説明

螺旋体の転造加工方法とその転造用ダイス

螺旋体ギヤ歯車機構の螺旋体を転造により加工するための螺旋体転造加工方法とその転造用ダイスに関する。この転造加工された螺旋体の真円度の転造精度を向上させる。 転造加工が最終段階に近くなると、プレーンダイス37の外周は、ウォーム転造用素材25の転造圧調整用カム29の部分に接触する。このときのプレーンダイス37と転造圧調整用カム29との接触圧は、切欠き平面30の角度位置では押し込み量が大きく、切欠き平面30が形成されていないところは弱くなるので真円に近い転造が可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、螺旋体を転造加工するための螺旋体の転造加工方法とその転造用ダイスに関する。更に詳しくは、歯車機構等に使用されるウォーム、ヘリカルギヤ、ヘリカルスプライン、固着用、又は回転運動を直線運動に変換するための多条ネジ等の螺旋体を転造により加工するための螺旋体の転造加工方法とその転造用ダイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ウォームとウォーム歯車機構を噛み合わせたウォームギヤ歯車機構は、速度比を大きくすることができる減速歯車機構等に使用されている。相互に直角であるが交わらない軸の一方から他方へ動力を伝達する機構として使用されることが多い。
【0003】
本発明者等は、ギヤ精度を十分確保しながら加工工程を減少させたウォームの転造加工方法とそのウォームを提案した(特許文献1)。これらの転造加工方法で転造されたウォームは、多条ウォームの場合は精度上大きな問題は発生しないが、高精度の1条ネジ(螺旋歯)の場合は目的とする精度がでない、特に真円度(ウォームの断面円形部分の幾何学的円からの狂いの大きさ。)に問題が発生した。
【0004】
この真円度の狂いは、転造加工時に発生するものであり、多条ウォームの場合、転造ダイスでウォーム転造用素材とを転造加工するとき、その回転角度位置により噛み合う歯数が異なるためである。転造ダイスとウォーム転造用素材との噛み合う歯数が異なると、転造ダイスの押込み圧を一定の押し込み量(1回転当たりの送り量)で押していたとしても、ウォーム転造用素材の外周の回転角度位置で転造圧が異なることになる。このために、転造されたウォームは、外周の回転角度位置で転造の深さが異なり真円度が良くないことになる。
【特許文献1】WO03/000442A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述のような技術背景のもとになされたものであり、下記目的を達成する。
【0006】
本発明の目的は、螺旋体の真円度の転造精度を向上させるための螺旋体の転造加工方法とその転造用ダイスを提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、生産性を落とすことなく螺旋体の真円度の転造精度を向上させるための螺旋体の転造加工方法とその転造用ダイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記目的を達成するために次の手段を採る。
本発明1の螺旋体の転造加工方法は、多条の螺旋部を有する螺旋体を転造加工するために、一対の対向するダイス間に螺旋体転造用素材を挟んで転造加工する螺旋体の転造加工方法であって、
前記螺旋体転造用素材は、
前記螺旋部が成形される螺旋成形部、及び
前記転造加工時に、前記螺旋体転造用素材への一対の前記ダイスの押し込み圧力を、前記螺旋体転造用素材の回転角度位置で均等化するために、前記螺旋体転造用素材の外周面に半径方向に異なるカム面が形成された転造圧調整用カム(29)を配置し、
前記転造圧調整用カム(29)に前記ダイスと一体に駆動されるプレーンダイス(37)を押し当てて転造加工することを特徴とする。
【0009】
本発明2の螺旋体の転造加工方法は、本発明1に記載の螺旋体の転造加工方法において、前記転造圧調整用カム(29)は、前記螺旋部の条数に対応したカム面が形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明3の螺旋体の転造加工方法は、本発明1又は2に記載の螺旋体の転造加工方法において、前記カム面は、円筒面と平面(30)であることを特徴とする。
【0011】
本発明4の螺旋体の転造加工方法は、本発明1ないし3に記載の螺旋体の転造加工方法において、前記ダイスは、円筒状の丸ダイスであることを特徴とする。
【0012】
本発明5の螺旋体の転造加工方法は、多条の螺旋部を有する螺旋体を転造加工するために一対の対向するダイス間に螺旋体転造用素材を挟んで転造加工する螺旋体転造加工方法であって、
