説明

血球分離用フィルター

【課題】マイクロチップ等の微細構造部分に空隙が変わらぬように充填しやすい、血球分離フィルター、遠心分離によると同等の成分の血漿を短時間で濾過回収することができる血液濾過器具、検査精度をより高めることができ、さらには安全でかつ操作が簡便で多項目についても迅速に検出まで行うことの可能な分析素子を提供する。
【解決手段】円相当直径が4μm以下で、高さが円相当直径と等しいかそれよりも長い非水溶性物質を用い、該非水溶性物質が基材に固定されていて、実質的に非水溶性物質に捕捉させることで血球分離を行うことを特徴とする、血球分離用フィルター。該血液・体液濾過用フィルターを用いた血液濾過器具および血液分析素子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトやその他の動物の血液検査方法に使用される血球分離用フィルター、該フィルターを用いた濾過器具および分析素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、血液、尿等を検体として人の病気を診断する方法は、人体を損ねることなく簡便に診断できる方法として、長く行われてきている。
【0003】
特に血液は、多くの検査項目について診断が可能である。
このような多項目の検査のための分析方法として、従来からウェットケミストリー分析法が開発されてきた。これは、いわゆる溶液試薬を用いる方法である。多項目の検査を目的とした、ウェットケミストリー分析法を用いた装置は、多項目に相当する多数の試薬溶液およびその取扱を組み合わせているため、一般に複雑であり、装置の取り扱い及び手順も簡便ではない。
【0004】
これに対して、分析を簡便に行うことができる方法が模索されている。
一つの方法として、分析法に溶液を使用しない、すなわち、特定成分の検出に必要な試薬類が乾燥状態で含有されている、いわゆるドライケミストリー分析方法が開発されてきている(特許文献1)。
【0005】
しかしながら、ウエットケミストリーにおいてもドライケミストリーにおいても、双方とも、検体が血液である場合、通常は全血を使用することはなく、血球成分を除去した後、血漿または、血清の形で分析に供する。血球成分を除去する方法として、従来は遠心力を使う方法で血球分離を行っており、遠心分離の作業が必要であり、遠心分離後の血漿を検出に用いるときには遠心分離後に一旦遠心分離の動作を止めて血漿の供給を行う必要があるなど、一連の動作で血漿分離・検出をすることが困難であり、検出に至るまでの時間が長いという問題があった。
これに対してフィルターを使う方法で血球分離をする装置が開発され(特許文献2等)ており、血球分離に要する時間がある程度短縮されたが、全血から血球の除去(いわゆる血球分離)と検出とは別の作業であり、時間の短縮が充分であるとは言い切れない。
また、血球を分離するフィルターとしてガラス繊維を用いた場合、ガラス繊維から溶出する成分或いはガラス繊維に吸着する成分がその後の血液検査の分析に影響を及ぼす可能性があるが、これに対してはガラス繊維を予め酢酸等の有機酸で処理する方法が提案されている。(特許文献2)
フィルターを使う方法で血球分離をする器具として、富士フイルムメディカル株式会社から販売されている「富士ドライケムプラズマフィルターPF」があり(特許文献2等)、フィルターのガラス繊維が樹脂製のカートリッジに充填されている。このガラス繊維はカートリッジの超音波融着によってカートリッジ内に充填されてはいるものの、ガラス繊維をカートリッジに直接固定しているものではないので、ガラス繊維のロットによりガラス繊維の厚みが変わり、通常よりも薄くなってしまったガラス繊維をカートリッジに充填した際にガラス繊維とカートリッジの間に隙間ができて血球がそのままガラス繊維濾紙を通過せずに素通りする、あるいはこれとは逆に通常よりも厚くなってしまったガラス繊維を充填した際には、ガラス繊維が密になりすぎて血球が目詰まりを起こして濾過ができなくなるという問題があった。
更に、近年発達してきているマイクロ/ナノ加工技術を用い、ピラーと呼ばれる基材に固定した柱状物質を作成し、医療分野への応用が試みられている(特許文献3,4)。 例えば特許文献3では、直径10nmから500μmで高さが50nmから5000μmであってアスペクト比4以上のピラーを製作しているが、血液中の成分を分離して回収する目的には用いていない。また、特許文献4では、ピラーの隙間を物質が通過するときの抵抗を利用して蛋白質などの成分を分離することを試みているが、ピラーそのものに細胞を捕捉させて分離する方法については言及していない。
【0006】
一方、高齢化社会においては、手軽に健康状態を測ることのできる血液検査はますます重要性を増しており、また生活習慣病においても疾病の状態の変化を簡単に知ることのできる手段である。高齢者や、生活習慣病においては、健康状態/疾病の進行状態を経時的に観察することが必要であり、ますます血液検査を必要とする場面が多くなってきている。このため、医療関係者ばかりでなく、患者が自身で血液を採取し、簡便、迅速に分析することが可能な方法が望まれている。
これに対して、針による血液採取、濾過および遠心による血球分離、および電極法によるウェットケミストリー分析法を組み合わせて、血液採取から分析までの手段を一体化した分析装置が提案されている(特許文献5)が、操作の簡便性の点で充分に満足できるものには至っていない。また、測定値のばらつきが起こることがあり、臨床検査における測定の精度という観点からも満足できるものには至っていない。
さらに、医療現場では、検体の採取から分析、検出までがより迅速に行われることが求められている。また、近年、院内感染が大きな社会問題となっており、特に血液からの感染の防御が要望されている。検査時に検査従事者が血漿あるいは血清に触れてしまうことを防止できる血液検査ユニットとして、光検出器と組み合わせることにより、血液採取から分析、検出までの手段を一体化した分析装置が提案されている(特許文献6)。
【0007】
【特許文献1】特表2001−512826号公報
【特許文献2】特開平10−227788号公報
【特許文献3】特開2004−170935号公報
【特許文献4】特開2004−045358号公報
【特許文献5】特開2001−258868号公報
【特許文献6】特開2003−287533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記したガラス繊維を用いる血球分離装置においては、弾力性を有するシート状のガラス繊維をマイクロチップなどの微細構造部分に充填しにくい、という技術的な問題点があった。
【0009】
弾力があり復元力があるシート状のガラス繊維(ガラス繊維濾紙)は、ガラス繊維と繊維の間の空間体積(一般的に空隙と呼ばれている)が小さくなると、赤血球などの細胞が目詰まりしやすくなる性質を持っている。マイクロチップの微細構造部分に濾過材としてのガラス繊維濾紙を充填するとき、濾過する液体が漏れぬように充填することを優先するので、空隙が変わらぬようにガラス繊維濾紙を充填することが難しく、ガラス繊維濾紙がつぶれて空隙が小さくなりやすい。
したがって、マイクロチップの微細構造部分に濾過材としてガラス繊維を充填して、全血から血漿を回収する操作をした場合、濾過材に赤血球が目詰まりして充分な量の血漿を回収できない、という欠点があった。
また、これとは逆に、ガラス繊維がつぶれぬようにガラス繊維をふんわりと充填した際には、ガラス繊維を充填しているカートリッジ部材とガラス繊維との隙間が生じ、血球を捕捉することなく通過させてしまうという問題があった。したがって、ガラス繊維の空隙を一定に保ちつつ、かつカートリッジ部材とガラス繊維との隙間を生じることなく充填する方法が必要であった。
【0010】
そこで、本発明の目的は、血球などの細胞を分離するフィルターとして、ガラス繊維と同じような太さの非水溶性物質を用い、該非水溶性物質の少なくとも1箇所が基材に固定されている液体濾過用のフィルターを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記フィルターを用いることにより、遠心分離によるのと同等の成分の血漿を短時間で濾過として回収することができる血液濾過器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討の結果、円相当直径が4μm以下で、高さが円相当直径と等しいかそれよりも長い非水溶性物質を用い、該非水溶性物質が基材に固定されているフィルター等で、上記目的を達成しうることを知見した。
すなわち、本発明は、以下の構成により上記目的を達成したものである。
【0012】
<1>
円相当直径が4μm以下で、高さが円相当直径と等しいかそれよりも長い非水溶性物質を用い、複数個の該非水溶性物質が基材に固定されていて、実質的に非水溶性物質に捕捉させることで血球分離を行うことを特徴とする、血球分離用フィルター。
<2>
前記非水溶性物質と非水溶性物質の間の間隔が4μm以上であることを特徴とする、上記<1>に記載の血球分離用フィルター。
<3>
前記非水溶性物質が等間隔に並んでいることを特徴とする、上記<1>または<2>に記載の血球分離用フィルター。
<4>
前記非水溶性物質の間隔が4μm以上であることを特徴とする、上記<3>に記載の血球分離用フィルター。
<5>
前記非水溶性物質が市松模様に配置していることを特徴とする、上記<3>または<4>に記載の血球分離用フィルター。
<6>
前記非水溶性物質がピラーであることを特徴とする、上記<1>〜<5>のいずれかに記載の血球分離用フィルター。
<7>
前記非水溶性物質が等間隔に並んでおり、非水溶性物質と非水溶性物質の間の間隔が、フィルターの入り口部分と出口部分において実質的に1.5倍以上異なることを特徴とする、上記<1>〜<6>のいずれかに記載の血球分離用フィルター。
<8>
上記<1>〜<7>のいずれかに記載の血球分離用フィルターを用いることを特徴とする血液濾過器具。
<9>
