血糖値降下剤
【目的】血糖値降下剤を提供する。
【構成】下記式(I)及び(II)で示される化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する血糖降下剤。
【構成】下記式(I)及び(II)で示される化合物の少なくとも1種を有効成分として含有する血糖降下剤。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は血糖値降下剤に関する。
【0002】
【従来の技術】糖尿病は成人病の一つとされ、完治乃至治療の難しい病気の一つとなっていることは周知のところである。従来からこの糖尿病治療薬、惹いては血糖値降下剤について種々の薬剤が開発されているがその効果は不充分であり、有効な薬剤の開発が強く要望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの糖尿病によく効く薬剤、即ち血糖値を降下させうる薬剤を新たに提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】この課題は下記一般式(I)
【化3】
で表される化合物(以下化合物1という)、又は下記一般式(II)
【化4】
で表される化合物(以下化合物2という)を血糖値降下剤の有効成分として使用することにより解決される。
【0005】本発明者の研究によると上記化合物1及び2の少なくとも1種の化合物は血糖値を降下させることができる特性を有することが判明した。本発明はこの新しい事実に基づいて完成されている。
【0006】
【発明の作用並びに構成】まず化合物1及び2について説明する。化合物1及び2はいずれも天然植物である景天科燕子掌から抽出して製造される。本発明において使用する燕子掌は景天科に属し、学名はCrassula argentea であり、「In Bailey. Mauu. Cult. PI. 456. 1949」に記載されている。また属としては景天属、青鎖龍属、紅景天属に属するものである。更に詳しくは、常緑肉質の亜潅木であり、株の高さは50〜100cm、大きいものは2m位となる。茎が太く円柱状であり、木質化する。枝が対照的に分かれて樹の形になる。葉は厚くペアで成長し、逆さまの卵のようにスプーンの形になる。長さは2〜5cm、巾は 1.5〜 2.5cm程度であり、葉の先端が丸く、茎に近づくにつれて狭くなる。完全な縁で緑色、毛がない。十数輪の花で円錐状で咲き、花色は白或いは淡いピンクであり、長さは8〜10cm、花びらが狭く、短い先端がある。原産地は南アフリカである。鑑賞植物として栽培されているところもある。
【0007】本発明においてはこの景天科燕子掌は特にその葉を用いて抽出することが好ましい。即ちこの葉そのもの、葉の粉砕物等を抽出溶媒により抽出する。この景天科燕子掌から抽出成分を抽出する原則的な方法は以下の通りである。
【0008】新鮮な天然植物燕子掌を粉砕、好ましくは高速で粉砕して10〜50メッシュパス程度となし、抽出溶媒たとえばアルコール又はその水溶液や水等を加えて有効成分を抽出する。アルコールの濃度は50〜98%、好ましくは70〜96%、蛋白質を沈殿させる最良濃度は70%である。
【0009】アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコールを代表例として例示でき、その他ブドウ糖も使用できる。このアルコールに浸漬する時間は1〜24時間、好ましくは4〜6時間程度である。
【0010】抽出液は通常濃縮する。この際の抽出液の濃縮温度は30〜100℃、最良濃縮温度は30〜40℃である。抽出液を濃縮させる時には減圧でも常圧でもよい。濃縮温度は低温で抽出液を濃縮する。100℃位の温度で蒸発させてから乾燥冷凍すると効果が一番よい。
【0011】本発明においては科学的方法で有効成分を抽出し、濃縮しても濃縮液の有効成分が変わらないことが保証される。本発明において濃度50〜98%のアルコールで燕子掌中の植物蛋白質を先に沈殿させることが好ましいが、これは酵素によって有効成分が分解されることを防ぐためである。粉砕物を抽出溶媒、たとえばアルコールに1〜3時間、或いは一晩漬けてから遠心分離器で高速分離し、傾斜法で上層の透明液を分離する。もし上層の透明液にまだ沈殿物が残っていれば透明になるまで濾過する。次いで減圧濃縮し、冷蔵庫で保存する。保存しやすく、運びやすくするなら冷凍粉末或いは、100℃で蒸発乾燥で得た粉末にすればよい。
【0012】以下に具体的な抽出方法の例を実験例として例示する。
実験例12000gの新鮮な燕子掌の葉を洗浄後水に一晩漬ける。翌日に粉砕器に600ml、70%濃度の薬用アルコール(エチルアルコール)を入れて高速粉砕し、これを3時間含浸後遠心分離器で高速分離し、傾斜法で黄緑色の透明液を分離して、緑色の残液を再抽出に使う。透明液を回転蒸発器で減圧濃縮(水浴温度は60℃より低い)する。
