説明

血糖測定装置及び血糖値管理システム

【課題】医療従事者に血糖値情報と共に、血糖値情報に影響を与える詳細な食事等のイベント情報も提供することができる血糖測定装置等を提供すること。
【解決手段】血糖情報取得部16と、表示部12と、計時装置14と、入力部13と、イベント情報記憶部と、血糖情報取得部が血糖情報を取得すると、血糖情報の時刻情報と関連付けて時刻情報付血糖情報とする時刻情報付血糖情報処理部22と、イベント情報のいずれかが入力部で特定されると、この特定されたイベント情報を、特定したイベント情報の時刻情報と関連付けて時刻情報付イベント情報とする時刻情報付イベント情報処理部20と、を有し、イベント情報は、複数種の食事内容情報及びインスリン投与情報を含み、これら複数種の食事内容情報及びインスリン投与情報のいずれかを選択するために、これらを表示部に表示させる血糖測定装置10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、血糖値を測定する血糖測定装置及び血糖測定装置が取得した血糖情報を管理する血糖値管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、血糖計には、食事の事象を入力する食事ボタンが備わっており、利用者がこのボタンを押下することにより、その事象が記憶される構成となっている。このため、後で、医師等の医療従事者は、この取得した食事データを基に、血糖値データを適正に評価し、糖尿病の治療に役立てることができる構成となっていた(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開WO 2008/136437 A1号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の構成では、医療従事者は、血糖計から、食事の事象の有無情報が入手することができるだけで、血糖値に影響を与える他の情報、すなわち、食事の内容に関する詳細な情報や食事に付随した薬物投与に関する情報は依然として、患者等から取得する必要があり、情報として不十分であるという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、医療従事者に血糖値情報と共に、血糖値情報に影響を与える詳細な食事等のイベント情報も提供することができる血糖測定装置及び血糖値管理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、本発明にあっては、血糖情報を取得する血糖情報取得部と、各種の情報を表示するための表示部と、時刻情報を生成する計時装置と、各種の情報を入力するための入力部と、前記血糖情報に影響を与えるイベント情報を記憶するイベント情報記憶部と、前記血糖情報取得部が前記血糖情報を取得すると、前記取得した血糖情報を該取得した血糖情報の時刻情報と関連付けて時刻情報付血糖情報として記憶させる時刻情報付血糖情報処理部と、前記イベント情報のいずれかが前記入力部で特定されると、前記特定されたイベント情報を、該特定されたイベント情報の時刻情報と関連付けて時刻情報付イベント情報として記憶させる時刻情報付イベント情報処理部と、を有し、前記イベント情報は、複数種の食事内容情報及びインスリン投与情報を含み、これら複数種の食事内容情報及びインスリン投与情報のいずれかを選択するために、これらを前記表示部に表示させることを特徴とする血糖測定装置により達成される。
【0007】
前記構成によれば、血糖情報取得部が血糖情報を取得すると、取得した血糖情報の時刻情報と関連付けて時刻情報付血糖情報として記憶させる時刻情報付血糖情報処理部を有している。
したがって、血糖測定装置が取得した血糖情報は、その測定した時刻情報と関連付けられて記憶されている。
また、血糖測定装置は、表示部に表示されたイベント情報のいずれかが入力部で特定されると、この特定されたイベント情報を、特定したイベント情報の時刻情報と関連付けて、時刻情報付イベント情報として記憶させる時刻情報付イベント情報処理部を有している。
したがって、入力されたイベント情報は、その入力した時刻情報と関連付けられて記憶させる構成となっている。
