説明

衛生洗浄装置

【課題】節水効率を高め、待機電力を低減する衛生洗浄装置の提供。
【解決手段】人体局部用洗浄ノズル410は、洗浄水を通水する給水路411と、洗浄水を前記人体局部へ指向するオリフィス413と、スロート417と、オリフィス413の下流側かつスロート417の上流側に設けられ、洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面の面積が垂直な方向の前記オリフィス413の断面の面積よりも大きい混合室415と、オリフィス413からスロート417へ向けて洗浄水が流れることで発生する負圧の空気を取り込む空気取入部423を有し、混合室415の内部にて、オリフィス413から流出し混合室415の壁面によって流れる方向が変化した洗浄水により帰還流が生じ、空気取入部423を介して混合室415の内部に吸引された空気は、帰還流に気泡として混入され、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水と合流しスロート417から吐水する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の「おしり」などを水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
衛生洗浄装置において洗浄感を高めるためには、例えば洗浄水による刺激感と量感とを両立した洗浄方法がよいとされている。刺激感をより強めるためには、例えば、吐水の流速をより高めたり、より高めた流速を流路内で減衰させることなく人体の局部に当てることなどが必要である。
【0003】
吐水の流速をより高める方法としては、例えば、洗浄流路の径を絞ったり、ポンプで強制的に流速をより高める方法などが挙げられる。一方、より高めた流速を流路内で減衰させることなく人体の局部に当てる方法としては、例えば、オリフィス部とスロート部との軌跡上に人体局部が存在するように、オリフィス部およびスロート部を設ける方法などが挙げられる(特許文献1および2)。
【0004】
また、量感をより大きくする方法としては、例えば、スロート部の出口面積を入口面積よりも大きくすることにより、吐水に発振を生じさせ、人体の局部のより広範囲に洗浄水を吐水する方法が挙げられる。
【0005】
しかしながら、特許文献1および2に記載された装置では、より多量の洗浄水が必要である。そのため、衛生洗浄装置は、より長い時間に亘って使用される場合や連続的に使用される場合でも温水を吐水できるために、より大きい容量の温水タンクを備える必要がある。そうすると、温水タンク内の水を加熱するためにより多くの電力が必要であり、温水タンクの待機電力はより大きくなる。そのため、省エネルギー化を図ることが困難となる場合がある。
【0006】
これに対して、例えば、衛生洗浄装置が、温水タンクではなく、供給された水を瞬間的に加熱し所定の温水にすることができる瞬間加熱式の熱交換器を備える場合には、省エネルギー化を図ることができる。しかしながら、前述したように、より多量の洗浄水が必要である場合には、瞬間加熱式の熱交換器を使用することができない場合がある。これは、瞬間加熱式の熱交換器が温水を生成することができる流量には制限があるためである。例えば、瞬間加熱式の熱交換器の温水生成能力を超えた流量の水を供給すると、その供給された水は、瞬間加熱式の熱交換器において十分には加熱されない。そのため、生成された温水に温度むらが生じたり、所定の温水を生成することができない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−167844号公報
【特許文献2】特開2002−188202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、節水効率をより高めることができる、あるいは待機電力をより低減することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の発明は、人体局部に向けて洗浄水を吐水する洗浄ノズルを備え、前記洗浄ノズルは、前記洗浄水を通水する給水路と、前記給水路を通水された前記洗浄水を前記人体局部へ指向するオリフィスと、前記オリフィスと前記人体局部とを結ぶ軌跡上に設けられたスロートと、前記オリフィスの下流側かつ前記スロートの上流側に設けられ、前記洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面の面積が前記垂直な方向の前記オリフィスの断面の面積よりも大きい混合室と、前記オリフィスから前記スロートへ向けて洗浄水が流れることで発生する負圧により前記混合室の内部に空気を取り込む空気取入部と、を有し、前記混合室の内部において、前記オリフィスから流出し前記混合室の壁面によって流れる方向が変化した洗浄水により帰還流が生じ、前記空気取入部を介して前記混合室の内部に吸引された前記空気は、前記帰還流に気泡として混入され、前記空気が混入された前記帰還流は、前記オリフィスから前記スロートへ向けて流れる洗浄水と合流し前記スロートから吐水されることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0010】
