説明

血液および組織中の細菌を免疫学的に検出する方法およびキット

【課題】ドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤、特に、ドナー哺乳動物からレシピエント哺乳動物に移されるであろう血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。
【解決手段】グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤および/またはグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む一組の結合剤と、ドナー血液または血液製剤を接触させること、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中のグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌の臨床的に問題とされる量の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中のグラム陽性菌および/またはグラム陰性菌の臨床的に問題とされる量の非存在を示す)を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する引照]
本出願は、1999年7月16日に提出した米国暫定特許出願第60/144,442号から優先権を主張するものであり、その全内容は、参照により本明細書に援用されている。
【0002】
[発明の背景]
発明の分野
本発明は、血液もしくは血液製剤(全血、造血幹細胞、白血球、血漿、血清、赤血球、および血小板を含む)、またはドナー組織の臨床的に問題とされる量の細菌の存在に関するスクリーニングに関する。さらに特には、本発明は、輸血もしくは移植に用いられるであろう血液および血液製剤またはドナー組織中の臨床的に問題とされる量の混入細菌の存在に関するスクリーニングに関する。
【背景技術】
【0003】
関連技術の概要
血液および血液製剤の輸血は、患者管理において治療的に重要な側面である。ドナー組織および器官の移植は、同様に治療的に重要である。ドナー血液、ドナー血液製剤、またはドナー組織もしくは器官中に臨床的に問題とされるレベルの混入細菌が存在しないことは、輸血または移植のためのこれらドナー液体および組織の安全な治療的使用には必要条件である。例えば、菌血(血液中への細菌の侵入)は、一過性、連続的または間欠性であり得る。Wagnerら(Clin. Microbiol. Rev. 7: 290-302(1994))およびGoldmanら(Trans. Med. Revs. 5: 73-83(1991))は、輸血後に敗血症を発症した患者に輸血された混入血液中にて、多数の異種の細菌が同定されたことを教示している。Tadlerら(J. Clin. Laboratory Analysis 2: 21-25(1989))は、一過性の菌血は一般にあまりたいしたことはないが、連続的または間欠性の菌血は、幾つかの患者集団、特に免疫無防備状態患者、新生児患者、および老人患者には生活を脅かす状況をもたらし得ることを教示している。したがって、臨床的に問題とされる量の細菌が混入した血液がレシピエント患者に輸血されるのであれば、特に患者は大きな手術を受けるか、そうでなければ無防備であるときに血液および/または血液製剤の輸血がしばしば実施されるので、レシピエント患者は合併症を患う恐れがある。
【0004】
同様に、ドナー組織および器官は、レシピエントによる拒絶を遅延させ、好ましくは防ぐために微生物を含まないのが好ましい。
【0005】
血液または血液製剤の微生物を含まない安全な供給の必要性にもかかわらず、血液または血液製剤中の混入細菌の存在を検出するための迅速で効率的な方法は、存在しない。血液が細菌に感染しているか、そうでないのかを確定する方法は存在するが、最新の細菌アッセイは、感染を引き起こしている正確な微生物を同定するという最優先の目的で、感染血液を有していると疑われる患者に行われ、その結果、適切な抗生物質治療が始められ得る。これらの方法では、感染している細菌を同定するために、比較的長期間、細菌の増殖に好ましい培地中で患者の血液試料を増殖させる。ついには、存在する微生物の数は、妥当な量が存在する点にまで増幅され、検出することができる。
【0006】
培養に基づいた血液アッセイ技法は、患者の血液に感染している特定の型の細菌の確定に有用であるが、これらの技法を実施するのに要する時間の長さは、それらを試験血液および血液製剤またはドナー器官に使用することを非現実的なものにしている。このことは、ドナー血液、血液製剤、および器官は、輸液または移植片として比較的急に使用する必要が頻繁にあるからである。したがって、ドナー血液(血液製剤)または器官の使用が必要とされる前に、培養に基づいた技法でドナー血液または器官を試験する時間はない可能性がある。
【0007】
さらに、ドナー器官および血液または血液製剤は、ドナー物質の機能の損失だけでなく、あらゆる存在する混入細菌量の増加により、貯蔵寿命が比較的短い。細菌は増殖速度が速いため、ドナー血液または血液製剤中に存在する混入細菌が少量であっても、時間とともに急速に増幅するであろう。例えば、ドナー血小板は、提供後7日間のみ機能的に生存可能であるが、提供されたときは著しくなかったが、時間が経つにつれて、臨床的に問題とされるレベルにまで増加した可能性がある細菌混入の懸念のため、それらは、提供後5日間以上使用されることはまれである。さらに、これら培養に基づいた血液アッセイ技法は、あまりに時間がかかり過ぎるため、輸血用途には、貯蔵寿命が短い(提供後約5日)血小板をルーチンにスクリーニングすることはできない。
【0008】
Brecherら(Transfusion 34(9): 750-755(1994))は、潜在的な混入物の遺伝物質にハイブリダイズする標識核酸プローブを用いて、血中の特定の混入細菌を検出する別の技法を教示する。しかしながら、これらの研究に使用されるプローブは、検出することができる微生物の数に非常に限りがあり、不運にもこの技術からは商業的に実用的なアッセイは現れなかった。それらの複雑さを考慮すると、これらの技法は、あまりに労働量が増し、かつ時間を浪費しすぎるため、細菌混入に関する血液または血液製剤をルーチンにスクリーニングすることはできない。
【0009】
したがって、ドナー血液もしくは血液製剤、またはドナー組織中の臨床的に問題とされる量のどんな混入細菌も迅速に検出する技法が必要とされる。理想的には、抗原結合技法を迅速かつ効率的に使用することができた。不運にも、Wagner, S. J. (Int. J. Med. Microbiol. Virol. Parasitol. Infect. Dis. 283(3):253-257(1996))は、幅広い細菌の検出のために、標準的な抗原性起源は存在しないと教示している。したがって、ドナー血液もしくは血液製剤またはドナー組織中の臨床的に問題とされる量の混入細菌を検出する抗原結合に基づく技法が必要とされる。
【発明の概要】
【0010】
[発明の簡単な概要]
本発明は、血液もしくは血液製剤、またはドナー組織、特にある個体から別の個体に移されべきドナー血液もしくは血液製剤、またはドナー組織中の臨床的に問題とされる量の混入細菌を検出する迅速な抗原結合に基づく方法を提供する。
【0011】
したがって、第一の態様によれば、本発明は、ドナー血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。
【0012】
本発明の第一の態様のある実施形態において、試料を一組の結合剤と接触させる前に、または接触させるのと同時に、試料を処理する。好ましくは、処理は、グラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。本発明の第一の態様のある実施形態において、臨床的に問題とされる量の細菌が存在しないと確定されたドナー血液または血液製剤は、レシピエント哺乳動物に投与される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、およびポリミキシンまたはバシトラシンのような抗生物質からなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合する。ある好ましい実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含む。ある実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、ここで抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない。好ましくは、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合する。
【0013】
本発明の第一の態様の様々な実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第1のレポーター分子で標識され、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第2のレポーター分子で標識される。ある実施形態において、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じである。別の実施形態において、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じでない。好ましくは、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の1つまたは両方は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0014】
第二の態様において、本発明は、ドナー血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。
【0015】
本発明の第二の態様のある実施形態において、試料を一組の結合剤と接触させる前に、または接触させるのと同時に、試料を処理する。好ましくは、処理は、グラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。ある実施形態において、臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌が存在しないと確定された血液または血液製剤は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含む。ある実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、ここで抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない。好ましくは、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合する。
【0016】
本発明の第二の態様の様々な実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なようにレポーター分子で標識される。好ましくは、レポーター分子は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0017】
第三の態様において、本発明は、血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。
【0018】
本発明の第三の態様のある実施形態において、試料を一組の結合剤と接触させる前に、または接触させるのと同時に、試料を処理する。好ましくは、処理は、グラム陰性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。ある実施形態において、臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌が存在しないと確定されたドナー血液または血液製剤は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、およびポリミキシンまたはバシトラシンのような抗生物質からなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合する。
【0019】
本発明の第三の態様の様々な実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なようにレポーター分子で標識される。好ましくは、レポーター分子は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0020】
第四の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤、およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、およびドナー血液またはドナー血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。
【0021】
本発明の第四の態様のある実施形態において、キットはさらに試料を処理する手段を含み、ここで処理は、グラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。本発明の第四の態様のある実施形態において、臨床的に問題とされる量の細菌が存在しないと確定されたドナー血液または血液製剤は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物および第2の哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、およびポリミキシンまたはバシトラシンのような抗生物質からなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合する。ある好ましい実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含む。ある実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、ここで抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない。好ましくは、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合する。
【0022】
本発明の第四の態様の様々な実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第1のレポーター分子で標識され、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第2のレポーター分子で標識される。ある実施形態において、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じである。別の実施形態において、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じでない。好ましくは、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の1つまたは両方は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0023】
第五の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および血液または血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。
【0024】
本発明の第五の態様のある実施形態において、キットはさらに試料を処理する手段を含み、ここで処理は、グラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。ある実施形態において、臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌が存在しないと確定されたドナー血液または血液製剤は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含む。ある実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、ここで抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない。好ましくは、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合する。
【0025】
本発明の第五の態様の様々な実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なようにレポーター分子で標識される。好ましくは、レポーター分子は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0026】
