説明

蛍光繊維混入紙

【課題】特定のユーザ固有用や用途用に多様な識別性を付与した紙を提供する。
【解決手段】紫外線の照射により蛍光を発色する蛍光繊維をセルロース系繊維に混入された紙であって、前記蛍光繊維は蛍光が3種類以上から2種類以上をユーザ用及び/又は用途用に選択して混入されている複数種の蛍光繊維であることを特徴とする蛍光繊維混入紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、識別力を付与した紙に関する。
【背景技術】
【0002】
透かしや印刷を施して識別性を付与した紙が提供されている。また、蛍光発色する繊維状物を紙中に含ませた用紙も提案されている。特許文献1には、紫外線の照射により蛍光発色する蛍光剤をデンプンのコロイド分散液に混合し、分散液を凝固液中に混合攪拌若しくは吐出することで繊維状物を生成させ、この繊維状物を製紙用パルプを主体として調製したスラリーに添加し抄紙することにより、紫外線の照射により蛍光発色する蛍光剤を含んだデンプンの繊維状物が紙中に含まれていることを特徴とする偽造防止用紙に関するものが提案されている。
【0003】
【特許文献1】特開平9−31897号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、特定のユーザ固有用や用途用に多様な識別性を付与した紙を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、複数の蛍光を選択した蛍光繊維を木材パルプなどのセルロース系繊維をユーザや用途に合わせて混入して識別力を付与した紙である。
本発明の主な構成は次のとおりである。
【0006】
(1)紫外線の照射により蛍光を発色する蛍光繊維をセルロース系繊維に混入された紙であって、前記蛍光繊維は蛍光が3種類以上から2種類以上をユーザ用及び/又は用途用に選択して混入されている複数種の蛍光繊維であることを特徴とする蛍光繊維混入紙。
(2)蛍光が青系、赤系、黄緑系の3色であり、該3色蛍光の内青−赤、赤−黄緑、黄緑−青のいずれかの2色の組合せであることを特徴とする(1)記載の蛍光繊維混入紙。
(3)組み合わせる蛍光の比率を選択することを特徴とする(1)又は(2)記載の蛍光繊維混入紙。
(4)蛍光繊維が紙の表面に模様状に配置されたことを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の蛍光繊維混入紙。
(5)蛍光繊維が、蛍光剤を練り込まれたポリアミド系繊維であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の蛍光繊維混入紙。
(6)蛍光繊維が、蛍光剤を染色及び/又付着したポリアミド系繊維であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載の蛍光繊維混入紙。
(7)(1)〜(6)のいずれかに記載の蛍光繊維混入紙がユーザ用及び/又は用途用識別用紙。
(8)紫外線の照射により蛍光を発色する蛍光繊維をセルロース系繊維に混入された紙の製造方法であって、蛍光が3種類以上から2種類以上をユーザ用及び/又は用途用に選択した蛍光繊維をセルロース系繊維に混入して抄紙することを特徴とする蛍光繊維混入紙の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の蛍光剤を含んだ繊維状物を抄き込んだ用紙は、紫外線の照射による蛍光発色が3色からの色の組合せによるため、出所別の標示ができ、単一の蛍光を用いた場合に比べて多様な識別能力を付与することができる。
別々の蛍光発色する複数の蛍光繊維状物を選択して混入することによりユーザや用途に応じた識別力を付与した用紙を多数のユーザや用途の要望に応じて提供することができるので、各社の、各種の証券や金券など同種の分野にも個別の識別力を持った用紙を提供することができる。
例えば、多数の偽造防止ができ、さらには蛍光発色する繊維状物の色の組合せにより、製造元や販売元等の出所標示ができることにより、より高度な偽造防止ができる用紙及び用紙の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願発明は、複数の種類の蛍光繊維を選択して木材パルプなどのセルロース系繊維に混入した蛍光繊維混入紙である。複数の蛍光色別に蛍光剤を混練りして紡糸した合成樹脂製繊維、複数の蛍光色別に蛍光剤を染色付与(付着)させた合成樹脂製繊維、あるいは木材パルプなどの繊維素材に複数蛍光色別に蛍光剤を付着させた天然繊維を準備する。この多数の種類の蛍光を付与した繊維から、いくつか選択して組み合わせて通常の木材パルプなどのセルロース系繊維に混入して抄紙して蛍光繊維混入紙を製造し、提供する。また、蛍光繊維混入紙の片面に塗工層を設けることも出来る。紙の材質、印刷性などほぼ通常の用紙と同様に使用することができる。
通常は何の変哲もない普通の用紙として一般には認識され、外見では区別できないので一般の人には違和感無く扱うことができる。証紙など回収して識別する場合は、紫外線を照射して発色具合により、判別することができる。紫外線は用いられている蛍光の種類に応じて適した物を用いることができる。