前記螺旋体転造用素材は、前記螺旋部が成形される螺旋成形部、及び軸部(50,52)を有し、
前記転造加工時に、前記螺旋体転造用素材への一対の前記ダイスの押し込み圧力を、前記螺旋体転造用素材の回転角度位置で均等化するために、前記ダイスと一体に移動する転造圧調整用カム円板(46)を配置し、
前記ダイスと一体に駆動される前記転造圧調整用カム(46)を前記軸部(50,52)に押し当てて転造加工することを特徴とする。
【0013】
本発明6の螺旋体の転造加工方法は、本発明5に記載の螺旋体の転造加工方法において、前記転造圧調整用カム(46)は、前記螺旋部の多条螺旋の条数に対応したカム面が形成されていることを特徴とする。
【0014】
本発明7の螺旋体の転造加工方法は、本発明5又は6に記載の螺旋体の転造加工方法において、前記ダイスは、円筒状の丸ダイスであり、前記転造圧調整用カム円板(46)は、円板状であり、外周面にカム面(49)が形成されていることを特徴とする。
【0015】
本発明8の螺旋体の転造加工方法は、本発明5又は6に記載の螺旋体の転造加工方法において、前記転造圧調整用カム円板(46)を、前記軸部(50,52)に挿入された円筒状のフランジ治具(51)に接触させて転造することを特徴とする。
【0016】
本発明9の転造加工用転造ダイスは、多条の螺旋部を有する螺旋体を転造加工するために、一対の対向するダイス間に螺旋体転造用素材を挟んで転造加工するための転造加工用転造ダイスであって、
前記転造加工時に、前記螺旋体転造用素材への前記ダイスの押し込み圧力を、前記螺旋体転造用素材の回転角度位置で均等化するために前記ダイスと一体に移動するカムである転造圧調整用カム(46)を配置したことを特徴とする。
【0017】
本発明10の転造加工用転造ダイスは、本発明9に記載の螺旋体転造用素材を加工するための転造ダイスであって、前記転造ダイスは丸ダイスであり、前記転造圧調整用カム(46)は、円板状で、かつ外周面にカム面(49)が形成されていることを特徴とする。
本発明の螺旋体とは、歯車機構等に使用されるウォーム、ヘリカルギヤ、ヘリカルスプライン、固着用、又は回転運動を直線運動に変換するための多条ネジ等も含む概念であり、ネジ山が2本以上のつる巻線に沿って設けられた螺旋部を有するものを意味する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の螺旋体の転造加工方法とその転造用ダイスの利点は、転造時の押込み圧力の制御が可能になったので、真円度の高い螺旋体の加工が可能になった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の最良の実施の形態を図面によって具体的に説明する。
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1を説明する。図1は本発明のウォーム転造加工方法で加工するウォーム形状の一例を示す正面図であり、図2は図1のa−a線で切断したときの拡大断面図である。ウォーム1の中央部にはネジ部(螺旋状の歯)2が形成されている。ネジ部2は、本実施の形態のものはネジ山6及びネジ山15の2条からなる。ネジ部2の中央部には、完全ネジ部3が形成されている。完全ネジ部3の両端は、不完全ネジ部4が形成されている。不完全ネジ部4は、完全ネジ部3と連続的につながって形成されている。ウォーム1の一端には、電動モータ等の駆動手段に固定するためのオネジ8が形成されている。
【0020】
不完全ネジ部4は、略円筒面であるネジ底5から徐々に立ち上がり、完全ネジ部3に連続した螺旋形状である。この不完全ネジ部4は、その外周部分が切除されたような形状をなしている。ネジ部2の両端には、フランジが形成され更にその外側に軸部7が形成されている。軸部7は、ウォーム1を軸受(図示せず)で回転自在に支持するための部分である。
【0021】
図2に示すように、一方のネジ山6の不完全ネジ部4の一端は、ネジ底5の立ち上がり部10から立ち上がり、不完全ネジ部4の終点11に連続するまでの角度間隔は角度αである。このネジ山6の他端は、完全ネジ部3の終点12から不完全ネジ部4が始まりネジ底5の立ち上がり部13で終了する。同様に、他方のネジ山15も180度の角度間隔を置いて、同様の形状を成している。本実施の形態の場合、図2に示すように、中心軸線OからX軸方向に切断した断面で4個の完全ネジ山18が表れる(図3(a)参照)。
【0022】
図2に示すように、中心軸線Oからプラス方向にY軸方向で切断したときの断面では、4個の完全ネジ山18と2個の不完全ネジ山19が表れる(図3(b)参照)。同様に中心軸線Oからマイナス方向にY軸方向で切断したときの断面で4個の完全ネジ山18と2個の不完全ネジ山19が表れる。