第六の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および血液または血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液またはドナー血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。
【0027】
本発明の第六の態様のある実施形態において、キットはさらに試料を処理する手段を含み、ここで処理は、グラム陰性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。ある実施形態において、臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌が存在しないと確定されたドナー血液または血液製剤は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、およびポリミキシンまたはバシトラシンのような抗生物質からなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合する。
【0028】
本発明の第六の態様の様々な実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なようにレポーター分子で標識される。好ましくは、レポーター分子は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0029】
本発明の第一、第二、第三、第四、第五および第六の様々な実施形態において、血液または血液製剤は、好ましくは全血、白血球、造血幹細胞、血小板、赤血球、血漿または血清である。
【0030】
第七の態様において、本発明は、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、哺乳動物からの組織(ここで、ー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。
【0031】
本発明の第七の態様のある実施形態において、試料を一組の結合剤と接触させる前に、または接触させるのと同時に、試料を処理する。好ましくは、処理は、グラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。本発明の第七の態様のある実施形態において、臨床的に問題とされる量の細菌が存在しないと確定されたドナー組織は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、およびポリミキシンまたはバシトラシンのような抗生物質からなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合する。ある好ましい実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含む。ある実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、ここで抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない。好ましくは、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合する。
【0032】
本発明の第七の態様の様々な実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第1のレポーター分子で標識され、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第2のレポーター分子で標識される。ある実施形態において、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じである。別の実施形態において、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じでない。好ましくは、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の1つまたは両方は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0033】
第八の態様において、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。
【0034】
本発明の第八の態様のある実施形態において、試料を一組の結合剤と接触させる前に、または接触させるのと同時に、試料を処理する。好ましくは、処理は、グラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。ある実施形態において、臨床的に問題とされる量の菌が存在しないと確定されたドナー組織は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含む。ある実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、ここで抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない。好ましくは、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合する。
【0035】
本発明の第八の態様の様々な実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なようにレポーター分子で標識される。好ましくは、レポーター分子は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0036】
第九の態様において、本発明は、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。
【0037】
本発明の第九の態様のある実施形態において、試料を一組の結合剤と接触させる前に、または接触させるのと同時に、試料を処理する。好ましくは、処理は、グラム陰性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。ある実施形態において、臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌が存在しないと確定されたドナー組織は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、およびポリミキシンまたはバシトラシンのような抗生物質からなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合する。
【0038】
本発明の第九の態様の様々な実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なようにレポーター分子で標識される。好ましくは、レポーター分子は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0039】
第十の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤、およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。
【0040】
本発明の第十の態様のある実施形態において、キットはさらに試料を処理する手段を含み、ここで処理は、グラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。本発明の第十の態様のある実施形態において、臨床的に問題とされる量の細菌が存在しないと確定されたドナー組織は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、組織が得られたドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、およびポリミキシンまたはバシトラシンのような抗生物質からなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合する。ある好ましい実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含む。ある実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、ここで抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない。好ましくは、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合する。
【0041】
本発明の第十の態様の様々な実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第1のレポーター分子で標識され、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第2のレポーター分子で標識される。ある実施形態において、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じである。別の実施形態において、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じでない。好ましくは、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の1つまたは両方は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0042】
第十一の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。
【0043】
本発明の第十一の態様のある実施形態において、キットはさらに試料を処理する手段を含み、ここで処理は、グラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。ある実施形態において、臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌が存在しないと確定されたドナー組織は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含む。ある実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、ここで抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない。好ましくは、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合する。
【0044】
本発明の第十一の態様の様々な実施形態において、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なようにレポーター分子で標識される。好ましくは、レポーター分子は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0045】
第十二の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。
【0046】
本発明の第十二の態様のある実施形態において、キットはさらに試料を処理する手段を含み、ここで処理は、グラム陰性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。ある実施形態において、臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌が存在しないと確定された組織は、レシピエント哺乳動物に移される。好ましくは、ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある好ましい実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、およびポリミキシンまたはバシトラシンのような抗生物質からなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合する。
【0047】
本発明の第十二の態様の様々な実施形態において、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なようにレポーター分子で標識される。好ましくは、レポーター分子は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0048】
本発明の第七、第八、第九、第十、第十一および第十二の態様の様々な実施形態において、ドナー組織は、好ましくは、肺、心臓、肝臓、皮膚、腎臓、膵臓、脾臓または骨髄である。
本発明の上記態様すべてのある好ましい実施形態において、一組の結合剤は、固相支持体(例えば、マイクロタイタープレート)上に固定される。
【0049】
本発明の第一、第二、第三、第四、第五、第六、第七、第八、第九、第十、第十一および第十二の態様の好ましい実施形態において、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】典型的なグラム陽性細胞壁膜の模式図である。
【図2】グラム陰性菌の細胞壁に見られるリポ多糖(LPS)構造の模式図である。
【図3A】図3A〜Dは、本発明の実施形態に従った装置の模式図である。図3Aは、血液または血液製剤の試料を添加していない(またはドナー組織を貯蔵する液体を添加していない)装置を示す。
【図3B】図3A〜Dは、本発明の実施形態に従った装置の模式図である。図3Bは、血液または血液製剤の試料が添加される時点での装置を示す。図3Cは、体液の試料の装置との接触を示す。
【図3C】図3A〜Dは、本発明の実施形態に従った装置の模式図である。図3Cは、体液の試料の装置との接触を示す。
【図3D】図3A〜Dは、本発明の実施形態に従った装置の模式図である。図3Dは、本発明に従った装置を用いた陽性の結果であり、試験した血液または血液製剤の試料に微生物が混入していたことを示す。
【図4A】図4A〜Dは、本発明に従った方法の模式図である。図4Aは、血液、血液製剤、または組織が貯蔵されている液体の試料の試験装置への添加を示す。
【図4B】図4A〜Dは、本発明に従った方法の模式図である。図4Bは、グラム陰性菌およびグラム陽性菌両方に特異的に結合する抗体で被覆したラテックスビーズの試験装置への添加を示す。
【図4C】図4A〜Dは、本発明に従った方法の模式図である。図4Cは、試験装置中で抗体被覆ラテックスビーズとの試料の混合を示す。
【図4D】図4A〜Dは、本発明に従った方法の模式図である。図4Dは、陰性の結合(すなわち、試料中に細菌は存在しない;左)および結合(すなわち、試料中に細菌が存在;右)の視覚的な結果を示す。
【図5】本発明の非限定的な結合剤(抗リポテイコ酸抗体)により特異的に結合される種々の(表示した)グラム陽性菌の数の図示である。
【図6】本発明の非限定的な結合剤(抗リポ多糖抗体)により特異的に結合される種々の(表示した)グラム陰性菌の数の図示である。
【0051】
[好ましい実施形態の詳細な説明]
本発明は、血液または血液製剤またはドナー組織中の、特にドナー個体からレシピエント個体に移される供与血液または血液製剤あるいは供与組織中の臨床的に問題とされる量の混入細菌の検出に関する。本発明は、迅速な抗原結合に基づいた方法、および血液もしくは血液製剤中またはドナー組織が貯蔵される液体中の臨床的に問題とされる量の微生物の検出用キットを提供する。本発明は、輸液または移植のために用いられるドナーの血液または血液製剤またはドナー組織中の混入細菌の正確な同定は問題とされないという認識から生じる。したがって本発明は、グラム陽性およびグラム陰性菌の両方と特異的に結合する結合剤を用いて、血液または血液製剤の試料とのあるいはドナー組織が貯蔵される液体の試料とのあらゆる結合を検出する方法を提供する。したがって、任意の結合が検出された場合、血液または血液製剤またはドナー組織は汚染されていることが分かり、好ましくは別の個体への輸液に用いられない。
本明細書中で言及される公開済み特許および科学文献は、当業者に利用可能である知識を確立している。本明細書中で引用されている発行済み特許、出願および参考文献は、各々が特定的におよび別々に参照により援用されることを示された場合と同じ程度、参照により本明細書に援用される。これらの出版物と本発明の開示との間の不一致点は、本発明の開示の方を選択することで解決される。
【0052】
第一の態様において、本発明は、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液またはドナー血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、ドナー血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む。好ましい実施形態において、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物(例えば、ネコ、イヌ、ウマ、ブタ)である。
【0053】
