説明

血栓形成を抑制する作用を有する組成物

【課題】 血栓形成を抑制する作用を有する組成物を提供すること。
【解決手段】 炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物を含有することを特徴とする血栓形成を抑制する作用を有する組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血栓形成を抑制する作用を有する組成物に関し、より詳しくは炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物を含有することを特徴とする血栓形成を抑制する作用を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内において血栓形成の原因となる多細胞プロセスは、個々の血小板及びそれらの形態の変化を同定できるほどに十分な高い解像度をもって直接可視化できる技術が無かったため、未だ十分に理解されていない。部検又は吸引によって得られた急性冠症候群患者(非特許文献1)の血栓の組織学的解析によって、血栓の発達においては、血小板、白血球、フォン ヴィレブランド因子(von Willebrand factor)及び組織因子が存在していることが明らかになっている(非特許文献2〜3)。しかしながら、血栓塊の正確な性状を得る為の多細胞構造は損なわれており、そして生体内の血栓形成中の血小板の動態についてはほとんど解明されていない。
【0003】
また、血栓形成に関しては、二段階説、すなわち、円盤状血小板が高せん断条件下で成長中の血栓に組み込まれている間に、活性化血小板は低せん断条件下で形態を変化させることによって血栓形成を調節するという説が提唱されているが(非特許文献4)、生体内において、円盤状血小板がどのように形成中の血栓に取り込まれるのかは不明である。
【0004】
また、血小板は、炎症、血栓形成、ホメオスタシス及びアテローム発生の間の重要なつながりを示す因子として考えられており(非特許文献5〜6)、炎症は、白血球、内皮細胞、及び血小板の間の相互作用によって特徴づけられている(非特許文献7)。例えば、活性化血小板において炎症性サイトカインの1種であるIL−1βが発現しており(非特許文献8)、IL−1αもIL−1β同様に血小板において発現していることが報告されている(非特許文献9)。また、IL−1β pre−mRNAは巨核球の細胞質に存在し、断片化によって放出した血小板自身もIL−1β pre−mRNAを保持しており(非特許文献10)、炎症反応状態に血小板自体の産生するIL−1βが関与することが推測されている。さらには、IL−1βの合成を介して炎症シグナルを調節していることも既に示されている(非特許文献11)。また、炎症性サイトカインの1種であるIL−6は、血小板産生のサイトカインとしても知られており(非特許文献12)、さらには、血小板血栓が形成された以降に活性化する凝固系において、IL−6はトロンビンの産生を亢進させることが知られており、かかる産生亢進を介して、血小板の活性化を二次的に促進する事などが示されてきている(非特許文献13)。
【0005】
しかしながら、炎症性サイトカインによるシグナル伝達と血小板が関与する血栓形成との関連の詳細、特に瞬間的な発生を特徴とする円盤状血小板による血小板血栓の形成及び血管内皮細胞への接着に関しては未だ明らかになっていない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Nishihira,K.,et al、「Composition of thrombi in late drug−eluting stent thrombosis versus de novo acute myocardial infarction.」、Thrombosis Research(電子版)、2009年11月24日
【非特許文献2】Hoshiba,Y.,et al、Journal of Thrombosis and Haemostasis、2006年、4巻、114−120ページ
【非特許文献3】Yamashita,A.,et al、The American Journal of Cardiology、2006年、97巻、26−28ページ
【非特許文献4】Jackson,S.P.、Blood、2007年、109巻、5087−5095ページ
【非特許文献5】Ruggeri,Z.M.、Nature Medicine、2002年、8巻、1227−1234ページ
【非特許文献6】Gawaz,M.,et al、The Journal of Clinical Investigation、2005年、115巻、3378−3384ページ
【非特許文献7】Wagner,D.D.,et al、Arteriosclerosis,Thrombosis,and Vascular Biology、2003年、23巻、2131−2137ページ
【非特許文献8】Hawrylowicz,C.M.,et al、The Journal of Immunology、1989年、143巻、4015−4018ページ
【非特許文献9】Thornton,P.,et al.、Blood、2010年、115巻、17号、3632−3639ページ
【非特許文献10】Denis MM.,et al、Cell、2005年8月12日、122巻、3号、379−391ページ
【非特許文献11】Lindemann,S.,et al.、The Journal of Cell Biology、2001年、154巻、485−490ページ
【非特許文献12】Asano,S.,et al、Blood、1990年、75巻、1602−1605ページ
【非特許文献13】Kerr,R.,et al、British Journal of Haematology、2001年10月、115巻、1号、3−12ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、生体内における血栓形成の機序を分子レベルで解明し、見出された血栓形成に関与する分子を標的として、臨床的には瞬間的に発症して血管閉塞まで引き起こすような血栓形成を抑制することを可能とする組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、血栓形成の開始から血管閉塞に至る血小板の動態を一細胞レベルで明らかにするため、生体内の血栓形成を評価することができ、ハイスループットな解析が可能な直接可視化手法を独自に開発した。次いで、この手法を用い、生体内における血栓形成の機序を分子レベルで解明すべく鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者らは、血栓の誘発及び成長、特に、血小板の取り込み(初期の血管内皮細胞への付着)において、腫瘍壊死因子−α(TNF−α)、インターロイキン−1(IL−1),インターロイキン−6(IL−6)等による炎症性サイトカインシグナルが瞬間的な円盤状血小板血栓の形成に必要不可欠であることを見出した。これら知見に基づき、本発明者らは、TNF−α、IL−1、IL−6などの炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物が、血栓形成を抑制するための組成物として有用であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、より詳しくは、以下の発明を提供するものである。
(1)炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物を含有することを特徴とする血栓形成を抑制する作用を有する組成物。
(2)前記炎症性サイトカインは、TNF−α、IL−1、及びIL−6からなる群から選択される少なくとも一つの生体分子であることを特徴とする(1)に記載の血栓形成を抑制する作用を有する組成物。
【発明の効果】
【0010】
