蛍光ランプの製造方法、蛍光ランプ用ガラス管の製造方法、および、蛍光ランプ
【課題】外周面の傷によるガラス管の破損を効果的に防止することができる蛍光ランプの製造方法を提供する。
【解決手段】ソーダガラス製のガラス管20の真直度を向上させるように前記ガラス管20を矯正するための矯正具22に、前記ガラス管20を載置し、前記ガラス管20を加熱しながら転がして矯正する矯正工程と、矯正後の前記ガラス管20の内面に蛍光体層を形成する形成工程とを含み、前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することにより前記ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行う。
【解決手段】ソーダガラス製のガラス管20の真直度を向上させるように前記ガラス管20を矯正するための矯正具22に、前記ガラス管20を載置し、前記ガラス管20を加熱しながら転がして矯正する矯正工程と、矯正後の前記ガラス管20の内面に蛍光体層を形成する形成工程とを含み、前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することにより前記ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプの製造方法、蛍光ランプ用ガラス管の製造方法、および、蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蛍光ランプは、ガラス管内に蛍光体懸濁液を塗布する塗布工程、蛍光体懸濁液を乾燥させる乾燥工程、乾燥させた蛍光体懸濁液を焼成し蛍光体層を形成する形成工程、ガラス管の両端部に電極を封止する封止工程などの工程を経て製造される(特許文献1)。
近年、蛍光ランプの小型化に伴い小径のガラス管が使用されるようになったが、ガラス管が小径になるとガラス管の僅かな曲がりによっても塗布工程で蛍光体懸濁液の塗布むらが生じてしまう。そのため、小径のガラス管を使用する場合は、塗布工程に先立って矯正工程が行われる。矯正工程は、ガラス管を矯正し真直度を向上させるための工程であって、例えば、ガラス管を、軸心が略水平となるように保持された円筒体内に挿入してその内面に載置し、加熱しながら、円筒体をその軸心回りに回転させることによって円筒体内で回転させ、真直度を向上させる。
【特許文献1】特開2000−340111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
円筒体内でガラス管を回転させると、円筒体とガラス管とがぶつかってガラス管の外周面に傷が生じてしまう。このような外周面の傷は、製造時や輸送時にガラス管が破損する最大の原因となっている。
ところで、特許文献1には、蛍光体懸濁液塗布前のガラス管を加熱しながらその管内に亜硫酸ガスおよび酸素を吹き込んで当該ガラス管の内面を亜硫酸処理し、ガラスと蛍光体との接着強度を高めることが開示されている。当該亜硫酸処理を行えば、内面に存在するナトリウムの一部が硫黄に置換されるため、ガラス管の機械的強度が向上し、多少はガラス管が破損し難くなる。しかし、破損の最大の原因である外周面の傷が生じ難くなるわけではないため、ガラス管の破損の防止に大きな効果があるとは言えない。
【0004】
本発明は、上記の課題に鑑み、ガラス管の外周面に傷が生じ難い蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ用ガラス管の製造方法を提供することを主たる目的とする。また、本発明の他の目的は、製造時や輸送時にガラス管が破損し難い蛍光ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る蛍光ランプの製造方法は、ソーダガラス製のガラス管の真直度を向上させるように前記ガラス管を矯正するための矯正具に、前記ガラス管を載置し、前記ガラス管を加熱しながら転がして矯正する矯正工程と、矯正後の前記ガラス管の内面に蛍光体層を形成する形成工程とを含み、前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することにより前記ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る蛍光ランプ用ガラス管の製造方法は、ソーダガラス製のガラス管の真直度を向上させるように前記ガラス管を矯正するための矯正具に、前記ガラス管を載置し、前記ガラス管を加熱しながら転がして矯正する矯正工程を含み、前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することによりその外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る蛍光ランプは、ソーダガラス製のガラス管の内面に蛍光体層が形成され両端に一対の電極が設けられた蛍光ランプであって、前記ガラス管の外周面には、硫酸ナトリウムが単位面積当り2ng/mm2以上付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ用ガラス管の製造方法は、矯正工程中または矯正工程前にガラス管の外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うため、矯正工程中のガラス管の外周面が硫酸ナトリウムの粒子、膜或いは層によりコーティングされたような状態となる。そのため、外周面の滑りが良くなり、矯正工程においてガラス管が矯正面にぶつかったり、ガラス管同士がぶつかったりした時に外周面に傷が生じ難い。したがって、傷によるガラス管の破損が起こり難い。
【0009】
加えて、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下でガラス管を加熱するため、外周面に存在するナトリウムの一部が硫黄に置換され前記外周面の機械的強度が向上する。これによっても傷が生じ難くなり、ガラス管が破損し難くなる。
また、前記矯正具は、軸心が略水平となるよう保持された円筒体であり、前記矯正具の内面に前記ガラス管を載置し、前記矯正具をその軸心回りに回転させることにより前記内面上で前記ガラス管を転がす場合は、ガラス管が矯正工程中に矯正具から落下し難いためガラス管および蛍光ランプの製造歩留まりが良い。
【0010】
また、前記処理は、前記矯正工程中において、前記ガラス管が載置された前記矯正具内に亜硫酸ガスおよび酸素を充填し、前記ガラス管を加熱することにより行う場合は、亜硫酸処理の為だけにガラス管を加熱する必要がなく、矯正工程でガラス管を矯正するついでに亜硫酸処理も行えるため、ランプ製造の工数を減らすことができる。
また、前記処理は、前記矯正工程前において、亜硫酸ガスおよび酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管の外周面を加熱することにより行う場合は、亜硫酸処理の為だけに加熱するため、亜硫酸処理に最適な温度でガラス管を加熱することができ、効率よく亜硫酸処理を行うことができる。
【0011】
また、前記処理は、前記矯正工程前において、酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管の外周面をバーナーで加熱しながら、当該バーナーの火口から亜硫酸ガスを前記外周面に吹きかけることにより行う場合は、バーナーにより効率良くガラス管だけを加熱することができると共に、亜硫酸ガスを必要な部分にのみ吹きかければ済むため亜硫酸ガスの使用量を抑えることもできる。
【0012】
本発明に係る蛍光ランプは、ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムが2ng/mm2以上付着しているため、前記外周面の滑りが良く、矯正工程においてガラス管の外周面に傷が生じ難い。したがって、傷によるガラス管の破損が起こり難く、製造歩留まりが良い。また、ガラス管に傷が少ないため、蛍光ランプの輸送中などにガラス管が破損し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る蛍光ランプの製造方法、蛍光ランプ用ガラス管の製造方法、および、蛍光ランプについて、図面に基づき説明する。
[蛍光ランプ]
図1は、本実施の形態に係る蛍光ランプを示す概略構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係る蛍光ランプとしての冷陰極型蛍光ランプ1は、直管状のガラス管3と、当該ガラス管3の両端に封着された冷陰極型の電極5,7とを備える。また、電極5,7により両端が封止されたガラス管3の内部には、発光物質として例えば約2mgの水銀と、放電媒体として例えばアルゴン10%、ネオン90%の混合比の希ガスが50Torr封入されている。
【0014】
ガラス管3は、全長が800mm、内径が3.0mm、厚みが0.5mmである。なお、ガラス管3の全長、内径および厚みは上記に限定されない。一般的な冷陰極蛍光ランプ1の場合、ガラス管3の全長は300〜1500mm、内径は1.4〜7.0mm、厚みは0.2〜0.6mmである。
全長が700mm以上の長尺のガラス管3や、内径が3.0mm以下かつ厚みが0.5mm以下の小径薄肉のガラス管3を使用する場合は、ガラス管3の外周面に生じた傷が原因となって当該ガラス管3が割れ易いため、本発明に係る蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ用ガラス管の製造方法が特に有効である。
【0015】
ガラス管3は、例えば軟化点が680℃のソーダガラスで作製されている。ソーダガラスには、酸化ナトリウム(Na2O)が多く含まれているため、ガラス管3の外周面にナトリウムが溶出し易い。したがって、後述する亜硫酸処理によりガラス管3の外周面に硫酸ナトリウム(Na2SO4)を生成させ易い。
また、ソーダガラスは、ホウケイ酸ガラスと比較して傷がつき易い。したがって、ガラス管の外周面に傷がつき難い本発明に係る蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ用ガラス管の製造方法が有効である。
【0016】
ガラス管3のソーダガラスは、酸化ナトリウムの含有率が5wt%〜20wt%の範囲であることが好ましい。5wt%以上であれば、暗黒始動時間が1秒以内になる確率が高くなるため、冷陰極蛍光ランプ1の暗黒始動性が向上する。20wt%を超えると長時間の使用によりガラス管3が黒化(茶褐色化)或いは白色化して、冷陰極蛍光ランプ1の輝度の低下を招いたり、ガラス管3の機械的強度が低下したりする。
【0017】
ガラス管3のソーダガラスは、水銀から放射された313nmの紫外線を遮蔽できる酸化チタン(TiO2)を含有していることが好ましい。酸化チタンの含有率は、3〜10wt%の範囲であることが好ましい。3wt%未満であると紫外線を遮蔽する効果が得られ難く、10wt%を超えるとソーダガラスがガラス化せずに溶融直後に結晶化してしまう。
【0018】
ガラス管3のソーダガラスは、自然環境保護を考慮し、鉛フリーであることが好ましい。ただし、製造過程で不純物として鉛を含んでしまう場合があるため、0.1Wt%以下といった不純物レベルで鉛を含む場合も、上記鉛フリーの範疇に入ると定義する。
電極5,7は、有底筒状の電極部5a,7aと、電極部5a,7aの底の外面に取り付けられた電極軸5b,7bとからなり、電極軸5b,7bでビーズ9,9を介してガラス管3の端部に取着されている。なお、電極部5a,7aの内面には、図示しない電子照射物質が塗布されている。
【0019】
また、ガラス管3の内面には、蛍光体層11が形成されている。この蛍光体層11は、水銀から放射された紫外線(主に254nm)を所定の可視光に変換するためのものであり、例えば、青色蛍光体がユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+] (略号:BAM−B)、緑色蛍光体がセリウム・テルビウム共付活リン酸ランタン[LaPO4:Ce3+,Tb3+] (略号:LAP)及び赤色蛍光体がユーロピウム付活酸化イットリウム[Y2O3:Eu3+](略号:YOX)からなる希土類蛍光体で形成されている。
【0020】
上記冷陰極蛍光ランプ1の使用用途として、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトユニットの光源や、コピー機、プリンタ或いはスキャナー等の読み取り光源等が挙げられる。
[蛍光ランプの製造方法]
図2は、蛍光ランプの製造工程の一部を示す工程図である。図2に示すように、上記冷陰極型蛍光ランプ1の製造工程には、直管状のガラス管等を準備する準備工程(ステップS1)、準備したガラス管を真直度向上のために矯正する矯正工程(ステップS2)、矯正したガラス管の内面に蛍光体懸濁液を塗布する塗布工程(ステップS3)、塗布した蛍光体懸濁液を乾燥させる乾燥工程(ステップS4)、乾燥した蛍光体懸濁液を焼成する焼成工程(ステップS5)、焼成後にガラス管の端部に電極を封着する封着工程(ステップS6)、更には排気工程、ベーキング工程およびエージング工程などの工程が含まれる。そして、準備工程または矯正工程では、後述する亜硫酸処理が行われる。なお、上記塗布工程、乾燥工程および焼成工程は、ガラス管の内面に蛍光体層を形成する形成工程の一部である。
【0021】
(1)矯正工程
図3は、矯正工程で用いる矯正具を説明するための図である。図3に示すように、矯正工程では、準備工程で準備したガラス管20を矯正具22で矯正し、その真直度を向上させる。
矯正具22は、円筒体であって、全長が1800mm、内径が15mm、厚みが1.5mm、内部にはガラス管20が収容可能である。なお、矯正具22の全長、内径および厚みは上記に限定されないが、少なくとも1本のガラス管20が内部に収容可能でなくてはならない。特に矯正具22の全長は、ガラス管20の端部が矯正具22からはみ出さないようにガラス管20の管長よりも長いことが好ましく、ガラス管20全体が余裕を持って収まるようにするためにはガラス管20の管長よりも50mm以上長いことが好ましい。矯正具22の全長が短過ぎると、ガラス管20の端部付近をむらなく亜硫酸処理することができず、またガラス管20の端部付近の真直度が低下するからである。
