血液透析用装置および方法
【課題】血液透析部とラインコネクタとの信頼性の高い接続性を簡易な構成で実現すること。
【解決手段】血液回路用血液ラインコネクタ202は、血液回路チューブと係合して封止を行うチューブ接続端202a、及び雄ネジ型患者アクセス部と流体密封接続を行う雌ネジ部を有する部材202cを含む患者アクセス接続端202bを備えている。コネクタ202は更に、部材202cからチューブ接続端202aに向かって後方に延在する一対の係止アーム202dを備えている。一対の係止アーム202dはそれぞれ指窪み部と有刺部とを有している。一対の係止アーム202dは圧入型接続を行う際に血液透析部の嵌合コネクタと有刺部で係合して該嵌合コネクタとの封止係合により患者アクセス接続端202bを係止し、指窪み部が互いに向かって付勢されるとき有刺部と嵌合コネクタとの係合が解除されるように構成されている。
【解決手段】血液回路用血液ラインコネクタ202は、血液回路チューブと係合して封止を行うチューブ接続端202a、及び雄ネジ型患者アクセス部と流体密封接続を行う雌ネジ部を有する部材202cを含む患者アクセス接続端202bを備えている。コネクタ202は更に、部材202cからチューブ接続端202aに向かって後方に延在する一対の係止アーム202dを備えている。一対の係止アーム202dはそれぞれ指窪み部と有刺部とを有している。一対の係止アーム202dは圧入型接続を行う際に血液透析部の嵌合コネクタと有刺部で係合して該嵌合コネクタとの封止係合により患者アクセス接続端202bを係止し、指窪み部が互いに向かって付勢されるとき有刺部と嵌合コネクタとの係合が解除されるように構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して血液透析および類似の透析システム、たとえば、体外で血液またはその他の体液の処理が可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの要因により、血液透析は非効率的で、困難で、費用がかかる。これらの要因としては、血液透析の複雑さ、血液透析に関連する安全性の懸念、血液透析に多大な量の透析液が必要なことなどが挙げられる。さらに、血液透析は通常、熟練した技術者を要する透析センターで実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、透析プロセスの簡易化と効率化の向上は、治療費または患者の出費に大きな影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様は、概して血液透析および類似の透析システムに関する。本明細書に記載される例示の実施形態は、場合によっては、相互に関連する製品、特定の問題に対する別の解決策、および/または1つまたは複数のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用法を含む。本明細書に記載の各種システムおよび方法は血液透析に関連して説明しているが、その他の透析システムおよび/または血液濾過、血液透析など、血液またはその他の体液の処理が可能な体外システムにも適用可能であると理解すべきである。
【0005】
本発明の一態様は、血液透析部の血液回路用の血液ラインコネクタである。血液ラインコネクタは、血液回路チューブと係合して封止を行うように構成されたチューブ接続端、及び雄ネジ型患者アクセス部と係合して該雄ネジ型患者アクセス部と流体密封接続を行うように構成された雌ネジ部を有する部材を含む患者アクセス接続端を備える。血液ラインコネクタは更に、前記部材から前記チューブ接続端に向かって後方に延在する一対の係止アームを備える。一対の係止アームはそれぞれ指窪み部と有刺部とを有している。また、一対の係止アームは、圧入型接続を行う際に患者アクセス接続端の外側表面が血液透析部の嵌合コネクタと流体密封接続を形成するように、前記血液透析部の嵌合コネクタと前記有刺部で係合して前記嵌合コネクタとの封止係合により前記患者アクセス接続端を係止するとともに、前記指窪み部が互いに向かって付勢されるとき前記有刺部と前記嵌合コネクタとの係合が解除されるように構成されている。この構成によれば、血液透析部とラインコネクタとの信頼性の高い接続性を簡易な構成で実現することができる。
【0006】
本発明の別の態様によると、携帯型血液透析部を備える筐体が提供され、血液透析部は、透析器と、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプと、透析液源と、透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプとを含む、血液透析を実行する適切な構成要素を備える。筐体は、血液透析部の構成要素を支持し、血液回路接続部と透析液流体接続部とが配置されるフロントパネルとを有するハウジングを備えることができる。たとえば、フロントパネルは、患者血液アクセス用の血液ライン接続部と、試薬供給用接続部と、血液流と透析液流の両方用の透析器接続部とを支持することができる。よって、一実施形態では、オペレータは、血液回路用と試薬供給用のすべての必要な流体回路接続部をハウジングのフロントパネルに完備させることができる。筐体は、ハウジングにヒンジ式に取りつけられる一対の縦型並列ドアを、ドアが開放位置と閉鎖位置との間で移動できるようにフロントパネルの対向端に備えることができる。ドアが開放位置にあるとき、オペレータは血液回路接続部および透析液流体接続部にアクセスすることができる。さらに、ドアが閉鎖位置にあるとき、患者アクセスおよび透析液流体接続部へのアクセスが遮断されて、消毒サイクル中の消毒に適したハウジング内の熱を保持することができる。たとえば、ドアのうち少なくとも一方は、ドアが閉鎖位置にあるとき、ハウジングの内部と外部間の空気交換に抵抗して熱を保持するのを助ける、および/または埃、ごみ、またはその他の汚染物質の侵入防止を助けるための封止を含むことができる。
【0007】
一実施形態では、縦型並列ドアはそれぞれ、第1の端部でドアに枢動可能に搭載され、第1の端部に対向する第2の端部でハウジングに枢動可能に搭載されるヒンジプレートを介して、ハウジングに取りつけられる。よって、ドアは、たとえば、血液回路接続部と透析液流体接続部とが露出し、ヒンジプレートがハウジングに近接する第1の開放位置と、ヒンジプレートがハウジングから離れている第2の開放位置との2つの開放位置を取ることができる。対応するヒンジプレートに対する開放位置にドアを保持するために、1つまたは複数の保持部材を設けることができる。たとえば、保持部材は、ヒンジプレートおよびハウジングに対する開放位置にドアを保持しようとする、ドアまたはヒンジプレートに装着される少なくとも1つの磁石を備えることができる。さらに、1つまたは複数の保持部材は、ハウジングに対する閉鎖位置、たとえば、ハウジングに近い位置にヒンジプレートを保持する、および/またはハウジングから離れた開放位置にヒンジプレートを保持することができる。
【0008】
一実施形態では、ドアのうち少なくとも一方が、折畳み位置と開帳位置との間で移動することのできる容器ホルダを備えることができ、容器ホルダは試薬供給容器などの容器を支持するように配置される。さらに、またはもしくは、ドアの一方または両方が、通信ケーブルによってハウジングに接続される遠隔インタフェース部などの血液透析部用制御インタフェースを支持するフックを備えることができる。これらの特徴は、構成要素を簡便な位置に支持することにより、透析部をより簡易に利用する。
【0009】
別の実施形態では、フロントパネルが、血液回路アセンブリの血液ラインを支持する少なくとも1つのフランジ部を含むことができる。たとえば、フロントパネルは、フロントパネルの下隅や上縁などのフロントパネルの周縁に配置されるいくつかのフランジ部を含むことができる。患者につながる血液回路ラインは比較的長め(たとえば、3〜4フィート以上)であり、フロントパネルの周囲に巻きつけて、フランジ部によって適所に保持することができる。フランジ部は、血液ラインを支持して、血液ラインに接触せずにドアを閉鎖位置まで移動させるように、たとえば、血液ラインがドアヒンジ点に挟まるのを防止するように配置することができる。
【0010】
一実施形態では、フロントパネルの血液回路接続部は、血液回路用の動脈および静脈血液ラインコネクタを備え、フロントパネルの透析液流体接続部は、試薬供給用接続点と、透析器透析液接続部と、動脈および静脈血液ラインを透析部の方向付け回路に接続する血液ライン接続点とを備える。
【0011】
血液透析部は、可撓ケーブルによってハウジングに接続され、ユーザが血液透析部と情報をやり取りできるように構成される制御インタフェースを備えることができる。一実施形態では、筐体は、筐体の上に、制御インタフェースを搭載可能な制御インタフェース搭載領域を備えることができる。たとえば、制御インタフェースは、ハウジング上でほぼ垂直な配向で立つことができるように、折畳み可能な脚またはその他の支持部を備えることができる。
【0012】
別の実施形態では、筐体は、血液透析部の構成要素を消毒するように加熱される消毒セクションから分離および隔離される電子セクションを備えることができる。たとえば、消毒セクションは、透析部の様々な部分の、バルブ、ポンプ、管路などの流体回路部品をすべて備えることができる。電子セクションは、モータ、コンピュータまたはその他のデータ処理装置、コンピュータメモリ、および/またはその他の温度に敏感な電子機器またはその他の構成要素を備えることができる。電子セクションを(少なくともある程度まで)消毒セクションから隔離することによって、電子セクション内の構成要素は、消毒動作中でもあるいはそれ以外の動作中でも消毒セクション内の熱またはその他の環境条件にさらされずに済む。
【0013】
本発明の別の態様によると、携帯型血液透析システムは、透析部の流体回路ポンプが、モジュール式動力部、たとえば、透析部と選択的に接続または切断され得るユニットによって提供されるように構成することができる。その結果、動力部が故障しても、透析システム全体を無効にする必要はない。その代わりに、動力部を別の動力部と交換して、治療を継続することができる。たとえば、携帯型血液透析システム用のモジュール式アセンブリは、たとえば、透析器などの血液透析を実行する適切な構成要素を収容するハウジングと、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプと、透析液源と、透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプと、を有する透析部を備えることができる。ハウジングは、血液回路接続部および透析液流体接続部が配置されるフロントパネルを有することができ、たとえば、該パネル上で、オペレータは患者血液アクセスを接続し、試薬供給源を接続し、および/または透析器を接続することができる。モジュール式アセンブリは、透析部のポンプに動作動力を提供する適切な構成要素を収容するためのハウジングを有する動力部も備えることができる。動力部は、透析部に選択的に接続され、透析部に接続されたときにはポンプのために透析部に動力を供給することができるが、透析部から切断されたときには透析部へ動力を供給できなくすることができる。動力部は、単独のハンドルの操作によって、透析部と選択的に接続および切断することができる。たとえば、オペレータは、動力部を透析部から切断するように単独のハンドルを回転させる、あるいはそれ以外の方法で操作することができる。一実施形態では、透析部と動力部とは、それぞれ人間が持って運べるようなサイズと重量である。
【0014】
一実施形態では、透析部のポンプは空気圧ポンプであり、動力部は透析部に空気動力を供給する。たとえば、動力部は、透析部に空気圧および/または真空を供給して、ポンプに動力を与えることができる。動力部は1つまたは複数の空気圧ポンプおよび/または真空ポンプを備えることができ、透析部はポンプへの空気動力の印加を制御する複数のバルブを備えることができる。家庭での血液透析システムの使用を助けるため、動力部および透析部の電力要件は、標準的な家庭用電力、たとえば、約110V、15ampの電力によって与えられる。透析部は動力部に電力を供給し、動力部はその電力を使用して、ポンプのための動作動力を生成することができる。
【0015】
本発明の別の態様によると、透析部用の血液回路アセンブリは、大半またはすべての血液回路構成要素の交換を1回の動作で行えるように構成することができる。たとえば、血液回路アセンブリは、編成トレイと、透析器部を含む回路を通って患者から受け取り、患者に戻される血液を循環させるために編成トレイに搭載される一対の空気圧ポンプと、該回路内で循環する血液から空気を除去するように構成される編成トレイに搭載されるエアトラップと、透析器部の入口および出口に接続するように構成される一対の透析器接続部と、一方の入口血液ラインコネクタは患者から血液を受け取り、その血液を空気圧ポンプに供給し、他方の出口血液ラインコネクタは患者に血液を戻す一対の血液ラインコネクタと、を備えることができる。
【0016】
一実施形態では、抗凝血剤源と係合し、抗凝血剤を血液回路に供給するための抗凝血剤接続部が設けられる。たとえば、抗凝血剤接続部は、ヘパリンなどの抗凝血剤源からの抗凝血剤を、ヘパリンのバイアルから該回路へと圧送するためのポンプを備えることができる。抗凝血剤接続部は、2つまたはそれ以上のサイズの異なるバイアルを保持するように構成されるバイアルホルダと、バイアルを貫通するスパイクとを含むことができる。一実施形態では、一対の空気圧ポンプ、抗凝血剤接続部、および抗凝血剤ポンプはポンプカセットの1部である。
【0017】
別の実施形態では、血液回路アセンブリは、選択的に透析部に搭載する、あるいは搭載部から取り外すことができる。血液回路アセンブリの取り扱いを助けるため、編成トレイは、ユーザが握るように構成された一対のハンドルを備えることができる。さらに、編成トレイは、血液回路アセンブリと係合して透析部上に血液回路アセンブリを保持する透析部上の保持タブを収容するため、各ハンドルに近接して開口部を備えることができる。
【0018】
一実施形態では、入口血液ラインコネクタはポンプカセット用入口に接続され、ポンプカセット用出口は透析器入口コネクタに接続され、透析器出口コネクタはエアトラップの入口に接続され、エアトラップの出口は出口血液ラインコネクタに接続される。血液回路アセンブリが透析部に搭載されるとき、エアトラップの入口はたとえば、治療中に回路内を循環する空気の捕捉を助けるため、エアトラップの出口の上方に配置することができる。血液ラインコネクタは、患者アクセスへのねじ込みルアー型接続、および透析部への圧入型接続ができるように構成される。このような構成により、オペレータは、患者血液アクセスでの血液ラインコネクタと標準的なルアー型コネクタとの係合を可能にしつつ、(たとえば、後の血液回路の消毒および/またはプライミングのために)治療後に血液ラインコネクタを透析部に、より容易に接続することができる。
【0019】
一実施形態では、編成トレイは、各回路チューブが通過する穴またはスロットを有する回路チューブ係合部材を備えることができる。係合部材は各回路チューブと係合して、透析部の閉鎖部と係合するように回路チューブを引っ張り、伸張させることができる。たとえば、血液回路アセンブリの回路チューブは、閉鎖部と係合するために伸張する(それによって径を低減させる)必要のあるシリコーンチューブを含むことができる。回路チューブ係合部材は、チューブ上のオペレータの引っ張りに抵抗して、チューブを伸張させ、閉鎖部と係合する位置に配置させることができる。
【0020】
本発明の別の態様によると、透析部の血液回路アセンブリの交換方法は、透析部に搭載される血液回路アセンブリの編成トレイ上の一対のハンドルを握ることと、透析部の係止タブを血液回路アセンブリから分離して、血液回路アセンブリを透析部から解放することと、血液回路アセンブリの編成トレイ上のハンドルを引いて、血液回路アセンブリを透析部から取り外すこととを含む。係止タブの分離することは、各係止タブが最も近いハンドルの方に移動するように係止タブを互いに撓ませることによって実行することができる。血液回路アセンブリの取り外し後、交換用血液回路アセンブリを提供することができ、交換用血液回路アセンブリの編成トレイの開口部は、各係止タブが各開口部に収容されるように並べることができ、編成トレイは、係止タブが交換用血液回路アセンブリと係合して、交換用血液回路アセンブリを透析部に取りつけることができるように透析部に対して押し付けることができる。交換用血液回路アセンブリの搭載は、流体制御信号が血液回路アセンブリのポンプおよびバルブに提供されるように、透析部上の制御ポートをアセンブリ上の嵌合ポートに接続することをさらに含むことができる。透析器用の入口および出口接続部など、その他の血液回路接続部を作製することができ、血液ラインコネクタを接続して透析液を受け取り血液回路内に送ることができる。
【0021】
本発明の別の態様によると、透析部内の血液回路のエアトラップは、血液入口供給ラインと、血液出口供給ラインと、略球状内壁、血液入口供給ラインに接続される容器上端の入口、および血液出口供給ラインに接続される容器下端の出口を有する容器と、を備える。入口を通って容器に入る血液が螺旋状路内の略球状壁の周囲に流れ込むように、入口は略球状壁の縦軸から偏位させることができる。このような容器内の流れは、入口から出口へ流れる際に血液から気泡を除去するのを助け、除去された空気は容器の上端付近に残る。入口ポートは、容器の略球状内壁と略接する方向に、および/または容器の縦軸と略垂直の方向に、血液を容器に導入するように構成される。
【0022】
一実施形態では、たとえば、スプリット膜の形状のセルフシールポートを容器の上に配置することができ、該シールポートは、スプリット膜を通って無針装置を挿入することによって、容器に流体を導入する、および容器から液体を引き出すことができるように構成される。セルフシールポートは、消毒液が容器内を循環するときに自己清浄するように構成することができ、たとえば、ポートは、流れる消毒液に適切にさらされて、ポート上の屑を除去する、および/または材料を加熱して所望の消毒を達成することができる。
【0023】
本発明の別の態様によると、血液回路アセンブリのチューブ固定構造は、血液回路アセンブリの構成要素を支持し一対のチューブ係合部材を有する編成トレイを備え、各係合部材は、穴と、患者から液体を受け取る、および/または患者に液体を供給するための患者アクセス点と接続するように構成される一対の患者入口ラインおよび出口ラインと、患者入口ラインおよび出口ライン上の一対のストッパとを有する。患者入口ラインおよび出口ラインはそれぞれ、ストッパがチューブ係合部材と係合するように、各チューブ係合部材の穴を通過することができる。この構造では、チューブ係合部材は、ラインを閉鎖部と係合させるときに、入口ラインおよび出口ラインの引張りおよび伸張に抵抗することができる。チューブ係合部材は、ユーザが係合部材上で内側に押し込んで入口ラインまたは出口ラインを閉鎖部内に配置させつつも、ラインの下方向の引張りに抵抗するように可撓性を持たせることができる。
【0024】
本発明の別の態様によると、血液透析システムは、複数の様々なサイズおよび/または形状の透析器部を支持し、透析器部上の透析液接続部間の様々な距離に適応するように構成される透析器搭載台を備える。透析器搭載台は、透析部のフロントパネル上に配置され、一対のフランジ部を備えることができ、各フランジ部は、透析器の透析液ポートに接続される透析液迅速接続継手と係合するように構成される。各フランジ部は、迅速接続継手の基部と迅速接続継手の摺動素子との間に位置する迅速接続継手の溝と係合するように構成することもできる。たとえば、透析器搭載台は一対の鍵穴機構を備え、各鍵穴機構は、迅速接続継手の基部を挿入して収容できるようなサイズの上側挿入領域と、迅速接続継手の基部の全体幅よりも小さい幅を有し、迅速接続継手の溝と係合する下側フランジ部とを含む。下側フランジ部は一対の対向フランジを含むことができ、該フランジは上記溝と係合して、迅速接続継手をフランジに沿って摺動させる。
【0025】
一実施形態では、下部鍵穴機構は、縦方向に移動可能な調節可能な支持部を備えることができる。たとえば、調節可能な支持部は、対向フランジに沿って移動可能である。よって、調節可能な支持部は、フランジ上の複数の異なる位置で固定可能であり、透析器の重量を支持することができる。一構成では、調節可能な支持部は、「U」字状部材と、「U」字状部材を適所に固定するように締付け可能な少なくとも1つの蝶ネジとを備える。
【0026】
本発明の別の態様によると、血液透析部の血液回路用血液ラインコネクタは、2種類の流体密封接続、たとえば、患者アクセスでのルアーコネクタを用いるネジ型接続と、血液透析部の透析液回路での圧入型接続とを行うことができる。たとえば、血液ラインコネクタは、血液回路チューブと封止して係合するように構成されるチューブ接続端と、雄ネジ型患者アクセスと係合するように構成される雌ネジ部を有する円錐台形部材付きの患者アクセス接続端と、円錐台形部材から後方に延在する一対の係止アームとを備えることができる。係止アームはそれぞれ、指窪み部および有刺部を有し、圧入型接続を行う際には、有刺部で透析部上の嵌合コネクタと係合して、嵌合コネクタとの封止係合で円錐台形部材を係止するように構成することができる。指窪み部が互いに向かって付勢されると、有刺部を嵌合コネクタから分離することができる。一実施形態では、患者アクセス接続端は、円錐台形部材の中心から延びる中央チューブを含むことができる。円錐台形部材の雌ネジ部と中央チューブとは、雌ルアー型患者アクセスコネクタまたはその他の適切なネジ型接続部と嵌合するように構成することができる。
【0027】
本発明の別の態様によると、透析部の動作方法は、透析部用の動脈および静脈血液ラインの血液ラインコネクタを、患者血液システムと連通する患者アクセコネクタに接続することを含む。一実施形態では、患者アクセコネクタは対応する血液ラインコネクタを必要とし、患者アクセコネクタとのねじ込み係合を確立することによって、血液ラインコネクタと患者アクセコネクタとの間のルアーまたはネジ型接続を形成する。透析部は、患者アクセスコネクタから血液を引き出して動脈血液ラインに送り込み、引き出した血液を透析工程に入れて処理済み血液を生成し、静脈血液ラインおよびその他の患者アクセコネクタを介して処理済み血液を患者に戻すように動作させることができる。その後、血液ラインコネクタは、ネジを緩めることによって対応する患者アクセコネクタから切断することができ、血液ラインコネクタは透析部の方向付け回路に接続することができる。血液ラインコネクタは、透析部上に対応する接続点を有する圧入型接続によって、たとえば、血液ラインコネクタを接続点に押し込み、圧入型接続を確立することによって、方向付け回路に接続することができる。
【0028】
本発明の別の態様によると、血液透析システム用の試薬供給構造は、透析液を作製する際に使用する2つまたはそれ以上の試薬材料を供給するように構成され、試薬材料が誤ったポートに接続されるのを防止するのを助けるように構成されたコネクタを備えることができる。たとえば、試薬供給源は、3つの平行な叉を有するE叉コネクタを含み、うち2つの外側叉は共通面に配置され、中央叉は共通面の上方に配置され、第1の試薬用の第1の供給ラインが外側叉の一方と流体連通して接続され、第2の試薬用の第2の供給ラインが外側叉の他方と流体連通して接続され、液体ラインが中央叉と流体連通して接続され、第1の試薬を収容する容器が、液体ラインに接続される入口と第1の試薬用の第1の供給ラインに接続される出口とを有する。2つの外側叉の面外に位置する中央叉によって、透析部への1方向にのみ確実にE叉コネクタが接続されるため、E叉コネクタは第1および第2の供給ラインと透析部との不適切な接続を防止するのを助けることができる。
【0029】
一実施形態では、容器は、血液透析システム用の透析液を精製する際に使用するのに適した重炭酸塩材料を含む。液体ラインは、水を容器に供給して、水を重炭酸塩(粉末またはその他の固体にすることができる)と混合して第1の供給ラインへと流す給水ラインであってもよい。第2の供給ラインは、コネクタを有し、酸材料をE叉コネクタに供給する酸供給ラインであってもよい。試薬供給源は、酸供給ラインのコネクタと着脱可能に係合する酸バッグスパイクも備えることができる。酸バッグスパイクは、酸供給ラインのコネクタに対向する酸バッグスパイクの端部に、スパイク部材と一対のスプリングクリップとを備え、酸バッグスパイクを酸バッグまたはその他の酸源と流体接続させることができる。
【0030】
本発明の別の態様によると、血液透析システムの動作方法は、透析器と、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプと、透析液源と、透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプとを備える、血液透析を実行するための適切な構成要素を収容する筐体を有する透析器を提供することを含む。筐体は、該構成要素を支持し、血液回路接続部および透析液流体接続部が作製されるフロントパネルを有するハウジングを備えることができる。E叉コネクタと、外側叉の一方と流体連通して接続される第1の試薬用の第1の供給ラインと、外側叉の他方と流体連通して接続される第2の試薬用の第2の供給ラインと、中央叉と流体連通して接続される液体ラインと、液体ラインに接続される入口と第1の試薬用の第1の供給ラインに接続される出口とを有する第1の試薬を収容するための容器と、を備える試薬供給源を設けることができる。E叉コネクタが透析部のフロントパネルで接続点と係合することによって、透析部が水を試薬供給の液体ラインに供給し、第1および第2の供給ラインから第1および第2の試薬を受け取ることができる。
【0031】
本発明のその他の利点および新規な特徴は、添付図面と併せて検討すると、以下の本発明の非限定的な各種実施形態の詳細な説明から自明となるであろう。本明細書と引用により組み込まれた文献とが相対するおよび/または矛盾する開示を含む場合、本発明が優勢であるものとする。引用により組み込まれた2つまたはそれ以上の文書が互いに相対するおよび/または矛盾する開示を含む場合、有効日が遅い方の文書が優勢であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】例示の実施形態に係る血液透析システムの流体処理構成要素の概略図である。
【図2】図1の透析システムの流体流を概略的に示す。
【図3】図2の実施形態の血流回路に関する流体流を概略的に示す。
【図4】図2の実施形態の平衡回路に関する流体流を概略的に示す。
【図5】図2の実施形態の方向付け回路に関する流体流を概略的に示す。
【図6】図2の実施形態の混合回路に関する流体流を概略的に示す。
【図7】例示の一実施形態の血液透析システムの右前斜視図である。
【図8】図7の血液透析システムの左後斜視図である。
【図9】図7の血液透析システムの前面図である。
【図10】ドアが第1の開放位置にあるときの図7の血液透析システムの右前斜視図である。
【図11】図10の血液透析システの上面図である。
【図12】図10の血液透析システムの前面図である。
【図13】図10の血液透析システムの右側面図である。
【図14】ドアが第2の開放位置にあるときの図7の血液透析システムの右前斜視図である。
【図15】図14の血液透析システムの上面図である。
【図16】図14の血液透析システムの前面図である。
【図17】ドアがシステムのフロントパネルを露出させる開放位置にあるときの図7の血液透析システムの前面図である。
【図18】図7のシステムと共に使用される血液回路アセンブリの前面図である。
【図19】図18の血液回路アセンブリ用の編成トレイの右斜視図である。
【図20】図18の血液回路アセンブリの左後斜視図である。
【図21】図7のシステムのフロントパネルの左前斜視図である。
【図22】図7のシステムのフロントパネルの前面図である。
【図23】透析器用の一対の搭載機能を有する図7のシステムのフロントパネルの前面図である。
【図24】透析器の透析液入口/出口ポートに装着される迅速接続継手を備えた透析器の側面図である。
【図25】図7のシステムと共に使用される試薬供給源の右斜視図である。
【図26】図25の試薬供給源用のE叉コネクタと血液透析システムのフロントパネル上の対応する接続点とを示す斜視図である。
【図27】血液回路アセンブリ用の一対の血液ラインコネクタと血液透析システムのフロントパネル上の対応する接続点とを示す斜視図である。
【図28】図27の血液ラインコネクタおよび接続点の側面図である。
【図29】ポッドポンプの斜視図である。
【図30】流体制御カセットの実施形態に組み込むことのできるポッドポンプの断面図である。
【図31】流体制御カセットの実施形態に組み込むことのできるバルブの断面図である。
【図32A】積層構造のポッドポンプの上面図である。
【図32B】積層構造のポッドポンプの側面図である。
【図33A】積層構造のポッドポンプの上面図である。
【図33B】積層構造のポッドポンプの側面図である。
【図34A】ポッドポンプカセットの一実施形態の展開図である。
【図34B】ポッドポンプカセットの一実施形態の側面図である。
【図34C】ポッドポンプカセットの一実施形態の側面図である。
【図35A】ポッドポンプカセットの一実施形態を示す図である。
【図35B】ポッドポンプカセットの一実施形態を示す図である。
【図36A】図30に示す種類の2つのポッドポンプと図31に示す種類の多数のバルブとを各種流体路およびその他の構成要素と共に組み込む、本発明の例示の実施形態に係るポンプカセットを示す。
【図36B】図30に示す種類の2つのポッドポンプと図31に示す種類の多数のバルブとを各種流体路およびその他の構成要素と共に組み込む、本発明の例示の実施形態に係るポンプカセットを示す。
【図37】本発明の一実施形態に係るポンピングシステムの概略図である。
【図38A】本発明の一実施形態に係るポンピングサイクルの一連のステップを示すフローチャートである。
【図38B】体積算出および空気検出を実行するための図38Aのポンピングサイクルの一連のサブステップを示すフローチャートである。
【図38C】ポンプチャンバ内の気体の存在を検出するための図38Aのポンピングサイクルの一連のサブステップを示すフローチャートである。
【図39】平衡ポッドの例示の一実施形態を示す。
【図40】流体ラインの外側の熱壁に連結される感知プローブの例示の一実施形態を示す。
【図41】本発明の一実施形態に係るチューブ閉鎖部の斜視図である。
【図42】本発明の一実施形態に係る血液ポンプカセットの斜視図である。
【図43】図42に示す血液ポンプカセットの内側上部プレートの斜視図である。
【図44】図42に示す血液ポンプカセットの中央プレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の態様を例示的な実施形態を参考にして図面を参照しつつ説明する。図中、類似の符号は類似の要素を指す。
本発明の各種態様は、概して、血液濾過システム、血液濾過透析システム、血漿交換システムなどの、血液透析等の新システムに関する。したがって、本明細書に記載の各種システムおよび方法は血液透析に関連して説明されているが、その他の透析システムおよび/または血液または血漿などのその他の体液を処理可能な体外システムにも適用可能であると理解すべきである。
【0034】
以下に説明するように、血液透析システムは通常、血液流路と透析液流路とを含む。こうした流路内で、流体の流れは必ずしも線形である必要はなく、流体が流路の入口から流路の出口まで流れることのできる流路内に任意数の「枝路」があり得ることに留意すべきである。このような分岐の例を以下で詳細に説明する。血液流路において、血液は患者から引き出され、透析器を通過した後に患者に戻る。血液は透析器によって処理され、廃棄分子(たとえば、尿素、クレアチニンなど)と水は、血液から透析器の半透膜を介して、透析液流路によって透析器を通過する透析液溶剤へと至る。各種実施形態では、2つのライン(たとえば、動脈ラインと静脈ライン、すなわち、「二重針」流)を介して患者から血液を得ることができる、あるいは、場合によっては、血液を患者から抜き出し、同じ、つまりカテーテル針を介して戻すことができる(たとえば、2つのラインまたは内腔は両方とも同じ針内に存在することができる、すなわち、「二重内腔」流の形状)。さらに他の実施形態では、「Y」部位または「T」部位が使用され、2つの枝路(1つは抜きだした血液の流路用、もう1つは戻る血液用の流路、すなわち、「単一針」流の形状)を有する1つの患者との連結部を介して、患者から血液を抜き出し、患者へと戻す。患者は、犬、猫、猿などの人間以外の対象と人間とを含む、血液透析または類似の治療を必要とする任意の対象とすることができる。
【0035】
透析液流路では、新鮮な透析液が作製され、透析器を通過して、血液流路からの血液を処理する。さらに、透析液は、透析器内での血液処理のために、精密に、あるいは、いくつかの実施形態では、血液圧の少なくとも約1〜2%内に、均等化させることができる(すなわち、透析液と血液との間の圧力を均等化する)。場合によっては、血液流路と透析液流路との間の大きな圧力差(正または負)を維持することが望ましいかもしれない。透析器を通過した後、(後述するように)廃棄分子を含む使用済み透析液は、何らかの方法で廃棄される。透析液は、場合によっては「多通路」構成で再循環させることができ、これは、透析器を横断する低移動度の比較的大きな分子を捕捉するのに好都合であるかもしれない。場合によっては、電気抵抗ヒータなどの適切なヒータを用いて、透析器内の血液を処理する前に透析液を加熱することができる。たとえば、限外濾過フィルタを用いて、汚染物質、感染性微生物、屑などを除去するために、透析液を濾過することもできる。限外濾過フィルタは、上記のような種が通過してしまうのを防ぐように選択された孔径を有することができる。たとえば、孔径は、約0.3マイクロメートル未満、約0.2マイクロメートル未満、約0.1マイクロメートル未満、または約0.05マイクロメートル未満などにすることができる。透析液は浸透または対流輸送により、廃棄分子(たとえば、尿素、クレアチニン、カリウムなどのイオン、リン酸塩など)と水とを血液から抜き出し透析液内に送るために使用され、透析溶液は当業者にとって十分既知である。
【0036】
透析液は通常、正常な血液と同様の濃度で、ナトリウム、塩化物、重炭酸塩、カリウム、およびカルシウムなどの各種イオンを含有する。場合によっては、重炭酸塩は、正常な血液中の濃度よりやや高い濃度を有する場合がある。通常、透析液は、給水器からの水と1つまたは複数の成分とを混合することによって作製される。ここで、1つまたは複数の成分とは、「酸」(酢酸、デキストロース、NaCl、CaCl、KCl、MgClなどの様々な種を含み得る)や、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)や、および/または塩化ナトリウム(NaCl)である。適切な塩濃度、重量オスモル濃度、pHなどの利用を含む透析液の作製は、当業者にとっては十分既知である。以下詳細に説明するように、透析液は、透析液が血液を処理するのに使用されるのと同じ時間に作製する必要はない。たとえば、透析液は透析と同時または透析前に作製し、透析液保存容器などに保管しておくことができる。
【0037】
透析器内で、透析液と血液は通常、半透膜によって分離される。通常、半透膜は、血液処理中にイオンや小さな分子(たとえば、尿素、水など)の輸送を許すが、大量または対流輸送を許さない、セルロース、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのポリマーで形成される。場合によっては(高線束透析器など)、β2ミクログロブリンなどのより大きな分子が膜を通過する場合がある。また、場合によっては、たとえば、静水圧差が半透膜内で存在する場合、イオンと分子が対流によって透析器を通過する場合がある。
【0038】
本明細書で使用される「流体」は、流体の性質を備えるものすべてを意味し、空気などの気体や、水、水溶液、血液、透析液などの液体を含むがそれらに限定されないことに留意すべきである。
【0039】
図1は、発明の各種態様を組み込む血液透析システムの流体回路の概略ブロック図である。本例示の実施形態では、透析システム5は、患者から血液を抜き出し、血液を透析器14に通過させ、処理済み血液を患者に戻す血流回路141を備える。平衡回路または内部透析液回路143は、限外濾過フィルタ73から透析液を受け取り、透析液を透析器14に通過させ、透析器14から使用済み透析液を受け取る。方向付け回路または外部透析液回路142は、新鮮な透析液を限外濾過フィルタ73に供給し、(排水口31へと方向づけられる)内部透析液回路143から使用済み透析液を受け取る。方向付け回路142は、給水源30から水を受け取り、その水を混合回路25に流すこともできる。混合回路25は、方向付け回路142からの水と、再生可能な源からも受け取ることの可能な、クエン酸、塩、および重炭酸塩などの試薬成分49とを用いて透析液を形成する。混合回路25は、たとえば、必要に応じて、透析中および/または透析前に透析液を作製することができる。混合回路25によって作成された新たな透析液は、方向付け回路142に供給され、その方向付け回路142が、上述するように透析液を限外濾過フィルタ73に供給することができる。方向付け回路142は、透析液を適切な温度に加熱する、および/または消毒用システム内の流体を加熱するヒータを含むことができる。たとえば、血液透析システムの消毒のため、血流回路141と方向付け回路142との間を管路67(点線で表示)で接続することができる。
【0040】
図2は、図1に示す透析システム5用のより詳細な回路配置を示す概略図である。当然ながら、図2は図1の一般的な血液透析システムのうち1つの可能な実施形態にすぎず、他の実施形態では、その他の流体回路、モジュール、流路、レイアウトなどが可能であると理解すべきである。
【0041】
血流回路141は、抗凝血剤供給源11と、血液を患者から透析器14を通じて送出し、該血液を患者に戻す血流ポンプ13とを備える。抗凝血剤供給源11は、透析器に向かって流れる血液路では図示されていないが、血流ポンプ13の上流または下流の任意の位置などの別の適切な位置に配置することができる。平衡回路143は、透析液を透析器14に圧送する2つの透析液ポンプ15と、バイパスポンプ35とを備える。血流回路141を通る血液流は、場合によっては、透析液流路内の透析液流と同期する。一実施形態では、透析器14および平衡回路143を出入りする透析液流は、平衡回路143の平衡チャンバを用いて平衡を保たれる。方向付け回路142は、透析液タンク169からヒータ72および/または限外濾過フィルタ73を介して平衡回路143まで透析液を圧送する透析液ポンプ159を備える。また、方向付け回路142は、平衡回路143から廃液を受け取り、それを排水口31へと方向付ける。場合によっては、血流回路141は、たとえば上述したように消毒のために、管路67を介して方向付け回路142に接続することができる。透析液タンク169内の透析液は混合回路25によって供給される。混合回路25は、方向付け回路142を介して供給される給水源30からの水と透析液成分49(たとえば、重炭酸塩と酸)とを用いて透析液を生成する。一連の混合ポンプ180、183、184は、各種成分を混合して透析液を生成するために使用される。
【0042】
