説明

血液量センサに用いる異物検出方法および異物検出装置

より有益な情報をオペレータに提供することでより正確な血液量の読み込みを促進するために時間・波長技術を利用して体内で血液量センサ(6)の窓上の異物を検出し取り除く装置および方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、血液量センサレンズ上に存在し得る障害や異物を検出するための光散乱・吸収技術の利用に関する。特に、本発明は、血液量センサシステムのセンサ窓上の異物を検出するために光を利用する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学者等により、例えば、本明細書に援用される非特許文献1に記載のように、健康な組織の血液量に対する表面粘膜の検出可能な血液量増加は、大腸内の癌性・前癌性病変部近くで起こるということがわかっている。こうした現象は、血液供給の初期増加(early increase in blood supply:EIBS)と称される。
【0003】
この現象により、異常領域内の血液供給の初期増加(EIBS)に基づく異常があり得る領域を予測できることが知られている。更に、注目領域に平行光を照射するプローブを用い、かつ、吸収光および反射光の量を検出することにより、臨床医に血液量情報や血流情報を提供して内視鏡を導き侵襲的措置を行わずに体内で起こり得る異常を検出できることがわかっている。こうした技術は、例えば、本明細書に援用される、2007年11月8日出願の「Blood Content Detecting Capsule」と題された本発明の譲受人に譲渡される特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願明細書11/937,113
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】R. K. Wali, H. K. Roy, Y. L. Kim, Y. Liu, J. L. Koetsier, D. P. Kunte, M. J. Goldberg, V. Turzhitsky, and V. Backman, Increased Microvascular Blood Content is an Early Event in Colon Carcinogenesis, Gut Vol. 54, 654-660 (2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、血液量や血流の検出は、組織粘膜から血液量センサにはね返る光の量を測定することに依存する。システムは反射光の量を測定することに依存するので、レンズ上の液体異物や固体異物により血液測定装置の窓が遮られると、測定の精度は著しく影響を受ける。更に、従来型CCDカメラの光など、他の観察装置に起因しセンサにより検出される外部光があると、どんな測定や異物検出技術でもその精度が大きく影響を受けることになる。
【0007】
例えば、内視鏡や血液量センサ窓に対する水のノズル噴射など、体内で内視鏡レンズから液体異物や固体異物を取り除くための様々な技術が存在するが、これらの技術には観察窓が実際に汚れていないかどうかを検出する方法が欠けている。観察のみを行うシステム、つまり、血液量センサを含まないシステムでは、オペレータは、客観的に画像を見ることにより観察窓上に異物があるかどうかを判断する。血液量センサシステムでは、オペレータが見られる画像がないので、オペレータは検出窓上の異物の存在に関する判断ができない。
【0008】
更に、血液量センサ窓上の異物の存在を判断することが望まれる場合、内視鏡先端部または血液量センサ窓は組織表面から離される。その結果、例えば内視鏡カメラのようなスコープ観察光源からの照射光は、生体組織表面により散乱して血液量センサの受光ファイバに到達することがある。この場合、観察光源からの光は血液量センサに帰するので、異物が存在するレベルが誤って読み込まれてしまい、それにより異物の存在または不在を誤って判断してしまう。
【0009】
その結果、血液量測定の精度を向上させるためは、異物により測定レンズが遮られているかどうか客観的に判断する技術の存在が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の血液量センサ上の液体異物および固体異物を検出するシステムおよび方法は、こうしたセンサからの高速データの精度を支援することに利点がある。更に、本発明の一態様によると、異物検出の期間に血液量センサに入射する外部光の量は最小限に抑えられる。内視鏡や結腸鏡などのスコープ機器と共に血液量センサを使用する実施の形態の一例では、複数の独立した光源が交互に駆動されて(1)血液量検出および異物検出に用いる光および(2)臨床医によるスコープ機器を介した観察に用いる光を順次生成する。特に、血液量検出や異物検出に用いるために放射された光を分割する時間間隔の間の時間間隔でスコープ観察に用いる光が放射される。このように、血液量検出や異物検出の間に血液量検出窓にはね返るスコープ観察用に生成される外部光に関する起こりうる悪影響が低減される。
