説明

衛生洗浄装置

【課題】本発明は、適切なタイミングでノズル洗浄を行い、ノズルに汚物等が固着するのを防止する。
【解決手段】衛生洗浄装置1は、噴射孔2A1,2A2が形成されたノズル本体2Aと、ノズル本体2Aの外側を覆う洗浄室2Dと、ノズル本体2A及び洗浄室2Dに洗浄水を供給する洗浄水供給手段2Bと、ノズル本体2Aを移動させるノズル駆動手段2Cと、利用者の存在を検知する人体検知手段4と、利用者による利用頻度が低下する低利用状態に移行したか否かを検出する低利用状態検出手段3と、低利用状態へ移行した場合、利用者の存在が検知されていないときに、ノズル洗浄工程を実行させるノズル洗浄制御手段5を備える。これにより、汚物等がノズル本体2Aに固着するのを防止して手作業によるノズル清掃の手間を軽減でき、無駄なノズル洗浄を防止して洗浄水の消費量や消費電力を低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレに設けられ、人体の局部を洗浄可能な衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体局部に洗浄水を噴射して洗浄する衛生洗浄装置では、例えば、水垢や汚物等がノズルに付着することがある。そこで、衛生洗浄の開始時及び終了時に、ノズルの表面に洗浄水を噴射させて汚物等を取り除く技術が提案されている(特許文献1)。また、ノズルの表面に定期的に洗浄水を吹き付けてノズルを常時濡れた状態に保持し、衛生洗浄時に汚物等がノズル表面に付着するのを防止する技術も提案されている(特許文献2)。
【特許文献1】特許第2878460号明細書
【特許文献2】特開2003−293431号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
衛生洗浄の開始時及び終了時にノズルを洗浄する第1の従来技術では、利用者が衛生洗浄を利用する前、及び、利用者が衛生洗浄を終えた後の両方で、ノズルを洗浄するため、ノズルに汚物等が付着するのを抑制することができる。しかし、衛生洗浄の前後に実行されるノズル洗浄だけでは、ノズルに付着した便や水垢等の汚物等を除去できない場合もある。ノズルに汚物等が固着した場合、利用者はノズルを手動で洗浄しなければならず、ノズル清掃の手間がかかり、使い勝手が低い。
【0004】
ノズル表面を常時濡れた状態に保持する第2の従来技術では、定期的に洗浄水をノズルに吹き付けるため、無駄に洗浄水を噴射することも多く、洗浄水や電気を浪費する可能性がある。即ち、この第2の従来技術では、例えば、平日の出勤時や就寝直前等のように衛生洗浄装置の利用頻度が比較的高い時間帯、あるいは、衛生洗浄装置の使用直後であっても、定期的に洗浄水がノズルに噴射される。従って、無駄に洗浄水が噴射される場合が多く、衛生洗浄装置の維持コストが増大する。
【0005】
本発明は、上述の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、利用状態に応じて適切にノズルを洗浄でき、ノズル清掃の手間を軽減できるようにした衛生洗浄装置を提供することにある。本発明の他の目的は、利用状態が低下する時期を自動的に検出し、利用者が不在の場合にノズル洗浄工程を実施することにより、ノズルを清潔に保ち、ノズル清掃の手間を軽減できるようにした衛生洗浄装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る発明は、利用者から入力される指示に基づいて、ノズルに設けられた噴射孔から洗浄水を噴射させることにより、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置であって、ノズルを洗浄するためのノズル洗浄手段と、利用者の存在を検知するための人体検知手段と、利用者による利用頻度が低下する低利用状態に移行したか否かを検出する低利用状態検出手段と、低利用状態検出手段によって低利用状態への移行が検出された場合は、人体検知手段によって利用者の存在が検知されていないときに、ノズル洗浄手段によってノズルを洗浄させるノズル洗浄工程を実行させるノズル洗浄制御手段と、を備える。
【0007】
かかる衛生洗浄装置では、利用者からの指示によって、ノズルの噴射孔から洗浄水を噴射させる。ノズルから噴射された洗浄水は、利用者の人体局部に付着した便等を洗い流し、便器本体のボール部に落下する。
【0008】
人体検知手段は、利用者の存在を検出するもので、例えば、超音波センサ、赤外線センサ、反射型光センサ等のような種々のセンサまたはこれらの組合せを人体検知手段として利用可能である。なお、人体検知手段は、トイレ室内に侵入した物体を検知するための物体検知手段、または、トイレ室内への出入りを検知するための入退室検知手段と呼ぶこともできる。
【0009】
低利用状態とは、利用者による衛生洗浄の利用が相対的に低下する状態を意味する。例えば、利用者の家族構成やライフスタイル等によっても相違するが、利用者が就寝する深夜等には、トイレを利用する機会、即ち、衛生洗浄装置を利用する機会が低下する。相対的に低下するとは、衛生洗浄装置の通常時の利用頻度よりも低下することを意味し、全く利用されない状態を含む。
【0010】
そして、低利用状態検出手段が低利用状態への移行を検出した場合であって、かつ、利用者の存在が検知されていない場合に、ノズル洗浄制御手段は、ノズル洗浄工程を実行させる。
【0011】
ノズル洗浄工程とは、ノズル洗浄手段によってノズルを洗浄させる工程である。ノズル洗浄工程では、例えば、ノズルの表面(噴射孔付近を含む)に付着した汚物等を洗浄水で洗い流す。ノズル洗浄手段は、例えば、ノズルの外側を覆うようにして該ノズルと相対移動可能に設けられ、下面側が開口したノズル洗浄室と、このノズル洗浄室内に洗浄水を噴射させる洗浄水噴射手段とを含んで構成することができる。このように構成されるノズル洗浄手段の場合、例えば、ノズル洗浄室内にノズルを通過させながら、洗浄水噴射手段によりノズルの外部からノズルの表面に向けて洗浄水を噴射させる。これにより、ノズル表面に付着した汚物等を洗い流すことができる。汚物等は洗浄水と共に、ノズル洗浄室の下面側から便器本体のボール部に落下する。また、ノズルの噴射孔をノズル洗浄室内に位置させた状態で、ノズルの噴射孔から洗浄水を噴射させることにより、噴射孔付近の汚物等を洗い流すこともできる。さらに、ノズルの噴射孔から噴射された洗浄水は、ノズル洗浄室の内壁に衝突して跳ね返り、ノズル表面に様々な方向から衝突する。これにより、ノズルの噴射孔付近のみならず、ノズル先端側の表面を洗浄することができる。
【0012】
このように構成される衛生洗浄装置では、低利用状態へ移行し、かつ、利用者の存在が検知されない場合に、ノズル洗浄工程を自動的に実行させる。従って、汚物等がノズルに固着するのを防止することができ、手作業によるノズル清掃の手間を少なくすることができ、利用者の使い勝手が向上する。また、固定された周期で定期的にノズル洗浄を行うのではなく、利用されていないタイミングを見計らってノズル洗浄を行うため、無駄なノズル洗浄工程が行われるのを防止し、衛生洗浄装置の維持コストを低減できる。
【0013】
請求項2に係る発明では、請求項1に係る発明において、低利用状態検出手段は、利用者によって利用された利用履歴を管理する利用履歴管理手段を用いることにより、利用頻度が相対的に高い時間帯から利用頻度が相対的に低い時間帯に移行した場合に、低利用状態への移行を検出する。
【0014】
利用履歴管理手段は、例えば、過去一週間や過去10日間等のように、最新のn日間において、利用者により衛生洗浄装置(または、衛生洗浄装置が設けられるトイレ)が利用された時刻をそれぞれ記憶して管理する。管理する利用時刻は、利用者によって利用された正確な時刻そのものであってもよいし、予め細分化された時間帯のうち利用された時間帯を特定する情報でもよい。例えば、一日を24分割、32分割、64分割等のように複数の時間帯に予め区切っておき、衛生洗浄装置が利用された時間帯を記憶して管理することができる。
【0015】
利用者によって衛生洗浄装置が利用されたか否かを判別する方法としては、種々の方法が考えられる。例えば、静電容量式近接センサや反射型赤外線センサ、超音波センサ等によって、便座に利用者が座ったか否かを検出し、利用者が便座に所定時間以上着座した場合に、利用されたと判定することができる。または、利用者がリモートコントローラ等のような操作指示装置を介して衛生洗浄装置を操作した場合に、衛生洗浄装置が利用されたと判定することができる。
【0016】