本明細書中で用いる場合、「血液または血液製剤」とは、血液または骨髄中に見出されるあらゆる細胞、ならびに血液または骨髄由来のあらゆる生成物を含み、それらの例としては全血、赤血球、血小板、血清、血漿、造血幹細胞および白血球(リンパ球を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。抗血液凝固剤、例えばEDTAまたはヘパリンを添加しないと、全血が凝固し、大多数の血球が輸液に使用できなくなると、熟練生物学者は理解する。したがって、「血液または血液製剤」という用語に含まれるのは、任意の抗凝血剤で処理された血液である。さらに、特定の血液製剤の単離中(例えば血小板泳動を用いる血小板)、非血液構成成分、例えば生理食塩水が血液に添加され得る。したがって、「血液または血液製剤」という用語には、任意の生物学的に不活性な物質、例えば生理食塩水、水または貯蔵栄養溶液を添加された血液も含まれる。
【0054】
本明細書中で用いる場合、「臨床的に問題とされる量」という用語は、典型的輸液レシピエントに輸液される血液または血液製剤中に存在する場合に、以下の症状:発熱、悪寒、低血圧、悪心/嘔吐、頭痛、呼吸困難、乏尿、下痢、注入部位痛、じんま疹、発汗、胸部痛、点状出血および斑状出血、散在性血管内凝固、敗血症ショック、器官不全および死(これらに限定されない)のいずれかを輸液されたレシピエントで誘発する量以上である血液または血液製剤中の細菌混入量を意味する(例えば、Morduchowicz, G. et al., Reviews of Infectious Diseases 13:307(1991)参照)。細菌の急速な分裂時間のために、血中の細菌量はできるだけ輸液時近くで測定されるべきである。典型的には、輸液時点では、臨床的に問題とされる量は、血液または血液製剤1ml当たり1x10コロニー形成単位(CFU)より大きい。好ましくは、輸液時点では、臨床的に問題とされる量は1x10CFU/mlより大きい。さらに好ましくは、輸液時点では、臨床的に問題とされる量は1x10CFU/mlより大きい。さらに好ましくは、輸液時点では、臨床的に問題とされる量は1x10CFU/mlより大きい。さらに好ましくは、輸液時点では、臨床的に問題とされる量は1x10CFU/mlより大きい。最も好ましくは、輸液時点では、臨床的に問題とされる量は1x10CFU/mlより大きい。もちろん、重症免疫無防備状態患者または新生児のようなある種の患者は、臨床的に問題とされる量より低い細菌量を掃去できない免疫系を有する、と輸液医療産業の当業者は認識する。しかしながら、本発明の方法は大多数の患者における輸液に用いられる血液および血液製剤を試験するには十分であると熟練従業者は理解する。
【0055】
本明細書中で用いる場合、「特異的に結合する」とは、結合剤(例えば抗体)が特定のリガンド(例えばポリペプチド、炭水化物、脂質または糖タンパク質)を認識し、それと結合するが、しかし試料中の、例えば天然に多数の異なるタンパク質を含む生物学的試料中の他の分子を実質的に認識および結合しないことを意味する。同様に、リガンドを特異的に結合する結合剤により結合されるそのリガンドは、その結合剤により「特異的に結合される」といわれる。結合剤およびそのリガンド間で形成される会合は共有結合であり得るが、好ましくは非共有結合である。好ましくは、リガンドを特異的に結合する結合剤は、水中で、生理学的条件下で、または生理学的条件をイオン強度に近づけた条件下で、例えば140mMのNaCl、5mMのMgClで、少なくとも10−1、さらにより好ましくは少なくとも10−1、さらにより好ましくは少なくとも10−1、最も好ましくは少なくとも10−1の親和性でそのリガンドとの会合を形成する。
本明細書中で用いる場合、「抗原」(例えばグラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原)とは、結合剤により特異的に結合され得る任意の構造的配座の、核酸分子およびペプチドグリカンを除いた、あらゆる分子を意味する。例えばグラム陰性菌抗原は、グラム陰性菌の細胞膜、細胞壁または細胞周辺腔により、分泌されるか、それに対して内部に存在するか、またはその上に(もしくはそれ全体にわたって)存在する抗原である。結合剤により結合される抗原上の部位は、「結合部位」と呼ばれる。抗原は、タンパク質、糖タンパク質、炭水化物または脂質であり得るが、これらに限定されない。本発明の抗原の定義から特定的に除外されるのは、ペプチドグリカンおよび核酸分子、例えばDNAまたはRNAである。
【0056】
本明細書中で用いる場合、「グラム陽性菌」とは、グラム染色に曝露された場合に、染料を保持し、したがって青紫に染色される細菌の菌株、型、種または属を意味する。
【0057】
本明細書中で用いる場合、「グラム陰性菌」とは、グラム染色に曝露された場合に、染料を保持せず、したがって青紫に染色されない細菌の菌株、型、種または属を意味する。もちろん、染料の濃度に、ならびに曝露の長さによって、グラム陰性菌はわずかな量のグラム染料を受け取り、淡青紫に染色されるようになり得る、と当業者は認識する。しかしながら、同一処方のグラム染色で同一時間染色されたグラム陽性菌と比較して、グラム陰性菌はグラム陽性菌に比して非常に淡い青紫色になる。
【0058】
細菌細胞壁は複雑な半剛性構造であり、これが生物体の形状を限定し、下層の脆弱な細胞質膜を取り囲み、そして外部環境から細菌細胞を保護する。細菌細胞壁は、細菌細胞周囲に格子を形成する炭水化物およびポリペプチドを含むペプチドグリカンとして既知の高分子網目構造で構成される。細菌細胞壁は、細菌細胞に機械的安定性を提供し、浸透性溶解を防止する。本発明に最も関連があるのは、細菌の大部分の種を弁別するために用いられる細胞壁の化学組成である。
異なる種の細菌の細胞壁は、厚み、構造および組成が非常に異なり得る。しかしながら、2つの主要な型の細菌細胞壁が存在し、細菌の所定の種がそのどちらの型の細胞壁を有するかは、一般的にある種の染料に対する細胞の反応により確定され得る。おそらく細菌を染色するために最も広範に用いられる染料は、グラム染料である。この結晶バイオレットおよびヨウ素染色で染色した場合、染料を保持する細菌はグラム陽性と呼ばれ、そうでないものはグラム陰性と呼ばれる。
グラム陽性菌細胞壁は、ペプチドグリカンの相対的に厚いコートを含有する。この構造は、β−1,4グリコシド結合により連結されるN−アセチルグルコサミン(NAG)およびN−アセチルムラミン(NAM)酸の反復炭水化物単位として整列される。N−アセチルムラミン酸残基は、ペプチド2およびペプチド3がペプチドの性質の何らかの可変性を示し得るテトラペプチドを介して隣接(NAM−NAG)鎖(ここで、x=任意の数)に架橋される。架橋のいくつかは、ペプチドグリカンの多数の層を作る平面の上および下に延びる。これらのポリマーは細胞の表面を取り囲み、それにより生物体の形状を限定する。
【0059】
グラム陽性細胞壁内に位置するのは、いくつかの種のかなり多くの細胞壁を作り上げ得るリポテイコ酸(LTA)を含有するリポポリマー化合物である。これらのポリマーは、主にグリセロール(またはリビトール)ホスフェートで構成される。図1は、典型的グラム陽性菌細胞壁膜の模式図を示す。それらの高極性および正味陽性電荷のために、リポテイコ酸構造は、細菌細胞内外へのイオンおよび栄養流れを調節すると考えられる。LTA構造は、高抗原性であり、この種類の細菌の広範囲ベースの検出を可能にするのに必要な分子特異性の基礎を形成し得る。リポテイコ酸はグラム陽性菌中で一般的であるため、この構造を認識する試験手法は、グラム陽性菌混入を高度に示し得る。リポテイコ酸ポリマーの化学構造はグラム陽性菌の種々の菌株の間で合理的に変換されるため、この細胞壁構造の存在の精査は、多数のグラム陽性菌の検出を可能にする。
グラム陰性型細菌細胞壁は、外見は明瞭に層化され、グラム陽性細胞壁より非常に薄い。グラム陰性菌細胞壁は、それがタンパク質含有脂質二重膜上に作り上げられるという点でグラム陽性菌細胞壁に類似しているが、しかしながら内方に面する脂質はリン脂質であり、一方外方に面する脂質は高分子のいわゆるリポ多糖(LPS)を含む。このLPS構造は細胞の外面に強陰性電荷を生じ、これが生物体認識および生存のために用いられる。このLPS構造は、グラム陰性感染の毒性作用も提供し、このために「内毒素」とも呼ばれる。
【0060】
LPS構成成分の構造は、多数の研究で説明されており、そして図2に示されている。概して、LPS抗原構造は、3つの別個の領域を含有すると説明され得る。O特異的領域と呼ばれ、直線状または分枝鎖の炭水化物からなる最外部領域は、高度に可変性であり、典型的には個々の種に独特である。血清学的試験は、この差を利用して、グラム陰性菌の特定の菌株を同定し得る。O鎖の存在は、顕微鏡検査で平滑表面の外見を生じる。これに対比してO特異的側鎖を有さない種または突然変異体は、粗く見える。ほとんどの野生型は、したがって、「スムーズ」株と呼ばれ、一方、この構造を有さない突然変異体は「ラフ」株と呼ばれる。
【0061】
LPS構造中のO特異的領域の内部には、コア多糖領域が存在し、これは属間で高度の相同性を示す。コア領域はさらに2つの領域、即ち「内部コア」および「外部コア」に分けられる。コア領域の外部コアは多少の可変性を示すがしかし共通素子を有し、そして一般的にグルコース、ガラクトース、N−アセチル−グルコサミンおよびその他の炭水化物を含有する。すべてのLPS発現グラム陰性菌のコア領域の内部コアは、化学的同一構造を含有する。内部コアは、ヘプトースおよび2−ケト−3−デオキシ−オクトネート(KDO)残基で構成される。
【0062】
LPS構造の最内部の構成成分は、リピドA構造であり、これはLPSの化学的に最も均一な部分を構成する。リピドAは、その遠位炭水化物末端の各々でリン酸化されるβ−グルコサミニル−(1→6)−α−グルコサミン二糖で構成される。炭水化物主鎖は、置換ミリスチン酸誘導体により2,3中心の各々でアシル化される。脂肪酸側鎖は、多少の小程度の種依存性修飾を示すが、これらの脂肪酸は細胞膜中に組み入れられ、免疫認識のために利用可能でない。抗体産生は、高度に保存される表面処理化曝露化ビスホスホリル−グルコサミン二糖主鎖構造の結果であると思われる。
【0063】
LPS構造の構造的可変性は、表面曝露O特異的領域から内部および外部コア領域へ、二糖誘導体および膜包埋リピドA構成成分へと減少する。可変性のこの勾配の理由は、グラム陰性菌に向けて発揮される進化的圧力であると考えられる。微生物は、この圧力に応答して長きに亘ってそれらの曝露表面構造を変えた、と想像できる。
【0064】
グラム陽性菌におけるリポテイコ酸構造と同様に、グラム陰性菌の属間の保存リポ多糖構造は、広範囲ベースの検出のための一方法として用いられ得る。これらの独特の標的(グラム陽性におけるリポテイコ酸およびグラム陰性のLPS構造のリピドAまたはコア領域)は、微生物部類検出方法の基礎である。
【0065】
本明細書中で用いる場合、「結合剤」とは、リガンドと結合し得る分子または高分子であるが、但し、結合剤は、内毒素と結合するカブトガニ(例えばLimulus polyphemus)中に存在する天然作用物質でない。好ましくは、本発明の結合剤は、内毒素と結合するカブトガニ(例えばLimulus polyphemus)中に存在する作用物質から得られる組換え体作用物質でない。結合剤は、抗体、抗生物質、タンパク質、融合タンパク質(即ち、2つまたはそれ以上のタンパク質の部分を含むタンパク質)、または化学的キレート化剤であり得るが、これらに限定されない。ある好ましい実施形態では、本発明の結合剤はペプチドまたはペプチド模倣物である。本発明の目的のためには、「ペプチド」とは、ペプチド結合により線状整列で互いに連結されるアミノ酸残基の線状整列で構成される分子である。本発明のこのようなペプチドは、約3〜約500アミノ酸を含み得るし、さらに二次、三次または四次構造を、ならびに他のペプチドまたは他の非ペプチド分子との分子間会合を含み得る。このような分子間会合は、共有結合を介し(例えばジスルフィド結合を介し)、またはキレート化、静電気的相互作用、疎水性相互作用、水素結合、イオン双極子相互作用、双極子一双極子相互作用、あるいは前記の任意の組合せを介して存在し得るがこれらに限定されない。
【0066】
ある好ましい実施形態では、このような結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)構造の、またはグラム陽性菌のリポテイコ酸(LTA)構造の抗原含有エピトープと生理学的条件下で結合する抗体の相補的性決定領域(CDR)、あるいはこのような相補的性決定領域のペプチド模倣物を含む。本発明の目的のために、「抗体の相補的性決定領域」は、エピトープとの結合に必要な任意の枠組み構造領域を含めた生理学的条件下でエピトープと結合する、そして好ましくはヒトH鎖V、DおよびJ領域、ヒトL鎖VおよびJ領域および/またはそれらの組合せによりコードされるアミノ酸残基のサブセットで構成される抗体の部分である。このような好ましい実施形態の例としては、抗体または抗体誘導体が挙げられ、さらに好ましくはモノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、一本鎖抗体、キメラ抗体または抗原結合抗体断片であり得る。
【0067】
当業者は、標準的な当業界で認識された技法を用いて、任意のこのような抗体誘導体を作製し得る。例えば、Johns等(Nature 321:522-525(1986))は、ヒト抗体のCDRをマウス抗体からのものに置き換えることを開示する。Marx(Science 229:455-456(1985))は、マウス可変部およびヒト定常部を有するキメラ抗体を考察する。Rodwell(Nature 342:99-100(1989))は、抗体CDR情報から得られる低分子量認識素子を考察する。Clackson(Br. J. Rheumatol. 3052:36-39(1991))は、遺伝子工学処理モノクローナル抗体、例えばFv断片誘導体、一本鎖抗体、融合タンパク質キメラ抗体およびヒト化齧歯類抗体を考察する。Reichman等(Nature 332:323-327(1988))は、ラット超可変部がグラフトされていたヒト抗体を開示する。Verhoeyen等(Science 239:1534-1536(1988))は、ヒト抗体上へのマウス抗原結合部位のグラフティングを教示する。
【0068】
さらに当業者は、このような相補的性決定領域と同様のまたはそれを上回る結合特性を有するペプチド模倣物を設計し、産生し得る(例えば、Horwell et al., Bioorg. Med. Chem. 4:1573(1996); Liskamp et al., Recl. Trav. Chim. Pays-Bas 1:113(1994); Gante et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 33:1699(1994); Seebach et al., Helv. Chim. Acta 79:913(1996)参照)。したがって、すべてのこのような抗体誘導体およびそのペプチド模倣物は、本発明の範囲内であるよう意図される。本発明の組成物は、生理学的に許容可能な希釈剤、安定剤、局部化剤または緩衝剤をさらに含み得る。
【0069】
本発明のさらに別の好ましい結合剤としては小分子が挙げられるが、これは本明細書中で後述されるようなスクリーニングまたは論理的設計アプローチを用いて同定され得る。
【0070】
最も好ましくは、本発明の結合剤は、抗体、例えばポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、および/または抗体誘導体である。モノクローナルおよびポリクローナル抗体の生成は、生物学業界の当業者には周知である(例えば、Ausubel et al., Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, NY, 1994参照)。所望の独特の標的抗原に対する抗体の産生において、多数の手法が有用である。伝統的免疫感作および収穫技法は、標的細菌種の一般的決定因子(LTAまたはLPS)に対して向けられるポリクローナル抗体の作製を生じる。さらに、細胞ハイブリダイゼーション技法は、標的種に対する特異的モノクローナル抗体を産生する不死ハイブリドーマ細胞系を生成するために利用され得る。
【0071】
グラム陽性菌を広範に検出するための潜在的実用性を有する抗体としては、PCT公告第WO98/57994号(Fisher等);Jackson, D.E. et al., Infection and Immnity 43:800(1984); Hamada, S. et al., Microbiol. Immunol. 28:1009(1984); Asjord, P. et al., Acta Path. Microbiol. Immunol. Scand. Sect. C, 93:245(1985); McDaniel, L.S. et al., Microbial Pathogenesis 3:249(1987); Tadler, M.B. et al., Journal of Clinical Laboratory Analysis 3:21(1989);およびStuertz, K. et al., Journal of Clinical Microbiology 36:2346(1998)に記載されたものが挙げられる。