上記<1>〜<7>のいずれかに記載の血球分離用フィルターを用いることを特徴とする、血球の分離方法。
<10>
上記<1>〜<7>のいずれかに記載の血球分離用フィルターを用いることを特徴とする、血液前処理要素。
<11>
上記<1>〜<7>のいずれかに記載の血球分離用フィルターを用いることを特徴とする分析要素。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、マイクロチップなどの微細構造部分に充填しやすい、基材と一体型のフィルターが提供される。
また、本発明によれば、上記フィルターによって、血球を目詰まりさせることなく、かつ血球を捕捉せずに通過させてしまうことなく効率よく血球を捕捉することができるので、遠心分離によるのと同等の成分の血漿を短時間で濾過回収することができる血液濾過器具が提供される。
さらにまた、本発明によれば、血漿中の成分の濃度に変化を起こすことがないので、検査精度をより高めることができ、さらには安全でかつ操作が簡便で多項目について迅速に検出まで行うことの可能な血液分析素子がより組み込みやすい形で提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
<液体濾過用フィルター>
本発明の液体濾過用フィルターは、体液・血液などの液体をフィルターに通過させ、濾別した後に濾液を回収するための、液体濾過用フィルターである。
【0015】
<非水溶性物質>
非水溶性物質の材料として、樹脂繊維・ガラス繊維などの繊維状物質、樹脂製・金属製・シリコン製のいわゆるピラーと呼ばれる柱状物質などが好ましく挙げられる。
樹脂製繊維の材料としては、ポリエステル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ナイロン,セルロース,セルロースアセテートなどの樹脂からなる繊維のほか、ポリエステル/ナイロン,ポリエステル/セルロースなどの複合材料からなる繊維が挙げられる。
ガラス繊維の材料としては、ソーダガラス、低アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、石英などが挙げられる。
樹脂製ピラーの材料としては、ポリエステル,ポリエチレン,ポリプロピレン,ナイロン,セルロース,セルロースアセテートなどの樹脂からなるピラーのほか、ポリエステル/ナイロン,ポリエステル/セルロースなどの複合材料からなるピラーが挙げられる。
金属製ピラーの材料としては、鉄・銅・銀・金・白金・ニッケル・ステンレス・チタンなどの金属のほか、酸化ジルコニウム・酸化チタンなどの金属酸化物が挙げられる。
シリコン製ピラーの材料としては、シリコンウエハーが挙げられる。
【0016】
また、非水溶性物質として、円相当直径が4μm以下以下の非水溶性物質を用いて濾過することが好ましい。非水溶性物質の力学的な強度を考えると、0.4μm以上4μm以下以下がより好ましく、0.4μm以上2μm以下が更に好ましい。
本明細書でいう円相当直径とは、いわゆる等価直径(equivalent diameter)のことであり、機械工学の分野で一般的に用いられている用語である。任意断面形状の配管(本発明では、非水溶性物質、繊維、ガラス繊維に当たる。)に対し等価な円管を想定するとき、その等価円管の直径を等価直径といい、deq:等価直径は、A:配管の断面積、p:配管のぬれぶち長さ(周長)を用いて、deq=4A/pと定義される。円管に適用した場合、この等価直径は円管直径に一致する。等価直径は等価円管のデータを基に、その配管の流動あるいは熱伝達特性を推定するのに用いられ、現象の空間的スケール(代表的長さ)を表す。等価直径は、一辺aの正四角形管ではdeq=4a2/4a=a、路高さhの平行平板間の流れではdeq=2hとなる。これらの詳細は「機械工学事典」((社)日本機械学会編1997年、丸善(株))に記載されている。
円相当半径は、円相当直径と同様に算出する。
【0017】
また、非水溶性物質は、高さが円相当直径と等しいかそれよりも長いものを用いる。円相当直径に対する高さの割合は、2以上が好ましく、10以上がより好ましい。
ここで、たとえば非水溶性物質が繊維状の場合、厳密には非水溶性物質の高さは繊維の長さとし、繊維の太さを円相当直径とするが、便宜上、基材上に固定された非水溶性物質全体の最大の高さを非水溶性物質の高さとみなしても良い。
【0018】
ここで、非水溶性物質が血球を補足しうることを検証する。
血液濾過の濾過材として用いるガラス繊維濾紙で、全血中の赤血球が捕捉される様子を観察した。ヘパリンリチウムを抗凝固剤とした真空採血管で健常人男性から全血を採血した。このときのHct値は45%であった。この全血をワットマン社製のガラス繊維濾紙GF/D(ガラス繊維の直径約3μm以下)に室温で10μL滴下し、1%グルタルアルデヒドを含有する0.1モル/Lリン酸緩衝液(pH7.4)の中に全血を滴下したガラス繊維濾紙を速やかに入れ、室温で2時間静置して赤血球を硬膜させた。その後、水/t−ブタノール混合液にガラス繊維濾紙を浸漬し、水/t−ブタノール混合比を徐々に変えて最終的にt−ブタノールに置換し、冷蔵庫に約1時間静置して凍結させた。ガラス繊維濾紙を含む凍結したt−ブタノール溶液を凍結乾燥機に入れて溶媒を除去した。こうして得た、全血を滴下してある乾燥状態のガラス繊維濾紙を走査型電子顕微鏡で観察したところ、赤血球が直径約3μm以下のガラス繊維で捕捉できた。
比較として、直径約8μmおよび直径約10μmのガラス繊維濾紙、ならびに直径約15μmのアセチルセルロース繊維濾紙を濾材として同様の実験を行った。直径約8μmのガラス繊維では、赤血球が捕捉できていない。直径約10μmのガラス繊維および直径約15μmのアセチルセルロース繊維では、赤血球は全く捕捉できなかった。
このことから、特定の円相当直径をもつ繊維、すなわち非水溶性物質を、血液濾過用の濾材として用いることにより、検体として全血を用いる場合に、全血から赤血球を迅速に効率よく除去することができることが分かる。さらには、全血から赤血球を除去するのに、特別な装置を作動させる必要がないので、血漿を試薬に迅速に供給でき、測定に至るまでの時間を短縮できる。
【0019】
ガラス繊維に赤血球が絡まり、ガラス繊維に赤血球を捕捉できている場合も確認された。赤血球がどのような力でガラス繊維に絡まっているかは明確ではないが、いわゆる力学的な捕捉であっても化学的な吸着であっても、ガラス繊維のような非水溶性物質に絡まっている・付着しているような状態を作り出すことができれば、捕捉させることができた、といえる。
また、ガラス繊維に赤血球が捕捉され続けることはもちろん、ガラス繊維に赤血球が瞬間的に捕捉されても、赤血球の周囲の液体である血漿・血清はガラス繊維の周囲を流れ続ける。したがって、血漿・血清の流れる速度よりも赤血球の流れる速度は相対的に遅くなり、濾過によって血漿・血清の成分を回収することができる。このように、ガラス繊維濾紙を濾過材として用いた場合においては、実質的にガラス繊維に赤血球を捕捉させることによって、血漿・血清を回収し、血球を液から分離することが達成される。同様に、全血中の白血球・血小板などの細胞もガラス繊維に瞬間的に吸着あるいは捕捉され、血漿・血清の流れる速度よりも遅くなるので、全血からの白血球および血小板の分離を達成することができる。
更に、赤血球などの細胞をフィルターで捕捉した後に、プロテアーゼなどのタンパク分解酵素およびドデシル硫酸ナトリウム(SDS)などの界面活性剤を含む溶液でフィルターを処理して細胞を可溶化させ、然る後に10mモル/L,pH9程度のトリス・ビスヒドロキシメチルアミノエタン(通称Tris)Bufferあるいは70%エタノール水溶液を用いてフィルターを洗浄することで、細胞中の成分を回収することが可能である。
【0020】
<基材>
本発明の血球分離フィルターにおいては、複数個の前記非水溶性物質が基材に固定されている。基材としては、特に限定されず、血液処理に用いられる一般的な材料、たとえばガラス、樹脂、シリコンウエハーなどの半導体材料等様々な材料が適用できる。
【0021】
<非水溶性物質の固定形態および製造方法>
本発明の血球分離フィルターにおいて、非水溶性物質は、基材に少なくとも1箇所以上の接点を有する。たとえば上述のピラーの場合、基材とは通常1箇所の固定された接点を有する。
非水溶性物質を作成する際、上述のとおり形状は特に限定されず、たとえば繊維状やピラー状などがあげられる。
本発明の非水溶性物質は、たとえば光硬化性樹脂などを用いて光造形技術で円相当直径が3.8μm以下の構造体を形成することで作成することができる。このときに、円相当直径が3.8μm以下の構造体間に架橋させる構造体を作成することで力学的な強度を付与し、濾過性能と力学強度の両方を満足する構造体を作ることができる。この構造体の形状としては、ピラー間を架橋する構造,繊維間を架橋する構造,井桁状・市松模様・ハニカム状のメッシュ構造およびその架橋体などな挙げられる。
また、ピラーの製造方法は、半導体加工で一般的に行われている、シリコンウエハを露光およびエッチングによって柱状にシリコンを残存させる方法でもよいし、マイクロ・ナノ加工で報告されている、凹んだ形状の鋳型を用いて樹脂に圧着して剥がし、樹脂の表面に柱状の突起を形成させるインプリンティング法を用いてもよい。
基材に2箇所以上の接点を有する非水溶性物質としては、たとえば、光架橋法を用いた立体造型を手段とする格子状あるいは網目状の立体構造を有するものが挙げられる。また、早稲田大学の庄子習一教授が16th International Conference on Micro Electro Mechanical Systems(MEMS-03) Kyoto, 223/226(2003) において報告しているような、MEMS(マイクロエレクトロメカニカルシステム)のエッチング技術を用いて作製したマイクロメッシュフィルタのよう立体構造を有するものが挙げられる。また、ポリスルホン,アセチルセルロースなどの多孔質膜の孔径を、ほとんどが孔になるまで極めて大きく作製し、柱状の高分子が膜内に残るような構造体を作り出す手段も有効である。