これまでの血栓症に対する医薬は、形成された血栓の安定化を阻害するという視点で開発がなされてきたが、本発明の組成物によれば、血栓が形成される段階を抑制する作用、特に円盤状血小板による血小板血栓の形成及び血管内皮細胞への接着を抑制する作用を有する。従って、本発明の組成物は、特に、血栓症を含む血栓形成に起因する疾患に対する予防剤として優れた効果を発揮することが可能である。また、血栓形成を予防するために日常的に摂取する飲食品として、あるいは、研究目的で血栓形成を抑制するための試薬としても、優れた効果を発揮することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】通常状態における血管及び血球を示す顕微鏡写真である。
【図2】レーザー傷害後の血栓形成の過程を示す顕微鏡写真である。右列は左列中の四角で囲まれた部分を拡大した写真である。
【図3】レーザー傷害後の血栓形成過程、並びに抗GPIb−β抗体により染色された血小板の動態を示す顕微鏡写真である。右列は左列中の四角で囲まれた部分を拡大した写真である。
【図4】抗GPIb−β抗体が血小板の血管壁への付着に影響を与えないことを示すグラフ図である。
【図5】抗GPIb−β抗体が血栓形成に影響を与えないことを示すグラフ図である。
【図6】レーザー傷害から血管閉塞に至るまでの過程、並びにアクリヂンオレンジにより染色された白血球及び血小板の動態を示す顕微鏡写真である。
【図7】レーザー傷害後のイソレクチンにより染色された血管内皮細胞を示す顕微鏡写真である。
【図8】レーザー傷害後の血管内におけるROSの産生を示す顕微鏡写真である。下段はAPFにより検出されたROSを示し、中段は蛍光デキストランによって染色された赤血球を示し、上段は中段と下段とを重ね合わせたものである。
【図9】TNF−α欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔において、レーザー傷害から10秒の間に血管壁に付着した血小板数を示すグラフ図である。
【図10】レーザー傷害後にTNF−α欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔に生じた血栓内における血小板数の経時変化を示すグラフ図である。
【図11】レーザー傷害後のTNF−α欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔の血管内におけるROSの産生を示す顕微鏡写真である。上から2段目は野生型同腹仔におけるROSの産生を示し、上から1段目は野生型同腹仔における蛍光デキストランによって染色された赤血球とROSの産生(上から2段目)とを重ね合わせたものである。また、下から1段目はTNF−α欠損マウスにおけるROSの産生を示し、下から2段目はTNF−α欠損マウスにおける蛍光デキストランによって染色された赤血球とROSの産生(下から1段目)とを重ね合わせたものである。
【図12】TNF−R1欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔において、レーザー傷害から10秒の間に血管壁に付着した血小板数を示すグラフ図である。
【図13】レーザー傷害後にTNF−R1欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔に生じた血栓内における血小板数の経時変化を示すグラフ図である。
【図14】レーザー傷害後のTNF−R1欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔の血栓形成の過程を示す顕微鏡写真である。
【図15】IL−1欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔において、レーザー傷害から10秒の間に血管壁に付着した血小板数を示すグラフ図である。
【図16】レーザー傷害後にIL−1欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔に生じた血栓内における血小板数の経時変化を示すグラフ図である。
【図17】レーザー傷害後のIL−1欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔の血栓形成の過程を示す顕微鏡写真である。
【図18】レーザー傷害後のIL−1RA欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔の血栓形成の過程を示す顕微鏡写真である。
【図19】IL−1RA欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔において、レーザー傷害から10秒の間に血管壁に付着した血小板数を示すグラフ図である。
【図20】レーザー傷害後にIL−1RA欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔に生じた血栓内における血小板数の経時変化を示すグラフ図である。
【図21】レーザー傷害後のIL−6欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔の血栓形成の過程を示す顕微鏡写真である。
【図22】IL−6欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔において、レーザー傷害から10秒の間に血管壁に付着した血小板数を示すグラフ図である。
【図23】レーザー傷害後にIL−6欠損マウス及びそれらの野生型同腹仔に生じた血栓内における血小板数の経時変化を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物を含有することを特徴とする血栓形成を抑制する作用を有する組成物を提供する。
【0013】
本発明において、「炎症性サイトカイン」とは、生体内における様々な炎症症状を引き起こす因子として関与するサイトカインを意味する。本発明において機能を抑制する対象となる炎症性サイトカインとしては、その機能の抑制により、血栓形成を抑制しうるものであれば特に制限はなく、例えば、TNF−α、IL−1、及びIL−6が挙げられる。
【0014】
TNF−αは、NF−kBシグナルの制御に働き、炎症シグナルを惹起する因子として知られている(「Saves Tay,et al、Nature、2010年7月8日、466巻、267−272ページ」等参照)。典型的には、ヒトTNF−αは、ACCESSION No.NP_000585.2(No.NM_000594.2)で特定される蛋白質(遺伝子)であり、マウスTNF−αは、ACCESSION No.NP_038721.1(No.NM_013693.2)で特定される蛋白質(遺伝子)である。
【0015】
IL−1は、血小板と炎症とアテローム発生等との関連性を示唆する因子としても知られている(「Boilard E.,et al、Science、2010年1月29日、327巻、5965号、580−583ページ」、「Kulkarni S E.,et al、Blood、2007年9月15日、110巻、6号、1879−1886ページ」、「Pillitteri D.,et al、Platelets、2007年3月、18巻、2号、119−127ページ」、非特許文献8〜11等参照)。本発明におけるIL−1には、IL−1α及びIL−1βが含まれる。また、典型的には、ヒトIL−1αは、ACCESSION No.NP_000566.3(No.NM_000575.3)で特定される蛋白質(遺伝子)であり、マウスIL−1αは、ACCESSION No.NP_034684.2(No.NM_010554.4)で特定される蛋白質(遺伝子)である。さらに、典型的には、ヒトIL−1βは、ACCESSION No.NP_000567.1(No.NM_000576.2)で特定される蛋白質(遺伝子)であり、マウスIL−1βは、ACCESSION No.NP_032387.1(No.NM_008361.3)で特定される蛋白質(遺伝子)である。
【0016】