【0072】
グラム陰性菌を広範に検出するための潜在的実用性を有する抗体としては、Nelles, M.J. et al., Infect. Immun. 46:677(1984); Teng, N.N.H.et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:1790(1985); Dunn, D.L. et al., Surgery 98:283(1985); De Jongh-Leubenink, J. et al., Eur. J. Clin. Microbiol. 5:148(1986); Bogard, W.C. et al., Infect. Immun. 55:899(1987); Pollack, M. et al., Bacterial Endotoxins:Pathophysiological Effects, Clinical Significance, and Pharmacological Control. pp.327-338 Alan R. Liss, Inc.(1988); Priest, B.P. et al., Surgery 106:147(1989); Tyler, J.W. et al., Journal of Immunological Methods 129:221(1990); Siegel, S.A. et al., Infect. Immun. 61:512(1993); Shelburne, C.E. et al., J. Periodont. Res. 28:1(1993); Di Pardova, F.E. et al., Infect. Immun. 61:3863(1993);およびDe Kievit, T.R. and Lam, J.S. J. Bacteriol. 176:7129(1994) に記載されたものが挙げられる。
【0073】
使用するための抗体(単数または複数)の選択は、古典的技法によりなされ得る。抗体特異性、結合の程度および動力学は、経験的フォーマットで各抗体を経験的に試験することにより特性化され得る。マイクロタイタースクリーニング形式は、文献中で十分に証明されていて、任意の所定のイムノアッセイ形式における特異的抗体応答を特性化するのに役立つ。同様に、検出可能なように標識した抗体の活性は、種々の化学結合技法を実行し、その結果生じる生成物を最適性能パラメーターに関してスクリーニングすることにより特性化され得る。捕獲抗体および検出可能なように標識した抗体は、保持血小板または赤血球試料からの細菌の臨床単離物に対してスクリーニングされて、最終アッセイ性能が最終生成物実施形態にできるだけ近くなり得る。この実験は、下記の種々のアッセイ形式における適用のための抗体試薬の選定および最適化をもたらす。経験的に既述のまたは生成済みの抗体代替物より良好に実行する結合剤が同定された場合には、それらは、抗体に関して記載された同一の経験的フォーマットで評価される。
【0074】
細菌細胞表面の独特の交差属標的に対する特異性を有するモノクローナル抗体は、クラス検出アッセイ形式を開発するために利用される。単一抗体クローンが各種に対して望まれる検出感受性限界(LTA構造上に置換を有する場合であり得るような)を付与しない場合、モノクローナル抗体の配合物が利用され得る。LPSに関してこれを越えた伸長は、異なるグラム陰性種に亘る広範な特異性を有するポリクローナル抗血清の作製を含み得る。ポリクローナル抗体は、下記のアッセイ形式の各々においても置換され得る。
【0075】
さらに別の種類の本発明の結合剤は、免疫グロブリンとは別個の結合受容体である。
【0076】
ある種の好ましい方法は、グラム陰性菌と、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、ポリミキシン、陽イオン性抗菌性タンパク質(CAP18)、血清ミロイドP、マガイニン、バクテネクチン、Toll様受容体4(TLR−4)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)および殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、ならびに抗生物質、例えばバシトラシンおよびその他の抗生物質のような種(これらに限定されない)の複合を利用する。ある種の好ましい方法は、グラム陽性菌と、以下のような種(これらに限定されない)との複合を利用する:例えばマンノース結合タンパク質(MBP)、Toll様受容体2(TLR−2)、ヒスタチンおよび抗生物質であるが、この場合、抗生物質はバンコマイシンでなく、そしてゲンタマイシンでない。ある種の好ましい方法は、グラム陰性およびグラム陽性菌と、以下の種(これらに限定されない)との複合を利用する:CD14、α−らせん状陽イオン性ペプチド、ラクトフェリシンB、血小板微生物タンパク質および好中球ペプチド(デフェンシン)。これらの結合剤は各々、広範な属の細菌と結合する能力を有し、協同して、または免疫複合体形成試薬の代替物として利用され得る。
【0077】
前記の抗体および結合剤は、前記のように利用され得るし、または有用な免疫学的試薬を生成する必要がある場合には改質され得る。
【0078】
本発明の第一の態様によれば、結合の存在または非存在は、下記のような本発明の結合アッセイの使用を含めた標準技法により確定され得る。概して、「結合」(即ち、血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在)の確定は、ドナーからの試料がバックグラウンド結合の少なくとも0.5倍で結合する場合に見出され、この場合、バックグラウンドはいかなる細菌混入も含まない血液または血液製剤の試料である。例えば、ドナー血小板の試料は、いかなる細菌混入も含まない血小板の試料を含むバックグラウンドと比較される。したがって、バックグラウンドが0.1単位(例えば、マイクロタイタープレート読取器により確定される)である場合、「結合」の決定はドナー血液または血液製剤からの試料が少なくとも0.15単位である場合に見出される。さらになお好ましくは、「結合」の決定は、ドナーからの試料がバックグラウンド結合の少なくとも0.75倍で結合する場合に見出される。さらにより好ましくは、「結合」の決定は、ドナーからの試料がバックグラウンド結合の少なくとも1.0倍で結合する場合に見出される。さらになお好ましくは「結合」の決定は、ドナーからの試料がバックグラウンド結合の少なくとも1.25倍で結合する場合に見出される。最も好ましくは、「結合」の決定は、ドナーからの試料がバックグラウンド結合の少なくとも1.5倍で結合する場合に見出される。
【0079】
本発明の第一の態様のある種の実施形態では、試料を一組の結合剤と接触させる前または同時に、試料は処理される。好ましくは、処理は、グラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤のための結合部位を露出させる。細菌抗原上の結合部位は、例えば細菌の細胞壁または細胞膜から抗原を切断し、それにより結合部位を露出させる;抗原を分泌するよう細菌を誘導し、それにより結合部位を露出させる;細菌を溶解し、それにより細胞内細菌抗原を放出し、したがって抗原上の結合部位を露出させる;あるいは細菌抗原上の配座変化を誘導し、それにより結合部位を露出させ得る。このような処理としては、物理的手段による試料中の細菌細胞の機械的崩壊、例えば音波処理、煮沸または、例えばDounceホモジナイザーを用いる均質化が挙げられるが、これらに限定されない。処理は、化合物または組成物、例えば洗剤、塩基性溶液(例えばアルカリ溶解)、酸性溶液(例えば酸性溶解)、EDTA、EGTA、金属イオン、陰イオン、陽イオン、界面活性剤、キレート化剤および/または酵素を用いた化学的手段による試料の処理でもあり得るし、処理はグラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤のための結合部位を露出させる。
【0080】
本発明の第一の態様の一実施形態では、臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示すことが確定されたドナー血液または血液製剤は、レシピエント哺乳類に移される。「移す」とは、ドナー哺乳類からレシピエント哺乳類への血液、血液製剤および/または組織の投与、輸液、移植または伝達を意味する。好ましくは、血液または血液製剤の試料を得るドナー哺乳類と、レシピエント哺乳類とは同一種である。本発明の方法によれば、ドナー血液またはドナー血液製剤は、混入細菌の菌株または型に関わらず、任意の混入細菌の存在に関して迅速にスクリーニングされ得る。血液または血液製剤中の細菌の迅速な増殖速度を考慮すると、試験後すぐに、本発明により確定されるような臨床的に問題とされる量の細菌を欠いたドナー血液または血液製剤を意図されたレシピエントに輸液するのが好ましいと理解される。好ましくは、臨床的に問題とされる量の細菌無含有ドナー血液または血液製剤は輸液として試験開始後42日以内に、さらに好ましくは試験開始後30日以内に、さらに好ましくは試験後2週間以内に、さらに好ましくは試験後7日以内に、さらにより好ましくは試験後3日以内に、さらになお好ましくは試験後2日以内に、さらになお好ましくは試験後24時間以内に、さらになお好ましくは試験後12時間以内に、さらになお好ましくは試験後6時間以内に患者に投与され、最も好ましくは臨床的に問題とされる量の細菌を欠くことが判明したドナー血液または血液製剤は、試験開始の3時間以内にレシピエントに輸液される。最も好ましくは血液または血液製剤は、全血、造血幹細胞、白血球、血小板、赤血球、血漿または血清である。
【0081】
ある種の好ましい実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある種の好ましい実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、ならびに抗生物質、例えばポリミキシンまたはバシトラシンからなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造と特異的に結合する。
【0082】
ある種の好ましい実施形態では、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある種の実施形態では、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は抗生物質を含み、この場合、抗生物質はバンコマイシンでなく、ゲンタマイシンでない。好ましくは、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造と特異的に結合する。
【0083】
1つまたはそれ以上の異なる結合剤の任意の組合せが本発明に用いられ得る、と熟練生物学者は理解する。したがって、グラム陽性菌のサブセットを特異的に結合する抗生物質は、残りのグラム陽性菌と特異的に結合する抗体およびすべてのグラム陰性菌と特異的に結合する第二抗体と併合され得る。
【0084】
本発明の第一の態様の種々の実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、第1のレポーター分子で検出可能なように標識され、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、第2のレポーター分子で検出可能なように標識される。一実施形態では、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同一である。別の実施形態では、第1レポーター分子および第2レポーター分子は同一でない。好ましくは第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の一方または両方は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル(例えば金ゾルまたは銀ゾル)、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。「第2の結合剤」とは、グラム陰性菌、グラム陽性菌またはその両方を特異的に結合する結合剤を特異的に結合する結合剤を意味する。例えば、グラム陰性菌およびグラム陽性菌を特異的に結合する結合剤が全てネズミモノクローナル抗体である場合、第2の結合剤は抗ネズミ抗体であり得る。
【0085】
例えば試料は、FITCで検出可能なように標識されるグラム陽性菌抗原を特異的に結合する結合剤、ならびにローダミンで検出可能なようにに標識されるグラム陰性菌抗原を特異的に結合する結合剤を用いるFACスキャン分析により試験され得る。FITCおよび/またはローダミン染色に関してスクリーニングすることにより、試料はグラム陽性菌混入を有しないことを確定されるが、しかし臨床的に問題とされるレベルのグラム陰性菌混入を有することが見出され得る。好ましくは、この試料がドナー血液または血液製剤単位からである場合、本単位は輸液用には用いられない。
【0086】
レポーター分子の結合剤(例えば抗体または抗生物質)との共有結合により、結合剤が検出可能なように標識される。今日用いられるほとんどのイムノアッセイ形式において主に用いられるレポーター分子は、酵素活性を有する分子である。結合剤は、典型的には化学的に酵素と結合される。これは、免疫学的結合能力を保持する複合体を生成し、さらに同時に、酵素/基質対の増幅能力を利用することにより、検出限界増大を可能にする。20を十分上回る異なる酵素標識が、酵素結合体産生に関して文献で報告されている。セイヨウワサビペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼおよびβ−ガラクトシダーゼは、断然最も一般的に利用されるものである。酵素標識のための望ましい特徴としては、高特異的活性、小サイズ、容易に測定される反応生成物、および複合体の安定性が挙げられる。セイヨウワサビペルオキシダーゼは、過酸化水素基質および以下の染料とともに利用されてきた:オルトフェニレンジアミン(OPD)、テトラメチルベンジジン(TMB)およびジアミノベンジジン(DAB)。アルカリ性ホスファターゼは、パラニトロフェニルホスフェート(PNPP)およびメチルウンベリフェロンとともに用いられてきた。βガラクトシダーゼは、O−ニトロフェニルβ−D−ガラクトピラノシド(ONPG)をその基質として用いる。
【0087】
レポーター分子が酵素である場合、酵素活性は、標的リガンド(例えばLPAまたはLTA)と特異的に結合する酵素的活性検出可能なように標識した結合剤の能力によっている。抗体との酵素の結合は、その標的と特異的に結合する結合剤の能力に有意に影響を及ぼすべきでなく、酵素の触媒活性に有意に影響を及ぼすべきでない。典型的架橋反応は、ある型のヘテロまたはホモ二官能試薬を利用して、2つの種を一緒に化学結合する。非専門家が容易に用い得る市販の系が今日存在する。
【0088】
レポーター分子としての酵素標識の代替物は、粒子標識である。これらの例としては、ラテックス粒子、染料含浸ラテックス粒子および金属粒子、例えば金または銀が挙げられる。粒子共役体は、視覚的終点アッセイのために便利である。市販粒子は、ナノメートル〜マイクロメートル範囲のサイズになってきている。粒子のサイズは、それが終点検出に影響を及ぼすため、重要である。ラテックス粒子、ならびに金属粒子は、表面上の種々の化学反応部分とともに利用可能である。メーカーは、代替的共役手法が用いられ得るよう、これらを調製する。
【0089】
したがって、本発明の結合剤は、分子間会合を介してレポーター分子で検出可能なように標識され得るか、または分子間会合によりレポーター分子に対する中間分子を介して検出可能なように標識され得る。このような分子間会合は、共有結合を介して(例えばジスルフィド結合を介して)、またはキレート化、静電気的相互作用、疎水性相互作用、水素結合、イオン双極子相互作用、双極子一双極子相互作用、あるいは前記の任意の組合せを介して存在し得るが、これらに限定されない。好ましいレポーター分子としては、放射性同位元素、重金属、蛍光標識、染色標識、化学発光標識、酵素および酵素基質が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい生物試料としては、血液、血清、血漿、赤血球、血小板および白血球が挙げられる。ある種の好ましい実施形態では、本発明のこの態様の方法は、慣用的イムノアッセイ、例えばELISAまたはRIAの形態をとる。別の好ましい実施形態では、本方法は直接または間接的免疫蛍光法である。
【0090】
本発明の第一の態様の好ましい実施形態では、一組の結合剤は、固相支持体(例えばマイクロタイタープレート)上に固定される。
【0091】
第二の態様において、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。この方法は、ドナー血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む。好ましくは、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0092】