【0013】実験例2実験例1の残液に600ml、70%の同じアルコールで3回に分けて抽出してから混合液を遠心分離して緑色の透明液について葉緑素除去作業(方法は実験例3)をなし、淡い黄色の溶液を濃縮する。
【0014】実験例3(葉緑素の除去方法)
(1) 実験例2において遠心分離で得た緑色透明液を600ml分取して、分液濾斗に入れて600ml石油エーテル(60〜90)で3回に分けて抽出する。淡い黄色の抽出液を濃縮してから残りの石油エーテル混合液を合わせて、常圧で石油エーテルを蒸発させ、固体葉緑素を得て、石油エーテルを回収し、後で使う。
(2) 実験例2の緑色透明液600mlを100℃水浴で5分間加熱(浴液温度は約80℃位)した。緑色が除去され、溶液は淡い黄色に変わる。葉緑素は葉黄素に変わる。
【0015】実験例41700gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後粉砕器に入れ、600ml、95%のエチルアルコールを加え、高速粉砕してから3時間漬けて、遠心分離し、上層の透明液を分離して、それを1500ml、95%no同じアルコールで3回に分けて抽出し、夫々1時間漬けてから掻き混ぜて遠心分離して上の透明液を分離する。3回の透明液に石油エーテル(60〜90)を加えて葉緑素を除去して、1回目の透明液に合わせて実験例1のように濃縮し、濃縮液68gを得た。黄色である。それを2.99g有効成分/mlとする。
【0016】実験例5実験例4の方法に従って得た1040gの燕子掌抽出液を葉緑素を除去せずに濃縮して、64.6gの濃縮液を得る。
【0017】実験例61600gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後、500ml、95%のエチルアルコールに漬けてから粉砕し、1時間漬けて、遠心分離して、上の透明液を分離する。緑色残液を600ml、95%の同じアルコールで3回に分けて抽出し、3回の全部の透明液を合わせて、実験例1のように濃縮させ、濃縮液 222.7gを得る。
【0018】実験例7328gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後100ml、50%のエチルアルコールに漬けてから粉砕し、これを1時間漬けて、80℃位まで加熱し、濾過して黄緑色の同じ透明液を得る。3回に分けて残液を100ml、50%の同じアルコールで抽出してから1時間放置後、濾過する。濾液を実験例1のように123mlまで濃縮し、2.99有効成分/mlとする。
【0019】実験例8319gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後50mlの水を入れて粉砕してからすぐ圧力鍋に入れて5分間加熱する(圧力鍋中の温度は120〜125℃)。得られた黄色の混合液を濾過する。濾液を実験例1のように濃縮させる。残液を100ml、96%のエチルアルコールで3回に分けて抽出してから濾過して3回の濾液を合わせて120mlまで濃縮する。濃度は2.66有効成分/mlである。
【0020】実験例9369gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後120ml、60%のエチルアルコールを加え、粉砕してから3時間放置し、濾過する。残液に100ml、60%の同じアルコールを3回に分けて加えて抽出し、濾過する。抽出液は緑黄色である。3回の濾液を合わせてから実験例1のように濾過する。抽出液は緑黄色である。3回の濾液を合わせてから実験例のように濃縮させる。(濃縮時の水浴温度が65℃を越えないようにする)。123mlまで濃縮する。
【0021】実験例10(1) 1040gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後600ml、95%のエチルアルコールで洗い、実験例1のように濃縮させた。濃縮液の重量は64.6gであり、この抽出液の濃度は10.4g有効成分/mlである。
(2) 269.5gの新鮮な燕子掌の葉を洗ってから150ml、70%の同じアルコールで3回に分けて抽出し、実験例1の方法で濃縮させて(水浴80℃で、減圧或いは常圧で)濃縮液の濃度が2.99葉重/mlである。
(3) 紅景天の茎を粉にし、乾燥させる。 0.5kgの粉を70%のエチルアルコール3000mlで3回に分けて抽出した(毎回30分)。抽出液を濾過し、アルコールを回収する。550gの濃縮液が得られた。これに等量の水を入れて、放置してから濾過し、濾液をCH3CO−OC2H5 で抽出し、浴剤を回収して紅景天▲だい▼を得る。
