説明

衛生洗浄装置

【課題】ノズルの側面に付着している汚物を確実に除去する。
【解決手段】洗浄部材は、便座に着座した使用者の局部に対し上向きに洗浄水を吐出するノズル10L,10Rに対し、上方から洗浄液を吐出する第1の吐出口26と、ノズル10L,10Rに対し側方から洗浄液を吐出する第2の吐出口27L,27C,27Rとを有する。局部洗浄によってノズル10L,10Rの上面13に付着した汚物は、第1の吐出口26から下向きに吐出される洗浄液によって除去され、ノズル10L,10Rの側面14に付着した汚物は、第2の吐出口27L,27C,27Rから横向きに吐出される洗浄液により除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、便座に着座した使用者の局部に対し洗浄水を吐出するノズルと、ノズルに対して洗浄液を吐出する洗浄部材とを備え、ノズルに付着している汚物を、洗浄部材から吐出した洗浄液で洗い流すようにした衛生洗浄装置が開示されている。
【0003】
ノズルは、洗浄水を吐出するときに使用者の局部の下方に位置するので、局部洗浄によって落下した汚物の多くは、ノズルの上面に落下して付着する。この装置では、洗浄部材をノズルの上方に配置して、洗浄液を下向きに吐出するようにしているので、ノズルの上面に付着した汚物を洗い流すことができる。
【特許文献1】特開2001−254425公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、局部洗浄によってノズルの上面に落下した汚物の一部は、洗浄水とともにノズルの側方に流れ落ち、ノズルの側面に付着する場合があり、また、汚物の一部が局部からノズルの側面に直接付着する場合もある。このように、ノズルの側面に付着している汚物は、ノズルの上方から洗浄液を吐出するだけでは除去しきれないことがある。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、ノズルの側面に付着している汚物を確実に除去することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、便座に着座した使用者の局部に対し上向きに洗浄水を吐出するノズルと、前記ノズルに対し上方から洗浄液を吐出する第1の吐出口と、前記ノズルに対し側方から洗浄液を吐出する第2の吐出口とを有する洗浄部材を備えているところに特徴を有する。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記ノズルは、その上面が便鉢の内部に向かって下り勾配となる姿勢で設けられ、前記第1の吐出口は、前後方向において、前記ノズルの上面における洗浄液の吐出指向位置と同じ位置か、吐出指向位置よりも後方に配置されているところに特徴を有する。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記洗浄部材は、複数の前記吐出口に洗浄液を供給する流路部を有し、前記複数の吐出口が、前記流路部の上流側から下流側に向かって並ぶように配置されているところに特徴を有する。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3に記載のものにおいて、前記流路部に開口する前記複数の吐出口は、その開口面積が互いに異なっているところに特徴を有する。
【0010】
請求項5の発明は、請求項4に記載のものにおいて、前記洗浄部材は、前記流路部内に洗浄液を流入させるための流入部を有し、前記流路部に開口する前記複数の吐出口の開口面積は、前記流入部から遠い下流側の前記吐出口の方が、前記流入部に近い上流側に位置する前記吐出口よりも小さいところに特徴を有する。
【0011】
請求項6の発明は、請求項3ないし請求項5のいずれかに記載のものにおいて、前記ノズルは、互いに並列するように2本設けられており、前記流路部は、前記2本のノズルの上方において前記ノズルと略直角に配されて、前記第1の吐出口を開口させる第1流路部と、前記第1流路部から分岐して前記ノズルの両側面と対応するように下方へ延出する3つの第2流路部とを備えて構成され、前記3つの第2流路部のうち両端側に位置する2つの前記第2流路部には、その前記ノズルと対応する一方の側面のみに前記第2の吐出口が開口し、前記3つの第2流路部のうち中央に位置する前記第2流路部には、その両側に位置する2つの前記ノズルと対応する両方の側面に前記第2の吐出口が開口しているところに特徴を有する。