【0011】
本発明の他の実施の形態によると、異なる波長または異なる範囲の光がスコープ観察および血液量検出(異物検出を含む)のそれぞれの機能に使用されている。スコープ観察および血液量検出に用いられる光の波長が異なるので、血液量センサ上の異物の検出および血液量異常の検出が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、血液量検出センサを利用する本発明の一態様にかかるシステムの一例のブロック図である。
【図2】図2は、組織粘膜に接触する血液量センサを有する内視鏡先端部の実施の形態の一例の断面図である。
【図3】図3は、組織粘膜に接触しない図2の内視鏡先端部の実施の形態の一例である。
【図4】図4は、本発明で使用可能な内視鏡先端部の図の一例である。
【図5】図5は、本発明の一態様にかかる観察光および検出光の光強度対時間の図の一例である。
【図6】図6は、本発明の別の一態様にかかる観察光および検出光の光強度対時間の図の一例である。
【図7】図7は、本発明の更なる一態様にかかる観察光および検出光の光強度対波長の図の一例である。
【図8】図8は、本発明の更に別の一態様にかかる観察光および検出光の光強度対波長の図の一例である。
【図9】図9は、本発明の別の一態様にかかる観察光および検出光の光強度対波長の図の一例である。
【図10】図10は、本発明の更なる一態様にかかる観察光および検出光の光強度対波長の図の一例である。
【図11】図11は、本発明の態様の組み合わせのカプセル内視鏡の一例を示す。
【図12】図12は、下部の組織に接触する本発明にかかるカプセル内視鏡の実施の形態の一例を示す。
【図13】図13は、下部の組織から離れた図12のカプセル内視鏡の実施の形態の一例を示す。
【図14】図14は、下部の組織に接触する本発明にかかるカプセル内視鏡からの表示される代表的な画像を示す。
【図15】図15は、血液量センサ窓が下部の組織から離れる時にカプセル内視鏡からの表示される代表的な画像を示す。
【図16】図16は、本発明で使用可能な内視鏡先端部の図の一例である。
【図17】図17は、図18の内視鏡先端部の側面図である。
【図18】図18は、本発明で使用可能な別の内視鏡先端部の構成の図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、血液量センサ上に堆積する可能性のある有害な液体異物や固体異物の検知を改善することに関する。こうした改善は、例えば、従来のカプセル型内視鏡の構造を用いて実施される血液量センサに用いることが好ましい。
【0014】
例えば、先に参照した出願済みの特許文献1に記載される血液量や血流の検出に用いる特定の血液量センサは、通常、粘膜組織などの生体組織に直接接触して作動する。ここで、血液量センサとは、血液量や血流を検出するセンサのことである。本発明の原理は、血液量センサが生体組織に接触しない時に血液量センサを用いて異物を検出することに基づく。この場合、血液量検出用の照明部および血液量センサは、共通の外部窓を共有する。この窓が組織から離れており窓上に異物がない場合、放射された光は全てまたはそのほとんどが散乱し、光はほとんどまたは全くセンサにはね返らない。
【0015】
しかし、異物が窓上に存在すれば、その異物があることで、容易に測定できる量の放射光が共通窓を介してはね返される。これにより、例えば、こうした窓が組織に接触していない時に反射光の強度が所定の閾値以上であれば、この窓上に異物が存在すると考えられる。当業者であれば、センサ上の異物の存在を検出するというこの基本概念を利用した多くの構成が考えられることが理解できる。
【0016】
図面は、全体を通して同じ参照番号が同じ部分を表す。本明細書中で用いられるように、「a」、「an」および「the」は、内容により明示されていない限り複数についても言及するものとする。また、本明細書で用いられるように、「in」は、内容により明示されていない限り「in」および「on」の両方を含むものとする。また、本明細書で用いられるように、「and」および「or」は、内容により明示されていない限り接続語および離接語の両方を含み、また、ほぼ同じ意味で用いることができるものとする。
【0017】
図1は、血液センサ6を有する例示の内視鏡システム100のブロック図を示す。システム100は更にビデオモニタ1と、観察光源2と、内視鏡画像変換部3と、血液量センサ光源4と、血液量制御部5と、内視鏡7とを有する。
【0018】
従来の内視鏡構成は、本発明にかかる内視鏡7に用いることができる。これにより、通常の観察モードでは、内視鏡7は、例えば、大腸や他の組織など、消化菅に沿う生体組織の近くに挿入される。観察光源2は、内視鏡7を介して伝達され対象生体組織の表面に到達する光を発生する。光は、調査中の組織に反射し、一連のレンズを通って内視鏡7に再入射する。反射された画像は画像変換部3により処理され、画像変換部3は、対象組織の画像を表すデジタル信号を生成するCCDや他の画像処理装置を有してもよい。画像変換部3からの信号はモニタ1に送信され、そこでオペレータや臨床医に表示されるビデオ画像へと変換される。