そして、イベント情報は、複数種の食事内容情報及びインスリン投与情報を含み、これら複数種の食事内容情報及びインスリン投与情報のいずれかを選択するために、これらを表示部に表示させる構成となっている。
【0008】
このため、利用者は、自己の食事(その内容として、例えば、通常の食事、間食、酒宴等)又は、自己のインスリン投与があったときは、該当するイベント情報の表示を表示部で選択することで、簡易且つ迅速に自己の行為(イベント)を血糖測定装置に入力することができる。
【0009】
このように、血糖情報及びイベント情報は、それぞれ、その取得した時刻情報と関連付けられているため、後で、医療従事者が血糖情報とイベント情報との関係を、時刻情報との関連で判断することができる。
例えば、血糖値が高い場合、時間的にどの程度前に食事をしたかを知ることができ、その診断がし易いことになる。
また、前記構成では、この食事の内容(食事、間食、酒宴等)に関する情報も有するので、より正確に、血糖値情報に対する影響を判断することができ、このため、より正確に診断や治療を行うことができることになる。
【0010】
好ましくは、前記血糖測定装置と、前記血糖測定装置と通信可能な血糖値管理装置と、を有する血糖値管理システムであって、前記血糖値管理装置は、各種の情報を表示する管理装置側表示部を有し、前記血糖測定装置から取得した前記時刻情報付血糖情報と前記時刻情報付イベント情報を、前記管理装置側表示部に表示する構成となっていることを特徴とする血糖値管理システムである。
【0011】
前記構成によれば、血糖測定装置から取得した時刻情報付血糖情報と時刻情報付イベント情報を、管理装置側表示部に表示することができる。
したがって、医療従事者は、例えば、血糖測定装置から取得した時刻情報付血糖情報と時刻情報付イベント情報を、血糖測定装置とは異なる血糖値管理装置の管理装置側表示部で表示させ、診断等をすることができる。
【0012】
好ましくは、前記血糖値管理装置は、前記時刻情報付イベント情報を記憶する時刻情報付イベント情報記憶部と、前記時刻付イベント情報の異なるイベント情報の内容に対応する異なる形状を有するアイコン情報を記憶するアイコン情報記憶部と、各種の情報の入力を行う管理装置側入力部と、を有し、前記管理装置側表示部が、前記イベント情報の内容に対応する前記アイコン情報を選択的に表示する構成となっていると共に、前記管理装置側入力部が、前記管理装置側表示部に表示されている前記アイコン情報の一つを選択したとき、前記イベント情報に関連付けられた時刻情報が前記管理装置側表示部に表示される構成となっていることを特徴とする血糖値管理システムである。
【0013】
前記構成によれば、管理装置側表示部が、当該イベント情報の内容に対応するアイコン情報を選択的に表示する構成となっている。
したがって、管理装置側表示部の利用者である医療従事者は、当該アイコン情報を視認するだけで、一見して、その内容、例えば、食事、間食、酒宴又はインスリン投与であるかを認識することができる。
また、管理装置側入力部で、この管理装置側表示部に表示されているアイコン情報の一つを選択したとき、該選択されたアイコン情報に対応するイベント情報の時刻情報が管理装置側表示部に表示される構成となっているので、医療従事者は、当該イベントの実施時刻も、直ぐに管理装置側表示部上で確認できるので、迅速な診断等を行うことができる。
【0014】
好ましくは、前記管理装置側表示部に表示された前記時刻情報付血糖情報の血糖情報の一つを、前記管理装置側入力部で選択したときに、該選択された血糖情報の時刻情報に基づき、それ以前の所定時間以内に、前記時刻付イベント情報のうちの特定のイベント情報が存在するか否かを判断し、存在するときは、前記選択された血糖情報の時刻情報と前記特定の時刻情報付イベント情報の時刻情報との差の時間情報を前記管理装置側表示部に表示する食後血糖情報判断処理部を有することを特徴とする血糖値管理システムである。
【0015】
前記構成によれば、管理装置側表示部に表示された時刻情報付血糖情報の血糖情報の一つを、管理装置側入力部で選択したときに、当該血糖情報の時刻情報に基づき、それ以前の所定時間以内に、時刻付イベント情報のうちの特定のイベント情報が存在するか否かを判断し、存在するときは、当該血糖情報の時刻情報と当該特定の時刻付イベント情報の時刻情報との差の時間情報を管理装置側表示部に表示する食後血糖情報判断処理部を有する。