図3は、本例示の実施形態の血流回路141の近接図である。通常動作時、血液は患者から血流ポンプ13を介して動脈ライン203を通り透析器14まで流れる(通常の透析中の流れの方向は矢印205で示す。しかし、いくつかの動作モードでは、後述するように、流れは別の方向を取る場合がある)。任意に、抗凝血剤供給源から抗凝血剤ポンプ80を介して血液中に抗凝血剤を導入することができる。透析器14を通過し透析を受けた後、血液は、任意にエアトラップおよび/または血液サンプルポート19を通過し、静脈ライン204を通って患者へと戻る。ポンプ13は、たとえば、制御流体によって作動されるポンプ23を含むことができる。
【0043】
たとえば、一実施形態では、血流ポンプ13は、2つ(またはそれ以上)のポッドポンプ23を備えることができる。本実施例では、各ポッドポンプは、各チャンバをポンプコンパートメントと制御コンパートメントとに分割する可撓性の隔膜または膜を有する剛質チャンバを備えることができる。これらのコンパートメントには4つの入口/出口バルブを設けることができ、2つはポンプコンパートメント用、2つは制御コンパートメント用である。チャンバの制御コンパートメント用バルブは双方向比例バルブとすることができ、一方は第1の制御流体源(たとえば、高圧空気源)に接続され、他方は第2の制御流体源(たとえば、低圧空気源)または真空源に接続される。ポッドポンプ23の動作中、流体バルブは流体の流れを方向づけるために開放および閉鎖することができる。
【0044】
図29は、本発明で使用可能な往復動容積式(positive-displacement )ポンプ625の一例を示す。本実施形態では、往復動容積式ポンプ625は、より大きなポンピングシステムの一部品として使用可能な略内蔵型のユニット(以降、「ポッド」と称することもある)である。往復動容積式ポンプ625は、「上」部(「ポンプチャンバ壁」とも称する)631と、「下」部(「制御チャンバ壁」とも称する)632とを含み、たとえば超音波溶接またはその他の技術によって、それらが共にポッド壁630で連結する。「上」および「下」という用語は相対的なもので、ここでは図29に示す配向を参照して便宜上使用されていることに留意されたい。これらの部分631および632はそれぞれ好ましくは(必ずではないが)半球状の剛質内部表面を有するため、ポッドは好ましくは(必ずではないが)球状の内部腔を有する。
【0045】
図29に示す実施形態では、制御チャンバ壁632は一体型構造であり、ポンプチャンバ壁631は、たとえば、(後述するように一体型バルブの組み立てを容易にする)超音波溶接またはその他の技術によって外周2052に沿って連結される2つの半分から成る。ポンプチャンバの2つの部分が成形される際、この設計は、まくれやバリを最小限にすることができ、より優しいポンプ環境を呈する可能性が高い。本実施形態は、剪断力に弱いためにまくれやバリを回避すべきである流体と共に使用するのに好都合である。
【0046】
典型的な流体ポンピング動作中、空気圧インタフェース638に負の空気圧を印加すると、ポンプチャンバを拡張し、入口634を通って流体をポンプチャンバに引き込むように、膜633が制御チャンバ壁632の方に後退するようになる。一方、正の空気圧を印加すると、ポンプチャンバを縮小し、出口637を通って流体をポンプチャンバから排出するように、膜633がポンプチャンバ壁631の方に押し出されるようになる。上記ポンピング動作中、ポンプチャンバ壁631および制御チャンバ壁632の内部表面は、前後に往復動しながら膜633の動きを制限する。図29に示す実施形態では、ポンプチャンバ壁631および制御チャンバ壁632の内部表面は剛質で、滑らかで、略半球状である。ポンプチャンバが最大値に近づくにつれ膜の動きを制限するため、剛質の制御チャンバ壁632の代わりに、別の剛質の制限構造、たとえば、空気圧を供給するのに使用される枠部および/または1セットのリブを使用してもよい。よって、剛質の制限構造、すなわち、剛質の制御チャンバ壁632、枠、または1セットのリブなどは、ポンプチャンバが最大値に達するときの膜633の形状を画定する。一つの好適な実施形態では、膜633(剛質の制限構造に押しつけられたとき)とポンプチャンバ壁631の剛質の内部表面とは、ポンプチャンバの体積が最大に達したときの回転楕円体状ポンプチャンバの体積を規定する。
【0047】
よって、図29に示す実施形態では、膜633の動きは、ポンプチャンバ壁631と制御チャンバ壁632によって制限される。空気圧ポート638を通じて供給される正圧および負圧が十分に強い間は、膜633は制御チャンバ壁632によって制限される位置からポンプチャンバ壁631によって制限される位置に移動する。膜が強制的に制御チャンバ壁632に対して押し付けられると、膜とポンプチャンバ壁631がポンプチャンバの最大体積を規定する。膜が強制的にポンプチャンバ壁631に対して押し付けられると、ポンプチャンバは最小の体積となる。
【0048】
一つの好適な実施形態では、最大体積のときにポンプチャンバが球状となるように、ポンプチャンバ壁631と制御チャンバ壁632はいずれも半回転楕円体形である。より好適には、最大体積のときポンプチャンバが回転楕円体形となるように、ポンプチャンバ壁631と制御チャンバ壁632はいずれも半球形である。最大体積のとき回転楕円体形、特に球形となるポンプチャンバを使用することによって、ポンプチャンバ全体に流れを循環させることができる。したがって、このような形状は、ポンプチャンバ内に流体の停滞ポケットができるのを防止するものとなる。さらに後述するように、入口634および出口637の配向(それぞれポンプチャンバ壁631の内部表面にほぼ接する)は、ポンプチャンバを通る流体の循環を向上させ、流体の停滞ポケットが形成される可能性を低減するものとなる。さらに、他の体積形状と比較して、球形(概して回転楕円体形)は、流体がポンプチャンバに出入りしたり、ポンプチャンバを通ったりする際に、剪断や乱流を起こす傾向が少ない。
【0049】
ポッドポンプの構成要素は、射出成形、圧縮成形、一体成形、熱成形、機械加工などを含むがそれらに限定されない多数の製造方法のうちいずれかを用いて製造することができる。いくつかの実施形態では、機械加工される場合にポッドポンプチャンバは、機械的な固定具を用いて共に融合する、あるいは熱融合することができる。使い捨て可能ポンプの一実施形態では、ポンプハウジングは、PETE、PETG、およびPETを含むがそれらに限定されない材料製の薄膜から作製される。これらの実施形態では、ハウジングは、熱成形、真空または圧力成形することができ、ポンプ膜はハウジングに熱封止可能なプラスチック薄膜で形成される。いくつかの実施形態では、ポンプハウジングは多層膜である。本実施形態は、ポンプハウジングを別の構成要素に接合する助けとなる。
【0050】
図30は、本発明の別の実施形態に係る、より大きな流体制御カセットに組み込むことができる別のポッドポンプ2025の断面図である。本実施形態では、ポッドポンプは3つの剛質片、すなわち「上部」プレート2091、中央プレート2092、および「下部」プレート2093から形成される(「上部」および「下部」という用語は相対的なもので、ここでは図30に示す配向を参照して便宜上使用していることに留意されたい)。上部および下部プレート2091,2093は両面とも平坦であり、中央プレート2092には、様々な流体路、チャンバ、およびポートを画定する通路、窪み、および穴が設けられている。ポッドポンプ2025を形成するため、上部および下部プレート2091,2093は、共に半回転楕円体状チャンバを画定する略半回転楕円体状の部分を含むことができる。
【0051】
膜2109はポッドポンプの中央腔を、圧送される流体を受け取るチャンバ(ポンプチャンバ)と、ポンプを空気圧で作動する制御ガスを受け取る別のチャンバ(作動チャンバ)とに分離する。流体は、入口2094からポンプチャンバに入り、出口2095からポンプチャンバを出ることができる。入口2094および出口2095は、中央プレート2092と下部プレート2093の間に形成することができる。空気圧は空気圧ポート2106を通って供給されて、ポッドポンプ腔の一方の壁に対し正圧で膜2109を押しつけてポンプチャンバの体積を最小限にする(図30に示す)、あるいはポッドポンプ腔の他方の壁の方に負圧で膜を引っ張り、ポンプチャンバの体積を最大限にする。
【0052】
膜2109には、中央プレート2092の溝2089に堅く保持される厚いリム2088が設けられる。よって、上部プレート2091が中央プレート2092に超音波溶接される前に、膜2109が配置されて溝2089によって保持可能であるため、膜は2つのプレートの超音波溶接に干渉せず、膜の固定は、2つのプレートが極めて正確に超音波溶接されることには左右されない。よって、超音波溶接中、非常に厳密な公差を必要とせずにポッドポンプを製造することができる。
【0053】
1つまたは複数のポッドポンプ2025を、1つまたは複数のバルブ2000を含む単一のカセットに組み込むことができる。図31は、上記カセットの実施形態で使用可能な空気圧制御バルブ2000の断面図である。膜2090は中央プレート2092と共にバルブチャンバ2097を画定する。空気圧を空気圧ポート2096を介して供給し、正のガス圧で膜2090をバルブシート2099に押しつけてバルブを閉鎖する、あるいは負のガス圧で膜をバルブシートから離れるように引いてバルブを開放することができる。制御ガスチャンバ2098は、膜2090、上部プレート2091、および中央プレート2092によって画定される。中央プレート2092はその上に窪みを有し、膜の一方の側に制御ガスチャンバ2098を、膜の他方の側にバルブチャンバ2097を形成するように、窪み内へ膜2090を配置する。
【0054】
空気圧ポート2096は、上部プレート2091と共に、中央プレート2092の「上」面に形成される通路によって画定される。カセット内のいくつかのバルブチャンバ間に流体連通を提供することによって、すべてのバルブを単一の空気源によって同時に開放または閉鎖できるように、バルブをひとまとめにすることができる。中央プレート2092の「下」面に形成された通路が、下部プレートと共にバルブ入口2094およびバルブ出口2095を画定する。中央プレート2092を通じて形成された穴は、入口2094とバルブチャンバ2097(バルブシート2099を介して)との間、およびバルブチャンバと出口2095との間の連通を提供する。
【0055】
膜2090には、中央プレート2092の溝2089に堅く嵌合する厚いリム2088が設けられる。よって、上部プレート2091が中央プレート2092に超音波溶接される前に、膜2090が溝2088内に配置されて溝2088によって保持されるため、膜は2つのプレートの超音波溶接に干渉せず、膜の固定は、2つのプレートが極めて正確に互いに超音波溶接されることに左右されない。よって、超音波溶接中、非常に厳密な公差を必要とせずに、このバルブを製造することができる。図31に示すように、上部プレート2091は、膜2090が溝2089の離れる方向に付勢されすぎることを防ぎ、膜の厚いリム2088が溝2089から飛び出すのを防ぐように、制御ガスチャンバ2098内へ延びる追加材料を含むことができる。
【0056】
本実施形態ではポッドポンプは回転楕円体形であるが、さらに別の実施形態では卵型などの所望の形状を取ることができる。ポッドポンプの多くの実施形態は、ポンプチャンバ、作動チャンバ、隔膜(または可動部材)、少なくとも1つの作動ポート、および少なくとも1つの入口/出口ポートを備える。いくつかの実施形態では、ポッドポンプは入口ポートおよび出口ポートを備える。様々な各種実施形態を本明細書で説明しており、一実施形態に関して説明した機能は、どの実施形態にも利用可能であると理解すべきである。よって、実施形態の機能は混合し、合致させることができ、どの実施形態も本明細書に記載の機能のうち1つまたはそれ以上を備えることができる。
【0057】
図32Aおよび32Bを参照すると、ポンプチャンバカバー3302と、作動チャンバカバー3304と、中央プレート部3306とを有するポッドポンプ3300の別の実施形態が示されている。本実施形態では、中央プレート3306および作動チャンバカバー3304は、隔膜3308と1つまたは複数の二次隔膜3310または3312とを保有する。二次隔膜は受動的に動作する、あるいは気体、液体、または機械力により作動されて、ポンプチャンバカバー流体路3314を通る流体の流れを制御する活性バルブとしての役割を果たすことができる。ポッドポンプ3300の本実施形態では、流体路3314は、隔膜3308の位置に関係なく流体が流路3314を流れるように、ポンプチャンバカバー3302内に形成される。他の実施形態と同様、本実施形態では、ポンプチャンバカバー3302、作動チャンバカバー3304、および中央プレート3306は、一実施形態ではプラスチック製だが、他の実施形態では、金属やガラスを含むがそれらに限定されない他の材料製であってもよい。例示の一実施形態では、カバー3302,3304と中央プレート3306とはポリスルホンからなる。別の例示の実施形態では、それらは医療等級ポリカーボネート製である。本実施形態では、ポンプチャンバカバー3302、作動チャンバカバー3304、および中央プレート3306はレーザ溶接によって接合する、あるいは選択された構成要素の材料や所望のポッドポンプの用途に適した様々なその他の方法によって接合することができる。その他の接合の可能性としては、スナップ嵌めタブ、プレス嵌め、スナップ嵌め、溶剤溶接、加熱溶接、電磁溶接、抵抗溶接、RF溶接、ネジ、ボルト、超音波溶接、接着剤、使用の際にポンプに隣接する構成要素による締付け、または当該技術によって一般的に使用されるその他の接合方法などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0058】
図33Aおよび33Bを参照すると、ポッドポンプ3400の一実施形態が示されている。本実施形態では、入口ポートおよび出口ポートはポンプチャンバ3406の対向端に配置され、ポンプの構造または意図する用途に応じて相互に交換可能である。隔膜3408は、ポンプチャンバ3406内にほぼ完全に拡張して示されている。本実施形態では、作動チャンバ3410内で流体圧によって完全に作動されるとき、入口および出口ポート3402および3404は隔膜3408により部分的または完全に遮断させられる。入口ポートまたは出口ポートの遮断は、特定用途で所望されるように、ポンプチャンバ3406を通る対象流体の流れを制限する、あるいは切り替える役割を果たすことができる。本実施形態では、隔膜3408のポンプ側、すなわち、隔膜3408が対象流体に接触する側は滑らかで、複数の対象流体に異なる流れの特徴を提供するか、あるいは、隔膜が完全にポンプチャンバ3406内にまで拡張して入口または出口ポート3402、3404を通る流れの低減が所望されるとき、隔膜3408とポンプチャンバ3406との間の異なる接触を提供することができる。いくつかの実施形態では、隔膜は、図33Bに示されるように可変の断面厚を有する。選択された隔膜材料の強度、柔軟性、およびその他の特性に対応するように、薄い、厚い、または可変の隔膜厚を使用することができる。また、隔膜を管理することによって、ある領域よりも別の領域で隔膜を撓め易くし、ポンプチャンバ3406内の対象流体のポンプ動作および流れの管理を助けるために、薄い、厚い、または可変の隔膜壁厚も使用することができる。本実施形態の隔膜3408は、中心部に最も近い断面領域が最も厚く示されている。しかしながら、断面が変動する隔膜3408を有する他の実施形態では、最も厚い領域と最も薄い領域を隔膜3408上の任意の位置に置くことができる。よって、たとえば、最も薄い断面を中心に配置し、最も厚い断面を隔膜3408の外周に近く配置することができる。さらに別の構造も可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポッドポンプは、機械、装置、または容器に集積または装着される装置に組み込まれる。本実施形態の一例は、集積ポッドポンプと、流体路と、流体ポートと、作動ポートと、作動流体路とを有するカセットである。図34A〜34Cおよび35A、35Bを参照してカセットの2つの実施形態を説明する。同様の原理を利用して、様々な数および構成のポンプ、バルブ、および流路を有する多くの追加実施形態が構築可能であると理解される。
【0060】
図34A〜34Cを参照して、ポッドポンプカセット4300の一実施形態を説明する。図34Aを参照すると、本実施形態のポッドポンプカセットは2つのポッドポンプ4310を備える。ポッドポンプ4310は任意のポッドポンプ実施形態でよいが、本例示の実施形態では、ポッドポンプ4310は図32および図33に示すポッドポンプに類似している。カセット4300は、作動プレート4320と、中央プレート4330と、ポンプチャンバプレート4340の3つのプレートを備える。
【0061】
作動プレート4320は、ポッドポンプ4310毎に、ポッドポンプ作動チャンバハウジング部4312と2つのバルブ作動ハウジング部4314とを備える。バルブ作動ハウジング4314はバルブ作動ポート4316を備える。ポッドポンプに加えて、カセット4300は、いくつかの実施形態では、様々な流体をポンプで送り出す、あるいは送り込まれる追加のポートおよび/または容器を備えることができる。
【0062】
中央プレート4330は、ポッドポンプ毎に、ポンプ隔膜4332と2つのバルブ隔膜4334とを備える。図示する実施形態では、バルブは、流体によって、本実施形態では空気圧によって作動される隔膜4334により作動されるボルケーノまたは活性バルブである。さらに、中央プレート4330の追加隔膜が、カセット4300の実施形態に示されている。
【0063】
ポンププレート4340を参照すると、各ポッドポンプ4310は、一体化流体路4344を含むポンプチャンバハウジング4342を備える。ポンプチャンバハウジング4342は、外側流体路4346と流体連結する。本例示の実施形態では、3つのプレート4320、4330、4340は共にレーザ溶接される。ただし、他の実施形態では、いくつか上述したように、様々な形式の装着を利用することができる。
【0064】
図34Bを参照すると、カセット4300の断面が示されている。バルブ隔膜4334、バルブ作動ハウジング部4314、および外側流体ライン4346を含むボルケーノバルブが示されている。バルブは、作動ポート4318を通る空気圧によって作動される。
【0065】
図34Cを参照すると、いくつかの実施形態では、エアフィルタ4350と追加の流体ライン4352をカセットに含めることができる。
カセットの別の実施形態を図35Aおよび35Bに示す。図35Aを参照すると、カセット4400は4つ以上の部分を含む。それらの部分は、中央プレートにレーザ溶接された複数カバー4412〜4416を有する中央プレート4410を含む。図34Aで4340として示されるポンププレートではなく、これらの複数カバー4412〜4416が使用される。図35Bを参照すると、中央プレート4410が再度示されている。しかし、本実施形態では、図34Aで4320として示される単一の作動プレートではなく、複数カバー4442〜4444が使用される。図35A〜35Cは一実施形態を示し、他の実施形態では、複数カバーの数は変更可能である。
【0066】
図36Aおよび36Bに示す実施形態では、図34A〜34Cに示す種類の2つのポッドポンプ2025a、2025bと図31に示す種類の多数のバルブ2000a〜2000dとが、様々な流体路およびその他の構成要素と共にポンプカセット2015に組み込まれている。ポンプカセット2015は、流体路2007,2009を介してポッドポンプ2025aと、流体路2008,2010を介してポッドポンプ2025bと流体連通する共通の入口2005を備える。ポンプカセット2015は、流体路2011,2013を介してポッドポンプ2025aと、流体路2012,2014を介してポッドポンプ2025bと流体連通する共通出口2006も備える。よって、ポッドポンプ2025a,2025bは、共通の入口2005から流体を引き出し、その流体を共通出口2006へ圧送する。一方で、バルブ2000aは、流体路2008と流体路2010との交点(すなわち、ポッドポンプ2025bへの入口)で流体流を制御するのに使用される。バルブ2000bは、流体路2007と流体路2009との交点(すなわち、ポッドポンプ2025aへの入口)で流体流を制御するのに使用される。バルブ2000cは、流体路2011と流体路2013との交点(すなわち、ポッドポンプ2025aの出口)で流体流を制御するのに使用される。バルブ2000dは、流体路2012と流体路2014との交点(すなわち、ポッドポンプ2025bの出口)で流体流を制御するのに使用される。ポッドポンプ2025a,2025bはそれぞれ各自の空気圧インタフェース2106a,2106bを有する。さらに、バルブ2000a〜2000dはそれぞれ各自の空気圧インタフェース2096a〜2096dを有する。よって、各ポッドポンプおよび各バルブは、基地局によって個々に制御可能である。
【0067】
2つ以上のポッドポンプが存在する場合、ポッドポンプは、任意の適切な形で、たとえば同時に、非同期で、一致して、ずれて動作させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、2つのポンプがポンピングサイクルに影響を及ぼすようにずれて動作することができ、たとえば、1つ目のポンプチャンバが満ちる一方、2つ目のポンプチャンバが空になる。所望のポンピングサイクルを付与するため、0度(ポッドポンプが一致して満ちたり、空になる)と180度(一方のポッドポンプが満ちる間、他方のポンプが空になる)との間の任意の位相関係を選択することができる。180度の位相関係は、ポッドポンプのセットを出入りする連続的な流れを生み出すことができる。たとえば、二重針または二重内腔カテーテル流と使用するために連続流が所望される場合、これが有益である。しかしながら、単一針/単一内腔流の場合には、0度の位相関係を設定することが有益である。0度の関係の場合、ポッドポンプは最初に針から充填され、次に血液流路を通って血液を運び、同じ針を用いて患者に血液を戻す。また、透析器全体での押し/引き関係(血液透析または連続的バックフラッシュ)を達成するには、場合によっては、0度〜180度間の位相の実行を利用することができる。
【0068】
抗凝血剤(たとえば、ヘパリンやその他の適切な抗凝血剤)はバイアル(vial)11(またはチューブやバッグなどのその他の抗凝血剤供給源)内に含有させることができ、血流回路141は、バイアルの封(seal)を貫通することのできるスパイク201(一実施形態では、針である)を備えることができる。スパイク201は、プラスチック、ステンレス鋼、またはその他の適切な材料から形成でき、場合によっては消毒可能な材料製であってもよく、たとえば、材料は消毒の際の十分な高温および/または放射に耐え得る。
【0069】
場合によっては、計量チャンバとしての役割を果たす抗凝血剤ポンプ80は、血液回路への抗凝血剤の流れを制御するために使用することができる。抗凝血剤ポンプ80はポッドポンプまたは隔膜型計量ポンプであってもよい、および/または空気などの制御流体によって作動させることができる。たとえば、抗凝血剤ポンプ80は、チャンバをポンプコンパートメントと制御コンパートメントとに分割する可撓隔膜を有する剛質チャンバを備えることができる。チャンバの制御コンパートメント用の一方のバルブは第1の制御流体源(たとえば、高圧空気源)に接続し、他方のバルブは第2の制御流体源(たとえば、低圧空気源)または真空源に接続することができる。チャンバのポンプコンパートメント用のバルブは、制御コンパートメントと協調して開閉させることによって、血液への抗凝血剤の流れを制御することができる。1つの実施形態では、フィルタ81を通じて供給される空気が抗凝血剤ポンプ80によって血液流路に導入され、たとえば、抗凝血剤がバイアルから引き出される前または後にバイアル11内に空気を供給することができる。
【0070】
流体管理システム(「FMS」)の測定は、膜の一行程中にポンプチャンバを通って圧送される流体の体積を測定する、あるいはポンプチャンバ内の空気を検出するために使用することができる。例示の一実施形態では、抗凝血剤ポンプ、透析液ポンプ、またはその他の隔膜型流体ポンプによって送出される液体の体積は、充填行程の最後と送出行程の最後での体積測定を算出するのにチャンバ圧の変化を利用するFMSアルゴリズムを使用して判定される。充填行程の最後と送出行程の最後で算出された体積間の差を、実際の行程容積(stroke volume )を判定するために使用することができる。この実際の行程容積は、特定サイズのチャンバに関する予想行程容積と比較することができる。実際行程容積と予測行程容積が大きく異なる場合、行程が適切に完了しておらず、エラーメッセージを生成することができる。
【0071】
液体を圧送し、ポンプチャンバ内の気体の存在を検出するため、測定ガスを利用してポンプチャンバを作動するポンピングシステムの一実施形態を図37に概略的に示す。ポンピングシステム100は、固定量の測定ガスを含有する流体供給システム102と、システム内の測定ガスの体積を変更する機構とを備える。ポンピングシステム100は、ポンプチャンバ108と制御チャンバ110とを内部に配置する略剛質の容器106を備えるポンプ104も含む。ポンプチャンバ108および制御チャンバ110は流体的に2つのチャンバ間に配置される可撓膜112によって隔離される(すなわち、流体連通して配置することができない)ため、ポンプチャンバ108は制御チャンバ110に連結され、動作可能に結合される。このような膜は、(単に一例として)医療級ポリ塩化ビニルで構成することができる。
【0072】
本明細書で使用する「略剛質」という用語は、ポンピングシステムに印加される圧力下で実質上撓む、あるいは移動することのない材料またはその材料製の構成要素を指す。本明細書で使用する「制御チャンバ」という用語は、たとえば、体積チャンバに力を印加する目的で、好適な実施形態では、体積容器の体積に関連する測定パラメータを決定する目的で、ポンプチャンバなどの体積チャンバに連結されるか、あるいはそのような体積チャンバを具備するポンピングシステムのチャンバを指す。ポンピングシステムのチャンバまたはその他の構成要素に関連して本明細書で使用される「連結される」という用語は、チャンバまたは構成要素がポンピングシステムの別の構成要素に装着され、あるいは相互接続されて、ポンピングシステムの別の構成要素が、連結されるチャンバまたは構成要素の外部表面に力を印加することができることを指す。
【0073】
ポンピングシステム100によって圧送される液体は、入口バルブ116を含む入口ライン114を介してポンプチャンバ108に入る。液体は、ポンプチャンバ108から出口バルブ120を含む出口ライン118を通って所望の下流の目的地まで圧送することができる。制御チャンバ110は、制御チャンバ内の測定ガスの圧力を判定する圧力測定素子122を備える。本明細書で使用する「圧力測定素子」という用語は、流体圧を測定可能な信号またはパラメータに変換することのできる装置を指す。本実施形態で有効となり得る圧力測定素子は、トランスデューサ、圧力ゲージ、圧力計、圧電抵抗素子、および当業者にとって自明なその他の素子を含むが、これらに限定されない。
【0074】
ポンピングシステム100の制御チャンバ110の好適な実施形態は、通気バルブ126を内蔵する通気ライン124も備える。制御チャンバ110は、測定ガス入口ライン130を介して可変体積シリンダ128と流体連通して接続される。可変体積シリンダ128は、システム内に含有される測定ガスの体積を圧縮する、あるいは拡張するためにモータ133により移動および作動されるピストン132を内蔵する。
【0075】
ポンピングシステム100は好ましくは、システムの各種バルブ、圧力トランスデューサ、モータなどに電気的に接続され、好ましくは所望の動作シーケンスまたはプロトコルに従い上記構成要素を制御するように構成されたプロセッサ134を含む。プロセッサが本明細書の特定のタスクを実行するように「構成されている」という言及は、上記プロセッサが指定されたタスクを実行するのに適した回路、プログラミング、コンピュータメモリ、電気接続部などを備えることを指す。プロセッサは、適切なソフトウェア、特注設計のハードウェア、またはその組み合わせを有する標準的なマイクロプロセッサとして実装することができる。より詳細に後述するように、プロセッサ134は、システムの各種構成要素を動作させる制御回路に加えて、好ましくは、ポンプチャンバ108の体積に関連する測定パラメータを決定し、ポンプ104の動作中にポンプチャンバ108に含まれる気体の存在を検出するように構成された比較器を備える。本明細書で使用する「比較器」は、2つまたはそれ以上の測定パラメータまたはそこから得られるその他のパラメータの値を比較することのできる(たとえば、適切なプログラミングを備えた)プロセッサ、あるいはその回路または構成要素を指す。
【0076】
気体がシステム全体を移動できる実施形態が問題となる場合、ポンプチャンバ108は、入口ライン114が出口ライン118の上方に配置されるように、動作中に略垂直構造で配向される。こうした配向は、動作中にポンプチャンバ108内に存在し得る気体がポンプチャンバから出口ライン118を通って下流の目的地まで圧送されるのを防ぐのに有効である。その代わりに、ポンプチャンバ108内に含まれるガスはすべてポンプチャンバの上部、たとえば入口ポート136に隣接する領域に向かって上昇し、ポンプチャンバから圧送される前に、以下より詳細に説明するように、システムによって検出される。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポンプチャンバ108は、複数のスペーサ138を新規に内蔵する。スペーサ138は、ポンプチャンバ108内に含まれる液体が出口ライン118を通って圧送される際に、可撓膜112がポンプチャンバの内表面140に接触するのを防ぐ機能を果たす。ポンピング行程中、スペーサ138によって許容される可撓膜112の最大変位を、図37に点線442で示す。可撓膜112がポンプチャンバ108への最大変位を取るときですら、点線442に示されるように、スペーサ138がポンプチャンバ108に存在し得るガスを収容するデッドスペース144を生成することによって、気体がポンプチャンバを通って圧送されるのを防止することが分かる。スペーサ138は、ポンプチャンバ108の垂直配向と組み合わせられることで、以下でより詳細に説明するように、ポンプチャンバ108に存在し得る気体がポンプチャンバからより容易に除去されるようにポンプチャンバの上部へ上昇することを助ける。
【0078】
ポンピングシステム100のポンプチャンバ108は、可撓膜112をその上に配置する(たとえば、ポリアクリレートなどの剛質プラスチック製の)略剛質の壁145によって実質上画定されることで、体積チャンバを形成する。
【0079】
ポンプチャンバ108で液体を圧送するため、およびポンプチャンバ108内の気体の存在を検出するための図37に示すポンピングシステム100の動作方法の一実施形態を図38A〜38Cのフローチャートに示す。図38Aを参照して、ポンピングシステム100を利用する例示のポンピングサイクルを説明する。図示されるポンピングサイクルは、圧送および空気検出目的で、選択された圧力を膜112に印加するため、システム内の測定流体の圧力を変化させるピストン変位の変動を利用する。図示される実施形態は、測定されたあるいは既知の圧力および体積値からポンプチャンバの体積を判定するために状態式(たとえば理想気体の法則)も利用する。
【0080】
測定ガスの圧力−体積挙動を表す状態式を利用することによって、ポンプチャンバおよび/または制御チャンバの体積を、少なくとも部分的に、測定された圧力から判定する空気/気体検出プロトコルを採用する実施形態の場合、ポンプチャンバは好ましくは、弾性膜を備える可動面を含む。弾性膜が弛緩した平衡状態から伸張または変位させられるとき、弾性膜はその復元力により、膜の両側(すなわち、ポンプチャンバと制御チャンバ側)の圧力を互いに異ならせることができ、その場合、圧力差やさらには変位/伸張に対する抗力(膜に蓄えられる応力/弾性エネルギー)の差の度合いは、膜の弛緩した平衡状態からの伸張または変位の度合いに依存する。さらに、このような実施形態では、上述のポンプチャンバ内の空気/気体を検出する第1および第2の条件における印加力でのポンプ/制御チャンバの体積判定中、弾性膜に印加される測定ガスの圧力は、圧力が印加される前の平衡状態から、各条件によって異なる程度で弾性膜(空気/気体がポンプチャンバ内に存在する場合)を伸張させるため、所与のレベルの印加圧力に応じた、膜の応力およびさらなる変位への抗力は、第1の状態と第2の状態とで異なる(すなわち、第1および第2の条件での弾性膜の力/変位反応は非対称である)ことが好ましい。こうした実施形態では、制御チャンバ内の圧力とポンプチャンバ内の圧力の差は、平衡状態では、印加圧力の第1の条件と印加圧力の第2の条件とで異なる。こうした実施形態では、特定の物理的機構に拘束されず、上記第1および第2の条件で判定されるポンプ/制御量の測定中、異なるレベルの弾性膜の応力および緊張は、測定ガスの圧力−体積の挙動を、状態式により各条件に対して予測される挙動から少なくとも部分的に偏向させ、その偏向が、状態式を使用して各条件に関して判定されるポンプ/制御チャンバの体積の差を生みだす、および/または増大させると考えられる。
【0081】
いくつかの実施形態では、ガス検出のための体積判定中に利用される印加された測定ガス圧に対する弾性膜に応じた上記非対称を達成する、あるいは増大させる方法の1つは、体積測定のために膜に加圧された測定ガスを印加する前に、ポンプチャンバの可撓な弾性膜が、膜の両側への略均等な流体圧により、弛緩した平衡状態で得られる構造から既に伸張させられているときに体積判定ステップを実行することである。これは、たとえば、第1の条件での体積測定中には正の測定ガス圧、および第2の条件での体積測定中には負の測定ガス圧(あるいはその逆も可)を用いて、制御チャンバの方向での膜の変位によって、弾性膜が少なくともやや伸張させられる、好ましくは十分に伸張させられるように、ポンプチャンバを十分な液体で充填した後に空気/気体検出に関連する体積判定を実行することによって達成することができる。別の実施形態では、空気/気体検出に含まれる体積判定中の弾性膜の反応に対する所望の非対称は、異なる、好ましくは十分に異なる程度の膜への弾性伸張を与えるように選択される第1および第2の測定条件で実行される体積判定のため、弾性膜に印加される複数レベルの測定ガス圧を利用することによっても達成することができる。ポンプ/制御チャンバ体積算出手順に基づく状態式を利用するときに使用されるポンプチャンバの好適な実施形態は、少なくとも部分的に弾性膜から成る可動面を含むが、別の実施形態では、第1および第2の条件での体積測定中に表面に印加される測定流体圧が、表面での異なるレベルの応力と、制御チャンバおよびポンプチャンバ内での平衡圧の差とを生じさせる限り、非弾性可動面を使用することができる。このような実施形態は、たとえば、非弾性可動面または弛緩膜を使用することができるが、体積判定の第1の条件中に印加される測定流体圧が、最大限の許容変位まで表面/膜(ポンプチャンバ内にガスが存在する場合)を移動させるため、表面が印加力に応じてもうそれ以上自由に移動できず、応力が表面/膜で生成され、ポンプチャンバと制御チャンバ間に圧力差が存在する場合に限られる。こうした実施形態の第2の条件での体積測定は、異なる測定流体圧を表面に印加することができ、その圧力が表面/膜(ポンプチャンバ内に気体が存在する場合)を移動させて、表面/膜内の応力を低減する、あるいは実質的に除去するものとなるため、平衡状態で、ポンプチャンバと制御チャンバ内の圧力差は低減される、あるいはほぼ除去される。
【0082】
図38のプロトコルを再度参照すると、最初は、ポンプチャンバ108が空にされ、弾性膜112はライン442によって定義される最大許容変位でポンプチャンバ108内に延在していると仮定される。ピストン132は、かなり左の移動位置(図37に位置1として示す)にあると仮定される。図38Aを参照すると、ステップ1(470)は、全バルブが閉鎖され、ピストン132および可撓膜112が上述の定位置にあるようにシステムを初期化することを含む。ステップ2(472)は、圧送される液体でポンプチャンバ108を充填することを含む。該ステップでは、最初に入口バルブ116を開放し、次に作動ピストン132を図37の位置3に移動するようにモータ133を作動させることによって、ΔVとして定義される量だけ、ポンプチャンバ108の体積を増加させる。次に、ポンプチャンバ108を隔離するために、入口バルブ116を閉鎖する。例示のポンピングサイクルのステップ3(474)は、ポンプチャンバ108内に含まれる気体の存在を検出する一連のサブステップを含む。ステップ3(474)を図38Bでより詳細に説明する。再度図38Aを参照すると、ポンピングサイクルのステップ4(208)は、ポンプチャンバ108に含まれる液体を送出することを含む。最初に、出口バルブ120が開放される。次に、モータ134が作動されてピストン132を位置3から位置1に移動させることによって、ΔVの体積の流体を送出する。次いで、出口バルブ120が、ポンプチャンバ108を隔離するために閉鎖される。ポンプチャンバ108によって移送される体積の判定精度が非常に重要である実施形態では、ステップ4(208)後のポンプチャンバ108の体積は、図38Bの体積算出および空気検出サブサイクルのサブステップ1〜4(476、478、480、482)を繰り返すことによって判定可能である。この場合、上述のポンピング行程で送出される体積は、ステップ3(474)とステップ5(210)で判定されるポンプチャンバ108の体積の差を取ることによって判定可能である。最後に、複数のポンプ行程が所望される場合、図38Aの全ポンピングサイクルを繰り返すことができる。
【0083】
図38Bおよび38Cは、図38Aのステップ3(474)に示される体積算出とガス検出方法の一実施形態を示す。サブサイクル474のサブステップ1(476)は、圧力トランスデューサ122で制御チャンバ110内の測定ガス圧P1を測定することと、プロセッサ134にその圧力を記録および記憶することとを含む。サブステップ2(478)で、ピストン132が位置3から位置1に移動されることによって、システム内に含まれる測定ガスの体積がΔVだけ低減される。サブステップ3(480)で、制御チャンバ110内の測定ガス圧が再度測定され、P2として記録される。システム内の測定ガスの圧縮のため、P2はP1よりも大きいと理解される。次に、サブステップ4(482)で、ポンプチャンバ108に含まれる流体の体積が、第1の条件のポンプチャンバで、利用される測定流体の適切な状態式を用いて判定される。空気などの測定ガスの場合、比較的低いポンピング圧(本発明に係るポンピングシステムによって使用される通常のポンピング圧は約−14psig〜約15psigである)を使用するシステムに関しては、理想気体の法則を採用することができる。測定ガスがシステムに追加されない、あるいはシステムから除去されないと認識し、理想気体の法則と質量保存の法則とを組み合わせて、ポンプチャンバ108内に含まれる流体の体積は、下記の式1によって判定される(図38Bのサブステップ4を参照)。
【0084】
VF1=VT−(P2ΔV)/(P2−P1)
