説明

血液量センサに用いる較正方法

独立して使用される、または、従来のカプセル型内視鏡(6)などの医療機器と合わせて使用される血液量センサを較正する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、血液量検出センサの較正に関する。特に、本発明は、従来のカプセル型内視鏡で使用可能な血液量検出センサを較正する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
科学者により、例えば、本明細書に援用される非特許文献1に記載のように、健康な組織の血液量に対する表面粘膜の検出可能な血液量増加は、大腸内の癌性・前癌性病変部近くで起こるということがわかっている。こうした現象は、血液供給の初期増加(early increase in blood supply:EIBS)と称される。
【0003】
この現象により、異常領域内の血液供給の初期増加(EIBS)に基づく異常があり得る領域を予測できることが知られている。更に、注目領域に平行光を照射するプローブを用い、かつ、吸収光および反射光の量を検出することにより、臨床医に血液量情報や血流情報を提供して内視鏡を導き侵襲的措置を行わずに体内で起こり得る異常を検出できることがわかっている。こうした技術は、例えば、本明細書に援用される、2007年11月8日出願の「Blood Content Detecting Capsule」と題された本発明の譲受人に譲渡される特許文献1に記載されている。
【0004】
通常、光学的血液量検出は、組織粘膜に反射して作用し組織粘膜から血液量検出部に戻る光の量を測定することに依存する。システムは反射光の量を測定することに依存するので、反射光の分析に使用される血液量検出部および分光器が適切に較正されていないと、測定の精度は大きく影響を受ける。
【0005】
内視鏡を較正する様々な技術が存在する。しかし、従来こうした較正技術は、公知の強度および公知の波長の光を放射する特殊用途の光源の使用を必要としてきた。同様に、白拡散板を利用して反射光の強度が較正されるEIBS較正技術が提案されている。こうした技術は、例えば、本明細書に援用される非特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願明細書11/937,113
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】R. K. Wali, H. K. Roy, Y. L. Kim, Y. Liu, J. L. Koetsier, D. P. Kunte, M. J. Goldberg, V. Turzhitsky, and V. Backman, Increased Microvascular Blood Content is an Early Event in Colon Carcinogenesis, Gut Vol. 54, 654-660 (2005)
【非特許文献2】M. P. Siegel et al, Assessment of blood supply in superficial tissue by polarization-gated elastic light-scattering spectroscopy, Applied Optics, Vol. 45, Issue 2, 335-342 (2006)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、これらの提案されている白色光拡散に基づく較正技術において、血液量測定の間のスペクトル分析に用いられる分光器は、しばしば入射光に対する波長測定値の誤調整により不正確になるという事実に取り組んでいない。こうした誤調整は、一貫しない生成変動や、気温や湿度などの環境変化や、長時間の使用による変動に起因する。
【0009】
しかし、波長較正を用いる他の公知の技術は、コストのかかる特殊用途の較正光を必要とし、波長の補正に限定されており、かつ、強度補正には利用できない。下部の組織から反射しその組織に作用して所定の角度で検出部に入射する光の集光に血液量検出が依存するという事実により、光学血液量検出部の較正は更に複雑になる。特に、生体組織に対し、例えば、約15度で反射する光は、反射の低減を助けることが分かっている。これらの要件により、伝送された較正光が所望の角度で実際に血液量検出プローブに入射することは保証されないので、較正に用いる特殊用途の光に依存することは難しい。
【0010】
そこで、特殊用途の光や他の外部機器に依存せずに、高いレベルを保って血液量検出測定の精度を向上させるために、血液量検出部を較正する改良型技術の存在が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
