えられているが、たいていの蛋白質が殆んどトリプトファンを含まないという事実はこのことが通常問題とならないことを意味する。
【0041】
更なる別の実施の形態において、本発明はヘテロ二量体蛋白質の高収量を創出し獲得するために使用され得る。蛋白質の瘤のための発現構成体を作り出す場合、ヘテロ二量体の一つの二量体は蛋白部分からなっていて良い。蛋白部分の二量体が天然型のテール部分を有してない場合、テール部分は蛋白部分の二量体に融合されていて良い。瘤はヘテロ二量体のもう一方の二量体からなっていて良い。構成体の発現において、二量体をつなげるテール部分によってヘテロ二量体が形成する高い可能性と、ジスルフィド結合を形成する能力がある。この方法はヘテロ二量体の二量体が同じ細胞にて共発現される場合のホモ二量体を形成する問題を回避する。
【実施例1】
【0042】
hCG−LHR相互作用を研究するための蛋白質の瘤
これらの研究において使用されたhCG及び抗体の出所を記載する(Bernard,M.P.,Myers,R.V.&Moyle,W.R.(1998)Biochem.J.335,611−617;Moyle,W.R.,Campbell,R.K.,Rao,S.N.V.,Ayad,N.G.,Bernard,M.P.,Han,Y&Wang,Y.(1995)J.Biol.Chem.270,20020−20031;Moyle,W.R.,Matzuk,M.M.,Campbell,R.K.,Coglianl,E.,Dean Emig,D.M.,Krichevsky,A.,Barnett,R.W.&Boime,I.(1990)J.Biol.Chem.265,8511−8518)。hCGβ−S138Cを発現することが可能な構成体を、hCG cDNA中の天然型Apal部位とBamHI部位との間にカセット式変異誘発によって調製した、これは終止コドンの下流に記載のように設計された(Campbell,R.K.,Dean Emig,D.M.&Moyle,W.R.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88,760−764.;Campbell,R.K.,Dean Emig,D.M.&Moyle,W.R.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci,(USA)88,760−764)。α−サブユニットシステイン置換を発現するためのベクタもまた記載のように調製された(Xing,Y.,Lin,W.,Jiang,M.,Myers,R.V.,Cao,D.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.二者択一に折り畳まれた絨毛ゴナドトロピンアナログ:ホルモン折り畳み及び生物学的活性の密接な関わり。ジャーナルオブバイオロジカルケミストリ.2001)。ヒトα−サブユニット又はシステイン置換アナログをコードする構成体をhCGβ−サブユニット又はhCGβ−S138CでCOS−7細胞にて記載のように共発現した(Campbell,R.K.,Dean Emig,D.M.&Moyle,W.R.(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)88,760−764)。培地中に分泌された物質をサンドイッチ免疫測定によって(Moyle,W.R.,Ehrlich,P.H.&Canfield,R.E.(1982)Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)79,2245−2249)α−サブユニット抗体A113を捕捉のため、そして放射線解析されたβ−サブユニット抗体B110を検出のために採用して分析した。それらを酸pHで処理し、ジスルフィド架橋を欠損したヘテロ二量体の解離をこれも記載のように促進した(Xing,Y.,Lin,W.,Jiang,M.,Myers,R.V.,Cao,D.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.二者択一に折り畳まれた絨毛ゴナドトロピンアナログ:ホルモン折り畳み及び生物学的活性の密接な関わり。ジャーナルオブバイオロジカルケミストリ.2001)。ラットLHRを過剰発現するチャイニーズハムスター細胞(CHO細胞)を使用し、125I−hCGのLHR結合と結合する能力におけるアナログの影響を観察し、サイクリックAMPの蓄積を以前に報告されているように顕在化した(Bernard,M.P.,Myers,R.V.&Moyle,W.R.(1998)Biochem.J.335,611−617;Moyle,W.R.,Matzuk,M.M.,Campbell,R.K.,Cogliani,E.,Dean Emig,D.M.,Krichevsky,A.,Barnett,R.W.&Boime,I.(1990)J.Biol.Chem.265,8511−8518;Moyle,W.R.,Campbell,R.K.,Myers,R.V.,Bernard,M.P.,Han,Y.&Wang,X.(1994)Nature368,251−255)。
【0043】
hCG−LHR相互作用を解読するための別の試みは、ホルモン−受容体複合体中に露呈されたままのホルモンの表面を同定することを伴う(Moyle,W.R.,Matzuk,M.M.,Campbell,R.K.,Cogliani,E.,Dean Emig,D.M.,Krichevsky,A.,Barnett,R.W.&Boime,I.(1990)J.Biol.Chem.265,8511−8518)。溶離の工程を通し、ホルモン−受容体複合体中に露呈されたままの範囲は次にホルモンの表面にマップされ受容体を接触させることができる部位を明らかにする。これらのデータは受容体と相互作用するためにホルモンがその能力を保持する研究の間に収集されるので、データはホルモン受容体相互作用における変化に依存するものより容易に解析される。非−接触残基を感知するたいていの方法がモノクローナル抗体プローブの使用に依存しており、手順は分解について厳格に制限されている。この制限を回避するため、シートベルトがα−サブユニットにラッチされたアナログの活性が測定された(Xing,Y.,Lin,W.,Jiang,M.,Myers,R.V.,Cao,D.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.二者択一に折り畳まれた絨毛ゴナドトロピンアナログ:ホルモン折り畳み及び生物学的活性の密接な関わり。ジャーナルオブバイオロジカルケミストリ.2001)。これらのアナログのいくつかは、たとえそれらがホルモン受容体相互作用をブロックすると予測されるであろう範囲に付着したβ−サブユニットカルボキシ末端及びシートベルトの一部を含んでいたとしても、hCGと根本的に同じ活性を有している。シートベルトをα−サブユニットに連結することはヘテロ二量体の立体構造を変化させる潜在能力を有している;これは、いくつかのアナログの低い活性に寄与し得る現象である。近年、β−サブユニットの長く不規則なカルボキシ末端が、α−サブユニット中へ導入されたシステインでジスルフィドを形成した残基138にシステインが導入されるまではヘテロ二量体の表面の大部分を走査するため十分に可動性であることが見出された。これらのアナログのシートベルトは、それらがhCG中に存在するようにラッチされ、変異がヘテロ二量体の立体構造をあまり変えそうにないようである。ここに記載されているように、これらのhCGアナログの多くはシートベルトがβ−サブユニットに付着したものよりはるかに活性がある。達成された研究の結果はまた、たいていのhCGα−サブユニットループ2、受容体接合部分の近傍にある可能性の高いホルモンの一部が、LHRと接触しないということを示している。不規則なβ−サブユニットカルボキシ末端の一部がループ2及びα−サブユニットのカルボキシ末端中にジスルフィドによって導入されたシステインで束縛される前と後のhCGアナログの活性が比較された(図2及び3参照)。ループ2の先端にシステインを有するアナログ以外は、架橋を欠損したヘテロ二量体はLHR結合及びシグナル伝達分析においてhCGの活性の少なくとも25%を有していた。このことは何れかの領域の残基の殆んどが総hCG−LHR結合エネルギーの一部分を超えるものを提供せず、カルボキシ端残基が効能の本質的要素であるという報告と矛盾することを示唆している。β−サブユニットカルボキシ末端プローブをα−サブユニットループ2の表面にβ−サブユニットループ1及び3を対面させるよう束縛することは結合することやシグナル伝達することに比較的殆んど影響せず、これはホルモンのこの部分は受容体と接触している可能性は低いことを暗示している。β−サブユニットカルボキシ末端を別の残基と連結することにより引き起こされる活性の喪失はα−サブユニットのこれらの蛋白が受容体の近くに存在することを暗示し得る。hFSHがFSH受容体に全体的に同じ方法でしかしながらhFSHの異なる部分で結合することを明らかにしたFSH受容体とのhFSHの相互作用の研究に対するこの手順の応用が重要な受容体の接点を形成している。LH及びFSHの両者の受容体と相互作用する能力を有するキメラのhCG−hFSHリガンドの研究に対するこの手順の応用がこれらの観察結果を立証した。従って、キメラの異なる部分はFSHRよりLHRに近いことが見出された。同様の突然変異誘発ストラテジは蛋白質−蛋白質接触に参加しない他の蛋白質の表面を同定するのに有効であることが望ましい。
【0044】
