血管障害や高血圧症の治療・予防剤、及びそのスクリーニング方法
本発明は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みに関与している輸送系を明らかにし、当該輸送系に関与する薬物を用いた新たな血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防、処置剤を提供する。また、本発明は、これらの輸送系を利用した血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防、処置剤のための新たなスクリーニング系を提供する。 本発明は、尿酸トランスポーターURAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物に関する。また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量、細胞の増殖能、又は細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物に関する。また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量、細胞の増殖能、及び/又は細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高尿酸血症(血清中の尿酸濃度の上昇)は、高血圧症や腎疾患や心臓血管障害などと深く関連していると考えられていた。尿酸値が高い人は心臓血管に対するよく知られている危険因子を有していたので、このような付帯徴候において両者に関連性があると考えられていた。高血圧症や腎疾患や心臓血管障害に対する危険因子が尿酸と関連していることを明らかにするために、他の危険因子を対照とした多変量解析などの疫学的研究が行われてきた。
本発明者らは、オキソ酸(oxonic acid)などのウリカーゼ阻害剤を投与することによりラットに温和な高尿酸血症を発症させるモデルを開発してきた。興味深いことに、これらの高尿酸血症モデルラットは、高血圧、糸球体血管障害、及び腎障害を発症する(非特許文献1〜6参照)。このメカニズムとしては、腎内部での結晶の析出が介在しているのではなく、むしろレニンアンジオテンシン系の活性化や緻密斑(遠位尿細管上皮にある密に集合して、濃厚に染色される細胞群で、傍糸球体細胞に直接接する。)の一酸化窒素合成酵素の阻害が関連していると考えられた(非特許文献1〜2参照)。そして、本発明者らは、この血管障害が血圧とは独立して起こることを報告してきた(非特許文献2参照)。
【0003】
高尿酸血症が血圧とは独立して血管障害を引き起こすことから、血管平滑筋の細胞(VSMC)における尿酸の作用が検討されてきた。レオらは、尿酸が血小板由来増殖因子(PDGF)のA鎖の発現を促進し、ラットのVSMCの細胞増殖を促進することを報告してきた(非特許文献7参照)。本発明者らは、さらにこの経路が、特異的なマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPキナーゼ)(ERK)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)、PDGFのA鎖及びB鎖、並びにPDGF−α受容体mRNAの発現の活性化を包含していることを同定してきた(非特許文献2〜4参照)。さらに、本発明者らは、尿酸がVSMCにおいて単球走化性因子(MCP−1)の発現を促進すること、及び高尿酸血症が血管平滑筋を刺激して細胞増殖を促すこと、さらに炎症性サイトカインの産生を引き起こすことを明らかにした(非特許文献8参照)。
【0004】
ここに大きな問題が生じた。それは、尿酸がどのようにしてVSMCに入り込み、このような現象を引き起こすかということである。尿酸の受容体は今まで知られていない。そして、尿酸は水溶性物質であるために、細胞膜を通過して平滑筋細胞の中に入るためには、何らかの輸送担体の関与が不可欠である。
腎臓の細胞における研究により、尿酸トランスポーターは、有機アニオントランスポーター/エクスチェンジャー(OATファミリー)及び電位感受性チャンネルの両者を含むようなものであることが示されてきた(非特許文献9〜11参照)。OATファミリーのいくつかのもの、特にOAT1及びOAT3(基底外側の膜を経由する)並びにURAT1(管腔の膜を経由する)が、腎臓の細胞において尿酸塩の取り込みに介在していることが明らかにされてきた(非特許文献12〜15参照)。電位感受性チャンネル/トランスポーターのメカニズムも示され、推定されるトランスポーター(UAT)も同定された(非特許文献16〜18参照)。しかし、ラットのVSMCにおいて、これらのチャンネル/トランスポーターのどれが発現し、これらが機能しているのかどうかということについては、全く研究されていなかった。VSMCにおいて、どのような物質が尿酸の輸送担体として機能しているのかということは知られていなかった。
【0005】
また、本発明者らは、ヒト腎臓細胞のmRNAを用いた3’−RACE法により、新規クローン(URT1)を同定してきている。この尿酸トランスポーターURT1(urate transporter1)は、尿酸およびその類似物質を細胞膜を介して一方より他方に輸送する能力を有し、さらに細胞膜の他方の陰イオンを交換基質とする交換輸送体(urate/anion exchanger)であった(特許文献1参照)。
【0006】
本願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがあり、これは参照して本明細書中に取り込まれる。
【特許文献1】特開2003−93067号
【非特許文献1】Mazzali M,Hughes J,et al.,Hypertension,2001;38,1101−1106
【非特許文献2】Mazzali M,Kanellis J,et al.,Am.J.Physiol.Renal Physiol.,2002;282,F991−997
【非特許文献3】Watanabe S,Kang DH,et al.,Hypertension,2002;40,355−360
【非特許文献4】Kang DH,Nakagawa T,et al.,J.Am.Soc..Nephrol.,2002;13,2888−2897
【非特許文献5】Nakagawa T,Mazzali M,et al.,Am.J.Nephrol.,2003;23,2−7
【非特許文献6】Sanchez−Lozada LG,Tapia E,et al.,Am.J.Physiol.Renal Physiol.,2002;283,F1105−F1110
【非特許文献7】Rao GN,Corson MA,et al.,J.Biol.Chem.,1991;266,8604−8608
【非特許文献8】Kanellis J,Watanabe S,et al.,Hypertension,2003;41,1287−1293
【非特許文献9】Roch−Ramel F,Guisan B,et al.,J.Pharm.Exp.Ther.,1997;280,839−845
【非特許文献10】Roch−Ramel F,Werner D,et al.,Am.J.Physiol.Renal Physiol.,1994;266,F797−F805.
【非特許文献11】Knorr BA,Beck JC,et al.,Kidney Int.,1994;45,727−736
【非特許文献12】Sekine T,Cha SH,et al.,Eur.J.Physiol.,2000;440,337−350
【非特許文献13】Cha SH,Sekine T,et al.,Mol.Pharmacol.,2001;59,1277−1286
【非特許文献14】Kimura H,Chairoungdua A,et al.,Nature,2002;417,447−452
【非特許文献15】Motohashi H,Sakurai Y,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,2002;13,866−874
【非特許文献16】Leal−Pinto E,Cohen BE,et al.,J.Membrane.Biol.,1999;169,13−27
【非特許文献17】Leal−Pinto E,Tao W,et al.,J.Biol.Chem.,1997;272,617−625
【非特許文献18】Lipkowitz MS,Leal−Pinto E,et al.,J.Clin.Invest.,2001;107,1103−1115
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みのメカニズムを解明し、尿酸の取り込みに関与している輸送系を明らかにすると共に、当該輸送系に関与する薬物を用いた新たな血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防、処置剤を提供することを目的としている。また、本発明は、これらの輸送系を利用した血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防、処置剤のための新たなスクリーニング系を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来まで腎臓のみに発現していると考えられていた尿酸トランスポーターURAT1が、血管平滑筋細胞にも発現していることをRNAレベル、およびタンパクレベルの両方において実験的に証明した。血液中の尿酸が平滑筋細胞へと移動する際、URAT1が同部における尿酸の輸送担体として重要な役割を果しており、すなわち、腎臓近位尿細管の管腔側に存在し、尿酸の再吸収を行うことにより血中尿酸レベルを制御するというこれまでの働きに加え、URAT1は血管平滑筋細胞においても存在し、血中から平滑筋細胞への尿酸の移動に関与していることが明らかとなり、この作用を通して高尿酸血症における高血圧や血管病変の病態形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。このことは、血管障害や高血圧症や腎障害、より詳細には高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症や腎障害の治療や予防・処置に、URAT1の阻害剤やブロッカーなどのURAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物が有効であることを明らかにした。また、これらの高尿酸血症による血管病変の形成が、URAT1を介して行われることが明らかにされたことから、URAT1の遺伝子安定発現細胞系を用いることにより目標とする新しい抗高血圧薬や血管変性阻害による血管保護作用を有する新薬の開発が可能となる。
【0009】
本発明は、URAT1の阻害剤やブロッカーなどのURAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害、より詳細には高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物に関する。
また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系などのURAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系などのURAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の増殖能を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
さらに、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系などのURAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
【0010】
本発明者らは、まず血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸塩の取り込みを検討した。
血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸塩の取り込みを、分極又は非分極条件下で試験した。VSMCにおける20μMの14C−尿酸塩の取り込み量を、分極条件(HEPES−生理食塩水溶液)、又は非分極条件(100mM KCl取り込み溶液)のそれぞれの取り込み溶液において、120分間測定した。14C−尿酸塩の取り込み量は、各時間(分)毎に測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差で示す。その結果を図1に示す。図1の縦軸は14C−尿酸塩の取り込み量(CPM)を示し、横軸は時間(分)を示す。図1中の白四角印(□)は非分極条件の場合を示し、黒菱形印(◆)は分極条件の場合を示す。図1中のアスタリスク(*)は有意差(p<0.05)があることを示す。この結果、尿酸塩はラットVSMCに急速に取り込まれ、非分極条件では約15分で安定状態に達し、分極条件では約30分で安定状態に達することがわかる。また、全ての点で、非分極条件のほうが取り込み量が多いことが分かる。この結果は、VSMCが導電的な経路で尿酸塩を取り込んでいることを示している。
【0011】
さらに、生理学的条件(分極条件)での尿酸塩の取り込みのメカニズムを検討した。まず、14C−尿酸塩の取り込みが、寒冷尿酸塩と競争するかどうかを検討した。20μMの14C−尿酸塩を含有し、寒冷尿酸塩を含有しない場合、0.1、1、5、10、及び50mg/dLの寒冷尿酸塩を含有する場合の、それぞれの取り込み溶液における、37℃で5分間の14C−尿酸塩の取り込み量を測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差で示す。この結果を図2に示す。図2はラットVSMCにおける14C−尿酸塩の取り込みにおける、寒冷尿酸塩との競合を試験した結果を示す。図2の縦軸は、寒冷尿酸塩が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。横軸は寒冷尿酸塩の濃度(mg/dL)を示す。図2中のアスタリスク(*)は有意差(p<0.05)があることを示す。この結果、寒冷尿酸塩の濃度が上昇するに応じて、5分間での14C−尿酸塩の取り込みが、効果的に競合していることがわかった。これは、VSMCにおける尿酸塩の取り込みが、少なくとも部分的に、輸送システムによって行なわれていることを示している。
