説明

蛍光式温度センサ及び温度の測定方法

【課題】正確に温度を測定可能な蛍光式温度センサを提供する。
【解決手段】発光体2と、発光体2から励起光を照射される蛍光体1と、蛍光体1が発した蛍光を受光し、蛍光強度を表す電気信号に変換する蛍光測定器4と、発光体2の消灯時に蛍光測定器4が出力するオフセット信号の周期を測定する周期測定部301と、蛍光を受光した時点から周期の整数倍の時間が経過した後のオフセット信号を蛍光強度を表す電気信号から引き、蛍光強度を表す補正された電気信号を生成する補正部302と、蛍光強度を表す補正された電気信号に基づき、蛍光強度の減衰特性を算出する減衰特性算出部303と、蛍光強度の減衰特性に基づき、蛍光体の雰囲気温度を算出する温度算出部304と、を備える蛍光式温度センサを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は測定技術に係り、蛍光式温度センサ及び温度の測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光物質の蛍光寿命が温度によって変化する性質を利用した、蛍光式温度センサが提案されている(例えば、特許文献1乃至3参照。)。蛍光式温度センサは、過酷な環境下で温度を測定可能であるという、長所を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−178575号公報
【特許文献2】特表平11−508352号公報
【特許文献3】特開2002−71473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
かかる長所を有する蛍光式温度センサの適応分野は多岐にわたり、蛍光式温度センサのさらなる精度の向上が求められている。そこで、本発明は、正確に温度を測定可能な蛍光式温度センサ及び温度の測定方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の態様は、(イ)発光体と、(ロ)発光体から励起光を照射される蛍光体と、(ハ)蛍光体が発した蛍光を受光し、蛍光強度を表す電気信号に変換する蛍光測定器と、(ニ)発光体の消灯時に蛍光測定器が出力するオフセット信号の周期を測定する周期測定部と、(ホ)蛍光を受光した時点からオフセット信号の周期の整数倍の時間が経過した後のオフセット信号を蛍光強度を表す電気信号から引き、蛍光強度を表す補正された電気信号を生成する補正部と、(ヘ)蛍光強度を表す補正された電気信号に基づき、蛍光強度の減衰特性を算出する減衰特性算出部と、(ト)蛍光強度の減衰特性に基づき、蛍光体の雰囲気温度を算出する温度算出部と、を備える蛍光式温度センサであることを要旨とする。
【0006】
本発明の他の態様は、(イ)発光体から蛍光体に励起光を照射することと、(ロ)蛍光測定器で蛍光体が発した蛍光を受光し、蛍光強度を表す電気信号に変換することと、(ハ)発光体の消灯時に蛍光測定器が出力するオフセット信号の周期を測定することと、(ニ)蛍光を受光した時点からオフセット信号の周期の整数倍の時間が経過した後のオフセット信号を蛍光強度を表す電気信号から引き、蛍光強度を表す補正された電気信号を生成することと、(ホ)蛍光強度を表す補正された電気信号に基づき、蛍光強度の減衰特性を算出することと、(ヘ)蛍光強度の減衰特性に基づき、蛍光体の雰囲気温度を算出することと、を含む温度の測定方法であることを要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、正確に温度を測定可能な蛍光式温度センサ及び温度の測定方法を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサの模式図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る発光体の模式図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る蛍光強度の時間変化の例を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態に係るオフセット信号を模式的に示すグラフである。
【図5】本発明の実施の形態に係るオフセット信号に重畳した蛍光強度を表す電気信号を模式的に示す第1のグラフである。
