説明

融剤

本発明は、複雑なアルカリ金属フッ化物に加えて水溶性ポリマー、好ましくはポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール誘導体を含有する融剤又は融剤製剤に関する。水溶性ポリマーは、グラニュール又は粉末として前記融剤製剤中に含まれていてよく、又は前記融剤又は融剤製剤のための水溶性包装物として使用されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウム構造部材をろう付けするための融剤並びに融剤を調製する(Konfektionierung)方法に関する。
【0002】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる部材の、又は適している他の材料、例えば銅、黄銅、鉄又は合金鋼からなる部材と組合せた、構成要素(Baugruppen)は、これらの部材をろう付けすることにより製造されることができる。これらの構造部材のろう付けについての技術は公知である。前記構造部材は、ろう金属及び融剤の助けを借りて加熱下に互いに結合される。その際に前記ろう金属が別個に添加されてよく、又はろう金属でめっきされた構造部材が使用されてよい。互いにろう付けすべき構造部材の表面から酸化付着物を取り除く、複雑な(komplexer)フルオロメタレートをベースとする融剤、例えば複雑なアルカリ金属フッ化物が、利点を伴って使用される。その際に前記融剤は乾式で又はペーストとして塗布されるか、又は水性懸濁液として結合すべき構造部材上に噴霧されるか、又は前記構造部材が前記懸濁液中へ浸漬される。
【0003】
“融剤”という概念は、融剤に加えて場合により助剤を含有するすぐ使用できる組成物を包含する。その際、前記融剤は融剤のみからなっていてよい。助剤として、前記融剤製剤中に例えば結合剤、分散剤、ろう金属、ろう金属−前駆物質、ろうを形成する材料又は安定剤が含まれていてよい。
【0004】
複雑なフルオロメタレートをベースとする融剤は、例えばアルカリ金属フルオロアルミン酸塩、アルカリ金属フルオロケイ酸塩、アルカリ金属フルオロ亜鉛酸塩であってよい。その際に他の公知の融剤も同様に適している。
【0005】
前記フッ素化合物は、純粋な化合物として又はフッ素化合物の混合物として使用されることができる。
【0006】
既に述べたように、前記融剤もしくは融剤製剤は乾式で、ペーストとして又は水性懸濁液の形で結合すべき構造部材上に施与される。
【0007】
前記懸濁液の製造のためには、混合物成分は水中に懸濁される。その際に、前記成分の性質に基づいてダストの厄介さ又は計量供給の失敗の結果となりうる。
【0008】
ペーストの製造のためには、前記融剤は、助剤及び担持物質、例えば有機化合物と混合され、その際に前記製剤の粘度は担体物質の量により制御されることができる。
【0009】
本発明の課題は、より良好に計量供給されることができる融剤もしくは融剤製剤を提供することである。融剤懸濁液の製造の際のダストの厄介さは回避されるべきであり、前記融剤でのろう付けすべき構造部材の濡れ及び構造部材上への前記融剤の付着は改善されるべきである。
【0010】
前記課題は、複雑なフルオロメタレートをベースとする融剤もしくは融剤製剤が本発明によれば水溶性ポリマー、特にポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール誘導体を含有することによって解決される。前記水溶性ポリマーは、前記融剤又は融剤製剤のためのシェル物質(Huellstoff)として使用されることができるか、又はグラニュール又は粉末の形で前記融剤又は融剤製剤中へ導入されることができる。前記水溶性ポリマーは、例えば水溶性包装物として、特に包装フィルムとして使用されることができる。
【0011】
本発明によれば、前記融剤もしくは融剤製剤は、融剤もしくは融剤製剤の全量に対して、前記水溶性ポリマーを0.005〜10質量%の量で含有する。
【0012】
本発明の実施態様において、前記融剤は常用の助剤を用いて水溶性ポリマーフィルムからなるバッグ(Beutel)、好ましくは水溶性ポリビニルアルコールフィルムからなるバッグ中へ包装され、かつ水性懸濁液中へ導入される。例えば80μmの厚さを有するフィルムを使用した。
【0013】
ポリビニルアルコールは既に数十年来、大工業的に製造されている。その性質に基づいて、ポリビニルアルコール(PVA)は例えば仕上げ剤又はサイズ剤として、乳化剤として及び保護コロイドとして使用される。有機溶剤に対するPVAの高い耐性に基づいて、それからベンジン耐性及び溶剤耐性のホース、膜、パッキン及び中空体が製造される。