このような利用履歴管理手段を用いることにより、低利用状態検出手段は、利用頻度が相対的に高い時間帯から相対的に低くなる時間帯へ移行するタイミングを検知することができ、この移行タイミングを低利用状態への移行として検出することができる。なお、低利用状態への移行であると検出するタイミングとしては、例えば、利用頻度が相対的に高い時間帯から相対的に低い時間帯へ移行する直前、利用頻度が相対的に高い時間帯から相対的に低い時間帯へ移行した時点、利用頻度が相対的に高い時間帯から相対的に低い時間帯へ移行した直後を挙げることができる。
【0017】
請求項3に係る発明では、請求項1に係る発明において、低利用状態検出手段は、節電モードへの移行が検出された場合に、低利用状態への移行を検出する。
【0018】
節電モードとは、通常時よりも電力消費量を低減させる電力制御モードである。節電モードでは、例えば、洗浄水の保温制御や便座の温度制御等の電力消費を伴うトイレの諸機能を停止または低下させることにより、不要な電力消費を抑制する。衛生洗浄装置または衛生洗浄装置の取り付けられるトイレが節電モードを備えている場合、節電モードへの移行を低利用状態への移行であるとして検出することができる。節電モードへの移行は、利用者による衛生洗浄装置の利用が低下する場合であると考えられるためである。
【0019】
節電モードとしては、種々の方法が考えられる。例えば、第1の節電モードとしては、利用者によって予め設定された時刻になった場合に節電する方法が考えられる。第2の節電モードとしては、利用者によって利用された利用履歴を管理する利用履歴管理手段を用い、利用頻度が相対的に高い時間帯から相対的に低い時間帯へ移行するタイミングを検知して、節電させる方法が考えられる。
【0020】
請求項4に係る発明では、請求項1に係る発明において、低利用状態検出手段は、利用者によって最後に利用された時刻から予め設定された所定時間が経過した場合に、低利用状態への移行を検出する。最後に衛生洗浄装置が利用された時刻から所定時間が経過した場合は、例えば、利用者が外出または就寝等した場合であり、その後に衛生洗浄装置が利用される可能性が低いと考えられるためである。
【0021】
請求項5に係る発明では、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明において、ノズル洗浄制御手段は、人体局部を洗浄する場合よりも洗浄水の量を増大させて、ノズル洗浄工程を実行させる。
【0022】
人体局部を洗浄する場合の洗浄水の量を第1の洗浄水量とし、ノズル洗浄工程実行時の洗浄水の量を第2の洗浄水量と表現するならば、第1の洗浄水量<第2の洗浄水量の関係が成立するように、ノズル洗浄制御手段は、洗浄水量を制御する。洗浄水量を増大させる方法としては、例えば、人体局部を洗浄する場合の単位時間当たりの洗浄水量を増大させる方法や、洗浄水の噴射時間を長くして洗浄水の積算流量を増大させる方法を挙げることができる。かかる衛生洗浄装置によれば、より一層効果的にノズルを洗浄することができ、手作業によるノズル清掃作業の回数を低減させることができる。
【0023】
請求項6に係る発明では、請求項1〜請求項5のいずれかに係る発明において、ノズル洗浄制御手段は、ノズル洗浄工程を実行中に、人体検知手段によって利用者の存在が検知された場合は、ノズル洗浄工程を停止させる。
【0024】
この衛生洗浄装置では、低利用状態へ移行し、かつ、利用者の存在が検知されない場合に、ノズル洗浄工程を自動的に実行させるのであるが、もしも、ノズル洗浄工程を実行している期間中に、利用者の存在が検出された場合は、ノズル洗浄工程を停止させる。このように構成することにより、利用者による衛生洗浄装置の利用を最優先として、利用者の便宜を図ることができる。即ち、利用者は、ノズル洗浄工程の完了を待つことなく、衛生洗浄装置を直ちに利用することができ、使い勝手が向上する。また、利用者の存在を検知したときにノズル洗浄工程を停止させることにより、ノズル洗浄工程が自動的に開始されることを知らない利用者が、衛生洗浄装置の誤作動であると誤解等するのを未然に防止することができる。
【0025】
請求項7に係る発明では、請求項1〜請求項5のいずれかに係る発明において、ノズル洗浄制御手段は、ノズル洗浄工程を実行中に、人体検知手段によって利用者の存在が検知された場合は、ノズル洗浄工程を停止させ、人体検知手段によって利用者の存在が検知されなくなった後で、ノズル洗浄工程を再び実行させる。
【0026】
かかる衛生洗浄装置によれば、ノズル洗浄工程を実行中の場合でも、利用者による利用を妨げることがなく、使い勝手が向上する。さらに、利用者による利用が終わった後で、中止されたノズル洗浄工程を改めて再実行するため、汚物等がノズルに固着するのを防止することができる。ノズル洗浄工程は、低利用状態へ移行した場合であって、利用者の存在が検知されないときに開始されるもので、もともと利用機会が少ないであろうと判断される時間帯に実行される。従って、利用者による予定外の利用が終了した後は、長時間利用されない状態が続いて、汚物等がノズルに固着する可能性がある。しかし、本発明の衛生洗浄装置によれば、利用者が立ち去った後に、ノズル洗浄工程を再度実行するため、ノズルに付着した汚物等を除去することができ、汚物等がノズルに固着するのを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。本実施形態では、以下に詳述するように、衛生洗浄装置のノズルを適切なタイミングで洗浄することにより、利用者の使い勝手を高め、衛生洗浄装置の維持コストを低減させる。
【0028】
図1は、本実施形態に係る衛生洗浄装置1の概要を模式的に示す説明図である。衛生洗浄装置1は、後述の実施例からも明らかとなるように、トイレの便器本体に取り付けられるもので、利用者の人体局部を洗浄する。
【0029】
衛生洗浄装置1は、それぞれ後述するように、例えば、ノズル装置2と、低利用状態検出手段3と、人体検知手段4と、ノズル洗浄制御手段5と、衛生洗浄制御手段6及び操作手段7を備えて構成される。
【0030】
ノズル装置2は、例えば、ノズル本体2Aと、洗浄水供給手段2Bと、ノズル駆動手段2Cと、洗浄室2Dとを備えて構成される。ノズル装置2は、ノズル洗浄制御手段5または衛生洗浄制御手段6から入力される制御信号に従ってノズル本体2A等を動作させ、ノズルの洗浄や人体局部の洗浄(衛生洗浄)を行う。
【0031】
ノズル本体2Aは、例えば、便座の後部から便器本体のボール部に臨むようにして設けられている。ボール部に臨むノズル本体2Aの先端側には、複数の噴射孔2A1,2A2がそれぞれ設けられている。ノズル本体2Aの内部には、各噴射孔2A1,2A2にそれぞれ連通する流路2A3,2A4が形成されている。一方の流路2A3は一方の噴射孔2A1に連通し、他方の流路2A4は他方の噴射孔2A2に連通している。
【0032】
洗浄水供給手段2Bは、各噴射孔2A1,2A2及び後述の洗浄室2Dに、それぞれ洗浄水を供給するものである。洗浄水供給手段2Bは、後述の実施例からも明らかとなるように、例えば、洗浄水を加熱する機能、洗浄水を加圧する機能、水勢を調節する機能と、流路を切り替える機能等を含んで構成することができる。
【0033】
洗浄水供給手段2Bからノズル本体2Aに供給された洗浄水は、流路2A3,2A4を介して噴射孔2A1,2A2から噴射される。流路2A3が選択された場合、洗浄水は噴射孔2A1から噴射される。流路2A4が選択された場合、洗浄水は噴射孔2A2から噴射される。また、流路2A3及び2A4の両方が選択された場合、洗浄水は各噴射孔2A1,2A2からそれぞれ噴射される。
【0034】
ノズル駆動手段2Cは、ノズル本体2Aを伸縮動作させるものである。ノズル駆動手段2Cは、後述の実施例からも明らかとなるように、例えば、駆動モータやプーリ、ベルト、ラッチ等から構成可能である。これに限らず、例えば、リニアモータ等の他の機構を用いることもできる。ノズル駆動手段2Cによって、ノズル本体2Aは、矢示F方向またはR方向のいずれかに移動する。矢示F方向は、便器本体のボール部内に向かう方向であり、前方向とも呼ぶ。矢示R方向は、ボール部と反対側の便座後部に向かう方向であり、後方向とも呼ぶ。
【0035】
洗浄室2Dは、ノズル本体2Aを洗浄するためのものであり、洗浄水供給手段2B及びノズル駆動手段2Cと共に「ノズル洗浄手段」を構成する。洗浄室2Dは、ノズル本体2Aと相対移動可能に設けられており、便器本体のボール部に対向する面には、開口部が形成されている。また、洗浄室2Dの前後方向(矢示F,R方向)には、ノズル本体2Aが移動可能に挿通される挿通部が形成されている。
