説明

蛍光ランプおよび照明器具

【課題】容易に製造できて、通常の放電状態に悪影響を及ぼすことなく早期の段階で寿命末期の異常放電による不具合を防止できる蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを配設する照明器具を提供する。
【解決手段】蛍光ランプ1は、フィラメント9の両端側を支持している一対の導入線2,2と、両端部3a,3aに一対の導入線2,2が封止された圧潰封止部11,11をそれぞれ有するガラスバルブ3と、一対の導入線2,2の間において、一端側4aが封止されて圧潰封止部11からガラスバルブ3内に突出され他端側4bが圧潰封止部11に溶着されているとともに、内部に不純ガスまたは不純ガス放出物質12が封入されたガラスからなる細管4と、ガラスバルブ3の内面側に形成された蛍光体膜5と、ガラスバルブ3の内部に封入された放電媒体を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寿命末期に発生する異常放電による不具合を防止可能な蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを具備する照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波で点灯される蛍光ランプは、発光効率が向上し、明るさのちらつきがなくなるなどの利点を有している。しかしながら、長時間の点灯によって一方の電極の電子放射物質が消耗すると、直流点灯(半波放電)状態になりやすい。この直流点灯状態になると、当該電極は、例えばフィラメントの一部に集中的に電子が出入りして当該部分の温度が異常に上昇する。このため、電極の近傍に位置している口金やソケット等の樹脂材が熱で溶融するなどの不具合が発生することがある。
【0003】
従来、上記不具合を防止するために、点灯装置において、蛍光ランプの異常点灯を検出して蛍光ランプを強制的に消灯させることが行われている。しかし、このような機能を有していない点灯装置においては、上記不具合を防止することができない。
【0004】
そこで、蛍光ランプ自体で、寿命末期の電極の異常温度上昇に伴って発生する不具合を防止することが行われている。例えば、一対のインナーリード線の少なくとも一方に配設された不純ガスを放出するガラスビードを具備する蛍光ランプが提案されている(特許文献1参照。)。この従来技術の蛍光ランプは、ガラスビードがフレアステムの軟化点よりも低い軟化点を有し、軟化溶融時に水素や二酸化炭素などの不純ガスをガラスバルブ内に大量に放出するガラス材料から形成されている。そして、ガラスバルブ内の不純ガスの濃度が高くなり、ランプ電圧が上昇することによって、放電状態を維持できなくなって消灯するものである。
【0005】
また、不純ガス放出物質を収容し、少なくとも一方のインナーリード線に配設されたガス放出基体を具備する蛍光ランプが提案されている(特許文献2参照。)。この従来技術の蛍光ランプは、ランプ寿命末期時にガス放出基体が内部に収容している不純ガス放出物質から不純ガスを放出するので、点灯回路によって供給されるランプ電圧よりも点灯維持電圧が上昇し、消灯するものである。
【0006】
また、フレアステムを形成するガラスの一部分の肉厚を薄くし、異常温度上昇時に薄肉部を破壊させ、大気をガラスバルブ内に流入させて異常放電を停止させる蛍光ランプが提案されている(特許文献3参照。)。この従来技術の蛍光ランプは、細管の基端の圧潰封止部への封着部位に薄肉部が形成されている。そして、薄肉部が異常温度により軟化して内外の圧力差で破壊することにより、大気が細管からガラスバルブ内に流入し、蛍光ランプが放電状態を維持できなくなって消灯するものである。
【0007】
また、ガラスバルブのピンチ封止領域の大部分に亘ってガラスバルブの残りの部分よりも構造的に弱い荒いテクスチャーを形成し、所定のレベルより高い温度状態が発生したときに、当該荒いテクスチャーから破損されて消灯する蛍光ランプが提案されている(特許文献4参照。)。この従来技術の蛍光ランプは、荒いテクスチャーが非シリカのグリットを使用してグリットブラスティングを施して形成され、破損がピンチ封止領域の外側から開始して内側に進み、ガラスバルブ内が外気にリークすることによって、放電状態を維持できなくなって消灯するものである。
【特許文献1】特開2005−302386号公報(第5頁、第2図)
【特許文献2】特開2001−101998号公報(第5頁、第1図)
【特許文献3】特開平10−31975号公報(第5頁、第4図)