【0022】
矯正具22は、ガラス管20のソーダガラスよりも軟化点の高い材料、例えば石英ガラス(軟化点:1000℃)で形成されており、その内面は滑らかな矯正面24となっている。
矯正具22は、その軸心が略水平となるよう複数のローラ26a〜26dによって保持されている。各ローラ26a〜26dは、それぞれ図示しない回転駆動機構に連結された駆動軸28a,28bに取り付けられており、前記回転駆動機構により駆動軸28a,28bを矢印Aの方向に回転させると、それら駆動軸28a,28bに連動して、各ローラ24a〜24dが矢印Bの方向に回転する。さらに、各ローラ24a〜24dが回転することによって、矯正具22がその軸心回り矢印Cの方向に回転する。
【0023】
ガラス管20を矯正する際には、まず、矯正具22の内部に例えば4本のガラス管20を挿入し、それらガラス管20を矯正面24に載置する。筒状体22の軸心が略水平であるため矯正面24も略水平であり、当該矯正面24に載置されたガラス管20の軸心も略水平となる。ガラス管20が内部に収容された状態で矯正具22を矢印Cの方向に回転させると、矯正面28上で各ガラス管20がその軸心回り矢印Dの方向に回転し、真直度が向上するよう矯正される。
【0024】
なお、円筒内22に挿入するガラス管20の本数は4本に限られず、矯正具22の内径およびガラス管20の外径に応じて適宜効率が良い本数に調整すれば良い。
図4は、矯正工程中に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。図4に示すように、矯正具22は加熱炉30内に配置される。ガラス管20を矯正面24上で回転させ矯正する際には、加熱炉30内の温度を調整して例えばガラス管20を560℃で加熱しなければならない。なお、加熱温度は560℃に限られず、ソーダガラスの物性に応じて調整される。
【0025】
(2)塗布工程及び乾燥工程
図5は、塗布工程及び乾燥工程を説明するための図である。塗布工程は、まず、図5(a)に示すように、ガラス管20の下端開口40を蛍光体懸濁液42に浸漬させ、ガラス管20の上端開口44から管内のエアを吸引して管内を負圧にし、管内の所定位置まで蛍光体懸濁液42を吸い上げる。
【0026】
蛍光体懸濁液42は、例えば蛍光体、バインダ、結着剤および有機溶剤を混合したものが用いられる。例えば、バインダにはニトロセルロースが、結着剤にはホウ酸バリウムカルシウム等に代表される低融点ガラス粉末が、有機溶剤には酢酸ブチルがそれぞれ用いられる。
次に、エアの吸引を止め、下端開口40を蛍光体懸濁液42から引き上げ、上端開口44を開放して、図5(b)に示すように、蛍光体懸濁液42を下端開口40から排出する。これにより、ガラス管20の内面に蛍光体懸濁液42が塗布される。
【0027】
ところで、小径のガラス管20は、製造時に真直度を得ることが困難であり、曲がり易い傾向にある。図6は、ガラス管が曲がっていると蛍光体懸濁液に厚みムラが生じることを模式的に示す図である。図6に示すように、例えばガラス管20が符号Xで示す部分で曲がっていると、曲がった部分よりも下側で蛍光体懸濁液42に厚みムラが生じ、その結果蛍光体層11にも厚みムラが生じることとなるため、冷陰極蛍光ランプ1の輝度、色温度等の光特性が不安定となって商品価値が低下する。そこで、ガラス管20が小径の場合には、塗布工程以前に矯正工程を行って、ガラス管40の真直度を向上させる必要がある。
【0028】
次に、乾燥工程は、図5(c)に示すように、上端開口44から乾燥用エア46を流入させ、ガラス管20に外側から温風を当て、塗布した蛍光体懸濁液42の乾燥を促進させる。
(3)焼成工程
焼成工程では、乾燥させた蛍光体懸濁液42を焼成して、蛍光体層11を形成する。焼成工程では、図3に示した矯正工程で用いる矯正具22が使用される。
【0029】
まず、矯正具22内に、蛍光体懸濁液42が乾燥したガラス管20を挿入し、当該矯正具22内でガラス管20を回転させながら、加熱炉30の温度を上げてガラス管20が620℃になるように加熱する。このようにガラス管20を回転させながら加熱することによって蛍光体懸濁液42に熱を均一に加えることができる。
このように、焼成工程において矯正具22を使用しガラス管20を回転させる場合も、当該ガラス管20の外周面に硫酸ナトリウムが付着していれば前記外周面に傷がつき難い。なお、矯正具22を使用してガラス管20を回転させる作業は、焼成工程において必須でなく必要に応じて行えば良い。
【0030】
以上のようにして得られたガラス管20が冷陰極蛍光ランプ1のガラス管3に加工される。
(4)封着工程
封着工程では、電極5,7がガラス管3の端部に封着されると共に、この封着によりガラス管3の端部が封止される。
【0031】
封着工程では、まず、球状のビーズ9の真中にある軸方向の貫通孔に電極軸5b,7bが挿入され、ビーズ9と電極軸5b,7bとを気密状に固着したものを準備する。そして、ビーズ9と固着された電極5,7をガラス管3の所定位置に挿入し、ガラス管3の端部を、例えば、バーナーを用いて加熱し、ビーズ9の外周とガラス管3の内周とを融着させる。
【0032】
この工程でのガラス管3の端部の温度は、800〜1200℃である。なお、電極5,7の付着工程は、従来と同じ公知の技術で実施できる。
<亜硫酸処理>
次に、ガラス管の外周面に硫酸ナトリウム(Na2SO4)を生成させ付着させる亜硫酸処理について説明する。亜硫酸処理では、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下でガラス管20を加熱することによりその外周面に硫酸ナトリウムを生成させる。矯正工程中の矯正具22内に亜硫酸ガスおよび酸素を吹き込めば、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下にガラス管20が配置された状態となる。
【0033】
なお、酸素を含んだエアを吹き込むことによって、酸素を吹き込んだ状態としても良い。また、酸素を含んだエア以外のガスを吹き込んでも良く、前記ガスに亜硫酸ガスを含ませても良い。
亜硫酸処理は、具体的には、図4に示すように、矯正具22の一方の開口側に給気管32を配置し、他方の開口側に排気管34を配置して、前記給気管32から亜硫酸ガスおよびエアを矯正具22内に供給すると共に、前記排気管34から矯正具22内の亜硫酸ガスおよびエアを排気することにより行う。このように給気管32および排気管34を用いることによって、亜硫酸ガスおよびエアが矯正具22内に滞ることなく流れ、ガラス管20の外周面全体にムラなく亜硫酸ガスおよびエアを供給することができる。また、矯正具22の外に亜硫酸ガスが漏れ難くなる。
【0034】
なお、給気管32および排気管32は必ずしも用いる必要はない。例えば、給気管32から直接矯正具22内に亜硫酸ガスおよびエアを吹き込むのではなく、加熱炉30内に亜硫酸ガスおよびエアを充満させることで矯正具22内に亜硫酸ガスおよびエアが流れ込むようにしても良い。また、排気管を用いずに自然排気してもよい。
さらに、亜硫酸ガスが矯正具22の外に漏れないように矯正具22内を密封状態にしても良い。また、亜硫酸ガスを発生する熱分解性化合物を矯正具22内に投入し矯正具22内でその熱分解性化合物を加熱分解させて、亜硫酸ガスを供給しても良い。
【0035】
亜硫酸処理を行う場合は、ガラス管20を加熱する必要であるが、加熱温度はガラス管20を矯正する際の温度と同程度で良いため、特に亜硫酸処理のために加熱する必要はなく、矯正中の矯正具22内に亜硫酸ガスおよびエアを供給すれば矯正と同時に亜硫酸処理を行うことができる。加熱温度が200〜400℃の場合に亜硫酸ナトリウムが生成する。なお、矯正中はガラス管20が回転しているため、ガラス管20の外周面全体を均一に亜硫酸処理することができる。
【0036】
亜硫酸処理は、矯正工程中に行う場合に限定されず、矯正工程前に行っても良い。矯正工程前に亜硫酸処理を行って予めガラス管20の外周面に硫酸ナトリウムを付着させておけば、その後の矯正工程においてガラス管20の外周面に傷が生じることを防止することができる。
図7および図8は、矯正工程前に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。
【0037】
亜硫酸処理を矯正工程前に行う場合の一例として、亜硫酸ガスおよびエアを含む雰囲気中でガラス管の外周面を加熱することが考えられる。例えば、図7に示すように、ガラス管20を配置した処理空間内50の雰囲気中に亜硫酸ガスおよび酸素が含まれる状態で、当該ガラス管20の外周面をバーナー52a,52bで加熱することが考えられる。ガラス管20の外周面を均一に加熱するために、当該ガラス管20を図示しない治具でその軸心回りに回転させながら、バーナー52a,52bを当該ガラス管20の軸心に沿って移動させ加熱することが考えられる。
【0038】
また、亜硫酸処理を矯正工程前に行う場合の別の一例として、酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管20の外周面をバーナーで加熱しながら、当該バーナー52a,52bの火口から亜硫酸ガスを前記外周面に吹きかけることが考えられる。例えば、図8に示すように、ガラス管20を配置した処理空間内54の雰囲気中に酸素が含まれる状態で、当該ガラス管20の外周面をバーナー56a,56bで加熱し、その際にバーナー56a,56bの火口から亜硫酸ガスを噴射させ当該ガラス管20の外周面に吹きかけることが考えられる。この際にも、上記と同様に、ガラス管20を図示しない治具でその軸心回りに回転させながら、バーナー56a,56bを当該ガラス管20の軸心に沿って移動させ加熱することが考えられる。
【0039】
なお、亜硫酸処理のその他の方法としては、準備工程において管引き工程直後のまだ冷めていないガラス管の外周面に亜硫酸ガスを吹きかける方法や、加熱したガラス管に亜硫酸ガスを発生する熱分解性化合物を吹きかける方法などが考えられる。
<亜硫酸処理の効果>
ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムが付着することにより、矯正工程において当該外周面に傷が発生し難くなることを実験により確認した。具体的には、亜硫酸処理したガラス管に矯正工程を施し、当該ガラス管の外周面に傷が発生するか否かを評価した。ガラス管は、全長200mm、内径3.0mm、肉厚0.5mmで、鉛フリーのソーダガラス製のものを使用した。
【0040】
以下の(a)〜(f)に少なくとも1つ以上該当する場合に外周面に傷有りと評価し、いずれにも該当しない場合に傷無しと評価した。
(a)最大幅が0.3mm以上の傷が生じていた場合。
(b)最大幅が0.2mmを超える傷が生じており、かつ、それら傷の長さ(傷が複数ある場合はその合計の長さ)が20mm以上の場合。
(c)最大幅が0.2mmを超える傷が生じており、かつ、その傷がガラス管の周方向に1/2周以上に亘っている場合。
(d)ガラス管の周方向の傷が、管軸方向5mm以上に亘って、当該管軸方向1mm当り1本以上の密度で生じていた場合。
(e)打痕等のクラックへ進行するおそれのある傷(傷により抉れた部分の容積が1mm3以上の傷)が生じていた場合。
(f)最大深さが0.3mm以上の傷が生じていた場合。
【0041】
外周面の傷の発生率は、矯正工程を施した全ガラス管の本数に対する、傷が生じたガラス管の本数である。
図9は、硫酸ナトリウムの付着量と傷の発生率との関係を示す図である。通常、亜硫酸処理を施していないガラス管にも、その外周面に硫酸ナトリウムが1.5ng/mm2程度付着しているが、図9に示すように、1.5ng/mm2程度の付着量では傷の発生率は100%である。しかし、ガラス管の外周面に単位面積当り4ng/mm2以上の硫酸ナトリウムが付着している場合は、外周面の傷の発生率が40%にまで低下した。また、単位面積当り8ng/mm2以上の硫酸ナトリウムが付着している場合は、外周面に傷が生じなかった。
【0042】
図9からわかるように、亜硫酸ナトリウムが付着すると外周面の傷の発生率が低下する。すなわち、亜硫酸処理を施せば外周面の傷の発生率が低下する。
亜硫酸処理を施していないガラス管の外周面には、誤差を見積もっても、2.0ng/mm2以上亜硫酸ナトリウムが付着していることはないと考えられる。したがって、外周面に2ng/mm2以上の亜硫酸ナトリウムが付着しているガラス管は、本発明に係る亜硫酸処理が施されたガラス管であると推定される。そして、外周面に2ng/mm2以上の亜硫酸ナトリウムが付着しているガラス管は、外周面の傷の発生率が低い。
【0043】
[その他]
<矯正工程の加熱条件について>
矯正工程の加熱は、ソーダガラスに酸化チタンが含まれる場合、酸化チタンの結晶核が生成される温度より低い温度条件で行えば良い。矯正工程の最適な温度条件は、ガラス管の矯正度と加熱温度との関係から求めた。
【0044】
図10は、ガラス管の矯正度の測定を説明する図である。図10に示すように、ガラス管20の矯正度の測定は、ガラス管20が、その軸心を回転軸として回転可能な状態で、その両端で支持され、ガラス管20を回転させたときの、ガラス管20の中央部外周における変位(以下、この差を「曲がり」ともいう。)、つまり、図中の「Y」を測定し、このYの数値の大小で判定する。
【0045】
矯正工程においてガラス管20を加熱する時間を一定にして、温度を変化させたときのガラス管20の矯正度は、ガラス管20の温度GTを、480〜610℃の範囲、好ましくは、520〜580℃の範囲内にすると、曲がりの少ないガラス管20に矯正されることが分かった。なお、本実施の形態では、矯正工程におけるガラス管20の温度GTは、560℃になるように設定されている。
【0046】
このガラス管の温度GTの範囲は、ガラス管20のガラス転移点T(実施の形態では、510℃である。なお、このガラス点移転Tは、ガラス管の製造ロットで、490〜510℃の範囲で変化する。従って、前記510℃は、製造時の目標値である。)を用いてガラス管の温度GT(℃)を表すと、以下の式になる。
