説明

衛生洗浄装置

【課題】便器のボウル面に付着した汚物を効果的に除去できる衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】便器600に載置される本体200と、回動自在に便器600の上部に載置される便座400と、本体200に伸縮自在に内装され、第1水路51に連通した便器洗浄水噴出口52を有する洗浄ノズル53と、洗浄ノズル53を前後方向に移動させる第1駆動部60と、洗浄ノズル53を左右に往復回動させる第2駆動部70と、第1水路51に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、第1および第2駆動部と洗浄水供給部の動作を制御する制御部150とを備え、制御部150は、便器洗浄水噴出口52から噴射される洗浄水が便器600のボウル面610で走査軌跡を描くように制御する第1の便器洗浄過程を実施することにより、便器のボウル面610に付着した汚れを効果的に除去できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に関し、より詳しくは、用便後の便器に付着した排泄物を除去する衛生洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の衛生洗浄装置として、用便後に人体の局部を洗浄する局部洗浄装置や、局部洗浄後に濡れた人体局部を乾燥する乾燥装置を備えたものが広く知られている。また、便器のボウル面に大便が付着することを防止するための配慮からプレ洗浄装置を備えたものもある(例えば、下記特許文献1、請求項1参照)。
【0003】
図17は、特許文献1に記載された従来の衛生洗浄装置を示すものである。図17に示すように、衛生洗浄装置900には、肛門洗浄用ノズル910とビデ洗浄用ノズル(図示せず)とともに、プレ洗浄ノズル920を備えており、プレ洗浄ノズル920には吐出口921が設けてあり、吐出口921から吐出した洗浄水が斜め下方に向けて末広がり状に広がるように構成されている。
【0004】
また、衛生洗浄装置900は更に便座930を備えており、洋式の便器940の上に装着される。使用者が便座930に着座すると、プレ洗浄ノズル920の吐出口921から洗浄水を噴射して、予め便器940のボウル面を濡らす。これにより、大便がボウル面に落下した時の滑りを良くすることで、大便がボウル面に付着しにくくし、乾燥したボウル面に大便が落下して付着するのに比して便器を清潔に保つことができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−118076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来の構成では、油分を多く含む大便が便器のボウル面に落ちた場合、大便が付着することを完全に防ぐことができずに、便器に付着して残ってしまうという課題を有していた。
【0007】
したがって、使用者自らがブラシなどを用いて汚れを擦り落とす手間が生じる。あるいは、便器洗浄排水を繰返し供給して、ボウル面を洗い流す方法もあるが、多量の水を使用するなど効率的ではなかった。しかし、汚れが付着したまま放置したのでは、次の使用者に不快感を与えることになり、不衛生でもあった。
【0008】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、便器のボウル面に付着した汚物を、使用者の負担にならずに効果的に除去することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の衛生洗浄装置は、便器の後部上面に載置される本体と、前記本体に軸支され回動自在に前記便座の上部に載置される便座と、前記本体に伸縮自在に内装され、第1水路に連通した便器洗浄水噴出口を有する筒状の洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを前後方向に移動させる第1駆動部と、前記洗浄ノズルを左右に往復回動させる第2駆動部と、前記第1水路に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記第1
および前記第2駆動部と前記洗浄水供給部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記便器洗浄水噴出口から噴射した洗浄水が前記便器のボウル面で走査軌跡を描くように前記第1および前記第2駆動部を制御する第1の便器洗浄過程を実施するようにしたものである。
【0010】
これにより、便器洗浄水噴出口を便器のボウル面に接近させて、洗浄ノズルを前後方向へ移動させると共に左右へ往復回動させるので、便器洗浄水噴出口からの洗浄水はボウル面で走査軌跡を描くように噴射され、ボウル面に付着した汚れを強い水勢で押し流しつつ広範囲に除去することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の衛生洗浄装置は、便器洗浄水噴出口からの洗浄水がボウル面で走査軌跡を描くように噴射され、ボウル面に付着した汚れを強い水勢で押し流しつつ広範囲に除去することができる。そのため、便器のボウル面の汚れを確実に除去して、便器を清潔に保つことができるので、使用者がボウル面の汚れを清掃する手間を省ける。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置の外観斜視図
【図2】同衛生洗浄装置の制御系統図
【図3】同衛生洗浄装置の便器洗浄部の構成を示す斜視図
【図4】同衛生洗浄装置の第1の便器洗浄過程の動作状態を示す上面図
