説明

衛生洗浄装置

【課題】洗浄により濡れた局部を短時間で効率良く乾燥できる衛生洗浄装置の提供。
【解決手段】便器600の後方に載置される本体部200と、便器600上における本体部200の手前に載置されると共に、使用者が着座する着座面を有した便座500と、洗浄水噴出口22および空気噴出口21を有するノズル部20と、洗浄水を供給する洗浄水供給部30と、加圧空気を供給する加圧空気供給部50と、加圧空気の噴射位置を走査するようにノズル部20を駆動するノズル駆動部52と、洗浄水供給部、加圧空気供給部及び、ノズル駆動部の動作を制御する制御部150とを有しており、制御部150は、洗浄水の噴出範囲に応じて、被乾燥面内を走査する加圧空気の走査軌跡の範囲を変更するようにノズル駆動部52を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置に関し、より詳しくは、洗浄で濡れた人体局部に加圧空気を噴出させることにより、表面に付着した水滴を除去し乾燥させる乾燥機能を備えた衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
用便後に人体の局部を洗浄する衛生洗浄装置においては、使用者の好みに応じた洗浄を実現すべく様々な機能が提案されてきた。例えば、衛生洗浄装置を用いて人体の局部(被洗浄面)を洗浄した後、使用者がトイレットペーパー等の紙により局部に付着した水滴を拭き取る代わりに、加圧空気の噴出口を有するノズルを用いて加圧空気を人体の局部およびその周辺部(被乾燥面)に噴出させることにより、人体の局部およびその周辺部に付着した水滴を除去し乾燥を行う空気ノズル(乾燥装置)を搭載した衛生便座装置(局部洗浄装置)が提案されている。
【0003】
このような空気ノズルを有する衛生便座装置としては、洗浄水で濡れた被乾燥面に加圧空気をあてて乾燥する際に、被乾燥面に付着した洗浄水の水滴が必要以上に広がることを防止しつつ、水滴を1箇所に集めて吹き飛ばし易くする試みがなされていた。具体的には、被乾燥面の外縁部分から中心部に向けて加圧空気を当て、徐々に加圧空気を当てる範囲を小さくして、水滴を被乾燥面の中心に集めるようにしながら除去する空気吐出面積可変部を設けた空気ノズルを採用することが知られている(例えば、下記特許文献1、請求項4、請求項9、段落0013〜0018参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−192527号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載の従来の衛生洗浄装置であっても、洗浄水で濡れた被乾燥面を加圧空気で乾燥させる際の使用者の快適性という観点からは未だ改善の余地があった。
【0006】
従来から局部洗浄装置においては、洗浄における使用者の充足感を向上させるために洗浄強さ(水勢)や水流、さらに洗浄水噴出位置の往復移動など複数の洗浄水の噴出条件を使用者の指示に応じて実行可能としたものが広く実用化されている。このため洗浄の噴出条件によって人体に付着する水滴の範囲や面積は一定ではなく違いが生じる。
【0007】
さらに、使用者は水滴の付着が広い範囲か狭い範囲なのか違いを(目視や皮膚感覚で)認識することは通常は困難であり、濡れる範囲を気にしながら指示する洗浄の条件に注意をはらうのでは使い勝手として良くないことになる。
【0008】
一方、洗浄終了後に人体に付着した水滴を除去するための加圧空気の噴出は水滴が移動して濡れる範囲が広がらないように配慮して被乾燥面の外縁部分から噴出を開始して、次第に被乾燥面の略中心に噴出を移動させながら水分を除去することが望ましい。
【0009】
つまり、複数の洗浄の条件に対応して一定の範囲で加圧空気を噴出すると、付着した水滴が被乾燥面の外側に広がってしまい除去しきれずに残る場合や、逆に水滴が付着しない不必要な範囲に加圧空気を噴出することで、余分に時間やエネルギーも要する場合が生じることになる。
【0010】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、被洗浄面を使用者の好みに応じた洗浄の条件で洗浄した後、洗浄水で濡れた被乾燥面を加圧空気で乾燥させる際に加圧空気の噴出は、洗浄の条件に応じて移動範囲を変更するように制御することで、効率的に短時間で水滴を除去することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来技術の有する課題を解決するために、本発明は、用便用の開口部を有した便器の前記開口部の後方に載置される本体と、前記便器の前記開口部上における前記本体の手前に載置されると共に、使用者が着座する着座面を有した便座と、前記使用者の局部に向けて洗浄水を噴出するための洗浄水噴出口および、前記使用者の局部及びその周辺部を含む被乾燥面に向けて加圧空気を噴出するための空気噴出口を有する筒状のノズル部と、前記洗浄水噴出口に前記洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記空気噴出口に前記加圧空気を供給する加圧空気供給部と、前記加圧空気の噴射位置を走査するように前記ノズル部を駆動するノズル駆動部と、前記洗浄水供給部、前記加圧空気供給部及び、前記ノズル駆動部の動作を制御する制御部とを少なくとも有しており、前記制御部は、前記使用者によって変更される前記洗浄水の噴出範囲に応じて、前記被乾燥面内を走査する前記加圧空気の走査軌跡の範囲を変更するように前記ノズル駆動部を制御する衛生洗浄装置を提供する。
【0012】
これにより、使用者の好みによって洗浄水が当たる被洗浄面の範囲を拡げると、加圧空気が当たる被乾燥面がそれに応じて拡がるので、人体の局部周辺に広がった洗浄水を余すことなく除去することができる一方、洗浄水が当たる被洗浄面を狭めた場合は、短時間で水滴を除去することができる。
【0013】
ここで、本発明において、「被洗浄面」は、いずれも使用者の局部を中心とした体表面のことである。その範囲は、人体局部およびその周辺のうち使用者の排泄により汚れうる範囲であることが好ましい。
【0014】
この「被洗浄面」の範囲は、使用者の体型の分布、便座の大きさ、便座の形状、洗浄水の吐出量範囲、洗浄水の吐出圧範囲などを考慮して、実験およびシミュレーションのうちの何れかにより予め求めて設定しておいてもよい。また、この「被洗浄面」の範囲は、排泄により汚れうる範囲を検知可能なセンサなど(排泄物中の水分などを検知する赤外線センサなど)により、使用者が衛生洗浄装置を使用する度毎にセンシングして最適な範囲を求める構成としてもよい。
【0015】
また、本発明において、「被乾燥面」は、いずれも使用者の局部を中心とした体表面のことである。その範囲は、人体局部およびその周辺のうち洗浄水により洗浄処理された際に洗浄水で濡れうる範囲であることが好ましい。
【0016】
さらに、「被乾燥面」の範囲(面積)が「被洗浄面」の範囲(面積)以上であり、かつ、「被乾燥面」に「被洗浄面」の全範囲が含まれるよう設定されていることが好ましい。
【0017】
なお、この「洗浄水で濡れうる範囲」には、通常、上述の「被洗浄面」の範囲、すなわち、「人体局部およびその周辺のうち使用者の排泄により汚れうる範囲」が含まれるが、「洗浄水で濡れうる範囲」に「被洗浄面」の範囲が含まれない場合には、「被乾燥面」の範囲は、「洗浄水で濡れうる範囲」と「被洗浄面」の範囲とを含む範囲であることが好ましい。
【0018】
この「被乾燥面」の範囲も、「被洗浄面」の範囲を求める場合と同様に、使用者の体系の分布、便器の大きさ、便器の形状、加圧空気の吐出量範囲、加圧空気の吐出圧範囲など
を考慮して、実験およびシミュレーションのうちの何れかにより予め求めて設定しておいてもよい。また、この「被乾燥面」の範囲も、「被洗浄面」の範囲を求める構成と同様に、洗浄水で濡れうる範囲を検知可能なセンサなど(水分を検知する赤外線センサなど)により、使用者が衛生洗浄装置を使用する度毎にセンシングして最適な範囲を求める構成としてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の衛生洗浄装置によれば、使用者によって変更される洗浄水の噴出範囲に応じて、ノズル部からの加圧空気の噴出範囲を変更するようにノズル駆動部を制御するので、使用者の好みによって洗浄水が当たる被洗浄面の範囲を拡げると、加圧空気が当たる被乾燥面がそれに応じて拡がり、人体の局部周辺に広がった洗浄水を余すことなく除去することができる。その一方、洗浄水が当たる被洗浄面を狭めた場合は、短時間で水滴を除去することができる。これにより、洗浄水で濡れた被乾燥面を加圧空気で乾燥させる際に使用者の快適性や乾燥後の充足感が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1における衛生洗浄装置を便器に装着した状態を示す斜視図
