蛍光タンパク質をマーカーとして用いた感染の画像化
【課題】腫瘍の成長と転移の画像化において開発された技術を感染の研究にまで拡張する方法を提供する。
【解決手段】脊椎動物被験体における感染の進行を追跡する方法は、蛍光タンパク質を発現するよう改変された病原体を利用し、種々の位置における蛍光の存在、不在又は強度を時間の関数として観察する。この方法はまた、感染過程において病原体と関連する遺伝子の発現をモニターしうる。さらにこの方法は、改変型病原体を用いた腫瘍ターゲティングを含む。
【解決手段】脊椎動物被験体における感染の進行を追跡する方法は、蛍光タンパク質を発現するよう改変された病原体を利用し、種々の位置における蛍光の存在、不在又は強度を時間の関数として観察する。この方法はまた、感染過程において病原体と関連する遺伝子の発現をモニターしうる。さらにこの方法は、改変型病原体を用いた腫瘍ターゲティングを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物及びウイルス感染の研究に関する。具体的には、本発明は、脊椎動物における感染の進行及び制御を研究するための系、並びに、候補薬物の評価方法及び腫瘍ターゲティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の進行及び転移を可視化するための緑色蛍光タンパク質の使用は現在十分に確立されている。例えば、Hoffman,R.M.,Methods in Enzymology(1999)302:20−31(P.Michael Conn編、Academic Press,San Diego)を参照されたい。リアルタイムで進行を記録し、腫瘍治療用に提起されたプロトコールの効力を評価するために全身の画像化を利用することが米国特許第6,251,384号に開示されており、その内容を参照により本明細書に組み入れる。
【0003】
緑色蛍光タンパク質の利点は、それが基質や補因子を必要とすることなく、また生細胞におけるその発現が明らかに生物学的な損傷を生じないことにある。さらに、緑色タンパク質は発せられる蛍光のために特に感度の高い技術となっている。実際、単純な装置、例えばキセノン又は水銀灯からの490nm励起とCCDカラービデオカメラによる画像の捕捉を用いて得られる全身の画像は、腫瘍の成長と転移についてのリアルタイムな研究を可能にする。例えば、Yang,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97:1206−1211を参照されたい。
【0004】
本発明は、腫瘍の成長と転移の画像化において開発された技術を感染の研究にまで拡張するものである。微生物及びウイルス感染は、高輝度蛍光タンパク質で病原体を標識することによりモニター可能であり、また感染の進行がモニターされる。さらに、微生物又はウイルス感染の治療に有用なプロトコールは、この技術を利用して評価されうる。蛍光タンパク質の好適な発現を達成するための材料及び方法は容易に利用可能である。例えば、Cheng,L.ら、Gene Therapy(1997)4:1013−1022は、レトロウイルスプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする配列を有する、造血幹細胞の改変を記載している。この著者らは、増強型のGFPを使用し、この系を用いてヒト幹細胞をトランスフェクトすることにのみ困難があると述べているが、満足のいく輝度を達成できた。Grignani,F.ら、Cancer Res(1998)58:14−19は、ヒト造血前駆細胞への高効率遺伝子導入を行うためのGFPを発現するハイブリッドEBV/レトロウイルスベクターの使用を報告している。
【0005】
種々の色を提供するために種々の改変型GFPを含むベクターが、Clontechにより市販されている。哺乳動物細胞での発現を目的としたClontechベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にGFPを配置している。この発現系はまたウイルス病原体を標識するためにも使用しうる。
【0006】
哺乳動物被験体においてルシフェラーゼをマーカーとして用いて細菌を可視化するための試みがなされているが、この系は光度が低いために、全身画像化は実用的ではない。例えば、Contag,P,R.ら,Nat.Med.(1998)4:245−247を参照されたい。
【0007】
GFPを発現する細菌はいくつかの研究において既に用いられているが、無傷の生存動物においては行われていない(Wu,H.ら,Microbiol.(2000)146:2481−2493;Ling,S.H.M.ら,Microbiol.(2000)146:7−19;Badger,J.L.ら,Mol.Microbiol.(2000)36(1):174−182;Kohler,R.ら,Mol.Gen.Genet.(2000)262:1060−1069;Valdivia,R.H.ら,Gene(1996)173:47−52;Valdivia,R.H.ら,Science(1997)277:2007−2011;Scott,K.P.ら,FEMS Microbiol.Ltrs.(2000)182:23−27;Prachaiyo,P.ら,J.Food Protect.(2000)63:427−433;Geoffroy,M−C.,Applied & Env.Microbiol.(2000)66:383−391)。このような研究の例として、病原性大腸菌0157H GFPによる筋組織のin vitro感染の可視化がある(Prachaiyo,P.ら,前掲)。また別の手法として、胃腸管組織の採取及び固定化による強制給餌感染後のマウスの胃腸管を調べるものがある(Geoffroy,M−C.,前掲)。GFP形質導入エドワードシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)に感染した魚は、その器官が取り出された後にその感染が画像化されている(Ling,S.H.M.ら,前掲)。病原性及び他の感染過程に関連する遺伝子はGFP発現との関係で評価されている(Ling,S.H.M.ら,前掲;Badger,J.L.ら,前掲;Kohler,R.ら,前掲;Valdivia,R.H.ら,前掲(1996))。
【0008】
本発明はまた、蛍光を用いて病原体(微生物など)により腫瘍に治療用産物を送達する腫瘍ターゲティングに関する。腫瘍における壊死領域に対して嫌気性細菌であるノーヴィ菌(Clostridia novyi)の送達が試みられている(Dang,L.H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2001)98:15155−15160)。さらに、ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)を用いて腫瘍の壊死領域にターゲティングが行われている(Yazawa,K.ら,Cancer Gene Therapy(2000)7(2):269−274;及びYazawa,K.ら,Breast Cancer Res.& Treatment(2001)66:165−170)。嫌気性菌に依存するこれらの手法は、壊死組織のみにターゲティングし、及び/又は大きなサイズの腫瘍にのみ用いうる。さらに、トキシンを欠損するサルモネラ菌(Salmonella)を用いて腫瘍ターゲティングが行われている(Low,K.B.ら,Nature Biotech.(1999)17:37−41)。別の研究においては、転移性メラノーマ及び腎細胞癌を有するヒト患者におけるサルモネラ菌の腫瘍ターゲティング能が報告されている(Toso,J.F.ら,J.Clin.Oncol.(2002)20(1):142−152)。これらの手法は生存動物において細菌を可視化する方法を提供するものではない。
【0009】
細菌及び他の微生物は、腫瘍に治療用産物を送達するための多くの特徴を提供する。例えば、これらは、ヒト及び特定の細菌タンパク質の両方を産生するように容易に形質転換することができる。しかしながら、細菌タンパク質は広範な種類及び効力のトキシンを含む。そのような強力な分子を利用するために、本発明により示されるような治療用産物送達細菌の正確な腫瘍ターゲティング機構を有することが有用である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、写実的かつリアルタイムの設定で微生物又はウイルス感染の形成を詳細に研究可能なモデルを提供する。緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質を安定かつ容易に可視化されるマーカーとして使用することによって、感染の進行をモデル化し、その機構を解明することができる。本発明はまた、部分的には、細菌又は微生物、並びにその治療用分子を可視化する能力に依存する腫瘍ターゲティングに関する。
【0011】
従って、一態様において、本発明は、蛍光タンパク質を発現する微生物又はウイルスによる感染を受けた脊椎動物被験体において蛍光の空間的・時間的進行をモニターすることにより脊椎動物モデル系における感染過程をモニターする方法に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、被験体において感染を阻止するための候補プロトコール又は薬物の評価方法に関し、該方法は、蛍光タンパク質を発現する微生物又はウイルスに感染させた脊椎動物被験体にプロトコール又は薬物を投与し、該感染被験体において種々の位置及び種々の時間における蛍光の存在、不在又は強度を観察することにより時間的・空間的な感染の進行をモニターすることを含む。この方法においては、またさらに、対照被験体において種々の時間及び種々の位置における蛍光の存在、不在又は強度をモニターし、プロトコール又は薬物による処置を受けた被験体と比較する。時間的・空間的な感染の進行は、処置被験体と対照被験体において比較し、対照被験体と比較した処置被験体における感染の強度の減少は、効果のあるプロトコール又は薬物を同定する。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、脊椎動物被験体における治療用病原体を用いた腫瘍ターゲティング方法に関し、該方法は、蛍光タンパク質を発現する病原体を脊椎動物被験体に投与し、被験体における種々の位置での蛍光の存在、不在又は強度を時間との関係で観察することを含む。好ましくは、該治療用病原体は、腫瘍にターゲティングし、治療用産物を腫瘍に送達するものである。
【0014】