T−30 ≦ GT ≦ T+100
なお、この範囲(480〜610℃)での、ガラス材料の粘度は、1011〜1014dPa・secとなる。
【0047】
上記冷陰極蛍光ランプ1の場合、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトユニットの光源として利用されている。液晶ディスプレイ装置の表示画面は、近年大型化しており、これに伴って、全長の長いランプ(例えば、700mm以上)が用いられている。
ところが、長いランプを従来の方法で製造すると、ランプの輝度むらが大きくなる傾向にあった。この原因は、ランプを構成するガラス管の曲がりが大きく(矯正工程での処理は従来の方法で実施している。)、この曲がりに起因してガラス管の内面に形成される蛍光体層の厚みがばらついたためと考えられている。なお、ガラス管の曲がりが、0.2mm以上になると、ガラス管の内面に形成される蛍光体層の厚みむらが大きくなる。
【0048】
しかしながら、ガラス管の全長が700mm以上のものであっても、矯正工程でのガラス管の温度を560℃にすると、その曲がりを0.2mm未満にできる。つまり、ガラス管の温度を560℃になるようにして矯正工程での処理を行うと、ランプの端部に青濁部ができるのを抑制できると共に、ガラス管の曲がりを効率良く矯正できる。
<青濁部について>
上述したように、ガラス管のソーダガラスは、水銀から放射された313nmの紫外線を遮蔽できる酸化チタン(TiO2)を含有していることが好ましい。しかしながら、ソーダガラスに酸化チタンが含有されていると、ガラス管の端部近くが青く濁る(この部分を「青濁部」という。)。
【0049】
青濁部は、酸化チタンが結晶化したものであり、その発生は、まず、ガラスの温度が600℃前後で、やがて青濁部になる酸化チタンである結晶の結晶核が生成(600℃前後で結晶核が生成されるピークがある。)し、この結晶核はガラスの温度が990℃前後で成長(990℃前後で結晶核が成長するピークがある。)して、それが青濁部になると考えられる。
【0050】
蛍光ランプの製造においては、矯正工程と焼成工程との両工程中におけるガラス管の温度は例えば520〜580℃であり、その後の封着工程でのガラス管の端部及びその周辺の温度は例えば800〜1200℃である。
以上のことから、蛍光ランプを従来の方法で製造した場合の青濁部の発生メカニズムは、以下であると考えられる。
【0051】
まず、矯正工程及び乾燥工程においてガラス管が520〜580℃に加熱されてガラス管全体に酸化チタンの結晶核が生成する(この状態は目視できない。)。そして、このあと行われる封着工程においてガラス管の端部及びその周辺が800〜1200℃に加熱され、この加熱されたガラス管の端部の周辺部に存在する結晶核が成長して青濁部になる。
ここで、ガラス管の端部よりも中央部側に青濁部が発生するのは、封着工程におけるガラス管の端部の温度が、上記990℃よりも高い温度、例えば、1200℃近くになり、端部よりも中央部側に移った位置では、前記端部よりも温度が低く、結晶核が成長するピークである990℃前後になるためと考えられる。
【0052】
青濁部の発生を抑えるには、矯正工程及び焼成工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くし、封着工程におけるガラス管の端部(その周辺も含む)の処理時の温度を結晶核の成長する温度より低くして処理することが好ましい。
一方、焼成工程の加熱条件は、蛍光体層を形成するために用いられる懸濁液に合わせて決定しており、同じ懸濁液を用いる限り、焼成工程の加熱条件を変更するのは容易ではない。また、封着工程では、電極をガラス管の端部に封着する際、ガラス管の端部を溶融させる必要があり、現状の加熱条件の温度を下げるのは難しい。これに対し、矯正工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くするのは比較的容易である。
【0053】
青濁部の抑制の確認試験を行うために、矯正工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くし蛍光ランプの製造を行った結果、外観上問題となるような青濁部が発生するようなことはなかった。
確認試験は、100本の蛍光ランプを製造して青濁部の発生率を調査した。調査結果は、上述した方法での発生率は、0%であり、従来の方法での発生率は、100%であった。この結果から、矯正工程において、ガラス管の加熱温度を下げて処理することは、青濁部の発生抑制に有効であることが分かる。
【0054】
[変形例]
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限られないことは言うまでもなく、例えば、以下のような形態とすることも可能である。
<蛍光ランプの変形例>
(1)ランプの種類
上記実施の形態で説明した本発明に係る蛍光ランプは、ガラス管内に冷陰極型の電極を備えた冷陰極型蛍光ランプであったが、勿論、冷陰極型の電極の代わりに熱陰極型の電極を用いた熱陰極型蛍光ランプでも良い。なお、熱陰極型蛍光ランプを用いたものとしては、一般用照明用の蛍光ランプ、例えば、コンパクト型蛍光ランプ、電球形蛍光ランプ等がある。
【0055】
また、本発明は、他の蛍光ランプにも適用できる。他の蛍光ランプとして、外部電極型蛍光ランプがあり、以下、当該外部電極型蛍光ランプについて説明する。
図11は、外部電極型蛍光ランプの概略構成を示す平面断面図である。外部電極型蛍光ランプ61は、図11に示すように、両端が封止されたガラス管63と、当該ガラス管63の両端外周に設けられた電極65,67とを備え、誘電体バリア放電を利用したものであり、例えば、バックライトユニットの光源として用いられる。
【0056】
前記両端が封止されたガラス管63の内部には、冷陰極型蛍光ランプ1と同様に、水銀や緩衝ガスである希ガス(例えば、アルゴン、ネオン)等の放電媒体が所定の封入圧で封入されている。また、ガラス管63の内面には、実施の形態と同様に、蛍光体層69が形成されている。
このガラス管63には、例えば、鉛フリーのソーダガラスが用いられ、実施の形態と同様に、313nmの紫外線を遮蔽できる酸化チタンが、例えば、3〜10wt%の範囲、例えば、4wt%添加されている。なお、酸化チタンの含有量が、10wt%を越えると、ガラス化せずに溶融直後に結晶化してしまう。
【0057】
電極65,67は、例えば、アルミニウムの金属箔からなり、シリコン樹脂に金属粉体を混合した導電性粘着剤によって、ガラス管の外周を覆うように貼着されている。導電性粘着剤としては、シリコン樹脂の代わりにフッ素樹脂、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂等を用いても良いし、電極として、例えば、透明電極である酸化マグネシウム(MgO)を用いても良い。透明電極を利用する場合、従来の製造方法では、ガラス管の端部近くに発生した青濁部が目立つこともあるが、矯正工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くすると、青濁部の発生を抑えることができる。
【0058】
また、金属箔を導電性粘着剤でガラス管に貼着する代わりに、銀ペーストをガラス管の電極形成部分の全周に塗布することによって電極を形成しても良い。さらに、電極65,67の形状は、円筒状をしているが、例えば、ガラス管の端部を覆うキャップ状をしていても良い。
外部電極型蛍光ランプ61は、以下の工程をその順で行うことで製造される。つまり、直管状のガラス管を準備する準備工程、準備したガラス管の曲がりを矯正する矯正工程、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程、塗布された懸濁液を乾燥する乾燥工程、乾燥した懸濁液を焼成する焼成工程、焼成後のガラス管の端部を封止する封止工程、封止されたガラス管の両端に電極を装着する装着工程等を経て製造される。
【0059】
上記矯正工程も、実施の形態と同様に、ガラス管の温度が560℃になるように加熱炉内の温度を設定した状態で、円筒体の矯正面に載置され行われる。
外部電極蛍光ランプに適用した場合には、ガラス管がソーダガラス製である関係上、バックライトユニットの光源として特に要求される暗黒始動性が改善される。すなわち、ソーダガラスは、酸化ナトリウム(Na2O)を多く含むので、ナトリウム(Na)成分が時間の経過と共にガラス管の内面に溶出する。ナトリウムは電気陰性度が低いため、(保護膜の形成されていない)ガラス管の端部の内面に溶出したナトリウムが、暗黒始動性の向上に寄与する。
【0060】
また、本発明は、内部電極として熱陰極を有する熱陰極蛍光ランプにも適用可能である。
(2)ランプの形状
実施の形態における蛍光ランプは、直管形状をしていたが、本発明に係る蛍光ランプの形状は特に限定するものでなく、例えば、「U」形状、「V」形状、「W」形状をしていても良いし、さらには、「U」形状のガラス管を複数本(例えば、3本)連結した形状等をしていても良い。また、蛍光ランプは、断面が円形に限定されず、例えば楕円形、長穴円形等の扁平形蛍光ランプであってもよい。
【0061】
なお、蛍光ランプの形状を、例えば、「U」形状にする場合は、直管状のガラス管を「U」形状に変形する変形工程を、蛍光体層を形成した後、或いは電極を端部に設けた後に行えば実施できる。また、扁平形蛍光ランプは、断面が円形の蛍光ランプを一旦作製した後、ガラス管を扁平させるなどして実施できる。
(3)紫外線を遮蔽する金属酸化物
実施の形態では、紫外線を遮蔽する金属酸化物として酸化チタンを用いて説明したが、他の金属酸化物であっても良い。なお、313nmの紫外線を遮蔽する必要があり、このような金属酸化物としては、酸化セリウム(CeO2)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)等がある。但し、青濁部の発生を抑制については、これらの金属酸化物における結晶核の生成、成長の促進する温度が、酸化チタンと異なるので、実験等を行うことで、矯正工程、焼成工程、封止工程等の加熱条件を決定する必要がある。
【0062】
(4)保護膜
ガラス管の内面には、保護膜が形成されていても良い。この場合、保護膜に重ねて蛍光体層が形成される。保護膜は、例えばシリカ(SiO2)からなる。保護膜は、ガラス管の成分の1つであるナトリウム(Na)が放電空間へと溶出するのをブロックし、当該ナトリウムと水銀とが反応することによる水銀の消耗を防止する。保護膜はアルミナ(Al2O3)で形成しても構わない。
【0063】
(5)蛍光体層
蛍光体層の構成は上記の構成に限定されず、例えば、以下のような変形例が考えられる。
(5−1)紫外線吸収について
例えば、近年、液晶カラーテレビの大型化に伴って、バックライトユニットの開口を塞ぐ拡散板に寸法安定性の良いポリカーボネートが使用されるようになっている。このポリカーボネートは、水銀が発する313(nm)の波長の紫外線により劣化しやすい。このような場合には、波長313(nm)の紫外線を吸収する蛍光体を利用すると良い。なお、313(nm)の紫外線を吸収する蛍光体としては、以下のものがある。
【0064】
(a)青色
ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1−x−ySrxEuyMg1−zMnzAl10O17]又は[Ba1−x−ySrxEuyMg2−zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0≦z<0.1なる条件を満たす数であるであることが好ましい。
【0065】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+] (略号:BAM−B)や、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+](略号:SBAM−B)等がある。
【0066】
(b)緑色
・マンガン不活マグネシウムガレート[MgGa2O4:Mn2+](略号:MGM)
・マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al11O19:Mn2+](略号:CMZ)
・テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+](略号:CAT)
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1−x−ySrxEuyMg1−zMnzAl10O17]又は[Ba1−x−ySrxEuyMg2−zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0.1≦z≦0.6なる条件を満たす数であり、zは0.4≦x≦0.5であることが好ましい。
【0067】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:BAM−G)や、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:SBAM−G)等がある。
【0068】
(c)赤色
・ユーロピウム付活リン・バナジン酸イットリウム[Y(P,V)O4:Eu3+](略号:YPV)
・ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Eu3+](略号:YVO)
・ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド[Y2O2S:Eu3+](略号:YOS)
・ マンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム[3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+](略号:MFG)
・ジスプロシウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Dy3+](赤と緑の2成分発光蛍光体であり、略号:YDS)
