説明

血液中において結合し化合している酸化窒素の量の測定

本発明に係る方法においては、血液サンプル中に鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素又は結合酸化窒素の量を、低パワーの電磁波ビームを血液サンプルに照射して酸化窒素ガスを遊離させ、遊離された酸化窒素ガスを溶解させ、溶解した酸化窒素ガスの量を電気化学的に検出することにより決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願に対する相互参照)
本願は、西暦2007年7月26日に出願された米国仮特許出願60/935,121号に係る優先権を主張するものであり、その全内容が参照により本明細書に組み入れられている。
【0002】
本発明は、血液中の結合酸化窒素の量の決定手段に関するものである。この決定手段は、臨床の場で必要なものである。例えば、鎌状赤血球症の患者及び肺高血圧症の患者では血液中の酸化窒素の量が低下する。したがって、この決定手段は、これらの診断を行う上で有用なものである。この点については非特許文献1、2を参照されたい。さらに、敗血症の患者では血液中の酸化窒素の量が上昇する。したがって、この決定手段は、この診断を行う上で有用なものである。この点については非特許文献3を参照されたい。
【背景技術】
【0003】
血液サンプルに紫外(UV)電磁波を照射したときには、血液サンプル中のSニトロソチオールと、鉄と結合した酸化窒素とが分解し、遊離酸化窒素が遊離させられ、遊離酸化窒素の量の検出が可能となるということは知られている。
【0004】
血液中のニトロソチオール中に存在する酸化窒素、あるいはヘモグロビンと結合した酸化窒素の量を検出するための既存の装置においては、通常、パイレックス(登録商標)ガラス製のコイルの内部を流れている血液を含んでいる液体サンプルに紫外線を照射するための高強度広域スペクトル紫外線源(high intensity, broad spectrum UV source)として、150Wの水銀灯が用いられる。しかしながら、150Wの水銀灯を使用する場合、サンプルの表面積を大きくすることが必要である。したがって、大きい表面積を実現することができる流通プロセス(flow-through process)が必要とされる。流通プロセスの流れは、ヘリウムからなるキャリアガスの流れでもって曝気され、遊離酸化窒素ガスが、酸化窒素検出器を収容している分離型ユニットに輸送される。この分離型ユニットでは、遊離酸化窒素がオゾンと反応し、光電子増倍管(photomultiplier tube)によって検出することができる光(化学発光)を発生させる。このような手法はスタムラー(Stamler)等に係る特許文献1及びスタムラーに係る特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,459,076号明細書
【特許文献2】米国特許第5,891,735号明細書
【特許文献3】米国特許第6,982,426号明細書
【特許文献4】米国特許第7,090,648号明細書
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】J.R.ポロスキー等著「米国科学アカデミー紀要」102(7)号、2531〜2536頁、2005年発行(Pawloski, J.R., et al., PNAS 102(7), 2531-2536(2005))
【非特許文献2】T.J.マクマホン等著「米国科学アカデミー紀要」102(41)号、14801〜14806頁、2005年10月11日発行(McMahon, T.J., et al., PNAS 102(41), 14801-14806(10/11/2005))
【非特許文献3】L.リウ等著「セル誌」116号、617〜628頁、2004年発行(Liu, L., et al., Cell 116, 617-628(2004))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、この従来の手法は研究の場では有用であるが、臨床の場では極めて扱いにくいものである。また、サンプルが流通するチューブの直径が小さく、かつ温度が上昇するので、チューブ状のガラスコイル内の不透明なサンプル(turbid samples)の測定を行うことはできない。さらに、ガラスのコイルは再使用することが必要であるので、使用するたびに洗浄しなければならない。
【0008】
ルフト(Lucht)等に係る特許文献3は、酸化窒素センサと、結晶内レーザ(laser in a crystal)からサンプルを介して光電子増倍管へ信号ビームを送る過程を有する方法とを開示している。特許文献3はまた、酸化窒素による紫外線の吸収に基づく制御との比較により、酸化窒素のレベルを示す紫外線出力を検出するといったことを開示している。測定は光電子増倍管により行われる。
【0009】
サックナー(Sackner)等に係る特許文献4は創傷治癒(wound healing)における光/レーザ治療を開示している。そして、特許文献4は、この治療が、ヘモグロビンから酸化窒素を解離することを開示し、これは創傷治癒を促進する可能性があることを開示している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願発明者は、血液サンプルから酸化窒素ガスを遊離させるために、低パワーの発光ダイオード電磁波を使用し、又は低パワーのレーザ電磁波ビームを使用すれば、全セル(whole cells)を構成する、静止し、体積が小さく、表面積が小さいサンプルを用いることが可能となり、かつ、使い捨てのサンプル容器を用いることが可能となるということを発見した。なお、本明細書において、「低パワー(low power)」との語は、100ミリワット未満であること、例えば30〜60ミリワットであること、あるいは例えば50ミリワットであることを意味する。
【0011】