本発明の方法はまた、微生物又はウイルスのゲノムの種々の位置に蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列を連結し、該蛍光のモニターにより蛍光タンパク質の発現をモニターすることにより、感染の進行に重要な微生物又はウイルス系の本質をモニターするためにも用いることができる。
【0015】
最後に、本発明は、蛍光タンパク質を発現し、無傷の生存哺乳動物において正常細胞と比較して腫瘍にターゲティングすることが可能な腫瘍ターゲティング病原体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1A〜1Hは、強制給餌により1011の大腸菌−GFPを投与したマウスの種々の部位における蛍光の位置を示す。図1Aは、強制給餌直後の胃における感染の事実を示す。図1B〜図1Gは、それぞれ強制給餌の10分、20分、30分、40分、50分及び60分後の小腸における蛍光の存在を示す。図1Hは、強制給餌の120分後の大腸における感染の存在を示す。
【図2】図2A〜2Cは、1011の大腸菌−GFPによる強制給餌後の大腸菌の生体画像結果を示す。図2Aに示すように、GFP感染は、強制給餌直後の胃及び十二指腸に存在する。図2Bは、強制給餌の40分後の小腸における感染の存在を示す。図2Cは、強制給餌の120分後の大腸における感染の存在を示す。
【図3】図3A〜3Bは、強制給餌後の胃、小腸及び大腸における感染の全身画像及び生体画像を示す。図3Aは、3×1011の大腸菌−GFPのアリコートを複数回強制給餌した後の胃(矢じり)、小腸(細い矢印)、及び大腸(太い矢印)における全身画像を示す。図3Bは、同様に標識された対応の生体画像を示す。
【図4】図4は、1011の大腸菌−GFPの浣腸直後の大腸における感染の全身画像化結果を示す。
【図5】図5A〜5Dは、抗生物質応答における腹腔感染の全身画像化結果を示す。図5A及び5Cは、109の大腸菌−GFPの腹腔内(ip)注射直後の腹腔における感染を示す。図5Bは、注射の6時間後の未処置マウスを示す。このマウスは6時間後に死亡した。図5Dは、腹腔内注射の6時間後のカナマイシン処置マウスを示す。このマウスは生存した。
【図6】図6は、図5に記載したように腹腔内感染の生体画像結果を示す。
【図7】図7Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているRFP標識U−87ヒトグリオーマの全身画像化を示す。図7Bは、GFP標識チフス菌を含有するPBS溶液の蛍光を頼りにした注射を示す。図7Cは、注射直後のRFP標識U−87ヒトグリオーマにおけるGFP標識チフス菌の全身画像化を示す。図7Dは、注射後1日目のRFP標識U−87ヒトグリオーマにおいて増殖するGFP標識チフス菌を示す。
【図8】図8Aは、ヌードマウス(マウス1)におけるRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図8Bは、注射直後に画像化した、マウス1の腫瘍に注射したGFP標識チフス菌を示す。図8Cは、ヌードマウス(マウス2)におけるRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図8Dは、マウス2における注射直後に画像化したRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍に注射したGFP標識チフス菌の結果を示す。
【図9】図9Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているRFP標識MDA MB−435ヒト乳癌の全身画像化を示す。図9Bは、注射直後における腫瘍に注射したGFP標識チフス菌の全身画像化を示す。
【図10】図10Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図10Bは、注射直後に画像化した、腫瘍に注射したRFP標識チフス菌の結果を示す。図10Cは、注射後1日目のGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍において増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。
【図11】図11Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図11Bは、注射直後におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍に注射したRFP標識チフス菌の結果を示す。図11Cは、注射後1日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍において増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。図11Dは、注射後4日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍で増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。
【図12】図12Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図12Bは、注射直後に画像化された、GFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍に注射したRFP標識チフス菌の結果を示す。図12Cは、注射後1日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍において増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。図12Dは、注射後4日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍で増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。
【図13】図13は、組織学により示された、ヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍における、RFP標識チフス菌のターゲティング及び進行的な増殖を示す。RFP標識チフス菌は注射後4日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍で増殖する(図12D)。
【図14】図14A〜14Bは、組織学により示された、ヌードマウスにおいて増殖しているPC−3ヒト前立腺腫瘍に対するRFP標識チフス菌の処置の効果を示す。図14Aは、未処置対照である。図14Bは、RFP標識チフス菌処置後である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、感染の機構を研究するためのモデル系を提供する。病原体を標識するための可視的なマーカー蛍光タンパク質を利用し、その結果、組織におけるその移動および局在化は、感染の進行として追跡され得る。
【0018】
本明細書で使用する「感染の進行」とは、病原体及び感染細胞が感染した生物中で移動及び/又は増殖する、一般的な時間依存的様子を意味する。感染の進行は、病原体又は感染細胞の位置の単純な関数であるが、一般的には病原体及び感染細胞の増殖の関数でもある。従って、感染の進行のモニターには蛍光の位置及び強度の両者が重要である。
【0019】
器官又は組織を切り出すことにより病原体の移動を決定することに加えて、無傷の動物において蛍光細胞の移動を観察するのに十分な強度を達成することができるため、所望により、転移の進行は無傷の被験体において観察することができる。このいずれか又は両方の方法を、感染の進行をモニターするため、及び可能性あるプロトコール又は薬物の効力をモデル系において評価するために用いうる。
【0020】
さらに、本発明は、病原体により腫瘍に治療用産物を送達することを利用し、正確な腫瘍ターゲティング機構を提供する。腫瘍ターゲティングにおいては、病原体並びにその治療用分子を可視化できることが有利である。腫瘍を蛍光を頼りにして注射することの利点としては、治療可能な腫瘍サイズの下限がないこと、さらにはこの方法は腫瘍壊死とは関係ないことがある。さらに、病原体は、嫌気性細菌にも病原体の非有毒株にも限定されない。本明細書で使用される「治療用産物」「治療用分子」又は「治療剤」とは、病原体に含まれる目的遺伝子、又は病原体から分泌される産物(例えばトキシン若しくは他の治療用タンパク質)、あるいは病原体によって分泌されないが病原体により使用される腫瘍に対する治療効果が影響を受ける産物を意味する。目的遺伝子とは、腫瘍に対する治療効果を有するあらゆる遺伝子を意味し、例えば抗腫瘍剤を発現する遺伝子である。治療用分子の例としては、米国特許第6,231,854号に開示されるメチオニナーゼを発現する遺伝子又はメチオニナーゼ自体が挙げられる。他の例としては、p53、BAX、トキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド、Fasリガンド、及び細胞死受容体に対する抗体が挙げられる。
【0021】
本発明の種々の態様において用いられる標識は、緑色蛍光タンパク質である。このクラスの可能性をもったタンパク質である緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする天然遺伝子は、生物発光クラゲのエクオレア・ビクトリア(Aequorea victria)からクローニングされた(Morin,J.ら、J Cell Physiol(1972)77:313−318)。この遺伝子を利用可能となったことにより、遺伝子発現のためのマーカーとしてGFPを用いることが可能となった。天然のGFP自体は、27kDの分子量を有する283アミノ酸のタンパク質である。それは、蛍光発光するためにその天然供給源からさらなるタンパク質を必要とせず、またその天然供給源においてのみ利用可能な基質または補因子も必要としない(Prasher、D.C.ら、Gene(1992)111:229−233;Yang,F.ら、Nature Biotechnol(1996)14:1252−1256;Cody,C.W.ら、Biochemistry(1993)32:1212−1218)。GFP遺伝子の変異体は、発現を増強し、そして励起および蛍光を改変して、種々の色(赤及び青を含む)の「GFP」を得るために有用であることが見出されている。GFP−S65T(65位のセリンがトレオニンと置換されている)は、本発明方法において特に有用であり、そして490nmで単一の励起ピークを有する(Heim,R.ら、Nature(1995)373:663−664;米国特許第5,625,048号)。他の変異体がまた、Delagrade,S.ら、Biotechnology(1995)13:151−154;Cormack,B.ら、Gene(1996)173:33−38およびCramer,A.ら、Nature Biotechnol(1996)14:315−319に開示されている。さらなる変異体がまた、米国特許第5,625,048号に開示されている。適切な改変により、GFPにより発光される光のスペクトルを変更し得る。従って、用語「GFP」を本出願においてしばしば使用するが、この定義の中に含まれるタンパク質は、必ずしも外見が緑色ではない。GFPの種々の形態が緑色以外の色を示し、そしてこれらは、また、「GFP」定義内に含まれ、そして本発明の方法および材料において有用である。さらに、本明細書において、「GFP」の定義内にはいる緑色蛍光タンパク質は、他の生物体(例えば、ウミシイタケのレニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis))から単離されていることに留意されたい。GFPの任意の適切かつ便利な形態は、天然及び変異型のいずれも本発明において有用な病原体を改変するために用いうる。