多数のユーザー毎や用途毎に異なった蛍光を組み合わせた用紙を提供することができる多様用途性に優れている。さらに、組み合わせる蛍光の配合比率を変えることによりきめ細かな識別が可能となる。色の系統と商品群の判別をするなど各ユーザーの使用種別毎にも対応できる。
次に本発明を詳細に説明する。
【0009】
[蛍光剤]
本発明で使用する蛍光剤としては有機の蛍光染料や有機の蛍光顔料あるいは無機の蛍光顔料等がある。
【0010】
[有機蛍光染料]
有機の蛍光染料としては具体的には、フルオレッセイン,クマリン系,オキサゾール系,ピラゾリン系,チアジアゾール系,スピロピラン系,ピレンスルホン酸系,ベンゾイミダゾール系,ジアミノスチルベン系等を挙げることが出来る。
【0011】
[有機蛍光顔料]
有機の蛍光顔料としては具体的にはポリ塩化ビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂等の樹脂にフルオレッセイン、エオシン、ローダミン6G、ローダミンB、ベーシックイエローHG等の染料を均一に溶解させ粉砕させたもの等を挙げることが出来る。
【0012】
[無機蛍光顔料]
無機の蛍光顔料としては具体的には、銅、銀、マンガン等で活性化した硫化亜鉛、マンガン等で活性化したケイ酸亜鉛、銀、銅等で活性化した硫化亜鉛カドミウム、ビスマス等で活性化した硫化カルシウム、サマリウム、セリウム等で活性化した硫化ストロンチウム、鉛等で活性化したタングステン酸カルシウム、ユーロピウム等で活性化したSr(PO4)3Cl、マンガン等で活性化したZn2GeO2、ユーロピウム等で活性化したY22S、ユーロピウム等で活性化したY23等を挙げることが出来る。またこれらにアントラキノン系やアセトフェノン系等の増感剤を併用することも適宜行うことが出来る。
【0013】
[蛍光色]
これらの蛍光剤は、昼光若しくは蛍光灯や白熱電球等の室内光(以下本発明では普通光と呼ぶ)のもとでは色相を有さないか若しくは淡い色相を有するものが好ましい。これらの蛍光剤が用紙に含まれていても、普通光のもとでは含まれていることが判らずそれだけ偽造防止能が高まるからである。無機系の蛍光剤は耐光性に優れ本発明では好適に使用される。その中でも普通光では白色か淡い色相のものが特に好ましい。例を挙げるとユーロピウムで活性化したY22S粉末は普通光のもとでは白色であるが紫外線を照射することで赤色に発色する。またマンガンで活性化したZn2GeO2は粉末は普通光のもとでは白色であるが紫外線を照射することで緑色に発色する。またマンガンで活性化した硫化亜鉛粉末は普通光のもとでは淡い赤色であるが紫外線を照射することで橙色に発色する。
また、紫外線を照射することで青色に発色するものとしては、ジアミノスチルベンジスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール誘導体、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体等がある。
本願発明では青系、赤系、黄緑系等の各種の蛍光色を組み合わせて混合して用いる。組み合わせ、混合比などにより識別数を増加させることができ、多種多様のニーズの対応可能になる。
【0014】
[蛍光発色繊維状物]
次に本発明で使用する蛍光発色する繊維状物の製造方法の一例について説明する。
前述の各種の蛍光剤を選択してポリアミド繊維などの合成繊維を紡糸する原料に添加混合して、紡糸して製造する。又は、繊維に蛍光物質を染色あるいは付着させて蛍光繊維を得る。繊維のサイズは、内添の場合には、木材パルプなどと均一に分散して抄紙できることが必要であって、例えば、径、長さとも1〜3mm程度の他の抄紙繊維と同サイズが好ましい。紙の製造は、抄紙後ドライヤーで高温乾燥されるので、乾燥工程で溶融などの不都合が生じない必要がある。合成樹脂の場合は、200〜260℃程度では溶しないことが望ましく、ポリアラミドは温度耐性のほかなじみ性、均一分散性などの面でも適している。
【0015】
蛍光剤を染色付与(付着)させる繊維としては、木材パルプ、または非木材パルプであっても良い。非木材繊維としては、バガス、わら類、小麦、大麦、オート麦、ライ麦、米、亜麻、ジュート、ケナフ、麻、サイザル、リード、竹、パピルス、綿、コーン等が使用できる。これらの繊維も均一分散の観点から、一定の長さ、径などに大きさが揃っていることが好ましい。例えば、木材パルプと混ぜる場合は、前述同様に1〜3mm長が一般的である。
【0016】
[用紙製造方法]
本発明の偽造防止用紙は主に次に挙げた方法で製造する。
1)蛍光繊維を用紙に内添する方法。これは、通常の抄紙工程にスラリーに配合することができる。
2)蛍光繊維を抄紙した直後であってドライヤーにかける前に表面へ散布する方法。これは、抄紙直後のウエットな堆積マットの表面に蛍光繊維を散布する方法であって、散布を平行な筋条、濃淡、複数の蛍光色を幾筋に分けて散布するなど模様状に多様化することができる。
3)蛍光発色する蛍光繊維を基紙の表面へ塗工する方法。
4)無機顔料とバインダーを主成分とする塗工液に蛍光繊維添加して基紙に塗工する方法、等である。
【0017】
[パルプ]
パルプとしては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、古紙パルプ(DIP)等の製紙用パルプを使用できる。
【0018】
