血管系装置
形状設定部を有するワイヤと、導電路と、形状設定部より遠位の点でワイヤを導電路に接続する電気コネクタと、ワイヤ及び導電路及び電気コネクタを包容するハイポチューブとを有する血管系装置が提供される。血管系装置を、ワイヤに対する電流の供給によるワイヤの発熱、特にワイヤの形状設定部の発熱によって、小断面構造形から展開構造形へ作動させることができる。血管系装置は、凝血塊及び血栓塞栓及び異物を血管、特に脳血管から除去することに有用であり、また操縦ワイヤ又はガイドワイヤとしても有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年12月1日に出願された米国仮特許出願第61/265501号に関する優先権を主張し、前記仮特許出願は、引用することによりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、例えば患者の血管から血栓又は異物のような物体を除去するのに有用な血管系装置に関するものである。特に、本発明は、患者の脳血管から血栓を除去するのに有用な装置に関する。本発明の装置はまた、患者の血管内で操縦可能ガイドワイヤ又は操縦ワイヤとして使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
閉塞された血管に開存性を復元する機械的手段の使用がよく知られている。これらの装置は、血栓の液圧除去、固化した血小板に対する回転切刃、血栓を破砕又は引っぱるための膨張手段、また脈管を浚渫するか又は石を除去するように自己拡張するか又は拡張され得る様々な金属構造物といった多岐にわたる多くのカテゴリに収まる。
【0004】
これらの装置の例としては、米国特許第3367101号、第3435826号、及び第4403612号における、フォガティ(Fogarty)によって記述された“フォガティカテーテル”にさかのぼり、それらは、塞栓摘出術のためのバルーンカテーテルに対する改善を詳細に記述する。多くの用途に適している一方で、繊細な曲がりくねった脳血管系をとおしてバルーンを引くと、不要な外傷を引き起こす可能性がある。本技術分野の現状のバルーンカテーテルの横断面は、典型的な神経血管アクセサリー(例えば、マイクロカテーテル)とそれらとの使用も制限するであろう。
【0005】
機械的に拡大される装置も閉塞除去の分野でよく知られている。クラーク(Clark)は、米国特許第3996938号において、血栓を除去するための拡大組紐の使用に特に焦点を当てた。彼の教えは、組紐の先端部に取り付けられた内側のコアワイヤが与える圧縮力を受けて拡大する組紐を利用した。
【0006】
このテーマに対する多くの改良が、石の除去、凝血塊の除去、及び異物の除去などの分野で生じた。これらの全ては、自己拡張したり、又は供給される圧縮荷重の下で機械的に拡張したりする性質の組立体である。これらの例は、バスケットの平行足によって本体が取得バスケットに入ることが可能にされるベイツ(Bates)の米国特許第6800080号;バスケットが自己拡大して、提供された鞘内に潰れるということになっているベイツの米国特許第5496330号;“固定的に取り付けられたコアワイヤ”の故に“供給された”状態で潰されている自己拡張型円錐形のバスケットを記述するエンゲルソン(Engelson)の米国特許第6066158号;及び、一連の編組エキスパンダで構成される組立体を記述するサムソン(Samson)の米国特許第6066149号に見ることができる。
【0007】
これらの装置は、エレガントながら、神経血管系内への適用に対する主要な関心事、すなわち装置の横断面(すなわち、断面積)を最小限に抑えることに対処していない。一般に、これらは、所定の場所に溶接されるか又はカラー等を用いて固定的に取り付けられる必要のある多くの構成要素から構成されて全て組み立てられた装置である。これらの発明の装置が、繊細な、曲がりくねった神経血管系にアクセスするために使用される医師に好まれるマイクロカテーテルとどのように両立するかが分からない。
【0008】
多くの発明において、横断面の問題は、固定されたワイヤ組立体を記述することによって回避されており、前記ワイヤ組立体は、マイクロカテーテルを通過するものではなく、それらは、大きな血管内における閉塞物によく近接して配置された大きなガイドカテーテルから操縦するということになっている。サムソンの米国特許第6066149号は、このタイプの組立体の例である。図に示すように、装置は、ワイヤ端部がカラーの中に操縦される組立体である。引き込み心線は、その遠位終端において、従来型のガイドワイヤの先端も兼ねている。この先端は、ガイドワイヤの操縦、及び凝血塊を横切るためにそれを貫く能力を与える一方で、装置の大きな本体がエキスパンダを取り囲んでいる。ことによると容易にアクセス可能な閉塞物に適しており、これは、予想される脳血管の大多数の場合に又は医師の好みに対応しない。前記医師の好みとは、手術の前に凝血塊に対する遠位の血管造影法による可視化のために、マイクロカテーテルとガイドワイヤの組み合わせが、凝血塊を横切る通路を生み出すために使用されることである。
【0009】
ウェンゼル(Wensel)は、米国特許第5895398号において、神経血管系の両立性を達成するためにより小さい装置の必要性を予想している。この文献では、彼は、マイクロカテーテルによる送出のために直線状に維持された螺旋成形ワイヤの使用を教示している。“コルクねじ”に成形された単線を使用することによって、彼は、大断面という結果となる他の先行技術の多くで必要な複雑な組立手順を回避した。彼の発明は、残念ながら、マイクロカテーテルに対する束縛を必要とする。一般的に、医師に好まれるマイクロカテーテルは、遠位端で非常に柔軟性があって、成形ワイヤを直線状に維持する能力をほとんど与えない。これは、(凝血塊を摘出する能力を低下させる)弱い“コルクねじ”を作るか、又は処置におけるアクセスを制限する特注の硬いマイクロカテーテルを作るかのトレードオフである。
【0010】
米国特許第5895398号及びその後の公報である米国特許第6436112号において、ウェンゼルは、コイルが発熱時又は電流の通行時に形状を変える二相性材料から作られる脈管内の凝血塊及び異物を除去するためのコイル型の装置を記述している。コイルは、初期的には直線状のものとして記載され、次に電流又は電熱の通過後に、コイルはそのコイル構造形に変化する。コイルは挿入マンドレルに取り付けられる。電流又は電熱の通行のための手段が説明されていない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、血管系装置及び前記血管系装置を製作して使用する方法に関する。
【0012】
血管系装置は、形状設定部と、ワイヤに平行に延びる導電路と、形状設定部に対して遠位のワイヤと導電路との間の少なくとも一つの電気コネクタと、ワイヤ及び導電路及び電気コネクタが中に挿入されるハイポチューブとを具備する。
【0013】
本発明の血管系装置のワイヤは、電流による電線の発熱時に形状設定部の形状を変化させる二相性の材料を含む。
【0014】
一実施形態では、血管系装置は、機械的血栓除去術装置である。この実施形態では、ワイヤの形状設定部は初期的には直線状である。形状設定部は発熱すると、凝血塊を捕捉すること、及び血栓塞栓を捕捉して除去すること、及び血管、特に脳血管内の他の異物を除去することに有用なコイルを形成する。
【0015】
別の実施形態では、血管系装置は、血管系内の操縦可能ガイドワイヤ又は操縦ワイヤとして使用される。この実施形態では、ガイドワイヤ又は操縦可能ワイヤとしての使用に望ましい任意の形状が想定され得る。
【0016】
本発明の動作は、添付の図面と併せて考察されると、以下の説明から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、直線状の小断面構造形にある形状設定部を有する、本発明の血管系装置のワイヤの概略図である。
【図2a】図2aは、図1のワイヤに平行に走る導電路の一実施形態の概略図であって、装置のワイヤを取り囲む導電路の第1の絶縁層を示す図である。
【図2b】図2bは、図1のワイヤに平行に走る導電路の一実施形態の概略図であって、ワイヤを取り囲む図2aに示されている第1の絶縁層と、装置の第1の絶縁層の外表面に沿って延在する導電部材とを示す図である。
【図2c】図2cは、図1のワイヤに平行に走る導電路の一実施形態の概略図であって、ワイヤを囲む第1の絶縁層、第1の絶縁層の外表面に沿って延在する導電部材、及び装置の導電部材を覆う第2の絶縁層を示す図である。