【図2】同衛生洗浄装置における遠隔操作装置の一例を示す模式図
【図3】同衛生洗浄装置における洗浄水供給部の構成を示すブロック図
【図4】同衛生洗浄装置における加圧空気供給部および加熱部の構成を示すブロック図
【図5】同衛生洗浄装置における駆動部の構成を示す斜視図
【図6】同衛生洗浄装置における「おしり洗浄」および「乾燥」運転の制御動作を示すタイムチャート
【図7】同衛生洗浄装置における洗浄モード「ワイド」および「乾燥」運転の制御動作を示すタイムチャート
【図8】(a)同衛生洗浄装置における「洗浄」の運転状態を示す模式的断面図(b)同装置における「乾燥」の第1のステップの運転状態を示す模式的断面図(c)同装置における「乾燥」の第2のステップの運転状態を示す模式的断面図
【図9】同衛生洗浄装置における「おしり洗浄」運転の空気噴流の移動軌跡を示す模式図
【図10】同衛生洗浄装置における「ワイド洗浄」運転の空気噴流の他の移動軌跡を示す模式図
【図11】同衛生洗浄装置におけるさらに他の「乾燥」運転の空気噴流のさらに他の移動パターンを示す模式図
【図12】同衛生洗浄装置におけるその他の駆動部の構成を示す斜視図
【図13】(a)第2の実施の形態における衛生洗浄装置の「洗浄」運転の運転状態を示す模式的断面図(b)同衛生洗浄装置における「乾燥」運転の第1のステップの運転状態を示す模式的断面図(c)同衛生洗浄装置における「乾燥」運転の第2のステップの運転状態を示す模式的断面図
【図14】同衛生洗浄装置における「乾燥」運転の空気噴流のさらに他の移動パターンを示す模式図
【図15】従来の乾燥装置を備えた衛生洗浄装置の模式図
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の第1の発明は、用便用の開口部を有した便器の前記開口部の後方に載置される本体と、前記便器の前記開口部上における前記本体の手前に載置されると共に、使用者が着座する着座面を有した便座と、前記使用者の局部に向けて洗浄水を噴出するための洗浄水噴出口および、前記使用者の局部及びその周辺部を含む被乾燥面に向けて加圧空気を噴
出するための空気噴出口を有する筒状のノズル部と、前記洗浄水噴出口に前記洗浄水を供給する洗浄水供給部と、前記空気噴出口に前記加圧空気を供給する加圧空気供給部と、前記加圧空気の噴射位置を走査するように前記ノズル部を駆動するノズル駆動部と、前記洗浄水供給部、前記加圧空気供給部及び、前記ノズル駆動部の動作を制御する制御部とを少なくとも有しており、前記制御部は、前記使用者によって変更される前記洗浄水の噴出範囲に応じて、前記被乾燥面内を走査する前記加圧空気の走査軌跡の範囲を変更するように前記ノズル駆動部を制御する衛生洗浄装置である。
【0022】
この構成により、使用者の好みによって洗浄水が当たる被洗浄面の範囲を拡げると、加圧空気が当たる被乾燥面がそれに応じて拡がるので、人体の局部周辺に広がった洗浄水を余すことなく除去することができる一方、洗浄水が当たる被洗浄面を狭めた場合は、短時間で水滴を除去することができる。
【0023】
第2の発明は、特に、第1の発明の制御部は、制御部は、前記洗浄水の水勢が強ければ強いほど、前記加圧空気の走査軌跡の範囲を拡げるように前記ノズル駆動部を制御するので、洗浄水の水勢が強いことにより洗浄面が拡がった場合は、洗浄水を停止後に行う加圧空気の噴出範囲が拡がり、人体の局部周辺に広がった洗浄水を余すことなく除去することができる。
【0024】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明のノズル駆動部は、ノズル駆動部は、ノズル部を当該ノズル部の軸方向に進退駆動させる進退駆動部と、前記ノズル部の軸を中心として前記ノズル部を回動駆動する回動駆動部と、を有するものである。
【0025】
これにより、進退駆動部及び回動駆動部のうちの少なくともどちらか一方を制御して、前記ノズルの前記空気噴出口の位置を当該空気噴出口から噴出される前記加圧空気が前記被乾燥面に当たるように予め設定された加圧空気の移動軌跡を移動させ、被乾燥面に付着した水滴を除去するものである。
【0026】
すなわち、本発明の衛生洗浄装置によれば、ノズル部を回動駆動することにより、空気噴出口からの噴射角度を偏向して、人体に対する加圧空気の吹き付け位置を横方向に移動できるので、ノズル部自体を横方向に移動する必要がなく、ノズル部が移動することを可能にする移動空間を設ける必要がないので、衛生洗浄装置の大きさをコンパクトに構成できる。さらに、ノズル部の回動駆動により、人体に対する加圧空気の噴出位置を横方向に高速移動させることができ、人体局部の周辺に付着した水滴を短時間で効率的に除去することができる。
【0027】
第4の発明は、特に、第1または第2の発明のノズル駆動部は、ノズル部を当該ノズル部の軸の方向に進退駆動させる進退駆動部と、前記ノズル部を当該ノズル部の先端部が前記着座面と略平行な面内で前記軸の方向に交わる横方向に揺動駆動させる揺動駆動部と、を有するものである。
【0028】
これにより、空気噴出口から噴射する加圧空気の噴流は、被乾燥面に対してほぼ垂直を保って噴出されるので、被乾燥面に付着する水滴に対しての剥離作用が高くなる。また、水滴が被乾燥面の外側に移動しようとする作用が抑制できるので、水滴を被乾燥面の中心部に向けて集めて吹く飛ばし易くなる。
【0029】
さらに、加圧空気の噴流を左右に移動させても、被乾燥面に噴流が当たるまでの距離が離れないので、流速の高い加圧空気を被乾燥面に当てることができ、人体に付着した水滴を除去する能力が向上して、水滴を短時間で効率的に除去することができる。
【0030】
第5の発明は、特に、第1〜第4の何れか1つの発明の制御部は、被乾燥面に当たる加圧空気の移動軌跡が、前記加圧空気の噴出開始点と噴出終了点との間を往復移動し、その移動軌跡のうち隣接する往路間の間隔が略一定になるように前記ノズル駆動部を制御するものである。
【0031】
これにより、隣接する往路間の幅が略一定になるジグザグ軌跡を描くようにノズル駆動部を制御することで、順次水滴を中央に寄せつつ除去することができるので、短時間で効率的に水滴を除去することができるようになる。
【0032】
第6の発明は、特に、第1〜第4に何れか1つの第3の発明の制御部は、前記被乾燥面に当たる前記加圧空気の移動軌跡が、前記被乾燥面の周辺部から略中心に向って渦巻状となり、隣接する前記移動軌跡同士の距離が略一定となるように前記ノズル駆動部を制御するものである。
【0033】
これにより、付着した水滴を被乾燥面の縁部から被乾燥面の略中心に向かって寄せつつ除去するための加圧空気の移動軌跡は折り返しが少なく短いノズル駆動距離となり、移動軌跡が連続することで加圧空気を途中で停止させることもないので、短時間で効率的に水滴を除去することができる。
【0034】
第7の発明は、特に、第1〜第6の何れか1つの発明において、前記加圧空気の噴出動作の動作状態を報知する報知部を有するものである。
【0035】
これにより、使用者は噴出終了までの残り時間や終了に近づいたことを認識することができる。洗浄条件によって噴出動作にかかる時間が変わっても、違和感なく快適に使用することができる。乾燥が終了するまでの時間が長くていらだつことや、逆に短くて乾燥の仕上がりに不安をもって繰り返して乾燥したりすることもないので、短時間で効率的に水滴を除去することができる。
【0036】
第8の発明は、特に、第1〜第7の何れか1つの発明において、前記使用者の局部及びその周辺の広い範囲に温風を送風する温風供給部を有しており、前記温風供給部は、前記加圧空気の噴出動作終了後も所定時間継続して前記温風を送風するのである。
【0037】
これにより、加圧空気の噴出後には温風のみが被乾燥面に当たるので、使用者は被乾燥面の水滴が十分に除去されていることを皮膚の暖感覚で認識しやすくなり、乾燥の仕上がりに不安をもって繰り返して乾燥したりすることもないので、洗浄モードに応じた範囲に加圧空気を噴出して効率的に短時間で水滴を除去できて快適に使用することができる。
【0038】