【0023】
従って、ウォーム1は、この中心軸線Oを含む半径方向の平面で切断したとき、ネジ山6及びネジ山15の断面積は角度によって異なることになる。このためにこのウォーム1を転造加工すると、断面積が外周角度によって塑性加工するための塑性変形量が異なるので、通常の転造加工で行うと2条のネジ山を備えたものは断面形状が概略楕円になり、3条のネジ山は断面が概略三角形状となる。このために真円度の高い加工が困難となる。本発明はこのための補正手段を提供することにある。
なお、前述した説明で理解されるように、本発明でいうウォームとは、固着手段、回転を直線運動に変換する多条ネジも含む意味である。
【0024】
[ウォーム転造用素材25]
図4は転造加工前のウォーム転造用素材を示し、図4(a)は正面図であり、図4(b)は図4(a)の右側面図である。ウォーム転造用素材25は、切削加工、転造加工等の加工方法で加工されたものであり、全体で一体の素材で作られている。ウォーム転造用素材25は、中央部に前述した転造加工後に完全ネジ部3の部分となる円筒部26が形成されている。円筒部26の両端には、これと連続してテーパ部27が形成されている。テーパ部27は、転造加工後に不完全ネジ部4となる部分である。
【0025】
このテーパ部27に続いて小径部28がそれぞれ形成されている。小径部28の直径は、前述したネジ底5の直径より若干小径に形成されている。即ち、この小径部28は、転造加工されない部分である。この小径部28に連続して円筒状の転造圧調整用カム29がそれぞれ形成されている。転造圧調整用カム29は、ネジ部2の転造加工後に加工されて、前述したフランジ、軸部7、オネジ8等が形成される部分である(図1参照)。
【0026】
円筒状の転造圧調整用カム29は、その外周の180度の角度を置いて2箇所は切削加工等により除肉され切欠き平面30に切り欠いてある。本実施の形態の切欠き平面30の交点(図4(b)参照)31が、前述したウォーム1のY軸と交わる角度位置である(図2参照)。即ち、この切断面は、4個の完全ネジ山18と2個の不完全ネジ山19が表れる断面である(図3(b)参照)。従って、この角度では最も転造圧が必要であり、この角度位置が最も除肉が必要な位置である。この結果、ウォーム転造用素材25の全周面に亘って、均一な転造圧を後述する一対の第1転造丸ダイス40及び第2転造丸ダイス41によって押圧できる転造加工用素材となる。
【0027】
[第1転造丸ダイス40]
ウォーム転造用素材25は、ウォーム加工用の一対の第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41の間で挟まれて加工される。図5は、一方の第1転造丸ダイス40の正面図である。第1転造丸ダイス40は、円筒の外周に形成されたウォーム転造歯36を被加工物に押圧して転造加工する。この第1転造丸ダイス40と互いに回転軸線を平行に配置し、かつ180度角度を置いた他方の第2転造丸ダイス41との中間にウォーム転造用素材25を配置して転造する。第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41は、互いに同期して同一方向にサーボモータ(図示せず)により回転駆動される。この転造加工装置は、公知技術(例えば、WO03/000442A1)でありかつ本発明の要旨でもないのでその説明は省略する。
【0028】
本実施の形態の第1転造丸ダイス40の中央部には、ネジ部2を転造加工するためのウォーム転造歯36が形成されている。ウォームのネジ山の歯面形状は、種々の形状が知られているが、インボリュートウォームの場合は軸直角平面の歯形はインボリュートである。このネジ山の形状を転造で形成するための凹凸が逆転したウォーム転造歯36が形成されている。このウォーム転造歯36の両端には、円板状のプレーンダイス37が一体に固定されている。プレーンダイス37の外周には転造用の凹凸である転造歯は形成されてなく、円筒面が形成されている。
【0029】
プレーンダイス37の外周は、転造加工が進行してある押し込み深さになると、前述したウォーム転造用素材25の転造圧調整用カム29の部分に接触するので押し込み量を規制する一種のストッパーの機能を果たす。このときのプレーンダイス37と転造圧調整用カム29との接触圧は、切欠き平面30の角度位置では押し込み量が大きく、切欠き平面30が形成されていないところは弱くなる。このために、転造加工時に外周角度位置による単位接触長さ、即ちウォーム転造歯36と円筒部26との接触長さの単位長さの押圧力(転造圧)を一定にすることができる。他方の第2転造丸ダイス41も同一形状であるからその説明は省略する。