式1は、測定ガスの体積を変化させることによって生じる温度変化または温度差が最小限であり、システムが略等温であると仮定する。温度変化が相当大きくなることのあるシステムの場合、使用される状態式によって定義されるように、当業者にとって自明である通り、測定流体の温度依存がサブステップ4(482)の体積算出に直接的に組み込まれる場合があると理解される。式1のVFはポンプチャンバ108の内体積を指し、VTはポンプチャンバ108、制御チャンバ110を含むシステムの体積と、測定流体入口ライン130およびシリンダ128に含まれる体積との既知の合計を指す。
【0085】
体積算出サブサイクル474の残りのサブステップは、異なる条件でポンプチャンバ108の体積を予め決定することと、第1および第2の条件で判定された体積を比較することとを含む。図38Bのサブステップ5(484)で、制御チャンバ通気バルブ126が開放されて、制御チャンバ110内の圧力と周囲大気とが均等化される。その後、通気バルブ126が閉鎖される。新たな圧力P1が、サブステップ6(486)で制御チャンバ110のトランスデューサ122を用いて測定される。サブステップ7(488)で、ピストン132が位置1から位置3まで移動させられることによって、システム内の測定ガスの体積がΔVだけ増大される。サブステップ8(490)で、大気圧以下となる制御チャンバ110内の新たな圧力P2が測定および記録される。サブステップ9(400)で、ポンプチャンバ108の体積VFが、サブステップ4(482)で上述したようにして算出される。サブステップ10(402)は、サブステップ4(482)で判定されるVFとサブステップ9(400)で判定されるVFとの差を判定することと、その差の絶対値を取ることとを含む。図38Cに示すサブステップ11(404)で、上記の差が、動作中にポンプチャンバ108に存在し得る最大許容量の空気またはその他の気体に比例する所定の限界と比較される。所定の限界は通常、デッドスペース144の体積を超える空気の体積が所定の限界をも超えるように実験的に決定され選択される。その差が所定の限界を超える場合、プロセッサ134は警告状態を生成し、空気パージを開始する。
【0086】
測定された体積の差が許容可能な限界未満である場合(404)、システムはポンプチャンバ108に含まれる液体を圧送するように進行する。サブステップ12(406)で、システムは、制御チャンバ110内の圧力と周囲大気圧とを平衡させるために制御チャンバ通気バルブ126を開放し、次に通気バルブ126を閉鎖する。ポンピングシステム100は現時点で、ポンプチャンバ108に含まれる液体を送り出す条件下にある。
【0087】
上述したように、2つの異なる条件下で測定された体積は、ポンプチャンバ内の気体の存在を検出するため比較することができる。気体の存在がポンプチャンバ内で検出され、図38Cのサブステップ11(404)で上述したようにシステムに警告を発せさせるのに十分な量である場合、ポンピングシステム100は、上述したように所望の下流目的地に流体を送り出すよう進む代わりに、空気パージを開始する。空気パージ中は、流体がポンプチャンバ108から圧送されている間に出口バルブ120が開放される代わりに、入口バルブ116が開放され、ポンプチャンバ内のガスを含む流体は、ポンプチャンバから入口ライン114を通って安全なパージ目的地に圧送される。
【0088】
血流回路141は、血液流路に存在し得る気泡を除去するためのエアトラップ19も備えることができる。場合によっては、エアトラップ19は、存在し得る空気を重力により血液から分離する、および/または血液をサンプリングするためのポートを含むことができる。
【0089】
図4は、図2の実施形態における平衡回路143の近接図である。平衡回路143では、透析液は、任意の限外濾過フィルタ73から透析液ポンプ15内へ流れる。本実施形態では、透析液ポンプ15は、2つのポッドポンプ161、162と、2つの平衡チャンバ341、342と、平衡チャンバ341、342をバイパスするポンプ35とを備える。平衡チャンバ341、342は、チャンバを2つの別個の流体コンパートメントに分割する可撓隔膜を有する剛質チャンバから形成され、一方のコンパートメントへの流体の進入が他方のコンパートメントから流体を追い出す(その逆も可)のに使用されるように構成される。平衡ポッドの例示の実施形態を図39に示す。平衡ポッドは、上述のポッドポンプと同様に構成される。しかし、平衡ポッドは、作動チャンバとポンプチャンバではなく2つの流体平衡チャンバを備え、作動ポートを備えていない。加えて、各平衡チャンバは入口1102および出口1104を備える。例示の実施形態では、平衡チャンバ壁1120、1122のそれぞれに溝1126が設けられる。溝1126を以下より詳細に説明する。膜1112は、2つのチャンバ間の封止を提供する。平衡チャンバは、両チャンバが均等な体積流量を維持するように、チャンバを出入りする流体流のバランスを取るように働く。各チャンバの入口1102および出口1104は同じ側に示されているが、他の実施形態では、各チャンバの入口1102および出口1104は異なる側にある。さらに、入口1102および出口1104は、平衡ポッドが組み込まれる流路に応じて、いずれかの側に配置することができる。
【0090】
一実施形態では、内部透析液回路内の流の平衡化は以下のように働く。1セットの空気式バルブ211、212、213、241、242は同期して共に制御されて動作し、バルブ211、212、213がひとまとめにされ、バルブ241、242がひとまとめにされており、第2セットの空気式バルブ221、222、223、231、232も同様に同期し共に制御されて動作し、バルブ221、222、223がひとまとめにされ、バルブ231、232がひとまとめにされている。第1の時点で、第1セットのバルブ211、212、213、241、242が開放され、第2セットのバルブ221、222、223、231、232が閉鎖される。新鮮な透析液が平衡チャンバ341に流れ込み、使用済み透析液が透析器14からポッドポンプ161に流れ込む。バルブ221が閉鎖されているため、新鮮な透析液は平衡チャンバ342に流れ込まない。新鮮な透析液が平衡チャンバ341に流れ込むにつれ、平衡チャンバ341内の使用済み透析液は追い出され、平衡回路143を出る(バルブ223が閉鎖されているため、使用済み透析液はポッドポンプ161に進入しない)。同時に、ポッドポンプ162は、ポッドポンプ内に存在する使用済み透析液を(開放されているバルブ213を通って)平衡チャンバ342内に押しやる(バルブ242、222は閉鎖されており、使用済み透析液は確実に平衡チャンバ342に流れ込む)。これにより、平衡チャンバ342内に含まれる新鮮な透析液は、平衡回路143を出て透析器14に入る。さらに、ポッドポンプ161が、透析器14からポッドポンプ161内へと使用済み透析液を引き出す。
【0091】
いったんポッドポンプ161および平衡チャンバ341が透析液で満たされると、第1セットのバルブ211、212、213、241、242が閉鎖されて、第2セットのバルブ221、222、223、231、232が開放される。バルブ221が開放される間、バルブ212が開放されるため、新鮮な透析液は平衡チャンバ341ではなく平衡チャンバ342に流れ込む。新鮮な透析液が平衡チャンバ342に流れ込むにつれ、バルブ213は現時点で閉鎖されているため、チャンバ内の使用済み透析液は追い出され平衡回路を出る。さらに、現時点でバルブ232が閉塞されバルブ222も開放されているため、使用済み透析液がポッドポンプ161に流れ込むのを防止されている間、ポッドポンプ162は透析器からポッドポンプ内へと使用済み透析液を引き出す。バルブ232、211が閉鎖され、バルブ223が開放されるため、ポッドポンプ161は(先のステップからの)ポッドポンプ内に含まれる使用済み透析液を平衡チャンバ341に押し込む。これにより、(現時点でバルブ241が開放され、バルブ212が閉鎖されているため)、平衡チャンバ341内に含まれる新鮮な透析液が透析器14内へと誘導される。このステップの最後で、ポッドポンプ162および平衡チャンバ342は透析液で満たされる。このため、システムの状態は本この説明の最初の構成に戻るので、サイクルを繰り返して透析器14との間で透析液の一定流を確保することができる。一実施形態では、平衡チャンババルブが適切に機能している(たとえば、開放と閉鎖)ことを保証するため、平衡チャンババルブの制御側にかかる流体(たとえば空気)圧が監視される。
【0092】
具体例としては、第1セットのバルブのポートに真空(たとえば、4psiの真空)を印加してそれらのバルブを開放させ、第2セットのバルブに正圧(たとえば、20psiの空気圧)を印加してそれらのバルブを閉鎖させることができる(またはその逆も可)。各ポッドポンプは、平衡チャンバ341、342の一方へ透析液を促す。透析液を平衡チャンバのある体積に押し込むことによって、同量の透析液が隔膜によって平衡チャンバの残りの体積から外へ絞り出される。各平衡チャンバでは、ある体積が新鮮な透析液によって占められて透析器へと向かい、残りの体積が透析器から来る使用済み透析液によって占められる。よって、透析器に入る透析液の体積と透析器から出る透析液の体積は略均等に保たれる。
【0093】
バイパスポンプ35は、ポッドポンプ161,162のいずれも通過せずに透析液流を透析器14から平衡回路143を通って方向付けることができる。本実施形態では、バイパスポンプ35は、剛質チャンバと、各チャンバを流体コンパートメントおよび制御コンパートメントに分割する可撓隔膜とを有する、上述したものと同様のポッドポンプである。このポンプは、上述したその他のポッドポンプおよび/または計量ポンプと同一であっても異なっていてもよい。制御流体がバイパスポンプ35を作動させるために使用されると、透析器の出ていく(使用済み)透析液の側にかかる圧力がさらに低下して、流体が透析器内の血液からさらに限外濾過される。これにより、正味の流体が患者の血液から透析器を通って最終的に排水口へと流出する。このようなバイパスは、たとえば、患者が腎臓を通じて余分な流体(主に水)を排出できないことにより増大し得る、患者の有する流体の量を低減する際に有効である。図4に示すように、バイパスポンプ35は、ポッドポンプ161,162の動作に関係なく、制御流体(たとえば、空気)によって制御することができる。この構造により、患者からの上記流体の除去を達成するため、透析液ポンプを血液ポンプと不均衡に、あるいは位相をずらして動作させる必要がなく、患者からの正味流体除去をより容易に制御することができる。
【0094】
透析器全体の流のバランスを取るため、血流ポンプ、平衡回路のポンプ、および方向付け回路(後述)のポンプを協働するように動作させて、透析器に入る流れが透析器を出る流れとほぼ均等になるように確保することができる。限外濾過を必要とする場合、限外濾過ポンプ(存在すれば)をその他の血液ポンプおよび/または透析液ポンプの一部または全部と関係なく動作させて、所望の限外濾過速度を達成することができる。
【0095】
透析液の気体発生を防止するため、平衡回路のポンプは大気圧を超える圧力下に保つことができる。しかしながら、対照的に、血流ポンプおよび方向付け回路ポンプは大気圧未満の圧力を使用して、隔膜をチャンバ壁の方に引き、充填行程を完了させる。流体が透析器の半透膜全域を移動し、また、平衡回路のポンプが正圧で動作するため、平衡回路ポンプは、平衡回路チャンバの透析器への送出行程と血液ポンプの送出行程とを同期させるために血流ポンプからの情報を利用することができる。
【0096】
一つの実施形態では、このような平衡化モードで動作する際、血流ポンプからの送出圧力がなければ、平衡回路ポンプの隔膜は透析器全域の流体を血液内へ押し出し、平衡回路の別のポッドは完全に充填しない。このため、血流ポンプは、能動的に一行程送出しているときに報告する。血流ポンプが一行程送出しているとき、内部透析液ポンプが動作する。血流ポンプが血液を送出していないとき、透析器から内部透析液ポンプへの流れを制御するバルブ(および、上述したようにこれらのバルブとひとまとめにされたその他の平衡化バルブ)を閉鎖して、透析液側から血液側への流体移送が発生するのを防止する。血流ポンプが送出していない間、内部透析液ポンプは有効に凍結され、いったん血流ポンプが送出を再開すれば、内部透析液ポンプの送出行程が再開される。内部透析液ポンプ充填圧は、ポンプが最小インピーダンスで大気圧を超えて動作することを確実にするため、最小の正の値に設定することができる。さらに、内部透析液ポンプ送出圧は、透析器のいずれかの側にかかる圧力とほぼ一致するように血流ポンポ圧に設定され、内部透析液ポンプの送出行程中の透析器を横断する流れを最小限にとどめることができる。
【0097】
別の実施形態では、内部透析液ポンプは、血液が透析器に送り出される圧力よりわずかに高い圧力で、透析液を透析器に送出する。これにより、完全にバランスのとれたチャンバの清浄な透析液が透析器に送り出される。戻り側では、内部透析液ポンプが、透析器の血液側の出口圧よりもわずかに低い圧力で、透析器からの使用済み透析液で満たし、収容透析液ポンプチャンバを確実に充填することができる。その結果として、平衡チャンバ内の全行程を完了させるのに十分な透析液を確保することができる。これらの圧力差によって生じた半透膜の横断流は、相殺し合う傾向にあり、それ以外の方法でポンピングアルゴリズムは、透析器の透析液側と血液側にかかる平均圧力を合致させようとする。
【0098】
停滞した血液流は血栓を起こす可能性があるため、治療中、血液流をできる限り連続的に保つことが通常有益である。また、血流ポンプの送出流量が非連続的である場合、平衡化ポンプはより頻繁に行程を一時停止し、結果的に非連続的および/または低透析液流量をもたらしかねない。しかし、血流ポンプを通る流れは、様々な理由で非連続的になる可能性がある。たとえば、患者に安全なポンピング圧を提供するため、圧力が血流ポンプ内で、たとえば、+600mmHGおよび/または−350mmHGに制限される場合がある。たとえば、二重針流の場合、血流ポンプの2つのポッドポンプは、互いに180度位相をずらして動作するようにプログラムすることができる。圧力に制限がない場合、この位相合わせは常に実行可能である。しかしながら、患者にとって安全な血流を提供するため、これらの圧力は制限される。(小型の針、粘度が非常に高い血液、わずかな患者アクセスなどのため)充填行程でのインピーダンスが高い場合、負圧の限界に達する場合があり、充填流速が所望の充填流速より遅くなる。よって、送出行程が先の充填行程が終わるのを待たなければならないため、結果的に血流ポンプの送出流速を一時停止することになる。同様に、単一針流の場合、血流ポンプが0度の位相で動作し、2つの血流ポンプのポッドポンプは同時に空になり充填される。両方のポッドポンプが充填されれば、2つのポッドポンプの体積が送出される。一実施形態では、一続きの作動で、まず第1のポッドポンプ、次に第2のポッドポンプが充填された後、まず第1のポッドポンプ、次に第2のポッドポンプが空になる。よって、単一針または単一内腔構造での流れは非連続的になることがある。
【0099】
圧力飽和限界を制御する方法の1つは、所望の流速を最も遅い充填行程および送出行程に制限することである。この結果、血液送出流速は遅くなるが、流速はいまだに既知であり、より連続的になり、より正確で連続的な透析液流速を可能にする。単一針動作で血液流速をより連続的にするもう1つの方法は、充填時間が最小限になるようにポッドを充填するのに最大圧を使用することである。次に、所望の送出時間を、所望の行程時間合計から充填行程にかかる時間を引いた時間に設定することができる。しかしながら、血液流が連続的でなくなるほど、血流ポンプが充填しているときに透析液ポンプが停止される時間を補うため、透析器への血液送出中に透析液流速を上方向に調節しなければならない。これが正確なタイミングで実行されれば、複数行程にわたる平均透析液流速は、所望の透析液流速に合致させることができる。
【0100】
図5は、図2の実施形態の方向付け回路142の近接図である。本実施形態では、方向付け回路142は、透析液ポンプ159を介して、透析液タンク169からヒータ72および限外濾過フィルタ73へ透析液を供給することができる。ヒータ72は、体温および/または血流回路内の血液が透析液によって加熱され、患者に戻る血液が体温以上となるような温度まで透析液を温めるために使用することができる。場合によっては、ヒータ72は制御システムに接続されて、不正確に加熱された透析液(すなわち、透析液が熱すぎるか冷たすぎる)がリサイクルされる(たとえば、透析液タンク169に戻される)、あるいは透析器へ送られる代わりに排水口へ送られる。ヒータ72は、いくつかの実施形態では、消毒または殺菌のために使用することもできる。たとえば、水を血液透析システムに通過させ、消毒または殺菌できる温度、たとえば、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃などの温度に加熱されるようにヒータを用いて加熱することができる。
【0101】
方向付け回路142を通る透析液流は、透析液ポンプ159の動作によって(少なくとも部分的に)制御することができる。また、透析液ポンプ159は、平衡回路143を通る流れを制御することができる。たとえば、上述したように、方向付け回路142からの新鮮な透析液は、平衡回路143の平衡チャンバ341,342に流れ込む。透析液ポンプ159は、新鮮な透析液をこれらの平衡チャンバに流れ込ませる駆動力として使用することができる。一つの実施形態では、透析液ポンプ159は、たとえば、上述したものと同様のポッドポンプを含む。透析液は、汚染物質、感染性微生物、病原菌、発熱物質、屑などを除去するために、たとえば限外濾過フィルタ73を用いて濾過することもできる。限外濾過フィルタ73は、たとえば図示するように、方向付け回路と平衡回路との間などの透析液流路内の適切な位置に配置することができる、および/または、限外濾過フィルタ73は方向付け回路または平衡回路に組み込むことができる。限外濾過フィルタが使用される場合、孔径は、種がフィルタを通過するのを防ぐように選択することができる。
【0102】
場合によっては、限外濾過フィルタ73は、フィルタからの廃棄物(たとえば、保持液流)が図5の廃棄物ライン39などの廃棄物流に送られるように動作し得る。場合によっては、保持液流に流れ込む透析液の量は制御され得る。たとえば保持液が冷たすぎる(すなわち、ヒータ72が機能していないか、あるいはヒータ72が透析液を充分な温度まで加熱していない)場合、全体透析液流(あるいは透析液の少なくとも一部)は廃棄物ライン39へと分岐され、任意で、ライン48を用いて透析液タンク169にリサイクルされ得る。フィルタ73からの流れは、たとえば、温度センサ(センサ251,252など)や伝導度センサ(透析液濃度の確認用、例えばセンサ253など)などを用いて、いくつかの理由で監視することもできる。
【0103】
図40を参照すると、例示の一実施形態では、センサプローブ6000および熱壁5100が、流体ラインの外部で連結されて示されている。熱壁5100は、流体ライン、保護スリーブ、使い捨て可能な機械、チャンバ、カセット、または容器内に置くことができる。しかし、本例示の実施形態の説明上、熱壁5100は、対象媒体の熱特性および/または伝導特性を判定するために使用される場合、任意の場所に置かれる。
【0104】
対象媒体は、熱壁5100の区域5402の外側に接触している。熱エネルギーは対象媒体から熱壁5100に伝達され、さらに感知プローブ6000の先端6002に伝達される。次に、熱エネルギーは熱センサ6014に伝達される。熱センサ6014はリード線6016を介して、熱センサ6014のフィードバックに基づき対象媒体の温度を判定することのできる機器と通信する。伝導度の感知も所望される実施形態では、リード線6018は対象媒体の伝導度を判定することのできる機器と通信する。対象媒体の伝導度の判定に関しては、リード線6018に加えて、第2の電気リード線/接触子(図示せず)も使用される。第2のリード線は、図40に示されるような第2のセンサ機器、もしくは、図40に示されるセンサ機器と必ずしも同一ではない第2のプローブ、電気接触子などの対象媒体の容量を感知できるプローブまたは装置であってもよい。
【0105】
限外濾過フィルタおよび透析器は、汚染物質、伝染性微生物、病原菌、発熱物質、屑などの除去のための余分なスクリーニング方法を提供することができる。したがって、患者の血液に達する前に、どんな汚染物質も限外濾過フィルタと透析器の両方を通過しなければならない。限外濾過フィルタまたは透析器のいずれか一方の完全性が損なわれた場合でも、透析液の無菌を維持し、汚染物質が患者の血液に入るのを防止することができる。
【0106】
方向付け回路142は、平衡回路から排水口へ、たとえば、廃棄物ライン39を通って排水口31へ使用済み透析液を送ることもできる。排水口は、たとえば、地方自治体の排水口または適切に処理されるように水(たとえば、使用済み透析液)を収容する別個の容器であってもよい。場合によっては、1つまたは複数のチェックバルブまたは「一方向」バルブ(たとえば、チェックバルブ215,216)が、方向付け回路142およびシステム5からの廃棄物流を制御するために使用される。さらに、ある例では、血液が透析器14を通って透析液流路に漏れ出しているかどうかを判定するために、血液漏れセンサ(たとえば、センサ258)を使用することができる。また、液体センサを血液透析部の底の回収皿に配置して、流体回路からの血液または透析液、あるいはその両方の漏れを表示することができる。
【0107】
方向付け回路142は、給水源30、たとえばバッグなどの水容器、および/または逆浸透装置などの水を生成することのできる装置から水を受け取ることができる。場合によっては、システムに入る水は、たとえば、特定値未満のイオン濃度を有する特定純度に設定することができる。方向付け回路142に入る水は、様々な位置、たとえば、新鮮な透析液を生成する混合回路25および/または廃棄物ライン39に送ることができる。場合によっては、排水口31および各種リサイクルラインへのバルブが開放され、管路67が方向付け回路142と血流回路141との間で接続されて、水が連続的にシステムを巡って流れる。ヒータ72が始動される場合、システムを通過する水は、たとえば、システムを消毒するのに十分な温度まで連続的に加熱される。
【0108】
図6は、図2の例示の実施形態における混合回路25の近接図である。方向付け回路142からの水は、ポンプ180の作用により混合回路25に流れ込む。本実施形態では、ポンプ180は、上述したものと同様の1つまたは複数のポッドポンプを含む。場合によっては、たとえば、重炭酸塩28などの成分を輸送する際に使用するため、水の一部が、混合回路25を通って試薬成分49へ方向付けられる。場合によっては、塩化ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウム28は粉末または顆粒状で供給され、ポンプ180によって供給される水と混合される。重炭酸塩源28からの重炭酸塩は、重炭酸塩ポンプ183を介して混合ライン186に送出され、混合ラインは方向付け回路142からの水も受け取る。酸源29からの酸(液体の形でもよい)も、酸ポンプ184を介して混合ライン186に圧送される。成分49(水、重炭酸塩、酸、NaClなど)は混合チャンバ189で混合されて透析液を生成し、その後、透析液は混合回路25を出て方向付け回路142へと流れる。伝導度センサ178,179は混合ライン186に沿って配置され、それぞれの成分が混合ラインに追加される際、適切な濃度で追加されることが確実となる。水ポンプ180および/またはその他のポンプによって送出される体積は伝導度測定値に直接関連するため、体積測定値は、生成される透析液の組成に関するクロスチェックとして使用することができる。これにより、たとえ伝導度測定値が治療中に不正確となっても、透析液の組成が安全性を維持するように確保される。
【0109】
図7は、本発明の各種態様を組み込む血液透析システム5の斜視図である。本発明の一態様によると、システム5は、共に接合して示されている透析部51と動力部モジュール52とを備える。本実施形態では、透析部51は、透析器、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプ、透析液源、および透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプなどの、血液透析を実行するのに適した構成要素を収容するハウジングを有する。たとえば、透析部51は、上述したように、混合回路25、血流回路141、平衡回路143、および方向付け回路142を備えることができる。透析部51は、システム5の動作に必要なすべての血液回路接続部および透析液流体接続部も備えることができる。患者アクセスおよびその他の接続部は、透析部51のハウジングの前側でハンドル54を介して縦型並列ドア53を開放することによって露出させることができる。本実施形態では、透析部51は、透析部51の動作を制御するのに使用可能な(本実施形態では、可撓ケーブルによってハウジングに装着される)制御インタフェース55を備える。制御インタフェース55は、接触感知オーバーレイを有する表示スクリーンを備え、接触制御と、スクリーンに提示されるグラフィカルユーザインタフェースとの相互作用とを可能にする。制御インタフェース55は、プッシュボタン、スピーカ、音声コマンドを受信するマイクロフォン、デジタルカメラなどのその他の機能を含むこともできる。制御インタフェース55の裏側には、制御インタフェース55を透析部51のハウジングの上に配置させることのできる格納式の「キックスタンド」(図示せず)を備えることができる。格納式「キックスタンド」の配備によって、制御インタフェース55は表示スクリーンを適切に視ることのできる略垂直位置に配置される。
【0110】
動力部52のハウジングは、透析部51に動作動力を与える、たとえば、ポンプ、バルブ、および透析部51のその他の構成要素に空気/真空を与えるのに適した構成要素を含むことができる。本明細書で使用する「空気圧」とは、可撓隔膜またはその他の部材を移動させるために空気やその他の気体を使用することを意味する。(空気は単に例として使用しており、他の実施形態では、窒素(N2)、CO2、水、油などのその他の制御流体を使用することができることに留意すべきである。)上述したように、透析部51のポンプおよびバルブは空気動力で動作するため、動力部52は透析部51による使用のために1つまたは複数の空気圧源を提供することができる。このように、透析部51は必ずしも必要な空気動力を生成および/または保管するように構成される必要はなく、その代わりに動力部モジュール52に頼ることができる。動力部52は、所望の空気圧および/または真空を生成する1つまたは複数の空気圧ポンプ、空気動力を保管する1つまたは複数のアキュムレータまたはその他の装置、バルブ、管路および/または動力部52における空気流を制御するその他の装置、並びに、プログラムされた汎用データプロセッサ、メモリ、(たとえば、圧力や温度などを検知する)センサ、リレー、アクチュエータなどの適切な構成要素を有するコントローラを備えることができる。
【0111】
一実施形態では、空気動力(たとえば、適切な圧力/真空下の空気)を、動力部52によって、1つまたは複数の供給タンクまたはその他の圧力源を介して透析部51に供給することができる。たとえば、2つのタンクが動力部52で使用される場合、一方の供給タンクは正圧リザーバとすることができ、一実施形態では、750mmHG(ゲージ圧)(1mmHGは約133.3パスカル)の設定点を有する。他方の供給タンクは真空または負圧リザーバとすることができ、一実施形態では、−450mmHG(ゲージ圧)の設定点を有する。ポッドポンプに対する可変バルブの正確な制御を可能とするため、たとえば、供給タンク圧と所要のポッドポンプ圧との間で、この圧力差を利用することができる。供給圧の限界は、可変バルブの制御のために十分な圧力差を提供するため、患者血流ポンプに対して設定し得る最大圧プラスマージンに基づき設定することができる。よって、場合によっては、2つのタンクは、透析部51の機能全部に対して、圧力を供給し、流体を制御するのに使用される。
【0112】
一実施形態では、動力部52は、供給タンクに供する2つの独立するコンプレッサを備えることができる。タンク内の圧力は、たとえば、実施形態に応じて、単純な「バングバング(bang-bang )」コントローラ(すなわち、オンまたは開放状態とオフまたは閉鎖状態との2つの状態で存在するコントローラ)、あるいはより高性能な制御機構などの適切な技術を用いて制御することができる。バングバングコントローラの一例として、正タンクの場合、実際の圧力が設定点より小さければ、正タンクに供するコンプレッサがオンとなる。実際の圧力が設定点より大きければ、正タンクに供するコンプレッサがオフとなる。設定点の項の符号が反転されることを例外として、同じ論理を真空タンクと真空コンプレッサの制御とに適用することができる。圧力タンクが調節されていない場合、コンプレッサがオフとなり、バルブが閉鎖される。
【0113】
圧力タンクのより厳密な制御は、ヒステリシスバンドのサイズを低減することによって達成できるが、その結果として、コンプレッサのサイクリング周波数が高くなる場合がある。これらのリザーバの非常に厳密な制御が要求される場合、バングバングコントローラは、コンプレッサ上でパルス幅変調(「PWM」)信号を使用して、比例積分導関数(「PID」)コントローラと置き換えることができる。その他の制御方法も可能である。
【0114】
他の実施形態ではその他の圧力源を使用することができ、場合によっては、2つ以上の正圧源および/または2つ以上の負圧源が使用される。たとえば、漏れを最小限にするために利用可能な異なる正圧(たとえば、1000mmHGと700mmHG)を供給する2つ以上の正圧源を使用することができる。たとえば、高い正圧を使用してバルブを制御できる一方、低い正圧を使用してポンプを制御することができる。これは、透析器または患者に送られる可能性のある圧力の量を制限し、ポンプの作動が隣接するバルブに印加される圧力を圧倒するのを防ぐ助けとなる。負圧の非限定的な例は−400mmHGである。場合によっては、負圧源は真空ポンプでもよく、正圧ポンプはエアコンプレッサでもよい。
【0115】
さらに、動力部52は、たとえば、異なる動力部52と交換できるように、透析部51に選択的に接続可能にすることができる。たとえば、透析部51は、電力を使用して空気動力を生成する動力部52や保管された空気動力(たとえば、1つまたは複数の高圧タンクに保管された加圧空気)を使用する動力部52などの様々な種類の動力部52と協働するように構成することができる。よって、動力部52は、故障やその他の要件の場合に、別のユニット52と交換することができる。たとえば、近くの人が眠っているときなど、ノイズの生成が許容不能である領域でシステム5を使用することが望まれる場合がある。この場合、ポンプまたはその他のノイズ生成機器を動作させることによって空気動力を生成するユニット52ではなく、保管された空気動力を使用する動力部52を使用する方が望ましい。図8に示すように、動力部52は、ハンドル521の操作によって透析部51から切断することができる。たとえば、ハンドル521を回して、透析部51から動力部52を解錠し、ハウジング間の機械的接続だけでなく、両者間の動力および/または通信接続も切断することができる。透析部51と動力部52との間のインタフェース(図示せず)によって、空気動力(動力部52から透析部51へ)、並びに、電力、制御通信などをユニット間でやり取りすることができる。透析部51は、電力(たとえば、家庭用電源コンセントにおける標準的な115V、15Ampの電力)、外部通信(イーサネット(登録商標)や通信に適するその他任意の適切な接続)、給水などのための接続点を有することができる。透析部51は、所望であれば、電力またはその他の接続を動力部52に提供する。
【0116】
透析部51は、システム5の各種構成要素に対する制御流体の流れを制御し、その他の所望の機能を実行するコントローラを備えることができる。場合によっては、制御流体は、様々なチューブまたは管路内で様々な圧力で保持される。たとえば、正圧(すなわち、大気圧より大きい)で保持される制御流体もあれば、負圧(大気圧未満)で保持される制御流体もある。また、ある実施形態では、コントローラは、各種液体回路から離れて保持される構成要素を有することができる。この構造はいくつかの利点を有する。たとえば、一実施形態では、透析部51の液体回路は、消毒を実行するため、消毒温度まで加熱される、および/または比較的高い温度またはその他の過酷な状態(たとえば、放射線)にさらされる一方で、コントローラの電子部品のような過酷な状態にさらされず、それどころか絶縁壁(たとえば、「防火壁」)などによって離れて保持させることができる。すなわち、透析部ハウジングは2つまたはそれ以上のコンパートメント、たとえば、熱やその他の状態に敏感な電子部品やその他の構成要素を有するコンパートメントと、消毒のため加熱またはその他の方法で処理される液体回路部品を有するコンパートメントとを備えることができる。
【0117】
よって、いくつかの実施形態では、システム5は、(加熱されていない)「コールド」セクションと、たとえば消毒のために加熱することのできる「ホット」セクションとを含む。コールドセクションは、絶縁体によってホットセクションから絶縁することができる。一実施形態では、絶縁体は成形された発泡性断熱材であり、別の実施形態では、噴霧断熱、空隙、シートから切断した断熱材などのあらゆる種類の断熱を含むが、それらに限定されない。一実施形態では、コールドセクションは、たとえば、ファンおよび/または空気をコールドボックスの内外に流すことのできるグリッドなどの循環システムを含む。場合によっては、絶縁体は、ドア、ポート、ガスケットなどの「ホット」セクションへのアクセス点を覆うように延長させることができる。たとえば、「ホット」セクションが封止されると、絶縁体は場合によっては「ホット」セクションを完全に覆うことができる。
【0118】
「コールド」セクション内に存在し得る構成要素の非限定的な例としては、電源、電子部品、電源ケーブル、空気制御器などが挙げられる。場合によっては、「ホット」セクション間を往復する流体の少なくとも一部は、「コールド」セクションを通過する。しかし、別の場合、流体は「コールド」セクションを通過せずに「ホット」セクションへと流れることができる。
【0119】
「ホット」セクション内に存在することのできる構成要素の非限定的な例としては、カセット(存在する場合)、流体ライン、温度および伝導度センサ、血液漏れセンサ、ヒータ、その他のセンサ、スイッチ、非常灯などが挙げられる。場合によっては、一部の電子部品も「ホット」セクションに含めることができる。その例はヒータを含むがそれに限定されない。一実施形態では、流体に加えて、ホットボックス自体を加熱するためにヒータを使用することができる。いくつかの実施形態では、ヒータ72が、「ホット」セクション全体を所望の温度に達するまで加熱する。
【0120】
本発明の一態様によると、透析部51のハウジングは、血液流回路接続部および透析液回路接続部のためのすべての機械的インタフェース点、すなわち、透析部51を使用するためにユーザが行わなければならない患者血液接続部および酸/重炭酸塩接続部のためのすべての接続点を露出させるように開放可能な縦型並列ドアを備えることができる。図9は、閉鎖状態の縦型並列ドア53を有する透析部51の前面図である。この構成では、ドア53は、患者血液接続部および酸/重炭酸塩接続部のための接続点へのアクセスを遮断し、消毒に適した熱の保存を可能とするようにユニットハウジングの内側を封止することができる。ドア53に提供される封止は、ハウジングの内部環境と外部環境との間の空気交換を防止する、またはこれを実質的に抑制するように気密にすることができる、あるいは、消毒効果を維持できる程度に質をやや落とすこともできる。
【0121】
本実施形態では、ドア53は、ドア53が2つの異なる開放状態まで開放されるように、二重ヒンジ構造によって透析部51のハウジングに接続される。図10〜13は第1の開放状態のドア53を示す。この状態で、ドア53は、透析器14自体および消耗酸/重炭酸塩材料などの試薬材料を含め、血液回路接続部および透析器回路用のすべてのユーザ接続を露出させる。この位置は、酸/重炭酸塩容器(図示せず)用のホルダ531や、制御インタフェース55などの任意の適切なアイテムを保持するのに使用可能なフック532などのその他の機能も露出させ、制御インタフェースはそのハンドルをフック532に引っ掛けることができる。(制御インタフェース55またはその他のアイテムを収容するように開くことのできる左側ドア53の前部のフック532を示す図7を参照)。本実施形態のホルダ531は、図に示す位置から折る(すなわち、ドア53から水平に延在するように折り畳み、ドア53の凹部に入れ込む)ことができる。ホルダ531は、酸/重炭酸塩容器を収容し保持する「C」字状の収容部を有するが、当然ながら任意の適切な形状にする、あるいはそれ以外の構成にすることができる。
【0122】
図14〜16は、各ドア53のヒンジプレート533が透析部ハウジング51から外側へ離れるように旋回する第2の開放状態にあるドア53を示す。本実施形態では、透析部ハウジング51のほぼ全高に沿って垂直に延在するヒンジプレート533が、第1の外側端でドア53に枢動可能に装着され、第2の内側端で透析部ハウジング51に枢動可能に装着される(当然ながら、ヒンジプレート533は、違うふうに、たとえば、多くの冷蔵庫ドア構造に見られるようにドア53の上部および下部に配置および/または位置決めすることができ、各プレート533は、互いに縦方向に分離される2つまたはそれ以上の部分を有することができる。)。ヒンジプレート533に装着される磁石534は、ヒンジプレート533を透析部ハウジング51の方に引きつけることによって、ヒンジプレート533を図10〜13に示す位置に保持するように、透析部ハウジング51に装着された対応する磁石(またはスチール素子などのその他の適切な構成要素)と相互作用する(当然のことながら、磁石534はユニットハウジング上に配置し、ヒンジプレート533は磁石534に装着される(スチール片などの)適切な素子を有することができる)。本実施形態のドア53はヒンジプレート533に装着される磁石も備えるため、ドア53が図10〜13に示されるような第1の状態に開放されると、磁石はヒンジプレート533内の対応する磁石と相互作用し、ドア53がヒンジプレート533に対して開放位置にあるのを助ける。さらに、これらの磁石は、ヒンジプレート533が、図13〜16に示す第2の状態まで開放されたとき、ドア53とヒンジプレート533との相対的位置を維持するのを助ける。
【0123】
本例示の実施形態では、ドア53および/またはヒンジプレート533が特定の開放状態または閉鎖状態を維持するのを助けるため、磁石が保持部材の一部として使用されているが、保持部材の他の構造も可能である。たとえば、ドア53とヒンジプレート533との間のヒンジ接続および/またはヒンジプレート533とハウジング51との間の接続は、その他の部分(ヒンジプレートまたはハウジング)に対する特定位置にドア53またはヒンジプレート533を弾性的に保持する役割を果たす移動止め構造でもよい。別の実施形態では、1つまたは複数のバネを、ヒンジプレート533に対する開放位置にドア53を保持するのを助けるために使用することができる。さらに別の実施形態では、ヒンジプレート533が、ヒンジプレート533を(ハウジングに近接する)閉鎖位置に保持しようとするハウジング51の部分と摩擦または静止嵌りするものでもよい。したがって、ドア53をヒンジプレート533に対する特定位置に保持する役割を示す、および/またはヒンジプレート533をハウジング51に対する特定位置に保持する役割を示す保持部材は、多数の可能な構造のうちの1つを取ることができる。