第三の態様において、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。本発明のこの態様によれば、この方法は、血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む。好ましくは、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0093】
本発明の第二および第三の態様によれば、「結合」、「抗原」、「血液または血液製剤」、「グラム陽性菌」、「グラム陰性菌」、「臨床的とされる量」、「特異的に結合する」および「結合剤」という用語は、前記と同様である。本発明の第一、第二および第三の態様の方法は、ドナーおよびレシピエント哺乳類間のABO適合、Rh適合および/またはMHC適合に関する試験の時点で実施され得る、ということに留意すべきである。
【0094】
本発明の第二および第三の態様のある種の実施形態では、試料を一組の結合剤と接触する前またはそれと同時に試料は処理される。好ましくは、処理は、グラム陽性菌抗原上またはグラム陰性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。グラム陽性菌抗原上またはグラム陰性菌抗原上の結合剤のための結合部位を露出させるための試料の処理方法は、本発明の第一の態様に関して記載されたのと同様である。
【0095】
ある種の実施形態では、本発明の第二の態様の方法による臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示すことが確定されたドナー血液または血液製剤が、レシピエント哺乳類に移される。ある種の実施形態では、本発明の第三の態様の方法による臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示すことが確定されたドナー血液または血液製剤が、レシピエント哺乳類に移される。好ましくは、ドナー哺乳類およびレシピエント哺乳類は同一種である。
【0096】
ある種の好ましい実施形態では、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある種の実施形態では、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は抗生物質を含み、この場合、抗生物質はバンコマイシンでなく、そしてゲンタマイシンでない。好ましくは、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造と特異的に結合する。ある種の好ましい実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある種の好ましい実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、ならびに抗生物質、例えばポリミキシンまたはバシトラシンからなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造と特異的に結合する。
【0097】
第四の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤、およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、およびドナー血液または血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液またはドナー血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。好ましい実施形態において、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0098】
本発明の第四の態様によれば、「結合」、「抗原」、「血液または血液製剤」、「グラム陰性菌」、「グラム陽性菌」、「臨床的に問題とされる量」、「特異的に結合する」および「結合剤」という用語は、前記と同様である。
【0099】
本明細書中で用いる場合、「結合を検出するための手段」とは、標的リガンドとの(即ち、LPSまたはLTA構造抗原との)結合剤の結合を検出するために当業界で既知の任意の方法を意味する。結合を検出するための好ましい手段としては、下記のイムノアッセイが挙げられる。種々の「結合を検出するための手段」は熟練生物学者には既知であり、その例としては、側方流動アッセイ、ELISA、RIA、FACスキャン分析、ウエスタンブロッティング分析、免疫沈降法、凝集アッセイ、粒子ベースのならびに分離および非分離アッセイが挙げられるが、これらに限定されない。分離(「不均一」)アッセイは、結合および遊離標識種が分離されるアッセイである。非分離(「均一」)アッセイは、好意的結合剤との標識化種の結合が標識の特性を変調し、したがって分離過程を用いずに結合および遊離構成成分が区別され得るアッセイである。分離アッセイは、分析物および標識分析物が限定数の結合部位に関して競合する2つの基本的フォーマットの競合アッセイ、ならびに試薬が試料から分析物を余分に抽出するサンドイッチ(「抽出」)アッセイに分けられ得る。試薬および試料は、開発されたプロトコールによって、同時にまたは逐次混合され得る。アッセイ感度を改良するために、一構成成分が、少量の結合事象を検出するための信号を増幅し得る物質で標識され得るが、この例としては、放射性同位元素、蛍光染料、酵素、化学発光化合物、金属原子、金属ゾルまたは化合物、安定フリーラジカル、ウイルスまたはバクテリオファージ、補因子、ラテックス粒子基質、赤血球、抗体、阻害剤、アポ酵素、電気的活性物質、曇り剤、スペクトル感度作用物質、着色染料、燐光染料、リポソームおよびエレクトロフォアが挙げられる。
【0100】
結合を検出するためのこれらの手段はいずれも、自動化を用いて実施し、かつ/またはアッセイの結果を分析し得る、と理解される。
【0101】
本発明の第四の態様のある種の実施形態では、キットはさらに試料を処理するための手段を包含するが、この場合、処理はグラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤のための結合部位を露出させる。
【0102】
「処理手段」とは、そのグラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる任意の方法または処理を意味する。このような手段としては、物理的操作、例えば均質化(例えば、Dounceホモジナイザーを用いる)、音波処理、および煮沸が挙げられるが、これらに限定されない。その他の「処理手段」は、化学溶液または化合物による試料の処理を含み、それらの例としては、洗剤(例えばSDSまたはトリトンX)、アルカリ性溶解溶液(例えば塩基性溶液)、酸性溶解溶液(例えば酸性溶液)、EDTA、EGTA、界面活性剤、金属イオン、陽イオン、陰イオン、キレート化剤および酵素が挙げられるが、これらに限定されない。
【0103】
本発明の第四の態様の一実施形態では、臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示すことが確定されたドナー血液または血液製剤が、レシピエント哺乳類に移されるが、この場合、血液または血液製剤の試料が得られるドナー哺乳類およびレシピエント哺乳類は同一種である。好ましくは、本発明のキットは、レシピエント患者がドナー血液または血液製剤の輸液を投与される場所(例えば病院)に保持される。本発明のキットを用いて、ドナー血液が臨床的に問題とされる量の混入細菌を含有しないか否かを担当健康管理専門家は迅速に確定し得る。このような確定が成されれば、そして血液または血液製剤が臨床的に問題とされる量の細菌混入を含有しないことが判明すれば、血液または血液製剤はレシピエント患者に輸液され得る。
【0104】
本発明の第四の態様の好ましい実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある種の好ましい実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、ならびに抗生物質、例えばポリミキシンまたはバシトラシンからなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造と特異的に結合する。ある種の好ましい実施形態では、そのグラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある種の実施形態では、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は抗生物質を含み、この場合、抗生物質はバンコマイシンでなく、ゲンタマイシンでない。好ましくは、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造と特異的に結合する。
【0105】
本発明の第四の態様の種々の実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、第1のレポーター分子で検出可能なように標識され、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、第2のレポーター分子で検出可能なように標識される。一実施形態では、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同一である。別の実施形態では、第一レポーター分子および第二レポーター分子は同一でない、好ましくは第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の一方または両方は、酵素活性を有する分子、粒子(例えば金ゾル粒子またはラテックス粒子)、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。本発明のキットのこのような検出可能なように標識した結合剤は、前記と同様である。結合剤に検出可能的に標識されるレポーター分子は、酵素活性を有する分子であり、この酵素のための基質も本発明のキットに含まれると理解される。
【0106】
本発明の第四の態様の好ましい実施形態では、一組の結合剤は、固相支持体(例えばマイクロタイタープレート)上に固定される。
【0107】
第五の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、およびドナー血液またはドナー血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液またはドナー血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。好ましくは、ソナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0108】
第六の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、およびドナー血液または血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液またはドナー血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。好ましくは、ソナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0109】
本発明の第五および第六の態様によれば、「結合のための手段」、「結合」、「抗原」、「血液または血液製剤」、「グラム陰性菌」、「グラム陽性菌」、「臨床的に問題とされる量」、「特異的に結合する」および「結合剤」という用語は、前記と同様である。
【0110】
本発明の第五および第六の態様の好ましい実施形態では、キットはさらに試料を処理するための手段を含むが、この場合、処理は、グラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤のための結合部位を露出させる。「処理のための手段」とは、本発明の第四の態様で記載したのと同様である。
【0111】
本発明の第四、第五および第六の態様のキットのいずれかは、ドナー血液または血液製剤ならびに意図されたレシピエントのABO適合、Rh適合および/またはMHC適合試験と同一時点で用いられ得る。好ましくは、臨床的に問題とされる量の細菌非含有ドナー血液または血液製剤は輸液として試験開始後42日以内に、さらに好ましくは試験後30日以内に、さらに好ましくは試験後2週間以内に、さらに好ましくは試験後7日以内に、さらにより好ましくは試験後3日以内に、さらに好ましくは試験後2日以内に、さらになお好ましくは試験後24時間以内に、さらに好ましくは試験後12時間以内に、さらになお好ましくは試験後6時間以内に患者に投与され、最も好ましくは臨床的に問題とされる量の細菌を欠くことが判明したドナー血液または血液製剤は、試験開始の3時間以内にレシピエントに輸液される。最も好ましくは血液または血液製剤は、全血、造血幹細胞、白血球、血小板、赤血球、血漿または血清である。
【0112】
本発明は、ドナー組織または器官を、好ましくはドナー種と同一種であるレシピエント哺乳類に移植する前に、ドナー組織または器官中のあらゆる混入細菌の存在に関してスクリーニングするための方法およびキットも提供する。ドナー組織および器官は、生理食塩溶液または栄養貯蔵緩衝液のような液体中に、短時間であってもルーチンに保存される。貯蔵液体中の細菌の存在は、組織中の混入細菌の存在を示す。このような混入細菌は、レシピエント哺乳類による移植組織または器官の拒絶を促し得る。したがって、第七の態様において、本発明は、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、哺乳動物からの組織(ここで、組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。好まししくは、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0113】
本発明の第七の態様によれば、「結合」、「抗原」、「グラム陰性菌」、「グラム陽性菌」、「臨床的に問題とされる量」、「特異的に結合する」および「結合剤」という用語は、前記と同様である。
【0114】
「組織」という用語は、身体のあらゆる組織または器官を意味する。本発明の組織の例としては、腎臓、肝臓、心臓、皮膚、骨髄、脾臓、胸腺、膵臓、小腸および神経学的組織が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
本発明の第七の態様のある種の実施形態では、試料を一組の結合剤と接触する前またはそれと同時に試料は処理される。ある種の実施形態では、処理は、グラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。グラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる処理方法は、本発明の第一の態様に関して記載されたのと同様である。本発明の第七の態様のある種の実施形態では、臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示すことが確定されたドナー組織が、レシピエント哺乳類に移される。好ましくは、組織が得られたドナー哺乳類とレシピエント哺乳類とは同一種である。ある種の好ましい実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある種の好ましい実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)、ならびに抗生物質、例えばポリミキシンまたはバシトラシンからなる群から選択される分子を含む。好ましくは、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造と特異的に結合する。ある種の好ましい実施形態では、グラム陽性菌またはその抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌またはその抗原と特異的に結合する抗体または抗体誘導体を含む。ある種の実施形態では、グラム陽性菌またはその抗原と特異的に結合する結合剤は抗生物質を含み、この場合、抗生物質はバンコマイシンでなく、そしてゲンタマイシンでない。好ましくは、グラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造と特異的に結合する。
【0116】
本発明の第七の態様の種々の実施形態では、グラム陰性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、第1のレポーター分子で検出可能なように標識され、そのグラム陽性菌抗原と特異的に結合する結合剤は、第2のレポーター分子で検出可能なように標識される。ある実施形態では、第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同一である。別の実施形態では、第一レポーター分子および第二レポーター分子は同一でない、好ましくは第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の一方または両方は、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、または第2の結合剤により特異的に結合される分子である。