利用される要素および検出部が使用前に較正されると、体内での血液量検出および通常観察に用いられるシステムおよび方法が改善されることが好ましい。設備間での製造誤差、設備の搬送、気温や湿度などの環境要因や他の多くの要因が理由で、較正が必要とされている。本発明の一態様では、較正された光源が基準となり較正処理中に作動することを必要とせずに、波長および強度範囲の両方で正確かつ確実な光学血液量検出部の較正を提供する。
【0012】
本発明の一実施形態では、血液量検出較正は、検出部内に配置され所定の波長範囲で較正ターゲットから反射される光を放射する光源に依存する。適した較正基準ターゲットには、白板や白拡散板がある。較正基準ターゲットからの反射光は検出部により検知され、血液量測定検出で使用される較正係数が生成される。また、較正基準ターゲットは、測定強度を算出して補正するために光学フィルタとあわせて用いてもよい。
【0013】
本発明の第2の実施の形態では、白拡散板または他の基準ターゲットが所望の波長範囲内の光を反射する有色または顔料で着色された基準ターゲットに替えられる場合、上記の較正処理から光学フィルタを排除することができる。基準ターゲットは、例えば、所望の顔料を混合して着色してもよく、または、基準ターゲットに粘着フィルムを貼ることにより着色してもよい。また、白や他の色の基準ターゲットの最上部に配置される有色の光学要素であってもよい。
【0014】
本発明の第3の実施の形態において、血液量検出部は、例えば、それぞれ上部および下部の約500nmと650nmの波長の所望の光スペクトルにわたる波長スペクトルで光を放射する独立した較正照射部を有してもよい。こうした実施の形態では、操作中、較正光の量が検出されて較正係数または補正係数を生成するように、白拡散板が基準ターゲットとして利用される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の一態様にかかる内視鏡システムの一例のブロック図である。
【図2】図2は、本発明の較正装置に接触する血液量センサを有する内視鏡先端部の実施の形態の一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明にかかる較正用プローブの外周に位置する血液量検出部を有する内視鏡先端部の一例の断面図である。
【図4】図4は、本発明で使用可能な装置の血液量検出部測定/算出部のブロック図である。
【図5】図5は、本発明で使用可能な受光ファイバから放射された光のスペクトルのグラフの一例を示す図である。
【図6】図6は、光学血液量検出部を使用する血液量検出の一例での透過性対強度のグラフの一例を示す図である。
【図7】図7は、本発明にかかる較正に使用できる光の反射率対強度のグラフの一例を示す図である。
【図8】図8は、本発明にかかる較正の結果の照射スペクトルの一例を示す図である。
【図9】図9は、本発明にかかる較正用の血液量検出部を有するカプセル型内視鏡の一例の断面図である。
【図10】図10は、本発明にかかる較正手順の一例のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、血液量検出システム、例えば、光学血液量検出システムに用いられる好ましい較正技術に関する。こうした技術は、従来のカプセル型内視鏡を含む内視鏡とあわせて、また、単独で使用できる血液量検出部の較正が促進される。
【0017】
図面は、全体を通して同じ番号が同じ部分を表し、本明細書中で用いられるように、「a」、「an」および「the」は、内容により明示されていない限り複数についても言及するものとする。また、本明細書で用いられるように、「in」は、内容により明示されていない限り「in」および「on」の両方を含むものとする。また、本明細書で用いられるように、「and」および「or」は、内容により明示されていない限り接続語および離接語の両方を含み、また、ほぼ同じ意味で使用できるものとする。
【0018】
図1は、血液量センサ要素1〜6と、独立した較正要素7とを備える代表的な内視鏡のブロック図100の一例を示す。特に、システム100は、ビデオモニタ1と、観察光源2と、内視鏡画像変換部3と、血液量検出光源4と、血液量測定算出部5と、対応する血液量センサを備える内視鏡6とを備える。観察光源2および血液量検出光源4は内視鏡6に接続され、それぞれ通常の観察および血液量検出に用いる光を与える。同様に、内視鏡画像変換部3および血液量測定較正部5は内視鏡6に接続されており、接続されたモニタ1に運ばれる画像データや血液量データを受け取る。
【0019】