【0022】
本発明の血球分離用フィルターにおいて、基材上に非水溶性物質を配置させる形状は特に限定されないが、列状に等間隔に並べることが好ましい。例えば、円相当直径が4μm以下のピラーを井桁状・市松模様・ハニカム状に配列させることが挙げられる。等間隔に配列させた一列目に対し、二列目を同じ間隔で半周期ずれたように配列させる市松模様の構造であれば、一列目のピラー間をすり抜けた細胞が二列目のピラーに引っかかり捕捉される確率が高くなると考えられるので、市松模様の配列が好ましい。
また、ピラー間の間隔には特に制限することはない。細胞を目詰まりすることなく捕捉させるのであれば、ピラー間の間隔を細胞が通過できるサイズよりも大きくする。例えば細胞が赤血球の場合においては、ピラー間の間隔は4μm以上であることが好ましく、6μm以上40μm以下であることがより好ましい。一方、細胞が目詰まりを起こしてもよいから完全に捕捉させるのであれば、ピラー間の間隔を細胞が通過できるサイズよりも小さくする。例えば細胞が赤血球の場合においては、4μm未満であることが好ましく、0.5μm以下であることがより好ましい。したがって、濾過フィルターの入り口側から出口側にかけて、ピラーとピラーの間隔を段階的に、あるいは連続的に変えてもよい。例えば、フィルターの入り口側におけるピラーとピラーの間隔を20μmにし、入り口側から出口側に向かって段階的にピラー間隔を狭め、出口側おけるピラーとピラーの間隔を0.5μmにすることによって、血液中の赤血球を段階的に捕捉して最終的には赤血球が全く漏れないような機能を付与することもできる。
より好ましくは、細胞が目詰まりを防ぐためにフィルターの入り口側におけるピラーとピラーの間隔は好ましくは6μm以上であり、また、血球を完全に補足するために出口側おけるピラーとピラーの間隔は好ましくは4μm以下である。このように、非水溶性物質と非水溶性物質の間の間隔が、フィルターの入り口部分と出口部分において実質的に1.5倍以上異なることが好ましい。
また、非水溶性物質を固定した基材(血球分離用フィルター)の形状も特に限定されず、正方形、長方形のほか三角形、円形等いかなる形状であってもよい。血液を流して血球分離・血漿回収をする際、微量の血液から効率よく血漿回収をするためには血液を流す方向に長い形状であることが好ましく、長方形であることがより好ましい。
【0023】
<血球分離方法>
上記のように、非水溶性物質に血球が補足されるので、本発明の血球分離用フィルターに血液を通過させるだけで、血液から血球を分離して取り除くことができる。本発明のフィルターに血液を通過させる手段は限定されないが、たとえば後述する血液濾過器具等の構成をとることができる。
【0024】
<検体>
本発明の血球分離フィルター等に供する検体としては、ヒトやその他の動物の血液があげられる。
【0025】
<血液濾過器具>
本発明の血液濾過器具は、例えば、以下に記載の、非水溶性物質からなる血液濾過材料を基材に固定した血球分離用フィルターと、該血球分離用フィルターを収容する構成部材とよりなる血液濾過ユニットとして構成することができる。
以下、本発明の血液濾過器具の一例として使用することができる血液濾過ユニットに用いる血球分離用フィルター、微多孔性膜、フィルターの周囲を構成する部材について説明する。
【0026】
血液濾過材料では前記血球分離用フィルターを、長さ0.5〜100mm,幅0.5〜50mm,厚さ0.02〜2mm程度、好ましくは長さ5〜30mm,幅0.5〜5mm,厚さ0.05〜0.2mm程度のサイズに配置して、濾過部位として使用する。
【0027】
<微多孔性膜>
非水溶性物質を配置した濾過部位の濾液出口側には、さらに血球と血漿の分離を促進し、また、漏出血球を阻止するため微多孔性膜を配置するとより効果的である。
この微多孔性膜は、表面を親水化されており血球分離能を有するものであり、実質的に分析値に影響を与える程には溶血することなく、全血から血球と血漿を特異的に分離するものである。この微多孔性膜の孔径は、非水溶性物質の空隙よりも小さいことが好ましく、最小孔径が0.1μm以上、好ましくは0.3〜5μm程度、より好ましくは0.5〜2μm程度のものが適当である。また、空隙率は高いものが好ましく、具体的には、空隙率が約40%から約95%、好ましくは約50%から約95%、さらに好ましくは約70%から約95%の範囲のものが適当である。微多孔性膜の例としてはポリスルホン膜、弗素含有ポリマー膜、セルロースアセテート膜、ニトロセルロース膜等がある。また表面を加水分解、親水性高分子、活性剤などで親水化処理したものもある。
好ましい微多孔性膜はポリスルホン膜、酢酸セルローズ膜等であり、特に好ましいのはポリスルホン膜である。血液濾過材料においては非水溶性物質が血液供給側に配置され、微多孔性膜が出口側に配置される。
微多孔性膜の厚さは0.05〜0.7mm程度、特に0.1〜0.3mm程度でよく、通常は1枚の微多孔性膜を用いればよい。しかしながら、必要により複数枚を用いることもできる。
【0028】
<血球分離用フィルターの周囲を構成する部材>
フィルターの周囲を構成する部材は、血液濾過材料を基材に固定した血球分離用フィルターを収容するものであって、血液入口と濾過液出口が設けられているものである。この構成部材は、一般にフィルターを収容する本体と、蓋体に分けた態様で作製される。通常は、いずれにも少なくとも1個の開口が設けられていて、一方は血液供給口として、場合により更に加圧口として、他方は吸引口として、場合により更に濾過された血漿または血清の排出口として使用される。濾過された血漿または血清の排出口を別に設けることもできる。構成部材が四角形で蓋体を側面に設けた場合には血液供給口と吸引口の両方を本体に設けることができる。
【0029】
血球分離用フィルター収納部の容積は、収納すべきフィルターの乾燥状態および血液を吸収し膨潤した時の総体積を考慮して設計する必要がある。フィルターの総体積に対して収納部の容積が小さすぎると、濾過が効率良く進行しなかったり溶血を起こしたりする。
また、フィルターの総体積に対して収納部の容積が大きすぎると、濾過対象物質を濾過できずに通過させてしまう可能性がある。収納部の容積の濾過材料の乾燥時の総体積に対する比率はフィルターの膨潤の程度にもよるが、通常50%〜300%、好ましくは70%〜200%、更に好ましくは90%〜150%である。
また、フィルターと収納部の側壁面との間は密着していることが必要であり、全血を吸引した時にフィルターを経由しない流路が出来ないように構成されている必要があることは勿論である。
【0030】
基材に固定されている血液濾過材料の量は濾過材料として用いる非水溶性物質の密度によっても異なるが、通常、非水溶性物質としてピラー状物質を用いる場合、濾過する血液の体積あたりの赤血球の数の1000分の1から100倍であることが望ましい。ヒトの血液中に存在する赤血球の数は、健常人男性で全血1μLあたり430万個〜580万個であるから、具体的には、濾過に用いる血液1μLあたり4000本から4億本に設計することが望ましく、より好ましくは血液1μLあたり40万本程度である。
【0031】
血球分離用フィルターの周囲を構成する部材の濾過液出口側には濾過された血漿を受ける濾過液受槽を設けることができる。この受槽は、少なくとも構成部材の中心方向からアナライザーが血漿を吸引できるようにすることがアナライザーの設計上好ましく、その結果、血液濾過材料収容室の濾過液出口および濾過液の受槽への通路は構成部材の中心を外して設けることになる。
濾過液受槽の容積は0.05μL〜1mL程度が好ましい。
【0032】
血球分離用フィルターの周囲を構成する部材の材料は熱可塑性あるいは熱硬化性のプラスチックが好ましい。例えば、ハイインパクトポリスチレン、メタアクリル酸エステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリカーボネート、各種共重合体ポリマー等の透明あるいは不透明の樹脂が用いられる。
上記本体と蓋体の取付方法は、通常、接着剤を用いた接合、融着等による。
【0033】
フィルターの形状に特に制限はないが、大量の血液を濾過する場合、円形あるいは多角形とすることが製造が容易である点からも望ましい。この際、フィルターを血球分離用フィルターの周囲を構成する部材本体の内部断面と同じ大きさとし、フィルターの側面から血漿が漏れることを防ぐことができる。また、四角形にすれば作製したフィルターの切断ロスがなくなるので好ましい。
【0034】
血液濾過器具の使用方法としては、該血液濾過器具の血液入口から血液を供給し、反対側の開口から濾液である血漿または血清を採取する。血液の供給量はフィルターの体積の1.2〜5倍程度、好ましくは2〜4倍程度が適当である。濾過に際しては血液入口側からの加圧あるいは反対側からの減圧を行なって濾過を促進するのがよい。この加、減圧手段はペリスタルあるいはシリンジを利用する方法が簡便である。シリンジのピストンを移動させる距離はピストンの移動体積がフィルターの体積の2〜5倍程度になるようにするのがよい。移動速度は1cm2当り1〜500mL/min程度、好ましくは20〜100mL/min程度が適当である。使用後の濾過器具は通常は使い捨てとする。
【0035】
濾過で得た血漿や血清は常法に従って分析が行なわれるが、濾過ユニットは特に乾式分析素子を用いて複数項目を分析する場合に有効である。
【0036】
血液濾過ユニットについては、例えば、特開平9−196911号公報、特開平9−276631号公報、同9−297133号公報、特開平10−225448号公報、特開平10−227788号公報、等に開示されている。
【0037】
<分析要素>
以下では、本発明の血液分析要素(多項目測定乾式分析素子などの血液分析素子)の一例として使用することができる多項目測定乾式分析素子について説明する。
多項目測定乾式分析素子は、検出器として、エリアセンサ、ラインセンサまたは電気化学検出器を用いる。そこで、まず、検出器について説明する。