【0019】
しかし、従来の内視鏡と異なり、システム100は、血液量測定モードでも作動可能である。血液量測定モードでは、血液量センサ光源4は内視鏡7へ運ばれる光を生成する。内視鏡7は、調査中の組織粘膜に接触しながら、血液量センサ光源4からの光で組織を照射し、その後、下部の組織からの散乱光や反射した光、つまり、作用光を血液量センサ6で受光する。作用光はセンサ6により光信号または電気信号で血液量制御部5へと運ばれる。
【0020】
血液量制御部5はこのデータを受信し、このデータを、例えば、以下の式(1)で表されるホワイト補正などのデータ補正アルゴリズムを実行するデータ前処理部に与える。
【0021】
【数1】

【0022】
ここで、式(1)の分子および分母で使われるΠと⊥はそれぞれ水平偏光スペクトルと垂直偏光スペクトルを表す。式(1)では、λは波長を表す。ΔI(λ)は、測定された差分偏光スペクトルを示す。ΔI(λ)は、標準白色板を用いて測定されるスペクトルであり、式(1)の分母に示すように、白色水平偏光スペクトルIWΠ(λ)と白色垂直偏光スペクトルIW⊥(λ)とを合計することにより算出される。式(1)の分子では、水平偏光スペクトルIΠ(λ)と垂直偏光スペクトルI(λ)との差分が算出され、その差分はΔI(λ)を表す信号である。
【0023】
血液量制御部5は、例えば、M. P. Siegel et al, “Assessment of blood supply in superficial tissue by polarization-gated elastic light-scattering spectroscopy”, Applied Optics, Vol. 45, Issue 2, pp. 335-342 (2006) に見られる以下の式(2)を用いて、血液量を算出する。
【0024】
【数2】

【0025】
血液量制御部5は、式(2)などのモデル式を用い、対応する血液量値をモニタ1や他の表示装置に与える。代わりに、血液量制御部5は、収集したデータ全体の確認として血液量値をデータ検証部に与えても良い。また、血液量制御部5は、センサ6からの結果をコンパレータ(図示しない)に与えることで測定の有効性を判断し、かつ測定窓に基づく検出の精度を向上させてもよい。
【0026】
本発明の一態様にかかる異物検出モード操作では、内視鏡7はセンサ6と共に調査中の組織から離れて配置される。この操作モードでは、光は血液量センサ光源4により生成され、反射光がセンサ6により検出され、これに応じて反射光が血液量制御部5により測定され処理される。外部センサ窓上に異物が存在しなければ、光は全てまたはほとんどが窓を通過して散乱する。ほんのわずかな光が反射されその後センサ6により検出される。しかし、検出窓に異物が堆積する場合、検出可能な量の光が異物によりはね返されてセンサ6に入る。このように、検出される反射光の強度が所定の閾値以上であれば、異物が窓に堆積しており検出される反射光はその異物からのはね返りによるものであると考えられる。
【0027】
図2及び図3に関し、こうしたシステム一例のより詳細な操作を以下に説明する。図2を参照すると、内視鏡システム200の先端部は、血液量検出部220と光学観察部230とを有する。血液量検出部220は、受光ファイバ201および203と、照射ファイバ202と、直線偏光子204および205と、レンズ207と、血液量センサ窓208とを有する。観察部230は、光伝送ファイバ212と、照射窓213と、観察窓207と、観察レンズ210と、CCDや他の撮像素子である撮像部214と、送信ライン209とを有する。受光ファイバ201および203は、図1の血液量センサ制御部5に連結されてもよい。
【0028】
図2は、更に、血液量検出位置にある、つまり、組織206と接触する、システム200を示す。操作中、血液量センサ光源からの光は照射ファイバ202上で運ばれて偏光子を通過する。放射された偏光や平行光は、レンズ207を通過して血液量センサ窓208に入射する。放射光は組織206に当たり、組織206に対する作用に基づき散乱し反射する。反射光は、血液量センサ窓208およびレンズ207を通りはね返る。偏光子204を通過する光は、透過光が同じ偏光子204を通過するので、透過光と一直線になる。上記の実施の形態では、偏光子205は偏光子204に直交し、偏光子205を透過する光はいずれも受光ファイバ203に運ばれ、透過光に対し異なる偏光角を有する平行光を示す。
【0029】
血液量検出測定の間、内視鏡200の先端部は組織粘膜206に接触しているので、観察レンズ210を介して受信され撮像部214に運ばれる画像は遮られる。また、その画像はぼやけてしまうことがある。213により放射される全ての光は組織206に吸収されて、オペレータが観察する照射組織領域がなくなる。
【0030】
