説明

衛生洗浄装置

【課題】洗浄水の飛び散りを抑制して快適なビデ洗浄を行うことができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を吐水して女性局部に着水させるノズルを備え、前記ノズルは、第1の範囲に洗浄水を吐水する第1の吐水と、前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲に洗浄水を吐水する第2の吐水と、を切換可能であり、前記ノズルは、第1の基準位置に静止した状態で前記第1の吐水を実行する第1の静止吐水と、前後に往復移動しながら前記第1の吐水を実行する第1の移動吐水と、を実行可能であり、前記第1の移動吐水において、、前記第1の基準位置から前記ノズルが前方へ移動する第1の距離は、前記第1の基準位置から前記ノズルが後方へ移動する第2の距離よりも短いことを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の女性局部を水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデ洗浄においては、洗浄面積が広いワイド洗浄と、洗浄面積が狭いスポット洗浄と、をボタン操作により変更することができる。従来、局部洗浄用ノズルからそのまま吐水して、女性局部すなわち膣口やその周囲の洗浄を行う吐水とは別に、局部洗浄用のノズルを移動させることなく洗浄範囲(着水時の洗浄面積)を拡大する技術として、螺旋状に旋回させた洗浄水をノズルの吐水孔から吐水できる人体洗浄装置が知られている(特許文献1)。また、同様な技術として、細分化された洗浄水を旋回状態で吐水することができる人体局部洗浄装置も知られている(特許文献2)。
【0003】
一方、従来より、ノズルを移動させつつ吐水を実行するムーブ洗浄といった機構を備えた局部洗浄が知られている。特許文献1、2に開示される洗浄範囲が広い吐水においてムーブ洗浄を実行すると、かなり広い範囲で、局部を洗浄できるといった効果を得られる。しかしながら、広い吐水範囲でムーブ洗浄を行うと、吐水孔から吐水された洗浄水が、目的の局部に着水せず、股の間から抜けて周囲に飛び散ったり、使用者の太ももに吐水されおそれがある。このような点について、使用者に不快感を与えないようするには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−90155号公報
【特許文献2】特開2003−247260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、洗浄水の飛び散りを抑制して快適なビデ洗浄を行うことができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を吐水して女性局部に着水させるノズルを備え、前記ノズルは、第1の範囲に洗浄水を吐水する第1の吐水と、前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲に洗浄水を吐水する第2の吐水と、を切換可能であり、前記ノズルは、第1の基準位置に静止した状態で前記第1の吐水を実行する第1の静止吐水と、前後に往復移動しながら前記第1の吐水を実行する第1の移動吐水と、を実行可能であり、前記第1の移動吐水において、前記第1の基準位置から前記ノズルが前方へ移動する第1の距離は、前記第1の基準位置から前記ノズルが後方へ移動する第2の距離よりも短いことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0007】
この衛生洗浄装置によれば、第1の移動吐水において、前方への移動である第1の距離が、後方への移動である第2の距離よりも短いため、移動吐水で股の間から洗浄水が便座に飛び散ったり、使用者の太ももに洗浄水が吐水されたりすることを抑制することができる。これにより、使用者は快適にビデ洗浄を行うことができるようになる。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記ノズルは、第2の基準位置に静止した状態で前記第2の吐水を実行する第2の静止吐水と、前後に往復移動しながら前記第2の吐水を実行する第2の移動吐水と、をさらに実行可能であり、前記第2の移動吐水において、前記第2の基準位置から前記ノズルが前方へ移動する第3の距離と、前記第2の基準位置から前記ノズルが後方へ移動する第4の距離と、は、略同一であることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0009】
この衛生洗浄装置によれば、第2の移動吐水において、前後方向に略同距離で洗浄することができ、局部範囲を万遍なく洗浄することができるようになる。
【0010】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記第1の移動吐水での前記往復移動の距離が、前記第2の移動吐水での前記往復移動の距離よりも狭いことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0011】