【0022】
混乱を回避するために、簡単な用語「蛍光タンパク質」を使用するが、これは、一般的にはレニラ属及びエクオレア属などの種々の生物により産生される蛍光タンパク質、並びに、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)又は青色蛍光タンパク質(CFP)によりそれぞれ示される種々の可視色(例えば赤色、黄色及び青色)の蛍光を発しうる、上記天然蛍光タンパク質の改変型を意味するものと理解される。一般的に、用語「蛍光タンパク質」及び「GFP」又は「RFP」は同じ意味で用いられる。
【0023】
蛍光タンパク質は種々の色のものが利用可能であるため、1色以上を用いた画像化を同時に行うことができる。例えばそれぞれが特徴的な蛍光を発現する2種の異なる病原体又は3種の異なる病原体を生物に投与し、提案された処置の特定の効果を評価することができる。さらに、単一の感染生物を、単一色及び異なる色で構成的に標識し、これを用いて、細胞内又は分泌型のいずれかの遺伝子産物との融合物を産生しうる。従って、生物自体を標識するために使用した色とは異なる色の蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、試験対象の遺伝子座に、又はベクター中に試験対象のタンパク質との融合タンパク質として、挿入しうる。さらなる例示として、トキシン及び他の可能性ある治療用タンパク質は、RFPと遺伝子として連結し、GFP標識細菌の治療用産物を標識及び可視化することができる。二色画像化は、腫瘍に対する細菌及びそれらの分泌された治療用産物のターゲティングを可視化するために使用しうる。これらの腫瘍ターゲティング細菌は、その蛍光によって可視化されるように腫瘍における選択的増殖に適合されている。さらに、1種以上の病原体を、それぞれ単一色で標識し、目的遺伝子を別の色で標識し、そして腫瘍を第3の色で標識しうる。例えば、実験動物において蛍光を発現する腫瘍によって、全身画像化により蛍光標識病原体の腫瘍へのターゲティング及び病原体の治療用産物を可視化することができる。
【0024】
本明細書において説明するように、GFP及びRFP標識細菌は、ヌードマウスに移植したGFP及びRFP標識腫瘍において蛍光を頼りにした注射によって送達され、そして該細菌をGFP標識腫瘍にターゲティングさせたところ、腫瘍壊死が誘導された。特に、GFP及びRFP標識大腸菌及びネズミチフス菌(S.typhimurium)のマウスにおけるRFP及びGFP発現腫瘍に対するターゲティングは、二色全身画像化により可視化された。ターゲティングされたRFP及びGFP標識腫瘍において増殖するGFP及びRFP標識細菌は、本明細書における実施例に示されるように二色全身画像化により可視化された。従って、蛍光標識微生物の腫瘍ターゲティングが示された。しかしながら、本発明の方法はまた、最終的に腫瘍にターゲティングする細菌を選択するために、病原体のミスターゲティングをモニターするためにも用いることができる。
【0025】
GFPを用いた一般的な細胞の標識手法は米国特許第5,491,084号(前掲)に記載されている。
【0026】
本発明の方法は、蛍光タンパク質、好ましくは侵襲的な手法のいずれも必要とせずに被験体において蛍光を観察可能な十分な蛍光強度の蛍光タンパク質、をコードするヌクレオチド配列を発現するよう改変した病原体を利用する。全身画像化はリアルタイム観察の可能性のために好ましく、また例えば、内視鏡検査手法、又は、所望であれば、直接観察若しくは組織化学的観察のために切り出した組織若しくは器官を用いることも可能である。
【0027】
蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、直接改変、例えば、蛍光タンパク質をコードする配列をウイルスの内因性制御配列の制御下の適切な位置に配置するウイルスゲノムの改変などによって病原体に導入することができ、あるいは適当な発現ベクターを用いて微生物系に導入することができる。病原体は、細菌、真核生物(例えば酵母)、原生生物(例えばマラリア)、又はウイルスでありうる。細菌、原生動物及び真核微生物系の特定種のための多くの発現ベクターが当技術分野で周知である。これらの系において機能的な制御配列の例は現時点において十分に理解されている。従って、病原体は、細胞増殖及び再生の定常的な特徴として構成的プロモーターの制御下にて蛍光タンパク質を発現するために最初に改変するか、又は微生物若しくはウイルスゲノムの特定の所望の位置に配置し、内因性配列と置換してもよい。この内因性配列は、病原性又は感染の進行に関与しうるものであり、これらの内因性遺伝子の発現に特徴的な時間的及び空間的パラメータを研究することができる。従って、位置決定を適切に選択することにより、感染の有効性に寄与する微生物又はウイルスの内因性因子の種類を探索することが可能である。同様に、蛍光タンパク質を発現する遺伝子を、実験動物が可視化されうる腫瘍を含むように腫瘍細胞に導入してもよい。蛍光腫瘍を調製するための他の手法は、光線力学的治療(PDT)によるものがあり、これは、腫瘍が、蛍光を発する因子(臨床学的に許容された薬剤、例えばヘマトポルフィリンなど)を吸収するものである。
【0028】
続いて、適切に改変した病原体を、所望であれば、その因子が利用すると考えられる感染経路又は任意の経路を模擬して被験体に投与する。投与は、注射、強制給餌、経口、呼吸器系にはエーロゾルにより、座剤により、一般的には粘膜表面との接触により、又は病原体を導入するために当技術分野で公知の任意の好適な手段により行いうる。腫瘍が蛍光タンパク質を発現する腫瘍ターゲティングにおいては、蛍光を頼りにした注射によって投与を行うことができる。蛍光を用いた腫瘍転移の研究の状況とは異なり、被験体が、免疫能が減弱している必要はない。それは、正常な免疫系を有する生物においては感染が容易に起こるためである。しかしながら、免疫能が減弱している被験体もまた上記症状の進行の研究において有用でありうる。
【0029】
内視鏡検査、及び個々の組織の切除を用いることもできるが、蛍光光学的腫瘍画像化(FOTI)によって無傷の動物における病原体及び感染細胞の移動を可視化することが特に好都合である。これにより、特にモデル系において、抗感染薬及びプロトコール候補の評価においてリアルタイム観察及び感染の進行の連続的モニターが可能となる。従って、候補薬物又はプロトコールを投与していない対照と比較した場合に、候補薬物又はプロトコールを投与した試験動物において感染の阻止が直接観察されることは、その候補の効力及び治療としての可能性を示す。感染を治療しようとする被験体においては、FOTIの利用によって、治療プロトコールを検討する者に対してプロトコールを変更するか又は変更しない当否(妥当性)について連続的に情報を与えることが可能となる。一実施形態においては、蛍光標識した細菌が腫瘍にターゲティングする可能性を解明するために、GFP標識細菌をヌードマウスにおいて増殖しているルイス肺腫瘍に注射した。この腫瘍領域は高度に蛍光を発し、CCDカメラ及びGFPフィルターを備えたライトボックスにおいて青色の励起により容易に可視化された。
【0030】
モデルとしての使用に適切な脊椎動物被験体は、好ましくは哺乳動物被験体、最も好ましくウサギ、ラット、マウスなどの利用しやすい実験動物である。ヒト被験体により類似するものとして、霊長類も用い得る。任意の適切な脊椎動物被験体を用いることができ、その選択は、主に最終的な目的の系に対する利用しやすさ及び類似性により決定される。最終的には、脊椎動物被験体はヒトでありうる。
【0031】
腫瘍ターゲティング細菌は、腫瘍選択的遺伝子治療のためのベクターとして腫瘍における選択的増殖に適合させうることが予想される。
【0032】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0033】
調製A
病原体の改変
レニラ・ムレリ(Renilla mulleri)緑色蛍光タンパク質の変異体(RMV−GFP)(Zhao,M.,Xu,M.,Hoffman,R.M.,非公表データ)を、lacプロモーターからGFPを発現するpUC19誘導体のpPD16.38(Clontech,Palo Alto,CA)のBamHI及びNotI部位にクローニングした。このベクターをpRMV−GFPと称する。pRMV−GFPを標準的な方法により大腸菌JM109コンピテント細胞(Stratagene,San Diego,CA)にトランスフェクトし、形質転換細胞を寒天プレート上でのアンピシリン耐性により選択した。
【0034】
高発現大腸菌−GFPクローンは蛍光顕微鏡で選択した。大腸菌もまたRFPで標識し、さらにネズミチフス菌はGFP及びRFPの両方で標識した。
【0035】
実施例1
強制給餌によるマウスの感染
Nu/nu/CD−1マウスの4週令のメスマウスに、20ゲージのバレル型チップ給餌針(Fine Science Tools Inc.,Foster City,CA)及びラテックス非含有シリンジ(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)を用いて0.5mlの大腸菌−GFP懸濁液(5×1010/ml)を強制給餌した。
【0036】
