説明

血中コレステロール上昇抑制剤

【目的】低粘度で、且つ高溶解性でありながら血中コレステロール上昇抑制作用もある程度併せ持つペクチンを主成分とする血中コレステロール上昇抑制剤を提供すること。
【構成】ペクチンを加水分解することによって得られる低粘度で、且つ高溶解性の分子量5万から20万のペクチンを主成分とする血中コレステロール上昇抑制剤。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、血中のコレステロール濃度の上昇を抑制する5万から20万の分子量を有するペクチンを有効成分とする血中コレステロール上昇抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】食物繊維は、人の消化酵素では消化されない食物中の難消化成分と定義付けられており、セルロース、リグニン、ペクチン等の植物細胞壁成分のみならず、広くキチンやキトサン等の不消化有機物を含むものである。近年、これらは、便通改善効果をはじめ、血中コレステロール低下作用等の種々の作用を有し、成人病の予防などにも重要な役割を果たしていることが明らかになってきた。
【0003】これら食物繊維の中でも、ペクチンやペクチン酸等のペクチン質は、食物繊維としての活性が強く、便通改善、血中コレステロールレベルの上昇抑制効果、胆石形成の抑制効果、高血圧抑制効果など種々の効果が報告されている。
【0004】ペクチン質は、未熟の果実或いは植物体中でセルロースと結合して、プロトペクチンという複合体の形で存在し、特に、柑橘類、リンゴ、かりん等に多量に含まれている。このプロトペクチンは、不溶解性であるが、果実が成熟すると加水分解されて可溶性のペクチン又はペクチン酸を生じる。
【0005】このうち、ペクチンは、ガラクツロン酸のポリマーであるガラクツロナンを主成分とし、ラムノース、アラビノース、キシロース、ガラクトースなどを微量に含む分子量20万以上の多糖である。
【0006】ペクチンに対しては、例えばコレステロールに対するペクチンの作用が研究され(例えば、Key,A.,Diet and Cornary Heart Disease; Epidemiology of Athe-roscleosis, pp.135-149, A Hoeber-Haper Book, New York (1956); Key,A.,An-derson,J.T. 及びGrande,F.,J. Nutr., 70, 257 (1960); Key,A., Grande,F. 及びAnderson, J.T., Proc. Soc. Exp. Biol. med., 106, 555 (1961); 辻悦子及び辻啓介、栄養学雑誌、33、51 (1975) 等)、ペクチンが血中コレステロールの上昇を抑制することが示されている。
【0007】ペクチンは、上記のように分子量が20万以上の高分子であるが、この分子量、あるいはその分子量に起因する高粘度が、血中コレステロール上昇抑制作用に必要であるとされている。
【0008】このことは、Well及びErshoff がペクチンの構成糖であるガラクツロン酸では上記の血中コレステロール上昇抑制作用がないこと、及びMokady等の報告した粘度に比例して血中コレステロール上昇抑制効果が強くなる等のことから推定されている。しかしながら、少なくともどの程度の分子量を有するペクチンが、血中コレステロールの上昇を抑制するかという報告はまだない。
【0009】一方、ペクチンは優れた血中コレステロール上昇抑制効果を持つが、その難溶性及び高粘度のために使用が制限されていた。この難溶性を改善し、粘度を低下するためには、ペクチンの分子量を低下させればよい。しかし、分子量の低下にともなって血中コレステロールの上昇抑制効果も低下することが知られており、十分な血中コレステロールの上昇抑制効果を有しながら、且つ溶解性がよく、粘性の低下したペクチンを得るには、血中コレステロール上昇抑制効果をある程度保持できるペクチンの分子量を明らかにする必要がある。
【0010】更に、ペクチンは先述のように、溶解性が低く、高粘度で、ゲル化能が強いという性質を有している。従って、例えば、ペクチンは、安定剤、ゲル化剤として広く食品に使用する場合、食品に少量しか添加できず、生理活性が期待できる程度の量を食品に含有させることは困難であった。