また、IL−6も、炎症性サイトカインとして広く知られており,慢性関節リューマチの増悪、動脈硬化病変を合併する心血管系疾患(特に冠動脈疾患の発症)において、重要な役割を担っている事などが示唆されている(「Yudkin JS.,et al、Atherosclerosis、2000年2月、148巻、209−214」、「Shenhar−Tsarfaty S.,et al、International journal of Stroke、2010年2月、5巻、1号、16−20ページ」等参照)。典型的には、ヒトIL−6は、ACCESSION No.NP_000591.1(No.NM_000600.2)で特定される蛋白質(遺伝子)であり、マウスIL−6は、ACCESSION No.NP_112445.1(No.NM_031168.1)で特定される蛋白質(遺伝子)である。
【0017】
しかしながら、蛋白質のアミノ酸配列は、自然界において(すなわち、非人工的に)変異し得る。従って、本発明において機能を抑制する対象となる「炎症性サイトカイン」には、このような天然の変異体も含まれる。
【0018】
なお、これらの炎症性サイトカインに関しては、冠動脈のプラーク破裂やびらん(erosion)などによる冠動脈閉塞の最初の機構において,動脈硬化病変を基盤とする血管平滑筋やマクロファージ産生のサイトカイン(pro−inflammatory cytokine)として、IL−6、IL−1、及びTNF−αが連動して作用することが示唆され、また、冠動脈疾患患者に対してのカテーテルを介したステント挿入治療後にIL−1βとともにIL−6の血中濃度が上昇することでステント血栓症(金属であるステントを挿入した後の冠動脈の再閉塞)がおきうること(Sardella G.,et al、Thrombosis Research、2006年、117巻、6号、659−664ページ)も知られている。
【0019】
本発明における「炎症性サイトカインの機能の抑制」には、機能の完全な抑制(阻害)および部分的な抑制の双方が含まれる。また、炎症性サイトカインの活性の抑制および発現の抑制の双方が含まれる。炎症性サイトカインの活性の抑制は、炎症性サイトカインを標的とする分子、炎症性サイトカインの受容体を標的とする分子、および炎症性サイトカインのシグナル伝達に関与するその他の蛋白質を標的とする分子、のいずれによって達成されてもよい。また、炎症性サイトカインの発現の抑制は、転写における抑制および翻訳における抑制のいずれによって達成されてもよい。
【0020】
炎症性サイトカインの機能を抑制するために標的とするTNF−αの受容体としては、例えば、1型TNF受容体(TNF−receptor−1、TNFR1)が挙げられる。典型的には、ヒトTNFR1として、ACCESSION No.NP_001056.1(No.NM_001065.2)で特定される蛋白質(遺伝子)が挙げられ、マウスTNFR1としては、ACCESSION No.NP_035739.2(No.NM_011609.3)で特定される蛋白質(遺伝子)が挙げられる。
【0021】
また、IL−1の受容体(interleukin 1 receptor、IL−1R)としては、典型的には、ヒトIL−1Rとして、ACCESSION No.NP_000868.1(No.NM_000877.2)で特定される蛋白質(遺伝子)が挙げられ、マウスIL−1Rとしては、ACCESSION No.NP_032388.1(No.NM_008362.2)で特定される蛋白質(遺伝子)が挙げられる。
【0022】
さらに、IL−6の受容体としては、膜結合型IL−6受容体(interleukin 6 receptor、IL−6R)や可溶性IL−6受容体(soluble IL−6 receptor、sIL−6R)が挙げられ、典型的には、ヒトIL−6Rとして、ACCESSION No.NP_000556.1(No.NM_000565.2)で特定される蛋白質(遺伝子)が挙げられ、マウスIL−6Rとしては、ACCESSION No.NP_034689.2(No.NM_010559.2)で特定される蛋白質(遺伝子)が挙げられる。
【0023】
しかしながら、蛋白質のアミノ酸配列は、自然界において(すなわち、非人工的に)変異し得る。従って、本発明において、炎症性サイトカインの機能を抑制するために標的とする受容体には、このような天然の変異体も含まれる。
【0024】
炎症性サイトカインのシグナル伝達に関与するその他の蛋白質としては、TNF−αに関しては、例えば、TNF−α変換酵素(TACE又はADAM17とも称する)が挙げられる。なお、TNF−α変換酵素は、膜型蛋白質として産生されるTNFα前駆体をシェディング(shedding)することによって、TNFαの活性化を誘引する因子として知られている(「Brill A.,et al、Cardiovascular Research、2009年、10月1日、84巻、1号、137−144ページ」、「Murthy A.,et al、Ectodomain shedding of EGFR ligands and TNFR1 dictates hepatocyte apoptosis during fulminant hepatitis in mice.、The Journal of Clinical Investigation(電子版)、2010年7月12日」、「Killock DJ.,et al、Biochemical Journal、2010年5月13日、428巻、2号、293−304ページ」、「Chalaris A.,et al、Biochimica et Biophysica Acta、2010年2月、1803巻、2号、234−245ページ」等参照)。
【0025】
また、IL−1に関しては、例えば、IL−1のシグナル伝達に関与する下流の分子として知られている、IL−RAcP(IL−1 receptor accessory protein)、MYD88(myloid differentiation primary response gene 88)、IRAK4(interleukin−1 receptor−activated protein kinase 4)、TRAF6(tumore necrosis factor−associated factor 6)が挙げられる(Weber A.,et al、Science Signaling、2010年1月19日、105巻、3号、cm1 参照)。
【0026】
また、IL−6に関しては、例えば、IL−6のシグナル伝達に関与する下流の分子として知られている、gp130、STAT3(signal tranducer and activator of transcription 3)、SHP−2(Src homology region 2−containing protein tyrosine phosphatase−2)が挙げられる。
【0027】
本発明における「炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物」の1つの態様は、抗体である。本発明における「抗体」は、免疫グロブリンのすべてのクラスおよびサブクラスを含む。「抗体」には、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体が含まれ、また、抗体の機能的断片の形態も含む意である。
【0028】
また、本発明の抗体には、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、および、これら抗体の機能的断片が含まれる。抗体の機能的断片としては、Fab、Fab’、F(ab’)2、可変領域断片(Fv)、ジスルフィド結合Fv、一本鎖Fv(scFv)、sc(Fv)2、ダイアボディー、多特異性抗体、およびこれらの重合体などが挙げられる。
【0029】
本発明の抗体を医薬としてヒトに投与する場合は、副作用低減の観点から、キメラ抗体、ヒト化抗体、あるいはヒト抗体が望ましい。
【0030】
抗体は、ポリクローナル抗体であれば、抗原(前記炎症性サイトカインなど)で免疫動物を免疫し、その抗血清から、従来の手段(例えば、塩析、遠心分離、透析、カラムクロマトグラフィーなど)によって、精製して取得することができる。また、モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法等によって作製することができる。