この衛生洗浄装置によれば、スロートの入口へ向けて流れた洗浄水は、スロートを通過する洗浄水と、混合室の壁面によって流れる方向が変化する洗浄水と、に分かれる。そして、混合室の壁面によって流れる方向が変化した洗浄水により帰還流が生ずる。この帰還流と、オリフィスからスロートへ向けて流れる洗浄水と、により混合室の内部には負圧が発生する。そのため、洗浄ノズルの外部の空気は、空気取入部を介して混合室の内部へ吸引される。そうすると、混合室の内部へ吸引された空気は、帰還流に気泡として混入され、その帰還流にのって流れる。空気が混入された帰還流は、オリフィスからスロートへ向けて流れる洗浄水と合流しスロートから吐水される。
【0011】
これにより、スロートから人体局部へ向けて噴射される洗浄水の中に多くの空気を混入させることができるため、節水効率をより高めることができる。また、節水効率をより高めることができることにより、例えば温水タンク内の水を加熱するための電力を低減することができるため、待機電力をより低減することができる。そのため、省エネルギー化を図ることができる。
【0012】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記オリフィスから前記スロートへ向けて洗浄水が流れることで発生する負圧と、前記空気取入部を介して前記混合室の内部に吸引される前記空気と、により前記混合室の内部において圧力の増減の繰り返しが生ずることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0013】
この衛生洗浄装置によれば、混合室内の圧力の増減の繰り返しにより、洗浄ノズルから吐水された洗浄水には、高速な部分と低速な部分との繰り返しが生ずる。つまり、洗浄ノズルから吐水された洗浄水の各ポイントでは、速度差が生ずる。この速度差により、洗浄水の疎密の繰り返しが自然的変動として現れる。そして、洗浄水の速度差により、洗浄ノズルから吐水された洗浄水には液滴が形成される。
【0014】
そのため、洗浄水の液滴の部分が人体局部に着水することにより、量感を与えることができる。また、洗浄水の液滴の部分が人体局部に着水したときには、より大きな荷重が人体局部にかかる。そのため、刺激感を与えることができる。したがって、節水効率をより高め、待機電力をより低減しつつ、洗浄水の流量を低減させても洗浄感を維持することができる。
【0015】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記オリフィスおよび前記スロートは、前記洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面をみたときに前記混合室の端部に設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0016】
この衛生洗浄装置によれば、オリフィスおよびスロートは、前記洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面をみたときに混合室の端部に設けられているため、オリフィスからスロートへ向けて流れる洗浄水は、混合室の端部を通過する。これによれば、帰還流が生ずる空間はより広く確保されるため、帰還流は混合室の内部においてより大きく形成される。そのため、帰還流に混入された空気は、互いに接触する機会はより少なく、細かい状態のままで維持される。その結果、混合室の内部へ吸引された空気と、帰還流と、はより効率よく混合される。そのため、より多くの空気が帰還流に混入される。
【0017】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記空気取入部は、前記オリフィスおよび前記スロートとは離間した位置に設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0018】
この衛生洗浄装置によれば、混合室の内部へ吸引された空気は、オリフィスからスロートへ向けて流れる洗浄水の噴流の乱れによる影響をほとんど受けることなく帰還流に混入される。そのため、混合室の内部へ吸引された空気は、より安定した状態で帰還流に混入される。その結果、混合室の内部へ吸引された空気と、帰還流と、はより効率よく混合される。そのため、より多くの空気が帰還流に混入される。
【0019】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記空気取入部は、前記帰還流の流れに沿うように形成され、前記空気取入部を介して吸引される前記空気は、前記帰還流の流れに沿うように前記混合室の内部に流入することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0020】
この衛生洗浄装置によれば、混合室の内部へ吸引される空気は、帰還流の流れに沿うように吸引されて流れるため、より効率よく混合室の内部へ流入し、より効率よく帰還流に混入される。そのため、より多くの空気が帰還流に混入される。
【0021】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記混合室は、前記空気を取り込んだ洗浄水の減衰を軽減させる形状を有することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0022】
この衛生洗浄装置によれば、混合室が帰還流の減衰を軽減させる形状を有するため、帰還流の流れは、維持されやすく、遅くなりにくい。これによれば、混合室の内部へ吸引された空気と、帰還流と、はさらに効率よく混合される。そのため、さらに多くの空気が帰還流に混入される。