【0124】
本発明の別の態様によると、透析部ハウジングの方にドアを開けると、システム5の動作に必要な血液回路接続部および透析液流体接続部のためのユーザ接続がすべて露出される。たとえば、図17に示すように、ドア53が開放状態(第1または第2の開放状態のいずれか)にあると、透析部51のフロントパネル511を露出させることができる。本実施形態では、フロントパネル511は、ユーザがアクセスしなければならないいくつかのアイテムまたは接続点を担持する。たとえば、定期的に交換しなければならない透析器14がフロントパネル511に搭載される。透析器14は、血流回路141だけでなく平衡回路143にも接続しなければならない。さらに、酸/重炭酸塩源49用の接続点512が、フロントパネル511の下端に配置される。この接続点512で、ユーザは、透析液を作製する際に透析部51が使用する消耗試薬成分49の供給源に接続することができる。閉鎖部(occluder)513もフロントパネル511上に搭載される。閉鎖部513は血流回路のチューブを受け取り、システム動作に基づきチューブの開放/閉鎖状態を制御する。要約すると、漏れ、ポンプの故障、過圧状況などのシステム問題がない限り、閉鎖部513は血流回路の動脈および静脈ラインに流れを通させる。上記のような問題がある場合、閉鎖部513は自動的に血液ラインを閉鎖して、患者との間の流れを阻止する。図41に示すように、閉鎖部10は、配管を納めるための基部16および経路18を含む。同図に示すように、経路18は、配管を納めるように成形された基部16内の凹みである。ただし、他の実施形態では、経路18は、たとえば、基部16の表面上の1つまたは複数の隆起や、基部16の表面上の締め具、ループ、またはリングなどによって、別の方法で基部16上で画定されてもよい。また、経路18は同図で略直線状に示されているが、他の実施形態では、いくつかの形で湾曲させることができる。場合によっては、経路は、経路が保持するように設計される配管よりもわずかに小さく設計されるため、配管を経路内に適切に配置するために配管に力を印加する、および/または配管を変形させる必要がある。
【0125】
配管は、たとえば、遮断素子24が配管に押し込まれたときに少なくとも部分的につぶされるように屈曲可能である、あるいは柔軟である。たとえば、チューブはシリコーン、ナイロン、ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンなどの材料から形成することができる。場合によっては、配管は生体適合性を有する。配管は、たとえば、透析器またはその他の医療用注入システムの一部として、血液またはその他の物質を対象との間で輸送するために使用することができる。
【0126】
旋回軸22を中心に回転移動可能な遮断部材20が基部16上に配置される。遮断部材は旋回軸を中心に完全に回転することができ、場合によっては、遮断部材は旋回軸22を中心に部分的にのみ回転することができる。旋回軸22は、基部16に対して固定することができる。たとえば、旋回軸22は、基部16内に固着されるネジ、ロッド、またはその他の類似の構造であってもよい。遮断部材20は、旋回軸22を中心に回転させられると、遮断素子24が経路18に入り、少なくとも部分的に経路18を遮断するように構成される。よって、経路18内に含まれる配管内を流れる流体は、遮断素子24を通過して流れることを部分的にまたは完全に阻止される。しかし、遮断部材20が第2の位置にあるとき、遮断素子24は経路18に進入しないため、経路18の配管内に含まれる流体は遮断素子24によって邪魔されない。
【0127】
ここに示すように、遮断部材20は2つの位置のうち1つを取ることができる。しかし、場合によっては、遮断部材は3つ以上の位置に配置させることができる。たとえば、遮断部材20は、経路18および/または基部16内に存在するその他の経路に進入する、あるいは少なくとも該経路を遮断することのできる2つ以上の遮断素子、もしくは遮断部材20は様々な位置に置かれるように構成することができ、それらの位置のいくつかは、遮断素子24を様々な程度に経路18内に存在させることによって、流体流を様々な程度に遮断することができる。遮断素子24は、遮断素子24が経路18に進入する、あるいは経路を少なくとも部分的に遮断するときに、経路18内に含まれる配管内の流体の流れを少なくとも部分的に阻止または遮断するのに適した任意の形状を取ることができる。図41に示すように、遮断素子24は、経路18に進入する半円柱状の部分を含む。しかしながら、球状、楔状、ブロック状、棒状などのその他の形状も利用可能である。
【0128】
血流回路141の動脈血液ラインおよび静脈血液ライン203、204を方向付け回路142と接続する血液ライン接続点514(図2および3を参照して説明したように、血流回路141は方向付け回路142に接続することができる)がフロントパネル511上に露出される。システムが血流回路141を清浄および殺菌できるように、この接続は通常、治療の最後に行われる。フロントパネル511は、血流回路141の血液ポンプ部上の対応する制御ポートと嵌合する1セットの制御ポート515も有する。制御ポート515は、バルブの開放/閉鎖状態を制御し、血流回路141のポンプに動力を与えるため、制御されたレベルの空気圧および/または真空を供給する。
【0129】
フロントパネル511上にはユーザ制御パネル510も露出される。ユーザ制御パネル510は、ユーザが血液透析中に、制御インタフェース55上のグラフィカルユーザインタフェースをバイパスして、特定の機能(たとえば、重要な機能)を制御する別の方法を提供することができる1つまたは複数のボタンを備える。たとえば、仮に制御インタフェース55が透析治療セッション中に故障した場合、これが非常に重要となる。重要な機能の非限定的な例は、「透析停止」または「透析一時停止」コマンドと「透析溶剤注入」コマンドである。
【0130】
本実施形態および本発明の別の態様によると、血流回路141は透析部51のフロントパネル511から取り外し可能な血液回路アセンブリとして形成され、図17では血液回路アセンブリはフロントパネル511に搭載されていないため、図17は血流回路141用の動脈および静脈ライン203、204を示していない。図18は透析器14とともに本実施形態の血液回路アセンブリ17の前面図を示す。血液回路アセンブリ17は、たとえば図3を参照すると、血液回路編成トレイ171に搭載される上述の各種構成要素を含む。動脈および静脈ライン203、204(たとえば、可撓シリコーン配管の長さを含む)は、本発明の一態様によると、血液ライン接続点514との差込型接続または圧入型接続に加え、一般的な患者アクセス点(たとえば、ルアー(luer)型患者アクセコネクタ)と共に使用されるネジ型接続を提供するように構成される血液ラインコネクタを終点とする。動脈ライン203は、2つのポッドポンプ23、バルブ、および血流を制御するその他の構成要素を含む血液ポンプ13の上部にある入口につながる。血液ポンプ13は、エアフィルタ81、抗凝血剤ポンプ80(図示せず)、および抗凝血剤供給源11(ヘパリンのバイアなど)と関連付けられる。
【0131】
血液ポンプカセット1200の例示の一実施形態を図42に示す。ヘパリンなどの薬物のソース容器1202は、ソース容器1202の上部のストッパを貫く中空スパイク(図示せず)を有する容器アタッチメント1206の上に置かれる。エアフィルタ1204は通気口906を覆い、その内側部分900が図43に示される。図43は、血液ポンプカセット1200の上部カバーの内側のソース容器1202用計量ポンプ流体路を示す。通気口906は、空気を計量ポンプ830(図44の血液ポンプカセット1200の中央プレート部1000内に示される)に引き込む。第2のポート902は、空気をスパイク/ソース容器に押しやり、ソース容器1202から液体を引き出す。その後、液体は計量ポンプ830によって流体ラインの点826まで押されて、そこで、血液ポンプカセット1200の血液流路に入る。バルブ832、834、836は、ソース容器1202からの流体引出しとカセットの血液路への注入が順序よく行われるように適切な順序で作動され、その後で、容器内の圧力均等化のために通気口906からソース容器1202への定期的な空気注入が行われる。
【0132】
血液ポンプ13(出口はポンプ13の下端に配置される)からの血液出力は、透析器14の入口(透析器14の上端)に入り、透析器から外へ流れ出て(透析器の血液出口は透析器14の下端に配置される)、エアトラップ19の入口に至る。エアトラップの出口19は静脈血液ライン204に接続される。透析器14の入口および出口血液ポートへの接続は、典型的なネジ型接続で行われる。
【0133】
本発明の別の態様によると、エアトラップ19は、血液が透析器を出た後、患者に戻るまで血液流路に配置される。一実施形態では、エアトラップ19は球状、または回転楕円体状容器(すなわち、略球状の内壁を有する容器)と、最上部近傍に容器の縦軸から偏位して配置される入口ポートと、容器の底部の出口とを有することができる(容器の縦軸は、略球状容器の「上下の」極を通過する縦方向に配置される)。入口ポートは縦軸から偏位しており(この場合、トレイ171の方に後退している)、血液は容器の縦軸に略垂直で、容器の球状内壁にほぼ接する方向で容器に導入される。血液が(たとえば螺旋状に)重力で容器の下端に引かれ、血液からの気泡の除去を促進する際、トラップの内壁の湾曲形状は内壁に沿って血液を循環させるように導く。透析器14の出口を出る血液中に存在する空気はエアトラップ19の上端に入り、血液が下端の出口から静脈血液ライン204へと流れ出る間、容器の上端にとどまる。トラップ19の上端近傍に入口ポートを配置することによって、容器内に最小限の空気しか残さず、あるいは全く空気を残さず、血液をトラップ中で循環させることができる(「全開運転」エアトラップとして)。トラップ内の血液の定期循環のため、空気と血液の接触を回避できることが有効である。容器の上端またはその近傍に入口ポートを配置することで、血液チューブを通る流体流を逆行させて(すなわち、トラップ19の下端から上端へ流れ、トラップ19の入口ポートを出る)、トラップ内に存在する空気の大半または全部をトラップから除去することができる。
【0134】
一実施形態では、スプリット隔膜または膜、あるいはその他の構造のセルフシール(self-sealing)ストッパなどのセルフシールポートがトラップの上端に配置されて、(たとえば、シリンジによって)容器から空気を抜き出すことができる。たとえば、透析液またはその他の洗浄液を用いてエアトラップ内で流を逆行させることによって消毒中のセルフシールポートの洗浄を簡易化するために、セルフシール膜の血液側面は、トラップの内側の上端とほぼ同一面に配置させることができる。また、容器の入口、出口、および内壁とセルフシールポートは、停滞領域をほぼなくすように構成する、すなわち、血液が停滞したり凝固したりする領域がほとんどか全くないようにすることができる。セルフシールポートは、血液サンプリング部位として機能する、および/または血液回路に液体、薬剤、またはその他の化合物を導入させることができる。針でのアクセスが企図されるとき、封止ラバー型ストッパを使用することができる。スプリット隔膜を用いるセルフシールストッパは、無針システムを使用するサンプリングおよび流体送出を可能にする。
【0135】
図19は、各種血液回路アセンブリ17の構成要素を搭載していない血液回路アセンブリ17用編成トレイ171を示す。本発明の一態様によると、編成トレイ171は、血液回路アセンブリ17をフロントパネル511に搭載する/血液回路アセンブリ17をフロントパネル511から取り外す際にユーザが握ることのできるハンドル172(本実施形態では、指で引く)を備える。ハンドル172の内側には、フロントパネル511上のスプリングタブが編成トレイ171および/または血液ポンプ13のカセットを通過して、血液回路アセンブリ17と係合し、血液回路アセンブリ17をフロントパネル511上の適所に保持することができるように開口部173が設けられる。本発明の別の態様によると、編成トレイ171は、それぞれが対応する血液ライン203、204の通過するC字状の凹部またはその他の穴を有する血液ライン係合部材174を備える(ここでは、「穴」は、図19に示されるような凹部、たとえばドリルで作製されるような連続壁を有する貫通孔、またはその他の適切な開口部を含む)。より詳細には、血液ライン203、204を閉鎖部513に搭載する際に、血液ライン係合部材174が使用される。要約すると、血液ライン203、204を閉鎖部513に搭載する際、血液ライン203、204は、閉鎖部513のスロットに水平に押しこみながら(ラインの外径を低減するように)下方向に引っ張り、伸張させなければならない。血液ライン係合部材174は、血液ライン203、204での下方向の引っ張りに抵抗する機能と(たとえば、各ライン203、204は、係合部材174の凹部を通って引っ張ることができないように、各係合部材174の上に停止リングを備えることができる)、ユーザに係合部材174を内側に押し込んでライン203、204を閉鎖部スロットに配置させる機能とを果たす。係合部材174は編成トレイ171と一体形成されているため、「リビングヒンジ(living hinge)」すなわち編成トレイの比較的柔軟な部分が、係合部材174と編成トレイ171の本体との間に配置される。この構造により、係合部材174と編成トレイ本体との接続部が撓むため、係合部材174を編成トレイ171に対して内側に押すことができる。
【0136】
図20は、編成トレイ171を取り外した血液回路アセンブリ17の後面図である。この図は、制御ポートを露出させた血液ポンプ13の後面を示す。空気圧制御(たとえば、適切な空気圧または真空)がポンプおよびバルブに印加されて、それらの動作と血液回路アセンブリ17を通る流とを制御するように、これらの制御ポートはフロントパネル511上の対応するポート515と嵌合する(図17を参照)。図20は、エアトラップ19の入口ポートの偏位も示す、すなわち、エアトラップ19の上端の入口ポートは、エアトラップ19のほぼ球状の容器部の縦軸の後方に配置されている。
【0137】
図21は、編成トレイ171なしのフロントパネル511に搭載された血液回路アセンブリ17を有する透析部51のフロントパネル511の斜視図である。(通常、血液回路アセンブリ17は編成トレイ171を備えるが、フロントパネル511の構成要素をより明確に示すために本例ではトレイ171を図示していない。)血液ポンプ13のカセットの対向端に、フロントパネル511は、血液ポンプカセットおよび/または編成トレイ171と前方向に柔軟に延在して、血液回路アセンブリ17を適所に保持するスプリングタブ516を有する。タブ516は、血液回路アセンブリ17を適所に保持するのを助ける突刺またはその他の機能を備えることができる。スプリングタブ516は外方に曲げられて血液回路アセンブリ17上での保持を解放し、取外しを可能にする。しかし、スプリングタブ516に外方向への力が印加されない場合、タブ516は血液回路アセンブリ17と係合したままである。図22は、血液回路アセンブリ17の編成トレイ171が含まれるフロントパネル511の前面図である。フロントパネル511から血液回路アセンブリ17を取り外すには、ユーザは、スプリングタブ516の内側(血液ポンプ23に最も近い側)に親指を当てて、スプリングタブ516を外方向にポンプ23から離れるように曲げると同時にハンドル172の後ろに人差し指を当てる。これにより、スプリングタブ516は血液回路アセンブリ17を解放することになり、たとえば、タブ516の突刺が血液ポンプ13および/または編成トレイ171から分離される。当然ながら、血液回路アセンブリ17を取り外すには、透析器14との接続部や血液ライン接続点514などのその他の接続部を取り外し、ライン203、204も閉鎖部513から取り外さねばならない。血液回路アセンブリ17をフロントパネル511に搭載する際、たとえば、スプリングタブ516が開口部173を通過するように揃えられ、血液ポンプ13のカセットの制御ポートがフロントパネル511上の対応するポート515と揃えられるように、編成トレイ171はハンドル172を握って適切に位置合わせすることができる。その後で、血液回路アセンブリ17がそのまま適所に押し込まれて、スプリングタブ516が編成トレイ171および/または血液ポンプカセットと係合する。次に、透析器14との接続や、閉鎖部513への血液ライン203、204の装着などの他の接続を行うことができる。
【0138】
図21は、閉鎖部513内に導くために血液ライン203、204を保持するスロット517も示す。スロット517は、ライン203、204がスロット内への配置後にスロット517内にとどまるように、血液ライン203、204の外径よりもわずかに小さい通路を画定する。これは、ラインと閉鎖部513との適切な関連付けを確保する助けとなる。いったん血液回路アセンブリ17がスプリングタブ516上に搭載されれば、ユーザは、(編成トレイ171上の係合部材174が各ライン203、204上の停止リングまたはその他の機能と係合し、下方向の引っ張りに抵抗した状態で)ライン203、204を下方に伸張させ、ライン203、204を対応するスロットに押し込むことによって、血液ライン203、204とスロット517とを係合させる。ライン203、204は、上述したように、柔軟であり、編成トレイ171に対して内方向に曲げられる係合部材174を内側に押すことによって、適所に押し込むことができる。次いで、ライン203、204は閉鎖部513を通って進ませることができる。
【0139】
本発明の別の態様によると、フロントパネル511は、フロントパネル511の外周に血液ラインラップ機能を備える。本例示の実施形態では、フロントパネル511は、フロントパネル511の上縁と下隅に沿ってフランジ部518を備える。このため、ユーザはフランジ部518によって画定される通路内にライン203、204を配置することによって、血液ライン203、204をフロントパネル511の外周に巻きつけることができる。ライン203、204は、透析器14の下端近傍の箇所から、フロントパネル511の下右隅近傍の箇所まで時計方向に巻きつけることができる。次に、血液ライン203、204は血液ライン接続点514で接続して、たとえば、血液ライン203、204を通って循環される流体を消毒することができる。その結果、血液ライン203、204はフロントパネル511上に適切に保持されて、フロントパネル511上の他の構成要素に容易にアクセスすることができ、ユーザはドア53と透析器部ハウジング51間に血液ライン203、204を挟まないかどうかほとんど心配せずにドア53を閉めることができる。もしくは、血液ライン203、204はまず血液ライン接続点514で接続して、その後、透析器14の下端近傍の箇所からフロントパネル511の下右隅近傍の箇所まで時計方向に巻きつけることができる。これにより、血液ラインはフランジ部518に沿って適切に分布されて接続点514に至るように確保することができる。ヒンジプレート533およびその他の挟まれる可能性のある箇所から離れた所望の位置に血液ライン203、204を保持する助けとして、フロントパネル511の左側と右側に縦型フェンス519も設けることができる。
【0140】
本発明の別の態様によると、透析部51のフロントパネル511(またはその他の適切な構成要素)は、様々なサイズおよび/または形状の透析器部14を収容するように構成することができる。異なる患者、場合によっては、長期にわたり同一の患者に対しても、異なる治療条件を提供するように異なる透析器を指定することができる。よって、透析部51は好ましくは、複数の様々な種類の透析器14と共に動作するように構成される。多くの場合、透析器14が異なれば、透析器部の全体の径および/または長などの寸法が異なる。図23に示す例示の実施形態では、フロントパネル511は、透析器14上のそれぞれの透析液迅速接続継手に係合するよう構成された一対の「鍵穴」機能520を有する透析器搭載台を備える。各鍵穴機構520は、迅速接続継手の一部を収容する寸法の上側挿入領域520aと、迅速接続継手の全体径よりも幅が小さく、迅速接続継手の溝領域と係合する下側フランジ部520bとを含む。これらの機能を理解する助けとして、図24は、透析器14の透析液入口ポートおよび出口ポートに装着される迅速接続継手14aを備えた透析器14を示す(血液入口および出口ポートは、図24に示す透析器14の上端と下端に配置される)。図示される迅速接続継手14aは標準的なタイプのもので、すべてではないがほとんどの透析器14は、標準的な迅速接続継手14aと係合するように構成される透析液入口/出口ポートを有する。迅速接続継手14aはそれぞれ、(図24に示すように)基部14cに対して右手に移動させて、継手14aを透析器14上の透析液ポートと係合させる摺動素子14bを備える。摺動素子14bが移動して継手14aを透析器14に接着させると、溝14dが閉鎖される。ただし、いったん継手14aが透析器14の入口/出口ポートに適切に配置されると、摺動素子14bは解放されて、図24に示すようにバネ(図示せず)が摺動素子を左手に移動させて、溝14dを図24に示す状態に再設定する。よって、迅速接続継手14aが透析器14と適切に係合すれば、溝14dは図24に示すように存在する。
【0141】
透析器14を鍵穴機構520に取りつけるには、各迅速接続継手14aの溝14dが鍵穴機構520の下側フランジ部520bのフランジと並んで配置されるように、迅速接続継手14aが上部および下部鍵穴機構の上側挿入領域520aにそれぞれ部分的に挿入される(下部鍵穴機構520の上側挿入領域520は、より広い範囲の透析器長を収容できるように、図23に示すものよりも長くすることができることに留意されたい)。溝14dがフランジと並べば、迅速接続継手14aが鍵穴機構520の下側フランジ部520bに完全に収容されるように、透析器14を降下させることができる。
【0142】
本発明の別の態様によると、鍵穴機構520の一方または両方は、透析器14の重量が鍵穴機構520の両方の下側フランジ部520bによって分担されるように調節可能である。たとえば、本例示の実施形態では、下部鍵穴機構520は、上部鍵穴機構520に対して垂直位置に調節可能な下側フランジ部520bの部分を有する。このように、この下側フランジ部520bの部分は縦方向の位置に調節可能であるため、上部の迅速接続継手14aが上部鍵穴機構520のフランジ部520bによって支持された状態で、下部鍵穴機構のフランジ部520bの可動部分をたとえば上方向に移動させて、下部の迅速接続継手14aもフランジ部520bによって支持することができる。よって、透析器14の重量は、両鍵穴機構520によって分担することができる。フランジ部520bは、任意の適切な方法で調節可能にすることができる。本実施形態では、フランジ部520bは、縦フランジに沿って縦方向に摺動可能であり、1セットの蝶ネジを締めることによって適所に固定できる「U」字状部材520cを有する。「U」字状部材520cが透析器14の重量を(少なくとも部分的に)支持するように、「U」字状部材520cは迅速接続継手14aと係合することができる。
【0143】
上記実施形態では、透析器14はフロントパネル511の鍵穴機構によって支持されるが、透析器のための支持構造は他の方法で構成することもできる。たとえば、上側挿入領域520aは必ずしも必要ではない。その代わりに、フランジ部(たとえば、対向するフランジ部を有する「U」字状フランジの形状で)のみを設けて透析器迅速接続継手と係合させることができる。フランジ部は、フロントパネル511の前面から偏位させて、継手用の隙間を設け、フランジ部を迅速接続継手の溝と係合させることができる。さらに、フランジ部は図示されるように縦方向に設ける必要はなく、縦方向から角度をつけて、たとえば水平に配向させることができる。フランジ部は、移動止め、キャッチ、または透析器を適所に保持する助けとなるその他の機能を有することができる。
【0144】
本発明の別の態様によると、重炭酸塩、酸および/またはその他の試薬供給源を透析部と選択的に関連付けることができる。上述したように、透析部51は、システム動作に必要な透析液および/またはその他の材料を生成する特定の化学物質の供給を必要とする。図25は、酸、重炭酸塩および/またはその他の材料を透析部52に供給するために使用される試薬供給源49を示す(図21は、フロントパネル511で酸/重炭酸塩接続点512に装着された試薬供給源49を示す)。本例示の実施形態の試薬供給源49は、酸/重炭酸塩接続点512と嵌合するように構成されたE叉コネクタ491を備える。接続点514での血液ライン接続など、フロントパネル511でユーザによってなされた他の接続と同様、嵌合コネクタは、適切な接続を確保するため、色分けする、あるいはそれ以外の方法で印をつけることができる。たとえば、E叉コネクタ491と酸/重炭酸塩接続点512はオレンジ色に、接続点514での動脈ライン203とその嵌合接続部は赤色に、接続点514での静脈ライン204とその嵌合接続部は青色にすることができる。E叉コネクタ491からは、重炭酸塩供給ライン492、給水ライン493、および酸供給ライン494が延びている(図6とこれらのラインの機能に関する関連の説明とを参照)。給水ライン493は重炭酸塩供給源28に水を供給する(本実施形態では、粉末重炭酸塩材料を含有する、バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッドで販売される750g Altracart Bicarbonateカートリッジ(#500750A)だが、任意の適切な供給源であってもよい)。重炭酸塩供給源28は、重炭酸塩供給ライン492を介して透析部51に重炭酸塩を供給する。本実施形態では、酸供給ライン494は、IV型バッグまたはその他の容器を突き刺し、そこから適切な酸を抜き出すのに使用可能な酸バッグスパイク495につながる。本実施形態では、酸バッグスパイク495はスパイク部材495aと一対のスプリングクリップ495bとを含む。スプリングクリップ495bは接続バーによって中心部で共に接合される結果、スプリングクリップ495bとその接続バーとが「H」状を成し、スプリングクリップ495bの近位端が互いに締め付けられるとき、スプリングクリップ495bは互いに回転可能である。スプリングクリップ495bは酸バッグ(またはその他の酸供給源、図示せず)上のコネクタ素子と係合するように構成されるため、ユーザがクリップ495bを取り外すまで、スパイク部材495aをバッグと係合させておくことができる。たとえば、クリップ495bの遠位端は酸供給源と係合する突刺(barb)を含むことができ、クリップ495bの近位端を共に締め付けあい、クリップ495bの遠位端で突刺素子を酸供給源から分離させることによって、クリップを酸供給源から脱離させることができる。酸バッグスパイク495は、酸バッグスパイク495のラインを開放/閉鎖するバルブ495c(この場合、ピンチクランプ)も備えることができる。本発明の一態様によると、酸バッグスパイク495は、(キャップコネクタ496で酸供給ライン494から切り離して)酸ジャグストロー(図示せず)やその他の構造などの別の構成要素と取り換えることができる。ジャグストローと共に使用される場合、キャップコネクタ496は、酸ジャグの開口部をキャップのように覆うように、酸ジャグの開口部と係合させることができる。もしくは、ジャグストローは終端部をスパイク状にして、酸ジャグの開口部を覆うセルフシール(たとえばラバー)膜を貫通する能力を有することができる。このように、酸供給構造(ジャグ、ボトル、バッグなど)に応じて、様々な種類の構成要素を酸供給ライン494に装着することができる。
【0145】
図26は、E叉コネクタ491と、フロントパネル511の対応する接続点512との近接図である。E叉コネクタ491は、接続点512の対応する収容穴と係合する3つの平行な叉(重炭酸塩ラインおよび酸供給ライン492,494、および給水ライン493に対応する)を有する。E叉コネクタ491と接続点512の収容穴とは、中心内腔(給水ライン493)が上方に配置される、あるいは他の形で2つの外側内腔(重炭酸塩および酸供給ライン492,494)の共通面から外に配置されるように構成される。このように、適切に配向されない限り、E叉コネクタ491は接続点512と係合できないため、重炭酸塩および酸供給ライン492,494が適切に接続されることが確実となる。E叉コネクタ491は、たとえば、叉が接続点512の収容穴に適切に配置されるときに接続点512の対応するスロット512aと係合可能な一対のスプリングタブ491aを備える。タブ491aがスロット512aと係合した状態で、E叉コネクタ491は接続点512から容易に脱離できず、不測の分離の可能性を低下させる助けとなる。E叉コネクタ491は、タブ491aの遠位端の突刺がスロット512aから分離するようにタブ491aを互いの方に押し合うことによって切断させることができる。接続点512は、接続点512をフロントパネル511と着脱させることのできる同様のスプリングタブ512bを有する。
【0146】
本発明の別の態様によると、消毒コネクタ(図示せず)は、消毒手順中、使用のため接続点512と係合する。消毒コネクタはE叉コネクタ491と同様の配向の3つの平行な叉を有するため、叉が接続点512の収容穴に係合することができる。消毒コネクタコネクタの叉内の通路は、消毒コネクタ内の共通チャンバ内で終端となる。よって、消毒手順中、重炭酸塩流ライン、酸流ライン、および水流ラインはすべて相互接続され、消毒手順中、各流ラインを消毒することができる(これは図6の49で点線の逆「T」ラインとして示されている)。
【0147】
本発明の別の態様によると、血液ライン203、204には、2種類の接続を行うことのできるコネクタが備えられる。1種類目の接続は、コネクタが収容内腔に押し込まれる差込型または圧入型接続と、コネクタまたは収容内腔の回転を必要とせずに行われる漏れなし接続である。2種類目の接続は、漏れなし接続がコネクタと補完素子とのねじ込み係合により行われるネジ型接続である。たとえば、図27および28は、血液ライン203、204と共に使用され、フロントパネル511上の血液ライン接続点514と係合可能である血液ラインコネクタ202の斜視図と側面図である。コネクタ202は、対応する血液ライン203、204に接続するチューブ接続端202aと、患者アクセスおよび接続点514の両方に接続して漏れなし接続を確立するように構成された患者アクセス接続端202bとを備える。患者アクセス接続端202bにおいて、コネクタ202は、雄ネジ患者アクセスと係合するように構成された雌ネジ部を有する円錐台形部材202cを備える。たとえば、円錐台形部材202cは、円錐台形部材202cの中心から延在する中央チューブ202を備える雄型ルアーコネクタの一部であってもよい。ルアー接続を行う際、チューブ202eは患者アクセスで雌型ルアーコネクタ内に延在し、円錐台形部材202cの内側のねじ込み部は、患者アクセス(動脈または静脈)の雌型ルアーコネクタのネジと係合することができる。血液ラインを患者アクセスに接続するときは、このようなルアー接続が標準的である。しかし、コネクタ202は、単に患者アクセス接続端202bを接続点514の収容穴に押し込むことによって、接続点514と係合させることができる。この接続を行う際、円錐台形部材202cの外側は好適なシート、あるいはその他の接続点514内の表面または素子(たとえば、バルブシート、Oリングまたはその他)と係合して、円錐台形部材202cと接続点514との間に封止を形成することができる。さらに、もしくはその代わりに、適切な封止を確立するため、中央チューブ202eを接続点514と係合するのに使用することができる。円錐台形部材202cから後方に延在する係止アーム202dは、接続点514の穴514aと係合して(たとえば、アーム202dの有刺部は、穴514aと係合することができる)、コネクタ202を接続点514の収容穴に保持するのを助けることができる。コネクタ202はアーム202dを互いに押し合わせて(たとえば、アーム202dの遠位端で指窪み部を押すことによって)解放し、穴514aから突刺を分離させ、コネクタ202を引き抜くことができる。接続点514は、接続点514を選択的にフロントパネル511と係合させる/フロントパネル511から分離させることのできるスプリングタブ514bを備えることに留意されたい。コネクタ202は、たとえば単独の一体型部分としてプラスチック成形などの任意の適切な方法で作製することができる。
【0148】
本発明の種々の実施形態を本明細書に記載して説明したが、当業者であれば、本明細書に記載の機能を果たす、および/または本明細書に記載の成果および/または1つ以上の利点を得るための様々なその他の手段および/または構造を容易に構想し得る。こうした構想および/または変形は、本発明の範囲に属するものとみなされる。すなわち、当業者であれば、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示であり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明が利用される具体的な用途に左右されることを容易に認識し得る。当業者であれば、実験を利用して、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を認識し得る。したがって、上記した実施形態は単なる例示であり、添付の特許請求の範囲とその等価物の範囲において本発明が実施され得ることを理解すべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して血液透析および類似の透析システム、たとえば、体外で血液またはその他の体液の処理が可能なシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
多くの要因により、血液透析は非効率的で、困難で、費用がかかる。これらの要因としては、血液透析の複雑さ、血液透析に関連する安全性の懸念、血液透析に多大な量の透析液が必要なことなどが挙げられる。さらに、血液透析は通常、熟練した技術者を要する透析センターで実行される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、透析プロセスの簡易化と効率化の向上は、治療費または患者の出費に大きな影響を与える可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の態様は、概して血液透析および類似の透析システムに関する。本明細書に記載される例示の実施形態は、場合によっては、相互に関連する製品、特定の問題に対する別の解決策、および/または1つまたは複数のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用法を含む。本明細書に記載の各種システムおよび方法は血液透析に関連して説明しているが、その他の透析システムおよび/または血液濾過、血液透析など、血液またはその他の体液の処理が可能な体外システムにも適用可能であると理解すべきである。
【0005】
本発明の一態様は、血液透析部の血液回路用の血液ラインコネクタである。血液ラインコネクタは、血液回路チューブと係合して封止を行うように構成されたチューブ接続端、及び雄ネジ型患者アクセス部と係合して該雄ネジ型患者アクセス部と流体密封接続を行うように構成された雌ネジ部を有する部材を含む患者アクセス接続端を備える。血液ラインコネクタは更に、前記部材から前記チューブ接続端に向かって後方に延在する一対の係止アームを備える。一対の係止アームはそれぞれ指窪み部と有刺部とを有している。また、一対の係止アームは、圧入型接続を行う際に患者アクセス接続端の外側表面が血液透析部の嵌合コネクタと流体密封接続を形成するように、前記血液透析部の嵌合コネクタと前記有刺部で係合して前記嵌合コネクタとの封止係合により前記患者アクセス接続端を係止するとともに、前記指窪み部が互いに向かって付勢されるとき前記有刺部と前記嵌合コネクタとの係合が解除されるように構成されている。この構成によれば、血液透析部とラインコネクタとの信頼性の高い接続性を簡易な構成で実現することができる。
【0006】
本発明の別の態様によると、携帯型血液透析部を備える筐体が提供され、血液透析部は、透析器と、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプと、透析液源と、透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプとを含む、血液透析を実行する適切な構成要素を備える。筐体は、血液透析部の構成要素を支持し、血液回路接続部と透析液流体接続部とが配置されるフロントパネルとを有するハウジングを備えることができる。たとえば、フロントパネルは、患者血液アクセス用の血液ライン接続部と、試薬供給用接続部と、血液流と透析液流の両方用の透析器接続部とを支持することができる。よって、一実施形態では、オペレータは、血液回路用と試薬供給用のすべての必要な流体回路接続部をハウジングのフロントパネルに完備させることができる。筐体は、ハウジングにヒンジ式に取りつけられる一対の縦型並列ドアを、ドアが開放位置と閉鎖位置との間で移動できるようにフロントパネルの対向端に備えることができる。ドアが開放位置にあるとき、オペレータは血液回路接続部および透析液流体接続部にアクセスすることができる。さらに、ドアが閉鎖位置にあるとき、患者アクセスおよび透析液流体接続部へのアクセスが遮断されて、消毒サイクル中の消毒に適したハウジング内の熱を保持することができる。たとえば、ドアのうち少なくとも一方は、ドアが閉鎖位置にあるとき、ハウジングの内部と外部間の空気交換に抵抗して熱を保持するのを助ける、および/または埃、ごみ、またはその他の汚染物質の侵入防止を助けるための封止を含むことができる。
【0007】
一実施形態では、縦型並列ドアはそれぞれ、第1の端部でドアに枢動可能に搭載され、第1の端部に対向する第2の端部でハウジングに枢動可能に搭載されるヒンジプレートを介して、ハウジングに取りつけられる。よって、ドアは、たとえば、血液回路接続部と透析液流体接続部とが露出し、ヒンジプレートがハウジングに近接する第1の開放位置と、ヒンジプレートがハウジングから離れている第2の開放位置との2つの開放位置を取ることができる。対応するヒンジプレートに対する開放位置にドアを保持するために、1つまたは複数の保持部材を設けることができる。たとえば、保持部材は、ヒンジプレートおよびハウジングに対する開放位置にドアを保持しようとする、ドアまたはヒンジプレートに装着される少なくとも1つの磁石を備えることができる。さらに、1つまたは複数の保持部材は、ハウジングに対する閉鎖位置、たとえば、ハウジングに近い位置にヒンジプレートを保持する、および/またはハウジングから離れた開放位置にヒンジプレートを保持することができる。
【0008】
一実施形態では、ドアのうち少なくとも一方が、折畳み位置と開帳位置との間で移動することのできる容器ホルダを備えることができ、容器ホルダは試薬供給容器などの容器を支持するように配置される。さらに、またはもしくは、ドアの一方または両方が、通信ケーブルによってハウジングに接続される遠隔インタフェース部などの血液透析部用制御インタフェースを支持するフックを備えることができる。これらの特徴は、構成要素を簡便な位置に支持することにより、透析部をより簡易に利用する。
【0009】