この衛生洗浄装置によれば、第1の移動吐水の往復移動の距離が、第2の移動吐水の往復移動の距離よりも狭いため、広い範囲に着水できる第1の移動吐水であっても股の間から洗浄水が便座に飛び散ったり、使用者の太ももに洗浄水が吐水されたりすることを防止できる。これにより、使用者は快適にビデ洗浄を行うことができるようになる。
【0012】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、前記第2の距離が、前記第4の距離以下であることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0013】
この衛生洗浄装置によれば、第1の移動吐水の後方への移動距離が、第2の移動吐水の後方への移動距離と同等か、またはそれ以下になるので、第1のムーブ洗浄での、前側への飛び散りだけでなく、後側への飛び散りも低減させることができる。
【0014】
また、第5の発明は、第2〜第4のいずれか1つの発明において、前記第1の基準位置が、前記第2の基準位置よりも後方であることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0015】
この衛生洗浄装置によれば、ノズルの静止状態での使用においても、第1の静止吐水が、第2の静止吐水よりも後方に位置するように設定されるので、第1の静止吐水時の飛び散りを防止できるようになる。また、第1の移動吐水でも、第2の移動吐水の移動範囲内での移動になって、第1の移動吐水での前側の飛び散り、さらには、後側への飛び散りを防止することができる。
【0016】
また、第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明において、前記第1の距離をゼロにしたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0017】
この衛生洗浄装置によれば、第1の移動吐水において、後方だけの移動になり、ノズルを移動しながら行う洗浄で、股の間から洗浄水が便座に飛び散ったり、使用者の太ももに洗浄水が吐水されたりすることを防止できる。これにより、使用者は快適にビデ洗浄を行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の態様によれば、洗浄水の飛び散りを抑制して快適なビデ洗浄を行うことができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【図2】各種吐水による洗浄水の着水範囲を説明するための概念模式図である。
【図3】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
【図4】ビデ洗浄におけるワイド吐水の状態を説明する模式図である。
【図5】第1の実施形態に係る衛生洗浄装置でのノズルの往復の移動範囲について説明する図である。
【図6】第2の実施形態に係る衛生洗浄装置でのノズルの往復の移動範囲について説明する図である。
【図7】第3の実施形態に係る衛生洗浄装置でのノズルの往復の移動範囲について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を例示する斜視模式図である。
【0021】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。便蓋300は、閉じた状態において便座200の上方を覆うことができる。
【0022】
ここで、図1に表した具体例においては、衛生洗浄装置100の便座200の着座面の側を上方向(上方)、これと反対側を下方向(下方)、衛生洗浄装置100の便座200が軸支される側を後方向(後方)、これと反対側を前方向(前方)、上下方向及び前後方向と直交する方向のうち後方に向いて右側を右方向(右側方)、左側を左方向(左側方)、ということにする。換言すると、便座200に座った使用者の背面(背中側)から前面(お腹側)に向かう方向を前方向(前方)とし、前面から背面に向かう方向を後方向(後方)とする。
【0023】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の女性局部の洗浄(ビデ洗浄)を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えば図示しないリモートコントローラなどの操作部を操作すると、ノズル410を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
なお、図1ではノズル410がボウル801の後ろ側から前方に向けてボウル801内に進出する具体例を表したが、本発明はこれには限定されない。例えば、これとは異なり、ノズル410が、ボウル801の前側から後方に向けてボウル801内に進出するものも、本発明の範囲に包含される。
【0024】
ノズル410の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水孔411が設けられている。ノズル410は、その先端部に設けられた吐水孔411から水を噴射して、便座200に座った使用者の女性局部を洗浄することができる。例えば、図1に表したノズル410では、ふたつの吐水孔411のうちの例えば前側の吐水孔411aは、ビデ洗浄用の吐水孔であり、後側の吐水孔411bは、おしり洗浄用の吐水孔である。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0025】