【0117】
本発明の第七の態様のある種の好ましい実施形態では、一組の結合剤は固相支持体(例えばマイクロタイタープレート)上に固定される。
【0118】
第八の態様において、本発明は、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。好ましくは、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0119】
第九の態様において、本発明は、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングする方法を提供する。好ましくは、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0120】
本発明の第八および第九の態様によれば、「結合」、「抗原」、「組織」、「グラム陰性菌」、「グラム陽性菌」、「臨床的に問題とされる量」、「特異的に結合する」および「結合剤」という用語は、前記と同様である。好ましくは、本発明の第七、第八および第九の態様の方法のいずれかは、意図されたレシピエントとの間のABO適合、Rh適合および/またはMHC適合に関して組織が試験される場合に実施される。
【0121】
本発明の第八および第九の態様のある種の実施形態では、試料を一組の結合剤と接触する前またはそれと同時に試料は処理される。グラム陽性菌抗原上またはグラム陰性菌抗原上の結合剤のための結合部位を露出させるよう試料を処理するための方法は、本発明の第一の態様に関して記載されたのと同様である。
【0122】
本発明の第八および第九の態様のある種の実施形態では、臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在または臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示すことが確定されたドナー組織が、レシピエント哺乳類に移される。好ましくは、組織が得られたドナー哺乳類とレシピエント哺乳類とは、同一種のものである。
【0123】
第十の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤、およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。好ましくは、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0124】
第十一の態様において、本発明は、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。好ましくは、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0125】
第十二の態様において、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングするためのキットを提供する。好ましくは、ドナーおよび/またはレシピエント哺乳動物は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である。
【0126】
本発明の第十、第十一および第十二の態様によれば、「結合のための手段」、「結合」、「抗原」、「組織」、「グラム陰性菌」、「グラム陽性菌」、「臨床的に問題とされる量」、「特異的に結合する」および「結合剤」という用語は、前記と同様である。本発明の第十一および第十二の態様の好ましい実施形態では、キットはさらに試料を処理するための手段を含むが、この場合、処理は、グラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。
【0127】
本発明の第十、第十一および第十二の態様のある種の実施形態では、キットはさらに試料を処理するための手段を含むが、この場合、処理は、グラム陰性菌抗原上またはグラム陽性菌抗原上の結合剤のための結合部位を露出させる。試料を処理するための手段は、本発明の第四の態様に関して記載されたのと同様である。種々の実施形態において、臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示すことが確定されたドナー組織は、レシピエント哺乳類に移される。好ましくは、組織が得られたドナー哺乳類とレシピエント哺乳類とは、同一種のものである。
【0128】
好ましくは、本発明のキットは、レシピエント患者が、例えば移植により、または輸液により、ドナー組織を投与される場所(例えば病院)に保持される。本発明のキットを用いて、ドナー組織が臨床的に問題とされる量の混入細菌を含有しないか否かを担当健康管理専門家は迅速に確定し得る。このような確定が成されれば、そしてドナー組織が臨床的に問題とされる量の細菌混入を含有しないことが判明すれば、ドナー組織はレシピエント患者に移植され得る。
【0129】
本発明の第十、第十一および第十二の態様のキットのいずれかは、ドナー組織および意図されたレシピエントのABO適合、Rh適合および/またはMHC適合試験と同一時点で用いられ得る。好ましくは、組織は、組織を移植する前の相対的に短い時間に、本発明の第七、第八、第九、第十、第十一および第十二の態様の方法およびキットを用いてスクリーニングされる。好ましくは、ドナー組織は、試験開始後42日以内に、さらに好ましくは試験後30日以内に、さらに好ましくは試験後2週間以内に、さらに好ましくは試験後7日以内に、さらにより好ましくは試験後3日以内に、さらになお好ましくは試験後2日以内に、さらになお好ましくは試験後24時間以内に、さらになお好ましくは試験後12時間以内に、さらになお好ましくは試験後6時間以内に患者に移植され、最も好ましくは臨床的に問題とされる量の細菌を欠くことが判明したドナー組織は、試験開始の3時間以内にレシピエントに移植される。
【0130】
網羅的ではないが、多数の考え得るイムノアッセイ形式が以下の例に記載され、それらは、LTAまたはLPS特異的結合剤とともに用いた場合、クラス微生物アッセイに関する汎属的アッセイを生じ得る。したがって、以下の例は、本発明のある種の特に好ましい実施形態をさらに説明するよう意図されているが、本発明の範囲を限定するものではない。
【0131】
[例I]
本発明の細菌検出方法は、従来の粒子を基にしたイムノアッセイ形式に従い得る。このアプローチにおいて、細菌細胞壁上の抗原領域に特異的に結合する結合剤は、検疫学的な標的として利用することが可能であり、血液製剤中の細菌を検出する基礎を形成することができる。この例で使用する装置の図は、図3A〜3Dに示してある。ある実施形態において、グラム陽性菌、グラム陰性菌または両方に特異的に結合する結合剤は、ともに貯留され、次に結合剤の2群各々が、結合剤の混合物を含むようにざっと分けられる。一群は、図3A〜図3Dに示した装置の基部にある膜に結合している。第2群は、鮮やかに着色したラテックス粒子を被覆するために用いられる(すなわち、結合剤で被覆したラテックス粒子は、激しく着色するように、色素が染み込まれていた)。
【0132】
別の実施形態において、同じ結合剤(すなわち、すべての結合剤分子は、同じ抗原エピトープを特異的に認識する)を2群に分けた。1群はまた、図3A〜2Dの装置の基部にある膜に結合しており、一方第2群は、鮮やかに着色したラテックス粒子を被覆するために用いられる。多数の認識部位が細菌表面上に存在しているので、同じ結合剤(すなわち、同じエピトープに特異的に結合する分子)を利用することが可能であった。
【0133】
膜に結合しないように、結合剤被覆ビーズを装置に置く。
【0134】
血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を検出するために、図3A〜3Dに示した装置を使用するために、以下の工程を行う。まず、無菌条件下、ドナー血液またはドナー血液製剤から試料を抽出する。あるいは、ドナー器官または組織が貯蔵されている液体(例えば、ドナー腎臓を貯蔵する栄養貯蔵液体)から試料を抽出してもよい。
【0135】
次に、図3A〜3Dに示すように、適切な容量の試料を試験装置に適用する。試料は直接試験してもよく(すなわち、非希釈または未処理)、また緩衝/抽出試薬で希釈してあってもよく、また物理的または化学的手段により処理してもよい(それにより、処理は、試料中に存在する細菌(またはその抗原)上の結合剤の結合部位を露出させる)。例えば、処理により、細菌の細胞壁を破壊する結果を生じ得る。別の例では、処理により、抗原が細胞壁を切り取られ、それにより抗原上の結合部位が露出する結果を生じ得る。
【0136】
試料は、吸収膜の吸上作用により装置の決まった経路を移動する。試料中に存在する細菌は、結合剤で標識されたラテックス粒子に結合する。
【0137】
結合剤で標識したラテックス粒子と試料を混合し、吸収芯に沿って、抗細菌抗体が固定されている既定の領域に移動する。固定されている結合剤は、細菌−抗抗体被覆着色ラテックスビーズ複合体を捕らえ、着色スポットは陽性の結果を示す。
【0138】
[例II]
例Iに記載の方法の別の実施形態において、ラテックス結合性結合剤は、グラム陰性菌もしくはグラム陽性菌、または両方を特異的に認識する結合剤である。しかしながら、これら抗細菌結合剤のそれぞれは、結合剤すべてに共通するエピトープを有している。この例において、抗細菌結合剤のすべてがネズミ抗体である。膜結合性結合剤は、細菌に特異的に結合せず、むしろそれらはネズミ抗細菌抗体の定常部上のネズミ決定基に特異的に結合する。これら抗ネズミ結合剤は、細菌に特異的に結合するのではなく、むしろ細菌に特異的に結合している結合剤に特異的に結合するため、それらを第2の結合と呼ぶ。
【0139】
[例III]
凝集反応アッセイは、血液、血液製剤、またはドナー組織からの液体中の臨床的に問題とされる量の細菌を検出するためのさらなる別の手段である。凝集反応アッセイのこの例では、細菌種に特異的に結合する結合剤で被覆したラテックス粒子が用いられる。これらラテックス粒子は、臨床的に問題とされる量の細菌種の存在化にて凝集する。陽性反応は、凝集パターンの発生により示される。陰性反応おいて、ラテックスは凝集せず、乳状の外観は実質的に変化がない。
【0140】
この方法では、図4A〜4Dに示すような試験装置を用いる。無菌条件下、ドナー血液または血液製剤から抽出した試料を試験装置に適用する。あるいは、ドナー器官または組織が貯蔵されている液体から抽出した試料を、試験装置に適用してもよい。試料は直接試験してもよく(すなわち、非希釈または未処理)、緩衝/抽出試薬で希釈してもよく、また処理により、試料中に存在するどんな細菌(またはその抗原)上の結合剤の結合部位が露出するように処理してもよい。次に、細菌に特異的に結合する結合剤で被覆したラテックスビーズを、試験装置内の生物学的試料に添加する。確実に成分が均質になるように、内容物を混合する。
【0141】
生物学的試料中の細菌は、ラテックスビーズ上の抗細菌抗体に特異的に結合するであろう。細菌の表面上の多数の抗原部位の結果、抗体被覆ラテックス粒子は、隣接した細菌細胞間に橋架けを形成する。生物学的試料中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在下、架橋マトリックスが形成される。試料中の既定の臨床的に問題とされる量の細菌を超えると(上記に定義するように)、マトリックスは、試験ウェル中で「凝集反応」パターンとして可視化されるような点にまで成長する。既定時間、かかるマトリックスを成長させた後に、結果を視覚的に読み取り、細菌抗原が存在すると、図4Dに示す特徴的なパターンの形成が生じる。
【0142】
[例IV]
血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を検出するさらに別の方法は、標準的な酵素結合免疫吸着測定アッセイ(ELISA)形成を用いる。マイクロタイター(例えば、96ウェル)プレートELISA形式は、多数の別個の反応ウェルを利用し、それぞれが独特の試験環境を示す。マイクロタイタープレート形式は、より高い処理量の試験能力のために、自動試料操作の適用、試薬添加、反応検出および定量的結果の判読を行う。マイクロタイタープレートELISAの開発はよく知られており、実施されている。細菌表面の抗原を伴うように、多数の結合部位を有する大きな分子量の種の検出のために、サンドイッチイムノアッセイ形式は、好ましい形式である。サンドイッチイムノアッセイは、マイクロタイタープレートウェルのポリスチレン(または他の物質)表面上のグラム陰性菌またはグラム陽性菌(または両方)に特異的に結合する結合剤を、結合剤がマイクロタイタープレートの表面に接着するように、受動的または共有結合的に置くことにより構築される。免疫学的検出は、以下のように進行する。
【0143】
まず、無菌条件下、ドナー血液もしくはドナー血液製剤、またはドナー器官もしくは組織が貯蔵されている液体から試料を抽出する。試料は希釈しても希釈しなくてもよく、また処理が試料中に存在するどんな細菌(またはその抗原)上の結合剤の結合部位も露出するように処理してもよい。試験ウェルに、適切な容量の試料を適用する。生物学的試料中に存在する細菌は、マイクロタイタープレートウェルの表面上の抗細菌性結合剤を結合した表面と特異的に複合体を形成するであろう。次に、プレートを吸引(または中身を放出)して、ウェル内の未結合の試料を除去する。ウェルに、特別に配合した洗浄溶液を添加して、マイクロタイタープレートウェルの表面から非特異的に結合した細菌(および他の試料構成成分)を洗浄する。
【0144】
次に、検出可能なようにレポーター分子で標識した結合剤含有溶液を反応ウェルに添加する。この溶液中の検出可能なように標識した結合剤は、生物学的試料中に存在する細菌の型を規定する抗原に特異的に結合し、表面結合性結合剤と異なってもよく、または同じであってもよい。検出可能なように標識した結合剤は、レポーター分子(ELISAの特定の場合には、酵素活性を有するレポーター分子)に化学的に結合され、それは試料中の細菌の非存在または存在を示すのに用いられる。レポーター分子は、様々な種から作り出すことができ、抗体結合反応の介入を最低限にするよう選択されることに留意すべきである。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)においては、酵素が顕著に利用されるが、発色団、蛍光体、放射性同位体、化学発光化合物、電気化学的に活性な化合物、金属、粒子、磁気性種およびビオチン/アビジンのような第2の標識または他の同様の種を含めた他のレポーター分子もまた、限定されることなく用いてもよい。レポーター分子との特定の結合剤の化学的結合から生じる検出可能なように標識した結合剤は、抗細菌結合剤/細菌複合体と複合体を形成させ、抗細菌結合剤/細菌/検出可能なように標識した抗細菌結合剤の「サンドイッチ」を形成する。
【0145】
適切な時間が経った後に、検出可能なように標識した結合剤溶液をウェルから除去する。次に、特別に配合した洗浄溶液でウェルを洗浄して、マイクロタイタープレートウェル中の非結合の結合体から結合した結合体を分離してもよい。
マイクロタイタープレートウェル中の特異的に結合した検出可能なように標識した結合剤を、適切な手段により検出することができる。蛍光体、発色団、化学発光体、電気活性体の場合には、これには直接的な測定が挙げられ、酵素のような標識の場合には、間接的な測定が挙げられる。特異的に結合した検出可能なように標識した結合剤の数が、生物学的試料中に存在する細菌の量に直接的に比例する。この比例関係は、試料中に存在する細菌の量を具体的に確定するために利用され得る数量化方法論の基礎である。検量試料中に存在する既知量の細菌の関数として、特異的に結合した検出可能なように標識した結合剤の応答を測定することにより、標準応答曲線を確立することができる。標準応答曲線から得られる結果の内挿は、未知の生物学的試料中の細菌濃度を表示する。
【0146】
[例V]
血液、血液製剤、またはドナー組織が貯蔵される液体中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングするためのさらなる方法は、競合イムノアッセイ形式を使用する。実際には、グラム陰性菌から分泌されるリポ多糖構造のような単独の結合部位を有する小さな分子量種の検出のために、競合イムノアッセイ形式は、好ましい形式である。競合イムノアッセイは、結合剤がマイクロタイタープレートウェルの表面に接着するように、マイクロタイタープレートウェルのポリスチレン(または他の物質)表面上に分泌LPS構造に特異的に結合する結合剤(LPS構造のリピドA部分に結合するような)を、受動的または共有結合的に置くことにより構築される。
【0147】
臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を検出するためのこの競合イムノアッセイ形式の一例において、免疫学的検出は、以下のように進行する。まず、無菌条件下、ドナー血液もしくは血液製剤、またはドナー器官もしくは組織が貯蔵されている液体から試料を抽出する。試料は希釈しても希釈しなくてもよく、またLPSのリピドA成分上の結合部位のようなグラム陰性菌(またはその抗原)上の結合剤の結合部位が露出するように処理してもよい。LPSに特異的に結合する結合剤を含有する試験ウェルに、適切な容量の試料を適用する。適切な容量の検出可能なように標識したLPS分子を含有する溶液を、同時にまたは続いて試験ウェルに添加する。この溶液中の検出可能なように標識したLPS分子は、試験ウェル中の結合剤に特異的に結合する。検出可能なように標識したLPS分子は、レポーター分子(ELISAの特定の場合には、酵素活性を有するレポーター分子のような)に化学的に結合され、それは試料中の細菌の存在または非存在を示すのに用いられる。レポーター分子は、様々な種から作り出すことができ、抗体結合反応の介入を最低限にするよう選択されることに留意すべきである。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)においては、酵素が顕著に使用されるが、発色団、蛍光体、放射性同位体、化学発光化合物、電気化学的に活性な化合物、金属、粒子、磁気性種およびビオチン/アビジンような第2の標識または他の同様の種を含めた他のレポーター分子もまた、限定されることなく用いてもよい。検出可能なように標識したLPS分子は、細胞壁由来のLPSの存在下、固定された結合剤と複合体を形成し、結合平衡を樹立することができる。好ましくは、試験ウェルは、マイクロタイタープレート上のウェルである。
【0148】
適切な時間が経過した後、検出可能なように標識したLPS分子含有細菌細胞由来LPS溶液を試験ウェルから除去する。特別に配合した洗浄溶液でウェルを洗浄して、マイクロタイターウェル中の非結合の結合体から結合した結合体を分離してもよい。試験ウェル中に樹立された結合平衡は、細胞由来LPSの濃度の関数である。試料中に臨床的に問題とされる量のいかなる混入グラム陰性菌、したがって細菌細胞由来LPSがない場合には、検出可能なように標識したLPS分子は、表面結合性結合剤と複合体をなす。より高いレベルの細菌、したがってより高いレベルの混入細菌細胞由来LPSでは、表面結合性結合剤への結合は、濃度に基づいて、2つのLPS種間に分けられる。低レベルの混入細菌細胞由来LPSでは、大部分の結合剤結合部位は、検出可能なように標識したLPS分子と複合体をなし、レポーターシグナルレベルの増加が観察される。高レベルの細菌細胞由来LPSでは、大部分の結合剤結合部位は、細菌細胞由来LPSと複合体をなし、レポーターシグナルレベルの減少が観察される。したがって、特異的に結合した検出可能なように標識したLPS分子の数は、生物学的試料中に存在する混入グラム陰性菌の量と反比例する。標準応答曲線は、検量試料中に存在する既知量の細菌の関数として、検出可能なように標識したLPS分子の応答を測定することにより確立することができる。標準応答曲線から得られる結果の内挿入は、未知の生物学的試料中のグラム陰性菌濃度を表示する。
【0149】
[例VI]
血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を検出するためのさらなる別の方法は、均一イムノアッセイ形式を使用する。均一イムノアッセイは、結合剤−リガンド複合体化反応の結合成分および遊離成分の同時に測定され得る能力を特徴とする。標識の特性は、非結合と結合の分離を必要としないように、相補的な反応体の結合に関して修飾される。
【0150】
まず、無菌条件下、ドナー血液もしくは血液製剤、またはドナー組織もしくは器官が貯蔵されている液体から試料を抽出する。細胞壁構造の小断片が創出されるように前処理試薬と適切な容量の試験試料を混合する。かかる試薬としては、より小さな分子量のサブ成分に本来の抗原構造を分解するような界面活性剤、キレート化剤および酵素が挙げられる(しかし、これらに限定されない)。さらに、機械的な断片化(超音波破片のような)または運動エネルギー(沸騰のような)を用いて、細胞壁をサブ成分に壊す。この例において、グラム陰性菌のリポ多糖構造のそのリピドAまたはコア単位への除去および分解を生じさせることにより、処理は、グラム陰性菌またはその抗原上の結合剤の結合部位を露出させる。
【0151】
分解した細胞壁断片試料を、蛍光標識と化学的に結合させたリピドA(またはコア)抗原を含有する試薬と混合する。既知量の抗リピドA(または抗コア)結合剤を反応混合物に添加する。結合剤に結合する抗原は、分子旋光度レベルの減少を示すであろうが、結合しない抗原は、旋光度レベルの相対的な増加を示すであろう。分極偏光場において、分極偏光は、入射光の平面に平行な分子を優先的に励起するであろう。発光種の配向は、発光される光の偏光の度合いを決定するであろう。発光種の分子の位置が比較的安定であるならば、蛍光は部分的に偏光されるであろう。固定されているのではなく、分子が速い振動の状態であるならば、分子運動は、偏光の度合いを減少させるであろう。試料中に存在するどの混入グラム陰性菌からの細胞壁断片リピドA(またはコア)抗原、蛍光的に標識したリピドA(またはコア)および結合剤の反応体混合物から発光される蛍光は、どんな試料も含まない結合剤プラス蛍光的に標識したリピドA(またはコア)と比較して、低い細胞壁断片リピドA(またはコア)レベル(すなわち、低レベルの試料中の細菌混入)での高いレベルの光偏光、および高い細胞壁断片リピドA(またはコア)レベル(すなわち、高レベルの試料中のグラム陰性菌混入)で、低レベルの光偏光を示すであろう。
【0152】
結合剤として抗体を利用した上記検出技術は、蛍光偏光イムノアッセイとして、当該分野でよく知られており、関連技法として、蛍光消光イムノアッセイ、時間分解蛍光イムノアッセイ、蛍光増強イムノアッセイ、蛍光励起転移イムノアッセイおよびフルオロフォア放出イムノアッセイが挙げられる。あるいは、結合剤複合体化の関数としての酵素活性変調もまた、細菌細胞壁構成成分のより小さい断片を検出するため(したがって、細菌の混入の存在または非存在を確定するため)の代替的均一イムノアッセイ形式として使用してもよい。これらの各アプローチは、十分に文書化されており、当業者によく知られている。
【0153】
[例VII]
例VIに記載の方法を修飾したものは、ドナー血液、ドナー血液製剤、および/またはドナー組織が貯蔵される液体中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在に関してスクリーニングするであろう。この例において、無菌条件下、ドナー血液、ドナー血液製剤、またはドナー組織が貯蔵されている液体から試料を抽出する。細胞壁構造の小断片が創出されるように前処理試薬と適切な容量の試験試料を混合する。グラム陽性菌(またはその抗原)上の結合剤の結合部位を露出させるこの処理は、より小さな分子量のサブ成分に本来の抗原構造を分解するような界面活性剤、キレート化剤および/または酵素のように化学物質を用いた処理であってもよい。処理はまた、機械的な断片化(超音波破砕のような)または運動エネルギー(沸騰のような)を用いた、細胞壁をサブ成分に壊すような機械的手段によってもよく、それにより、処理は、LTA構造の抗原成分上の結合剤の結合部位を露出させる。1つの具体例は、リポテイコ酸構造からのポリ(グリセロホスフェート)鎖の分離であり得る。グラム陽性細胞壁の他の構造は、当業者により容易に予測され得る。
【0154】
次に、分解した細胞壁断片試料を、酵素結合体を形成する酵素標識と化学的に結合させたポリ(グリセロフォスフェート)抗原を含有する試薬と混合する。酵素結合は、結合剤と複合体化すると、結合体の酵素活性が変調するような形態である。活性部位のマスクによるか、または酵素に対する立体配座の修飾を伴って、結合剤が酵素結合体と複合体化すると、酵素活性は減少し、結合剤が結合体酵素と複合体化していなければ、酵素活性は再生する。この酵素活性変調は、一般に用いられる均一アッセイ形式の基礎である。
【0155】
次に、既知量の抗ポリ(グリセロホスフェート)結合剤を、固定量の結合剤および酵素結合体を含む反応混合物に添加する。さらに、細菌細胞壁構成成分を分解するように処理した既知量の血液(もしくは血液製剤または組織液体)を添加する。血液、血液製剤またはドナー組織からの液体中に細菌が存在しない場合には、結合剤の利用可能な結合部位は、酵素結合体と複合体をなすであろう。酵素結合体は、結合状態において、結合活性レベルの減少を示し、最低限の基質変換が起こるであろう。試料中に存在する高レベルの混入グラム陽性菌から得られる高レベルの細胞壁由来抗原では、結合剤の大部分の結合部位が、もとの細胞壁抗原(例えば、ポリ(グリセロホスフェート))で占められ、それにより酵素結合体が非結合状態で存在することができる。この非結合状態において、酵素活性は再生され、より高いレベルの基質の代謝回転が観察される。
【0156】
手順のわずかな修飾には、酵素断片の利用が含まれ、その1つは抗原断片で標識される。結合剤の存在下、酵素断片は、必要とされるさらなる酵素断片との複合体を形成して、全機能性酵素を創出することに利用できない。結合剤が、試料中に存在する混入グラム陽性菌から得られる細胞壁由来抗原と複合体を形成すると、それは酵素断片と複合体を形成することに利用できなくなり、それにより、それらを組み合わせて、活性酵素を形成する。これらのアプローチに対する修飾は、酵素変調結合剤アッセイ形式として、当業者によく知られ、理解されている。
【0157】
[例VIII]
例IV、V、VIおよびVIIに記載のアッセイの修飾は、アッセイ実行および結果計算のための自動分析装置の利用を包含する。自動化は、より再現性のよい形式での技術の適用を可能にし、それによりアッセイの性能が改良され、細菌混入の検出レベルを低くする。数多くの包括的なイムノアッセイシステム系が市販されており、病院の中央検査室にてルーチンな免疫診断アッセイに使用されている。上記技術の応用は、これら自動システムのいずれにも組み込まれるので、容易に予想することができる。代替的な分離の方法論(固相、液相、磁性粒子、電荷分配等)の使用もまた、この開示内と予想することができる。同様に、代替的な検出の方法論(発色体的、蛍光発生的、電気化学的、化学発光的または放射的)もまた、検出可能なように標識した結合剤系の検出方法、ならびに自動イムノアッセイ系の検出システムに対応する変化に対して予想される修飾により予想することができる。
【0158】
[例IX]
本発明の2つの代表的な非限定的な結合剤のパン属(pan-genera)特異性を、グラム陽性菌およびグラム陰性菌両方上の表面抗原構造を精査することにより評価した。グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤、すなわちリポテイコ酸は、モノクローナル抗体クローン96−110(IgG1)であった(Fisherら、PCT出願第WO98/57994に記載されている)。グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤、すなわちリピドAは、モノクローナル抗体クローン26−5(IgG2b)(Biodesign International, Saco, Maineで市販されている、カタログナンバーC61212M)であった。
【0159】
結合の特徴付けのために14の細菌(7つのグラム陽性菌および7つのグラム陰性菌)を選択した(それぞれ、図5および図6参照)。これらの細菌は、3つの主要な国立輸血反応研究(合衆国におけるBaconの研究、フランスにおけるHemovigilanceの研究および英国におけるSHOTの研究を含む)中に同定された細菌種を表すため、それらを選択した。
【0160】
それぞれ、抗リポテイコ酸モノクローナル抗体および抗リピドAモノクローナル抗体とのグラム陽性菌およびグラム陰性菌の結合を特徴付けるために、臨床分離株からの細菌種を5%のヒツジ血液寒天板(BBL)上で画線培養し、37℃で一晩成長させた。得られたコロニーをPBS中のトリプシンダイズブロス(30mg/ml、Sigma)に接種し、37℃にて一晩旋回させた。620nmで濁度測定により細菌数を定量化した。全細胞細菌を15分間、5000rpmで小粒状にした。リン酸緩衝食塩水(PBS)中に約10コロニー形成単位(CFE)/mLとなるように、小粒状細菌をPBS中に再懸濁させた。細菌懸濁液100μLを96ウェルマイクロタイタープレートの単列の各ウェルに添加した。7つのグラム陽性菌それぞれおよびグラム陰性菌それぞれにおいて、このプロセスを繰返した。37℃で1時間、プレートをインキュベートし、次に4℃で一晩貯蔵した。次に200μL/ウェルの0.05%ツイーン−20で、プレートを5回洗浄し、使用するまで−20℃で乾燥貯蔵した。
【0161】
非特異的な結合を最低限にするために、300μL/ウェルのPBS中の5%粉乳/0.05%ツイーン−20で細菌被覆プレートをブロックした。室温で一晩プレートをブロックし、次にPBSツイーンで3回洗浄した。4%BSAおよび0.05%ツイーン−20を含有するPBS中で、結合剤(すなわち、抗リポテイコ酸モノクローナル抗体および抗リピドAモノクローナル抗体)を5μg/mLに希釈した。溶液を混合して、0.22μmフィルターで濾過した。溶液100μLを各ウェルに添加し、37℃で1時間、結合剤を反応させた。次に、プレートを0.05%ツイーン−20で5回洗浄した。市販の第二抗体、ヤギ抗マウスIgG(H鎖およびL鎖)HRP結合体を、PBS/1.5%BSAおよび0.05%ツイーン−20中で1:5000に希釈した。第二抗体溶液200μLを各ウェルに添加し、37℃で1時間、第二抗体を結合させた。次に、プレートをPBS/0.05%ツイーンで1回、PBS単独で3回以上洗浄した。細菌結合を定量化するために、ペルオキシダーゼTMB基質(Sigma)200μLを各ウェルに添加した。Dynaxマイクロタイタープレートリーダーにて動力学的形式で吸光度(OD 370nm)を読み取った。
【0162】
それぞれ図5および図6に示すように、各7つのグラム陽性菌および各7つのグラム陰性菌は、抗リポテイコ酸モノクローナル抗体(グラム陽性、図5)および抗リピドAモノクローナル抗体(グラム陰性、図6)により特異的に認識された(三重反復測定の平均結果を、認識される各細菌の関数としてプロットした)。図5および図6が実証するように、認識の程度は細菌種間でさまざまであるが、すべての場合において、細菌は少なくとも2倍、バックグラウンドを越えている。これらのデータは、パンゲネシス的にグラム陰性菌およびグラム陽性菌両方を認識するために標準的な結合剤を利用する実現可能性を明らかに示している。これらの細菌は、輸血反応における原因物質と同定される細菌の正確な種を表すので、それらは特に興味がもたれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングする方法であって、ドナー血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、前記方法。
【請求項2】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングする方法であって、ドナー血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、前記方法。
【請求項3】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングする方法であって、ドナー血液または血液製剤の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、前記方法。
【請求項4】
試料を一組の結合剤と接触させる前に、または接触させるのと同時に、試料を処理する、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
処理は、グラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
臨床的に問題とされる量の細菌が存在しないと確定されたドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤は、レシピエント哺乳動物に移される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項7】
ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ドナー血液または血液製剤は、全血、白血球、造血幹細胞、血小板、赤血球、血漿、および血清からなる群から選択される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項9】
グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合するか、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含むか、またはグラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)および抗生物質からなる群から選択される分子を含む、請求項1または3に記載の方法。
【請求項10】