【図5】同衛生洗浄装置の第1の便器洗浄過程の動作状態を示す側面断面図
【図6】同衛生洗浄装置の第1の便器洗浄過程の動作状態を示す正面断面図
【図7】本発明の実施の形態2における衛生洗浄装置の便器洗浄部の動作状態を示す斜視図
【図8】同衛生洗浄装置の第2の便器洗浄過程の動作状態を示す上面図
【図9】同衛生洗浄装置の第2の便器洗浄過程の動作状態を示す側面断面図
【図10】同衛生洗浄装置の第2の便器洗浄過程の動作状態を示す正面断面図
【図11】本発明の実施の形態3における衛生洗浄装置の便器洗浄部の構成を示す斜視図
【図12】同衛生洗浄装置の制御系統図
【図13】同衛生洗浄装置における操作部の模式図
【図14】同衛生洗浄装置における動作ブロック図
【図15】同衛生洗浄装置におけるタイムチャート
【図16】実施の形態3の変形例における衛生洗浄装置の制御系統図
【図17】従来の衛生洗浄装置の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0013】
第1の発明の衛生洗浄装置は、便器の後部上面に載置される本体と、前記本体に軸支され回動自在に前記便器の上部に載置される便座と、前記本体に伸縮自在に内装され、第1水路に連通した便器洗浄水噴出口を有する筒状の洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルを前後方向に移動させる第1駆動部と、前記洗浄ノズルを左右に往復回動させる第2駆動部と、
前記第1水路に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記第1および前記第2駆動部と前記洗浄水供給部の動作を制御する制御部とを備え、前記制御部は、前記便器洗浄水噴出口から噴射した洗浄水が前記便器のボウル面で走査軌跡を描くように前記第1および前記第2駆動部を制御する第1の便器洗浄過程を実施するようにしたものである。
【0014】
これにより、便器洗浄水噴出口を便器のボウル面に接近させて、洗浄ノズルを前後方向へ移動させると共に左右へ往復回動させるので、便器洗浄水噴出口からの洗浄水はボウル面で走査軌跡を描くように噴射され、ボウル面に付着した汚れを強い水勢で押し流しつつ
広範囲に除去することができる。
【0015】
第2の発明は、特に、第1の発明における便器洗浄水噴出口は、洗浄ノズルの先端部に下向きに設けられている。
【0016】
これにより、便器洗浄水噴出口が洗浄ノズルの先端部に設けられているので、洗浄ノズルが便器のボウル面に接近した時には、強い水勢で洗浄水をボウル面に噴射することができ、ボウル面の汚れを押し流すのに十分な水圧が得られる。また、便器洗浄水噴出口が下向きに設けられているので、洗浄ノズルを左右に回動させると、洗浄水を左右に走査しながら広範囲の汚れを除去することができる。
【0017】
第3の発明は、特に、第2の発明における便器洗浄水噴出口の噴出方向は、洗浄ノズルの先端部に前記洗浄ノズルの軸方向に対して10度〜50度の範囲で下方に傾斜している。
【0018】
これにより、便器洗浄水噴出口の噴出方向を洗浄ノズルの軸方向に対する角度を小さくすると、洗浄ノズルを左右に回動させた時の洗浄水を走査する範囲が狭くなり、ボウル面を洗浄できる範囲が狭くなる。逆に、角度を大きくすると、洗浄水を走査する範囲が広くなるが、洗浄水の使用量が多くなる。洗浄ノズルの軸方向に対する便器洗浄水噴出口の噴出方向を10度〜50度の範囲にすることで、洗浄水の使用量を多くせず、ボウル面の洗浄範囲を幅広く確保することができる。
【0019】
第4の発明は、特に、第1〜3の発明における第1の便器洗浄過程は、第1駆動部が洗浄ノズルを前後方向に移動させつつ、第2駆動部が前記洗浄ノズルを左右に往復回動させるものである。
【0020】
これにより、洗浄水の噴出はジグザグ状に連続した走査軌跡を描くことができるので、洗浄水を広範囲にくまなく噴射して、付着した汚れを効率良く除去できる。
【0021】
第5の発明は、特に、第1〜3の発明における第1の便器洗浄過程は、便器の洗浄を指示する便器洗浄スイッチを有した操作部を備え、制御部は、便器洗浄スイッチの操作に応じて第1の便器洗浄過程を実行するものである。
【0022】
これにより、使用者が便器洗浄スイッチを操作すれば、便器洗浄の実行を指示することができるので、便器に付着した汚れが多くて十分に除去しきれない時でも、その時の必要性に応じて便器の汚れを効率的に除去することができる。
【0023】
第6の発明は、特に、第1〜5の発明において、使用者が本体に接近したことを検知する人体検知手段を備え、制御部は、前記人体検知手段の検知信号に応じて洗浄水供給部を所定時間作動させ、便器洗浄水噴出口から噴出した洗浄水を便器のボウル面に降り注がせる第2の便器洗浄過程を実行するものである。
【0024】
これにより、使用者が接近したことを検知すると、用便の前に第2の便器洗浄過程を実行して予め便器のボウル面を洗浄水で濡らすので、用便の際にボウル面に落ちた便を滑り落とすことができ、ボウル面に付着する汚れの付着量を軽減して、第1の便器洗浄過程で行う便器の汚れを除去する動作をより確実にできる。
【0025】
第7の発明は、特に、第6の発明において、便器洗浄噴水出口の下方に前記便器洗浄水噴出口に対して所定角度で対向する面を有した反射部材を備え、洗浄ノズルが本体内に収納された状態で前記便器洗浄水噴出口から洗浄水を噴出すると、洗浄水が反射部材で反射
して便器のボウル面に降り注ぐように構成されているものである。
【0026】
これにより、便器洗浄水噴出口から噴出した洗浄水は反射部材で反射して幅広く広がってボウル面に降り注がれ、短時間で便器のボウル面を濡らすことができる。また、洗浄ノズルを本体内に収納した状態で洗浄水を噴出するため、反射部材で反射した洗浄水のうち上方に跳ね返る成分が使用者に向かって放出することを防止できる。