【図3a】図3aは、装置のハイポチューブ構成要素の実施形態の模式図である。
【図3b】図3bは、ハイポチューブ内に囲まれた本発明の装置の一実施形態の模式図である。図が管状構造の一方の面を示していることが理解されるべきである。
【図3c】図3cは、ハイポチューブ内に囲まれた本発明の装置の代替の実施形態の模式図である。図が管状構造の一方の面を示していることが理解されるべきである。
【図4】図4は、閉塞動脈の模式図である。
【図5】図5は、閉塞を貫通して挿入された本発明の機械的血栓除去術装置を有する閉塞動脈の模式図である。
【図6】図6は、閉塞動脈内の凝血塊の捕捉のためのコイル状構造形にされた本発明の血栓除去術装置のワイヤの展開した形状設定部の概略図である。
【図7】図7は、本発明の血栓除去術装置によって動脈から取り除かれる図4〜図6の凝血塊の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
血管系装置が本発明によって提供される。
本発明の血管系装置は、形状設定部を有する長手方向に延びるワイヤ、及びワイヤに平行に延びる導電路、及びワイヤの形状設定部から遠位の点で、ワイヤと導電路とを接続する電気コネクタ、及びハイポチューブを具備し、前記ハイポチューブの中にワイヤ及び導電路及び電気コネクタが挿入されている。
【0019】
本発明の血管系装置の要素が図1から図3に示されている。
【0020】
具体的には、図1は、装置の形状設定部3を有する、長手方向に延びるワイヤ2の実例である。ワイヤ2は、形状設定部3における形状をワイヤの発熱時に変化させる二相性の材料で構成される。図1と同様に図2及び図3に、ワイヤ2の形状設定部3は、直線状構造形すなわち小断面構造形で描かれている。
【0021】
本発明の装置のワイヤ2に有用な二相性の材料の例は、ニチノール(Nitinol)であり、ニチノールは、体温付近以上の温度であるが周囲の組織への損傷を引き起こす温度未満の温度でオーステナイトに変態するように作られたその冶金特性を有する。本発明によるニチノールワイヤを熱処理する実験は、約33℃のAsと約42℃のAfという結果となった。ニチノールワイヤは、体温未満の温度でオーステナイト状態(As)に変態を開始する一方で、ニチノールがオーステナイト状態へのその変態を終了するAfまで又はAfより上では、勾配はハイポチューブを圧倒して形状を変化させるのに十分な力を確立しない。形状設定ポリマーのような任意の二相性材料は、この用途で役に立つであろう。
【0022】
ワイヤの直径は、変更されてよく、また導電路及びハイポチューブの内径及びコイルの必要な強さに依存している。ワイヤの直径が太くなるほど強いコイルとなる。一実施形態では、ワイヤの直径は、導電路に包まれても、ハイポチューブ内に収まることができる最大の直径である。収まる最大直径ワイヤは、ワイヤの形状設定部に最大の強度を提供するように選択される。例えば、本発明者らは、ここに0.0093in即ち0.236mmの内径(ID)を有するハイポチューブに対して、導電路を含んでハイポチューブ内に収まる0.005in即ち0.127mm〜0.006in即ち0.152mmの直径のニチノールワイヤが好ましいことを見出した。ワイヤの好ましい長さは約180cmであるか、又は好適なガイドワイヤの長さによく似るだろう。
【0023】
機械的血栓除去術装置として有用な本発明の血管系装置1の実施形態を示す図4〜図7においては、ワイヤ2の形状設定部3は、凝血塊を捕捉するように、並びに血栓塞栓を濾過、捕捉、及び除去するように、並びに血管系から異物を捕捉及び除去するように形成されたコイルとして描かれている。限定するものではないが、直線状コイル及びテーパーコイルを含む様々なコイルの構造形を使用することができる。
【0024】
一実施形態では、ワイヤが血管系装置の用途に選択されたサイズのマンドレルに巻き付けられたとき、ワイヤ2の形状設定部3が、ワイヤの加熱調整によってワイヤに組み込まれる。
【0025】
例えば、機械的血栓除去術装置のために、1.6mmのマンドレルサポート(マンドレルの両端を保持する固定具)を有する3.2mmマンドレルが、既知のピッチでワイヤの完全な2回転を提供して直線コイルという結果を招く。このようなマンドレルの使用は、よじれを取り除き、そこでは、1.6mmのマンドレルサポートが優しい喰い付き部としての役割を果たすときワイヤが型を出入りする。
【0026】
代わりに、テーパーコイルが、機械的血栓除去術装置のワイヤ内に組み込まれることが可能である。テーパーコイルは、凝血塊の負荷の下でのコイルの直線化に対する追加の抵抗力だけでなくより硬いハイポチューブを圧倒する追加された復元力も提供し得る。
【0027】
本発明の血管系装置内のワイヤ2は、ワイヤを通して供給される電流の結果としてジュール加熱により加熱される。電圧は、バッテリなどの接続された直流電源によってシステム全体に供給される。図3bに示されるように、ワイヤ2(−)を介して電圧源の“+”(プラス)端子から得られた電流が流れる。図3Cに示すように、電流は、形状設定部3に対する遠位でワイヤ2に電気的に接続された6低抵抗パス4eを介して電圧源の“−”(マイナス)端子に戻される。
【0028】
図2aから図2cは、ワイヤ2に平行に延びる導電路4の一実施形態を例示するものである。この実施形態では、導電路は、装置のワイヤを取り囲む第1の絶縁層4aを具備する(図2aを参照されたい)。本実施形態の導電路4は、第1の絶縁層4aの外側面に沿って延びる導電部材4bを更に具備する(図2bを参照されたい)。第1の絶縁層4aは、ワイヤの形状設定部から遠位の所望の電気的接続部を除いてワイヤから導電部材を絶縁している。本実施形態の導電路4は、導電部材4bを覆う第2の絶縁層4cを更に具備してもよい。この第2の層は、ハイポチューブを導電路から絶縁して、汚染物質に対する障壁を提供するであろう。この実施形態では、第1及び/若しくは第2の絶縁層は、ワイヤの形状設定部から遠位の所望の電気的接続を除いてワイヤから導電部材の完全な絶縁を確実にするために、並びに/又は(例えば、血液及び水などの)汚染物が絶縁を破壊することを防ぐために複数の層を含んでよい。
【0029】
様々な材料を導電路のこの実施形態の層に使用できる。
【0030】
たとえば、導電部材として、例えばアルミ化/ポリエステル(PET)フィルム又は箔のような、ワイヤの二相性材料よりも低い抵抗で電流を流すことのできるフィルム又は箔を含む薄い金属を使用することができる。導電性金属編組を含む、他の任意の薄い展延性の導電性材料を使用することができる。ワイヤよりも低抵抗のフィルム又は箔を使用することにより、供給される電力の大半がワイヤの加熱に使われる。膜の厚さはワイヤの直径とハイポチューブの内径に依存しており、前記ハイポチューブの内径の内にワイヤと導電路が収められなければならない。一実施形態では、0.00035in即ち0.0089mmのアルミニュウム及び0.00048in即ち0.012mmのPETで積層されて0.00083in即ち0.0096mmの合計厚さになるフィルムの厚さが使用される。
【0031】
第1の絶縁層のために、所望の電気的接続部を除いて導電部材からワイヤを絶縁することのできる薄膜ラップが選択される。たとえばePTFE/エチレンフッ素化エチレンプロピレン(EFEP)(約0.0001in即ち0.0025mm厚)などの延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE複合材)の薄膜ラップを使用することができる。この複合材は、膜を所定の場所に固定するとともに、さらに液体がシステムに侵入することを防ぐために加熱中にリフローする低融点熱可塑性樹脂層を有する。任意の低融点熱可塑性樹脂と組み合わされた例えばFEP(フッ素化エチレンプロピレン)、PE(ポリエチレン)、又はPebax(登録商標)のような任意の熱可塑性複合材は、この用途で使用されてよい。絶縁層は、ワイヤと導電部材との間に取り付けられて、必要な場所を除いてワイヤが導電部材に接触することを防ぐ。ハイポチューブと導電部材との間の接触を防ぐため及び汚染物質(例えば、水又は血液など)が絶縁を破壊することを防ぐために、同一又は異なる材料の第2の絶縁層を、導電部材の上に取付けることができる。
【0032】
ワイヤ2の形状設定部3に対して遠位の点で、ワイヤ2と、導電路4、特に導電路の導電部材4bとは、回路を完成させるために接触する必要がある。接触のこの点は、本明細書では電気コネクタ6として参照される。図4aから図4cの導電路の実施形態では、電気的接続は、ワイヤの形状設定部から遠位の点であるが導電部材4bの遠位端に対する近位の点で第1の絶縁層4aを終えることによって、及びワイヤと導電部材とをハイポチューブ内でクリンプによって共に圧縮することによって達成される。銀エポキシのような電気的接続を生み出すためのクリンプに代わる方法が使用されてよい。