血液量検出の前には、オペレータは血液量センサ窓208には障害や異物がないかを決定し、血液量観測を行うべきかどうかを判断、または、例えば、内視鏡先端部の噴射ノズルや内視鏡先端内部の水流口を含む公知の方法のうちいずれか一つを用いてレンズおよび窓を洗い流して異物を取り除くかどうかを判断することが必要となる。血液量検出部220が下部の組織206に接触していない場合にこれらの判断が行われる。器具200の先端部の血液量検出部220が組織と接触しているかどうかを判断するために、センサ222などの機械接触センサまたは電磁接触センサを用いる、または、レンズ210およびレンズ211を介したオペレータによる観察を行うことができる。血液量検出部220が組織206に接触していない場合、異物測定を行うことができる。組織粘膜に接触していることを示すセンサ222のような適当な接触センサは、例えば、特別に設計された内視鏡、圧力センサ、バルーンなどを有する。このような接触センサは、同様に、内視鏡以外の機器に用いる血液量センサや単独で利用される血液量センサに適当なものである。
【0031】
図3には、組織粘膜206から離れており接触していないシステム200の先端部が示される。そして、この位置では、照射窓213および血液量センサ窓208は組織206に接触せず血液量測定を行う場所に位置していない。この位置での操作中、観察光が光伝送ファイバ212上を透過窓213へ伝送される。窓213から放射された光は組織206に当たり観察される領域を照射する。反射光は観察窓207に入射し、レンズ210を通り、撮像部214に集光される。撮像部214から生成された画像信号は、臨床医による観察に用いる図1のモニタ1などのディスプレイへと送信ライン209上を運ばれる。
【0032】
また、図3に示す先端位置では、照射窓213を出た光がはね返り血液量センサ窓208を通り、受光ファイバ201および受光ファイバ203で受光され、図1の血液量センサ制御部5により処理される可能性がある。これが、血液量センサが窓208上の異物の存在または不在を判断する期間に起こった場合、血液量センサ窓208上の異物の存在に関して誤った読み込みが行われる可能性がある。この結果、不正確な読み込みが行われる可能性がある。この望ましくない事柄を解消するために、照射伝送ファイバ212上を伝送される観察光および血液量照明ファイバ上を伝送される光を始動するタイミングを、ファイバ212およびファイバ202により光が同時に放射されないようにする。
【0033】
図5は、本発明の実施の形態に用いられる時系列の一例を示す。図5に示す時間軸に見られるように、臨床医によるスコープ観察に用いる照明は、第1の光源により生成され観察窓213から、例えば、それぞれR、G、Bの間隔で、赤色光、緑色光、青色光の順で放射される。光は、図3に示すような時間間隔で組織206に反射し、レンズ210に入射し、撮像部214に集光される。撮像部214は、例えば、モノクロCCDやカラーCCDや他の撮像装置であってもよい。その後、撮像部214により生成される対応のデジタル画像信号またはアナログ画像信号は、オペレータに表示するために送信ライン209上を送信される。
【0034】
図5の観察に用いられる赤、緑、青の照明順の間隔R、G、Bの間オフ期間または遮断期間502の時間間隔で、血液量検出光503はファイバ202上を伝送されて血液量センサ窓208から放射されて異物を検出する。図3の血液量検出部220は下部の組織に接触していないので、窓208上に異物がなければ最少量の伝送光のみが反射して血液量センサ窓208に入ることになる。更に、観察光がオフまたは遮断されている時に図5の期間502で血液量センサ光が伝送されるので、観察に使用される外部光が血液量センサ窓208に入って読み取りを妨害してしまうということが解消される。
【0035】
こうして、間隔502で、血液量検出に用いられる光の強度が測定され、光の強度が、閾値レベル、例えば、血液量検出部220が組織206に接触している時に作用光に対し通常検出される強度の約10%、以上であるとわかった場合、血液量センサ光は窓208上に堆積した異物により反射されていると考えられる。異物が存在するとわかれば、オペレータはこの異物を除去するのに適当なステップを行ってもよい。
【0036】
図6には、本発明の別の実施の形態で用いることができる別の時系列を示す。図5に示すように、スコープ観察のために赤、緑、青の光を順に伝送するよりも、例えば、代わりに、400〜700nmの波長範囲の広帯域光601を間隔604で伝送し、間隔602で遮断してもよい。遮断間隔602では、異物検出または血液量測定を行うために血液量検出に用いる光603が生成される。本実施形態によると、照射に用いる光601および血液量センサからの異物検出を含む測定に用いる光603に用いられる光の波長は特に限定されない。例えば、本明細書に援用されるM. P. Siegel et al, Applied Optics, Vol. 45, Issue 2, 335-342 (2006) に記載のとおり、500〜600nmの波長範囲の光が使用されてもよい。
【0037】