本発明の第1の実施態様(embodiment)は、血液サンプル中の結合酸化窒素から酸化窒素ガス(nitric oxide gas)を遊離させる(liberate)方法に関するものである。この方法は、血液サンプル中に存在する結合酸化窒素から遊離酸化窒素(free nitric oxide)を解放する(release)のに十分な期間、レーザ源又は発光ダイオードから低パワーの電磁放射線ないしは電磁波(electromagnet radiation)を血液サンプルに放射する(direct)過程を有している。
【0012】
本明細書において、「結合酸化窒素(combined nitric oxide)」との語は、ニトロソチオール(nitrosothiols)として存在する酸化窒素及び鉄ニトロシル(iron nitrosyls)として存在する酸化窒素を意味するものとして使用されている。また、本明細書において、「鉄ニトロシル」との語は、FeNOと、酸化窒素を遊離させる鉄と化合した(bound)その他の窒素酸化物(N-oxides)とを意味するものとして使用されている。
【0013】
本発明の第2の実施態様は、血液サンプル中に結合酸化窒素として存在する酸化窒素の量を決定する方法に関するものである。この方法は、下記の各ステップ(a)〜(d)を備えている。
(a) 結合酸化窒素の量を解析すべき(to be analyzed)血液サンプルを、電磁波を透過させる前側部分(front side)と、酸化窒素ガスを通過させる一方タンパク質が通過するのを防止する範囲(extent)の多孔度ないしは多孔性を備えた(porous)後側部分(rear side)とを有するサンプル収容ゾーンに導入するステップ。
(b) 前側部分に低パワーの電磁波を放射し、結合酸化窒素から酸化窒素ガスの遊離を生じさせるとともに、遊離された酸化窒素ガスの後側部分を介しての移動(passage)を生じさせるステップ。
(c) 後側部分を通過した遊離酸化窒素(liberated nitric oxide)を溶媒に溶解させるための溶媒収容ゾーン(solvent containing zone)を設ける(provide)ステップ。ここで、溶媒収容ゾーン内の溶媒は、酸化窒素ガスを溶解させられるものである。
(d) 血液サンプル中に結合酸化窒素として存在する酸化窒素の全量(total amount)に対応する、溶媒中に溶解している酸化窒素ガスの量を電気化学的(electrochemically)に検出するステップ。
【0014】
本発明の第3の実施態様は、血液中に鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の量と、血液中に結合酸化窒素として存在する酸化窒素の量とを決定する方法に関するものである。この方法は、下記の各ステップ(a)〜(d)を備えている。
(a) それぞれ鉄ニトロシル及びニトロソチオールとして存在する結合酸化窒素を含んでいる2つの血液サンプルを同一の血液源(例えば患者)から採取する(obtain)ステップ。ここで、2つの血液サンプルのうちの一方を第1サンプルと命名し(denote)、他方を第2サンプルと命名することにする。
(b) 第2サンプルをニトロソチオール分解剤(nitrosothiols degrading agent)、例えば水銀化合物(mercury compound)で処理し、第2サンプル中でニトロソチオールの亜硝酸(nitrous acid)への分解(decomposition)を生じさせるステップ。
(c) 第1サンプル中に結合酸化窒素として存在する酸化窒素の量を解析する(analyze)ための、下記の各サブステップ(i)〜(iv)を有するステップ。
(i) 第1サンプルを、電磁波を透過させる前側部分と、酸化窒素ガスを通過させる一方タンパク質が通過するのを防止する範囲の多孔度ないしは多孔性を備えた後側部分とを有する第1サンプル収容ゾーンに導入するサブステップ。
(ii) 第1サンプル収容ゾーンの前側部分に低パワーの電磁波を放射し(direct)、結合酸化窒素からの酸化窒素ガスの遊離(liberation)を生じさせるとともに、遊離された酸化窒素ガスの後側部分を介しての移動(passage)を生じさせるサブステップ。
(iii) 後側部分を通過した遊離酸化窒素を、酸化窒素ガスを溶解させることができる溶媒に溶解させるための第1溶媒収容ゾーンを設ける(provide)サブステップ。
(iv) 第1サンプル中に結合酸化窒素として存在する酸化窒素の全量(total amount)に対応する、第1溶媒収容ゾーン中に溶解している酸化窒素の量を電気化学的に検出するサブステップ。
(d) ステップ(b)において処理された第2サンプル中に鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の量を解析する(analyze)ための、下記の各サブステップ(i)〜(iv)を有するステップ。
(i) ステップ(b)で処理された第2サンプルを、電磁波を透過させる前側部分と、酸化窒素ガスを通過させる一方タンパク質が通過するのを防止する範囲の多孔度ないしは多孔性を備えた後側部分とを有する第2サンプル収容ゾーンに導入するサブステップ。
(ii) 第2サンプル収容ゾーンの前側部分に低パワーの電磁波を放射し(direct)、鉄ニトロシルからの酸化窒素ガスの遊離を生じさせるとともに、遊離された酸化窒素ガスの後側部分を介しての移動を生じさせるサブステップ。
(iii) 後側部分を通過した遊離酸化窒素を、酸化窒素を溶解させる溶媒に溶解させるための第2溶媒収容ゾーンを設ける(provide)サブステップ。
(iv) 第2サンプル中に鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の量に対応する、第2溶媒収容ゾーン中に溶解している酸化窒素の量を電気化学的に検出するサブステップ。
【0015】