内視鏡や結腸鏡などの従来のスコープ機器は、本発明にかかる内視鏡6に使用できる。使用される特定種類のスコープ機器が本発明の実施に重要というわけではない。操作中、スコープ観察モードでは、内視鏡6は、例えば、消化管に沿った大腸組織や他の組織などの生体組織の近くに挿入または配置される。観察光源2は、内視鏡6内部の光ファイバ(図示しない)などの光導体を介して伝送される光を生成して生体組織の対象領域の表面を照射する。照射光の一部は、調査中の組織に作用し、直接または1つ以上のレンズ(図示しない)を介して再度内視鏡6に入射する。この集光された作用光は内視鏡画像変換部3により処理され、内視鏡画像変換部3は、例えば、対象組織の画像を示すアナログ信号またはデジタル信号を生成するCCDや他の画像処理装置を有してもよい。生成された画像信号は、画像変換部3によりモニタ1に与えられる。モニタ1は、受信した信号に基づくビデオ表示をオペレータや臨床医に与える。
【0020】
しかし、従来の内視鏡と異なり、システム100は、血液量測定用の要素を有することが好ましい。組織領域の血液量測定の判断では、血液量検出光源4は、内視鏡6を介して運ばれる光を生成する。内視鏡6は、調査中の組織に接触しながら検出光源4からの光で注目領域を照射し、例えば、照射された組織領域の粘膜または下位粘膜に作用する対応する光の一部を検出する。
【0021】
検出された作用光に基づく電気信号は、血液量測定算出部5により生成される。作用光は、例えば、光ファイバなどにより、血液量測定算出部5に運ばれる。ここで、血液量センサ内部の一連のレンズや偏光子の構成により、照明光および作用光の一部は水平または垂直に互いに調整された、つまり、互いに略直交する光ファイバにより受光される。これを、図2に関し、より詳細に以下に説明する。
【0022】
血液量測定算出部5はデータ処理部を備え、データ処理部は、例えば以下の式(1)で表す白補正などのデータ補正アルゴリズムを実行する。
【0023】
【数1】

【0024】
式(1)において、分子および分母で使われるΠと⊥とはそれぞれ水平偏光スペクトルと垂直偏光スペクトルを表す。式(1)では、λは波長を表す。ΔI(λ)は、測定された差分偏光スペクトルを示す。ΔI(λ)は、標準白板を用いて測定されるスペクトルであり、式(1)の分母に示すように、白色水平偏光スペクトルIWΠ(λ)と白色垂直偏光スペクトルIW⊥(λ)とを合計することにより算出される。式(1)の分子では、水平偏光スペクトルIΠ(λ)と垂直偏光スペクトルI(λ)との差分が算出され、その差分はΔI(λ)を表す信号である。
【0025】
血液量測定算出部5は、例えば、本発明に援用される非特許文献2に見られる以下の式(2)を用いて、血液量を算出する。
【0026】
【数2】

【0027】
血液量測定算出部5は、式(2)などのモデル式を用い、対応する血液量表示や血液量値をモニタ1または他の表示装置に与える。また、血液量測定算出部5は、検証部(図示しない)に血液量値を与えてこうした値を検証してもよい。更に、血液量測定算出部5は、検出部からの結果をコンパレータ(不図示)に与えて測定の有効性を判断することで測定窓に基づく検出精度を向上させてもよい。
【0028】
しかし、実際のデータを収集する前に、照射された組織粘膜から反射および/またはその組織粘膜に作用する光の量が血液量検出のために正確に測定できるようにユニットを較正することが必須である。図2は、較正基準装置317に接触する内視鏡システム300の実施の形態を示す。図2を参照すると、システム300の内視鏡先端部は、血液量検出部320と光学観察部330とを有する。血液量検出部320は、受光ファイバ301および303と、照射光ファイバ302などの照射部と、直線偏光子304および305と、レンズ307と、血液量検出窓308とを有する。光学観察部330は、光伝送光ファイバ312などの照射部と、照射窓313と、観察窓311と、観察レンズ310と、CCDや他の撮像素子である撮像部314と、送信ライン309とを有する。
【0029】
較正基準装置317は、内視鏡6の先端部の前に配置または取り付けできる、または、内視鏡6の先端部に嵌めることができるキャップや他の種類の封入部材の形状であってもよい。基準ターゲット318を有する較正基準装置317の内壁は、公知のまたは所望の基準反射率の材料で形成またはコーティングされている。適した基準ターゲット318には、例えば、ニュージャージー州バーリントンのEdmund Optics社(www.edmundoptics.com)から入手可能なホワイトバランス反射ターゲット(White Balance Reflectance Target)などの白色拡散板がある。受光ファイバ301および303は、図1の血液量測定算出部5に連結されてもよい。
【0030】