ここに記載された研究はまた、hFSHのFSH受容体への結合部位を同定し、二機能性hCG/hFSHアナログのLH及びFSH受容体の両者に対する相互作用を比較するこの手順の応用を例証している。hFSHが「シートベルト」(テール部分)(図8,SEQ ID NO:41)を有していないので、hCGβ−サブユニットカルボキシ末端(fqdsssskapppslpspsrlpgpstdpilpg,SEQ ID NO:55)の残基の部分をそのβ−サブユニットカルボキシ末端にコードしたhFSHβ−サブユニットのアナログを調製した。セリン残基138がシステインに交換されたhCGで達成された研究と同様に、hFSHβ−サブユニットアナログのセリン残基132がシステインに交換された(図8,SEQ ID NO:42)。hFSHβ−サブユニットS132Cアナログを次に置換システインを含むいくつかのα−サブユニットアナログとともに発現した。同様のhCGアナログとともに成された実験に基づいて予期されるように、ヘテロ二量体が低いpHで天然型hFSHより非常に安定であるという事実からも明らかなように、hFSHアナログのβ−サブユニットはα−サブユニットとジスルフィドによって架橋されるようになった。これらのアナログの多くはhFSH受容体分析において高活性を有していた(図13)。いくつかの相違点がFSH−由来アナログの活性においてhCG−由来アナログの活性と比較して検出された。これらの相違点はhCGがLH受容体と相互作用するのと異なりFSHがFSH受容体と相互作用することを明らかにしており、その結果、各ホルモン−受容体複合体のモデルの構成を可能とした。この結果はまた、hCGβ−サブユニットカルボキシ末端配列が好適な部位、すなわち瘤を追加するための「テール部分」を欠損した蛋白質の表面に瘤を付加するための「テール部分」として使用されることが可能であるということを示している。当業者はhCGβ−サブユニットカルボキシ末端以外の多くの配列が同じ課題を達成するために使用されることが可能なことを認識するであろう。テール部分のシステインが付着されるための蛋白質の表面のシステインに到達することが可能なほど十分に長い配列であることと、システインを蛋白質の表面に到達させることを阻止する残基を含まない配列であることの両者を「テール部分」の配列は必要とする。テール部分のシステインが蛋白質の表面のシステインに到達することを阻止する残基は、テール部分のシステインを隔離する分離ドメイン中へ配列が折り畳まれる残基、蛋白質が細胞膜へ付着するようになりその結果システインを隔離するシグナルを含むような残基、蛋白質が他の蛋白質に結合しその結果システインを隔離するシグナルを含む残基、又は蛋白質の表面の間の相互作用をブロックするほど高帯電した残基を含む。
【0045】
糖蛋白質ホルモンの二機能性アナログはそのシートベルトの部分を交換することにより調製されることが可能である(米国特許第5,508,261号明細書、Moyle等)。hCGとLH受容体のようなルトロピン、hFSHとFSH受容体のようなホリトロピンの相互作用における違いを更に区別するために、hCGのアナログを調製した、これはLH及びFSH受容体に結合することが知られている。hCGβ−サブユニット残基101−114をその対応するhFSHβ−サブユニット、すなわちhFSHβ−サブユニット残基95−108(図8、SEQ ID NO:38)と交換した。hCG及びhFSHアナログの場合に以前成されたように、このアナログのβ−サブユニットカルボキシ末端のセリン残基138をシステインに交換した(図8、SEQ ID NO:39)。構成体をCOS−7細胞にて置換システインを含んだいくつかのα−サブユニットアナログで発現させた。COS−7細胞中で生成されたヘテロ二量体を、hCGのα−及びβ−サブユニットに対する抗体を採用したサンドイッチ免疫学的検定を用いて定量化した。多くがα−及びβ−サブユニットの間のジスルフィドにより架橋されていることが低いpHにおける安定性が増加したことに基づき見出された。これらのアナログのいくつかはLH及びFSH受容体と著しく異なる相互作用を有していた。例えば、β−サブユニットカルボキシ末端がα−サブユニット残基システイン37と架橋したアナログはLH受容体と非常に相互作用を示すが、FSH受容体とは殆んど相互作用を示さなかった(図12−14)。hCGのLH受容体との相互作用はhFSHのFSH受容体との相互作用と著しく異なるという発見をこれは立証し、これらのホルモンの各々がその受容体と相互作用を示すモデルへの更なる考慮すべき裏付けをこれは提供した。
【0046】
結果
hCGα−サブユニットアナログ及び、天然型hCGβ−サブユニット又はhCGβ−S138Cの何れか
たいていのα−サブユニットアナログと天然型β−サブユニット(表1)又はhCGβ−S138C(表2)の何れかをコードするベクタで共−トランスフェクトしたCOS−7細胞はヘテロ二量体を組み立て、それを培地へ分泌することが可能であった。殆んど又は全くヘテロ二量体を分泌しないものとしては、システインが残基Tyr37、Pro40,Asn52及びY89Cから置換された(表1)β−サブユニット及びα−サブユニットアナログを含むものが挙げられる。αN52C/βが低分泌であることはhCGのこの位置に通常見出され、これがヘテロ二量体の効率的な分泌のために必要である、N−連結グリコシル化シグナルの欠如を反映し得る(Matzuk,M.M.&Boime,I.(1988)J.Cell Biol,106,1049−1059)。
【0047】
【表1】

【0048】
試験されたたいていのα−サブユニットアナログでhCGβ−S138Cを含むヘテロ二量体が検出された(表2)。天然型β−サブユニット、Tyr37、Pro40及びAsn52を含むがTyr89を含まないもので発現される場合、殆んど分泌しないいくつかのアナログの形成をhCGβ−S138Cが奪回した(表2、図1)。表2のこれらのヘテロ二量体の多くはインターサブユニット架橋を含むように見えた、なぜならそれらは低いpHでの簡素な処理の後も容易に検出されたからであった。天然型α−サブユニット又はαG22C及びαV53Cα−サブユニットアナログを含むヘテロ二量体は低いpHにて破壊された、このことはそれらがインターサブユニットジスルフィドを欠失していたことを示唆している。一方、αQ5C,αQ27C,αP40C、αK51C,αL41C,αM71C及びαV76Cを含んだヘテロ二量体のフラクションにおいてのみ、α−サブユニットアナログがインターサブユニットジスルフィドによって安定されたようにみえた(表2)。ヘテロ二量体をほとんど形成しないか或いはヘテロ二量体を全く架橋しないアナログのα−サブユニットアナログにおけるシステインはサブユニット接合部分に存在し、すなわち、β−サブユニットのカルボキシ端伸長の第一残基であるβ−サブユニット残基Asp111から遠く存在している。その結果、β−サブユニット残基138のシステインはこれらのα−サブユニットシステインに到達することを阻止するように見える。この現象はサブユニットがhCGと構造上類似したヘテロ二量体の中に組み込まれた後にたいていのインターサブユニットジスルフィド架橋が形成されたことを示唆している。試験されたα−サブユニットアナログのうちhCGβ−サブユニット又はhCGβ−S138Cの何れかとヘテロ二量体を形成されないもののみがTyr89に代えてシステインを含んでいた。このチロシンは、ヘテロ二量体形成を乱すことなく削除でき、システイン以外の残基に変更することができるので(Pierce,J.G.&Parsons,T.F.(1981)Annu.Rev.Biochem.50,465−495)、α−サブユニットの折り畳みにとって本質的要素ではないが、チロシンをシステインに交換することはα−サブユニットの折り畳みを乱し得る(Chen,F.,Wang,Y.&Puett,D.(1992)Mol.Endocrinol.6,914−919.)。
【0049】
【表2】

a)テキスト中に記載されているような酸pHにて処理した後のサンプルにおいて残存する物質のパーセンテージとしてこの値を計算した。
b)低pH処理の後A113及び125I−B110において観察されたものに対するA113及び125I−B111を採用したサンドイッチ分析において測定された活性の比率としてこの値が計算された。如何なるB111結合の検出もシートベルトがラッチされていることを示している。いくつかの場合に観察された低い値は架橋されたヘテロ二量体と相互作用するB111の性能におけるβ−サブユニットカルボキシ末端の立体構造の影響を反映し得る。
【0050】
ループ2の多くのα−サブユニット残基のためのシステインの置換はhCGの受容体−結合及びシグナル−形質導入活性に少しの影響しかもたらさなかった(表3、図2)。α−サブユニット残基αMet47(表3、図2)及びαLys51(Einstein,M.,Lin,W.,Macdonald,G.J.&Moyle,W.R.(2001)Exp.Biol.Med.226,581−590)をシステイン残基に交換することは、hCGと比較して結合及びシグナル分析におけるヘテロ二量体の活性を低下させた。αLys51がアラニンで交換されるアナログもまたhCGより著しく少ない活性しか有しないが(Einstein,M.,Lin,W.,Macdonald,G.J.&Moyle,W.R.(2001)Exp.Biol.Med.226,581−590)、hCG−αM47A、αMet47がアラニンで交換されるアナログは両方の分析においてhCGとほぼ同じ活性であった(表3)。α−サブユニット残基47のメチオニンの存在はhCG活性にとって根本的要素ではないということをこれは示唆した。受容体相互作用におけるαLys51の特異的な役割も決定すべきこととして残っている。α−サブユニット残基51がβ−サブユニット残基99とジスルフィドによって架橋されるヘテロ二量体はαLys51がシステイン又はアラニンで交換されるものより高い活性を有しているという発見に基づき、αLys51側鎖を交換することはヘテロ二量体の立体構造変え得る可能性があるように見える。