図2は、各種吐水による洗浄水の着水範囲を説明するための概念模式図である。
本実施形態のノズル410は、女性局部に洗浄水500を着水する第1の静止吐水(図2(a))、第2の静止吐水(図2(b))、第1の移動吐水(図2(c))及び第2の移動吐水(図2(d))を切り替え可能に設けられている。吐水を行う際、ノズル410は水平面に対して斜め下の前方に進出する。
ここで、図2(a)及び(c)に表したように、ノズル410から第1の範囲A1に洗浄水500を吐水する形態を、第1の吐水であるワイド吐水という。
また、図2(b)及び(d)に表したように、ノズル410から第2の範囲A2に洗浄水500を吐水する形態を、第2の吐水であるスポット吐水という。
【0026】
図2(a)に表したように、第1の静止吐水とは、ノズル410が第1の基準位置P1に静止している状態で、ワイド吐水を行う実行することをいう。
第1の静止吐水では、使用者600の女性局部を含む着水範囲S1に洗浄水500が着水する。
【0027】
図2(b)に表したように、第2の静止吐水とは、ノズル410が第2の基準位置P2に静止している状態で、スポット吐水を実行することをいう。
第2の静止吐水では、使用者600の女性局部を含む着水範囲S2に洗浄水500が着水する。
【0028】
図2(c)に表したように、第1の移動吐水とは、ノズル410を前後に往復移動しながらワイド吐水を実行することをいう。
第1の移動吐水では、使用者600の女性局部を含む着水範囲S10に洗浄水500が着水する。
【0029】
図2(d)に表したように、第2の移動吐水とは、ノズル410を前後に往復移動しながらスポット吐水を実行することをいう。
第2の移動吐水では、使用者600の女性局部を含む着水範囲S20に洗浄水500が着水する。
【0030】
以下の説明では、第1の静止吐水のことを「ワイド吐水」、第1の移動吐水のことを「ワイドムーブ吐水」、第2の静止吐水のことを「スポット吐水」、第2の移動吐水のことを「スポットムーブ吐水」ということにする。
【0031】
ワイド吐水では、スポット吐水に比べて女性局部の広い範囲にわたり万遍なく着水する。すなわち、ビデ洗浄においてワイド吐水を行うと、女性局部を中心とした広い範囲に着水して洗浄を行うことができる。そのため、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。一方、スポット吐水を行うと、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができ、洗浄したい箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
【0032】
図3は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
なお、図3において、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、水道や貯水タンクなどの図示しない給水源から供給された水を導く流路10を有する。流路10の上流側には、電磁弁440が設けられている。電磁弁440は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部401からの指令に基づいて、熱交換器450への水の供給を制御する。
【0033】
電磁弁440の下流側には、熱交換器450が設けられている。熱交換器450は、供給された水を加熱し所定の温水にする。なお、熱交換器450は、例えば、シーズヒータなどを用いた瞬間加熱式熱交換器でもよいし、貯湯タンクを用いた貯湯加熱式熱交換器でもよい。
【0034】
熱交換器450の下流側には、圧力変調装置470が設けられている。この圧力変調装置470は、流路10内の水の流れに脈動を与え、ノズル410の吐水孔411から吐水される水に脈動を与えることができる。なお、圧力変調装置470は、必ずしも設けられていなくともよい。
【0035】
圧力変調装置470の下流側には、ノズル410が設けられている。ノズル410は、水勢(流量)の調整を行う流量調整弁480と、ワイド吐水の際に通水されるワイド吐水用流路427と、スポット吐水の際に通水されるスポット吐水用流路428と、ノズル本体420と、を有する。流量調整弁480は、水勢の調整を行うことができるとともに、ノズル410への給水の開閉や切替を行うことができる。
【0036】
流量調整弁480は、制御部401からの指令に基づいて、ワイド吐水用流路427へ通水したり、スポット吐水用流路428へ通水することができる。あるいは、流量調整弁480は、所定の比率でワイド吐水用流路427およびスポット吐水用流路428へ通水することができる。これにより、使用者は、ワイド吐水用流路427を通過する洗浄水の流量と、スポット吐水用流路428を通過する洗浄水の流量と、の比率を適宜設定変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。
【0037】