別の実施形態では、フロントパネルが、血液回路アセンブリの血液ラインを支持する少なくとも1つのフランジ部を含むことができる。たとえば、フロントパネルは、フロントパネルの下隅や上縁などのフロントパネルの周縁に配置されるいくつかのフランジ部を含むことができる。患者につながる血液回路ラインは比較的長め(たとえば、3〜4フィート以上)であり、フロントパネルの周囲に巻きつけて、フランジ部によって適所に保持することができる。フランジ部は、血液ラインを支持して、血液ラインに接触せずにドアを閉鎖位置まで移動させるように、たとえば、血液ラインがドアヒンジ点に挟まるのを防止するように配置することができる。
【0010】
一実施形態では、フロントパネルの血液回路接続部は、血液回路用の動脈および静脈血液ラインコネクタを備え、フロントパネルの透析液流体接続部は、試薬供給用接続点と、透析器透析液接続部と、動脈および静脈血液ラインを透析部の方向付け回路に接続する血液ライン接続点とを備える。
【0011】
血液透析部は、可撓ケーブルによってハウジングに接続され、ユーザが血液透析部と情報をやり取りできるように構成される制御インタフェースを備えることができる。一実施形態では、筐体は、筐体の上に、制御インタフェースを搭載可能な制御インタフェース搭載領域を備えることができる。たとえば、制御インタフェースは、ハウジング上でほぼ垂直な配向で立つことができるように、折畳み可能な脚またはその他の支持部を備えることができる。
【0012】
別の実施形態では、筐体は、血液透析部の構成要素を消毒するように加熱される消毒セクションから分離および隔離される電子セクションを備えることができる。たとえば、消毒セクションは、透析部の様々な部分の、バルブ、ポンプ、管路などの流体回路部品をすべて備えることができる。電子セクションは、モータ、コンピュータまたはその他のデータ処理装置、コンピュータメモリ、および/またはその他の温度に敏感な電子機器またはその他の構成要素を備えることができる。電子セクションを(少なくともある程度まで)消毒セクションから隔離することによって、電子セクション内の構成要素は、消毒動作中でもあるいはそれ以外の動作中でも消毒セクション内の熱またはその他の環境条件にさらされずに済む。
【0013】
本発明の別の態様によると、携帯型血液透析システムは、透析部の流体回路ポンプが、モジュール式動力部、たとえば、透析部と選択的に接続または切断され得るユニットによって提供されるように構成することができる。その結果、動力部が故障しても、透析システム全体を無効にする必要はない。その代わりに、動力部を別の動力部と交換して、治療を継続することができる。たとえば、携帯型血液透析システム用のモジュール式アセンブリは、たとえば、透析器などの血液透析を実行する適切な構成要素を収容するハウジングと、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプと、透析液源と、透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプと、を有する透析部を備えることができる。ハウジングは、血液回路接続部および透析液流体接続部が配置されるフロントパネルを有することができ、たとえば、該パネル上で、オペレータは患者血液アクセスを接続し、試薬供給源を接続し、および/または透析器を接続することができる。モジュール式アセンブリは、透析部のポンプに動作動力を提供する適切な構成要素を収容するためのハウジングを有する動力部も備えることができる。動力部は、透析部に選択的に接続され、透析部に接続されたときにはポンプのために透析部に動力を供給することができるが、透析部から切断されたときには透析部へ動力を供給できなくすることができる。動力部は、単独のハンドルの操作によって、透析部と選択的に接続および切断することができる。たとえば、オペレータは、動力部を透析部から切断するように単独のハンドルを回転させる、あるいはそれ以外の方法で操作することができる。一実施形態では、透析部と動力部とは、それぞれ人間が持って運べるようなサイズと重量である。
【0014】
一実施形態では、透析部のポンプは空気圧ポンプであり、動力部は透析部に空気動力を供給する。たとえば、動力部は、透析部に空気圧および/または真空を供給して、ポンプに動力を与えることができる。動力部は1つまたは複数の空気圧ポンプおよび/または真空ポンプを備えることができ、透析部はポンプへの空気動力の印加を制御する複数のバルブを備えることができる。家庭での血液透析システムの使用を助けるため、動力部および透析部の電力要件は、標準的な家庭用電力、たとえば、約110V、15ampの電力によって与えられる。透析部は動力部に電力を供給し、動力部はその電力を使用して、ポンプのための動作動力を生成することができる。
【0015】
本発明の別の態様によると、透析部用の血液回路アセンブリは、大半またはすべての血液回路構成要素の交換を1回の動作で行えるように構成することができる。たとえば、血液回路アセンブリは、編成トレイと、透析器部を含む回路を通って患者から受け取り、患者に戻される血液を循環させるために編成トレイに搭載される一対の空気圧ポンプと、該回路内で循環する血液から空気を除去するように構成される編成トレイに搭載されるエアトラップと、透析器部の入口および出口に接続するように構成される一対の透析器接続部と、一方の入口血液ラインコネクタは患者から血液を受け取り、その血液を空気圧ポンプに供給し、他方の出口血液ラインコネクタは患者に血液を戻す一対の血液ラインコネクタと、を備えることができる。
【0016】
一実施形態では、抗凝血剤源と係合し、抗凝血剤を血液回路に供給するための抗凝血剤接続部が設けられる。たとえば、抗凝血剤接続部は、ヘパリンなどの抗凝血剤源からの抗凝血剤を、ヘパリンのバイアルから該回路へと圧送するためのポンプを備えることができる。抗凝血剤接続部は、2つまたはそれ以上のサイズの異なるバイアルを保持するように構成されるバイアルホルダと、バイアルを貫通するスパイクとを含むことができる。一実施形態では、一対の空気圧ポンプ、抗凝血剤接続部、および抗凝血剤ポンプはポンプカセットの1部である。
【0017】
別の実施形態では、血液回路アセンブリは、選択的に透析部に搭載する、あるいは搭載部から取り外すことができる。血液回路アセンブリの取り扱いを助けるため、編成トレイは、ユーザが握るように構成された一対のハンドルを備えることができる。さらに、編成トレイは、血液回路アセンブリと係合して透析部上に血液回路アセンブリを保持する透析部上の保持タブを収容するため、各ハンドルに近接して開口部を備えることができる。
【0018】
一実施形態では、入口血液ラインコネクタはポンプカセット用入口に接続され、ポンプカセット用出口は透析器入口コネクタに接続され、透析器出口コネクタはエアトラップの入口に接続され、エアトラップの出口は出口血液ラインコネクタに接続される。血液回路アセンブリが透析部に搭載されるとき、エアトラップの入口はたとえば、治療中に回路内を循環する空気の捕捉を助けるため、エアトラップの出口の上方に配置することができる。血液ラインコネクタは、患者アクセスへのねじ込みルアー型接続、および透析部への圧入型接続ができるように構成される。このような構成により、オペレータは、患者血液アクセスでの血液ラインコネクタと標準的なルアー型コネクタとの係合を可能にしつつ、(たとえば、後の血液回路の消毒および/またはプライミングのために)治療後に血液ラインコネクタを透析部に、より容易に接続することができる。
【0019】
一実施形態では、編成トレイは、各回路チューブが通過する穴またはスロットを有する回路チューブ係合部材を備えることができる。係合部材は各回路チューブと係合して、透析部の閉鎖部と係合するように回路チューブを引っ張り、伸張させることができる。たとえば、血液回路アセンブリの回路チューブは、閉鎖部と係合するために伸張する(それによって径を低減させる)必要のあるシリコーンチューブを含むことができる。回路チューブ係合部材は、チューブ上のオペレータの引っ張りに抵抗して、チューブを伸張させ、閉鎖部と係合する位置に配置させることができる。
【0020】
本発明の別の態様によると、透析部の血液回路アセンブリの交換方法は、透析部に搭載される血液回路アセンブリの編成トレイ上の一対のハンドルを握ることと、透析部の係止タブを血液回路アセンブリから分離して、血液回路アセンブリを透析部から解放することと、血液回路アセンブリの編成トレイ上のハンドルを引いて、血液回路アセンブリを透析部から取り外すこととを含む。係止タブの分離することは、各係止タブが最も近いハンドルの方に移動するように係止タブを互いに撓ませることによって実行することができる。血液回路アセンブリの取り外し後、交換用血液回路アセンブリを提供することができ、交換用血液回路アセンブリの編成トレイの開口部は、各係止タブが各開口部に収容されるように並べることができ、編成トレイは、係止タブが交換用血液回路アセンブリと係合して、交換用血液回路アセンブリを透析部に取りつけることができるように透析部に対して押し付けることができる。交換用血液回路アセンブリの搭載は、流体制御信号が血液回路アセンブリのポンプおよびバルブに提供されるように、透析部上の制御ポートをアセンブリ上の嵌合ポートに接続することをさらに含むことができる。透析器用の入口および出口接続部など、その他の血液回路接続部を作製することができ、血液ラインコネクタを接続して透析液を受け取り血液回路内に送ることができる。
【0021】
本発明の別の態様によると、透析部内の血液回路のエアトラップは、血液入口供給ラインと、血液出口供給ラインと、略球状内壁、血液入口供給ラインに接続される容器上端の入口、および血液出口供給ラインに接続される容器下端の出口を有する容器と、を備える。入口を通って容器に入る血液が螺旋状路内の略球状壁の周囲に流れ込むように、入口は略球状壁の縦軸から偏位させることができる。このような容器内の流れは、入口から出口へ流れる際に血液から気泡を除去するのを助け、除去された空気は容器の上端付近に残る。入口ポートは、容器の略球状内壁と略接する方向に、および/または容器の縦軸と略垂直の方向に、血液を容器に導入するように構成される。
【0022】
一実施形態では、たとえば、スプリット膜の形状のセルフシールポートを容器の上に配置することができ、該シールポートは、スプリット膜を通って無針装置を挿入することによって、容器に流体を導入する、および容器から液体を引き出すことができるように構成される。セルフシールポートは、消毒液が容器内を循環するときに自己清浄するように構成することができ、たとえば、ポートは、流れる消毒液に適切にさらされて、ポート上の屑を除去する、および/または材料を加熱して所望の消毒を達成することができる。
【0023】
本発明の別の態様によると、血液回路アセンブリのチューブ固定構造は、血液回路アセンブリの構成要素を支持し一対のチューブ係合部材を有する編成トレイを備え、各係合部材は、穴と、患者から液体を受け取る、および/または患者に液体を供給するための患者アクセス点と接続するように構成される一対の患者入口ラインおよび出口ラインと、患者入口ラインおよび出口ライン上の一対のストッパとを有する。患者入口ラインおよび出口ラインはそれぞれ、ストッパがチューブ係合部材と係合するように、各チューブ係合部材の穴を通過することができる。この構造では、チューブ係合部材は、ラインを閉鎖部と係合させるときに、入口ラインおよび出口ラインの引張りおよび伸張に抵抗することができる。チューブ係合部材は、ユーザが係合部材上で内側に押し込んで入口ラインまたは出口ラインを閉鎖部内に配置させつつも、ラインの下方向の引張りに抵抗するように可撓性を持たせることができる。
【0024】
本発明の別の態様によると、血液透析システムは、複数の様々なサイズおよび/または形状の透析器部を支持し、透析器部上の透析液接続部間の様々な距離に適応するように構成される透析器搭載台を備える。透析器搭載台は、透析部のフロントパネル上に配置され、一対のフランジ部を備えることができ、各フランジ部は、透析器の透析液ポートに接続される透析液迅速接続継手と係合するように構成される。各フランジ部は、迅速接続継手の基部と迅速接続継手の摺動素子との間に位置する迅速接続継手の溝と係合するように構成することもできる。たとえば、透析器搭載台は一対の鍵穴機構を備え、各鍵穴機構は、迅速接続継手の基部を挿入して収容できるようなサイズの上側挿入領域と、迅速接続継手の基部の全体幅よりも小さい幅を有し、迅速接続継手の溝と係合する下側フランジ部とを含む。下側フランジ部は一対の対向フランジを含むことができ、該フランジは上記溝と係合して、迅速接続継手をフランジに沿って摺動させる。
【0025】
一実施形態では、下部鍵穴機構は、縦方向に移動可能な調節可能な支持部を備えることができる。たとえば、調節可能な支持部は、対向フランジに沿って移動可能である。よって、調節可能な支持部は、フランジ上の複数の異なる位置で固定可能であり、透析器の重量を支持することができる。一構成では、調節可能な支持部は、「U」字状部材と、「U」字状部材を適所に固定するように締付け可能な少なくとも1つの蝶ネジとを備える。
【0026】
本発明の別の態様によると、血液透析部の血液回路用血液ラインコネクタは、2種類の流体密封接続、たとえば、患者アクセスでのルアーコネクタを用いるネジ型接続と、血液透析部の透析液回路での圧入型接続とを行うことができる。たとえば、血液ラインコネクタは、血液回路チューブと封止して係合するように構成されるチューブ接続端と、雄ネジ型患者アクセスと係合するように構成される雌ネジ部を有する円錐台形部材付きの患者アクセス接続端と、円錐台形部材から後方に延在する一対の係止アームとを備えることができる。係止アームはそれぞれ、指窪み部および有刺部を有し、圧入型接続を行う際には、有刺部で透析部上の嵌合コネクタと係合して、嵌合コネクタとの封止係合で円錐台形部材を係止するように構成することができる。指窪み部が互いに向かって付勢されると、有刺部を嵌合コネクタから分離することができる。一実施形態では、患者アクセス接続端は、円錐台形部材の中心から延びる中央チューブを含むことができる。円錐台形部材の雌ネジ部と中央チューブとは、雌ルアー型患者アクセスコネクタまたはその他の適切なネジ型接続部と嵌合するように構成することができる。
【0027】
本発明の別の態様によると、透析部の動作方法は、透析部用の動脈および静脈血液ラインの血液ラインコネクタを、患者血液システムと連通する患者アクセコネクタに接続することを含む。一実施形態では、患者アクセコネクタは対応する血液ラインコネクタを必要とし、患者アクセコネクタとのねじ込み係合を確立することによって、血液ラインコネクタと患者アクセコネクタとの間のルアーまたはネジ型接続を形成する。透析部は、患者アクセスコネクタから血液を引き出して動脈血液ラインに送り込み、引き出した血液を透析工程に入れて処理済み血液を生成し、静脈血液ラインおよびその他の患者アクセコネクタを介して処理済み血液を患者に戻すように動作させることができる。その後、血液ラインコネクタは、ネジを緩めることによって対応する患者アクセコネクタから切断することができ、血液ラインコネクタは透析部の方向付け回路に接続することができる。血液ラインコネクタは、透析部上に対応する接続点を有する圧入型接続によって、たとえば、血液ラインコネクタを接続点に押し込み、圧入型接続を確立することによって、方向付け回路に接続することができる。
【0028】
本発明の別の態様によると、血液透析システム用の試薬供給構造は、透析液を作製する際に使用する2つまたはそれ以上の試薬材料を供給するように構成され、試薬材料が誤ったポートに接続されるのを防止するのを助けるように構成されたコネクタを備えることができる。たとえば、試薬供給源は、3つの平行な叉を有するE叉コネクタを含み、うち2つの外側叉は共通面に配置され、中央叉は共通面の上方に配置され、第1の試薬用の第1の供給ラインが外側叉の一方と流体連通して接続され、第2の試薬用の第2の供給ラインが外側叉の他方と流体連通して接続され、液体ラインが中央叉と流体連通して接続され、第1の試薬を収容する容器が、液体ラインに接続される入口と第1の試薬用の第1の供給ラインに接続される出口とを有する。2つの外側叉の面外に位置する中央叉によって、透析部への1方向にのみ確実にE叉コネクタが接続されるため、E叉コネクタは第1および第2の供給ラインと透析部との不適切な接続を防止するのを助けることができる。
【0029】
一実施形態では、容器は、血液透析システム用の透析液を精製する際に使用するのに適した重炭酸塩材料を含む。液体ラインは、水を容器に供給して、水を重炭酸塩(粉末またはその他の固体にすることができる)と混合して第1の供給ラインへと流す給水ラインであってもよい。第2の供給ラインは、コネクタを有し、酸材料をE叉コネクタに供給する酸供給ラインであってもよい。試薬供給源は、酸供給ラインのコネクタと着脱可能に係合する酸バッグスパイクも備えることができる。酸バッグスパイクは、酸供給ラインのコネクタに対向する酸バッグスパイクの端部に、スパイク部材と一対のスプリングクリップとを備え、酸バッグスパイクを酸バッグまたはその他の酸源と流体接続させることができる。
【0030】
本発明の別の態様によると、血液透析システムの動作方法は、透析器と、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプと、透析液源と、透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプとを備える、血液透析を実行するための適切な構成要素を収容する筐体を有する透析器を提供することを含む。筐体は、該構成要素を支持し、血液回路接続部および透析液流体接続部が作製されるフロントパネルを有するハウジングを備えることができる。E叉コネクタと、外側叉の一方と流体連通して接続される第1の試薬用の第1の供給ラインと、外側叉の他方と流体連通して接続される第2の試薬用の第2の供給ラインと、中央叉と流体連通して接続される液体ラインと、液体ラインに接続される入口と第1の試薬用の第1の供給ラインに接続される出口とを有する第1の試薬を収容するための容器と、を備える試薬供給源を設けることができる。E叉コネクタが透析部のフロントパネルで接続点と係合することによって、透析部が水を試薬供給の液体ラインに供給し、第1および第2の供給ラインから第1および第2の試薬を受け取ることができる。
【0031】
本発明のその他の利点および新規な特徴は、添付図面と併せて検討すると、以下の本発明の非限定的な各種実施形態の詳細な説明から自明となるであろう。本明細書と引用により組み込まれた文献とが相対するおよび/または矛盾する開示を含む場合、本発明が優勢であるものとする。引用により組み込まれた2つまたはそれ以上の文書が互いに相対するおよび/または矛盾する開示を含む場合、有効日が遅い方の文書が優勢であるものとする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】例示の実施形態に係る血液透析システムの流体処理構成要素の概略図である。
【図2】図1の透析システムの流体流を概略的に示す。
【図3】図2の実施形態の血流回路に関する流体流を概略的に示す。
【図4】図2の実施形態の平衡回路に関する流体流を概略的に示す。
【図5】図2の実施形態の方向付け回路に関する流体流を概略的に示す。
【図6】図2の実施形態の混合回路に関する流体流を概略的に示す。
【図7】例示の一実施形態の血液透析システムの右前斜視図である。
【図8】図7の血液透析システムの左後斜視図である。
【図9】図7の血液透析システムの前面図である。
【図10】ドアが第1の開放位置にあるときの図7の血液透析システムの右前斜視図である。
【図11】図10の血液透析システの上面図である。
【図12】図10の血液透析システムの前面図である。
【図13】図10の血液透析システムの右側面図である。
【図14】ドアが第2の開放位置にあるときの図7の血液透析システムの右前斜視図である。
【図15】図14の血液透析システムの上面図である。
【図16】図14の血液透析システムの前面図である。
【図17】ドアがシステムのフロントパネルを露出させる開放位置にあるときの図7の血液透析システムの前面図である。
【図18】図7のシステムと共に使用される血液回路アセンブリの前面図である。
【図19】図18の血液回路アセンブリ用の編成トレイの右斜視図である。
【図20】図18の血液回路アセンブリの左後斜視図である。
【図21】図7のシステムのフロントパネルの左前斜視図である。
【図22】図7のシステムのフロントパネルの前面図である。
【図23】透析器用の一対の搭載機能を有する図7のシステムのフロントパネルの前面図である。
【図24】透析器の透析液入口/出口ポートに装着される迅速接続継手を備えた透析器の側面図である。
【図25】図7のシステムと共に使用される試薬供給源の右斜視図である。
【図26】図25の試薬供給源用のE叉コネクタと血液透析システムのフロントパネル上の対応する接続点とを示す斜視図である。
【図27】血液回路アセンブリ用の一対の血液ラインコネクタと血液透析システムのフロントパネル上の対応する接続点とを示す斜視図である。
【図28】図27の血液ラインコネクタおよび接続点の側面図である。
【図29】ポッドポンプの斜視図である。
【図30】流体制御カセットの実施形態に組み込むことのできるポッドポンプの断面図である。
【図31】流体制御カセットの実施形態に組み込むことのできるバルブの断面図である。
【図32A】積層構造のポッドポンプの上面図である。
【図32B】積層構造のポッドポンプの側面図である。
【図33A】積層構造のポッドポンプの上面図である。
【図33B】積層構造のポッドポンプの側面図である。
【図34A】ポッドポンプカセットの一実施形態の展開図である。
【図34B】ポッドポンプカセットの一実施形態の側面図である。
【図34C】ポッドポンプカセットの一実施形態の側面図である。
【図35A】ポッドポンプカセットの一実施形態を示す図である。
【図35B】ポッドポンプカセットの一実施形態を示す図である。
【図36A】図30に示す種類の2つのポッドポンプと図31に示す種類の多数のバルブとを各種流体路およびその他の構成要素と共に組み込む、本発明の例示の実施形態に係るポンプカセットを示す。
【図36B】図30に示す種類の2つのポッドポンプと図31に示す種類の多数のバルブとを各種流体路およびその他の構成要素と共に組み込む、本発明の例示の実施形態に係るポンプカセットを示す。
【図37】本発明の一実施形態に係るポンピングシステムの概略図である。
【図38A】本発明の一実施形態に係るポンピングサイクルの一連のステップを示すフローチャートである。
【図38B】体積算出および空気検出を実行するための図38Aのポンピングサイクルの一連のサブステップを示すフローチャートである。
【図38C】ポンプチャンバ内の気体の存在を検出するための図38Aのポンピングサイクルの一連のサブステップを示すフローチャートである。
【図39】平衡ポッドの例示の一実施形態を示す。
【図40】流体ラインの外側の熱壁に連結される感知プローブの例示の一実施形態を示す。
【図41】本発明の一実施形態に係るチューブ閉鎖部の斜視図である。
【図42】本発明の一実施形態に係る血液ポンプカセットの斜視図である。
【図43】図42に示す血液ポンプカセットの内側上部プレートの斜視図である。
【図44】図42に示す血液ポンプカセットの中央プレートの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の態様を例示的な実施形態を参考にして図面を参照しつつ説明する。図中、類似の符号は類似の要素を指す。
本発明の各種態様は、概して、血液濾過システム、血液濾過透析システム、血漿交換システムなどの、血液透析等の新システムに関する。したがって、本明細書に記載の各種システムおよび方法は血液透析に関連して説明されているが、その他の透析システムおよび/または血液または血漿などのその他の体液を処理可能な体外システムにも適用可能であると理解すべきである。
【0034】
以下に説明するように、血液透析システムは通常、血液流路と透析液流路とを含む。こうした流路内で、流体の流れは必ずしも線形である必要はなく、流体が流路の入口から流路の出口まで流れることのできる流路内に任意数の「枝路」があり得ることに留意すべきである。このような分岐の例を以下で詳細に説明する。血液流路において、血液は患者から引き出され、透析器を通過した後に患者に戻る。血液は透析器によって処理され、廃棄分子(たとえば、尿素、クレアチニンなど)と水は、血液から透析器の半透膜を介して、透析液流路によって透析器を通過する透析液溶剤へと至る。各種実施形態では、2つのライン(たとえば、動脈ラインと静脈ライン、すなわち、「二重針」流)を介して患者から血液を得ることができる、あるいは、場合によっては、血液を患者から抜き出し、同じ、つまりカテーテル針を介して戻すことができる(たとえば、2つのラインまたは内腔は両方とも同じ針内に存在することができる、すなわち、「二重内腔」流の形状)。さらに他の実施形態では、「Y」部位または「T」部位が使用され、2つの枝路(1つは抜きだした血液の流路用、もう1つは戻る血液用の流路、すなわち、「単一針」流の形状)を有する1つの患者との連結部を介して、患者から血液を抜き出し、患者へと戻す。患者は、犬、猫、猿などの人間以外の対象と人間とを含む、血液透析または類似の治療を必要とする任意の対象とすることができる。
【0035】
透析液流路では、新鮮な透析液が作製され、透析器を通過して、血液流路からの血液を処理する。さらに、透析液は、透析器内での血液処理のために、精密に、あるいは、いくつかの実施形態では、血液圧の少なくとも約1〜2%内に、均等化させることができる(すなわち、透析液と血液との間の圧力を均等化する)。場合によっては、血液流路と透析液流路との間の大きな圧力差(正または負)を維持することが望ましいかもしれない。透析器を通過した後、(後述するように)廃棄分子を含む使用済み透析液は、何らかの方法で廃棄される。透析液は、場合によっては「多通路」構成で再循環させることができ、これは、透析器を横断する低移動度の比較的大きな分子を捕捉するのに好都合であるかもしれない。場合によっては、電気抵抗ヒータなどの適切なヒータを用いて、透析器内の血液を処理する前に透析液を加熱することができる。たとえば、限外濾過フィルタを用いて、汚染物質、感染性微生物、屑などを除去するために、透析液を濾過することもできる。限外濾過フィルタは、上記のような種が通過してしまうのを防ぐように選択された孔径を有することができる。たとえば、孔径は、約0.3マイクロメートル未満、約0.2マイクロメートル未満、約0.1マイクロメートル未満、または約0.05マイクロメートル未満などにすることができる。透析液は浸透または対流輸送により、廃棄分子(たとえば、尿素、クレアチニン、カリウムなどのイオン、リン酸塩など)と水とを血液から抜き出し透析液内に送るために使用され、透析溶液は当業者にとって十分既知である。
【0036】
透析液は通常、正常な血液と同様の濃度で、ナトリウム、塩化物、重炭酸塩、カリウム、およびカルシウムなどの各種イオンを含有する。場合によっては、重炭酸塩は、正常な血液中の濃度よりやや高い濃度を有する場合がある。通常、透析液は、給水器からの水と1つまたは複数の成分とを混合することによって作製される。ここで、1つまたは複数の成分とは、「酸」(酢酸、デキストロース、NaCl、CaCl、KCl、MgClなどの様々な種を含み得る)や、重炭酸ナトリウム(NaHCO3)や、および/または塩化ナトリウム(NaCl)である。適切な塩濃度、重量オスモル濃度、pHなどの利用を含む透析液の作製は、当業者にとっては十分既知である。以下詳細に説明するように、透析液は、透析液が血液を処理するのに使用されるのと同じ時間に作製する必要はない。たとえば、透析液は透析と同時または透析前に作製し、透析液保存容器などに保管しておくことができる。
【0037】
透析器内で、透析液と血液は通常、半透膜によって分離される。通常、半透膜は、血液処理中にイオンや小さな分子(たとえば、尿素、水など)の輸送を許すが、大量または対流輸送を許さない、セルロース、ポリアリールエーテルスルホン、ポリアミド、ポリビニルピロリドン、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルなどのポリマーで形成される。場合によっては(高線束透析器など)、β2ミクログロブリンなどのより大きな分子が膜を通過する場合がある。また、場合によっては、たとえば、静水圧差が半透膜内で存在する場合、イオンと分子が対流によって透析器を通過する場合がある。
【0038】
本明細書で使用される「流体」は、流体の性質を備えるものすべてを意味し、空気などの気体や、水、水溶液、血液、透析液などの液体を含むがそれらに限定されないことに留意すべきである。
【0039】
図1は、発明の各種態様を組み込む血液透析システムの流体回路の概略ブロック図である。本例示の実施形態では、透析システム5は、患者から血液を抜き出し、血液を透析器14に通過させ、処理済み血液を患者に戻す血流回路141を備える。平衡回路または内部透析液回路143は、限外濾過フィルタ73から透析液を受け取り、透析液を透析器14に通過させ、透析器14から使用済み透析液を受け取る。方向付け回路または外部透析液回路142は、新鮮な透析液を限外濾過フィルタ73に供給し、(排水口31へと方向づけられる)内部透析液回路143から使用済み透析液を受け取る。方向付け回路142は、給水源30から水を受け取り、その水を混合回路25に流すこともできる。混合回路25は、方向付け回路142からの水と、再生可能な源からも受け取ることの可能な、クエン酸、塩、および重炭酸塩などの試薬成分49とを用いて透析液を形成する。混合回路25は、たとえば、必要に応じて、透析中および/または透析前に透析液を作製することができる。混合回路25によって作成された新たな透析液は、方向付け回路142に供給され、その方向付け回路142が、上述するように透析液を限外濾過フィルタ73に供給することができる。方向付け回路142は、透析液を適切な温度に加熱する、および/または消毒用システム内の流体を加熱するヒータを含むことができる。たとえば、血液透析システムの消毒のため、血流回路141と方向付け回路142との間を管路67(点線で表示)で接続することができる。
【0040】
図2は、図1に示す透析システム5用のより詳細な回路配置を示す概略図である。当然ながら、図2は図1の一般的な血液透析システムのうち1つの可能な実施形態にすぎず、他の実施形態では、その他の流体回路、モジュール、流路、レイアウトなどが可能であると理解すべきである。
【0041】
血流回路141は、抗凝血剤供給源11と、血液を患者から透析器14を通じて送出し、該血液を患者に戻す血流ポンプ13とを備える。抗凝血剤供給源11は、透析器に向かって流れる血液路では図示されていないが、血流ポンプ13の上流または下流の任意の位置などの別の適切な位置に配置することができる。平衡回路143は、透析液を透析器14に圧送する2つの透析液ポンプ15と、バイパスポンプ35とを備える。血流回路141を通る血液流は、場合によっては、透析液流路内の透析液流と同期する。一実施形態では、透析器14および平衡回路143を出入りする透析液流は、平衡回路143の平衡チャンバを用いて平衡を保たれる。方向付け回路142は、透析液タンク169からヒータ72および/または限外濾過フィルタ73を介して平衡回路143まで透析液を圧送する透析液ポンプ159を備える。また、方向付け回路142は、平衡回路143から廃液を受け取り、それを排水口31へと方向付ける。場合によっては、血流回路141は、たとえば上述したように消毒のために、管路67を介して方向付け回路142に接続することができる。透析液タンク169内の透析液は混合回路25によって供給される。混合回路25は、方向付け回路142を介して供給される給水源30からの水と透析液成分49(たとえば、重炭酸塩と酸)とを用いて透析液を生成する。一連の混合ポンプ180、183、184は、各種成分を混合して透析液を生成するために使用される。
【0042】
図3は、本例示の実施形態の血流回路141の近接図である。通常動作時、血液は患者から血流ポンプ13を介して動脈ライン203を通り透析器14まで流れる(通常の透析中の流れの方向は矢印205で示す。しかし、いくつかの動作モードでは、後述するように、流れは別の方向を取る場合がある)。任意に、抗凝血剤供給源から抗凝血剤ポンプ80を介して血液中に抗凝血剤を導入することができる。透析器14を通過し透析を受けた後、血液は、任意にエアトラップおよび/または血液サンプルポート19を通過し、静脈ライン204を通って患者へと戻る。ポンプ13は、たとえば、制御流体によって作動されるポンプ23を含むことができる。
【0043】
たとえば、一実施形態では、血流ポンプ13は、2つ(またはそれ以上)のポッドポンプ23を備えることができる。本実施例では、各ポッドポンプは、各チャンバをポンプコンパートメントと制御コンパートメントとに分割する可撓性の隔膜または膜を有する剛質チャンバを備えることができる。これらのコンパートメントには4つの入口/出口バルブを設けることができ、2つはポンプコンパートメント用、2つは制御コンパートメント用である。チャンバの制御コンパートメント用バルブは双方向比例バルブとすることができ、一方は第1の制御流体源(たとえば、高圧空気源)に接続され、他方は第2の制御流体源(たとえば、低圧空気源)または真空源に接続される。ポッドポンプ23の動作中、流体バルブは流体の流れを方向づけるために開放および閉鎖することができる。
【0044】
図29は、本発明で使用可能な往復動容積式(positive-displacement )ポンプ625の一例を示す。本実施形態では、往復動容積式ポンプ625は、より大きなポンピングシステムの一部品として使用可能な略内蔵型のユニット(以降、「ポッド」と称することもある)である。往復動容積式ポンプ625は、「上」部(「ポンプチャンバ壁」とも称する)631と、「下」部(「制御チャンバ壁」とも称する)632とを含み、たとえば超音波溶接またはその他の技術によって、それらが共にポッド壁630で連結する。「上」および「下」という用語は相対的なもので、ここでは図29に示す配向を参照して便宜上使用されていることに留意されたい。これらの部分631および632はそれぞれ好ましくは(必ずではないが)半球状の剛質内部表面を有するため、ポッドは好ましくは(必ずではないが)球状の内部腔を有する。
【0045】
図29に示す実施形態では、制御チャンバ壁632は一体型構造であり、ポンプチャンバ壁631は、たとえば、(後述するように一体型バルブの組み立てを容易にする)超音波溶接またはその他の技術によって外周2052に沿って連結される2つの半分から成る。ポンプチャンバの2つの部分が成形される際、この設計は、まくれやバリを最小限にすることができ、より優しいポンプ環境を呈する可能性が高い。本実施形態は、剪断力に弱いためにまくれやバリを回避すべきである流体と共に使用するのに好都合である。
【0046】
典型的な流体ポンピング動作中、空気圧インタフェース638に負の空気圧を印加すると、ポンプチャンバを拡張し、入口634を通って流体をポンプチャンバに引き込むように、膜633が制御チャンバ壁632の方に後退するようになる。一方、正の空気圧を印加すると、ポンプチャンバを縮小し、出口637を通って流体をポンプチャンバから排出するように、膜633がポンプチャンバ壁631の方に押し出されるようになる。上記ポンピング動作中、ポンプチャンバ壁631および制御チャンバ壁632の内部表面は、前後に往復動しながら膜633の動きを制限する。図29に示す実施形態では、ポンプチャンバ壁631および制御チャンバ壁632の内部表面は剛質で、滑らかで、略半球状である。ポンプチャンバが最大値に近づくにつれ膜の動きを制限するため、剛質の制御チャンバ壁632の代わりに、別の剛質の制限構造、たとえば、空気圧を供給するのに使用される枠部および/または1セットのリブを使用してもよい。よって、剛質の制限構造、すなわち、剛質の制御チャンバ壁632、枠、または1セットのリブなどは、ポンプチャンバが最大値に達するときの膜633の形状を画定する。一つの好適な実施形態では、膜633(剛質の制限構造に押しつけられたとき)とポンプチャンバ壁631の剛質の内部表面とは、ポンプチャンバの体積が最大に達したときの回転楕円体状ポンプチャンバの体積を規定する。
【0047】
よって、図29に示す実施形態では、膜633の動きは、ポンプチャンバ壁631と制御チャンバ壁632によって制限される。空気圧ポート638を通じて供給される正圧および負圧が十分に強い間は、膜633は制御チャンバ壁632によって制限される位置からポンプチャンバ壁631によって制限される位置に移動する。膜が強制的に制御チャンバ壁632に対して押し付けられると、膜とポンプチャンバ壁631がポンプチャンバの最大体積を規定する。膜が強制的にポンプチャンバ壁631に対して押し付けられると、ポンプチャンバは最小の体積となる。
【0048】
一つの好適な実施形態では、最大体積のときにポンプチャンバが球状となるように、ポンプチャンバ壁631と制御チャンバ壁632はいずれも半回転楕円体形である。より好適には、最大体積のときポンプチャンバが回転楕円体形となるように、ポンプチャンバ壁631と制御チャンバ壁632はいずれも半球形である。最大体積のとき回転楕円体形、特に球形となるポンプチャンバを使用することによって、ポンプチャンバ全体に流れを循環させることができる。したがって、このような形状は、ポンプチャンバ内に流体の停滞ポケットができるのを防止するものとなる。さらに後述するように、入口634および出口637の配向(それぞれポンプチャンバ壁631の内部表面にほぼ接する)は、ポンプチャンバを通る流体の循環を向上させ、流体の停滞ポケットが形成される可能性を低減するものとなる。さらに、他の体積形状と比較して、球形(概して回転楕円体形)は、流体がポンプチャンバに出入りしたり、ポンプチャンバを通ったりする際に、剪断や乱流を起こす傾向が少ない。
【0049】
ポッドポンプの構成要素は、射出成形、圧縮成形、一体成形、熱成形、機械加工などを含むがそれらに限定されない多数の製造方法のうちいずれかを用いて製造することができる。いくつかの実施形態では、機械加工される場合にポッドポンプチャンバは、機械的な固定具を用いて共に融合する、あるいは熱融合することができる。使い捨て可能ポンプの一実施形態では、ポンプハウジングは、PETE、PETG、およびPETを含むがそれらに限定されない材料製の薄膜から作製される。これらの実施形態では、ハウジングは、熱成形、真空または圧力成形することができ、ポンプ膜はハウジングに熱封止可能なプラスチック薄膜で形成される。いくつかの実施形態では、ポンプハウジングは多層膜である。本実施形態は、ポンプハウジングを別の構成要素に接合する助けとなる。
【0050】
図30は、本発明の別の実施形態に係る、より大きな流体制御カセットに組み込むことができる別のポッドポンプ2025の断面図である。本実施形態では、ポッドポンプは3つの剛質片、すなわち「上部」プレート2091、中央プレート2092、および「下部」プレート2093から形成される(「上部」および「下部」という用語は相対的なもので、ここでは図30に示す配向を参照して便宜上使用していることに留意されたい)。上部および下部プレート2091,2093は両面とも平坦であり、中央プレート2092には、様々な流体路、チャンバ、およびポートを画定する通路、窪み、および穴が設けられている。ポッドポンプ2025を形成するため、上部および下部プレート2091,2093は、共に半回転楕円体状チャンバを画定する略半回転楕円体状の部分を含むことができる。
【0051】