このため、管理装置側表示部を視認しながら診断等を行っている医療従事者が、例えば、特定の血糖値を管理装置側入力部で選択すると、その直前の特定のイベント、例えば、「食事(間食、酒宴、インスリン投与ではなく)」のイベントとの時間が表示されるので、診断等を迅速且つ適確に行うことができる。
【0016】
好ましくは、前記血糖値管理装置は、血糖情報の分類基準情報を記憶する分類基準情報記憶部を有し、前記管理装置側表示部に表示された前記時刻情報付血糖情報の血糖情報が、前記分類基準情報の特定の分類基準の範囲内にあるときは、当該血糖情報の時刻以前で最も近接した時刻情報を有する前記時刻付イベント情報のイベント情報に対応する前記アイコン情報の表示に、他と区別し得る強調表示を付加する強調表示付加処理部を有することを特徴とする血糖値管理システムである。
【0017】
前記構成によれば、血糖値管理装置は、血糖情報の分類基準情報を記憶する分類基準情報記憶部を有し、管理装置側表示部に表示された時刻情報付血糖情報の血糖情報が、分類基準情報の特定の分類基準の範囲内にあるときは、当該血糖情報の時刻以前で最も近接した時刻情報を有する時刻付イベント情報のイベント情報に対応するアイコン表示に、他と区別し得る強調表示を付加する強調表示付加処理部を有する。
このため、管理装置側表示部に表示された時刻情報付血糖情報の血糖情報が、分類基準情報の特定の基準内に該当するとき、例えば、血糖値が低血糖の基準に該当したとき、その低血糖の原因の可能性の高い、直近の食事やインスリン等のイベントのアイコン表示が強調されて示される。
したがって、特定の基準に入る、例えば低血糖等の深刻な症状が発生した場合に、医療従事者に注意を促すことができる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明によれば、医療従事者に血糖値情報と共に、血糖値情報に影響を与える詳細な食事等のイベント情報を提供することができる血糖測定装置及び血糖値管理システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかる血糖値管理システムを示す概略図である。
【図2】血糖計側ディスプレイでのイベントの表示例を示す概略図である。
【図3】図1の血糖計の主な構成を示す概略ブロック図である。
【図4】図1の血糖値管理装置の主な構成を示す概略ブロック図である。
【図5】血糖値管理システムの主な動作を示す概略フローチャートである。
【図6】血糖値管理システムの主な動作を示す他の概略フローチャートである。
【図7】管理装置側ディスプレイで、患者の「イベント情報」及び「血糖値情報」を表示した画面例を示す概略図である。
【図8】管理装置側ディスプレイに表示される他の画面例を示す概略図である。
【図9】管理装置側ディスプレイに表示される他の画面例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明の好適な実施の形態を添付図面を参照しながら、詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。
【0021】
図1は、本発明の実施の形態にかかる血糖値管理システム1を示す概略図である。図1に示すように、血糖値管理システム1は、患者の血糖値を計測する血糖測定装置(血糖計)10を有している。
この血糖計10は、図1に示すように、患者の血液を採取するチップを装着するためのチップ装着部11や各種データを表示するための表示部である血糖計側ディスプレイ12を有している。
また、患者が食事等をし、又はインスリン投与をした場合に、かかるイベント情報が実施されたことを血糖計10に入力するための入力部である例えば、イベントボタン13や、時間設定ボタン14も血糖計10は有している。
【0022】
このイベントは、血糖情報である血糖値に影響を与える情報であり、具体的には、「食事」、「間食」、「酒宴」及び「インスリン」投与の情報となっている。ここで、「食事」とは通常1日3回摂る朝食、昼食、夕食を指し、「間食」とは「食事」に比べて簡単で量が少なく、「食事」の間に摂るものであり、夜食も含まれる。「酒宴」とは一般にアルコールを摂取するものであり、食事時間も「食事」より長くなることが多い。