なお、一種類の発光色に対して、異なる化合物の蛍光体を混合して用いても良い。例えば、青色にBAM−B(313nmを吸収する。)のみ、緑色にセリウム・テルビウム共付活リン酸ランタン[LaPO4:Ce3+,Tb3+](略号:LAP)(313nmを吸収しない。)とBAM−G(313nmを吸収する。)、赤色にユーロピウム付活酸化イットリウム[Y2O3:Eu3+](略号:YOX)(313nmを吸収しない。)とYVO(313nmを吸収する。)の蛍光体を用いても良い。このような場合は、前述のように波長313(nm)を吸収する蛍光体が、総重量組成比率で50%より大きくなるように調整することで、紫外線がガラス管外に漏れ出ることをほとんど防止できる。したがって、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を蛍光体層に含む場合には、上記のバックライトユニットの開口を塞ぐポリカーボネート(PC)からなる拡散板等の紫外線による劣化が抑制され、バックライトユニットとしての特性を長時間維持することができる。
【0069】
ここで、「313(nm)の紫外線を吸収する」とは、254(nm)付近の励起波長スペクトル(励起波長スペクトルとは、蛍光体を波長変化させながら励起発光させ、励起波長と発光強度をプロットしたものである。)の強度を100(%)としたときに、313(nm)の励起波長スペクトルの強度が80(%)以上のものと定義する。すなわち、313(nm)の紫外線を吸収する蛍光体とは、313(nm)の紫外線を吸収して可視光に変換できる蛍光体である。
【0070】
(5−2)高色再現について
液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極蛍光ランプや外部電極蛍光ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0071】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体を用いることで、実施の形態での蛍光体を用いる場合よりも、色度範囲の拡大を図ることができる。具体的には、CIE1931色度図において、高色再現用の当該蛍光体の色度座標値が、実施の形態で使用した3つの蛍光体の色度座標値を結んでできる三角形を含んで色再現範囲を広げる座標に位置する。
【0072】
(a)青色
・ユーロピウム付活ストロンチウム・クロロアパタイト[Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.153、y=0.030
上記以外に、ユーロピウム付活ストロンチウム・カルシウム・バリウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SBCA)も使用でき、上記波長313(nm)の紫外線も吸収できるSBAM−Bも高色再現用に使用できる。
【0073】
(b)緑色
・BAM−G、色度座標:x=0.136、y=0.572
・CMZ、色度座標:x=0.164、y=0.722
・CAT、色度座標:x=0.284、y=0.635
・テルビウム・マンガン共付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+,Mn2+](略号:CAM)、色度座標:x=0.256、y=0.657
・マンガン付活ジンクリリケート[Zn2SiO4:Mn2+](略号:ZSM)、色度座標:x=0.248、y=0.700
なお、これらは上述したように、波長313(nm)の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、MGMも高色再現用に使用することもできる。
【0074】
(c)赤色
・YOS、色度座標:x=0.658、y=0.330
・YVO、色度座標:x=0.661、y=0.328
・MFG、色度座標:x=0.708、y=0.288
なお、これらは上述したように、波長313(nm)の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、YPV、YDSも高色再現用に使用することもできる。
【0075】
また、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体の粉体のみで測定した代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体の粉体が示す色度座標値は、上掲した値と若干異なる場合があり得る。参考として上記実施の形態1の各蛍光体の粉体の色度座標値は、YOX(x=0.643、y=0.348)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM−B(x=0.148、y=0,055)で構成されている。
【0076】
さらに、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体は各波長につき1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
ここで、上記の高色再現用の蛍光体粒子を用いて蛍光体層を形成した場合について説明する。ここでの評価は、CIE1931色度図内においてNTSC規格の3原色の色度座標値を結ぶNTSC三角形(NTSCtriangle)の面積を基準とした、高色再現用の蛍光体を用いた場合の3つの色度座標値を結んできる三角形の面積の比(以下、NTSC比という。)で行なう。
【0077】
例えば、青色としてBAM−B、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例1)NTSC比が92(%)となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例2)NTSC比が100(%)となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYOXを用いると(例3)、NTSC比が95(%)となり、例1及び2に比べて輝度を10(%)向上させることができる。
【0078】
なお、ここでの評価に用いた色度座標値は、ランプ等が組み込まれた液晶表示装置とした状態で測定したものである。
<製造方法の変形例>
(1)矯正工程
矯正工程は、真直度を向上させる矯正をするための矯正具にソーダガラス製のガラス管を載置し、当該ガラス管を加熱しながら転がして矯正する工程であれば良く、例えば、以下のようにして矯正することが考えられる。
【0079】
図12は、変形例に係る橋正工程を示す槻略図である。図12に示すように、変形例に係る矯正工程では、加熱炉70内に配置された一対のローラー72、74が矯正具である。
ローラー72、74は、その軸心が略水平かつ互いに平行になるよう配置されている。ガラス管20を、ローラー72、74の外周面76,78上に、ガラス管20の軸心とローラー72,74の軸心とが平行になるよう載置すると、ガラス管20の外周面が両方の外周面76,78に接触した状態となる。
【0080】
この状態で、加熱炉70内の温度を例えば560℃程度にし、ローラー72、74を図示しない駆動機構により同方向、例えば矢印Eの方向に回転させれば、ガラス管20が矯正面76,78上で矢印Fの方向に回転する。これによりガラス管20の真直度を向上させる矯正を行うことができる。なお、ガラス管20の全長、内径、厚み或いは材質等に応じて、加熱炉70内の温度、ローラー72、74の回転速度等を適宜調整することが好ましい。
【0081】
矯正工程の変形例としては、上記以外に例えば、ガラス管を転がすための矯正面を有する矯正具の当該面上にガラス管を載置し、前記矯正具をガラス管の管軸と直交する方向に揺動させることによって、前記矯正面上でガラス管を揺動させながら転がして、真直度が向上するように矯正することが考えられる。
矯正面は、ガラス管を転がすことができるのであれば、平坦であっても湾曲していても良い。矯正面は、湾曲させるのであれば、転がした際にガラス管が矯正面から落下しないように、前記矯正面の揺動方向両側が上方に反ったもの、例えば載置したガラス管の管軸と直交する面で切断したときの矯正面の断面が、上部が開放した円弧形状、或いは「U」形状のものであることが好ましい。
【0082】
(2)矯正工程における加熱温度
実施の形態では、青濁部となる結晶核の生成を抑制するために、矯正工程でのガラス管の温度を560℃に設定して行ったが、上記でも説明したように、焼成工程でのガラス管の温度或いは封止工程でのガラス管の端部(周辺含む)の温度を低くすることでも同様の効果が得られると考えられる。当然、矯正工程及び焼成工程で両工程のガラス管の温度が結晶核の生成が行われるピーク温度より低くなるようにし、さらに、封止工程でガラス管の端部及びその周辺の温度が結晶核の成長が行われるピーク温度より低くなるようにして各処理を行っても良い。
【0083】
ただ、上述したように、焼成工程の加熱条件を変更する場合には、懸濁液の成分を調整したり、使用する溶媒等を変更したりする必要がある。
また、封止工程での加熱条件を変更する場合には、封止方法を検討する必要が生じる。なお、封止工程を、例えば、セメント等を用いて封止すれば、加熱する必要がなく、青濁部を抑制することができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る蛍光ランプの製造方法は、ガラス管の破損の少ない蛍光ランプを製造するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施の形態に係る蛍光ランプを示す概略構成図である。
【図2】蛍光ランプの製造工程の一部を示す工程図である。
【図3】矯正工程で用いる矯正具を説明するための図である。
【図4】矯正工程中に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。
【図5】塗布工程及び乾燥工程を説明するための図である。
【図6】ガラス管が曲がっていると蛍光体懸濁液に厚みムラが生じることを模式的に示す図である。
【図7】矯正工程前に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。
【図8】矯正工程前に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。
【図9】硫酸ナトリウムの付着量と傷の発生率との関係を示す図である。
【図10】ガラス管の矯正度の測定を説明する図である。
【図11】外部電極型蛍光ランプの概略構成を示す平面断面図である。
【図12】変形例に係る橋正工程を示す槻略図である。
【符号の説明】
【0086】
1,61 蛍光ランプ
5,7,65,67 電極
11,69 蛍光体層
20 ガラス管
22 矯正具
24 内面
52a,52b,56a,56b バーナー
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光ランプの製造方法、蛍光ランプ用ガラス管の製造方法、および、蛍光ランプに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、蛍光ランプは、ガラス管内に蛍光体懸濁液を塗布する塗布工程、蛍光体懸濁液を乾燥させる乾燥工程、乾燥させた蛍光体懸濁液を焼成し蛍光体層を形成する形成工程、ガラス管の両端部に電極を封止する封止工程などの工程を経て製造される(特許文献1)。
近年、蛍光ランプの小型化に伴い小径のガラス管が使用されるようになったが、ガラス管が小径になるとガラス管の僅かな曲がりによっても塗布工程で蛍光体懸濁液の塗布むらが生じてしまう。そのため、小径のガラス管を使用する場合は、塗布工程に先立って矯正工程が行われる。矯正工程は、ガラス管を矯正し真直度を向上させるための工程であって、例えば、ガラス管を、軸心が略水平となるように保持された円筒体内に挿入してその内面に載置し、加熱しながら、円筒体をその軸心回りに回転させることによって円筒体内で回転させ、真直度を向上させる。
【特許文献1】特開2000−340111号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
円筒体内でガラス管を回転させると、円筒体とガラス管とがぶつかってガラス管の外周面に傷が生じてしまう。このような外周面の傷は、製造時や輸送時にガラス管が破損する最大の原因となっている。
ところで、特許文献1には、蛍光体懸濁液塗布前のガラス管を加熱しながらその管内に亜硫酸ガスおよび酸素を吹き込んで当該ガラス管の内面を亜硫酸処理し、ガラスと蛍光体との接着強度を高めることが開示されている。当該亜硫酸処理を行えば、内面に存在するナトリウムの一部が硫黄に置換されるため、ガラス管の機械的強度が向上し、多少はガラス管が破損し難くなる。しかし、破損の最大の原因である外周面の傷が生じ難くなるわけではないため、ガラス管の破損の防止に大きな効果があるとは言えない。
【0004】
本発明は、上記の課題に鑑み、ガラス管の外周面に傷が生じ難い蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ用ガラス管の製造方法を提供することを主たる目的とする。また、本発明の他の目的は、製造時や輸送時にガラス管が破損し難い蛍光ランプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明に係る蛍光ランプの製造方法は、ソーダガラス製のガラス管の真直度を向上させるように前記ガラス管を矯正するための矯正具に、前記ガラス管を載置し、前記ガラス管を加熱しながら転がして矯正する矯正工程と、矯正後の前記ガラス管の内面に蛍光体層を形成する形成工程とを含み、前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することにより前記ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うことを特徴とする。
【0006】