ノズル410は、ノズルモータ(ノズル駆動部)490からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退することができる。そして、ノズル410は、ボウル801内に進出した状態で吐水孔411から水を噴射して、便座200に座った使用者の女性局部を洗浄することができる。また、ノズル410は、ノズルモータ490によって往復移動をした状態で吐水を行うことができる。ワイドムーブ吐水及びスポットムーブ吐水では、所定の範囲で洗浄水を噴出した状態でノズルモータ490を駆動し、ノズル410を進退方向に沿って往復移動させる。
【0038】
制御部401は、使用者からの指示に応じて、ノズル410によるワイド吐水、スポット吐水、ワイドムーブ吐水及びスポットムーブ吐水の切り替えを制御する。
すなわち、使用者によってワイド吐水が指示された場合、制御部401は、ワイド吐水用流路427を通過する洗浄水の流量を、スポット吐水用流路428を通過する洗浄水の流量に比べて多く設定する制御を行う。また、ワイド吐水の状態で使用者によってムーブが指示された場合、制御部401はワイド吐水を行いつつ、ノズルモータ490に駆動の指示を与え、ノズル410を往復移動させる制御を行う。
【0039】
同様に、使用者によってスポット吐水が指示された場合、制御部401は、スポット吐水用流路427を通過する洗浄水の流量を、ワイド吐水用流路428を通過する洗浄水の流量に比べて多く設定する制御を行う。また、スポット吐水の状態で使用者によってムーブが指示された場合、制御部401はスポット吐水を行いつつ、ノズルモータ490に駆動の指示を与え、ノズル410を往復移動させる制御を行う。
【0040】
図4は、ビデ洗浄におけるワイドムーブ吐水の状態を説明する模式図である。
図4では、ワイドムーブ吐水においてノズルが最も前方に移動しているときの吐水の状態を例示している。
図4(a)に表したように、ビデ洗浄でワイドムーブ吐水を行うと、洗浄水500は第1の範囲A1で吐水し、使用者600の女性局部を中心とした広範囲に着水する。ノズル410が最も前方に移動している状態では、女性局部の前側までしっかりと洗浄することができる。
【0041】
ここで、図4(b)に表したように、使用者600の便座200への座り方や位置、使用者の体型によっては、ワイドムーブ吐水における洗浄水500の吐水範囲(第1の範囲A1)の一部が女性局部の前側よりもさらに前方にはみ出してしまうことがある。このはみ出した範囲に吐水される洗浄水500aは、使用者600の股の間から便座に飛び散ったり、使用者600の太ももなどに付着するおそれがある。
【0042】
以下、図4(b)に表したような洗浄水500aの飛び散りを抑制する実施形態について説明する。
【0043】
図5〜図7は、本実施形態に係る衛生洗浄装置でのノズルの往復の移動範囲について説明する図である。
図5〜図7においては、図中矢印の方向がノズル410の進退方向(図2に示す軸O)に対応している。なお、説明の便宜上、ノズル410の進退方向を前後方向と表記している。また、図中矢印は、軸Oに沿ったノズル410の先端の位置を表している。つまり、図中矢印の前方の先端は、ノズル410が最も前方に移動した状態でのノズル410の先端の位置を示す。また、図中矢印の後方の先端は、ノズル410が最も後方に移動した状態でのノズル410の先端の位置を示す。また、図中黒色の丸印は、ノズル410の基準位置を表している。
【0044】
(第1の実施形態)
図5では、第1の実施形態に係る衛生洗浄装置のノズルの往復移動での移動範囲について例示している。ここで、図5(a)は、スポットムーブ吐水でのノズルの移動範囲について例示している。スポットムーブ吐水でのノズルの往復の移動範囲は、第2の基準位置P2を中心として前後に略同距離になっている。すなわち、ノズルの往復移動において、第2の基準位置P2から前方へ移動する距離d10と、第2の基準位置P2から後方へ移動する距離d20と、が略同一になっている。
【0045】
図5(b)〜(d)は、ワイドムーブ吐水でのノズルの移動範囲について例示している。ワイドムーブ吐水では、ノズルの往復移動において、第1の基準位置P1から前方へ移動する距離d11が、第1の基準位置P1から後方へ移動する距離d21、d22及びd23よりも短くなっている。
【0046】
図5(b)に例示したノズルの移動範囲では、第1の基準位置P1から後方へ移動する距離d21が、図5(a)に例示したスポットムーブ吐水での距離d20よりも短くなっている。この例において、ノズルは、距離d11及びd21の範囲で軸Oに沿って往復移動する。ノズルの往復移動の中心c1は、第1の基準位置P1よりも後方になる。
【0047】
図5(c)に例示したノズルの移動範囲では、ノズルの往復移動において、第1の基準位置P1から後方へ移動する距離d22が、図5(a)に例示したスポットムーブ吐水での距離d20と同じになっている。この例において、ノズルは、距離d11及びd22の範囲で軸Oに沿って往復移動する。ノズルの往復移動の中心c2は、第1の基準位置P1よりも後方になる。
【0048】
図5(d)に例示したノズルの移動範囲では、ノズルの往復移動において、第1の基準位置P1から後方へ移動する距離d23が、図5(a)に例示したスポットムーブ吐水での距離d20よりも長くなっている。この例において、ノズルは、距離d11及びd23の範囲で軸Oに沿って往復移動する。ノズル410の往復移動の中心c3は、第1の基準位置P1よりも後方になる。