【0011】本発明者らは、ペクチンの加水分解について種々検討し、既にエンド型ポリガラクツロナーゼを用い、これを分解限度まで作用させることによってペクチンを分子量2万から8万の低分子量ペクチンへ分解できることを見い出した(特願平4−27436)。しかし、この低分子量ペクチンの血中コレステロール上昇抑制作用については、まだ明らかではなかった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的は、低粘度で、且つ高溶解性でありながら血中コレステロール上昇抑制作用もある程度併せ持つペクチンの分子量を明らかにするとともに、該ペクチンを主成分とする血中コレステロール上昇抑制剤を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、上記課題である低粘度でかつ高溶解性でありながら血中コレステロール上昇抑制作用もある程度併せ持つペクチンの分子量は、1)5万から20万であること、をつきとめた。
【0014】更に、本発明の血中コレステロール上昇抑制剤は、2)ペクチンを加水分解することによって上記5万から20万の分子量を有するペクチンを主成分とすること、によって提供される。
【0015】以下に本発明を更に詳細に説明する。
【0016】<ペクチンの加水分解>本発明の薬剤の主成分となる高溶解性でありながら血中コレステロール上昇抑制作用もある程度併せ持つペクチンは、どの程度の分子量を有するものであるかを決定するために、約75万の分子量を有するペクチン(市販品:以下高分子量ペクチンと称する)、約5万から約20万の分子量を有するペクチン(以下中分子量ペクチンと称する)、及び約2万から約8万の分子量を有するペクチン(以下低分子量ペクチンと称する)の3種類のペクチンを調製した。
【0017】上記中分子量ペクチン及び低分子量ペクチンは、既に発明者らが得ているエンド型ポリガラクツロナーゼ(クルイベロマイセス フラギリス(JTF−1))を用い、ペクチンを加水分解することによって得ることができる。
【0018】本発明に用いられるペクチンとしては、いずれのペクチンも原料とすることができ、その起源を制限するものではない。従って、一般に知られているレモンペクチンやリンゴペクチンなど多くの果実由来のものを用いることができる。
【0019】ペクチンにエンド型ポリガラクツロナーゼを作用させるにあたっては、精製物、培養上清(粗酵素液)或いはその処理物のいずれを用いてもよい。
【0020】一般に、エンド型ポリガラクツロナーゼは、微生物、高等植物等に存在するが、これらのいずれからのものでも精製して用いることができる。すなわち、上記微生物等の培養液から菌体を除去した培養上清を硫安沈殿処理に供して蛋白質のみを塩析させ、これをイオン交換体を用いて電荷により分離し、更にゲル濾過によって分子量により分離するという一般の酵素精製工程により精製する。
【0021】また市販のペクチナーゼを用いてもよいが、この場合もペクチナーゼ中に存在するペクチンエステラーゼ及びヘミセルラーゼを除くために精製を要する。
【0022】ところで、本発明に使用される酵素を生産するクルイベロマイセス属に属する酵母(クルイベロマイセス フラギリス(JTF−1))を用いると、精製処理を施すことなくその培養上清を直接酵素反応に使用できることがわかっている。クルイベロマイセス属に属する酵母は、ペクチンを分解する酵素としては、エンド型ポリガラクツロナーゼのみを菌体外に分泌する酵素であるので、これら酵母を用いると、その培養上清をそのまま粗酵素液として用いることができるのである。通常、これらの酵母を寒天培地で種培養し、これを更に本培養に供して大量培養し、得られた培養物を遠心分離し、菌体を除去することによって培養上清が得られる。
【0023】このようなJTF−1は、微工研条寄第4056号をもって、平成3年10月11日に工業技術院微生物工業技術研究所に寄託されている。
【0024】また、前記培養上清に透析、限外濾過、イオン交換、又はゲル濾過などの簡単な処理を施すのみで得られる透析処理培養上清を用いることはより好ましい。これらの処理により、イースト臭が除去でき、かつ液色を透明にすることができるからである。
【0025】このように、精製したエンド型ポリガラクツロナーゼ、或いは特定の酵母を用いて得られた培養上清のいずれも用いることができるが、上記酵母を用いて得られた培養上清は、酵素反応に直接用いることができ、これにより酵素精製工程の簡略化を図ることができるのでより好ましい。
【0026】また、JTF−1から得られる酵素は熱処理によって容易に失活させることができるので一定の分子量で反応を停止させることができるので好ましい。
【0027】以上のようにして得られた精製物、培養上清、或いはその処理物を、ペクチンを酢酸等の緩衝液に懸濁した懸濁液と反応させることにより中分子量ペクチン及び低分子量ペクチンが得られる。
【0028】本発明に使用される酵素反応は種々の反応条件下で行われる。
【0029】この酵素分解反応は、ペクチン1重量部に対する酵母培養上清の量的割合が5〜20重量部の条件下で行われることが好ましい。また、反応温度及びpHは、反応が十分に進行し、かつエンド型ポリガラクツロナーゼが失活しない温度及びpH、すなわち30〜60℃、pH3.0〜5.0でそれぞれ行われることが好ましい。