【0031】
キメラ抗体は、例えば、抗原をマウスに免役し、そのマウスモノクローナル抗体の遺伝子から抗原と結合する抗体可変部(可変領域)を切り出して、ヒト骨髄由来の抗体定常部(定常領域)遺伝子と結合し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入して産生させることにより取得することができる(例えば、特開平7−194384号公報、特許3238049号公報、米国特許第4816397号公報、米国特許第4816567号公報、米国特許第5807715号公報)。
【0032】
ヒト化抗体は、例えば、非ヒト由来の抗体の抗原結合部位(CDR)の遺伝子配列をヒト抗体遺伝子に移植(CDRグラフティング)することにより作製することができる(例えば、特許2912618号、特許2828340号公報、特許3068507号公報、欧州特許239400号公報、欧州特許125023号公報、国際公開90/07861号公報、国際公開96/02576号公報参照)。
【0033】
ヒト抗体は、例えば、ヒト抗体のレパートリーを生産することが可能なトランスジェニック動物(例えばマウス)を利用して作製することができる(例えば、Nature, 362:255−258(1992)、Intern. Rev. Immunol, 13:65−93(1995)、J. Mol. Biol, 222:581−597(1991)、Nature Genetics, 15:146−156(1997)、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 97:722−727(2000)、特開平10−146194号公報、特開平10−155492号公報、特許2938569号公報、特開平11−206387号公報、特表平8−509612号公報、特表平11−505107号公報)。
【0034】
本発明において用いる抗体には、望ましい活性(炎症性サイトカインの機能を抑制する活性)を減少させることなく、そのアミノ酸配列が修飾された抗体が含まれる。本発明の抗体のアミノ酸配列変異体は、本発明の抗体鎖をコードするDNAへの変異導入によって、またはペプチド合成によって作製することができる。そのような修飾には、例えば、本発明の抗体のアミノ酸配列内の残基の置換、欠失、付加および/または挿入を含む。抗体のアミノ酸配列が改変される部位は、改変される前の抗体と同等の活性を有する限り、抗体の重鎖または軽鎖の定常領域であってもよく、また、可変領域(フレームワーク領域およびCDR)であってもよい。CDR以外のアミノ酸の改変は、抗原との結合親和性への影響が相対的に少ないと考えられるが、現在では、CDRのアミノ酸を改変して、抗原へのアフィニティーが高められた抗体をスクリーニングする手法が公知である(PNAS, 102:8466−8471(2005)、Protein Engineering, Design & Selection, 21:485−493(2008)、国際公開第2002/051870号、J. Biol. Chem., 280:24880−24887(2005)、Protein Engineering, Design & Selection, 21:345−351(2008))。
【0035】
また、抗体の改変は、例えば、グリコシル化部位の数、位置、種類を変化させるなどの抗体の翻訳後プロセスの改変であってもよい。抗体のグリコシル化とは、典型的には、N−結合またはO−結合である。抗体のグリコシル化は、抗体を発現するために用いる宿主細胞に大きく依存する。グリコシル化パターンの改変は、糖生産に関わる特定の酵素の導入または欠失などの公知の方法で行うことができる(特開2008−113663号公報、特許4368530号公報、特許4290423号公報、米国特許第5047335号公報、米国特許第5510261号公報、米国特許第5278299号公報、国際公開第99/54342号公報)。さらに、本発明においては、抗体の安定性を増加させる等の目的で脱アミド化されるアミノ酸若しくは脱アミド化されるアミノ酸に隣接するアミノ酸を他のアミノ酸に置換することにより脱アミド化を抑制してもよい。また、グルタミン酸を他のアミノ酸へ置換して、抗体の安定性を増加させることもできる。本発明において用いる抗体は、こうして安定化された抗体をも提供するものである。
【0036】
本発明において用いられる炎症性サイトカインの機能を抑制する抗体としては、例えば、インフリキシマブ(セントコア社製)、Certolizumab・pegol(UCB社製)、ゴリムマブ(セントコア社製)といった抗TNF−α抗体、トシリズマブ(中外製薬社製)等の抗IL−6R抗体を適宜選択して用いることができる。
【0037】
本発明における「炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物」の他の態様は、内因性の炎症性サイトカインに対してドミナントネガティブの形質を有するポリペプチドである。このようなポリペプチドとしては、内在性の炎症性サイトカインの機能を抑制する作用を有する、これら炎症性サイトカインの変異体や欠失体が挙げられる。例えば、TNFαに関しては、エタネルセプト(ワイス社製、可溶性TNF−α受容体)、WP9QY(W9)ペプチド(TNF−α受容体の部分ペプチド変異体)が挙げられ、IL−1に関しては、IL−1RA(インターロイキン−1受容体アンタゴニスト(典型的には、ヒトIL−1RAとして、ACCESSION NP_776215.1(No.NM_173843.1)で示される蛋白質(遺伝子)、マウスIL−1RAとしては、ACCESSION NP_112444.1(No.NM_031167.3)で示される蛋白質(遺伝子))が挙げられる。このようなドミナントネガティブ体は、組換えDNA法、化学合成等によって作製することができる。
【0038】
本発明における「炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物」の他の態様は、RNA干渉により、炎症性サイトカインの機能を抑制する分子である。例えば、標的遺伝子(炎症性サイトカインをコードする遺伝子、炎症性サイトカインの受容体をコードする遺伝子、あるいは炎症性サイトカインのシグナル伝達に関与するその他のタンパク質をコードする遺伝子)の転写産物と相補的なdsRNA(二重鎖RNA)または該dsRNAをコードするDNAが挙げられる。
【0039】
dsRNAをコードするDNAは、標的遺伝子の転写産物(mRNA)のいずれかの領域に対するアンチセンスRNAをコードしたアンチセンスDNAと、該mRNAのいずれかの領域のセンスRNAをコードしたセンスDNAを含み、該アンチセンスDNAおよび該センスDNAより、それぞれアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させることができる。また、これらのアンチセンスRNAおよびセンスRNAよりdsRNAを作製することができる。
【0040】
dsRNAの発現システムをベクター等に保持させる場合の構成としては、同一のベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる場合と、異なるベクターからそれぞれアンチセンスRNAとセンスRNAを発現させる場合がある。同一のベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスDNAおよびセンスDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモーターを連結させたアンチセンスRNA発現カセットとセンスRNA発現カセットをそれぞれ構築し、これらカセットを同方向にあるいは逆方向にベクターに挿入する構成である。
【0041】