また、本発明に係る蛍光ランプ用ガラス管の製造方法は、ソーダガラス製のガラス管の真直度を向上させるように前記ガラス管を矯正するための矯正具に、前記ガラス管を載置し、前記ガラス管を加熱しながら転がして矯正する矯正工程を含み、前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することによりその外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る蛍光ランプは、ソーダガラス製のガラス管の内面に蛍光体層が形成され両端に一対の電極が設けられた蛍光ランプであって、前記ガラス管の外周面には、硫酸ナトリウムが単位面積当り2ng/mm2以上付着していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ用ガラス管の製造方法は、矯正工程中または矯正工程前にガラス管の外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うため、矯正工程中のガラス管の外周面が硫酸ナトリウムの粒子、膜或いは層によりコーティングされたような状態となる。そのため、外周面の滑りが良くなり、矯正工程においてガラス管が矯正面にぶつかったり、ガラス管同士がぶつかったりした時に外周面に傷が生じ難い。したがって、傷によるガラス管の破損が起こり難い。
【0009】
加えて、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下でガラス管を加熱するため、外周面に存在するナトリウムの一部が硫黄に置換され前記外周面の機械的強度が向上する。これによっても傷が生じ難くなり、ガラス管が破損し難くなる。
また、前記矯正具は、軸心が略水平となるよう保持された円筒体であり、前記矯正具の内面に前記ガラス管を載置し、前記矯正具をその軸心回りに回転させることにより前記内面上で前記ガラス管を転がす場合は、ガラス管が矯正工程中に矯正具から落下し難いためガラス管および蛍光ランプの製造歩留まりが良い。
【0010】
また、前記処理は、前記矯正工程中において、前記ガラス管が載置された前記矯正具内に亜硫酸ガスおよび酸素を充填し、前記ガラス管を加熱することにより行う場合は、亜硫酸処理の為だけにガラス管を加熱する必要がなく、矯正工程でガラス管を矯正するついでに亜硫酸処理も行えるため、ランプ製造の工数を減らすことができる。
また、前記処理は、前記矯正工程前において、亜硫酸ガスおよび酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管の外周面を加熱することにより行う場合は、亜硫酸処理の為だけに加熱するため、亜硫酸処理に最適な温度でガラス管を加熱することができ、効率よく亜硫酸処理を行うことができる。
【0011】
また、前記処理は、前記矯正工程前において、酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管の外周面をバーナーで加熱しながら、当該バーナーの火口から亜硫酸ガスを前記外周面に吹きかけることにより行う場合は、バーナーにより効率良くガラス管だけを加熱することができると共に、亜硫酸ガスを必要な部分にのみ吹きかければ済むため亜硫酸ガスの使用量を抑えることもできる。
【0012】
本発明に係る蛍光ランプは、ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムが2ng/mm2以上付着しているため、前記外周面の滑りが良く、矯正工程においてガラス管の外周面に傷が生じ難い。したがって、傷によるガラス管の破損が起こり難く、製造歩留まりが良い。また、ガラス管に傷が少ないため、蛍光ランプの輸送中などにガラス管が破損し難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る蛍光ランプの製造方法、蛍光ランプ用ガラス管の製造方法、および、蛍光ランプについて、図面に基づき説明する。
[蛍光ランプ]
図1は、本実施の形態に係る蛍光ランプを示す概略構成図である。図1に示すように、本実施の形態に係る蛍光ランプとしての冷陰極型蛍光ランプ1は、直管状のガラス管3と、当該ガラス管3の両端に封着された冷陰極型の電極5,7とを備える。また、電極5,7により両端が封止されたガラス管3の内部には、発光物質として例えば約2mgの水銀と、放電媒体として例えばアルゴン10%、ネオン90%の混合比の希ガスが50Torr封入されている。
【0014】
ガラス管3は、全長が800mm、内径が3.0mm、厚みが0.5mmである。なお、ガラス管3の全長、内径および厚みは上記に限定されない。一般的な冷陰極蛍光ランプ1の場合、ガラス管3の全長は300〜1500mm、内径は1.4〜7.0mm、厚みは0.2〜0.6mmである。
全長が700mm以上の長尺のガラス管3や、内径が3.0mm以下かつ厚みが0.5mm以下の小径薄肉のガラス管3を使用する場合は、ガラス管3の外周面に生じた傷が原因となって当該ガラス管3が割れ易いため、本発明に係る蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ用ガラス管の製造方法が特に有効である。
【0015】
ガラス管3は、例えば軟化点が680℃のソーダガラスで作製されている。ソーダガラスには、酸化ナトリウム(Na2O)が多く含まれているため、ガラス管3の外周面にナトリウムが溶出し易い。したがって、後述する亜硫酸処理によりガラス管3の外周面に硫酸ナトリウム(Na2SO4)を生成させ易い。
また、ソーダガラスは、ホウケイ酸ガラスと比較して傷がつき易い。したがって、ガラス管の外周面に傷がつき難い本発明に係る蛍光ランプの製造方法および蛍光ランプ用ガラス管の製造方法が有効である。
【0016】
ガラス管3のソーダガラスは、酸化ナトリウムの含有率が5wt%〜20wt%の範囲であることが好ましい。5wt%以上であれば、暗黒始動時間が1秒以内になる確率が高くなるため、冷陰極蛍光ランプ1の暗黒始動性が向上する。20wt%を超えると長時間の使用によりガラス管3が黒化(茶褐色化)或いは白色化して、冷陰極蛍光ランプ1の輝度の低下を招いたり、ガラス管3の機械的強度が低下したりする。
【0017】
ガラス管3のソーダガラスは、水銀から放射された313nmの紫外線を遮蔽できる酸化チタン(TiO2)を含有していることが好ましい。酸化チタンの含有率は、3〜10wt%の範囲であることが好ましい。3wt%未満であると紫外線を遮蔽する効果が得られ難く、10wt%を超えるとソーダガラスがガラス化せずに溶融直後に結晶化してしまう。
【0018】
ガラス管3のソーダガラスは、自然環境保護を考慮し、鉛フリーであることが好ましい。ただし、製造過程で不純物として鉛を含んでしまう場合があるため、0.1Wt%以下といった不純物レベルで鉛を含む場合も、上記鉛フリーの範疇に入ると定義する。
電極5,7は、有底筒状の電極部5a,7aと、電極部5a,7aの底の外面に取り付けられた電極軸5b,7bとからなり、電極軸5b,7bでビーズ9,9を介してガラス管3の端部に取着されている。なお、電極部5a,7aの内面には、図示しない電子照射物質が塗布されている。
【0019】
また、ガラス管3の内面には、蛍光体層11が形成されている。この蛍光体層11は、水銀から放射された紫外線(主に254nm)を所定の可視光に変換するためのものであり、例えば、青色蛍光体がユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+] (略号:BAM−B)、緑色蛍光体がセリウム・テルビウム共付活リン酸ランタン[LaPO4:Ce3+,Tb3+] (略号:LAP)及び赤色蛍光体がユーロピウム付活酸化イットリウム[Y2O3:Eu3+](略号:YOX)からなる希土類蛍光体で形成されている。
【0020】
上記冷陰極蛍光ランプ1の使用用途として、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトユニットの光源や、コピー機、プリンタ或いはスキャナー等の読み取り光源等が挙げられる。
[蛍光ランプの製造方法]
図2は、蛍光ランプの製造工程の一部を示す工程図である。図2に示すように、上記冷陰極型蛍光ランプ1の製造工程には、直管状のガラス管等を準備する準備工程(ステップS1)、準備したガラス管を真直度向上のために矯正する矯正工程(ステップS2)、矯正したガラス管の内面に蛍光体懸濁液を塗布する塗布工程(ステップS3)、塗布した蛍光体懸濁液を乾燥させる乾燥工程(ステップS4)、乾燥した蛍光体懸濁液を焼成する焼成工程(ステップS5)、焼成後にガラス管の端部に電極を封着する封着工程(ステップS6)、更には排気工程、ベーキング工程およびエージング工程などの工程が含まれる。そして、準備工程または矯正工程では、後述する亜硫酸処理が行われる。なお、上記塗布工程、乾燥工程および焼成工程は、ガラス管の内面に蛍光体層を形成する形成工程の一部である。
【0021】
(1)矯正工程
図3は、矯正工程で用いる矯正具を説明するための図である。図3に示すように、矯正工程では、準備工程で準備したガラス管20を矯正具22で矯正し、その真直度を向上させる。
矯正具22は、円筒体であって、全長が1800mm、内径が15mm、厚みが1.5mm、内部にはガラス管20が収容可能である。なお、矯正具22の全長、内径および厚みは上記に限定されないが、少なくとも1本のガラス管20が内部に収容可能でなくてはならない。特に矯正具22の全長は、ガラス管20の端部が矯正具22からはみ出さないようにガラス管20の管長よりも長いことが好ましく、ガラス管20全体が余裕を持って収まるようにするためにはガラス管20の管長よりも50mm以上長いことが好ましい。矯正具22の全長が短過ぎると、ガラス管20の端部付近をむらなく亜硫酸処理することができず、またガラス管20の端部付近の真直度が低下するからである。
【0022】
矯正具22は、ガラス管20のソーダガラスよりも軟化点の高い材料、例えば石英ガラス(軟化点:1000℃)で形成されており、その内面は滑らかな矯正面24となっている。
矯正具22は、その軸心が略水平となるよう複数のローラ26a〜26dによって保持されている。各ローラ26a〜26dは、それぞれ図示しない回転駆動機構に連結された駆動軸28a,28bに取り付けられており、前記回転駆動機構により駆動軸28a,28bを矢印Aの方向に回転させると、それら駆動軸28a,28bに連動して、各ローラ24a〜24dが矢印Bの方向に回転する。さらに、各ローラ24a〜24dが回転することによって、矯正具22がその軸心回り矢印Cの方向に回転する。
【0023】
ガラス管20を矯正する際には、まず、矯正具22の内部に例えば4本のガラス管20を挿入し、それらガラス管20を矯正面24に載置する。筒状体22の軸心が略水平であるため矯正面24も略水平であり、当該矯正面24に載置されたガラス管20の軸心も略水平となる。ガラス管20が内部に収容された状態で矯正具22を矢印Cの方向に回転させると、矯正面28上で各ガラス管20がその軸心回り矢印Dの方向に回転し、真直度が向上するよう矯正される。
【0024】
なお、円筒内22に挿入するガラス管20の本数は4本に限られず、矯正具22の内径およびガラス管20の外径に応じて適宜効率が良い本数に調整すれば良い。
図4は、矯正工程中に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。図4に示すように、矯正具22は加熱炉30内に配置される。ガラス管20を矯正面24上で回転させ矯正する際には、加熱炉30内の温度を調整して例えばガラス管20を560℃で加熱しなければならない。なお、加熱温度は560℃に限られず、ソーダガラスの物性に応じて調整される。
【0025】
(2)塗布工程及び乾燥工程
図5は、塗布工程及び乾燥工程を説明するための図である。塗布工程は、まず、図5(a)に示すように、ガラス管20の下端開口40を蛍光体懸濁液42に浸漬させ、ガラス管20の上端開口44から管内のエアを吸引して管内を負圧にし、管内の所定位置まで蛍光体懸濁液42を吸い上げる。
【0026】
蛍光体懸濁液42は、例えば蛍光体、バインダ、結着剤および有機溶剤を混合したものが用いられる。例えば、バインダにはニトロセルロースが、結着剤にはホウ酸バリウムカルシウム等に代表される低融点ガラス粉末が、有機溶剤には酢酸ブチルがそれぞれ用いられる。
次に、エアの吸引を止め、下端開口40を蛍光体懸濁液42から引き上げ、上端開口44を開放して、図5(b)に示すように、蛍光体懸濁液42を下端開口40から排出する。これにより、ガラス管20の内面に蛍光体懸濁液42が塗布される。
【0027】
ところで、小径のガラス管20は、製造時に真直度を得ることが困難であり、曲がり易い傾向にある。図6は、ガラス管が曲がっていると蛍光体懸濁液に厚みムラが生じることを模式的に示す図である。図6に示すように、例えばガラス管20が符号Xで示す部分で曲がっていると、曲がった部分よりも下側で蛍光体懸濁液42に厚みムラが生じ、その結果蛍光体層11にも厚みムラが生じることとなるため、冷陰極蛍光ランプ1の輝度、色温度等の光特性が不安定となって商品価値が低下する。そこで、ガラス管20が小径の場合には、塗布工程以前に矯正工程を行って、ガラス管40の真直度を向上させる必要がある。
【0028】
次に、乾燥工程は、図5(c)に示すように、上端開口44から乾燥用エア46を流入させ、ガラス管20に外側から温風を当て、塗布した蛍光体懸濁液42の乾燥を促進させる。
(3)焼成工程
焼成工程では、乾燥させた蛍光体懸濁液42を焼成して、蛍光体層11を形成する。焼成工程では、図3に示した矯正工程で用いる矯正具22が使用される。
【0029】
まず、矯正具22内に、蛍光体懸濁液42が乾燥したガラス管20を挿入し、当該矯正具22内でガラス管20を回転させながら、加熱炉30の温度を上げてガラス管20が620℃になるように加熱する。このようにガラス管20を回転させながら加熱することによって蛍光体懸濁液42に熱を均一に加えることができる。
このように、焼成工程において矯正具22を使用しガラス管20を回転させる場合も、当該ガラス管20の外周面に硫酸ナトリウムが付着していれば前記外周面に傷がつき難い。なお、矯正具22を使用してガラス管20を回転させる作業は、焼成工程において必須でなく必要に応じて行えば良い。