【0014】
PVA−フィルムは、シェル物質又は包装物質の中では特別な位置を占める、それというのもこれらは導入する際に水中に溶解するからである。すなわち水溶性PVA−フィルムは、単に接触保護もしくは計量包装物に過ぎない。
【0015】
それらの使用可能性及び貯蔵の際に及びPVA−包装物の輸送の際に講じられなければならない予防措置は、本質的には前記フィルムの良好な水溶性及び吸湿性の挙動により制約されている。
【0016】
PVA−フィルムは、水溶液中で使用される物質にとって理想的な包装材料である。
【0017】
かなり多数の製品、例えば洗剤、清浄剤又は農業用化学薬品は、既にPVA−フィルム中に包装されている。
【0018】
水溶性フィルムは、それらのけん化度及び重合度により異なる多様なタイプのポリビニルアルコールから製造されることができる。さらに、前記フィルムの性質は、添加された可塑剤の種類及び量により影響を受けうる。EP 283 180からは、部分的にベンズアルデヒド誘導体でアセタール化された、ポリビニルアルコール、しかもビニルアルコール−酢酸ビニル−コポリマーをベースとする水溶性フィルムが公知である。
【0019】
包装材料として融剤懸濁液中へもしくはグラニュール形でペースト状の融剤配合物中へ水溶性ポリマーを導入することが、ろう付け結果への不利な作用を有しないことが見出された。使用される水溶性ポリマーの量及び種類は、前記融剤もしくは融剤製剤の種類に従う。懸濁液の場合に懸濁液の体積及び懸濁液中の融剤濃度が本質的であり、ペースト状の製剤の場合に体積に加えて所望の粘度及び担持物質との相互作用の知識が本質的である。前記水溶性ポリマーを0.005〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%、特に0.5〜2質量%(全量に対して)の量で使用することが好都合であることが判明している。
【0020】
前記水溶性ポリマーの添加により前記融剤での前記構造部材のコーティングが極めて均一であることを確認されることができた。前記融剤での構造部材の濡れは改善される。前記融剤は構造部材上により良好に付着する。前記製剤の製造の際のダストの厄介さは減少されるかもしくはもはや生じない。計量供給の失敗は、最小限にされることができるかもしくはそれどころか排除されることができる、それというのもわかりやすい包装サイズが可能だからである。
【0021】
さらに、水溶性ポリマーの添加により前記湿潤剤の量が低下されることができることは有利である。湿潤剤として通常、界面活性剤が使用される。湿潤剤なし、すなわち界面活性剤なしでは、前記融剤懸濁液はアルミニウム表面上に円塊状になるであろう(水の凝集力に基づく小滴形成)。乾燥後に融剤は金属表面上に均質に分配されていないであろう。ポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体の使用は、水の表面張力が減少されることができるという利点を有するので、最も好都合な場合には付加的な湿潤剤が不必要になる。前記ポリビニルアルコールもしくはポリビニルアルコール誘導体は、界面活性剤のように作用し、これらは生分解可能であり、かつこれらの物質の毒物学的な作用は知られていない。
【0022】
ろう付け結果へのマイナスの影響が許容されることができない場合には、PVA−割合ができるだけ僅かに保持されるべきであることが見出された。
【0023】
0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜2質量%(全量に対して)の融剤に対するポリマー(包装物として)の比を遵守することは好都合であることが判明しており、それゆえろう特性はマイナスの影響を受けない。多すぎるPVA−包装物は、ろう付けプロセスの間にろう付け位置での変色をまねきうる。
【0024】
0.005〜10質量%(全量に対して)の懸濁液量に対するポリマーの比は、濡れ挙動もしくは前記融剤での構造部材の装填(Beaufschlagung)にプラスに作用する。かつ均一なコーティングはそしてまた改善されたろう付け結果をもたらす。
【0025】
他の実施態様において、前記融剤もしくは融剤製剤は、ペースト配合物としてろう付けすべき構造部材上に施与される。この場合に、前記水溶性ポリマー、好ましくはポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール誘導体はグラニュール形で又は粉末として前記融剤製剤に添加される。
【0026】