尿酸に対する特定の受容体は知られていない。したがって、尿酸の取り込みは何らかのトランスポーターを介して行われていると考えられる。尿酸のトランスポーターは、腎臓において何種類か存在していることが、既に報告されている。それらは、電位感受性の経路、及び有機アニオンの交換のにより介在されていることも報告されている(非特許文献9〜11参照)。この取り込みが非分極細胞により多くなることから(図1参照)、電位感受性トランスポーターの存在が示されている。
【0012】
尿細管上皮細胞における尿酸塩の取り込みには、有機アニオン輸送システムを経由する輸送が介在していることが証明されている。例えば、管腔の膜におけるURAT1の介在(非特許文献13参照)や、基底外側の膜におけるOAT1及びOAT3の介在(非特許文献14参照)が報告されている。これらのタンパク質を経由する輸送は、プロベネシドやベンズブロマロンにより阻害することができる。
【0013】
有機アニオントランスポーターの存在を確認するために、ラットVSMCにおける14C−尿酸塩の取り込みが、トランスポーターによる尿酸塩の取り込みの阻害剤であるプロベネシドやベンズブロマロンにより、その濃度依存的に阻害されるかどうかを試験した。20μMの14C−尿酸塩を含有し、阻害剤を含有しない場合、0.1、0.5、及び1mMのプロベネシドを含有する場合、又は0.5、1、及び10μMのベンズブロマロンを含有する場合の、それぞれの取り込み溶液における、37℃で5分間の14C−尿酸塩の取り込み量を測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差で示す。その結果を図3及び図4にそれぞれ示す。図3はプロベネシドによる14C−尿酸塩の取り込みの阻害を示し、図4はベンズブロマロンによる14C−尿酸塩の取り込みの阻害を示す。図3及び図4の縦軸は、プロベネシド(図3)又はベンズブロマロン(図4)が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。図3の横軸はプロベネシドの濃度(mM)を示し、図4の横軸はベンズブロマロンの濃度(μM)を示す。図3及び図4中のアスタリスク(*)は有意差(p<0.05)があることを示す。
【0014】
さらに、パラ−アミノ馬尿酸塩(PAH)や乳酸塩などの有機アニオンの存在が、14C−尿酸塩の取り込みと競合するかどうかを試験した。20μMの14C−尿酸塩を含有し、有機アニオンを含有しない場合、100、250、及び500μMのPAHを含有する場合、又は100、250及び500μMの乳酸塩を含有する場合の、それぞれの取り込み溶液における、37℃で5分間の14C−尿酸塩の取り込み量を測定した。尿酸(UA)250μMを含有する場合も併せて測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差で示す。この結果を図5及び図6にそれぞれ示す。図5はPAHによる14C−尿酸塩の取り込みの競合を示し、図6は乳酸塩による14C−尿酸塩の取り込みの競合を示す。図5及び図6の縦軸は、PAH(図5)又は乳酸塩(図6)が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。図5の横軸はPAHの濃度(μM)を示し、図6の横軸は乳酸塩の濃度(μM)を示す。図5及び図6中のアスタリスク(*)は有意差(p<0.05)があることを示す。
これらの結果は、VSMCには、尿酸塩、乳酸塩やPAHに親和性を有する有機アニオントランスポーターが存在していることを示している。
【0015】
このように、VSMCにおける尿酸の取り込みは、有機アニオントランスポーター(OAT)ファミリーの阻害剤としてよく知られているプロベネシド又はベンズブロマロンにより濃度依存的に減少させられる。また、その取り込みはPAHの存在により阻害され、より弱くではあるが乳酸塩の存在により阻害される。したがって、VSMCにおける尿酸の輸送システムは、PAHや乳酸塩などの基質に対する親和性を有するものであると考えられる。タンパク質の細胞のようにVSMCもまた、細胞外の液体に関しては電気陰性である。この膜電位は、電位感受性トランスポーターにおける尿酸の移動に好都合である。しかし、尿酸の取り込みにおける実際の電気化学的な原動力の程度は、細胞内における尿酸の濃度が測定されていないのでわからない。
【0016】
次に、有機アニオンの輸送の阻害剤が、VSMCの増殖の応答を阻害するかどうかを検討した。VSMCを24時間培養したときのVSMCの増殖を、3H−チミジンの取り込み量により測定した。尿酸(UA)が存在しない場合、尿酸(UA)が3mg/dL存在する場合、尿酸(UA)3mg/dLにさらにプロベネシドが0.1、0.5、及び1mMそれぞれ存在する場合、並びに尿酸(UA)3mg/dLにさらにベンズブロマロンが0.5、1、及び10μMそれぞれ存在する場合について、それぞれ測定した。併せて、プロベネシド又はベンズブロマロンが単独で存在する場合も測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差(CPM)で示す。この結果を、図7(プロベンシドの場合)及び図8(ベンズブロマロンの場合)にそれぞれ示す。図7及び図8の縦軸は、3H−チミジンの取り込み量(CPM)を示し、横軸は尿酸及び各阻害剤の濃度を示す。図7及び図8中の2個のアスタリスク(**)はなにも存在しないとき(無刺激)の場合に対する有意差(p<0.05)があることを示し、アスタリスク(*)は尿酸3mg/dLが存在した場合に対する有意差(p<0.05)があることを示す。
図7に示されるように、尿酸(UA)はラットVSMCにおける3H−チミジンの取り込み量を増加させ、そしてこの尿酸による3H−チミジンの取り込み量の増加は、プロベネシドの存在により濃度依存的に阻害された。尿酸の非存在下における、プロベネシド単独の存在では、細胞の増殖にほとんど影響を与えなかった。同様のことは、ベンズブロマロンについても観測された(図8参照)。
【0017】
24時間培養における、有機アニオン輸送の阻害剤による細胞増殖の阻害率(%)と、5分間における尿酸の取り込みの阻害率(%)を比較した。各阻害率(%)は、阻害剤が無い場合を100%とした。同じ濃度の阻害剤を使用した場合について、両者をプロットしたグラフを作成した。阻害剤がプロベネシドの場合の結果を図9に示す。図9の縦軸はVSMCの増殖阻害率(%)を示し、横軸は尿酸の取り込み阻害率(%)を示す。この結果、両者に相関があることがわかった。その相関係数はプロベネシドの場合は、r=0.95であり(図9参照)、ベンズブロマロンの場合にはr=0.98であった。
【0018】
本発明者らは、尿酸がMCP−1の産生を誘導することを報告してきた(非特許文献8参照)。VSMCにおけるMCP−1の産生を試験した。ラットVSMCを24時間培養したときの培養上澄液に出現するMCP−1をELISAで測定した。尿酸(UA)3mg/dLが存在する場合、尿酸3mg/dLに加えてプロベネシド1mMが存在する場合、及びプロベネシドのみが存在する場合について、それぞれ測定した。この結果を図10に示す。図10の縦軸はMCP−1の量(pg/1000細胞)であり、横軸はなにも存在しない場合(No UA)、尿酸3mg/dLが存在する場合(UA)、尿酸3mg/dLに加えてプロベネシド1mMが存在する場合(UA+Prob)、及びプロベネシドのみが存在する場合(Prob)を、それぞれ示す。図10中の2個のアスタリスク(**)は、コントロールに対する有意差(p<0.05)があることを示す。この結果、尿酸によるMCP−1産生の増加は、阻害剤プロベネシドにより阻害されるが、阻害剤プロベネシド単独ではMCP−1産生を阻害しないことがわかる。
これらの結果から、VSMCにおける有機アニオン輸送システムを阻害することにより、尿酸により誘導される増殖やMCP−1の産生をブロックすることができることが示された。プロベネシドやベンズブロマロンなどの阻害剤は、単独で腎臓において尿酸排出剤として作用すると考えられていることから、これらの結果は注目される。しかし、これらの阻害剤は、VSMCにおいては、尿酸の直接的な作用のブロッカーとなるという、興味深い可能性が示されたことになる。
【0019】
次に、RT−PCR法により、VSMCにどのような有機アニオントランスポーターが存在しているのかを検討した。ラットのVSMCの全RNAを用いて、ラットの有機アニオントランスポーター−1(OAT1)、有機アニオントランスポーター−2(OAT2)、有機アニオントランスポーター−3(OAT3)、及び尿酸アニオントランスポーター−1(URAT−1)のラットのホモローグ(RST1)の部分配列をプライマーとして、RT−PCRを行った。陽性コントロールとして、ラット腎臓及び肝臓細胞を用いた。RT−PCR産物をエチジウムブロマイド染色した結果を図11のA〜Dに、図面に代わる写真で示す。図11のAはOAT1の場合の434bpのPCR産物を示し、図11のBはOAT2の場合の462bpのPCR産物を示し、図11のCはOAT3の場合の483bpのPCR産物を示し、図11のDはRST1の場合の460bpのPCR産物を示す。各図面の左端のレーンは、100bpのラダー(インビトロジェン社製)を示し、その右側は順に、腎臓(kidney)、肝臓(liver)、及びVSMCをそれぞれ示す。
図11のAでは、腎臓のみにPCR産物が確認された。図11のBでは、462bpのPCR産物のバンドが腎臓と肝臓のみに確認され、加えて320bpのバンドが全てに見られるが、このバンドはブラストを用いた配列検索の結果、非特異的なものであった。図11のCでは腎臓と肝臓のみにPCR産物が確認された。図11のDでは、460bpのPCR産物のバンドが腎臓のみに確認され、加えて211bpのバンドが全てに見られるが、このバンドは配列分析の結果、非特異的なものであった。この結果、VSMCにおいては、これらのトランスポーターの発現を確認することができなかった。
【0020】
次に、電位感受性のチャンネル/トランスポーターであるUAT(ジーンバンク、アクセッション番号:NM 012977)の発現を評価するために、RNaseプロテクションアッセイを行った。結果を図12に図面に代わる写真で示す。図12の左端のレーンはプローブを示し、中の4レーンはVSMCを示し、右端のレーンは肝臓を示す。この結果、UATのmRNAがラットのVSMC及び肝臓で発現していることが示された。ハウスキーピング遺伝子L32の発現も同時に示された。なお、図12において、プローブの大きさが相違しているのは、このプローブがプローブ構築のためのポリリンカー領域を有しているためである。
【0021】
次に本発明者らは、ヒトのVSMCについて検討した。
RT−PCR(逆転写PCR)による、ヒト大動脈由来の血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸トランスポーターURAT1の検出実験を行った。この結果を図13に図面に代わる写真で示す。図13の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン−Kは腎臓のcDNAを用いなかったものを示している。また、レーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られたcDNAにおいて、PCR法によりURAT1の発現が認められた。
【0022】
また、ヒト腎臓輸入細動脈由来VSMCより得られた全RNAを用いて、同様にしてRT−PCRを行った。この結果を図14に図面に代わる写真で示す。図14の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン−Kは腎臓のcDNAを用いなかったものを示している。また、レーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られたcDNAにおいて、PCR法によりURAT1の発現が認められた。
【0023】
さらに、ヒト臍帯静脈上皮細胞(HUVEC)より得られた全RNAを用いて、同様にしてRT−PCRを行った。この結果を図15に図面に代わる写真で示す。図15の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン+EndoはHUVECから合成したcDNAを用いたものを示している。この結果、腎臓同様、HUVECから得られたcDNAにおいても、PCR法によりURAT1の発現が認められた。
【0024】
次に、ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)をホモジナイズして得られた細胞溶解液を用いて、抗URAT1抗体により、ウエスタンブロット法を行った。この結果を図16に図面に代わる写真で示す。図16のレーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。図16のGAPDHは陽性コントロールを示す。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られた細胞溶解液において、抗URAT1抗体によりURAT1タンパク質が検出された。
【0025】
これらの結果から、ラットのVSMCにおける尿酸の取り込みを介在するトランスポーターを特定することはできなかったが、ヒトのVSMCにおける尿酸の取り込みに介在するトランスポーターがURAT1であることがRT−PCRなどにより判明した。OAT1やOAT3は、近位管(近位尿細管)の基底側において尿酸の取り込みに介在していることが報告されており、URAT1は、管腔側での尿酸の取り込みにおいて重要であることが報告されている。また、高尿酸血症モデルラットは、塩感受性の高血圧症、糸球体血管障害、及び腎障害を発症することが報告されており(非特許文献1〜6参照)、今回の結果はこれらの血管障害や高血圧症、とりわけ高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症の治療や予防・処置においてURAT1の阻害剤やブロッカーが有効であることが示されたことになる。特に、プロベネシドなどの尿酸排出剤は、腎臓におけるこのような作用に加えて、VSMCにおいてはさらに他の作用を有していることが示されたことになる。
【0026】