【0030】
以上のようにして得られたガラス管20が冷陰極蛍光ランプ1のガラス管3に加工される。
(4)封着工程
封着工程では、電極5,7がガラス管3の端部に封着されると共に、この封着によりガラス管3の端部が封止される。
【0031】
封着工程では、まず、球状のビーズ9の真中にある軸方向の貫通孔に電極軸5b,7bが挿入され、ビーズ9と電極軸5b,7bとを気密状に固着したものを準備する。そして、ビーズ9と固着された電極5,7をガラス管3の所定位置に挿入し、ガラス管3の端部を、例えば、バーナーを用いて加熱し、ビーズ9の外周とガラス管3の内周とを融着させる。
【0032】
この工程でのガラス管3の端部の温度は、800〜1200℃である。なお、電極5,7の付着工程は、従来と同じ公知の技術で実施できる。
<亜硫酸処理>
次に、ガラス管の外周面に硫酸ナトリウム(Na2SO4)を生成させ付着させる亜硫酸処理について説明する。亜硫酸処理では、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下でガラス管20を加熱することによりその外周面に硫酸ナトリウムを生成させる。矯正工程中の矯正具22内に亜硫酸ガスおよび酸素を吹き込めば、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下にガラス管20が配置された状態となる。
【0033】
なお、酸素を含んだエアを吹き込むことによって、酸素を吹き込んだ状態としても良い。また、酸素を含んだエア以外のガスを吹き込んでも良く、前記ガスに亜硫酸ガスを含ませても良い。
亜硫酸処理は、具体的には、図4に示すように、矯正具22の一方の開口側に給気管32を配置し、他方の開口側に排気管34を配置して、前記給気管32から亜硫酸ガスおよびエアを矯正具22内に供給すると共に、前記排気管34から矯正具22内の亜硫酸ガスおよびエアを排気することにより行う。このように給気管32および排気管34を用いることによって、亜硫酸ガスおよびエアが矯正具22内に滞ることなく流れ、ガラス管20の外周面全体にムラなく亜硫酸ガスおよびエアを供給することができる。また、矯正具22の外に亜硫酸ガスが漏れ難くなる。
【0034】
なお、給気管32および排気管32は必ずしも用いる必要はない。例えば、給気管32から直接矯正具22内に亜硫酸ガスおよびエアを吹き込むのではなく、加熱炉30内に亜硫酸ガスおよびエアを充満させることで矯正具22内に亜硫酸ガスおよびエアが流れ込むようにしても良い。また、排気管を用いずに自然排気してもよい。
さらに、亜硫酸ガスが矯正具22の外に漏れないように矯正具22内を密封状態にしても良い。また、亜硫酸ガスを発生する熱分解性化合物を矯正具22内に投入し矯正具22内でその熱分解性化合物を加熱分解させて、亜硫酸ガスを供給しても良い。
【0035】
亜硫酸処理を行う場合は、ガラス管20を加熱する必要であるが、加熱温度はガラス管20を矯正する際の温度と同程度で良いため、特に亜硫酸処理のために加熱する必要はなく、矯正中の矯正具22内に亜硫酸ガスおよびエアを供給すれば矯正と同時に亜硫酸処理を行うことができる。加熱温度が200〜400℃の場合に亜硫酸ナトリウムが生成する。なお、矯正中はガラス管20が回転しているため、ガラス管20の外周面全体を均一に亜硫酸処理することができる。
【0036】
亜硫酸処理は、矯正工程中に行う場合に限定されず、矯正工程前に行っても良い。矯正工程前に亜硫酸処理を行って予めガラス管20の外周面に硫酸ナトリウムを付着させておけば、その後の矯正工程においてガラス管20の外周面に傷が生じることを防止することができる。
図7および図8は、矯正工程前に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。
【0037】
亜硫酸処理を矯正工程前に行う場合の一例として、亜硫酸ガスおよびエアを含む雰囲気中でガラス管の外周面を加熱することが考えられる。例えば、図7に示すように、ガラス管20を配置した処理空間内50の雰囲気中に亜硫酸ガスおよび酸素が含まれる状態で、当該ガラス管20の外周面をバーナー52a,52bで加熱することが考えられる。ガラス管20の外周面を均一に加熱するために、当該ガラス管20を図示しない治具でその軸心回りに回転させながら、バーナー52a,52bを当該ガラス管20の軸心に沿って移動させ加熱することが考えられる。
【0038】
また、亜硫酸処理を矯正工程前に行う場合の別の一例として、酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管20の外周面をバーナーで加熱しながら、当該バーナー52a,52bの火口から亜硫酸ガスを前記外周面に吹きかけることが考えられる。例えば、図8に示すように、ガラス管20を配置した処理空間内54の雰囲気中に酸素が含まれる状態で、当該ガラス管20の外周面をバーナー56a,56bで加熱し、その際にバーナー56a,56bの火口から亜硫酸ガスを噴射させ当該ガラス管20の外周面に吹きかけることが考えられる。この際にも、上記と同様に、ガラス管20を図示しない治具でその軸心回りに回転させながら、バーナー56a,56bを当該ガラス管20の軸心に沿って移動させ加熱することが考えられる。
【0039】
なお、亜硫酸処理のその他の方法としては、準備工程において管引き工程直後のまだ冷めていないガラス管の外周面に亜硫酸ガスを吹きかける方法や、加熱したガラス管に亜硫酸ガスを発生する熱分解性化合物を吹きかける方法などが考えられる。
<亜硫酸処理の効果>
ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムが付着することにより、矯正工程において当該外周面に傷が発生し難くなることを実験により確認した。具体的には、亜硫酸処理したガラス管に矯正工程を施し、当該ガラス管の外周面に傷が発生するか否かを評価した。ガラス管は、全長200mm、内径3.0mm、肉厚0.5mmで、鉛フリーのソーダガラス製のものを使用した。
【0040】
以下の(a)〜(f)に少なくとも1つ以上該当する場合に外周面に傷有りと評価し、いずれにも該当しない場合に傷無しと評価した。
(a)最大幅が0.3mm以上の傷が生じていた場合。
(b)最大幅が0.2mmを超える傷が生じており、かつ、それら傷の長さ(傷が複数ある場合はその合計の長さ)が20mm以上の場合。
(c)最大幅が0.2mmを超える傷が生じており、かつ、その傷がガラス管の周方向に1/2周以上に亘っている場合。
(d)ガラス管の周方向の傷が、管軸方向5mm以上に亘って、当該管軸方向1mm当り1本以上の密度で生じていた場合。
(e)打痕等のクラックへ進行するおそれのある傷(傷により抉れた部分の容積が1mm3以上の傷)が生じていた場合。
(f)最大深さが0.3mm以上の傷が生じていた場合。
【0041】
外周面の傷の発生率は、矯正工程を施した全ガラス管の本数に対する、傷が生じたガラス管の本数である。
図9は、硫酸ナトリウムの付着量と傷の発生率との関係を示す図である。通常、亜硫酸処理を施していないガラス管にも、その外周面に硫酸ナトリウムが1.5ng/mm2程度付着しているが、図9に示すように、1.5ng/mm2程度の付着量では傷の発生率は100%である。しかし、ガラス管の外周面に単位面積当り4ng/mm2以上の硫酸ナトリウムが付着している場合は、外周面の傷の発生率が40%にまで低下した。また、単位面積当り8ng/mm2以上の硫酸ナトリウムが付着している場合は、外周面に傷が生じなかった。
【0042】
図9からわかるように、亜硫酸ナトリウムが付着すると外周面の傷の発生率が低下する。すなわち、亜硫酸処理を施せば外周面の傷の発生率が低下する。
亜硫酸処理を施していないガラス管の外周面には、誤差を見積もっても、2.0ng/mm2以上亜硫酸ナトリウムが付着していることはないと考えられる。したがって、外周面に2ng/mm2以上の亜硫酸ナトリウムが付着しているガラス管は、本発明に係る亜硫酸処理が施されたガラス管であると推定される。そして、外周面に2ng/mm2以上の亜硫酸ナトリウムが付着しているガラス管は、外周面の傷の発生率が低い。
【0043】
[その他]
<矯正工程の加熱条件について>
矯正工程の加熱は、ソーダガラスに酸化チタンが含まれる場合、酸化チタンの結晶核が生成される温度より低い温度条件で行えば良い。矯正工程の最適な温度条件は、ガラス管の矯正度と加熱温度との関係から求めた。
【0044】
図10は、ガラス管の矯正度の測定を説明する図である。図10に示すように、ガラス管20の矯正度の測定は、ガラス管20が、その軸心を回転軸として回転可能な状態で、その両端で支持され、ガラス管20を回転させたときの、ガラス管20の中央部外周における変位(以下、この差を「曲がり」ともいう。)、つまり、図中の「Y」を測定し、このYの数値の大小で判定する。
【0045】
矯正工程においてガラス管20を加熱する時間を一定にして、温度を変化させたときのガラス管20の矯正度は、ガラス管20の温度GTを、480〜610℃の範囲、好ましくは、520〜580℃の範囲内にすると、曲がりの少ないガラス管20に矯正されることが分かった。なお、本実施の形態では、矯正工程におけるガラス管20の温度GTは、560℃になるように設定されている。
【0046】
このガラス管の温度GTの範囲は、ガラス管20のガラス転移点T(実施の形態では、510℃である。なお、このガラス点移転Tは、ガラス管の製造ロットで、490〜510℃の範囲で変化する。従って、前記510℃は、製造時の目標値である。)を用いてガラス管の温度GT(℃)を表すと、以下の式になる。
T−30 ≦ GT ≦ T+100
なお、この範囲(480〜610℃)での、ガラス材料の粘度は、1011〜1014dPa・secとなる。
【0047】
上記冷陰極蛍光ランプ1の場合、例えば、液晶ディスプレイ装置のバックライトユニットの光源として利用されている。液晶ディスプレイ装置の表示画面は、近年大型化しており、これに伴って、全長の長いランプ(例えば、700mm以上)が用いられている。
ところが、長いランプを従来の方法で製造すると、ランプの輝度むらが大きくなる傾向にあった。この原因は、ランプを構成するガラス管の曲がりが大きく(矯正工程での処理は従来の方法で実施している。)、この曲がりに起因してガラス管の内面に形成される蛍光体層の厚みがばらついたためと考えられている。なお、ガラス管の曲がりが、0.2mm以上になると、ガラス管の内面に形成される蛍光体層の厚みむらが大きくなる。
【0048】
しかしながら、ガラス管の全長が700mm以上のものであっても、矯正工程でのガラス管の温度を560℃にすると、その曲がりを0.2mm未満にできる。つまり、ガラス管の温度を560℃になるようにして矯正工程での処理を行うと、ランプの端部に青濁部ができるのを抑制できると共に、ガラス管の曲がりを効率良く矯正できる。
<青濁部について>
上述したように、ガラス管のソーダガラスは、水銀から放射された313nmの紫外線を遮蔽できる酸化チタン(TiO2)を含有していることが好ましい。しかしながら、ソーダガラスに酸化チタンが含有されていると、ガラス管の端部近くが青く濁る(この部分を「青濁部」という。)。
【0049】
青濁部は、酸化チタンが結晶化したものであり、その発生は、まず、ガラスの温度が600℃前後で、やがて青濁部になる酸化チタンである結晶の結晶核が生成(600℃前後で結晶核が生成されるピークがある。)し、この結晶核はガラスの温度が990℃前後で成長(990℃前後で結晶核が成長するピークがある。)して、それが青濁部になると考えられる。
【0050】
蛍光ランプの製造においては、矯正工程と焼成工程との両工程中におけるガラス管の温度は例えば520〜580℃であり、その後の封着工程でのガラス管の端部及びその周辺の温度は例えば800〜1200℃である。
以上のことから、蛍光ランプを従来の方法で製造した場合の青濁部の発生メカニズムは、以下であると考えられる。
【0051】
まず、矯正工程及び乾燥工程においてガラス管が520〜580℃に加熱されてガラス管全体に酸化チタンの結晶核が生成する(この状態は目視できない。)。そして、このあと行われる封着工程においてガラス管の端部及びその周辺が800〜1200℃に加熱され、この加熱されたガラス管の端部の周辺部に存在する結晶核が成長して青濁部になる。
ここで、ガラス管の端部よりも中央部側に青濁部が発生するのは、封着工程におけるガラス管の端部の温度が、上記990℃よりも高い温度、例えば、1200℃近くになり、端部よりも中央部側に移った位置では、前記端部よりも温度が低く、結晶核が成長するピークである990℃前後になるためと考えられる。
【0052】
青濁部の発生を抑えるには、矯正工程及び焼成工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くし、封着工程におけるガラス管の端部(その周辺も含む)の処理時の温度を結晶核の成長する温度より低くして処理することが好ましい。
一方、焼成工程の加熱条件は、蛍光体層を形成するために用いられる懸濁液に合わせて決定しており、同じ懸濁液を用いる限り、焼成工程の加熱条件を変更するのは容易ではない。また、封着工程では、電極をガラス管の端部に封着する際、ガラス管の端部を溶融させる必要があり、現状の加熱条件の温度を下げるのは難しい。これに対し、矯正工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くするのは比較的容易である。
【0053】
青濁部の抑制の確認試験を行うために、矯正工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くし蛍光ランプの製造を行った結果、外観上問題となるような青濁部が発生するようなことはなかった。
確認試験は、100本の蛍光ランプを製造して青濁部の発生率を調査した。調査結果は、上述した方法での発生率は、0%であり、従来の方法での発生率は、100%であった。この結果から、矯正工程において、ガラス管の加熱温度を下げて処理することは、青濁部の発生抑制に有効であることが分かる。