すなわち、患者が食事をする場合、通常の「朝食」「昼食」「夕食」と「間食」又は「酒宴」とでは、そのカロリー摂取量や食事の時間、飲食物の種類が大きく異なり、「血糖値」に与える影響も大きく異なる。また、多くの場合、食前に行う「インスリン」投与も当然ながら「血糖値」に大きな影響を与える。
【0023】
そこで、本実施の形態では、これら「食事」「間食」「酒宴」及び「インスリン」投与を、血糖値に影響を与えるイベントとし、患者等がいずれのイベントを選択入力する構成となっている。
具体的には、図2に示すように、血糖計10の血糖計側ディスプレイ12には、その左側には、血糖値(「100」)が表示され、右上には「日付(「3月27日」)、中段には「時刻(「18時11分」)、下段にイベントが表示される。なお、図2は、イベントの表示例を示す概略図である。
【0024】
この血糖計側ディスプレイ12では、図2に示すように「食事」→「間食」→「酒宴」→「インスリン」の順にイベント表示が変化する構成となっている。このイベント表示の変更は、図1のイベントボタン13を押下することで実行され、長押しすることで決定される構成となっている。
これら「食事」等のイベント表示のデータは、後述するように、血糖計10の内部に予め記憶されている。
このように、「食事」、「間食」及び「酒宴」が食事内容情報の一例であり、「インスリン」投与が、インスリン投与情報の一例となっている。
【0025】
一方、図1に示すように、血糖計10と血糖値管理装置40は、通信可能な状態となっている。なお、図1では、血糖計10と血糖値管理装置40とが、有線で接続されている例を示しているが、本実施の形態と異なり、無線で両者が接続されていても良いことは勿論である。
血糖値管理装置40は、図1に示すように、各種情報を表示するための管理装置側表示部である管理装置側ディスプレイ41や、操作者が情報を入力等する管理装置側入力部である入力装置42を有している。
【0026】
図1の血糖計10及び血糖値管理装置40は、コンピュータを有し情報を制御している。
このコンピュータは、CPU、RAM、ROM等を有し、これらは、例えばバスを介して配置されている。
このバスは、すべてのデバイスを接続する機能を有し、アドレスやデータパスを有する内部パスである。CPUは所定のプログラムの処理を行う他、バスに接続されたROM等を制御している。ROMは、各種プログラムや各種情報等を格納している。RAMは、プログラム処理中のメモリの内容を対比し、若しくはプログラムを実行するためのエリアとしての機能を有する。
【0027】
図3は、図1の血糖計10の主な構成を示す概略ブロック図である。図3に示すように血糖計10は、血糖計10を制御する血糖計側制御部15を有している。
また、血糖計10は、図3に示すように、実際にチップ等を介して血糖値データを取得する血糖情報取得部である血糖測定部16、時刻情報を提供する計時装置17、図1の血糖値管理装置40と通信するための血糖計側通信装置18や上述の血糖計側ディスプレイ12、イベントボタン13等を有し、これらが血糖計側制御部15と接続されている。
図3の各種プログラムや記憶部等も血糖計側制御部15と接続しているが、これらについては、後述する。
【0028】
図4は、図1の血糖値管理装置40の主な構成を示す概略ブロック図である。
図4に示すように、血糖値管理装置40は、血糖値管理装置40を制御する管理装置側制御部43を有している。
また、図4に示すように、血糖値管理装置40は、図1の血糖計10と通信するための管理装置側通信装置44や上述の管理装置側ディスプレイ41及び入力装置42を有し、これらは、管理装置側制御部43と接続されている。
図4の各種プログラムや記憶部も管理装置側制御部43と接続されているが、これらについては、後述する。
【0029】
図5及び図6は、血糖値管理システム1の主な動作を示す概略フローチャートである。以下、図5及び図6のフローチャートに沿って血糖値管理システム1の動作を説明すると共に、図1乃至図4の構成も併せて説明する。
【0030】
先ず、図5に従い、血糖計10において血糖値データ等を取得する工程を説明する。
血糖計10が動作するとST1及びST2が並列的に実行されるが、本実施の形態では、説明の便宜上、ST1から説明する。