較正中、図1の血液量検出光源4からの光は、照明光ファイバ302上を図2の偏光子304を介して運ばれる。放射された偏光または平行光は、レンズ307および血液量検出窓308を通過する。出射光は、拡散板318に当たり、この光の一部は反射および/または拡散する。較正基準装置317は、基準ターゲット318から所定の角度(または複数の角度)で反射した光が血液量検出窓308およびレンズ307を介して所定の角度(または複数の角度)で戻るように構成される。偏光子304を通過する光は、共通の偏光子304を通過することで、平行にされ透過光に対しある偏光角で調整される。記載の実施の形態では、偏光子305は偏光子304に対し直交であり、偏光子を通り受光ファイバ303に運ばれる光はいずれも透過光に対して異なる偏光角を有する平行光を示す。その光は、受光ファイバ301および303に入った後、図1の血液量測定算出部5に運ばれる。
【0031】
式(1)のΔI(λ)は、白拡散板などの基準ターゲットに対して測定されるスペクトル強度を示す。同様に、生体組織が血液量検出部に接触していると、ΔI(λ)は生体組織から測定されるスペクトル強度を示す。測定光の強度は、血液量組織データを収集する前に補正、つまり、式(1)でΔI(λ)を取得することにより較正される。
【0032】
波長較正の実施の形態の一例を図2および図4に関し説明する。システム505は、図1のシステム100の血液量測定/算出部を示す。システム505は、スリット503を有する分光器506と、光学フィルタ504と、算出部507とを有する。算出部507は、波長較正部508と、強度較正部509と、血液量値部510とを有する。ここで、光学フィルタ504は、分光器506の近くに位置する必要はなく、受光ファイバパスに沿ったどんなポイントに位置してもよい、つまり、受光ファイバ301および303のどちらの端に位置してもよい。
【0033】
較正手順の間、拡散板318から反射された光は、受光光ファイバ301および303を介してシステム505に運ばれる。受光ファイバ301および303は、実施の形態の光学フィルタ504で終わり、運ばれた光は、スリット503を介して分光器506に入射する。図5は、受光ファイバ301および303からの光が基準ターゲット318としての白拡散部を有する光学フィルタ504を通過する前の、その光の光学スペクトルの一例を示す。
【0034】
図6は、光学フィルタ504の一例の光透過特性を示す。図6からわかるように、例示の光学フィルタ504は、血液量測定に必要な波長範囲、例えば、500〜650nmの波長範囲の光のみを通過させるバンドパスフィルタである。この実施の形態の一例では、図6に示す特性を持つ光学フィルタ504を利用して500〜650nmの波長範囲の光のみが分光器506に入射し処理される。
【0035】
波長較正部508では、強度の十分な変動に特徴のある波長範囲が検出される。波長較正の間、スペクトルの下端、例えば、所望の較正光学フィルタの範囲の下位端の波長「X」の検出が考えられる。同様に、所望の較正スペクトルの上位端の波長「Y」、例えば、650nmの波長が考えられる。本実施の形態では、仮定の波長「Z」で波長較正補正により決定される波長λZcorは、以下の式の一例に基づいて補正される。
【0036】
【数3】

【0037】
式(3)において、XactおよびYactは、波長「X」および「Y」に対応する測定波長であり、「Z」は所望の測定波長であり、λZcоrは、Zの補正波長値である、
【0038】
式(3)に従い、光学フィルタ504を用いることで、波長範囲で変動する強度の波長が検出できる。これらの変動が波長「X」および「Y」に対し決定すると、いずれかの仮定の中間波長や波長範囲「Z」の変動が、例えば、線形近似式により近似される。例えば、上記の実施の形態を用いて、「X」と「Y」との中間に位置する仮定の波長「Z」に対する較正補正は下記式となり、XactおよびYactは範囲内の測定された低波長および高波長であり、「Z」は目標波長である。特定波長範囲の波長変動がわかると、強度較正部509により式(1)に従い較正係数が生成され与えられ、血液量値部510により式(2)に従い補正血液量値が算出される。線形近似を用いてスペクトル係数を生成するための方法の一例を説明したが、例えば、同様に、波長XとYとの間の所望のスペクトルにわたり検知強度値を標準化する技法を含む本発明にかかるスペクトル係数を決定する他の近似方法を使用することも適当である。
【数4】

【0039】
他の実施の形態の一例では、観察モードの間に使用するホワイトバランスを較正するために図2に開示のシステム300を用いるのが好ましい。同じ基準ターゲット拡散パネル318を利用することで、血液量較正とあわせて光学観察部330を較正することが好ましく、これにより基準ターゲットの数を減らし、かつ、コストを好ましく削減できる。しかし、本実施形態では、観察要素を較正するための光源から照明窓313を介して放射される迷光が血液量検出窓308に入りこれにより血液量較正手順を妨げる可能性があるので、両方の較正を同時に行わないようにすることが重要である。この起こり得る問題を克服するために、システム300は、照明窓313から放射される光学観察用の照明光が血液量検出較正中の期間に自動的にオフまたは無効になるように構成することができる。
【0040】