【0022】本発明において使用する抽出溶液は、水、アルコール又はその水溶液を原則として使用し、更に詳しくはメチルアルコール、エチルアルコール、ブドウ糖又はその水溶液が好ましく使用され、特に好ましくは通常薬用アルコールとして使用されるものである。またその他石油エーテル、イソ酪酸も使用することができる。
【0023】本発明において化合物1及び2を同定した根拠を以下に示す。抽出液からHPLCを用いて2種類の化合物の混合物を分離し、まず水を用いて化合物2の結晶を得る。溶残をメタノールで溶かして化合物1の結晶(結晶Aという)を得る。
【0024】これら化合物1及び2の構造式の決定は以下の方法によった。
(1)NMR測定■結晶Aをメタノールで溶かし、1H−NMR 、13C−NMR測定を行う。測定結果として、−OCH3 、−OC2H5、−OCH3CH2CH3 、−OCH3CH2CH3CH3、−OH、−HPLC、
【化5】
の存在が確認された。このNMRのチャートを図1に示す。
■結晶(B)の中に−OH、−COOHの存在が確認された。このNMRのチャートを図2に示す。
【0025】
(2)EDAX(元素の電子エネルギー)測定■結晶Aの中にNa+ が確認された。チャートを図3に示す。
■結晶Bの中にもNa+ の存在が認められた。チャートを図4に示す。
【0026】(3)UV測定結晶A、Bとも吸収ピークが認められず、共役系はないことが確認された。結晶Aのチャートを図5に、結晶Bのチャートを図6に示した。
【0027】(4)IR測定■結晶Aの中に−CO2H 、
【化6】
−OHの存在が確認された。チャートは図7の通り。
■結晶Bの中に−OH、−CO3H 、−O−が検出された。チャートは図8の通り。
【0028】(5)HPLCとMS(Mass spectrometer)との共用による測定(HPLC−MS)
■結晶Aの溶液をHPLC−MSに入れて分離と測定を行う。チャートを図9及び10に示す。以下の分子式が得られる(括弧内は分子量である)。
C8H16O8(238)、C9H18O8(252)、C10H20O8(266)、C11H22O8(280)、C8H15O8Na(260)。
■結晶Bの分子式はC15H23O13(411)である。これらのチャートを図11及び12に示す。
以上のようにNMR、IR、UV、HPLC−MS、EDAXなどの総合分析により、以上の結晶Aはグルコヘプトニックエステル(Glucoheptonic ester )の誘導体であることが認められた。即ち、Glucoheptonic acid sodium 、Methylglucoheptonic ester、 Ethyl glucoheptonic ester、N-propyl glucoheptonicester、 N-Butyl glucoheptonic ester等である。結晶Bは燕子掌▲だい▼(glucoside)であると判断された。
【0029】〈Glucoheptonic ester誘導体の構造式〉化合物1(結晶A)は以下の構造を有する。但し式中Rはアルカリ金属、低級アルキル基を示す。
【化7】
この立体構造式(二次構造共通式)は以下の通りであり、すべてを椅子型構造式である。
【化8】
上記アルカリ金属としてはNaが代表例として例示でき、またアルキル基としてはたとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル等を例示でき、プロピル及びブチルとしてはn−プロピル、n−ブチルを例示できる。
【0030】〈化合物2(結晶B)の構造式〉化合物2の構造式は以下の通りである。
【化9】
その立体構造式(二次構造式)は以下の通りである。
【化10】
分子式はC15H23O13で表される。二次構造式中の6員環はすべて椅子型構造を採り、A環とB環とは反型で結合する。
【0031】上記化合物1(結晶A)及び化合物2(結晶B)の元素分析値を以下に示す。
化合物1(C8H16O8として)
理論値 C:40.3% H:6.72%実測値 C:40.6% H:6.50%化合物2(C15H23O13として)
理論値 C:43.80% H:5.32%実測値 C:43.60% H:5.20%上記元素分析値の測定から実測値と理論値とがよく一致している。上記化合物1及び2は既に述べた通り景天燕子掌から抽出して製造することができるが、本発明においては上記方法以外でも製造できる方法であればいかなる方法でもよい。
【0032】実験例以下に実験例を挙げて詳しく説明する。
1.毒性実験(A)方法急性毒性LD50で測定した。
(B)結果毒性は全くなかった。