患者が、例えば、朝食を食べた場合、これは「食事」イベントに相当するので、患者は、図1の血糖計10の血糖計側ディスプレイ12を見ながらイベントボタン13を操作して、図2の血糖計側ディスプレイ12に「食事」と表示させる。
【0031】
具体的には、操作者がイベントボタン13を押下する毎に、図3のイベント情報記憶部であるイベントデータ記憶部19内に記憶されている「食事」「間食」「酒宴」「インスリン」を順に表示する。
したがって、操作者がインスリン投与をした場合は、同様に、イベントボタン13を押下して「インスリン」を表示させることになる。
そして、イベントボタン13を長押しすることで、例えば、「食事」のイベントに決定されることになる。
【0032】
ST1で、イベントが決定すると、ST3へ進む。ST3では、時刻情報付イベント情報処理部である、図3の時刻付イベント情報生成部(プログラム)20が動作し、現在、血糖計側ディスプレイ12に表示されているイベント(例えば、「食事」)を特定し、計時装置17から現在時刻を取得し、この現在時刻とイベント「食事」とを関連付けて、時刻情報付イベント情報である時刻付イベント情報として、図3の時刻付イベント情報記憶部21に記憶する。
【0033】
一方、ST2で、血糖計10の血糖計本体16による血糖測定が実行されると、ST4へ進む。ST4では、時刻情報付血糖情報処理部である、図3の時刻付血糖値情報生成部(プログラム)22が動作し、血糖測定部16が計測した血糖値データと、この計測の時刻を計時装置17から取得し、両者を関連付けて、時刻情報付血糖情報である時刻付血糖値情報として、時刻付血糖値情報記憶部23に記憶する。
【0034】
次いで、ST5へ進む。ST5では、血糖値管理装置40へデータ送信の指示があったか否かを判断し、指示があった場合は、ST6へ進む。
ST6では、図3の時刻付イベント情報記憶部21及び時刻付血糖値情報記憶部23に記憶されている、時刻と関連付けられている時刻付イベント情報及び時刻付血糖値情報を、血糖計側通信装置18を用いて、図1の血糖値管理装置40へ送信する。
【0035】
このように、本実施の形態の血糖計10では、イベント情報及び血糖値情報をそれぞれ、入力時刻及び測定時刻と関連付けて記憶し、この関連を付けた状態で、血糖値管理装置40へ送信するので、イベント情報と血糖値情報との時間的関係を判断しやすい情報となり、医療従事者(主に医師や糖尿病療養指導士)にとって診断等に使い易い情報となる。
例えば、血糖値情報と、その前の食事の時間との関係を正確に把握することが可能となる。
また、この送信されるイベント情報は、従来のような「食事」だけの情報ではなく「間食」「酒宴」「インスリン」といった血糖値への影響が異なる詳細なイベント情報となっているので、医療従事者の診断等の際に、より正確な診断等を行うことができることになる。
【0036】
次いで、図6の血糖値管理装置40における処理工程を説明する。
先ず、ST11で、図1の血糖値管理装置40は、その管理装置側通信装置44を介して、血糖計10から時刻付イベント情報及び時刻付血糖値情報を受信し、これらの情報を図4の受信データ記憶部45に記憶する。このため、受信データ記憶部45が、時刻情報付イベント情報記憶部の一例となっている。
【0037】
次いで、ST12へ進む。ST12では、医療従事者が患者の血糖値データを見るために、図1の血糖値管理装置40の管理装置側ディスプレイ41に、当該患者の血糖計10から取得した「時刻付イベント情報及び時刻付血糖値情報」のそれぞれ「イベント情報」及び「血糖値情報」を表示させる。
このとき、血糖値管理装置40は、これらのデータを表形式で表示する。具体的には、「血糖値情報」は、グラフ形式で表示する
また、「イベント情報」は、「食事」等の言葉ではなく、アイコンで表示する。具体的には、例えば、「食事」は「◎」、「間食」は「○」、「酒宴」は「□」、「インスリン」投与は「△」とする。
本実施の形態では、図面での表示の都合上、かかる簡易な図形で示しているが、本実施の形態と異なり、「食事」は「定食の絵」、「間食」は「サンドイッチの絵」、「酒宴」は「ビールの絵」、「インスリン」は「注射器の絵」としても構わず、このように表示することが、むしろ好ましい。
【0038】