【特許文献4】特開平7−153425号公報(第3頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の蛍光ランプは、ガラスビードが軟化溶融するに至らなくても、すなわち通常の点灯状態でもガラスビードから微小に不純ガスが発生することがある。そして、累積点灯時間が経過するにしたがい、不純ガスの濃度が高くなってランプ電圧の上昇をもたらすという問題がある。
【0009】
特許文献2の蛍光ランプは、ガス放出基体をリード線に固着するので、製造に手間を要し、高価になるという欠点を有する。また、特許文献3の蛍光ランプは、細管の基端がフレアステムの薄肉部に形成されるので、高度な製造工程を必要とし、製造が煩雑になるという欠点を有する。
【0010】
特許文献4の蛍光ランプは、荒いテクスチャーがピンチ封止領域に形成されるので、異常放電が発生してからの破損の進行が遅く、ガラスバルブ内が外気にリークするまでに時間を要し、それまでに口金やソケットなどの樹脂材が熱損傷することがあるという欠点を有する。
【0011】
本発明は、容易に製造できて、通常の放電状態に悪影響を及ぼすことなく早期の段階で寿命末期の異常放電による不具合を防止できる蛍光ランプおよびこの蛍光ランプを配設する照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の蛍光ランプの発明は、フィラメントの両端側を支持している一対の導入線と;両端部に前記一対の導入線が封止された圧潰封止部をそれぞれ有し、両端部からそれぞれ前記一対の導入線が導出されたガラスバルブと;前記一対の導入線の間において、一端側が封止されて前記圧潰封止部からガラスバルブ内に突出され他端側が前記圧潰封止部に溶着されているとともに、内部に不純ガスまたは不純ガス放出物質が封入されたガラスからなる細管と;ガラスバルブの内面側に形成された蛍光体膜と;ガラスバルブの内部に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴とする。
【0013】
本発明および以下の各発明において、特に言及しない限り、各構成は以下による。
【0014】
ガラスバルブは、直管形、環形や屈曲形など、その形状は問わない。
【0015】
圧潰封止部は、ガラスバルブの端部をピンチャーで圧潰して形成されたものである。
【0016】
不純ガスは、ガラスバルブ内において、ランプ電圧を上昇させる気体(ガス)であり、例えば空気、水素、二酸化炭素や二酸化窒素などとすることができる。また、不純ガス放出物質は、加熱されることにより不純ガスを放出する物質であり、例えばプラスチック材やガラス材などとすることができる。
【0017】
放電媒体は、水銀および希ガスの組合せとすることができる。希ガスの種類や封入圧は、適宜設定すればよい。また、水銀の封入において、水銀を液体で封入する他に、アマルガムや亜鉛水銀ペレットの形にして封入することもできる。
【0018】
「ガラスバルブの内面側に形成された蛍光体膜」とは、蛍光体膜がガラスバルブの内面に直接形成されていてもよく、ガラスバルブの内面に形成された保護膜等の中間層上に形成されてもよいことを意味する。
【0019】
本発明によれば、寿命末期にフィラメントや一対の導入線に異常放電が発生して当該部分が異常発熱すると、一対の導入線の間に位置する細管が当該熱により加熱されて、細管の温度が急激に上昇する。細管は、内部のガスが膨張しながら温度差による歪みが生じ、ひび割れ(クラック)が入る。そして、細管の内部に封入されていた不純ガス放出物質から放出された不純ガスがガラスバルブ内に拡散される。ガラスバルブ内において、ランプ電圧が上昇し、フィラメントや一対の導入線に異常放電を維持できなくなり、異常放電が停止する。
【0020】
請求項2に記載の蛍光ランプの発明は、フィラメントの両端側を支持している一対の導入線と;両端部に前記一対の導入線が封止された圧潰封止部をそれぞれ有し、両端部からそれぞれ前記一対の導入線が導出されたガラスバルブと;前記一対の導入線の間において、一端側が封止されて前記圧潰封止部からガラスバルブ内に突出され、他端側が開放されて前記圧潰封止部の外面側に位置され、一端側および他端側が連通するように前記圧潰封止部に封着されたガラスからなる細管と;ガラスバルブの内面側に形成された蛍光体膜と;ガラスバルブの内部に封入された放電媒体と;を具備していることを特徴とする。
【0021】
ガラスバルブの端部を圧潰するピンチャーは、細管の他端側を挿入可能な凹溝が設けられているものである。
【0022】
「細管の他端側が圧潰封止部の外面側に位置される」とは、細管の他端側の開口が圧潰封止部の外面に露出していてもよく、細管の他端側が圧潰封止部の外面から外方に突出していてもよいことを意味する。