【0033】2.動物実験抽出液の濃縮エキスをSephadex LH20柱に入れて分子量の差で6成分に分離した。夫々をA、B、C、D、E、Fとした。これらを乾燥して粉末とする。分子量によりBが化合物1と2との混合物である。次に25%のブドウ糖溶液で粉末を溶かし、 0.2ml溶液ごとに各成分の粉末0.21mgが入るようにする。この溶液を判定実験に用いる。
実験方法:体重20〜25gのMus musculus(スイス種実験用ネズミ)77匹をランダムに7組に分けて、すべての子ネズミの腹に1mg Tetraoxidicpyrimidineを注射して、4日間で糖尿病モデルを作り上げる。1日1匹の子ネズミにつき0.2 ml/日ずつ25%のブドウ糖溶液を胃に詰め込む。対照組については毎日25%のブドウ糖溶液0.2ml/日ずつを胃に詰め込むだけである。双盲法を用いて血糖値を測定し、生物統計を行う。本実験の結果は次の表1に示す通りである。
【0034】
【表1】
但し表1中の下記記号は以下のことを示す。
*1:−は血糖値の上昇を意味する。
*2:−のマークがついていないのは血糖値下降率を示す。BC成分により明らかに血糖値が下げられ、生物統計P値が<0.01、他の成分による明らかな血糖値降下作用が見られない。
【0035】以上の実験において1匹の子ネズミにつき4mgのTetraoxidicpyrimidineが注射され、1日に25%ブドウ糖溶液0.2ml/日も胃に詰め込まれる。できた糖尿病モデルがインシュリン依頼型であると考えられる。従ってC成分がインシュリン依頼型糖尿病の血糖値を大幅に下げることができ、臨床実験の結果も考慮してC成分に血糖値を下げる有効成分が入っていると判断される。
【0036】3.臨床実験1990年8月から青島市人民医院において血糖値降下剤の臨床実験を行った。臨床実験において成人型糖尿病がインシュリン依存型と非インシュリン依存型とに分かれる。青島市人民医院の最近5年間の統計によると、青島市地域の罹患率は6.74%であり、患者の大半が50〜70才の人である。今度の臨床実験に参加された糖尿病患者は50〜70才までの人である。20名の患者は以前中国国内にある色々な糖尿病用の薬を服用してきたが、明らかな効果がなかった。以上の患者に対して毎日20mg/回の錠剤(化合物1及び2、1:1の混合物)を1日3回与える。食事前20分位に服用し、毎週1回血糖値と尿糖との検査をし、同時に症状などの検査もする。これを3週間続けて行う。今度の臨床実験の結果をインシュリン依存型と非依存型に分けて表2及び3にまとめた。
【表2】
【表3】
【0037】上記表2及び表3から以下のことが判る。臨床実験用の本錠剤は1粒20mgで、中国北京市東風製薬場にて製造した。
(1)臨床実験によって血糖値を下げる以外、滋養強壮の効果も証明された。虚弱体質の患者たちは体質がよくなった。本剤を服用する前後の正常肝効能などに変化がない。
(2)尿糖が定性結果であり、+、−で示される。
(3)正常の人間の血糖値は一般には血液100mlごとに80〜120mgのブドウ糖であり、最低値が70mg/100mlでこれ以下が低血糖である。最高値が150mg/100mlでこれ以上が高血糖症である。本臨床実験の前の10例が非インシュリン依存型糖尿病患者で、3週間服用してから、8例が正常になり、他の2例の第3週の血糖値が正常値の最低値に近づいた。
(4)非インシュリン依存型患者にとって効果が明らかで、統計学の統計結果が100%である。
(5)インシュリン依存型患者に対しても血糖値を下げる効果があることが明らかである。糖尿病の症状もかなり改善された。
以上説明してきた通り本発明の降下剤は優れた血糖値降下作用を有するが、通常この効果は成人には0.5mg/1日以上で充分に発揮される。
【0038】
【発明の効果】本発明による血糖値降下剤は極めて優れた血糖値降下作用を有し、糖尿病に最適である。
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は化合物1(結晶A)のNMR測定チャートである。
【図2】図2は化合物2(結晶B)のNMR測定チャートである。
【図3】図3は化合物1(結晶A)のEDAX測定チャートである。
【図4】図4は化合物2(結晶B)のEDAX測定チャートである。
【図5】図5は化合物1(結晶A)のUV測定チャートである。
【図6】図6は化合物2(結晶B)のUV測定チャートである。
【図7】図7は化合物1(結晶A)のIR測定チャートである。
【図8】図8は化合物2(結晶B)のIR測定チャートである。
【図9】図9は化合物1(結晶A)のHPLC測定チャートである。
【図10】図10は化合物1(結晶A)のMS測定チャートである。
【図11】図11は化合物2(結晶B)のHPLC測定チャートである。
