説明

衛生洗浄装置

【課題】電解槽においてポールチェンジを行った際に剥離するスケールによる吐水口の閉塞を確実に防止することができる衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】衛生洗浄装置は、人体局部に向けて洗浄水を吐出する吐水口を備える洗浄ノズル14と、給水源12から供給された水を洗浄ノズル14の吐水口まで導く流路16,18と、流路16,18に設けられ、少なくとも一対の電極を有し、これらの電極の間に電圧を印加して、水を電解処理することにより殺菌水を生成するとともに、これらの電極の間に印加する電圧極性を反転する電解槽1と、電解槽1が電圧極性を反転してから所定時間内に生成した殺菌水を、流路16の電解槽1と洗浄ノズル14の吐水口の間から水洗大便器に排出する排出機構32と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に関し、水洗大便器に取り付けられる人体局部を洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、給水を加熱タンク内で加熱し、加熱した温水を浄水用のノズルから人体局部に向けて吐出する衛生洗浄装置が広く用いられている。このような衛生洗浄装置では、ノズルヘッド部分が人体局部に接近した状態で温水を吐出するため、汚水や汚物を浴びやすい。このため、ノズル自体を洗浄する機能を備えた衛生洗浄装置が用いられ始めている。
【0003】
ノズルを洗浄する機能を備えた装置の一つとして、例えば特許文献1(特に、段落0036−0043参照)には、電解槽内で水道水を電気分解し、これにより発生した次亜塩素酸を含む殺菌水によりノズルを殺菌洗浄する装置が開示されている。
【0004】
また、このような殺菌水を生成する際には、電解槽の電極にナトリウム、カルシウム、カリウム、マグネシウム等を主成分とするスケールが電極の陰極側に付着する。
そして、電解槽の電極に付着するスケールの量が多くなると、電解性能が低下し、殺菌水生成能力が低下してしまう恐れがある。
そこで、安定した殺菌水生成能力を維持するため、例えば特許文献2に記載されているように、電極の陰極側に付着したスケールを除去するため、電極間に印加する電圧の極性を反転(すなわち、ポールチェンジ)することにより、電極表面に付着したスケールを除去することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3487447号明細書
【特許文献2】特開平7−124560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載されている「ポールチェンジによるスケール除去方法」を、衛生洗浄装置に適用し、ポールチェンジを頻繁に行うことにより、殺菌水生成能力の低下のない衛生洗浄装置を提供することができる。
しかしながら、頻繁にポールチェンジを行うことによって、殺菌水生成能力の低下は抑制できるが、ポールチェンジの頻度と電極寿命には相関関係があり、ポールチェンジの頻度が高くなると、電極寿命が著しく低下するといった新たな問題が生じる。
ここで、「電極の長寿命化」と「殺菌水生成能力確保」の両立が図れるように、ポールチェンジの頻度をできるだけ低くすることが考えられるが、ポールチェンジの頻度を低くすると、「ポールチェンジ直後」に大量のスケールが電極から剥離し、「ポールチェンジ直後」に生成された殺菌水が原因でノズルの吐水口が閉塞してしまう、という新たな課題が生じることを見出した。
衛生洗浄装置において、ノズルの吐水口から吐水される洗浄水は、人体の局部を洗浄するために使用されるものであり、吐水に十分な刺激と洗浄力を持たせる必要がある。吐水に十分な刺激と洗浄力を持たせるためには、所望の流速で洗浄水を吐水する必要があり、吐水口の閉塞を抑制するためにノズルの吐水口を単純に大きくすることができず、衛生洗浄装置においてこの課題は極めて大きな問題となる。
【0007】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、電解槽においてポールチェンジを行った際に剥離するスケールによる吐水口の閉塞を確実に防止することができる衛生洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目標を達成するために、本発明は、水洗大便器に取り付けられ、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置であって、人体局部に向けて洗浄水を吐出する吐水口を備えた洗浄ノズルと、給水源から供給された水を洗浄ノズルの吐水口まで導く流路と、この流路に設けられ、少なくとも一対の電極を有し、これらの電極の間に電圧を印加して、水を電解処理することにより、殺菌水を生成するとともに、これらの電極の間に印加する電圧極性を反転する電解槽と、この電解槽が電圧極性を反転してから所定時間内に生成した殺菌水を、流路の電解槽と吐水口の間から水洗大便器に排出する排出機構と、を有することを特徴とする。