このようなアイコン表示は、図4のアイコン選択判断部(プログラム)46が動作して、上述のアイコン表示が記憶されている図4のアイコン情報記憶部であるイベントアイコン記憶部47を参照して、実行する。
【0039】
図7は、血糖値管理装置40の管理装置側ディスプレイで、患者の「イベント情報」及び「血糖値情報」を表示した画面例を示す概略図である。
図7に示すように、X軸に時間を示し、Y軸に血糖値(mg/dL)を示している。そして、図7の破線で区分された領域は、「a」が「低血糖領域」、「b」が「正常領域」、「c」が「やや高血糖領域」、「d」が「高血糖領域」を示す。本実施の形態では、図面の作図上の制約から破線で区分しているが、本実施の形態と異なり、色を違えて係る領域を区分しても構わず、その場合、医療従事者がより判断し易いので、むしろ好ましい。
これら血糖値レベルの基準情報は、分類基準記憶部である、図4の血糖値基準データ記憶部52に記憶されている。したがって、血糖値基準データ記憶部52から取得して管理装置側ディスプレイ41に、図7に示すように表示する。
【0040】
なお、図7では、患者の「血糖値情報」は、グラフで表され、イベント情報は「◎(食事)」、「○(間食)」、「□(酒宴)」、「△(インスリン)」の各図形で示されている。
したがって、図7の画面を見た医療従事者は血糖値情報とイベント情報と関係を一見して、把握することができ、診断等がし易くなっている。
【0041】
次いで、ST13乃至ST16へ進む。これらST13乃至ST16は、それぞれ別個に動作するが、本実施の形態では、説明の便宜上、ST13、ST14、ST15、そしてST16の順に説明する。
先ず、ST13では、食後血糖値判断部(プログラム)48が動作して、例えば、図7のグラフで示される血糖値情報のいずれかが入力装置42で選択されたか(カーソルで選択)否かを判断する。
【0042】
図7の例では、例えば、矢印(イ)の血糖値情報を選択する。すると、ST17へ進み、この選択された血糖値情報と関連付けられている図4の受信データ記憶部45内の「時刻情報」を取得する。そして、当該時刻以前の所定時間以内、例えば、2時間以内にイベント情報のうち「食事」イベントが存在するか否かを判断する。
図7では、矢印(ロ)で示す部分に「食事(◎)」イベント情報があり、このイベントは、矢印(イ)の2時間以内である。
【0043】
このように、「食事」イベント情報が存在する場合は、ST18へ進む。ST18では、図4の経過時間生成部(プログラム)49が動作し、図7の矢印(ロ)で示すイベント情報と関連付けられている受信データ記憶部45内の「時刻情報」を取得し、矢印(イ)の「時刻情報」との差を求める。
本実施の形態では「48分」であるため、この差分時間情報を図7に示すように、画面に表示する。
このように、表示することで、医療従事者が注目する「血糖値情報」と「食事」との時間的関係を瞬時に把握することができるので、迅速な診断に寄与することになる。
なお、食後血糖値判断部(プログラム)48及び経過時間生成部(プログラム)49は、食後血糖値情報判断処理部の一例となっている。
【0044】
次に、図6のST14について説明する。ST14では、図4のアイコン選択判断部(プログラム)50が動作して、操作者である医療従事者が入力装置42で、例えば、図7の矢印(ロ)で示す食事イベント表示(◎)を選択(カーソルで選択)したか否かを判断する。
【0045】
ST14で、イベント表示を選択したと判断した場合は、ST19へ進む。ST19では、図4のアイコン日時情報取得部(プログラム)51が動作して、ST14で、選択した図7の矢印(ロ)の食事イベント表示(イベント情報)と関連付けられている「時刻情報」を図4の受信データ記憶部45から取得する。
そして、図7に示すように、管理装置側ディスプレイ41上に表示する、図7の例では「2/13 7:05」と表示される。
したがって、管理装置側ディスプレイ41を視認している医療従事者は、血糖値情報に影響を与えると考える「食事イベント」の時刻情報を迅速に取得することができるので、迅速な診断等が可能となる。
【0046】
次に、図6のST15について説明する。ST15では、図4に示す低血糖データ取得部(プログラム)53が動作して、図8に示す画面に表示されている血糖値情報から「低血糖領域」に存在するものを探索する。