【0051】
【表3】

a)サンドイッチ免疫学的検定によって測定されたアナログの濃度に基づく。これらの値は要約された実験からのIC50値から計算された。ほんのわずかな量しかトランスフェクトされたCOS−7細胞によって生成されなかったので、いくつかのアナログがこれらの分析において試験されなかった。表1にも示したように、α/hCGβ−S138Cの酸処理の後は如何なる安定なヘテロ二量体も得なかった。
【0052】
α−サブユニットループ2残基αLys44のアラニンへの変化はhCGの活性を100倍以上減少させることが報告されている(Xia,H.,Chen,F.&Puett,D.(1994)Endocrinol.134,1768−1770)。従って、αLys44及びα−サブユニットに近接するいくつかの残基をシステインに交換することはhCG活性に予想よりずっと少ない影響しか有していないということが発見された(表3)。サブユニットの組み合わせにおけるα−サブユニットループ2の先端の帯電について成された予測を試験するのに関係のない研究の一環の間に(Slaughter,S.,Wang,Y.H.,Myers,R.V.&Moyle,W.R.(1995)Mol.Cell.Endocrinol.112,21−25)、残基44及び45のジリンに代えてグルタミン酸及びグルタミンを含むhCGアナログが夫々調製された(hCG−αK44E,K45Q)(図15, SEQ ID NO:52)。予想外に、hCG−αK44A(図15、SEQ ID NO:51)及びhCG−αK44R(図15、SEQ ID NO:53)、αLys44の代わりにアラニン及びアルギニンを有するアナログでそうであったようにこのアナログは両分析において高活性を有していた(表3、図19)。後者のアナログの高活性はウマのα−サブユニットがこれと同じ置換を有する(Pierce,J.G.&Parsons,T.F.(1981)Annu.Rev.Biochem.50,465−495;Pierce,J.G.&Parsons,T.F.(1981)Annu,Rev,Biochem.50,465−495)という事実に基づき予想された。これらの研究はこれらの残基をシステインで交換することにより成された観察結果に一致するものであった。これらの観察は以前の発見(Xia,H.,Chen,F.&Puett,D.(1994)Endocrinol.134,1768−1770)に反しており、α−サブユニットループ2に見いだされた小さなヘリックスにおける高度に保存された+に帯電したジリン残基のいずれもLHR相互作用にとって本質的要素でないということを示唆している。
【0053】
βCys26の除去
βCys110、シートベルトのカルボキシ末端をβ−サブユニットコアにラッチするシステインは、βCys110がβ−サブユニット残基26でジスルフィドを形成することを阻止する場合、これらのα−サブユニットアナログの多くに導入されたシステインに架橋するようになることが可能であるということが見出されていた(Xing,Y.,Lin,W.,Jiang,M.,Myers,R.V.,Cao,D.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.二者択一に折り畳まれた絨毛ゴナドトロピンアナログ:ホルモン折り畳み及び生物学的活性の密接な関わり。ジャーナルオブバイオロジカルケミストリ 50,46953−46960,2001)。この発見はシートベルトの位置を変化させ、抗体B111のエピトープを除去する。これらの架橋されたアナログのシートベルトがβCys26に付着するかどうか確認するために、抗体B111及びB110によって認識されるべきそれらの能力が比較された、これら抗体は異なるβ−サブユニットエピトープを認識するものである。表2に示したように、架橋されたヘテロ二量体各々がB111によって認識され、必ずしもB110と同じとは限らないが、シートベルトがβCys26にhCGにて成されたのと同じ方法でラッチされたことを示唆する観察結果が得られた。我々はいくつかのアナログのα−サブユニット中に導入されたシステインにβCys110がラッチされる可能性を排除することができないが、これは2つの理由からまったく可能性がない。第一に、これらの研究において使用される全てのβ−サブユニットが残基26にシステインを含むからである。残基26におけるこのシステインを排斥するにはシートベルトがα−サブユニット中にその位置に関係なく導入されたシステインに架橋されるようする必要がある(Xing,Y.,Lin,W.,Jiang,M.,Myers,R.V.,Cao,D.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.二者択一に折り畳まれた絨毛ゴナドトロピンアナログ:ホルモン折り畳み及び生物学的活性の密接な関わり。ジャーナルオブバイオロジカルケミストリ2001)。そして第二に、B111によって殆んど認識されない架橋されたアナログにおけるα−サブユニットシステインの位置(αY37C,αP40C,CL41C,αR42C及びαT86C)は、B111結合部位に最も近い場合である(図1)。B111のヘテロ二量体への接近で妨害される位置にて、これらのアナログのβ−サブユニットカルボキシ末端の位置を架橋が安定化し得るということをこれは示唆する。
【0054】
α−サブユニットのカルボキシ末端
α−サブユニットのカルボキシ末端はLHR相互作用のための本質的要素であると考えられている(Pierce,J.G.&Parsons,T.F.(1981)Annu.Rev.Biochem.50,465−495;Yen,S.S.C.,Llerena,O.,Little,B.&Pearson,O.H.(1968)J.Clin.Endocrinol.Metab.28,1763−1767)。α−サブユニットのカルボキシ末端にシステインが存在することはまたヘテロ二量体の活性を少々減少させ(表3、図3)、これは、受容体の接点としてのホルモンのこの部分の推定上の役割と一致した現象である(Pierce,J.G.&Parsons,T.F.(1981)Annu,Rev.Biochem.50,465−495;Chen,F,Wang,Y.&Puett,D.(1992)Mol.Endocrinol,6,914−919)。それにもかかわらず、これらのアナログは5つのカルボキシ端α−サブユニット残基を欠損したアナログよりずっと活性を有しており(Pierce,J.G.&Parsons,T.F.(1981)Annu.Rev.Biochem.50,465−495)、これは、この領域のシグナル残基はホルモン活性のための本質的要素ではなく、夫々がLHRのためのhCGの総結合エネルギーに少ししか貢献しないということを示している。膜貫通型ドメインにおいてアスパラギン酸残基でそれがもたらす推定上の接触によって(Ji,I.,Zeng,H.&Ji,T.H.(1993)J.Biol.Chem,268,22971−22974)、シグナル形質導入における本質的役割をαLys91が有しているということが報告されているので(Yoo,J.,l.&Ji,T.H.(1991)J.Biol.Chem.266,17741−17743)、αK91Cを含むヘテロ二量体がhCGの効果をたくさん保有しているということ(図3)を見出したことは驚くべきことである。hCG−αK91Cが実質的な効果を有することの発見はこの提案と矛盾する。その結果、hCG−αK91E及びhCG−αK91Mは調製されそれらの活性が試験された。これらのアナログは非常に低い効果しか有していないことが報告されている(Yoo,J.,Ji,I.&Ji,T.H.(1991)J.Biol.Chem.266,17741−17743)。グルタミン酸を有しているアナログがhCGよりおおよそ10低い親和性を備えたLHRと相互作用するにもかかわらず、図17に示したように、両アナログは実質的な効果を有していた。この観察結果はαLys91がシステインに変換された場合に成された観察に関し(表3、図3)、このリジン残基が報告されていたように(Yoo,J.,Ji,I.&Ji,T.H.(1991)J.Biol.Chem.266,17741−17743).シグナル形質導入のために重要ではないということを示し得る。
【0055】
β−サブユニット及びα−サブユニットループ2のカルボキシ末端
β−サブユニットのカルボキシ末端がα−サブユニットループ2の残基と架橋した酸−安定アナログの多くは受容体−結合及びシグナル−形質導入分析において著しい活性を有する(表3、図4)。これらはそれがα−サブユニットループ2残基35,37,40,44,42,45,50及び52に付着したものが挙げられる(表3)。β−サブユニットのカルボキシ末端のα−サブユニットループ2残基47への付着は受容体結合活性をほぼ無効にし、残基43及び46にそれを連結することはヘテロ二量体の活性を半分減少させる。ほぼ全ての活性アナログのα−サブユニットループ2残基の側鎖はβ−サブユニットループ1及び3に向かって突出している。β−サブユニットループ1及び3と対面するα−サブユニットループ2の表面がLHRと接触しないということをこれは示唆している。α−サブユニット残基43及び46の側鎖はシートベルトに向かって突出し、その残基47はCys93及びCys100の間のジスルフィドによって形成された小さなシートベルトループと対面している。従って、β−サブユニットのカルボキシ端部分がこれらの部位と連結することにより引き起こされる活性における損失が受容体とα−サブユニットループ2のこれらの部分の間の相互作用を乱し、α−サブユニットループ2の立体構造を、受容体と相互作用するホルモンの能力を減少させることで変化させ得る。