本発明の第3の実施態様の変形例においては、ステップ(c)は省略され、鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の量のみが解析される(analyzed)。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第3の実施形態に係る、第1サンプル及び処理された第2サンプルを保持するための使い捨ての瀉血カセットを示す斜視図である。
【図2】図1に示すカセットとともに用いるための、溶媒を保持するとともに電極を挿入するための再使用可能なハウジングを示す斜視図である。
【図3】図1に示すカセットと図2に示すハウジングとを組み付けてなる組立体(assembly)を示す斜視図である。
【図4】図3に示す組立体の展開斜視図であり、組立体の内部構造を詳細に示している。
【図5】本発明の第3の実施態様に係る方法を実施するための装置を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のすべての実施形態(実施態様)において、低パワーの放射線放出器ないしは発光器(radiation emitter)が用いられる。なぜなら、このような発光器は、静止している少量の血液サンプルに対して大量の線量の電磁波(large dose of radiation)を供給して、血液サンプルから酸化窒素ガスを遊離させることができるからである。かかる発光器によって供給されるエネルギ線量(dose of energy)は、該発光器の出力(power)に比例するとともに、該発光器の放射ビームの直径に反比例する。
【0018】
以下、本発明の第1の実施形態(実施態様)を説明する。低パワーの電磁波は、好ましくは、300nmから400nmまでの範囲の波長を有する紫外線(ultraviolet radiation)であり、非常に好ましくは325nmから355nmまでの範囲の波長を有する紫外線である。これは、低出力の紫外線レーザ、とくに紫外線を放射するネオジムをドープしたイットリウム・アルミニウム・ガーネットレーザ(neodymium-doped yttrium garnet laser)、すなわちNd:YAl12レーザにより実現することができ、あるいは例えば325nmから355nmまでの範囲の波長の紫外線を放射するように周波数調整が施された波長可変レーザにより実現することができる。このようなレーザは、特定範囲において(in the specified range)、カリフォルニア州のオポテク社(Opotek, Inc.)から商業的に入手することができる。この低パワーの紫外線はまた、前記の波長の紫外線を放射する商業的に入手可能な発光ダイオードによっても実現することができる。
【0019】
低パワーの電磁波はまた、210nmから220nmまでの範囲の波長、例えば220nmの波長を有する紫外線であってもよい。210nmまでの(down to 210nm)波長の紫外線を放射する発光ダイオードも用いることができ、例えば210nmまでの波長の紫外線を放射するアルミニウム・ガリウム・インジウム窒化物(aluminum gallium indium nitride)発光ダイオードを用いることができる。
【0020】
低パワーの電磁波はまた、500nmから600nmまでの範囲の波長を有する低パワーの可視光ないしは可視電磁波(visible electromagnetic radiation)であってもよい。これは、商業的に入手可能な低出力の緑色LED灯(green LED lamp)によって実現することができる。
【0021】
低パワーの電磁波はまた、700〜1400nmの範囲の波長を有する低パワーの近赤外線であってもよい。これは、商業的に入手可能な近赤外線発光ダイオードによって実現することができる。
【0022】
前記の210〜220nmの範囲の波長を有する電磁波、300〜400nmの範囲の波長を有する電磁波、500〜600nmの範囲の波長を有する電磁波及び近赤外線は、ニトロソチオールを気体の酸化窒素に分解し(degrade)、かつ、鉄ニトロシル中に適切に吸収(absorbance)されて(ヘム結合された酸化窒素に対する特徴的な部分(characteristic moiety for nitric oxide bound to heme))、該鉄ニトロシルから気体の酸化窒素を遊離させる。
【0023】
以下、血液サンプルを説明する。血液サンプルは、小さい表面積及び小さい体積を有するものである。血液サンプルは、例えば2mmから6mmまでの範囲の直径を有するとともに、例えば0.5mmから1mmまでの範囲の横方向寸法(transverse dimension)を有するものであってもよい。
【0024】
血液サンプルは、鋭利なもので指を突き刺すことにより容易に採取することができ、この血液サンプルは毛細管現象(capillary action)によりサンプル保持器に取り入れることができる。
【0025】
血液中の鉄ニトロシルから酸化窒素を遊離させることのみが望まれる場合は、血液サンプルは、金属イオン(例えば、水銀イオンII又はAgイオン)、例えば塩化水銀又は有機水銀(例えば、メチル水銀)で処理され、血液サンプル中のニトロソチオールが亜硝酸(これは、電磁波エネルギを受けても酸化窒素を遊離させない)に分解される。これは、サンプル収容(保持)ゾーンに血液サンプルを取り入れる前に、サンプル収容ゾーン内にニトロソチオール分解剤(nitrosothiol degrading agent)を導入することにより実施することができる。この場合、発光器は、処理されてニトロソチオールが分解された血液サンプルに向けて電磁波を放射する。なお、第1の実施形態における説明で用いられている「血液サンプル」との語は、未処理の血液サンプルのほか、ニトロソチオール分解処理が施された(ニトロソチオール分解剤で処理された)血液サンプルも含む。
【0026】
