説明

衛生洗浄装置

【課題】温水タンクの幅を小さくすることなく棒状のヒータを使用し、温水タンクの容量や沸かし上げ能力を確保できる衛生洗浄装置の提供。
【解決手段】大便器の後方上部に設置されるケーシング200の内部の中央部において長手方向が上方からみて前後方向となるように配置され、大便器のボウルに向けて進出する洗浄ノズル211と、洗浄ノズル211に供給する水を加熱し温水とする棒状のヒータ222を有し、温水を貯留する温水タンク220を備え、ケーシング200は、洗浄ノズル211により左右方向に2つに分割された内部空間を有し、温水タンク220は、2つに分割された内部空間のいずれか一方においてケーシング200の側面と背面および前面のいずれかに沿うように配置され、ヒータ222は、温水タンク220の角部において両端部を固定され、軸線の方向が上方からみて内部空間の対角線方向に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置が備える温水タンクには、一般的に、U字形状のヒータが用いられている(特許文献1)。しかしながら、温水タンクの熱源としてU字形状のヒータを用いる場合には、タンクの内部においてヒータを水平に保持するために、例えばねじ止め用のフランジをヒータの端部に形成する必要がある。または、特許文献1に記載されたバックアップリングやテーパリングなどのような複雑な形状を有する付属部品を設ける必要がある。そのため、温水タンクの熱源としてU字形状のヒータを用いる場合には、コストがかかる場合がある。
【0003】
一方、温水タンクの熱源として直線棒状のヒータを用いた局部洗浄装置がある(特許文献2)。特許文献2に記載された局部洗浄装置によれば、温水タンクへのヒータの取り付けが容易となり、またU字形状のヒータを用いる場合よりもコストを抑えることができる。しかしながら、温水タンクの熱源として直線棒状のヒータを用いる場合には、端子や非加熱部をヒータの端部に設ける必要があるため、ヒータの両端部がタンクの側面から外方へ突出する。
【0004】
ここで、温水タンクの設置位置は、装置内の所定のスペースに制限される場合がある。この場合において、ヒータの両端部がタンクの側面から外方へ突出すると、温水タンクの幅を小さくする必要があり、タンクの容量が小さくなるという問題がある。また、温水タンクの幅を小さくするとヒータの発熱長が短くなるため、ヒータの単位面積当たりの電力量(ワット密度)が過大となるおそれがある。ワット密度が過大となると、温水タンクの沸かし上げ能力が過剰となるため、タンク内の水が沸騰したり、ヒータの寿命が短くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−294804号公報
【特許文献2】特開2001−98619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、温水タンクの幅を小さくすることなく棒状のヒータを使用し、温水タンクの容量や沸かし上げ能力を確保することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、大便器の後方上部に設置されるケーシングと、前記ケーシングの内部の中央部において長手方向が上方からみて前後方向となるように配置され、前記大便器のボウルに向けて進出する洗浄ノズルと、前記洗浄ノズルに供給する水を加熱し温水とする棒状のヒータを有し、前記温水を貯留する温水タンクと、を備え、前記ケーシングは、前記洗浄ノズルにより左右方向に2つに分割された内部空間を有し、前記温水タンクは、前記2つに分割された内部空間のいずれか一方において前記ケーシングの側面と、前記ケーシングの背面および前面の少なくともいずれかと、に沿うように配置され、前記ヒータは、前記温水タンクの角部において両端部を固定され、軸線の方向が上方からみて前記内部空間の対角線方向となるように配置されていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0008】
この衛生洗浄装置によれば、棒状のヒータは、温水タンクの角部において両端部を固定され、その軸線の方向が上方からみて内部空間の対角線方向となるように配置されている。そのため、ヒータの軸線の方向が上方からみて左右方向や前後方向である場合よりも、温水タンクの幅を大きくすることができる。そのため、温水タンクの容量をより大きく確保することができる。また、ヒータは、その軸線の方向が上方からみて内部空間の対角線方向となるように配置されているため、棒状のヒータの発熱長をより長くすることができる。そのため、温水タンクの熱源として棒状のヒータを用いた場合でも、温水タンクの沸かし上げ能力を確保することができる。
なお、棒状のヒータの軸線の方向が内部空間の対角線方向と完全には一致していないものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
【0009】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記温水タンクは、4つ以上の側壁面を連接させることにより複数の角部が形成された中空容器をさらに有し、前記ヒータは、前記中空容器の内部の底面部に沿うように配設され、前記複数の角部のうちの第1の角部と、前記第1の角部から最も離れた位置に存在する第2の角部と、において両端部を固定されたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0010】
