説明

術者椅子の固定装置

【課題】 術者椅子の固定装置に関し、ロックペダルなどの摩耗を防ぎ、椅子本体を固定するに十分な固定状態を維持し椅子固定および解除を簡易な操作で行わせようとする。
【解決手段】 脚台8に設けられるロック本体10と、一端がロック本体10に軸支され、他端が上方に付勢されるスプリングが設けられる第1リンク13と、該第1リンク13と平行に設けられる第2リンク20にアジャスタ用ブラケット15を取り付け、ロックペダル25の上下動作で前記アジャスタ用ブラケット15を上下に移動させることによってアジャスタを床に固定または解除させる。

【考案の詳細な説明】
【0001】
【考案の属する技術分野】
本考案は、眼科、脳外科等で細密な手術または検診等を行う際に医師などの術者が着座する椅子の固定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
眼科、脳外科等での細密な手術または検診等を行う際、その手術または検診等が長時間に及ぶこともあり術者は術者椅子に腰掛けて手術または検診を行うようにしている。
さらには微細な手元の動作を必要とするため椅子には肘を固定できる肘置き部が設けられている。
【0003】
以上のことから、術者椅子は、図3に示すように、椅子シート3を上下動させる駆動部1、昇降杆が内蔵される昇降部2、椅子シート3には背凭れ4が取り付けられ肘置き部5、また椅子シート前方部にはステップ支持板6、該ステップ支持板6の先端に固定されるステップ部7が設けられている。
また椅子自体を移動自在とするため前記駆動部1の下部および前記ステップ支持板の最下部に固定される脚台8の前方先端部にはそれぞれキャスター9が設けられている構成となっている。
【0004】
従来の術者椅子の固定装置は、椅子の移動可能状態を示す図4および椅子を固定した状態を示す図5により説明すると、キャスターが設けられる脚台8の近傍部にロック本体28が固定され、アジャスター棒29が該ロック本体28を挿通するように設けられている。
さらにロックペダル31がロック本体28に支点30で軸支されロック本体28とロックペダル31の間にはスプリング32が設けられており常に上方に付勢している。
【0005】
またアジャスター棒29は、ロック本体28に設けられるスプリング33によって上方に付勢され且つアジャスター棒29は該ロックペダル31に挿通している。
従って、ロックペダル31を踏み込むとアジャスター棒29は該ロックペダル31に挿通しているためフリーとなりアジャスター棒29は上方へ押し上げられる。またアジャスター棒29を押し下げた状態でロックペダル31を放すとアジャスター棒29はロックペダル31の挿通部でセリ状態となり固定されるようになっている。
【0006】
【考案が解決しようとする課題】
前記したように、従来の術者椅子の固定装置は、椅子を床に固定させる際、両足等で簡易に固定させることができない。
アジャスター棒29がロックペダル31に挿通されているため、ロックペダルの摩耗等でロックペダルが破損する、また本体を固定するに十分な固定状態が得られないという問題点がある。
【0007】
また寸法の長いロック棒などを使用しているため、施術等の邪魔になり美観を損なうという問題があった。
本考案は、前記した問題点を解決せんとするもので、ロックペダルなどの摩耗を防ぎ、椅子本体を固定するに十分な固定状態を維持し、椅子固定および解除を簡易な操作で行わせようとする術者椅子の固定装置を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本考案の術者椅子の固定装置は、前記目的を達成せんとするもので、その手段としては、脚台8に設けられるロック本体10と、一端がロック本体10に軸支され、係止溝13aが設けられ且つ略中央部にアジャスタ用ブラケット15の上部が軸支される第1リンク13と、一端がロック本体10に軸支され、他端がアジャスタ用ブラケット15の略中央部が軸支され、且つ第1リンクと13平行に設けられる第2リンク20と、ロック本体10に軸支され係止ピン27が設けられるロックペダル25と、一端がロック本体10に固定され他端が前記第1リンク13の先端に取付られ上方に付勢するスプリング18とからなる。
【0009】
【考案の実施の形態】
以下、本考案に係る術者椅子の固定装置の実施の形態を図1〜図2で説明する。
なお、図1、図2は要部のみを示し、従来の脚台8より下部のみを示している。
8は脚台、9はキャスター、10は該脚台8にネジ11およびネジ12で設けられるロック本体である。
13はロック本体10に軸14で軸支される第1リンクであり、係止溝13aが設けられている。