【0033】
代替の導電路が想定されてよい。この代替構成は、図3cに示される。それは追加の導電膜層4eを含むことを除いて、図2a〜図2cに示す構成と同様な構造である。導電膜層4eは、ワイヤ2の抵抗より低い抵抗を有し、これにより形状設定部だけが発熱され及び従ってそのプリセット形状を呈する。
【0034】
本発明の血管系装置は、ワイヤと導電路の全体を包容するハイポチューブ5をさらに具備する(図3bを参照されたい)。図3a〜図3cを参照されたい。ハイポチューブは、血管系装置の挿入のための強度を近位端部で提供する一方で、遠位端部に柔軟性を維持することによって、ワイヤの形状設定部の発熱後の形状を形作る。十分な機械的性質の任意の導電性で薄い器具をハイポチューブの代わりに使用することができる。一実施形態では、ハイポチューブは、ワイヤ及び導電路を包容するのに十分であるように選択された内径(ID)と、マイクロカテーテル及び血管系、特に脳血管系の中に収まるように選択された外径(OD)とを有するステンレス鋼チューブを具備する。一実施形態では、細かいピッチの螺旋が、ワイヤの形状変化の際に遠位の柔軟性を確保するためにワイヤの形状設定部に隣接するその遠位端のハイポチューブの少なくとも一部に加工されている。図3a及び図3bを参照されたい。一実施形態では、ハイポチューブは、ワイヤの形状設定部から遠位の未カットチューブ区域を具備しており、そこでは、圧縮によって導電路をワイヤの形状設定部から遠位の点でワイヤに電気的に接続するためにクリンプが設けられる。
【0035】
本発明の血管系装置は、限定するものではないが、中大脳動脈(MCA)及び遠位内頸動脈(ICA)及び脊椎脳底動脈のM1及びM2のレベルのような特に脳血管解剖構造のような血管の解剖構造への容易でより迅速なアクセスを可能にする医師に好まれる付属品(例えば、マイクロカテーテル)との親和性が、特定のマイクロカテーテルの使用又は面倒なカテーテル交換を必要とする装置に比べて高い。例えば、凝血塊に対して充分に係合する回転及び/又は逆回転の複雑なシステムを必要とする装置に比べて簡単かつ迅速である。より少ない手術操作は、より短い手術時間を提供し、また患者にとって利点がある。
【0036】
図4〜図7に示されるような本発明の血管系装置の一実施形態は、血管系、特に脳血管系のための効率的な機械的血栓除去術装置を提供する。本発明の血栓除去術装置は、凝血塊の除去、血栓塞栓の捕捉と除去、及び血管からの異物の除去に有用である。この血栓除去術装置は、図4〜図7の動脈内に示される。本実施形態の使用のために、血栓塞栓性障害の症状を示す患者は、診断を確認し且つ閉塞を見つけるために検査される。大きな導入カテーテルは、大腿動脈又は大腿静脈のような適切な脈管内に挿入される。医師に好まれる小さなマイクロカテーテルが、次に、導入カテーテルを介して脈管内に導入されて、例えばガイドワイヤを使用して閉塞された脈管内に向かって前進せしめられる。次に、装置は、凝血塊の遠位サイトへ凝血塊を通って前進せしめられる。本発明の機械的血栓除去術装置は、次に、医師に好まれる小断面構造形のマイクロカテーテルを介して凝血塊のサイトへ前進せしめられる。次に、本発明の機械的血栓除去術装置は、粘弾性の凝血塊を貫通して、機械的血栓除去術装置のワイヤの形状設定部が凝血塊のサイトに位置する点まで、小断面構造形の中をさらに前進せしめられる(図5を参照されたい)。次に、本発明の機械的血栓除去術装置は、該装置のワイヤをとおる電流の通過によって作動され、ワイヤの形状設定部及び覆っているハイポチューブの展開された構造形を呈する(図6を参照されたい)。展開された構造形では、血栓除去術装置は、最小限の塞栓破片とともに凝血塊に係合してそれを除去するのに十分な幾何形状と機械的な属性とを有している(図7を参照されたい)。効率的な凝血塊の捕捉と除去は、より短い処置時間、及び患者の改善された血管再新生を提供する。展開された構造形では、血栓除去術装置は、血栓塞栓を捕捉して除去するため、及び他の異物を除去するために使用され、並びに操縦ワイヤ又はガイドワイヤとしても用いられることが可能である。
【0037】
例:
本発明の範囲を制限することなく、次の例は、本発明の様々な実施形態がどのように実施及び/又は使用されてよいかが説明される。
【0038】
図3a、図3b、及び図3cに類似の血管系装置は、次の構成要素と組立工程を用いて製造された。
【0039】
次の構成要素が使用された。
約33℃のAs及び約42℃のAfを有する直線状コイル(テーパーなし)に熱設定された遠位端の部分を有する直径0.005in(0.127mm)のニチノールワイヤ(フォートウェイン金属(Fort Wayne Metals)、フォートウェイン(Fort Wayne)、インディアナ州)。前記ワイヤは、当該分野で公知の形状設定の熱処理技術を用いて形状設定された。
【0040】
0.0093in×0.0132in(0.236×0.335mm)のIDとODをそれぞれ有するステンレス鋼レーザーカット螺旋ハイポチューブ(クリガンナ(Creganna)、マールボロ(Marlborough)、マサチューセッツ州)。螺旋カットのピッチが指定される。ハイポチューブの遠位端の近くの2mmの部分は、圧着に適した場所を提供するためにカットされずに残された。
【0041】
0.005in(0.127mm)のステンレス鋼の工程マンドレル。
【0042】
工場の在庫から提供された0.015in(0.381mm)幅の細長いアルミニウム/ポリエステル箔。
【0043】
工場の在庫から提供された0.030in(0.762mm)幅の細長いEFEP(エチレンフッ素化エチレンプロピレン)フィルム。
【0044】
ロックタイト460(Loctite 460(登録商標))(ヘンケル社(Henkel Corp.)、ロッキーヒル(Rocky Hill)、コネチカット06067)接着剤。
【0045】
収縮チューブ(部品番号008025CST、内径0.008in(0.203mm)、アドバンストポリマーズ株式会社(Advanced Polymers, Inc.)、セーラム(Salem)、ニューハンプシャー州03079)。
【0046】
サンドペーパー、♯400。
【0047】
次の寸法を有する白金コイル、0.009in×0.006in×12in(0.228×0.152×304.8mm)
【0048】
テープ巻付け機が、以下の装置の製造に使用された。使用される特定の速度、角度、及び張力の設定は、必要に応じてさらに説明される。
【0049】
サンドペーパーが、形状設定部の少しだけ遠位の約2cmの区域の酸化物をワイヤから削除するために使用された。ワイヤは、コイル状領域の近位区域から約170cm遠位の場所で半分に曲げられた。ワイヤの屈曲部とワイヤの直線部は、テープ巻付け機に固定された。
【0050】
テープ巻付け機は、EFEPテープの第1の絶縁層巻付けのための以下の仕様で設定された。マンドレルの速度は逆回転方向に2000回転に設定された。巻付け角度は61°に設定されて、マンドレルの張力が20.7kPa(3psi)に設定され、送出し張力が0kPa(0psi)に設定され、横送り方向が右から左に設定された。EFEPテープが、巻付け機に装填され、ワイヤの近位端にタグ長さを残して、ワイヤの周囲に手で4回巻き付けられた。手で巻き付けられたテープをワイヤに固定するために半田ごてが使用された。次に、テープのタグの端部が手で切除された。巻付け機は、作動されて、ワイヤ上の酸化物除去領域の直前までワイヤは包まれた。ワイヤにテープを再び固定するために半田ごてが使用され、過剰なテープがマンドレルに近接して切除された。ワイヤは、テープ巻付け機から取り外され、165℃のオーブン内で3分間焼成された。ワイヤは、その後オーブンから取り出されて、テープ巻付け機に戻された。
【0051】
テープ巻付け機は、導電部材のための以下の仕様に設定された。マンドレル速度が逆方向で800回転に設定された。巻付け角度は57.8°に設定されて、マンドレルの張力は20.7kPa(3psi)に設定され、送出し張力は34.5kPa(5psi)に設定され、横送り方向が右から左に設定された。アルミニウム/ポリエステル箔が、テープ巻付け機に装填されて、第1のEFEP層が始まったところの約1cm遠位のワイヤの上に置かれた。箔の端部は、ワイヤの周りに4回巻き付けられ、マスキングテープで固定するためにテープ固定される。巻付け機が作動されて、第1のEFEP層の遠位端を約1cm過ぎたところまで箔で包まれたワイヤは、コアワイヤの酸化物除去区域でコアワイヤと箔との間を確実に接触させる。一滴のロックタイト接着剤は、ワイヤに箔を固定するために箔の下のワイヤ上に直接に置かれた。過剰な箔が可能な限りワイヤの近くで手で切除された。