【0056】
β−サブユニットカルボキシ末端の長さは、β−サブユニットループ1及び3を横切ることによって残基138がα−サブユニットループの残基に付着されるということを示唆している(図1)。従って、β−サブユニットのカルボキシ端部分はこれらの如何なるアナログのα−サブユニットループ2及びβ−サブユニットループ1及び3の間の溝にも空間を占有しないであろう。β−サブユニットのカルボキシ端部分のこの部分がこの溝を占めるアナログの活性を研究するために、β−サブユニット残基116−135及び121−135を欠損したアナログが調製された。これらのアナログにおいて、β−カルボキシ末端はこのインターサブユニットの溝を通過することなくループ2のα−サブユニット残基と架橋を形成するには短すぎる。これらのアナログはLHR結合及びシグナル伝達分析における実質的な活性を有していた(図4)、これは、α−サブユニットループ2のこの部分がLHRと接触しないという発想について更なる確証を提供する。
【0057】
β−サブユニット及びα−サブユニットループ1及び3
β−サブユニット残基138がα−サブユニットコアの他の部分と架橋するようになることが可能かどうか突き止めるため、hCG−βS138Cをループ1及び3の残基の代わりにシステインを含むいくつかのα−サブユニットアナログと共に発現させた。システインをαSer64の代わりに含むヘテロ二量体を除いて、結果として得られる少量のヘテロ二量体のみが酸のpHでの低い安定性によって明らかにされたように架橋された(表2)。これらのヘテロ二量体における多くのα−サブユニットアナログのシステインは、インターサブユニット架橋に参加するアナログのものよりシートベルトのカルボキシ末端からはるかに遠く位置しており、β−サブユニットのカルボキシ端領域によって効率的に到達されることが可能な範囲を超え得る(図1)。αS64C/hCG−βS138Cヘテロ二量体は受容体結合及びシグナル伝達分析において著しい活性を有しており(表3)、これはこのα−サブユニット残基がLHRと本質的な接触を形成しないということを示している。
【0058】
β−サブユニットカルボキシ末端をα−サブユニットカルボキシ末端の残基と架橋することは何れのサブユニットのシステインの置換より、へテロ二量体のLHRとの相互作用においてはるかに大きな影響を有していた(図5)。これは、25年以上前に達成された研究に基づき提案されたように、α−サブユニットカルボキシ末端がLH受容体接合部分に近接することを示唆していた(Pierce,J.G.&Parsons,T.F.(1981)Annu.Rev.Biochem.50,465−495)。それにもかかわらず、β−サブユニットのカルボキシ末端をこの領域に付着することがヘテロ二量体の機構を変化させ、或いはβ−サブユニットの端部を受容体を接触させるホルモンの別の部分近傍に通過させることは可能である。
【0059】
蛋白質瘤−hCG−βラクタマーゼ
α−サブユニットループ2のたいていの残基が本質的なLH受容体の接点に参加しないという考えについて多数を確証をこれらの研究は提供する。しかしながら、ホルモンのこの部分が受容体接合部分に近接するという可能性をこの研究は排除しない。この問題に取り組むために、hCGと同じ程度の寸法の球状蛋白質である、β−ラクタマーゼをα―サブユニットの特定部位に付着させたhCGβ−サブユニットアナログが調製された。これはβ−ラクタマーゼをhCG−βS138Cの残基140及び145に融合することによって達成され、hCG−βS138C−βLA140及びhCG−βS138C−βLA145を夫々生じさせた。α−サブユニットに架橋されるべきであるシステインとβ−ラクタマーゼのアミノ末端との間に7つの残基の「スペーサ」を後者のアナログは有していた。これらのβ−サブユニットアナログのα−サブユニットアナログαT46C,αL48C,αS64C及びαS92Cとの共発現は酸安定へテロ二量体の形成をもたらす(図6)。β−サブユニット残基138がα−サブユニットと付着するようになることをβ−ラクタマーゼが防止しないことをこれは示した。
【0060】
これらのhCG−β−ラクタマーゼアナログは対応するβ−ラクタマーゼを欠損したアナログよりはるかに低い生物学的活性しか有していなかった(図6)。
【0061】
重要な受容体の接点を含まないα−サブユニットの部分を同定するために設計された以前の研究の結果と関連して(Xing,Y.,Lin,W.,Jiang,M.,Myers,R.V.,Cao,D.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.二者択一に折り畳まれた絨毛ゴナドトロピンアナログ:ホルモン折り畳み及び生物学的活性の密接な関わり。ジャーナルオブバイオロジカルケミストリ.2001)、これらの観察結果はLHRと接触するように見えないホルモンの表面の現在の知識を広げ、α−サブユニットループ2とβ−サブユニットループ1及び3との間の溝が本質的にLH受容体の接点以前のモデルの重要な必要条件に参加しないことを示唆している(Moyle,W.R.,Campbell,R.K.,Rao,S.N.V.,Ayad,N.G.,Bernard,M.P.,Han,Y.&Wang,Y.(1995)J.Biol.Chem.270,20020−20031)。確かに、細胞の表面のLHRに結合するhCG及びhCGアナログを認識するモノクローナル抗体の能力(Wang,Y.H.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.(2000)Mol,Cell.Endocrinol.170,67−77)及びhCG/hFSHとhCG/hTSHキメラのLHRに結合する能力に基づき(Campbell,R.K.,Dean Emig,D.M.&Moyle,W.R.(1991)Proc.Natl,Acad.Sci.(USA)88,760−764;Campbell,R.K.,Bergert,E.R.,Wang,Y.,Morris,J.C.&Moyle,W.R.(1997)Nature Biotech,15,439−443;Grossmann,M.,Szkudlinski,M.W.,Wong,R.,Dias,J.A.,Ji,T.H.&Weintraub,B.D.(1997)J.Biol.Chem.272,15532−15540;Moyle,W.R.,Campbell,R.K.,Myers,R.V.,Bernard,M.P.,Han,Y.&Wang,X.(1994)Nature368,251−255)、hCG−特異的残基は本質的なLHR接点にほとんど参加しないように見える。hCG活性の最も大きな影響を有する残基はシートベルトに位置するが、これらの大部分でさえ数倍以上ホルモン−受容体相互作用を乱すことなく一つずつ変化されることが可能である(Han,Y.,Bernard,M.P.&Moyle,W.R.(1996)Mol.Cell.Endocrinol.124,151−161)。これらの観察結果に基づき、受容体の2つの遠位部位がhCG−LHR相互作用に影響するように見えるという発見と、Bernard,M.P.,Myers,R.V.&Moyle,W.R.(1998)Biochem.J.335,611−617、哺乳類のルトロピンはヒトLHRと相互作用するように見えるという発見はホルモンの立体構造における小さな変化に特に敏感であり、糖蛋白質ホルモン及びそれらの受容体の相互作用は比較的わずかな接点、たとえば成長ホルモンとその受容体の間に見出されているような接点によって支配されないということが提案される(Clackson,T.&Wells,J.A.(1995)Science267,383−386;Wells,J.A.(1996)Proc.Natl.Acad.Sci,(USA)83,1−6)。
【実施例2】
【0062】
hFSHとFSH受容体のドッキングを研究するための蛋白質の瘤
hFSHβ−サブユニットの配列をコードするcDNAをマサチューセッツ州ランドルフポンドストリート280のアレス先端技術のセロノ(Serono)部門のクリスティケルトンから入手し、これはmRNAの翻訳部分に関連していた。リーダー・ペプチドを欠損したこのβ−サブユニットのアミノ酸配列は(図8、SEQ ID NO:40)に図示する。hFSHcDNAをPCR及びカセット式変異誘発によって修飾し、FC1−108β(図8、SEQ ID NO:41)と呼ばれる構成体を作り出した、これはhFSH残基1−108及びhCG残基115−145を直列にコードしている。hFSHβ−サブユニットに見出されたリーダー・ペプチドを欠損したFC1−108βのアミノ酸配列もまた図8に記載されている。残基Ser132がCysに変換されたFC1−108βのアナログが、hCG−S138Cβをコードする構成体のXhol−ApalフラグメントをFC1−108βのものと交換することによって調製され、FC1−108、S132Cβ(図8、SEQ ID NO:42)を作り出した。実施例1に記載された方法を用いてCOS−7細胞にて図7に示されたα−サブユニットアナログのいくつかと共にFC1−108、S132Cβを発現させた。細胞によって培地中へ分泌されたヘテロ二量体を抗体A113及び125I−B603を用いて測定した。前者はα−サブユニットに対する抗体であり、後者はhFSHβ−サブユニットに結合するモノクローナル抗体であり、精製されたhFSHが基準物として使用された。如何なる非−架橋へテロ二量体も分離するための酸処理に続き、物質を上記のようにA113及び125I−B603で再分析し、サンプル中の架橋された物質の量を測定した。結果として得られる架橋したアナログは、FSH受容体を発現するCHO細胞におけるサイクリックAMPの蓄積を顕在化する能力について試験した。