[添加剤]
また、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、サイズ剤、定着剤、歩留り向上剤、濾水性向上剤、消泡剤、染料、着色顔料などを適宜併用した紙料を調製して、蛍光発色する繊維状物を添加し、長網抄紙機や円網抄紙機等の公知の抄紙機を使用して抄紙する。
あるいは長網抄紙機へのスラリーの流送途中で蛍光発色繊維状物を添加し抄紙する。あるいは円網抄紙機のバット中に蛍光発色繊維状物を流送し抄紙する。多槽型円網抄紙機の場合は抄合わせにより用紙を製造できるので、任意の紙層に蛍光発色繊維状物を内添出来る。
この際、抄紙途上で紙面に澱粉、ポリビニルアルコール、各種表面サイズ等をサイズプレス装置等で塗工することも可能である。さらに必要に応じ、マシンカレンダー処理やスーパーカレンダー処理を施し、表面平滑性を向上させることも適宜行われる。
【0019】
[製法]
1)内添方法:蛍光発色する蛍光繊維を内添する方法
NBKP、LBKP、TMP等の製紙用パルプを主体として、サイズ剤、消泡剤、歩留まり向上剤、填料、染料、顔料、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤等を適宜併用したものを紙料とする。この紙料に、目的の種類、量で蛍光繊維をプレミックスし、適宜分散剤等を加え調製された分散液を添加混合する。この原料を用いて、公知の抄紙機を使用し抄紙を行う。
【0020】
2)表面振りかけ法:蛍光繊維を紙匹表面へ振りかける方法。噴射手段により、長網抄紙機のワイヤー上に形成された紙匹に蛍光発色する蛍光繊維を振りかける方法などで行える。表面へ振りかける際に縞模様やドット状などの模様を付けることができる。これにより識別力を一層向上させることができる。
【0021】
3)表面塗工法:蛍光繊維を基紙の表面へ塗工する方法
用紙抄造途中の乾燥ゾーンでサイズプレス装置、ブレード塗工装置、ゲートロール塗工装置等で蛍光発色する繊維状物に必要に応じて、スチレン系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、スチレン・マレイン酸樹脂、アルキルケテンダイマー、、澱粉、酸化澱粉、ヒドロキシエチル化澱粉、カルボキシメチル化セルロース、カルボキシメチル化グアーガム、リン酸化グアーガム、酸化グアーガム、ポリビニルアルコール、ポリアリアクリルアマイド等のバインダーを加え基紙表面に塗工する方法で製造する。
【0022】
4)塗工液添加:無機顔料とバインダーを主成分とする塗工液に蛍光繊維を添加して基紙に塗工する方法
カオリン、炭酸カルシウム、二酸化チタン、タルク、水酸化アルミニウム、二酸化珪素、硫酸バリウム、有機顔料、等の白色顔料とデンプン、カゼイン、ポリビニルアルコール、スチレン・ブタジエン共重合ラテックス、メチルメタクリレート・ブタジエン共重合ラテックス、ポリアクリル酸エステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、等のバインダーを主成分とする塗工液に蛍光発色する蛍光繊維を添加して塗工し製造する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線の照射により蛍光を発色する蛍光繊維をセルロース系繊維に混入された紙であって、前記蛍光繊維は蛍光が3種類以上から2種類以上をユーザ用及び/又は用途用に選択して混入されている複数種の蛍光繊維であることを特徴とする蛍光繊維混入紙。
【請求項2】
蛍光が青系、赤系、黄緑系の3色であり、該3色蛍光の内青−赤、赤−黄緑、黄緑−青のいずれかの2色の組合せであることを特徴とする請求項1記載の蛍光繊維混入紙。
【請求項3】
組み合わせる蛍光の比率を選択することを特徴とする請求項1又は2記載の蛍光繊維混入紙。
【請求項4】
蛍光繊維が紙の表面に模様状に配置されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の蛍光繊維混入紙。
【請求項5】
蛍光繊維が、蛍光剤を練り込まれたポリアミド系繊維であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の蛍光繊維混入紙。
【請求項6】
蛍光繊維が、蛍光剤を染色及び/又付着したポリアミド系繊維であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の蛍光繊維混入紙。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の蛍光繊維混入紙がユーザ用及び/又は用途用識別用紙。
【請求項8】
紫外線の照射により蛍光を発色する蛍光繊維をセルロース系繊維に混入された紙の製造方法であって、蛍光が3種類以上から2種類以上をユーザ用及び/又は用途用に選択した蛍光繊維をセルロース系繊維に混入して抄紙することを特徴とする蛍光繊維混入紙の製造方法。


【公開番号】特開2008−248403(P2008−248403A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−87925(P2007−87925)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】