[検出器]
(イ)エリアセンサは、紫外光・可視光・赤外光などの光あるいは電磁波を感知し、2次元的な情報を得ることができるように配列させたものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、CCD、MOS、写真フィルム等が挙げられる。この中でも、CCDが好ましい。多項目測定乾式分析素子を、エリアセンサを用いて検出することにより、1項目について1000画素以上の情報から測定結果を得ることができ、かつ同時に複数項目の測定が可能となる。
(ロ)ラインセンサは、紫外光・可視光・赤外光などの光あるいは電磁波を感知し、1次元的な情報を得ることができるように配列させたものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、フォトダイオードアレイ(PDA)、スリット状に光を検出するように配置した写真フィルム等が挙げられる。この中でも、フォトダイオードアレイが好ましい。上記の特定の多項目測定乾式分析素子を、ラインセンサを用いて検出することにより、同時に複数項目の測定が可能となる。
(ハ)電気化学検出器は、導電性物質媒体における電流量、電位差、電気伝導度、抵抗を計測することができるものであれば、どのようなものでも用いることができる。例えば、金電極、白金電極、銀電極、炭素電極などの導電物質単独の電極、銀塩化銀電極、酸素電極、グルコースオキシダーゼなどの酵素を被覆した修飾電極などの複合電極あるいはこれらの組み合わせ等が挙げられる。この中でも、グルコースオキシダーゼなどの酵素を被覆した修飾電極が好ましい。上記の特定の多項目測定乾式分析素子を、電気化学検出器を用いて検出することにより、同時に複数項目の測定が可能となる。
【0038】
本発明の血球分離用フィルターは、このような多項目測定乾式分析素子などの分析素子における血液濾過のための濾過材として使用される。
【0039】
次に多項目測定乾式分析素子について詳述する。以下、検出器として(イ)エリアセンサを用いる場合について説明する。検出器として(ロ)ラインセンサを用いる場合、および(ハ)電気化学検出器を用いる場合も、(イ)エリアセンサの場合と同様に適用することができる。
多項目測定乾式分析素子は、流路、(顕色)反応試薬および該(顕色)反応試薬を担持している部分を有しており(本発明における「乾式分析要素」とは、例えば、非水溶性物質フィルターを通過した濾液(血漿)と接触し反応(して顕色)する(顕色)反応試薬とそれを担持している部分を指す。(顕色)反応試薬を担持している部分で代表して説明することもある。)、該流路の幅、深さ、長さのうち少なくともひとつが1mm以上であり、かつ該(顕色)反応試薬を担持している部分の幅が流路の幅の2倍以上 および/または
(顕色)反応試薬を担持している部分の長さが流路の長さの0.4倍以上であることが好ましい。
【0040】
まず、流路について説明する。
前記流路は、前記したとおり、幅、深さ、長さのうち少なくともひとつが1mm以上であることが好ましい。より好ましくは、1mm〜100mmの範囲であり、また最も好ましい範囲は1mm〜30mmである。この範囲で、流路を検体が効率よく進行し、好ましい。
該流路は、検体である血液が通過可能であれば、いずれの形態をも採ることができる。
また、該流路は、1つのみでも、2つ以上に分岐しても、いずれでもよい。また、直線状、曲線状等、いずれの形態をとることも可能であるが、直線状であることが好ましい。
【0041】
流路の素材は、検体である全血や血漿の通過が効率よく進行するものであれば、いずれでもよい。具体的には、ゴム、プラスチックなどの樹脂、シリコン含有物質が挙げられる。
プラスチックあるいはゴムとしては、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリサイクリックオレフィン(PCO)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、天然ゴム、合成ゴム及びこれらの誘導体が挙げられる。
シリコン含有物質としては、ガラス、石英、シリコンウエファー等のアモルファスシリコン、ポリメチルシロキサンなどのシリコーンが挙げられる。
中でも、PMMA、PCO、PS、PC、ガラス、シリコンウエファーが好ましい。
【0042】
流路は、固体基板上に微細加工技術により作成することができる。使用される材料の例を挙げれば金属、シリコン、テフロン、ガラス、セラミックスまたはプラスチック、ゴムなどである。
プラスチックの例としては、PCO、PS、PC、PMMA、PE、PET、PP等を挙げることができる。ゴムの例としては、天然ゴム、合成ゴム、シリコンゴム、PDMS等を挙げることができる。
シリコン含有物質としては、ガラス、石英、シリコンウエファー等のアモルファスシリコン、ポリメチルシロキサンなどのシリコーンが挙げられる。
特に好ましい例としては、PMMA、PCO、PS、PC、PET、PDMS、ガラス、シリコンウエファー等を挙げることができる。
【0043】
流路を作成するための微細加工技術は、例えばマイクロリアクター −新時代の合成技術−(2003年 シーエムシー刊 監修:吉田潤一 京都大学大学院 工学研究科教授)、微細加工技術 応用編−フォトニクス・エレクトロニクス・メカトロニクスへの応用−(2003年 エヌ・ティー・エス刊 高分子学会行事委員会編)等に記載されている方法を挙げることができる。
代表的な方法を挙げれば、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、Deep RIEによるシリコンの高アスペクト比加工法、Hot Emboss加工法、光造形法、レーザー加工法、イオンビーム加工法、およびダイアモンドのような硬い材料で作られたマイクロ工具を用いる機械的マイクロ切削加工法などがある。これらの技術を単独で用いても良いし、組み合わせて用いても良い。好ましい微細加工技術は、X線リソグラフィを用いるLIGA技術、EPON SU−8を用いた高アスペクト比フォトリソグラフィ法、マイクロ放電加工法(μ−EDM)、および機械的マイクロ切削加工法である。
【0044】
流路は、シリコンウエファー上にフォトレジストを用いて形成したパターンを鋳型とし、これに樹脂を流し込み固化させる(モールディング法)ことによって
も作成することができる。モールディング法には、PDMSまたはその誘導体に代表されるシリコン樹脂を使用することができる。
【0045】
該流路は、検体である全血や血漿の通過が速やかに通過できるように、必要に応じてその表面を処理、または修飾することが望ましい。表面処理、修飾の方法は該流路を構成している素材により異なるが、既存の方法を利用することができる。例えば、プラズマ処理、グロー処理、コロナ処理、また、シランカップリング剤のような表面処理剤を使用する方法、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート(PHEMA)、ポリメトキシエチルアクリレート(PMEA)、アクリル系ポリマーを使用して表面処理をする方法などを挙げることができる。
【0046】
前記流路は、前記多項目測定乾式分析素子の一部分またはそのものであってもよい。つまり、該流路を、いわゆるマイクロリアクターや、微小分析要素に対して一般的に利用される微細加工技術を用いて、多項目測定乾式分析素子の一部分またはそのものとして作成することができる。
マイクロリアクターや微小分析要素の作成方法は、例えば"マイクロリアクター"(吉田潤一監修、CMC社刊)に記載されている方法を使用することができる。
【0047】
次に(顕色)反応試薬について説明する。
顕色反応試薬は、検体の被測定成分の定性・定量分析に必要な試薬であり、検体の被測定成分と反応し、発色するもの、または蛍光・発光など、光・電気・化学反応などの作用で光を発するものを言う。本発明においては、検体の種類および測定する項目に合わせて適宜選択することができる。一例として、富士写真フイルム(株)製の富士ドライケム マウントスライドGLU−P(測定波長;505nm,測定成分;グルコース)とTBIL−P(測定波長;540nm,測定成分;総ビリルビン)が挙げられる。本発明において、多項目測定乾式分析素子が有する顕色反応試薬は、乾燥している試薬を用いる。乾燥している試薬とは、いわゆるドライケミストリーに使用する試薬である。ドライケミストリーに使用することができる試薬であれば、どのような試薬でも用いることができる。
具体的には、例えば、富士フイルム研究報告、第40号(富士写真フイルム(株)、1995年発行)p.83や、臨床病理、臨時増刊、特集第106号、ドライケミストリー・簡易検査の新たなる展開(臨床病理刊行会、1997年発行)等に記載されているものをあげることができる。
【0048】
検出器として電気化学検出器を用いる場合には、顕色反応試薬に代わり、例えば、グルコースオキシダーゼ(GOD)、1,1'−ジメチルフェロセン、およびグラファイト粉末とパラフィンの混合物からなるカーボンペーストを混合して固めることによって作成した酵素電極を作用極として用い、銀/塩化銀電極を参照極、白金線を対極として用い、検体中のグルコース濃度によって増加する電流値を計測することができる。より具体的には、例えば、奥田,水谷,矢吹らによる、北海道立工業試験場報告 No.290,173−177頁(1991年)等に記載されているものが挙げられる。
【0049】
次に該(顕色)反応試薬を担持している部分について説明する。
「(顕色)反応試薬を担持している部分」(乾式分析要素)
以下、主に、顕色反応試薬を使用する場合について説明する。検出器として電気化学検出器を用いる場合、反応試薬を担持している部分が担持しているのが反応試薬であること以外は、エリアセンサ等における場合の顕色反応試薬を担持している部分と同様である。
該顕色反応試薬を担持している部分は、前記したとおり、その幅が流路の幅の2倍以上および/または 顕色反応試薬を担持している部分の長さが流路の長さの0.4倍以上であることが好ましい。