強制給餌後、種々の時点において、マウスの画像化を実施した。この画像化は、青色光ファイバー光源(Lightools Research,Inc.,Encinitas,CA)により照明されるライトボックスにおいて行った。画像は、Hamamatsu C5810 3−chip cooled color CCDカメラ(Hamamatsu Photonics Systems,Bridgewater,NJ)を用いて記録した。1024×724ピクセルの画像を、IBM PCに直接記録するか又は高解像能SonyVCR model SLV−R1000(Sony Corp.,Tokyo,Japan)でのビデオ出力により連続的に記録した。この画像は、Image Pro Plus 3.1 software(Media Cybernetics,Silver Springs,MD)を用いてコントラスト及び明度について処理し、解析した。
【0037】
強制給餌によりマウスGI管に導入された大腸菌−GFPは、そのほぼ直後に全身画像において胃部に可視化された(図1A)。強制給餌後10分以内に胃は空になり、続いて大腸菌−GFPは小腸において見られた(図1B〜G)。小腸における細菌集団は、強制給餌後40分にピークに達して観察され(図1E)、120分で消失した(図1G)。120分後には大腸において大腸菌−GFPが観察された(図1H)。
【0038】
強制給餌後の適当な時点において、腹腔を開腹し、大腸菌−GFP蛍光の生体画像を作成した。胃(図2A)、小腸(図2B)及び大腸(図2C)は、生体画像で観察されるように大腸菌−GFPにより明るい蛍光を発した。大腸菌−GFPによる複数回の強制給餌によって、胃、小腸及び大腸の同時摂取を行うことができ、これを全身(図3A)及び生体手法(図3B)により画像化した。胃、小腸及び大腸における大腸菌−GFPの全身画像及び生体画像の比較によって、対応関係の程度が高いことが示された。
【0039】
実施例2
大腸菌−GFPの直接腸感染
20ゲージのバレル型チップ給餌針(Fine Science ToolsInc.,Foster City,CA)及びラテックス非含有シリンジ(Becton Dickinson)を用いて、マウス1匹当たり1.5mlの大腸菌−GFP(3×1010/mlを含む)を浣腸で腸に投与した。これらのマウスはまた、実施例1の手法を用いて画像化に供した。結果を図4に示す。
【0040】
実施例3
大腸菌−GFPの腹腔内感染及び抗生物質に対する応答
各グループのマウスには、1ml 29G1ラテックス非含有シリンジ(Becton Dickinson)を用いて109〜1010の大腸菌−GFPを腹腔内(ip)注射した。蛍光細菌は、注射直後に外部全身画像化によって注射部位の周囲に位置することが観察された(図5A、C)。その6時間後には、大腸菌−GFPは腹膜全体に広がって観察され(図5B)、これは動物の死亡と一致していた。6時間での開腹腔における大腸菌−GFPの生体画像(図6)は、外部全身画像化により観察されたものと同様の細菌分布を示した。
【0041】
腹腔内経路で感染させた動物の別のグループは、接種後100μl中の2mgカナマイシンで処置した。感染マウスの対照グループには、抗生物質の代わりに100μlのPBSを腹腔内(ip)注射した。処置マウスの全身画像化によって、次の6時間において細菌集団の顕著な低減が示された(図5C及びD)。
【0042】
実施例4
全身画像化を用いた脳癌のターゲティング
1×108のGFP標識ネズミチフス菌を含有するPBS溶液(10μl)を、蛍光を頼りにした注射を利用して(図7B)ヌードマウスにおけるRFP標識U−87ヒトグリオーマに注射した(図7A)。RFP標識U−87ヒトグリオーマにおけるGFP標識チフス菌を、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化した(図7C)。RFP標識U−87ヒトグリオーマにおいて増殖するGFP標識チフス菌は、注射後1日目において、腫瘍周囲におけるGFP標識チフス菌の局在化、並びに腫瘍サイズの低減を示した(図7D)。
【0043】
実施例5
全身画像化を用いた前立腺腫瘍のターゲティング
RFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍を有する第1のヌードマウス(図8A)において、1×108のGFP標識ネズミチフス菌をRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍に注射し、注射直後に全身画像化を用いて画像化した(図8B)。腫瘍の周囲にGFP標識チフス菌の局在化が観察された(図8B)。蛍光を頼りにした注射の1つの利点は、毒性のサルモネラ菌を用いることができ、またあらゆるサイズの腫瘍をターゲティング可能なことである。
【0044】
RFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍を有する第2のヌードマウス(図8C)においては、2×108のGFP標識ネズミチフス菌を含む溶液をRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍に注射し、注射直後に全身画像化を用いて画像化した。腫瘍の周囲におけるGFP標識ネズミチフス菌の局在化が観察された(図8D)。
【0045】
実施例6
全身画像化を用いた乳癌のターゲティング
2×108のGFP標識ネズミチフス菌を含む溶液を、ヌードマウスにおいて増殖しているRFP標識MDA MB−435ヒト乳癌(図9A)に注射し、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化したところ、腫瘍の周囲における局在化(図9B)と腫瘍サイズの明らかな低減が示された。このことは腫瘍の壊死を示している。
【0046】
実施例7
全身画像化を用いた前立腺腫瘍のターゲティング
3×108のRFP標識ネズミチフス菌を含む溶液をヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍(図10A)に注射し、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化した(図10B)。GFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍におけるRFP標識ネズミチフス菌の増殖は、注射後1日目に観察され(図10C)、これは腫瘍の周囲におけるRFP標識チフス菌の増殖と腫瘍サイズの低減を示している。
【0047】
実施例8
全身画像化を用いた前立腺腫瘍のターゲティング
2×108のRFP標識ネズミチフス菌を含む溶液をヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍(図11A)に注射し、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化した(図11B)。RFP標識チフス菌は注射後1日目にGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の増殖として検出され(図11C)、これは注射後4日目における腫瘍の増殖が継続したことを示したが、腫瘍サイズの低減が示される。
【0048】
実施例9
全身画像化を用いた前立腺腫瘍のターゲティング
2×108のRFP標識ネズミチフス菌を含む溶液をヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍(図12A)に注射し、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化した(図12B)。RFP標識チフス菌は注射後1日目(図12C)及び注射後4日目(図12D)にGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の増殖として検出され、これは目に見える腫瘍サイズの低減を示している。
【0049】
注射後4日目に、GFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍において増殖するRFP標識チフス菌に対して組織学的試験を行った(図12D)。この試験は、10%緩衝化ホルマリンで腫瘍組織を固定し、パラフィン切片処理を行い、標準的な方法でHE染色することにより行った。RFP標識チフス菌(図13において白い矢印で示す小さな青色スポット、倍率400×)は、PC−3腫瘍組織において徐々に増殖し、腫瘍細胞にターゲティングした。
【0050】
組織学的試験(HE染色、倍率200×)を用いて、ヌードマウスにおいて増殖しているPC−3ヒト前立腺腫瘍構造を維持する未処置対照(図14A)と、RFP標識チフス菌で処置したヌードマウスにおいて増殖している注射後4日目のPC−3ヒト前立腺腫瘍(図14B)との比較を行った。腫瘍組織の大部分は破壊されており、腫瘍には広範囲の壊死(図14B中の矢印)が示された。
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物及びウイルス感染の研究に関する。具体的には、本発明は、脊椎動物における感染の進行及び制御を研究するための系、並びに、候補薬物の評価方法及び腫瘍ターゲティング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌の進行及び転移を可視化するための緑色蛍光タンパク質の使用は現在十分に確立されている。例えば、Hoffman,R.M.,Methods in Enzymology(1999)302:20−31(P.Michael Conn編、Academic Press,San Diego)を参照されたい。リアルタイムで進行を記録し、腫瘍治療用に提起されたプロトコールの効力を評価するために全身の画像化を利用することが米国特許第6,251,384号に開示されており、その内容を参照により本明細書に組み入れる。
【0003】
緑色蛍光タンパク質の利点は、それが基質や補因子を必要とすることなく、また生細胞におけるその発現が明らかに生物学的な損傷を生じないことにある。さらに、緑色タンパク質は発せられる蛍光のために特に感度の高い技術となっている。実際、単純な装置、例えばキセノン又は水銀灯からの490nm励起とCCDカラービデオカメラによる画像の捕捉を用いて得られる全身の画像は、腫瘍の成長と転移についてのリアルタイムな研究を可能にする。例えば、Yang,M.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2000)97:1206−1211を参照されたい。
【0004】