このように、本発明は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みが尿酸トランスポーターの1種であるURAT1を介して行われていることを明らかにしたものであり、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みにより血管障害や高血圧症や腎障害が発生する、特に高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症や腎障害が血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みに起因しているという近年の研究結果に基づけば、血管障害や高血圧症や腎障害、より詳細には高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症や腎障害の治療や予防・処置にURAT1の阻害剤やブロッカーが有効であることを本発明が初めて明らかにしたのである。
【0027】
したがって、本発明は、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物を提供する。本発明の好ましい血管障害や高血圧症や腎障害としては、高尿酸血症によって誘導される疾患が挙げられるが、尿酸はプリンの最終分解産物として血中に存在しており、血中における尿酸の存在が、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みに関与することから、これに限定されるものではない。また、本発明の医薬組成物は、予防剤として使用されることから、血管保護剤としての医薬組成物を提供するものでもある。
また、本発明のURAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物としては、URAT1の拮抗剤、URAT1の阻害剤、URAT1のブロッカーなどのURAT1の尿酸の取り込み量を、これらの物質の存在により減少させることができる作用を有する物質であればよい。具体的には、例えば、プロベネシドやベンズブロマロンなどが挙げられる。
【0028】
本発明の医薬組成物は、経口投与、又は非経口投与のいずれかにより投与される。本発明の医薬組成物は、投与可能な形態に製剤化、例えば、錠剤、顆粒剤、液剤、注射剤などの公知の製剤形態に製剤化される。製剤化にあたっては、公知の医薬用添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、安定化剤などを適宜配合することができる。
本発明の医薬組成物における有効成分の有効投与量は、疾患の状態や患者の状態により適宜判断されるが、通常は尿酸排出に十分な量が投与される。例えば、1日当たり1μg/kg〜50mg/kg程度の範囲で投与することもできる。
【0029】
また、本発明は、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置を必要としている患者に、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物の有効量を投与することからなる血管障害や高血圧症や腎障害を治療、予防又は処置する方法を提供するものである。
さらに、本発明は、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物の、血管障害や高血圧症や腎障害を治療、予防又は処置するための医薬組成物を製造するための使用を提供する。
【0030】
本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法を提供する。本発明のURAT1を発現している細胞系としては、腎臓の細胞やVSMCなどの天然の細胞であってもよいが、URAT1の遺伝子を導入した当該遺伝子の安定発現細胞からなるものであってもよい。本発明のこのスクリーニング方法としては、より具体的には、例えば、URAT1を発現している細胞系の尿酸取り込み溶液中に、被検化合物を存在させたときの尿酸の取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法が挙げられる。本発明における尿酸の取り込み量の測定方法としては、例えば、放射性同位元素で標識化された尿酸、例えば、14C−尿酸を使用する方法などが挙げられる。
この方法における尿酸としては、尿酸自体でもよいが、ナトリウムなどの尿酸塩であってもよい。
【0031】
また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の増殖能を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法における、URAT1を発現している細胞系としては、尿酸又は尿酸塩により細胞が増殖するものが好ましい。本発明のこのスクリーニング方法としては、より具体的には、例えば、URAT1を発現している細胞系の尿酸取り込み溶液中に、チミジン及び被検化合物を存在させたときのチミジンの取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法が挙げられる。本発明におけるチミジンの取り込み量の測定方法としては、例えば、放射性同位元素で標識化されたチミジン、例えば、3H−チミジンを使用する方法などが挙げられる。
この方法における尿酸としては、尿酸自体でもよいが、ナトリウムなどの尿酸塩であってもよい。
【0032】
さらに、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法における、URAT1を発現している細胞系としては、尿酸又は尿酸塩により細胞がMCP−1などの単球走化性因子を産生するものが好ましい。本発明のこのスクリーニング方法としては、より具体的には、例えば、URAT1を発現している細胞系の尿酸取り込み溶液中に、被検化合物を存在させたときのMCP−1などの単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法が挙げられる。本発明におけるMCP−1などの単球走化性因子の産生量の測定方法としては、例えば、ELISA法などが挙げられる。
この方法における尿酸としては、尿酸自体でもよいが、ナトリウムなどの尿酸塩であってもよい。
【0033】
また、本発明の医薬組成物の有効成分の活性は、例えば、自然発症高血圧モデルラット(SHR)などの高血圧発症モデル動物を使用して確認することもできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みの条件、及びそのメカニズムを初めて明らかにするものである。本発明によれば、血液中の尿酸が平滑筋細胞へと移動する際、URAT1が同部における尿酸の輸送担体として重要な役割を果していることを明らかにし、URAT1が血管平滑筋細胞においても存在し、血中から平滑筋細胞への尿酸の移動に関与していることが明らかにし、この作用を通して高尿酸血症における高血圧や血管病変の病態形成に重要な役割を示していることを明らかにするものである。これにより、血管平滑筋細胞(VSMC)の尿酸に起因する作用に基づく、各種の血管障害、各種の器官、例えば腎臓、肝臓などの器官の障害、高血圧症などの疾患が、URAT1を介した尿酸の取り込みであることが明らかにされ、本発明により、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物を提供することできた。
また、本発明によれば、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系などのURAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量、細胞の増殖能、及び/又は細胞の単球走化因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングするための新たな方法が提供される。本発明の方法によれば、新しい抗高血圧薬や血管変性阻害による保護作用を有する新薬の開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸塩の取り込みを、分極又は非分極条件下で試験した結果を示すグラフである。図1の縦軸は14C−尿酸塩の取り込み量(CPM)を示し、横軸は時間(分)を示す。図1中の白四角印(□)は非分極条件の場合を示し、黒菱形印(◆)は分極条件の場合を示す。
【図2】図2は、ラットVSMCにおける14C−尿酸塩の取り込みにおける、寒冷尿酸塩との競合を試験した結果を示すグラフである。図2の縦軸は、寒冷尿酸塩が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。横軸は寒冷尿酸塩の濃度(mg/dL)を示す。
【図3】図3は、ラットVSMCにおける、プロベネシドによる14C−尿酸塩の取り込みの阻害を試験した結果を示すグラフである。図3の縦軸は、プロベネシドが存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示し、横軸はプロベネシドの濃度(mM)を示す。
【図4】図4は、ラットVSMCにおける、ベンズブロマロンによる14C−尿酸塩の取り込みの阻害を試験した結果を示すグラフである。図4の縦軸は、ベンズブロマロンが存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。図4の横軸はベンズブロマロンの濃度(μM)を示す。
【図5】図5は、ラットVSMCにおける、パラ−アミノ馬尿酸塩(PAH)による14C−尿酸塩の取り込みの競合を試験した結果を示すグラフである。図5の縦軸は、PAHが存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示し、横軸はPAHの濃度(μM)を示す。
【図6】図6は、ラットVSMCにおける、乳酸塩による14C−尿酸塩の取り込みの競合を試験した結果を示すグラフである。図6の縦軸は、乳酸塩が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示し、横軸は乳酸塩の濃度(μM)を示す。
【図7】図7は、VSMCを24時間培養したときのVSMCの増殖を、3H−チミジンの取り込み量により測定した結果を示すグラフである。図7の縦軸は、3H−チミジンの取り込み量(CPM)を示し、横軸は尿酸が存在しない場合(no UA)、尿酸が3mg/dL存在する場合(UA)、尿酸3mg/dLにさらにプロベネシドが0.1、0.5、及び1mMそれぞれ存在する場合(UA+0.1等)、並びにプロベネシドが単独で存在する場合(1)を示す。
【図8】図8は、VSMCを24時間培養したときのVSMCの増殖を、3H−チミジンの取り込み量により測定した結果を示すグラフである。図8の縦軸は、3H−チミジンの取り込み量(CPM)を示し、横軸は尿酸が存在しない場合(no UA)、尿酸が3mg/dL存在する場合(UA)、尿酸3mg/dLにさらにベンズブロマロンが0.5、1、及び10μMそれぞれ存在する場合(UA+0.5等)、並びにベンズブロマロンが単独で存在する場合(10)を示す。
【図9】図9は、24時間培養における有機アニオン輸送のプロベネシドによる細胞増殖の阻害率(%)と、5分間における尿酸の取り込みのプロベネシドによる阻害率(%)を比較した結果を示すグラフである。図9の縦軸はVSMCの増殖阻害率(%)を示し、横軸は尿酸の取り込み阻害率(%)を示す。
【図10】図10は、ラットVSMCを24時間培養したときの培養上澄液に出現するMCP−1をELISAで測定した結果を示すグラフである。図10の縦軸はMCP−1の量(pg/1000細胞)を示し、横軸はなにも存在しない場合(No UA)、尿酸3mg/dLが存在する場合(UA)、尿酸3mg/dLに加えてプロベネシド1mMが存在する場合(UA+Prob)、及びプロベネシドのみが存在する場合(Prob)を、それぞれ示す。
【図11】図11は、ラットのVSMCの全RNAを用いて、ラットの有機アニオントランスポーター−1(OAT1)、有機アニオントランスポーター−2(OAT2)、有機アニオントランスポーター−3(OAT3)、及び尿酸アニオントランスポーター−1(URAT1)の部分配列をプライマーとして、RT−PCRを行った結果のPCR産物をエチジウムブロマイド染色した結果を示す、図面に代わる写真である。陽性コントロールとして、ラット腎臓及び肝臓細胞を用いた。図11のAはOAT1の場合を示し、図11のBはOAT2の場合を示し、図11のCはOAT3の場合を示し、図11のDはURAT1の場合を、それぞれ示す。各図面の左端のレーンは、100bpのラダー(インビトロジェン社製)を示し、その右側は順に、腎臓(kidney)、肝臓(liver)、及びVSMCをそれぞれ示す。
【図12】図12は、UAT(ジーンバンク、アクセッション番号:NM 012977)の発現を評価するために、RNaseプロテクションアッセイを行った結果を示す図面に代わる写真である。図12の左端のレーンはプローブを示し、中の4レーンはVSMCを示し、右端のレーンは肝臓を示す。
【図13】図13は、RT−PCRによる、ヒト大動脈由来の血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸トランスポーターURAT−1の検出結果を示した図面に代わる写真である。
【図14】図14は、RT−PCRによる、ヒト腎臓輸入細動脈由来の平滑筋培養細胞(VSMC)における尿酸トランスポーターURAT−1の検出結果を示した図面に代わる写真である。
【図15】図15は、RT−PCRによる、ヒト臍帯静脈上皮細胞(HUVEC)における尿酸トランスポーターURAT−1の検出結果を示した図面に代わる写真である。
【図16】図16は、ウエスタンブロット法による、ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸トランスポーターURAT−1の検出結果を示した図面に代わる写真である。