【0054】
[変形例]
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明は上記した形態に限られないことは言うまでもなく、例えば、以下のような形態とすることも可能である。
<蛍光ランプの変形例>
(1)ランプの種類
上記実施の形態で説明した本発明に係る蛍光ランプは、ガラス管内に冷陰極型の電極を備えた冷陰極型蛍光ランプであったが、勿論、冷陰極型の電極の代わりに熱陰極型の電極を用いた熱陰極型蛍光ランプでも良い。なお、熱陰極型蛍光ランプを用いたものとしては、一般用照明用の蛍光ランプ、例えば、コンパクト型蛍光ランプ、電球形蛍光ランプ等がある。
【0055】
また、本発明は、他の蛍光ランプにも適用できる。他の蛍光ランプとして、外部電極型蛍光ランプがあり、以下、当該外部電極型蛍光ランプについて説明する。
図11は、外部電極型蛍光ランプの概略構成を示す平面断面図である。外部電極型蛍光ランプ61は、図11に示すように、両端が封止されたガラス管63と、当該ガラス管63の両端外周に設けられた電極65,67とを備え、誘電体バリア放電を利用したものであり、例えば、バックライトユニットの光源として用いられる。
【0056】
前記両端が封止されたガラス管63の内部には、冷陰極型蛍光ランプ1と同様に、水銀や緩衝ガスである希ガス(例えば、アルゴン、ネオン)等の放電媒体が所定の封入圧で封入されている。また、ガラス管63の内面には、実施の形態と同様に、蛍光体層69が形成されている。
このガラス管63には、例えば、鉛フリーのソーダガラスが用いられ、実施の形態と同様に、313nmの紫外線を遮蔽できる酸化チタンが、例えば、3〜10wt%の範囲、例えば、4wt%添加されている。なお、酸化チタンの含有量が、10wt%を越えると、ガラス化せずに溶融直後に結晶化してしまう。
【0057】
電極65,67は、例えば、アルミニウムの金属箔からなり、シリコン樹脂に金属粉体を混合した導電性粘着剤によって、ガラス管の外周を覆うように貼着されている。導電性粘着剤としては、シリコン樹脂の代わりにフッ素樹脂、ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂等を用いても良いし、電極として、例えば、透明電極である酸化マグネシウム(MgO)を用いても良い。透明電極を利用する場合、従来の製造方法では、ガラス管の端部近くに発生した青濁部が目立つこともあるが、矯正工程におけるガラス管の処理時の温度を酸化チタンの結晶核が生成される温度より低くすると、青濁部の発生を抑えることができる。
【0058】
また、金属箔を導電性粘着剤でガラス管に貼着する代わりに、銀ペーストをガラス管の電極形成部分の全周に塗布することによって電極を形成しても良い。さらに、電極65,67の形状は、円筒状をしているが、例えば、ガラス管の端部を覆うキャップ状をしていても良い。
外部電極型蛍光ランプ61は、以下の工程をその順で行うことで製造される。つまり、直管状のガラス管を準備する準備工程、準備したガラス管の曲がりを矯正する矯正工程、矯正されたガラス管の内面に蛍光体を含んだ懸濁液を塗布する塗布工程、塗布された懸濁液を乾燥する乾燥工程、乾燥した懸濁液を焼成する焼成工程、焼成後のガラス管の端部を封止する封止工程、封止されたガラス管の両端に電極を装着する装着工程等を経て製造される。
【0059】
上記矯正工程も、実施の形態と同様に、ガラス管の温度が560℃になるように加熱炉内の温度を設定した状態で、円筒体の矯正面に載置され行われる。
外部電極蛍光ランプに適用した場合には、ガラス管がソーダガラス製である関係上、バックライトユニットの光源として特に要求される暗黒始動性が改善される。すなわち、ソーダガラスは、酸化ナトリウム(Na2O)を多く含むので、ナトリウム(Na)成分が時間の経過と共にガラス管の内面に溶出する。ナトリウムは電気陰性度が低いため、(保護膜の形成されていない)ガラス管の端部の内面に溶出したナトリウムが、暗黒始動性の向上に寄与する。
【0060】
また、本発明は、内部電極として熱陰極を有する熱陰極蛍光ランプにも適用可能である。
(2)ランプの形状
実施の形態における蛍光ランプは、直管形状をしていたが、本発明に係る蛍光ランプの形状は特に限定するものでなく、例えば、「U」形状、「V」形状、「W」形状をしていても良いし、さらには、「U」形状のガラス管を複数本(例えば、3本)連結した形状等をしていても良い。また、蛍光ランプは、断面が円形に限定されず、例えば楕円形、長穴円形等の扁平形蛍光ランプであってもよい。
【0061】
なお、蛍光ランプの形状を、例えば、「U」形状にする場合は、直管状のガラス管を「U」形状に変形する変形工程を、蛍光体層を形成した後、或いは電極を端部に設けた後に行えば実施できる。また、扁平形蛍光ランプは、断面が円形の蛍光ランプを一旦作製した後、ガラス管を扁平させるなどして実施できる。
(3)紫外線を遮蔽する金属酸化物
実施の形態では、紫外線を遮蔽する金属酸化物として酸化チタンを用いて説明したが、他の金属酸化物であっても良い。なお、313nmの紫外線を遮蔽する必要があり、このような金属酸化物としては、酸化セリウム(CeO2)、酸化モリブデン(MoO3)、酸化タングステン(WO3)等がある。但し、青濁部の発生を抑制については、これらの金属酸化物における結晶核の生成、成長の促進する温度が、酸化チタンと異なるので、実験等を行うことで、矯正工程、焼成工程、封止工程等の加熱条件を決定する必要がある。
【0062】
(4)保護膜
ガラス管の内面には、保護膜が形成されていても良い。この場合、保護膜に重ねて蛍光体層が形成される。保護膜は、例えばシリカ(SiO2)からなる。保護膜は、ガラス管の成分の1つであるナトリウム(Na)が放電空間へと溶出するのをブロックし、当該ナトリウムと水銀とが反応することによる水銀の消耗を防止する。保護膜はアルミナ(Al2O3)で形成しても構わない。
【0063】
(5)蛍光体層
蛍光体層の構成は上記の構成に限定されず、例えば、以下のような変形例が考えられる。
(5−1)紫外線吸収について
例えば、近年、液晶カラーテレビの大型化に伴って、バックライトユニットの開口を塞ぐ拡散板に寸法安定性の良いポリカーボネートが使用されるようになっている。このポリカーボネートは、水銀が発する313(nm)の波長の紫外線により劣化しやすい。このような場合には、波長313(nm)の紫外線を吸収する蛍光体を利用すると良い。なお、313(nm)の紫外線を吸収する蛍光体としては、以下のものがある。
【0064】
(a)青色
ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1−x−ySrxEuyMg1−zMnzAl10O17]又は[Ba1−x−ySrxEuyMg2−zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0≦z<0.1なる条件を満たす数であるであることが好ましい。
【0065】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+] (略号:BAM−B)や、ユーロピウム付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+](略号:SBAM−B)等がある。
【0066】
(b)緑色
・マンガン不活マグネシウムガレート[MgGa2O4:Mn2+](略号:MGM)
・マンガン付活アルミン酸セリウム・マグネシウム・亜鉛[Ce(Mg,Zn)Al11O19:Mn2+](略号:CMZ)
・テルビウム付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+](略号:CAT)
・ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[Ba1−x−ySrxEuyMg1−zMnzAl10O17]又は[Ba1−x−ySrxEuyMg2−zMnzAl16O27]
ここで、x,y,zはそれぞれ0≦x≦0.4、 0.07≦y≦0.25、 0.1≦z≦0.6なる条件を満たす数であり、zは0.4≦x≦0.5であることが好ましい。
【0067】
このような蛍光体としては、例えば、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・マグネシウム[BaMg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:BAM−G)や、ユーロピウム・マンガン共付活アルミン酸バリウム・ストロンチウム・マグネシウム[(Ba,Sr)Mg2Al16O27:Eu2+,Mn2+]、[(Ba,Sr)MgAl10O17:Eu2+,Mn2+](略号:SBAM−G)等がある。
【0068】
(c)赤色
・ユーロピウム付活リン・バナジン酸イットリウム[Y(P,V)O4:Eu3+](略号:YPV)
・ユーロピウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Eu3+](略号:YVO)
・ユーロピウム付活イットリウムオキシサルファイド[Y2O2S:Eu3+](略号:YOS)
・ マンガン付活フッ化ゲルマン酸マグネシウム[3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn4+](略号:MFG)
・ジスプロシウム付活バナジン酸イットリウム[YVO4:Dy3+](赤と緑の2成分発光蛍光体であり、略号:YDS)
なお、一種類の発光色に対して、異なる化合物の蛍光体を混合して用いても良い。例えば、青色にBAM−B(313nmを吸収する。)のみ、緑色にセリウム・テルビウム共付活リン酸ランタン[LaPO4:Ce3+,Tb3+](略号:LAP)(313nmを吸収しない。)とBAM−G(313nmを吸収する。)、赤色にユーロピウム付活酸化イットリウム[Y2O3:Eu3+](略号:YOX)(313nmを吸収しない。)とYVO(313nmを吸収する。)の蛍光体を用いても良い。このような場合は、前述のように波長313(nm)を吸収する蛍光体が、総重量組成比率で50%より大きくなるように調整することで、紫外線がガラス管外に漏れ出ることをほとんど防止できる。したがって、313[nm]の紫外線を吸収する蛍光体を蛍光体層に含む場合には、上記のバックライトユニットの開口を塞ぐポリカーボネート(PC)からなる拡散板等の紫外線による劣化が抑制され、バックライトユニットとしての特性を長時間維持することができる。
【0069】
ここで、「313(nm)の紫外線を吸収する」とは、254(nm)付近の励起波長スペクトル(励起波長スペクトルとは、蛍光体を波長変化させながら励起発光させ、励起波長と発光強度をプロットしたものである。)の強度を100(%)としたときに、313(nm)の励起波長スペクトルの強度が80(%)以上のものと定義する。すなわち、313(nm)の紫外線を吸収する蛍光体とは、313(nm)の紫外線を吸収して可視光に変換できる蛍光体である。
【0070】
(5−2)高色再現について
液晶カラーテレビで代表される液晶表示装置では、近年における高画質化の一環としてなされる高色再現化に伴い、当該液晶表示装置のバックライトユニットの光源として用いられる冷陰極蛍光ランプや外部電極蛍光ランプにおいて、再現可能な色度範囲の拡大化の要請がある。
【0071】
このような要請に対して、例えば、以下の蛍光体を用いることで、実施の形態での蛍光体を用いる場合よりも、色度範囲の拡大を図ることができる。具体的には、CIE1931色度図において、高色再現用の当該蛍光体の色度座標値が、実施の形態で使用した3つの蛍光体の色度座標値を結んでできる三角形を含んで色再現範囲を広げる座標に位置する。
【0072】
(a)青色
・ユーロピウム付活ストロンチウム・クロロアパタイト[Sr10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SCA)、色度座標:x=0.153、y=0.030
上記以外に、ユーロピウム付活ストロンチウム・カルシウム・バリウム・クロロアパタイト[(Sr,Ca,Ba)10(PO4)6Cl2:Eu2+](略号:SBCA)も使用でき、上記波長313(nm)の紫外線も吸収できるSBAM−Bも高色再現用に使用できる。
【0073】
(b)緑色
・BAM−G、色度座標:x=0.136、y=0.572
・CMZ、色度座標:x=0.164、y=0.722
・CAT、色度座標:x=0.284、y=0.635
・テルビウム・マンガン共付活アルミン酸セリウム・マグネシウム[CeMgAl11O19:Tb3+,Mn2+](略号:CAM)、色度座標:x=0.256、y=0.657
・マンガン付活ジンクリリケート[Zn2SiO4:Mn2+](略号:ZSM)、色度座標:x=0.248、y=0.700
なお、これらは上述したように、波長313(nm)の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、MGMも高色再現用に使用することもできる。
【0074】
(c)赤色
・YOS、色度座標:x=0.658、y=0.330
・YVO、色度座標:x=0.661、y=0.328
・MFG、色度座標:x=0.708、y=0.288
なお、これらは上述したように、波長313(nm)の紫外線も吸収でき、また、ここで説明した3つの蛍光体粒子以外にも、YPV、YDSも高色再現用に使用することもできる。
【0075】
また、上記で示した色度座標値は各々の蛍光体の粉体のみで測定した代表値であり、測定方法(測定原理)等に起因して、各蛍光体の粉体が示す色度座標値は、上掲した値と若干異なる場合があり得る。参考として上記実施の形態1の各蛍光体の粉体の色度座標値は、YOX(x=0.643、y=0.348)、LAP(x=0.351、y=0.585)、BAM−B(x=0.148、y=0,055)で構成されている。
【0076】
さらに、赤、緑、青の各色を発光させるために用いる蛍光体は各波長につき1種類に限らず、複数種類を組み合わせて用いることとしても良い。