【0049】
図5(b)〜(d)に例示したように、ワイドムーブ吐水において、第1の基準位置P1から前方へ移動する距離d11が、後方へ移動する距離d21、d22及びd23よりも短くなっていることで、洗浄水の吐水範囲の一部が女性局部の位置よりも前方にはみ出してしまうことを抑制できる。これにより、ワイドムーブ吐水において、ノズルが前方に移動しても、使用者の股の間から洗浄水が便座に飛び散ったり、使用者の太ももに洗浄水が吐水されたりすることを抑制でき、快適なビデ洗浄を行うことが可能になる。
【0050】
また、図5(a)に例示したように、スポットムーブ吐水において、前後方向に略同距離で洗浄することによって、局部範囲を万遍なく洗浄することができるようになる。ここで、ワイドムーブ吐水でのノズルの往復の移動範囲よりもスポットムーブ吐水でのノズルの往復の移動範囲を広くすれば、スポットムーブ吐水であっても女性局部周辺の広い範囲を十分に洗浄することが可能になる。
【0051】
なお、第1の基準位置P1及び第2の基準位置P2を同じにして、ワイドムーブ吐水でのノズルの往復の移動範囲を、スポットムーブ吐水でのノズルの往復の移動範囲よりも狭くしてもよい。これにより、ワイドムーブ吐水でノズルが最も前方に移動した状態でのノズルの先端の位置FP1が、スポットムーブ吐水でノズルが最も前方に移動した状態でのノズルの先端の位置FP2よりも後方になる。したがって、ワイドムーブ吐水において、ノズルが前方に移動しても、使用者の股の間から洗浄水が便座に飛び散ったり、使用者の太ももに洗浄水が吐水されたりすることを抑制でき、快適なビデ洗浄を行うことが可能になる。
【0052】
(第2の実施形態)
図6では、第2の実施形態に係る衛生洗浄装置のノズルの往復移動での移動範囲について例示している。ここで、図6(a)は、スポットムーブ吐水でのノズルの移動範囲について例示している。また、図6(b)〜(d)は、第2の実施形態に係る衛生洗浄装置のワイドムーブ吐水でのノズルの移動範囲について例示している。
【0053】
図6(b)〜(d)に例示したように、第2の実施形態に係る衛生洗浄装置において、ワイドムーブ吐水でのノズルの移動範囲では、第1の基準位置P1よりも後方だけの移動になっている。つまり、ノズルの移動範囲において、第1の基準位置P1よりも前方へ移動する距離がゼロになっている。
【0054】
図6(b)に例示したワイドムーブ吐水では、第1の基準位置P1よりも後方へ移動する距離d31の範囲内でノズルを往復移動させている。距離d31は、距離d20よりも短い。
【0055】
図6(c)に例示したワイドムーブ吐水では、第1の基準位置P1よりも後方へ移動する距離d32の範囲内でノズルを往復移動させている。距離d32は、距離d20と同じである。
【0056】
図6(d)に例示したワイドムーブ吐水では、第1の基準位置P1よりも後方へ移動する距離d33の範囲内でノズルを往復移動させている。距離d33は、距離d20よりも長い。
【0057】
図6(b)〜(d)に例示したいずれのワイドムーブ吐水であっても、ノズルの往復移動においてノズルは第1の基準位置P1よりも後方だけで往復移動することになる。したがって、洗浄水の吐水範囲の一部が女性局部の位置よりも前方にはみ出してしまうことを抑制できる。このため、ワイドムーブ吐水での洗浄において、ノズルが前方に移動しても、使用者の股の間から洗浄水が便座に飛び散ったり、使用者の太ももに洗浄水が吐水されたりすることを防止できる。これにより、使用者に不快感を与えることなくビデ洗浄を利用してもらうことが可能になる。
【0058】
(第3の実施形態)
図7では、第3の実施形態に係る衛生洗浄装置のノズルの往復移動での移動範囲について例示している。ここで、図7(a)は、スポットムーブ吐水でのノズルの移動範囲について例示している。また、図7(b)〜(e)は、第3の実施形態に係る衛生洗浄装置のワイドムーブ吐水でのノズルの移動範囲について例示している。
【0059】
図7(b)〜(e)に例示したように、第3の実施形態に係る衛生洗浄装置では、第1の基準位置P1’を第2の基準位置P2よりも後方に設けている。このように、第1の基準位置P1’を第2の基準位置P2よりも後方に設けることで、ノズルを静止して行うスポット吐水及びワイド吐水において、スポット吐水よりもワイド吐水を後方で行うことができ、ワイド吐水の際の洗浄水の飛び散りを防止できることになる。
【0060】
また、図7(b)に例示したワイドムーブ吐水では、第1の基準位置P1’を第2の基準位置P2よりも後方に設け、第1の基準位置P1’から前方へ移動する距離d12を、第1の基準位置P1’から後方へ移動する距離d24よりも短くしている。ノズルは、第1の基準位置P1’よりも前方へ移動する距離d12及び第1の基準位置P1’よりも後方へ移動する距離d24の範囲内で往復移動する。
【0061】
また、図7(c)に例示したワイドムーブ吐水では、第1の基準位置P1’を第2の基準位置P2よりも後方に設け、第1の基準位置P1’よりも後方だけでの移動になっている。すなわち、ノズルは、第1の基準位置P1’よりも後方へ移動する距離d34の範囲内で往復移動する。
【0062】