【0023】
細管の他端側は、一端側に連通していれば、押し潰されて変形されていてもよい。また、製造時に、連通した開口が潰れないように、細管内に金属線やセラミック繊維等を挿入してもよい。
【0024】
本発明によれば、寿命末期にフィラメントや一対の導入線に異常放電が発生して当該部分が異常発熱すると、一対の導入線の間に位置する細管の他端側が当該熱により加熱されて、細管の他端側の温度が急激に上昇する。細管は、他端側の加熱部に生じた急激な温度差により歪みが生じ、ひび割れ(クラック)が入る。そして、ガラスバルブ内には、細管の他端側から空気が流入する。これにより、フィラメントや一対の導入線に異常放電を維持できなくなって、異常放電が停止する。
【0025】
請求項3に記載の蛍光ランプの発明は、請求項1または2記載の蛍光ランプにおいて、ガラスバルブ内には、一対の導入線に掛け渡されたガラスビードが設けられ、細管の一端側が前記ガラスビードに近接または接触していることを特徴とする。
【0026】
本発明によれば、寿命末期にフィラメントや一対の導入線に異常放電が発生して当該部分が異常発熱すると、フィラメントや導入線に近いガラスビードが当該熱により加熱されて、ガラスビードの温度が急激に上昇してガラスビードが溶融する。そして、ガラスビードに近接または接触している細管の一端側の温度が急激に上昇する。細管は、一端側の外面が徐々に溶融して破ける。これにより、ガラスバルブ内に不純ガスまたは空気が拡散し、フィラメントや一対の導入線に異常放電を維持できなくなって、異常放電が停止する。
【0027】
請求項4に記載の照明器具の発明は、請求項1ないし3いずれか一記載の蛍光ランプと;この蛍光ランプを点灯させる点灯装置と;蛍光ランプおよび点灯装置を配設している器具本体と;を具備していることを特徴とする。
【0028】
本発明によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の蛍光ランプを配設するので、蛍光ランプの異常点灯を蛍光ランプ自体で早期の段階で停止することのできる照明器具が提供される。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の発明によれば、フィラメントや一対の導入線に異常放電が発生すると、細管が直ちにひび割れし細管から不純ガスがガラスバルブ内に放出されて前記異常放電が早期の段階で停止するので、ガラスバルブの両端部側に配設された口金やこの口金が装着されたソケットの熱損傷を極力抑制することができる。また、不純ガスまたは不純ガス放出物質が封入された細管は、他端側を圧潰封止部に溶着して、ガラスバルブ内の一対の導入線間に配設されるので、容易に製造することができて、蛍光ランプを安価にすることができるとともに、通常の点灯状態に悪影響を及ぼさなくすることができる。
【0030】
請求項2の発明によれば、フィラメントや一対の導入線に異常放電が発生すると、細管の他端側が直ちにひび割れし他端側から空気がガラスバルブ内に流入されて前記異常放電が早期の段階で停止するので、ガラスバルブの両端部側に配設された口金やこの口金が装着されたソケットの熱損傷を極力抑制することができる。また、細管は、一端側がガラスバルブ内の一対の導入線間に位置し、他端側が一端側と連通しかつ圧潰封止部の外面側に位置するようにして圧潰封止部に封着するので、容易に製造することができて、蛍光ランプを安価にすることがでるとともに、通常の点灯状態に悪影響を及ぼさなくすることができる。
【0031】
請求項3の発明によれば、フィラメントや一対の導入線に近いガラスビードに一端側が近接または接触するようにして細管が配設されているので、フィラメントや一対の導入線に異常放電が発生したときに、より早期の段階で細管の一端側を溶融させて破けさせ、異常放電を停止させることができる。
【0032】
請求項4の発明によれば、請求項1ないし3いずれか一記載の蛍光ランプを配設するので、蛍光ランプ自体で蛍光ランプの異常点灯を異常点灯の早期の段階で停止することのできる照明器具を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を参照して説明する。まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
【0034】
図1および図2は、本発明の第1の実施形態を示し、図1は蛍光ランプの端部側における一部切り欠き概略正面図、図2は蛍光ランプの寿命末期の端部側における一部切り欠き概略正面図である。
【0035】