【0012】
請求項7の発明は、請求項6に記載のものにおいて、前記第1流路部の一方の端部に、前記流路部に洗浄液を流入させるための流入部が、前記第1流路部とほぼ同軸状に形成されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0013】
<請求項1の発明>
局部洗浄によってノズルの上面に付着した汚物は、第1の吐出口から下向きに吐出される洗浄液によって除去され、ノズルの側面に付着した汚物は、第2の吐出口から横向きに吐出される洗浄液によって除去される。
【0014】
<請求項2の発明>
ノズルの上面が便鉢の内部に向かって下り勾配となっている点に着目し、両吐出口のうち少なくとも上から洗浄液を吐出する第1の吐出口を、前後方向において、ノズルの表面における洗浄液の吐出指向位置と同じ位置か、吐出指向位置よりも後方に配置した。これにより、ノズルに向けて吐出された洗浄液は、ノズルの上面で前方へ跳ね返る。この洗浄液が跳ね返る方向は、便鉢の内部に向かう方向となるので、洗浄液が便鉢の外へ飛び散る虞はない。
【0015】
<請求項3の発明>
複数の吐出口が流路部を共有しているので、1つの吐出口に1つの独立した流路部を設ける形態のものに比べると、洗浄部材の形状を簡素化することができる。
【0016】
<請求項4の発明>
流路部に開口する複数の吐出口の開口面積が互いに異なるようにしたので、各吐出口において必要とされる洗浄液の吐出量や吐出圧等を適切に設定することができ、ひいては洗浄液によるノズルの洗浄効率の向上を図ることができる。
【0017】
<請求項5の発明>
流入部から遠い下流側の吐出口では、圧力損失によって洗浄液の流動圧が低下するために、洗浄液の吐出の勢いが弱くなることが懸念される。そこで、本発明では、流入部から遠い下流側の吐出口の開口面積を、流入部に近い上流側に位置する吐出口よりも小さくした。これにより、下流側の吐出口から吐出する洗浄液の流量が絞られるので、その分、吐出の勢いが高められる。
【0018】
<請求項6の発明>
ノズルは、互いに並列するように2本設けられているのであるが、洗浄部材は、この2本のノズルに対して洗浄液を吐出する吐出口を有しているので、2本のノズルを1つの洗浄部材だけで洗浄することが実現されている。
【0019】
<請求項7の発明>
流路部に洗浄液を流入させるための流入部が、第1流路部の一方の端部においてこの第1流路部とほぼ同軸状に形成されているので、流入部が第1流路部と直角に形成されている場合に比べると、洗浄液の流動抵抗が低減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態の衛生洗浄装置は、周知の形態の便座(図示せず)に着座した使用者の局部に対し上向きに洗浄水(常温の水又は温水)を吐出する左右一対のノズル10L,10Rと、局部洗浄によって汚れた左右両ノズル10L,10Rを洗浄するための洗浄部材20とを備えて構成されている。尚、以下の説明において、前後方向については、図1及び図3における下方を前方ということにする。
【0021】
ノズル10L,10Rは、周知の形態の便鉢(図示せず)の後端部において便座よりも低い位置に支持されている。便鉢の後端部には、図1に示すように前後方向に延びる左右一対のスリーブ11L,11Rが固定して設けられ、図1における右側のスリーブ11R内には、おしり用ノズル10Rが前後方向の進退移動を可能に設けられ、図1における左側のスリーブ11L内には、ビデ用ノズル10Lが前後方向の進退移動を可能に設けられている。各ノズル10L,10Rは、いずれも前後方向に細長く、内部に洗浄水の流路(図示せず)が形成されている。ノズル10L,10Rの後端部には流路に洗浄水を供給するためのホース(図示せず)が接続されている。ノズル10L,10Rの上面13の前端部には、流路に連通して洗浄水を吐出させる吐水口12L,12Rが開口されている。
【0022】