この衛生洗浄装置によれば、棒状のヒータは、中空容器の複数の角部のうちの第1の角部と、第1の角部から最も離れた位置に存在する第2の角部と、において両端部を固定されている。そのため、棒状のヒータの発熱長をより長くすることができる。これにより、ヒータの電力量を抑え、温水タンクの沸かし上げ能力を適正化することができる。したがって、ヒータの単位面積当たりの電力量(ワット密度)を抑えることができる。また、中空容器内の水が局所的に沸騰したり、ヒータの寿命が短くなることを抑えることができる。そのため、温水タンクの加熱性能を維持することができる。
【0011】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記第1の角部を介して連接した2つの前記側壁面のうちの少なくともいずれかは、上方へ向かうにつれて前記中空容器の内側へ傾斜した対流案内部を有することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0012】
この衛生洗浄装置によれば、第1の角部を介して連接した2つの側壁面のうちの少なくともいずれかは、上方へ向かうにつれて中空容器の内側へ傾斜した対流案内部を有する。つまり、対流案内部は、ヒータに接近するように形成されている。そのため、ヒータの軸線の方向が上方からみて内部空間の対角線方向であっても、中空容器内の水の対流は、対流案内部により安定する。これにより、対流が安定した水の温度を検知することができる。そのため、中空容器内の水の温度制御をより適切に行うことができる。
【0013】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、前記ヒータは、前記第1および第2の角部のいずれか一方の側の一端部が、前記第1および第2の角部のいずれか他方の側の他端部よりも高い位置となるように設置されたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0014】
この衛生洗浄装置によれば、ヒータは、第1および第2の角部のいずれか一方の側の一端部が、第1および第2の角部のいずれか他方の側の他端部よりも高い位置となるように設置されている。そのため、より低い位置のヒータの部分において加熱された水は、より高い位置のヒータの部分の方向へ移動しやすい。これにより、ヒータの軸線の方向が上方からみて内部空間の対角線方向であっても、中空容器内の水の対流は、対流案内部により安定する。したがって、対流が安定した水の温度を検知することができ、中空容器内の水の温度制御をより適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の態様によれば、温水タンクの幅を小さくすることなく棒状のヒータを使用し、温水タンクの容量や沸かし上げ能力を確保することができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を前側から眺めた斜視模式図である。
【図3】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を後側から眺めた斜視模式図である。
【図4】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を前方の斜め上方から眺めた斜視模式図である。
【図5】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を上方から眺めた平面模式図である。
【図6】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を右側方から眺めた斜視模式図である。
【図7】本実施形態の温水タンクを上方から拡大して眺めた拡大模式図である。
【図8】図7(a)に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【図9】本実施形態の温水タンクを斜めから眺めた斜視模式図である。
【図10】本実施形態の整流ユニットの一例を例示する断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
また、図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を前側から眺めた斜視模式図である。
また、図3は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を後側から眺めた斜視模式図である。
【0018】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「大便器」と称する)800と、大便器800の後方上部に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング200と、便座300と、便蓋400と、を有する。便座300と便蓋400とは、ケーシング200に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0019】
ケーシング200の内部には、図2および図3に表したように、便座300に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができるノズルユニット210と、ノズルユニット210に供給する温水を生成し貯留する温水タンク220と、バルブユニット250と、が内蔵されている。
ノズルユニット210は、温水タンク220から供給された水を使用者の「おしり」などに向けて噴射する洗浄ノズル211を有する。
【0020】