以下、図面を参照しながら本発明の衛生洗浄装置の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、以下の説明では、同一または相当部分には同一符号付し、重複する説明は省略する。
【0039】
(第1実施形態)
図1は本発明の一実施の形態に係る衛生洗浄装置およびそれを備えたトイレ装置を示す外観斜視図である。
【0040】
トイレ装置1000は、通常、トイレットルーム内またはバスルーム内に設置される。トイレ装置1000は、用便用の開口部を有する便器600の開口部上に衛生洗浄装置100を取り付けて構成される。衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座400および便蓋500により構成される。
【0041】
本体部200は、便座400および便蓋500を軸支しており、便座400および便蓋500は開閉可能に取り付けられている。また、本体部200には、乾燥ノズル部20aを含む加圧空気供給部50と、洗浄水を噴出するための洗浄ノズル部20bを含む洗浄水供給部30と、加熱部40とが設けられるとともに、制御部150が内蔵されている。
【0042】
着座センサ610は、本体部200の正面上部に設けられている。この着座センサ610は、例えば反射型赤外線センサ等で構成される。そして、着座センサ610は、人体から反射された赤外線を検出することにより、便座400上に使用者が存在することを検知する。
【0043】
入室検知センサ700は、トイレットルームの入口等に取り付けられ、例えば、反射型赤外線センサ等で構成される。そして、入室検知センサ700は、人体から反射された赤外線を検出した場合にトイレットルーム内に使用者が入室したことを検知する。
【0044】
制御部150は、遠隔操作装置300、入室検知センサ700および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。
【0045】
加圧空気供給部50は、加圧空気を供給するエアポンプ51と、この加圧空気を噴出する空気噴出口21を備えた乾燥ノズル部20aと、空気噴出口21から噴出される加圧空気の噴流を前後左右に移動するために、乾燥ノズル部20a及び洗浄ノズル部20bを含むノズル部20を移動駆動するノズル駆動部52とにより構成されており、空気噴出口21ら噴出する加圧空気は被乾燥面に到達する風速が秒速20〜30mの能力を備えており、被乾燥面における噴流の当接範囲は直径約1cm程度の大きさとなっている。
【0046】
洗浄水供給部30は、洗浄ノズル部20bと、水道水の供給を開閉する開閉弁34と、水道水を加熱する温水加熱部31と、温水加熱部31からの温水を洗浄ノズル部20bの方向と便器600の内部方向とに流路を切換える切換弁32とで構成している。そして、乾燥ノズル部20aと洗浄ノズル部20bとは、ノズル部20内で一体的に構成されている。
【0047】
加熱部40は、内蔵のヒータ44に送風して温風を供給する送風部であるエアファン41と、この温風を温風噴出口42に導くダクト43により構成されており、温風噴出口42より噴出する温風は加圧空気供給部50から噴出する加圧空気の流速より遅く、秒速10m以下であり、被乾燥面に対する当接面積は広く被乾燥面の略全面に拡散する構成となっている。
【0048】
図2は、図1に示す遠隔操作装置300の正面図である。遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の下部にコントローラ蓋部302が開閉自在に設けられた構造を有する。
【0049】
図2(a)に示すように、コントローラ蓋部302が閉じられた状態で、コントローラ本体部301の上部には洗浄強さの調整スイッチ322、323および洗浄位置の調整スイッチ324、325、洗浄モードを選択するムーブスイッチ330、ワイドスイッチ331が設けられ、コントローラ蓋部302には停止スイッチ311、乾燥スイッチ314、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313が設けられている。
【0050】
使用者により、上記各スイッチの動作が操作される。これにより、遠隔操作装置300から図1の本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。本体部200の制御部150(後述する図3、図4を参照)は、受信した信号に基づいて本体部200の各構成部の動作を制御する。
【0051】
例えば、使用者がおしりスイッチ312またはビデスイッチ313を操作することにより、後述する図3中の洗浄ノズル部20bから使用者の局部に洗浄水が噴出される。また、使用者が停止スイッチ311を操作することにより、洗浄ノズル部20bから使用者の局部へ噴出する洗浄水が停止される。
【0052】
使用者が乾燥スイッチ314を操作することにより、使用者の局部の被乾燥面に向けて、加圧空気供給部50の空気噴出口21からスポット状の加圧空気が噴射されると同時に、加熱部40から温風が全体的に吹き出される。
【0053】
洗浄強さ調整スイッチ322、323の横には、これらスイッチの操作により変わる洗浄強さを表す表示部322Gが設けられている。洗浄中に使用者が強さ調整スイッチ322、323を操作することにより、それに対応して表示を変更し、使用者の局部に噴出される洗浄水の流量および圧力が切換弁32の弁開度の変更により調整される。
【0054】
洗浄位置の調整スイッチ324、325の横には、これらのスイッチの操作により変わる洗浄位置を表す表示部324Gが設けられている。洗浄位置は標準的な体型の人が便座に着座したときに局部中心に洗浄水が当たるように基準洗浄点として洗浄ノズル部20bの位置が予め(例えば前方100mmに)設定されているが、使用者の体型や着座位置の違いによってずれが生じる場合にはノズルの前後位置を段階的に移動することで洗浄水の噴出位置を調整できる構成となっている。
【0055】
使用者が洗浄位置の調整スイッチ324、325を操作すると、たとえば前記の基準洗浄点を中心とした前後各20mmの調整範囲を10mm間隔ごとに設けた全5段階の中から最適な洗浄水の噴出位置を選択できる。この時の洗浄ノズル部20bの位置を段階的に表示部324Gに表示することで、操作した結果が使用者に分かり易くしている。
【0056】
洗浄モードを選択するムーブスイッチ330が操作されると、洗浄ノズル部20bを洗浄位置で前後に駆動しながら洗浄することにより前後の洗浄範囲は広くなる。たとえば調整された洗浄位置を中心に前後に各8mm往復駆動しながら洗浄する。
【0057】
洗浄モードを選択するワイドスイッチ331が操作されると、洗浄ノズル部20bを回動駆動により洗浄水噴出口22を左右に揺動しつつ、前後方向にも往復駆動して洗浄水を噴出することで前後左右の洗浄範囲が広くなる。
【0058】
図2(a)における報知部320は加圧空気の噴出動作の動作状態を報知するものである。例えば、乾燥運転の終了までの残り時間を表示する表示部であり、使用者が乾燥スイッチ314を押し加圧空気の噴出動作が開始されると、連動して残り時間が表示される。洗浄条件によって乾燥時間が変化しても使用者には終了までの時間が把握できるので、違和感なく快適に使用することができる。
【0059】
図2(b)に、コントローラ蓋部302が開かれた状態の遠隔操作装置300の正面図が示されている。図2(b)に示すように、コントローラ蓋部302により覆われるコントローラ本体部301の下部には、上述の停止スイッチ311、乾燥スイッチ314、おしりスイッチ312およびビデスイッチ313に加えて、温風温度調整スイッチ340、水温調整スイッチ333、便座温度調整スイッチ334が設けられている。
【0060】
これらのスイッチが操作された場合にも、遠隔操作装置300から本体部200に各スイッチに応じた所定の信号が無線送信される。これにより、本体部200の制御部150は、受信した信号に基づいて本体部200および便座400の各構成部の動作を制御する

【0061】
使用者が温風温度調整スイッチ340を操作することにより、加熱部40から使用者の局部に吹き出される温風の温度が調整される。この温風温度調整スイッチ340は、一回押す毎に設定が、「高」、「中」、「低」、「切」と切り替わる。この「切」の設定で運転した場合は、ヒータ44(図4)がオフとなり送風だけとなる。
【0062】