図1において、蛍光ランプ1は、一対の導入線2,2、ガラスバルブ3、細管4、蛍光体膜5および放電媒体(図示しない。)を有して形成されている。
【0036】
一対の導入線2,2は、それぞれインナー線6、アウター線7およびジュメット線8からなっている。そして、ジュメット線8の両端にインナー線6およびアウター線7が接続されている。ジュメット線8は、例えば、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)線の外面に、銅(Cu)、酸化銅(CuO)が順次メッキされ、さらにホウ砂(Na[B(OH)]・8HO)が被覆されてなり、外径が0.4〜0.5mmに形成されている。また、インナー線6は、外径0.6mmの例えば鉄−ニッケル線からなり、アウター線7は、外径0.6mmの例えば銅線からなっている。
【0037】
そして、インナー線6,6は、フィラメント9の両端側を例えば挟持して支持している。フィラメント9は、タングステン(W)線からなり、2重コイルまたは3重コイルで形成されている。また、インナー線6,6には、略直方体に形成されたガラスビード10が掛け渡されている。ガラスビード10は、鉛ガラス、ソーダライムガラスまたはバリウムシリケートガラスなどの軟質ガラスからなり、2枚の板状のガラス材のそれぞれの一面を加熱して溶融させ、インナー線6,6を挟み込むようにして形成されたものである。
【0038】
ガラスバルブ3は、例えば管外径12〜20mm、肉厚0.8〜1.5mmのソーダライムガラスからなり、直管形、環形や屈曲形などの所望の形状に形成され、両端部3a,3a(図中一端部3aのみ示す。)にそれぞれ一対の導入線2,2を圧潰して封止している。その封止部位は、略板状の圧潰封止部11となっている。すなわち、圧潰封止部11には、ジュメット線8の全体を封着するようにして一対の導入線2,2が封止されている。これにより、ガラスバルブ3の両端部3a,3a側の内部にそれぞれ一対のインナー線6,6によりフィラメント9が配設され、ガラスバルブ3の両端部3a,3aからそれぞれ一対の導入線2,2のアウター線7,7が導出している。ガラスバルブ3内のフィラメント9,9間には、放電路が形成されている。そして、アウター線7,7は、ガラスバルブ3の両端部3a,3aに配設された図示しない口金の接続ピンにそれぞれ電気的に接続されている。
【0039】
細管4は、例えば管外径3〜5mm、肉厚0.3〜0.8mmのソーダライムガラスからなり、ガラスバルブ3内の一対のインナー線6,6(導入線2,2)の間において、圧潰封止部11からガラスバルブ3内に突出するように設けられている。細管4は、一端側4aが封止され他端側4bが閉塞され、かつ一端側4aの内部に不純ガス放出物質12が封入されたガラス管を一対の導入線2,2とともにガラスバルブ3の端部3aに圧潰して形成したものである。これにより、細管4の一端側4aは、圧潰封止部11からガラスバルブ3内に突出し、他端側4bは、圧潰封止部11に溶着して支持されている。また、一端側4aは、一対のインナー線6,6に掛け渡されたガラスビード10から離間している。
【0040】
不純ガス放出物質12は、例えば二酸化炭素(CO)や一酸化窒素(NO)などの不純ガスを放出するガラス材料からなるビードである。不純ガス放出物質12は、細管4を介して加熱されることにより、細管4内に不純ガスを放出する。なお、細管4は、不純ガス放出物質12に代えて、不純ガスを封入してもよい。この場合、内部に不純ガスが供給されているガラス管が一対の導入線2,2とともにガラスバルブ3の端部3aに圧潰される。
【0041】
そして、ガラスバルブ3の内面には、例えば三波長発光形の蛍光体膜5が形成されている。ここで、蛍光体膜5は、ガラスバルブ3の内面に形成された例えばアルミナ(Al)微粒子からなる保護膜上に形成されてもよい。また、ガラスバルブ3の内部には、放電媒体として、水銀およびアルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)、キセノン(Xe)などの希ガスが単体または混合されて封入されている。
【0042】
次に、本発明の第1の実施形態の作用について述べる。
【0043】
蛍光ランプ1は、両端部3a,3aの圧潰封止部11,11にそれぞれ封止されている一対の導入線2,2に高周波電圧が印加されると、一対のフィラメント9,9間に放電が発生し、蛍光体膜5から可視光が放射される。この通常の点灯状態時、フィラメント9からの熱によって、ガラスビード10は、異常加熱されることはなく、細管4も異常加熱されないものである。すなわち、細管4内に不純ガス放出物質12が封入されていても、通常の点灯状態に悪影響を及ぼさないものである。
【0044】