【0036】
洗浄室2Dは、例えば、便座の後部側に位置して、ノズル本体2Aの外側を覆うようにして設けられている。ノズル本体2Aは、ノズル駆動手段2Cにより、洗浄室2Dを通って前後方向に移動する。洗浄室2Dには、洗浄水供給手段2Bから洗浄水が供給されるようになっており、この洗浄水は、洗浄室2D内において、ノズル本体2Aの表面に噴射される。
【0037】
ノズル本体2Aは、例えば、便座後部に退避する縮退位置(第1位置)とボール部内に延びる伸長位置(第2位置)との間で移動する。伸長位置は、利用者の好みによって調節可能である。ノズル本体2Aが縮退位置にある場合、各噴射孔2A1,2A2は洗浄室2D内にそれぞれ位置する。ノズル本体2Aが伸長位置にある場合、各噴射孔2A1,2A2は洗浄室2Dの外部に位置する。
【0038】
以上が衛生洗浄装置1の機械系構造である。次に、衛生洗浄装置1の制御系構造を説明する。制御系構造は、例えば、低利用状態検出手段3,人体検知手段4,ノズル洗浄制御手段5,衛生洗浄制御手段6及び操作手段7を備えて構成される。
【0039】
低利用状態検出手段3は、衛生洗浄装置1の利用頻度が相対的に低下する状態(時間帯)を検出するためのものである。例えば、ある期間内において、利用者が衛生洗浄装置1を全く利用しない場合または利用しないと予測される場合、その期間は低利用状態であるとして検出される。
【0040】
低利用状態検出手段3は、例えば、第1予測モード3A、第2予測モード3B及び第3予測モード3Cのように、複数の予測モードを備えることができる。予測モード3A〜3Cは、検出モードと呼び変えることもできる。各予測モード3A〜3Cの詳細は、後述の実施例で説明する。
【0041】
第1予測モード3Aは、過去の利用履歴に基づいて低利用状態に移行したか否か(移行するか否か)を予測的に検出するものである。第1予測モード3Aは、例えば、現在時刻と過去の利用履歴とを比較することにより、衛生洗浄装置1の利用可能性を判定し、利用される可能性が少ないと判定した場合に、低利用状態へ移行したことを、または低利用状態へ移行することを検出することができる。
【0042】
第2予測モード3Bは、自動節電の実行状況に基づいて低利用状態に移行したか否か(移行するか否か)を予測的に検出するものである。自動節電とは、衛生洗浄装置1を含むトイレの各部の消費電力を自動的に低減させる消費電力制御モードである。例えば、便座の保温機能や洗浄水の保温機能等を停止させることにより、トイレの待機時消費電力を節約できる。利用者は、予め自動節電の開始時刻を手動で設定することができる。または、過去の利用履歴に基づいて衛生洗浄装置1の利用可能性を予測し、利用される可能性が低いと判断された場合は、自動的に節電を行うこともできる。いずれにしても、自動節電が開始された場合または自動節電が開始される場合とは、利用者による衛生洗浄装置1の利用可能性が少ない場合であるから、低利用状態への移行として検出可能である。
【0043】
第3予測モード3Cは、最新の利用時刻からの経過時間に基づいて低利用状態に移行したか否か(移行するか否か)を予測的に検出するものである。第3予測モード3Cは、例えば、利用者が衛生洗浄装置1を最後に利用した時刻(最新利用時刻)から所定時間が経過した場合に、低利用状態への移行であるとして検出する。
【0044】
人体検知手段4は、利用者の存在を検知して信号を出力するものである。人体検知手段4は、例えば、光センサや超音波センサ、マイクロ波センサ等のように構成することができ、便座に着座する前に利用者の存在を検知することができる。なお、トイレの設置される空間に入室するためのドアに、ドアの開閉を検知するセンサやスイッチを設け、ドアの開閉動作から利用者の存在を検知する構成でもよい。
【0045】
ノズル洗浄制御手段5は、ノズル洗浄工程の実行及び停止を制御するものである。ノズル洗浄工程とは、ノズル本体2Aを洗浄するための予め設定された一連の洗浄動作を意味する。ノズル洗浄工程の詳細は後述する。また、ノズル洗浄制御手段5は、例えば、通常時のノズル洗浄モード5Aと、不使用時のノズル洗浄モード5Bとを備えている。通常時のノズル洗浄モード5Aは、利用者によって衛生洗浄が使用される場合に、ノズル洗浄工程を実行するモードである。不使用時のノズル洗浄モード5Bは、上述の低利用状態へ移行しており、かつ、実際に利用者により利用されていない場合にのみ、ノズル洗浄工程を実行するモードである。なお、操作手段7からの指令に基づいて、ノズル洗浄工程を実行させることもできる。このノズル洗浄モードを手動モードと呼ぶこともできる。
【0046】
また、ノズル洗浄制御手段5は、ノズル洗浄工程の実行中において利用者の存在が検知された場合は、実行中のノズル洗浄工程を直ちに停止させることができる。これにより、利用者によるトイレ利用を最優先とすることができる。また、ノズル洗浄工程時が適切なタイミングで自動的に実行されることを十分認識していない利用者に、誤動作であるとの誤解を与えたり、驚かしたりするのを防止することができる。
【0047】
さらに、ノズル洗浄制御手段5は、低利用状態への移行時(または移行直前、あるいは移行直後)にノズル洗浄工程を実行直前に、利用者の存在を検知したときには、利用者が立ち去るのを待ってからノズル洗浄工程を開始可能である。
【0048】
次に、ノズル洗浄工程を説明する。ノズル洗浄工程は、例えば、胴体洗浄工程と、噴射孔洗浄工程とに大別することができる。胴体洗浄工程とは、ノズル本体2Aを前方向または後方向に移動させながらノズル本体2Aの胴体を洗浄する工程である。胴体洗浄工程では、洗浄室2Dからノズル本体2Aの表面に向けて洗浄水を噴射させる。従って、ノズル本体2Aの外周面のうち、洗浄室2D内を通過する周面には外側から洗浄水が吹き付けられ、その周面に付着している汚物等が除去される。ノズル本体2Aから汚物等を取り除いた洗浄水は、洗浄室2Dの下側の開口部からボール部内に落下する。
【0049】
噴射孔洗浄工程とは、ノズル本体2Aの各噴射孔2A1,2A2及びその近辺を洗浄する工程である。噴射孔洗浄工程では、ノズル本体2Aを縮退位置に位置させて各噴射孔2A1,2A2を洗浄室2D内に収容し、各噴射孔2A1,2A2から洗浄水をそれぞれ噴射させる。この洗浄水によって、各噴射孔2A1,2A2及びその近辺に付着した汚物等が除去される。各噴射孔2A1,2A2は洗浄室2D内に位置しているので、各噴射孔2A1,2A2が便器本体の外側に飛ぶことはない。各噴射孔2A1,2A2から噴射された洗浄水は、洗浄室2Dの内壁に衝突して跳ね返り、洗浄室2D内に位置するノズル本体2Aの周面に様々な方向から衝突する。これにより、各噴射孔2A1,2A2及びその近辺だけでなく、ノズル本体2Aの先端側周面も洗浄される。
【0050】
ノズル洗浄工程では、胴体洗浄工程と噴射孔洗浄工程とがそれぞれ少なくとも一回ずつ実行される。詳細は後述するが、衛生洗浄が行われる際には、噴射孔洗浄工程(前洗浄)→胴体洗浄工程→衛生洗浄→胴体洗浄工程→噴射孔洗浄工程(後洗浄)の順序で、ノズル本体2Aが洗浄される。
【0051】
衛生洗浄制御手段6は、衛生洗浄動作を制御するものである。衛生洗浄では、利用者の人体局部に洗浄水を噴射して洗浄する。衛生洗浄制御手段6は、利用者が操作手段7を介して衛生洗浄の実行を指示した場合、ノズル本体2Aを利用者の設定した伸長位置まで移動させ、次に、各噴射孔2A1,2A2のうち利用者の選択した噴射孔から洗浄水を噴射させる。衛生洗浄の開始及び終了はノズル洗浄制御手段5に通知され、上述のように衛生洗浄と連携するノズル洗浄工程が実行される。
【0052】
ここで、衛生洗浄時の洗浄水の量(W1)よりもノズル洗浄時の洗浄水の量(W2)の方が大きくなるように設定することができる(W2>W1)。洗浄水量W2をW1よりも増大させる方法としては、例えば、流路径や差圧を変えることにより単位時間当たりの洗浄水流量を増加させる方法や、洗浄時間を長くすることにより積算流量を増加させる方法を挙げることができる。このように、ノズル洗浄時の洗浄水の量(W2)を衛生洗浄時の洗浄水の量(W1)よりも増大させることにより、より効果的にノズル本体2Aに付着した汚物等を取り除くことができる。
【0053】
操作手段7は、利用者が衛生洗浄装置1を作動させるための指示装置であり、例えば、リモートコントローラ等のように構成される。利用者が操作手段7から入力した指示は、電圧信号やコマンドとして、衛生洗浄装置1の衛生洗浄制御手段6やノズル洗浄制御手段5に入力される。なお、操作手段7と衛生洗浄制御手段6等とは、有線または無線で接続することができる。