【図12】図12は化合物2(結晶B)のMS測定チャートである。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は血糖値降下剤に関する。
【0002】
【従来の技術】糖尿病は成人病の一つとされ、完治乃至治療の難しい病気の一つとなっていることは周知のところである。従来からこの糖尿病治療薬、惹いては血糖値降下剤について種々の薬剤が開発されているがその効果は不充分であり、有効な薬剤の開発が強く要望されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこの糖尿病によく効く薬剤、即ち血糖値を降下させうる薬剤を新たに提供せんとするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】この課題は下記一般式(I)
【化3】
で表される化合物(以下化合物1という)、又は下記一般式(II)
【化4】
で表される化合物(以下化合物2という)を血糖値降下剤の有効成分として使用することにより解決される。
【0005】本発明者の研究によると上記化合物1及び2の少なくとも1種の化合物は血糖値を降下させることができる特性を有することが判明した。本発明はこの新しい事実に基づいて完成されている。
【0006】
【発明の作用並びに構成】まず化合物1及び2について説明する。化合物1及び2はいずれも天然植物である景天科燕子掌から抽出して製造される。本発明において使用する燕子掌は景天科に属し、学名はCrassula argentea であり、「In Bailey. Mauu. Cult. PI. 456. 1949」に記載されている。また属としては景天属、青鎖龍属、紅景天属に属するものである。更に詳しくは、常緑肉質の亜潅木であり、株の高さは50〜100cm、大きいものは2m位となる。茎が太く円柱状であり、木質化する。枝が対照的に分かれて樹の形になる。葉は厚くペアで成長し、逆さまの卵のようにスプーンの形になる。長さは2〜5cm、巾は 1.5〜 2.5cm程度であり、葉の先端が丸く、茎に近づくにつれて狭くなる。完全な縁で緑色、毛がない。十数輪の花で円錐状で咲き、花色は白或いは淡いピンクであり、長さは8〜10cm、花びらが狭く、短い先端がある。原産地は南アフリカである。鑑賞植物として栽培されているところもある。
【0007】本発明においてはこの景天科燕子掌は特にその葉を用いて抽出することが好ましい。即ちこの葉そのもの、葉の粉砕物等を抽出溶媒により抽出する。この景天科燕子掌から抽出成分を抽出する原則的な方法は以下の通りである。
【0008】新鮮な天然植物燕子掌を粉砕、好ましくは高速で粉砕して10〜50メッシュパス程度となし、抽出溶媒たとえばアルコール又はその水溶液や水等を加えて有効成分を抽出する。アルコールの濃度は50〜98%、好ましくは70〜96%、蛋白質を沈殿させる最良濃度は70%である。
【0009】アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコールを代表例として例示でき、その他ブドウ糖も使用できる。このアルコールに浸漬する時間は1〜24時間、好ましくは4〜6時間程度である。
【0010】抽出液は通常濃縮する。この際の抽出液の濃縮温度は30〜100℃、最良濃縮温度は30〜40℃である。抽出液を濃縮させる時には減圧でも常圧でもよい。濃縮温度は低温で抽出液を濃縮する。100℃位の温度で蒸発させてから乾燥冷凍すると効果が一番よい。
【0011】本発明においては科学的方法で有効成分を抽出し、濃縮しても濃縮液の有効成分が変わらないことが保証される。本発明において濃度50〜98%のアルコールで燕子掌中の植物蛋白質を先に沈殿させることが好ましいが、これは酵素によって有効成分が分解されることを防ぐためである。粉砕物を抽出溶媒、たとえばアルコールに1〜3時間、或いは一晩漬けてから遠心分離器で高速分離し、傾斜法で上層の透明液を分離する。もし上層の透明液にまだ沈殿物が残っていれば透明になるまで濾過する。次いで減圧濃縮し、冷蔵庫で保存する。保存しやすく、運びやすくするなら冷凍粉末或いは、100℃で蒸発乾燥で得た粉末にすればよい。
【0012】以下に具体的な抽出方法の例を実験例として例示する。
実験例12000gの新鮮な燕子掌の葉を洗浄後水に一晩漬ける。翌日に粉砕器に600ml、70%濃度の薬用アルコール(エチルアルコール)を入れて高速粉砕し、これを3時間含浸後遠心分離器で高速分離し、傾斜法で黄緑色の透明液を分離して、緑色の残液を再抽出に使う。透明液を回転蒸発器で減圧濃縮(水浴温度は60℃より低い)する。
【0013】実験例2実験例1の残液に600ml、70%の同じアルコールで3回に分けて抽出してから混合液を遠心分離して緑色の透明液について葉緑素除去作業(方法は実験例3)をなし、淡い黄色の溶液を濃縮する。