そして、蛍光ランプ1は、長時間の高周波点灯により、一方のフィラメント9の電子放射物質が消耗すると、当該フィラメント9にホットスポットが発生し、半波放電状態となり、フィラメント9が異常発熱する。さらに、当該異常発熱によりフィラメント9が溶断すると、半波放電は、フィラメント9からインナー線6のガラスビード10の支持部6aに移行し、インナー線6の当該部分が異常発熱する。その後、半波放電は、インナー線6の圧潰封止部側6bに移行し、当該圧潰封止部側6bが発熱する。この発熱により、細管4が加熱され、細管4の他端側4bの温度が急激に上昇し、その温度は、例えば約500℃となる。そして、細管4の他端側4bの外面が徐々に溶融するとともに、不純ガス放出物質12から不純ガスが徐々に放出され、細管4内の不純ガス封入圧が上昇していく。そして、細管4の他端側4bとその周囲の温度差により、細管4の他端側4bに歪みが生じて、ひび割れ、図2に示すように、クラック13が入る。このクラック13からガラスバルブ3内に細管4内の不純ガスが放出され、拡散していく。
【0045】
ガラスバルブ3内に不純ガスが拡散していくと、一対のフィラメント9,9間のランプ電圧が上昇するので、半波放電状態を維持できなくなり、半波放電が停止する。すなわち、蛍光ランプ1は消灯する。
【0046】
このように、フィラメント9やインナー線6に半波放電が発生して異常発熱すると、細管4が直ちにひび割れてクラック13ができ、不純ガス放出物質12から放出した不純ガスが細管4からガラスバルブ3内に拡散していくので、半波放電(異常放電)が早期の段階で停止するようになる。これにより、ガラスバルブ3の両端部3a,3a側に配設された口金やこの口金が装着されたソケットの樹脂材への熱損傷を極力抑制することができる。
【0047】
また、細管4は、封止した一端側4aに不純ガス放出物質12を封入したガラス管を一対の導入線2,2とともにガラスバルブ3の端部3aに圧潰封止することによって形成することができるので、容易に製造することができ、この結果、蛍光ランプ1を安価に製造することができる。
【0048】
なお、蛍光ランプ1は、インナー線6,6間にガラスビード10を具備して構成されているが、ガラスビード10を具備していなくても、フィラメント9やインナー線6の異常発熱により、細管4の他端側4bがひび割れてクラック13が入るものである。
【0049】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
【0050】
図3は、本発明の第2の実施形態を示す蛍光ランプの端部側における一部切り欠き概略正面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0051】
図3に示す蛍光ランプ14は、図1に示す蛍光ランプ1において、細管4に代えて、一対の導入線2,2の間に細管15が設けられたものである。細管15は、例えば管外径3〜5mm、肉厚0.3〜0.8mmのソーダライムガラスからなり、一端側15aが封止され他端側15bが開放されたガラス管を、一対の導入線2,2がガラスバルブ3の端部3aに圧潰封止されるときに、一端側15aおよび他端側15bが連通するように圧潰封止部11に封着して形成したものである。ガラスバルブ3の端部3aを圧潰するピンチャーは、一対の導入線2,2に対向する部分は平面状に形成され、細管15の他端側15bに対向する部分は、当該他端側15bを挿入可能な凹溝に形成されている。
【0052】
すなわち、細管15の一端側15aは、圧潰封止部11からガラスバルブ3内に突出し、他端側15bは、圧潰封止部11に封着されて、その開口16が圧潰封止部11の外面11aから幾分突出するように当該外面11a側において切断されている。なお、製造時に細管15の開口16が潰れないように、細管15内に金属製のワイヤーやセラミック繊維等を挿入してもよい。また、一端側15aは、一対のインナー線6,6に掛け渡されたガラスビード10から離間している。
【0053】
次に、本発明の第2の実施形態の作用について述べる。
【0054】
蛍光ランプ14は、寿命末期になると、半波放電状態となり、フィラメント9が異常発熱する。さらに、当該異常発熱によりフィラメント9が溶断すると、半波放電は、フィラメント9からインナー線6のガラスビード10の支持部6aに移行し、インナー線6の当該部分が異常発熱する。その後、半波放電は、インナー線6の圧潰封止部側6bに移行し、圧潰封止部側6bが発熱する。この圧潰封止部側6bの発熱により、細管15の他端側15bが加熱され、当該他端側15bの温度が急激に上昇し、細管15の外面が徐々に溶融する。
【0055】