【0010】
15はアジャスタ用ブラケットであり、前記第1リンク13の中間位置で軸16により軸支されている。
該アジャスタ用ブラケット15の下端にはネジ23で上下調整自在にアジャスタ24が設けられている。
20は一端がロック本体10に軸22で軸支され、他端が該アジャスタ用ブラケット15に軸21で軸支され且つ前記第1リンク13と平行に設けられる第2リンクである。
【0011】
また該第1リンク13の先端にはスプリング18がピン17によって設けられており、スプリング18の他端はロック本体10にピン19で取り付けられている。
25はロックペダルであり、ロック本体10に軸26で軸支されており、軸26には係止ピン27が設けられている。
【0012】
以上のように構成されているため、椅子を床に固定する場合、第2図の椅子の床固定状態から前記ロックペダル25を下方へ押し下げる(矢印A方向)と係止ピン27は係止溝13aから外れ、第1リンク13を下方へ押し下げる。
同時に、第1リンク13および第2リンク20はアジャスタ用ブラケット15を押し下げ床にアジャスタ24を床に接地させる。
その際、上方に付勢されているスプリング18も同時に下方に押し下げられるようになる。
【0013】
従って、アジャスタ24が床に接地した状態でロックペダル25に設けられる係止ピン27は第1リンク13を係止した状態を維持することによって椅子は固定される。
次に、アジャスタ24を床に接地した状態からロック解除を行う場合は、ロックペダル25を足等で上方へ押し上げることによって、第1リンク13に係止された係止ピン27を係止状態から解除させ、係止ピン27を係止溝13a内に案内させることによって再度係止固定され、アジャスタ24は床から上方に放れるようになる。この時、スプリング18の上方への付勢力によって第1リンク13は上方へ押し上げられるから第1リンク13に係止している係止ピン27は係止溝に係止され係止状態を維持する。
【0014】
【考案の効果】
本考案の術者椅子の固定装置は、以上のように構成されているので、椅子を床に固定させる際、片足で簡易に固定させることができる。
また寸法の長いロック棒などは使用しないですむため、邪魔にならず簡単な構造となる。
さらにはロック棒などを使用していないため摩耗等でロックペダルが破損することなく十分な固定状態が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本考案の実施の形態における術者椅子の固定装置の椅子の移動可能状態を示す要部拡大側面図である。
【図2】本考案の実施の形態における術者椅子の固定装置の椅子が床に固定した状態を示す要部拡大側面図である。
【図3】本考案の実施の形態における術者椅子の全体側面図である。
【図4】従来の術者椅子の固定装置の椅子の移動可能状態を示す要部拡大側面図である。
【図5】従来の術者椅子の固定装置の椅子が床に固定した状態を示す要部拡大側面図である。
【符号の説明】
8 脚台
9 キャスター
10 ロック本体
13 第1リンク
13a 係止溝
15 アジャスタ用ブラケット
20 第2リンク
18 スプリング
25 ロックペダル
27 係止ピン

【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】脚台8に設けられるロック本体10と、一端がロック本体10に軸支され、係止溝13aが設けられ且つ略中央部にアジャスタ用ブラケット15の上部が軸支される第1リンク13と、一端がロック本体10に軸支され、他端がアジャスタ用ブラケット15の略中央部が軸支され、且つ第1リンク13と平行に設けられる第2リンク20と、ロック本体10に軸支され係止ピン27が設けられるロックペダル25と、一端がロック本体10に固定され他端が前記第1リンク13の先端に取付られ上方に付勢するスプリング18とから構成され、前記ロックペダル25の上昇位置にあっては前記係止ピン27が係止溝13aに係合されてアジャスタ用ブラケット15を上昇位置に保持し、ロックペダル25を押下した状態にあっては、前記スプリング18のバネ力に抗してアジャスタ用ブラケット15を下降させることを特徴とする術者椅子の固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【登録番号】第3037464号
【登録日】平成9年(1997)2月26日
【発行日】平成9年(1997)5月16日
【考案の名称】術者椅子の固定装置
【国際特許分類】
【評価書の請求】未請求
【出願番号】実願平8−12562
【出願日】平成8年(1996)11月5日
【出願人】(000108672)タカラベルモント株式会社 (113)