説明

蛍石の精製方法

【課題】新規な蛍石の精製方法、特に蛍石中のヒ素含量を効果的に低減することができる精製方法を提供する。
【解決手段】CaFを含む原料蛍石を粉砕して平均粒径10μm以下の蛍石超微粒子を得、該蛍石超微粒子を平均泡径1mm以下の泡による浮遊選鉱に付して、CaFの純度が原料蛍石より高い精製蛍石を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蛍石の精製方法、より詳細には、粉砕および浮遊選鉱を用いた蛍石の精製方法に関する。また、本発明は、このような方法により得られる精製蛍石およびこれを用いたフッ化水素の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍石は、フッ化水素を製造するための反応原料として用いられており、フッ化水素は、蛍石(CaFを主成分とする)を硫酸(HSO)と加熱下にて反応させ(CaF+HSO→2HF↑+CaSO)、生成したフッ化水素(HF)を含む反応混合物をガスの形態で回収し、蒸留することによって製造されている。
【0003】
蛍石の原鉱石は主成分であるフッ化カルシウム(CaF)のほか、二酸化ケイ素(SiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、リン(P)およびヒ素(As)などの不純物を含み得る。このような不純物を多く含む蛍石をフッ化水素製造の反応原料としてそのまま用いると、生成したフッ化水素と不純物が反応して種々の不都合を招くので、高純度のフッ化水素を得るためには、蛍石をフッ化水素製造の反応原料として用いる前に予め精製しておくことが望ましい。
【0004】
従来一般的な蛍石の精製方法では、採掘した蛍石の原鉱石を平均粒径0.1mm程度の大きさの微粒子にまで粉砕した後、得られた蛍石微粒子を平均泡径が数mmの泡による浮遊選鉱に付すことにより、CaFの純度が向上した精製蛍石を得ている。粉砕は、通常、粗粉砕機および微粉砕機を用いて段階的に行われ得る。浮遊選鉱は、捕収剤などを添加したスラリーに空気を吹き込んで泡を形成し、粒子表面のエネルギー差(濡れ性の差または疎水性/親水性の相違)により、泡に浮かんだ粒子(例えば疎水性粒子)と、スラリー中に懸濁または沈降した粒子(例えば親水性粒子)とに分離するものである。このように分離された2種の粒子のうち、CaFの純度がより高いほうが精製蛍石として回収され、いずれが回収対象となるかは、含有される不純物の表面性状や、用いる捕収剤、液のpHなどによる。(例えば、SiOを不純物して含有するものは純CaFに比べて水中に存在しやすいし、硫化物を不純物して含有するものは純CaFに比べて泡中に存在しやすい。)
【0005】
現在市販されている蛍石は、このような精製方法によって既に精製されているのが通常であるが、原鉱石の産地により不純物含量のレベルが相違しており、低品位から超高品位のものまでさまざまである。低品位の蛍石は、高品位ないし超高品位の蛍石と比較した場合、二酸化ケイ素や炭酸カルシウムやヒ素など、さまざまな不純物を含んでいる。
【0006】
上述した従来一般的な蛍石の精製方法は、蛍石をフッ化水素製造の反応原料として用いる場合、二酸化ケイ素や炭酸カルシウムなどの除去能は十分であるが、特にヒ素の除去能は必ずしも十分ではない。蛍石の原鉱石中に不純物として多く含まれている二酸化ケイ素は、従来一般的な精製方法によって除去され、精製蛍石中の二酸化ケイ素含量を約1重量%以下にすることができる。蛍石中に含まれる二酸化ケイ素はフッ化水素製造プロセスにおいてフッ化水素と反応してフッ化ケイ素(SiF)を生じるが、フッ化ケイ素はフッ化水素との沸点差が大きいので蒸留により比較的容易に除去できる。これに対して、ヒ素は蛍石の原鉱石中にそれほど多量には含まれていないものの、従来一般的な精製方法ではあまり除去されず、蛍石の原鉱石中のヒ素含量に応じて精製蛍石中に残留する。蛍石中に含まれるヒ素はフッ化水素製造プロセスにおいてフッ化水素と反応してヒ素フッ化物(AsF)を生じ、ヒ素フッ化物はフッ化水素との沸点差が小さいので蒸留により除去することは困難である。
【0007】