ノズル10L,10Rが使用されない(洗浄水を吐出しない)ときには、ノズル10L,10Rのうち吐水口12L,12Rの形成されている前端部を除いた大部分がスリーブ11L,11R内に収容されて、ノズル10L,10Rが待機位置(図1を参照)にある。ノズル10L,10Rが使用される(洗浄水を吐出する)ときには、いずれか一方のノズル10L,10Rがその長さ方向と平行に前方へ進出し、吐水口12L,12Rが使用者の局部の下方の洗浄位置へ移動するようになっている。このノズル10L,10Rの進退移動の方向(ノズル10L,10Rの上面13)は、水平ではなく、前方(便鉢の内部)に向かって下り勾配となる向きである。つまり、ノズル10L,10Rは、使用時に斜め前下方へ進出するようになっている。
【0023】
洗浄部材20は、ノズル10L,10Rが待機位置にある状態において吐水口12L,12Rと対応する位置に配置され、図示しないブラケットにより便鉢に対して移動しないように支持されている。洗浄部材20は、細長い直線状の第1流路部21と、この第1流路部21から分岐した3つの第2流路部22L,22C,22Rとを一体に形成した形態である。3つの第2流路部22L,22C,22Rは、第1流路部21の左右両端位置と第1流路部21の左右方向における中央位置から第1流路部21と直角に片持ち状に延出した形態である。この3つの第2流路部22L,22C,22Rは、全て同じ方向に延出しているので、互いに平行をなす。
【0024】
また、洗浄部材20には、第1流路部21内に洗浄液を供給するための流入部23が一体に形成されている。流入部23は、第1流路部21におけるビデ側ノズル10Lに近い上流側(図1における左側)の端部に連なっていて、第1流路部21と同軸状の円筒形をなしている。この流入部23には、洗浄液の供給源(図示せず)に接続された供給ホース29の下流端部が接続されている。また、第2流路部22L,22C,22Rの奥端部(下流端部)は、閉じて袋小路状の形態となっている。
【0025】
第1流路部21の断面形状は方形であり、第1流路部21の内部には、洗浄液(洗浄水と同じ常温の水又は温水)を流動させるための方形断面のメイン供給路24が形成されている。第2流路部22L,22C,22Rも、第1流路部21と同じく断面形状が方形であり、第2流路部22L,22C,22Rの内部には、上流端がメイン供給路24に連通されていて洗浄液を流動させるための方形断面の分岐供給路25L,25C,25Rが形成されている。
【0026】
かかる洗浄部材20は、第1流路部21をノズル10L,10Rの前端部の上方において左右方向(つまり、ノズル10L,10Rの長さ方向と直角な水平方向)を向くように配置するとともに、第2流路部22L,22C,22Rを下向きに突出させてノズル10L,10Rの側面14と対向させるように配置されている。図1に示すように、左側の第2流路部22Lと中央の第2流路部22Cは、ビデ用ノズル10Lを左右両側から挟むように位置し、右側の第2流路部22Rと中央の第2流路部22Cは、おしり用ノズル10Rを左右両側から挟むように位置する。
【0027】
第1流路部21の下面には、ノズル10L,10Rの上面13に向かって開口する複数の第1の吐出口26が、第1流路部21の長さ方向(メイン供給路24内における洗浄液の流動方向)に沿って左右に並ぶように形成されている。尚、本実施形態では、1本のノズル10L,10Rに対して3つの第1の吐出口26を開口させているが、1本のノズル10L,10Rに対応する第1の吐出口26の数は、2つ以下でも、4つ以上でもよい。
【0028】
この第1の吐出口26の開口形状は円形であり、第1の吐出口26の開口面積は、互いに異なる。即ち、最も上流側に位置する第1の吐出口26の開口面積が最も大きく、下流側に位置する第1の吐出口26ほど開口面積が小さくなっており、最も下流側に位置する第1の吐出口26の開口面積が最も小さくなっている。
【0029】