【0063】
図11に示すように、α−サブユニット残基35の瘤の影響としては結果としてこのFSHアナログの能力を穏やかに低下させるのみであった。α−サブユニット残基92,64,48,46,42,90,43,88及び86への瘤の付加は結果としてアナログ活性を進行的に喪失した。α−サブユニット残基35がFSH受容体接合部分の近傍に存在せず、いくつか別の残基が受容体接合部分の近傍に存在するようであるということをこれは示した。hCGのLH受容体との相互作用とは異なり、残基42及び43に瘤が存在することはFSHアナログのその受容体への結合に対してはるかに阻害性を及ぼした。FSH及びhCGがそれらの受容体へ夫々相互作用する場合、α−サブユニットループ2の一部の表面がLH受容体よりFSH受容体に非常に近いということをこれは明らかにした。これは、両受容体のα−サブユニット残基86へ瘤を付着させることは両リガンドのこの部分が受容体接合部分の近傍に存在するという発見であった。
【実施例3】
【0064】
LH及びFSH受容体への二機能性hCG/hFSHキメラのドッキングを研究するための蛋白質瘤
アミノ酸101−114のhCGβ−サブユニットコドンがそのhFSHβ−サブユニット対応部分で交換されたキメラをコードするcDNA配列が、標準的な方法で調製された。CFC101−114βと呼ばれるこのキメラアミノ酸配列は図8に(SEQ ID NO:38)リーダー残基を引いた形で示す。hCG−S138Cβをコードする構成体のXhol−ApalフラグメントをCFC101−114βのものと交換することによってCFC101−114β、S138C(SEQ ID NO:39)を創出し、残基Ser138がCysに変換されたCFC101−114βのアナログが調製された。実施例1に記載された方法を用いてCOS−7細胞にて図7に示されたα−サブユニットアナログのいくつかと共にCFC101−114β、S138Cを発現させた。細胞によって培地中へ分泌されたヘテロ二量体を抗体A113及び125I−B110を用いて測定した。前者はα−サブユニットに対する抗体であり、後者はhCGβ−サブユニットに結合するモノクローナル抗体である。精製されたhCGが基準物として使用された。如何なる非−架橋へテロ二量体も分離するための酸処理に続き、物質を上記のようにA113及び125I−B110で再分析し、サンプル中の架橋された物質の濃度を測定した。結果として得られる架橋したアナログの、LH受容体を発現するCHO細胞に対する125I−hCGの結合を阻害する能力、FSH受容体を発現するCHO細胞に対する125I−hFSHの結合を阻害する能力について試験した(図12)。LH受容体を発現するCHO細胞における、そしてFSH受容体を発現するCHO細胞におけるサイクリックAMPの蓄積を顕在化する能力についても試験した。
【0065】
図12に示すように、α−サブユニット残基35の瘤の存在はキメラの能力を干渉せず、ほとんどのhCGβ−サブユニットカルボキシ末端を欠損した二機能性キメラと比較して、放射性ヨウ化hCG又は放射性ヨウ化hFSHのLH又はFSH受容体への結合を夫々ブロックした。しかしながら、α−サブユニット残基37に瘤が存在することは劇的に異なる結果をもたらした。従って、この瘤はLH受容体へ結合するキメラの能力に関して殆んど影響をもたらさなかったが、FSH受容体へ結合するその能力を殆んど抹殺した。α−サブユニット残基43及び46に瘤が存在することはキメラの両受容体へ結合する能力を減少させた。hCGがLH受容体に結合し、hFSHがFSH受容体に結合することについて発見されたように、これらの部位に瘤が存在することはLH受容体相互作用よりFSH受容体相互作用をはるかに阻害した。これらの残基がLH受容体接合部分よりFSH受容体接合部分に対してはるかに近接していることをこれは示した。α−サブユニット残基48及び62に瘤が存在することはどの受容体でもキメラの相互作用に殆んど影響を与えなかった、これは、これらの残基が受容体接合部分から遠く離れていることを示している。実施例1及び2で観察されたように、α−サブユニット残基86に瘤が存在することはキメラが両受容体に結合することを非常に阻害した。ホルモンのこの部分が両受容体でキメラの接合部分に近接して存在しているということをこれは示した。同様の結果がα−サブユニット91の瘤でも観察された。
【0066】
図13及び14に見られるように、瘤の存在はLH受容体及びFSH受容体シグナル形質導入分析において殆んどのキメラの活性を減少させた。しかしながら、減少の量は異なり、アナログが試験される受容体に依存した。例えば、α−サブユニット残基37に瘤が存在することは、LH受容体の介在したサイクリックAMP蓄積より、FSH受容体が顕在化するサイクリックAMP蓄積を非常に阻害した。全般的に、細胞応答を顕在化するキメラの能力における瘤の相対的な影響は受容体相互作用に作用するそれらの能力と同じであった。hCGとLH受容体のようなルトロピンの相互作用はhFSHとFSH受容体のようなホリトロピンのものから容易に区別することができるという結果をこれらの研究はもたらした。従って、たとえルトロピン及びホリトロピンが非常に似た構造を有していたとしても、そしてたとえそれらの受容体が非常に似ているとしても、これらのリガンドが受容体と相互作用すると見出される方法は同じではないのであった。この例は蛋白質−蛋白質相互作用を同定する本発明のプローブを用いた能力を例証している。
【実施例4】
【0067】
β−ラクタマーゼを有する瘤
hCGβ、S138Cβ−サブユニットを含むアナログは、Ser138wo取り囲む残基から構成される比較的小さな瘤を有する。これらはリガンドとその比較的小さい受容体との間の距離を検出するためには十分な大きさである。しかしながら、これらの瘤は受容体からかけ離れた残基の近接性を検出するために有用であるためには小さすぎる。この制約は、β−ラクタマーゼを追加することによって成されたように、プローブの寸法を増大させることにより回避されることが可能である。β−ラクタマーゼは、その結晶構造が知られており、そのアミノ末端及びカルボキシ末端が蛋白質の表面に存在するので、プローブとして使用するために選択された。従って、ホルモンの何れの側でも融合蛋白質を生成するために有用である。β−ラクタマーゼのその他の利点は蛍光性基質を切断する高代謝回転数を備えた酵素であることであり(Zlokarnik,G.,Negulescu,P.A.,Knapp,T.E.;Mere,L.,Burres,N.,Feng,L.,Whitney,M.,Roemer,K.&Tsien,R.Y.(1998)Science279,84−88)、これは、融合蛋白質の検出に有用な現象である。その際、ここに想定されるもとは非常に異なる状況にもかかわらず、β−ラクタマーゼは効率的なレポータとして使用される(Moore,J.T.,Davis,S.T.&Dev,I.K.(1997)Anal.Biochem.247,203−209)。β−ラクタマーゼはまたそれに結合する蛋白質によって阻害される(Strynadka,N.C.,Jensen,S.E.,Johns,K.,Blanchard,H,,Page,M.,Matagne,A.,Frere,J.M.&James,M.N.(1994)Nature368,657−660)。従って、単に阻害剤を添加することによりβ−ラクタマーゼの瘤の寸法を更に増加させることも可能である。
【0068】
2つの誘導体hCGβ、S138Cが、β−ラクタマーゼ融合蛋白質を含むよう調製された。1つはhCGβ、S138C−βLA(long)(SEQ ID NO:44)と、より単純にはLONGと称され、図15に示すようにhCGβ、S138Cのカルボキシ末端に融合されたβ−ラクタマーゼを含んでいる。この蛋白質はpUC18をテンプレートとして使用したPCR突然変異誘発によって調製された。もう1つのプローブはhCGβ、S138C−βLA(short)(SEQ ID NO:43)と、より単純にはSHORTと称され、図15に示すようにhCGβ、S138Cの切断変型に融合されたβ−ラクタマーゼを含んでいる。SHORT蛋白質はカップリングシステインとβ−ラクタマーゼの始まり部分との間に1つのアミノ酸のみ有する。明らかに、異なる数の残基がカップリングシステインとβ−ラクタマーゼとの間に設置されたこれらの別の変型も作成することができる。表面残基がシステインに交換されたβ−ラクタマーゼのアナログを設計し工学技術で作成することは、分子モデリング及び分子生物学の技術分野の当業者にとって可能であるということも認識されるべきである。このシステインはカップリングシステインとして役に立つことが可能であり、これは、テールを使用することが可能であるより柔軟性のない標的システインとの接続にβ−ラクタマーゼ瘤を保持する現象である。