該顕色反応試薬を担持している部分は、1つのみでも、2つ以上でも、いずれでもよい。また、2つ以上の場合には、1箇所にまとめても、別々に配列してもよい。
該顕色反応試薬を担持している部分は、前記流路と接続した形態でも、該顕色反応試薬を担持している部分が流路内に組み込まれた形態でもよい。また、前記流路と接続した形態の場合には、該顕色反応試薬を担持している部分はセルであってもよい。該セルとしては、流路に対する幅および/または長さが前記を満たせばどのような形態であってもよい。セルの素材としては、流路に前記したものと同じ材料が挙げられる。また、好ましいものも同じである。
流路と、該顕色反応試薬を担持している部分との接続には、接合技術を用いることができる。通常の接合技術は大きく固相接合と液相接合に分けられ、一般的に用いられている接合方法は、固相接合として圧接や拡散接合、液相接合として溶接、共晶接合、はんだ付け、接着等が代表的な接合方法である。
更に、高温加熱による材料の変質や大変形による流路等の微小構造体の破壊を伴わない寸法精度を保った高度に精密な接合方法が望ましく、その技術としてはシリコン直接接合、陽極接合、表面活性化接合、水素結合を用いた直接接合、HF水溶液を用いた接合、Au−Si共晶接合、ボイドフリー接着などが挙げられる。
また、超音波、レーザー等を用いる接合、接着剤、接着テープなども使用する接合を使用してもよいし、単に圧力だけで、接合していてもよい。
【0050】
前記顕色反応試薬を担持している部分は、顕色反応試薬を担持可能であれば試薬をどのような形態で担持していてもよい。例えば、試験紙、使い捨て電極、磁性体、分析用のフィルムなどが挙げられる。またフィルムの場合には、単層でも多層でもよい。
好ましくは、乾式多層フィルムを、顕色反応試薬を担持している部分における試薬層として用いる。乾式多層フィルムは、検体中の被測定成分の定性・定量分析に必要な全てのまたはその一部分の試薬を1層以上の層に組み込むことができ、好ましい。乾式多層フィルムとしては、前述のドライケミストリーに使用されるものが挙げられる。具体的には、富士フイルム研究報告、第40号(富士写真フイルム(株)、1995年発行)p.83や、臨床病理、臨時増刊、特集第106号、ドライケミストリー・簡易検査の新たなる展開(臨床病理刊行会、1997年発行)等に記載されているものをあげることができる。
乾式多層フィルムを、顕色反応試薬を担持している部分における試薬層として用いることにより、多段反応を段階的に行うことが容易になり、好ましい。また、安定して同一品質のものを作り出すことができ、すなわちロット差を考慮する必要なく、かつ臨床検査が求める測定精度を満足することができ、好ましい。
【0051】
更には、前記乾式多層フィルムが、多孔質膜を接着させてなることが好ましい。該多孔質膜としては、ニトロセルロース多孔質膜、セルロースアセテート多孔質膜、セルロースプロピオネート多孔質膜、再生セルロース多孔質膜などのセルロース系多孔質膜、ポリスルホン多孔質膜、ポリエーテルスルホン多孔質膜、ポリプロピレン多孔質膜、ポリエチレン多孔質膜、ポリ塩化ビニリデン多孔質膜、などがあげられる。より好ましくはポリスルホン多孔質膜、ポリエーテルスルホン多孔質膜である。
乾式多層フィルムに多孔質膜を接着させる方法には、特に制限はないが、例えば乾式多層フィルム1m2あたり15〜30gの水を用いて湿らせ、多孔質膜を室温で3〜5kg/cm2の圧力をかけて圧着することで、乾式多層フィルムに多孔質膜を接着させることができる。
【0052】
また、前記乾式多層フィルムに100μm以下の微粒子を接着させて、前記試薬層に用いることも好ましい。該微粒子としては、シリカ、アルミナ、ジルコニア、チタニアなどの金属酸化物を代表とする無機微粒子、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)に代表される有機高分子微粒子が挙げられる。より好ましくはシリカ,ポリスチレンである。
乾式多層フィルムに微粒子を接着させる方法は、特に限定はないが、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリイソプロピルアクリルアミド、あるいは両者の混合物を微粒子の質量に対して1〜10%添加した水溶液を多層フィルムに塗布・乾燥させる方法を挙げることができる。
【0053】
検体の種類が本発明におけるように血液の場合、上記顕色反応試薬を担持している部分に検体を供給する前に、本発明の血球分離フィルターを用いて濾過を行う。濾過は他の一般的な方法を組み合わせて行ってもよい。これにより、特別な装置を作動させることなく、全血から赤血球を除去した後、血漿を試薬に供給することができ、結果的に、検出に至るまでの時間を短縮することができ、好ましい。
【0054】
多孔質膜としては、孔径が0.2μm〜30μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.3〜8μm、より好ましくは0.5〜4.5μm程度、特に好ましくは0.5〜3μmである。
また、空隙率は高いものが好ましく、具体的には、空隙率が約40%から約95%が好ましく、より好ましくは約50%から約95%、さらに好ましくは約70%から約95%の範囲である。
多孔質膜の例としては、従来公知のポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜、弗素含有ポリマー膜、セルロースアセテート膜、ニトロセルロース膜等が挙げられる。好ましくは、ポリスルホン膜、ポリエーテルスルホン膜である。
また表面を加水分解、親水性高分子、活性剤などで親水化処理したものも使用できる。
親水化処理に適用される加水分解法、親水性高分子、活性剤などは、親水化処理の際に通常用いる方法、化合物を使用することができる。
【0055】
検体は多項目測定乾式分析素子の注入口より注入される。検体を注入することが可能であれば、どのような形態でもよく、例えば、流路がそのまま多項目測定乾式分析素子の外とつながっていてもよい。
以下、多項目測定乾式分析素子の好ましい態様の一例を図7、図8を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
検体は多項目測定乾式分析素子A100の注入口A3より注入される。注入された検体は流路A1を通り、顕色反応試薬を担持している部分A2に導かれる。前記のとおり、流路A1には、濾過方法を適用するための濾材A6を配置する。ここで、濾過方法としては本発明の血球分離フィルターを用いる方法が適用される。顕色反応試薬を担持している部分A2に顕色反応試薬A7を配置する。図7では、下材A5に微細加工技術を用いてA1、A2およびA3を作製しているが、前述のとおり、A1、A2、A3の構成を作製し、下材A5の代わりに下蓋を設けて、組み立てて作製してもよい。
【0056】
多項目測定乾式分析素子の素材としては、前記流路における素材と同じものを挙げることができる。好ましい範囲も同じである。
多項目測定乾式分析素子の形および大きさは、手で持ちやすい範囲であれば、いずれの形、大きさでも良い。具体的には、例えば、底面の一辺が10〜50mm位の長方形で、厚みが2〜10mm位のものが好ましい形および大きさとして挙げられる。
多項目測定乾式分析素子を組み立てる際には、前述の顕色反応試薬を担持している部分と流路とを接続する際に用いる接合技術と同じ技術を用いることができる。
【0057】
多項目測定乾式分析素子内を検体が移動する、すなわち、流路から顕色反応試薬を担持している部分までの移動は、圧力を利用する、毛細管現象を利用する等の方法が挙げられるが、圧力を利用すること、特に陰圧にすることが好ましい。
【0058】
前記多項目測定乾式分析素子は、採血器具に装着して、採血ユニットとすることができる。以下、採血ユニットについて説明する。
【0059】
該採血ユニットは、前記多項目測定乾式分析素子を、採血器具に装着し、略気密状態を保ちつつ摺動自在に組み合わされることにより、内部に減圧可能に密閉空間を画成することが可能である。該採血ユニットは、前記多項目測定乾式分析素子を、採血器具に装着することができ、略気密状態を保ちつつ摺動自在に組み合わされることができ、内部に減圧可能に密閉空間を画成することが可能であれば、どのような形、大きさであってもよい。
手で持ちやすく操作しやすい範囲であることが好ましい。
該採血ユニットは、内部に減圧可能に密閉空間を画成することにより、採血された全血が、多項目測定乾式分析素子の流路に入り、顕色反応試薬を担持している部分まで迅速に導くことができる。
採血ユニットの素材としては、前記流路における素材と同じものを挙げることができる。好ましい範囲も同じである。
採血ユニットを組み立てる際には、前述の顕色反応試薬を担持している部分と流路とを接続する際に用いる接合技術と同じ技術を用いることができる。
【0060】
該採血ユニットの採血器具は、直径100μm以下で先端の角度が20度以下の穿刺針を有することが好ましい。上記範囲にあることで、穿刺をスムーズに行うことができ、採血時の痛みを軽減することができ、好ましい。
採血ユニットと穿刺針の接合方法は、前述の顕色反応試薬を担持している部分と流路とを接続する際に用いる接合技術と同じ技術を用いることができる。
穿刺針は中空の針であり、血管より血液を採取し、採血ユニットを摺動することによる減圧によって、全血が、多項目測定乾式分析素子の流路に導入されるものである。穿刺針は、上記の範囲を満たせば、例えば、通常の注射針のようなものであってもよいが、微量採血という点からみて小型のものであってもよい。また、針の先端を細くすることにより、採血時の痛みを軽減するのも好ましい。また、前述の微細加工技術を利用して作成することもできる。