また、使用者が水温調整スイッチ333を操作することにより、洗浄ノズル部20bから使用者の局部に噴出される洗浄水の温度が調整される。使用者が便座温度調整スイッチ333を操作することにより、便座400の温度が調整される。
【0063】
次に、本体部200内に設けられた洗浄水供給部30について説明を行う。図3は洗浄水供給部30および制御部150の構成を示すブロック図である。
【0064】
図3に示すように、洗浄水供給部30は、開閉弁34、温水加熱部31、切換弁32、洗浄ノズル部20b(ノズル部20)、ノズル駆動部52、前後駆動モータ53および左右駆動モータ54を含む。
【0065】
制御部150は、開閉弁34、温水加熱部31、切換弁32、前後駆動モータ53および左右駆動モータ54の動作を制御する。洗浄動作中に遠隔操作装置300(図2を参照)の洗浄位置の調整スイッチ324、325(図2を参照)の操作により前後駆動モータ53を所定量ずつ駆動する。
【0066】
続いて本体部200内に設けられた乾燥機能について説明を行う。図4は乾燥機能における加圧空気供給部50、加熱部40および制御部150の構成を示すブロック図である。
【0067】
図4に示すように、加圧空気供給部50は、乾燥ノズル部20a(ノズル部20)、エアポンプ51、ノズル駆動部52、前後駆動モータ53、左右駆動モータ54を含む。また、加熱部40は、エアファン41、ダクト43、ヒータ44および温風噴出口42を含む。
【0068】
また加圧空気供給部50の乾燥ノズル部20aは、洗浄水供給部30の洗浄ノズル部20bと一体的に構成され、1つのノズル部20に収納されている。また、前後駆動モータ53、左右駆動モータ54を含むノズル駆動部52と制御部150とは前述の洗浄水供給部30と加圧空気供給部50で共用している。
【0069】
制御部150は、エアポンプ51、前後駆動モータ53、左右駆動モータ54を制御するとともに、室温検出部151の信号を検出して、検出した室温に応じてヒータ44の電力とエアファン41の動作を制御する。室温検出部151は、衛生洗浄装置の雰囲気温度が検出できるように本体部200に内蔵されたサーミスタ(図示せず)により室温を検出する。
【0070】
そして、制御部150は、加圧空気供給部50とともに加熱部40を駆動させて、加熱部40から送風される温風を、加圧空気供給部50から噴出される加圧空気により誘引しながら混合して被乾燥面に噴出する第1の乾燥運転と、加熱部40だけを駆動して温風だけ被乾燥面に吹き出す第2の乾燥運転の2通りの運転パターンで制御する。
【0071】
次に、ノズル部20およびそれを駆動するノズル駆動部52について説明する。図5はノズル部20およびノズル駆動部52の構成を示す斜視図である。
【0072】
図5に示すように、ノズル駆動部52は、ノズル部20と、ノズル部20からの空気噴流を左右方向に揺動する左右駆動部70と、空気噴流を前後方向に往復動させる前後駆動部71と、ベース55により構成しており、ノズル駆動部52はノズル部20から噴出する加圧空気の被乾燥面に対する当接範囲を被乾燥面の全面に亘り任意に移動させることができる。
【0073】
ノズル部20は、円筒形状を成しており、先端近傍に空気噴出口21と洗浄水噴出口22が設けられ、内部に加圧空気を空気噴出口21に導くエア空洞23と、洗浄水を洗浄水噴出口22に導く水用空洞24が設けられている。すなわち、このノズル部20は、乾燥ノズル部20aと洗浄ノズル部20bを兼ねるように構成されている。したがって、このノズル駆動部52により、加圧空気を噴射する場合は、加圧空気の噴射位置を人体局部周辺の広い面に亘り任意に移動させることができるし、洗浄水を噴出する場合は、洗浄水の噴出位置も人体の局部周辺の広い面に亘り任意に移動させることができる。
【0074】
なお、加圧空気の噴出可能範囲については、この洗浄位置の調整範囲よりも前後左右ともに充分広い範囲に設定している。たとえば加圧空気の噴出可能範囲は洗浄中心点より前後左右に50mmの範囲に設定しているので、水滴の付着する範囲の外縁部から噴出を開始して水滴除去効果を維持できる。
【0075】
エアポンプ51に接続されたエアチューブ25をエア空洞23に接続して、エアポンプ51からの加圧空気をエア空洞23に供給している。また、切換弁32に接続された水チューブ26を水用空洞24に接続して、切換弁32からの洗浄水を水用空洞24に供給している。エアチューブ25と水チューブ26は、ノズル部20が回動や前後移動する際に、ねじれや屈曲の力が働くためゴムなどの軟質素材で構成する。
【0076】
ベース55は、上面に前傾姿勢で構成されたレール部56に沿ってノズル部20を前傾して配置し、ベース先端に開孔して配置したガイド部57にノズル部20を通して保持する。このガイド部57は、摺動性のよい材質で構成し、ノズル部20がスムーズに回転および摺動するように適度にクリアランスを設けている。また、ベース55上面にはレール部56に沿ってスライドするスライダ58を備え、ノズル部20の終端を回転自在に保持する。そしてスライダ58の動作に合わせてノズル部20はレール部56に沿って駆動される。
【0077】
前後駆動部71は、前後駆動モータ53と、スライダ58とネジ部59により構成され、前後駆動モータ53は、ベース55の後部に配置し、レール部56に平行に配置したネジ部59を正逆回転するよう接続されている。このネジ部59は、スライダ58のナット部60にセットされており、ネジ部59の回転に従ってスライダ58がレール部59上を駆動する。したがって、前後駆動モータ53の回転に合わせてスライダ58に保持されたノズル部20が前後に駆動される。ここでの前方向とは図5のA方向を表し、後方向とはB方向を表しており、前方向は便座400に着座した用便者の前面方向に対応し、後方向は用便者の背面方向に対応する。
【0078】
左右駆動部70は、スライダ58に配置した左右駆動モータ54、歯車A61、歯車B62および歯車C63より成り、左右駆動モータ54の回転を歯車A61、歯車B62および歯車C63を介してノズル部20に伝える。したがって、左右駆動モータ54の正逆回転に応じてノズル部20が回転し、空気噴出口21から噴出する空気噴流は図5のCおよびDの右左方向に揺動する。
【0079】
以下、制御部150の制御動作について、図6、図7、および図8を用いて説明する。
図6は、「おしり洗浄」と、それに対応する「乾燥」との制御動作、即ち、おしりスイッチ312を操作した後、乾燥スイッチ314を操作した時のタイムチャートである。図7は、洗浄モードが「ワイド」と、それに対応する「乾燥」との制御動作を示すタイムチャート、即ち、ワイドスイッチ331を操作した後、乾燥スイッチ314を操作した時のタイムチャートである。図8は、「洗浄」および「乾燥」の運転状態を示す模式的断面図である。図9と図10とは「乾燥」運転状態の被乾燥面における噴流の当接範囲Eの移動パターンを示す模式図である。
【0080】
図6に示すように、まだ操作がされていない状態の時点T0では、ノズル部20は前後方向の後端、即ち本体部200内の所定の収納位置に配置されている。ノズル部20の左右方向は、揺動部70に設けた中心部位置を検出する位置センサ(図示せず)の検出位置に角度設定されている。この角度は中心角度となり空気噴出口21と洗浄水噴出口22の噴流角度が上(左右中心)方向に設定される。
【0081】
使用者が遠隔操作装置300のおしりスイッチ312を押下操作する時点T1において、開閉弁34が開き、水道水が温水加熱部31に流れ込む、内蔵の流量センサ(図示せず)が水流を検出すると、温水加熱部31への通電が開始され、加熱された温水が供給し始める。この時切換弁32は便器600側の流路に設定されているので、充分に温まっていない温水は便器600内に排出される。
【0082】
温水加熱部31からの出湯温度が所定の温度(例えば36℃)に達した時点T2において、前後駆動モータ53を運転させてノズル部20を基準洗浄点(例えば前方100mm)まで前進させる。そして、時点T3において切換弁32により洗浄水を洗浄水噴出口22(洗浄ノズル部20b)側に切換え、使用者の被洗浄面に洗浄水を噴出する。温水加熱部31への電力制御は、出湯温度を検出する温度センサ(図示せず)の検出温度が設定温度(例えば40℃)になるように公知PIDやFF制御を用いて行う。おしり洗浄における被洗浄面の濡れ状態は図8(a)に示すように洗浄水が直接当たる中心部だけでなく、水滴が流れて周辺部を濡らしてしまう。この「おしり洗浄」で濡れうる範囲は図9においてW1となる。