【図6】本発明の実施の形態に係るオフセット信号に重畳した蛍光強度を表す電気信号を模式的に示す第2のグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係るオフセット信号に重畳した蛍光強度を表す電気信号を模式的に示す第3のグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係る励起光を消灯後の、蛍光体の蛍光強度の雰囲気温度に依存する減衰特性の例を示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態に係る蛍光体の雰囲気温度と、蛍光寿命と、の関係の例を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態に係る温度の測定方法のフローチャートである。
【図11】本発明の実施の形態に係るオフセット信号に重畳した蛍光強度を表す電気信号を模式的に示す第4のグラフである。
【図12】本発明の実施の形態の第2の変形例に係るオフセット信号に重畳した蛍光強度を表す電気信号を模式的に示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号で表している。但し、図面は模式的なものである。したがって、具体的な寸法等は以下の説明を照らし合わせて判断するべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0010】
実施の形態に係る蛍光式温度センサは、図1に示すように、発光体2と、発光体2から励起光を照射される蛍光体1と、蛍光体1が発した蛍光を受光し、蛍光強度を表す電気信号に変換する蛍光測定器4と、発光体2の消灯時に蛍光測定器4が出力するオフセット信号の周期を測定する周期測定部301と、蛍光を受光した時点からオフセット信号の周期の整数倍の時間が経過した後のオフセット信号を蛍光強度を表す電気信号から引き、蛍光強度を表す補正された電気信号を生成する補正部302と、蛍光強度を表す補正された電気信号に基づき、蛍光強度の減衰特性を算出する減衰特性算出部303と、蛍光強度の減衰特性に基づき、蛍光体の雰囲気温度を算出する温度算出部304と、を備える。
【0011】
発光体2は、図2に示すように、例えば円筒状のパッケージ21と、パッケージ21の開口を覆う光学窓22と、パッケージ21の内部に配置された発光素子23と、を備える。パッケージ21には、メタルCANパッケージ及び樹脂成型パッケージ等が使用可能である。光学窓22には、石英ガラス等からなる透明板及びレンズ等が使用可能である。発光素子23には、発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)及び半導体レーザ(LD:Laser Diode)等の半導体発光素子が使用可能である。より具体的には、発光素子23には、AlGaInPをチップ材料とする四元素系発光素子、及びInGaNをチップ材料とする三元素系発光素子が使用可能である。例えば、発光素子23には、図1に示す通電制御部501が接続される。通電制御部501は、発光素子23を点滅するように通電(ON/OFF)を制御し、発光素子23から蛍光体1の励起光を断続的に放射させる。
【0012】
発光体2に対向して、ダイクロイックミラー11が配置されている。ダイクロイックミラー11は、励起光を反射して、励起光の進行方向を直角に折り曲げる。ダイクロイックミラー11で反射された励起光は、レンズ12及び光導波路15を経て、蛍光体1に到達する。なお、光導波路15には、光ファイバ等が使用可能である。
【0013】
蛍光体1は、蛍光物質、又は遷移金属がドープされた蛍光物質からなる。遷移金属がドープされた蛍光物質としては、ルビー等のCr3+系材料、Mn2+系材料、Mn4+系材料、及びFe2+系材料が使用可能である。あるいは、蛍光体1は、ユウロピウム(Eu)がドープされたアルミン酸ストロンチウム(SrAl24系)からなる。蛍光体1は、熱伝導性の保護容器16に格納されていてもよい。
【0014】
発光体2から励起光を照射された蛍光体1は、蛍光を発する。図3に示すように、蛍光強度は、発光体2の発光強度に依存して、時間経過とともに一定の値まで増加する。また、発光体2を消灯すると、蛍光強度は時間経過とともに減衰する。励起光が消光した瞬間又は直後と比較して蛍光強度が1/eに低下するまでに要する時間は、蛍光体1の蛍光寿命τとして定義される。ここで、eは自然対数である。
【0015】
なお、図1に示す蛍光測定器4等には、応答遅れ(励起光等の入力光が無くなっても、すぐには出力が無くならない現象)が生じ得る。したがって、励起光を発する発光体2を消灯した直後から、予め測定した蛍光測定器4又はセンサ全体の応答遅れの時間よりも長い時間が経過した後に測定された蛍光強度と比較して1/eの蛍光強度に低下するまでに要する時間を、蛍光体1の蛍光寿命τとして定義してもよい。