インナー線6の異常発熱が継続されることにより、細管15は、インナー線6の圧潰封止部側6bの放電による加熱で他端側15bが加熱され、その周囲の温度差により歪みが生じ、図2に示したように、ひび割れてクラック13が入る。
【0056】
細管15の他端側15bにクラック13が入ると、他端側15bの開口16が大気に連通しているので、クラック13からガラスバルブ3内に空気が流入する。これにより、フィラメント9やインナー線6に半波放電を維持できなくなり、半波放電が停止する。すなわち、蛍光ランプ14は消灯する。
【0057】
このように、フィラメント9やインナー線6に半波放電が発生して異常発熱すると、細管15の他端側15bが直ちにひび割れてクラック13ができ、このクラック13から空気がガラスバルブ3内に流入していくので、半波放電(異常放電)が早期の段階で停止するようになる。これにより、ガラスバルブ3の両端部3a,3a側に配設された口金やこの口金が装着されたソケットの樹脂材への熱損傷を極力抑制することができる。
【0058】
また、細管15は、一端側15aが封止され他端側15bが開放されたガラス管を、一対の導入線2,2をガラスバルブ3の端部3aに圧潰封止するときに、一端側15aおよび他端側15bが連通し、かつ他端側15bが圧潰封止部11の外面11a側に位置するようにして他端側15bを圧潰封止部11に封着して形成するので、容易に製造することができ、この結果、蛍光ランプ14を安価に製造することができる。
【0059】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
【0060】
図4および図5は、本発明の第3の実施形態を示し、図4は蛍光ランプの端部側における一部切り欠き概略正面図、図5は他の蛍光ランプの端部側における一部切り欠き概略正面図である。なお、図1および図3と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0061】
図4に示す蛍光ランプ17は、図1に示す蛍光ランプ1において、細管4の一端側4aがガラスビード10に接触するように圧潰封止部11からガラスバルブ3内に突出されたものである。また、図5に示す蛍光ランプ18は、図3に示す蛍光ランプ14において、細管15の一端側15aがガラスビード10に接触するように圧潰封止部11からガラスバルブ3内に突出されたものである。
【0062】
蛍光ランプ17は、寿命末期にフィラメント9やインナー線6に半波放電(異常放電)が発生して、フィラメント9やインナー線6が異常発熱すると、その異常発熱による熱によりガラスビード10が加熱され、ガラスビード10の温度が急激に上昇する。そして、細管4の一端側4aは、ガラスビード10に接触しているので、ガラスビード10から伝熱され、ガラスビード10の急激な温度上昇に伴って迅速に温度上昇する。これにより、細管4内の不純ガス放出物質12から不純ガスが迅速に放出されるとともに、一端側4aの外面が迅速に溶融して破ける。したがって、半波放電の発生後、より早期の段階で半波放電が停止するようになり、蛍光ランプ17の口金やソケットの熱損傷を防止することができる。
【0063】
また、蛍光ランプ18は、細管15の一端側15aがガラスビード10に接触していることによりガラスビード10の急激な温度上昇に伴って迅速に温度上昇する。これにより、細管15の一端側15aの外面が迅速に溶融して破けて、ガラスバルブ3内に空気が流入する。したがって、半波放電の発生後、より早期の段階で半波放電が停止するようになる。
【0064】
なお、細管4の一端側4aおよび細管15の一端側15aは、それぞれガラスビード10に近接させるようにしてもよい。この場合であっても、細管4の一端側4aまたは細管15の一端側15aは、ガラスビード10の温度上昇に伴って、ガラスビード10から迅速に加熱される。
【0065】
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0066】
図6は、本発明の第4の実施形態を示す照明器具の一部切り欠き概略側面図である。なお、図1と同一部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0067】
図6に示す照明器具19は、図示しない天井などの造営物に埋設されるダウンライトであり、器具本体20、蛍光ランプ21および点灯装置22を有して構成されている。器具本体20は、上面側に天板23、下面側にランプソケット24を配設している。天板23の上面23aに点灯装置22を配設している。ランプソケット24には、蛍光ランプ21が取り付けられている。
【0068】