レーザ又は発光ダイオードは、例えば血液サンプルから1フィート(約30.5cm)までのところ、例えば6インチ(約15.2cm)から10インチ(約25.4cm)までの範囲のところに配置される。この距離は、光ファイバを利用して発光器の放射ビーム(emitter beam)を伝送する場合は短縮することができる。
【0027】
電磁波ビームは血液サンプルに放射される。この電磁波ビームは、好ましくは血液サンプルに到達したときに、血液サンプルの断面積(cross-sectional area)と同一の断面積(cross-sectional area)を有し、かつ同一の広がりを有するものである。
【0028】
電磁波処理は、血液サンプル中又は処理された血液サンプル中の鉄ニトロシル及びニトロソチオールの光分解(photolysis)を生じさせ、気体の酸化窒素を解離させる(release)。この電磁波処理は、酸化窒素ガスの放出が認められなくなる(no longer noted)まで継続される。
【0029】
以下、本発明の第2の実施形態(実施態様)を説明する。サンプル収容ゾーンは、第1の実施形態に関して説明したのと同様の寸法及び体積を有している。
【0030】
サンプル収容ゾーンの前側部分(前壁)は電磁波透過性を有し、このためサンプル収容ゾーンの前壁は血液サンプルの前側部分に向かって放射されている電磁波エネルギの減衰を生じさせない。例えば、前壁は、血液サンプルの前側部分に向かって放射された電磁波エネルギの少なくともほぼ95%を透過させるものである。
【0031】
サンプル収容(保持)ゾーンの前側部分は、例えばバイコール(Vycor:登録商標)ガラス(カミングガラス工業(Coming Glass Works))又は石英で形成することができる。
【0032】
サンプル収容(保持)ゾーンの後側部分は、好ましく、酸化窒素ガスの通過は許容する程度ないしは範囲であり、かつタンパク質の通過は許容しない程度ないしは範囲の多孔度ないしは多孔性を有する細孔構造を備えた材料、例えば40ミクロンの細孔を備えた材料で形成されている。このため、遊離された酸化窒素はタンパク質から分離され、その結果遊離された酸化窒素ガスは、タンパク質と再結合することができない。サンプル収容ゾーンの後側部分は、好ましく、バイコール(登録商標)ガラスで形成されている。
【0033】
後側部分のうちの、サンプル収容(保持)ゾーンのガスの通過を許容する部分と隣接する部分を除き、溶媒収容ゾーンは、不活性な材料、例えばポリテトラフルオロエチレンで形成されている。また、溶媒収容ゾーンには、酸化窒素ガスがサンプルコンテナ(後で説明する)から移動するところの隣接部を除いて、好ましく黒色の塗装が施されている。
【0034】
溶媒収容ゾーン内の溶媒は、血液サンプルに比べて、酸化窒素ガスの溶解度が大きいものであり、好ましくはメタノールである。
【0035】
電気化学的な検出は、酸化窒素選択電極(nitric oxide selective electrode)を用いて行う。この電極は、イオン選択電極であり、酸化窒素が溶解している溶媒中に浸漬されたときに、溶媒中に溶解している酸化窒素の濃度に対して定量的に比例する低い電圧(例えば、ピコボルトの範囲)を発生させる。
【0036】
以下、電極によって行われる、解離され溶媒中に溶解した酸化窒素ガスの量に対応する値(response)の検出ないしは検定(calibration)を説明する。ニトロソチオールから遊離された酸化窒素の量の光分解を測定する(calibrate)ためにニトロソグルタチオン(nitrosoglutathione)を用いることができる。そして、鉄ニトロシルから遊離された酸化窒素の光分解の量を測定する(calibrate)ためにニトロプルシドナトリウム(sodium nitroprusside)を用いることができる。両者とも結合酸化窒素から遊離される酸化窒素の量の範囲をカバーする(cover the range)。酸化窒素選択電極は商業的に入手することができる。
【0037】
第2の実施形態に係る好ましい方法においては、血液サンプルは、ニトロソチオール分解剤が入っているか又は入っていないサンプル収容ゾーンに取り入れられる。例えば、ランセット又はその他の鋭利な物で指を突き刺した後、血液サンプルが例えば毛細管現象によりサンプル収容ゾーン内に取り入れられる。そして、溶媒収容ゾーンに溶媒が導入される。サンプル収容ゾーンの後側部分は、溶媒収容ゾーンと隣接して配置される。続いて、サンプル収容ゾーンから12インチ(約30.5cm)以下の距離を隔てたところに、低出力の電磁波発光器(低出力のレーザ又は低出力の発光ダイオード)が配置される。そして、電磁波発光器により、サンプル収容ゾーン内の血液サンプルに、血液サンプルの断面積に対応する断面積をもつビームが放射される。そして、電極が溶媒収容ゾーン内に下降させられる。この電極は、溶媒収容ゾーン内の酸化窒素の量に対応する発生電圧(generated voltage)を検出する。酸化窒素ガスの増加が検出されている間は、血液サンプルに電磁波ビームが照射される。電磁波源の駆動が停止されたときに、溶媒と接触している電極が上昇させられ、接触が断たれ、サンプル収容ゾーンを構成している装置は廃棄される。
【0038】
電極によって検出された発生電圧は、ピコボルトの範囲のものであり、例えば電圧計(voltmeter)を用いて測定するために、直流増幅器を用いて増幅される。このシステムには、あるピークの下の面積(area under any peak)を定量化する(quantify)ために信号積分器(signal integrator)を設けることができる。増幅器及び/又は信号積分器からの信号は、アナログ・デジタル変換器に伝送してもよい。アナログ・デジタル変換器は、信号をコンピュータ、電圧器又はその他のデジタル式のインターフェース装置に伝送する。アナログ.デジタル変換器は、結合酸化窒素の量を示すデジタル又はグラフィックの情報(digital or graphic readout)を提供する。すなわち、ニトロソチオール及び鉄ニトロシルとして存在する全酸化窒素の量(ニトロソチオール分解剤を用いない場合)、又は、鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の量を示す情報を提供する(ニトロソチオール分解剤を用いる場合)。