【0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実験で使用した血管平滑筋細胞(VSMC)は、ラットの大動脈から調製した(Zhang S,Yang Y,et al.,Circulation.,2003;107,1539−44)。この細胞を、10%子牛胎児血清(FBS)、1%グルタミン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン;GIBCO)を含有するダルベッコの修飾をしたイーグル培地(DMEM,GIBCO)で培養した。VSMCを35mmの6穴培養プレート(NUNC)に移し、湿式培養器(humidified tissue culture incubator)中で、5%炭酸ガス−95%空気の雰囲気下で37℃で保存した。培地を2日毎に交換した。実験に用いたVSMCは、5〜12世代のものであった。
【0037】
なお、特願2003−384863明細書に記載された内容を、本明細書に全て取り込む。
【実施例1】
【0038】
14C−尿酸塩の取り込み
VSMC(4×105細胞)を、10%FBS−DMEMと共に6穴培養プレートに移した。1日後に、血清の無いDMEM培地に終夜置いて成長を停止させた。各実験中は、細胞及び全ての溶液を37℃に維持した。VSMCを、8−14C−尿酸塩(比活性は50μCi/mmol;アメリカンラディオラベルド化学社製(セントルイス、MO))と共に培養し、尿酸塩の最終濃度を20μMにし、種々の阻害剤の存在下又は非存在下で培養した。取り込みの過程としては少し早いが、培養を5分間で停止した。この結果を図3及び図4に示す。
いくつかの実験では、放射性元素で標識化した尿酸塩の取り込み実験を、冷たい尿酸塩、乳酸塩、パラ−アミノ馬尿酸塩(PAH)などの他の有機アニオンの存在下、又は有機アニオントランスポーター阻害剤(プロベネシド又はベンズブロマロン)の存在下で行った。媒体(media)を急速に吸い取ることにより、取り込みを停止させ、すぐに氷冷したPBSで3回洗浄した。急速に吸い取られた培養溶液及び前記したように洗浄された細胞の全値からブランクが差し引かれた。次いで、細胞を、1N NaOHの1mlで15分間で溶解した。細胞に蓄積された8−14C−尿酸塩の量を、BCSシンチレーション溶液(アマーシャム社製)の5ml中へ0.5mlの細胞溶解液を加えて測定した。放射能を、溶液シンチレーションカウンターで測定した。取り込み量は、全cpm/ウエル、又は対照に対する百分率(%)で示される。この結果を図2、図5、及び図6に示す。
【0039】
他の実験では、尿酸塩の取り込みが電位感受性であるかどうかを決定するために、尿酸の取り込み実験を分極化条件、又は非分極化条件で行った。実験条件は、分極化、又は分極化されていない条件において培養溶液が相違している点を除き、前記した条件と同様であった。詳細には、12時間の飢餓状態の後、血清の無い培地を取り除き、これに代えて、140mM NaCl、4mM KCl、2mM CaCl2及び1mM MgCl2、5mM グルコース、並びに16mM HEPES−トリス(pH7.4)を含有するHEPES−生理食塩水溶液(PSS)(この場合は、分極化用として)、又は44mM NaCl、100mM KCl、2mM CaCl2及び1mM MgCl2、5mM グルコース、並びに16mM HEPES−トリス(pH7.4)を含有する100mM−KCl取り込み溶液(この場合は、非分極化用として)の0.45mLを添加した。
この結果を図1に示す。
【実施例2】
【0040】
VSMCの増殖試験
VSMC(4×105細胞)を、10%FBS−DMEMと共に6穴培養プレートに移し、24時間培養した。次いで、0.5%FBS−DMEM中で48時間、細胞を飢餓状態にした。DNA合成を測定するために、静止状態のVSMCに、3H−チミジンの1μCiを含む3mg/dLの尿酸で48時間刺激した。細胞を採取する2時間前に、さらに2μCi/mLの3H−チミジンを各ウエルに添加した。細胞を氷冷したPBSで3回洗浄し、1mLの1N NaOHで溶解した。細胞に取り込まれた3H−チミジンの量を、5mLのシンチレーション溶液中へ0.5mlの細胞溶解液を加えて測定した。CPM/ウエルで示される3H−チミジンの取り込み量は、溶液シンチレーションカウンターで記録された。いくつかの実験では、種々の濃度のプロベネシド又はベンズブロマロン(有機アニオントランスポーター阻害剤)の存在下で実験を行った。この結果を図7及び図8に示す。
同様の方法で、VSMCの増殖を、有機アニオン(乳酸塩やPAH)を用いて評価した。
【実施例3】
【0041】
MCP−1タンパク質についてのELISA。
24穴プレートに細胞を取り(5×104細胞/ウエル)を、70%コンフルエンスの状態になったときに血清を取り除いた。次いで、1mMのプロベネシドの存在下、又は非存在下に、3mg/dLの尿酸を含有、又は含有していない培地を24時間加えた。上澄みのMCP−1タンパク質をELISA(OptEIA MCP−1セット、BDファーミンゲン社)で計測し、細胞数で補正した。実験は各々3回行った。この結果を、図10に示す。
【実施例4】
【0042】
RT−PCRによるOATトランスポーターの検出。
RNeasy RNA精製キット(キアゲン社、バレンシア、CA)を用いてラットのVSMCから全RNAを調製した。オリゴテックスmRNA精製システム(キアゲン社)を用いてポリ(A)+RNAを単離し、ワンステップRT反応におけるランダムプライマーを用いて逆転写した。クロンテック社(パロアルト、CA)から販売されている腎臓及び肝臓のポリ(A)+RNAを陽性コントロールとして使用した。陰性コントロール反応を、DNAによる汚染をテストするためにプライマーを添加する前に逆転写酵素の熱不活性化により行った。以下のヌクレオチドセットを用いてPCR反応を行った。
【0043】
OAT1:
784−810 5’−CTGTGCAGCCTATGCACCCAACTATAC−3’
アンチセンス鎖の1218−1190
5’−CCTTTGCTTAGAGTCAGTTCCTTCTGCAG−3’
【0044】
OAT2:
642−672
5’−CCATCAACTACATCATGTTCGTAGTCACCCG−3’
アンチセンス鎖の1105−1076
5’−GATATGTCGGAGCTGAGATGTTCGGAACAG−3’
【0045】
OAT3:
437−465 5’−GAGACACCATTGTGATAGAGTGGGACTTG−3’
アンチセンス鎖の920−889
5’−GATAGAACCAGCCAGCGTATGGACTCTGGTAC−3’
【0046】
RST1(URAT−1のマウスのホモローグ):
377−405 5’−CATCTTATGCTTATCCGGGACAAGTCCTC−3’
アンチセンス鎖の768−739
5’−GAGTCTGTTGAAGAGGGTAGAGCAGTCTAC−3’
【0047】
RT−PCR反応は、Ready−To−Go RT−PCRビーズ(アマーシャム社製)を用いて行った。最初の鎖のcDNA合成反応は、pd(N)6を用いて42℃で15分間で行われた。PCRは、95℃、5分間で最初の変性を行い、次いで95℃、30秒で変性し、55℃、30秒でアニリーングさせ、72℃、1分間で伸長させるサイクルを32サイクル行った。サンプルを4℃で保存した。このPCR産物を、1.5%のアガロースゲル上で電気泳動し、ゲル中の適当な分子量のバンドをQIAquickゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いて精製した。これらのバンドを、TOPO TAクローニングベクター(インビトロジェン社製)にサブクローンした。これらを制限酵素EcoRIで消化して評価し、ダイターミネーター法によるアプライドバイオシステムシークエンサー(ABI3730)を用いて、その配列を解析した。ポリAmRNAが完全であるかどうかを確認するために、センスプライマー:5’−ACCCCCAATGTATCCGTTGT−3’、アンチセンスプライマー:5’−TACTCCTTGGAGGCCATGTA−3’からなるプライマーの組み合わせを用いてGADPH−mRNA法により試験した。この結果を図11に示す。
【実施例5】
【0048】
RNaseプロテクションアッセイ(RPA)。
RNaseプロテクションアッセイ(RPA)を、RPAsIキット(トレイピネスバイオラボ社、ヒューストン、TX)を用いて、2〜4μgのRNAについて行った。ラットUAT(ジーンバンク、アクセッション番号:NM 012977)の5’末端から325番目までの325bp塩基からなるヌクレオチドを、pcDNA−UAT−EGFPにサブクローンした。このプラスミドをBamHI及びEcoRIで消化し、これをプラスミドpBluescriptにライゲートし、このプラスミドをpBS−UAT−325と命名した。このプラスミドをBamHIで消化して鎖状にし、α−32P[UTP]の存在下でT7RNAポリメラーゼを用いてリボプローブ(RNAプローブ)を合成した。
この結果を図12に示す。
【実施例6】
【0049】
ヒト大動脈由来の血管平滑筋細胞(VSMC)より得られた全RNAを逆転写してcDNAを合成した。そのcDNAを用いて、尿酸トランスポーターURAT−1の部分配列をプライマーとして用いてPCRを行った。
結果を図13に示す。図13の、左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン−Kは腎臓のcDNAを用いなかったものを示している。また、レーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られたcDNAにおいて、PCR法によりURAT−1の発現が認められた。
【実施例7】
【0050】
ヒト腎臓輸入細動脈由来VSMCより得られた全RNAを用いて、実施例6と同様にしてPCRを行った。
結果を図14に示す。図14の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン−Kは腎臓のcDNAを用いなかったものを示している。また、レーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られたcDNAにおいて、PCR法によりURAT−1の発現が認められた。
【実施例8】
【0051】
ヒト臍帯静脈上皮細胞(HUVEC)より得られた全RNAを用いて、実施例6と同様にしてPCRを行った。
結果を図15に示す。図15の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン+EndoはHUVECから合成したcDNAを用いたものを示している。腎臓同様、HUVECから得られたcDNAにおいても、PCR法によりURAT−1の発現が認められた。
【実施例9】
【0052】
ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)をホモジナイズして得られた細胞溶解液を用いて、抗URAT−1抗体により、ウエスタンブロット法を行った。陽性コントロールとしてGAPDHを用いた。
結果を図16に示す。図16のレーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。図16のGAPDHは陽性コントロールを示す。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られた細胞溶解液において、抗URAT−1抗体によりURAT−1タンパクが検出された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、尿酸に起因する各種の血管障害や高血圧症に対する新たな治療、予防、処置のための医薬組成物を提供するものであり、新たな医薬組成物を提供するものとして産業上の利用性を有するものである。また、本発明は、尿酸トランスポーターの1種であるURAT1の機能に着目した新たな治療、予防、処置のための医薬組成物のための有効成分をスクリーニングする方法を提供するものであり、本発明の方法により、新しい抗高血圧薬や血管変性阻害による保護作用を有する新薬の開発が可能となり、産業上の利用性をゆうするものである。
【配列表フリーテキスト】
【0054】
配列番号1は、OAT1検出用のフォーワードプライマーである。
配列番号2は、OAT1検出用のリバースプライマーである。
配列番号3は、OAT2検出用のフォーワードプライマーである。
配列番号4は、OAT2検出用のリバースプライマーである。
配列番号5は、OAT3検出用のフォーワードプライマーである。
配列番号6は、OAT3検出用のリバースプライマーである。
配列番号7は、RST1検出用のフォーワードプライマーである。
配列番号8は、RST1検出用のリバースプライマーである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物に関する。また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量、細胞の増殖能、及び/又は細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高尿酸血症(血清中の尿酸濃度の上昇)は、高血圧症や腎疾患や心臓血管障害などと深く関連していると考えられていた。尿酸値が高い人は心臓血管に対するよく知られている危険因子を有していたので、このような付帯徴候において両者に関連性があると考えられていた。高血圧症や腎疾患や心臓血管障害に対する危険因子が尿酸と関連していることを明らかにするために、他の危険因子を対照とした多変量解析などの疫学的研究が行われてきた。
本発明者らは、オキソ酸(oxonic acid)などのウリカーゼ阻害剤を投与することによりラットに温和な高尿酸血症を発症させるモデルを開発してきた。興味深いことに、これらの高尿酸血症モデルラットは、高血圧、糸球体血管障害、及び腎障害を発症する(非特許文献1〜6参照)。このメカニズムとしては、腎内部での結晶の析出が介在しているのではなく、むしろレニンアンジオテンシン系の活性化や緻密斑(遠位尿細管上皮にある密に集合して、濃厚に染色される細胞群で、傍糸球体細胞に直接接する。)の一酸化窒素合成酵素の阻害が関連していると考えられた(非特許文献1〜2参照)。そして、本発明者らは、この血管障害が血圧とは独立して起こることを報告してきた(非特許文献2参照)。
【0003】