【0023】
また、第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明において、前記スロートの流路面積を絞る絞り突起が、前記スロートに設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0024】
この衛生洗浄装置によれば、スロートの流路面積を絞る絞り突起がスロートに設けられているので、空気が混入され混合室を出た水の流れは、スロートの絞り突起を通過した後にスロート内に負圧を発生させる。その負圧によって、水の流れがスロートの内壁に引き寄せられる動きが繰り返される。それにより、スロートから吐出される水は、その吐出方向を中心として揺動しながら吐出される。従って、吐出された水を早い段階で液滴状態にすることができ、高い刺激感を得ることができる。また、揺動により、洗浄面積を広げることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の態様によれば、節水効率をより高めることができる、あるいは待機電力をより低減することができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【図2】本実施形態の洗浄ノズルの先端部を側方から眺めた平面模式図である。
【図3】本実施形態の洗浄ノズルの先端部を図2に表した矢視Aの方向からみたときの平面模式図である。
【図4】本実施形態の洗浄ノズルの内部構造を表す断面模式図である。
【図5】本実施形態の洗浄ノズルの内部構造を表す断面模式図である。
【図6】本実施形態の洗浄ノズルの内部における洗浄水の流れを説明するための断面模式図である。
【図7】本実施形態の変形例にかかる洗浄ノズルの内部における洗浄水の流れを説明するための断面模式図である。
【図8】本実施形態の洗浄ノズルから吐水された洗浄水の一例を例示する写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【0028】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0029】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の人体局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。より具体的には、ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の「おしり」などを洗浄することができるノズルユニット(図示せず)などが内蔵されている。その図示しないノズルユニットは、例えば温水タンクなどから供給された水を使用者の「おしり」などに向けて噴射する洗浄ノズル410を有する。
【0030】
また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えば図示しないリモコンなどの操作部を操作すると、洗浄ノズル410を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、洗浄ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
【0031】
図2は、本実施形態の洗浄ノズルの先端部を側方から眺めた平面模式図である。
また、図3は、本実施形態の洗浄ノズルの先端部を図2に表した矢視Aの方向からみたときの平面模式図である。
【0032】
洗浄ノズル410の先端部には、図2および図3に表したように、ひとつあるいは複数の吐水孔418が設けられている。そして、洗浄ノズル410は、その先端部に設けられた吐水孔418から水を噴射して、便座200に座った使用者の人体局部を洗浄することができる。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。また、洗浄ノズル410の先端部には、洗浄ノズル410の内部に空気を取り込むことができる空気取入口421が設けられている。
【0033】
図4および図5は、本実施形態の洗浄ノズルの内部構造を表す断面模式図である。
なお、図4は、図3に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
また、図5は、図3に表した切断面C−Cにおける断面模式図である。
【0034】
洗浄ノズル410の内部には、人体局部を洗浄する洗浄水を通水する給水路411と、オリフィス413と、混合室415と、スロート417と、空気取入部423と、が設けられている。
洗浄ノズル410の内部における洗浄水の流れの概略について説明すると、給水路411の内部を通過した洗浄水は、図4および図5に表した矢印のように、オリフィス413を通過し、混合室415へ導かれる。そして、混合室415へ導かれた水は、スロート417を通過し、吐水孔418から便座200に座った使用者の人体局部へ向けて噴射される。つまり、スロート417の一端部は、吐水孔418として機能する。洗浄水の流れについては、後に詳述する。
【0035】
オリフィス413は、給水路411と接続されており、給水路411から供給された水の流速を高めることができる。また、オリフィス413の出口は、人体局部へ指向されている。