【0030】本酵素分解反応は分解限度で行なうとペクチンの分解は分子量2万程度まで減少するので、反応時間等の反応条件を制御することが重要となる。従って、中分子量ペクチン及び低分子量ペクチンを得るためには、酵素分解反応の条件、特に反応時間を制御することが重要となる。JTF−1から得られた酵素を用いた場合、中分子量ペクチンを得るための反応時間は約0.5から約10時間が好ましい。一方、低分子量ペクチンを得るための反応時間は約10時間から48時間が好ましい。反応条件を選択することによって、目的の分子量を有する中分子量ペクチン及び低分子量ペクチンを得ることができる。
【0031】得られたペクチンの加水分解物は、そのまま乾燥して使用してもよく、また、更に処理を施してもよい。
【0032】更に処理を施す場合は、分解物中のガラクツロン酸やそのオリゴ糖、及び酵素反応時の緩衝液として使用した酢酸を除去するために透析、限外濾過などの精製工程を施し、その後、エタノール、アセトンなどの有機溶媒による沈殿工程、或いは凍結乾燥、噴霧乾燥などの乾燥工程により粉末化してもよい。
【0033】得られたペクチンの加水分解物の粘度は、その分子量が低下するに従い低下する。本発明に使用される中分子量ペクチン及び低分子量ペクチンの粘度は、溶解性等の面からそれぞれ2%溶液で約4から25cP、及び約2から5cPが好ましい。
【0034】上述のように酵素を用いて得られた中分子量ペクチン、低分子量ペクチンは、血中コレステロール上昇抑制作用の検定試験に供し得る。試験に供する前に夫々のペクチンの分子量及び粘度等の物性値を測定しておく。
【0035】検定試験は、中分子量ペクチン、低分子量ペクチン、および市販の高分子量ペクチン(いずれも分子量、粘度等を測定し、溶解性などを評価してあるもの)の少なくとも3種類のペクチンを用いて行えばよい。これによって、血中コレステロール上昇抑制作用をある程度有し、且つ溶解性等の物性を満足するペクチンのおおよその分子量を知ることができる。本発明においては、中分子量ペクチン(分子量約20万)、低分子量ペクチン(分子量約7万)および市販の高分子量ペクチン(分子量約75万)の3種類のペクチンを使用した。なお、ここで使用した中分子量ペクチンおよび低分子量ペクチンは、本発明の血中コレステロール上昇抑制剤に使用し得る十分な溶解性および粘度を有しているものであった。
【0036】試験は、コレステロールを含有する飼料、および該コレステロール含有飼料に上記3種類のペクチンをそれぞれ添加した飼料を調製し、各飼料をラットに自由摂取させることによって行った。コレステロール上昇抑制活性の評価は、肝臓の重量および血中の総コレステロール値を測定比較することによっておこなった。結果は以下の通りであった。
【0037】1)高分子量ペクチンを添加した飼料を摂取したラットは、肝臓重量及び血中総コレステロール値とも、コレステロールのみを添加した飼料を摂取したラットに対し有意に減少していた。
【0038】2)中分子量ペクチンを添加した飼料を摂取したラットは、コレステロールのみを添加した飼料を摂取したラットに対し、肝臓重量において有意な差は認められなかったが、血中総コレステロール値は有意に減少していた。
【0039】3)低分子量ペクチンを添加した飼料を摂取したラットは、コレステロールのみを添加した飼料を摂取したラットに対し、肝臓重量および血中総コレステロール値はわずかに減少していたが、有意な差は認められなかった。
【0040】以上のことから、血中コレステロール上昇抑制作用をある程度有し、且つ溶解性等の物性を満足するペクチンのおおよその分子量は、約5万から約20万であることがわかった。
【0041】従って、本発明の血中コレステロール上昇抑制剤に使用し得るペクチンは、約5万から約20万の分子量を有する中分子量ペクチンが好ましい。
【0042】<血中コレステロール上昇抑制剤>本発明の血中コレステロール上昇抑制剤は、5万から20万の分子量を有するペクチンを主成分とする。
【0043】本発明の薬剤中の中分子量ペクチンの濃度は、0.1から100重量%の範囲が好ましい。
【0044】また、本発明の薬剤の単位投与量は、好ましくは1g/dayから30g/dayである。
【0045】本発明の薬剤には、中分子量ペクチン以外の成分として、薬学的組成物を調製するために一般に使用される通常の賦形剤および/または担体を含有し得る。本薬剤において、該賦形剤および/または担体を含有する場合、活性成分である中分子量ペクチンと賦形剤および/または担体との比は通常1:10から100:1の範囲が好ましい。