図8は、管理装置側ディスプレイ41に表示される画面例を示す概略図である。
図8に示す例では、矢印(ハ)で示す血糖情報が、低血糖領域に存在するので、この血糖情報(ハ)を特定する。
【0047】
ST15で、図8に示すように、低血糖情報を特定すると、ST20へ進む。ST20では、図4の直前イベントデータ取得部(プログラム)54が動作し、ST15で特定した血糖情報の時刻情報を図4の受信データ記憶部45から取得し、当該時刻情報と時刻的に最も近接した、例えば、直近の時刻情報と関連付けられているイベント情報を、受信データ記憶部54から探索し、特定する。
図8の例では、矢印(ニ)の間食イベントと矢印(ホ)のインスリン(投与)のイベントが相当する。
そこで、本実施の形態では、これらのイベント表示(「○」及び「△」)を四角で囲む等して強調表示をする。
本実施の形態と異なり、例えば、イベント表示を赤色等とし、強調表示しても良く、むしろ、それが好ましい。
【0048】
したがって、低血糖という比較的深刻な事態が発生している場合に、その原因となっている可能性が高いイベント情報を画面上で表示して、医療従事者に注意を促すことができ、迅速な診断等をすることができる。
【0049】
次に,図6のST16について説明する。ST16では、図4の食事イベント基準低血糖データ取得部(プログラム)55が動作して、管理装置側ディスプレイ41に表示の画面上の「食事イベント(◎)」から連続して3回「低血糖領域(a)」に血糖情報が存在するか否かを判断する。
具体的には、図9に示すように、矢印(ヘ)で示す、食事イベント(◎)の後に、矢印(ト)の血糖情報が「低血糖領域(a)」に存在し、矢印(チ)で示す食事イベントの後に、矢印(リ)で示す血糖情報が「低血糖領域(a)」に存在する。さらに、矢印(ヌ)で示す食事イベントの後に、矢印(ル)で示す血糖情報が「低血糖領域(a)」に存在する。
このような場合は、食事イベントの後、3回連続して、血糖情報が「低血糖領域(a)」に存在すると判断する。
図9は、管理装置側ディスプレイ41に表示される他の画面例を示す概略図である。
【0050】
ST16で、図9に示すように、3回連続して「血糖情報」が「低血糖領域(a)」に存在する場合は、ST21へ進む。
ST21では、図4のインスリン処方確認メッセージ記憶部56内のメッセージを図9に示すように、管理装置側ディスプレイ41に表示すると共に、図9に示すように、この場合、「低血糖領域」の血糖情報の直前のイベント表示(図9では、食事イベントとインスリン投与)をST20と同様に強調表示する。
【0051】
したがって、管理装置側ディスプレイ41を視認している医療従事者に、低血糖に影響のあるインスリンの処方の確認を促すことができる。
【0052】
本発明は、上述の各実施の形態に限定されない。例えば、3回連続して血糖情報が「低血糖領域(a)」に存在する場合に、インスリン処方確認メッセージを表示するように構成されているが、2回連続でも4回以上連続したときでもメッセージを表示するよう設定してもよい。また連続でなくても、所定期間のうち所定回数「低血糖領域(a)」に存在した場合にメッセージを表示するようにしても良い(例えば、血糖情報5回のうち3回)。また、血糖情報が「低血糖領域(a)」に存在する場合の処理について説明したが、血糖情報が「高血糖領域(d)」に存在する場合の処理についても同様に設定することができる。
【符号の説明】
【0053】
1・・・血糖値管理システム、10・・・血糖計、11・・・チップ装着部、12・・・血糖計側ディスプレイ、13・・・イベントボタン、14・・・時間設定ボタン、15・・・血糖計側制御部、16・・・血糖計本体、17・・・計時装置、18・・・血糖計側通信装置、19・・・イベントデータ記憶部、20・・・時刻付イベント情報生成部(プログラム)、21・・・時刻付イベント情報記憶部、22・・・時刻付血糖値情報生成部(プログラム)、23・・・時刻付血糖値情報記憶部、40・・・血糖値管理装置、41・・・管理装置側ディスプレイ、42・・・入力装置、43・・・管理装置側制御部、44・・・管理装置側通信装置、45・・・受信データ記憶部、46・・・アイコン選択判断部(プログラム)、47・・・イベントアイコン記憶部、48・・・食後血糖値判断部(プログラム)、49・・・経過時間生成部(プログラム)、50・・・アイコン選択判断部(プログラム)、51・・・アイコン日時情報取得部(プログラム)、52・・・血糖値基準データ記憶部、53・・・低血糖データ取得部(プログラム)、54・・・直前イベントデータ取得部(プログラム)、55・・・食事イベント基準低血糖データ取得部(プログラム)、56・・・インスリン処方確認メッセージ記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血糖情報を取得する血糖情報取得部と、