また、異なる鎖上に対向するように、アンチセンスDNAとセンスDNAとを逆向きに配置した発現システムを構成することもできる。この構成では、アンチセンスRNAコード鎖とセンスRNAコード鎖とが対となった一つの二本鎖DNA(siRNAコードDNA)が備えられ、その両側にそれぞれの鎖からアンチセンスRNAとセンスRNAとを発現し得るようにプロモーターを対向して備える。この場合には、センスRNAとアンチセンスRNAの下流に余分な配列が付加されることを避けるために、それぞれの鎖(アンチセンスRNAコード鎖、センスRNAコード鎖)の3'末端にターミネーターをそれぞれ備えることが好ましい。このターミネーターは、A(アデニン)塩基を4つ以上連続させた配列などを用いることができる。また、このパリンドロームスタイルの発現システムでは、二つのプロモーターの種類は異なっていることが好ましい。
【0042】
また、異なるベクターからアンチセンスRNAおよびセンスRNAを発現させる構成としては、例えば、アンチセンスDNAおよびセンスDNAの上流にそれぞれpolIII系のような短いRNAを発現し得るプロモーターを連結させたアンチセンスRNA発現カセットとセンスRNA発現カセットとをそれぞれ構築し、これらカセットを異なるベクターに保持させる構成である。
【0043】
なお、上記dsRNAは、当業者であればそれぞれの鎖を化学合成して調製することも可能である。
【0044】
本発明に用いるdsRNAとしては、siRNAが好ましい。siRNAは、細胞内で毒性を示さない範囲の短鎖からなる二重鎖RNAを意味する。標的遺伝子の発現を抑制することができ、かつ、毒性を示さなければ、その鎖長に特に制限はない。dsRNAの鎖長は、例えば、15〜49塩基対であり、好適には15〜35塩基対であり、さらに好適には21〜30塩基対である。
【0045】
dsRNAをコードするDNAは、標的遺伝子の塩基配列と完全に同一である必要はないが、少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上(例えば、95%、96%、97%、98%、99%以上)の配列の同一性を有する。配列の同一性は、BLASTプログラムにより決定することができる。
【0046】
本発明における「炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物」の他の態様は、標的遺伝子の転写産物と相補的なアンチセンスRNAをコードするDNA(アンチセンスDNA)や標的遺伝子の転写産物を特異的に開裂するリボザイム活性を有するRNA(リボザイム)をコードするDNAである。
【0047】
上記の炎症性サイトカインの機能を抑制する核酸分子は、公知の形質転換技術、例えば、リポフェクション法、エレクトロポレーション法、ウイルスベクター法などの方法により、宿主動物細胞に導入することができる。
【0048】
本発明における「炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物」の他の態様は、炎症性サイトカインの機能を抑制する合成低分子化合物であり、例えば、TNF−α変換酵素の
酵素活性を阻害する化合物であるGM6001、TAPI−1、TAPI−2、TAPI−3が挙げられる。
【0049】
本発明の組成物は、医薬組成物、飲食品(動物用飼料を含む)、あるいは研究目的(例えば、インビトロやインビボの実験)に用いられる試薬の形態であり得る。
【0050】
本発明の組成物は、血栓形成を抑制する作用、円盤状血小板による血小板血栓の形成及び血管内皮細胞への接着を抑制する作用を有するため、血栓形成に起因する疾患、例えば、アテローム性動脈硬化、心原性血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症、動脈血栓症、並びに、慢性炎症を来すメタボリックシンドローム、癌、持続性の腸炎、神経疾患といった動脈血栓症等が認められる疾患などの予防のために投与される医薬組成物として、また、血栓形成の予防のために(上記疾患の予防を含む)、日常的に摂取される飲食品として好適に用いることができる。
【0051】
本発明における組成物は、公知の製剤学的方法により製剤化することができる。例えば、カプセル剤、錠剤、丸剤、液剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、フィルムコーティング剤、ペレット剤、トローチ剤、舌下剤、咀嚼剤、バッカル剤、ペースト剤、シロップ剤、懸濁剤、エリキシル剤、乳剤、塗布剤、軟膏剤、硬膏剤、パップ剤、経皮吸収型製剤、ローション剤、吸引剤、エアゾール剤、注射剤、坐剤などとして、経口的または非経口的に使用することができる。
【0052】
これら製剤化においては、薬理学上もしくは飲食品として許容される担体、具体的には、滅菌水や生理食塩水、植物油、溶剤、基剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、安定剤、香味剤、芳香剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、結合剤、希釈剤、等張化剤、無痛化剤、増量剤、崩壊剤、緩衝剤、コーティング剤、滑沢剤、着色剤、甘味剤、粘稠剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤あるいはその他の添加剤等と適宜組み合わせることができる。
【0053】
本発明の組成物を医薬組成物として用いる場合には、血栓形成に起因する疾患の予防に用いられる公知の医薬組成物と併用してもよい。
【0054】
本発明の組成物を飲食品として用いる場合、当該飲食品は、例えば、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品、病者用食品、食品添加物、あるいは動物用飼料であり得る。本発明の飲食品は、上記のような組成物として摂取することができる他、種々の飲食品として摂取することもできる。飲食品の具体例としては、食用油、ドレッシング、マヨネーズ、マーガリンなどの油分を含む製品;スープ類、乳飲料、清涼飲料水、茶飲料、アルコール飲料、ドリンク剤、ゼリー状飲料、機能性飲料等の液状食品;飯類、麺類、パン類等の炭水化物含有食品;ハム、ソーセージ等の畜産加工食品;かまぼこ、干物、塩辛等の水産加工食品;漬物等の野菜加工食品;ゼリー、ヨーグルト等の半固形状食品;みそ、発酵飲料等の発酵食品;洋菓子類、和菓子類、キャンディー類、ガム類、グミ、冷菓、氷菓等の各種菓子類;カレー、あんかけ、中華スープ等のレトルト製品;インスタントスープ,インスタントみそ汁等のインスタント食品や電子レンジ対応食品等が挙げられる。さらには、粉末、穎粒、錠剤、カプセル剤、液状、ペースト状またはゼリー状に調製された健康飲食品も挙げられる。本発明の組成物は、ヒトを含む動物を対象として使用することができるが、ヒト以外の動物としては特に制限はなく、種々の家畜、家禽、ペット、実験用動物などを対象とすることができる。具体的には、ブタ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、カモ、ダチョウ、アヒル、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター、マウス、ラット、サルなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0055】
本発明における飲食品の製造は、当該技術分野に公知の製造技術により実施することができる。当該飲食品においては、血栓形成の抑制のために有効な1種もしくは2種以上の成分を添加してもよい。また、血栓形成の抑制以外の機能を発揮する他の成分あるいは他の機能性食品と組み合わせることによって、多機能性の飲食品としてもよい。
【0056】
本発明の組成物を投与または摂取する場合、その投与量または摂取量は、対象の年齢、体重、症状、健康状態、組成物の種類(医薬品、飲食品など)などに応じて、適宜選択される。例えば、1回当たりの本発明の組成物の投与量または摂取量は、一般に、0.01mg/kg体重〜100mg/kg体重である。本発明は、このように、本発明の組成物を対象に投与もしくは摂取させることを特徴とする、対象における血栓形成を抑制する方法をも提供するものである。また、本発明の組成物を対象に投与することを特徴とする、対象における血栓形成に起因する疾患の予防の方法をも提供するものである。
【0057】