【0016】
蛍光体1が発した蛍光は、光導波路15及びレンズ12を経て、ダイクロイックミラー11に到達する。さらに、蛍光は、ダイクロイックミラー11を透過して、蛍光測定器4に到達する。蛍光測定器4は、例えば、フォトダイオード等の受光素子41を含む。受光素子41は、蛍光を受光し、蛍光強度を表す電気信号に変換する。
発光体2、ダイクロイックミラー11、レンズ12、及び受光素子41は、例えば筺体10の内部に配置されている。また、筺体10と光導波路15は、例えば光導波路15を固定するコネクタ14及びコネクタ14を保持するアダプタ13を介して固定されている。
【0017】
蛍光測定器4は、受光素子41に接続された、蛍光強度を表す電気信号を増幅する増幅器502をさらに含みうる。ここで、蛍光体1が蛍光を発していないときは、蛍光測定器4が出力する電気信号は、好ましくは0Vである。しかし、蛍光体1が蛍光を発していないときも、例えば蛍光測定器4に含まれるトランジスタのベース−エミッタ間の電圧差により、蛍光測定器4は図4に示すようなオフセット信号を出力する。また、オフセット信号は、例えば日本国においては、電源の商用周波数(50乃至60Hz)に応じて周期的に変動しうる。さらに、蛍光体1が蛍光を発しているときは、図5に示すように、蛍光強度を表す電気信号が、周期的なオフセット信号に重畳する。
【0018】
図1に示す増幅器502は、中央演算処理装置(CPU)300に接続されている。CPU300に含まれる周期測定部301は、図6に示すように、例えば、蛍光測定器4の電源を入れた後、発光体2を点灯する前のオフセット信号を測定する。さらに、周期測定部301は、測定したオフセット信号を解析し、オフセット信号の周期TOを算出する。図1に示すCPU300には、補正情報記憶部401を含むデータ記憶装置400が接続されている。補正情報記憶部401は、周期測定部301が測定したオフセット信号の周期TOを保存する。
【0019】
CPU300の補正部302は、図7に示すように、発光体2を消灯した時点から一定の期間TM、蛍光強度を表す電気信号を測定する。また、補正部302は、発光体2を消灯した時点から、オフセット信号の周期TOの整数倍の時間(nを自然数として、n×TO)が経過した後、蛍光強度を表す電気信号を測定した期間TMと同じ長さの期間、オフセット信号を測定する。
【0020】
オフセット信号を測定中、発光体2は消光している。補正部302は、蛍光強度を表す測定した電気信号から、測定したオフセット信号を差し引き、蛍光強度を表す補正された電気信号を算出する。
【0021】
図1に示すCPU300の減衰特性算出部303は、蛍光強度を表す補正された電気信号に基づき、蛍光体1の蛍光強度の時間変化を解析し、蛍光体1が発した蛍光の蛍光寿命τ等の減衰特性の測定値を算出する。ここで図8は、蛍光体1の雰囲気温度を複数に振った場合の、励起光消光後の蛍光体1の蛍光強度の例を示している。第1の温度条件下で、蛍光体1の雰囲気温度は最も低く、第2乃至第5の温度条件下で、蛍光体1の雰囲気温度は順次高くなる。図8に示すように、蛍光体1の蛍光寿命τは、蛍光体1の雰囲気温度が上昇するとともに、短くなる傾向にある。したがって、図9に示すように、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度TFと、の関係を予め取得しておけば、蛍光の減衰特性を測定することにより、図1に示す蛍光体1の雰囲気温度TFを算出することが可能となる。なお、蛍光体1の雰囲気温度TFとは、例えば、蛍光体1又は蛍光体1を覆う保護容器16に接する気体の温度である。
【0022】
データ記憶装置400は関係記憶部402をさらに含む。関係記憶部402は、図9に示すような、蛍光体1の蛍光寿命τ等の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度TFと、の予め取得された関係を保存する。なお、関係記憶部402は、蛍光体1の減衰特性及び雰囲気温度の関係を、式として保存していてもよいし、表として保存していてもよい。図1に示すCPU300の温度算出部304は、蛍光体1の減衰特性の測定値と、関係記憶部402に保存されている減衰特性及び雰囲気温度の関係と、に基づいて、蛍光体1の雰囲気温度TF_Cを算出する。
【0023】
CPU300には、さらに入力装置321、出力装置322、プログラム記憶装置323、及び一時記憶装置324が接続される。入力装置321としては、スイッチ及びキーボード等が使用可能である。関係記憶部402に保存される蛍光体1の減衰性及び蛍光体1の雰囲気温度の関係等は、例えば、入力装置321を用いて入力される。