抗生物質は、ポリミキシンまたはバシトラシンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合するか、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含むか、またはグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない、請求項1または2に記載の方法。
【請求項12】
グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第1のレポーター分子で標識され、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第2のレポーター分子で標識される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項13】
第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じであるか、または同じでない、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の少なくとも1つは、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、および第2の結合剤により特異的に結合される分子からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
一組の結合剤は、固相支持体上に固定される、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項16】
固相支持体は、マイクロタイタープレートである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物の少なくとも一方は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項18】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングするためのキットであって、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤、およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、およびドナー血液または血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、前記キット。
【請求項19】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングするためのキットであって、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、およびドナー血液またはドナー血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、前記キット。
【請求項20】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングするためのキットであって、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、およびドナー血液または血液製剤の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー血液または血液製剤中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、前記キット。
【請求項21】
さらに試料を処理する手段を含み、処理は、グラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出する、請求項18、19または20に記載のキット。
【請求項22】
臨床的に問題とされる量の細菌が存在しないと確定されたドナー哺乳動物のドナー血液または血液製剤は、レシピエント哺乳動物に移される、請求項18、19または20に記載のキット。
【請求項23】
ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は、同種である、請求項18、19または20に記載のキット。
【請求項24】
ドナー血液または血液製剤は、全血、白血球、造血幹細胞、血小板、赤血球、血漿、および血清からなる群から選択される、請求項18、19または20に記載のキット。
【請求項25】
グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合するか、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含むか、またはグラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)および抗生物質からなる群から選択される分子を含む、請求項18または20に記載のキット。
【請求項26】
抗生物質は、ポリミキシンまたはバシトラシンである、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合するか、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含むか、またはグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない、請求項18または19に記載のキット。
【請求項28】
グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第1のレポーター分子で標識され、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第2のレポーター分子で標識される、請求項18、19または20に記載のキット。
【請求項29】
第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じであるか、または同じでない、請求項28に記載のキット。
【請求項30】
第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の少なくとも1つは、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、および第2の結合剤により特異的に結合される分子からなる群から選択される、請求項28に記載のキット。
【請求項31】
一組の結合剤は、固相支持体上に固定される、請求項18、29または20に記載のキット。
【請求項32】
固相支持体は、マイクロタイタープレートである、請求項31に記載のキット。
【請求項33】
ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物の少なくとも一方は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である、請求項18、19または20に記載のキット。
【請求項34】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングする方法であって、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、前記方法。
【請求項35】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングする方法であって、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、前記方法。
【請求項36】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングする方法であって、液体の試料を一組の結合剤と接触させること(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および試料への一組の結合剤の結合を確定すること(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、前記方法。
【請求項37】
試料を一組の結合剤と接触させる前に、または接触させるのと同時に、試料を処理する、請求項34、35または36に記載の方法。
【請求項38】
処理は、グラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
臨床学的に問題とされる量の細菌が存在しないと確定されたドナー組織は、第2の哺乳動物に移される、請求項34、35または36に記載の方法。
【請求項40】
ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
ドナー組織は、肺、心臓、肝臓、皮膚、腎臓、膵臓、脾臓および骨髄からなる群から選択される、請求項34、35または36に記載の方法。
【請求項42】
グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合するか、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含むか、またはグラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)および抗生物質からなる群から選択される分子を含む、請求項34または36に記載の方法。
【請求項43】
抗生物質は、ポリミキシンまたはバシトラシンである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合するか、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含むか、またはグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない、請求項34または35に記載の方法。
【請求項45】
グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第1のレポーター分子で標識され、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第2のレポーター分子で標識される、請求項34、35または36に記載の方法。
【請求項46】
第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じであるか、または同じでない、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の少なくとも1つは、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、および第2の結合剤により特異的に結合される分子からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
一組の結合剤は、固相支持体上に固定される、請求項34、35または36に記載の方法。
【請求項49】
固相支持体は、マイクロタイタープレートである、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物の少なくとも一方は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である、請求項34、35または36に記載の方法。
【請求項51】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在をスクリーニングするためのキットであって、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤、およびグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量の細菌の非存在を示す)を含む、前記キット。
【請求項52】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在をスクリーニングするためのキットであって、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陽性菌の非存在を示す)を含む、前記キット。
【請求項53】
レシピエント哺乳動物に移すためのドナー哺乳動物からのドナー組織(ここで、ドナー組織は液体中に貯蔵されている)中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在をスクリーニングするためのキットであって、一組の結合剤(ここで、一組の結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤を含む)、および液体の試料への一組の結合剤の結合を検出する手段(ここで、結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の存在を示し、非結合は、ドナー組織中の臨床的に問題とされる量のグラム陰性菌の非存在を示す)を含む、前記キット。
【請求項54】
さらに試料を処理する手段を含み、処理は、グラム陰性菌抗原またはグラム陽性菌抗原上の結合剤の結合部位を露出させる、請求項51、52または53に記載のキット。
【請求項55】
臨床学的に問題とされる量の細菌が存在しないと確定されたドナー組織は、レシピエント哺乳動物に移される、請求項51、52または53に記載のキット。
【請求項56】
ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物は同種である、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
ドナー組織は、肺、心臓、肝臓、皮膚、腎臓、膵臓、脾臓および骨髄からなる群から選択される、請求項51、52または53に記載のキット。
【請求項58】
グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌のリポ多糖構造に特異的に結合するか、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陰性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含むか、またはグラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、カブトガニ抗リポ多糖因子(LALF)、リポ多糖結合タンパク質(LBP)、殺菌性/透過性増加タンパク質(BPI)および抗生物質からなる群から選択される分子を含む、請求項51または53に記載のキット。
【請求項59】
抗生物質は、ポリミキシンまたはバシトラシンである、請求項58に記載のキット。
【請求項60】
グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌のリポテイコ酸構造に特異的に結合するか、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する抗体もしくは抗体誘導体を含むか、またはグラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、抗生物質を含み、抗生物質はバンコマイシンでなく、また抗生物質はゲンタマイシンでもない、請求項51または52に記載のキット。
【請求項61】
グラム陰性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第1のレポーター分子で標識され、グラム陽性菌抗原に特異的に結合する結合剤は、検出可能なように第2のレポーター分子で標識される、請求項51、52または53に記載のキット。
【請求項62】
第1のレポーター分子および第2のレポーター分子は同じであるか、または同じでない、請求項61に記載のキット。
【請求項63】
第1のレポーター分子および第2のレポーター分子の少なくとも1つは、酵素活性を有する分子、放射標識した分子、融合分子、蛍光原分子、金属ゾル、粒子、染色分子、および第2の結合剤により特異的に結合される分子からなる群から選択される、請求項61に記載のキット。
【請求項64】
一組の結合剤は、固相支持体上に固定される、請求項51、52または53に記載のキット。
【請求項65】
固相支持体は、マイクロタイタープレートである、請求項64に記載のキット。
【請求項66】
ドナー哺乳動物およびレシピエント哺乳動物の少なくとも一方は、ヒトまたは家畜用哺乳動物である、請求項51、52または53に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−102805(P2011−102805A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274071(P2010−274071)
【出願日】平成22年12月8日(2010.12.8)
【分割の表示】特願2001−510844(P2001−510844)の分割
【原出願日】平成12年7月14日(2000.7.14)
【出願人】(502018464)ベラックス バイオメディカル,インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】