混合室415は、オリフィス413の出口と接続されており、所定の空間を有する。より具体的には、図4および図5に表したように、洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面の混合室415の面積は、洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面のオリフィス413の面積よりも大きい。
【0036】
スロート417は、オリフィス413と人体局部とを結ぶ軌跡上に設けられている。また、スロート417の入口は、混合室415と接続されている。すなわち、混合室415は、オリフィス413の下流側かつスロート417の上流側に設けられている。そして、給水路411と混合室415とは、オリフィス413を介して連通しており、混合室415と洗浄ノズル410の外部とは、スロート417を介して連通している。また、スロート417の入口付近には絞り突起417aが設けられており、スロート417の出口の面積は、図4および図5に表したように、その入口の面積よりも大きい。
【0037】
さらに、混合室415と洗浄ノズル410の外部とは、空気取入部423を介して連通している。空気取入部423は、洗浄ノズル410の外部の空気を洗浄ノズル410の内部に取り込むことができる。このとき、空気取入部423の一端部は、空気取入口421として機能する。空気取入部423を介して混合室415に取り込まれる空気の流れについては、後に詳述する。
【0038】
次に、洗浄水および空気の流れについて、図面を参照しつつ説明する。
図6は、本実施形態の洗浄ノズルの内部における洗浄水の流れを説明するための断面模式図である。
また、図7は、本実施形態の変形例にかかる洗浄ノズルの内部における洗浄水の流れを説明するための断面模式図である。
なお、図6および図7は、図4に表した領域Dを拡大して眺めた拡大模式図である。
【0039】
給水路411の内部を通過した洗浄水は、図6に表した矢印W1のように、オリフィス413を通過し、混合室415へ導かれる。続いて、混合室415へ導かれた洗浄水は、スロート417の入口へ向けて流れる。このとき、図4および図5に関して前述したように、洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面の混合室415の面積は、洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面のオリフィス413の面積よりも大きい。この断面積の変化により、オリフィス413を通過して混合室415へ導かれた洗浄水の噴流においては、混合室415の内部が負圧となることにより乱れが生ずる。
【0040】
この噴流の乱れにより、スロート417の入口へ向けて流れた洗浄水は、図6に表した矢印W2のようにスロート417を通過する洗浄水と、図6に表した矢印W3およびW7のように混合室415の壁面415aによって流れる方向が変化する洗浄水と、に分かれる。そして、混合室415の壁面415aによって流れる方向が変化した洗浄水と、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水と、により、図6に表した矢印W3〜W8のように、所定の方向へ流れる強制的な対流が混合室415の内部に生ずる。
【0041】
この対流と、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水と、により、混合室415の内部には負圧が発生する。そのため、洗浄ノズル410の外部の空気は、図6に表した矢印A1のように、空気取入部423を介して混合室415の内部へ吸引される。そうすると、混合室415の内部へ吸引された空気は、混合室415の内部に生じた対流の洗浄水に気泡として混入され、その対流にのって流れる。
【0042】
空気が混入された洗浄水は、図6に表した矢印W6およびW8のように、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水に近づく。ここで、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水の周囲には、負圧が発生している。そのため、空気が混入された洗浄水の少なくとも一部は、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水に吸引され、その洗浄水と合流する。そして、その合流した洗浄水は、空気が混入された状態でスロート417の入口へ向けて流れる。つまり、混合室415の内部に生じた強制的な対流は、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水から一旦離れ、空気を混入した後に再び合流する帰還流となる。
【0043】
ここで、空気取入部423は、図6に表したように、オリフィス413およびスロート417から離間した位置に設けられている。そのため、混合室415の内部へ吸引される空気は、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水から離間した位置において混合室415の内部へ流入する。そして、混合室415の内部へ流入した空気は、前述したように、帰還流に気泡として混入される。
【0044】