また、ケーシング200の上部には、図1に表したように、使用者が便座300に座ったことを検知する着座センサ201が設けられている。着座センサ201が便座300に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えばリモコンなどの操作部500を操作すると、洗浄ノズル211を大便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表したトイレ装置では、洗浄ノズル211がボウル801内に進出した状態を表している。
【0021】
洗浄ノズル211の先端部には、ひとつあるいは複数の図示しない吐水口が設けられている。洗浄ノズル211は、その先端部に設けられた吐水口から水を噴射して、便座300に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0022】
温水タンク220は、タンク(中空容器)221と、棒状のヒータ222と、フロートスイッチ223と、バキュームブレーカ224と、バイメタル225と、温度検知手段226と、を有する。
タンク221は、上タンク221aと下タンク221bとを有する。上タンク221aと下タンク221bとは、例えば溶着あるいは接着などにより互いに結合されている。そのため、タンク221は、流入部227から流入した水を貯留することができる。但し、上タンク221aと下タンク221bとは、一体的に形成されていてもよい。また、タンク221は、前壁面(側壁面)221fと、左壁面(側壁面)221gと、後壁面(側壁面)221hと、右壁面(側壁面)221iと、を有する。但し、タンク221の壁面は、これだけに限定されず、5つ以上の側壁面により形成されていてもよい。
ヒータ222は、タンク221の内部の底面部に沿うように設けられ、タンク221内の水を加熱して温水とすることができる。
【0023】
また、フロートスイッチ223は、タンク221内の水の水位を検知し、検知された水位が所定水位以下である場合にはヒータ222を停止させることができる。これにより、空焚きを防止することができる。
バキュームブレーカ224は、水路(流路)の水抜きの際に外部から空気を取り込んで、水路の水抜きを促進させる。
バイメタル225は、タンク221内の水が所定温度以上に加熱されるとタンク221への給水を停止させる。これにより、タンク221内の水が過度に加熱されることを防止することができる。
温度検知手段226は、タンク221内の水の温度を検知し、その水温の情報を出力することができる。これにより、ヒータ222への通電量が制御され、タンク221内の水の温度は適温に保温される。温度検知手段226としては、例えばサーミスタなどを使用することができる。
【0024】
バルブユニット250は、図3に表したように、温水タンク220の後方であって、ケーシング200の角部に設置されている。バルブユニット250は、電磁弁251を有し、その電磁弁251を開閉させることにより温水タンク220への給水の有無を制御することができる。
【0025】
ここで、水の流れの概略を説明する。
図示しない給水源から衛生洗浄装置100に供給された水は、まずバルブユニット250へ導かれる。バルブユニット250の電磁弁251が開いている場合には、給水源から供給された水は、バルブユニット250を介して温水タンク220の流入部227からタンク221内へ導かれる。タンク221内へ供給された水は、ヒータ222により加熱され温水となる。そして、タンク221内においてヒータ222により加熱された水は、流入部227から新たに供給される水から押し出されるようにして、バキュームブレーカ224を介して例えばノズルユニット210の洗浄ノズル211へ導かれる。
【0026】
次に、衛生洗浄装置の内部の構造について、図面を参照しつつさらに説明する。
図4は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を前方の斜め上方から眺めた斜視模式図である。
また、図5は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を上方から眺めた平面模式図である。
【0027】
本実施形態のノズルユニット210は、図4および図5に表したように、ケーシング200の内部の中央部に配置されている。また、ノズルユニット210は、図5に表したように、その長手方向が上方からみて前後方向となるように配置されている。これにより、ノズルユニット210の洗浄ノズル211は、ケーシング200の内部の中央部に配置され、その長手方向が上方からみて前後方向となるように配置されている。
【0028】
そのため、ケーシング200の内部の空間は、図4および図5に表したように、洗浄ノズル211により左右方向の2つの内部空間203a、203bに分割される。言い換えれば、ケーシング200は、洗浄ノズル211により左右方向に2つに分割された内部空間203a、203bを有する。そして、温水タンク220は、左右方向に2つに分割された内部空間203a、203bのいずれか一方に配置されている。なお、本実施形態では、温水タンク220は、図4および図5に表したように、内部空間203aに配置されている。
【0029】
温水タンク220は、内部空間203aにおいて、ケーシング200の背面200hおよび左側面200gに沿うように配置されている。より具体的には、タンク221の後壁面221hの少なくとも一部は、ケーシング200の背面200hに沿っており、タンク221の左壁面221gの少なくとも一部は、ケーシング200の左側面200gに沿っている。