穿刺針を構成する素材は、通常は金属であり、ステンレス類、ニッケル−チタン合金、タングステン類等のようないわゆる注射針として使用されるような素材を挙げることができる。金属として好ましい素材は、日本工業規格のJIS T−3209,あるいはJIS T−3220に記載されている金属であり、更に好ましくはSUS304である。また、多項目測定乾式分析素子を構成する素材として前述したプラスチック類などの樹脂を使用することも可能である。具体的には、PCO、PS、PC、PMMA、PE、PET、PP、PDMS等が挙げられる。
【0061】
採血ユニットの好ましい態様の一例を図9、図10を用いて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
多項目測定乾式分析素子A100は採血器具B1に方向C1から装着され、採血ユニットB100となる。装着後、穿刺針B2をヒトまたは動物などに刺し全血Dを採血する。
前記したとおり、採血器具の一部を方向C2に摺動し、これにより内部が減圧され、採血された全血Dが多項目測定乾式分析素子A100の流路A1に入り、さらには、顕色反応試薬を担持している部分A2に導かれ、反応する。反応後、多項目測定乾式分析素子A100を採血器具B1から脱着し、検出に供することができる。多項目測定乾式分析素子A100は採血器具B1から方向C1、すなわち、装着する際と同じ方向のまま、採血器具B1の向こう側へ脱着する態様、または方向C1とは逆方向、すなわち装着する際と同じ側から脱着する態様のいずれでもよい。
また、指先、肘、かかとなどをランセットなどで穿刺して末梢血を取り出し、それを検査に用いる場合においては、採血ユニットの採血器具に穿刺針は不要である。中空構造をもち、血液を分析要素に導くことができる機能を有する構造であればよい。
【0062】
(測定装置)
以下、図11を用いて、エリアセンサを用いた場合の測定装置の概略構成を示す。
測定装置100は、測定対象となる検体を設置する多項目測定乾式分析素子設置部71と、検体に光を照射するハロゲンランプ等の発光素子を用いた光源72と、光源72から照射される光の強度を変化させる光可変部73と、光源72から照射される光の波長を変化させる波長可変部74と、光源72から照射される光を平行化及び集光するレンズ75a及び75bと、検体からの反射光を集光するレンズ75cと、レンズ75cで集光された反射光を受光する受光素子としてのエリアセンサ76と、各部を制御すると共に光可変部73の状態とエリアセンサ76で受光した光の光量とに応じた測定結果を求めてディスプレイ等に出力するコンピュータ77とを備える。尚、ここでは、コンピュータ77が各部を制御する構成としているが、各部を統括制御するコンピュータを別に用意しておいても良い。
【0063】
多項目測定乾式分析素子設置部71には、多項目測定乾式分析素子が設置される。実際に測定に供するのは、多項目測定乾式分析素子の中の、ガラス繊維フィルターを通過した濾液(血漿)と接触して反応した顕色反応試薬を担持している部分(「乾式分析要素」。
以下、「試薬担持部」とも称する。)である。
【0064】
光可変部73は、穴の開いたステンレス等の金属メッシュの板材及びNDフィルタ等の減光フィルタを、光源2と検体との間に機械的に出し入れすることで、光源72から検体に照射される光の強度を変化させるものである。初期設定では、この減光フィルタが、光源72と検体との間に挿入された状態となっている。尚、以下では、金属メッシュをステンレスメッシュとする。又、穴の開いたステンレスメッシュの板材及びNDフィルタ等の減光フィルタを、手動で出し入れできるようにしても良い。
【0065】
波長可変部74は、複数種類の干渉フィルタのいずれかを、光源72と検体との間に機械的に出し入れすることで、光源72から検体に照射される光の波長を変化させるものである。
尚、本実施形態では、波長可変部74を光可変部73と多項目測定乾式分析素子設置部71との間に設置しているが、光源72と光可変部73との間に設置しても良い。又、複数種類の干渉フィルタを手動で出し入れできるようにしても良い。
【0066】
エリアセンサ76は、CCD等の固体撮像素子であり、多項目測定乾式分析素子設置部71に設置された多項目測定乾式分析素子中の試薬担持部の試薬と血液等の検体とが反応した際に光源72から照射される光によって反射する光を受光し、受光した光を電気信号に変換してコンピュータ77に出力するものである。エリアセンサ76は、試薬担持部から反射する光を面単位で受光可能である。このため、各試薬のエリアを同時に、すなわち複数項目について測定が可能である。
【0067】
コンピュータ77は、エリアセンサ76から出力された受光量に応じた電気信号を、予め内蔵するメモリ等に記憶している検量線のデータに基づいて光学濃度値に変換し、その光学濃度値から検体に含まれる各種成分の含有量等を求め、ディスプレイ等に出力するものである。複数項目を測定する場合、コンピュータ77は、エリアセンサ76から出力された受光量に応じた電気信号を、試薬担持部の複数エリア毎に抽出し、検体に含まれる成分の含有量を複数エリア毎に求める。又、コンピュータ77は、エリアセンサ76で受光した検体からの反射光量や検体と反応させる試薬の種類に応じて、光可変部73と波長可変部74を制御し、光源72からの光の光量を変化させたり、その波長を変化させたりする。
【0068】
以上のような構成の測定装置100では、検体からの反射光量が、エリアセンサ76のダイナミックレンジ内に入らない程少ない場合に、光可変部73が、光源72と検体との間からステンレスメッシュの板材又はNDフィルタを取り外し、光源72から照射される光の強度を強くする。これにより、検体からの反射光量が多くなり、その反射光量がエリアセンサ76のダイナミックレンジ内に入るようになる。このため、エリアセンサ76のダイナミックレンジが狭くても、反射光を精度良く受光することができ、検体に含まれる成分の含有量の測定精度が向上する。
【0069】
又、例えばA、B、C、Dという4種類の試薬を含んだ試薬担持部を用いる場合、測定装置100では、A〜Dの試薬を含んだ各エリアからの反射光量を求め、その反射光量のいずれかがエリアセンサ76のダイナミックレンジ内に入らない場合、光可変部73が、ステンレスメッシュの板材又はNDフィルタの挿入及び取り出しを一定時間おきに行う。
又、各エリアから反射する光の波長はそれぞれ異なるため、波長可変部74がその波長に合わせて複数の干渉フィルタを切替える。
【0070】
例えば、AとBを含んだエリアからの反射光量がエリアセンサ76のダイナミックレンジ内に入らない程少なく、CとDを含んだエリアからの反射光量がエリアセンサ76のダイナミックレンジ内に入り、A〜Dの試薬が血液と反応した際に発光する光の波長がそれぞれ異なる場合について説明する。
【0071】
この場合、測定装置100では、光源72が試薬担持部に光を照射し、スライドの各エリアからの反射光をエリアセンサ76で受光し、各エリアからの反射光量がエリアセンサ76のダイナミックレンジ内に入っているかどうかをコンピュータ77により判定する。
ここではAとBを含んだエリアからの反射光量がエリアセンサ76のダイナミックレンジ内に入らない程少ないため、光源72から一定時間光が照射された後、コンピュータ7は光可変部73を制御し、光源72と検体との間からNDフィルタを取り外させる。この状態で一定時間光を照射した後、コンピュータ7は光可変部73を制御し、光源72と検体との間にNDフィルタを挿入させる。この動作を繰り返すことで、複数種類の測定成分を1つの多項目測定乾式分析素子で精度良く測定することができる。
【0072】
コンピュータ7は、光可変部73の制御を行う一方で、A〜Dの試薬の種類に応じて波長可変部74を制御し、4種類の干渉フィルタを順番に切替えさせる。波長可変部74は、光可変部73がNDフィルタを取り外している間に、試薬Aに対応する干渉フィルタと試薬Bに対応する干渉フィルタとを交互に切替え、光可変部73がNDフィルタを挿入している間に、試薬Cに対応する干渉フィルタと試薬Dに対応する干渉フィルタとを交互に切替えるように動作する。これにより、検体に含まれる複数種類の成分から発光される光の波長がそれぞれ異なる場合でも、検体に含まれる複数種類の測定成分の含有量を1つの多項目測定乾式分析素子で測定することができる。
【0073】
測定装置100は、光源72からの光の強度を変えることで、ダイナミックレンジの狭いCCDであっても高精度な測定が可能となっているが、光の強度を変えずに、コンピュータ77の制御によってCCDにおける露光時間(反射光の受光時間)を変化させることでも、上記と同様に高精度な測定が可能である。
【0074】
尚、本実施形態では、光源72から検体に光を照射し、その反射光から検体に含まれる成分の含有量を求めているが、検体を透過した透過光から検体に含まれる成分の含有量を求めても良い。
【0075】
又、本実施形態では、検体からの反射光をCCD等のエリアセンサを用いて受光しているが、エリアセンサに限らず、ラインセンサを用いても構わない。
【0076】
又、本実施形態で使用するCCDとしては、フォトダイオード等の受光部が半導体基板上に縦横に所定間隔で配置され、隣接する各受光部列に含まれる受光部が、互いに、受光部列内での受光部同士のピッチの約1/2列方向にずれて配置された、いわゆるハニカム型のCCDを用いることが望ましい。
【0077】
上記の説明では、測定装置100が、検体からの反射光量に応じてリアルタイムに光の強度を変化させているが、検体に含まれる測定成分に応じて予め設定されたシーケンスで、その測定成分の含有量の測定を行うようにしても良い。この場合の動作を以下に説明する。
【0078】
測定装置100は、多項目測定乾式分析素子設置部71に試薬担持部が設置され、測定項目がセットされると、その測定項目に応じたパターンで測定を開始する。まず、コンピュータ77が、測定に利用する光の強度を複数種類の強度の中から選択し、選択した強度の光を検体に照射させる。エリアセンサ76が、検体から反射した反射光を受光すると、コンピュータ7は、エリアセンサ76で受光された反射光の光量と上記選択した光の強度とに応じた測定結果を出力する。この一連の動作により、検体に含まれる測定成分の測定を精度良く行うことが可能である。