第1の吐出口26の開口方向(即ち、第1の吐出口26からの洗浄液の吐出方向)は、図4に示すように、第1流路部21の下面及びノズル10L,10Rの上面13と直角な方向ではなく、この両面に対して斜め方向となっている。そして、この第1の吐出口26の開口方向は、鉛直方向に対しても斜めとなっている。また、前後方向に関しては、第1の吐出口26は、斜め前方を向いて開口している。これにより、第1の吐出口26は、ノズル10L,10Rの上面13における洗浄液の吐出指向位置13Pよりも後方に位置することになり、第1の吐出口26からの洗浄液の吐出方向は、ノズル10L,10Rの前下がりに傾斜した上面13のうち洗浄液の吐出指向位置13Pより前方の領域に対して鈍角をなす。
【0030】
図3に示すように、ビデ用ノズル10Lを挟む2つの第2流路部22L,22Cの側面には、ビデ用ノズル10Lの左右両側面14に向かって開口する複数の第2の吐出口27Lが、第2流路部22L,22Cの長さ方向(分岐供給路25L,25C内における洗浄液の流動方向)に沿って上下に並ぶように形成されている。同様に、おしり用ノズル10Rを挟む2つの第2流路部22C,22Rの側面にも、おしり用ノズル10Rの左右両側面14に向かって開口する複数の第2の吐出口27Rが上下に並ぶように形成されている。尚、本実施形態では、1本のノズル10L,10Rに対して2つの第2の吐出口27L,27Rを開口させているが、1本のノズル10L,10Rに対応する第1の吐出口27L,27Rの数は、1つでも、3つ以上でもよい。この第2の吐出口27L,27Rの開口形状は円形である。
【0031】
左右両端側に位置する2つの第2流路部22L,22Rは、ノズル10L,10Rと対応する一方の側面のみに第2の吐出口27L,27Rが開口しているのに対し、中央に位置する第2流路部22Cは、その左右両側面に第2の吐出口27L,27Rが開口している。換言すると、端部側に位置する2つの第2流路部22L,22Rは、いずれか一方のノズル10L,10Rの側面14のみを洗浄するための専用の流路部であるのに対し、中央に位置する第2流路部22Cは、2つのノズル10L,10Rの両方の側面14を洗浄するための共用の流路部となっている。
【0032】
図3に示すように、第2の吐出口27L,27Rの開口方向(即ち、第2の吐出口27L,27Rからの洗浄液の吐出方向)は、第2流路部22L,22C,22Rの側面及びノズル10L,10Rの長さ方向と直角な方向ではなく、この側面及び長さ方向に対して斜め方向となっている。そして、この第2の吐出口27L,27Rの開口方向は、左右方向(つまり、ノズル10L,10Rの長さ方向と直角な方向)に対しても斜めとなっている。また、前後方向に関しては、第2の吐出口27L,27Rの開口方向は、斜め前方となっている。これにより、第2の吐出口27L,27Rは、ノズル10L,10Rの側面14における洗浄液の吐出指向位置14Pよりも後方に位置することになり、第2の吐出口27L,27Rからの洗浄液の吐出方向は、ノズル10L,10Rの側面14のうち洗浄液の吐出指向位置14Pよりも前方の領域に対して鈍角をなす。
【0033】
また、流入部23に近いビデ用ノズル10Lに洗浄液を吐出する第2の吐出口27L,27Rの開口面積は、流入部23から遠いおしり用ノズル10Rに洗浄液を吐出する第2の吐出口27Rの開口面積よりも広くなっている。さらに、左右両端側に位置する2つの第2流路部22L,22Rの分岐供給路25L,25Rの断面積は、中央に位置する第2流路部22Cの分岐供給路25Cの断面積よりも大きい。また、いずれの第2吐出口27L,27Rの開口面積も、第1の吐出口26の開口面積より広くなっている。
【0034】
次に、本実施形態の作用を説明する。
ノズル10L,10Rを洗浄する際には、洗浄部材20内に所定圧力の洗浄液を供給する。供給された洗浄液は、メイン供給路24を一方向に流れ、洗浄液の一部は途中で分岐供給路25L,25C,25Rに供給される。メイン供給路24を流れる洗浄液は第1の吐出口26からノズル10L,10Rの上面13に向けて吐出され、分岐供給路25L,25C,25Rを流れる洗浄液は第2の吐出口27L,27Rからノズル10L,10Rの側面14に向けて吐出される。ノズル10L,10Rの上面13に付着している汚物は、第1の吐出口26から吐出された洗浄液によって除去され、ノズル10L,10Rの側面14に付着している汚物は、第2の吐出口27L,27Rから吐出された洗浄液によって除去される。このように、本実施形態によれば、ノズル10L,10Rの上面13に付着している汚物だけでなく、ノズル10L,10Rの側面14に付着している汚物も確実に除去することができる。