【0009】
このように構成された本発明によれば、スケールを大量に含んだポールチェンジ直後の電解水を、吐水口よりも上流側で排出することができるため、吐出口の閉塞を防止できる。これにより、より頻繁な電圧極性の反転(ポールチェンジ)を行うことなく、長期的に安定して殺菌水を供給することができる。また、殺菌水が便器に排出されるため、便器を洗浄するための洗浄水を節水することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、排出機構は、流路の電解槽と吐水口の間から分岐した排水流路を備え、排出流路は、この排水流路から殺菌水を排出している状態において、流路の排水流路が分岐した箇所から吐出口までの吐水流路よりも、排水流路のほうが、圧力損失が小さくなるようになっている。
このように構成された本発明によれば、排出機構を開放した際に、吐水流路へ流れる殺菌水を減らすことができ、より確実に吐水口がスケールにより閉塞されるのを抑止できる。
【0011】
本発明において、好ましくは、排出機構の排水流路は、吐水流路よりも最小流路断面積が大きくなるようになっている。
このように構成された本発明によれば、簡単な構成で吐水流路よりも、排水流路のほうが圧力損失が小さくなるように構成できる。また、ポールチェンジの間隔が長くなるなどの要因により大きなスケールが殺菌水に含まれる場合であっても、排水流路をスケールが閉塞することを抑止できる。
【0012】
本発明において、好ましくは、さらに、吐水流路に設けられた流路遮断機構を有し、
流路遮断機構は、排出機構から殺菌水を排出する際に吐水流路を遮断するようになっている。
このように構成された本発明によれば、吐水流路へスケールが流れ込むのをより確実に防止できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、さらに、吐水流路に設けられた加圧ポンプを、有する。
このような構成によれば、ポンプの圧力損失により、吐水流路よりも、排水流路のほうが圧力損失が小さくなるように構成できる。
【0014】
本発明において、好ましくは、排出機構の排水流路は下方に向かって延びている。
このように構成された本発明によれば、重力により、ポールチェンジ直後の殺菌水が確実に排水流路に流れ、吐水流路にスケールを含んだ殺菌水が流れ込むのをより確実に防止できる。
【0015】
また、本発明において、好ましくは、吐水流路は、排水流路から殺菌水を排出している状態において、吐水流路内の水が逆流し、排水流路との分岐箇所まで逆流するようになっており、吐水流路は、上方に向かって延びている。
このように構成された本発明によれば、吐水流路にスケールが流れた場合であっても、吐水流路内の水が逆流することにより、スケールを含む殺菌水が排水流路へ流れ込むため、スケールによる吐水流路の閉塞をより確実に防止できる。
【0016】
本発明において、好ましくは、吐水流路は、排水流路から殺菌水を排出している状態において、排水流路における動圧が吐水流路における動圧よりも大きくなるように構成されている。このように構成された本発明によれば、スケールを含む殺菌水が吐水流路に比べて排水流路に流れ込みやすくなるため、吐水流路の閉塞をより確実に防止できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の衛生洗浄装置によれば、電解槽においてポールチェンジを行った際に剥離するスケールによる吐水口の閉塞を確実に防止しつつ、電極の長寿命化と殺菌水生成能力確保の両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態による衛生洗浄装置に用いられる電解槽を説明するための模式図である。
【図2】図1に示す電解槽における、ポールチェンジ後の排水時間と電極に付着していたカルシウム(スケール)の付着量との関係を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態による衛生洗浄装置が設置された水洗大便器を示す斜視図である。
【図4】図3に示す衛生洗浄装置の殺菌洗浄時の流路系統図である。
【図5】図3に示す衛生洗浄装置における殺菌洗浄中の各要素の動作を説明するための図であり、(A)は、電解槽の電極板の間に印加される電圧を示すグラフ、(B)は、制御部により計測された電解槽の累積電解時間を示すグラフ、(C)は、吐水流路を流れる水量を示すグラフ、(D)は、排水流路を流れる水量を示すグラフである。