本発明は、腫瘍の成長と転移の画像化において開発された技術を感染の研究にまで拡張するものである。微生物及びウイルス感染は、高輝度蛍光タンパク質で病原体を標識することによりモニター可能であり、また感染の進行がモニターされる。さらに、微生物又はウイルス感染の治療に有用なプロトコールは、この技術を利用して評価されうる。蛍光タンパク質の好適な発現を達成するための材料及び方法は容易に利用可能である。例えば、Cheng,L.ら、Gene Therapy(1997)4:1013−1022は、レトロウイルスプロモーターの制御下で緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする配列を有する、造血幹細胞の改変を記載している。この著者らは、増強型のGFPを使用し、この系を用いてヒト幹細胞をトランスフェクトすることにのみ困難があると述べているが、満足のいく輝度を達成できた。Grignani,F.ら、Cancer Res(1998)58:14−19は、ヒト造血前駆細胞への高効率遺伝子導入を行うためのGFPを発現するハイブリッドEBV/レトロウイルスベクターの使用を報告している。
【0005】
種々の色を提供するために種々の改変型GFPを含むベクターが、Clontechにより市販されている。哺乳動物細胞での発現を目的としたClontechベクターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターの制御下にGFPを配置している。この発現系はまたウイルス病原体を標識するためにも使用しうる。
【0006】
哺乳動物被験体においてルシフェラーゼをマーカーとして用いて細菌を可視化するための試みがなされているが、この系は光度が低いために、全身画像化は実用的ではない。例えば、Contag,P,R.ら,Nat.Med.(1998)4:245−247を参照されたい。
【0007】
GFPを発現する細菌はいくつかの研究において既に用いられているが、無傷の生存動物においては行われていない(Wu,H.ら,Microbiol.(2000)146:2481−2493;Ling,S.H.M.ら,Microbiol.(2000)146:7−19;Badger,J.L.ら,Mol.Microbiol.(2000)36(1):174−182;Kohler,R.ら,Mol.Gen.Genet.(2000)262:1060−1069;Valdivia,R.H.ら,Gene(1996)173:47−52;Valdivia,R.H.ら,Science(1997)277:2007−2011;Scott,K.P.ら,FEMS Microbiol.Ltrs.(2000)182:23−27;Prachaiyo,P.ら,J.Food Protect.(2000)63:427−433;Geoffroy,M−C.,Applied & Env.Microbiol.(2000)66:383−391)。このような研究の例として、病原性大腸菌0157H GFPによる筋組織のin vitro感染の可視化がある(Prachaiyo,P.ら,前掲)。また別の手法として、胃腸管組織の採取及び固定化による強制給餌感染後のマウスの胃腸管を調べるものがある(Geoffroy,M−C.,前掲)。GFP形質導入エドワードシエラ・タルダ(Edwardsiella tarda)に感染した魚は、その器官が取り出された後にその感染が画像化されている(Ling,S.H.M.ら,前掲)。病原性及び他の感染過程に関連する遺伝子はGFP発現との関係で評価されている(Ling,S.H.M.ら,前掲;Badger,J.L.ら,前掲;Kohler,R.ら,前掲;Valdivia,R.H.ら,前掲(1996))。
【0008】
本発明はまた、蛍光を用いて病原体(微生物など)により腫瘍に治療用産物を送達する腫瘍ターゲティングに関する。腫瘍における壊死領域に対して嫌気性細菌であるノーヴィ菌(Clostridia novyi)の送達が試みられている(Dang,L.H.ら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA(2001)98:15155−15160)。さらに、ビフィズス菌(Bifidobacterium longum)を用いて腫瘍の壊死領域にターゲティングが行われている(Yazawa,K.ら,Cancer Gene Therapy(2000)7(2):269−274;及びYazawa,K.ら,Breast Cancer Res.& Treatment(2001)66:165−170)。嫌気性菌に依存するこれらの手法は、壊死組織のみにターゲティングし、及び/又は大きなサイズの腫瘍にのみ用いうる。さらに、トキシンを欠損するサルモネラ菌(Salmonella)を用いて腫瘍ターゲティングが行われている(Low,K.B.ら,Nature Biotech.(1999)17:37−41)。別の研究においては、転移性メラノーマ及び腎細胞癌を有するヒト患者におけるサルモネラ菌の腫瘍ターゲティング能が報告されている(Toso,J.F.ら,J.Clin.Oncol.(2002)20(1):142−152)。これらの手法は生存動物において細菌を可視化する方法を提供するものではない。
【0009】
細菌及び他の微生物は、腫瘍に治療用産物を送達するための多くの特徴を提供する。例えば、これらは、ヒト及び特定の細菌タンパク質の両方を産生するように容易に形質転換することができる。しかしながら、細菌タンパク質は広範な種類及び効力のトキシンを含む。そのような強力な分子を利用するために、本発明により示されるような治療用産物送達細菌の正確な腫瘍ターゲティング機構を有することが有用である。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、写実的かつリアルタイムの設定で微生物又はウイルス感染の形成を詳細に研究可能なモデルを提供する。緑色蛍光タンパク質(GFP)などの蛍光タンパク質を安定かつ容易に可視化されるマーカーとして使用することによって、感染の進行をモデル化し、その機構を解明することができる。本発明はまた、部分的には、細菌又は微生物、並びにその治療用分子を可視化する能力に依存する腫瘍ターゲティングに関する。
【0011】
従って、一態様において、本発明は、蛍光タンパク質を発現する微生物又はウイルスによる感染を受けた脊椎動物被験体において蛍光の空間的・時間的進行をモニターすることにより脊椎動物モデル系における感染過程をモニターする方法に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、被験体において感染を阻止するための候補プロトコール又は薬物の評価方法に関し、該方法は、蛍光タンパク質を発現する微生物又はウイルスに感染させた脊椎動物被験体にプロトコール又は薬物を投与し、該感染被験体において種々の位置及び種々の時間における蛍光の存在、不在又は強度を観察することにより時間的・空間的な感染の進行をモニターすることを含む。この方法においては、またさらに、対照被験体において種々の時間及び種々の位置における蛍光の存在、不在又は強度をモニターし、プロトコール又は薬物による処置を受けた被験体と比較する。時間的・空間的な感染の進行は、処置被験体と対照被験体において比較し、対照被験体と比較した処置被験体における感染の強度の減少は、効果のあるプロトコール又は薬物を同定する。
【0013】
さらに別の態様において、本発明は、脊椎動物被験体における治療用病原体を用いた腫瘍ターゲティング方法に関し、該方法は、蛍光タンパク質を発現する病原体を脊椎動物被験体に投与し、被験体における種々の位置での蛍光の存在、不在又は強度を時間との関係で観察することを含む。好ましくは、該治療用病原体は、腫瘍にターゲティングし、治療用産物を腫瘍に送達するものである。
【0014】
本発明の方法はまた、微生物又はウイルスのゲノムの種々の位置に蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列を連結し、該蛍光のモニターにより蛍光タンパク質の発現をモニターすることにより、感染の進行に重要な微生物又はウイルス系の本質をモニターするためにも用いることができる。
【0015】
最後に、本発明は、蛍光タンパク質を発現し、無傷の生存哺乳動物において正常細胞と比較して腫瘍にターゲティングすることが可能な腫瘍ターゲティング病原体に関する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1A〜1Hは、強制給餌により1011の大腸菌−GFPを投与したマウスの種々の部位における蛍光の位置を示す。図1Aは、強制給餌直後の胃における感染の事実を示す。図1B〜図1Gは、それぞれ強制給餌の10分、20分、30分、40分、50分及び60分後の小腸における蛍光の存在を示す。図1Hは、強制給餌の120分後の大腸における感染の存在を示す。
【図2】図2A〜2Cは、1011の大腸菌−GFPによる強制給餌後の大腸菌の生体画像結果を示す。図2Aに示すように、GFP感染は、強制給餌直後の胃及び十二指腸に存在する。図2Bは、強制給餌の40分後の小腸における感染の存在を示す。図2Cは、強制給餌の120分後の大腸における感染の存在を示す。
【図3】図3A〜3Bは、強制給餌後の胃、小腸及び大腸における感染の全身画像及び生体画像を示す。図3Aは、3×1011の大腸菌−GFPのアリコートを複数回強制給餌した後の胃(矢じり)、小腸(細い矢印)、及び大腸(太い矢印)における全身画像を示す。図3Bは、同様に標識された対応の生体画像を示す。
【図4】図4は、1011の大腸菌−GFPの浣腸直後の大腸における感染の全身画像化結果を示す。
【図5】図5A〜5Dは、抗生物質応答における腹腔感染の全身画像化結果を示す。図5A及び5Cは、109の大腸菌−GFPの腹腔内(ip)注射直後の腹腔における感染を示す。図5Bは、注射の6時間後の未処置マウスを示す。このマウスは6時間後に死亡した。図5Dは、腹腔内注射の6時間後のカナマイシン処置マウスを示す。このマウスは生存した。
【図6】図6は、図5に記載したように腹腔内感染の生体画像結果を示す。
【図7】図7Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているRFP標識U−87ヒトグリオーマの全身画像化を示す。図7Bは、GFP標識チフス菌を含有するPBS溶液の蛍光を頼りにした注射を示す。図7Cは、注射直後のRFP標識U−87ヒトグリオーマにおけるGFP標識チフス菌の全身画像化を示す。図7Dは、注射後1日目のRFP標識U−87ヒトグリオーマにおいて増殖するGFP標識チフス菌を示す。