【0046】本発明の薬剤は、活性成分である中分子量ペクチンのみで構成されていてもよい。
【0047】本発明の薬剤は、例えば、錠剤、コートされた錠剤、カプセル、小包、溶液、懸濁液、乳剤、顆粒剤、シロップ等のような文献で公知の通常の薬学的形態で調製され得る。本発明の薬剤では、錠剤、溶液、シロップのような薬学的形態が好ましい。また、本発明の薬剤は、賦形剤および/または担体と中分子量ペクチンを混合し、任意に補助剤および/または分散剤を添加することによって通常の手段で調製され得る。補助剤および/または分散剤を添加する場合の希釈剤としては水が使用されるが、他の有機溶媒も補助剤の調製に使用し得る。補助剤としては、例えば、水;パラフィンのような非毒性の有機溶媒;植物油(ピーナッツオイル又はごま油);アルコール(例えば、エタノール、グリセリン);グリコール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール);例えば天然鉱物粉(陶土、タルク)、合成鉱物粉(例えばシリケート)のような固体担体;糖質(例えばコーンシュガー);乳化剤(アルキルスルホネート又はアリールスルホネート等);分散剤(例えば、リグニン、メチルセルロース、澱粉及びポリビニルピロリドン);及び潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸、ラウリルスルホン酸ナトリウム)を挙げることができる。
【0048】本発明の血中コレステロール上昇抑制剤は、高コレステロール食を摂るとき、または高脂血症や動脈硬化症等の患者に投与することができるが、高コレステロール食を摂るときに投与することが好ましい。
【0049】
【実施例】以下に実施例をあげて本発明をさらに詳細に説明する。
【0050】実施例1粗酵素溶液の調製クルイベロマイセス フラギリスJTF−1(微工研条寄第4056号)を2%のショ糖を含有するジャガイモ煎汁寒天斜面培地(pH5.0)において27℃で24時間培養した。この後、菌体の1白金耳をブドウ糖5%、リン酸アンモニウム0. 2%、リン酸1カリウム0. 1%、硫酸マグネシウム0. 1%および酵母エキス0. 4%を含有する培地50mlに接種し、さらに27℃で3日間静置培養した。この培養物を同じ組成の1リットルの培地に接種し、さらに27℃で3日間静置培養した。得られた培養物を13,000rpm で10分間遠心分離し、菌体を除去して培養上清を得た。
【0051】実施例2レモンペクチンの低分子化2. 5%のレモンペクチン(和光純薬工業)を含有する4リットルの0. 025M酢酸緩衝液(pH4. 8)に、実施例1で調製した培養上清1リットルを加え40℃で反応させた。この反応液から経時的にサンプルを適量採取し、100℃で10分間加熱することによって酵素を失活させた。得られた試料について、TSK−gel G4000PW(Toso)を用いてゲル濾過により分子量を測定し、回転式粘度計(E型粘度計)により粘度を測定した。結果を図1および図2に示す。
【0052】図1および図2から、分子量、粘度とも反応開始後1時間までに急速に低下することがわかる。その後は分子量、粘度とも緩やかに低下し、24時間後にはほぼ定常に達した。
【0053】また図1および図2からからわかるように、分子量が約20万(反応時間約1時間の時点)で粘度は約10cPまで低下した。このように、ペクチンを分解してその分子量を20万以下にすることによって、粘度を著しく低下させることができる。
【0054】実施例3実施例2の結果を基に2種の分子量の異なるペクチン(分子量約7万の低分子量ペクチンおよび分子量約20万の中分子量ペクチン)を調製し、その特性を分析した。ペクチンにはレモンペクチンを使用した。
【0055】1)低分子量ペクチンの調製2. 5%のレモンペクチン(和光純薬工業)を含有する4リットルの0. 025M酢酸緩衝液(pH4. 8)に、実施例1で調製した培養上清1リットルを加え40℃で24時間反応させた。得られた反応液をロータリーエバポレーターで濃縮後、試料溶液の100倍量の脱イオン水に対して一晩透析した。得られた溶液を凍結乾燥することによって低分子量ペクチンを58. 34g 得た。
【0056】2)中分子量ペクチンの調製2. 5%のレモンペクチン(和光純薬工業)を含有する4リットルの0. 025M酢酸緩衝液(pH4. 8)に、実施例1で製造した培養上清1リットルを加え40℃で2時間反応させた。反応液を100℃で1時間加熱することによって酵素を失活させた後、ロータリーエバポレーターで濃縮した。濃縮物をその100倍量の脱イオン水に対して一晩透析した。得られた溶液を凍結乾燥することによって中分子量ペクチンを67. 65g 得た。