各種の情報を表示するための表示部と、
時刻情報を生成する計時装置と、
各種の情報を入力するための入力部と、
前記血糖情報に影響を与えるイベント情報を記憶するイベント情報記憶部と、
前記血糖情報取得部が前記血糖情報を取得すると、前記取得した血糖情報を該取得した血糖情報の時刻情報と関連付けて時刻情報付血糖情報として記憶させる時刻情報付血糖情報処理部と、
前記イベント情報のいずれかが前記入力部で特定されると、前記特定されたイベント情報を、該特定されたイベント情報の時刻情報と関連付けて時刻情報付イベント情報として記憶させる時刻情報付イベント情報処理部と、を有し、
前記イベント情報は、複数種の食事内容情報及びインスリン投与情報を含み、これら複数種の食事内容情報及びインスリン投与情報のいずれかを選択するために、これらを前記表示部に表示させることを特徴とする血糖測定装置。
【請求項2】
前記血糖測定装置と、前記血糖測定装置と通信可能な血糖値管理装置と、を有する血糖値管理システムであって、
前記血糖値管理装置は、各種の情報を表示する管理装置側表示部を有し、
前記血糖測定装置から取得した前記時刻情報付血糖情報と前記時刻情報付イベント情報を、前記管理装置側表示部に表示する構成となっていることを特徴とする請求項1に記載の血糖値管理システム。
【請求項3】
前記血糖値管理装置は、前記時刻情報付イベント情報を記憶する時刻情報付イベント情報記憶部と、
前記時刻付イベント情報の異なるイベント情報の内容に対応する異なる形状を有するアイコン情報を記憶するアイコン情報記憶部と、
各種の情報の入力を行う管理装置側入力部と、を有し、
前記管理装置側表示部が、前記イベント情報の内容に対応する前記アイコン情報を選択的に表示する構成となっていると共に、前記管理装置側入力部が、前記管理装置側表示部に表示されている前記アイコン情報の一つを選択したとき、前記イベント情報に関連付けられた時刻情報が前記管理装置側表示部に表示される構成となっていることを特徴とする請求項2に記載の血糖値管理システム。
【請求項4】
前記管理装置側表示部に表示された前記時刻情報付血糖情報の血糖情報の一つを、前記管理装置側入力部で選択したときに、該選択された血糖情報の時刻情報に基づき、それ以前の所定時間以内に、前記時刻付イベント情報のうちの特定のイベント情報が存在するか否かを判断し、存在するときは、前記選択された血糖情報の時刻情報と前記特定の時刻情報付イベント情報の時刻情報との差の時間情報を前記管理装置側表示部に表示する食後血糖情報判断処理部を有することを特徴とする請求項3に記載の血糖値管理システム。
【請求項5】
前記血糖値管理装置は、血糖情報の分類基準情報を記憶する分類基準情報記憶部を有し、
前記管理装置側表示部に表示された前記時刻情報付血糖情報の血糖情報が、前記分類基準情報の特定の分類基準の範囲内にあるときは、当該血糖情報の時刻以前で最も近接した時刻情報を有する前記時刻付イベント情報のイベント情報に対応する前記アイコン情報の表示に、他と区別し得る強調表示を付加する強調表示付加処理部を有することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の血糖値管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−206486(P2011−206486A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−79894(P2010−79894)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】