本発明の組成物の製品(医薬品、飲食品、試薬)またはその説明書は、血栓形成を抑制するために用いられる旨の表示を付したものであり得る。ここで「製品または説明書に表示を付した」とは、製品の本体、容器、包装などに表示を付したこと、あるいは製品の情報を開示する説明書、添付文書、宣伝物、その他の印刷物などに表示を付したことを意味する。血栓形成を予防するために用いられる旨の表示においては、本発明の組成物を投与もしくは摂取することにより血栓形成が抑制される機序についての情報を含むことができる。機序としては、例えば、血栓形成初期において、血小板の血管内皮への付着を抑制すること、に関する情報が挙げられる。また、血栓形成を抑制するために用いられる旨の表示においては、血栓形成に起因する疾患の予防のために用いられること、に関する情報を含むことができる。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0059】
なお、本実施例で用いた実験動物及び試薬は以下のようにして用意した。
【0060】
<実験動物及び試薬>
12週齢 雄 野生型のC57BL/6Jマウスはチャールズリバー研究所から購入した。また、TNF−α、TNF−受容体、IL−1α/β、IL−1受容体アンタゴニスト、及びIL−6の各々の欠損マウス、並びにそれらのコントロール同腹仔は「Horai,R.,et al.、The Journal of Experimental Medicine、1998年、187巻、1463−1475ページ」、「Taniguchi,T.,et al.、Laboratory Investigation、1997年、77巻、647−658ページ」、「Pfeffer, K.,et al.、Cell、73巻、1993年、457−467ページ」、「Kopf M.,et al.、Nature、1994年3月24日、368巻、6469号、339−42ページ」に記載のものを各々用意した。なお、全ての動物及び組み換えDNA実験は動物実験委員会によって承認を受けたものである。そして、全ての試薬は、特に断りのない限り、シグマ−アルドリッチ社製のものを用いた。
【0061】
また、本実施例において、前記実験動物及び試薬を用いて、下記の通りに実験動物の体内に血栓を形成させ、その過程を生体顕微鏡で観察した。さらに、得られた観察結果の画像解析又は統計解析は下記の通りに行った。
【0062】
<生体顕微鏡検査及び血栓形成>
生きているマウスの腸間膜の微小循環における血栓形成を視覚的に解析するため、従来の手法を改変して発展させた可視化技術による生体レーザー傷害手法を用いた(「Nishimura,S.,et al.、The Journal of Clinical Investigation、2008年2月1日、118巻、2号、710−721ページ」、「Takizawa,H.,et al.、The Journal of Clinical Investigation、2010年1月4日、120巻、1号、179−190ページ」参照)。すなわち、ウレタン注射(1.5g/kg)によって麻酔した後、腸間膜を露出することなく観察するために雄マウスに小切開を施した。そして、細胞動態を可視化するために、FITC(20mg/kg体重)又はテキサス−レッド−デキストラン(蛍光標識デキストラン)(20mg/kg体重)を注入した。また、レーザー照射時にROS(活性酸素種)を産生させるため、ヘマトポルフィリン(1.8mg/g)を注入した。結果、マウスをこのように処理することにより、血球動態及び血栓産生は、レーザー励起及びROS産生(波長488nm、30mW出力)の間、可視化されることになる。さらに、かかる可視化に関するシークエンシャル画像は、回転ディスク共焦点顕微鏡(横河電機株式会社製、CSU−X1)及びEM(Electron Multiplying)−CCDカメラ(iXon、Andor社製)、又は共鳴スキャンシステム付共焦点レーザー顕微鏡システム(A1Rシステム、ニコン社製、30フレーム/秒、20〜60秒間)を用いて、20〜40秒間、10〜30フレーム/秒で撮影することにより得た。なお、横河電機システムにおいて用いた励起波長は408、488及び568nmであり、ニコンシステムにおいて用いた405、488及び561nmであった。
【0063】
また、ROS産生を検出するために、マウスに蛍光指示薬 2−[6−(4'−amino)phenoxy−3H−xanthen−3−on−9−yl]benzoic acid(APF(Aminophenyl Fluorescein)、積水メディカル株式会社製)0.8mg/kgを投与した。さらに、内皮細胞層を可視化するために、蛍光標識(FITC結合)IBGriffonia simplicifolia由来のイソレクチンB、Vector Laboratories社製)2.0mg/kgを投与した。また、血小板の動態を特異的に可視化するために、蛍光標識された抗GPIb−β抗体(Dylight488 anti−GPIbβ、Emfret ANALYTICS社製)0.2mg/kgを、可視化試験15分前に静脈内に投与した。さらに、白血球及び内皮細胞の核を可視化するために、ヘキスト33342(インビトロジェン社製)2.5mg/kgを投与した。
【0064】
また、このように蛍光色素(又は指示薬)で染色した試料から、回転ディスク共焦点顕微鏡 CSU−X1を用いて、緑色シグナル及び赤色シグナルを同時に得るために、CSU−X1のセカンドポート及びEM−CCDカメラ iXon一対を用いた。すなわち、試料をAr−Krレーザー(488nm及び568nm)によって励起させ、発生したシグナルはダイクロイックミラーを用いて検出し、赤色及び緑色のシグナルはセカンド565nmダイクロイックミラーによって分離し、さらに、510−nmバンド−パスバリアフィルターを用いて緑色シグナルを検出し、一方、600−nmロングパスフィルターを用いて赤色シグナルを検出した。
【0065】
<画像解析>
血小板の動態を定量化するために、前記の通りにして得られたシークエンシャル画像を次のように解析した。すなわち、レーザー傷害から10秒後に、内皮との断続的な相互作用を示したものを付着血小板と定義し、また、血栓の発達を定量化するために、血栓内の血小板数は、IQソフトウェア(Andor社製)を用いて、盲検観察者達によって測定した。
【0066】
<統計解析>
実験動物とコントロール動物との差は両側(2−tailed)スチューデントt検定によって解析し、P値<0.05を有意としてみなした。
【0067】
また、実施例において用いた血小板機能評価システム(レーザー傷害モデル)について、その観察例を挙げながら、以下において説明する。
【0068】
<血小板機能評価システム(レーザー傷害モデル)>
まず、前述のレーザー誘起反応と、高速共焦点システムに基づく生体内イメージング手法とを組み合わせた生体イメージングによる血小板機能評価システムを用いて、通常条件下における血小板等の動態を確認した。すなわち、白血球、血小板、及び赤血球を、各々ヘキスト33342、蛍光標識された抗GPIb−β抗体、及び蛍光標識デキストランを用いて染色することにより、生体内におけるこれらの動態を可視化した。得られた結果を図1に示す。なお図1中、緑色の(緑色の矢印で示されている)部位は抗GPIb−β抗体で染色された血小板を示し、赤色の(赤色の矢印で示されている)部位は蛍光標識デキストランで染色された赤血球を示し、青色の(青色の矢印で示されている)部位はヘキスト33342で染色された白血球の核を示し、橙色の矢印で示されている部位はヘキスト33342で染色された血管内皮細胞の核を示す。また図1中の数字は観察時間(0〜10秒)を示し、白い矢印は血流の方向を示している。図1に示した結果から明らかなように、本評価システムは血管内おける血小板等の動態を単一血球レベルで観察することができることが確認された。
【0069】