【0035】
このノズル10L,10Rの洗浄に際しては、ノズル10L,10Rを進退させながら洗浄液を吐出してもよい。このようにすれば、ノズル10L,10Rのうち吐水口12L,12Rが配置されている前端部(即ち、最も汚物が付着し易い部分)だけでなく、吐水口12L,12Rの形成領域よりも後方の領域(前端部に比べて量は少ないものの、汚物が付着する可能性がある領域)も洗浄液によって洗浄することができる。
【0036】
また、ノズル10L,10Rの上面13が便鉢の内部に向かって下り勾配となっている点に着目し、第1の吐出口26を、ノズル10L,10Rの上面13のうち洗浄液の吐出指向位置13Pよりも後方に配置したので、第1の吐出口26からノズル10L,10Rの上面13に向けて吐出された洗浄液は、ノズル10L,10Rの上面13で斜め前上方へ跳ね返る。この洗浄液が跳ね返る方向は、便鉢の内部に向かう方向となるので、洗浄液が便鉢の外へ飛び散る虞はない。また、洗浄液が跳ね返る方向は、洗浄部材20よりも前方を指向しているので、洗浄液と一緒に跳ね返った汚物が洗浄部材20に付着する虞はない。
【0037】
また、第2の吐出口27L,27Rを、ノズル10L,10Rの側面14のうち洗浄液の吐出指向位置14Pよりも後方に配置したので、第2の吐出口27L,27Rからノズル10L,10Rの側面14に向けて吐出された洗浄液は、ノズル10L,10Rの側面14で斜め前方へ跳ね返る。洗浄液が跳ね返る方向は、洗浄部材20よりも前方を指向しているので、洗浄液と一緒に跳ね返った汚物が洗浄部材20に付着する虞はない。
【0038】
また、洗浄部材20は、複数の吐出口26,27L,27Rに洗浄液を供給する流路部21,22L,22C,22Rを有し、複数の吐出口26,27L,27Rが、流路部21,22L,22C,22Rの上流側から下流側に向かって並ぶように配置されている。このように、複数の吐出口26,27L,27Rが流路部21,22L,22C,22Rを共有しているので、1つの吐出口に1つの独立した流路部を設ける形態のものに比べると、洗浄部材20の形状を簡素化することができる。
【0039】
また、流路部21,22L,22C,22Rに開口する複数の吐出口26,27L,27Rは、その開口面積が互いに異なっているので、各吐出口26,27L,27Rにおいて必要とされる洗浄液の吐出量や吐出圧等を適切に設定することができ、ひいては洗浄液によるノズル10L,10Rの洗浄効率の向上を図ることができる。
【0040】
また、ノズル10L,10Rは、ビデ用とおしり用の2本が互いに並列するように設けられているのであるが、洗浄部材20は、この2本のノズル10L,10Rに対して洗浄液を吐出する吐出口26,27L,27Rを有しているので、2本のノズル10L,10Rを1つの洗浄部材20だけで洗浄することが実現されている。
【0041】
また、ノズル10L,10Rの上面13を洗浄する第1の吐出口26を開口させる第1流路部21と、ノズル10L,10Rの側面14を洗浄する第2の吐出口27L,27Rを開口させる第2流路部22L,22C,22Rとが、互いに連通しているので、第1の吐出口26と第2の吐出口27L,27Rに洗浄液を供給するための流路部21,22L,22C,22Rは1系統だけで済み、洗浄部材20の部品点数の削減と洗浄部材20の形状の簡素化が実現されている。
【0042】
また、第1流路部21の一方の端部に、流路部21,22L,22C,22Rに洗浄液を流入させるための流入部23が、第1流路部21とほぼ同軸状に形成されているので、流入部が第1流路部と直角に形成されている場合に比べると、洗浄液の流動抵抗が低減され、吐出口26,27L,27Rから高圧の洗浄液を吐出させることができる。
【0043】
また、流入部23から遠い下流側の第1の吐出口26では、圧力損失によって洗浄液の流動圧が低下するために、洗浄液の吐出の勢いが弱くなることが懸念される。そこで、本実施形態では、流入部23から遠い下流側の吐出口26の開口面積を、流入部23に近い上流側に位置する吐出口26よりも小さくした。これにより、下流側の吐出口26から吐出する洗浄液の流量が絞られるので、その分、洗浄液の吐出の勢いが高められる。