【0054】
このように、本実施形態の衛生洗浄装置1は、内部に流路2A3,2A4が形成され、先端側に噴射孔2A1,2A2が形成されたノズル本体2Aと、このノズル本体2Aの外側を覆うようにして設けられ、ノズル本体2Aが移動可能に挿通される洗浄室2Dと、ノズル本体2A及び洗浄室2Dのそれぞれに洗浄水を供給する洗浄水供給手段2Bと、ノズル本体2Aを洗浄室2Dに対して相対的に移動させるノズル駆動手段2Cと、利用者の存在を検知するための人体検知手段4と、利用者による利用頻度が低下する低利用状態に移行したか否かを検出する低利用状態検出手段3と、低利用状態検出手段3によって低利用状態への移行が検出された場合は、人体検知手段4によって利用者の存在が検知されていないときに、前記ノズル本体2Aを洗浄するためのノズル洗浄工程を実行させるノズル洗浄制御手段5と、利用者が操作手段7を介して指示した場合に、前記ノズル本体2Aの噴射孔2A1,2A2から洗浄水を噴射させて利用者の人体局部を洗浄させる衛生洗浄制御手段6とを備えて構成される。
【0055】
これにより、低利用状態へ移行し、かつ、利用者の存在が検知されない場合に、ノズル洗浄工程を自動的に実行させることができる。従って、汚物等がノズル本体2Aに固着するのを防止して、手作業によるノズル清掃の手間を軽減し、利用者の使い勝手を向上させることができる。また、利用されていないタイミングを見計らってノズル洗浄工程を実行するため、無駄なノズル洗浄が行われるのを防止し、洗浄水の消費量や消費電力を低減することができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、低利用状態検出手段3は、複数の予測モード3A〜3Cを用いて、低利用状態への移行をそれぞれ検出可能な構成とした。従って、いずれか一つの予測モードに基づいて、低利用状態への移行を検出することができる。また、複数の予測モード3A〜3Cを適宜組み合わせることにより、利用頻度の低下するタイミングを複数の観点から検出することができ、より適切にノズル洗浄工程を実行できる。
【0057】
さらに、本実施形態では、ノズル洗浄工程時の洗浄水の量を衛生洗浄時の洗浄水の量よりも大きく設定する構成とした。従って、ノズル本体2Aに付着した汚物等を効果的に除去することができる。以下、本実施形態の詳細を説明する。
【実施例1】
【0058】
図2は、本発明に係る衛生洗浄装置100が適用されるトイレ10の外観を示す外観図である。トイレ10は、例えば、排泄物等を収容するためのボール部が形成された便器本体11と、便器本体11の上面側に開閉可能に取り付けられた便座12と、便座12の上面側に開閉可能に取り付けられた便蓋13と、便器本体11の後部に取り付けられ、内部に後述する洗浄水供給機構や制御部300等が収容されるケーシング14と、便器本体11の後部に設けられたロータンク15等から構成される。そして、利用者は、リモートコントローラ20を介して、衛生洗浄の開始を指示したり、洗浄水の水勢や温度等を設定することができる。
【0059】
図3は、トイレ10の上部構造である温水洗浄便座の外観を示す外観図である。温水洗浄便座は、便器本体11の上部に着脱可能に取り付けることができる。温水洗浄便座は、例えば、便座12と、便蓋13と、ケーシング14等を備えて構成される。温水洗浄便座は、例えば、便座を保温する機能、洗浄水を保温する機能、利用者の人体局部を洗浄する機能、ノズル本体101を洗浄する機能等を実現する。
【0060】
便座12と便蓋13が回動可能に取り付けられているケーシング14の前側には、着座センサ30及び人体検知センサ31がそれぞれ設けられている。着座センサ30は、利用者が便座12に着座したか否かを検出して信号を出力する。人体検知センサ31は、「人体検知手段」に該当し、利用者が便座12に着座するよりも前に、利用者の存在を検出して信号を出力する。即ち、人体検知センサ31は、利用者がトイレ10に接近したか否かを検出する。
【0061】
ケーシング14の前部下側には、ノズル本体101が前後方向に移動可能に設けられている。ノズル本体101の先端側には、複数の噴射孔102A,102Bが設けられており、各噴射孔102A,102Bには、給水ホース110からの洗浄水が供給される。洗浄水供給機構及びノズルの詳細はさらに後述する。
【0062】
図4は、リモートコントローラ20の正面図を示す。リモートコントローラ20は、例えば、少なくとも一つの表示部21と、複数の操作ボタン22A〜22D,23A〜23D,24A〜24D,25A〜25C,26A〜26Dとを備えている。
【0063】
表示部21は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(ElectroLuminescence)ディスプレイ等のようなディスプレイ装置として構成される。表示部21には、例えば、噴射孔102A,102Bから噴射される洗浄水の強さ(水勢)や、噴射される洗浄水の方向(洗浄位置)、洗浄水の温度、便座12の温度、節電モードの設定状態等のような各種の情報が適宜表示される。
【0064】
基本操作ボタン22A〜22D(特に区別しない場合、ボタン22と呼ぶ)は、トイレ10の基本的機能を利用するためのボタンである。基本的機能とは、トイレ10を用いて利用者が排泄するための最低限の機能である。洗浄ボタン(大)22Aは、利用者の排泄した大便を洗浄水によって洗い流させるためのボタンである。洗浄ボタン(小)22Bは、利用者の排泄した小便を洗浄水によって洗い流させるためのボタンである。開蓋ボタン22Cは、便蓋13を開いて便座12を露出させるためのボタンである。閉蓋ボタン22Dは、便蓋13を閉じて便座12を覆わせるためのボタンである。なお、大便と小便とでボール部内に供給する洗浄水の量を変えないような場合、洗浄ボタン22Aのみを設ければよい。また、便蓋13を自動的に開閉させる機能を備えない場合、開蓋ボタン22C及び閉蓋ボタン22Dは省略することができる。
【0065】
衛生洗浄ボタン23A〜23D(特に区別しない場合、ボタン23と呼ぶ)は、衛生洗浄を利用するためのボタンである。停止ボタン23Aは、洗浄水の噴射を停止させるためのボタンである。おしりボタン23B及びビデボタン23Cは、人体局部への洗浄水の噴射開始を指示するためのボタンである。乾燥ボタン23Dは、洗浄水で濡れた人体局部に温風を送って乾燥させるためのボタンである。温風機能(乾燥機能)を備えない場合、乾燥ボタン23Dは省略可能である。
【0066】
衛生洗浄調整ボタン24A〜24D(特に区別しない場合、ボタン24と呼ぶ)は、衛生洗浄時の洗浄水の噴射方法等を調整するためのボタンである。ムーブボタン24Aは、噴射孔102A,102Bから噴射される洗浄水が人体局部に当たる位置を変化させるためのボタンである。マッサージボタン24Bは、噴射孔102A,102Bから噴射される洗浄水によって人体局部をマッサージさせるためのボタンである。水勢(強)ボタン24C,水勢(弱)ボタン24Dは、噴射孔102A,102Bから噴射される洗浄水の水勢を調節するためのボタンである。なお、ムーブ機能やマッサージ機能を備えない場合、ボタン24A,24Bを省略可能である。
【0067】
ノズル掃除ボタン25Aは、ノズル本体101をボール部内に伸長させることにより、利用者が手作業でノズル本体101を清掃できるようにするためのボタンである。タイマ節電ボタン25Bは、タイマ節電機能を働かせるためのボタンである。タイマ節電機能では、利用者が予め設定した時刻になると、洗浄水や便座12の保温機能等を停止させて省電力モード(節電モード)に移行させる。お任せ節電ボタン25Cは、お任せ節電機能を働かせるためのボタンである。お任せ節電機能では、過去の利用履歴に基づいて、利用頻度の少ない時間帯を予測し、利用頻度の少ない時間帯が到来した場合には省電力モードに移行させる。
【0068】
その他のボタン26A〜26Dは、例えば、温風温度、便座温度、洗浄水温度、洗浄水が人体局部に当たる位置等を調整するためのボタンである。
【0069】
図5は、トイレ10の制御構造を示すブロック図である。ケーシング14内には、制御部300が設けられている。制御部300は、例えば、CPU(Central Processing Unit)310と、RAM(Random Access Memory)320と、ROM(Read Only Memory)330と、タイマ340と、入出力インターフェース350とを備えて構成され、これら各部310〜350はバス360によって接続されている。