このため、高純度のフッ化水素を産業規模で製造するプロセスにおいては、ヒ素含量が低い高品位蛍石が反応原料として使用されており、ヒ素含量が高い低品位蛍石は使用されていないのが現状である。
【0008】
【特許文献1】ソビエト連邦発明者証1710508号公報
【特許文献2】ソビエト連邦発明者証1606454号公報
【特許文献3】ソビエト連邦発明者証1682311号公報
【非特許文献1】イー・ブイ・グサコフ(E. V. Gusakov)、外4名、「蛍石濃縮物の化学的最終仕上げ(Chemical finishing of fluorite concentrates)」、Tsvetnye Metally、(ロシア)、1977年、第6号、p.83-85
【非特許文献2】エー・エー・ブラノフ(A. A. Bulanov)、外4名、「蛍石濃縮物の化学的濃縮におけるカラム分離の使用(Use of column classifiers in the chemical concentration of fluorite concentrations)」、Izvestiya Vysshikh Uchebnykh Zavedenii, Tsvetnaya Metallurgiya、(ロシア)、1988年、第4号、p.16-19
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、高品位蛍石は偏在しており、現在、高品位(いわゆるアシッドグレード)の蛍石もそのほとんどが中国産である。このため資源枯渇の懸念があり、また、中国政府の輸出規制によりこれら高品位蛍石の輸出許可量が減らされるとともに価格が高騰してきている。
【0010】
このような状況下、高品位蛍石に代えて低品位蛍石を産業規模で利用することに対する要請が高まってきており、蛍石中の不純物、特にヒ素含量を効果的に低減し得る精製方法の開発が望まれている。
【0011】
蛍石の精製方法としては、上述した従来一般的な蛍石の精製方法以外に、フッ化ケイ素酸(HSiF)で処理する方法(特許文献1)、酸性フッ化アンモニウム(NHF・HF)溶液で処理する方法(特許文献2)、無機酸で処理し、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液でオートクレーブ・アルカリ化する方法(特許文献3)、アルカリ溶液と一緒に加熱する方法(非特許文献1)、アルカリオートクレーブ浸出による脱シリコン化の前にカラム分離する方法(非特許文献2)が提案されているが、いずれも処理コストが高いため実用化に適さず、工業化されていない。
【0012】
本発明は、新規な蛍石の精製方法、特に蛍石中のヒ素含量を効果的に低減することができる精製方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、まず、従来一般的な蛍石の精製方法について微視的な検討を行った。この精製方法においては、原料となる蛍石を平均粒径0.1mm程度の大きさの微粒子に粉砕して浮遊選鉱にかけている。これによって不純物が分離されるには、(1)原料蛍石中に、不純物を比較的多量に含有する部分と不純物をそれ程含有しない部分とが0.1mmより大きなサイズで分布しており、平均粒径0.1mm程度の微粒子に粉砕することによって、不純物を比較的多量に含有する微粒子と不純物をそれ程含有しない微粒子との2種類に分類でき、かつ、(2)微粒子の表面特性を制御することによりそれら2種類の微粒子の表面エネルギーに差を持たせることが可能であることが必要である。
【0014】
従来一般的な蛍石の精製方法はヒ素の除去能が十分ではない理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、原料蛍石中でヒ素が0.1mmのサイズでは均一に分布しており、平均粒径0.1mm程度の微粒子に粉砕することによっては、ヒ素を比較的多量に含有する微粒子とヒ素をそれ程含有しない微粒子との2種類に分類できていないものと推察し、図2に示すように、粉砕によって得られた平均粒径0.1mm程度の微粒子のほとんど全部がヒ素(図中に黒丸で模式的に示す)を含有しており、このため、これら微粒子を浮遊選鉱に付してもヒ素を除去できないものと考えた。更に、本発明者らは、ヒ素は0.1mmのサイズで見れば均一に分布しているが、より小さなミクロンオーダー以下のレベルで見れば不均一に分布しており、ミクロンオーダー以下に粉砕することによって、ヒ素を比較的多量に含有する超微粒子とヒ素をそれ程含有しない超微粒子との2種類に分類でき、浮遊選鉱により分離可能であろうとの考えに基づいて、本発明を完成するに至った。