高尿酸血症が血圧とは独立して血管障害を引き起こすことから、血管平滑筋の細胞(VSMC)における尿酸の作用が検討されてきた。レオらは、尿酸が血小板由来増殖因子(PDGF)のA鎖の発現を促進し、ラットのVSMCの細胞増殖を促進することを報告してきた(非特許文献7参照)。本発明者らは、さらにこの経路が、特異的なマイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPキナーゼ)(ERK)、シクロオキシゲナーゼ−2(COX−2)、PDGFのA鎖及びB鎖、並びにPDGF−α受容体mRNAの発現の活性化を包含していることを同定してきた(非特許文献2〜4参照)。さらに、本発明者らは、尿酸がVSMCにおいて単球走化性因子(MCP−1)の発現を促進すること、及び高尿酸血症が血管平滑筋を刺激して細胞増殖を促すこと、さらに炎症性サイトカインの産生を引き起こすことを明らかにした(非特許文献8参照)。
【0004】
ここに大きな問題が生じた。それは、尿酸がどのようにしてVSMCに入り込み、このような現象を引き起こすかということである。尿酸の受容体は今まで知られていない。そして、尿酸は水溶性物質であるために、細胞膜を通過して平滑筋細胞の中に入るためには、何らかの輸送担体の関与が不可欠である。
腎臓の細胞における研究により、尿酸トランスポーターは、有機アニオントランスポーター/エクスチェンジャー(OATファミリー)及び電位感受性チャンネルの両者を含むようなものであることが示されてきた(非特許文献9〜11参照)。OATファミリーのいくつかのもの、特にOAT1及びOAT3(基底外側の膜を経由する)並びにURAT1(管腔の膜を経由する)が、腎臓の細胞において尿酸塩の取り込みに介在していることが明らかにされてきた(非特許文献12〜15参照)。電位感受性チャンネル/トランスポーターのメカニズムも示され、推定されるトランスポーター(UAT)も同定された(非特許文献16〜18参照)。しかし、ラットのVSMCにおいて、これらのチャンネル/トランスポーターのどれが発現し、これらが機能しているのかどうかということについては、全く研究されていなかった。VSMCにおいて、どのような物質が尿酸の輸送担体として機能しているのかということは知られていなかった。
【0005】
また、本発明者らは、ヒト腎臓細胞のmRNAを用いた3’−RACE法により、新規クローン(URT1)を同定してきている。この尿酸トランスポーターURT1(urate transporter1)は、尿酸およびその類似物質を細胞膜を介して一方より他方に輸送する能力を有し、さらに細胞膜の他方の陰イオンを交換基質とする交換輸送体(urate/anion exchanger)であった(特許文献1参照)。
【0006】
本願の発明に関連する先行技術文献としては次のものがあり、これは参照して本明細書中に取り込まれる。
【特許文献1】特開2003−93067号
【非特許文献1】Mazzali M,Hughes J,et al.,Hypertension,2001;38,1101−1106
【非特許文献2】Mazzali M,Kanellis J,et al.,Am.J.Physiol.Renal Physiol.,2002;282,F991−997
【非特許文献3】Watanabe S,Kang DH,et al.,Hypertension,2002;40,355−360
【非特許文献4】Kang DH,Nakagawa T,et al.,J.Am.Soc..Nephrol.,2002;13,2888−2897
【非特許文献5】Nakagawa T,Mazzali M,et al.,Am.J.Nephrol.,2003;23,2−7
【非特許文献6】Sanchez−Lozada LG,Tapia E,et al.,Am.J.Physiol.Renal Physiol.,2002;283,F1105−F1110
【非特許文献7】Rao GN,Corson MA,et al.,J.Biol.Chem.,1991;266,8604−8608
【非特許文献8】Kanellis J,Watanabe S,et al.,Hypertension,2003;41,1287−1293
【非特許文献9】Roch−Ramel F,Guisan B,et al.,J.Pharm.Exp.Ther.,1997;280,839−845
【非特許文献10】Roch−Ramel F,Werner D,et al.,Am.J.Physiol.Renal Physiol.,1994;266,F797−F805.
【非特許文献11】Knorr BA,Beck JC,et al.,Kidney Int.,1994;45,727−736
【非特許文献12】Sekine T,Cha SH,et al.,Eur.J.Physiol.,2000;440,337−350
【非特許文献13】Cha SH,Sekine T,et al.,Mol.Pharmacol.,2001;59,1277−1286
【非特許文献14】Kimura H,Chairoungdua A,et al.,Nature,2002;417,447−452
【非特許文献15】Motohashi H,Sakurai Y,et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,2002;13,866−874
【非特許文献16】Leal−Pinto E,Cohen BE,et al.,J.Membrane.Biol.,1999;169,13−27
【非特許文献17】Leal−Pinto E,Tao W,et al.,J.Biol.Chem.,1997;272,617−625
【非特許文献18】Lipkowitz MS,Leal−Pinto E,et al.,J.Clin.Invest.,2001;107,1103−1115
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みのメカニズムを解明し、尿酸の取り込みに関与している輸送系を明らかにすると共に、当該輸送系に関与する薬物を用いた新たな血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防、処置剤を提供することを目的としている。また、本発明は、これらの輸送系を利用した血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防、処置剤のための新たなスクリーニング系を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、従来まで腎臓のみに発現していると考えられていた尿酸トランスポーターURAT1が、血管平滑筋細胞にも発現していることをRNAレベル、およびタンパクレベルの両方において実験的に証明した。血液中の尿酸が平滑筋細胞へと移動する際、URAT1が同部における尿酸の輸送担体として重要な役割を果しており、すなわち、腎臓近位尿細管の管腔側に存在し、尿酸の再吸収を行うことにより血中尿酸レベルを制御するというこれまでの働きに加え、URAT1は血管平滑筋細胞においても存在し、血中から平滑筋細胞への尿酸の移動に関与していることが明らかとなり、この作用を通して高尿酸血症における高血圧や血管病変の病態形成に重要な役割を果たしていることを明らかにした。このことは、血管障害や高血圧症や腎障害、より詳細には高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症や腎障害の治療や予防・処置に、URAT1の阻害剤やブロッカーなどのURAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物が有効であることを明らかにした。また、これらの高尿酸血症による血管病変の形成が、URAT1を介して行われることが明らかにされたことから、URAT1の遺伝子安定発現細胞系を用いることにより目標とする新しい抗高血圧薬や血管変性阻害による血管保護作用を有する新薬の開発が可能となる。
【0009】
本発明は、URAT1の阻害剤やブロッカーなどのURAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害、より詳細には高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物に関する。
また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系などのURAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系などのURAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の増殖能を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
さらに、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系などのURAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法に関する。
【0010】
本発明者らは、まず血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸塩の取り込みを検討した。
血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸塩の取り込みを、分極又は非分極条件下で試験した。VSMCにおける20μMの14C−尿酸塩の取り込み量を、分極条件(HEPES−生理食塩水溶液)、又は非分極条件(100mM KCl取り込み溶液)のそれぞれの取り込み溶液において、120分間測定した。14C−尿酸塩の取り込み量は、各時間(分)毎に測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差で示す。その結果を図1に示す。図1の縦軸は14C−尿酸塩の取り込み量(CPM)を示し、横軸は時間(分)を示す。図1中の白四角印(□)は非分極条件の場合を示し、黒菱形印(◆)は分極条件の場合を示す。図1中のアスタリスク(*)は有意差(p<0.05)があることを示す。この結果、尿酸塩はラットVSMCに急速に取り込まれ、非分極条件では約15分で安定状態に達し、分極条件では約30分で安定状態に達することがわかる。また、全ての点で、非分極条件のほうが取り込み量が多いことが分かる。この結果は、VSMCが導電的な経路で尿酸塩を取り込んでいることを示している。
【0011】
さらに、生理学的条件(分極条件)での尿酸塩の取り込みのメカニズムを検討した。まず、14C−尿酸塩の取り込みが、寒冷尿酸塩と競争するかどうかを検討した。20μMの14C−尿酸塩を含有し、寒冷尿酸塩を含有しない場合、0.1、1、5、10、及び50mg/dLの寒冷尿酸塩を含有する場合の、それぞれの取り込み溶液における、37℃で5分間の14C−尿酸塩の取り込み量を測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差で示す。この結果を図2に示す。図2はラットVSMCにおける14C−尿酸塩の取り込みにおける、寒冷尿酸塩との競合を試験した結果を示す。図2の縦軸は、寒冷尿酸塩が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。横軸は寒冷尿酸塩の濃度(mg/dL)を示す。図2中のアスタリスク(*)は有意差(p<0.05)があることを示す。この結果、寒冷尿酸塩の濃度が上昇するに応じて、5分間での14C−尿酸塩の取り込みが、効果的に競合していることがわかった。これは、VSMCにおける尿酸塩の取り込みが、少なくとも部分的に、輸送システムによって行なわれていることを示している。
尿酸に対する特定の受容体は知られていない。したがって、尿酸の取り込みは何らかのトランスポーターを介して行われていると考えられる。尿酸のトランスポーターは、腎臓において何種類か存在していることが、既に報告されている。それらは、電位感受性の経路、及び有機アニオンの交換のにより介在されていることも報告されている(非特許文献9〜11参照)。この取り込みが非分極細胞により多くなることから(図1参照)、電位感受性トランスポーターの存在が示されている。
【0012】
尿細管上皮細胞における尿酸塩の取り込みには、有機アニオン輸送システムを経由する輸送が介在していることが証明されている。例えば、管腔の膜におけるURAT1の介在(非特許文献13参照)や、基底外側の膜におけるOAT1及びOAT3の介在(非特許文献14参照)が報告されている。これらのタンパク質を経由する輸送は、プロベネシドやベンズブロマロンにより阻害することができる。
【0013】
有機アニオントランスポーターの存在を確認するために、ラットVSMCにおける14C−尿酸塩の取り込みが、トランスポーターによる尿酸塩の取り込みの阻害剤であるプロベネシドやベンズブロマロンにより、その濃度依存的に阻害されるかどうかを試験した。20μMの14C−尿酸塩を含有し、阻害剤を含有しない場合、0.1、0.5、及び1mMのプロベネシドを含有する場合、又は0.5、1、及び10μMのベンズブロマロンを含有する場合の、それぞれの取り込み溶液における、37℃で5分間の14C−尿酸塩の取り込み量を測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差で示す。その結果を図3及び図4にそれぞれ示す。図3はプロベネシドによる14C−尿酸塩の取り込みの阻害を示し、図4はベンズブロマロンによる14C−尿酸塩の取り込みの阻害を示す。図3及び図4の縦軸は、プロベネシド(図3)又はベンズブロマロン(図4)が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。図3の横軸はプロベネシドの濃度(mM)を示し、図4の横軸はベンズブロマロンの濃度(μM)を示す。図3及び図4中のアスタリスク(*)は有意差(p<0.05)があることを示す。
【0014】
さらに、パラ−アミノ馬尿酸塩(PAH)や乳酸塩などの有機アニオンの存在が、14C−尿酸塩の取り込みと競合するかどうかを試験した。20μMの14C−尿酸塩を含有し、有機アニオンを含有しない場合、100、250、及び500μMのPAHを含有する場合、又は100、250及び500μMの乳酸塩を含有する場合の、それぞれの取り込み溶液における、37℃で5分間の14C−尿酸塩の取り込み量を測定した。尿酸(UA)250μMを含有する場合も併せて測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差で示す。この結果を図5及び図6にそれぞれ示す。図5はPAHによる14C−尿酸塩の取り込みの競合を示し、図6は乳酸塩による14C−尿酸塩の取り込みの競合を示す。図5及び図6の縦軸は、PAH(図5)又は乳酸塩(図6)が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。図5の横軸はPAHの濃度(μM)を示し、図6の横軸は乳酸塩の濃度(μM)を示す。図5及び図6中のアスタリスク(*)は有意差(p<0.05)があることを示す。