【図8】図8Aは、ヌードマウス(マウス1)におけるRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図8Bは、注射直後に画像化した、マウス1の腫瘍に注射したGFP標識チフス菌を示す。図8Cは、ヌードマウス(マウス2)におけるRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図8Dは、マウス2における注射直後に画像化したRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍に注射したGFP標識チフス菌の結果を示す。
【図9】図9Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているRFP標識MDA MB−435ヒト乳癌の全身画像化を示す。図9Bは、注射直後における腫瘍に注射したGFP標識チフス菌の全身画像化を示す。
【図10】図10Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図10Bは、注射直後に画像化した、腫瘍に注射したRFP標識チフス菌の結果を示す。図10Cは、注射後1日目のGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍において増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。
【図11】図11Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図11Bは、注射直後におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍に注射したRFP標識チフス菌の結果を示す。図11Cは、注射後1日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍において増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。図11Dは、注射後4日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍で増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。
【図12】図12Aは、ヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の全身画像化を示す。図12Bは、注射直後に画像化された、GFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍に注射したRFP標識チフス菌の結果を示す。図12Cは、注射後1日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍において増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。図12Dは、注射後4日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍で増殖するRFP標識チフス菌の全身画像化を示す。
【図13】図13は、組織学により示された、ヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍における、RFP標識チフス菌のターゲティング及び進行的な増殖を示す。RFP標識チフス菌は注射後4日目におけるGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍で増殖する(図12D)。
【図14】図14A〜14Bは、組織学により示された、ヌードマウスにおいて増殖しているPC−3ヒト前立腺腫瘍に対するRFP標識チフス菌の処置の効果を示す。図14Aは、未処置対照である。図14Bは、RFP標識チフス菌処置後である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、感染の機構を研究するためのモデル系を提供する。病原体を標識するための可視的なマーカー蛍光タンパク質を利用し、その結果、組織におけるその移動および局在化は、感染の進行として追跡され得る。
【0018】
本明細書で使用する「感染の進行」とは、病原体及び感染細胞が感染した生物中で移動及び/又は増殖する、一般的な時間依存的様子を意味する。感染の進行は、病原体又は感染細胞の位置の単純な関数であるが、一般的には病原体及び感染細胞の増殖の関数でもある。従って、感染の進行のモニターには蛍光の位置及び強度の両者が重要である。
【0019】
器官又は組織を切り出すことにより病原体の移動を決定することに加えて、無傷の動物において蛍光細胞の移動を観察するのに十分な強度を達成することができるため、所望により、転移の進行は無傷の被験体において観察することができる。このいずれか又は両方の方法を、感染の進行をモニターするため、及び可能性あるプロトコール又は薬物の効力をモデル系において評価するために用いうる。
【0020】
さらに、本発明は、病原体により腫瘍に治療用産物を送達することを利用し、正確な腫瘍ターゲティング機構を提供する。腫瘍ターゲティングにおいては、病原体並びにその治療用分子を可視化できることが有利である。腫瘍を蛍光を頼りにして注射することの利点としては、治療可能な腫瘍サイズの下限がないこと、さらにはこの方法は腫瘍壊死とは関係ないことがある。さらに、病原体は、嫌気性細菌にも病原体の非有毒株にも限定されない。本明細書で使用される「治療用産物」「治療用分子」又は「治療剤」とは、病原体に含まれる目的遺伝子、又は病原体から分泌される産物(例えばトキシン若しくは他の治療用タンパク質)、あるいは病原体によって分泌されないが病原体により使用される腫瘍に対する治療効果が影響を受ける産物を意味する。目的遺伝子とは、腫瘍に対する治療効果を有するあらゆる遺伝子を意味し、例えば抗腫瘍剤を発現する遺伝子である。治療用分子の例としては、米国特許第6,231,854号に開示されるメチオニナーゼを発現する遺伝子又はメチオニナーゼ自体が挙げられる。他の例としては、p53、BAX、トキシン、腫瘍壊死因子(TNF)、TNF関連アポトーシス誘導リガンド、Fasリガンド、及び細胞死受容体に対する抗体が挙げられる。
【0021】
本発明の種々の態様において用いられる標識は、緑色蛍光タンパク質である。このクラスの可能性をもったタンパク質である緑色蛍光タンパク質(GFP)をコードする天然遺伝子は、生物発光クラゲのエクオレア・ビクトリア(Aequorea victria)からクローニングされた(Morin,J.ら、J Cell Physiol(1972)77:313−318)。この遺伝子を利用可能となったことにより、遺伝子発現のためのマーカーとしてGFPを用いることが可能となった。天然のGFP自体は、27kDの分子量を有する283アミノ酸のタンパク質である。それは、蛍光発光するためにその天然供給源からさらなるタンパク質を必要とせず、またその天然供給源においてのみ利用可能な基質または補因子も必要としない(Prasher、D.C.ら、Gene(1992)111:229−233;Yang,F.ら、Nature Biotechnol(1996)14:1252−1256;Cody,C.W.ら、Biochemistry(1993)32:1212−1218)。GFP遺伝子の変異体は、発現を増強し、そして励起および蛍光を改変して、種々の色(赤及び青を含む)の「GFP」を得るために有用であることが見出されている。GFP−S65T(65位のセリンがトレオニンと置換されている)は、本発明方法において特に有用であり、そして490nmで単一の励起ピークを有する(Heim,R.ら、Nature(1995)373:663−664;米国特許第5,625,048号)。他の変異体がまた、Delagrade,S.ら、Biotechnology(1995)13:151−154;Cormack,B.ら、Gene(1996)173:33−38およびCramer,A.ら、Nature Biotechnol(1996)14:315−319に開示されている。さらなる変異体がまた、米国特許第5,625,048号に開示されている。適切な改変により、GFPにより発光される光のスペクトルを変更し得る。従って、用語「GFP」を本出願においてしばしば使用するが、この定義の中に含まれるタンパク質は、必ずしも外見が緑色ではない。GFPの種々の形態が緑色以外の色を示し、そしてこれらは、また、「GFP」定義内に含まれ、そして本発明の方法および材料において有用である。さらに、本明細書において、「GFP」の定義内にはいる緑色蛍光タンパク質は、他の生物体(例えば、ウミシイタケのレニラ・レニフォルミス(Renilla reniformis))から単離されていることに留意されたい。GFPの任意の適切かつ便利な形態は、天然及び変異型のいずれも本発明において有用な病原体を改変するために用いうる。
【0022】
混乱を回避するために、簡単な用語「蛍光タンパク質」を使用するが、これは、一般的にはレニラ属及びエクオレア属などの種々の生物により産生される蛍光タンパク質、並びに、赤色蛍光タンパク質(RFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)又は青色蛍光タンパク質(CFP)によりそれぞれ示される種々の可視色(例えば赤色、黄色及び青色)の蛍光を発しうる、上記天然蛍光タンパク質の改変型を意味するものと理解される。一般的に、用語「蛍光タンパク質」及び「GFP」又は「RFP」は同じ意味で用いられる。
【0023】
蛍光タンパク質は種々の色のものが利用可能であるため、1色以上を用いた画像化を同時に行うことができる。例えばそれぞれが特徴的な蛍光を発現する2種の異なる病原体又は3種の異なる病原体を生物に投与し、提案された処置の特定の効果を評価することができる。さらに、単一の感染生物を、単一色及び異なる色で構成的に標識し、これを用いて、細胞内又は分泌型のいずれかの遺伝子産物との融合物を産生しうる。従って、生物自体を標識するために使用した色とは異なる色の蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列を、試験対象の遺伝子座に、又はベクター中に試験対象のタンパク質との融合タンパク質として、挿入しうる。さらなる例示として、トキシン及び他の可能性ある治療用タンパク質は、RFPと遺伝子として連結し、GFP標識細菌の治療用産物を標識及び可視化することができる。二色画像化は、腫瘍に対する細菌及びそれらの分泌された治療用産物のターゲティングを可視化するために使用しうる。これらの腫瘍ターゲティング細菌は、その蛍光によって可視化されるように腫瘍における選択的増殖に適合されている。さらに、1種以上の病原体を、それぞれ単一色で標識し、目的遺伝子を別の色で標識し、そして腫瘍を第3の色で標識しうる。例えば、実験動物において蛍光を発現する腫瘍によって、全身画像化により蛍光標識病原体の腫瘍へのターゲティング及び病原体の治療用産物を可視化することができる。