【0027】
第8の発明は、特に、第7の発明における制御部は、便器洗浄水噴出口から噴出する洗浄水の水圧を、第1の便器洗浄過程の方が第2の便器洗浄過程より大きくなるように制御するものである。
【0028】
これにより、それぞれ洗浄過程の目的に適した水圧に設定することができる。例えば、便器を濡らす目的の第2の便器洗浄過程に比べて、便器に付着した汚れを除去する目的の第1の便器洗浄過程の水圧を高くすることで、便器に付着した汚れの剥離を容易にして、その汚れを短時間に除去することができる。
【0029】
第9の発明は、特に、第1〜8の発明において、洗浄ノズルは、上向きに設けられた局部洗浄水噴出口と、前記局部洗浄水噴出口に連通する第2水路とを備えており、洗浄水供給部は、第1または第2水路に選択的に洗浄水を供給する切換弁を備えており、制御部は、前記洗浄水供給部を制御して前記第1水路を止める一方、前記洗浄水を第2水路に流し、前記局部洗浄水噴出口から、便座に着座した使用者の局部に向けて噴出して、前記局部を洗浄するものである。
【0030】
これにより、洗浄水供給部から選択的に洗浄水が供給され、1本の洗浄ノズルに便器洗浄用と局部洗浄用の洗浄水噴出口を設ける構成により、洗浄ノズルの駆動部を兼用できるので、洗浄ノズルおよび駆動部の構成を簡素化することができ、本体内にコンパクトに内装できる。さらに、洗浄水噴出口を夫々に別に設けることにより、洗浄目的にあわせて噴流や噴出の向きを最適化して、便器に付着した汚れを効率的に除去することができる。
【0031】
第10の発明は、特に、第9の発明において、洗浄水供給部は、洗浄水を加熱する温水加熱部と、前記洗浄水の流量を調節する流量調節部とを備えており、操作部は、前記温水過熱部の過熱温度を設定する洗浄水温度スイッチと、前記流量調節部で調節する前記洗浄水の流量値を設定する洗浄水流量スイッチとを備えており、制御部は、便器洗浄スイッチを操作して第1の便器洗浄過程を実行中は、前記洗浄水温度スイッチと前記洗浄水流量スイッチとによる調節を有効にするものである。
【0032】
これにより、第1の便器洗浄を実行中に使用者は便器の汚れ度合いなどを確認しながら、必要に応じて洗浄水温度と洗浄水流量を調節できるので、便器に付着した汚れを効率的に除去することができる。たとえば汚れが多い場合など洗浄水の温度を上げて、流量を多くして便器洗浄を実行することができる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0034】
(第1実施形態)
図1は本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置およびそれを備えたトイレ装置を示す外観斜視図である。
【0035】
図1に示すようなトイレット装置1000は、トイレットルーム内或いはバスルーム内に設置される。トイレ装置1000は、洋式の便器600の上に衛生洗浄装置100が取
り付けられる。衛生洗浄装置100は、本体200、操作部300、便座400および便蓋500により構成される。
【0036】
便座400は、本体200に軸支され、便器600の上に開閉自在に載置されている。便蓋500は、本体200に軸支され、便座400の上に開閉自在に載置されている。そして、本体200の内部には、便器洗浄部50、洗浄水供給部40および制御部150を備えている。
【0037】
着座検知部210は、本体200の正面上部に設けられており、例えば反射型の赤外線センサで構成される。この場合、着座検知部210は、人体から反射された赤外線を検出することにより、使用者が便座400上に着座していることを検知する。
【0038】
入室検知部700は、トイレットルームの入口等に取り付けられ、例えば反射型の赤外線センサで構成される。そして、入室検知部700は、人体から反射された赤外線を検出した場合、トイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0039】
図2は本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置の制御系統図である。制御部150は、マイクロコンピュータ等で構成され、操作部300、入室検知部700および着座検知部210との間は有線または無線によって連結されており、操作部300、入室検知部700および着座検知部210から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100内の各部(開閉弁41、第1駆動部60および第2駆動部70等)の動作を制御する。
【0040】
図3は便器洗浄部50の構成を示す斜視図である。
【0041】
図3に示すように、便器洗浄部50は、第1水路51に連通した便器洗浄水噴出口52を有する洗浄ノズル53と、洗浄ノズル53を前後方向に移動させるための第1駆動部60と、洗浄ノズル53を左右に回動させるための第2駆動部70とを備えている。図2に示す開閉弁(洗浄水供給部)41から供給される水道水は、第1水路51を経て便器洗浄水噴出口52から便器600内へ洗浄水として噴出するように構成されている。
【0042】
便器洗浄水噴出口52は、第1水路51および給水ホース44を介して図2に示す開閉弁(洗浄水供給部)41と接続され、開閉弁41は水道水の供給を開閉する。給水ホース44は、ゴムなどの軟質素材で構成され、洗浄ノズル53が前後移動や左右に回動する際に働く屈曲やねじれの力に耐えられる構成になっている。
【0043】