【0083】
おしり洗浄を終了するために、使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作する図6の時点T4において、切換弁32により通水を便器600側に切換え、洗浄水噴出口22からの洗浄水の噴出を停止すると同時に、温水加熱部31への通電を停止し、前後駆動モータ53を逆転させて、ノズル部20を本体部200内の収納位置まで後退させる。そしてT5で開閉弁34を閉じて通水を遮断して、洗浄動作を終了する。
【0084】
なお、本実施の形態では、おしり洗浄における動作を説明したが、遠隔操作装置300のビデスイッチ313押下操作するビデ洗浄を押下操作する場合においても、基本となるシーケンスは同様である。ただ、ビデ洗浄の場合は、ビデに対応する洗浄ノズル位置と流量設定に変更される。
【0085】
次に、時点T6において使用者が遠隔操作装置300の乾燥スイッチ314を押下操作すると、ヒータ44が通電されヒータ44自身の温度上昇が開始される。このようにエアファン41を運転する前にヒータ44に通電することにより、放熱が少ない状態でヒータ44が加熱されるので、ヒータ44の温度を高速に上昇させることができる。
【0086】
また乾燥スイッチ314を押下操作されると遠隔操作装置300の表示部320には加圧空気の噴出動作が終了するまでの残り時間が表示される。例えば、開始と同時に時点T6から時点T17までの運転時間として30秒が表示され、カウントダウンして残り時間を秒単位で刻々表示する。
【0087】
同時にエアポンプ51が短時間(例えば1秒間)だけ運転され、加圧空気がノズル部20の空気噴出口21より一瞬噴出される。この動作は、ノズル部20が収納位置にある状態で、ノズル部20表面に付着した水滴を吹き飛ばして、使用者に対して水滴の再付着を防止する。これにより、乾燥ノズル部20aと洗浄ノズル部20bとを一体化して1つのノズル部20内に構成しても不具合ない。
【0088】
時点T7でエアファン41の運転を開始して、温風噴出口42から温風を吹出す。吹出される温風温度は加熱されたヒータ44を通過するため、始めから高温の温風温度となる。そして、前述のヒータ44の加熱量に制御されて高温(例えば60℃)の温風が吹き出されるように設定される。そして温風噴出口42から使用者の洗浄面である被乾燥面の略全面に対して送風される。
【0089】
時点T8においては前後駆動モータ53を運転させてノズル部20を所定位置(例えば前方100mm)まで前進させエアポンプ51が短時間(例えば1秒間)だけ運転され、加圧空気がノズル部20の空気噴出口21より一瞬噴出される。この動作は、水滴を除去するための噴出ではなく低い流速の加圧空気を洗浄した局部略中心に噴出することで使用者に加圧空気の噴出位置が適正であることの安心感をあたえるためのものである。
【0090】
その後、前後駆動モータ53を運転させてノズル部20を所定位置(例えば前方130mm)まで前進させながら、左右駆動モータ54を運転させてノズル部20の左右角度を右側所定角度(例えば+30°)まで角度変更する。この動作により図9に示す加圧空気の噴出範囲F1の外縁部分の一端に加圧空気を噴出する位置に空気噴出口21が向いた状態となる。
【0091】
時点T9において、エアポンプ51の運転を開始して、被乾燥面に対して空気噴出口21から加圧空気の噴出を開始する。
【0092】
そして、時点T9から時点T10の第1のステップにおいて、ノズル駆動部52の左右駆動モータ54と前後駆動モータ53の運転方向および運転速度を制御して、ノズル部20の前後駆動を所定範囲(例えば前方70mmから130mm)で高速に往復運転し、同時にノズル部20の左右角度を右側所定角度範囲(例えば+30°から+20°)まで左右中心方向に向けてゆっくりと駆動させる。この第1のステップの動作は、ノズル部20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の右側所定位置から前後方向に高速に移動しながら徐々に中心部に接近してくる。
【0093】
したがて、図9(a)の移動軌跡M1に示すように、空気噴流当接範囲Eは被乾燥面F1の右端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、空気噴出口21から噴出される加圧空気が被乾燥面F1に当たる範囲の中心が、噴出が開始される噴出開始点と終了される噴出終了点との間を往復移動するようにノズル駆動部を制御し、噴出開始点と噴出終了点との間には、中心の移動方向が変わる少なくとも2つの折り返し点が設定されており、隣接する往路間の幅が略一定となるようにジグザグの移動軌跡が描かれる。
【0094】
この結果、図8(b)に示すように、洗浄水の噴出範囲よりも充分に外側から加圧空気の噴出を開始するので、被乾燥面の右側に広がって付着した水滴を、中心部方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0095】
図6の時点T10では一旦エアポンプ51を停止して、ノズル部20の左右角度を左側所定角度(例えば−30°)まで角度変更する。そして時点T11において、エアポンプ
51の運転を再開して、加圧空気の噴出を開始する。
【0096】
そして、時点T11から時点T12の第2のステップにおいて、ノズル部20の前後駆動を第1のステップと同様に所定範囲(例えば前方70mmから130mm)で高速に往復運転し、同時にノズル部20の左右角度を左側所定角度範囲(例えば−30°から−20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。この第2のステップの動作は、ノズル部20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の左側所定距離から前後方向に高速に移動する周期移動しながら徐々に中心部に漸進移動して接近してくる。
【0097】
したがって、図9(a)の移動軌跡M2に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面F1の左端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、図8(c)に示すように、被乾燥面の左側に広がって付着した水滴を、中心部方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0098】
以上の第1のステップと第2のステップによって被洗浄面に付着して残る水滴は中心部を中心に前後残るのみとなる。
【0099】
人体の臀部は肛門や陰茎の洗浄中心部に対して左右両サイドに凸部が形成されているため、便座に座った場合に洗浄中心部より左右両サイドが低くなる。したがって、洗浄水が左右に濡れ広がりやすく、乾燥時に最初に中心部に空気噴流を当ててしまうと、付着した水滴が左右に大きく広がり、濡れ面積が拡大してしまう。上述のように第1のステップと第2のステップによって被洗浄面の水滴が左右に広がるのを防止しながら吹き飛ばすので、効率の良い乾燥ができる。
【0100】
第2のステップの終了時点T12では、ノズル部20を前方の所定位置(例えば前方130mm)まで前進させる。そして、時点T12から時点T13の第3のステップにおいて、ノズル部20の前後駆動を前方の所定位置(例えば前方130mm)から中心部方向にゆっくり後退させながら、同時にノズル部20の左右角度を右側所定角度から左側所定角度(例えば+30°から−30°)まで高速に往復駆動させる。
【0101】
この第3のステップの動作は、ノズル部20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動しながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に中心部に接近してくる。したがって、図9(b)の移動軌跡M3に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面F1の先端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に斬新移動するので、ジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、被乾燥面の中心部Gより前方に残る水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0102】