【0070】
CPU310は、ROM330に格納されたマイクロプログラムを読み出して実行することにより、トイレ10の各機能(例えば、衛生洗浄機能やノズル洗浄機能等)をそれぞれ実現する。RAM320には、制御用の一時的な情報が記憶される。ROM330には、トイレ10の各機能を実現させるための各種マイクロプログラムが記憶される。タイマ340は、現在時刻を出力する。入出力インターフェース350は、制御部300と、リモートコントローラ20及び各センサ30,31等とを接続する。
【0071】
リモートコントローラ20は、例えば、上述の表示部21及び入力部(ボタン)22〜26と、制御部27と、通信部28とを備えて構成される。利用者がリモートコントローラ20を介して入力した指示内容は、通信部28から制御部300に通知される。
【0072】
衛生洗浄装置100の詳細は図6と共に後述する。吐水装置200は、便器本体11のボール部内に洗浄水を吐出させるための装置である。便座・便蓋開閉装置210は、便座12及び便蓋13を自動的に開閉させるための装置である。便座ヒータ220は、便座12の表面温度を利用者の指定した温度に保持するための装置である。乾燥装置230は、人体局部に向けて温風を送り出すための装置である。脱臭装置240は、排泄時の臭いを除去するための装置である。
【0073】
図6は、衛生洗浄装置100の構成を模式的に示す説明図である。図6には、衛生洗浄装置100の洗浄水供給構造及びノズル機構が示されている。先に洗浄水供給構造から説明する。
【0074】
洗浄水供給構造は、図1中の洗浄水供給手段2Bに対応するもので、例えば、給水ホース110と、分岐部111と、バルブユニット112と、熱交換ユニット113と、流調ユニット114と、脈動装置ユニット115とを備えて構成される。
【0075】
分岐部111は、給水ホース110から給水された洗浄水をロータンク15及びバルブユニット112にそれぞれ供給させるための分岐金具のように構成される。バルブユニット112は、衛生洗浄用の洗浄水の圧力を調整等するものである。熱交換ユニット113は、洗浄水を所定温度まで加熱するものである。流調ユニット114は、流路を切り替えることにより、ノズル本体101または洗浄室103のいずれかに洗浄水を供給し、また、水勢を調節するものである。脈動装置ユニット115は、ノズル本体101側に供給される洗浄水を所定圧まで加圧するものである。
【0076】
次に、ノズル機構を説明する。ノズル機構は、例えば、複数の噴射孔102A,102Bが形成されたノズル本体101と、洗浄室103と、ノズルモータ120と、駆動プーリ121と、従動プーリ122,122と、タイミングベルト123と、テンショナ124と、ラッチ部125と、流路切替弁126とを備えて構成される。
【0077】
ノズル本体101は、図1中のノズル本体2Aに対応するもので、図1と共に述べたように、便器本体11のボール部に臨むようにして、伸縮可能に設けられている。また、ノズル本体101には、各噴射孔102A,102Bにそれぞれ連通する流路が形成されており、これら流路には脈動装置ユニット115からの洗浄水が供給される。
【0078】
洗浄室103は、図1中の洗浄室2Dに対応するもので、上述のように、ケーシング14の前部に位置して、ノズル本体101の外側を覆うように設けられている。洗浄室103は、ノズル本体101が移動可能に挿通される挿通部と、洗浄室103内に噴射された洗浄水をボール部に落下させるための開口部とを備えている。従って、ノズル本体101と直交する方向の洗浄室103の断面は、下向きの略コ字状ないし略C字状をなす。洗浄室103は、流路104を介して流調ユニット114に接続されている。流調ユニット114から流路104を介して供給された洗浄水は、洗浄室103内に噴射される。
【0079】
ノズル本体101の途中には、洗浄室103の後側に位置して、ラッチ部125が設けられている。ノズル本体101は、ラッチ部125によってタイミングベルト123に固定されている。タイミングベルト123は、駆動プーリ121及び各従動プーリ122,122に巻回されており、ノズルモータ120の回転力によって右回りまたは左回りのいずれかの方向に移動する。タイミングベルト123が右回りに移動することにより、ノズル本体101は、後方向に移動する。タイミングベルト123が左回りに移動することにより、ノズル本体101は前方向に移動する。タイミングベルト123の張力は、テンショナ124により適切な値に調整される。
【0080】
流路切替弁126は、各噴射孔102A,102Aのいずれか一方または両方を選択して洗浄水を供給するための弁である。流路切替弁126は、ノズル本体101と脈動装置ユニット115との間に位置して、ノズル本体101の後部に設けられている。
【0081】
図1と共に述べたように、ノズル本体101は、例えば、便座12の後部にノズル本体101の先端側を退避させる縮退位置(第1位置)と、ノズル本体101の先端側をボール部内に伸長させる伸長位置(第2位置)との少なくとも二点間で移動する。伸長位置は、リモートコントローラ20を操作することにより、調節することができる。ノズル本体101が縮退位置にある場合、各噴射孔102A,102Bは洗浄室103内にそれぞれ位置する。ノズル本体101が伸長位置にある場合、各噴射孔102A,102Bは洗浄室103の外部に位置する。
【0082】
図7は、ノズル本体101が縮退位置にある場合の斜視図である。図7には、ノズル本体101の先端側が拡大して示されている。図7に示すように、ノズル本体101が縮退位置に後退している場合、各噴射孔102A,102Bは、洗浄室103内にそれぞれ位置する。従って、各噴射孔102A,102Bから洗浄水をそれぞれ噴射させると、この洗浄水は、洗浄室103の内壁に衝突して跳ね返り、ノズル本体101の周面に種々の方向から衝突する。ノズル本体101の先端側の汚れを除去した洗浄水は、洗浄室103の下面側からボール部内に落下する。
【0083】
図8は、ノズル本体101が縮退位置と伸長位置との間で移動する様子を示す斜視図である。ノズル本体101は、洗浄室103内を介して、前後方向に移動する。従って、ノズル本体101が移動している間、ノズル洗浄用の流路104から洗浄水を噴射させることにより、ノズル本体101の胴部を洗浄することができる。
【0084】
次に、トイレの利用履歴を管理する方法について説明する。図9は、トイレ利用履歴管理テーブル400の一例を示す構成説明図である。トイレ利用履歴管理テーブル(以下、管理テーブルと略記)400は、トイレ10が利用者によって利用された履歴を複数の時間帯毎にそれぞれ管理するものであり、例えば、RAM320に記憶される。
【0085】
この管理テーブル400は、例えば、一週間〜二週間程度の期間nにおける毎日の利用履歴をそれぞれ管理する。一日の時間(即ち24時間)は、例えば、24分割、32分割、64分割等のように予め細分化されている。これら細分化された各時間帯において、トイレ10が利用された場合、その時間帯には、利用されたことを示す利用フラグがセットされる。図9では、利用された時間帯を斜線付きの四角形で表現している。図9において、一回も利用されなかった時間帯は、白い四角形で表示されている。以下、利用履歴を管理するための細分化された時間帯を、単位時間帯とも呼ぶ。
【0086】
管理テーブル400によって所定期間n日分の利用履歴を管理することにより、利用頻度の低い時間帯(TL)と、利用頻度の高い時間帯(TH)とを判別可能である。例えば、過去の数日間にわたって一度も利用されなかった単位時間帯が重なる時間帯は、利用頻度の低い低利用時間帯(TL)であると判定することができる。これに対し、過去の数日間において利用されている単位時間帯が重なる時間帯は、利用頻度の高い高利用時間帯(TH)であると判定することができる。
【0087】
一日のうち、どの時間帯でトイレ10がよく利用され、どの時間帯でトイレ10が利用されないのかは、例えば、利用者のライフスタイルや家族構成、トイレ設置数等によって相違する。例えば、出勤や外出等で利用者が不在の時間帯は、トイレ10は利用されず、低利用時間帯(TL)となる。また、利用者が就寝してから起床するまでの時間帯も、トイレ10の利用頻度が低下するため、低利用時間帯(TL)となる。これ以外の利用者が在宅して活動している時間帯は、トイレ10の利用頻度が高まるため、高利用時間帯(TH)となる。
【0088】