別の実施の形態の一例では、図2の較正基準装置317の一部である白拡散パネル318の代わりに有色または陰影のある基準ターゲットが使用される。この、有色または陰影のある基準ターゲットにより、こうした光学フィルタを実際に用いず、光学フィルタ504を利用する利点が得られる。図2に示すような基準ターゲット318は、着色顔料を用いて直接着色してもよいし、透明フィルムや光学フィルタを基準ターゲット近くに配置して所望の色や陰影をつけてもよい。いずれの場合も、基準ターゲットからの反射光のスペクトル透過率は、変更または選択した基準ターゲットのスペクトル反射率に基づいて特定することができる。このように、図7に示すように、注目波長領域、例えば500〜650nmの範囲の光が、較正処理のために図4の分光器506に運ばれる。この実施の形態を利用し、光学フィルタ504をシステムから除外し、分光器506の変更を要することなく異なる波長を用いるシステムの測定に分光器506を使用してもよい。
【0041】
別の好ましい実施の形態では、血液量検出光源4は、LEDなどの、または、較正を目的とした特定の基準波長範囲の光を出射するための光源を更に有する。本実施の形態では、図1の血液量検出光源4は、注目可視光スペクトルの低範囲での高い強度の光波長を放射する第1のLEDを有してもよく、例えば、第1のLEDは、約500nmの波長範囲での高い強度を有する青色LEDであってもよい。更に、血液量検出部光原4は、注目可視光スペクトルの上部端の高い光強度を出射する第2のLED、例えば、約650nmの波長範囲の高い強度を有する赤色LEDを備えてもよい。これらの追加のLEDを利用することにより、光学フィルタを通じて反射光のフィルタリングすることも、有色または陰影のある基準ターゲットを提供することも必要ない。このような好ましい実施の形態を利用することで、資源が節約される。
【0042】
較正中、図8のスペクトルに見られるように、2つの較正LEDに電力が供給され、照明光ファイバ302を介してそれぞれの波長範囲の重畳光を出射し、その光は白拡散板318などの基準ターゲットに当たる。前述したように、波長較正部508は、伝送波長の上部および下部のライン、つまり、それぞれ500nmおよび650nmを検出することができ、較正算出および式(1)〜(3)に基づく血液量検出を行う。
【0043】
当業者に理解されるように、本発明は、血液量検出部が図2に示すように内視鏡の先端部もしくは正面部に位置する内視鏡システムに限定されない。本発明は、例えば、血液量センサ窓が内視鏡の円周部に、または、対応する結腸鏡シース内部に位置するなどの他の内視鏡構成にも同じように用いることができる。また、こうした較正方法は、対応するプローブ内部や他の独立した構成で用いられる血液量検出部にも有益となる。
【0044】
図3では、内視鏡システム400は、較正基準装置417に接触して示されている。内視鏡システム400は、血液量検出部420と光学観察部430とを備える。血液量検出部420は、受光ファイバ401および403と、照射光ファイバ402と、直線偏光子404および405と、レンズ407と、反射され伝送された光を所定角度で曲げることに加え血液量検出窓として作用するプリズム408とを有する。照射光ファイバ402と同様に受光ファイバ401および403は、光信号を運び受光する偏光子404および405に接触する。放射され受光された光が基準ターゲット418に運ばれ基準ターゲット418から受光されるように、レンズ407およびプリズム408が調整される。
【0045】
観察部430は、光伝送光ファイバ412と、照明窓413と、観察窓411と、観察レンズ410と、CCDや他の撮像素子である撮像部414と、送信ライン409とを有する。光ファイバ412は、照明窓413に接触して図1の観察光源2からの光を運ぶ。観察窓411は、画像を撮像部414に運ぶように観察レンズ410に対して直線上にある。撮像部414は、送信ライン409に接続されており、画像信号を図1の内視鏡画像変換部3へと運ぶ。較正基準装置417は、内視鏡システム400に嵌めることができるまたは内視鏡システム400に接触するキャップや他の種類の封入部材であってもよい。較正基準装置417の内部の裏地は基準ターゲット418であり、基準ターゲット418は、本発明に係る、白色、有色、または陰影のある拡散パネルでもよい。
【0046】
図3のシステム400の較正中、プリズム408は基準ターゲット418に接触する。照明光ファイバ402から光が放射され、基準ターゲット418に対して放射される前に偏光子404と、レンズ407と、プリズム408とを介して運ばれる。反射光は、プリズム408と、レンズ407と、偏光子404および405とを通過して戻る。作用光は、受光ファイバ401および403上で運ばれ、本発明の実施の形態に従い較正が行われる。
【0047】