【0014】実験例3(葉緑素の除去方法)
(1) 実験例2において遠心分離で得た緑色透明液を600ml分取して、分液濾斗に入れて600ml石油エーテル(60〜90)で3回に分けて抽出する。淡い黄色の抽出液を濃縮してから残りの石油エーテル混合液を合わせて、常圧で石油エーテルを蒸発させ、固体葉緑素を得て、石油エーテルを回収し、後で使う。
(2) 実験例2の緑色透明液600mlを100℃水浴で5分間加熱(浴液温度は約80℃位)した。緑色が除去され、溶液は淡い黄色に変わる。葉緑素は葉黄素に変わる。
【0015】実験例41700gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後粉砕器に入れ、600ml、95%のエチルアルコールを加え、高速粉砕してから3時間漬けて、遠心分離し、上層の透明液を分離して、それを1500ml、95%no同じアルコールで3回に分けて抽出し、夫々1時間漬けてから掻き混ぜて遠心分離して上の透明液を分離する。3回の透明液に石油エーテル(60〜90)を加えて葉緑素を除去して、1回目の透明液に合わせて実験例1のように濃縮し、濃縮液68gを得た。黄色である。それを2.99g有効成分/mlとする。
【0016】実験例5実験例4の方法に従って得た1040gの燕子掌抽出液を葉緑素を除去せずに濃縮して、64.6gの濃縮液を得る。
【0017】実験例61600gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後、500ml、95%のエチルアルコールに漬けてから粉砕し、1時間漬けて、遠心分離して、上の透明液を分離する。緑色残液を600ml、95%の同じアルコールで3回に分けて抽出し、3回の全部の透明液を合わせて、実験例1のように濃縮させ、濃縮液 222.7gを得る。
【0018】実験例7328gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後100ml、50%のエチルアルコールに漬けてから粉砕し、これを1時間漬けて、80℃位まで加熱し、濾過して黄緑色の同じ透明液を得る。3回に分けて残液を100ml、50%の同じアルコールで抽出してから1時間放置後、濾過する。濾液を実験例1のように123mlまで濃縮し、2.99有効成分/mlとする。
【0019】実験例8319gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後50mlの水を入れて粉砕してからすぐ圧力鍋に入れて5分間加熱する(圧力鍋中の温度は120〜125℃)。得られた黄色の混合液を濾過する。濾液を実験例1のように濃縮させる。残液を100ml、96%のエチルアルコールで3回に分けて抽出してから濾過して3回の濾液を合わせて120mlまで濃縮する。濃度は2.66有効成分/mlである。
【0020】実験例9369gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後120ml、60%のエチルアルコールを加え、粉砕してから3時間放置し、濾過する。残液に100ml、60%の同じアルコールを3回に分けて加えて抽出し、濾過する。抽出液は緑黄色である。3回の濾液を合わせてから実験例1のように濾過する。抽出液は緑黄色である。3回の濾液を合わせてから実験例のように濃縮させる。(濃縮時の水浴温度が65℃を越えないようにする)。123mlまで濃縮する。
【0021】実験例10(1) 1040gの新鮮な燕子掌の葉を充分に洗浄後600ml、95%のエチルアルコールで洗い、実験例1のように濃縮させた。濃縮液の重量は64.6gであり、この抽出液の濃度は10.4g有効成分/mlである。
(2) 269.5gの新鮮な燕子掌の葉を洗ってから150ml、70%の同じアルコールで3回に分けて抽出し、実験例1の方法で濃縮させて(水浴80℃で、減圧或いは常圧で)濃縮液の濃度が2.99葉重/mlである。
(3) 紅景天の茎を粉にし、乾燥させる。 0.5kgの粉を70%のエチルアルコール3000mlで3回に分けて抽出した(毎回30分)。抽出液を濾過し、アルコールを回収する。550gの濃縮液が得られた。これに等量の水を入れて、放置してから濾過し、濾液をCH3CO−OC2H5 で抽出し、浴剤を回収して紅景天▲だい▼を得る。
【0022】本発明において使用する抽出溶液は、水、アルコール又はその水溶液を原則として使用し、更に詳しくはメチルアルコール、エチルアルコール、ブドウ糖又はその水溶液が好ましく使用され、特に好ましくは通常薬用アルコールとして使用されるものである。またその他石油エーテル、イソ酪酸も使用することができる。