【0052】
EFEPの第2の絶縁層が、次の設定でテープ巻付け機に適用された。マンドレル速度が逆方向で2000回転に設定された。巻付け角度は53°に設定されて、マンドレルの張力は20.7kPa(3psi)に設定され、送出し張力が0kPa(0psi)に設定され、横送り方向が右から左へ設定された。EFEPテープは、テープ巻付け機に装填され、箔層の近位端の遠位約5mmのワイヤの上に置かれた。テープは、ワイヤの周囲に4回巻き付けられて、第1のEFEP層と同じように固定及び切除された。テープ巻付け機が作動されて、ワイヤが箔層の端を約5cm過ぎるまでテープで包まれた。次に、テープが第1のテープ層と同じように固定及び切除されて、巻付け機から取り外されて、165℃に設定されたオーブン内で3分間焼成された。
【0053】
オーブンから取り出された後、ワイヤの包まれていない遠位端は手で真っ直ぐにされて、ワイヤ組立体の遠位端がハイポチューブの遠位端を越えて突出するまで、ハイポチューブの近位(未カット)端の中に挿入された。ワイヤ組立体の近位端は、作業面上に固定された。ワイヤの遠位端は、ワイヤを真っ直ぐにするために手で引っ張られた。ハイポチューブは、箔がハイポチューブの遠位端で露出するまで、近位にワイヤの上に手で位置決めされた。
【0054】
ワイヤの遠位端は、箔の遠位端から約5mmで、手で切除された。収縮チューブの1cmの部分が、収縮チューブで箔部を覆うことになるコアワイヤの切断端の上の位置に位置決めされた。次に、収縮チューブは、収縮チューブの遠位端部を溶かすために加熱された。過剰な収縮チューブが、ワイヤを超えた約1mmの点で手によって切除された。収縮チューブの端部が再加熱された。
【0055】
白金コイルの5mmの部分が、切断されて、箔と白金コイルとの間の2〜3mmのスペースを残してワイヤ組立体の遠位端上に配置された。接着剤の小滴が、ワイヤ上に置かれ、コイルが、コアワイヤ上を箔部分まで移動させられた。白金コイルは改良された放射線不透過性を装置に提供する。
【0056】
過剰な接着剤が手で除去された。ハイポチューブとワイヤの近位端は手で保持されて、ワイヤが2〜3ミリメートルだけ引っ張られた。ハイポチューブは、どんな圧縮も取り除くように手で緩められ、白金コイルが、ハイポチューブの内側に配置されたが手で軽く押された。ワイヤは、遠位端がハイポチューブの約1mm内側になるまで引っ張られた。ハイポチューブの螺旋未カット部の約1mmが、ワイヤの形状領域の遠位約2〜3mmであることを確実にするように注意が払われた。
【0057】
組立体の遠位端が圧着コレット内に挿入され、約0.5mmの未カットハイポチューブがコレットの外側に残った。コレットは手で締められた。15mmのレンチが、コレットを1/4回転締めるために使用された。ハイポチューブの遠位先端の1mmが、手動で圧着され、15mmのレンチが、コレットを1/8回転締めるために使用された。組立体がコレットから取り外された。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年12月1日に出願された米国仮特許出願第61/265501号に関する優先権を主張し、前記仮特許出願は、引用することによりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、例えば患者の血管から血栓又は異物のような物体を除去するのに有用な血管系装置に関するものである。特に、本発明は、患者の脳血管から血栓を除去するのに有用な装置に関する。本発明の装置はまた、患者の血管内で操縦可能ガイドワイヤ又は操縦ワイヤとして使用することもできる。
【背景技術】
【0003】
閉塞された血管に開存性を復元する機械的手段の使用がよく知られている。これらの装置は、血栓の液圧除去、固化した血小板に対する回転切刃、血栓を破砕又は引っぱるための膨張手段、また脈管を浚渫するか又は石を除去するように自己拡張するか又は拡張され得る様々な金属構造物といった多岐にわたる多くのカテゴリに収まる。
【0004】
これらの装置の例としては、米国特許第3367101号、第3435826号、及び第4403612号における、フォガティ(Fogarty)によって記述された“フォガティカテーテル”にさかのぼり、それらは、塞栓摘出術のためのバルーンカテーテルに対する改善を詳細に記述する。多くの用途に適している一方で、繊細な曲がりくねった脳血管系をとおしてバルーンを引くと、不要な外傷を引き起こす可能性がある。本技術分野の現状のバルーンカテーテルの横断面は、典型的な神経血管アクセサリー(例えば、マイクロカテーテル)とそれらとの使用も制限するであろう。
【0005】
機械的に拡大される装置も閉塞除去の分野でよく知られている。クラーク(Clark)は、米国特許第3996938号において、血栓を除去するための拡大組紐の使用に特に焦点を当てた。彼の教えは、組紐の先端部に取り付けられた内側のコアワイヤが与える圧縮力を受けて拡大する組紐を利用した。
【0006】
このテーマに対する多くの改良が、石の除去、凝血塊の除去、及び異物の除去などの分野で生じた。これらの全ては、自己拡張したり、又は供給される圧縮荷重の下で機械的に拡張したりする性質の組立体である。これらの例は、バスケットの平行足によって本体が取得バスケットに入ることが可能にされるベイツ(Bates)の米国特許第6800080号;バスケットが自己拡大して、提供された鞘内に潰れるということになっているベイツの米国特許第5496330号;“固定的に取り付けられたコアワイヤ”の故に“供給された”状態で潰されている自己拡張型円錐形のバスケットを記述するエンゲルソン(Engelson)の米国特許第6066158号;及び、一連の編組エキスパンダで構成される組立体を記述するサムソン(Samson)の米国特許第6066149号に見ることができる。
【0007】
これらの装置は、エレガントながら、神経血管系内への適用に対する主要な関心事、すなわち装置の横断面(すなわち、断面積)を最小限に抑えることに対処していない。一般に、これらは、所定の場所に溶接されるか又はカラー等を用いて固定的に取り付けられる必要のある多くの構成要素から構成されて全て組み立てられた装置である。これらの発明の装置が、繊細な、曲がりくねった神経血管系にアクセスするために使用される医師に好まれるマイクロカテーテルとどのように両立するかが分からない。
【0008】
多くの発明において、横断面の問題は、固定されたワイヤ組立体を記述することによって回避されており、前記ワイヤ組立体は、マイクロカテーテルを通過するものではなく、それらは、大きな血管内における閉塞物によく近接して配置された大きなガイドカテーテルから操縦するということになっている。サムソンの米国特許第6066149号は、このタイプの組立体の例である。図に示すように、装置は、ワイヤ端部がカラーの中に操縦される組立体である。引き込み心線は、その遠位終端において、従来型のガイドワイヤの先端も兼ねている。この先端は、ガイドワイヤの操縦、及び凝血塊を横切るためにそれを貫く能力を与える一方で、装置の大きな本体がエキスパンダを取り囲んでいる。ことによると容易にアクセス可能な閉塞物に適しており、これは、予想される脳血管の大多数の場合に又は医師の好みに対応しない。前記医師の好みとは、手術の前に凝血塊に対する遠位の血管造影法による可視化のために、マイクロカテーテルとガイドワイヤの組み合わせが、凝血塊を横切る通路を生み出すために使用されることである。
【0009】
ウェンゼル(Wensel)は、米国特許第5895398号において、神経血管系の両立性を達成するためにより小さい装置の必要性を予想している。この文献では、彼は、マイクロカテーテルによる送出のために直線状に維持された螺旋成形ワイヤの使用を教示している。“コルクねじ”に成形された単線を使用することによって、彼は、大断面という結果となる他の先行技術の多くで必要な複雑な組立手順を回避した。彼の発明は、残念ながら、マイクロカテーテルに対する束縛を必要とする。一般的に、医師に好まれるマイクロカテーテルは、遠位端で非常に柔軟性があって、成形ワイヤを直線状に維持する能力をほとんど与えない。これは、(凝血塊を摘出する能力を低下させる)弱い“コルクねじ”を作るか、又は処置におけるアクセスを制限する特注の硬いマイクロカテーテルを作るかのトレードオフである。
【0010】