【0024】
本明細書において説明するように、GFP及びRFP標識細菌は、ヌードマウスに移植したGFP及びRFP標識腫瘍において蛍光を頼りにした注射によって送達され、そして該細菌をGFP標識腫瘍にターゲティングさせたところ、腫瘍壊死が誘導された。特に、GFP及びRFP標識大腸菌及びネズミチフス菌(S.typhimurium)のマウスにおけるRFP及びGFP発現腫瘍に対するターゲティングは、二色全身画像化により可視化された。ターゲティングされたRFP及びGFP標識腫瘍において増殖するGFP及びRFP標識細菌は、本明細書における実施例に示されるように二色全身画像化により可視化された。従って、蛍光標識微生物の腫瘍ターゲティングが示された。しかしながら、本発明の方法はまた、最終的に腫瘍にターゲティングする細菌を選択するために、病原体のミスターゲティングをモニターするためにも用いることができる。
【0025】
GFPを用いた一般的な細胞の標識手法は米国特許第5,491,084号(前掲)に記載されている。
【0026】
本発明の方法は、蛍光タンパク質、好ましくは侵襲的な手法のいずれも必要とせずに被験体において蛍光を観察可能な十分な蛍光強度の蛍光タンパク質、をコードするヌクレオチド配列を発現するよう改変した病原体を利用する。全身画像化はリアルタイム観察の可能性のために好ましく、また例えば、内視鏡検査手法、又は、所望であれば、直接観察若しくは組織化学的観察のために切り出した組織若しくは器官を用いることも可能である。
【0027】
蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列は、直接改変、例えば、蛍光タンパク質をコードする配列をウイルスの内因性制御配列の制御下の適切な位置に配置するウイルスゲノムの改変などによって病原体に導入することができ、あるいは適当な発現ベクターを用いて微生物系に導入することができる。病原体は、細菌、真核生物(例えば酵母)、原生生物(例えばマラリア)、又はウイルスでありうる。細菌、原生動物及び真核微生物系の特定種のための多くの発現ベクターが当技術分野で周知である。これらの系において機能的な制御配列の例は現時点において十分に理解されている。従って、病原体は、細胞増殖及び再生の定常的な特徴として構成的プロモーターの制御下にて蛍光タンパク質を発現するために最初に改変するか、又は微生物若しくはウイルスゲノムの特定の所望の位置に配置し、内因性配列と置換してもよい。この内因性配列は、病原性又は感染の進行に関与しうるものであり、これらの内因性遺伝子の発現に特徴的な時間的及び空間的パラメータを研究することができる。従って、位置決定を適切に選択することにより、感染の有効性に寄与する微生物又はウイルスの内因性因子の種類を探索することが可能である。同様に、蛍光タンパク質を発現する遺伝子を、実験動物が可視化されうる腫瘍を含むように腫瘍細胞に導入してもよい。蛍光腫瘍を調製するための他の手法は、光線力学的治療(PDT)によるものがあり、これは、腫瘍が、蛍光を発する因子(臨床学的に許容された薬剤、例えばヘマトポルフィリンなど)を吸収するものである。
【0028】
続いて、適切に改変した病原体を、所望であれば、その因子が利用すると考えられる感染経路又は任意の経路を模擬して被験体に投与する。投与は、注射、強制給餌、経口、呼吸器系にはエーロゾルにより、座剤により、一般的には粘膜表面との接触により、又は病原体を導入するために当技術分野で公知の任意の好適な手段により行いうる。腫瘍が蛍光タンパク質を発現する腫瘍ターゲティングにおいては、蛍光を頼りにした注射によって投与を行うことができる。蛍光を用いた腫瘍転移の研究の状況とは異なり、被験体が、免疫能が減弱している必要はない。それは、正常な免疫系を有する生物においては感染が容易に起こるためである。しかしながら、免疫能が減弱している被験体もまた上記症状の進行の研究において有用でありうる。
【0029】
内視鏡検査、及び個々の組織の切除を用いることもできるが、蛍光光学的腫瘍画像化(FOTI)によって無傷の動物における病原体及び感染細胞の移動を可視化することが特に好都合である。これにより、特にモデル系において、抗感染薬及びプロトコール候補の評価においてリアルタイム観察及び感染の進行の連続的モニターが可能となる。従って、候補薬物又はプロトコールを投与していない対照と比較した場合に、候補薬物又はプロトコールを投与した試験動物において感染の阻止が直接観察されることは、その候補の効力及び治療としての可能性を示す。感染を治療しようとする被験体においては、FOTIの利用によって、治療プロトコールを検討する者に対してプロトコールを変更するか又は変更しない当否(妥当性)について連続的に情報を与えることが可能となる。一実施形態においては、蛍光標識した細菌が腫瘍にターゲティングする可能性を解明するために、GFP標識細菌をヌードマウスにおいて増殖しているルイス肺腫瘍に注射した。この腫瘍領域は高度に蛍光を発し、CCDカメラ及びGFPフィルターを備えたライトボックスにおいて青色の励起により容易に可視化された。
【0030】
モデルとしての使用に適切な脊椎動物被験体は、好ましくは哺乳動物被験体、最も好ましくウサギ、ラット、マウスなどの利用しやすい実験動物である。ヒト被験体により類似するものとして、霊長類も用い得る。任意の適切な脊椎動物被験体を用いることができ、その選択は、主に最終的な目的の系に対する利用しやすさ及び類似性により決定される。最終的には、脊椎動物被験体はヒトでありうる。
【0031】
腫瘍ターゲティング細菌は、腫瘍選択的遺伝子治療のためのベクターとして腫瘍における選択的増殖に適合させうることが予想される。
【0032】
以下の実施例は、本発明を説明することを意図するが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0033】
調製A
病原体の改変
レニラ・ムレリ(Renilla mulleri)緑色蛍光タンパク質の変異体(RMV−GFP)(Zhao,M.,Xu,M.,Hoffman,R.M.,非公表データ)を、lacプロモーターからGFPを発現するpUC19誘導体のpPD16.38(Clontech,Palo Alto,CA)のBamHI及びNotI部位にクローニングした。このベクターをpRMV−GFPと称する。pRMV−GFPを標準的な方法により大腸菌JM109コンピテント細胞(Stratagene,San Diego,CA)にトランスフェクトし、形質転換細胞を寒天プレート上でのアンピシリン耐性により選択した。
【0034】
高発現大腸菌−GFPクローンは蛍光顕微鏡で選択した。大腸菌もまたRFPで標識し、さらにネズミチフス菌はGFP及びRFPの両方で標識した。
【0035】
実施例1
強制給餌によるマウスの感染
Nu/nu/CD−1マウスの4週令のメスマウスに、20ゲージのバレル型チップ給餌針(Fine Science Tools Inc.,Foster City,CA)及びラテックス非含有シリンジ(Becton Dickinson,Franklin Lakes,NJ)を用いて0.5mlの大腸菌−GFP懸濁液(5×1010/ml)を強制給餌した。
【0036】
強制給餌後、種々の時点において、マウスの画像化を実施した。この画像化は、青色光ファイバー光源(Lightools Research,Inc.,Encinitas,CA)により照明されるライトボックスにおいて行った。画像は、Hamamatsu C5810 3−chip cooled color CCDカメラ(Hamamatsu Photonics Systems,Bridgewater,NJ)を用いて記録した。1024×724ピクセルの画像を、IBM PCに直接記録するか又は高解像能SonyVCR model SLV−R1000(Sony Corp.,Tokyo,Japan)でのビデオ出力により連続的に記録した。この画像は、Image Pro Plus 3.1 software(Media Cybernetics,Silver Springs,MD)を用いてコントラスト及び明度について処理し、解析した。
【0037】
強制給餌によりマウスGI管に導入された大腸菌−GFPは、そのほぼ直後に全身画像において胃部に可視化された(図1A)。強制給餌後10分以内に胃は空になり、続いて大腸菌−GFPは小腸において見られた(図1B〜G)。小腸における細菌集団は、強制給餌後40分にピークに達して観察され(図1E)、120分で消失した(図1G)。120分後には大腸において大腸菌−GFPが観察された(図1H)。
【0038】
強制給餌後の適当な時点において、腹腔を開腹し、大腸菌−GFP蛍光の生体画像を作成した。胃(図2A)、小腸(図2B)及び大腸(図2C)は、生体画像で観察されるように大腸菌−GFPにより明るい蛍光を発した。大腸菌−GFPによる複数回の強制給餌によって、胃、小腸及び大腸の同時摂取を行うことができ、これを全身(図3A)及び生体手法(図3B)により画像化した。胃、小腸及び大腸における大腸菌−GFPの全身画像及び生体画像の比較によって、対応関係の程度が高いことが示された。
【0039】
実施例2
大腸菌−GFPの直接腸感染
20ゲージのバレル型チップ給餌針(Fine Science ToolsInc.,Foster City,CA)及びラテックス非含有シリンジ(Becton Dickinson)を用いて、マウス1匹当たり1.5mlの大腸菌−GFP(3×1010/mlを含む)を浣腸で腸に投与した。これらのマウスはまた、実施例1の手法を用いて画像化に供した。結果を図4に示す。
【0040】
実施例3
大腸菌−GFPの腹腔内感染及び抗生物質に対する応答
各グループのマウスには、1ml 29G1ラテックス非含有シリンジ(Becton Dickinson)を用いて109〜1010の大腸菌−GFPを腹腔内(ip)注射した。蛍光細菌は、注射直後に外部全身画像化によって注射部位の周囲に位置することが観察された(図5A、C)。その6時間後には、大腸菌−GFPは腹膜全体に広がって観察され(図5B)、これは動物の死亡と一致していた。6時間での開腹腔における大腸菌−GFPの生体画像(図6)は、外部全身画像化により観察されたものと同様の細菌分布を示した。
【0041】