【0039】
電磁波は、第1の実施形態に関して説明したのと同様に、紫外線レーザ又は紫外線発光ダイオードによって生成される300〜400nmの範囲の波長を有する紫外線を用いることができる。また、第1の実施形態に関して説明したのと同様に、適切な紫外線発光ダイオードによって生成される210〜220nmの範囲の波長を有する紫外線を用いることができる。あるいは、第1の実施形態に関して説明したのと同様に、発光ダイオードによって生成される可視光(500〜600nmの波長を有する)を用いることができる。さらに、第1の実施形態に関して説明したのと同様に、平均的な(mean)赤外線発光ダイオードによって生成される近赤外線を用いることができる。サンプル収容ゾーンの前側部分は、サンプル収容ゾーンの方向に放射される電磁波がどのようなものであるかにかかわらず電磁波透過性を有する。これにより、サンプル収容ゾーン内に電磁波を透過させることが可能となり、血液サンプルからの酸化窒素の遊離を生じさせることが可能となる。
【0040】
以下、本発明の第3の実施形態(実施態様)を説明する。図1〜図5に、第3の実施形態に係る方法を実施するための好ましいシステムを示す。
【0041】
図1は、使い捨ての瀉血用カセット10を模式的に示している。このカセット10は、それぞれサンプル収容ゾーンを構成する複数の血液サンプル収容室12、14を備えている。カセット10の前壁16は、バイコール(登録商標)ガラス又はその他の電磁波透過材料(すなわち、あらゆる電磁波が用いられる。)からなる。カセット10の後壁18は、例えば孔径が40ミクロンのバイコール(登録商標)ガラスからなる。後壁18の物性は、酸化窒素ガスは通過させるが、タンパク質の通過は阻止するといった態様の多孔度ないしは多孔性を有するように設定されている。血液サンプル収容室12には、血液サンプルによる電磁波の吸収を妨げないように、塩化水銀II又はその他のニトロソチオール分解剤(nitrosothiols destroying agent)が含有されている(impregnated)。血液サンプル収容室12、14は、例えば、直径が4mmであり、横方向の寸法(transverse dimension)が5mmであるものである。血液サンプル収容室12は、存在するニトロソチオールに対して大幅に過剰量のニトロソチオール分解剤、例えば塩化水銀IIを包含している。他方、血液サンプル収容室14は、ニトロソチオール分解剤を包含していない。
【0042】
血液サンプル収容室12には、毛細管血液サンプル収容室/ゾーン入口部20が連通している。他方、血液サンプル収容室14には、毛細管血液サンプル収容室/ゾーン入口部22が連通している。
【0043】
図2は、再使用可能な溶媒容器/電極導入区画部又はハウジング24(以下「構成要素24」という。)を模式的に示している。この構成要素24は、溶媒収容ゾーンを形成し、不活性な材料(inert material)、すなわち溶媒及び酸化窒素ガスに対して不活性な材料、例えばポリテトラフロオロエチレン(polytetrafluoroethylene)からなる。構成要素24は、隔壁30によって仕切られた2つの溶媒容器区画部26、28を備えている。構成要素24は、中実の(solid)後壁と、それぞれ溶媒容器区画部26、28につながる円形開口部32、34を有する前壁とを備えている。円形開口部32は、環形の直立突出壁36によって形成されている。他方、円形開口部34は、環形の直立突出壁38によって形成されている。構成要素24の上壁には、溶媒容器区画部26に電極を導入するための開口部40と、溶媒容器区画部28に電極を導入するための開口部42とが設けられている。直立突出壁36、38の各々は黒色に彩色され、又は、その他の電磁波の遮蔽手段(shielding)を有し、挿入された電極(後で説明する)への電磁波の散乱(scattering)を最小限にし、あるいは防止するようにしている。このようにするのは、電磁波が電極によって検出される電圧に影響を及ぼすからである。
【0044】
使い捨てのカセット10と溶媒容器/電極導入区画部24すなわち構成要素24とは、例えば、室12、14と隣り合うカセット10の後側(the rear side of cassette 10 adjacent chambers 12 and 14)が開口部32、34(図2)とつながる(contiguous)ように、カセット10を溶媒容器/電極導入区画部24に締め付けること(clamping)により組み付けられる。このようにせず、構成要素24の前側に固定ブラケット(retaining bracket)を設けることにより、又は構成要素24の前にカセット10と構成要素24とを組み付けるための挿入スロット(insertion slot)を備えた構造物(structure)を設けることにより、カセット10を構成要素24に取り付けるようにしてもよい。図3においては、このように形成された組立体は参照番号58でもって模式的に示されている。
【0045】
図4は、図3に示す組立体の展開図であり、構成要素24の前壁44の前方に配置されたカセット10を示している。前壁44は、構成要素24の後壁46の前方に位置している。構成要素24は、左の側壁48と、右の側壁50と、構成要素24を各溶媒容器区画部26、28(図2参照)に分割する内部縦壁52と、底壁54と、電極挿入用の開口部40、42(図2参照)を有する頂壁56(top wall)とを備えている。
【0046】
図5は、瀉血カセット10(図1参照)、溶媒容器/電極導入区画部24(図2参照)及び組立体58(図3参照)に加えて、レーザ源60としての電磁波源も示している。ここで、レーザ源60は、波長(周波数)が325〜355nmの範囲であり、出力が50ミリワットのレーザビーム62、例えばNd:Y1512レーザを、両サンプル収容室12、14の一方において、ある距離、例えば6インチ(約15.2cm)から10インチ(約25.4cm)までの範囲の距離のところから放射し、組立体58のところでレーザが照射されているサンプル収容室(12又は14)の入口開口部と同一の広がりをもつ(coextensive)断面積のレーザビームを生成する。