ここで、上記の高色再現用の蛍光体粒子を用いて蛍光体層を形成した場合について説明する。ここでの評価は、CIE1931色度図内においてNTSC規格の3原色の色度座標値を結ぶNTSC三角形(NTSCtriangle)の面積を基準とした、高色再現用の蛍光体を用いた場合の3つの色度座標値を結んできる三角形の面積の比(以下、NTSC比という。)で行なう。
【0077】
例えば、青色としてBAM−B、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例1)NTSC比が92(%)となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYVOを用いると(例2)NTSC比が100(%)となり、また、青色としてSCA、緑色としてBAM−G、赤色としてYOXを用いると(例3)、NTSC比が95(%)となり、例1及び2に比べて輝度を10(%)向上させることができる。
【0078】
なお、ここでの評価に用いた色度座標値は、ランプ等が組み込まれた液晶表示装置とした状態で測定したものである。
<製造方法の変形例>
(1)矯正工程
矯正工程は、真直度を向上させる矯正をするための矯正具にソーダガラス製のガラス管を載置し、当該ガラス管を加熱しながら転がして矯正する工程であれば良く、例えば、以下のようにして矯正することが考えられる。
【0079】
図12は、変形例に係る橋正工程を示す槻略図である。図12に示すように、変形例に係る矯正工程では、加熱炉70内に配置された一対のローラー72、74が矯正具である。
ローラー72、74は、その軸心が略水平かつ互いに平行になるよう配置されている。ガラス管20を、ローラー72、74の外周面76,78上に、ガラス管20の軸心とローラー72,74の軸心とが平行になるよう載置すると、ガラス管20の外周面が両方の外周面76,78に接触した状態となる。
【0080】
この状態で、加熱炉70内の温度を例えば560℃程度にし、ローラー72、74を図示しない駆動機構により同方向、例えば矢印Eの方向に回転させれば、ガラス管20が矯正面76,78上で矢印Fの方向に回転する。これによりガラス管20の真直度を向上させる矯正を行うことができる。なお、ガラス管20の全長、内径、厚み或いは材質等に応じて、加熱炉70内の温度、ローラー72、74の回転速度等を適宜調整することが好ましい。
【0081】
矯正工程の変形例としては、上記以外に例えば、ガラス管を転がすための矯正面を有する矯正具の当該面上にガラス管を載置し、前記矯正具をガラス管の管軸と直交する方向に揺動させることによって、前記矯正面上でガラス管を揺動させながら転がして、真直度が向上するように矯正することが考えられる。
矯正面は、ガラス管を転がすことができるのであれば、平坦であっても湾曲していても良い。矯正面は、湾曲させるのであれば、転がした際にガラス管が矯正面から落下しないように、前記矯正面の揺動方向両側が上方に反ったもの、例えば載置したガラス管の管軸と直交する面で切断したときの矯正面の断面が、上部が開放した円弧形状、或いは「U」形状のものであることが好ましい。
【0082】
(2)矯正工程における加熱温度
実施の形態では、青濁部となる結晶核の生成を抑制するために、矯正工程でのガラス管の温度を560℃に設定して行ったが、上記でも説明したように、焼成工程でのガラス管の温度或いは封止工程でのガラス管の端部(周辺含む)の温度を低くすることでも同様の効果が得られると考えられる。当然、矯正工程及び焼成工程で両工程のガラス管の温度が結晶核の生成が行われるピーク温度より低くなるようにし、さらに、封止工程でガラス管の端部及びその周辺の温度が結晶核の成長が行われるピーク温度より低くなるようにして各処理を行っても良い。
【0083】
ただ、上述したように、焼成工程の加熱条件を変更する場合には、懸濁液の成分を調整したり、使用する溶媒等を変更したりする必要がある。
また、封止工程での加熱条件を変更する場合には、封止方法を検討する必要が生じる。なお、封止工程を、例えば、セメント等を用いて封止すれば、加熱する必要がなく、青濁部を抑制することができると考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る蛍光ランプの製造方法は、ガラス管の破損の少ない蛍光ランプを製造するために利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施の形態に係る蛍光ランプを示す概略構成図である。
【図2】蛍光ランプの製造工程の一部を示す工程図である。
【図3】矯正工程で用いる矯正具を説明するための図である。
【図4】矯正工程中に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。
【図5】塗布工程及び乾燥工程を説明するための図である。
【図6】ガラス管が曲がっていると蛍光体懸濁液に厚みムラが生じることを模式的に示す図である。
【図7】矯正工程前に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。
【図8】矯正工程前に亜硫酸処理を行う場合について説明する図である。
【図9】硫酸ナトリウムの付着量と傷の発生率との関係を示す図である。
【図10】ガラス管の矯正度の測定を説明する図である。
【図11】外部電極型蛍光ランプの概略構成を示す平面断面図である。
【図12】変形例に係る橋正工程を示す槻略図である。
【符号の説明】
【0086】
1,61 蛍光ランプ
5,7,65,67 電極
11,69 蛍光体層
20 ガラス管
22 矯正具
24 内面
52a,52b,56a,56b バーナー
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソーダガラス製のガラス管の真直度を向上させるように前記ガラス管を矯正するための矯正具に、前記ガラス管を載置し、前記ガラス管を加熱しながら転がして矯正する矯正工程と、
矯正後の前記ガラス管の内面に蛍光体層を形成する形成工程とを含み、
前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することにより前記ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項2】
前記矯正具は軸心が略水平となるよう保持された円筒体であり、前記矯正具の内面に前記ガラス管を載置し、前記矯正具をその軸心回りに回転させることにより前記内面上で前記ガラス管を転がすことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項3】
前記処理は、前記矯正工程中において、前記ガラス管が載置された前記矯正具内に亜硫酸ガスおよび酸素を充填し、前記ガラス管を加熱することにより行うことを特徴とする請求項2記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項4】
前記処理は、前記矯正工程前において、亜硫酸ガスおよび酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管の外周面を加熱することにより行うことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項5】
前記処理は、前記矯正工程前において、酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管の外周面をバーナーで加熱しながら、当該バーナーの火口から亜硫酸ガスを前記外周面に吹きかけることにより行うことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項6】
前記処理は、前記ガラス管の外周面に単位面積当り4ng/mm2以上の硫酸ナトリウムが付着するよう行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項7】
前記処理は、前記ガラス管の外周面に単位面積当り8ng/mm2以上の硫酸ナトリウムが付着するよう行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項8】
ソーダガラス製のガラス管の真直度を向上させるように前記ガラス管を矯正するための矯正具に、前記ガラス管を載置し、前記ガラス管を加熱しながら転がして矯正する矯正工程を含み、
前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することによりその外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うことを特徴とする蛍光ランプ用ガラス管の製造方法。
【請求項9】
前記矯正具は軸心が略水平となるよう保持された円筒体であり、前記矯正具の内面に前記ガラス管を載置し、前記矯正具をその軸心回りに回転させることにより前記内面上で前記ガラス管を転がすことを特徴とする請求項8記載の蛍光ランプ用ガラス管の製造方法。
【請求項10】
ソーダガラス製のガラス管の内面に蛍光体層が形成され両端に一対の電極が設けられた蛍光ランプであって、
前記ガラス管の外周面には、硫酸ナトリウムが単位面積当り2ng/mm2以上付着していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項11】
前記ガラス管の外周面には、硫酸ナトリウムが単位面積当り4ng/mm2以上付着していることを特徴とする請求項10記載の蛍光ランプ。
【請求項12】
前記ガラス管の外周面には、硫酸ナトリウムが単位面積当り8ng/mm2以上付着していることを特徴とする請求項10記載の蛍光ランプ。
【請求項1】
ソーダガラス製のガラス管の真直度を向上させるように前記ガラス管を矯正するための矯正具に、前記ガラス管を載置し、前記ガラス管を加熱しながら転がして矯正する矯正工程と、
矯正後の前記ガラス管の内面に蛍光体層を形成する形成工程とを含み、
前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することにより前記ガラス管の外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うことを特徴とする蛍光ランプの製造方法。
【請求項2】
前記矯正具は軸心が略水平となるよう保持された円筒体であり、前記矯正具の内面に前記ガラス管を載置し、前記矯正具をその軸心回りに回転させることにより前記内面上で前記ガラス管を転がすことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項3】
前記処理は、前記矯正工程中において、前記ガラス管が載置された前記矯正具内に亜硫酸ガスおよび酸素を充填し、前記ガラス管を加熱することにより行うことを特徴とする請求項2記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項4】
前記処理は、前記矯正工程前において、亜硫酸ガスおよび酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管の外周面を加熱することにより行うことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項5】
前記処理は、前記矯正工程前において、酸素を含む雰囲気中で前記ガラス管の外周面をバーナーで加熱しながら、当該バーナーの火口から亜硫酸ガスを前記外周面に吹きかけることにより行うことを特徴とする請求項1記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項6】
前記処理は、前記ガラス管の外周面に単位面積当り4ng/mm2以上の硫酸ナトリウムが付着するよう行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項7】
前記処理は、前記ガラス管の外周面に単位面積当り8ng/mm2以上の硫酸ナトリウムが付着するよう行うことを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の蛍光ランプの製造方法。
【請求項8】
ソーダガラス製のガラス管の真直度を向上させるように前記ガラス管を矯正するための矯正具に、前記ガラス管を載置し、前記ガラス管を加熱しながら転がして矯正する矯正工程を含み、
前記矯正工程中または矯正工程前に、亜硫酸ガスおよび酸素の存在下で前記ガラス管を加熱することによりその外周面に硫酸ナトリウムを生成させる処理を行うことを特徴とする蛍光ランプ用ガラス管の製造方法。
【請求項9】
前記矯正具は軸心が略水平となるよう保持された円筒体であり、前記矯正具の内面に前記ガラス管を載置し、前記矯正具をその軸心回りに回転させることにより前記内面上で前記ガラス管を転がすことを特徴とする請求項8記載の蛍光ランプ用ガラス管の製造方法。
【請求項10】
ソーダガラス製のガラス管の内面に蛍光体層が形成され両端に一対の電極が設けられた蛍光ランプであって、
前記ガラス管の外周面には、硫酸ナトリウムが単位面積当り2ng/mm2以上付着していることを特徴とする蛍光ランプ。
【請求項11】
前記ガラス管の外周面には、硫酸ナトリウムが単位面積当り4ng/mm2以上付着していることを特徴とする請求項10記載の蛍光ランプ。
【請求項12】
前記ガラス管の外周面には、硫酸ナトリウムが単位面積当り8ng/mm2以上付着していることを特徴とする請求項10記載の蛍光ランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−210754(P2008−210754A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−49007(P2007−49007)
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月28日(2007.2.28)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
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