膜2109はポッドポンプの中央腔を、圧送される流体を受け取るチャンバ(ポンプチャンバ)と、ポンプを空気圧で作動する制御ガスを受け取る別のチャンバ(作動チャンバ)とに分離する。流体は、入口2094からポンプチャンバに入り、出口2095からポンプチャンバを出ることができる。入口2094および出口2095は、中央プレート2092と下部プレート2093の間に形成することができる。空気圧は空気圧ポート2106を通って供給されて、ポッドポンプ腔の一方の壁に対し正圧で膜2109を押しつけてポンプチャンバの体積を最小限にする(図30に示す)、あるいはポッドポンプ腔の他方の壁の方に負圧で膜を引っ張り、ポンプチャンバの体積を最大限にする。
【0052】
膜2109には、中央プレート2092の溝2089に堅く保持される厚いリム2088が設けられる。よって、上部プレート2091が中央プレート2092に超音波溶接される前に、膜2109が配置されて溝2089によって保持可能であるため、膜は2つのプレートの超音波溶接に干渉せず、膜の固定は、2つのプレートが極めて正確に超音波溶接されることには左右されない。よって、超音波溶接中、非常に厳密な公差を必要とせずにポッドポンプを製造することができる。
【0053】
1つまたは複数のポッドポンプ2025を、1つまたは複数のバルブ2000を含む単一のカセットに組み込むことができる。図31は、上記カセットの実施形態で使用可能な空気圧制御バルブ2000の断面図である。膜2090は中央プレート2092と共にバルブチャンバ2097を画定する。空気圧を空気圧ポート2096を介して供給し、正のガス圧で膜2090をバルブシート2099に押しつけてバルブを閉鎖する、あるいは負のガス圧で膜をバルブシートから離れるように引いてバルブを開放することができる。制御ガスチャンバ2098は、膜2090、上部プレート2091、および中央プレート2092によって画定される。中央プレート2092はその上に窪みを有し、膜の一方の側に制御ガスチャンバ2098を、膜の他方の側にバルブチャンバ2097を形成するように、窪み内へ膜2090を配置する。
【0054】
空気圧ポート2096は、上部プレート2091と共に、中央プレート2092の「上」面に形成される通路によって画定される。カセット内のいくつかのバルブチャンバ間に流体連通を提供することによって、すべてのバルブを単一の空気源によって同時に開放または閉鎖できるように、バルブをひとまとめにすることができる。中央プレート2092の「下」面に形成された通路が、下部プレートと共にバルブ入口2094およびバルブ出口2095を画定する。中央プレート2092を通じて形成された穴は、入口2094とバルブチャンバ2097(バルブシート2099を介して)との間、およびバルブチャンバと出口2095との間の連通を提供する。
【0055】
膜2090には、中央プレート2092の溝2089に堅く嵌合する厚いリム2088が設けられる。よって、上部プレート2091が中央プレート2092に超音波溶接される前に、膜2090が溝2088内に配置されて溝2088によって保持されるため、膜は2つのプレートの超音波溶接に干渉せず、膜の固定は、2つのプレートが極めて正確に互いに超音波溶接されることに左右されない。よって、超音波溶接中、非常に厳密な公差を必要とせずに、このバルブを製造することができる。図31に示すように、上部プレート2091は、膜2090が溝2089の離れる方向に付勢されすぎることを防ぎ、膜の厚いリム2088が溝2089から飛び出すのを防ぐように、制御ガスチャンバ2098内へ延びる追加材料を含むことができる。
【0056】
本実施形態ではポッドポンプは回転楕円体形であるが、さらに別の実施形態では卵型などの所望の形状を取ることができる。ポッドポンプの多くの実施形態は、ポンプチャンバ、作動チャンバ、隔膜(または可動部材)、少なくとも1つの作動ポート、および少なくとも1つの入口/出口ポートを備える。いくつかの実施形態では、ポッドポンプは入口ポートおよび出口ポートを備える。様々な各種実施形態を本明細書で説明しており、一実施形態に関して説明した機能は、どの実施形態にも利用可能であると理解すべきである。よって、実施形態の機能は混合し、合致させることができ、どの実施形態も本明細書に記載の機能のうち1つまたはそれ以上を備えることができる。
【0057】
図32Aおよび32Bを参照すると、ポンプチャンバカバー3302と、作動チャンバカバー3304と、中央プレート部3306とを有するポッドポンプ3300の別の実施形態が示されている。本実施形態では、中央プレート3306および作動チャンバカバー3304は、隔膜3308と1つまたは複数の二次隔膜3310または3312とを保有する。二次隔膜は受動的に動作する、あるいは気体、液体、または機械力により作動されて、ポンプチャンバカバー流体路3314を通る流体の流れを制御する活性バルブとしての役割を果たすことができる。ポッドポンプ3300の本実施形態では、流体路3314は、隔膜3308の位置に関係なく流体が流路3314を流れるように、ポンプチャンバカバー3302内に形成される。他の実施形態と同様、本実施形態では、ポンプチャンバカバー3302、作動チャンバカバー3304、および中央プレート3306は、一実施形態ではプラスチック製だが、他の実施形態では、金属やガラスを含むがそれらに限定されない他の材料製であってもよい。例示の一実施形態では、カバー3302,3304と中央プレート3306とはポリスルホンからなる。別の例示の実施形態では、それらは医療等級ポリカーボネート製である。本実施形態では、ポンプチャンバカバー3302、作動チャンバカバー3304、および中央プレート3306はレーザ溶接によって接合する、あるいは選択された構成要素の材料や所望のポッドポンプの用途に適した様々なその他の方法によって接合することができる。その他の接合の可能性としては、スナップ嵌めタブ、プレス嵌め、スナップ嵌め、溶剤溶接、加熱溶接、電磁溶接、抵抗溶接、RF溶接、ネジ、ボルト、超音波溶接、接着剤、使用の際にポンプに隣接する構成要素による締付け、または当該技術によって一般的に使用されるその他の接合方法などが挙げられるが、それらに限定されない。
【0058】
図33Aおよび33Bを参照すると、ポッドポンプ3400の一実施形態が示されている。本実施形態では、入口ポートおよび出口ポートはポンプチャンバ3406の対向端に配置され、ポンプの構造または意図する用途に応じて相互に交換可能である。隔膜3408は、ポンプチャンバ3406内にほぼ完全に拡張して示されている。本実施形態では、作動チャンバ3410内で流体圧によって完全に作動されるとき、入口および出口ポート3402および3404は隔膜3408により部分的または完全に遮断させられる。入口ポートまたは出口ポートの遮断は、特定用途で所望されるように、ポンプチャンバ3406を通る対象流体の流れを制限する、あるいは切り替える役割を果たすことができる。本実施形態では、隔膜3408のポンプ側、すなわち、隔膜3408が対象流体に接触する側は滑らかで、複数の対象流体に異なる流れの特徴を提供するか、あるいは、隔膜が完全にポンプチャンバ3406内にまで拡張して入口または出口ポート3402、3404を通る流れの低減が所望されるとき、隔膜3408とポンプチャンバ3406との間の異なる接触を提供することができる。いくつかの実施形態では、隔膜は、図33Bに示されるように可変の断面厚を有する。選択された隔膜材料の強度、柔軟性、およびその他の特性に対応するように、薄い、厚い、または可変の隔膜厚を使用することができる。また、隔膜を管理することによって、ある領域よりも別の領域で隔膜を撓め易くし、ポンプチャンバ3406内の対象流体のポンプ動作および流れの管理を助けるために、薄い、厚い、または可変の隔膜壁厚も使用することができる。本実施形態の隔膜3408は、中心部に最も近い断面領域が最も厚く示されている。しかしながら、断面が変動する隔膜3408を有する他の実施形態では、最も厚い領域と最も薄い領域を隔膜3408上の任意の位置に置くことができる。よって、たとえば、最も薄い断面を中心に配置し、最も厚い断面を隔膜3408の外周に近く配置することができる。さらに別の構造も可能である。
【0059】
いくつかの実施形態では、ポッドポンプは、機械、装置、または容器に集積または装着される装置に組み込まれる。本実施形態の一例は、集積ポッドポンプと、流体路と、流体ポートと、作動ポートと、作動流体路とを有するカセットである。図34A〜34Cおよび35A、35Bを参照してカセットの2つの実施形態を説明する。同様の原理を利用して、様々な数および構成のポンプ、バルブ、および流路を有する多くの追加実施形態が構築可能であると理解される。
【0060】
図34A〜34Cを参照して、ポッドポンプカセット4300の一実施形態を説明する。図34Aを参照すると、本実施形態のポッドポンプカセットは2つのポッドポンプ4310を備える。ポッドポンプ4310は任意のポッドポンプ実施形態でよいが、本例示の実施形態では、ポッドポンプ4310は図32および図33に示すポッドポンプに類似している。カセット4300は、作動プレート4320と、中央プレート4330と、ポンプチャンバプレート4340の3つのプレートを備える。
【0061】
作動プレート4320は、ポッドポンプ4310毎に、ポッドポンプ作動チャンバハウジング部4312と2つのバルブ作動ハウジング部4314とを備える。バルブ作動ハウジング4314はバルブ作動ポート4316を備える。ポッドポンプに加えて、カセット4300は、いくつかの実施形態では、様々な流体をポンプで送り出す、あるいは送り込まれる追加のポートおよび/または容器を備えることができる。
【0062】
中央プレート4330は、ポッドポンプ毎に、ポンプ隔膜4332と2つのバルブ隔膜4334とを備える。図示する実施形態では、バルブは、流体によって、本実施形態では空気圧によって作動される隔膜4334により作動されるボルケーノまたは活性バルブである。さらに、中央プレート4330の追加隔膜が、カセット4300の実施形態に示されている。
【0063】
ポンププレート4340を参照すると、各ポッドポンプ4310は、一体化流体路4344を含むポンプチャンバハウジング4342を備える。ポンプチャンバハウジング4342は、外側流体路4346と流体連結する。本例示の実施形態では、3つのプレート4320、4330、4340は共にレーザ溶接される。ただし、他の実施形態では、いくつか上述したように、様々な形式の装着を利用することができる。
【0064】
図34Bを参照すると、カセット4300の断面が示されている。バルブ隔膜4334、バルブ作動ハウジング部4314、および外側流体ライン4346を含むボルケーノバルブが示されている。バルブは、作動ポート4318を通る空気圧によって作動される。
【0065】
図34Cを参照すると、いくつかの実施形態では、エアフィルタ4350と追加の流体ライン4352をカセットに含めることができる。
カセットの別の実施形態を図35Aおよび35Bに示す。図35Aを参照すると、カセット4400は4つ以上の部分を含む。それらの部分は、中央プレートにレーザ溶接された複数カバー4412〜4416を有する中央プレート4410を含む。図34Aで4340として示されるポンププレートではなく、これらの複数カバー4412〜4416が使用される。図35Bを参照すると、中央プレート4410が再度示されている。しかし、本実施形態では、図34Aで4320として示される単一の作動プレートではなく、複数カバー4442〜4444が使用される。図35A〜35Cは一実施形態を示し、他の実施形態では、複数カバーの数は変更可能である。
【0066】
図36Aおよび36Bに示す実施形態では、図34A〜34Cに示す種類の2つのポッドポンプ2025a、2025bと図31に示す種類の多数のバルブ2000a〜2000dとが、様々な流体路およびその他の構成要素と共にポンプカセット2015に組み込まれている。ポンプカセット2015は、流体路2007,2009を介してポッドポンプ2025aと、流体路2008,2010を介してポッドポンプ2025bと流体連通する共通の入口2005を備える。ポンプカセット2015は、流体路2011,2013を介してポッドポンプ2025aと、流体路2012,2014を介してポッドポンプ2025bと流体連通する共通出口2006も備える。よって、ポッドポンプ2025a,2025bは、共通の入口2005から流体を引き出し、その流体を共通出口2006へ圧送する。一方で、バルブ2000aは、流体路2008と流体路2010との交点(すなわち、ポッドポンプ2025bへの入口)で流体流を制御するのに使用される。バルブ2000bは、流体路2007と流体路2009との交点(すなわち、ポッドポンプ2025aへの入口)で流体流を制御するのに使用される。バルブ2000cは、流体路2011と流体路2013との交点(すなわち、ポッドポンプ2025aの出口)で流体流を制御するのに使用される。バルブ2000dは、流体路2012と流体路2014との交点(すなわち、ポッドポンプ2025bの出口)で流体流を制御するのに使用される。ポッドポンプ2025a,2025bはそれぞれ各自の空気圧インタフェース2106a,2106bを有する。さらに、バルブ2000a〜2000dはそれぞれ各自の空気圧インタフェース2096a〜2096dを有する。よって、各ポッドポンプおよび各バルブは、基地局によって個々に制御可能である。
【0067】
2つ以上のポッドポンプが存在する場合、ポッドポンプは、任意の適切な形で、たとえば同時に、非同期で、一致して、ずれて動作させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、2つのポンプがポンピングサイクルに影響を及ぼすようにずれて動作することができ、たとえば、1つ目のポンプチャンバが満ちる一方、2つ目のポンプチャンバが空になる。所望のポンピングサイクルを付与するため、0度(ポッドポンプが一致して満ちたり、空になる)と180度(一方のポッドポンプが満ちる間、他方のポンプが空になる)との間の任意の位相関係を選択することができる。180度の位相関係は、ポッドポンプのセットを出入りする連続的な流れを生み出すことができる。たとえば、二重針または二重内腔カテーテル流と使用するために連続流が所望される場合、これが有益である。しかしながら、単一針/単一内腔流の場合には、0度の位相関係を設定することが有益である。0度の関係の場合、ポッドポンプは最初に針から充填され、次に血液流路を通って血液を運び、同じ針を用いて患者に血液を戻す。また、透析器全体での押し/引き関係(血液透析または連続的バックフラッシュ)を達成するには、場合によっては、0度〜180度間の位相の実行を利用することができる。
【0068】
抗凝血剤(たとえば、ヘパリンやその他の適切な抗凝血剤)はバイアル(vial)11(またはチューブやバッグなどのその他の抗凝血剤供給源)内に含有させることができ、血流回路141は、バイアルの封(seal)を貫通することのできるスパイク201(一実施形態では、針である)を備えることができる。スパイク201は、プラスチック、ステンレス鋼、またはその他の適切な材料から形成でき、場合によっては消毒可能な材料製であってもよく、たとえば、材料は消毒の際の十分な高温および/または放射に耐え得る。
【0069】
場合によっては、計量チャンバとしての役割を果たす抗凝血剤ポンプ80は、血液回路への抗凝血剤の流れを制御するために使用することができる。抗凝血剤ポンプ80はポッドポンプまたは隔膜型計量ポンプであってもよい、および/または空気などの制御流体によって作動させることができる。たとえば、抗凝血剤ポンプ80は、チャンバをポンプコンパートメントと制御コンパートメントとに分割する可撓隔膜を有する剛質チャンバを備えることができる。チャンバの制御コンパートメント用の一方のバルブは第1の制御流体源(たとえば、高圧空気源)に接続し、他方のバルブは第2の制御流体源(たとえば、低圧空気源)または真空源に接続することができる。チャンバのポンプコンパートメント用のバルブは、制御コンパートメントと協調して開閉させることによって、血液への抗凝血剤の流れを制御することができる。1つの実施形態では、フィルタ81を通じて供給される空気が抗凝血剤ポンプ80によって血液流路に導入され、たとえば、抗凝血剤がバイアルから引き出される前または後にバイアル11内に空気を供給することができる。
【0070】
流体管理システム(「FMS」)の測定は、膜の一行程中にポンプチャンバを通って圧送される流体の体積を測定する、あるいはポンプチャンバ内の空気を検出するために使用することができる。例示の一実施形態では、抗凝血剤ポンプ、透析液ポンプ、またはその他の隔膜型流体ポンプによって送出される液体の体積は、充填行程の最後と送出行程の最後での体積測定を算出するのにチャンバ圧の変化を利用するFMSアルゴリズムを使用して判定される。充填行程の最後と送出行程の最後で算出された体積間の差を、実際の行程容積(stroke volume )を判定するために使用することができる。この実際の行程容積は、特定サイズのチャンバに関する予想行程容積と比較することができる。実際行程容積と予測行程容積が大きく異なる場合、行程が適切に完了しておらず、エラーメッセージを生成することができる。
【0071】
液体を圧送し、ポンプチャンバ内の気体の存在を検出するため、測定ガスを利用してポンプチャンバを作動するポンピングシステムの一実施形態を図37に概略的に示す。ポンピングシステム100は、固定量の測定ガスを含有する流体供給システム102と、システム内の測定ガスの体積を変更する機構とを備える。ポンピングシステム100は、ポンプチャンバ108と制御チャンバ110とを内部に配置する略剛質の容器106を備えるポンプ104も含む。ポンプチャンバ108および制御チャンバ110は流体的に2つのチャンバ間に配置される可撓膜112によって隔離される(すなわち、流体連通して配置することができない)ため、ポンプチャンバ108は制御チャンバ110に連結され、動作可能に結合される。このような膜は、(単に一例として)医療級ポリ塩化ビニルで構成することができる。
【0072】
本明細書で使用する「略剛質」という用語は、ポンピングシステムに印加される圧力下で実質上撓む、あるいは移動することのない材料またはその材料製の構成要素を指す。本明細書で使用する「制御チャンバ」という用語は、たとえば、体積チャンバに力を印加する目的で、好適な実施形態では、体積容器の体積に関連する測定パラメータを決定する目的で、ポンプチャンバなどの体積チャンバに連結されるか、あるいはそのような体積チャンバを具備するポンピングシステムのチャンバを指す。ポンピングシステムのチャンバまたはその他の構成要素に関連して本明細書で使用される「連結される」という用語は、チャンバまたは構成要素がポンピングシステムの別の構成要素に装着され、あるいは相互接続されて、ポンピングシステムの別の構成要素が、連結されるチャンバまたは構成要素の外部表面に力を印加することができることを指す。
【0073】
ポンピングシステム100によって圧送される液体は、入口バルブ116を含む入口ライン114を介してポンプチャンバ108に入る。液体は、ポンプチャンバ108から出口バルブ120を含む出口ライン118を通って所望の下流の目的地まで圧送することができる。制御チャンバ110は、制御チャンバ内の測定ガスの圧力を判定する圧力測定素子122を備える。本明細書で使用する「圧力測定素子」という用語は、流体圧を測定可能な信号またはパラメータに変換することのできる装置を指す。本実施形態で有効となり得る圧力測定素子は、トランスデューサ、圧力ゲージ、圧力計、圧電抵抗素子、および当業者にとって自明なその他の素子を含むが、これらに限定されない。
【0074】
ポンピングシステム100の制御チャンバ110の好適な実施形態は、通気バルブ126を内蔵する通気ライン124も備える。制御チャンバ110は、測定ガス入口ライン130を介して可変体積シリンダ128と流体連通して接続される。可変体積シリンダ128は、システム内に含有される測定ガスの体積を圧縮する、あるいは拡張するためにモータ133により移動および作動されるピストン132を内蔵する。
【0075】
ポンピングシステム100は好ましくは、システムの各種バルブ、圧力トランスデューサ、モータなどに電気的に接続され、好ましくは所望の動作シーケンスまたはプロトコルに従い上記構成要素を制御するように構成されたプロセッサ134を含む。プロセッサが本明細書の特定のタスクを実行するように「構成されている」という言及は、上記プロセッサが指定されたタスクを実行するのに適した回路、プログラミング、コンピュータメモリ、電気接続部などを備えることを指す。プロセッサは、適切なソフトウェア、特注設計のハードウェア、またはその組み合わせを有する標準的なマイクロプロセッサとして実装することができる。より詳細に後述するように、プロセッサ134は、システムの各種構成要素を動作させる制御回路に加えて、好ましくは、ポンプチャンバ108の体積に関連する測定パラメータを決定し、ポンプ104の動作中にポンプチャンバ108に含まれる気体の存在を検出するように構成された比較器を備える。本明細書で使用する「比較器」は、2つまたはそれ以上の測定パラメータまたはそこから得られるその他のパラメータの値を比較することのできる(たとえば、適切なプログラミングを備えた)プロセッサ、あるいはその回路または構成要素を指す。
【0076】
気体がシステム全体を移動できる実施形態が問題となる場合、ポンプチャンバ108は、入口ライン114が出口ライン118の上方に配置されるように、動作中に略垂直構造で配向される。こうした配向は、動作中にポンプチャンバ108内に存在し得る気体がポンプチャンバから出口ライン118を通って下流の目的地まで圧送されるのを防ぐのに有効である。その代わりに、ポンプチャンバ108内に含まれるガスはすべてポンプチャンバの上部、たとえば入口ポート136に隣接する領域に向かって上昇し、ポンプチャンバから圧送される前に、以下より詳細に説明するように、システムによって検出される。
【0077】
いくつかの実施形態では、ポンプチャンバ108は、複数のスペーサ138を新規に内蔵する。スペーサ138は、ポンプチャンバ108内に含まれる液体が出口ライン118を通って圧送される際に、可撓膜112がポンプチャンバの内表面140に接触するのを防ぐ機能を果たす。ポンピング行程中、スペーサ138によって許容される可撓膜112の最大変位を、図37に点線442で示す。可撓膜112がポンプチャンバ108への最大変位を取るときですら、点線442に示されるように、スペーサ138がポンプチャンバ108に存在し得るガスを収容するデッドスペース144を生成することによって、気体がポンプチャンバを通って圧送されるのを防止することが分かる。スペーサ138は、ポンプチャンバ108の垂直配向と組み合わせられることで、以下でより詳細に説明するように、ポンプチャンバ108に存在し得る気体がポンプチャンバからより容易に除去されるようにポンプチャンバの上部へ上昇することを助ける。
【0078】
ポンピングシステム100のポンプチャンバ108は、可撓膜112をその上に配置する(たとえば、ポリアクリレートなどの剛質プラスチック製の)略剛質の壁145によって実質上画定されることで、体積チャンバを形成する。
【0079】
ポンプチャンバ108で液体を圧送するため、およびポンプチャンバ108内の気体の存在を検出するための図37に示すポンピングシステム100の動作方法の一実施形態を図38A〜38Cのフローチャートに示す。図38Aを参照して、ポンピングシステム100を利用する例示のポンピングサイクルを説明する。図示されるポンピングサイクルは、圧送および空気検出目的で、選択された圧力を膜112に印加するため、システム内の測定流体の圧力を変化させるピストン変位の変動を利用する。図示される実施形態は、測定されたあるいは既知の圧力および体積値からポンプチャンバの体積を判定するために状態式(たとえば理想気体の法則)も利用する。
【0080】
測定ガスの圧力−体積挙動を表す状態式を利用することによって、ポンプチャンバおよび/または制御チャンバの体積を、少なくとも部分的に、測定された圧力から判定する空気/気体検出プロトコルを採用する実施形態の場合、ポンプチャンバは好ましくは、弾性膜を備える可動面を含む。弾性膜が弛緩した平衡状態から伸張または変位させられるとき、弾性膜はその復元力により、膜の両側(すなわち、ポンプチャンバと制御チャンバ側)の圧力を互いに異ならせることができ、その場合、圧力差やさらには変位/伸張に対する抗力(膜に蓄えられる応力/弾性エネルギー)の差の度合いは、膜の弛緩した平衡状態からの伸張または変位の度合いに依存する。さらに、このような実施形態では、上述のポンプチャンバ内の空気/気体を検出する第1および第2の条件における印加力でのポンプ/制御チャンバの体積判定中、弾性膜に印加される測定ガスの圧力は、圧力が印加される前の平衡状態から、各条件によって異なる程度で弾性膜(空気/気体がポンプチャンバ内に存在する場合)を伸張させるため、所与のレベルの印加圧力に応じた、膜の応力およびさらなる変位への抗力は、第1の状態と第2の状態とで異なる(すなわち、第1および第2の条件での弾性膜の力/変位反応は非対称である)ことが好ましい。こうした実施形態では、制御チャンバ内の圧力とポンプチャンバ内の圧力の差は、平衡状態では、印加圧力の第1の条件と印加圧力の第2の条件とで異なる。こうした実施形態では、特定の物理的機構に拘束されず、上記第1および第2の条件で判定されるポンプ/制御量の測定中、異なるレベルの弾性膜の応力および緊張は、測定ガスの圧力−体積の挙動を、状態式により各条件に対して予測される挙動から少なくとも部分的に偏向させ、その偏向が、状態式を使用して各条件に関して判定されるポンプ/制御チャンバの体積の差を生みだす、および/または増大させると考えられる。
【0081】
いくつかの実施形態では、ガス検出のための体積判定中に利用される印加された測定ガス圧に対する弾性膜に応じた上記非対称を達成する、あるいは増大させる方法の1つは、体積測定のために膜に加圧された測定ガスを印加する前に、ポンプチャンバの可撓な弾性膜が、膜の両側への略均等な流体圧により、弛緩した平衡状態で得られる構造から既に伸張させられているときに体積判定ステップを実行することである。これは、たとえば、第1の条件での体積測定中には正の測定ガス圧、および第2の条件での体積測定中には負の測定ガス圧(あるいはその逆も可)を用いて、制御チャンバの方向での膜の変位によって、弾性膜が少なくともやや伸張させられる、好ましくは十分に伸張させられるように、ポンプチャンバを十分な液体で充填した後に空気/気体検出に関連する体積判定を実行することによって達成することができる。別の実施形態では、空気/気体検出に含まれる体積判定中の弾性膜の反応に対する所望の非対称は、異なる、好ましくは十分に異なる程度の膜への弾性伸張を与えるように選択される第1および第2の測定条件で実行される体積判定のため、弾性膜に印加される複数レベルの測定ガス圧を利用することによっても達成することができる。ポンプ/制御チャンバ体積算出手順に基づく状態式を利用するときに使用されるポンプチャンバの好適な実施形態は、少なくとも部分的に弾性膜から成る可動面を含むが、別の実施形態では、第1および第2の条件での体積測定中に表面に印加される測定流体圧が、表面での異なるレベルの応力と、制御チャンバおよびポンプチャンバ内での平衡圧の差とを生じさせる限り、非弾性可動面を使用することができる。このような実施形態は、たとえば、非弾性可動面または弛緩膜を使用することができるが、体積判定の第1の条件中に印加される測定流体圧が、最大限の許容変位まで表面/膜(ポンプチャンバ内にガスが存在する場合)を移動させるため、表面が印加力に応じてもうそれ以上自由に移動できず、応力が表面/膜で生成され、ポンプチャンバと制御チャンバ間に圧力差が存在する場合に限られる。こうした実施形態の第2の条件での体積測定は、異なる測定流体圧を表面に印加することができ、その圧力が表面/膜(ポンプチャンバ内に気体が存在する場合)を移動させて、表面/膜内の応力を低減する、あるいは実質的に除去するものとなるため、平衡状態で、ポンプチャンバと制御チャンバ内の圧力差は低減される、あるいはほぼ除去される。
【0082】
図38のプロトコルを再度参照すると、最初は、ポンプチャンバ108が空にされ、弾性膜112はライン442によって定義される最大許容変位でポンプチャンバ108内に延在していると仮定される。ピストン132は、かなり左の移動位置(図37に位置1として示す)にあると仮定される。図38Aを参照すると、ステップ1(470)は、全バルブが閉鎖され、ピストン132および可撓膜112が上述の定位置にあるようにシステムを初期化することを含む。ステップ2(472)は、圧送される液体でポンプチャンバ108を充填することを含む。該ステップでは、最初に入口バルブ116を開放し、次に作動ピストン132を図37の位置3に移動するようにモータ133を作動させることによって、ΔVとして定義される量だけ、ポンプチャンバ108の体積を増加させる。次に、ポンプチャンバ108を隔離するために、入口バルブ116を閉鎖する。例示のポンピングサイクルのステップ3(474)は、ポンプチャンバ108内に含まれる気体の存在を検出する一連のサブステップを含む。ステップ3(474)を図38Bでより詳細に説明する。再度図38Aを参照すると、ポンピングサイクルのステップ4(208)は、ポンプチャンバ108に含まれる液体を送出することを含む。最初に、出口バルブ120が開放される。次に、モータ134が作動されてピストン132を位置3から位置1に移動させることによって、ΔVの体積の流体を送出する。次いで、出口バルブ120が、ポンプチャンバ108を隔離するために閉鎖される。ポンプチャンバ108によって移送される体積の判定精度が非常に重要である実施形態では、ステップ4(208)後のポンプチャンバ108の体積は、図38Bの体積算出および空気検出サブサイクルのサブステップ1〜4(476、478、480、482)を繰り返すことによって判定可能である。この場合、上述のポンピング行程で送出される体積は、ステップ3(474)とステップ5(210)で判定されるポンプチャンバ108の体積の差を取ることによって判定可能である。最後に、複数のポンプ行程が所望される場合、図38Aの全ポンピングサイクルを繰り返すことができる。
【0083】
図38Bおよび38Cは、図38Aのステップ3(474)に示される体積算出とガス検出方法の一実施形態を示す。サブサイクル474のサブステップ1(476)は、圧力トランスデューサ122で制御チャンバ110内の測定ガス圧P1を測定することと、プロセッサ134にその圧力を記録および記憶することとを含む。サブステップ2(478)で、ピストン132が位置3から位置1に移動されることによって、システム内に含まれる測定ガスの体積がΔVだけ低減される。サブステップ3(480)で、制御チャンバ110内の測定ガス圧が再度測定され、P2として記録される。システム内の測定ガスの圧縮のため、P2はP1よりも大きいと理解される。次に、サブステップ4(482)で、ポンプチャンバ108に含まれる流体の体積が、第1の条件のポンプチャンバで、利用される測定流体の適切な状態式を用いて判定される。空気などの測定ガスの場合、比較的低いポンピング圧(本発明に係るポンピングシステムによって使用される通常のポンピング圧は約−14psig〜約15psigである)を使用するシステムに関しては、理想気体の法則を採用することができる。測定ガスがシステムに追加されない、あるいはシステムから除去されないと認識し、理想気体の法則と質量保存の法則とを組み合わせて、ポンプチャンバ108内に含まれる流体の体積は、下記の式1によって判定される(図38Bのサブステップ4を参照)。
【0084】
VF1=VT−(P2ΔV)/(P2−P1)
式1は、測定ガスの体積を変化させることによって生じる温度変化または温度差が最小限であり、システムが略等温であると仮定する。温度変化が相当大きくなることのあるシステムの場合、使用される状態式によって定義されるように、当業者にとって自明である通り、測定流体の温度依存がサブステップ4(482)の体積算出に直接的に組み込まれる場合があると理解される。式1のVFはポンプチャンバ108の内体積を指し、VTはポンプチャンバ108、制御チャンバ110を含むシステムの体積と、測定流体入口ライン130およびシリンダ128に含まれる体積との既知の合計を指す。
【0085】
体積算出サブサイクル474の残りのサブステップは、異なる条件でポンプチャンバ108の体積を予め決定することと、第1および第2の条件で判定された体積を比較することとを含む。図38Bのサブステップ5(484)で、制御チャンバ通気バルブ126が開放されて、制御チャンバ110内の圧力と周囲大気とが均等化される。その後、通気バルブ126が閉鎖される。新たな圧力P1が、サブステップ6(486)で制御チャンバ110のトランスデューサ122を用いて測定される。サブステップ7(488)で、ピストン132が位置1から位置3まで移動させられることによって、システム内の測定ガスの体積がΔVだけ増大される。サブステップ8(490)で、大気圧以下となる制御チャンバ110内の新たな圧力P2が測定および記録される。サブステップ9(400)で、ポンプチャンバ108の体積VFが、サブステップ4(482)で上述したようにして算出される。サブステップ10(402)は、サブステップ4(482)で判定されるVFとサブステップ9(400)で判定されるVFとの差を判定することと、その差の絶対値を取ることとを含む。図38Cに示すサブステップ11(404)で、上記の差が、動作中にポンプチャンバ108に存在し得る最大許容量の空気またはその他の気体に比例する所定の限界と比較される。所定の限界は通常、デッドスペース144の体積を超える空気の体積が所定の限界をも超えるように実験的に決定され選択される。その差が所定の限界を超える場合、プロセッサ134は警告状態を生成し、空気パージを開始する。
【0086】
測定された体積の差が許容可能な限界未満である場合(404)、システムはポンプチャンバ108に含まれる液体を圧送するように進行する。サブステップ12(406)で、システムは、制御チャンバ110内の圧力と周囲大気圧とを平衡させるために制御チャンバ通気バルブ126を開放し、次に通気バルブ126を閉鎖する。ポンピングシステム100は現時点で、ポンプチャンバ108に含まれる液体を送り出す条件下にある。
【0087】
上述したように、2つの異なる条件下で測定された体積は、ポンプチャンバ内の気体の存在を検出するため比較することができる。気体の存在がポンプチャンバ内で検出され、図38Cのサブステップ11(404)で上述したようにシステムに警告を発せさせるのに十分な量である場合、ポンピングシステム100は、上述したように所望の下流目的地に流体を送り出すよう進む代わりに、空気パージを開始する。空気パージ中は、流体がポンプチャンバ108から圧送されている間に出口バルブ120が開放される代わりに、入口バルブ116が開放され、ポンプチャンバ内のガスを含む流体は、ポンプチャンバから入口ライン114を通って安全なパージ目的地に圧送される。
【0088】
血流回路141は、血液流路に存在し得る気泡を除去するためのエアトラップ19も備えることができる。場合によっては、エアトラップ19は、存在し得る空気を重力により血液から分離する、および/または血液をサンプリングするためのポートを含むことができる。
【0089】
図4は、図2の実施形態における平衡回路143の近接図である。平衡回路143では、透析液は、任意の限外濾過フィルタ73から透析液ポンプ15内へ流れる。本実施形態では、透析液ポンプ15は、2つのポッドポンプ161、162と、2つの平衡チャンバ341、342と、平衡チャンバ341、342をバイパスするポンプ35とを備える。平衡チャンバ341、342は、チャンバを2つの別個の流体コンパートメントに分割する可撓隔膜を有する剛質チャンバから形成され、一方のコンパートメントへの流体の進入が他方のコンパートメントから流体を追い出す(その逆も可)のに使用されるように構成される。平衡ポッドの例示の実施形態を図39に示す。平衡ポッドは、上述のポッドポンプと同様に構成される。しかし、平衡ポッドは、作動チャンバとポンプチャンバではなく2つの流体平衡チャンバを備え、作動ポートを備えていない。加えて、各平衡チャンバは入口1102および出口1104を備える。例示の実施形態では、平衡チャンバ壁1120、1122のそれぞれに溝1126が設けられる。溝1126を以下より詳細に説明する。膜1112は、2つのチャンバ間の封止を提供する。平衡チャンバは、両チャンバが均等な体積流量を維持するように、チャンバを出入りする流体流のバランスを取るように働く。各チャンバの入口1102および出口1104は同じ側に示されているが、他の実施形態では、各チャンバの入口1102および出口1104は異なる側にある。さらに、入口1102および出口1104は、平衡ポッドが組み込まれる流路に応じて、いずれかの側に配置することができる。
【0090】
一実施形態では、内部透析液回路内の流の平衡化は以下のように働く。1セットの空気式バルブ211、212、213、241、242は同期して共に制御されて動作し、バルブ211、212、213がひとまとめにされ、バルブ241、242がひとまとめにされており、第2セットの空気式バルブ221、222、223、231、232も同様に同期し共に制御されて動作し、バルブ221、222、223がひとまとめにされ、バルブ231、232がひとまとめにされている。第1の時点で、第1セットのバルブ211、212、213、241、242が開放され、第2セットのバルブ221、222、223、231、232が閉鎖される。新鮮な透析液が平衡チャンバ341に流れ込み、使用済み透析液が透析器14からポッドポンプ161に流れ込む。バルブ221が閉鎖されているため、新鮮な透析液は平衡チャンバ342に流れ込まない。新鮮な透析液が平衡チャンバ341に流れ込むにつれ、平衡チャンバ341内の使用済み透析液は追い出され、平衡回路143を出る(バルブ223が閉鎖されているため、使用済み透析液はポッドポンプ161に進入しない)。同時に、ポッドポンプ162は、ポッドポンプ内に存在する使用済み透析液を(開放されているバルブ213を通って)平衡チャンバ342内に押しやる(バルブ242、222は閉鎖されており、使用済み透析液は確実に平衡チャンバ342に流れ込む)。これにより、平衡チャンバ342内に含まれる新鮮な透析液は、平衡回路143を出て透析器14に入る。さらに、ポッドポンプ161が、透析器14からポッドポンプ161内へと使用済み透析液を引き出す。
【0091】
いったんポッドポンプ161および平衡チャンバ341が透析液で満たされると、第1セットのバルブ211、212、213、241、242が閉鎖されて、第2セットのバルブ221、222、223、231、232が開放される。バルブ221が開放される間、バルブ212が開放されるため、新鮮な透析液は平衡チャンバ341ではなく平衡チャンバ342に流れ込む。新鮮な透析液が平衡チャンバ342に流れ込むにつれ、バルブ213は現時点で閉鎖されているため、チャンバ内の使用済み透析液は追い出され平衡回路を出る。さらに、現時点でバルブ232が閉塞されバルブ222も開放されているため、使用済み透析液がポッドポンプ161に流れ込むのを防止されている間、ポッドポンプ162は透析器からポッドポンプ内へと使用済み透析液を引き出す。バルブ232、211が閉鎖され、バルブ223が開放されるため、ポッドポンプ161は(先のステップからの)ポッドポンプ内に含まれる使用済み透析液を平衡チャンバ341に押し込む。これにより、(現時点でバルブ241が開放され、バルブ212が閉鎖されているため)、平衡チャンバ341内に含まれる新鮮な透析液が透析器14内へと誘導される。このステップの最後で、ポッドポンプ162および平衡チャンバ342は透析液で満たされる。このため、システムの状態は本この説明の最初の構成に戻るので、サイクルを繰り返して透析器14との間で透析液の一定流を確保することができる。一実施形態では、平衡チャンババルブが適切に機能している(たとえば、開放と閉鎖)ことを保証するため、平衡チャンババルブの制御側にかかる流体(たとえば空気)圧が監視される。