これらの結果は、VSMCには、尿酸塩、乳酸塩やPAHに親和性を有する有機アニオントランスポーターが存在していることを示している。
【0015】
このように、VSMCにおける尿酸の取り込みは、有機アニオントランスポーター(OAT)ファミリーの阻害剤としてよく知られているプロベネシド又はベンズブロマロンにより濃度依存的に減少させられる。また、その取り込みはPAHの存在により阻害され、より弱くではあるが乳酸塩の存在により阻害される。したがって、VSMCにおける尿酸の輸送システムは、PAHや乳酸塩などの基質に対する親和性を有するものであると考えられる。タンパク質の細胞のようにVSMCもまた、細胞外の液体に関しては電気陰性である。この膜電位は、電位感受性トランスポーターにおける尿酸の移動に好都合である。しかし、尿酸の取り込みにおける実際の電気化学的な原動力の程度は、細胞内における尿酸の濃度が測定されていないのでわからない。
【0016】
次に、有機アニオンの輸送の阻害剤が、VSMCの増殖の応答を阻害するかどうかを検討した。VSMCを24時間培養したときのVSMCの増殖を、3H−チミジンの取り込み量により測定した。尿酸(UA)が存在しない場合、尿酸(UA)が3mg/dL存在する場合、尿酸(UA)3mg/dLにさらにプロベネシドが0.1、0.5、及び1mMそれぞれ存在する場合、並びに尿酸(UA)3mg/dLにさらにベンズブロマロンが0.5、1、及び10μMそれぞれ存在する場合について、それぞれ測定した。併せて、プロベネシド又はベンズブロマロンが単独で存在する場合も測定した。測定結果は、3個のウエルの平均±標準偏差(CPM)で示す。この結果を、図7(プロベンシドの場合)及び図8(ベンズブロマロンの場合)にそれぞれ示す。図7及び図8の縦軸は、3H−チミジンの取り込み量(CPM)を示し、横軸は尿酸及び各阻害剤の濃度を示す。図7及び図8中の2個のアスタリスク(**)はなにも存在しないとき(無刺激)の場合に対する有意差(p<0.05)があることを示し、アスタリスク(*)は尿酸3mg/dLが存在した場合に対する有意差(p<0.05)があることを示す。
図7に示されるように、尿酸(UA)はラットVSMCにおける3H−チミジンの取り込み量を増加させ、そしてこの尿酸による3H−チミジンの取り込み量の増加は、プロベネシドの存在により濃度依存的に阻害された。尿酸の非存在下における、プロベネシド単独の存在では、細胞の増殖にほとんど影響を与えなかった。同様のことは、ベンズブロマロンについても観測された(図8参照)。
【0017】
24時間培養における、有機アニオン輸送の阻害剤による細胞増殖の阻害率(%)と、5分間における尿酸の取り込みの阻害率(%)を比較した。各阻害率(%)は、阻害剤が無い場合を100%とした。同じ濃度の阻害剤を使用した場合について、両者をプロットしたグラフを作成した。阻害剤がプロベネシドの場合の結果を図9に示す。図9の縦軸はVSMCの増殖阻害率(%)を示し、横軸は尿酸の取り込み阻害率(%)を示す。この結果、両者に相関があることがわかった。その相関係数はプロベネシドの場合は、r=0.95であり(図9参照)、ベンズブロマロンの場合にはr=0.98であった。
【0018】
本発明者らは、尿酸がMCP−1の産生を誘導することを報告してきた(非特許文献8参照)。VSMCにおけるMCP−1の産生を試験した。ラットVSMCを24時間培養したときの培養上澄液に出現するMCP−1をELISAで測定した。尿酸(UA)3mg/dLが存在する場合、尿酸3mg/dLに加えてプロベネシド1mMが存在する場合、及びプロベネシドのみが存在する場合について、それぞれ測定した。この結果を図10に示す。図10の縦軸はMCP−1の量(pg/1000細胞)であり、横軸はなにも存在しない場合(No UA)、尿酸3mg/dLが存在する場合(UA)、尿酸3mg/dLに加えてプロベネシド1mMが存在する場合(UA+Prob)、及びプロベネシドのみが存在する場合(Prob)を、それぞれ示す。図10中の2個のアスタリスク(**)は、コントロールに対する有意差(p<0.05)があることを示す。この結果、尿酸によるMCP−1産生の増加は、阻害剤プロベネシドにより阻害されるが、阻害剤プロベネシド単独ではMCP−1産生を阻害しないことがわかる。
これらの結果から、VSMCにおける有機アニオン輸送システムを阻害することにより、尿酸により誘導される増殖やMCP−1の産生をブロックすることができることが示された。プロベネシドやベンズブロマロンなどの阻害剤は、単独で腎臓において尿酸排出剤として作用すると考えられていることから、これらの結果は注目される。しかし、これらの阻害剤は、VSMCにおいては、尿酸の直接的な作用のブロッカーとなるという、興味深い可能性が示されたことになる。
【0019】
次に、RT−PCR法により、VSMCにどのような有機アニオントランスポーターが存在しているのかを検討した。ラットのVSMCの全RNAを用いて、ラットの有機アニオントランスポーター−1(OAT1)、有機アニオントランスポーター−2(OAT2)、有機アニオントランスポーター−3(OAT3)、及び尿酸アニオントランスポーター−1(URAT−1)のラットのホモローグ(RST1)の部分配列をプライマーとして、RT−PCRを行った。陽性コントロールとして、ラット腎臓及び肝臓細胞を用いた。RT−PCR産物をエチジウムブロマイド染色した結果を図11のA〜Dに、図面に代わる写真で示す。図11のAはOAT1の場合の434bpのPCR産物を示し、図11のBはOAT2の場合の462bpのPCR産物を示し、図11のCはOAT3の場合の483bpのPCR産物を示し、図11のDはRST1の場合の460bpのPCR産物を示す。各図面の左端のレーンは、100bpのラダー(インビトロジェン社製)を示し、その右側は順に、腎臓(kidney)、肝臓(liver)、及びVSMCをそれぞれ示す。
図11のAでは、腎臓のみにPCR産物が確認された。図11のBでは、462bpのPCR産物のバンドが腎臓と肝臓のみに確認され、加えて320bpのバンドが全てに見られるが、このバンドはブラストを用いた配列検索の結果、非特異的なものであった。図11のCでは腎臓と肝臓のみにPCR産物が確認された。図11のDでは、460bpのPCR産物のバンドが腎臓のみに確認され、加えて211bpのバンドが全てに見られるが、このバンドは配列分析の結果、非特異的なものであった。この結果、VSMCにおいては、これらのトランスポーターの発現を確認することができなかった。
【0020】
次に、電位感受性のチャンネル/トランスポーターであるUAT(ジーンバンク、アクセッション番号:NM 012977)の発現を評価するために、RNaseプロテクションアッセイを行った。結果を図12に図面に代わる写真で示す。図12の左端のレーンはプローブを示し、中の4レーンはVSMCを示し、右端のレーンは肝臓を示す。この結果、UATのmRNAがラットのVSMC及び肝臓で発現していることが示された。ハウスキーピング遺伝子L32の発現も同時に示された。なお、図12において、プローブの大きさが相違しているのは、このプローブがプローブ構築のためのポリリンカー領域を有しているためである。
【0021】
次に本発明者らは、ヒトのVSMCについて検討した。
RT−PCR(逆転写PCR)による、ヒト大動脈由来の血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸トランスポーターURAT1の検出実験を行った。この結果を図13に図面に代わる写真で示す。図13の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン−Kは腎臓のcDNAを用いなかったものを示している。また、レーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られたcDNAにおいて、PCR法によりURAT1の発現が認められた。
【0022】
また、ヒト腎臓輸入細動脈由来VSMCより得られた全RNAを用いて、同様にしてRT−PCRを行った。この結果を図14に図面に代わる写真で示す。図14の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン−Kは腎臓のcDNAを用いなかったものを示している。また、レーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られたcDNAにおいて、PCR法によりURAT1の発現が認められた。
【0023】
さらに、ヒト臍帯静脈上皮細胞(HUVEC)より得られた全RNAを用いて、同様にしてRT−PCRを行った。この結果を図15に図面に代わる写真で示す。図15の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン+EndoはHUVECから合成したcDNAを用いたものを示している。この結果、腎臓同様、HUVECから得られたcDNAにおいても、PCR法によりURAT1の発現が認められた。
【0024】
次に、ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)をホモジナイズして得られた細胞溶解液を用いて、抗URAT1抗体により、ウエスタンブロット法を行った。この結果を図16に図面に代わる写真で示す。図16のレーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。図16のGAPDHは陽性コントロールを示す。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られた細胞溶解液において、抗URAT1抗体によりURAT1タンパク質が検出された。
【0025】
これらの結果から、ラットのVSMCにおける尿酸の取り込みを介在するトランスポーターを特定することはできなかったが、ヒトのVSMCにおける尿酸の取り込みに介在するトランスポーターがURAT1であることがRT−PCRなどにより判明した。OAT1やOAT3は、近位管(近位尿細管)の基底側において尿酸の取り込みに介在していることが報告されており、URAT1は、管腔側での尿酸の取り込みにおいて重要であることが報告されている。また、高尿酸血症モデルラットは、塩感受性の高血圧症、糸球体血管障害、及び腎障害を発症することが報告されており(非特許文献1〜6参照)、今回の結果はこれらの血管障害や高血圧症、とりわけ高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症の治療や予防・処置においてURAT1の阻害剤やブロッカーが有効であることが示されたことになる。特に、プロベネシドなどの尿酸排出剤は、腎臓におけるこのような作用に加えて、VSMCにおいてはさらに他の作用を有していることが示されたことになる。
【0026】
このように、本発明は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みが尿酸トランスポーターの1種であるURAT1を介して行われていることを明らかにしたものであり、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みにより血管障害や高血圧症や腎障害が発生する、特に高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症や腎障害が血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みに起因しているという近年の研究結果に基づけば、血管障害や高血圧症や腎障害、より詳細には高尿酸血症によって誘導される血管障害や高血圧症や腎障害の治療や予防・処置にURAT1の阻害剤やブロッカーが有効であることを本発明が初めて明らかにしたのである。
【0027】
したがって、本発明は、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物を提供する。本発明の好ましい血管障害や高血圧症や腎障害としては、高尿酸血症によって誘導される疾患が挙げられるが、尿酸はプリンの最終分解産物として血中に存在しており、血中における尿酸の存在が、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みに関与することから、これに限定されるものではない。また、本発明の医薬組成物は、予防剤として使用されることから、血管保護剤としての医薬組成物を提供するものでもある。
また、本発明のURAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物としては、URAT1の拮抗剤、URAT1の阻害剤、URAT1のブロッカーなどのURAT1の尿酸の取り込み量を、これらの物質の存在により減少させることができる作用を有する物質であればよい。具体的には、例えば、プロベネシドやベンズブロマロンなどが挙げられる。
【0028】
本発明の医薬組成物は、経口投与、又は非経口投与のいずれかにより投与される。本発明の医薬組成物は、投与可能な形態に製剤化、例えば、錠剤、顆粒剤、液剤、注射剤などの公知の製剤形態に製剤化される。製剤化にあたっては、公知の医薬用添加剤、例えば、賦形剤、崩壊剤、安定化剤などを適宜配合することができる。
本発明の医薬組成物における有効成分の有効投与量は、疾患の状態や患者の状態により適宜判断されるが、通常は尿酸排出に十分な量が投与される。例えば、1日当たり1μg/kg〜50mg/kg程度の範囲で投与することもできる。
【0029】
また、本発明は、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置を必要としている患者に、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物の有効量を投与することからなる血管障害や高血圧症や腎障害を治療、予防又は処置する方法を提供するものである。
さらに、本発明は、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物の、血管障害や高血圧症や腎障害を治療、予防又は処置するための医薬組成物を製造するための使用を提供する。