【0023】本発明において化合物1及び2を同定した根拠を以下に示す。抽出液からHPLCを用いて2種類の化合物の混合物を分離し、まず水を用いて化合物2の結晶を得る。溶残をメタノールで溶かして化合物1の結晶(結晶Aという)を得る。
【0024】これら化合物1及び2の構造式の決定は以下の方法によった。
(1)NMR測定
【化5】
の存在が確認された。このNMRのチャートを図1に示す。
【0025】
(2)EDAX(元素の電子エネルギー)測定
【0026】(3)UV測定結晶A、Bとも吸収ピークが認められず、共役系はないことが確認された。結晶Aのチャートを図5に、結晶Bのチャートを図6に示した。
【0027】(4)IR測定
【化6】
−OHの存在が確認された。チャートは図7の通り。
【0028】(5)HPLCとMS(Mass spectrometer)との共用による測定(HPLC−MS)
C8H16O8(238)、C9H18O8(252)、C10H20O8(266)、C11H22O8(280)、C8H15O8Na(260)。
以上のようにNMR、IR、UV、HPLC−MS、EDAXなどの総合分析により、以上の結晶Aはグルコヘプトニックエステル(Glucoheptonic ester )の誘導体であることが認められた。即ち、Glucoheptonic acid sodium 、Methylglucoheptonic ester、 Ethyl glucoheptonic ester、N-propyl glucoheptonicester、 N-Butyl glucoheptonic ester等である。結晶Bは燕子掌▲だい▼(glucoside)であると判断された。
【0029】〈Glucoheptonic ester誘導体の構造式〉化合物1(結晶A)は以下の構造を有する。但し式中Rはアルカリ金属、低級アルキル基を示す。
【化7】
この立体構造式(二次構造共通式)は以下の通りであり、すべてを椅子型構造式である。
【化8】
上記アルカリ金属としてはNaが代表例として例示でき、またアルキル基としてはたとえばメチル、エチル、プロピル、ブチル等を例示でき、プロピル及びブチルとしてはn−プロピル、n−ブチルを例示できる。
【0030】〈化合物2(結晶B)の構造式〉化合物2の構造式は以下の通りである。
【化9】
その立体構造式(二次構造式)は以下の通りである。
【化10】
分子式はC15H23O13で表される。二次構造式中の6員環はすべて椅子型構造を採り、A環とB環とは反型で結合する。
【0031】上記化合物1(結晶A)及び化合物2(結晶B)の元素分析値を以下に示す。
化合物1(C8H16O8として)
理論値 C:40.3% H:6.72%実測値 C:40.6% H:6.50%化合物2(C15H23O13として)
理論値 C:43.80% H:5.32%実測値 C:43.60% H:5.20%上記元素分析値の測定から実測値と理論値とがよく一致している。上記化合物1及び2は既に述べた通り景天燕子掌から抽出して製造することができるが、本発明においては上記方法以外でも製造できる方法であればいかなる方法でもよい。
【0032】実験例以下に実験例を挙げて詳しく説明する。
1.毒性実験(A)方法急性毒性LD50で測定した。
(B)結果毒性は全くなかった。
【0033】2.動物実験抽出液の濃縮エキスをSephadex LH20柱に入れて分子量の差で6成分に分離した。夫々をA、B、C、D、E、Fとした。これらを乾燥して粉末とする。分子量によりBが化合物1と2との混合物である。次に25%のブドウ糖溶液で粉末を溶かし、 0.2ml溶液ごとに各成分の粉末0.21mgが入るようにする。この溶液を判定実験に用いる。
実験方法:体重20〜25gのMus musculus(スイス種実験用ネズミ)77匹をランダムに7組に分けて、すべての子ネズミの腹に1mg Tetraoxidicpyrimidineを注射して、4日間で糖尿病モデルを作り上げる。1日1匹の子ネズミにつき0.2 ml/日ずつ25%のブドウ糖溶液を胃に詰め込む。対照組については毎日25%のブドウ糖溶液0.2ml/日ずつを胃に詰め込むだけである。双盲法を用いて血糖値を測定し、生物統計を行う。本実験の結果は次の表1に示す通りである。
【0034】
【表1】
但し表1中の下記記号は以下のことを示す。
*1:−は血糖値の上昇を意味する。
*2:−のマークがついていないのは血糖値下降率を示す。BC成分により明らかに血糖値が下げられ、生物統計P値が<0.01、他の成分による明らかな血糖値降下作用が見られない。