【0024】
出力装置322としては、光インジケータ、デジタルインジケータ、及び液晶表示装置等が使用可能である。出力装置は、スピーカ等の音響機器を含んでいてもよい。出力装置322は、温度算出部304の算出結果に基づき、蛍光体1の雰囲気温度を表示する。プログラム記憶装置323は、CPU300に接続された装置間のデータ送受信等をCPU300に実行させるためのプログラムを保存している。一時記憶装置324は、CPU300の演算過程でのデータを一時的に保存する。
【0025】
次に図10に示すフローチャートを用いて実施の形態に係る温度の測定方法について説明する。
(a)ステップS101で、図1に示す蛍光式温度センサの電源を入れる。ただし、発光体2は消灯させる。次に、周期測定部301が、蛍光測定器4が出力するオフセット信号を測定し、オフセット信号の周期TOを算出する。周期測定部301は、算出した周期TOを補正情報記憶部401に保存する。ステップS102で、補正部302は、補正情報記憶部401からオフセット信号の周期TOを読み出す。また、発光体2は励起光を放射し、ステップS103で、発光体2は励起光の放射を停止する。ステップS104で蛍光測定器4は、蛍光体1が発した蛍光を受光し、蛍光強度を表す電気信号に変換する。さらに蛍光測定器4は、オフセット信号に重畳する蛍光強度を表す電気信号を、補正部302に伝送する。補正部302は、発光体2が消灯した時点から一定の期間TM、オフセット信号に重畳する蛍光強度を表す電気信号を測定する。
【0026】
(b)ステップS105で補正部302は、蛍光強度を表す電気信号の測定を開始した時点から、オフセット信号の周期TOの整数倍の時間(n×TO)が経過した後、蛍光強度を表す電気信号を測定した期間TMと同じ長さの期間、オフセット信号を測定する。さらにステップS106で、補正部302は、一定の期間測定した蛍光強度を表す電気信号から、一定の期間測定したオフセット信号を差し引き、蛍光強度を表す補正された電気信号を算出する。補正部302は、蛍光強度を表す補正された電気信号を、減衰特性算出部303に伝送する。
【0027】
(c)ステップS107で、減衰特性算出部303は、蛍光強度を表す補正された電気信号の時間変化に基づいて、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性の測定値を得る。減衰特性算出部303は、減衰特性の測定値を温度算出部304に伝送する。ステップS108で温度算出部304は、関係記憶部402から、蛍光寿命τ等の蛍光の減衰特性と、蛍光体1の雰囲気温度と、の予め取得された関係を読み出す。さらに温度算出部304は、蛍光の減衰特性の測定値と、関係記憶部402から読み出した関係と、に基づいて、蛍光体1の雰囲気温度TF_Cを算出する。その後、温度算出部304は、出力装置322に蛍光体1の算出雰囲気温度TF_Cを出力する。
【0028】
以上説明した実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法によれば、オフセット信号の強度が一定でなく、周期的に変動する場合も、蛍光体1の雰囲気温度TF_Cを正確に算出することが可能となる。なお、周期的に発光体2を点滅する場合、発光体2の点滅周期は、図11に示すように、mをnよりも大きな整数として、オフセット信号の周期TOのm倍とすればよい。これにより、オフセット信号の測定が妨げられない。
【0029】
(第1の変形例)
励起光が消光した瞬間又は直後の蛍光強度をI0、励起光が消光した瞬間又は直後から時間tA後の蛍光強度をI(tA)とすると、蛍光強度I(tA)と、蛍光強度I0と、の関係は、例えば下記(1)式で与えられる。
I(tA) = I0 exp(-tA / τ) ・・・(1)
(1)式を変形することにより、蛍光寿命τは下記(2)式で与えられる。
τ= -tA / ln[ I(tA) / I0] ・・・(2)
したがって、励起光が消光した瞬間又は直後の蛍光強度I0と、励起光が消光した瞬間又は直後から時間tA後の蛍光強度をI(tA)と、を測定することにより、蛍光寿命τを算出可能である。
【0030】
実施の形態の第1の変形例では、補正部302は、励起光が消光した瞬間又は直後の蛍光強度I0を表す電気信号、及び励起光が消光した瞬間又は直後から時間tA後の蛍光強度I(tA)を表す電気信号を測定する。さらに、補正部302は、蛍光強度I0を表す電気信号を測定した時点からオフセット信号の周期TOの整数倍の時間が経過した後の時点のオフセット信号、及び蛍光強度I(tA)を表す電気信号を測定した時点からオフセット信号の周期TOの整数倍の時間が経過した後の時点のオフセット信号を測定する。