【0047】
図5には、縦型アクチュエータ(図示せず)が設けられた酸化窒素選択電極64も示されている。ここで、縦型アクチュエータは、コンピュータ操作により、電極64を上昇又は下降させて、適切な電極挿入開口部(40又は42)に挿入することができる。電極64は、65のところ(図5)で、溶媒容器区画部26(図2)内に挿入された形態で示されている。
【0048】
電極64は、構成要素24内の溶媒中に酸化窒素が存在することにより生成される電圧を検出する酸化窒素選択電極である。そして、電極64は、ピコボルトの信号66を直流増幅器68へ送る。直流増幅器68は、増幅された信号70を、順に、信号積分器(signal integrator)と、グラフィック読み出し装置70(graphic readout device)とへ送る。ここで、グラフィック読み出し装置70は、結合酸化窒素として存在する酸化窒素の量に対応する溶媒中に溶解している酸化窒素の量の読み出しを行う。
【0049】
使用時には、例えばベッドサイドで、血液の酸化窒素のデータが求められている患者の指にランセット(両刃のメス)を突き刺し、毛細管現象により、それぞれ通路20、22を介して室12、14(図1参照)内への血液の流れを生じさせる。リング36、38とともに表側では平坦となっている構成要素24(図2)は、開口部32、34を介して溶媒で満たされる。この溶媒は、血液サンプルに比べて酸化窒素ガスの溶解度が大きいものであり、好ましくはメタノールである。この後、カセット10は、構成要素24に組み付けられ、室12、14は、例えばカセット10を構成要素24に対して締め付けることにより、それぞれ、開口部32、34と反対向きとなる。その結果、室12、14のための窓部(window)は、カセット10の前方に位置する。この後、レーザ源60(図5)のスイッチをオンし、例えば50ミリワットの電力で、室12又は室14に325〜355nmの範囲の紫外線レーザビームを照射する。この紫外線レーザビームの強度は、遊離酸化窒素を最大にすることができるような十分に高いものである(すなわち、酸化窒素に対する結合を解除するのに十分な強さではあるが、遊離された酸化窒素を分解し又はその他の干渉を行う程には強くない強度)。電極64(図5)は、レーザ源60からのレーザビームがサンプル室12に照射された後に溶媒容器26内に下降させられ、解離又は遊離された酸化窒素を電気化学的に検出した後、室12から上昇させられる。そして、電極64は、レーザ源60からのレーザビームがサンプル室14に照射された後に溶媒容器26内に下降させられ、解離又は遊離された酸化窒素を電気化学的に検出した後に室14から上昇させられる。溶媒容器区画部26、28に対する電極64の上昇及び下降は、好ましく、コンピュータで駆動モータ(図示せず)を起動することにより行われる。連続して順次にそれぞれの測定が実施される。
【0050】
室12内のニトロソチオール分解剤は、その中のニトロソチオールを亜硝酸に分解する(選択的に開裂する)。電磁波により、亜硝酸から硝酸が遊離されることはない。
【0051】
レーザビーム62が室12に向けられたときに、電極64は、開口部40を介して、溶媒容器区画部26内に下降させられる。レーザ処理は、室12内のサンプル中の鉄ニトロシルから、気体の酸化窒素を遊離させる。気体の酸化窒素は、室12をから出て、カセット10の多孔性の後壁を通って拡散し、溶媒容器区画部26内に至る。ここで、遊離された酸化窒素は、溶媒容器区画部26内の溶媒に溶解する。レーザ照射は、参照番号70で示す読み取り部における読み取り値が増加している間は継続される。読みとり部70は、サンプル中に鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の量を示す。
【0052】
レーザビーム62が室14に向けられたときに、電極64は、開口部42を介して、溶媒容器区画部28内に下降させられる。レーザ処理は、鉄ニトロシルとニトロソチオールとから酸化窒素を遊離させる。遊離された酸化窒素は、カセット10の多孔性の後壁を通って、溶媒容器区画部28内に至る。これにより、溶解された酸化窒素の量が検出され、読みとり部70は、結合酸化窒素として存在するすべての酸化窒素を示す。
【0053】
カセット10の多孔性の後壁は、酸化窒素ガスが溶媒収容ゾーン内への移動を許容するが、タンパク質の移動は許容しない。その結果、放射線の照射は、タンパク質との再結合を生じさせることなく、酸化窒素の連続的な解離又は遊離を生じさせる。
【0054】
結合酸化窒素として存在する全酸化窒素及び鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の決定は、全酸化窒素、すなわち結合酸化窒素として存在する酸化窒素に対する鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の比率を計算することを可能にする。そして、その差により、サンプル中におけるニトロソチオールの量を決定することを可能にし、これにより診断及び/又は診断の確認を可能にするデータを得ることができる。
【0055】
第3の実施形態においては、レーザ源60を、発光ダイオードに置き換えることができる。かかる発光ダイオードとしては、波長が210〜220nmの範囲の紫外線を放射するもの、波長が300〜400nmの範囲の紫外線を放射するもの、波長が500〜600nmの範囲の可視光を放射するもの、波長が700〜1400nmの範囲の近赤外線を放射するものなどが、優れた同等効果を奏するものとして挙げられる。
【0056】