図10は、トイレ10の利用履歴を管理して管理テーブル400を更新させるための処理を示すフローチャートである。このトイレ利用履歴管理処理は、制御部300のCPU310により実行される。なお、以下の各フローチャートでも同様であるが、各フローチャートは本発明の理解及び実施に必要な範囲内で処理の概要を示しており、実際のコンピュータプログラムと相違する場合がある。また、以下ステップをSと略記する。
【0089】
制御部300は、利用者によってトイレ10が利用されたか否かを監視しており(S10)、トイレ10が利用されたと判定した場合(S10:YES)、タイマ340から現在時刻を取得し(S11)、現在時刻が含まれる単位時間帯においてトイレ10が利用されたことを記憶する(S12)。その単位時間帯のトイレ利用を「有り」とする情報は、一時的な情報としてRAM320に記憶される。トイレ10が利用されない場合(S10:NO)、S11,S12はスキップされ、後述のS13に移る。
【0090】
利用者がトイレ10を利用したか否かの判別は、種々の方法で可能である。例えば、制御部300は、リモートコントローラ20から入力される指示に基づいて、トイレ10が利用されたことを検出できる。また、制御部300は、着座センサ30によって利用者が便座12に着座し、その後便座12から離座したことを知った場合は、トイレ10が利用されたと判別することができる。
【0091】
制御部300は、一日が終了するまでの間(S13:NO)、S10〜S12を繰り返すことにより、その日における利用履歴を一時的に記憶する。一日分の利用履歴は、図9中の一つのレコードに対応する。しかし、この時点では、未だ管理テーブル400は更新されず、RAM320内に一時的に記憶されている段階である。
【0092】
一日が終了すると(S13:YES)、制御部300は、RAM320に一時的に記憶された一日分の利用履歴に基づいて、所定回数(例えば、1)以上トイレ10が利用されたか否かを判定する(S14)。所定回数以上トイレ10が利用された場合(S14:YES)、制御部300は、S10〜S12の繰り返しによって得られた一日分の利用履歴を管理テーブル400に記憶させる(S15)。
【0093】
これに対し、その一日において所定回数以上トイレ10が利用されなかった場合(S14:NO)、制御部300は、その日の利用履歴を破棄し、管理テーブル400を更新しない(S16)。即ち、利用者が旅行や出張等によるトイレ10の不使用状態は、管理テーブル400に反映されない。これにより、利用者の在宅時における通常の利用履歴だけを管理することができ、節電制御やノズル洗浄制御に役立たせることができる。
【0094】
図11は、通常時のノズル洗浄処理を示すフローチャートである。通常時のノズル洗浄処理では、以下に述べるように、衛生洗浄と連携してノズル本体101を洗浄する。制御部300は、着座センサ30からの信号に基づいて、利用者が便座12に着座したか否かを判定する(S20)。
【0095】
利用者が便座12に着座したと判定した場合(S20:YES)、制御部300は、ノズル本体101を縮退位置に待機させた状態で、各噴射孔102A,102Bから洗浄水を数秒間〜十数秒間程度それぞれ噴射させながら、熱交換ユニット113により温水を準備し、準備した温水を保温する(S21)。
【0096】
制御部300は、リモートコントローラ20から衛生洗浄の開始が指示されると(S22:YES)、衛生洗浄を開始する前に、まず最初に、ノズル洗浄工程のうち噴射孔洗浄工程を実行させる(S23)。噴射孔洗浄工程では、ノズル本体101を縮退位置に後退させて各噴射孔102A,102Bを洗浄室103内に収容した状態で、各噴射孔102A,102Bからそれぞれ洗浄水を噴射させる。
【0097】
噴射孔洗浄工程が終了した後、制御部300は、ノズルモータ120を前進方向に回転させてノズル本体101を伸長位置まで伸長させる。伸長位置は、利用者によって調節可能である。ノズル本体101は、洗浄室103を通って、縮退位置から伸長位置まで伸長する。
【0098】
制御部300は、ノズル本体101を伸長させながら、ノズル洗浄工程の一部を構成する胴部洗浄工程を実行させる(S24)。即ち、制御部300は、流調ユニット114内の流路を切り替えて、洗浄水をノズル洗浄用流路104に供給させる。これにより、ボール部内に向けて伸長していくノズル本体101の胴部を、洗浄室103内において洗浄することができる。胴部洗浄工程によって洗浄される範囲は、ノズル本体101の先端側から、ノズル本体101が所定の伸長位置に到達した場合において洗浄室103内に位置する部分までである。
【0099】
ノズル本体101の先端側が所定の伸長位置に到達すると、制御部300は、各噴射孔102A,102Bのうち利用者によって選択された噴射孔から洗浄水を噴射させることにより、衛生洗浄を実行する(S25)。
【0100】
利用者は、予め設定されている時間だけ衛生洗浄を行うことができるほか、リモートコントローラ20を操作することにより、より長い時間またはより短い時間、衛生洗浄を行うこともできる。衛生洗浄が終了するまで、選択された噴射孔から人体局部に向けて洗浄水が噴射される(S25,S26)。
【0101】
衛生洗浄が自動的にまたは手動操作により終了すると(S26:YES)、制御部300は、再び胴部洗浄工程を実行する(S27)。即ち、制御部300は、ノズルモータ120を後進方向に回転させながら、ノズル洗浄用流路104に洗浄水を供給する。これにより、ノズル本体101は、伸長位置から縮退位置まで後退しながら、その胴部周面が洗浄室103内で洗浄される。そして、ノズル本体101が縮退位置まで後退すると、制御部300は、再び噴射孔洗浄工程を実行する(S28)。
【0102】
このように、通常のノズル洗浄処理では、衛生洗浄の開始前及び終了後に、ノズル本体101をそれぞれ洗浄する。これにより、ノズル本体101を自動的に洗浄してから衛生洗浄を行うことができ、ノズル本体101を自動的に洗浄した後で、待機させることができるようになっている。
【0103】
しかしながら、衛生洗浄後にノズル本体101を洗浄しても、ノズル本体101に付着した全ての汚物等を完全に除去できるとは限らず、僅かな汚物等がノズル本体101に付着したままになる場合がある。ノズル本体101に付着した汚物等は、時間の経過によりノズル本体101に固着し、ノズル本体101が汚れたままの状態となり得る。このような事態を防止するために、例えば、定期的に洗浄水をノズル本体101に吹き付けることも考えられる。しかし、この場合には、トイレ10の利用有無(衛生洗浄の有無)を問わずに、洗浄水が機械的に定期的に噴射されるため、洗浄水を無駄に消費する。
【0104】
そこで、本発明では、以下に述べるように、トイレ10の利用頻度が少ない時間帯(TL)において、利用者の存在が検知されなかった場合には、ノズル本体101を自動的に洗浄する。この本発明に特有の洗浄工程を、不使用時のノズル洗浄工程、または、利用者不在時のノズル洗浄工程等と呼ぶこともできる。
【0105】
不使用時のノズル洗浄工程は、以下に述べる通り、複数の自動洗浄モードでそれぞれ実行することができる。また、複数の自動洗浄モードのうち幾つかまたは全てのモードを適宜組み合わせて実行させることもできる。
【0106】
また、結果的に、複数の自動洗浄モードによるノズル洗浄工程が、ほぼ同一または近いタイミングで実行され得る場合もある。例えば、管理テーブル400の利用履歴を用いて、自動節電及びノズル洗浄工程の実行を行うような場合である。従って、複数の自動制御モードをそれぞれ並列に動作させるような場合、前回のノズル洗浄工程から所定時間が経過したか否かを判定し、所定時間を経過した場合のみノズル洗浄工程を実行させるように構成することもできる。本実施例では、第1の自動洗浄モードを用いる場合を例に挙げて説明する。
【0107】
図12は、第1の自動洗浄モードによる不使用時のノズル洗浄工程の実行処理を示すフローチャートである。第1の自動洗浄モードでは、管理テーブル400に記憶されている利用履歴に基づいて、利用者がトイレ室内に不在の場合に、ノズル本体101を自動的に洗浄する。
【0108】
即ち、制御部300は、管理テーブル400を参照し(S40)、次に、タイマ340から現在時刻を取得する(S41)。制御部300は、現在時刻が利用頻度の高い時間帯(TH)に属するか否かを判定する(S42)。利用頻度の高い時間帯(TH)に属する場合(S42:YES)、ノズル洗浄工程を行わずにS40に戻る。
【0109】