【0031】
次に、補正部302は、蛍光強度I0を表す電気信号から、蛍光強度I0を表す電気信号を測定した時点からオフセット信号の周期TOの整数倍の時間が経過した後の時点のオフセット信号を差し引き、蛍光強度I0を表す補正された電気信号を算出する。また、補正部302は、蛍光強度I(tA)を表す電気信号から、蛍光強度I(tA)を表す電気信号を測定した時点からオフセット信号の周期TOの整数倍の時間が経過した後の時点のオフセット信号を差し引き、蛍光強度(tA)を表す補正された電気信号を算出する。
【0032】
実施の形態の第1の変形例では、減衰特性算出部303は、上記(2)式、蛍光強度I0を表す補正された電気信号、及び蛍光強度(tA)を表す補正された電気信号に基づき、蛍光寿命τを算出する。温度算出部304は、実施の形態と同様に、蛍光体1の雰囲気温度TF_Cを算出する。以上説明した実施の形態の第1の変形例によっても、蛍光体1の雰囲気温度TF_Cを正確に算出することが可能となる。
【0033】
また、オフセット信号にノイズ等の高周波揺らぎ成分が重畳する場合がある。この場合、微少な時間幅の間、蛍光強度I0を表す電気信号を積分し、積分値を蛍光強度I0を表す電気信号の値として採用してもよい。同様に、蛍光強度I(tA)を表す電気信号、蛍光強度I0を表す電気信号を測定した時点からオフセット信号の周期TOの整数倍の時間が経過した後の時点のオフセット信号、及び蛍光強度I(tA)を表す電気信号を測定した時点からオフセット信号の周期TOの整数倍の時間が経過した後の時点のオフセット信号も、微少な時間幅の間測定し、積分する。これにより、ノイズ等の高周波揺らぎ成分を除去することが可能となる。
【0034】
(第2の変形例)
実施の形態では、蛍光式温度センサの電源を入れた後、発光体2を発光させる前にオフセット信号の周期TOを測定する例を示した。これに対し、発光体2を点滅させて蛍光体1の雰囲気温度の測定を開始した後、発光体2の消灯中にオフセット信号の周期TOを測定してもよいことはもちろんである。また、図12に示すように、オフセット信号の周期TOが変化した場合は、変化後の周期TOを用いて蛍光強度を表す電気信号を補正してもよい。
【0035】
(その他の実施の形態)
上記のように本発明を実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす記述及び図面はこの発明を限定するものであると理解するべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかになるはずである。例えば、図1に示す温度算出部304は、発光体2が点灯するごとに蛍光体1の雰囲気温度TF_Cを算出し、さらに、蛍光体1の雰囲気温度TF_Cの平均値を算出してもよい。これにより、オフセット信号の周期性が乱れた場合にも、蛍光体1の雰囲気温度TF_Cを正確に算出することが可能となる。この様に、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を包含するということを理解すべきである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、半導体製造装置のプラズマ中の基板の温度測定、通電状態でのハイブリット素子及び集積回路の温度測定等に利用可能である。したがって、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、半導体及びエレクトロニクス産業分野で利用可能である。
【0037】
また、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、原油の2次及び3次産出に用いる地中深くの蒸気の温度測定、及び温度測定に基づくオイルパイプラインからの漏れ検知等に利用可能である。したがって、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、石油化学産業分野で利用可能である。
【0038】
さらに、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、高電圧電力設備の保全等を目的とした、電力トランス巻線、高圧送電線、及び発電器等の温度測定に利用可能である。したがって、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、電力事業分野で利用可能である。
【0039】