これにより、便器洗浄部50は、便器600を洗浄する際には洗浄ノズル53が前進して、本体200内部から便器600のボウル面610に向かって斜め下方に延び、洗浄ノズル53の先端部が本体200から突出した状態となり、通常は収縮(後退)した状態で本体200内に収納されるように、伸縮自在に構成されている。
【0044】
筒状の洗浄ノズル53の先端部には、便器洗浄水噴出口52が洗浄ノズル53の軸心に対して下向きに設けられており、洗浄ノズル53の軸心に対して下向きの角度で洗浄水が噴出すように構成されている。
【0045】
洗浄ノズル53は、ベース55の上面に前傾姿勢で構成されたレール部56に沿って傾斜して配置され、ベース55の先端に開孔したガイド部57内を通して保持されている。このガイド部57は、摺動性のよい材質で構成され、洗浄ノズル53がスムーズに回転および摺動するように、適度なクリアランスを設けている。
【0046】
また、ベース55上面にはレール部56に沿ってスライドするスライダ61を備えてお
り、このスライダ61は洗浄ノズル53の終端を回転自在に保持する。そして、洗浄ノズル53は、スライダ61の動作に合わせてレール部56に沿って前後に伸縮移動する。
【0047】
第1駆動部60は、スライダ61と、スライダ61のナット部62と噛み合うネジ部63と、ネジ部63を回転駆動する前後駆動モータ64により構成されている。そして、前後駆動モータ64は、ベース55の後部に配置され、レール部56に平行に配置されたネジ部63を回転するように接続されている。
【0048】
このネジ部63は、前後駆動モータ64の駆動によって回転され、スライダ61がネジ部63の回転に従ってレール部56上を前後移動するように構成されている。したがって、前後駆動モータ64が回転すると、その回転方向に合わせてスライダ61に保持された洗浄ノズル53が前後移動する。ここでの前方向とは図3中のA方向を表し、後方向とはB方向を表しており、前方向は便座400に着座した使用者の前面方向に対応し、後方向は用便者の背面方向に対応する。
【0049】
第2駆動部70は、スライダ61に配置した歯車71、歯車72、歯車73と左右駆動モータ74より成り、左右駆動モータ74の回転を歯車71、歯車72および歯車73を介して洗浄ノズル53に伝える。したがって、左右駆動モータ74の回転に応じて洗浄ノズル53が軸心を中心に回転し、左右駆動モータ74の回転方向を正転と逆転とに切り替えると、便器洗浄水噴出口52から噴出する洗浄水は、図3中のC方向とD方向とに切り替えて揺動する。
【0050】
このように、制御部150が第1駆動部60の前後駆動と、第2駆動部70の左右回動とを制御することにより、洗浄ノズル53は便器600のボウル面610でジグザグ状の走査軌跡(図4を参照)を描くように洗浄水を噴出することができる。
【0051】
以上のように構成された衛生洗浄装置について、以下その動作を図2〜図6を参照しながら説明する。
【0052】
図4は衛生洗浄装置の第1の便器洗浄過程の動作状態を示す上面図、図5は同衛生洗浄装置の第1の便器洗浄過程の動作状態を示す側面断面図、図6は同衛生洗浄装置の第1の便器洗浄過程の動作状態を示す正面断面図である。
【0053】
図3に示すように、洗浄ノズル53は、通常は本体200内に収納された状態になっており、便器洗浄の動作を開始すると、第1駆動部60の回動駆動により、レール部56上を案内されて、斜め下方のボウル面610に向かって約150mm前進し、図1に示すように洗浄ノズル53の先端部が本体200から便器600内へ突出する。
【0054】
洗浄ノズル53の傾斜角度は、レール部56の水平に対して約20度に設定されており、洗浄ノズル53の軸心もこれに平行となっている。洗浄水の噴出は洗浄ノズル53の軸心に対して下方に約20度傾斜している。これにより、洗浄ノズル53を回転させた時に、便器洗浄水噴出口52から噴出する洗浄水の噴射角を十分に大きくして、ボウル面610の洗浄範囲を幅広く確保することができる。
【0055】
例えば、便器洗浄水噴出口52の噴出角度を洗浄ノズル52の軸方向に対して小さくすると、洗浄ノズル53を左右に回動させた時の洗浄水を走査する範囲が狭くなり、ボウル面610を洗浄できる範囲が狭くなる。逆に、噴出角度を大きくすると、洗浄水を走査する範囲が広くなるが、洗浄水を長い時間噴出する必要があり、洗浄水の使用量が多くなる。実験の結果、洗浄ノズル53の軸方向に対する便器洗浄水噴出口52の噴出角度は、10度〜50度の範囲が望ましいことが判った。
【0056】
ただし、この洗浄水の噴出角度は、洗浄ノズル53が本体200から突出する突出ストロークや、洗浄ノズル53の傾斜角度によって、汚れの付着し易い位置に照準を合わせる必要があり、洗浄ノズル53の進出角度が大きい場合、または突出ストロークが短い場合には、噴出角度を小さくすればよい。進出角度が小さい場合、または突出ストロークが長い場合には、より軸心から離れるように大きな角度で噴出すればよい。
【0057】
洗浄ノズル53の回動角度については左右に各60度に設定されていており、第2駆動部70により左右に回動しつつ、第1駆動部60により最前進位置150mmから50mmの位置までゆっくり後退させるように駆動する。これにより洗浄水は、図4に示すように左右に往復するジグザグ状の走査軌跡を描いて便器600のボウル面610に噴出することができる。
【0058】
なお、洗浄水の走査軌跡は、本実施形態に限定されるものではなく、前後方向の所定ストロークを高速で駆動し、且つ左右回動を遅くして前後に往復するようにしても良いし、前後と左右の回動を交互に駆動して描く走査軌跡にしても良い。往復のピッチは洗浄水の噴出径(太さ)や水勢によって適正に決定される。たとえば洗浄水の噴出径が細い場合には細かいピッチとし、噴出径が太い場合には広いピッチに設定する。さらに洗浄水供給部40には供給する流量を調節する流量調節機能を設け、洗浄水の流量を調節できるようにしても良い。そして、洗浄水の流量を多くした時にはピッチを広げ、流量を少なくした時にはピッチを狭めるように制御しても良い。