【0035】以上の実験において1匹の子ネズミにつき4mgのTetraoxidicpyrimidineが注射され、1日に25%ブドウ糖溶液0.2ml/日も胃に詰め込まれる。できた糖尿病モデルがインシュリン依頼型であると考えられる。従ってC成分がインシュリン依頼型糖尿病の血糖値を大幅に下げることができ、臨床実験の結果も考慮してC成分に血糖値を下げる有効成分が入っていると判断される。
【0036】3.臨床実験1990年8月から青島市人民医院において血糖値降下剤の臨床実験を行った。臨床実験において成人型糖尿病がインシュリン依存型と非インシュリン依存型とに分かれる。青島市人民医院の最近5年間の統計によると、青島市地域の罹患率は6.74%であり、患者の大半が50〜70才の人である。今度の臨床実験に参加された糖尿病患者は50〜70才までの人である。20名の患者は以前中国国内にある色々な糖尿病用の薬を服用してきたが、明らかな効果がなかった。以上の患者に対して毎日20mg/回の錠剤(化合物1及び2、1:1の混合物)を1日3回与える。食事前20分位に服用し、毎週1回血糖値と尿糖との検査をし、同時に症状などの検査もする。これを3週間続けて行う。今度の臨床実験の結果をインシュリン依存型と非依存型に分けて表2及び3にまとめた。
【表2】
【表3】
【0037】上記表2及び表3から以下のことが判る。臨床実験用の本錠剤は1粒20mgで、中国北京市東風製薬場にて製造した。
(1)臨床実験によって血糖値を下げる以外、滋養強壮の効果も証明された。虚弱体質の患者たちは体質がよくなった。本剤を服用する前後の正常肝効能などに変化がない。
(2)尿糖が定性結果であり、+、−で示される。
(3)正常の人間の血糖値は一般には血液100mlごとに80〜120mgのブドウ糖であり、最低値が70mg/100mlでこれ以下が低血糖である。最高値が150mg/100mlでこれ以上が高血糖症である。本臨床実験の前の10例が非インシュリン依存型糖尿病患者で、3週間服用してから、8例が正常になり、他の2例の第3週の血糖値が正常値の最低値に近づいた。
(4)非インシュリン依存型患者にとって効果が明らかで、統計学の統計結果が100%である。
(5)インシュリン依存型患者に対しても血糖値を下げる効果があることが明らかである。糖尿病の症状もかなり改善された。
以上説明してきた通り本発明の降下剤は優れた血糖値降下作用を有するが、通常この効果は成人には0.5mg/1日以上で充分に発揮される。
【0038】
【発明の効果】本発明による血糖値降下剤は極めて優れた血糖値降下作用を有し、糖尿病に最適である。
【0039】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は化合物1(結晶A)のNMR測定チャートである。
【図2】図2は化合物2(結晶B)のNMR測定チャートである。
【図3】図3は化合物1(結晶A)のEDAX測定チャートである。
【図4】図4は化合物2(結晶B)のEDAX測定チャートである。
【図5】図5は化合物1(結晶A)のUV測定チャートである。
【図6】図6は化合物2(結晶B)のUV測定チャートである。
【図7】図7は化合物1(結晶A)のIR測定チャートである。
【図8】図8は化合物2(結晶B)のIR測定チャートである。
【図9】図9は化合物1(結晶A)のHPLC測定チャートである。
【図10】図10は化合物1(結晶A)のMS測定チャートである。
【図11】図11は化合物2(結晶B)のHPLC測定チャートである。
【図12】図12は化合物2(結晶B)のMS測定チャートである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】下記一般式(I)
【化1】
で表される化合物、及び下記一般式(II)
【化2】
で表される化合物の少なくとも1種を有効成分として含有してなる血糖値降下剤。
【請求項1】下記一般式(I)
【化1】
で表される化合物、及び下記一般式(II)
【化2】
で表される化合物の少なくとも1種を有効成分として含有してなる血糖値降下剤。
【図1】
【図2】
【図5】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【図2】
【図5】
【図10】
【図11】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図12】
【公開番号】特開平5−178749
【公開日】平成5年(1993)7月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−81585
【出願日】平成3年(1991)3月19日
【出願人】(591076280)
【公開日】平成5年(1993)7月20日
【国際特許分類】
【出願日】平成3年(1991)3月19日
【出願人】(591076280)
[ Back to top ]