前記の本発明についての説明は、操作可能な好ましい実施形態を例示するものとして記載されたものである。そして、当業者にとっては、本発明の技術思想及び技術的範囲において、これらの実施形態の種々の変形例及び修正例に想到することは自明であるので、本発明をこれらの実施形態に限定することは意図していない。
【符号の説明】
【0057】
10 使い捨ての瀉血用カセット(disposable phlebotomy cassette)、12 血液サンプル収容室、14 血液サンプル収容室、16 前壁、18 後壁、20 毛細管血液サンプル収容室/ゾーン入口部(capillary blood sample containing chamber/zone inlet)、22 毛細管血液サンプル収容室/ゾーン入口部、24 再使用可能な溶媒容器/電極導入室又はハウジング(reusable solvent reservoir/electrode introduction compartment or housing)、26 溶媒容器区画部(solvent reservoir compartment)、28 溶媒容器区画部、30 隔壁(partition)、32 円形開口部、34 円形開口部、36 直立突出壁、38 直立突出壁、40 開口部、42 開口部、44 前壁、46 後壁、50 右側壁、52 内部縦壁、54 底壁、56 頂壁、58 組立体、60 レーザ源、62 レーザビーム、64 電極、66 信号、68 直流増幅器、70 増幅された信号、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液サンプル中の結合酸化窒素から酸化窒素ガスを遊離させる方法であって、
上記結合酸化窒素から遊離酸化窒素を解放するのに十分な期間、上記血液サンプルに低パワーの電磁波を照射する過程を有していることを特徴とする方法。
【請求項2】
上記低パワーの電磁波が低パワーの紫外線であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記低パワーの紫外線が300nmから400nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記低パワーの紫外線が325nmから355nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
上記低パワーの紫外線が210nmから220nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
上記低パワーの電磁波が、500nmから600nmまでの範囲の波長を有する低パワーの可視電磁波であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
上記低パワーの電磁波が低パワーの近赤外線であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
上記低パワーの電磁波が、低出力のレーザ源から放射されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
上記低パワーの電磁波が、低出力の発光ダイオードから放射されたものであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
血液サンプル中の結合酸化窒素の量を決定する方法であって、
(a) サンプル中の結合酸化窒素の量を解析すべき血液サンプルを、電磁波を透過させる前側部分と、酸化窒素ガスを通過させる一方タンパク質が通過するのを防止する範囲の多孔度を備えた後側部分とを有するサンプル収容ゾーンに導入するステップと、
(b) 上記前側部分に低パワーの電磁波を放射し、結合酸化窒素から酸化窒素ガスの遊離を生じさせるとともに、遊離された酸化窒素ガスの上記後側部分を介しての移動を生じさせるステップと、
(c) 上記後側部分を通過した遊離酸化窒素を、酸化窒素ガスを溶解させる溶媒に溶解させる溶媒収容ゾーンを設けるステップと、
(d) 上記サンプル中に結合酸化窒素として存在する酸化窒素の全量に対応する、上記溶媒中に溶解している酸化窒素ガスの量を電気化学的に検出するステップとを備えていることを特徴とする方法。
【請求項11】
上記サンプル収容ゾーンの上記前側部分が紫外線透過性を有し、
上記ステップ(b)における上記低パワーの電磁波が低パワーの紫外線であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
上記低パワーの紫外線が300nmから400nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
上記低パワーの紫外線が325nmから355nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
上記ステップ(b)における上記低パワーの紫外線が210nmから220nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
上記サンプル収容ゾーンの上記前側部分が可視電磁波透過性を有し、
上記ステップ(b)における上記低パワーの電磁波が、500nmから600nmまでの範囲の波長を有する低パワーの可視電磁波であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
上記サンプル収容ゾーンの上記前側部分が近赤外線透過性を有し、
上記ステップ(b)における上記低パワーの電磁波が低パワーの近赤外線であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
上記ステップ(b)における上記低パワーの電磁波が、低出力のレーザ源から放射されたものであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
上記ステップ(b)における上記低パワーの電磁波が、低出力の発光ダイオードから放射されたものであることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