【0030】
但し、温水タンク220は、内部空間203aにおいて、ケーシング200の前面200fおよび左側面200gに沿うように配置されていてもよい。あるいは、温水タンク220は、内部空間203bにおいて、ケーシング200の前面200fおよび背面200hの少なくともいずれかと、ケーシング200の右側面200iと、に沿うように配置されていてもよい。すなわち、温水タンク220は、左右方向に2つに分割された内部空間203a、203bのいずれか一方において、ケーシング200の前面200fおよび背面200hの少なくともいずれかと、ケーシング200の左側面200gおよび右側面200iの少なくともいずれかと、に沿うように配置されている。
【0031】
ヒータ222の両端部は、温水タンク220の角部に固定されている。より具体的には、ヒータ222の一端部は、タンク221の第1の角部に固定され、ヒータ222の他端部は、タンク221の第1の角部から最も離れた位置に存在する第2の角部に固定されている。本実施形態では、図5に表したように、ヒータ222の一端部は、タンク221の前壁面221fと左壁面221gとの間の角部(第1の角部)に固定され、ヒータ222の他端部は、タンク221の後壁面221hと右壁面221iとの間の角部(第2の角部)に固定されている。その結果、ヒータ222は、図5に表したように、その長手方向(軸線の方向)が上方からみて内部空間203aの対角線方向となるように配置されている。これについては、後に詳述する。
【0032】
図6は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の内部を右側方から眺めた斜視模式図である。
本実施形態のタンク221の前壁面221fには、図6に表したように、上方へ向かうにつれてタンク221の内側へ傾斜した凹設部(対流案内部)221jが形成されている。本実施形態では、凹設部221jは前壁面221fに形成されているが、凹設部221jの形成位置はこれだけに限定されるわけではない。凹設部221jは、左壁面221g、後壁面221h、および右壁面221iの少なくともいずれかに形成されていてもよい。凹設部221jの作用については、後に詳述する。
【0033】
次に、本実施形態の温水タンク220の内部構造について、図面を参照しつつ説明する。
図7は、本実施形態の温水タンクを上方から拡大して眺めた拡大模式図である。
また、図8は、図7(a)に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
なお、図7(a)は、タンク221の上タンク221aを分解する前の拡大模式図であり、図7(b)は、タンク221の上タンク221aを分解した後の拡大模式図である。
【0034】
本実施形態の温水タンク220は、図7(a)に表したように、内部空間203a(図5参照)において、ケーシング200の背面200hおよび左側面200gに沿うように配置されている。また、図7(b)に表したように、ヒータ222の一端部は、タンク221の前壁面221fと左壁面221gとの間の角部(第1の角部)に固定され、ヒータ222の他端部は、タンク221の後壁面221hと右壁面221iとの間の角部(第2の角部)に固定されている。その結果、ヒータ222は、その長手方向(軸線の方向)が上方からみて内部空間203aの対角線方向となるように配置されている。言い換えれば、ヒータ222の長手方向は、温水タンク220の前壁面221f、後壁面221h、左側面221g、および右側面221iのいずれに対しても斜めに傾いている。
【0035】
つまり、本願明細書において、「長手方向(軸線の方向)が上方からみて内部空間203aの対角線方向となる」あるいは「長手方向(軸線の方向)が上方からみて内部空間203aの対角線方向である」という範囲には、ヒータ222の軸線の方向が、内部空間203aの対角線方向と完全には一致していなくとも、ケーシング200の前面200f、左側面200g、背面200h、および右側面200iのいずれに対しても斜めに傾いているものも包含される。これは、温水タンク220が内部空間203bに配置された場合についても同様である。
【0036】
これによれば、温水タンク220の側面から外方に突出するヒータ222の端部は、温水タンク220の側面のうち、ケーシング200の前面200f、左側面200g、背面200h、および右側面200iとは相対しない側面に配置される。このため、ヒータ222の長手方向が上方からみて左右方向や前後方向である場合よりも、温水タンク220の幅を大きくすることができる。そのため、タンク221の容量をより大きく確保することができる。また、ヒータ222は、その長手方向が上方からみて内部空間203aの対角線方向となるように配置されているため、棒状のヒータ222の発熱長をより長くすることができる。そのため、温水タンク220の熱源として棒状のヒータ222を用いた場合でも、温水タンク220の沸かし上げ能力を確保することができる。
【0037】
また、本実施形態によれば、ヒータ222の一端部は、タンク221の第1の角部に固定され、ヒータ222の他端部は、タンク221の第1の角部から最も離れた位置に存在する第2の角部に固定されている。そのため、棒状のヒータ222の発熱長をより長くすることができる。これにより、ヒータ222の電力量を抑え、温水タンク220の沸かし上げ能力を適正化することができる。したがって、ヒータ222の単位面積当たりの電力量(ワット密度)を抑えることができる。また、タンク221内の水が局所的に沸騰したり、ヒータ222の寿命が短くなることを抑えることができる。そのため、温水タンク220の加熱性能を維持することができる。