【0030】
本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法を提供する。本発明のURAT1を発現している細胞系としては、腎臓の細胞やVSMCなどの天然の細胞であってもよいが、URAT1の遺伝子を導入した当該遺伝子の安定発現細胞からなるものであってもよい。本発明のこのスクリーニング方法としては、より具体的には、例えば、URAT1を発現している細胞系の尿酸取り込み溶液中に、被検化合物を存在させたときの尿酸の取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法が挙げられる。本発明における尿酸の取り込み量の測定方法としては、例えば、放射性同位元素で標識化された尿酸、例えば、14C−尿酸を使用する方法などが挙げられる。
この方法における尿酸としては、尿酸自体でもよいが、ナトリウムなどの尿酸塩であってもよい。
【0031】
また、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の増殖能を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法における、URAT1を発現している細胞系としては、尿酸又は尿酸塩により細胞が増殖するものが好ましい。本発明のこのスクリーニング方法としては、より具体的には、例えば、URAT1を発現している細胞系の尿酸取り込み溶液中に、チミジン及び被検化合物を存在させたときのチミジンの取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法が挙げられる。本発明におけるチミジンの取り込み量の測定方法としては、例えば、放射性同位元素で標識化されたチミジン、例えば、3H−チミジンを使用する方法などが挙げられる。
この方法における尿酸としては、尿酸自体でもよいが、ナトリウムなどの尿酸塩であってもよい。
【0032】
さらに、本発明は、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法を提供する。この方法における、URAT1を発現している細胞系としては、尿酸又は尿酸塩により細胞がMCP−1などの単球走化性因子を産生するものが好ましい。本発明のこのスクリーニング方法としては、より具体的には、例えば、URAT1を発現している細胞系の尿酸取り込み溶液中に、被検化合物を存在させたときのMCP−1などの単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法が挙げられる。本発明におけるMCP−1などの単球走化性因子の産生量の測定方法としては、例えば、ELISA法などが挙げられる。
この方法における尿酸としては、尿酸自体でもよいが、ナトリウムなどの尿酸塩であってもよい。
【0033】
また、本発明の医薬組成物の有効成分の活性は、例えば、自然発症高血圧モデルラット(SHR)などの高血圧発症モデル動物を使用して確認することもできる。
【発明の効果】
【0034】
本発明は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸の取り込みの条件、及びそのメカニズムを初めて明らかにするものである。本発明によれば、血液中の尿酸が平滑筋細胞へと移動する際、URAT1が同部における尿酸の輸送担体として重要な役割を果していることを明らかにし、URAT1が血管平滑筋細胞においても存在し、血中から平滑筋細胞への尿酸の移動に関与していることが明らかにし、この作用を通して高尿酸血症における高血圧や血管病変の病態形成に重要な役割を示していることを明らかにするものである。これにより、血管平滑筋細胞(VSMC)の尿酸に起因する作用に基づく、各種の血管障害、各種の器官、例えば腎臓、肝臓などの器官の障害、高血圧症などの疾患が、URAT1を介した尿酸の取り込みであることが明らかにされ、本発明により、URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物を提供することできた。
また、本発明によれば、被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系などのURAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量、細胞の増殖能、及び/又は細胞の単球走化因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングするための新たな方法が提供される。本発明の方法によれば、新しい抗高血圧薬や血管変性阻害による保護作用を有する新薬の開発が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸塩の取り込みを、分極又は非分極条件下で試験した結果を示すグラフである。図1の縦軸は14C−尿酸塩の取り込み量(CPM)を示し、横軸は時間(分)を示す。図1中の白四角印(□)は非分極条件の場合を示し、黒菱形印(◆)は分極条件の場合を示す。
【図2】図2は、ラットVSMCにおける14C−尿酸塩の取り込みにおける、寒冷尿酸塩との競合を試験した結果を示すグラフである。図2の縦軸は、寒冷尿酸塩が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。横軸は寒冷尿酸塩の濃度(mg/dL)を示す。
【図3】図3は、ラットVSMCにおける、プロベネシドによる14C−尿酸塩の取り込みの阻害を試験した結果を示すグラフである。図3の縦軸は、プロベネシドが存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示し、横軸はプロベネシドの濃度(mM)を示す。
【図4】図4は、ラットVSMCにおける、ベンズブロマロンによる14C−尿酸塩の取り込みの阻害を試験した結果を示すグラフである。図4の縦軸は、ベンズブロマロンが存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示す。図4の横軸はベンズブロマロンの濃度(μM)を示す。
【図5】図5は、ラットVSMCにおける、パラ−アミノ馬尿酸塩(PAH)による14C−尿酸塩の取り込みの競合を試験した結果を示すグラフである。図5の縦軸は、PAHが存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示し、横軸はPAHの濃度(μM)を示す。
【図6】図6は、ラットVSMCにおける、乳酸塩による14C−尿酸塩の取り込みの競合を試験した結果を示すグラフである。図6の縦軸は、乳酸塩が存在しない場合の14C−尿酸塩の取り込み量を100%としたときの、14C−尿酸塩の取り込み量の割合(%)を示し、横軸は乳酸塩の濃度(μM)を示す。
【図7】図7は、VSMCを24時間培養したときのVSMCの増殖を、3H−チミジンの取り込み量により測定した結果を示すグラフである。図7の縦軸は、3H−チミジンの取り込み量(CPM)を示し、横軸は尿酸が存在しない場合(no UA)、尿酸が3mg/dL存在する場合(UA)、尿酸3mg/dLにさらにプロベネシドが0.1、0.5、及び1mMそれぞれ存在する場合(UA+0.1等)、並びにプロベネシドが単独で存在する場合(1)を示す。
【図8】図8は、VSMCを24時間培養したときのVSMCの増殖を、3H−チミジンの取り込み量により測定した結果を示すグラフである。図8の縦軸は、3H−チミジンの取り込み量(CPM)を示し、横軸は尿酸が存在しない場合(no UA)、尿酸が3mg/dL存在する場合(UA)、尿酸3mg/dLにさらにベンズブロマロンが0.5、1、及び10μMそれぞれ存在する場合(UA+0.5等)、並びにベンズブロマロンが単独で存在する場合(10)を示す。
【図9】図9は、24時間培養における有機アニオン輸送のプロベネシドによる細胞増殖の阻害率(%)と、5分間における尿酸の取り込みのプロベネシドによる阻害率(%)を比較した結果を示すグラフである。図9の縦軸はVSMCの増殖阻害率(%)を示し、横軸は尿酸の取り込み阻害率(%)を示す。
【図10】図10は、ラットVSMCを24時間培養したときの培養上澄液に出現するMCP−1をELISAで測定した結果を示すグラフである。図10の縦軸はMCP−1の量(pg/1000細胞)を示し、横軸はなにも存在しない場合(No UA)、尿酸3mg/dLが存在する場合(UA)、尿酸3mg/dLに加えてプロベネシド1mMが存在する場合(UA+Prob)、及びプロベネシドのみが存在する場合(Prob)を、それぞれ示す。
【図11】図11は、ラットのVSMCの全RNAを用いて、ラットの有機アニオントランスポーター−1(OAT1)、有機アニオントランスポーター−2(OAT2)、有機アニオントランスポーター−3(OAT3)、及び尿酸アニオントランスポーター−1(URAT1)の部分配列をプライマーとして、RT−PCRを行った結果のPCR産物をエチジウムブロマイド染色した結果を示す、図面に代わる写真である。陽性コントロールとして、ラット腎臓及び肝臓細胞を用いた。図11のAはOAT1の場合を示し、図11のBはOAT2の場合を示し、図11のCはOAT3の場合を示し、図11のDはURAT1の場合を、それぞれ示す。各図面の左端のレーンは、100bpのラダー(インビトロジェン社製)を示し、その右側は順に、腎臓(kidney)、肝臓(liver)、及びVSMCをそれぞれ示す。
【図12】図12は、UAT(ジーンバンク、アクセッション番号:NM 012977)の発現を評価するために、RNaseプロテクションアッセイを行った結果を示す図面に代わる写真である。図12の左端のレーンはプローブを示し、中の4レーンはVSMCを示し、右端のレーンは肝臓を示す。
【図13】図13は、RT−PCRによる、ヒト大動脈由来の血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸トランスポーターURAT−1の検出結果を示した図面に代わる写真である。
【図14】図14は、RT−PCRによる、ヒト腎臓輸入細動脈由来の平滑筋培養細胞(VSMC)における尿酸トランスポーターURAT−1の検出結果を示した図面に代わる写真である。
【図15】図15は、RT−PCRによる、ヒト臍帯静脈上皮細胞(HUVEC)における尿酸トランスポーターURAT−1の検出結果を示した図面に代わる写真である。
【図16】図16は、ウエスタンブロット法による、ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)における尿酸トランスポーターURAT−1の検出結果を示した図面に代わる写真である。
【0036】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されるものではない。
以下の実験で使用した血管平滑筋細胞(VSMC)は、ラットの大動脈から調製した(Zhang S,Yang Y,et al.,Circulation.,2003;107,1539−44)。この細胞を、10%子牛胎児血清(FBS)、1%グルタミン、及び1%ペニシリン/ストレプトマイシン溶液(100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン;GIBCO)を含有するダルベッコの修飾をしたイーグル培地(DMEM,GIBCO)で培養した。VSMCを35mmの6穴培養プレート(NUNC)に移し、湿式培養器(humidified tissue culture incubator)中で、5%炭酸ガス−95%空気の雰囲気下で37℃で保存した。培地を2日毎に交換した。実験に用いたVSMCは、5〜12世代のものであった。
【0037】
なお、特願2003−384863明細書に記載された内容を、本明細書に全て取り込む。
【実施例1】
【0038】
14C−尿酸塩の取り込み
VSMC(4×105細胞)を、10%FBS−DMEMと共に6穴培養プレートに移した。1日後に、血清の無いDMEM培地に終夜置いて成長を停止させた。各実験中は、細胞及び全ての溶液を37℃に維持した。VSMCを、8−14C−尿酸塩(比活性は50μCi/mmol;アメリカンラディオラベルド化学社製(セントルイス、MO))と共に培養し、尿酸塩の最終濃度を20μMにし、種々の阻害剤の存在下又は非存在下で培養した。取り込みの過程としては少し早いが、培養を5分間で停止した。この結果を図3及び図4に示す。
いくつかの実験では、放射性元素で標識化した尿酸塩の取り込み実験を、冷たい尿酸塩、乳酸塩、パラ−アミノ馬尿酸塩(PAH)などの他の有機アニオンの存在下、又は有機アニオントランスポーター阻害剤(プロベネシド又はベンズブロマロン)の存在下で行った。媒体(media)を急速に吸い取ることにより、取り込みを停止させ、すぐに氷冷したPBSで3回洗浄した。急速に吸い取られた培養溶液及び前記したように洗浄された細胞の全値からブランクが差し引かれた。次いで、細胞を、1N NaOHの1mlで15分間で溶解した。細胞に蓄積された8−14C−尿酸塩の量を、BCSシンチレーション溶液(アマーシャム社製)の5ml中へ0.5mlの細胞溶解液を加えて測定した。放射能を、溶液シンチレーションカウンターで測定した。取り込み量は、全cpm/ウエル、又は対照に対する百分率(%)で示される。この結果を図2、図5、及び図6に示す。
【0039】
他の実験では、尿酸塩の取り込みが電位感受性であるかどうかを決定するために、尿酸の取り込み実験を分極化条件、又は非分極化条件で行った。実験条件は、分極化、又は分極化されていない条件において培養溶液が相違している点を除き、前記した条件と同様であった。詳細には、12時間の飢餓状態の後、血清の無い培地を取り除き、これに代えて、140mM NaCl、4mM KCl、2mM CaCl2及び1mM MgCl2、5mM グルコース、並びに16mM HEPES−トリス(pH7.4)を含有するHEPES−生理食塩水溶液(PSS)(この場合は、分極化用として)、又は44mM NaCl、100mM KCl、2mM CaCl2及び1mM MgCl2、5mM グルコース、並びに16mM HEPES−トリス(pH7.4)を含有する100mM−KCl取り込み溶液(この場合は、非分極化用として)の0.45mLを添加した。
この結果を図1に示す。
【実施例2】
【0040】