【0059】
操作部300には便器洗浄スイッチ310が設けられており、使用者が便器600の汚れを判断し、使用者の操作に応じて実行することができる。使用者が便器洗浄スイッチ310を押すと、制御部150は第1駆動部60と第2駆動部70を制御して、洗浄水が便器600のボウル面610でジグザグ状の走査軌跡を描くように洗浄水を噴出して、第1の便器洗浄過程を実施して自動停止する。これにより、使用者には負担にならず、便器600のボウル面610に付着した汚れを除去することができる。
【0060】
なお、便器洗浄の実施は、本実施形態に限定されるものではなく、便器洗浄スイッチ310を押している間は便器洗浄を継続するようにして、手を離すと停止するようにしても良いし、便器洗浄停止スイッチを設けて停止させても良い。これにより汚れの除去具合を確認しながら衛生洗浄装置100の運転を任意に続行できるようになる。
【0061】
また、着座検知部210もしくは入室検知部700により、使用者が着座して用便した後、人体の非検知を検出して所定時間経過後に第1の便器洗浄過程を実施するようにしても良いし、便器の排水(フラッシュ)に連動するようにしても良い。これにより使用者は意識せずとも便器を清潔に保つことができる。
【0062】
(実施の形態2)
図7は、本発明の実施の形態2の衛生洗浄装置の便器洗浄部50の構成を示す斜視図である。
【0063】
実施の形態2に係る衛生洗浄装置が、実施の形態1に係る衛生洗浄装置と異なるのは、洗浄ノズル53が後退した収納位置において、便器洗浄水噴出口52の下方に反射部材80を設けた点である。これにより、便器洗浄水噴出口52から噴出した洗浄水を反射部材80で反射して、便器600のボウル面610に降り注ぐようにしている。
【0064】
反射部材80は、便器洗浄水噴出口52に対向した面を有しており、洗浄水が便器洗浄水噴出口52から反射部材80に向けて噴出されると、便器洗浄水噴出口52に対向した
面で洗浄水を反射して、便器600のボウル面610に向けて降り注がせる。ボウル面610上に降り注ぐ洗浄水の位置は、大便が落下して汚れが付着する高さよりもやや高い位置になるように、便器洗浄水噴出口52に対向した反射部材80の面を所定角度に設定して、洗浄水が前方のボウル面610側に反射するように構成している。
【0065】
また、反射部材80は、両側に側面部80a,80bを有し、先端にいくほど拡大するような扇形状をしており、反射した洗浄水が放射状に広がって前方に放出されるように構成されている。
【0066】
以上のように構成された衛生洗浄装置について、以下その動作、作用を説明する。
【0067】
図8は実施の形態2における衛生洗浄装置の第2の便器洗浄過程の動作状態を示す上面図、図9は同衛生洗浄装置の第2の便器洗浄過程の動作状態を示す側面断面図、図10は同衛生洗浄装置の第2の便器洗浄過程の動作状態を示す正面断面図である。
【0068】
使用者が本体200に接近した場合、或いは使用者がトイレットルームに入室した場合、入室検知部700(図1を参照)が使用者を検知すると、入室検知部700の検知信号が制御部150に送信される。すると、制御部150は、開閉弁41を閉状態から開状態に切り替えてプレ洗浄(第2の便器洗浄過程)を開始する。
【0069】
図7に示すように、開閉弁41を通過した水道水は、給水ホース44および第1水路51を経由して便器洗浄水噴出口52へと導かれる。そして、洗浄水が洗浄ノズル53の便器洗浄水噴出口52から噴出すると、その洗浄水は、便器洗浄水噴出口52下方に在る反射部材80で前方に反射して、洗浄水の放出方向の幅を広げて便器600のボウル面610へと降り注ぎ、ボウル面610を広範囲に濡らすことができる(図8〜図10を参照)。
【0070】
即ち、使用者が特に洗浄ノズル53を前進駆動しなくても、使用者を自動検知して用便の前に予めボウル面610を洗浄水で濡らすプレ洗浄(第2の便器洗浄過程)を実行することができる。従って、使用者が特にボウル面610の濡れ状態を確認したり、洗浄手段を動作させる手間を掛けたりしなくても、プレ洗浄を自動的に完了する。
【0071】
その後、使用者が用便を行って、大便が洗浄水で濡れたボウル面610に落ちると、その洗浄水が潤滑剤として機能し、ボウル面610に落ちた大便の粘着力を弱めると共に滑り落ち易くするので、ボウル面610への大便の付着量が少なくなる。従って、その後に行う第1の便器洗浄過程では、付着量の少ない大便や汚れを効果的に除去することができる。
【0072】
また、本体200内に収納した状態の洗浄ノズル53の下方に反射部材80を設けたことにより、便器洗浄水噴出口52をプレ洗浄用の洗浄水噴出口として機能させることができ、特にプレ洗浄用のノズルを設けずとも、1つの洗浄ノズルでプレ洗浄を容易に実現することができる。
【0073】
なお、本実施形態の第2の便器洗浄過程は、入室検知部700の検知により実行したが、これに限らず、使用者が便座400に着座した事を検知する着座検知部210の検知動作に応じて実行するようにしても良い。また、本実施形態の反射部材80は便器洗浄部50に一体に構成したものであるが、本体200側に構成しても良い。
【0074】
(実施の形態3)
図11は、本発明の実施の形態3の衛生洗浄装置の便器洗浄部50の構成を示す斜視図
である。
【0075】