これによれば、混合室415の内部へ吸引された空気は、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水の噴流の乱れによる影響をほとんど受けることなく帰還流に混入される。そのため、混合室415の内部へ吸引された空気は、より安定した状態で帰還流に混入される。その結果、混合室415の内部へ吸引された空気と、帰還流と、はより効率よく混合される。そのため、より多くの空気が帰還流に混入される。
【0045】
また、空気取入部423は、図6に表したように、混合室415の上端部において帰還流の流れに沿うように形成されている。そのため、混合室415の内部へ吸引される空気は、帰還流の流れに沿うように吸引されて流れる。そのため、混合室415の内部へ吸引される空気は、より効率よく混合室415の内部へ流入し、より効率よく帰還流に混入される。そのため、より多くの空気が帰還流に混入される。
【0046】
本発明においては、空気取入部423は、混合室415の上端部に限らず、混合室415内の他の部位に設けられてもよい。ただし、空気取入部423の方向を帰還流の接線方向に向けておくことがより好ましい。これにより、空気取入部423から帰還流が流出しにくくなり、混合室415への空気の吸引を妨げることがなく、空気を同様に効率よく帰還流に混入できる。
【0047】
さらに、オリフィス413およびスロート417は、図6に表したように、洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面をみたときに混合室415の中央部ではなく端部に設けられている。そのため、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水は、混合室415の端部を通過する。これによれば、帰還流が生ずる空間は、より広く確保される。そのため、帰還流は、混合室415の内部においてより大きく形成される。また、混合室415は、帰還流がより大きく形成されるほどに大きい空間を有する。より具体的には、混合室415の壁面415aと壁面415bとの間の間隔は、帰還流がより大きく形成されるほどに大きい。そのため、帰還流に混入された空気が互いに接触する機会はより少なく、その空気は、細かい気泡の状態のままで維持される。その結果、混合室415の内部へ吸引された空気と、帰還流と、はより効率よく混合される。そのため、より多くの空気が帰還流に混入される。
【0048】
さらに、本実施形態における混合室415の壁面415aの少なくとも一部には、図6に表したように、凹部415dが形成されている。この凹部415dが形成されていることにより、洗浄ノズル410の外部の空気は、より安定的に空気取入部423を介して混合室415の内部へ吸引される。
【0049】
より具体的に説明すると、混合室415の壁面415aによって流れる方向が変化し空気取入部423へ向かって流れる洗浄水の少なくとも一部は、図6に表した矢印W10のように凹部415dへと向かう。凹部415dへと向かった洗浄水は、凹部415dにより流れる方向が混合室415の下部へと変化する。流れる方向が混合室415の下部へと変化した洗浄水は、混合室415内の空気取入部423の開口に向けて流れることがない為、混合室415内の空気取入部423の開口は洗浄水で塞がれにくくなる。これにより、洗浄ノズル410の外部の空気は、より安定的に空気取入部423を介して混合室415の内部へ吸引される。
【0050】
言い換えれば、帰還流に沿わずに流れる水は、空気取入部423を介して空気が吸引されることを妨げるが、凹部415dに当たることにより流れる方向を変えられる。そのため、空気取入部423を介して空気が吸引されやすい状況が作り出される。これにより、洗浄ノズル410の外部の空気は、より安定的に空気取入部423を介して混合室415の内部へ吸引される。
【0051】
したがって、凹部415dは、帰還流の流れを変化させることによって、混合室415内の開口を水で塞ぐことがないようにしているため、空気取入部423の近傍に帰還流による負圧から空気の混入を安定的に供給させることができ、より多くの空気を帰還流に気泡として混入させることができる。また、凹部415dは、帰還流が生ずる空間をより広く確保することができる。そのため、帰還流に混入された空気が互いに接触する機会はより少なく、その空気は、細かい気泡の状態のままで維持される。その結果、混合室415の内部へ吸引された空気と、帰還流と、はより効率よく混合される。そのため、より多くの空気が帰還流に混入される。
【0052】
なお、帰還流による負圧をより安定的に発生させる手段は、凹部415dに限定されるわけではない。帰還流による負圧をより安定的に発生させる手段は、その負圧の発生を阻害しないような構造を有していればよく、例えば空気取入部423の混合室415側の開口に設けられたリブであってもよい。
【0053】
また、本実施形態においては、空気取入部423の位置を混合室415の上端部に位置させた。こうすることで、混合室415の空気取入部423近傍に水の無い領域を確保しやすくなる。それにより、空気が混合室415内へ入り易くなるため、空気が効率よく混合室415内へ混入されることとなる。
【0054】
ここで、例えば図7に表したように、混合室415が、より大きい半径により形成された曲面415cを有する場合には、空気を取り込んだ洗浄水は減衰しにくい。そのため、混合室415が、空気を取り込んだ洗浄水の減衰を軽減させる形状を有する場合には、その洗浄水の流れは、維持されやすく、遅くなりにくい。これによれば、混合室415の内部へ吸引された空気と、帰還流と、はさらに効率よく混合される。そのため、さらに多くの空気が帰還流に混入される。