次に、へマトポルフィリンにレーザーを照射して産生されたROSによって腸間膜の毛細血管を損傷させ、その後に続く血栓形成の過程を観察した。得られた結果を図2に示す。なお、図2中の数字は観察時間(レーザー照射後0〜16秒)を示し、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示す。図2に示した結果から明らかなように、前記レーザー傷害に引き続いて、血小板が最初に血管壁に付着し、その後、最終的に血管が赤血球及び/又は白血球からなる栓によって塞がれるまでずっと血小板はその数を増やし積み上がり(pilling up)、血流は遅くなっていくことが確認された。なお、本評価システムを用いてテストした血管の90.5±2.4%(n=動物5匹から得た50血管)において血管の閉塞が確認され、再現性の高さも実証された。さらに、発達中の血栓内において、血小板は円盤状の形態を保ったまま、細胞外マトリックスではなく、血管の内皮壁に付着しているということが明らかになった。
【0070】
さらに、レーザー傷害後における血栓内の細胞集団をより明確にするために、血小板を特異的に同定する蛍光標識抗GPIbβ抗体の存在下において、血栓形成プロトコールに従って実験を前記同様に行った。得られた結果を図3に示す。なお図3中、赤色の部位は抗GPIb−β抗体で染色された血小板を示し、緑色の部位は蛍光標識デキストランで染色された赤血球を示す。また図3中の数字は観察時間(レーザー照射後0〜20秒)を示し、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示す。図3に示した結果から明らかなように、血栓内のその殆どが血小板から構成されていることが確認され、血栓内の92.8±1.1%が血小板であることが明らかになった(n=動物5匹から得た30血管)。
【0071】
なお、これらの実験に用いた抗GPIbβ抗体の濃度(0.2mg/kg)は、レーザー照射後最初の10秒間又は血栓発達中の20秒間における血小板の血管壁への付着に有意な影響を与えないことは確認している(図4及び図5参照)。また、アクリヂンオレンジダイを用いて白血球及び血小板を追跡することにより、閉塞された血管内における血栓に白血球が存在していることも確認している(図6参照)。なお図4中、縦軸はレーザー照射後最初の10秒間に血管壁に付着した単位時間(ms)当たりの血小板数を、更に観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示し、「ns」は抗GPIb−β抗体の添加の有無によって血小板の血管壁への付着に有意な差が生じていないことを示す。また図5中、縦軸は血栓内の血小板数を観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示し、「ns」は抗GPIb−β抗体の添加の有無によって血小板の血管壁への付着に有意な差が生じていないことを示す。さらに図6中、赤色の部位はアクリヂンオレンジで染色された白血球及び血小板を示し、赤色の矢印で示されている部位は血管閉塞部を示し、緑色の部位は蛍光標識デキストランで染色された赤血球を示す。また図6中の数字は観察時間(レーザー照射後0〜20秒)を示し、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示す。
【0072】
また、本評価システム(レーザー傷害モデル)においては、血管の内皮細胞層は破綻しており、血小板を直接活性化させるコラーゲン(細胞外マトリックス)が露出していることも考えられるため、内皮細胞をGriffonia simplicifolia由来の蛍光標識IB(イソレクチン)で染色し、レーザー傷害後の内皮細胞層を経時観察した。得られた結果を図7に示す。なお図7中、赤色の部位は蛍光標識IBで染色された内皮細胞を示し、緑色の部位はデキストランで染色された赤血球を示す。また図7中の数字は観察時間(レーザー照射後0〜16秒)を示し、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示す。図7に示した結果から明らかなように、レーザー照射後に蛍光色素の溢出がなかったことから、無傷の内皮上において血栓は発達していることが確認された。
【0073】
さらに、本評価システム(レーザー傷害モデル)を用いて、血栓形成はどのように開始されるのかを解析すべく、APF(Aminophenyl Fluorescein)を用いて、先ずはレーザー傷害後の血管内におけるROS産生を可視化した。得られた結果を図8に示す。なお図8中、赤色(又は白色)の部位はAPFにより検出されたROS産生(蓄積)部位を示し、緑色の部位はデキストランで染色された赤血球を示す。また図8中の数字は観察時間(レーザー照射後0秒及び20秒)を示し、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示す。図8に示した結果から明らかなように、調べたレーザー傷害後の血管全てにおいて、ROSの蓄積が確認された。
【0074】
(実施例1) TNF−α欠損マウスにおける血栓形成の評価
そこで、ROS産生を促すことが知られているTNF−α(「Yazdanpanah,B.,et al.、Nature、2009年、460巻、1159−1163ページ」参照)と血栓形成との関連性を調べるために、血小板機能評価システム(レーザー傷害モデル)を用いて、TNF−α欠損マウス(TNF−αノックアウトマウス(TNFα(−/−)))における血小板の初期の付着及び血栓成長等を評価した。得られた結果を図9〜11に示す。なお図9中、縦軸は、TNF−αノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔におけるレーザー傷害後の10秒間に血管壁に付着した単位時間(ms)当たりの血小板数を更に観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。また図10中、縦軸は、TNF−αノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔における、レーザー傷害から0秒、10秒、20秒後の血栓内における血小板数を観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。さらに、図9及び10中のアスタリスクは統計的に有意であることを示す(P<0.05)。また図11中、赤色(又は白色)の部位はAPFにより検出されたROS産生(蓄積)部位を示し、緑色の部位はデキストランで染色された赤血球を示し、数字は観察時間(レーザー照射後0秒及び20秒)を示す。さらに図11中、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示す。図9〜11に示した結果から明らかなように、TNF−α欠損マウスにおいて、レーザー照射後の血管壁への血小板の初期の付着及び血栓成長は顕著に減じており、ROS産生も減少していることが明らかになった。
【0075】
(実施例2) TNF−R1欠損マウスにおける血栓形成の評価
次に、TNF−αの受容体である1型TNF受容体(TNF−receptor1、TNF−R1)の欠損マウス(TNF−R1ノックアウトマウス(TNF−R1(−/−)))における血小板の初期の付着及び血栓成長を評価した。得られた結果を図12〜14に示す。なお図12中、縦軸は、TNF−R1ノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔におけるレーザー傷害後の10秒間に血管壁に付着した単位時間(ms)当たりの血小板数を、更に観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。また図13中、縦軸は、TNF−R1ノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔における、レーザー傷害から0秒、10秒、20秒後の血栓内における血小板数を観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。さらに、図12及び13中のアスタリスクは統計的に有意であることを示す(P<0.05)。また図14中、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示す。図12〜14に示した結果から明らかなように、TNF−R1欠損マウスにおいても、レーザー照射後の血管壁への血小板の初期の付着及び血栓成長は顕著に減じており、実施例1に記載の結果と併せて、TNF−α及びその受容体が介する炎症性サイトカインシグナルは、血小板の初期の付着及び血栓成長に必須の要素であることが明らかとなった。