時点T13では、一旦エアポンプ51を停止して、ノズル部20を後部所定位置(例えば前方70mm)まで移動させる。そして時点T13において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴出を開始する。
【0103】
そして、時点T14から時点T15の第4のステップにおいて、ノズル部20を後部所定位置から中心部方向にゆっくり前進させながら、同時にノズル部20の左右角度を右側所定角度から左側所定角度(例えば+30°から−30°)まで高速に往復駆動させる。この第4のステップの動作は、ノズル部20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動に移動しながら後方の所定距離から前方に向かって徐々に中心部に接近してくる。
【0104】
したがって、図9(b)の移動軌跡M4に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥
面F1の後端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。この結果、被乾燥面の中心部Gより後方に残る水滴を、中心部G方向に集めながら吹き飛ばすことができる。
【0105】
以上の第1から第4のステップによって被乾燥面に付着して残る水滴は中心部のみとなる。
【0106】
前記の第1から第4のステップでの被乾燥面に付着する水滴への作用を説明する。各ステップの動作中の被乾燥面への空気噴流の駆動方向が、中心部に向けて移動する速度より、中心部に対して略接線方向の移動速度の方を充分に速くしているので、被乾燥面に衝突して広がる空気流れ方向が、前記の略接線方向に対して垂直方向の流れ成分が多くなる。したがって、この略接線方向に駆動する空気噴流と中心部の間に付着する水滴は、略接線方向に対して垂直方向の空気流に押されて中心部方向に移動するように作用する。そして徐々に空気噴流を中心部に接近させるので、中心部方向に集まってくる。この動きを第1から第4のステップにおいて右、左、前、後の4方向から行うことによって、水滴は中心部に集まる。このように第1から第4のステップが被乾燥面に付着する水滴を被乾燥面の中心部に集める工程となる。
【0107】
時点T15では再びエアポンプ51を停止して、ノズル部20を前方の所定位置(例えば前方130mm)まで移動させる。そして時点T16において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴出を開始する。
【0108】
そして、時点T16から時点T17の第5のステップにおいて、ノズル部20を前方の所定位置から後退を開始し、中心部を通過して、中心部より後方の所定距離(例えば前方70mm)までをゆっくりと後退する。同時にノズル部20の左右角度を右側所定角度から左側所定角度(例えば+30°から−30°)まで高速に往復駆動させる。この第5のステップの動作は、ノズル部20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動する周期移動をしながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に漸進移動をして中心部に接近し、さらに中心部を通過して後方の所定位置まで漸進移動する。
【0109】
したがって図9(c)の移動軌跡M5に示すように被乾燥面に対して空気噴流の当たる位置が前方から中心部を通って後方に徐々に移動するので、被乾燥面の中央部に残る水滴を、完全に吹き飛ばすことができる。すなわち、この第5のステップが集めた水滴を吹き飛ばす工程となる。
【0110】
時点T17でエアポンプ51を停止して、ノズル部20を後端の収納位置に移動させ、ノズル部20の左右方向は中心角度に戻す。
【0111】
加圧空気供給部50の運転が終了したあと、使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作する時点T18までは加熱部40だけを駆動して温風だけ被乾燥面に吹き出す第2の乾燥運転となり、時点T18でヒータ44の運転を停止する。
【0112】
前記第2の乾燥運転では温風だけを被乾燥面に当たるので、使用者は被乾燥面の水滴が十分に除去されていることを皮膚の暖感覚で認識しやすくなり、乾燥の仕上がりに不安をもって繰り返して乾燥したりすることもないので、洗浄モードに応じた範囲に加圧空気を噴出して効率的に短時間で水滴を除去できて快適に使用することができる。
【0113】
時点T18に遅れてエアファン41を停止することによって、ヒータ44の余熱を減少させて時点T19で乾燥運転が終了する。
【0114】
図7は洗浄モードが「ワイド」と、それに対応する「乾燥」との制御動作(図2におけるスイッチ331「ワイド」で洗浄したあとスイッチ314「乾燥」で乾燥したとき)のタイムチャートであり、図7に示す時点T0から時点T3までは図6と同様の動作となるので説明を省略する。時点T3において、洗浄モード「ワイド」が開始される。
【0115】
洗浄モード「ワイド」では、時点T3から時点T4において、ノズル駆動部52の左右駆動モータ54と前後駆動モータ53の運転方向および運転速度を制御して、ノズル部20の前後駆動を所定距離(例えば設定位置から前後方向に8mm)で中速(例えは1Hz)に往復運転し、同時にノズル部20の左右角度を所定角度(例えば設定角度±3°)で高速(例えば5Hz)で往復駆動させる。したがって、洗浄水は左右に細かく揺れる水流となり前後に往復駆動するので、この「ワイド洗浄」では前述の「おしり洗浄」よりも使用者の局部を前後左右の周辺を含めて広い範囲を洗浄し、この「ワイド洗浄」で濡れうる範囲は図10においてW2となる。水流の広がりと洗浄位置の前後移動により洗浄性能とともに洗浄感も向上する。
【0116】
図7においても前述の図6の動作と同様に、時点T4では使用者が遠隔操作装置300の停止スイッチ311を押下操作し洗浄が停止され、時点T6で乾燥スイッチ314の押下操作により乾燥が開始さる。時点T4から時点T8までは前述の図6の「おしり洗浄」の場合と同様の動作となるので説明は省略する。
【0117】
このように洗浄範囲を広くした洗浄モード「ワイド」の場合には、それに伴って洗浄後におしりに付着する水滴の範囲も広くなるので、おしりスイッチ312で洗浄した場合と比べてスッチ314「乾燥」で乾燥する場合に異なる点は加圧空気の噴出範囲を広げて「ワイド洗浄」に対応する加圧空気噴出範囲は図10においてF2となる。
【0118】
したがって、乾燥スイッチ314を押下操作されると遠隔操作装置300の表示部320には加圧空気の噴出動作が終了するまでの残り時間を変化して表示される。(例えば開始と同時に洗浄モード「ワイド」に対応した加圧空気の噴出残り時間50秒が表示され、カウントダウンして残り時間を秒単位で表示する)
このように洗浄の条件によって加圧空気の噴出時間が変わっても加圧空気の噴出動作の状態が表示されるので、使用者は終了までが長くて不安に思うことなく、また苛立つことなく快適に使用することができる。
【0119】
洗浄モード「ワイド」に対応した加圧空気の噴出は、時点T9において前後駆動モータ53を運転させてノズル部20を所定位置(例えば前方150mm)まで前進させながら、左右駆動モータ54を運転させてノズル部20の左右角度を右側所定角度(例えば+50°)まで角度変更する。
【0120】
そして、時点T9から時点T10の第1のステップにおいて、ノズル駆動部52の左右駆動モータ54と前後駆動モータ53の運転方向および運転速度を制御して、ノズル部20の前後駆動を所定範囲(例えば前方50mmから150mm)で高速に往復運転し、同時にノズル部20の左右角度を右側所定角度範囲(例えば+50°から+20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。したがて、図10(a)の移動軌跡M6に示すように、空気噴流当接範囲Eは被乾燥面F2の右端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図10(a)のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。
【0121】
図7の時点T10では、一旦エアポンプ51を停止して、ノズル部20の左右角度を左側所定角度(例えば−50°)まで角度変更する。そしてT11において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴出を開始する。