本発明の別の実施の形態では、臨床医によるスコープ観察に用いられる生成された光は、血液量検出および異物検出に使用される光とは異なる波長である。この結果、本実施の形態では、スコープ観察および血液量センサに用いるために生成された光は、図5および図6に示すように、時間に対して周波数(波長)で分割される。この波長に基づく実施の形態の一例では、図1の内視鏡7は、例えば400〜700nmの波長範囲の広帯域照射光をひと続きのパルスとしてではなく連続して放射する。400〜700nmの波長範囲の広帯域光を用いるので、スコープ観察に用いる画像を取得するためにカラーCCDを使用してもよい。これは、図7に示される。
【0038】
図7に見られるように、400〜700nmの範囲の光701は、スコープ観察に使用される。同じく400〜700nmの範囲の光702が血液量検出に使用され、例えば、700〜1000nmの異なる範囲の光703が異物検出にのみ使用される。この実施の形態を図2および図3とともに説明する。光701は観察窓213から連続して、つまり、パルスとして放射されてもよい。プローブが組織206に接触していない期間は、反射光は観察窓207に入射しカラー撮像部214に運ばれる。画像はその後、外部モニタ上での観察のために送信ライン209上で運ばれる。同時に、血液量センサは、伝送ファイバ202から光702および光703を放射する。光702および光703は、組織206に当たり、異物が存在しなければ、最小量の光のみが偏光子204および偏光子205にはね返る。
【0039】
光703は、光701および光702とは異なる波長範囲にあり、偏光子204および偏光子205に受光されるどの外部光701および外部光702も異物検出測定に影響することはない。プローブが組織206に接触していない間、700〜1000nmの範囲の検出された光の強度が閾値、例えば、血液量検出部220が組織206に接触している時に作用光に対して通常検出される強度の約10%、を超える場合、オペレータ臨床医は異物が存在すると考え、異物を除去するのに必要な洗浄ステップを行ってもよい。
【0040】
プローブが組織206に接触している期間は、下部の組織との接触により、201の400〜700nmの波長であり観察窓213を通って運ばれるスコープ観察用に生成される光は、いずれも血液量センサ窓208および受光ファイバ201および受光ファイバ203に入射しない。このように、誤った血液量の読み取りは起こらない。反対に、プローブが組織206に接触しない場合、伝送ファイバ202から伝送される更なる光が通常の観察のための照射を助ける。
【0041】
図8に示す別の実施の形態の一例では、スコープ観察用の光801〜803が赤色光801、緑色光802、および青色光803の順で順次放射され、400〜700nmの範囲の光をカバーする。血液量検出に用いられる光804も400〜700nmの範囲にある一方、異物検出に用いられる光805は700〜1000nmの範囲で放射される。こうした例示の構成は、連続広帯域光を利用する連続システムではなく、赤色光801、緑色光802、および青色光803を順次放射するフレーム順次方式に用いてもよい。
【0042】
波長で光を分割するので、血液量センサが異物検出測定を行っているときに、異物検出に用いられる光805とスコープ観察に用いられる光801および803とは干渉しない。これにより、ファイバ201および203が受光した700〜1000nmの範囲の光が閾値を超えると、オペレータは、異物が血液量センサの窓に堆積していると考える。
【0043】
図9は、本発明の光構成の別の実施の形態を示す。この実施の形態では、血液量測定およびスコープ観察に使用される光は特に限定されない。スコープ観察に用いる光は連続的であり例えば400〜700nmの波長スペクトルをカバーすることが好ましく、または、赤色光901、緑色光902、および青色光903として順次伝送されてもよい。血液量検出用の光905は500〜600nmの波長範囲にあり、異物検出用の光904および906はそれぞれ350〜400nmまたは700〜1000nmの波長範囲にあってもよい。図10を参照して説明される別の実施の形態では、血液量検出を算出するためにのみ用いられるスペクトルよりも広い観察用の全スペクトルを利用して異物検出が行われることが好ましい。こうした実施の形態により、スコープ観察に用いる照射光をより分離させることで異物検出の精度を向上させる。異物を検出する際、通常、血液量センサがカバーする波長範囲が大きいほど、信号対ノイズの割合は高くなり、異物検出の向上につながる。血液量センサ窓208から放射された光は組織206の表面付近で散乱するので、受光ファイバ201および203で受光される測定可能な光のエネルギーは小さくなる傾向にある。
【0044】
このため、血液量センサ窓208上の異物により反射される非常に弱い信号を検出するのに十分な感度を有するシステムを提供することが好ましい。光の広い波長を用いて異物を検出することにより、全体の感度が向上する。図10に見られるように、スコープ観察光101は、連続信号を形成するために400〜700nmの波長範囲で順次放射される。光1005は、血液量検出に利用され、350〜1000nmの波長範囲に含まれ、500〜600nmの波長範囲に含まれることがより好ましい。光波長範囲1004および1006は光波長範囲1005を囲んでおり、スコープ観察光101よりも広く、例えば、350〜1000nmの波長になる。このように、異物検出には、窓208上の異物を示すのに十分なレベルで光1004および1006が検出されることが必要となる。検出する光のスペクトルが広いため、血液量センサが受ける対応の光エネルギーは、より狭い帯域の光に対するものよりも高いことが好ましい。