更に、当業者であれば、本較正技術は、従来の内視鏡に限らず、カプセル型内視鏡にも同様に適用できることが理解できる。図9に示すように、血液量検出カプセル内視鏡システム1000は、3つの主な要素を有する。カプセルシェル1034内部には、(1)カプセルの他の構成要素へのDC電力を生成するための電源1030と、(2)血液量データをホスト処理部(図示しない)へ送信する送信部1031と、(3)血液量センサ部1090とが配置される。血液量センサ部1090は、例えば、通常、LEDや他の適当な光源などの光源1021と、直線偏光子1022と、レンズ1023と、血液量窓1024と、直線偏光子1026と、直線偏光子1027と、透過回折格子1028と、線形センサ1029とからなる。
【0048】
体腔内に摂取または挿入される前の血液量センサの較正を支援するために、ここに記載する好ましい技術のいずれか一つを利用してもよい。図9に示すように、カプセルシェル1034は、基準ターゲット1036を有する保護膜1035に囲まれている。較正過程中に使用される基準ターゲットの表面を提供するために、基準ターゲット1036は血液量センサ窓1024に接触して配置される。基準ターゲット1036は、較正方法に応じて、白拡散板や着色された標準器などの較正基準装置であってもよい。
【0049】
従来の内視鏡のように、光源1021に電力が供給され、光が偏光子1022と、レンズ1023と、血液量センサ窓1024とを通過する。放射された光は、基準ターゲット1036に当たり、窓1024と、レンズ1023と、偏光子1026および1027とを介してはね返る。受光された反射光は、透過回折格子128を通過して線形センサ1029に運ばれる。線形センサ1029や他の光検知装置からのデータは公知の手段でデータ伝送部1031を介して送信され、上記のいずれかの実施の形態に従って較正因数や較正係数が算出される。このように、カプセルは、体腔内に挿入される前に較正されてもよく、これにより収集されるデータの精度が保証される。
【0050】
基準ターゲット1036の配置は保護膜1035内部に限定されず、センサ窓24が標準対象1036に接触しかつ窓1024が外部光から保護されるのであれば、再利用可能な封入部材や他の保持固定部材など他の構成で配置されてもよい。図10は、本発明にかかる血液量センサを較正するための代表的なステップの図1050を示す。図1050のステップの一例を、図1、図2、および図5に示す構成部に関して説明する。しかし、本発明の較正手順の実施には、他の構成要素およびシステム構成を用いることができることが簡単に理解できる。ユーザーは、図2に示すように、図1の内視鏡6を基準ターゲット318の近くに配置することにより、ステップ1052の血液量較正手順を開始する。ステップ1054で、図1の血液量検出光源4が特定波長の光で基準ターゲット318を照射する。ステップ1056で、図1に示す血液量測定算出部5は、基準ターゲット318からの対応する反射光を検出する。ステップ1058で、図4の算出部507は、波長較正部508を利用して、検出された反射光を示す生成された信号を処理する。ステップ1060では、強度較正部509は、強度変動を較正し、ステップ1062では、血液量値部510は較正係数を生成する。
【0051】
これまでの説明および図面は本発明の好ましい実施の形態を示すが、本発明の思想と範囲から逸脱しなければ様々な変更や変形が可能だと理解できる。本発明に用いられる血液量センサは、内視鏡や結腸鏡などのスコープ機器に関して説明されたが、本発明の原理は、単独で用いられる血液量センサや他の医療機器にも同様に用いることができると理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液量検出部(320;420)に用いる較正方法であり、
特定の波長範囲の光で基準ターゲット(318;418;1036)の領域を照射し、
前記基準ターゲット(318;418;1036)から反射された光を検出し、
前記特定の波長範囲の所望のスペクトル特性に対する前記検出された光を示す信号を処理し、
前記処理された信号に基づいて少なくとも一つの較正係数を生成する、
ことを含むことを特徴とする較正方法。
【請求項2】
前記処理は、前記信号を前記所望のスペクトル特性と比較することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記検出された光は、前記処理の前にフィルタリングされることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記検出された光は、バンドパスフィルタ(504)を通過することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記基準ターゲット(318;418;1036)は、特定の波長幅の光を反射することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基準ターゲット(318;418;1036)は、白拡散板であることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