製剤の全量に対して0.1〜5質量%の添加の場合に、ポリビニルアルコールが融剤ペーストを濃厚化させる作用があることが見出された。ポリビニルアルコールを含有している融剤ペーストの付着特性は同様に改善されている。
【0027】
融剤配合物の成分としてのポリビニルアルコールの使用は既に説明されたように、前記融剤配合物中に通常含まれている界面活性剤が置換されることができるという利点を有する。ポリビニルアルコールは環境に優しく、かつろう付けプロセスの間に融剤成分もしくはろう付け相手との不利な反応を引き起こさない。
【0028】
実施例
以下の例は本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0029】
例1:融剤懸濁液の製造
容器に脱ミネラル水を投入した。Nordenia社のタイプG 6102.090のポリビニルアルコールフィルムを、撹拌しながら水中に溶解させた。その後、フルオロアルミン酸カリウム(Nocolok)の添加を行った。製造された融剤懸濁液は次のものからなっていた:
フルオロアルミン酸カリウム 18%
ポリビニルアルコール 2%
脱ミネラル水 80%。
【0030】
例2:ろう付け試験
寸法25×25×0.4〜1mmを有し、片面でろうめっきされたアルミニウムクーポン及びめっきされていないアルミニウムクーポンを例1からの均質化された懸濁液中へ約30秒間浸漬し、引き続いて乾燥させた。クーポン上の融剤の分布は均質であった。表面上での融剤の付着は良好であり、かつワイピング耐性であった。
【0031】
ろうめっきされたアルミニウムクーポンとの6つのろう付け及びめっきされていないアルミニウムクーポンとの6つのろう付けをその都度実施した。全てのクーポンをアルミニウム角部とろう付けした。
【0032】
めっきされていないクーポンの場合に、角端部にAlSi 12からなる3〜4mmの長さのろう片を置いた。
【0033】
ろう付け試験をガラス−ろう付け炉タイプIII中で実施した。
ろう付け条件:
持続的な窒素流 11 l/分
加熱速度 605℃の温度まで30℃/分
605℃での保持時間 2分
冷却時間 30℃/分。
【0034】
結果:
全てのクーポンは角部と最適にろう付けされていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複雑なアルカリ金属フッ化物をベースとする融剤において、前記融剤が水溶性ポリマーを含有していることを特徴とする、融剤。
【請求項2】
融剤が例えば結合剤又は分散剤のような助剤を含有している、請求項1記載の融剤。
【請求項3】
融剤が水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコール及び/又はポリビニルアルコール誘導体を0.005〜10質量%の量で(融剤製剤に対して)含有している、請求項1記載の融剤。
【請求項4】
水溶性ポリマーをシェル物質として融剤製剤のために使用するか、又はグラニュールもしくは粉末として融剤製剤中へ導入することを特徴とする、融剤を調製する方法。
【請求項5】
ポリビニルアルコール又はポリビニルアルコール誘導体からなる水溶性フィルムを融剤製剤のためのシェル物質として使用する、請求項4記載の融剤を調製する方法。
【請求項6】
水溶性ポリマーをグラニュール又は粉末としてペースト状の融剤製剤中へ導入する、請求項4記載の融剤を調製する方法。
【請求項7】
アルミニウム又はアルミニウム合金からなる構造部材をろう付けするため、又はアルミニウム又はアルミニウム合金からなる構造部材及び適している材料、例えば銅、黄銅、鉄又は合金鋼からなる構造部材をろう付けするための、請求項1から6までのいずれか1項記載の融剤製剤の使用。

【公表番号】特表2007−521139(P2007−521139A)
【公表日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544266(P2006−544266)
【出願日】平成16年12月3日(2004.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2004/013759
【国際公開番号】WO2005/058985
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(592165314)ゾルファイ フルーオル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (55)
【氏名又は名称原語表記】Solvay Fluor GmbH
【住所又は居所原語表記】Hans−Boeckler−Allee 20,D−30173 Hannover,Germany