【0015】
本発明の1つの要旨によれば、CaFを含む原料蛍石を粉砕して平均粒径10μm以下の蛍石超微粒子を得、該蛍石超微粒子を平均泡径1mm以下の泡による浮遊選鉱に付して、CaFの純度が原料蛍石より高い精製蛍石を得る、蛍石の精製方法が提供される。
尚、本明細書を通じて、粒子(超微粒子および微粒子を包含する)の平均粒径は、遠心沈降法またはレーザー回折式粒度分布測定法によって測定される粒子の重量平均粒子径を意味する。平均泡径は、泡の顕微鏡写真を撮影し、その画像から泡径を相当数測定して得られた値の数平均値として求められる。蛍石の組成は、JIS M 8514に従って分析される。
【0016】
本発明の精製方法によれば、原料蛍石に含まれる不純物、特にヒ素含量を効果的に低減することができる。
本発明を限定するものではないが、本発明の作用効果は次のように理解することができる。図1に示すように、原料蛍石を平均粒径10μm以下の超微粒子に粉砕することによって、ヒ素(図中に黒丸で模式的に示す)を比較的多量に含有する超微粒子(図中に黒丸付き白丸で模式的に示す)と、ヒ素をそれ程含有しない超微粒子(図中に白丸のみで模式的に示す)との2種類に分類でき、平均泡径1mm以下の泡を用いた浮遊選鉱により、これら2種類の超微粒子の表面エネルギーに差を持たせて、片方の超微粒子を泡に浮かばせ、もう片方の超微粒子をスラリー中に懸濁または沈降させて分離でき(図1ではヒ素をそれ程含有しない超微粒子が泡に浮かび、ヒ素を比較的多量に含有する超微粒子がスラリー中に懸濁する態様を示しているが、逆の場合もある)、ヒ素をそれ程含有しない超微粒子を精製蛍石として得ることができる。
本発明の精製方法によって得られる精製蛍石は蛍石超微粒子の集合物であり、精製蛍石全体として、CaFの純度が原料蛍石より高くなっていればよく、精製蛍石は、図1を参照して上述したようなヒ素を比較的多量に含有する超微粒子だけでなく、ヒ素をそれ程含有しない超微粒子をも含んでいてよい。
【0017】
本発明においては、原料蛍石よりも精製蛍石のほうがヒ素含量を低くでき、例えば原料蛍石はヒ素含量100重量ppm以上であり、精製蛍石はヒ素含量50重量ppm未満であり得る。このような原料蛍石はいわゆる低品位蛍石であり得、これより得られた精製蛍石はいわゆる高品位蛍石と同等であり得る。原料蛍石は、蛍石の原鉱石そのものでも、従来一般的な精製方法が既に施されたものであってもよい。
【0018】
粉砕は、平均粒径10μm以下の蛍石超微粒子が得られればよいが、好ましくは平均粒径1μm以下、より好ましくは0.3μm以下の蛍石超微粒子が得られるように実施する。
例えば、原料蛍石を粗粉砕機で数cm〜数mmの平均粒径まで粉砕した後、微粉砕機で0.1mm程度の平均粒径に粉砕する。粗粉砕機としては、ジョークラッシャー、カッターミル、ハンマーミルなどを用いてよい。微粉砕機としては、ロールクラッシャー、ディスインテグレーター、スクリューミル、エッジランナー、スタンプミル、ディスクミル、ピンミル、ボールミル、振動ミルなどを用いてよい。ここまでの粉砕は、従来一般的な精製方法において実施されている粉砕と同様であってもよい。
そして、更に超微粉砕機で平均粒径10μm以下にまで粉砕する。超微粉砕機としては、ジェット粉砕機、ボールミル、媒体攪拌式粉砕機などを用いてよい。この超微粉砕は、超微粒子にまで粉砕できること、粉砕効率が高いこと(小さなエネルギーで粉砕ができること)、得られた超微粒子の粒度分布が狭いことが望ましく、このためには、湿式の媒体攪拌式粉砕機を用いることが好ましい。とりわけ、直径1mm以下の媒体(ビーズとも呼ばれる)を使用した媒体攪拌式粉砕機が好ましい。汚染を防ぐため、媒体や回転体はジルコニアなどの耐摩耗性に優れた素材でできていることが望ましい。粉砕効率を更に向上させるためには、粉砕助剤を用いることが好ましい。粉砕助剤としては、水、アルコールやアミンなどの有機溶媒、硝酸アルミやフェロシアン化カリウムのような多価無機塩、オレイン酸やステアリン酸のような界面活性剤などが挙げられる。