【0069】
LONG及びSHORTβ−サブユニットを含む5つの異なる酸安定へテロ二量体を生成した。これらはα−サブユニット残基46,48,52,64及び92のLH受容体に対する相対的な近接性を検出するために作成された。図16及び17に記載されているように、これらのアナログのうちhCGと同様の活性を有するものはない。LONG及びSHORTβ−サブユニット瘤プローブがα−サブユニット残基52と連結するヘテロ二量体[すなわち、夫々αN52C+hCGβ,S138C−βLA(long)及びαN52C+hCGβ,S138C−βLA(short)]は、シグナル形質導入分析においてhCGの活性を殆んど保有していた。α−サブユニット残基Asn52をシステインに変化させることはグリコシル化シグナルを乱し、その結果α−サブユニットループ2のオリゴ糖を損失してしまう。このhCG由来のオリゴ糖の除去はその有効性のおおよそ60%を損失されてしまう(図18)。従って、β−ラクタマーゼ瘤のこの部位への付加はループ2からのオリゴ糖の除去によって引き起こされた有効性の損失を相殺することが可能である。これらのLONG及びSHORTアナログ両者の比較的高い活性は、α−サブユニット残基が受容体接合部位の近傍に存在しないことを示している。両アナログが高有効性を備えているので、これらの発見はhCG−誘発性シグナル形質導入におけるオリゴ糖の役割について密接な関わりを有している。α−サブユニットループ2のオリゴ糖の役割はhCG内のサブユニットの位置をゆがめることであるということを、LONG及びSHORTアナログの活性は示している;これは、オリゴ糖とどちらか一方のサブユニットとの間の特定の接点に依存しない現象である。
【0070】
α−サブユニット残基48及び64は、hCGβS138C+αL48C及びhCGβS138C+αS64Cの活性から割り出され得る距離より受容体に非常に近いことを、残りのLONG及びSHORTアナログの活性は示している。この発見はhCG−LH受容体複合体のモデルにとって重要な結果を有する。α−サブユニット残基46及び92は受容体接合部位に近接しているという以前の発見も確認される。
【実施例5】
【0071】
α−サブユニットのアミノ末端にカップリングシステインを有する瘤
カップリングシステインを蛋白質のカルボキシ末端に存在させることや、カップリングシステインが蛋白質のアミノ末端に存在するようアナログを設計する必要はない。そのようなアナログ(β101−145、α)の1つのアミノ酸配列を以下に例示する。このアナログはhCGβ−サブユニット残基3−100を削除し、標準的なPCT及びカセット式変異誘発方法を用いてα−サブユニットを残りのβサブユニットの端部に融合することにより調製された。カップリングシステインとして作用する自由システインを残基12に有する。
【0072】
【化1】

【実施例6】
【0073】
部位−特異的蛋白質の瘤を生成する方法
瘤が付着された蛋白質が選択される。次に、蛋白質にラベルされる特定の位置が決定される。問う技術分野において知られている突然変異誘発技術を用いて、蛋白質を発現する能力を有する構成体が調製され得、コードされた蛋白質においてラベルする特定の位置の天然型残基とシステイン残基が置換される。更に、構成体にコードされた蛋白質は更に蛋白質の一端に付着したシステイン残基を含むテール部分及びテール部分の端に付着した瘤からなる。構成体は次に細胞中へ発現のため導入されその結果特定部位に付着された瘤を備えた蛋白質が生成される。
【0074】
瘤の蛋白質への付加は、瘤が位置されるべき表面にシステインを導入することと、蛋白質のアミノ末端又はカルボキシ末端の部位にシステインを導入することを伴い、蛋白質の端部のシステインがジスルフィドを表面に付加されたものとともに形成することが可能である。これらの二つのシステインの間のジスルフィドの形成はシステインを含む蛋白質の端部がこの部位に瘤を創出する表面を安定させることを引き起こすであろう(図9参照)。
【0075】
瘤が創出されるために、システインを含む蛋白質の端部はそのシステインが瘤を含む部位にてシステインとジスルフィドを形成することを許容する程十分な長さを有するべきである。これは、hFSHに蛋白質の瘤を付加する場合のように、hCGβ−サブユニットのカルボキシ末端のようなテール部分の付加を必要とし得る。テール部分の組成物は広範囲にわたって変化することが可能であり、hCGβ−サブユニットのものに限定される必要はない。テール部分の重要な要件は、それが瘤の位置を決定する蛋白質の表面のシステインに到達するほど十分に長くあるべきであるということと、それがその部位に達することを阻止する残基を欠乏させることである。これらとしては膜貫通型ドメインに特有の残基及び瘤の蛋白質の表面のシステインから離れた蛋白質の一部又は別の蛋白質へ結合する部位を創出する残基が挙げられるであろう。
【0076】
蛋白質のアミノ末端又はカルボキシ末端に存在するシステインの何れかの側の残基は瘤を形成する(図9参照)。一般的に、この部分の残基の数が大きくなるほど瘤も大きくなる。最も小さい瘤は1つのシステインのみからなるであろう(図10A参照)。これらはシステインをリンカーのアミノ末端又はカルボキシ末端の端部に組み込み、切断部位をシステインのすぐ近くに付加することにより創出されるであろう(図10A参照)。切断部位は蛋白質の他の部分のなかには見出されないプロテアーゼに適したアミノ酸配列を含むべきである。瘤の寸法は少なくとも3種類に増加されることが可能である。第一に、蛋白質は瘤を構成するために使用された蛋白質の端部に融合されることが可能である(図10B参照)。上記したとおり、β−ラクタマーゼが蛋白質の端部に融合された。しかしながら、β−ラクタマーゼがこの目的に好適な唯一の蛋白質ではない。β−ラクタマーゼをプローブとして選択することはその結晶構造によって助長されたものであり、これはそのアミノ末端がその表面に位置することを示し、融合蛋白質の立体構造に良好な位置であった。第二に、プロテアーゼによるリンカーの切断がリンカーの寸法及びその瘤に対する立体構造を減少させるために使用されることが可能である。そして第三に、カップリングシステインと融合蛋白質プローブの間の距離がアミノ酸の数を増加させたり減少させたりすることにより変化させることが可能である。hCGの例として見られるように、それが瘤の動きを限定するという事実によって、より短い距離はホルモン活性においてより大きな減少を引き起こした。これは瘤をホルモンとLH受容体との間の接合部位により近く保った。
【0077】
図10から明らかなはずであるように、カップリングシステインがテール部分に存在することは本質的要素ではない。瘤の一部である融合蛋白質の表面へシステインを導入することは、それが蛋白質の標的システインとジスルフィドを形成することが可能な場合、融合蛋白質が精査される蛋白質の表面へ直接付着されるようにするべきである(図10C参照)。この方法はまた、瘤部分の一部である融合蛋白質の配向性を制御するためにも使用されることが可能である。プロテアーゼが融合蛋白質として使用される場合、活性部位から遠い表面へシステインを導入することは、融合蛋白質の活性部位を瘤が付着される表面から遠ざけておくであろう。
【実施例7】
【0078】
プローブとしての短縮形テール部分の使用
瘤の蛋白質への付加によって2つの蛋白質表面の間の距離が判断できる。示したように、hCGのα−サブユニットループ2の大部分は受容体と接触しない。hCGβ−サブユニットのアミノ酸138でのカップリングシステインの位置は、hCGβ−サブユニットのコアへ瘤のカップリングシステインを連結するβ−サブユニット残基111−137によって占められることが可能な位置に比較的少ない制限を設置する。テール部分それ自身もまた蛋白質の表面を精査するために使用されることが可能であり、その位置を分子の特別な部分へ制限することが望ましいであろういくつかの場合がある。これは蛋白質の活性部位の部分を被覆することが望ましいであろうものを含み、その結果テール部分がプロテアーゼによって切り詰められるまで不活性にされる。
【0079】
hCG−LH受容体相互作用の研究において、テール部分の位置をα−サブユニットループ2とβ−サブユニットループ1及び3との間の溝に拘束するということは、この溝が重要な受容体接点を形成するという主張を試験するために、望ましかった。以前に記載したテール部分の使用はそれがホルモンのこの蛋白質を通過することを許容したであろうが、それがそこに位置すべきであることを強要しないであろう。その長さによって、テール部分はβ−サブユニットループ1及び3の凸状表面を横切り、α−サブユニットループ2における残基にて置換された様々なシステインに瘤カップリングシステインを到達させることが可能であった。従って、α−サブユニットの残基42,46又は48にて置換したシステインを標的とした場合、テール部分がそれをα−サブユニットループ2及びβ−サブユニットループ1及び3の間の溝を通過させることを強要される、ということを我々は省略した。テール部分アナログhCGβ、δ116−135、S138C(SEQ ID NO:45)及びhCGβ、δ121−135、S138C(SEQ ID NO:46)(図15)は、テール部分アナログがα−サブユニットループ2及びβ−サブユニットループ1及び3の間の溝を通過しない限り、瘤と標的蛋白質の間のジスルフィドの形成を可能とするにはあまりに短すぎであった。図23及び24に示された結果から確認されるように、αT46C及びhCGβ、δ116−135、S138C又はhCGβ、δ121−135、S138Cを含むヘテロ二量体は実質的な受容体結合活性を有していた。αL48C及びhCGβ、δ121−135、S138Cを含むヘテロ二量体も著しい受容体結合活性を有していた。αL48C及びhCGβ、δ116−135、S138Cを含む非常に少量の酸安定へテロ二量体が形成され、試験されたテール部分のうち最も短いものは瘤カップリングシステインにとって蛋白質の標的システインに到達するのに十分な長さを有してないかもしれないことを示した。α−サブユニット残基42の標的システインに到達させるために瘤カップリングシステインにとってα−サブユニットループ2及びβ−サブユニットループ1及び3の間の溝を通過することはこれらのアナログのテール部分に必要でなかったので、このアナログは正の対照(ポジティブコントロール)として使用された。