【0030】
[ウォーム転造用素材25の転造加工方法]
図6(a)〜(c)は、ウォームの転造加工の工程の概略を示すものである。ウォーム転造用素材25のチャッキング位置で、ワークチャック装置(図示せず)を作動させて、ウォーム転造用素材25をセンタ(図示せず)で挟んで保持する。このウォーム転造用素材25を第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41との回転が停止中に、第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41間の加工開始位置まで送る。このとき、ウォーム転造用素材25は、不完全ネジ部4の角度位相と合致するように、所定角度位置に位置決めされている。
【0031】
第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41も同様に、加工開始点である所定位置及び所定角度に位置決めされている。次に、第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41を同一回転方向に回転するように起動させ、互いに同期回転させる。第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41が互いに同期回転しながら、押込み用の油圧シリンダ(図示せず)を駆動させて、互いに接近するように押込みを行う。この押し込みにより、転造加工が開始される(図6(a)参照)。
【0032】
このとき、加工しようとするウォーム1の進み角が強くて、転造加工の仕上がり直径と素材直径の差が大きいとき、転造進行中に進み角が変化し誤差となる。この誤差が歩みを発生させる。転造加工が開始されると、この歩みが発生してもウォーム転造用素材25がその中心軸線方向に移動して自己補正する。ウォーム転造用素材25は、送り台(図示せず)の上を自由に摺動可能であるため、転造中のウォーム転造用素材25は第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41のリード角、素材直径と仕上がり直径との差、及び回転数に応じた値だけ移動(歩み)を行う(図6(b)の矢印方向)。
【0033】
転造加工が進んで、ウォーム転造用素材25が設定量移動すると、この移動を前進位置検出センサー(図示せず)により検知される。これが検知されると、第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41は、回転を停止し、かつ油圧シリンダによる押込み動作が停止される。更に、第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41は、押込み方向とは逆方向に後退する。本実施の形態では、約0.05〜0.2mm程度後退し、転造の押し付け圧力が除かれる程度解除する。
【0034】
この後、第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41を転造加工位置まで再度押し込み、逆回転を開始する。再び転造加工が開始される。この転造加工が進行すると、プレーンダイス37の外周がウォーム転造用素材25の転造圧調整用カム29の部分に接触する。この接触は一種の押し込み量を規制するストッパーの機能を果たす。このために、切欠き平面30の部分になると、押込み量が大きくなり、円筒部分になると押し込み量は制限される。この結果、均一な転造が可能になるので楕円等の変形が少なく、真円を保って転造加工ができる。
【0035】
この転造加工により、第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41のリードにより、ウォーム転造用素材25は前述した転造とは逆方向の軸線方向に移動し、後退位置検出センサー(図示せず)により検知される。第1転造丸ダイス40、及び第2転造丸ダイス41の回転を停止させて転造加工は終了する(図6(c)参照)。
【0036】
転造加工が最終段階に近くなると、プレーンダイス37の外周は、ウォーム転造用素材25の転造圧調整用カム29の部分に接触する。このときのプレーンダイス37と転造圧調整用カム29との接触圧は、切欠き平面30の角度位置では押し込み量が大きく、切欠き平面30が形成されていないところは弱くなるので真円に近い転造が可能になる。必要があれば、再度前述した正転、逆転工程を繰り返しても良い。また、加工条件によっては、加工途中に押し込み動作を行わないドウエル動作を挿入すると加工精度が向上することもある。
【0037】
[実施の形態2]