米国特許第5895398号及びその後の公報である米国特許第6436112号において、ウェンゼルは、コイルが発熱時又は電流の通行時に形状を変える二相性材料から作られる脈管内の凝血塊及び異物を除去するためのコイル型の装置を記述している。コイルは、初期的には直線状のものとして記載され、次に電流又は電熱の通過後に、コイルはそのコイル構造形に変化する。コイルは挿入マンドレルに取り付けられる。電流又は電熱の通行のための手段が説明されていない。
【発明の概要】
【0011】
本発明は、血管系装置及び前記血管系装置を製作して使用する方法に関する。
【0012】
血管系装置は、形状設定部と、ワイヤに平行に延びる導電路と、形状設定部に対して遠位のワイヤと導電路との間の少なくとも一つの電気コネクタと、ワイヤ及び導電路及び電気コネクタが中に挿入されるハイポチューブとを具備する。
【0013】
本発明の血管系装置のワイヤは、電流による電線の発熱時に形状設定部の形状を変化させる二相性の材料を含む。
【0014】
一実施形態では、血管系装置は、機械的血栓除去術装置である。この実施形態では、ワイヤの形状設定部は初期的には直線状である。形状設定部は発熱すると、凝血塊を捕捉すること、及び血栓塞栓を捕捉して除去すること、及び血管、特に脳血管内の他の異物を除去することに有用なコイルを形成する。
【0015】
別の実施形態では、血管系装置は、血管系内の操縦可能ガイドワイヤ又は操縦ワイヤとして使用される。この実施形態では、ガイドワイヤ又は操縦可能ワイヤとしての使用に望ましい任意の形状が想定され得る。
【0016】
本発明の動作は、添付の図面と併せて考察されると、以下の説明から明らかになるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、直線状の小断面構造形にある形状設定部を有する、本発明の血管系装置のワイヤの概略図である。
【図2a】図2aは、図1のワイヤに平行に走る導電路の一実施形態の概略図であって、装置のワイヤを取り囲む導電路の第1の絶縁層を示す図である。
【図2b】図2bは、図1のワイヤに平行に走る導電路の一実施形態の概略図であって、ワイヤを取り囲む図2aに示されている第1の絶縁層と、装置の第1の絶縁層の外表面に沿って延在する導電部材とを示す図である。
【図2c】図2cは、図1のワイヤに平行に走る導電路の一実施形態の概略図であって、ワイヤを囲む第1の絶縁層、第1の絶縁層の外表面に沿って延在する導電部材、及び装置の導電部材を覆う第2の絶縁層を示す図である。
【図3a】図3aは、装置のハイポチューブ構成要素の実施形態の模式図である。
【図3b】図3bは、ハイポチューブ内に囲まれた本発明の装置の一実施形態の模式図である。図が管状構造の一方の面を示していることが理解されるべきである。
【図3c】図3cは、ハイポチューブ内に囲まれた本発明の装置の代替の実施形態の模式図である。図が管状構造の一方の面を示していることが理解されるべきである。
【図4】図4は、閉塞動脈の模式図である。
【図5】図5は、閉塞を貫通して挿入された本発明の機械的血栓除去術装置を有する閉塞動脈の模式図である。
【図6】図6は、閉塞動脈内の凝血塊の捕捉のためのコイル状構造形にされた本発明の血栓除去術装置のワイヤの展開した形状設定部の概略図である。
【図7】図7は、本発明の血栓除去術装置によって動脈から取り除かれる図4〜図6の凝血塊の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
血管系装置が本発明によって提供される。
本発明の血管系装置は、形状設定部を有する長手方向に延びるワイヤ、及びワイヤに平行に延びる導電路、及びワイヤの形状設定部から遠位の点で、ワイヤと導電路とを接続する電気コネクタ、及びハイポチューブを具備し、前記ハイポチューブの中にワイヤ及び導電路及び電気コネクタが挿入されている。
【0019】
本発明の血管系装置の要素が図1から図3に示されている。
【0020】
具体的には、図1は、装置の形状設定部3を有する、長手方向に延びるワイヤ2の実例である。ワイヤ2は、形状設定部3における形状をワイヤの発熱時に変化させる二相性の材料で構成される。図1と同様に図2及び図3に、ワイヤ2の形状設定部3は、直線状構造形すなわち小断面構造形で描かれている。
【0021】
本発明の装置のワイヤ2に有用な二相性の材料の例は、ニチノール(Nitinol)であり、ニチノールは、体温付近以上の温度であるが周囲の組織への損傷を引き起こす温度未満の温度でオーステナイトに変態するように作られたその冶金特性を有する。本発明によるニチノールワイヤを熱処理する実験は、約33℃のAsと約42℃のAfという結果となった。ニチノールワイヤは、体温未満の温度でオーステナイト状態(As)に変態を開始する一方で、ニチノールがオーステナイト状態へのその変態を終了するAfまで又はAfより上では、勾配はハイポチューブを圧倒して形状を変化させるのに十分な力を確立しない。形状設定ポリマーのような任意の二相性材料は、この用途で役に立つであろう。
【0022】
ワイヤの直径は、変更されてよく、また導電路及びハイポチューブの内径及びコイルの必要な強さに依存している。ワイヤの直径が太くなるほど強いコイルとなる。一実施形態では、ワイヤの直径は、導電路に包まれても、ハイポチューブ内に収まることができる最大の直径である。収まる最大直径ワイヤは、ワイヤの形状設定部に最大の強度を提供するように選択される。例えば、本発明者らは、ここに0.0093in即ち0.236mmの内径(ID)を有するハイポチューブに対して、導電路を含んでハイポチューブ内に収まる0.005in即ち0.127mm〜0.006in即ち0.152mmの直径のニチノールワイヤが好ましいことを見出した。ワイヤの好ましい長さは約180cmであるか、又は好適なガイドワイヤの長さによく似るだろう。
【0023】
機械的血栓除去術装置として有用な本発明の血管系装置1の実施形態を示す図4〜図7においては、ワイヤ2の形状設定部3は、凝血塊を捕捉するように、並びに血栓塞栓を濾過、捕捉、及び除去するように、並びに血管系から異物を捕捉及び除去するように形成されたコイルとして描かれている。限定するものではないが、直線状コイル及びテーパーコイルを含む様々なコイルの構造形を使用することができる。
【0024】
一実施形態では、ワイヤが血管系装置の用途に選択されたサイズのマンドレルに巻き付けられたとき、ワイヤ2の形状設定部3が、ワイヤの加熱調整によってワイヤに組み込まれる。
【0025】
例えば、機械的血栓除去術装置のために、1.6mmのマンドレルサポート(マンドレルの両端を保持する固定具)を有する3.2mmマンドレルが、既知のピッチでワイヤの完全な2回転を提供して直線コイルという結果を招く。このようなマンドレルの使用は、よじれを取り除き、そこでは、1.6mmのマンドレルサポートが優しい喰い付き部としての役割を果たすときワイヤが型を出入りする。
【0026】
代わりに、テーパーコイルが、機械的血栓除去術装置のワイヤ内に組み込まれることが可能である。テーパーコイルは、凝血塊の負荷の下でのコイルの直線化に対する追加の抵抗力だけでなくより硬いハイポチューブを圧倒する追加された復元力も提供し得る。
【0027】
本発明の血管系装置内のワイヤ2は、ワイヤを通して供給される電流の結果としてジュール加熱により加熱される。電圧は、バッテリなどの接続された直流電源によってシステム全体に供給される。図3bに示されるように、ワイヤ2(−)を介して電圧源の“+”(プラス)端子から得られた電流が流れる。図3Cに示すように、電流は、形状設定部3に対する遠位でワイヤ2に電気的に接続された6低抵抗パス4eを介して電圧源の“−”(マイナス)端子に戻される。
【0028】
図2aから図2cは、ワイヤ2に平行に延びる導電路4の一実施形態を例示するものである。この実施形態では、導電路は、装置のワイヤを取り囲む第1の絶縁層4aを具備する(図2aを参照されたい)。本実施形態の導電路4は、第1の絶縁層4aの外側面に沿って延びる導電部材4bを更に具備する(図2bを参照されたい)。第1の絶縁層4aは、ワイヤの形状設定部から遠位の所望の電気的接続部を除いてワイヤから導電部材を絶縁している。本実施形態の導電路4は、導電部材4bを覆う第2の絶縁層4cを更に具備してもよい。この第2の層は、ハイポチューブを導電路から絶縁して、汚染物質に対する障壁を提供するであろう。この実施形態では、第1及び/若しくは第2の絶縁層は、ワイヤの形状設定部から遠位の所望の電気的接続を除いてワイヤから導電部材の完全な絶縁を確実にするために、並びに/又は(例えば、血液及び水などの)汚染物が絶縁を破壊することを防ぐために複数の層を含んでよい。