【0045】
従来の内視鏡技術に加え、本発明の異物検出技術もカプセル型内視鏡に同様に適用できる。図11は、患者体内で使用されるカプセル型内視鏡システムの実施の形態の一例を示す。
【0046】
システム110は、カプセル内視鏡111とホスト処理部112とを有する。カプセル内視鏡111は、大腸113などの臓器に挿入、または、患者に経口で摂取される。カプセル内視鏡111は、参照番号114で示されるようにホスト処理部112に無線送信を行う。無線送信は、誘導(inducion)法やRF(radio frequency)法などの公知の無線方法を含む公知のいずれの送信方法であってもよい。ホスト処理部112で受信したデータに基づいて、オペレータは、カプセルおよびその血液量窓が大腸113の細胞粘膜に接触しているかどうか判断できる。オペレータがカプセル内視鏡111の血液量窓が下部の細胞粘膜に接触していないと判断する期間、血液量窓の表面に異物があるかどうかを判断するための異物測定が行われる。
【0047】
図12は、調査中の臓器の細胞粘膜に接触しているカプセル内視鏡の一例を示す。図13は、血液量センサ窓124が調査中の臓器の細胞粘膜に接触していない場合の同じ内視鏡カプセルを示す。
【0048】
図12および図13のカプセル内視鏡120は、4つの主構成要素からなる。カプセルシェル134内部には、(1)カプセルの他の構成要素へのDC電力を生成するための電源130と、(2)画像データと、血液量データと、異物データとをホスト処理部へ送信する送信部131と、(3)血液量センサ部190と、(4)画像観察部195と、が配置される。血液量センサ部190は、例えば、通常LEDや他の適した光源などの光源121と、直線偏光子122と、レンズ123と、血液量センサ窓124と、直線偏光子126と、直線偏光子127と、透過回折格子128と、リニアセンサ129とからなる。画像観察部195は、複数のLED132と、例えばCCDや他の広く使用される撮像装置などの固定センサなどのイメージセンサである画像処理部133とを含んでもよい。
【0049】
図11および図12に関し、動作を説明する。図12は、血液量センサ窓124が組織125に接触するときの本発明のカプセル内視鏡の一例を示す。光源121は、電源130から電力を受けて血液量検出に用いる光を生成する。生成された光(矢印AおよびBで示す)は、組織125に当たる前に直線偏光子122、レンズ123、および血液量センサ窓124を通過する。組織125に当たった光は散乱、または、血液量センサ窓124、レンズ123、および直線偏光子126および127を通過してはね返る。直線偏光子126を通過する光が透過光に平行となり直線偏光子127を通過する光が透過光に直交するように、直線偏光子126および127は直交して調整されている。光は、その後透過回折格子128およびリニアセンサ129により分光分析される。組織血液量を示す対応する生成されたデータは、その後ホスト処理部112に対する送信のためのデータ送信部131に運ばれる。
【0050】
血液量センサ部190のLED132および他の構成要素も電源130から電力供給を受け、カプセルシェル134を介して光(矢印CおよびDに示される)を放射する。放射光は、組織125を照射し、イメージセンサ133上で撮像される。画像データは、図11のホスト部112に送信するためにデータ送信部131に運ばれる。血液量センサ窓は生体組織125に接触しているので、LED132からの外部光は血液量センサ窓124に入らず、誤ったまたは不正確な読み取りが起こらない。
【0051】
図13では、組織125に接触しない血液量センサ窓124が描かれている。つまり、LED132により生成されたスコープ観察に用いられる光は散乱し窓124を介して血液量センサにはね返るので、血液量の読み取りおよび異物検出の双方に影響する可能性がある。
【0052】
これを解消するために、同時に光を放射しないように、LED132および121には交互に電力が供給され、図6に示す照射タイミングの特徴があってもよい。図6のグラフの一例に見られるように、400〜700nmの範囲の広帯域光601のパルスはオンオフする。オン期間に得られる画像は観察用にホスト部112に送り返される。遮断期間またはオフ期間は、LED121が血液量検出および異物検出に用いる光パルス603を生成する。観察用の照射タイミングと血液量検出用の照射タイミングとを交互にすることで、干渉光の発生が解消される。ホスト部112で生成される画像を観察することにより、オペレータは、血液量センサ窓124が組織125に接触するように内視鏡120が正確に調整されているかどうかを判断することができる。
【0053】