【0057】3)低分子量ペクチンおよび中分子量ペクチンの分析a)分子量の測定分子量はプルラン(STANDARD P-82 、昭和電工)を標準試料とし、TSK−gel G4000PWによるゲル濾過で測定した。
【0058】b)ガラクツロン酸と中性糖の比文献(S.Matsuhashi, S.Inoue,およびC.Hatanaka, Biosci. Biotech. Biochem.,56,1053-1057(1992))に従い、ドリセラーゼによって完全に加水分解した後、Shodex SH-1821を用いたHPLC分析によって測定した。
【0059】c)粘度測定粘度は、高分子量ペクチン1%溶液、中分子量ペクチンおよび低分子量ペクチン5%溶液の粘度をE型粘度計により測定した。
【0060】a)からc)までの結果を表1にまとめて示した。
【0061】
【表1】


実施例4実施例3の1)および2)で得られたペクチンのコレステロール上昇抑制活性に関する検定試験を行った。コレステロール上昇抑制活性は、肝臓の重量および血中の総コレステロール値を測定することによって評価した。
【0062】なお、ここで使用した実施例3の1)および2)で得られたペクチンは、本発明の血中コレステロール上昇抑制剤に使用するのに十分な溶解性および粘度を有していた。
【0063】3週齢SD系雄性ラットを一週間市販の固形飼料(オリエンタル酵母固形飼料MF)で予備飼育後、体重の平均がほぼ一定になるように5群(一群6匹(但し低分子量ペクチン飼料群は9匹))に分け、下記表2に記載の組成を有する精製飼料を各群に割り当てて27日間飼育した。飼料の調製はオリエンタル酵母に委託した。試験期間中の飼料および水は自由摂取とした。
【0064】
【表2】


試験期間中は尾静脈から採血を行った。ただし、最終日には6時間の絶食後、腹大静脈から採血を行った。また、屠殺後に肝臓を摘出し、生理的リン酸緩衝液で還流後、重量を測定し冷凍保存した。採取した血液は室温で1時間放置した後、遠心分離によって沈殿を除去し、血清とした。得られた血清の総コレステロール量を「デタミナーTC5(協和メデックス)」を用いて測定した。
【0065】体重、飼料摂取量、および肝臓重量の変化を表3に示した。
【0066】
【表3】


体重および飼料摂取量は各群とも同様に増加し、大きな違いはなかった。飼料効率もほぼ同じ値を示した。コレステロールを添加することによる肝臓重量の増加は、コレステロールの他に高分子量ペクチンを添加した飼料では有意に抑制された。しかし、コレステロールの他に中分子量ペクチンを添加した飼料および低分子量ペクチンを添加した飼料では、コレステロールのみを添加した飼料に比べ、肝臓重量の増加は減少しているものの有意な差は認められなかった。
【0067】次に血中コレステロール濃度について述べる。
【0068】表4に各群の血中のコレステロール濃度の変動を示した。コレステロールを添加することによる血中のコレステロール濃度の上昇は、ペクチン、中分子量ペクチン、および低分子量ペクチンを添加した各群で抑制された。コレステロール値の低下は、分子量が低いものほど弱く、低分子量ペクチンを含有する飼料ではわずかな減少が見られるにすぎなかった。
【0069】
【表4】


以上の結果より、ペクチンのコレステロール上昇抑制効果にはある程度の分子量(約5万程度と考えられる)が必要であると考えられる。
【0070】実施例5本発明のコレステロール上昇抑制効果を有する中分子量ペクチンは種々の形態で製剤化することができるが、以下にその1製剤例を示す。
【0071】錠剤化の例本発明のコレステロール上昇抑制剤50部、乳糖25部、コーンスターチ25部、ステアリン酸マグネシウム2部を混合し、錠剤形成機で一錠あたり約500mgの錠剤とする。
【0072】
【発明の効果】本発明の5万〜20万の分子量を有するペクチンは、低粘度であるため溶解性が高く、且つ血中コレステロールの上昇を抑制する活性も保持しており、高脂血症や動脈硬化症等の予防および治療に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】2%ペクチン溶液の酵素分解過程における分子量と分解時間の関係を表わした図。
【図2】2%ペクチン溶液の酵素分解過程における粘度と分解時間の関係を表わした図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ペクチンを加水分解することによって得られる5万から20万の分子量を有するペクチンを主成分とすることを特徴とする血中コレステロール上昇抑制剤。

【図1】
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【図2】
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