【0029】
様々な材料を導電路のこの実施形態の層に使用できる。
【0030】
たとえば、導電部材として、例えばアルミ化/ポリエステル(PET)フィルム又は箔のような、ワイヤの二相性材料よりも低い抵抗で電流を流すことのできるフィルム又は箔を含む薄い金属を使用することができる。導電性金属編組を含む、他の任意の薄い展延性の導電性材料を使用することができる。ワイヤよりも低抵抗のフィルム又は箔を使用することにより、供給される電力の大半がワイヤの加熱に使われる。膜の厚さはワイヤの直径とハイポチューブの内径に依存しており、前記ハイポチューブの内径の内にワイヤと導電路が収められなければならない。一実施形態では、0.00035in即ち0.0089mmのアルミニュウム及び0.00048in即ち0.012mmのPETで積層されて0.00083in即ち0.0096mmの合計厚さになるフィルムの厚さが使用される。
【0031】
第1の絶縁層のために、所望の電気的接続部を除いて導電部材からワイヤを絶縁することのできる薄膜ラップが選択される。たとえばePTFE/エチレンフッ素化エチレンプロピレン(EFEP)(約0.0001in即ち0.0025mm厚)などの延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE複合材)の薄膜ラップを使用することができる。この複合材は、膜を所定の場所に固定するとともに、さらに液体がシステムに侵入することを防ぐために加熱中にリフローする低融点熱可塑性樹脂層を有する。任意の低融点熱可塑性樹脂と組み合わされた例えばFEP(フッ素化エチレンプロピレン)、PE(ポリエチレン)、又はPebax(登録商標)のような任意の熱可塑性複合材は、この用途で使用されてよい。絶縁層は、ワイヤと導電部材との間に取り付けられて、必要な場所を除いてワイヤが導電部材に接触することを防ぐ。ハイポチューブと導電部材との間の接触を防ぐため及び汚染物質(例えば、水又は血液など)が絶縁を破壊することを防ぐために、同一又は異なる材料の第2の絶縁層を、導電部材の上に取付けることができる。
【0032】
ワイヤ2の形状設定部3に対して遠位の点で、ワイヤ2と、導電路4、特に導電路の導電部材4bとは、回路を完成させるために接触する必要がある。接触のこの点は、本明細書では電気コネクタ6として参照される。図4aから図4cの導電路の実施形態では、電気的接続は、ワイヤの形状設定部から遠位の点であるが導電部材4bの遠位端に対する近位の点で第1の絶縁層4aを終えることによって、及びワイヤと導電部材とをハイポチューブ内でクリンプによって共に圧縮することによって達成される。銀エポキシのような電気的接続を生み出すためのクリンプに代わる方法が使用されてよい。
【0033】
代替の導電路が想定されてよい。この代替構成は、図3cに示される。それは追加の導電膜層4eを含むことを除いて、図2a〜図2cに示す構成と同様な構造である。導電膜層4eは、ワイヤ2の抵抗より低い抵抗を有し、これにより形状設定部だけが発熱され及び従ってそのプリセット形状を呈する。
【0034】
本発明の血管系装置は、ワイヤと導電路の全体を包容するハイポチューブ5をさらに具備する(図3bを参照されたい)。図3a〜図3cを参照されたい。ハイポチューブは、血管系装置の挿入のための強度を近位端部で提供する一方で、遠位端部に柔軟性を維持することによって、ワイヤの形状設定部の発熱後の形状を形作る。十分な機械的性質の任意の導電性で薄い器具をハイポチューブの代わりに使用することができる。一実施形態では、ハイポチューブは、ワイヤ及び導電路を包容するのに十分であるように選択された内径(ID)と、マイクロカテーテル及び血管系、特に脳血管系の中に収まるように選択された外径(OD)とを有するステンレス鋼チューブを具備する。一実施形態では、細かいピッチの螺旋が、ワイヤの形状変化の際に遠位の柔軟性を確保するためにワイヤの形状設定部に隣接するその遠位端のハイポチューブの少なくとも一部に加工されている。図3a及び図3bを参照されたい。一実施形態では、ハイポチューブは、ワイヤの形状設定部から遠位の未カットチューブ区域を具備しており、そこでは、圧縮によって導電路をワイヤの形状設定部から遠位の点でワイヤに電気的に接続するためにクリンプが設けられる。
【0035】
本発明の血管系装置は、限定するものではないが、中大脳動脈(MCA)及び遠位内頸動脈(ICA)及び脊椎脳底動脈のM1及びM2のレベルのような特に脳血管解剖構造のような血管の解剖構造への容易でより迅速なアクセスを可能にする医師に好まれる付属品(例えば、マイクロカテーテル)との親和性が、特定のマイクロカテーテルの使用又は面倒なカテーテル交換を必要とする装置に比べて高い。例えば、凝血塊に対して充分に係合する回転及び/又は逆回転の複雑なシステムを必要とする装置に比べて簡単かつ迅速である。より少ない手術操作は、より短い手術時間を提供し、また患者にとって利点がある。
【0036】
図4〜図7に示されるような本発明の血管系装置の一実施形態は、血管系、特に脳血管系のための効率的な機械的血栓除去術装置を提供する。本発明の血栓除去術装置は、凝血塊の除去、血栓塞栓の捕捉と除去、及び血管からの異物の除去に有用である。この血栓除去術装置は、図4〜図7の動脈内に示される。本実施形態の使用のために、血栓塞栓性障害の症状を示す患者は、診断を確認し且つ閉塞を見つけるために検査される。大きな導入カテーテルは、大腿動脈又は大腿静脈のような適切な脈管内に挿入される。医師に好まれる小さなマイクロカテーテルが、次に、導入カテーテルを介して脈管内に導入されて、例えばガイドワイヤを使用して閉塞された脈管内に向かって前進せしめられる。次に、装置は、凝血塊の遠位サイトへ凝血塊を通って前進せしめられる。本発明の機械的血栓除去術装置は、次に、医師に好まれる小断面構造形のマイクロカテーテルを介して凝血塊のサイトへ前進せしめられる。次に、本発明の機械的血栓除去術装置は、粘弾性の凝血塊を貫通して、機械的血栓除去術装置のワイヤの形状設定部が凝血塊のサイトに位置する点まで、小断面構造形の中をさらに前進せしめられる(図5を参照されたい)。次に、本発明の機械的血栓除去術装置は、該装置のワイヤをとおる電流の通過によって作動され、ワイヤの形状設定部及び覆っているハイポチューブの展開された構造形を呈する(図6を参照されたい)。展開された構造形では、血栓除去術装置は、最小限の塞栓破片とともに凝血塊に係合してそれを除去するのに十分な幾何形状と機械的な属性とを有している(図7を参照されたい)。効率的な凝血塊の捕捉と除去は、より短い処置時間、及び患者の改善された血管再新生を提供する。展開された構造形では、血栓除去術装置は、血栓塞栓を捕捉して除去するため、及び他の異物を除去するために使用され、並びに操縦ワイヤ又はガイドワイヤとしても用いられることが可能である。
【0037】
例:
本発明の範囲を制限することなく、次の例は、本発明の様々な実施形態がどのように実施及び/又は使用されてよいかが説明される。
【0038】
図3a、図3b、及び図3cに類似の血管系装置は、次の構成要素と組立工程を用いて製造された。
【0039】
次の構成要素が使用された。
約33℃のAs及び約42℃のAfを有する直線状コイル(テーパーなし)に熱設定された遠位端の部分を有する直径0.005in(0.127mm)のニチノールワイヤ(フォートウェイン金属(Fort Wayne Metals)、フォートウェイン(Fort Wayne)、インディアナ州)。前記ワイヤは、当該分野で公知の形状設定の熱処理技術を用いて形状設定された。
【0040】
0.0093in×0.0132in(0.236×0.335mm)のIDとODをそれぞれ有するステンレス鋼レーザーカット螺旋ハイポチューブ(クリガンナ(Creganna)、マールボロ(Marlborough)、マサチューセッツ州)。螺旋カットのピッチが指定される。ハイポチューブの遠位端の近くの2mmの部分は、圧着に適した場所を提供するためにカットされずに残された。
【0041】
0.005in(0.127mm)のステンレス鋼の工程マンドレル。
【0042】
工場の在庫から提供された0.015in(0.381mm)幅の細長いアルミニウム/ポリエステル箔。
【0043】
工場の在庫から提供された0.030in(0.762mm)幅の細長いEFEP(エチレンフッ素化エチレンプロピレン)フィルム。
【0044】
ロックタイト460(Loctite 460(登録商標))(ヘンケル社(Henkel Corp.)、ロッキーヒル(Rocky Hill)、コネチカット06067)接着剤。