図14および図15は、血液量センサ窓124が組織125に接触、または、組織125から離れるようにカプセルが調整されている場合にホスト処理部112によって受信される画像の一例を示す。図14に見られるように、画面151の中心に画像の遠視野が表示されており、臨床医は、生体組織がカプセルシェル134のドーム型表面から離れていると判断できる。画像から確認できるように、臨床医は、観察により組織がカプセルシェル134に接触しており、カプセルは血液量測定を行うために適切に調整されているということがわかる。これに対し、図15に示すように、カプセル内視鏡120が適切に調整されずに血液量センサ窓124が組織125に接触していない場合、臨床医は、ホスト処理部112の画面に表示される画像161の下部にのみ遠視野が表示されていることを観察する、つまり、カプセルシェル134は組織125から離れており、これは、血液量センサ窓124は組織125から離れており組織125に接触していない可能性があることを臨床医に示している。
【0054】
血液量センサ窓124が組織125から離れており、光源121の強度が設定した閾値、例えば、血液量検出部220が組織206に接触している時に作用光に対し通常検出される強度の約10%、以上である場合、血液量センサ窓124上に異物が存在すると考えることができる。
【0055】
本発明の別のカプセルの実施の形態によると、図7に関して説明した方法と同様に、異なる光の波長範囲を観察および血液量検出に用いる。図4は、本発明で使用される内視鏡先端部の実施の形態の一例を示す。内視鏡先端部400は、前方給水口401と、照射窓402と、スコープ観察窓403と、血液量センサ窓404と、噴射ノズル405と、照射窓406と、ユーティリティチャネル407とを有する。スコープ観察窓403および血液量センサ窓404は噴射ノズル405に対して直線状に整列している。前述のいずれかの方法により血液量センサ窓404上で異物が検出されると、オペレータは公知の技術の一つを用いて噴射ノズル405から水を噴射でき、同一の噴射ノズル405を用いてスコープ観察窓403および血液量センサ窓404から異物を洗い流すことができ、これにより、内視鏡先端部に必要な噴射口の数を最小限に抑えることができる。更に、この好ましい実施の形態を用いて、異物を洗い流す間またはその直後に、開示したいずれかの実施の形態を用いて異物検出測定を行い、血液量窓は異物もなく十分にきれいであり血液量測定が継続できるとオペレータに知らせてもよい。
【0056】
本発明と作用するように設計された内視鏡先端部の好ましい実施の形態を図16および図17に関して説明する。内視鏡先端部180は、照射窓181と、スコープ観察窓182と、噴射ノズル183と、照射窓184と、前方給水口186と、ユーティリティチャネル187とを有する。図17に見られるように、内視鏡180の先端部は2つの面に属している。前方部189は、血液量センサ窓185と前方給水口186とを有する。血液量センサ窓185は、前方部189にあるので、スコープ観察窓182を接触させずに、内視鏡先端部を組織188に接触させることができる。スコープ観察窓182を組織188に接触させないことにより、オペレータが受信する画像は飽和せず、スコープ観察窓182を介して受付ける内視鏡画像は鮮明で利用可能なままである。しかしながら、血液量センサ窓185は前方部189にあるので、噴射ノズル183を用いて異物を取り除くのは困難である可能性がある。その代わりに、血液量センサ窓185から異物を洗い流すために前方給水口186が使用される。操作中、前方給水口186は組織188に水を噴射し、その水が血液量センサ窓185に跳ね返ることで異物が洗い流される。
【0057】
図18は、本発明での利用に適した内視鏡先端部の別の実施の形態の一例を示す。この実施の形態では、内視鏡2000は、先端部2004と、照明窓2001と、スコープ観察窓2002と、噴射ノズル2003と、血液量センサ窓2005とを含む。先端部2004は全体的に平坦であるが、噴射ノズル2003は凸状であり、先端部2004のわずかに傾斜した凹部2006に位置してもよい。
【0058】
スコープ観察窓2002に用いる窓および血液量センサ窓2005の両方に対する洗浄処理を向上させるために、スコープ観察窓2002および血液量センサ窓2005に使用される対物レンズは、わずかに傾斜した凹部2006の延長部分に位置する。噴射ノズル2003と、スコープ観察窓2002に用いる窓と、血液量センサ窓2005とは、傾斜部2006の下部から傾斜の上方部までこの順番で配置される。この並び方では、噴射ノズル2003から噴射される水によりスコープ観察窓2002および血液量センサ窓2005が洗浄される。傾斜部2006により水が導かれるので洗浄性能が向上し、ほぼ平らな先端部2004が下部の対象粘膜を傷つけてしまう可能性がほとんどない。
【0059】
これまでの説明および図面は本発明の好ましい実施の形態を示すが、本発明の思想と範囲から逸脱しなければ様々な変更や変形が可能だと理解できる。例えば、これまで説明した本発明に係る波長分離とスコープ観察および異物検出に用いられる交互時系列法とを組み合わせることができる。本発明で用いられる血液量センサは内視鏡や結腸鏡などのスコープ機器の利用に関して説明されたが、本発明の原理は、単独で用いられる血液量センサにも同様に適用されまた他の医療機器とともに利用できると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体腔内の生体組織の領域を第1照射し、