カプセル型内視鏡内部に配置される前記血液量検出部(320;420)の較正に用いることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記較正係数を格納することを更に含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記較正係数は、補正波長に基づくものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記基準ターゲット(318)から反射された前記光に基づいて少なくとも一つの補正波長を決定することを更に含み、
前記較正係数は、前記補正波長に基づくものであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
血液量検出部(320;420)に用いる較正方法であり、
第1特定波長範囲の第1の光源からの光および第2特定波長範囲の第2の光源からの光で基準ターゲット(318;418;1036)の領域を照射し、
前記基準ターゲット(318;418;1036)から反射された光を検出し、
前記第1特定波長範囲および前記第2特定波長範囲の所望のスペクトル特徴に対する前記検出され反射された第1の光および第2の光を示す信号を処理し、
前記処理された信号に基づく較正係数を生成する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記第1の光は血液量検出波長範囲の下部の第1の略最大強度部分を有し、前記第2の光は前記血液量検出波長範囲の上部の第2の略最大強度部分を有することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記血液量検出波長範囲は、500〜650nmであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記較正係数を格納することを更に含むことを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記較正係数は、補正された波長に基づくものであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記基準ターゲット(318;418;1036)から反射された前記第1の光および前記第2の光のいずれか一つに基づく少なくとも一つの補正波長を決定することを更に含み、前記較正係数は、前記補正波長に基づくものであることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項17】
血液量センサ(320)と観察部(330)とを備える内視鏡(6)に用いる較正方法であり、
前記通常観察部(330)からの光で基準ターゲット(318)の領域を照射し、
前記基準ターゲット(318)から反射された光を検出し、
前記反射された光に基づいて前記標準観察部(330)に対してホワイトバランスを行い、
前記標準観察部(330)からの前記光を無効にし、
特定の波長範囲の光で前記基準ターゲット(318)の領域を照射し、
前記特定の波長範囲の所望のスペクトル特徴に対する前記検出された光を示す信号を処理し、
前記処理された信号に基づく較正係数を生成する、
ことを含むことを特徴とする較正方法。
【請求項18】
前記較正係数を格納することを更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記較正係数は、補正波長に基づくものであることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記基準ターゲット(318)から反射された前記光に基づく少なくとも一つの補正された波長を決定することを更に含み、
前記較正係数は、前記補正波長に基づくものであることを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−527583(P2011−527583A)
【公表日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546559(P2010−546559)
【出願日】平成21年6月22日(2009.6.22)
【国際出願番号】PCT/JP2009/061790
【国際公開番号】WO2010/004892
【国際公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(304050923)オリンパスメディカルシステムズ株式会社 (1,905)
【Fターム(参考)】