【0079】
光の強度を変えずにCCDの露光時間を変化させる場合、測定装置100は、多項目測定乾式分析素子設置部71に試薬担持部が設置され、測定項目がセットされると、その測定項目に応じたパターンで測定を開始する。まず、コンピュータ77が、検体に光を照射させる。そして、エリアセンサ76が、複数種類の露光時間の中からコンピュータ77によって選択された露光時間で、検体から反射した反射光を受光する。最後に、コンピュータ77は、エリアセンサ76で受光された反射光の光量と該選択した露光時間とに応じた測定結果を出力する。この一連の動作により、検体に含まれる測定成分の測定を精度良く行うことが可能である。
【0080】
測定装置100は、以上に述べてきた光源72から試薬担持部に光を照射して、その反射光あるいは透過光から検体に含まれる成分の含有量を求めることに限定することはなく、光源72から試薬担持部に光を照射したときに試薬担持部から発する蛍光などの光を検出することによって検体に含まれる成分の含有量を求めてもよく、光可変部73で光源72の光を完全に遮断する、あるいは光源72を用いないことで試薬担持部に全く光が当たらない状態にして試薬担持部から発する化学発光などの発光による光を検出することによって検体に含まれる成分の含有量を求めてもよい。
【0081】
次に、嵌合式の多項目測定乾式分析素子について説明する。図13(A)、13(B)及び図14(A)、14(B)は、本発明に係る嵌合式の乾式分析素子の実施形態を示す断面図である。図13(A)、13(B)及び図14(A)、14(B)は、それぞれ、図12に示す乾式分析素子50を構成する上部材30及び下部材40の上面図(図13(A),14(A))及び断面図(図13(B),14(B))を示している。
図13(A)、13(B)及び図14(A)、14(B)に示すように、本実施形態に係る乾式分析素子50は、外形がほぼ直方体の上部材30と下部材40とからなり、シール部材である多孔質膜52(図12)を介して、上部材30を下部材40に嵌合できるようになっている。
【0082】
図13(A)、13(B)及び図14(A)、14(B)に示すように、上部材30には、血液を供給する供給口32が上面側に設けられている。供給口32は、上部材30を構成する大小2枚の壁板31a,31bによって水平方向に形成された流路34に連通されている。流路34には、供給された血液を濾過する濾過フィルタ36が充填されている。
上部材30の下面側には、短い円柱状の嵌合凸部35が形成されており、円柱軸の位置に流路34と連通している排出路39が配置されている。排出路39により、流路34により送られた濾過液を下方に導き、排出路39の出口38から下部材40(図14(A)及び14(B))に送液される。
【0083】
図13(A)、13(B)及び図14(A)、14(B)に示すように、下部材40は、嵌合凸部35が嵌合可能に形成された、底面が円形の嵌合凹部46が設けられている。
嵌合凹部46の底面部には、乾式分析要素54を配置するセル42が、例えば9箇所に格子状に設けられている。乾式分析要素54は、血液の濾過液(血漿)が接触することによって、発色変化等の反応を示すものである。また、この嵌合凹部46の側壁には、吸引ポンプ(図示せず)等の吸引装置に接続する吸引ノズル44が水平方向に延設されている。
【0084】
これらの上部材30と下部材40とが嵌合した乾式分析素子50を形成するには、図12に示すように、まず下部材40のセル42に、例えば9個の乾式分析要素54を配置する。そして、嵌合凸部35及び嵌合凹部46の大きさより大きい多孔質膜52を嵌合凹部46の上に配置し、多孔質膜52を挟み込むようにして嵌合凸部35を嵌合凹部46に嵌め込み、嵌合部55に多孔質膜52が挟まれた乾式分析素子50が形成される。
【0085】
乾式分析素子50を用いて、血液を分析するには、上記のようにして上部材30と下部材40とを嵌め合わせ、吸引ノズル44に吸引ポンプ(図示せず)を接続する。そして、供給口32から検体とすべき血液を供給して、吸引ポンプを作動させて、血液を減圧濾過する。濾過液(血漿)を、排出路39の出口38に対向している乾式分析要素54に接触させ、乾式分析要素54の発色変化等を観察することによって分析を行う。なお、乾式分析素子50における減圧濾過には、吸引ポンプのかわりにシリンジ等を用いてもよい。
【0086】
このような嵌合式の乾式分析素子50によれば、上記の血液濾過器具10(図15)と同様に、上部材30と下部材40とを嵌合させるだけでも、減圧することで上部材30と下部材40との接合力を高めることができ、十分な気密・水密が保たれる。従って、これらの部材を接合する等の工程を省略することができ、構造を簡易化した安価な乾式分析素子50が得られ、使い捨て使用にも極めて有利である。
なお、多孔質膜52についても、上記の血液濾過器具10と同様に、濾過に必要な気密・水密性を保持するためには必ずしも必要なものではないが、上部材30と下部材40との嵌合部55に配置されることによって、嵌合部55における接合力及び濾過性能を向上させることができるため、上部材30と下部材40との嵌合部55に多孔質膜52を介在させることが好ましい。
【実施例】
【0087】
以下に実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0088】
<実施例1> 樹脂製マイクロピラーを用いた血球分離フィルターの作成および血液濾過の結果(A)樹脂製マイクロピラーの作成
以下の手順に従って、円相当直径4μm以下の、基材と接点を有して固定された樹脂製マイクロピラーを作成した。
シリコンウエハを半導体加工技術を用いてドライエッチングし、直径3μm,深さ20μmの井戸をピッチ10μmの間隔で市松模様状に、幅10mm,長さ10mmの範囲にわたって作成し、インプリンティングに用いる鋳型を作成した。このシリコンウエハ製の鋳型をもとにして、ポリスチレン(PS)樹脂の板に熱および圧力を加えることにより、インプリンティング法で樹脂製のマイクロピラーを作成した。作成したマイクロピラーは、直径2μm,高さ27μm,ピッチ10μmの間隔の市松模様状の配列であった。ピラーを作成できた領域は、幅7mm,長さ7mmの範囲であった。(図1および図2)
【0089】
(B)マイクロピラーを用いた血球分離フィルターの作成および血液濾過の結果
作成したPS製マイクロピラーを、血液への親和性を向上させるために予めプラズマ処理して表面を親水化させ、長さ52mm,幅76mmの大判スライドガラス上に、ピラーの突起が上になるようにして両面テープで固定し、その上に厚さ約2mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)樹脂シートをかぶせて密着させ、蓋をした。このPDMSシートは予め、直径約2mmの孔をピッチ約7mmの間隔で合計2個あけてあり、PS製マイクロピラー樹脂のマイクロピラーの領域の両端に孔がかかるようにして密着させた。このようにして、マイクロピラー樹脂およびPDMS樹脂からなる血球分離フィルターを作成した。
このフィルターのPDMSの一方の孔に全血を2μL滴下し、全血がピラー領域を通って他方の孔に向かって展開するのを観察した。全血の赤い成分よりも先頭に、赤い色味のない成分が展開し、約2分後にこの赤い色味のない成分が他方の孔に到達した。株式会社クレシア製のキムワイプを用いて細く「こより」を作って両方の孔にこよりを差込み、孔の中にある血液成分色味を目視で確認したところ、全血を滴下した側の孔に差し込んだこよりの先端は赤かったのに対し、他方の孔に差し込んだこよりの先端は若干の黄色であり、赤い色味は全くなかった。したがって、マイクロピラーを用いて作成したフィルターで血球分離を達成することができ、血球分離フィルターとして機能させることができるとわかった。(図3および図4)
【0090】
<実施例2>シリコン製マイクロピラーを用いた赤血球捕捉
血液の流れを観察して計測する装置MC−FAN(日立原町電子工業(株)製)を用いて、赤血球などの細胞が微細流路を通過する際の動的形態観察を行う応用として、MC−FANの観察に用いるカスタムチップの形状をモディファイし、チップの流路に一般にピラーと呼ばれる円柱状の突起を配置したカスタムチップを作製した。具体的には、シリコンウエハを基材として用い、半導体加工技術を用いてドライエッチングし、更にシリコンウエハの表面を酸化させた。ピラー高さは3.5μmと一定にし、ピラーの直径を3μm,4μmと変えて作製し、更にピラーのピッチは20μmと一定にし、血液が流れる方法に対して3列配列させた。このピラー配置型カスタムチップにヘパリンリチウム採血管を用いて採血した健常人の男性の全血を流し、赤血球が捕捉されるかどうかの観察をした。
結果を図5に示した。ピラーの直径が3μのときはサラサラ流れる血液の中に、ピラーに捕捉される複数個の赤血球を頻繁に観察することができた。ピラーの直径が4μmのときはサラサラ流れる血液の中に、ピラーにわずかに捕捉される赤血球を観察することができた。このことから、ピラーの直径が4μm以下のときは赤血球が捕捉されることがわかった。直径4μm以下であれば、繊維でなくてもシリコン製のピラーなどの非水溶性物質であれば赤血球が絡まるように捕捉できるということが明確になった。
【0091】
MC−FANの装置に用いられているカメラは、WATEC AMERICA CORP USA製,型式LCL−211Hのビデオカメラであり、1秒間に30コマの速度で撮像するカメラであるから、繊維・ピラーなどに赤血球が本当に捕捉されているかどうかを確認することができない。そこで、カメラを日本ローパー製の「MotionPro」の高速カメラに変えて、上記と同様の観察を行った。なお、シャッタースピードは10万分の1秒で撮像した。直径3μmのピラーを用いたときの結果を図6に示した。写真の右側の2本のピラーに赤血球が絡まるように捕捉されていることがわかった。したがって、赤血球がピラーに捕捉されることを、より明確に示すことができた。