【0092】
具体例としては、第1セットのバルブのポートに真空(たとえば、4psiの真空)を印加してそれらのバルブを開放させ、第2セットのバルブに正圧(たとえば、20psiの空気圧)を印加してそれらのバルブを閉鎖させることができる(またはその逆も可)。各ポッドポンプは、平衡チャンバ341、342の一方へ透析液を促す。透析液を平衡チャンバのある体積に押し込むことによって、同量の透析液が隔膜によって平衡チャンバの残りの体積から外へ絞り出される。各平衡チャンバでは、ある体積が新鮮な透析液によって占められて透析器へと向かい、残りの体積が透析器から来る使用済み透析液によって占められる。よって、透析器に入る透析液の体積と透析器から出る透析液の体積は略均等に保たれる。
【0093】
バイパスポンプ35は、ポッドポンプ161,162のいずれも通過せずに透析液流を透析器14から平衡回路143を通って方向付けることができる。本実施形態では、バイパスポンプ35は、剛質チャンバと、各チャンバを流体コンパートメントおよび制御コンパートメントに分割する可撓隔膜とを有する、上述したものと同様のポッドポンプである。このポンプは、上述したその他のポッドポンプおよび/または計量ポンプと同一であっても異なっていてもよい。制御流体がバイパスポンプ35を作動させるために使用されると、透析器の出ていく(使用済み)透析液の側にかかる圧力がさらに低下して、流体が透析器内の血液からさらに限外濾過される。これにより、正味の流体が患者の血液から透析器を通って最終的に排水口へと流出する。このようなバイパスは、たとえば、患者が腎臓を通じて余分な流体(主に水)を排出できないことにより増大し得る、患者の有する流体の量を低減する際に有効である。図4に示すように、バイパスポンプ35は、ポッドポンプ161,162の動作に関係なく、制御流体(たとえば、空気)によって制御することができる。この構造により、患者からの上記流体の除去を達成するため、透析液ポンプを血液ポンプと不均衡に、あるいは位相をずらして動作させる必要がなく、患者からの正味流体除去をより容易に制御することができる。
【0094】
透析器全体の流のバランスを取るため、血流ポンプ、平衡回路のポンプ、および方向付け回路(後述)のポンプを協働するように動作させて、透析器に入る流れが透析器を出る流れとほぼ均等になるように確保することができる。限外濾過を必要とする場合、限外濾過ポンプ(存在すれば)をその他の血液ポンプおよび/または透析液ポンプの一部または全部と関係なく動作させて、所望の限外濾過速度を達成することができる。
【0095】
透析液の気体発生を防止するため、平衡回路のポンプは大気圧を超える圧力下に保つことができる。しかしながら、対照的に、血流ポンプおよび方向付け回路ポンプは大気圧未満の圧力を使用して、隔膜をチャンバ壁の方に引き、充填行程を完了させる。流体が透析器の半透膜全域を移動し、また、平衡回路のポンプが正圧で動作するため、平衡回路ポンプは、平衡回路チャンバの透析器への送出行程と血液ポンプの送出行程とを同期させるために血流ポンプからの情報を利用することができる。
【0096】
一つの実施形態では、このような平衡化モードで動作する際、血流ポンプからの送出圧力がなければ、平衡回路ポンプの隔膜は透析器全域の流体を血液内へ押し出し、平衡回路の別のポッドは完全に充填しない。このため、血流ポンプは、能動的に一行程送出しているときに報告する。血流ポンプが一行程送出しているとき、内部透析液ポンプが動作する。血流ポンプが血液を送出していないとき、透析器から内部透析液ポンプへの流れを制御するバルブ(および、上述したようにこれらのバルブとひとまとめにされたその他の平衡化バルブ)を閉鎖して、透析液側から血液側への流体移送が発生するのを防止する。血流ポンプが送出していない間、内部透析液ポンプは有効に凍結され、いったん血流ポンプが送出を再開すれば、内部透析液ポンプの送出行程が再開される。内部透析液ポンプ充填圧は、ポンプが最小インピーダンスで大気圧を超えて動作することを確実にするため、最小の正の値に設定することができる。さらに、内部透析液ポンプ送出圧は、透析器のいずれかの側にかかる圧力とほぼ一致するように血流ポンポ圧に設定され、内部透析液ポンプの送出行程中の透析器を横断する流れを最小限にとどめることができる。
【0097】
別の実施形態では、内部透析液ポンプは、血液が透析器に送り出される圧力よりわずかに高い圧力で、透析液を透析器に送出する。これにより、完全にバランスのとれたチャンバの清浄な透析液が透析器に送り出される。戻り側では、内部透析液ポンプが、透析器の血液側の出口圧よりもわずかに低い圧力で、透析器からの使用済み透析液で満たし、収容透析液ポンプチャンバを確実に充填することができる。その結果として、平衡チャンバ内の全行程を完了させるのに十分な透析液を確保することができる。これらの圧力差によって生じた半透膜の横断流は、相殺し合う傾向にあり、それ以外の方法でポンピングアルゴリズムは、透析器の透析液側と血液側にかかる平均圧力を合致させようとする。
【0098】
停滞した血液流は血栓を起こす可能性があるため、治療中、血液流をできる限り連続的に保つことが通常有益である。また、血流ポンプの送出流量が非連続的である場合、平衡化ポンプはより頻繁に行程を一時停止し、結果的に非連続的および/または低透析液流量をもたらしかねない。しかし、血流ポンプを通る流れは、様々な理由で非連続的になる可能性がある。たとえば、患者に安全なポンピング圧を提供するため、圧力が血流ポンプ内で、たとえば、+600mmHGおよび/または−350mmHGに制限される場合がある。たとえば、二重針流の場合、血流ポンプの2つのポッドポンプは、互いに180度位相をずらして動作するようにプログラムすることができる。圧力に制限がない場合、この位相合わせは常に実行可能である。しかしながら、患者にとって安全な血流を提供するため、これらの圧力は制限される。(小型の針、粘度が非常に高い血液、わずかな患者アクセスなどのため)充填行程でのインピーダンスが高い場合、負圧の限界に達する場合があり、充填流速が所望の充填流速より遅くなる。よって、送出行程が先の充填行程が終わるのを待たなければならないため、結果的に血流ポンプの送出流速を一時停止することになる。同様に、単一針流の場合、血流ポンプが0度の位相で動作し、2つの血流ポンプのポッドポンプは同時に空になり充填される。両方のポッドポンプが充填されれば、2つのポッドポンプの体積が送出される。一実施形態では、一続きの作動で、まず第1のポッドポンプ、次に第2のポッドポンプが充填された後、まず第1のポッドポンプ、次に第2のポッドポンプが空になる。よって、単一針または単一内腔構造での流れは非連続的になることがある。
【0099】
圧力飽和限界を制御する方法の1つは、所望の流速を最も遅い充填行程および送出行程に制限することである。この結果、血液送出流速は遅くなるが、流速はいまだに既知であり、より連続的になり、より正確で連続的な透析液流速を可能にする。単一針動作で血液流速をより連続的にするもう1つの方法は、充填時間が最小限になるようにポッドを充填するのに最大圧を使用することである。次に、所望の送出時間を、所望の行程時間合計から充填行程にかかる時間を引いた時間に設定することができる。しかしながら、血液流が連続的でなくなるほど、血流ポンプが充填しているときに透析液ポンプが停止される時間を補うため、透析器への血液送出中に透析液流速を上方向に調節しなければならない。これが正確なタイミングで実行されれば、複数行程にわたる平均透析液流速は、所望の透析液流速に合致させることができる。
【0100】
図5は、図2の実施形態の方向付け回路142の近接図である。本実施形態では、方向付け回路142は、透析液ポンプ159を介して、透析液タンク169からヒータ72および限外濾過フィルタ73へ透析液を供給することができる。ヒータ72は、体温および/または血流回路内の血液が透析液によって加熱され、患者に戻る血液が体温以上となるような温度まで透析液を温めるために使用することができる。場合によっては、ヒータ72は制御システムに接続されて、不正確に加熱された透析液(すなわち、透析液が熱すぎるか冷たすぎる)がリサイクルされる(たとえば、透析液タンク169に戻される)、あるいは透析器へ送られる代わりに排水口へ送られる。ヒータ72は、いくつかの実施形態では、消毒または殺菌のために使用することもできる。たとえば、水を血液透析システムに通過させ、消毒または殺菌できる温度、たとえば、約70℃、約80℃、約90℃、約100℃、約110℃などの温度に加熱されるようにヒータを用いて加熱することができる。
【0101】
方向付け回路142を通る透析液流は、透析液ポンプ159の動作によって(少なくとも部分的に)制御することができる。また、透析液ポンプ159は、平衡回路143を通る流れを制御することができる。たとえば、上述したように、方向付け回路142からの新鮮な透析液は、平衡回路143の平衡チャンバ341,342に流れ込む。透析液ポンプ159は、新鮮な透析液をこれらの平衡チャンバに流れ込ませる駆動力として使用することができる。一つの実施形態では、透析液ポンプ159は、たとえば、上述したものと同様のポッドポンプを含む。透析液は、汚染物質、感染性微生物、病原菌、発熱物質、屑などを除去するために、たとえば限外濾過フィルタ73を用いて濾過することもできる。限外濾過フィルタ73は、たとえば図示するように、方向付け回路と平衡回路との間などの透析液流路内の適切な位置に配置することができる、および/または、限外濾過フィルタ73は方向付け回路または平衡回路に組み込むことができる。限外濾過フィルタが使用される場合、孔径は、種がフィルタを通過するのを防ぐように選択することができる。
【0102】
場合によっては、限外濾過フィルタ73は、フィルタからの廃棄物(たとえば、保持液流)が図5の廃棄物ライン39などの廃棄物流に送られるように動作し得る。場合によっては、保持液流に流れ込む透析液の量は制御され得る。たとえば保持液が冷たすぎる(すなわち、ヒータ72が機能していないか、あるいはヒータ72が透析液を充分な温度まで加熱していない)場合、全体透析液流(あるいは透析液の少なくとも一部)は廃棄物ライン39へと分岐され、任意で、ライン48を用いて透析液タンク169にリサイクルされ得る。フィルタ73からの流れは、たとえば、温度センサ(センサ251,252など)や伝導度センサ(透析液濃度の確認用、例えばセンサ253など)などを用いて、いくつかの理由で監視することもできる。
【0103】
図40を参照すると、例示の一実施形態では、センサプローブ6000および熱壁5100が、流体ラインの外部で連結されて示されている。熱壁5100は、流体ライン、保護スリーブ、使い捨て可能な機械、チャンバ、カセット、または容器内に置くことができる。しかし、本例示の実施形態の説明上、熱壁5100は、対象媒体の熱特性および/または伝導特性を判定するために使用される場合、任意の場所に置かれる。
【0104】
対象媒体は、熱壁5100の区域5402の外側に接触している。熱エネルギーは対象媒体から熱壁5100に伝達され、さらに感知プローブ6000の先端6002に伝達される。次に、熱エネルギーは熱センサ6014に伝達される。熱センサ6014はリード線6016を介して、熱センサ6014のフィードバックに基づき対象媒体の温度を判定することのできる機器と通信する。伝導度の感知も所望される実施形態では、リード線6018は対象媒体の伝導度を判定することのできる機器と通信する。対象媒体の伝導度の判定に関しては、リード線6018に加えて、第2の電気リード線/接触子(図示せず)も使用される。第2のリード線は、図40に示されるような第2のセンサ機器、もしくは、図40に示されるセンサ機器と必ずしも同一ではない第2のプローブ、電気接触子などの対象媒体の容量を感知できるプローブまたは装置であってもよい。
【0105】
限外濾過フィルタおよび透析器は、汚染物質、伝染性微生物、病原菌、発熱物質、屑などの除去のための余分なスクリーニング方法を提供することができる。したがって、患者の血液に達する前に、どんな汚染物質も限外濾過フィルタと透析器の両方を通過しなければならない。限外濾過フィルタまたは透析器のいずれか一方の完全性が損なわれた場合でも、透析液の無菌を維持し、汚染物質が患者の血液に入るのを防止することができる。
【0106】
方向付け回路142は、平衡回路から排水口へ、たとえば、廃棄物ライン39を通って排水口31へ使用済み透析液を送ることもできる。排水口は、たとえば、地方自治体の排水口または適切に処理されるように水(たとえば、使用済み透析液)を収容する別個の容器であってもよい。場合によっては、1つまたは複数のチェックバルブまたは「一方向」バルブ(たとえば、チェックバルブ215,216)が、方向付け回路142およびシステム5からの廃棄物流を制御するために使用される。さらに、ある例では、血液が透析器14を通って透析液流路に漏れ出しているかどうかを判定するために、血液漏れセンサ(たとえば、センサ258)を使用することができる。また、液体センサを血液透析部の底の回収皿に配置して、流体回路からの血液または透析液、あるいはその両方の漏れを表示することができる。
【0107】
方向付け回路142は、給水源30、たとえばバッグなどの水容器、および/または逆浸透装置などの水を生成することのできる装置から水を受け取ることができる。場合によっては、システムに入る水は、たとえば、特定値未満のイオン濃度を有する特定純度に設定することができる。方向付け回路142に入る水は、様々な位置、たとえば、新鮮な透析液を生成する混合回路25および/または廃棄物ライン39に送ることができる。場合によっては、排水口31および各種リサイクルラインへのバルブが開放され、管路67が方向付け回路142と血流回路141との間で接続されて、水が連続的にシステムを巡って流れる。ヒータ72が始動される場合、システムを通過する水は、たとえば、システムを消毒するのに十分な温度まで連続的に加熱される。
【0108】
図6は、図2の例示の実施形態における混合回路25の近接図である。方向付け回路142からの水は、ポンプ180の作用により混合回路25に流れ込む。本実施形態では、ポンプ180は、上述したものと同様の1つまたは複数のポッドポンプを含む。場合によっては、たとえば、重炭酸塩28などの成分を輸送する際に使用するため、水の一部が、混合回路25を通って試薬成分49へ方向付けられる。場合によっては、塩化ナトリウムおよび/または重炭酸ナトリウム28は粉末または顆粒状で供給され、ポンプ180によって供給される水と混合される。重炭酸塩源28からの重炭酸塩は、重炭酸塩ポンプ183を介して混合ライン186に送出され、混合ラインは方向付け回路142からの水も受け取る。酸源29からの酸(液体の形でもよい)も、酸ポンプ184を介して混合ライン186に圧送される。成分49(水、重炭酸塩、酸、NaClなど)は混合チャンバ189で混合されて透析液を生成し、その後、透析液は混合回路25を出て方向付け回路142へと流れる。伝導度センサ178,179は混合ライン186に沿って配置され、それぞれの成分が混合ラインに追加される際、適切な濃度で追加されることが確実となる。水ポンプ180および/またはその他のポンプによって送出される体積は伝導度測定値に直接関連するため、体積測定値は、生成される透析液の組成に関するクロスチェックとして使用することができる。これにより、たとえ伝導度測定値が治療中に不正確となっても、透析液の組成が安全性を維持するように確保される。
【0109】
図7は、本発明の各種態様を組み込む血液透析システム5の斜視図である。本発明の一態様によると、システム5は、共に接合して示されている透析部51と動力部モジュール52とを備える。本実施形態では、透析部51は、透析器、透析器を通る血液を循環させる1つまたは複数のポンプ、透析液源、および透析器を通る透析液を循環させる1つまたは複数のポンプなどの、血液透析を実行するのに適した構成要素を収容するハウジングを有する。たとえば、透析部51は、上述したように、混合回路25、血流回路141、平衡回路143、および方向付け回路142を備えることができる。透析部51は、システム5の動作に必要なすべての血液回路接続部および透析液流体接続部も備えることができる。患者アクセスおよびその他の接続部は、透析部51のハウジングの前側でハンドル54を介して縦型並列ドア53を開放することによって露出させることができる。本実施形態では、透析部51は、透析部51の動作を制御するのに使用可能な(本実施形態では、可撓ケーブルによってハウジングに装着される)制御インタフェース55を備える。制御インタフェース55は、接触感知オーバーレイを有する表示スクリーンを備え、接触制御と、スクリーンに提示されるグラフィカルユーザインタフェースとの相互作用とを可能にする。制御インタフェース55は、プッシュボタン、スピーカ、音声コマンドを受信するマイクロフォン、デジタルカメラなどのその他の機能を含むこともできる。制御インタフェース55の裏側には、制御インタフェース55を透析部51のハウジングの上に配置させることのできる格納式の「キックスタンド」(図示せず)を備えることができる。格納式「キックスタンド」の配備によって、制御インタフェース55は表示スクリーンを適切に視ることのできる略垂直位置に配置される。
【0110】
動力部52のハウジングは、透析部51に動作動力を与える、たとえば、ポンプ、バルブ、および透析部51のその他の構成要素に空気/真空を与えるのに適した構成要素を含むことができる。本明細書で使用する「空気圧」とは、可撓隔膜またはその他の部材を移動させるために空気やその他の気体を使用することを意味する。(空気は単に例として使用しており、他の実施形態では、窒素(N2)、CO2、水、油などのその他の制御流体を使用することができることに留意すべきである。)上述したように、透析部51のポンプおよびバルブは空気動力で動作するため、動力部52は透析部51による使用のために1つまたは複数の空気圧源を提供することができる。このように、透析部51は必ずしも必要な空気動力を生成および/または保管するように構成される必要はなく、その代わりに動力部モジュール52に頼ることができる。動力部52は、所望の空気圧および/または真空を生成する1つまたは複数の空気圧ポンプ、空気動力を保管する1つまたは複数のアキュムレータまたはその他の装置、バルブ、管路および/または動力部52における空気流を制御するその他の装置、並びに、プログラムされた汎用データプロセッサ、メモリ、(たとえば、圧力や温度などを検知する)センサ、リレー、アクチュエータなどの適切な構成要素を有するコントローラを備えることができる。
【0111】
一実施形態では、空気動力(たとえば、適切な圧力/真空下の空気)を、動力部52によって、1つまたは複数の供給タンクまたはその他の圧力源を介して透析部51に供給することができる。たとえば、2つのタンクが動力部52で使用される場合、一方の供給タンクは正圧リザーバとすることができ、一実施形態では、750mmHG(ゲージ圧)(1mmHGは約133.3パスカル)の設定点を有する。他方の供給タンクは真空または負圧リザーバとすることができ、一実施形態では、−450mmHG(ゲージ圧)の設定点を有する。ポッドポンプに対する可変バルブの正確な制御を可能とするため、たとえば、供給タンク圧と所要のポッドポンプ圧との間で、この圧力差を利用することができる。供給圧の限界は、可変バルブの制御のために十分な圧力差を提供するため、患者血流ポンプに対して設定し得る最大圧プラスマージンに基づき設定することができる。よって、場合によっては、2つのタンクは、透析部51の機能全部に対して、圧力を供給し、流体を制御するのに使用される。
【0112】
一実施形態では、動力部52は、供給タンクに供する2つの独立するコンプレッサを備えることができる。タンク内の圧力は、たとえば、実施形態に応じて、単純な「バングバング(bang-bang )」コントローラ(すなわち、オンまたは開放状態とオフまたは閉鎖状態との2つの状態で存在するコントローラ)、あるいはより高性能な制御機構などの適切な技術を用いて制御することができる。バングバングコントローラの一例として、正タンクの場合、実際の圧力が設定点より小さければ、正タンクに供するコンプレッサがオンとなる。実際の圧力が設定点より大きければ、正タンクに供するコンプレッサがオフとなる。設定点の項の符号が反転されることを例外として、同じ論理を真空タンクと真空コンプレッサの制御とに適用することができる。圧力タンクが調節されていない場合、コンプレッサがオフとなり、バルブが閉鎖される。
【0113】
圧力タンクのより厳密な制御は、ヒステリシスバンドのサイズを低減することによって達成できるが、その結果として、コンプレッサのサイクリング周波数が高くなる場合がある。これらのリザーバの非常に厳密な制御が要求される場合、バングバングコントローラは、コンプレッサ上でパルス幅変調(「PWM」)信号を使用して、比例積分導関数(「PID」)コントローラと置き換えることができる。その他の制御方法も可能である。
【0114】
他の実施形態ではその他の圧力源を使用することができ、場合によっては、2つ以上の正圧源および/または2つ以上の負圧源が使用される。たとえば、漏れを最小限にするために利用可能な異なる正圧(たとえば、1000mmHGと700mmHG)を供給する2つ以上の正圧源を使用することができる。たとえば、高い正圧を使用してバルブを制御できる一方、低い正圧を使用してポンプを制御することができる。これは、透析器または患者に送られる可能性のある圧力の量を制限し、ポンプの作動が隣接するバルブに印加される圧力を圧倒するのを防ぐ助けとなる。負圧の非限定的な例は−400mmHGである。場合によっては、負圧源は真空ポンプでもよく、正圧ポンプはエアコンプレッサでもよい。
【0115】
さらに、動力部52は、たとえば、異なる動力部52と交換できるように、透析部51に選択的に接続可能にすることができる。たとえば、透析部51は、電力を使用して空気動力を生成する動力部52や保管された空気動力(たとえば、1つまたは複数の高圧タンクに保管された加圧空気)を使用する動力部52などの様々な種類の動力部52と協働するように構成することができる。よって、動力部52は、故障やその他の要件の場合に、別のユニット52と交換することができる。たとえば、近くの人が眠っているときなど、ノイズの生成が許容不能である領域でシステム5を使用することが望まれる場合がある。この場合、ポンプまたはその他のノイズ生成機器を動作させることによって空気動力を生成するユニット52ではなく、保管された空気動力を使用する動力部52を使用する方が望ましい。図8に示すように、動力部52は、ハンドル521の操作によって透析部51から切断することができる。たとえば、ハンドル521を回して、透析部51から動力部52を解錠し、ハウジング間の機械的接続だけでなく、両者間の動力および/または通信接続も切断することができる。透析部51と動力部52との間のインタフェース(図示せず)によって、空気動力(動力部52から透析部51へ)、並びに、電力、制御通信などをユニット間でやり取りすることができる。透析部51は、電力(たとえば、家庭用電源コンセントにおける標準的な115V、15Ampの電力)、外部通信(イーサネット(登録商標)や通信に適するその他任意の適切な接続)、給水などのための接続点を有することができる。透析部51は、所望であれば、電力またはその他の接続を動力部52に提供する。
【0116】
透析部51は、システム5の各種構成要素に対する制御流体の流れを制御し、その他の所望の機能を実行するコントローラを備えることができる。場合によっては、制御流体は、様々なチューブまたは管路内で様々な圧力で保持される。たとえば、正圧(すなわち、大気圧より大きい)で保持される制御流体もあれば、負圧(大気圧未満)で保持される制御流体もある。また、ある実施形態では、コントローラは、各種液体回路から離れて保持される構成要素を有することができる。この構造はいくつかの利点を有する。たとえば、一実施形態では、透析部51の液体回路は、消毒を実行するため、消毒温度まで加熱される、および/または比較的高い温度またはその他の過酷な状態(たとえば、放射線)にさらされる一方で、コントローラの電子部品のような過酷な状態にさらされず、それどころか絶縁壁(たとえば、「防火壁」)などによって離れて保持させることができる。すなわち、透析部ハウジングは2つまたはそれ以上のコンパートメント、たとえば、熱やその他の状態に敏感な電子部品やその他の構成要素を有するコンパートメントと、消毒のため加熱またはその他の方法で処理される液体回路部品を有するコンパートメントとを備えることができる。
【0117】
よって、いくつかの実施形態では、システム5は、(加熱されていない)「コールド」セクションと、たとえば消毒のために加熱することのできる「ホット」セクションとを含む。コールドセクションは、絶縁体によってホットセクションから絶縁することができる。一実施形態では、絶縁体は成形された発泡性断熱材であり、別の実施形態では、噴霧断熱、空隙、シートから切断した断熱材などのあらゆる種類の断熱を含むが、それらに限定されない。一実施形態では、コールドセクションは、たとえば、ファンおよび/または空気をコールドボックスの内外に流すことのできるグリッドなどの循環システムを含む。場合によっては、絶縁体は、ドア、ポート、ガスケットなどの「ホット」セクションへのアクセス点を覆うように延長させることができる。たとえば、「ホット」セクションが封止されると、絶縁体は場合によっては「ホット」セクションを完全に覆うことができる。
【0118】
「コールド」セクション内に存在し得る構成要素の非限定的な例としては、電源、電子部品、電源ケーブル、空気制御器などが挙げられる。場合によっては、「ホット」セクション間を往復する流体の少なくとも一部は、「コールド」セクションを通過する。しかし、別の場合、流体は「コールド」セクションを通過せずに「ホット」セクションへと流れることができる。
【0119】
「ホット」セクション内に存在することのできる構成要素の非限定的な例としては、カセット(存在する場合)、流体ライン、温度および伝導度センサ、血液漏れセンサ、ヒータ、その他のセンサ、スイッチ、非常灯などが挙げられる。場合によっては、一部の電子部品も「ホット」セクションに含めることができる。その例はヒータを含むがそれに限定されない。一実施形態では、流体に加えて、ホットボックス自体を加熱するためにヒータを使用することができる。いくつかの実施形態では、ヒータ72が、「ホット」セクション全体を所望の温度に達するまで加熱する。
【0120】
本発明の一態様によると、透析部51のハウジングは、血液流回路接続部および透析液回路接続部のためのすべての機械的インタフェース点、すなわち、透析部51を使用するためにユーザが行わなければならない患者血液接続部および酸/重炭酸塩接続部のためのすべての接続点を露出させるように開放可能な縦型並列ドアを備えることができる。図9は、閉鎖状態の縦型並列ドア53を有する透析部51の前面図である。この構成では、ドア53は、患者血液接続部および酸/重炭酸塩接続部のための接続点へのアクセスを遮断し、消毒に適した熱の保存を可能とするようにユニットハウジングの内側を封止することができる。ドア53に提供される封止は、ハウジングの内部環境と外部環境との間の空気交換を防止する、またはこれを実質的に抑制するように気密にすることができる、あるいは、消毒効果を維持できる程度に質をやや落とすこともできる。
【0121】
本実施形態では、ドア53は、ドア53が2つの異なる開放状態まで開放されるように、二重ヒンジ構造によって透析部51のハウジングに接続される。図10〜13は第1の開放状態のドア53を示す。この状態で、ドア53は、透析器14自体および消耗酸/重炭酸塩材料などの試薬材料を含め、血液回路接続部および透析器回路用のすべてのユーザ接続を露出させる。この位置は、酸/重炭酸塩容器(図示せず)用のホルダ531や、制御インタフェース55などの任意の適切なアイテムを保持するのに使用可能なフック532などのその他の機能も露出させ、制御インタフェースはそのハンドルをフック532に引っ掛けることができる。(制御インタフェース55またはその他のアイテムを収容するように開くことのできる左側ドア53の前部のフック532を示す図7を参照)。本実施形態のホルダ531は、図に示す位置から折る(すなわち、ドア53から水平に延在するように折り畳み、ドア53の凹部に入れ込む)ことができる。ホルダ531は、酸/重炭酸塩容器を収容し保持する「C」字状の収容部を有するが、当然ながら任意の適切な形状にする、あるいはそれ以外の構成にすることができる。
【0122】
図14〜16は、各ドア53のヒンジプレート533が透析部ハウジング51から外側へ離れるように旋回する第2の開放状態にあるドア53を示す。本実施形態では、透析部ハウジング51のほぼ全高に沿って垂直に延在するヒンジプレート533が、第1の外側端でドア53に枢動可能に装着され、第2の内側端で透析部ハウジング51に枢動可能に装着される(当然ながら、ヒンジプレート533は、違うふうに、たとえば、多くの冷蔵庫ドア構造に見られるようにドア53の上部および下部に配置および/または位置決めすることができ、各プレート533は、互いに縦方向に分離される2つまたはそれ以上の部分を有することができる。)。ヒンジプレート533に装着される磁石534は、ヒンジプレート533を透析部ハウジング51の方に引きつけることによって、ヒンジプレート533を図10〜13に示す位置に保持するように、透析部ハウジング51に装着された対応する磁石(またはスチール素子などのその他の適切な構成要素)と相互作用する(当然のことながら、磁石534はユニットハウジング上に配置し、ヒンジプレート533は磁石534に装着される(スチール片などの)適切な素子を有することができる)。本実施形態のドア53はヒンジプレート533に装着される磁石も備えるため、ドア53が図10〜13に示されるような第1の状態に開放されると、磁石はヒンジプレート533内の対応する磁石と相互作用し、ドア53がヒンジプレート533に対して開放位置にあるのを助ける。さらに、これらの磁石は、ヒンジプレート533が、図13〜16に示す第2の状態まで開放されたとき、ドア53とヒンジプレート533との相対的位置を維持するのを助ける。
【0123】
本例示の実施形態では、ドア53および/またはヒンジプレート533が特定の開放状態または閉鎖状態を維持するのを助けるため、磁石が保持部材の一部として使用されているが、保持部材の他の構造も可能である。たとえば、ドア53とヒンジプレート533との間のヒンジ接続および/またはヒンジプレート533とハウジング51との間の接続は、その他の部分(ヒンジプレートまたはハウジング)に対する特定位置にドア53またはヒンジプレート533を弾性的に保持する役割を果たす移動止め構造でもよい。別の実施形態では、1つまたは複数のバネを、ヒンジプレート533に対する開放位置にドア53を保持するのを助けるために使用することができる。さらに別の実施形態では、ヒンジプレート533が、ヒンジプレート533を(ハウジングに近接する)閉鎖位置に保持しようとするハウジング51の部分と摩擦または静止嵌りするものでもよい。したがって、ドア53をヒンジプレート533に対する特定位置に保持する役割を示す、および/またはヒンジプレート533をハウジング51に対する特定位置に保持する役割を示す保持部材は、多数の可能な構造のうちの1つを取ることができる。
【0124】
本発明の別の態様によると、透析部ハウジングの方にドアを開けると、システム5の動作に必要な血液回路接続部および透析液流体接続部のためのユーザ接続がすべて露出される。たとえば、図17に示すように、ドア53が開放状態(第1または第2の開放状態のいずれか)にあると、透析部51のフロントパネル511を露出させることができる。本実施形態では、フロントパネル511は、ユーザがアクセスしなければならないいくつかのアイテムまたは接続点を担持する。たとえば、定期的に交換しなければならない透析器14がフロントパネル511に搭載される。透析器14は、血流回路141だけでなく平衡回路143にも接続しなければならない。さらに、酸/重炭酸塩源49用の接続点512が、フロントパネル511の下端に配置される。この接続点512で、ユーザは、透析液を作製する際に透析部51が使用する消耗試薬成分49の供給源に接続することができる。閉鎖部(occluder)513もフロントパネル511上に搭載される。閉鎖部513は血流回路のチューブを受け取り、システム動作に基づきチューブの開放/閉鎖状態を制御する。要約すると、漏れ、ポンプの故障、過圧状況などのシステム問題がない限り、閉鎖部513は血流回路の動脈および静脈ラインに流れを通させる。上記のような問題がある場合、閉鎖部513は自動的に血液ラインを閉鎖して、患者との間の流れを阻止する。図41に示すように、閉鎖部10は、配管を納めるための基部16および経路18を含む。同図に示すように、経路18は、配管を納めるように成形された基部16内の凹みである。ただし、他の実施形態では、経路18は、たとえば、基部16の表面上の1つまたは複数の隆起や、基部16の表面上の締め具、ループ、またはリングなどによって、別の方法で基部16上で画定されてもよい。また、経路18は同図で略直線状に示されているが、他の実施形態では、いくつかの形で湾曲させることができる。場合によっては、経路は、経路が保持するように設計される配管よりもわずかに小さく設計されるため、配管を経路内に適切に配置するために配管に力を印加する、および/または配管を変形させる必要がある。
【0125】
配管は、たとえば、遮断素子24が配管に押し込まれたときに少なくとも部分的につぶされるように屈曲可能である、あるいは柔軟である。たとえば、チューブはシリコーン、ナイロン、ゴム、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエチレンなどの材料から形成することができる。場合によっては、配管は生体適合性を有する。配管は、たとえば、透析器またはその他の医療用注入システムの一部として、血液またはその他の物質を対象との間で輸送するために使用することができる。
【0126】
旋回軸22を中心に回転移動可能な遮断部材20が基部16上に配置される。遮断部材は旋回軸を中心に完全に回転することができ、場合によっては、遮断部材は旋回軸22を中心に部分的にのみ回転することができる。旋回軸22は、基部16に対して固定することができる。たとえば、旋回軸22は、基部16内に固着されるネジ、ロッド、またはその他の類似の構造であってもよい。遮断部材20は、旋回軸22を中心に回転させられると、遮断素子24が経路18に入り、少なくとも部分的に経路18を遮断するように構成される。よって、経路18内に含まれる配管内を流れる流体は、遮断素子24を通過して流れることを部分的にまたは完全に阻止される。しかし、遮断部材20が第2の位置にあるとき、遮断素子24は経路18に進入しないため、経路18の配管内に含まれる流体は遮断素子24によって邪魔されない。
【0127】
ここに示すように、遮断部材20は2つの位置のうち1つを取ることができる。しかし、場合によっては、遮断部材は3つ以上の位置に配置させることができる。たとえば、遮断部材20は、経路18および/または基部16内に存在するその他の経路に進入する、あるいは少なくとも該経路を遮断することのできる2つ以上の遮断素子、もしくは遮断部材20は様々な位置に置かれるように構成することができ、それらの位置のいくつかは、遮断素子24を様々な程度に経路18内に存在させることによって、流体流を様々な程度に遮断することができる。遮断素子24は、遮断素子24が経路18に進入する、あるいは経路を少なくとも部分的に遮断するときに、経路18内に含まれる配管内の流体の流れを少なくとも部分的に阻止または遮断するのに適した任意の形状を取ることができる。図41に示すように、遮断素子24は、経路18に進入する半円柱状の部分を含む。しかしながら、球状、楔状、ブロック状、棒状などのその他の形状も利用可能である。
【0128】
血流回路141の動脈血液ラインおよび静脈血液ライン203、204を方向付け回路142と接続する血液ライン接続点514(図2および3を参照して説明したように、血流回路141は方向付け回路142に接続することができる)がフロントパネル511上に露出される。システムが血流回路141を清浄および殺菌できるように、この接続は通常、治療の最後に行われる。フロントパネル511は、血流回路141の血液ポンプ部上の対応する制御ポートと嵌合する1セットの制御ポート515も有する。制御ポート515は、バルブの開放/閉鎖状態を制御し、血流回路141のポンプに動力を与えるため、制御されたレベルの空気圧および/または真空を供給する。
【0129】
フロントパネル511上にはユーザ制御パネル510も露出される。ユーザ制御パネル510は、ユーザが血液透析中に、制御インタフェース55上のグラフィカルユーザインタフェースをバイパスして、特定の機能(たとえば、重要な機能)を制御する別の方法を提供することができる1つまたは複数のボタンを備える。たとえば、仮に制御インタフェース55が透析治療セッション中に故障した場合、これが非常に重要となる。重要な機能の非限定的な例は、「透析停止」または「透析一時停止」コマンドと「透析溶剤注入」コマンドである。
【0130】
本実施形態および本発明の別の態様によると、血流回路141は透析部51のフロントパネル511から取り外し可能な血液回路アセンブリとして形成され、図17では血液回路アセンブリはフロントパネル511に搭載されていないため、図17は血流回路141用の動脈および静脈ライン203、204を示していない。図18は透析器14とともに本実施形態の血液回路アセンブリ17の前面図を示す。血液回路アセンブリ17は、たとえば図3を参照すると、血液回路編成トレイ171に搭載される上述の各種構成要素を含む。動脈および静脈ライン203、204(たとえば、可撓シリコーン配管の長さを含む)は、本発明の一態様によると、血液ライン接続点514との差込型接続または圧入型接続に加え、一般的な患者アクセス点(たとえば、ルアー(luer)型患者アクセコネクタ)と共に使用されるネジ型接続を提供するように構成される血液ラインコネクタを終点とする。動脈ライン203は、2つのポッドポンプ23、バルブ、および血流を制御するその他の構成要素を含む血液ポンプ13の上部にある入口につながる。血液ポンプ13は、エアフィルタ81、抗凝血剤ポンプ80(図示せず)、および抗凝血剤供給源11(ヘパリンのバイアなど)と関連付けられる。
【0131】
血液ポンプカセット1200の例示の一実施形態を図42に示す。ヘパリンなどの薬物のソース容器1202は、ソース容器1202の上部のストッパを貫く中空スパイク(図示せず)を有する容器アタッチメント1206の上に置かれる。エアフィルタ1204は通気口906を覆い、その内側部分900が図43に示される。図43は、血液ポンプカセット1200の上部カバーの内側のソース容器1202用計量ポンプ流体路を示す。通気口906は、空気を計量ポンプ830(図44の血液ポンプカセット1200の中央プレート部1000内に示される)に引き込む。第2のポート902は、空気をスパイク/ソース容器に押しやり、ソース容器1202から液体を引き出す。その後、液体は計量ポンプ830によって流体ラインの点826まで押されて、そこで、血液ポンプカセット1200の血液流路に入る。バルブ832、834、836は、ソース容器1202からの流体引出しとカセットの血液路への注入が順序よく行われるように適切な順序で作動され、その後で、容器内の圧力均等化のために通気口906からソース容器1202への定期的な空気注入が行われる。