【0038】
タンク221の底面部には、整流ユニット240が設けられている。整流ユニット240は、流入部227からタンク221内へ流入した水の動圧を減殺しつつ、その動圧を略均一化することができる。
【0039】
ここで、本実施形態の整流ユニット240について、図面を参照しつつ説明する。
図9は、本実施形態の温水タンクを斜めから眺めた斜視模式図である。
また、図10は、本実施形態の整流ユニットの一例を例示する断面模式図である。
なお、図10は、図7(b)に表した切断面C−Cにおける断面模式図である。
【0040】
本実施形態の整流ユニット240は、図9に表したように、タンク221の底面部であって、流入部227の近傍に設けられている。
整流ユニット240は、図10に表したように、その内部に整流板242を有する。これにより、整流ユニット240の内部は、第1の空間241と第2の空間245とに分割されている。また、整流板242には、貫通孔である連通部243が形成されている。そのため、第1の空間241と第2の空間245とは、連通部243を介して連通している。また、第2の空間245の少なくとも一部には、開口部246が形成されている。
【0041】
温水タンク220の流入部227からタンク221内へ流入した水は、まず整流ユニット240の第1の空間241へ導かれる。続いて、流入部227からタンク221内へ水がさらに供給されると、第1の空間241内の水は、図10に表した矢印A6のように、連通部243を通り第2の空間245へ導かれる。このとき、第2の空間245へ導かれる水の動圧は、水が連通部243を通過することにより減殺されつつ、整流板242の全域に亘り略均一化される。続いて、第2の空間へ導かれた水は、第2の空間245の開口部246から整流ユニット240の外部へ流出する。
【0042】
また、第1の空間241における流入方向と、第2の空間245のおける流出方向と、は互いに同一ではなく交わる方向に設定されている。そのため、このような流路変更によっても給水時における動圧を減殺することができる。
【0043】
これによれば、タンク221への給水時にはタンク221の下層側のより低温の水が、上層側のより高温の水を徐々に押し上げる状態となり、最下部の低温水層から最上部の温水層に至る積層状態を安定した状態に維持することができる。したがって、例えば、タンク221に供給された水が、まだ温まらない状態のまま洗浄ノズル211へ供給され噴射されることを防止することができる。
【0044】
次に、図7に戻って説明すると、矢印A1のように温水タンク220の流入部227からタンク221内へ流入した水は、まず、整流ユニット240へ導かれる。そして、整流ユニット240へ導かれた水の動圧は、その整流ユニット240により減殺される。続いて、整流ユニット240により動圧が減殺された水は、例えば図7に表した矢印A2、A3、A4のように、整流ユニット240から流出しタンク221内の下層部に広がる。続いて、タンク221内の下層部に広がった水は、ヒータ222により加熱される。
【0045】
ここで、タンク221の前壁面221fには、図8に表したように、上方へ向かうにつれてタンク221の内側へ傾斜した凹設部(対流案内部)221jが形成されている。つまり、凹設部221jは、ヒータ222へ向かって接近するように形成されている。そのため、ヒータ222により加熱された水は、前壁面221fの凹設部221jに引っ張られ、タンク221の上層部へ向かって上昇する。その結果、ヒータ222により加熱された水は、図8に表した矢印のように、凹設部221jおよび前壁面221fに沿って上昇し、タンク221内の上層部を通って凹設部221jから離間した側へ下降する。そして、タンク221内においてヒータ222により加熱された水は、流入部227から新たに供給される水から押し出されるようにして、図7(a)に表した矢印A5のようにバキュームブレーカ224を介して流出する。
【0046】
これによれば、タンク221内の水の対流は、凹設部221jにより安定する。より具体的に説明すると、ヒータ222の両端部が温水タンク220の角部に固定されていること、あるいはヒータ222の長手方向が上方からみて内部空間203aの対角線方向であることにより、タンク221内の水の対流が安定しにくい場合がある。例えば、加熱された水が、ヒータ222の両端部から上昇したり、ヒータ222の全体から上昇したりすることにより、タンク221内の水の対流が時間の経過とともに変化し不安定となる場合がある。つまり、タンク221内の水の対流が安定するまでに長い時間が必要となる場合がある。
【0047】
これに対して、本実施形態によれば、前壁面221fの凹設部221jがヒータ222に接近するように形成されているため、ヒータ222の長手方向が上方からみて内部空間203aの対角線方向であっても、タンク221内の水の対流は、より早く安定する。つまり、ヒータ222により加熱された水は、図8に表した矢印のように、凹設部221jに接近した側から上昇し、凹設部221jから離間した側へ下降する。
【0048】
また、タンク221内の水の温度を検知する温度検知手段226は、図2に表したように、前壁面221fの凹設部221jの部分に設置されている。そのため、温度検知手段226は、対流が安定した水の温度であって、対流の上流側の水の温度すなわちより高温の水の温度を検知することができる。そのため、本実施形態の温水タンク220は、タンク221内の水の温度制御をより適切に行うことができる。