【0122】
そして、時点T11から時点T12の第2のステップにおいて、ノズル部20の前後駆動を第1のステップと同様に所定範囲(例えば前方50mmから150mm)で高速に往復運転し、同時にノズル部20の左右角度を左側所定角度範囲(例えば−50°から−20°)まで中心角度に向けてゆっくりと駆動させる。この第2のステップの動作は、ノズル部20からの空気噴流が、使用者の被乾燥面の左側所定距離から前後方向に高速に移動する周期移動しながら徐々に中心部に漸進移動して接近してくる。したがって、図10(b)の移動軌跡M7に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面F2の左端の接線方向に高速に往復移動する周期移動しながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。
【0123】
第2のステップの終了時点T12では、ノズル部20を前方の所定位置(例えば前方150mm)まで前進させる。そして、時点T12から時点T13の第3のステップにおいて、ノズル部20を前方の所定位置(例えば前方150mm)から中心部方向にゆっくり後退させながら、同時にノズル部20の左右角度を右側所定角度から左側所定角度(例えば+50°から−50°)まで高速に往復駆動させる。この第3のステップの動作は、ノズル部20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動しながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に中心部に接近してくる。
【0124】
したがって、図10(b)の移動軌跡M8に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面F2の先端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に斬新移動するので、図のようにジグザグの移動軌跡が描かれる。
【0125】
時点T13では一旦エアポンプ51を停止して、ノズル部20を後部所定位置(例えば前方50mm)まで移動させる。そして時点T13において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴出を開始する。
【0126】
そして、時点T14から時点T15の第4のステップにおいて、ノズル部20を後部所定位置から中心部方向にゆっくり前進させながら、同時にノズル部20の左右角度を右側所定角度から左側所定角度(例えば+50°から−50°)まで高速に往復駆動させる。この第4のステップの動作は、ノズル部20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動に移動しながら後方の所定距離から前方に向かって徐々に中心部に接近してくる。したがって、図10(b)の移動軌跡M9に示すように、空気噴流の当接範囲Eは被乾燥面F2の後端の接線方向に高速に往復移動する周期移動をしながら中心部Gに向けて徐々に漸進移動するので、ジグザグの移動軌跡が描かれる。
【0127】
時点T15では再びエアポンプ51を停止して、ノズル部20を前方の所定位置(例えば前方150mm)まで移動させる。そして、時点T16において、エアポンプ51の運転を再開して、加圧空気の噴出を開始する。
【0128】
そして、時点T16から時点T17の第5のステップにおいて、ノズル部20を前方の所定位置から後退を開始し、中心部を通過して、中心部より後方の所定距離(例えば前方50mm)までをゆっくりと後退する。同時にノズル部20の左右角度を右側所定角度から左側所定角度(例えば+50°から−50°)まで高速に往復駆動させる。この第5のステップの動作は、図10(c)の移動軌跡M10に示すように、ノズル部20からの空気噴流が、被乾燥面上を左右方向に高速に移動する周期移動をしながら前方の所定位置から後方に向かって徐々に漸進移動をして中心部に接近し、さらに中心部を通過して後方の所定位置まで漸進移動する。
【0129】
以上のように洗浄ムーブ「ワイド」ではノズル部20は洗浄位置で前後方向に加えて左
右にも駆動しながら洗浄することにより、前後左右の洗浄範囲が広くなり、図9および図10に示すように洗浄モード「ムーブ」で濡れうる範囲W2は、「おしり洗浄」で濡れうる範囲W1と比べて前後方向と左右方向との両方向に広くなっている。それに伴って、この洗浄面積に比例的に加圧空気の噴出範囲は広げられて水滴を除去する。
【0130】
このように、洗浄モードによって洗浄範囲を変えた場合には、洗浄面積に比例的に加圧空気の噴出範囲の面積を変更する。また、洗浄水の水流や水勢(流量、圧力)などの洗浄条件を変えた場合においても水滴の付着する範囲が変化するので、実験やシミュレーションにより水滴の付着する範囲を予め求めておき、加圧空気噴出範囲を設定しておくことができる。つまり狭い範囲が濡れた場合は狭い範囲に、広い範囲が濡れた場合は広い範囲に加圧空気を噴出させることによって短時間に効率的に水滴を除去できる。
【0131】
以上は、ノズル位置が基準洗浄点であり位置調整がなされていない場合を例に説明したが、使用者が洗浄位置の調整スイッチ324、325を操作して洗浄中心が変わった場合には、位置調整に応じて加圧空気の噴出も中心を変えた範囲に設定される。実際の洗浄位置を中心にすることによって、洗浄位置が変わっても加圧空気による水滴除去効果を安定に高く維持できる。
【0132】
なお、加圧空気の噴出移動軌跡は図11に示すように往路復路ともに略平行になるように複数点を経由して折返ししても曲線で構成してもよい。
【0133】
本実施の形態では、おしり洗浄とビデ洗浄と乾燥を1本のノズルで構成し、ノズル駆動部52も共用したので、ノズル部の設置容積を小さくでき、さらに部品点数が少なくできるため、省スペース化や低コスト化が実現できる。
【0134】
さらに、乾燥のための加圧空気を単一のノズル孔から噴出するように構成しているので、低流量でも空気噴流の流速が大きくでき、小容量のエアポンプ51でも高い乾燥性能が得られる。すなわち、噴流の流速が大きいので被乾燥面に付着した水滴に噴流が当たる際の水滴を引き剥がすエネルギーが大きくなるため、水滴を効率よく吹き飛ばすことができる。
【0135】
また、本実施の形態では洗浄と乾燥を一本の円筒で構成して、ノズル駆動部52を共用したが、これをそれぞれ独立したノズルと駆動部で構成してもよい。
【0136】
またさらに、本実施の形態ではノズルを単一のノズル孔により構成したが、複数のノズル孔により加圧空気を噴出する構成でもよいし、ノズルおよびノズル駆動部52を複数配置してもよい。そして、複数の空気噴流により被乾燥面の水滴を中心部に集めるように駆動する方が乾燥時間を短縮することができる。また、本実施の形態においては加圧空気の流速を秒速20〜30mとしたが、水滴を吹き飛ばす効果を得るためには秒速10m以上が最低必要であり、噴流の当接範囲の大きさの設定要素であるノズル孔の大きさやノズル孔の数はエアポンプの能力と加圧空気の流速を考慮して選択する必要がある。
【0137】
また、本実施の形態では移動部としてノズル全体をノズル駆動部52で駆動する構成としたが、これに限るものではなく、ノズル部20の空気噴出口21のみ、あるいは空気噴出口21を含む周辺の部材のみを移動あるいは角度を変更することにより噴流の噴出方向を変更することにより、噴流の当接範囲を移動する構成としても良く、あるいはエアノズルの前方に噴流の方向をかえる風向変更部を設ける構成等が考えられる。
【0138】
また、本実施の形態では第1のステップから第5のステップを順次実行したが、各ステップは繰り返し実行してもよいし、各ステップの順番を入れ替えてもよい。また、第1と
第2のステップを省略しても良いし、第3と第4のステップを省略しても良い。
【0139】
また、本実施の形態では乾燥運転開始時にエアファン41を運転する前にヒータ44を通電してヒータ44の温度上昇を高速化したが、エアファン41とヒータ44を同時に起動して、そのときエアファン41の起動時に送風量を徐々に上げるソフトスタート機能を持たせることによりヒータ44の温度上昇の高速化してもよい。
【0140】