【0092】
<実施例3>平板チップ(嵌合式乾式分析素子)の作成とその結果> (A)平板チップ(嵌合式)の作製
以下の手順に従って図12に示す上部材30と下部材40とを多孔質膜52を介して嵌合した乾式分析素子50を作製した。
透明ポリスチレンを用いて成形した、約24mm×28mmのサイズの上部材30及び下部材40を用意した。嵌合凸部35及び嵌合凹部46の直径を約9mmとした。
濾過フィルタ36(分析要素)として、赤血球捕捉・血漿抽出用のガラス繊維濾紙(ワットマン社製;GF/D)を予め酢酸処理したのちにPMEA処理したガラス繊維を流路34に両面テープを用いてしっかり固定し、充填した。尚、ガラス繊維の長さは円相当直径よりも明らかに長く、また充填したガラス繊維濾紙の厚さ即ち充填した際のガラス繊維の便宜的な長さも得円相当直径よりも明らかに長いものであった。
また、乾式分析要素54として、富士ドライケム マウントスライドGLU−P及びTBIL−P(富士写真フイルム社製)を各々幅2mm弱・長さ2mm弱にカットしたものを用意し、下部材40の9箇所のセル42に配置した。なお、9箇所のセル42のうち、中心及び四隅の位置にGLU−Pを合計5箇所装填し、TBIL−Pをそれ以外の箇所に合計4個装填した。
続いて、多孔質膜52として、ポリスルホン多孔質膜(富士写真フイルム社製)を一辺が約18mmの正方形にカットしたものを用意した。このポリスルホン多孔質膜を嵌合凹部46の上方に静かに乗せ、嵌合凸部35と嵌合凹部46との嵌合部に挟み込むようにして上部材30と下部材40とを嵌合させた。(平板チップ)
【0093】
(B)測定装置
図11に示す測定装置100を用意した。各部材の設定は以下の通りとした。
測定装置100;倒立の実体顕微鏡。
CCD受光部での倍率は以下の2通りを用意。
0.33倍; CCD部分で33μm/ピクセル
1倍; CCD部分で10μm/ピクセル
光源72;林時計工業(株)製のルミナーエース LA−150UX
波長可変部74(干渉フィルタ);625nm,540nm,505nmで各々単色化
光可変部73(減光フィルタ);HOYA(株)製のガラスフィルタ ND−25
およびステンレス板に孔をあけた自家製フィルタ
エリアセンサ76(CCD);SONY(株)製の8ビット白黒カメラモジュール XC−7500
コンピュータ77(データ処理(画像処理));(株)ニレコ製の画像処理装置 LUZEX−SE
反射光学濃度を校正するための手段;富士機器工業(株)製の標準濃度板(セラミック仕様)を以下の6種類用意。
標準濃度板;A00(反射光学濃度〜0.05)、
A05(同0.5)、
A10(同1.0)、
A15(同1.5)、
A20(同2.0)、
A30(同3.0)。
【0094】
(C)平板チップによる分析
上記で作製した嵌合式乾式分析素子50(平板チップ)の供給口32にプレーン採血した全血を200μL注入し、10〜20秒静置して全血をガラス繊維濾紙(濾過フィルタ36)に展開させた後に、吸引ノズル44にシリコン製のチューブが接続し、このチューブの先にディスポーザブルシリンジ(テルモ(株)製)を装着して、静かにシリンジのピストンを引いて吸引した。
濾過により抽出された血漿がポリスルホン多孔質膜を通過して、ドライケム マウントスライドに滴下され、GLU−PおよびTBIL−Pスライドが徐々に発色を開始した。
全血が注入されてから血漿を抽出してマウントスライドに滴下するまでに要した時間は30秒であった。
【0095】
GLU−PおよびTBIL−Pスライドの発色の様子を図11に示す測定装置100を用いて同時にCCDカメラで撮像し、LUZEX−SEを用いて得られた画像を処理し、セル42の中心に配置したGLU−Pおよび吸引ノズル44の隣に位置するTBIL−Pスライドの画像の中心付近の平均受光量を求めて光学濃度に換算し、検体中のグルコース及び総ビリルビン濃度を求めた。
【0096】
CCDカメラで撮像した画像をLUZEX−SEで処理する際に、GLU−PおよびTBIL−Pの画像の中心部分について、各々縦1.4mm×横1.4mmの範囲の受光量を画像処理によって算出した。このとき、光学系の倍率0.33倍を使用したので、画素は縦42ピクセル×横42ピクセル、すなわち画素数1764で計測した。CCDカメラを用いて測定した結果が正しいかどうか比較するために、日立製作所製の自動臨床検査装置7170を用いて検体中のグルコース及び総ビリルビン濃度を求めた。以上の結果を表1に示す。このとき、GLU−PおよびTBIL−Pスライドでは測定波長が異なるため、表2に示すように干渉フィルターの波長を5秒ごとに逐次変えて測光した。
【0097】
【表1】

【0098】
【表2】

【0099】
以上より、乾式分析素子50は、赤血球が漏れることなく簡単な操作で迅速に測定を行うことが可能であることが分かった。これは、上部材30と下部材40とを超音波融着によって接合した場合と同様の結果であった。従って、本発明の嵌合式乾式分析素子により、血液を濾過して分析できることが明らかとなった。
なお、ここでは、乾式分析要素54として、2項目分のドライケミストリー用試薬を使用したが、適宜項目数を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】樹脂製ピラーの配列の平面図。
【図2】作成した樹脂製ピラーの走査型電子顕微鏡写真。
【図3】樹脂製ピラーを用いた血球分離フィルターでの血球分離の写真。
【図4】血球分離フィルターで全血から血球分離した成分の写真。
【図5】ピラーを配置したカスタムチップに全血試料液を流したとき、ピラーに赤血球が絡まる様子。
【図6】ピラーを配置したカスタムチップに全血試料液を流したとき、直径3μmのピラーに赤血球が絡まる様子。高速度カメラで観察。
【図7】多項目測定乾式分析素子の一実施形態を示す模式図。
【図8】同(組立後)
【図9】採血ユニットの一実施形態を示す模式図。
【図10】同(採血時)
【図11】測定装置の模式図。
【図12】嵌合式乾式分析素子の一実施形態を示す断面図である。
【図13】(A)は嵌合式乾式分析素子の上部材30を示す上面図、(B)は上部材30の断面図である。
【図14】(A)は嵌合式乾式分析素子の下部材40を示す上面図、(B)は下部材40の断面図である。
【図15】血液濾過器具およびフィルタ収容部材の例を表す図である。
【図16】フィルタ収容部材の例を表す図である。
【図17】ホルダ部材の例を表す図である。
【符号の説明】
【0101】
A100 多項目測定乾式分析要素
A1 流路
A2 顕色反応試薬を担持している部分
A3 注入口
A4 上蓋
A5 下材
A6 濾材
A7 顕色反応試薬
E1 上蓋の接合方向
E2 濾材の配置場所を表す矢印
E3 顕色反応試薬の配置場所を表す矢印
B100 採血ユニット
B1 採血器具
B2 穿刺針
C1 多項目測定乾式分析要素の装着方向
C2 減圧する際の摺動方向
D 全血
10 液体濾過器具
12 フィルタ部材
14 ホルダ部材
15,36 液体濾過フィルタ
17,52 シール部材(多孔質膜)
19 フィルタ部材の液体出口側(上端)の開口部
28,55 嵌合部
30 上部材
40 下部材
50 乾式分析素子
54 乾式分析要素
100 測定装置
71 多項目測定乾式分析要素設置部
72 光源
73 光可変部
74 波長可変部
75a、75b、75c レンズ
76 エリアセンサ
77 コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
円相当直径が4μm以下で、高さが円相当直径と等しいかそれよりも長い非水溶性物質を用い、該非水溶性物質が基材に固定されていて、実質的に非水溶性物質に捕捉させることで血球分離を行うことを特徴とする、血球分離用フィルター。
【請求項2】
前記非水溶性物質と非水溶性物質の間の間隔が4μm以上であることを特徴とする、請求項1に記載の血球分離用フィルター。
【請求項3】
前記非水溶性物質が等間隔に並んでいることを特徴とする、請求項1または2に記載の血球分離用フィルター。
【請求項4】
前記非水溶性物質の間隔が4μm以上であることを特徴とする、請求項3に記載の血球分離用フィルター。
【請求項5】
前記非水溶性物質が市松模様に配置していることを特徴とする、請求項3または4に記載の血球分離用フィルター。
【請求項6】
前記非水溶性物質がピラーであることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の血球分離用フィルター。
【請求項7】
前記非水溶性物質が等間隔に並んでおり、非水溶性物質と非水溶性物質の間の間隔が、フィルターの入り口部分と出口部分において実質的に1.5倍以上異なることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の血球分離用フィルター。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の血球分離用フィルターを用いることを特徴とする血液濾過器具。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれかに記載の血球分離用フィルターを用いることを特徴とする、血球の分離方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれかに記載の血球分離用フィルターを用いることを特徴とする、血液前処理要素。
【請求項11】
請求項1〜7のいずれかに記載の血球分離用フィルターを用いることを特徴とする分析要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−298502(P2007−298502A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94376(P2007−94376)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】