また、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、電子レンジ等で加熱中の食材の温度測定、マイクロ波を用いる殺菌装置又は乾燥装置の温度管理、高周波加熱を用いる木材、セラミックス、及び繊維等の加熱装置、乾燥装置、及び殺菌装置の温度管理に利用可能である。したがって、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、食品産業分野、材木産業分野、及び素材産業分野で利用可能である。
【0040】
さらに、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、ハイパーサーミア装置やMRI装置の温度測定に利用可能である。したがって、本発明の実施の形態に係る蛍光式温度センサ及び温度の測定方法は、医療産業分野で利用可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 蛍光体
2 発光体
4 蛍光測定器
10 筺体
11 ダイクロイックミラー
12 レンズ
13 アダプタ
14 コネクタ
15 光導波路
16 保護容器
21 パッケージ
22 光学窓
23 発光素子
41 受光素子
301 周期測定部
302 補正部
303 減衰特性算出部
304 温度算出部
321 入力装置
322 出力装置
323 プログラム記憶装置
324 一時記憶装置
400 データ記憶装置
401 補正情報記憶部
402 関係記憶部
501 通電制御部
502 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光体と、
前記発光体から励起光を照射される蛍光体と、
前記蛍光体が発した蛍光を受光し、蛍光強度を表す電気信号に変換する蛍光測定器と、
前記発光体の消灯時に前記蛍光測定器が出力するオフセット信号の周期を測定する周期測定部と、
前記蛍光を受光した時点から前記周期の整数倍の時間が経過した後の前記オフセット信号を前記蛍光強度を表す電気信号から引き、前記蛍光強度を表す補正された電気信号を生成する補正部と、
前記蛍光強度を表す補正された電気信号に基づき、前記蛍光強度の減衰特性を算出する減衰特性算出部と、
前記蛍光強度の減衰特性に基づき、前記蛍光体の雰囲気温度を算出する温度算出部と、
を備える蛍光式温度センサ。
【請求項2】
前記発光体が、前記オフセット信号の周期の整数倍の周期で、前記励起光を発する、請求項1に記載の蛍光式温度センサ。
【請求項3】
前記温度算出部が前記蛍光体の雰囲気温度を複数回算出し、さらに、前記蛍光体の雰囲気温度の平均値を算出する、請求項1又は2に記載の蛍光式温度センサ。
【請求項4】
前記蛍光強度の減衰特性と、前記蛍光体の雰囲気温度と、の関係を保存する関係記憶部を更に備え、
前記温度算出部が、前記蛍光強度の減衰特性と、前記関係と、に基づき、前記蛍光体の雰囲気温度を算出する、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の蛍光式温度センサ。
【請求項5】
発光体から蛍光体に励起光を照射することと、
蛍光測定器で前記蛍光体が発した蛍光を受光し、蛍光強度を表す電気信号に変換することと、
前記発光体の消灯時に前記蛍光測定器が出力するオフセット信号の周期を測定することと、
前記蛍光を受光した時点から前記周期の整数倍の時間が経過した後の前記オフセット信号を前記蛍光強度を表す電気信号から引き、前記蛍光強度を表す補正された電気信号を生成することと、
前記蛍光強度を表す補正された電気信号に基づき、前記蛍光強度の減衰特性を算出することと、
前記蛍光強度の減衰特性に基づき、前記蛍光体の雰囲気温度を算出することと、
を含む温度の測定方法。
【請求項6】
前記発光体から蛍光体に、前記オフセット信号の周期の整数倍の周期で、前記励起光を照射する、請求項5に記載の温度の測定方法。
【請求項7】
前記蛍光体の算出雰囲気温度の平均値を算出することを更に含む、請求項5又は6に記載の温度の測定方法。
【請求項8】
前記蛍光強度の減衰特性と、前記蛍光体の雰囲気温度と、の関係を用意することを更に備え、
前記蛍光強度の減衰特性と、前記関係と、に基づき、前記蛍光体の雰囲気温度が算出される、請求項5乃至7のいずれか1項に記載の温度の測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−237225(P2011−237225A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−107485(P2010−107485)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)