このように、第1の基準位置P1’を第2の基準位置P2よりも後方に設け、図7(b)及び(c)に例示した範囲でノズルを往復移動させることにより、洗浄水の吐水範囲の一部が女性局部の位置よりも前方にはみ出してしまうことを抑制できる。
【0063】
また、図7(d)に例示したワイドムーブ吐水では、図7(b)に例示したワイドムーブ吐水でのノズルの移動に加え、第1の基準位置P1’から後方の移動の最端(ノズルが最も後方に移動した際のノズルの先端の位置)を、スポットムーブ吐水での後方の移動の最端と合わせている。ノズルは、第1の基準位置P1’よりも前方へ移動する距離d12及び第1の基準位置P1’よりも後方へ移動する距離d25の範囲内で往復移動する。
【0064】
また、図7(e)に例示したワイドムーブ吐水では、図7(c)に例示したワイドムーブ吐水でのノズルの移動に加え、第1の基準位置P1’から後方の移動の最端(ノズルが最も後方に移動した際のノズルの先端の位置)を、スポットムーブ吐水での後方の移動の最端EPと合わせている。すなわち、ノズルは、第1の基準位置P1’よりも後方へ移動する距離d35の範囲内で往復移動する。
【0065】
このように、図7(d)及び(e)に例示したノズルの移動によれば、ワイドムーブ吐水でのノズルの往復移動の範囲が、スポットムーブ吐水でのノズルの往復移動の範囲内に含まれることになる。よって、ワイドムーブ吐水での洗浄において、ノズルが前方に移動しても、洗浄水の前方への飛び散りを抑制できるとともに、後方への飛び散りも抑制するできるようになる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態によれば、ワイドムーブ吐水において、洗浄水の吐水範囲の一部が女性局部の位置よりも前方にはみ出してしまうことを抑制することができる。これにより、ワイドムーブ吐水において、使用者の股の間から洗浄水が便座に飛び散ったり、使用者の太ももに洗浄水が付着したりすることを抑制できる。このため、使用者は快適にビデ洗浄を行うことができるようになる。
【0067】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。
また、上記実施形態では、衛生洗浄装置100に便蓋300が設けられた例を説明したが、便蓋300が設けられていないものであっても適用可能である。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0068】
10…流路、100…衛生洗浄装置、200…便座、300…便蓋、400…ケーシング、401…制御部、404…着座検知センサ、410…ノズル、411…吐水孔、440…電磁弁、450…熱交換器、470…圧力変調装置、480…流量調整弁、490…ノズルモータ、500…洗浄水、600…使用者、800…便器、801…ボウル、A1…第1の範囲、A2…第2の範囲、P1…第1の基準位置、P2…第2の基準位置、S1…第1の着水範囲、S2…第2の着水範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を吐水して女性局部に着水させるノズルを備え、
前記ノズルは、第1の範囲に洗浄水を吐水する第1の吐水と、前記第1の範囲よりも狭い第2の範囲に洗浄水を吐水する第2の吐水と、を切換可能であり、
前記ノズルは、第1の基準位置に静止した状態で前記第1の吐水を実行する第1の静止吐水と、前後に往復移動しながら前記第1の吐水を実行する第1の移動吐水と、を実行可能であり、
前記第1の移動吐水において、前記第1の基準位置から前記ノズルが前方へ移動する第1の距離は、前記第1の基準位置から前記ノズルが後方へ移動する第2の距離よりも短いことを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記ノズルは、第2の基準位置に静止した状態で前記第2の吐水を実行する第2の静止吐水と、前後に往復移動しながら前記第2の吐水を実行する第2の移動吐水と、をさらに実行可能であり、
前記第2の移動吐水において、前記第2の基準位置から前記ノズルが前方へ移動する第3の距離と、前記第2の基準位置から前記ノズルが後方へ移動する第4の距離と、は、略同一であることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記第1の移動吐水における前記往復移動の距離は、前記第2の移動吐水における前記往復移動の距離よりも小さいことを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記第2の距離は、前記第4の距離以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記第1の基準位置は、前記第2の基準位置よりも後方であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記第1の距離は、ゼロであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−107478(P2012−107478A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258835(P2010−258835)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】