VSMCの増殖試験
VSMC(4×105細胞)を、10%FBS−DMEMと共に6穴培養プレートに移し、24時間培養した。次いで、0.5%FBS−DMEM中で48時間、細胞を飢餓状態にした。DNA合成を測定するために、静止状態のVSMCに、3H−チミジンの1μCiを含む3mg/dLの尿酸で48時間刺激した。細胞を採取する2時間前に、さらに2μCi/mLの3H−チミジンを各ウエルに添加した。細胞を氷冷したPBSで3回洗浄し、1mLの1N NaOHで溶解した。細胞に取り込まれた3H−チミジンの量を、5mLのシンチレーション溶液中へ0.5mlの細胞溶解液を加えて測定した。CPM/ウエルで示される3H−チミジンの取り込み量は、溶液シンチレーションカウンターで記録された。いくつかの実験では、種々の濃度のプロベネシド又はベンズブロマロン(有機アニオントランスポーター阻害剤)の存在下で実験を行った。この結果を図7及び図8に示す。
同様の方法で、VSMCの増殖を、有機アニオン(乳酸塩やPAH)を用いて評価した。
【実施例3】
【0041】
MCP−1タンパク質についてのELISA。
24穴プレートに細胞を取り(5×104細胞/ウエル)を、70%コンフルエンスの状態になったときに血清を取り除いた。次いで、1mMのプロベネシドの存在下、又は非存在下に、3mg/dLの尿酸を含有、又は含有していない培地を24時間加えた。上澄みのMCP−1タンパク質をELISA(OptEIA MCP−1セット、BDファーミンゲン社)で計測し、細胞数で補正した。実験は各々3回行った。この結果を、図10に示す。
【実施例4】
【0042】
RT−PCRによるOATトランスポーターの検出。
RNeasy RNA精製キット(キアゲン社、バレンシア、CA)を用いてラットのVSMCから全RNAを調製した。オリゴテックスmRNA精製システム(キアゲン社)を用いてポリ(A)+RNAを単離し、ワンステップRT反応におけるランダムプライマーを用いて逆転写した。クロンテック社(パロアルト、CA)から販売されている腎臓及び肝臓のポリ(A)+RNAを陽性コントロールとして使用した。陰性コントロール反応を、DNAによる汚染をテストするためにプライマーを添加する前に逆転写酵素の熱不活性化により行った。以下のヌクレオチドセットを用いてPCR反応を行った。
【0043】
OAT1:
784−810 5’−CTGTGCAGCCTATGCACCCAACTATAC−3’
アンチセンス鎖の1218−1190
5’−CCTTTGCTTAGAGTCAGTTCCTTCTGCAG−3’
【0044】
OAT2:
642−672
5’−CCATCAACTACATCATGTTCGTAGTCACCCG−3’
アンチセンス鎖の1105−1076
5’−GATATGTCGGAGCTGAGATGTTCGGAACAG−3’
【0045】
OAT3:
437−465 5’−GAGACACCATTGTGATAGAGTGGGACTTG−3’
アンチセンス鎖の920−889
5’−GATAGAACCAGCCAGCGTATGGACTCTGGTAC−3’
【0046】
RST1(URAT−1のマウスのホモローグ):
377−405 5’−CATCTTATGCTTATCCGGGACAAGTCCTC−3’
アンチセンス鎖の768−739
5’−GAGTCTGTTGAAGAGGGTAGAGCAGTCTAC−3’
【0047】
RT−PCR反応は、Ready−To−Go RT−PCRビーズ(アマーシャム社製)を用いて行った。最初の鎖のcDNA合成反応は、pd(N)6を用いて42℃で15分間で行われた。PCRは、95℃、5分間で最初の変性を行い、次いで95℃、30秒で変性し、55℃、30秒でアニリーングさせ、72℃、1分間で伸長させるサイクルを32サイクル行った。サンプルを4℃で保存した。このPCR産物を、1.5%のアガロースゲル上で電気泳動し、ゲル中の適当な分子量のバンドをQIAquickゲル抽出キット(キアゲン社製)を用いて精製した。これらのバンドを、TOPO TAクローニングベクター(インビトロジェン社製)にサブクローンした。これらを制限酵素EcoRIで消化して評価し、ダイターミネーター法によるアプライドバイオシステムシークエンサー(ABI3730)を用いて、その配列を解析した。ポリAmRNAが完全であるかどうかを確認するために、センスプライマー:5’−ACCCCCAATGTATCCGTTGT−3’、アンチセンスプライマー:5’−TACTCCTTGGAGGCCATGTA−3’からなるプライマーの組み合わせを用いてGADPH−mRNA法により試験した。この結果を図11に示す。
【実施例5】
【0048】
RNaseプロテクションアッセイ(RPA)。
RNaseプロテクションアッセイ(RPA)を、RPAsIキット(トレイピネスバイオラボ社、ヒューストン、TX)を用いて、2〜4μgのRNAについて行った。ラットUAT(ジーンバンク、アクセッション番号:NM 012977)の5’末端から325番目までの325bp塩基からなるヌクレオチドを、pcDNA−UAT−EGFPにサブクローンした。このプラスミドをBamHI及びEcoRIで消化し、これをプラスミドpBluescriptにライゲートし、このプラスミドをpBS−UAT−325と命名した。このプラスミドをBamHIで消化して鎖状にし、α−32P[UTP]の存在下でT7RNAポリメラーゼを用いてリボプローブ(RNAプローブ)を合成した。
この結果を図12に示す。
【実施例6】
【0049】
ヒト大動脈由来の血管平滑筋細胞(VSMC)より得られた全RNAを逆転写してcDNAを合成した。そのcDNAを用いて、尿酸トランスポーターURAT−1の部分配列をプライマーとして用いてPCRを行った。
結果を図13に示す。図13の、左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン−Kは腎臓のcDNAを用いなかったものを示している。また、レーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られたcDNAにおいて、PCR法によりURAT−1の発現が認められた。
【実施例7】
【0050】
ヒト腎臓輸入細動脈由来VSMCより得られた全RNAを用いて、実施例6と同様にしてPCRを行った。
結果を図14に示す。図14の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン−Kは腎臓のcDNAを用いなかったものを示している。また、レーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られたcDNAにおいて、PCR法によりURAT−1の発現が認められた。
【実施例8】
【0051】
ヒト臍帯静脈上皮細胞(HUVEC)より得られた全RNAを用いて、実施例6と同様にしてPCRを行った。
結果を図15に示す。図15の左端及び右端のレーンMは100bpのDNAラダーを示し、レーン+Kは腎臓のcDNAを用いたものを示し、レーン+EndoはHUVECから合成したcDNAを用いたものを示している。腎臓同様、HUVECから得られたcDNAにおいても、PCR法によりURAT−1の発現が認められた。
【実施例9】
【0052】
ヒト血管平滑筋細胞(VSMC)をホモジナイズして得られた細胞溶解液を用いて、抗URAT−1抗体により、ウエスタンブロット法を行った。陽性コントロールとしてGAPDHを用いた。
結果を図16に示す。図16のレーン0はVSMCに何も付加しなかったものを示し、レーン3、6、9、及び12はそれぞれ、3mg/dl、6mg/dl、9mg/dl、12mg/dlの各濃度の尿酸によりVSMCを刺激した時の結果を示している。図16のGAPDHは陽性コントロールを示す。
この結果、付加する尿酸の有無、および濃度に関わらず、VSMCから得られた細胞溶解液において、抗URAT−1抗体によりURAT−1タンパクが検出された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、尿酸に起因する各種の血管障害や高血圧症に対する新たな治療、予防、処置のための医薬組成物を提供するものであり、新たな医薬組成物を提供するものとして産業上の利用性を有するものである。また、本発明は、尿酸トランスポーターの1種であるURAT1の機能に着目した新たな治療、予防、処置のための医薬組成物のための有効成分をスクリーニングする方法を提供するものであり、本発明の方法により、新しい抗高血圧薬や血管変性阻害による保護作用を有する新薬の開発が可能となり、産業上の利用性をゆうするものである。
【配列表フリーテキスト】
【0054】
配列番号1は、OAT1検出用のフォーワードプライマーである。
配列番号2は、OAT1検出用のリバースプライマーである。
配列番号3は、OAT2検出用のフォーワードプライマーである。
配列番号4は、OAT2検出用のリバースプライマーである。
配列番号5は、OAT3検出用のフォーワードプライマーである。
配列番号6は、OAT3検出用のリバースプライマーである。
配列番号7は、RST1検出用のフォーワードプライマーである。
配列番号8は、RST1検出用のリバースプライマーである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物。
【請求項2】
血管障害や高血圧症や腎障害が、高尿酸血症によって誘導される疾患である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物が、URAT1の阻害剤又はブロッカーである請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物が、血管保護剤である請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法。
【請求項6】
URAT1を発現している細胞系が、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
URAT1を発現している細胞系の尿酸取り込み溶液中に、被検化合物を存在させたときの尿酸の取り込み量を測定することからなる請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の増殖能を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法。
【請求項9】
細胞の増殖能の測定が、チミジンの取り込み量を測定することからなる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法。
【請求項11】
単球走化性因子が、MCP−1である請求項10に記載の方法。
【請求項1】
URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物、及び製薬上許容される担体からなる、血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物。
【請求項2】
血管障害や高血圧症や腎障害が、高尿酸血症によって誘導される疾患である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
URAT1の尿酸の取り込み作用を阻害する作用を有する薬物が、URAT1の阻害剤又はブロッカーである請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための医薬組成物が、血管保護剤である請求項1〜3のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項5】
被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、尿酸の取り込み量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法。
【請求項6】
URAT1を発現している細胞系が、URAT1の遺伝子の安定発現細胞系である請求項4に記載の方法。
【請求項7】
URAT1を発現している細胞系の尿酸取り込み溶液中に、被検化合物を存在させたときの尿酸の取り込み量を測定することからなる請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の増殖能を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法。
【請求項9】
細胞の増殖能の測定が、チミジンの取り込み量を測定することからなる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
被検化合物の存在下、又は非存在下において、URAT1を発現している細胞系を用いて、当該細胞の単球走化性因子の産生量を測定することからなる血管障害や高血圧症や腎障害の治療、予防又は処置のための有効物質をスクリーニングする方法。
【請求項11】
単球走化性因子が、MCP−1である請求項10に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
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【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【国際公開番号】WO2005/046724
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515447(P2005−515447)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016761
【国際出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(503320496)株式会社ヒューマンセルシステムズ (3)
【Fターム(参考)】
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【国際出願番号】PCT/JP2004/016761
【国際出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(503320496)株式会社ヒューマンセルシステムズ (3)
【Fターム(参考)】
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