血液量センサ(6)が前記組織の前記照射領域に接触しているか否かを第1判断し、
前記血液量センサ(6)が前記照射領域に接触していない場合、前記センサ(6)により反射光を検出し、
前記検出した反射光に基づいて、異物が前記血液量センサ(6)上に存在するか否かを第2判断する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1判断で、前記血液量センサ(6)が前記照射領域に接触していると判断されると、前記検出では、作用光を検出して前記照射領域の血液量の指標を決定することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記異物が前記血液量センサ(6)上に存在するか否かを判断する前記第2判断の結果に基づいて、血液量データを確認することを更に含むことを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記血液量データに基づき前記体腔内で内視鏡(7)を導くことを更に含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記内視鏡(7)を用いて前記組織を目視観測するために前記組織を第2照射することを更に含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1照射に使用される第1の光は第1の波長範囲にあり、前記第2照射に使用される第2の光は前記第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲にあることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の光および前記第2の光は交互に出射されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1判断は手動または自動で行われることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の光は第1の波長を有し、前記第2の光は前記第1の波長とは異なる第2の波長を有することを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の光は、赤、緑、および青の光を順次放射したものであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項11】
前記第2の光は、広帯域光であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項12】
体腔内部の生体組織の領域を照射する第1の照射部(202)と、
前記照射領域内の血液量を検出するセンサ(6)であり、窓(208)と前記照射領域からの反射光を前記窓(208)を介して受光する受光部とを有するセンサ(6)と、
前記受光した反射光を分析し、前記窓(208)上の障害の存在を示す出力信号を生成する処理部(5)と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項13】
前記生体組織の前記領域を照射する第2の照射部(212)と、
前記第2の照射部(212)により生成された光を利用して前記生体組織の前記領域を視覚的に観測するセンサ(214)と、
を更に含むことを特徴とする請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記第1の照射部(202)により生成される光は第1の波長範囲にあり、前記第2の照射部(212)により生成される光は前記第1の波長範囲とは異なる第2の波長範囲にあることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1および第2の照射部(202、212)に連結され、前記照射部(202、212)が同時に光を出射しないように前記照射部(202、212)を操作する光制御部を更に備えることを特徴とする請求項13に記載の装置。
【請求項16】
カプセル内視鏡(120)を更に有し、前記照射部(202)と前記受光部が前記カプセル内視鏡(120)内部に配置されることを特徴とする請求項12に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2011−527196(P2011−527196A)
【公表日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546569(P2010−546569)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/JP2009/061789
【国際公開番号】WO2010/004891
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】