【0080】
これらを総合すると、溝は本質的な受容体接点に参加しないということをこれらの観察結果は示した。どのようなテール部分の位置であれば、それが蛋白質の特定部位の近くを通過することが可能なように操作されることが可能であるかということも立証された。これはテール部分が特定部位を覆い隠すために使用されることが可能であり、これは、テール部分に導入されている切断部位と結合した場合潜在的なプロテアーゼ、毒素又はその他の有効なアナログを調製するために有効な特性である。プロテアーゼ又は毒素部位を覆い隠すテール部分は、内因性又はその他のプロテアーゼがテール部分を切断し毒素を活性化する場合、細胞に入ることが可能な試薬の調製及び使用を許容するであろう。これらの剤は悪性腫瘍又はその他の病気を治療する治療に役立つものとして有効であろう。
【実施例8】
【0081】
β−サブユニットに付着したプローブの使用
シートベルトの小さなループがhCGの生物学的活性において役割を有していることが示唆され、この可能性を調べるためには、β−サブユニットのこの領域に瘤を付着させることが望ましかった。カルボキシ端残基をhCGβ−サブユニットに含むα−サブユニットのアナログが生成された。hCGβ−サブユニットのカルボキシ末端の部分のα−サブユニットのカルボキシ末端への付着はヘテロ二量体の活性を50倍以上減少させることが示されているが、完全なβ−サブユニット配列の使用はそのような結果をもたらさなかった。hCGβ−サブユニットの完全なカルボキシ端残基を含むアナログはα−サブユニットに付着し、アミノ酸Asp−Asp−Pro−Arg−Phe−Gln−Asp−Ser−Ser−Ser−Ser−Lys−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−Leu−Pro−Ser−Pro−Ser−Arg−Leu−Pro−Gly−Pro−Ser−Asp−Thr−Pro−Ile−Leu−Pro−Glnを含むことは受容体結合及びシグナル伝達分析において50%以上のhCGの活性をもたらした。これはα−サブユニット及びβ−サブユニット由来の残基の連結の近くに変化した残基が存在することに依存することが見出された。小さなシートベルトループの中のβ−サブユニット残基に瘤を付着させるために、hCGβ−サブユニットカルボキシ末端の切断変型がα−サブユニットの端部に付加されhCG−αCTδ116/135,138C(SEQ ID NO:57)を創出した。これはCOS−7細胞にてArg94(SEQ ID NO:58),Arg95(SEQ ID NO:59),Ser96(SEQ ID NO:60),Thr97(SEQ ID NO:61),Thr98(SEQ ID NO:62)及びAsp99(SEQ ID NO:63)に代わってシステインを有するhCGβ−サブユニットアナログと共発現された。これら全ての蛋白質は酸−安定へテロ二量体を形成し、図26,27,28,29,30,31及び32のデータから確認されるように、これらの研究はβ−サブユニットのこの部分がいかにLH受容体(LHR)と相互作用するかを明らかにしていた。この瘤が残基95及び99に存在することは、LHR相互作用及び生物学的活性を抹殺した。これらのアナログは結合及びシグナル伝達分析において実質的な活性を有しているので、この瘤が残基96又は97に存在する場合あまり影響しなかった。瘤が残基98に付着した場合、受容体相互作用を減少させるが、残基95又は99に付着した場合、到底同じ水準どころではない。これは後者の残基が受容体接合部位のより近くに位置し得ることを示唆する。
【0082】
hCGβ−サブユニット残基95の側鎖は残基94及び96の側鎖と反対方向に対面し、これはこの部位に瘤を付着させることが残基94及び96に瘤を付着させるよりもはるかにhCG−LHR相互作用を阻害するという事実を説明し得る現象である。Arg95の側鎖近傍のシートベルトの表面が受容体接合部位の近傍であるであろうことをこれは示唆している。側鎖が蛋白質の表面に接触したかどうか確認するために、アナログが小さな瘤を含むように調製された。これらはα−サブユニット残基92のセリンをシステインに交換する(SEQ ID NO:35)か、Gly−Gly−Cysから構成されるテールをα−サブユニットのカルボキシ末端に付加すること(SEQ ID NO:64)により構成された。図30及び32にて認められるように、これらのより小さな瘤はLHR分析においてヘテロ二量体の活性に干渉する能力があまりなかった。従って、両酸−安定架橋へテロ二量体はこれらの分析においてかなりの活性を保持していた。β−サブユニット残基Arg95の側鎖が受容体接合部位の近くに存在する可能性が高いが、本質的な受容体接点の必要はないことをこれは示していた。ホルモンがLHRと相互作用した後α−サブユニットのカルボキシ末端の位置が小さな安定ループの近くに存在することをこれは又示していた。
【0083】
α−サブユニットループ2のAsn52のオリゴ糖と同様に、α−サブユニットカルボキシ末端は完全な糖蛋白質ホルモン活性に必要であるため、ヘテロ二量体におけるα−サブユニットカルボキシ末端の位置をどのように変化させることがその生物学的活性に影響を与えたかを確認し、測定することは興味深いことである。Asn52のAspへの変化によってα−サブユニットループ2をグリコシル化することが不可能で、システイン瘤をβ−サブユニット残基92,94,95及び96に付加する能力を有したhCGα−サブユニットのアナログが調製された(SEQ ID NO:65)。システインを残基92,94、95及び96に含むβ−サブユニットアナログとのCOS−7細胞におけるこのアナログの共発現は酸−安定架橋へテロ二量体の形成をもたらした。これらのアナログ及び、システインをArg96に代えて含む(SEQ ID NO:66)キメラβ−サブユニットアナログの活性は、α−サブユニットのカルボキシ末端がβ−サブユニットのいくつかの部位に付着することが可能であることを示し、その位置は過度に不自然ではないことを示している(図33)。更に、キメラアナログの有効性が低いという発見は、ホルモンのこの部分の立体構造がシグナル形質転換に影響を有しているということを示した。
【0084】
本発明が目的を達成し、そこに本来備わっているもののみならず記載の結果と利益を得るようにうまく改良されていることは当業者にとって容易に評価し得る。ここに記載された方法及び手段に沿った組成物は目下のところ好ましい実施の形態の典型例であり模範的なものであり、発明の範囲を制限することを意図しない。その中での変化及び別の使用が当業者に浮かぶであろう、これは発明の意図の範囲内に包含され、この範囲を請求項で規定される。
【0085】
本発明の範囲及び意図から逸脱することなく、置換や修飾を変化させることがここに記載された発明に対して成され得ることは当業者にとって容易に想定されるであろう。
【0086】
ここに引用された全ての特許及び文献は、個々の文献夫々が具体的にそして個別に示され参照され援用されたのと同程度に参照され援用される。以下の参考文献の一覧表も同様に参照され援用される。
【参考文献】
【0087】




【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】hCGの三次元図であり、hCGβ−サブユニットカルボキシ末端によってスキャンされることが可能なhCGαサブユニット残基の実例である。α−及びβ−サブユニット主鎖をそれぞれ濃い灰色及び薄い灰色のリボンで表す。βテールを黒いリボンとして示す。αサブユニット残基とプローブシステインとの間に有効な架橋を可能としたシステイン置換のCα炭素の位置を濃い色の球形として示す。より薄い灰色の球は架橋を殆んど生じさせない残基を表す。小さな白い球はごくわずかな架橋をもたらすシステイン置換を表す。なお、α−サブユニット残基90、91及び92はhCGの結晶構造中で見るにはあまりに移動しやすく、ここに示すこれらの残基の任意の位置はシートベルトにラッチされた見かけ上の性能を強調するためのみに示すものである。
【図2】Aはループ2のαサブユニット残基がシステインによって置換されているhCG又はhCGアナログの結合を示す。Bはループ2のαサブユニット残基がシステインによって置換されているhCG又はhCGアナログのcAMPの蓄積を示す。
【図3】Aはαサブユニットカルボキシ末端におけるシステイン置換の影響を示し、カルボキシ末端におけるαサブユニット残基がシステインによって置換されているhCG又はhCGアナログの結合を示す。Bはαサブユニットカルボキシ末端におけるシステイン置換の影響を示し、カルボキシ末端におけるαサブユニット残基がシステインによって置換されているhCG又はhCGアナログのcAMPの蓄積を示す。