実施の形態3に係る衛生洗浄装置が、上述した実施の形態2に係る衛生洗浄装置と異なるのは、洗浄ノズル53が局部洗浄専用ノズルの機能を兼ねて構成されている点である。つまり、洗浄ノズル53には、便器洗浄水噴出口52の他に局部洗浄水噴出口90と、この局部洗浄水噴出口90に連通する第2水路91を備えた構成であり、これにより洗浄ノズル53は第1駆動部60と第2駆動部70とにより、上述した便器洗浄動作に加えて、使用者の局部の周辺を洗浄することができる。
【0076】
図12は、実施の形態3に係る衛生洗浄装置の制御系統図である。
【0077】
実施の形態3が実施の形態1の制御系統図(図1を参照)と異なる点は、洗浄水給水部40には水道水の供給を開閉する開閉弁41と、水道水を瞬間的に加熱する瞬間湯沸し型の温水加熱部42と、温水加熱部42から流れ出す温水の水路を切換える切換弁43とを設けた構成となっている。この切換弁43は、第1水路51もしくは第2水路91を止める一方、第2水路91もしくは第1水路51に流れる流量を調整できるようになっている。
【0078】
図13は、図1の操作部300の構成を示す模式図である。同図に示すように、操作部300は、上段には洗浄水流量スイッチである洗浄強さ調整スイッチ(弱)322、同じく洗浄強さ調整スイッチ(強)323、洗浄位置を調整するための洗浄位置調整スイッチ(前)324、同じく洗浄位置調整スイッチ(後)325、おしり洗浄モードを選択するムーブスイッチ330およびワイドスイッチ331が設けられ、下段には停止スイッチ311、おしり洗浄スイッチ312およびビデ洗浄スイッチ313が設けられている。
【0079】
使用者が上記各スイッチを操作すると、操作部300から図1の本体200に各スイッチに応じた所定の信号が送信される。本体200の制御部150(図3、図4を参照)は、受信した信号に基づいて本体200の各構成部の動作を制御する。
【0080】
例えば、使用者がおしり洗浄スイッチ312またはビデ洗浄スイッチ313を操作することにより、洗浄ノズル53が前方の所定位置に移動して、洗浄水が局部洗浄水噴出口90から使用者の局部に向けて噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、洗浄ノズル53から使用者の局部への洗浄水の噴出が停止され、その後、洗浄ノズル53は本体200内の収納位置に戻る。
【0081】
洗浄強さ調整スイッチ322、323の横には、これらスイッチの操作により変動する洗浄水の強さを表す表示部322Gが設けられている。洗浄中に使用者が強さ調整スイッチ322、323を操作することにより、それに対応して表示を変更し、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量が切換弁32の弁開度の変更により調整される。
【0082】
洗浄位置調整スイッチ324、325の横には、これらのスイッチの操作により変動する洗浄位置を表す表示部324Gが設けられている。洗浄位置は標準的な体型の人が便座に着座したときに局部中心に洗浄水が当たるように、洗浄ノズル53の位置が予め基準洗浄点(例えば前方100mm)に設定されている。しかし、使用者の体型や着座位置の違いによってずれが生じる場合には、洗浄ノズル53の前後位置を段階的に移動することで、洗浄水の噴出位置を調整できる構成となっている。
【0083】
使用者が洗浄位置調整スイッチ324、325を操作すると、たとえば前記の基準洗浄点を中心とした前後各20mmの調整範囲を10mm間隔ごとに設けた全5段階の中から最適な洗浄水の噴出位置を選択できる。この時の洗浄ノズル53の位置情報を段階的に表
示部324Gに表示することで、操作した結果が使用者に分かり易くしている。
【0084】
洗浄モードを選択するムーブスイッチ330が操作されると、洗浄ノズル53を所定の洗浄位置を中心に前後に駆動しながら洗浄する。これにより、前後の洗浄範囲は広くなる。たとえば所定の洗浄位置を中心に前後に各8mm往復駆動しながら洗浄する。
【0085】
洗浄モードを選択するワイドスイッチ331が操作されると、洗浄ノズル53の回動駆動により、局部洗浄水噴出口90を左右に揺動しつつ、洗浄ノズル53を前後方向に往復駆動しながら洗浄水を噴出することで、洗浄水による洗浄範囲が前後左右に広くなる。この場合、第2駆動部70による洗浄ノズル53の回動角度は左右角10度に設定されている。
【0086】
操作部300の下部には、水温調整スイッチ(洗浄水温度スイッチ)333、便座温度調整スイッチ334が設けられている。
【0087】
使用者が水温調整スイッチ333を操作することにより、洗浄ノズル53から使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座400の温度が調整される。
【0088】
このように、洗浄ノズル53は、便器洗浄ノズルと局部洗浄ノズルとを兼用した構成にすることより、簡単で省スペースに構成することができる。
【0089】
以上のように構成された衛生洗浄装置について、以下その動作、作用を説明する。図14は、第3の実施形態3に係る衛星洗浄装置の動作フローを示すフロー図である。図15は、各部の動作状態の経時的な変化を示すタイムチャートであり、横軸を経過時間tとし、縦軸を各部の動作状態を示し、上方より順に700は入室検知部700の動作を示し、210は着座検知部210の動作を示し、42は温水加熱部42の動作を示し、41は開閉弁41の動作を示し、43は切換弁43の動作を示し、前後移動距離Lは洗浄ノズル53の位置を示し、回動角度φは洗浄ノズル53の回動角度を示している。
【0090】
通常、洗浄ノズル53は本体200内の所定の収納位置P0に納まっており、温水過熱部42はOFF状態、開閉弁41は閉状態、切換弁43は便器洗浄用である第1水路51に接続している。