さらに、タンク221内へ突出するように設置されたフロートスイッチ223は、図8に表したように、対流の下流側に設けられている。そのため、フロートスイッチ223がタンク221内の水の対流を妨げるおそれは少ない。
【0049】
なお、ヒータ222は、水平方向に設置されることに限定されるわけではなく、図8に表した一点鎖線のヒータ222のように配置されていてもよい。つまり、ヒータ222は、その一端部が他端部よりも高い位置となるように設置されていてもよい。これによれば、ヒータ222の他端部において加熱された水は、他端部よりも高い位置にある一端部の方向へ移動しやすい。そのため、ヒータ222により加熱された水は、前壁面221fの凹設部221jに引っ張られやすく、凹設部221jおよび前壁面221fに沿って上昇しやすい。これにより、タンク221内の水の対流は、より安定する。また、温水タンク220は、タンク221内の水の温度制御をより適切に行うことができる。
【0050】
以上説明したように、本実施形態によれば、ヒータ222は、その長手方向(軸線の方向)が上方からみて内部空間203aの対角線方向となるように配置されている。また、ヒータ222の一端部は、タンク221の前壁面221fと左壁面221gとの間の角部(第1の角部)に固定され、ヒータ222の他端部は、タンク221の後壁面221hと右壁面221iとの間の角部(第2の角部)に固定されている。そのため、温水タンク220の幅をより大きくすることができ、タンク221の容量をより大きく確保することができる。また、棒状のヒータ222の発熱長をより長くすることができる。そのため、温水タンク220の熱源として棒状のヒータ222を用いた場合でも、温水タンク220の沸かし上げ能力を確保することができる。
【0051】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、温水タンク220やノズルユニット210などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやフロートスイッチ223や温度検知手段226や整流ユニット240の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0052】
100 衛生洗浄装置、 200 ケーシング、 200f 前面、 200g 左側面、 200h 背面、 200i 右側面、 201 着座センサ、 203a、203b 内部空間、 210 ノズルユニット、 211 洗浄ノズル、 220 温水タンク、 221 タンク、 221a 上タンク、 221b 下タンク、 221f 前壁面、 221g 左壁面、 221h 後壁面、 221i 右壁面、 221j 凹設部、 222 ヒータ、 223 フロートスイッチ、 224 バキュームブレーカ、 225 バイメタル、 226 温度検知手段、 227 流入部、 240 整流ユニット、 241 第1の空間、 242 整流板、 243 連通部、 245 第2の空間、 246 開口部、 250 バルブユニット、 251 電磁弁、 300 便座、 400 便蓋、 500 操作部、 800 大便器、 801 ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大便器の後方上部に設置されるケーシングと、
前記ケーシングの内部の中央部において長手方向が上方からみて前後方向となるように配置され、前記大便器のボウルに向けて進出する洗浄ノズルと、
前記洗浄ノズルに供給する水を加熱し温水とする棒状のヒータを有し、前記温水を貯留する温水タンクと、
を備え、
前記ケーシングは、前記洗浄ノズルにより左右方向に2つに分割された内部空間を有し、
前記温水タンクは、前記2つに分割された内部空間のいずれか一方において前記ケーシングの側面と、前記ケーシングの背面および前面の少なくともいずれかと、に沿うように配置され、
前記ヒータは、前記温水タンクの角部において両端部を固定され、軸線の方向が上方からみて前記内部空間の対角線方向となるように配置されていることを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記温水タンクは、4つ以上の側壁面を連接させることにより複数の角部が形成された中空容器をさらに有し、
前記ヒータは、前記中空容器の内部の底面部に沿うように配設され、前記複数の角部のうちの第1の角部と、前記第1の角部から最も離れた位置に存在する第2の角部と、において両端部を固定されたことを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記第1の角部を介して連接した2つの前記側壁面のうちの少なくともいずれかは、上方へ向かうにつれて前記中空容器の内側へ傾斜した対流案内部を有することを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記ヒータは、前記第1および第2の角部のいずれか一方の側の一端部が、前記第1および第2の角部のいずれか他方の側の他端部よりも高い位置となるように設置されたことを特徴とする請求項2または3に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−144548(P2011−144548A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5758(P2010−5758)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】