前述した実施の形態1は、ウォーム転造用素材25に転造圧調整用カムを形成するものであった。この補正方法は、ウォーム転造用素材25を1個単位に予め加工する必要があり、この予備加工は加工コストの点で不利である。図7は、転造丸ダイス45を示すものであり、図7(a)は正面図、図7(b)は図7(a)の側面図である。転造丸ダイス45の本体の側面には、フランジ47が一体に設けてある。
【0038】
フランジ47の両側面には、転造圧調整用カム円板46がボルト48で固定されている。転造圧調整用カム円板46の外周には、波状のカム面49が形成されている。このカム面49は、ウォーム転造用素材25の未加工の円筒部50に接する。前述した実施の形態1では円筒部50にカム面を形成したが、本実施の形態2ではカム面を形成する必要がない。転造加工方法は実施の形態1と実質的に同一である。
【0039】
[実施の形態3]
図8は、プレーンダイスを取り付けた実施の形態3の補正方法を示すものであり、転造丸ダイスの断面図である。実施の形態2と同様に転造圧調整用カム円板46を用いる点では同一であるが、ウォーム転造用素材25にリング状のフランジ治具51を用いる点で異なる。フランジ治具51は、ウォーム転造用素材25のボールベアリング等の軸受を挿入する軸部分52に挿入したものであり、本実施の形態では左右2個が挿入されている。
【0040】
転造加工時には、フランジ治具51と軸部分52との間で若干相対回転できる嵌め合いであるが、この相対回転により素材のネジレ等の歪みを吸収できる。また、軸部分52には、本実施の形態では仕上げ加工代は残してあるが、ただし、加工歪み等が予測できれば仕上げ加工されたものであっても良い。左右の軸部分52の直径の大きさは同一であるとは限らないので、左右のフランジ治具51の直径の大きさも同一径であるとは限らない。
【0041】
転造圧調整用カム円板46の外周面に左右の接する左右のフランジ治具51が均等の圧力で接するような直径の大きさに決める。厳密には、フランジ治具51の外径は、実際に転造した結果で最適な数値に決める。この転造方法は、実際にウォームが使用される状態に近い状態で転造されるので、歯形の形状精度の良い加工ができる。
【0042】
(その他の実施の形態)
前述した実施の形態1及び2は、2条のネジ山を有するウォームであったが、3条、4条のネジ山を備えたウォームであっても良い。3条のネジ山を備えたものは、概略断面が三角形状に転造され、4条ネジ山の場合は、四角形になる傾向がある。このための切欠き平面30も等角度位置に、3箇所、4箇所とする。また、前述した理由の説明から理解されるように、切欠き平面30は平面でなくても良く、曲面であっても良い。この曲面は理論的に決めるよりは、転造実験により工作物毎に実験的に決めた曲面が転造精度は良い。また、切欠き平面30に換えて、これと同一形状を備えた形状のカムをウォーム転造用素材25に治具として固定する方法であっても良い。
【0043】
更に、前述した第1転造丸ダイス40は、その両側にプレーンダイス37を配置したものであったが、必ずしも2個配置する必要はなく1個であっても良い。同様に、転造丸ダイス45は、その両側に転造圧調整用カム円板46を配置したものであったが、一方に配置したものであっても良い。また、前述した転造丸ダイス45は、円筒状のいわゆる丸ダイスであったがこれに換えて板状の平ダイスであっても良いことは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の螺旋体の転造方法で転造されるウォーム、多条ネジ、ヘリカルスプライン、ヘリカルギヤ等は、自動車、家庭電化製品、ハードディスク等の電子機器等の駆動部品、固着部品として使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本発明のウォーム転造加工方法で加工するウォーム形状の一例を示す正面図である。
【図2】図2は、図1のa−a線で切断したときの断面拡大図である。
【図3】図3(a)は、図2の中心OからX軸方向に切断した断面図であり、図2の中心OからY軸方向に切断した断面面である。
【図4】図4は転造加工前のウォーム転造用素材を示し、図4(a)は正面図であり、図4(b)は図4(a)の右側面図である。
【図5】図5は、プレーンダイスを付けた転造丸ダイスの正面図である。
【図6】図6(a)、(b)及び(c)は、ウォーム転造の転造工程を示す工程図である。
【図7】図7は、プレーンダイスを取り付けた転造丸ダイスを示すものであり、図7(a)は正面図、図7(b)は図7(a)の側面図である。
【図8】図8は、プレーンダイスを取り付けた転造丸ダイスとウォーム転造用素材に設けたフランジを示す断面図である。
【符号の説明】
【0046】
1…ウォーム
2…ネジ部
3…完全ネジ部