【0019】
浮遊選鉱は、分離する蛍石超微粒子に応じて適切な大きさの泡を用いる必要があり、平均粒径10μm以下の超微粒子を効率的に分離するため、平均泡径1mm以下の泡を用い、好ましくは平均泡径0.1mm以下の泡を用いる。このような浮遊選鉱は、マイクロバブル浮遊選鉱法により実施できる。マイクロバブル浮遊選鉱法は、平均泡径が数mmの泡に比較的大きい微粒子を付着させる通常の浮遊選鉱法とは異なり、例えば加圧溶解式マイクロバブル発生装置を用いて、例えば平均泡径が100ミクロンから数ミクロンの微細な気泡を発生させ、この泡に1ミクロンからサブミクロンの疎水性超微粒子を付着させて浮遊させ、親水性超微粒子を液中に懸濁させて、これら2種類の超微粒子を効率的に分離する方法である。尚、加圧溶解式マイクロバブル発生装置に代えて、旋回液流式、スタティックミキサー式、エゼクター式、ベンチュリ式、極微細孔式、超音波付加中空針状ノズル式、蒸気凝縮式などの他の方式のマイクロバブル発生装置を用いてもよい。
浮遊選鉱には、安定に効率良く選鉱するために、薬剤を組み合わせて用いてもよい。薬剤の例は、捕集剤、PH調整剤、粉砕助剤、ポリカルボン酸塩、活性剤などである。
捕集剤は、鉱物に吸着して粒子表面を疎水化する作用がある。捕集剤の具体例は、ドデシルアミンの塩化物、ケロシン、高級脂肪酸のナトリウム塩である。
PH調整剤は、粒子の表面電位を調整する作用がある。PH調整剤の具体例は、アンモニウム塩、アンモニア、塩酸である。
粉砕助剤は、粉砕時に粒子を安定化させる作用がある。粉砕助剤の具体例は、ポリカルボン酸塩である。
活性剤は、粒子の親和性が低い場合、捕集性、浮遊性を高める作用がある。活性剤の具体例は、硫化ナトリウム、塩化カルシウムである。
薬剤は、分離効率を最適化する量で添加される。捕集剤などの各々の薬剤の添加量は、蛍石超微粒子の重量に対して、10ppmから5%の範囲、例えば100ppmから1%の範囲であることが好ましい。
【0020】
本発明の精製方法の1つの態様においては、上記のような粉砕および浮遊選鉱によって得られた精製蛍石を再び粉砕および浮遊選鉱に付すことによって精製を繰り返すようにしてよい。このように精製を繰り返すことによって、最終的に得られる精製蛍石の純度を向上させることができる。
【0021】
本発明のもう1つの要旨によれば、上記のような本発明の蛍石の精製方法によって得られた精製蛍石もまた提供される。このような精製蛍石は、安価な低品位蛍石から得ることができる。また、この精製蛍石はヒ素含量が低く、かつ平均粒径10μm以下である。
【0022】
得られた精製蛍石はヒ素含量が低いので、高純度のフッ素水素を製造するための反応原料として好適に用いられる。よって、本発明の更にもう1つの要旨によれば、本発明の精製蛍石を硫酸と反応させてフッ化水素を生成させることを含んで成るフッ化水素の製造方法もまた提供される。精製蛍石は平均粒径10μm以下であり、従来一般的な精製方法より得られる平均粒径0.1mm程度の蛍石に比べて小さいので、比表面積が大きく、反応させ易いという利点もある。
【0023】
本発明のフッ化水素製造方法において、精製蛍石は乾燥させた状態で用いることが好ましい。反応条件は適宜設定し得るが、例えば約100〜400℃の温度および大気圧(約0.1MPa)以下の圧力下にて攪拌を加えながら実施できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、新規な蛍石の精製方法が提供される。本発明においては、原料蛍石を従来より小さく平均粒径10μm以下に粉砕した後、従来より小さい平均泡径1mm以下の泡により浮遊選鉱しているので、より高純度の蛍石を得ることができ、特に蛍石中のヒ素含量を効果的に低減することができる。
【実施例】
【0025】
(予備実験)
まず、従来一般的な精製方法に従って蛍石を精製した。
この予備実験においては、メキシコの鉱山から採掘された蛍石の原鉱石を用いた。原鉱石の組成を分析したところ、ヒ素含量340重量ppm、SiO含量7.75重量%であった。
この原鉱石をジョークラッシャーで粉砕した上、水を加えたボールミルで微粉砕して、平均粒径0.30mmの蛍石微粒子を得た。得られた蛍石微粒子の組成を分析したところ、ヒ素含量260重量ppm、SiO含量7.75重量%であった。