蛍光ランプ21は、例えば2本のU字形のガラスバルブ25を継ぎ部(図示しない。)で連結して図1に示す蛍光ランプ1と同様に形成されたものであり、各端部25aに取り付けられた接続ピンを有する口金26を具備している。そして、口金26の接続ピンがランプソケット24に挿入されている。
【0069】
点灯装置22は、ランプソケット24を介して口金26の接続ピンに高周波電圧を印加するように構成されている。これにより、蛍光ランプ21は、高周波点灯する。
【0070】
また、天板23には、ばね性を有する一対の支持金具27,27が取り付けられている。そして、この支持金具27,27に、蛍光ランプ21を覆うように略方物面状に形成された反射鏡28が取り付けられている。反射鏡28の下部の周囲には、外形が円状の化粧枠29が配設されている。
【0071】
また、器具本体20は、天板23から化粧枠29に至る連結金具30が配設されており、この連結金具30に器具本体20を天井などの造営物に固定する取付金具31が設けられている。
【0072】
蛍光ランプ21が点灯すると、蛍光ランプ21からの放射光が直接光および反射鏡28の内面で反射された反射光となって、反射鏡28の開口28aから外部空間に出射される。そして、蛍光ランプ21が半波放電などの異常点灯すると、蛍光ランプ21自体でかつ異常点灯の早期の段階で、蛍光ランプ21が消灯する。したがって、蛍光ランプ21の口金26やランプソケット24などの熱損傷が抑制される照明器具19を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す蛍光ランプの端部側における一部切り欠き概略正面図。
【図2】同じく、蛍光ランプの寿命末期の端部側における一部切り欠き概略正面図。
【図3】本発明の第2の実施形態を示す蛍光ランプの端部側における一部切り欠き概略正面図。
【図4】本発明の第3の実施形態を示す蛍光ランプの端部側における一部切り欠き概略正面図。
【図5】同じく、他の蛍光ランプの端部側における一部切り欠き概略正面図。
【図6】本発明の第4の実施形態を示す照明器具の一部切り欠き概略側面図。
【符号の説明】
【0074】
1,14,17,18,21…蛍光ランプ
2…導入線
3…ガラスバルブ
4,15…細管
5…蛍光体膜
19…照明器具
20…器具本体
22…点灯装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントの両端側を支持している一対の導入線と;
両端部に前記一対の導入線が封止された圧潰封止部をそれぞれ有し、両端部からそれぞれ前記一対の導入線が導出されたガラスバルブと;
前記一対の導入線の間において、一端側が封止されて前記圧潰封止部からガラスバルブ内に突出され他端側が前記圧潰封止部に溶着されているとともに、内部に不純ガスまたは不純ガス放出物質が封入されたガラスからなる細管と;
ガラスバルブの内面側に形成された蛍光体膜と;
ガラスバルブの内部に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項2】
フィラメントの両端側を支持している一対の導入線と;
両端部に前記一対の導入線が封止された圧潰封止部をそれぞれ有し、両端部からそれぞれ前記一対の導入線が導出されたガラスバルブと;
前記一対の導入線の間において、一端側が封止されて前記圧潰封止部からガラスバルブ内に突出され、他端側が開放されて前記圧潰封止部の外面側に位置され、一端側および他端側が連通するように前記圧潰封止部に封着されたガラスからなる細管と;
ガラスバルブの内面側に形成された蛍光体膜と;
ガラスバルブの内部に封入された放電媒体と;
を具備していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項3】
ガラスバルブ内には、一対の導入線に掛け渡されたガラスビードが設けられ、細管の一端側が前記ガラスビードに近接または接触していることを特徴とする請求項1または2記載の蛍光ランプ。
【請求項4】
請求項1ないし3いずれか一記載の蛍光ランプと;
この蛍光ランプを点灯させる点灯装置と;
蛍光ランプおよび点灯装置を配設している器具本体と;
を具備していることを特徴とする照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−181780(P2008−181780A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14752(P2007−14752)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【Fターム(参考)】