4…不完全ネジ部
5…ネジ底
6,15…ネジ山
7…軸部
10…立ち上がり部
11,12…終点
18…完全ネジ山
19…不完全ネジ山
25…ウォーム転造用素材
28…小径部
29…転造圧調整用カム
36…ウォーム転造歯
37…プレーンダイス
40…第1転造丸ダイス
41…第2転造丸ダイス
46…転造圧調整用カム円板
47…フランジ
51…フランジ治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多条の螺旋部を有する螺旋体を転造加工するために、一対の対向するダイス間に螺旋体転造用素材を挟んで転造加工する螺旋体の転造加工方法であって、
前記螺旋体転造用素材は、
前記螺旋部が成形される螺旋成形部、及び
前記転造加工時に、前記螺旋体転造用素材への一対の前記ダイスの押し込み圧力を、前記螺旋体転造用素材の回転角度位置で均等化するために、前記螺旋体転造用素材の外周面に半径方向に異なるカム面が形成された転造圧調整用カム(29)を配置し、
前記転造圧調整用カム(29)に前記ダイスと一体に駆動されるプレーンダイス(37)を押し当てて転造加工する
ことを特徴とする螺旋体の転造加工方法。
【請求項2】
請求項1に記載の螺旋体の転造加工方法において、
前記転造圧調整用カム(29)は、前記螺旋部の条数に対応したカム面が形成されている
ことを特徴とする螺旋体の転造加工方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の螺旋体の転造加工方法において、
前記カム面は、円筒面と平面(30)である
ことを特徴とする螺旋体の転造加工方法。
【請求項4】
請求項1、2、及び3から選択される1項に記載の螺旋体の転造加工方法において、
前記ダイスは、円筒状の丸ダイスである
ことを特徴とする螺旋体の転造加工方法。
【請求項5】
多条の螺旋部を有する螺旋体を転造加工するために、一対の対向するダイス間に螺旋体転造用素材を挟んで転造加工する螺旋体の転造加工方法であって、
前記螺旋体転造用素材は、前記螺旋部が成形される螺旋成形部、及び軸部(50,52)を有し、
前記転造加工時に、前記螺旋体転造用素材への一対の前記ダイスの押し込み圧力を、前記螺旋体転造用素材の回転角度位置で均等化するために、前記ダイスと一体に移動する転造圧調整用カム円板(46)を配置し、
前記ダイスと一体に駆動される前記転造圧調整用カム(46)を前記軸部(50,52)に押し当てて転造加工する
ことを特徴とする螺旋体の転造加工方法。
【請求項6】
請求項5に記載の螺旋体の転造加工方法において、
前記転造圧調整用カム(46)は、前記螺旋部の条数に対応したカム面が形成されている
ことを特徴とする螺旋体の転造加工方法。
【請求項7】
請求項5、又は6に記載の螺旋体の転造加工方法において、
前記ダイスは、円筒状の丸ダイスであり、前記転造圧調整用カム円板(46)は、円板状であり、外周面にカム面(49)が形成されている
ことを特徴とする螺旋体の転造加工方法。
【請求項8】
請求項5、又は6に記載の螺旋体の転造加工方法において、
前記転造圧調整用カム円板(46)を、前記軸部(50,52)に挿入された円筒状のフランジ治具(51)に接触させて転造する
ことを特徴とする螺旋体の転造加工方法。
【請求項9】
多条の螺旋部を有する螺旋体を転造加工するために、一対の対向するダイス間に螺旋体転造用素材を挟んで転造加工するための転造加工用転造ダイスであって、
前記転造加工時に、前記螺旋体転造用素材への前記ダイスの押し込み圧力を、前記螺旋体転造用素材の回転角度位置で均等化するために前記ダイスと一体に移動するカムである転造圧調整用カム(46)を配置した
ことを特徴とする螺旋体転造用ダイス。
【請求項10】
請求項9に記載の螺旋体の転造用素材を加工するための転造ダイスであって、
前記転造ダイスは丸ダイスであり、前記転造圧調整用カム(46)は、円板状で、かつ外周面にカム面(49)が形成されている
ことを特徴とする螺旋体転造用ダイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【国際公開番号】WO2004/110669
【国際公開日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【発行日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−505040(P2005−505040)
【国際出願番号】PCT/JP2004/008115
【国際出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(594167141)株式会社ニッセー (13)