【0132】
血液ポンプ13(出口はポンプ13の下端に配置される)からの血液出力は、透析器14の入口(透析器14の上端)に入り、透析器から外へ流れ出て(透析器の血液出口は透析器14の下端に配置される)、エアトラップ19の入口に至る。エアトラップの出口19は静脈血液ライン204に接続される。透析器14の入口および出口血液ポートへの接続は、典型的なネジ型接続で行われる。
【0133】
本発明の別の態様によると、エアトラップ19は、血液が透析器を出た後、患者に戻るまで血液流路に配置される。一実施形態では、エアトラップ19は球状、または回転楕円体状容器(すなわち、略球状の内壁を有する容器)と、最上部近傍に容器の縦軸から偏位して配置される入口ポートと、容器の底部の出口とを有することができる(容器の縦軸は、略球状容器の「上下の」極を通過する縦方向に配置される)。入口ポートは縦軸から偏位しており(この場合、トレイ171の方に後退している)、血液は容器の縦軸に略垂直で、容器の球状内壁にほぼ接する方向で容器に導入される。血液が(たとえば螺旋状に)重力で容器の下端に引かれ、血液からの気泡の除去を促進する際、トラップの内壁の湾曲形状は内壁に沿って血液を循環させるように導く。透析器14の出口を出る血液中に存在する空気はエアトラップ19の上端に入り、血液が下端の出口から静脈血液ライン204へと流れ出る間、容器の上端にとどまる。トラップ19の上端近傍に入口ポートを配置することによって、容器内に最小限の空気しか残さず、あるいは全く空気を残さず、血液をトラップ中で循環させることができる(「全開運転」エアトラップとして)。トラップ内の血液の定期循環のため、空気と血液の接触を回避できることが有効である。容器の上端またはその近傍に入口ポートを配置することで、血液チューブを通る流体流を逆行させて(すなわち、トラップ19の下端から上端へ流れ、トラップ19の入口ポートを出る)、トラップ内に存在する空気の大半または全部をトラップから除去することができる。
【0134】
一実施形態では、スプリット隔膜または膜、あるいはその他の構造のセルフシール(self-sealing)ストッパなどのセルフシールポートがトラップの上端に配置されて、(たとえば、シリンジによって)容器から空気を抜き出すことができる。たとえば、透析液またはその他の洗浄液を用いてエアトラップ内で流を逆行させることによって消毒中のセルフシールポートの洗浄を簡易化するために、セルフシール膜の血液側面は、トラップの内側の上端とほぼ同一面に配置させることができる。また、容器の入口、出口、および内壁とセルフシールポートは、停滞領域をほぼなくすように構成する、すなわち、血液が停滞したり凝固したりする領域がほとんどか全くないようにすることができる。セルフシールポートは、血液サンプリング部位として機能する、および/または血液回路に液体、薬剤、またはその他の化合物を導入させることができる。針でのアクセスが企図されるとき、封止ラバー型ストッパを使用することができる。スプリット隔膜を用いるセルフシールストッパは、無針システムを使用するサンプリングおよび流体送出を可能にする。
【0135】
図19は、各種血液回路アセンブリ17の構成要素を搭載していない血液回路アセンブリ17用編成トレイ171を示す。本発明の一態様によると、編成トレイ171は、血液回路アセンブリ17をフロントパネル511に搭載する/血液回路アセンブリ17をフロントパネル511から取り外す際にユーザが握ることのできるハンドル172(本実施形態では、指で引く)を備える。ハンドル172の内側には、フロントパネル511上のスプリングタブが編成トレイ171および/または血液ポンプ13のカセットを通過して、血液回路アセンブリ17と係合し、血液回路アセンブリ17をフロントパネル511上の適所に保持することができるように開口部173が設けられる。本発明の別の態様によると、編成トレイ171は、それぞれが対応する血液ライン203、204の通過するC字状の凹部またはその他の穴を有する血液ライン係合部材174を備える(ここでは、「穴」は、図19に示されるような凹部、たとえばドリルで作製されるような連続壁を有する貫通孔、またはその他の適切な開口部を含む)。より詳細には、血液ライン203、204を閉鎖部513に搭載する際に、血液ライン係合部材174が使用される。要約すると、血液ライン203、204を閉鎖部513に搭載する際、血液ライン203、204は、閉鎖部513のスロットに水平に押しこみながら(ラインの外径を低減するように)下方向に引っ張り、伸張させなければならない。血液ライン係合部材174は、血液ライン203、204での下方向の引っ張りに抵抗する機能と(たとえば、各ライン203、204は、係合部材174の凹部を通って引っ張ることができないように、各係合部材174の上に停止リングを備えることができる)、ユーザに係合部材174を内側に押し込んでライン203、204を閉鎖部スロットに配置させる機能とを果たす。係合部材174は編成トレイ171と一体形成されているため、「リビングヒンジ(living hinge)」すなわち編成トレイの比較的柔軟な部分が、係合部材174と編成トレイ171の本体との間に配置される。この構造により、係合部材174と編成トレイ本体との接続部が撓むため、係合部材174を編成トレイ171に対して内側に押すことができる。
【0136】
図20は、編成トレイ171を取り外した血液回路アセンブリ17の後面図である。この図は、制御ポートを露出させた血液ポンプ13の後面を示す。空気圧制御(たとえば、適切な空気圧または真空)がポンプおよびバルブに印加されて、それらの動作と血液回路アセンブリ17を通る流とを制御するように、これらの制御ポートはフロントパネル511上の対応するポート515と嵌合する(図17を参照)。図20は、エアトラップ19の入口ポートの偏位も示す、すなわち、エアトラップ19の上端の入口ポートは、エアトラップ19のほぼ球状の容器部の縦軸の後方に配置されている。
【0137】
図21は、編成トレイ171なしのフロントパネル511に搭載された血液回路アセンブリ17を有する透析部51のフロントパネル511の斜視図である。(通常、血液回路アセンブリ17は編成トレイ171を備えるが、フロントパネル511の構成要素をより明確に示すために本例ではトレイ171を図示していない。)血液ポンプ13のカセットの対向端に、フロントパネル511は、血液ポンプカセットおよび/または編成トレイ171と前方向に柔軟に延在して、血液回路アセンブリ17を適所に保持するスプリングタブ516を有する。タブ516は、血液回路アセンブリ17を適所に保持するのを助ける突刺またはその他の機能を備えることができる。スプリングタブ516は外方に曲げられて血液回路アセンブリ17上での保持を解放し、取外しを可能にする。しかし、スプリングタブ516に外方向への力が印加されない場合、タブ516は血液回路アセンブリ17と係合したままである。図22は、血液回路アセンブリ17の編成トレイ171が含まれるフロントパネル511の前面図である。フロントパネル511から血液回路アセンブリ17を取り外すには、ユーザは、スプリングタブ516の内側(血液ポンプ23に最も近い側)に親指を当てて、スプリングタブ516を外方向にポンプ23から離れるように曲げると同時にハンドル172の後ろに人差し指を当てる。これにより、スプリングタブ516は血液回路アセンブリ17を解放することになり、たとえば、タブ516の突刺が血液ポンプ13および/または編成トレイ171から分離される。当然ながら、血液回路アセンブリ17を取り外すには、透析器14との接続部や血液ライン接続点514などのその他の接続部を取り外し、ライン203、204も閉鎖部513から取り外さねばならない。血液回路アセンブリ17をフロントパネル511に搭載する際、たとえば、スプリングタブ516が開口部173を通過するように揃えられ、血液ポンプ13のカセットの制御ポートがフロントパネル511上の対応するポート515と揃えられるように、編成トレイ171はハンドル172を握って適切に位置合わせすることができる。その後で、血液回路アセンブリ17がそのまま適所に押し込まれて、スプリングタブ516が編成トレイ171および/または血液ポンプカセットと係合する。次に、透析器14との接続や、閉鎖部513への血液ライン203、204の装着などの他の接続を行うことができる。
【0138】
図21は、閉鎖部513内に導くために血液ライン203、204を保持するスロット517も示す。スロット517は、ライン203、204がスロット内への配置後にスロット517内にとどまるように、血液ライン203、204の外径よりもわずかに小さい通路を画定する。これは、ラインと閉鎖部513との適切な関連付けを確保する助けとなる。いったん血液回路アセンブリ17がスプリングタブ516上に搭載されれば、ユーザは、(編成トレイ171上の係合部材174が各ライン203、204上の停止リングまたはその他の機能と係合し、下方向の引っ張りに抵抗した状態で)ライン203、204を下方に伸張させ、ライン203、204を対応するスロットに押し込むことによって、血液ライン203、204とスロット517とを係合させる。ライン203、204は、上述したように、柔軟であり、編成トレイ171に対して内方向に曲げられる係合部材174を内側に押すことによって、適所に押し込むことができる。次いで、ライン203、204は閉鎖部513を通って進ませることができる。
【0139】
本発明の別の態様によると、フロントパネル511は、フロントパネル511の外周に血液ラインラップ機能を備える。本例示の実施形態では、フロントパネル511は、フロントパネル511の上縁と下隅に沿ってフランジ部518を備える。このため、ユーザはフランジ部518によって画定される通路内にライン203、204を配置することによって、血液ライン203、204をフロントパネル511の外周に巻きつけることができる。ライン203、204は、透析器14の下端近傍の箇所から、フロントパネル511の下右隅近傍の箇所まで時計方向に巻きつけることができる。次に、血液ライン203、204は血液ライン接続点514で接続して、たとえば、血液ライン203、204を通って循環される流体を消毒することができる。その結果、血液ライン203、204はフロントパネル511上に適切に保持されて、フロントパネル511上の他の構成要素に容易にアクセスすることができ、ユーザはドア53と透析器部ハウジング51間に血液ライン203、204を挟まないかどうかほとんど心配せずにドア53を閉めることができる。もしくは、血液ライン203、204はまず血液ライン接続点514で接続して、その後、透析器14の下端近傍の箇所からフロントパネル511の下右隅近傍の箇所まで時計方向に巻きつけることができる。これにより、血液ラインはフランジ部518に沿って適切に分布されて接続点514に至るように確保することができる。ヒンジプレート533およびその他の挟まれる可能性のある箇所から離れた所望の位置に血液ライン203、204を保持する助けとして、フロントパネル511の左側と右側に縦型フェンス519も設けることができる。
【0140】
本発明の別の態様によると、透析部51のフロントパネル511(またはその他の適切な構成要素)は、様々なサイズおよび/または形状の透析器部14を収容するように構成することができる。異なる患者、場合によっては、長期にわたり同一の患者に対しても、異なる治療条件を提供するように異なる透析器を指定することができる。よって、透析部51は好ましくは、複数の様々な種類の透析器14と共に動作するように構成される。多くの場合、透析器14が異なれば、透析器部の全体の径および/または長などの寸法が異なる。図23に示す例示の実施形態では、フロントパネル511は、透析器14上のそれぞれの透析液迅速接続継手に係合するよう構成された一対の「鍵穴」機能520を有する透析器搭載台を備える。各鍵穴機構520は、迅速接続継手の一部を収容する寸法の上側挿入領域520aと、迅速接続継手の全体径よりも幅が小さく、迅速接続継手の溝領域と係合する下側フランジ部520bとを含む。これらの機能を理解する助けとして、図24は、透析器14の透析液入口ポートおよび出口ポートに装着される迅速接続継手14aを備えた透析器14を示す(血液入口および出口ポートは、図24に示す透析器14の上端と下端に配置される)。図示される迅速接続継手14aは標準的なタイプのもので、すべてではないがほとんどの透析器14は、標準的な迅速接続継手14aと係合するように構成される透析液入口/出口ポートを有する。迅速接続継手14aはそれぞれ、(図24に示すように)基部14cに対して右手に移動させて、継手14aを透析器14上の透析液ポートと係合させる摺動素子14bを備える。摺動素子14bが移動して継手14aを透析器14に接着させると、溝14dが閉鎖される。ただし、いったん継手14aが透析器14の入口/出口ポートに適切に配置されると、摺動素子14bは解放されて、図24に示すようにバネ(図示せず)が摺動素子を左手に移動させて、溝14dを図24に示す状態に再設定する。よって、迅速接続継手14aが透析器14と適切に係合すれば、溝14dは図24に示すように存在する。
【0141】
透析器14を鍵穴機構520に取りつけるには、各迅速接続継手14aの溝14dが鍵穴機構520の下側フランジ部520bのフランジと並んで配置されるように、迅速接続継手14aが上部および下部鍵穴機構の上側挿入領域520aにそれぞれ部分的に挿入される(下部鍵穴機構520の上側挿入領域520は、より広い範囲の透析器長を収容できるように、図23に示すものよりも長くすることができることに留意されたい)。溝14dがフランジと並べば、迅速接続継手14aが鍵穴機構520の下側フランジ部520bに完全に収容されるように、透析器14を降下させることができる。
【0142】
本発明の別の態様によると、鍵穴機構520の一方または両方は、透析器14の重量が鍵穴機構520の両方の下側フランジ部520bによって分担されるように調節可能である。たとえば、本例示の実施形態では、下部鍵穴機構520は、上部鍵穴機構520に対して垂直位置に調節可能な下側フランジ部520bの部分を有する。このように、この下側フランジ部520bの部分は縦方向の位置に調節可能であるため、上部の迅速接続継手14aが上部鍵穴機構520のフランジ部520bによって支持された状態で、下部鍵穴機構のフランジ部520bの可動部分をたとえば上方向に移動させて、下部の迅速接続継手14aもフランジ部520bによって支持することができる。よって、透析器14の重量は、両鍵穴機構520によって分担することができる。フランジ部520bは、任意の適切な方法で調節可能にすることができる。本実施形態では、フランジ部520bは、縦フランジに沿って縦方向に摺動可能であり、1セットの蝶ネジを締めることによって適所に固定できる「U」字状部材520cを有する。「U」字状部材520cが透析器14の重量を(少なくとも部分的に)支持するように、「U」字状部材520cは迅速接続継手14aと係合することができる。
【0143】
上記実施形態では、透析器14はフロントパネル511の鍵穴機構によって支持されるが、透析器のための支持構造は他の方法で構成することもできる。たとえば、上側挿入領域520aは必ずしも必要ではない。その代わりに、フランジ部(たとえば、対向するフランジ部を有する「U」字状フランジの形状で)のみを設けて透析器迅速接続継手と係合させることができる。フランジ部は、フロントパネル511の前面から偏位させて、継手用の隙間を設け、フランジ部を迅速接続継手の溝と係合させることができる。さらに、フランジ部は図示されるように縦方向に設ける必要はなく、縦方向から角度をつけて、たとえば水平に配向させることができる。フランジ部は、移動止め、キャッチ、または透析器を適所に保持する助けとなるその他の機能を有することができる。
【0144】
本発明の別の態様によると、重炭酸塩、酸および/またはその他の試薬供給源を透析部と選択的に関連付けることができる。上述したように、透析部51は、システム動作に必要な透析液および/またはその他の材料を生成する特定の化学物質の供給を必要とする。図25は、酸、重炭酸塩および/またはその他の材料を透析部52に供給するために使用される試薬供給源49を示す(図21は、フロントパネル511で酸/重炭酸塩接続点512に装着された試薬供給源49を示す)。本例示の実施形態の試薬供給源49は、酸/重炭酸塩接続点512と嵌合するように構成されたE叉コネクタ491を備える。接続点514での血液ライン接続など、フロントパネル511でユーザによってなされた他の接続と同様、嵌合コネクタは、適切な接続を確保するため、色分けする、あるいはそれ以外の方法で印をつけることができる。たとえば、E叉コネクタ491と酸/重炭酸塩接続点512はオレンジ色に、接続点514での動脈ライン203とその嵌合接続部は赤色に、接続点514での静脈ライン204とその嵌合接続部は青色にすることができる。E叉コネクタ491からは、重炭酸塩供給ライン492、給水ライン493、および酸供給ライン494が延びている(図6とこれらのラインの機能に関する関連の説明とを参照)。給水ライン493は重炭酸塩供給源28に水を供給する(本実施形態では、粉末重炭酸塩材料を含有する、バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッドで販売される750g Altracart Bicarbonateカートリッジ(#500750A)だが、任意の適切な供給源であってもよい)。重炭酸塩供給源28は、重炭酸塩供給ライン492を介して透析部51に重炭酸塩を供給する。本実施形態では、酸供給ライン494は、IV型バッグまたはその他の容器を突き刺し、そこから適切な酸を抜き出すのに使用可能な酸バッグスパイク495につながる。本実施形態では、酸バッグスパイク495はスパイク部材495aと一対のスプリングクリップ495bとを含む。スプリングクリップ495bは接続バーによって中心部で共に接合される結果、スプリングクリップ495bとその接続バーとが「H」状を成し、スプリングクリップ495bの近位端が互いに締め付けられるとき、スプリングクリップ495bは互いに回転可能である。スプリングクリップ495bは酸バッグ(またはその他の酸供給源、図示せず)上のコネクタ素子と係合するように構成されるため、ユーザがクリップ495bを取り外すまで、スパイク部材495aをバッグと係合させておくことができる。たとえば、クリップ495bの遠位端は酸供給源と係合する突刺(barb)を含むことができ、クリップ495bの近位端を共に締め付けあい、クリップ495bの遠位端で突刺素子を酸供給源から分離させることによって、クリップを酸供給源から脱離させることができる。酸バッグスパイク495は、酸バッグスパイク495のラインを開放/閉鎖するバルブ495c(この場合、ピンチクランプ)も備えることができる。本発明の一態様によると、酸バッグスパイク495は、(キャップコネクタ496で酸供給ライン494から切り離して)酸ジャグストロー(図示せず)やその他の構造などの別の構成要素と取り換えることができる。ジャグストローと共に使用される場合、キャップコネクタ496は、酸ジャグの開口部をキャップのように覆うように、酸ジャグの開口部と係合させることができる。もしくは、ジャグストローは終端部をスパイク状にして、酸ジャグの開口部を覆うセルフシール(たとえばラバー)膜を貫通する能力を有することができる。このように、酸供給構造(ジャグ、ボトル、バッグなど)に応じて、様々な種類の構成要素を酸供給ライン494に装着することができる。
【0145】
図26は、E叉コネクタ491と、フロントパネル511の対応する接続点512との近接図である。E叉コネクタ491は、接続点512の対応する収容穴と係合する3つの平行な叉(重炭酸塩ラインおよび酸供給ライン492,494、および給水ライン493に対応する)を有する。E叉コネクタ491と接続点512の収容穴とは、中心内腔(給水ライン493)が上方に配置される、あるいは他の形で2つの外側内腔(重炭酸塩および酸供給ライン492,494)の共通面から外に配置されるように構成される。このように、適切に配向されない限り、E叉コネクタ491は接続点512と係合できないため、重炭酸塩および酸供給ライン492,494が適切に接続されることが確実となる。E叉コネクタ491は、たとえば、叉が接続点512の収容穴に適切に配置されるときに接続点512の対応するスロット512aと係合可能な一対のスプリングタブ491aを備える。タブ491aがスロット512aと係合した状態で、E叉コネクタ491は接続点512から容易に脱離できず、不測の分離の可能性を低下させる助けとなる。E叉コネクタ491は、タブ491aの遠位端の突刺がスロット512aから分離するようにタブ491aを互いの方に押し合うことによって切断させることができる。接続点512は、接続点512をフロントパネル511と着脱させることのできる同様のスプリングタブ512bを有する。
【0146】
本発明の別の態様によると、消毒コネクタ(図示せず)は、消毒手順中、使用のため接続点512と係合する。消毒コネクタはE叉コネクタ491と同様の配向の3つの平行な叉を有するため、叉が接続点512の収容穴に係合することができる。消毒コネクタコネクタの叉内の通路は、消毒コネクタ内の共通チャンバ内で終端となる。よって、消毒手順中、重炭酸塩流ライン、酸流ライン、および水流ラインはすべて相互接続され、消毒手順中、各流ラインを消毒することができる(これは図6の49で点線の逆「T」ラインとして示されている)。
【0147】
本発明の別の態様によると、血液ライン203、204には、2種類の接続を行うことのできるコネクタが備えられる。1種類目の接続は、コネクタが収容内腔に押し込まれる差込型または圧入型接続と、コネクタまたは収容内腔の回転を必要とせずに行われる漏れなし接続である。2種類目の接続は、漏れなし接続がコネクタと補完素子とのねじ込み係合により行われるネジ型接続である。たとえば、図27および28は、血液ライン203、204と共に使用され、フロントパネル511上の血液ライン接続点514と係合可能である血液ラインコネクタ202の斜視図と側面図である。コネクタ202は、対応する血液ライン203、204に接続するチューブ接続端202aと、患者アクセスおよび接続点514の両方に接続して漏れなし接続を確立するように構成された患者アクセス接続端202bとを備える。患者アクセス接続端202bにおいて、コネクタ202は、雄ネジ患者アクセスと係合するように構成された雌ネジ部を有する円錐台形部材202cを備える。たとえば、円錐台形部材202cは、円錐台形部材202cの中心から延在する中央チューブ202を備える雄型ルアーコネクタの一部であってもよい。ルアー接続を行う際、チューブ202eは患者アクセスで雌型ルアーコネクタ内に延在し、円錐台形部材202cの内側のねじ込み部は、患者アクセス(動脈または静脈)の雌型ルアーコネクタのネジと係合することができる。血液ラインを患者アクセスに接続するときは、このようなルアー接続が標準的である。しかし、コネクタ202は、単に患者アクセス接続端202bを接続点514の収容穴に押し込むことによって、接続点514と係合させることができる。この接続を行う際、円錐台形部材202cの外側は好適なシート、あるいはその他の接続点514内の表面または素子(たとえば、バルブシート、Oリングまたはその他)と係合して、円錐台形部材202cと接続点514との間に封止を形成することができる。さらに、もしくはその代わりに、適切な封止を確立するため、中央チューブ202eを接続点514と係合するのに使用することができる。円錐台形部材202cから後方に延在する係止アーム202dは、接続点514の穴514aと係合して(たとえば、アーム202dの有刺部は、穴514aと係合することができる)、コネクタ202を接続点514の収容穴に保持するのを助けることができる。コネクタ202はアーム202dを互いに押し合わせて(たとえば、アーム202dの遠位端で指窪み部を押すことによって)解放し、穴514aから突刺を分離させ、コネクタ202を引き抜くことができる。接続点514は、接続点514を選択的にフロントパネル511と係合させる/フロントパネル511から分離させることのできるスプリングタブ514bを備えることに留意されたい。コネクタ202は、たとえば単独の一体型部分としてプラスチック成形などの任意の適切な方法で作製することができる。
【0148】
本発明の種々の実施形態を本明細書に記載して説明したが、当業者であれば、本明細書に記載の機能を果たす、および/または本明細書に記載の成果および/または1つ以上の利点を得るための様々なその他の手段および/または構造を容易に構想し得る。こうした構想および/または変形は、本発明の範囲に属するものとみなされる。すなわち、当業者であれば、本明細書に記載のすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示であり、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、本発明が利用される具体的な用途に左右されることを容易に認識し得る。当業者であれば、実験を利用して、本明細書に記載の本発明の具体的な実施形態の多くの等価物を認識し得る。したがって、上記した実施形態は単なる例示であり、添付の特許請求の範囲とその等価物の範囲において本発明が実施され得ることを理解すべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液透析部の血液回路用の血液ラインコネクタであって、
血液回路チューブと係合して封止を行うように構成されたチューブ接続端、及び雄ネジ型患者アクセス部と係合して該雄ネジ型患者アクセス部と流体密封接続を行うように構成された雌ネジ部を有する部材を含む患者アクセス接続端と、
前記部材から前記チューブ接続端に向かって後方に延在する一対の係止アームとを備え、該一対の係止アームはそれぞれ指窪み部と有刺部とを有し、該一対の係止アームは圧入型接続を行う際に前記患者アクセス接続端の外側表面が前記血液透析部の嵌合コネクタと流体密封接続を形成するように、前記血液透析部の嵌合コネクタと前記有刺部で係合して前記嵌合コネクタとの封止係合により前記患者アクセス接続端を係止し、前記指窪み部が互いに向かって付勢されるとき前記有刺部と前記嵌合コネクタとの係合が解除されるように構成されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の血液ラインコネクタは更に、
前記部材の中心から延びる中央チューブを備えている、血液ラインコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記雌ネジ部及び前記中央チューブは、雌ルアー型患者アクセスコネクタと嵌合するように構成されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項4】
請求項2記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記中央チューブは、前記部材の先端を越えて延在していることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項5】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記部材の外側表面が円錐台形状を有していることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項6】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記部材の外側表面は前記嵌合コネクタのシートに押圧されることにより封止を行うように構成されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項7】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記血液ラインコネクタは入口血液ラインコネクタであり、該入口血液ラインコネクタの前記チューブ接続端は、血液回路アセンブリの動脈血液ラインに流体接続されており、前記動脈血液ラインは、前記血液回路アセンブリの編成トレイに搭載されるポンプカセットの入口に流体接続されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項8】
請求項7記載の血液ラインコネクタは更に、
前記血液回路アセンブリの静脈血液ラインに流体接続されるチューブ接続端を有する出口血液ラインコネクタを備えており、前記静脈血液ラインは、前記血液回路アセンブリの前記編成トレイに搭載されるエアトラップに接続されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項9】
請求項8記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記静脈血液ラインに接続された前記コネクタは、
前記チューブ接続端と反対側に位置する患者アクセス接続端であって、雄ネジ型患者アクセス部と係合して該雄ネジ型患者アクセス部と流体密封接続を行うように構成された雌ネジ部を有する部材を含む患者アクセス接続端と、
前記部材から前記チューブ接続端に向かって後方に延在する一対の係止アームとを含み、該一対の係止アームはそれぞれ指窪み部と有刺部とを有し、該一対の係止アームは圧入型接続を行う際に前記患者アクセス接続端の外側表面が前記血液透析部の嵌合コネクタと流体密封接続を形成するように、前記血液透析部の嵌合コネクタと前記有刺部で係合して前記嵌合コネクタとの封止係合により前記患者アクセス接続端を係止し、前記指窪み部が互いに向かって付勢されるとき前記有刺部と前記嵌合コネクタとの係合が解除されるように構成されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項10】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記一対の係止アームの各々の前記指窪み部は、前記有刺部の後方に位置していることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項11】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記一対の係止アームの各々の前記有刺部は、該係止アームから外側に向かって延在していることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項12】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記部材に最も近い側における前記一対の係止アームの端部は、前記部材の後方に位置するフランジに取着されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項13】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記血液ラインコネクタと組み合わせられる前記嵌合コネクタは、前記血液ラインコネクタの前記患者アクセス接続端を収容する収容穴と、前記有刺部と係合する一対の穴と、前記有刺部が前記一対の穴に係合されたとき前記患者アクセス接続端の外側表面と封止係合するシートとを有することを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項1】
血液透析部の血液回路用の血液ラインコネクタであって、
血液回路チューブと係合して封止を行うように構成されたチューブ接続端、及び雄ネジ型患者アクセス部と係合して該雄ネジ型患者アクセス部と流体密封接続を行うように構成された雌ネジ部を有する部材を含む患者アクセス接続端と、
前記部材から前記チューブ接続端に向かって後方に延在する一対の係止アームとを備え、該一対の係止アームはそれぞれ指窪み部と有刺部とを有し、該一対の係止アームは圧入型接続を行う際に前記患者アクセス接続端の外側表面が前記血液透析部の嵌合コネクタと流体密封接続を形成するように、前記血液透析部の嵌合コネクタと前記有刺部で係合して前記嵌合コネクタとの封止係合により前記患者アクセス接続端を係止し、前記指窪み部が互いに向かって付勢されるとき前記有刺部と前記嵌合コネクタとの係合が解除されるように構成されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項2】
請求項1記載の血液ラインコネクタは更に、
前記部材の中心から延びる中央チューブを備えている、血液ラインコネクタ。
【請求項3】
請求項2記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記雌ネジ部及び前記中央チューブは、雌ルアー型患者アクセスコネクタと嵌合するように構成されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項4】
請求項2記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記中央チューブは、前記部材の先端を越えて延在していることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項5】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記部材の外側表面が円錐台形状を有していることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項6】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記部材の外側表面は前記嵌合コネクタのシートに押圧されることにより封止を行うように構成されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項7】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記血液ラインコネクタは入口血液ラインコネクタであり、該入口血液ラインコネクタの前記チューブ接続端は、血液回路アセンブリの動脈血液ラインに流体接続されており、前記動脈血液ラインは、前記血液回路アセンブリの編成トレイに搭載されるポンプカセットの入口に流体接続されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項8】
請求項7記載の血液ラインコネクタは更に、
前記血液回路アセンブリの静脈血液ラインに流体接続されるチューブ接続端を有する出口血液ラインコネクタを備えており、前記静脈血液ラインは、前記血液回路アセンブリの前記編成トレイに搭載されるエアトラップに接続されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項9】
請求項8記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記静脈血液ラインに接続された前記コネクタは、
前記チューブ接続端と反対側に位置する患者アクセス接続端であって、雄ネジ型患者アクセス部と係合して該雄ネジ型患者アクセス部と流体密封接続を行うように構成された雌ネジ部を有する部材を含む患者アクセス接続端と、
前記部材から前記チューブ接続端に向かって後方に延在する一対の係止アームとを含み、該一対の係止アームはそれぞれ指窪み部と有刺部とを有し、該一対の係止アームは圧入型接続を行う際に前記患者アクセス接続端の外側表面が前記血液透析部の嵌合コネクタと流体密封接続を形成するように、前記血液透析部の嵌合コネクタと前記有刺部で係合して前記嵌合コネクタとの封止係合により前記患者アクセス接続端を係止し、前記指窪み部が互いに向かって付勢されるとき前記有刺部と前記嵌合コネクタとの係合が解除されるように構成されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項10】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記一対の係止アームの各々の前記指窪み部は、前記有刺部の後方に位置していることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項11】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記一対の係止アームの各々の前記有刺部は、該係止アームから外側に向かって延在していることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項12】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記部材に最も近い側における前記一対の係止アームの端部は、前記部材の後方に位置するフランジに取着されていることを特徴とする血液ラインコネクタ。
【請求項13】
請求項1記載の血液ラインコネクタにおいて、
前記血液ラインコネクタと組み合わせられる前記嵌合コネクタは、前記血液ラインコネクタの前記患者アクセス接続端を収容する収容穴と、前記有刺部と係合する一対の穴と、前記有刺部が前記一対の穴に係合されたとき前記患者アクセス接続端の外側表面と封止係合するシートとを有することを特徴とする血液ラインコネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図33A】
【図33B】
【図34A】
【図34B】
【図34C】
【図35A】
【図35B】
【図36A】
【図36B】
【図37】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図33A】
【図33B】
【図34A】
【図34B】
【図34C】
【図35A】
【図35B】
【図36A】
【図36B】
【図37】
【図38A】
【図38B】
【図38C】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【公開番号】特開2012−24620(P2012−24620A)
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243747(P2011−243747)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2010−528896(P2010−528896)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(594010009)デカ・プロダクツ・リミテッド・パートナーシップ (62)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月9日(2012.2.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【分割の表示】特願2010−528896(P2010−528896)の分割
【原出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(594010009)デカ・プロダクツ・リミテッド・パートナーシップ (62)
【Fターム(参考)】
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