【図4】Aはループ2におけるαサブユニット残基に付着したβテールとのhCG又はhCGアナログの結合を示す。Bはβテールがループ2におけるαサブユニット残基に付着したhCG又はhCGアナログのcAMPの蓄積を示す。
【図5】Aはカルボキシ末端におけるαサブユニット残基に付着したβテールとのhCG又はhCGアナログの結合を示す。Bはβテールがカルボキシ末端におけるαサブユニット残基に付着したhCG又はhCGアナログのcAMPの蓄積を示す。
【図6】BLAがαサブユニット残基に付着したアナログの結合及びシグナル形質導入活性を示す。
【図7】α−サブユニット及び置換システインを有する突然変異体のアミノ酸配列を示す。(なお、突然変異は大文字で強調している。これらは標準的なカセット式突然変異誘発方法及びPCR突然変異誘発方法によって調製された、なお、これらは当技術分野において標準的な方法である。)(SEQ ID NO:1−SEQ ID NO:35)
【図8】β−サブユニットアナログのアミノ酸配列を示す。(なお、置換システインは大文字で強調している。)(SEQ ID NO:36−SEQ ID NO:42)
【図9】Aは蛋白質のカルボキシ末端に付着された瘤を備えた蛋白質の瘤を示す。Bは蛋白質のアミノ末端に付着された瘤を備えた蛋白質の瘤を示す。
【図10】Aは瘤がシステイン残基からなる蛋白質の瘤を示す。Bは瘤が蛋白質に融合したシステイン残基を含むアミノ酸配列からなる蛋白質の瘤を示す。Cは瘤のシステイン残基が瘤である蛋白質の表面に位置する蛋白質の瘤を示す。
【図11】FSH活性における瘤の効果を示す。
【図12】CF101−109、hCGβ−サブユニットカルボキシ末端なしの二機能キメラに対するLHR及びFSHR分析における架橋されたキメラアナログの活性の概要を示す。
【図13】FSH受容体シグナル伝達における瘤の効果を示す。
【図14】AはLH受容体シグナル伝達における瘤の効果を示す。BはLH受容体シグナル伝達における瘤の効果を示す。
【図15A】その他のアナログのアミノ酸配列を示す(SEQ ID NO:43−SEQ ID NO:53)。
【図15B】図15Aの分図である。
【図16】LONG及びSHORTヘテロ二量体のシグナル形質導入及び結合活性を示す。
【図17】β−ラクタマーゼ瘤を有するhCGアナログのルトロピン活性を示す。
【図18】hCG又はαAsn52オリゴ糖欠損アナログにおけるcAMP蓄積を示す。
【図19】αK44A+hCGβのLHRへの結合を示す。
【図20】AはhCG及びhCGアナログαK44E,K45Q+hCGβのLHRへの結合を示す。BはhCG及びαK44E,K45Q+hCGβへのLHRcAMP応答を示す。
【図21】AはhCG及びhCGアナログαK91E+hCGβのLHRへの結合を示す。BはLHRcAMP蓄積分析におけるhCG及びαK91E+hCGβの相対活性を示す。
【図22】AはhCG及びαK91M+hCGβへのLHRcAMP応答を示す。BはhCG及びαK91M+hCGβのLHR結合を示す。
【図23】hCG及び複数の短縮リンカーを含むアナログのLHR結合を示す。
【図24】hCG及び一つの短縮リンカーを含むアナログのLHR結合を示す。
【図25】hCG及びαN52C+hCGβ,S138CによるLHR cAMPの刺激を示す。
【図26】切断hCGβ−サブユニットカルボキシ端テールをα−サブユニットのカルボキシ末端に使用して瘤をhCGβ−サブユニット残基96、97又は98に付加したアナログのLHR結合を示す。
【図27】切断hCGβ−サブユニットカルボキシ端テールをα−サブユニットのカルボキシ末端に使用して瘤をhCGβ−サブユニット残基98又は99に付加したアナログのLHRシグナル伝達を示す。
【図28】切断hCGβ−サブユニットカルボキシ端テールを使用して瘤をβ−サブユニット残基95又は96に付加したアナログのLHR結合を示す。
【図29】切断hCGβ−サブユニットカルボキシ端テールを使用して瘤をβ−サブユニット残基95又は96に付加したアナログのLHRシグナル伝達を示す。
【図30】テールを欠損したものと、切断hCGβ−サブユニットカルボキシ端テールを使用し瘤をhCG/hFSHキメラのβ−サブユニット残基96に付加したものと比較した、GGCテールを使用し瘤をβ−サブユニット残基96に付加したアナログのLHRシグナル伝達を示す。
【図31】切断hCGβ−サブユニットカルボキシ端テールを使用して瘤をβ−サブユニット残基98又は99に追加したアナログのLHR信号伝達を示す。
【図32】瘤をhCGβ−サブユニット残基95に付加したテールの影響を示すアナログと、α−サブユニットを残基52にてグリコシル化する能力の欠損したアナログのLHR信号伝達を示す。
【図33】架橋されたアナログに対するサイクリックAMP応答を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛋白部分、ここにおいて蛋白部分は置換システイン残基を標識されるべき所望位置に含み;
蛋白部分の末端のテール部分;及び
瘤、ここにおいて瘤はテール部分の自由末端に位置し、システイン残基を含み、そしてここにおいて瘤のシステイン残基は蛋白部分の置換システインとジスルフィドを形成することが可能である、からなる組成物。
【請求項2】
テールがプロテアーゼ切断部位を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
瘤がエピトープ標識からなる請求項1記載の組成物。
【請求項4】
瘤がポリペプチドからなる請求項1記載の組成物。
【請求項5】
瘤が蛋白質からなる請求項1記載の組成物。
【請求項6】
瘤システインが蛋白質の表面に位置する請求項5記載の組成物。
【請求項7】
蛋白部分が単量体蛋白質である請求項1記載の組成物。
【請求項8】
蛋白部分が多量体蛋白質である請求項1記載の組成物。
【請求項9】
蛋白質を特定部位に標識する方法であって、
a)所望の蛋白質を選択し;
b)標識されるべき所望の蛋白質に特定部位を位置決めし;
c)所望の瘤を選択し、ここにおいて所望の瘤はシステイン残基を含み;
d)所望の蛋白質、テール部分及び所望の瘤をコードする構成体を調製し、ここにおいて所望の蛋白質は標識されるべき部位に置換されたシステイン残基を有し;
e)標識された蛋白質を発現するために構成体を細胞中へ挿入し、ここにおいて瘤のシステイン及び所望の蛋白質の置換システインがジスルフィド結合を形成する蛋白質を特定部位に標識する方法。
【請求項10】
瘤がエピトープ標識、シグナル配列又は蛋白質からなる請求項9記載の方法。
【請求項11】
瘤蛋白質がプロテアーゼである請求項10記載の方法。
【請求項12】
所望の蛋白質が単量体である請求項9記載の方法。
【請求項13】
所望の蛋白質が多量体である請求項9記載の方法。
【請求項14】
蛋白質精製方法であって、
a)発現の可能な構成体を細胞に挿入し、ここにおいて構成体は蛋白質をコードし、ここにおいて蛋白質は標識されるべき所望の部位にて置換されたシステイン残基、蛋白質の末端のテール部分、ここにおいてテール部分はプロテアーゼ切断部位を含み、そしてシステイン残基を含むテール部分の端の瘤からなり;
b)細胞を溶解し;
c)瘤の特性に基づき蛋白質を精製することからなる蛋白質精製方法。
【請求項15】
hCGを標識する方法であって、
a)天然型hCGβ又はhCGβ−S138Cを発現することが可能な構成体を調製し;
b)天然型hCGα又はhCGαシステイン置換アナログを発現することが可能な構成体を調製し;
c)ステップa)及びb)の構成体をCOS−7細胞中へ共発現のために挿入することからなるhCGを標識する方法。
【請求項16】
ステップa)の構成体が更に蛋白質をhCGβの残基140又は145へ融合することからなる請求項15記載の方法。
【請求項17】
蛋白質がβ−ラクタマーゼである請求項16記載の方法。
【請求項18】
hCGαシステイン置換アナログがSEQ ID NO:1からSEQ ID NO:35までのなかから選択される請求項15記載の方法。
【請求項19】
蛋白分子の間の距離をマッピングする方法であって、
a)第一蛋白分子を選択し;
b)第二蛋白分子を選択し、ここにおいて第一蛋白分子及び第二蛋白分子は相互作用し;
c)第一蛋白分子を生成し、ここにおいて生成された第一蛋白分子各々が第一蛋白質の異なる部位に位置する瘤を含み;
d)第二蛋白分子を生成し;
e)ステップc)及びd)において生成された蛋白質を用いて第一蛋白質及び第二蛋白質の間の距離を分析することからなる蛋白分子の間の距離をマッピングする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【公開番号】特開2008−110973(P2008−110973A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−265961(P2007−265961)
【出願日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【分割の表示】特願2003−542901(P2003−542901)の分割
【原出願日】平成14年11月8日(2002.11.8)
【出願人】(595158407)アプライド・リサーチ・システムズ・エイアールエス・ホールディング・ナムローゼ・フェンノートシャップ (2)
【氏名又は名称原語表記】Applied Research Systems ARS Holding N.V.
【Fターム(参考)】