【0091】
使用者がトイレルームに入室すると、過程S1では入室検知部700が人体を検知する(時刻T1)。その時、予めプレ洗浄スイッチ340を「入」を選択していれば、人体検知動作に応じて開閉弁41を開状態に切り替えて、プレ洗浄(第2の便器洗浄過程)を開始する。すると、洗浄ノズル53の便器洗浄水噴出口52から洗浄水を噴出し、その洗浄水で便器600のボウル面610を濡らす。このプレ洗浄を所定時間(T0−T1の期間)実行した後、時刻T1で開閉弁41を閉状態にし、洗浄水の噴出を停止してプレ洗浄を終了する。
【0092】
この第2の便器洗浄過程(プレ洗浄)では、便器600のボウル面610を洗浄水で濡らせれば良いので、第1の便器洗浄過程よりも水勢を弱くしており、洗浄水が反射部材80で反射して便器600の外に飛び出したり、使用者にかかったりしないように、弱い水勢に設定されている。
【0093】
なお、図13に示すように、操作部300にはプレ洗浄切入りスイッチ340が設けられており、図14のフロー図に示すように、プレ洗浄切入りスイッチ340を「切」に設定しておくことで、プレ洗浄をパスして実行しないことも、使用者が任意に選択できる。
【0094】
使用者が便座610上に着座していることを、着座検知部210が検知すると、局部洗浄動作を開始可能な状態にする。着座検知部210が使用者の着座を検知し続けている期間内に、使用者が用便を済ませた後、おしり洗浄スイッチをオンすると(図14の過程S5)、時刻T2でおしり洗浄を開始する(過程S6)。おしり洗浄過程では、基準前進位置P2を中心に洗浄ノズル53を小幅に前後移動させ、それと同時に洗浄ノズル53を小幅に左右に回動させて、洗浄水を使用者の局部に噴射する。そして、時刻T4で使用者が停止スイッチを押すと(過程S7)、時刻T4で開閉弁41を閉じ、切換弁43を切り替えるとともに、温水過熱部42の動作を停止して、おしり洗浄を停止する(過程S8)。その後、使用者は便座400から立ち上がり、便器600内に溜まった汚物やトイレットペーパーは洗浄水とともに排水される。
【0095】
時刻T5で使用者が、必要に応じて操作部300の便器洗浄スイッチ310を押すと(過程S9)、制御部150は第1の便器洗浄過程(過程S10)の動作を開始する。すると、制御部150は、前後移動モータ64を順方向に回転させて、洗浄ノズル53を収納位置P0から前方へ移動させる動作を開始する。
【0096】
時刻T6で洗浄ノズル53が最前進位置P3に達すると、今度は逆に、制御部150は、前後駆動モータ64を逆方向に回転させて、洗浄ノズル53を後退させ始める。それと同時に、開閉弁41を開状態にして温水加熱部42を動作させ、洗浄水を便器洗浄水噴出口52から噴出すと共に、制御部150は左右駆動モータ74を往復回動させ、0度を中心に±60度の範囲で洗浄ノズル53を往復回動させる(時刻T6〜T7)。
【0097】
すると、図4に示すように、洗浄ノズル53から噴射される洗浄水は、便器600のボウル面610にジグザグ状の走査軌跡(図4中の破線部)を描くように噴射されるので、ボウル面610に付着した汚れを除去することができる。この便器洗浄動作(第1の便器洗浄過程)は、予め設定された所定期間(T6−T7の期間)続けられ、洗浄ノズル53を所定の後退位置P1まで徐々に後退させた後、時刻T7で自動停止する。
【0098】
第1の便器洗浄過程を実施中に洗浄強さ調整スイッチ322、323を押すと、洗浄強さが変更され、水温調整スイッチ333を押すと、洗浄水の温度が変更されるようになっている。また、第1の便器洗浄過程の停止については、使用者が操作部300の停止スイッチ311を押すことで、任意に停止するようにしても良い。
【0099】
なお、上述した実施の形態3は、瞬間湯沸し型の温水加熱部42を用いた事例で説明したが、常時お湯を沸かしてタンクに貯水する貯水型の温水加熱部を用いて実施しても構わない。しかし、上述した実施の形態3は、衛生洗浄装置内に貯水タンクを備える必要が無いので、装置全体をコンパクトに構成できるほか、洗浄水を長時間使用しても、使用の途中で温水が枯渇して冷たい水に切り替わる心配が無く、使用者が暖かい洗浄水を長時間使用しても嫌な思いをすることがない、という利点がある。
【0100】
(変形例)
次に、実施の形態3の変形例における衛生洗浄装置について、図16を用いて説明する。
【0101】
図16に示すように、この変形例は、開閉弁41と温水過熱部42aとの間に切換弁43を配置し、常時お湯を沸かして貯水するタンクを備えた貯水型の温水過熱部42aを用いるものであり、過熱しない水道水を便器洗浄水として用いて便器600を洗浄する点が、上述した実施の形態3と異なり、その他の構成は実施の形態3と変わらない。
【0102】
図16に示すように、貯水型の温水加熱部42aを用いて、常時お湯を沸かして貯水しているから、局部洗浄を行う際には、局部洗浄の開始直後から直ぐにお湯が出るので、使用者は局部洗浄の開始直後に冷たさを感じることが無い。
【0103】
また、便器洗浄用の洗浄水は、特にお湯を用いずに水道水を使用しているため、局部洗浄以外の洗浄水を余分に過熱する必要がなく、温水の使用量を少なくして、温水を生成するための電力消費を少なくすることができる。
【0104】
以上、本発明の実施の形態1〜3の衛生洗浄装置について説明したが、これらに限定されるものではない。
【0105】
例えば、ジョイスティックのような前後左右の位置調整手段を設けて使用者が任意に洗浄水の噴出位置を調整できるようにして、汚れを狙って集中的に洗浄水を噴出できるようにしても良い。
【0106】