腹腔内経路で感染させた動物の別のグループは、接種後100μl中の2mgカナマイシンで処置した。感染マウスの対照グループには、抗生物質の代わりに100μlのPBSを腹腔内(ip)注射した。処置マウスの全身画像化によって、次の6時間において細菌集団の顕著な低減が示された(図5C及びD)。
【0042】
実施例4
全身画像化を用いた脳癌のターゲティング
1×108のGFP標識ネズミチフス菌を含有するPBS溶液(10μl)を、蛍光を頼りにした注射を利用して(図7B)ヌードマウスにおけるRFP標識U−87ヒトグリオーマに注射した(図7A)。RFP標識U−87ヒトグリオーマにおけるGFP標識チフス菌を、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化した(図7C)。RFP標識U−87ヒトグリオーマにおいて増殖するGFP標識チフス菌は、注射後1日目において、腫瘍周囲におけるGFP標識チフス菌の局在化、並びに腫瘍サイズの低減を示した(図7D)。
【0043】
実施例5
全身画像化を用いた前立腺腫瘍のターゲティング
RFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍を有する第1のヌードマウス(図8A)において、1×108のGFP標識ネズミチフス菌をRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍に注射し、注射直後に全身画像化を用いて画像化した(図8B)。腫瘍の周囲にGFP標識チフス菌の局在化が観察された(図8B)。蛍光を頼りにした注射の1つの利点は、毒性のサルモネラ菌を用いることができ、またあらゆるサイズの腫瘍をターゲティング可能なことである。
【0044】
RFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍を有する第2のヌードマウス(図8C)においては、2×108のGFP標識ネズミチフス菌を含む溶液をRFP標識DU−145ヒト前立腺腫瘍に注射し、注射直後に全身画像化を用いて画像化した。腫瘍の周囲におけるGFP標識ネズミチフス菌の局在化が観察された(図8D)。
【0045】
実施例6
全身画像化を用いた乳癌のターゲティング
2×108のGFP標識ネズミチフス菌を含む溶液を、ヌードマウスにおいて増殖しているRFP標識MDA MB−435ヒト乳癌(図9A)に注射し、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化したところ、腫瘍の周囲における局在化(図9B)と腫瘍サイズの明らかな低減が示された。このことは腫瘍の壊死を示している。
【0046】
実施例7
全身画像化を用いた前立腺腫瘍のターゲティング
3×108のRFP標識ネズミチフス菌を含む溶液をヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍(図10A)に注射し、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化した(図10B)。GFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍におけるRFP標識ネズミチフス菌の増殖は、注射後1日目に観察され(図10C)、これは腫瘍の周囲におけるRFP標識チフス菌の増殖と腫瘍サイズの低減を示している。
【0047】
実施例8
全身画像化を用いた前立腺腫瘍のターゲティング
2×108のRFP標識ネズミチフス菌を含む溶液をヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍(図11A)に注射し、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化した(図11B)。RFP標識チフス菌は注射後1日目にGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の増殖として検出され(図11C)、これは注射後4日目における腫瘍の増殖が継続したことを示したが、腫瘍サイズの低減が示される。
【0048】
実施例9
全身画像化を用いた前立腺腫瘍のターゲティング
2×108のRFP標識ネズミチフス菌を含む溶液をヌードマウスにおいて増殖しているGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍(図12A)に注射し、注射直後に実施例1と同様の手法を用いて画像化した(図12B)。RFP標識チフス菌は注射後1日目(図12C)及び注射後4日目(図12D)にGFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍の増殖として検出され、これは目に見える腫瘍サイズの低減を示している。
【0049】
注射後4日目に、GFP標識PC−3ヒト前立腺腫瘍において増殖するRFP標識チフス菌に対して組織学的試験を行った(図12D)。この試験は、10%緩衝化ホルマリンで腫瘍組織を固定し、パラフィン切片処理を行い、標準的な方法でHE染色することにより行った。RFP標識チフス菌(図13において白い矢印で示す小さな青色スポット、倍率400×)は、PC−3腫瘍組織において徐々に増殖し、腫瘍細胞にターゲティングした。
【0050】
組織学的試験(HE染色、倍率200×)を用いて、ヌードマウスにおいて増殖しているPC−3ヒト前立腺腫瘍構造を維持する未処置対照(図14A)と、RFP標識チフス菌で処置したヌードマウスにおいて増殖している注射後4日目のPC−3ヒト前立腺腫瘍(図14B)との比較を行った。腫瘍組織の大部分は破壊されており、腫瘍には広範囲の壊死(図14B中の矢印)が示された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生存非ヒト脊椎動物被験体における感染の進行をモニターする方法であって、
蛍光タンパク質を発現する病原体で処置された前記脊椎動物被験体において、種々の位置における蛍光の存在、不在又は強度を時間の関数として観察することを含む、上記方法。
【請求項2】
感染を阻止するための候補プロトコール又は薬剤を評価する方法であって、
蛍光タンパク質を発現する病原体で処置された非ヒト脊椎動物被験体に対し前記プロトコール又は薬剤を投与し、前記処置被験体において種々の位置で蛍光の存在、不在又は強度を観察することによって感染の進行を経時的にモニターし、
蛍光タンパク質を発現する病原体で同様に処置された対照非ヒト被験体において感染の進行を経時的にモニターし、
前記処置被験体における感染の進行と、前記対照被験体における感染の進行とを比較する、
ことを含み、前記対照被験体と比較した前記処置被験体における感染の進行の減少は、前記プロトコール又は薬剤が感染の阻止に有効であると同定するものである、上記方法。
【請求項3】
感染と関連した遺伝子を同定する方法であって、改変型ゲノムを有する病原体に感染させた生存非ヒト被験体における蛍光の存在、不在又は強度を、時間及び該被験体における位置の関数として観察することを含み、該ゲノムの改変が、決定しようとする機能を有するヌクレオチド配列の、蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列による置換を含む、上記方法。
【請求項4】
生存非ヒト脊椎動物被験体における治療用病原体を用いた腫瘍ターゲティング方法であって、
腫瘍細胞を含む前記脊椎動物被験体に対し、蛍光タンパク質を発現する病原体を投与し、
前記被験体における蛍光の存在、不在又は強度を時間の関数として観察する、
ことを含み、前記腫瘍の周囲における蛍光の存在は、腫瘍にターゲティングする病原体であることを示す、上記方法。
【請求項1】
生存非ヒト脊椎動物被験体における感染の進行をモニターする方法であって、
蛍光タンパク質を発現する病原体で処置された前記脊椎動物被験体において、種々の位置における蛍光の存在、不在又は強度を時間の関数として観察することを含む、上記方法。
【請求項2】
感染を阻止するための候補プロトコール又は薬剤を評価する方法であって、
蛍光タンパク質を発現する病原体で処置された非ヒト脊椎動物被験体に対し前記プロトコール又は薬剤を投与し、前記処置被験体において種々の位置で蛍光の存在、不在又は強度を観察することによって感染の進行を経時的にモニターし、
蛍光タンパク質を発現する病原体で同様に処置された対照非ヒト被験体において感染の進行を経時的にモニターし、
前記処置被験体における感染の進行と、前記対照被験体における感染の進行とを比較する、
ことを含み、前記対照被験体と比較した前記処置被験体における感染の進行の減少は、前記プロトコール又は薬剤が感染の阻止に有効であると同定するものである、上記方法。
【請求項3】
感染と関連した遺伝子を同定する方法であって、改変型ゲノムを有する病原体に感染させた生存非ヒト被験体における蛍光の存在、不在又は強度を、時間及び該被験体における位置の関数として観察することを含み、該ゲノムの改変が、決定しようとする機能を有するヌクレオチド配列の、蛍光タンパク質をコードするヌクレオチド配列による置換を含む、上記方法。
【請求項4】
生存非ヒト脊椎動物被験体における治療用病原体を用いた腫瘍ターゲティング方法であって、
腫瘍細胞を含む前記脊椎動物被験体に対し、蛍光タンパク質を発現する病原体を投与し、
前記被験体における蛍光の存在、不在又は強度を時間の関数として観察する、
ことを含み、前記腫瘍の周囲における蛍光の存在は、腫瘍にターゲティングする病原体であることを示す、上記方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−17706(P2011−17706A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165480(P2010−165480)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【分割の表示】特願2003−511874(P2003−511874)の分割
【原出願日】平成14年7月9日(2002.7.9)
【出願人】(502326772)アンチキャンサー インコーポレーテッド (23)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【分割の表示】特願2003−511874(P2003−511874)の分割
【原出願日】平成14年7月9日(2002.7.9)
【出願人】(502326772)アンチキャンサー インコーポレーテッド (23)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]