【0055】
図6に戻って説明すると、空気が混入された帰還流は、オリフィス413からスロート417へ向けて流れる洗浄水と合流し、図6に表した矢印W2およびW9のようにスロート417を通過する。ここで、洗浄水の中に気泡として混入された空気の量がより多い部分では、混合室415の内部で混合された水の量がより少ない。そのため、その部分の洗浄水の速度は、より高速になる。一方で、洗浄水の中に気泡として混入された空気の量がより少ない部分では、混合室415の内部で混合された水の量はより多い。そのため、その部分の洗浄水の速度は、より低速になる。これにより、吐水孔418から吐水された洗浄水には、高速な部分と低速な部分との繰り返しが生ずる。つまり、吐水孔418から吐水された洗浄水の各ポイントでは、速度差が生ずる。
【0056】
あるいは、空気が混入された洗浄水がスロート417を通過する際、混合室415側のスロート417に絞り突起417aが設けられているので、スロート417から噴射される水と気泡が混入された帰還流とが合流した水の流れは、絞り突起417aを通過した後にスロート417内に負圧を発生させる。噴射孔の負圧によって、水の流れがスロート417の内壁に引き寄せられる動きが繰り返される。それにより、スロート417から吐出される水は、その吐出方向を中心として揺動しながら吐出される。従って、吐出された水を早い段階で液滴状態にすることができ、高い刺激感を得ることができる。また、揺動により、洗浄面積を広げることができる。
【0057】
このような噴流の乱れにより、スロート417を通過する洗浄水および吐水孔418から吐水された洗浄水は、図6に表した二点鎖線のように揺動する。
また、このような噴流の乱れや空気の混入により、スロート417を通過する洗浄水および吐水孔418から吐水された洗浄水は、細くなったり太くなったりする。この洗浄水の細太の繰り返しにより、吐水孔418から吐水された洗浄水には、高速な部分と低速な部分との繰り返しが生ずる。つまり、吐水孔418から吐水された洗浄水の各ポイントでは、速度差が生ずる。この速度差により、洗浄水の疎密の繰り返しが自然的変動として現れる。
【0058】
あるいは、前述したように、混合室415の内部に発生した負圧により、洗浄ノズル410の外部の空気は、空気取入部423を介して混合室415の内部へ吸引される。そうすると、混合室415の内部は、負圧から正圧へと遷移する。このとき、オリフィス413からスロート417へ向けて洗浄水が引き続き流れているため、混合室415の内部には負圧が再び発生する。このような混合室415内の圧力の増減の繰り返しにより、吐水孔418から吐水された洗浄水には、高速な部分と低速な部分との繰り返しが生ずる。つまり、吐水孔418から吐水された洗浄水の各ポイントでは、速度差が生ずる。
そして、洗浄水の噴流の揺動および速度差により、吐水孔418から吐水された洗浄水は、吐水後早い段階で連続流から液滴状態に変化する。
【0059】
また、節水効率をより高めることができることにより、例えば温水タンク内の水を加熱するための電力を低減することができるため、待機電力をより低減することができる。そのため、省エネルギー化を図ることができる。また、節水効率をより高めることができるため、温水タンクではなく、供給された水を瞬間的に加熱し所定の温水にすることができる瞬間加熱式の熱交換器を利用することができる。これによれば、さらに省エネルギー化を図ることができる。
【0060】
さらに、本実施形態によれば、吐水孔418から吐水された洗浄水には液滴が形成される。そのため、洗浄水の液滴の部分が人体局部に着水することにより、量感を与えることができる。ここで、本願明細書において「量感」とは、吐水断面積(重さ)の大きな吐水が十分な力を持って当たることで、太い水流が当たっていると感じる感覚をいう。一般的に、使用者は、吐水の着水面積が大きいほど量感があると感じる。
【0061】
また、洗浄水の液滴の部分が人体局部に着水したときには、より大きな荷重が人体局部にかかる。そして、洗浄水の液滴の部分が人体局部に着水する時間の間隔、すなわち洗浄水の疎密が繰り返される時間の間隔は、人体が感知できないほど早い。そのため、使用者は、液滴が常に人体局部に衝突しているように感ずる。これにより、刺激感を与えることができる。ここで、本願明細書において「刺激感」とは、速い吐水が人体局部に当たることで、痛みに近い刺激を感じる感覚をいう。刺激感は、流速に依存する。
【0062】
したがって、本実施形態によれば、節水効率をより高め、待機電力をより低減しつつ、洗浄水の流量を低減させても洗浄感を維持することができる。なお、洗浄感は、前述した量感と刺激感とで表される感覚である。
【0063】
図8は、本実施形態の洗浄ノズルから吐水された洗浄水の一例を例示する写真図である。
本発明者は、金型により成形された本実施形態の洗浄ノズルを用いて、吐水状態の確認を行った。その吐水状態を写真として撮影した一例が、図8に表した如くである。一般的に、便座200に着座した使用者の人体局部は、洗浄ノズル410の吐水孔418から例えば約50ミリメートル程度離間した位置に存在する。そのため、便座200に着座した使用者の人体局部は、図8に表した数値「150」に相当する位置の近傍に存在する。
【0064】