【0076】
(実施例3) IL−1欠損マウスにおける血栓形成の評価
また、炎症性サイトカインと血小板という観点からは、活性化血小板において炎症性サイトカインの1種であるIL−1βが発現しており(非特許文献8)、IL−1αもIL−1β同様に血小板において発現していることが報告されている(非特許文献9)。さらに、IL−1β pre−mRNAは巨核球の細胞質に存在し、断片化によって放出した血小板自身もIL−1β pre−mRNAを保持しており(非特許文献10)、炎症反応状態に血小板自体の産生するIL−1βが関与することが推測されている。また、さらには、IL−1βの合成を介して炎症シグナルを調節していることも既に示されている(非特許文献11)。そこで、IL−1と血栓形成との関連性を調べるために、本評価システムを用いて、IL−1欠損マウス(IL1α/βダブルノックアウトマウス(IL1α/β(−/−)))における血小板の初期の付着及び血栓成長を評価した。得られた結果を図15〜17に示す。なお図15中、縦軸は、IL1α/βノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔におけるレーザー傷害後の10秒間に血管壁に付着した単位時間(ms)当たりの血小板数を、更に観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。また図16中、縦軸は、IL1α/βノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔における、レーザー傷害から0秒、10秒、20秒後の血栓内における血小板数を観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。さらに、図15及び16中のアスタリスクは統計的に有意であることを示す(P<0.05)。また図17中、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示し、数字は観察時間(レーザー照射後0秒及び20秒)を示す。図15〜17に示した結果から明らかなように、IL−1欠損マウスにおいて、血栓成長における血小板の内皮細胞への初期の付着が減少していることが明らかになった。
【0077】
(実施例4) IL−1RA欠損マウスにおける血栓形成の評価
さらに、IL−1α又はβとIL−1受容体との結合を競合的に阻害し、IL−1活性を抑制する因子として知られている、IL−1受容体アンタゴニスト(IL−1RA)の欠損マウス(IL−1RAノックアウトマウス(IL−1RA(−/−)))における血栓成長等を評価した。得られた結果を図18〜20に示す。なお図18中、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示し、数字は観察時間(レーザー照射後0秒、8秒、及び20秒)を示す。また図19中、縦軸は、IL−1RAノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔におけるレーザー傷害後の10秒間に血管壁に付着した単位時間(ms)当たりの血小板数を、更に観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。また図20中、縦軸は、IL−1RAノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔における、レーザー傷害から0秒、10秒、20秒後の血栓内における血小板数を観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。さらに、図19及び20中のアスタリスクは統計的に有意であることを示す(P<0.05)。図18〜20に示した結果から明らかなように、IL−1RA欠損マウスにおいては、レーザー傷害後の、血管壁上への血小板の初期の付着及び血栓の発達が亢進しており、実施例3に記載の結果と併せて、IL−1は、TNF−α同様、生体内の血栓形成において必須であることが明らかとなり、また、IL−1RAは血栓形成を抑制する作用を有する物質であることが実証された。
【0078】
(実施例5) IL−6欠損マウスにおける血栓形成の評価
また、IL−6と血栓形成との関連性を調べるために、本評価システムを用いて、IL−6欠損マウス(IL−6ノックアウトマウス(IL−6(−/−)))における血小板の初期の付着及び血栓成長を評価した。得られた結果を図21〜23に示す。なお図21中、白い矢印は血流の方向を示し、スケールバーは10μmを示し、数字は観察時間(レーザー照射後0秒及び20秒)を示す。また図22中、縦軸は、IL−6ノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔におけるレーザー傷害から10秒後に血管壁に付着した単位時間(ms)当たりの血小板数を、更に観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。さらに図23中、縦軸は、IL−6ノックアウトマウス、及びそれらの野生型同腹仔における、レーザー傷害から0秒、10秒、20秒後の血栓内における血小板数を観察している血管の長さ(μm)で割って得られた数値を示す。さらに、図22及び23中のアスタリスクは統計的に有意であることを示す(P<0.05)。図21〜23に示した結果から明らかなように、IL−6欠損マウスにおいては、レーザー傷害後の、血管壁上への血小板の初期の付着及び血栓の発達が抑制されており、IL−6は血栓形成を促進する作用を有する物質であることが明らかになった。
【0079】
従って、TNF−α、IL−1、IL−6といった炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物(例えば、実施例4に記載のIL−1RA)を生体に投与することにより、血管壁への血小板の初期の付着及び血栓成長を阻害し、生体内における血栓形成を抑制することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0080】
以上説明したように、本発明によれば、血管壁への血小板の初期の付着及び血栓成長を阻害し、血栓形成を抑制することが可能となる。したがって、本発明の炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物は血栓形成を抑制する点において優れているため、医薬品として用いる場合には、血栓形成に起因する疾患、例えば、アテローム性動脈硬化、動脈血栓症、心原性血栓塞栓症、静脈血栓塞栓症の予防において特に有用である。また、血栓形成を予防するために日常的に摂取する飲食品として、あるいは、研究目的で血栓形成を抑制するための試薬としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炎症性サイトカインの機能を抑制する化合物を含有することを特徴とする血栓形成を抑制する作用を有する組成物。
【請求項2】
前記炎症性サイトカインは、TNF−α、IL−1、及びIL−6からなる群から選択される少なくとも一つの生体分子であることを特徴とする請求項1に記載の血栓形成を抑制する作用を有する組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2012−41271(P2012−41271A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180781(P2010−180781)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、科研費基盤S.A.B.若手B JSTさきがけ事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504137912)国立大学法人 東京大学 (1,942)
【Fターム(参考)】