この蛍石微粒子を、オレイン酸ナトリウムを捕収剤として用い、平均泡径5mmの泡による通常の浮遊選鉱に付し、泡に浮いた蛍石微粒子を精製蛍石として回収した。得られた精製蛍石の組成を分析したところ、ヒ素含量260重量ppm、SiO含量1.08重量%であった。
この結果から、従来一般的な精製方法では、SiO含量を約1重量%程度に低減できること、および上記浮遊選鉱でヒ素を除去することはほとんどできず、精製蛍石中に260重量ppmのヒ素が残留することが確認された。
【0026】
(実施例)
次に、上記予備実験で得られた蛍石(従来一般的な精製方法によって得られる精製蛍石に相当する)を原料蛍石とし、ポリカルボン酸ナトリウムを粉砕助剤として用いて、湿式ビーズミル(スターミル(登録商標)ナノ・ゲッターDMS65、アシザワ・ファインテック株式会社製)で粉砕し、平均粒径0.13μmの蛍石超微粒子を得た。得られた蛍石超微粒子の組成を分析したところ、ヒ素含量270重量ppmであった。尚、上記予備実験の結果(ヒ素含量260重量ppm)よりヒ素が増えているが、操作および測定上のバラツキ範囲内であると考えられる。
この蛍石超微粒子30gを、オレイン酸ナトリウムを捕収剤として用い、マイクロバブル浮遊選鉱法(加圧溶解式でマイクロバブルを発生させるもの、マイクロバブルの平均泡径40μm、蛍石超微粒子30g/水2000ml/オレイン酸ナトリウム5g)により浮遊選鉱に付し、泡に浮いた蛍石超微粒子を精製蛍石として回収した。回収した蛍石は2.1gであった(仕込んだ蛍石超微粒子30gに対して7重量%)。得られた精製蛍石の組成を分析したところ、ヒ素含量32重量ppmであった。
この結果から、本発明の蛍石の精製方法により、ヒ素含量を270重量ppmから30ppmにまで効果的に低減できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の蛍石の精製方法を模式的に説明する図である。
【図2】従来一般的な蛍石の精製方法を模式的に説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
CaFを含む原料蛍石を粉砕して平均粒径10μm以下の蛍石超微粒子を得、該蛍石超微粒子を平均泡径1mm以下の泡による浮遊選鉱に付して、CaFの純度が原料蛍石より高い精製蛍石を得る、蛍石の精製方法。
【請求項2】
原料蛍石よりも精製蛍石のほうがヒ素含量が低い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
原料蛍石はヒ素含量100重量ppm以上であり、精製蛍石はヒ素含量50重量ppm未満である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
粉砕により平均粒径1μm以下の蛍石超微粒子を得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
粉砕により平均粒径0.3μm以下の蛍石超微粒子を得る、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
浮遊選鉱において平均泡径0.1mm以下の泡を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
得られた精製蛍石を再び前記粉砕および前記浮遊選鉱に付すことによって精製を繰り返す、請求項1〜6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の蛍石の精製方法によって得られた精製蛍石。
【請求項9】
請求項8に記載の精製蛍石を硫酸と反応させてフッ化水素を生成させることを含んで成るフッ化水素の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−57250(P2009−57250A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−226416(P2007−226416)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】