現在時刻が利用頻度の高い時間帯(TH)から利用頻度の低い時間帯(TL)へ移行した場合、制御部300は、人体検知センサ31によって利用者の存在が検知されたか否かを判定する(S43)。低利用時間帯(TL)の場合であっても、利用者は、不意にトイレ10を利用することがある。利用者の存在が検知された場合(S43:YES)、ノズル洗浄工程を実行せずにS40に戻る。
【0110】
これに対し、低利用時間帯(TL)に移行した場合であって(S42:NO)、かつ、利用者の存在が検知されていない場合(S43:NO)、制御部300は、ノズル洗浄工程を実行させる(S44)。ノズル洗浄工程では、上述のように、噴射孔洗浄及び胴部洗浄をそれぞれ少なくとも一回ずつ実行させる。
【0111】
なお、衛生洗浄と連携して実行されるノズル洗浄工程の内容と自動洗浄モードで実行されるノズル洗浄工程の内容とは、同一であってもよいし、異なってもよい。例えば、自動洗浄モードでは、より多くの回数噴射孔洗浄及び胴部洗浄を行うこともできる。また、自動洗浄モードでは、衛生洗浄時よりも洗浄水量を増大させることができる。
【0112】
このように、本実施例では、管理テーブル400に記憶された利用履歴に基づいて低利用時間帯(TL)へ移行したか否かを監視し、低利用時間帯(TL)に移行した場合であって、利用者の存在が検知されないときのみ、ノズル本体101を自動的に洗浄する構成とした。これにより、汚物等がノズル本体101に固着して汚れたままになるのを防止することができ、手作業によるノズル清掃作業を軽減することができる。
【0113】
また、本実施例では、低利用時間帯(TL)であって、かつ、利用者の存在が検知されない場合のみ、ノズル洗浄工程を実行するため、無駄なノズル洗浄が繰り返し行われるのを防止することができ、洗浄水や電力を節約することができる。
【0114】
さらに、本実施例では、低利用時間帯(TL)に移行した場合でも、利用者の存在が検知された場合には、自動的なノズル洗浄工程を実行しないため、利用者によるトイレ10の利用を優先させることができ、トイレ10の使い勝手が損なわれることがない。
【0115】
また、本実施例では、自動洗浄モードによるノズル洗浄工程では、衛生洗浄時の洗浄水量よりも多い洗浄水量で、ノズル本体101を洗浄する。これにより、より効果的にノズル本体101に付着した汚物等を除去することができる。
【0116】
また、本実施例では、自動節電モード(お任せ節電モード)でも使用される管理テーブル400を用いて、自動洗浄モードによるノズル洗浄工程を実行する。これにより、共通の管理テーブル400を用いて、目的の異なる複数の制御(自動節電及び自動洗浄)を行うことができ、衛生洗浄装置100の機能向上を実現しつつ、制御構造を簡素化することができる。
【実施例2】
【0117】
図13に基づいて本発明の第2実施例を説明する。本実施例では、自動節電制御とノズル本体101の自動的な洗浄とを連携させ、自動節電が開始された場合に不使用時のノズル洗浄工程を実行するか否かを判断する。なお、以下に述べる各実施例では、第1実施例と共通する説明を割愛する。
【0118】
図13は、第2の自動洗浄モードによる不使用時のノズル洗浄工程の実行処理を示すフローチャートである。まず、制御部300は、自動的な節電が開始されたか否かを判定する(S50)。
【0119】
上述の通り、本実施例では、自動的に節電を行うモードとして、タイマ節電モード(第1自動節電モード)と、お任せ節電モード(第2自動節電モード)との複数種類の節電モードを予め用意している。タイマ節電モードでは、利用者が予め設定した時刻になると、待機時消費電力を節約する。お任せ節電モードでは、管理テーブル400に管理されている利用履歴に基づいて、低利用時間帯(TL)に移行したと判定された場合に、待機時消費電力を節約する。利用者は、タイマ節電モードまたはお任せ節電モードのいずれか又は両方を指定可能である。
【0120】
自動節電の開始が検出された場合(S50:YES)、制御部300は、人体検知センサ31の信号に基づいて、利用者の存在が検知されたか否かを判定する(S51)。利用者の存在が検知されない場合(S51:NO)、制御部300は、上述した不使用時のノズル洗浄工程を実行させる(S52)。
【0121】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、自動節電の開始をノズル洗浄工程を開始させるためのトリガとして利用するため、管理テーブル400を備える必要がない。従って、利用履歴を管理するための処理や管理テーブル400を記憶するための記憶領域が不要となり、前記第1実施例よりも簡素な構成とすることができる。
【実施例3】
【0122】
図14に基づいて本発明の第3実施例を説明する。本実施例では、前回の衛生洗浄実行時から所定時間が経過した場合に、不使用時のノズル洗浄工程を実行させる。図14は、第3の自動洗浄モードによる不使用時のノズル洗浄工程の実行処理を示すフローチャートである。
【0123】
制御部300は、衛生洗浄が実行されたか否かを判定し(S60)、衛生洗浄が実行された場合(S60:YES)、その実行時刻をRAM320に記憶させる(S61)。そして、制御部300は、現在記憶されている最新の実行時刻、即ち、前回衛生洗浄が行われた時刻から予め設定された所定時間が経過したか否かを判定する(S62)。
【0124】
前回の衛生洗浄時から所定時間が経過していない場合(S62:NO)、制御部300は、衛生洗浄が実行されたか否かを判定し(S63)、衛生洗浄が実行された場合(S63:YES)、RAM320に記憶されている最新の実行時刻を更新させる(S61)。
【0125】
これに対し、前回の衛生洗浄時から所定時間が経過している場合(S62:YES)、制御部300は、人体検知センサ31の信号に基づいて、利用者が検知されたか否かを判定する(S64)。利用者の存在が検知された場合(S64:YES)、制御部300は、衛生洗浄が実行されたか否かを判定し(S65)、衛生洗浄が実行された場合(S65:YES)、最新の実行時刻を更新させる(S61)。
【0126】
これに対し、前回衛生洗浄が行われた時から所定時間が経過しており(S62:YES)、かつ、利用者の存在も検知されない場合(S64:NO)、制御部300は、上述の不使用時のノズル洗浄工程を実行させる(S66)。
【0127】
このように構成される本実施例も前記第1実施例と同様の効果を奏する。これに加えて、本実施例では、前回の衛生洗浄が実行された時刻から所定時間が経過している場合であって、かつ、利用者の存在が検知されない場合に、自動的にノズル本体101を洗浄する構成のため、利用履歴の管理機能や自動節電機能を備えていない場合でも、ノズル本体101を適切なタイミングで洗浄することができ、制御構造を簡素化できる。
【実施例4】
【0128】
図15に基づいて本発明の第4実施例を説明する。本実施例では、不使用時のノズル洗浄工程が開始された後で、利用者の存在が検知されたときには、ノズル洗浄工程を直ちに停止させる。
【0129】
図15は、ノズル洗浄工程を停止させるための処理を示すフローチャートである。上述のように、制御部300は、複数種類の自動洗浄モードによって、不使用時のノズル洗浄工程をそれぞれ開始させることができる(S70)。
【0130】
不使用時のノズル洗浄工程が開始された後、利用者の存在が検知されない場合、即ち、トイレ室内の無人状態が継続している場合(S71:NO)、制御部300は、ノズル洗浄工程の全工程が終了したか否かを判断する(S72)。全工程が終了するまでの間(S72:NO)、ノズル洗浄工程は実行される。そして、全工程を終了すると(S72:YES)、本処理は終了する。
【0131】
これに対し、不使用時のノズル洗浄工程の実行中に利用者の存在が検知された場合(S71:YES)、制御部300は、ノズル洗浄工程を直ちに停止させる(S73)。そして、利用者がトイレ室から立ち去った後、上述の複数種類の自動洗浄モードのいずれかによって、不使用時のノズル洗浄工程が改めて開始される。
【0132】
このように構成される本実施例では、不使用時のノズル洗浄工程を実行中の場合でも、利用者の存在を検知したときには、ノズル洗浄工程を停止させて、利用者のトイレ利用を優先させる。従って、利用者は、ノズル洗浄工程の完了を待たずに直ちにトイレ10を利用することができ、使い勝手が向上する。
【0133】
また、利用者がトイレ室に入室した際にノズル洗浄工程を直ちに停止させることにより、衛生洗浄装置の制御動作に不慣れな利用者を驚かせたり、あるいは、誤動作であるとの誤解を利用者に与えたりする事態を防止できる。
【実施例5】
【0134】