また、便器の汚れを検知する検知部を別に設けて、その検知部で便器の汚れを検知して自動的に第1の便器洗浄過程を実施しても良い。また、便器のフラッシュ(排水)に連動して第1の便器洗浄過程を実施しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0107】
以上のように、本発明にかかる衛生洗浄装置は、汚れやすい便器のボウル面に便器洗浄水を噴射しながらノズル本体を走査するので、ボウル面に付着した汚物の除去が良好であり、水洗便器や簡易トイレなどの用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0108】
41 開閉弁(洗浄水供給部)
42 温水加熱部(洗浄水供給部)
43 切換弁(洗浄水供給部)
51 第1水路
52 便器洗浄水噴出口
53 洗浄ノズル
60 第1駆動部
70 第2駆動部
80 反射部材
90 局部洗浄水噴出口
91 第2水路
150 制御部
200 本体
210 着座検出物
300 操作部
310 便器洗浄スイッチ
400 便座
600 便器
610 ボウル面
700 入室検知部(人体検知手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器の後部上面に載置される本体と、
前記本体に軸支され回動自在に前記便座の上部に載置される便座と、
前記本体に伸縮自在に内装され、第1水路に連通した便器洗浄水噴出口を有する筒状の洗浄ノズルと、
前記洗浄ノズルを前後方向に移動させる第1駆動部と、
前記洗浄ノズルを左右に往復回動させる第2駆動部と、
前記第1水路に洗浄水を供給する洗浄水供給部と、
前記第1および前記第2駆動部と前記洗浄水供給部の動作を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、前記便器洗浄水噴出口から噴射した洗浄水が前記便器のボウル面で走査軌跡を描くように前記第1および前記第2駆動部を制御する第1の便器洗浄過程を実施する衛生洗浄装置。
【請求項2】
便器洗浄水噴出口は、洗浄ノズルの先端部に下向きに設けられている請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
便器洗浄水噴出口の噴出方向は、洗浄ノズルの先端部に前記洗浄ノズルの軸方向に対して10度〜50度の範囲で下方に傾斜している請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
第1の便器洗浄過程は、第1駆動部が洗浄ノズルを前後方向に移動させつつ、第2駆動部が前記洗浄ノズルを左右に往復回動させることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
便器の洗浄を指示する便器洗浄スイッチを有した操作部を備え、
制御部は、前記便器洗浄スイッチの操作に応じて第1の便器洗浄過程を実行する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
使用者が本体に接近したことを検知する人体検知手段を備え、
制御部は、前記人体検知手段の検知信号に応じて洗浄水供給部を所定時間作動させ、便器洗浄水噴出口から噴出した洗浄水を便器のボウル面に降り注がせる第2の便器洗浄過程を実行する請求項1〜5のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
便器洗浄噴水出口の下方に前記便器洗浄水噴出口に対して所定角度で対向する面を有した反射部材を備え、
洗浄ノズルが本体内に収納された状態で前記便器洗浄水噴出口から洗浄水を噴出すると、前記洗浄水が前記反射部材で反射して便器のボウル面に降り注ぐように構成されている請求項6に記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
制御部は、便器洗浄水噴出口から噴出する洗浄水の水圧を、第1の便器洗浄過程の方が第2の便器洗浄過程より大きくなるように制御する請求項7に記載の衛生洗浄装置。
【請求項9】
洗浄ノズルは、上向きに設けられた局部洗浄水噴出口と、前記局部洗浄水噴出口に連通する第2水路とを備えており、
洗浄水供給部は第1または第2水路に選択的に洗浄水を供給する切換弁を備えており、
制御部は、前記洗浄水供給部を制御して前記第1水路を止める一方、前記洗浄水を第2水路に流し、前記局部洗浄水噴出口から、便座に着座した使用者の局部に向けて噴出して、前記局部を洗浄する請求項1〜8のいずれか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項10】
洗浄水供給部は、洗浄水を加熱する温水加熱部と、前記洗浄水の流量を調節する流量調節
部とを備えており、
操作部は、前記温水加熱部の加熱温度を設定する洗浄水温度スイッチと、前記流量調節部で調節する前記洗浄水の流量値を設定する洗浄水流量スイッチとを備えており、
制御部は、便器洗浄スイッチを操作して第1の便器洗浄過程を実行中は、前記洗浄水温度スイッチと前記洗浄水流量スイッチとによる調節を有効にする請求項9に記載の衛生洗浄装置。

【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図1】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−127320(P2011−127320A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−286140(P2009−286140)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】