また、加圧空気の噴出範囲の面積を、予め設定した複数の値から任意に選択するようにしてもよい。これは、使用者が自分に適した加圧空気の噴出範囲を選択するもので、例えば「広い」から「狭い」までの5段階の中から選択できるようにするもので、使用者が自らの局部周辺の水滴除去状態から経験的に判断して加圧空気の噴出範囲を選択することによって、個人差や洗浄条件に応じた効率的な水滴除去ができる。
【0141】
(実施の形態2)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置について説明する。
【0142】
第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置が、第1の実施の形態に係る衛生洗浄装置と異なるのは、以下の点である。
【0143】
図12は、第2の実施の形態に係る衛生洗浄装置における加圧空気供給部のノズル部および揺動部の部分斜視図を示すものである。
【0144】
図12に示す揺動部80は、ノズル部81の基部82に一体的接続する回転軸部83と、この回転軸部83の軸心84を中心に回動自在に支持するスライダ85と、回転軸部83を回転作用させる左右駆動モータ86と、左右駆動モータ86の回転力を回転軸部83に伝達する歯車A87および歯車B88を含む。
【0145】
スライダ85による前後駆動機能は図5に示す具体例の形態と同様であり、ナット部60も同様に構成されている。
【0146】
ノズル部81の内部構成は図5に示す具体例の形態と同様に円筒形状を成し、先端近傍の円筒周方向に空気噴出口21と洗浄水噴出口22が設けられ、内部に加圧空気エア用のエア空洞(図示せず)と、洗浄水用の水用空洞(図示せず)とが設けられている。図5に示す具体例の形態と異なる点は、ノズル部81の基部82が回転軸部83に一体的に接続され、ノズル部81がこの回転軸部83を中心に扇状に往復揺動することである。
【0147】
以上の構成において、空気噴流を左右に駆動させるのは、左右駆動モータ86を正逆回転制御させて、ノズル部81を所定の角度まで回転させることにより、空気噴出口21自身の位置が左右の所定位置にまで移動することによって行う。
【0148】
図13は本実施形態における「洗浄」および「乾燥」の運転状態の模式的断面図である。図13に示すように空気噴出口21からの空気噴流89は、被乾燥面に対してほぼ垂直を保って噴出されるので、被乾燥面に付着する水滴に対しての剥離作用が高くなる。また、水滴が被乾燥面の外側に移動しようとする作用がより抑制できるので、中心部に水滴を集めやすくなる。さらに、左右に空気噴流を移動させても、被乾燥面に噴流が当たるまでの距離が離れないので、空気流速の高い噴流を被乾燥面に当てることができ、さらに水滴除去能力を向上できる。
【0149】
図14は本実施形態における加圧空気の噴出移動軌跡である。図14に示すように加圧空気の当接範囲Eは被乾燥面Fの外縁部分から被乾燥面Fの略中心に向って隣接する移動
軌跡同士の距離が略一定の渦巻状となるようにノズル駆動部を制御している。
【0150】
これにより、付着した水滴を被乾燥面の縁部から被乾燥面の略中心に向かって寄せつつ除去するための加圧空気の移動軌跡は折り返しが少なく短いノズル駆動距離となり、移動軌跡が連続することで加圧空気を途中で停止させることもないので、短時間で効率的に水滴を除去することができるようになる。
【0151】
以上、本発明の第1実施形態〜第2実施形態の衛生洗浄装置について説明したが、本発明の乾燥機能は上述した第1実施形態〜第2実施形態の衛生洗浄装置に限定されるものではない。
例えば、噴出動作を報知する報知部は、図19に示した報知部に限定されるものではない。例えば、報知部は動作の進捗を示すグラフィック表示でも良いし、音声であっても良いし振動であっても使用者に報知できる手段であればよい。
【0152】
さらに、おしり洗浄と同様にビデ洗浄に対応した被乾燥面を設定して動作させることができ、使用者がおしり洗浄後にビデ洗浄を連続して指示したあとの乾燥は両方の洗浄で濡れる範囲をあわせて被乾燥面として適した加圧空気の噴出軌跡としてノズル駆動を制御しても良い。このように、前述した各実施の形態を組み合わせたものも本発明の範囲に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0153】
本発明の衛生洗浄装置は、用便後に洗浄した洗浄水で濡れた被乾燥面を加圧空気で効率的に水滴を除去して乾燥させることが可能となるので、人体の局部洗浄装置の分野・用途に好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0154】
20 ノズル部
20a 乾燥ノズル部
20b 洗浄ノズル部
21 空気噴出口
22 洗浄水噴出口
30 洗浄水供給部
50 加圧空気供給部
52 ノズル駆動部
100 衛生洗浄装置
150 制御部
200 本体部
400 便座
500 便蓋
600 便器


【特許請求の範囲】
【請求項1】
用便用の開口部を有した便器の前記開口部の後方に載置される本体と、
前記便器の前記開口部上における前記本体の手前に載置されると共に、使用者が着座する着座面を有した便座と、
前記使用者の局部に向けて洗浄水を噴出するための洗浄水噴出口および、前記使用者の局部及びその周辺部を含む被乾燥面に向けて加圧空気を噴出するための空気噴出口を有する筒状のノズル部と、
前記洗浄水噴出口に前記洗浄水を供給する洗浄水供給部と、
前記空気噴出口に前記加圧空気を供給する加圧空気供給部と、
前記加圧空気の噴射位置を走査するように前記ノズル部を駆動するノズル駆動部と、
前記洗浄水供給部、前記加圧空気供給部及び、前記ノズル駆動部の動作を制御する制御部とを少なくとも有しており、
前記制御部は、前記使用者によって変更される前記洗浄水の噴出範囲に応じて、前記被乾燥面内を走査する前記加圧空気の走査軌跡の範囲を変更するように前記ノズル駆動部を制御する
衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記洗浄水の水勢が強ければ強いほど、前記加圧空気の走査軌跡の範囲を拡げるように前記ノズル駆動部を制御する請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズル駆動部は、前記ノズル部を当該ノズル部の軸方向に進退駆動させる進退駆動部と、前記ノズル部の軸を中心として前記ノズル部を回動駆動する回動駆動部と、を有する請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記ノズル駆動部は、前記ノズル部を当該ノズル部の軸の方向に進退駆動させる進退駆動部と、前記ノズル部を当該ノズル部の先端部が前記着座面と略平行な面内で前記軸の方向に交わる横方向に揺動駆動させる揺動駆動部と、を有する請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記被乾燥面に当たる前記加圧空気の移動軌跡が、前記加圧空気の噴出開始点と噴出終了点との間を往復移動し、その移動軌跡のうち隣接する往路間の間隔が略一定になるように前記ノズル駆動部を制御する
請求項1〜4の何れか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記被乾燥面に当たる前記加圧空気の移動軌跡が、前記被乾燥面の周辺部から略中心に向って渦巻状となり、隣接する前記移動軌跡同士の距離が略一定となるように前記ノズル駆動部を制御する
請求項1〜4の何れか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記加圧空気の噴出動作の動作状態を報知する報知部を有する請求項1〜6の何れか1項に記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
前記使用者の局部及びその周辺部に温風を送風する温風供給部を有しており、
前記温風供給部は、前記加圧空気の噴出動作終了後も所定時間継続して前記温風を送風する請求項1〜7の何れか1項に記載の衛生洗浄装置。

【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−153447(P2011−153447A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−14941(P2010−14941)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】