図16に基づいて本発明の第5実施例を説明する。本実施例では、不使用時のノズル洗浄工程を実行する直前に利用者の存在を検知した場合、利用者が立ち去るのを待ってからノズル洗浄工程を行う。
【0135】
図16は、図12で述べた第1自動洗浄モードに本実施例を適用した場合のフローチャートである。図12との相違点を中心に説明する。相違するステップを太線で示す。本実施例では、不使用時のノズル洗浄工程を実行する直前に利用者の存在を検知した場合(S43A:YES)、制御部300は、ノズル洗浄工程の実行を待機させる(S45)。制御部300は、利用者の存在が検知されなくなるまで(S46:YES)、ノズル洗浄工程を開始待ち状態におく。そして、利用者がトイレ室から立ち去って存在が検知されなくなると(S46:NO)、制御部300は、開始待ち状態におかれていたノズル洗浄工程を実行させる(S44)。
【0136】
このように構成される本実施例では、不使用時のノズル洗浄工程を開始直前に利用者を検知した場合、利用者が立ち去るまでノズル洗浄工程の開始を待つため、利用者を驚かせる事態の発生を防止でき、利用者によるトイレ利用を優先させることができ、使い勝手が向上する。
【実施例6】
【0137】
図17に基づいて本発明の第6実施例を説明する。本実施例は、第5実施例と同様に、不使用時のノズル洗浄工程を実行する直前に利用者の存在を検知した場合、利用者が立ち去るのを待ってからノズル洗浄工程を行う。
【0138】
図17は、図13で述べた第2自動洗浄モードに本実施例を適用した場合のフローチャートである。図13との相違点を中心に説明すると、制御部300は、不使用時のノズル洗浄工程を実行直前に利用者の存在を検知したときは(S51A:YES)、ノズル洗浄工程を開始待ち状態とする(S53)。そして、利用者の存在が検知されなくなると(S54:NO)、待ち状態におかれたノズル洗浄工程を開始させる(S55)。
【0139】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されない。当業者であれば、本発明の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0140】
例えば、第1の自動洗浄モードと第2の自動洗浄モード、第1の自動洗浄モードと第3の自動洗浄モード、第2の自動洗浄モードと第3の自動洗浄モード、第1〜第3の自動洗浄モードの全てのように、複数種類の自動洗浄モードを適宜結合させてもよい。
【0141】
また、第5実施例及び第6実施例では、不使用時のノズル洗浄工程の開始を利用者が立ち去るまで待機させる処理を第1自動洗浄モード及び第2自動洗浄モードに適用した場合を述べたが、第3自動洗浄モードにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】本発明の実施形態の概要を示す説明図。
【図2】衛生洗浄装置が適用されるトイレの外観図。
【図3】温水洗浄便座の外観図。
【図4】リモートコントローラの正面図。
【図5】衛生洗浄装置を備えるトイレのブロック図。
【図6】衛生洗浄装置の洗浄水供給構造及びノズル機構の説明図。
【図7】噴射孔洗浄を行う様子を示す拡大斜視図。
【図8】胴部洗浄を行う様子を示す拡大斜視図。
【図9】トイレの利用履歴を管理するテーブルの説明図。
【図10】トイレの利用履歴を管理する処理のフローチャート。
【図11】衛生洗浄の前後でノズルを洗浄する処理を示すフローチャート。
【図12】自動的にノズル洗浄を実行するフローチャート。
【図13】第2実施例に係り、自動的にノズル洗浄を実行するフローチャート。
【図14】第3実施例に係り、自動的にノズル洗浄を実行するフローチャート。
【図15】第4実施例に係り、自動的にノズル洗浄を実行するフローチャート。
【図16】第5実施例に係り、自動的にノズル洗浄を実行するフローチャート。
【図17】第6実施例に係り、自動的にノズル洗浄を実行するフローチャート。
【符号の説明】
【0143】
1…衛生洗浄装置、2…ノズル装置、2A…ノズル本体、2A1,2A2…噴射孔、2A3,2A4…流路、2B…洗浄水供給手段、2C…ノズル駆動手段、2D…洗浄室、3…低利用状態検出手段、3A〜3C 予測モード、4…人体検知手段、5…ノズル洗浄制御手段、5A…通常時ノズル洗浄モード、5B…不使用時ノズル洗浄モード、6…衛生洗浄制御手段、7…操作手段、10…トイレ、11…便器本体、12…便座、13…便蓋、14…ケーシング、15…ロータンク、20…リモートコントローラ、21…表示部、22〜26…ボタン(入力部)、27…制御部、28…通信部、30…着座センサ、31…人体検知センサ、100…衛生洗浄装置、101…ノズル本体、102A,102A…噴射孔、103…洗浄室、104…ノズル洗浄用流路、110…給水ホース、111…分岐部、112…バルブユニット、113…熱交換ユニット、114…流調ユニット、115…脈動装置ユニット、120…ノズルモータ、121…駆動プーリ、122,122…従動プーリ、123…タイミングベルト、124…テンショナ、125…ラッチ部、126…流路切替弁、200…吐水装置、210…便座・便蓋開閉装置、220…便座ヒータ、230…乾燥装置、240…脱臭装置、300…制御部、310…CPU、320…RAM、330…ROM、340…タイマ、350…入出力インターフェース、360…バス、400…トイレ利用履歴管理テーブル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者から入力される指示に基づいて、ノズルに設けられた噴射孔から洗浄水を噴射させることにより、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置であって、
前記ノズルを洗浄するためのノズル洗浄手段と、
利用者の存在を検知するための人体検知手段と、
利用者による利用頻度が低下する低利用状態に移行したか否かを検出する低利用状態検出手段と、
前記低利用状態検出手段によって前記低利用状態への移行が検出された場合は、前記人体検知手段によって利用者の存在が検知されていないときに、前記ノズル洗浄手段によって前記ノズルを洗浄させるノズル洗浄工程を実行させるノズル洗浄制御手段と、
を備えた衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記低利用状態検出手段は、
利用者によって利用された利用履歴を管理する利用履歴管理手段を用いることにより、前記利用頻度が相対的に高い時間帯から前記利用頻度が相対的に低い時間帯に移行した場合に、前記低利用状態への移行を検出するものである請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記低利用状態検出手段は、
節電モードへの移行が検出された場合に、前記低利用状態への移行を検出するものである請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記低利用状態検出手段は、
利用者によって最後に利用された時刻から予め設定された所定時間が経過した場合に、前記低利用状態への移行を検出するものである請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズル洗浄制御手段は、人体局部を洗浄する場合よりも洗浄水の量を増大させて、前記ノズル洗浄工程を実行させる請求項1〜4のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記ノズル洗浄制御手段は、前記ノズル洗浄工程を実行中に、前記人体検知手段によって利用者の存在が検知された場合は、前記ノズル洗浄工程を停止させる請求項1〜5のいずれかに記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記ノズル洗浄制御手段は、前記ノズル洗浄工程を実行中に、前記人体検知手段によって利用者の存在が検知された場合は、前記ノズル洗浄工程を停止させ、前記人体検知手段によって利用者の存在が検知されなくなった後で、前記ノズル洗浄工程を再び実行させる請求項1〜5のいずれかに記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−315133(P2007−315133A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−148098(P2006−148098)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】