図8に表した吐水状態によれば、便座200に着座した使用者の人体局部が存在すると想定される位置(図8に表した数値「150」に相当する位置)の近傍には、洗浄水の液滴が形成されていることが分かる。また、図8に表した吐水状態によれば、吐水孔418から吐水された洗浄水には、多くの空気が気泡として混入されていることが分かる。
【0065】
以上説明したように、本実施形態によれば、吐水孔418から人体局部へ向けて噴射される洗浄水の中に多くの空気を混入させることができるため、節水効率をより高めることができる。また、節水効率をより高めることができることにより、待機電力をより低減することができる。そのため、省エネルギー化を図ることができる。また、吐水孔418から吐水された洗浄水には、液滴が形成される。そのため、洗浄水の液滴の部分が人体局部に着水することにより、量感を与えることができる。さらに、洗浄水の液滴の部分が人体局部に着水したときには、より大きな荷重が人体局部にかかる。そのため、刺激感を与えることができる。したがって、節水効率をより高め、待機電力をより低減しつつ、洗浄水の流量を低減させても洗浄感を維持することができる。
【0066】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、洗浄ノズル410などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などやオリフィス413、混合室415、およびスロート417の設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0067】
100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 400 ケーシング、 404 着座検知センサ、 410 洗浄ノズル、 411 給水路、 413 オリフィス、 415 混合室、 415a、415b 壁面、 415c 曲面、 417 スロート、 417a 絞り突起、 418 吐水孔、 421 空気取入口、 423 空気取入部、 800 洋式腰掛便器、 801 ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人体局部に向けて洗浄水を吐水する洗浄ノズルを備え、
前記洗浄ノズルは、
前記洗浄水を通水する給水路と、
前記給水路を通水された前記洗浄水を前記人体局部へ指向するオリフィスと、
前記オリフィスと前記人体局部とを結ぶ軌跡上に設けられたスロートと、
前記オリフィスの下流側かつ前記スロートの上流側に設けられ、前記洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面の面積が前記垂直な方向の前記オリフィスの断面の面積よりも大きい混合室と、
前記オリフィスから前記スロートへ向けて洗浄水が流れることで発生する負圧により前記混合室の内部に空気を取り込む空気取入部と、
を有し、
前記混合室の内部において、前記オリフィスから流出し前記混合室の壁面によって流れる方向が変化した洗浄水により帰還流が生じ、
前記空気取入部を介して前記混合室の内部に吸引された前記空気は、前記帰還流に気泡として混入され、
前記空気が混入された前記帰還流は、前記オリフィスから前記スロートへ向けて流れる洗浄水と合流し前記スロートから吐水されることを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記オリフィスから前記スロートへ向けて洗浄水が流れることで発生する負圧と、前記空気取入部を介して前記混合室の内部に吸引される前記空気と、により前記混合室の内部において圧力の増減の繰り返しが生ずることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記オリフィスおよび前記スロートは、前記洗浄水の吐水方向に対して垂直な断面をみたときに前記混合室の端部に設けられたことを特徴とする請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記空気取入部は、前記オリフィスおよび前記スロートとは離間した位置に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記空気取入部は、前記帰還流の流れに沿うように形成され、
前記空気取入部を介して吸引される前記空気は、前記帰還流の流れに沿うように前記混合室の内部に流入することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記混合室は、前記空気を取り込んだ洗浄水の減衰を軽減させる形状を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記スロートの流路面積を絞る絞り突起が、前記スロートに設けられたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−144584(P2011−144584A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7439(P2010−7439)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【特許番号】特許第4572999号(P4572999)
【特許公報発行日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】