【0045】
収縮チューブ(部品番号008025CST、内径0.008in(0.203mm)、アドバンストポリマーズ株式会社(Advanced Polymers, Inc.)、セーラム(Salem)、ニューハンプシャー州03079)。
【0046】
サンドペーパー、♯400。
【0047】
次の寸法を有する白金コイル、0.009in×0.006in×12in(0.228×0.152×304.8mm)
【0048】
テープ巻付け機が、以下の装置の製造に使用された。使用される特定の速度、角度、及び張力の設定は、必要に応じてさらに説明される。
【0049】
サンドペーパーが、形状設定部の少しだけ遠位の約2cmの区域の酸化物をワイヤから削除するために使用された。ワイヤは、コイル状領域の近位区域から約170cm遠位の場所で半分に曲げられた。ワイヤの屈曲部とワイヤの直線部は、テープ巻付け機に固定された。
【0050】
テープ巻付け機は、EFEPテープの第1の絶縁層巻付けのための以下の仕様で設定された。マンドレルの速度は逆回転方向に2000回転に設定された。巻付け角度は61°に設定されて、マンドレルの張力が20.7kPa(3psi)に設定され、送出し張力が0kPa(0psi)に設定され、横送り方向が右から左に設定された。EFEPテープが、巻付け機に装填され、ワイヤの近位端にタグ長さを残して、ワイヤの周囲に手で4回巻き付けられた。手で巻き付けられたテープをワイヤに固定するために半田ごてが使用された。次に、テープのタグの端部が手で切除された。巻付け機は、作動されて、ワイヤ上の酸化物除去領域の直前までワイヤは包まれた。ワイヤにテープを再び固定するために半田ごてが使用され、過剰なテープがマンドレルに近接して切除された。ワイヤは、テープ巻付け機から取り外され、165℃のオーブン内で3分間焼成された。ワイヤは、その後オーブンから取り出されて、テープ巻付け機に戻された。
【0051】
テープ巻付け機は、導電部材のための以下の仕様に設定された。マンドレル速度が逆方向で800回転に設定された。巻付け角度は57.8°に設定されて、マンドレルの張力は20.7kPa(3psi)に設定され、送出し張力は34.5kPa(5psi)に設定され、横送り方向が右から左に設定された。アルミニウム/ポリエステル箔が、テープ巻付け機に装填されて、第1のEFEP層が始まったところの約1cm遠位のワイヤの上に置かれた。箔の端部は、ワイヤの周りに4回巻き付けられ、マスキングテープで固定するためにテープ固定される。巻付け機が作動されて、第1のEFEP層の遠位端を約1cm過ぎたところまで箔で包まれたワイヤは、コアワイヤの酸化物除去区域でコアワイヤと箔との間を確実に接触させる。一滴のロックタイト接着剤は、ワイヤに箔を固定するために箔の下のワイヤ上に直接に置かれた。過剰な箔が可能な限りワイヤの近くで手で切除された。
【0052】
EFEPの第2の絶縁層が、次の設定でテープ巻付け機に適用された。マンドレル速度が逆方向で2000回転に設定された。巻付け角度は53°に設定されて、マンドレルの張力は20.7kPa(3psi)に設定され、送出し張力が0kPa(0psi)に設定され、横送り方向が右から左へ設定された。EFEPテープは、テープ巻付け機に装填され、箔層の近位端の遠位約5mmのワイヤの上に置かれた。テープは、ワイヤの周囲に4回巻き付けられて、第1のEFEP層と同じように固定及び切除された。テープ巻付け機が作動されて、ワイヤが箔層の端を約5cm過ぎるまでテープで包まれた。次に、テープが第1のテープ層と同じように固定及び切除されて、巻付け機から取り外されて、165℃に設定されたオーブン内で3分間焼成された。
【0053】
オーブンから取り出された後、ワイヤの包まれていない遠位端は手で真っ直ぐにされて、ワイヤ組立体の遠位端がハイポチューブの遠位端を越えて突出するまで、ハイポチューブの近位(未カット)端の中に挿入された。ワイヤ組立体の近位端は、作業面上に固定された。ワイヤの遠位端は、ワイヤを真っ直ぐにするために手で引っ張られた。ハイポチューブは、箔がハイポチューブの遠位端で露出するまで、近位にワイヤの上に手で位置決めされた。
【0054】
ワイヤの遠位端は、箔の遠位端から約5mmで、手で切除された。収縮チューブの1cmの部分が、収縮チューブで箔部を覆うことになるコアワイヤの切断端の上の位置に位置決めされた。次に、収縮チューブは、収縮チューブの遠位端部を溶かすために加熱された。過剰な収縮チューブが、ワイヤを超えた約1mmの点で手によって切除された。収縮チューブの端部が再加熱された。
【0055】
白金コイルの5mmの部分が、切断されて、箔と白金コイルとの間の2〜3mmのスペースを残してワイヤ組立体の遠位端上に配置された。接着剤の小滴が、ワイヤ上に置かれ、コイルが、コアワイヤ上を箔部分まで移動させられた。白金コイルは改良された放射線不透過性を装置に提供する。
【0056】
過剰な接着剤が手で除去された。ハイポチューブとワイヤの近位端は手で保持されて、ワイヤが2〜3ミリメートルだけ引っ張られた。ハイポチューブは、どんな圧縮も取り除くように手で緩められ、白金コイルが、ハイポチューブの内側に配置されたが手で軽く押された。ワイヤは、遠位端がハイポチューブの約1mm内側になるまで引っ張られた。ハイポチューブの螺旋未カット部の約1mmが、ワイヤの形状領域の遠位約2〜3mmであることを確実にするように注意が払われた。
【0057】
組立体の遠位端が圧着コレット内に挿入され、約0.5mmの未カットハイポチューブがコレットの外側に残った。コレットは手で締められた。15mmのレンチが、コレットを1/4回転締めるために使用された。ハイポチューブの遠位先端の1mmが、手動で圧着され、15mmのレンチが、コレットを1/8回転締めるために使用された。組立体がコレットから取り外された。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)近位端と遠位端と形状設定部とを有する、長手方向に延びるワイヤ;
(b)前記ワイヤに平行に延びる少なくとも1つの導電路;
(c)前記ワイヤの前記形状設定部に対する遠位の点で前記ワイヤを前記導電路に接続する電気コネクタ;及び
(d)前記ワイヤと前記導電路と前記電気コネクタとを包容するハイポチューブ;を具備する血管系装置。
【請求項2】
前記ワイヤは、電流により該ワイヤが発熱すると前記形状設定部の形状を変化させる二相性材料を含む、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項3】
前記ワイヤはニチノールを含む、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項4】
前記導電路が:
(i)少なくとも部分的にワイヤを取り囲むと共に前記形状設定部に対する遠位の点まで延びる第1の絶縁層と;
(ii)前記第1の絶縁層に対する遠位の点まで、前記第1の絶縁層の外表面の少なくとも一部に沿って延びて、前記形状設定部に対する遠位のワイヤに接触する導電部材と;を具備する、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項5】
前記第1の絶縁層が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合材を含む、請求項4に記載の血管系装置。
【請求項6】
前記ePTFE複合材は、絹とエチレンフッ素化エチレンプロピレンを含む、請求項5に記載の血管系装置。
【請求項7】
前記導電部材が、前記ワイヤより低抵抗で電流を流すことのできるフィルム又は箔を含む薄い金属を含む、請求項4に記載の血管系装置。
【請求項8】
前記導電部材が、アルミ化/ポリエステル(PET)フィルム又は箔を含む、請求項7に記載の血管系装置。
【請求項9】
前記導電部材の少なくとも一部を覆う第2の絶縁層であって、前記導電部材に対する遠位の点まで延びて前記ワイヤと接触する第2の絶縁層をさらに具備する、請求項4に記載の血管系装置。
【請求項10】
前記第1の絶縁層は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合材を含む、請求項9に記載の血管系装置。
【請求項11】
前記ePTFE複合材は、絹とエチレンフッ素化エチレンプロピレンとを含む、請求項10に記載の血管系装置。
【請求項12】
前記ハイポチューブの一部分が柔軟性のためにカットされている、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項13】