血液中に鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の量と結合酸化窒素として存在する酸化窒素の量とを決定する方法であって、
(a) それぞれ鉄ニトロシル及びニトロソチオールとして存在する結合酸化窒素を含んでいる2つの血液サンプルを同一の血液源から採取するステップであって、上記血液サンプルのうちの一方を第1サンプルと命名するとともに他方を第2サンプルと命名するステップと、
(b) 上記第2サンプルをニトロソチオール分解剤で処理してニトロソチオールの亜硝酸への分解を生じさせるとともに、鉄ニトロシルを上記第2サンプル中に残留させるステップと、
(c) 上記第1サンプル中に結合酸化窒素として存在する酸化窒素の量を解析するステップであって、
(i) 上記第1サンプルを、電磁波を透過させる前側部分と、酸化窒素ガスを通過させる一方タンパク質が通過するのを防止する範囲の多孔度を備えた後側部分とを有する第1サンプル収容ゾーンに導入するサブステップと、
(ii) 上記第1サンプル収容ゾーンの上記前側部分に低パワーの電磁波を放射し、結合酸化窒素から酸化窒素ガスの遊離を生じさせるとともに、遊離された酸化窒素ガスの上記後側部分を介しての移動を生じさせるサブステップと、
(iii) 上記後側部分を通過した遊離された酸化窒素を、酸化窒素ガスを溶解させることができる溶媒に溶解させる第1溶媒収容ゾーンを設けるサブステップと、
(iv) 上記第1サンプル中に結合酸化窒素として存在する酸化窒素の全量に対応する、上記第1溶媒収容ゾーン中に溶解している酸化窒素の量を電気化学的に検出するサブステップとを有しているステップと、
(d) 上記ステップ(b)において処理された上記第2サンプル中に残留している鉄ニトロシル中に存在する酸化窒素の量を解析するステップであって、
(i) 上記処理された第2サンプルを、電磁波を透過させる前側部分と、酸化窒素ガスを通過させる一方タンパク質が通過するのを防止する範囲の多孔度を備えた後側部分とを有する第2サンプル収容ゾーンに導入するサブステップと、
(ii) 上記第2サンプル収容ゾーンの上記前側部分に低パワーの電磁波を放射し、上記鉄ニトロシルから酸化窒素ガスの遊離を生じさせるとともに、遊離された酸化窒素ガスの上記後側部分を介しての移動を生じさせるサブステップと、
(iii) 上記後側部分を通過した上記遊離酸化窒素を、酸化窒素を溶解させる溶媒に溶解させる第2溶媒収容ゾーンを設けるサブステップと、
(iv) 上記第2サンプル中に鉄ニトロシルとして存在する酸化窒素の量に対応する、上記第2溶媒収容ゾーン中に溶解している酸化窒素の量を電気化学的に検出するサブステップとを有しているステップとを備えていることを特徴とする方法。
【請求項20】
上記サブステップ(c)(i)及び上記サブステップ(d)(i)における上記サンプル収容ゾーンの上記前側部分が紫外線透過性を有し、
上記サブステップ(c)(ii)及び上記サブステップ(d)(ii)における上記低パワーの電磁波が低パワーの紫外線であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
上記低パワーの紫外線が300nmから400nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
上記低パワーの紫外線が325nmから355nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記低パワーの電磁波が210nmから220nmまでの範囲の波長を有することを特徴とする、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
上記サブステップ(c)(i)及び上記サブステップ(d)(i)における上記サンプル収容ゾーンの上記前側部分が可視電磁波透過性を有し、
上記サブステップ(c)(ii)及び上記サブステップ(d)(ii)における上記低パワーの電磁波が、500nmから600nmまでの範囲の波長を有する低パワーの可視電磁波であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項25】
上記サブステップ(c)(i)及び上記サブステップ(d)(i)における上記サンプル収容ゾーンの上記前側部分が近赤外線透過性を有し、
上記サブステップ(c)(ii)及び上記サブステップ(d)(ii)における上記低パワーの電磁波が低パワーの近赤外線であることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
上記サブステップ(c)(ii)及び上記サブステップ(d)(ii)における上記低パワーの電磁波が、低出力のレーザ源から放射されたものであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
上記サブステップ(c)(ii)及び上記サブステップ(d)(ii)における上記低パワーの電磁波が、低出力の発光ダイオードから放射されたものであることを特徴とする、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−534832(P2010−534832A)
【公表日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−518179(P2010−518179)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/008630
【国際公開番号】WO2009/014616
【国際公開日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(502347087)デューク・ユニバーシティ (19)
【氏名又は名称原語表記】DUKE UNIVERSITY
【Fターム(参考)】