【0044】
<実施形態2>
次に、本発明を具体化した実施形態2を図5を参照して説明する。本実施形態2の洗浄部材30は、流入部23に近いビデ用ノズル10Lの側面14に洗浄液を吐出する第2の吐出口31Lの開口面積を、流入部23から遠いおしり用ノズル10Rの側面14に洗浄液を吐出する第2の吐出口31Rの開口面積よりも狭くした、という点において上記実施形態1の洗浄部材20とは構成が異なっている。その他の構成については上記実施形態1と同じであるため、同じ構成については、同一符号を付し、構造、作用及び効果の説明は省略する。
【0045】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0046】
(1)上記実施形態では、洗浄液として洗浄水と同じ常温水又は温水を用いたが、洗浄液としては、洗浄効果を高めるための薬剤を混入した水以外の液剤を用いることができる。
【0047】
(2)上記実施形態では、ノズルがその長さ方向と平行に進退移動する場合について説明したが、本発明は、ノズルがその長さ方向と交差する方向へ変位する場合にも適用できる。
【0048】
(3)上記実施形態では、ノズルが便鉢の後端部から便鉢内に向けて斜め前下方へ突き出す形態としたが、ノズルは、水平に前方へ突き出す形態であってもよい。この場合、ノズルの表面で跳ね返った洗浄液が便鉢の外へへ飛び散るのを防止するためには、両吐出口のうち少なくとも第1の吐出口は、ノズルの表面における洗浄液の吐出指向位置よりも後方に配置されていることが好ましい。
【0049】
(4)上記実施形態では、第1の吐出口と第2の吐出口の両方を、ノズルの表面における洗浄液の吐出指向位置よりも後方に配置したが、ノズルの表面における洗浄液の吐出指向位置よりも後方に配置するのは、第1の吐出口だけであってもよい。
【0050】
(5)上記実施形態では、吐出口を、ノズルの表面における洗浄液の吐出指向位置よりも後方に配置したが、本発明によれば、吐出口は、ノズルの表面における洗浄液の吐出指向位置と同じ位置に配置してもよい。
【0051】
(6)上記実施形態では1つの流路部に複数の吐出口を開口させたが、本発明によれば、1つの吐出口に対して1つの独立した流路部を設けてもよい。
【0052】
(7)上記実施形態では流入部に近い側の第2の吐出口の開口面積と流入部から遠い側の第2の吐出口の開口面積とが互いに異なるようにしたが、本発明によれば、全ての第2の吐出口の開口面積が同じであってもよい。
【0053】
(8)上記実施形態では、流入部から遠い下流側の第1の吐出口の開口面積を、流入部に近い上流の第1の吐出口よりも小さくしたが、本発明によれば、全ての第1の吐出口の開口面積を同じとしてもよく、流入部に近い上流側の第1の吐出口の開口面積を、流入部から遠い下流側の第1の吐出口の開口面積よりも小さくしてもよい。
【0054】
(9)上記実施形態では第2吐出口の開口面積を第1の吐出口の開口面積よりも広くしたが、第1吐出口の開口面積を、第2の吐出口の開口面積より広くしてもよい。
【0055】
(10)上記実施形態では1つの洗浄部材が1つの流路部を有し、この流路部に全ての吐出口を開口させたが、本発明によれば、1つの洗浄部材が複数の流路部を有し、各流路部に1つ又は複数の吐出口を開口させてもよい。この場合、流路部の形態としては、L字形又は「コ」字形に屈曲した形状であって第1の吐出口と第2の吐出口の両方を開口させる形態、全体として直線状をなして第1の吐出口のみを開口させる形態、全体として直線状をなして第2の吐出口のみを開口させる形態のいずれであってもよい。
【0056】
(11)上記実施形態では1つの洗浄部材が2つのノズルを洗浄するようにしたが、本発明によれば、2つの洗浄部材を設け、各洗浄部材が個別に1つのノズルのみを洗浄するようにしてもよい。
【0057】
(12)上記実施形態では2本のノズルの間に第2流路部が介在するようにしたが、本発明によれば、2本のノズルの間に第2流路部を介在させない形態としてもよい。
【0058】
(13)上記実施形態では流入部を第1流路部と同軸状に設けたが、本発明によれば、流入部を第1流路部に対して交差する方向に設けてもよい。