前記ハイポチューブは、前記ワイヤの形状設定部に対する遠位の未カットチューブの区域を含む、請求項12に記載の血管系装置。
【請求項14】
前記ワイヤの形状設定部に対する遠位の点で、圧縮によって前記導電路を前記ワイヤに電気的に接続するために、クリンプが前記未カット区域に設けられる、請求項13に記載の血管系装置。
【請求項15】
前記ワイヤの形状設定部は、該ワイヤが発熱すると、コイルを形成する、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項16】
前記コイルは、凝血塊に係合して血管から凝血塊を除去するのに十分な幾何形状と機械的な属性を有する、請求項15に記載の血管系装置。
【請求項17】
前記コイルは、血栓塞栓を濾過及び捕捉して血管から除去するのに十分な幾何形状と機械的な属性を有する、請求項15に記載の血管系装置。
【請求項18】
前記コイルは、凝血塊及び血栓塞栓以外の異物を除去するのに十分な幾何形状と機械的な属性を有する、請求項15に記載の血管系装置。
【請求項19】
前記ワイヤをとおして電流を導くための手段をさらに具備する、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項20】
請求項1に記載の血管系装置を具備する機械的血栓除去術装置であって、前記ワイヤの形状設定部が、凝血塊に係合して血管から前記凝血塊を除去する幾何形状及び機械的属性を有するコイルを、前記ワイヤが発熱すると、形成する、機械的血栓除去術装置。
【請求項21】
血管から凝血塊を除去する方法であって:
大きな導入カテーテルを適切な脈管内に挿入する段階と;
医師に好まれる小さなマイクロカテーテルを前記導入カテーテルを介して脈管内に導入する段階と;
前記マイクロカテーテルを閉塞された脈管へ前進させる段階と;
小断面構造形にある請求項20の血栓除去術装置を、医師に好まれるマイクロカテーテルを介して、凝血塊のサイトへ前進させる段階と;
小断面構造形にある前記血栓除去術装置を、該機械的血栓除去術装置のワイヤの形状設定部が凝血塊のサイトに位置する点まで、凝血塊を貫通してさらに前進させる段階と;
前記血栓除去術装置が展開構造形を呈するように、前記血栓除去術装置のワイヤをとおして電流を流す段階と;
血栓除去術装置の取出し時に凝血塊が血管から除去されるように、血栓除去術装置内に凝血塊を捕捉する段階と;を含む血管から凝血塊を除去する方法。
【請求項22】
請求項1の血栓除去術装置を具備する操縦ワイヤ又はガイドワイヤ。
【請求項1】
(a)近位端と遠位端と形状設定部とを有する、長手方向に延びるワイヤ;
(b)前記ワイヤに平行に延びる少なくとも1つの導電路;
(c)前記ワイヤの前記形状設定部に対する遠位の点で前記ワイヤを前記導電路に接続する電気コネクタ;及び
(d)前記ワイヤと前記導電路と前記電気コネクタとを包容するハイポチューブ;を具備する血管系装置。
【請求項2】
前記ワイヤは、電流により該ワイヤが発熱すると前記形状設定部の形状を変化させる二相性材料を含む、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項3】
前記ワイヤはニチノールを含む、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項4】
前記導電路が:
(i)少なくとも部分的にワイヤを取り囲むと共に前記形状設定部に対する遠位の点まで延びる第1の絶縁層と;
(ii)前記第1の絶縁層に対する遠位の点まで、前記第1の絶縁層の外表面の少なくとも一部に沿って延びて、前記形状設定部に対する遠位のワイヤに接触する導電部材と;を具備する、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項5】
前記第1の絶縁層が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合材を含む、請求項4に記載の血管系装置。
【請求項6】
前記ePTFE複合材は、絹とエチレンフッ素化エチレンプロピレンを含む、請求項5に記載の血管系装置。
【請求項7】
前記導電部材が、前記ワイヤより低抵抗で電流を流すことのできるフィルム又は箔を含む薄い金属を含む、請求項4に記載の血管系装置。
【請求項8】
前記導電部材が、アルミ化/ポリエステル(PET)フィルム又は箔を含む、請求項7に記載の血管系装置。
【請求項9】
前記導電部材の少なくとも一部を覆う第2の絶縁層であって、前記導電部材に対する遠位の点まで延びて前記ワイヤと接触する第2の絶縁層をさらに具備する、請求項4に記載の血管系装置。
【請求項10】
前記第1の絶縁層は、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)複合材を含む、請求項9に記載の血管系装置。
【請求項11】
前記ePTFE複合材は、絹とエチレンフッ素化エチレンプロピレンとを含む、請求項10に記載の血管系装置。
【請求項12】
前記ハイポチューブの一部分が柔軟性のためにカットされている、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項13】
前記ハイポチューブは、前記ワイヤの形状設定部に対する遠位の未カットチューブの区域を含む、請求項12に記載の血管系装置。
【請求項14】
前記ワイヤの形状設定部に対する遠位の点で、圧縮によって前記導電路を前記ワイヤに電気的に接続するために、クリンプが前記未カット区域に設けられる、請求項13に記載の血管系装置。
【請求項15】
前記ワイヤの形状設定部は、該ワイヤが発熱すると、コイルを形成する、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項16】
前記コイルは、凝血塊に係合して血管から凝血塊を除去するのに十分な幾何形状と機械的な属性を有する、請求項15に記載の血管系装置。
【請求項17】
前記コイルは、血栓塞栓を濾過及び捕捉して血管から除去するのに十分な幾何形状と機械的な属性を有する、請求項15に記載の血管系装置。
【請求項18】
前記コイルは、凝血塊及び血栓塞栓以外の異物を除去するのに十分な幾何形状と機械的な属性を有する、請求項15に記載の血管系装置。
【請求項19】
前記ワイヤをとおして電流を導くための手段をさらに具備する、請求項1に記載の血管系装置。
【請求項20】
請求項1に記載の血管系装置を具備する機械的血栓除去術装置であって、前記ワイヤの形状設定部が、凝血塊に係合して血管から前記凝血塊を除去する幾何形状及び機械的属性を有するコイルを、前記ワイヤが発熱すると、形成する、機械的血栓除去術装置。
【請求項21】
血管から凝血塊を除去する方法であって:
大きな導入カテーテルを適切な脈管内に挿入する段階と;
医師に好まれる小さなマイクロカテーテルを前記導入カテーテルを介して脈管内に導入する段階と;
前記マイクロカテーテルを閉塞された脈管へ前進させる段階と;
小断面構造形にある請求項20の血栓除去術装置を、医師に好まれるマイクロカテーテルを介して、凝血塊のサイトへ前進させる段階と;
小断面構造形にある前記血栓除去術装置を、該機械的血栓除去術装置のワイヤの形状設定部が凝血塊のサイトに位置する点まで、凝血塊を貫通してさらに前進させる段階と;
前記血栓除去術装置が展開構造形を呈するように、前記血栓除去術装置のワイヤをとおして電流を流す段階と;
血栓除去術装置の取出し時に凝血塊が血管から除去されるように、血栓除去術装置内に凝血塊を捕捉する段階と;を含む血管から凝血塊を除去する方法。
【請求項22】
請求項1の血栓除去術装置を具備する操縦ワイヤ又はガイドワイヤ。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公表番号】特表2013−512072(P2013−512072A)
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542074(P2012−542074)
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/057202
【国際公開番号】WO2011/068688
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際出願番号】PCT/US2010/057202
【国際公開番号】WO2011/068688
【国際公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
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