【0059】
(14)上記実施形態では流入部を第1流路部の端部に設けたが、流入部は、第1流路部における端部以外の位置に配置してもよく、第2流路部に設けてもよい。
【0060】
(15)上記実施形態ではノズルが2本設けられている場合について説明したが、本発明は、ノズルが1本だけである場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】実施形態1においてノズルと洗浄部材との位置関係をあらわす平面図
【図2】洗浄部材の斜視図
【図3】洗浄部材の一部を切欠した状態をあらわす拡大平面図
【図4】図3のX−X線断面図
【図5】実施形態2において洗浄部材の一部を切欠した状態をあらわす平面図
【符号の説明】
【0062】
10L…ビデ用ノズル
10R…おしり用ノズル
20…洗浄部材
21…第1流路部
22L,22C,22R…第2流路部
23…流入部
26…第1の吐出口
27L,27C,27R…第2の吐出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便座に着座した使用者の局部に対し上向きに洗浄水を吐出するノズルと、
前記ノズルに対し上方から洗浄液を吐出する第1の吐出口と、前記ノズルに対し側方から洗浄液を吐出する第2の吐出口とを有する洗浄部材を備えていることを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズルは、その上面が便鉢の内部に向かって下り勾配となる姿勢で設けられ、
前記第1の吐出口は、前後方向において、前記ノズルの上面における洗浄液の吐出指向位置と同じ位置か、吐出指向位置よりも後方に配置されていることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄部材は、複数の前記吐出口に洗浄液を供給する流路部を有し、
前記複数の吐出口が、前記流路部の上流側から下流側に向かって並ぶように配置されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記流路部に開口する前記複数の吐出口は、その開口面積が互いに異なっていることを特徴とする請求項3記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄部材は、前記流路部内に洗浄液を流入させるための流入部を有し、
前記流路部に開口する前記複数の吐出口の開口面積は、前記流入部から遠い下流側の前記吐出口の方が、前記流入部に近い上流側に位置する前記吐出口よりも小さいことを特徴とする請求項4記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記ノズルは、互いに並列するように2本設けられており、
前記流路部は、
前記2本のノズルの上方において前記ノズルと略直角に配されて、前記第1の吐出口を開口させる第1流路部と、
前記第1流路部から分岐して前記ノズルの両側面と対応するように下方へ延出する3つの第2流路部とを備えて構成され、
前記3つの第2流路部のうち両端側に位置する2つの前記第2流路部には、その前記ノズルと対応する一方の側面のみに前記第2の吐出口が開口し、
前記3つの第2流路部のうち中央に位置する前記第2流路部には、その両側に位置する2つの前記ノズルと対応する両方の側面に前記第2の吐出口が開口していることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記第1流路部の一方の端部に、前記流路部に洗浄液を流入させるための流入部が、前記第1流路部とほぼ同軸状に形成されていることを特徴とする請求項6記載の衛生洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2010−127059(P2010−127059A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−306847(P2008−306847)
【出願日】平成20年12月1日(2008.12.1)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】