【図6】本発明の第2実施形態による衛生洗浄装置の殺菌洗浄時の流路系統図である。
【図7】本発明の第3実施形態による衛生洗浄装置の殺菌洗浄時の流路系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による衛生洗浄装置を説明する。
まず、本実施形態の衛生洗浄装置に関し、本発明の発明者らが発見した課題について説明する。
図1は、本発明の実施形態による衛生洗浄装置に用いられる電解槽を説明するための模式図である。同図に示すように、電解槽1は、一対の電極板2,4を有し、これら電極板2,4の間に電圧を印加することにより、水を電気分解する。なお、図1(A)には、電極板2が陰極となり、電極板4が陽極となるように電圧が印加された状態が示されている。
【0020】
水道水には塩素イオンが含まれているため、水道水を電気分解することにより、陽極側の電極4では塩素が発生する。このようにして発生した塩素は水に溶解し、さらに、水に溶解した塩素イオンが電気分解されることにより、次亜塩素酸が発生する。このようにして、電解槽1は次亜塩素酸を含む殺菌水を生成することができる。
【0021】
また、この際、陰極側の電極板2では水道水中に含まれるカルシウムイオンが炭酸カルシウム(スケール)として電極板2に付着する。このように電極板2に炭酸カルシウムが付着してしまうと、殺菌水の生成能力が低下してしまう。
【0022】
そこで、本実施形態の衛生洗浄装置の電解槽1は、例えば、殺菌水の累積生成時間が所定の時間に達するなどの所定のタイミングで、図1(A)に示す状態から、図1(B)に示す状態へと電極板2,4の間に印加する電圧を反転させる、いわゆるポールチェンジを行う。図1(B)に示す状態へとポールチェンジを行うことにより、陰極として機能していた電極板2が陽極となり、陽極として機能していた電極板4が陰極となる。このため、炭酸カルシウムが付着していた電極板2において酸が生成され、この酸により炭酸カルシウムが溶解するため、電極板2に付着していた炭酸カルシウムを剥離させることができる。
【0023】
次に、本願発明者らは、このような電解槽1における、ポールチェンジ後の排水時間と電極へのカルシウム(スケール)の付着量との関係を検討したので、以下説明する。本検討では、電極間に印加する電圧が10Vと、5Vとである状態における、ポールチェンジ後の排水時間とカルシウム(スケール)の付着量との関係を調べた。
【0024】
図2は、図1に示す電解槽における、ポールチェンジ後の経過時間と経過時間後に電極から剥離するカルシウム量との関係を示すグラフである。同図に示すように、ポールチェンジ後、所定時間経過すると電極から剥離するカルシウム量は大きく減少している。このことから、電極に付着したスケールは、ポールチェンジ直後に大部分が剥離してしまうことがわかる。
【0025】
また、図2に示すように、電極に印加する電圧が10Vの場合には、電極に印加する電圧が5Vの場合に比べて、ポールチェンジ後に電極に付着するスケール量が約半分程度まで減少している。このことから、電極に印加する電圧が大きいほど、ポールチェンジ後、短時間の間に、より大量のスケールが剥離することがわかる。
【0026】
上記の結果を踏まえ、以下に説明する本発明の一実施形態による衛生洗浄装置では、電解槽を作動させて殺菌を行う際、ポールチェンジ後、所定の時間に生成された殺菌水をノズルの上流において排出することとしている。以下、本実施形態の衛生洗浄装置について詳細に説明する。
【0027】
図3は、本発明の一実施形態による衛生洗浄装置が設置された水洗大便器を示す斜視図である。同図に示すように、衛生洗浄装置100は、水洗式の洋式大便器110の便器120上に設置されて用いられる。そして、コントローラにより操作することにより、洗浄ノズル14が便器120内に進出し、洗浄水を洗浄ノズル14の先端から人体局所(おしりなど)に向けて噴出することにより、人体局所を洗浄することができる。
【0028】
図4は、本発明の一実施形態による衛生洗浄装置の殺菌洗浄時の流路系統図である。なお、同図には、殺菌洗浄に関連しない要素については図示を省略しているが、本実施形態の衛生洗浄装置は、周知の人体局部を洗浄するために必要な構成を備えている。
図4に示すように、本実施形態による殺菌洗浄時における衛生洗浄装置の流路系統10は、例えば水道管などの給水源12と洗浄ノズル14とが流路16、18により接続されており、この流路16に上記説明した電解槽1が設けられている。流路16の電解槽1の下流には分岐部20が設けられており、分岐部20から洗浄ノズル14へと延びる吐水流路18と、分岐部20から下方に向かって延びる排水流路22とに分岐している。
【0029】
吐水流路18は、洗浄ノズル14の吐水口における断面積(すなわち、吐水流路18の最小流路断面積)が、排水流路22の最小流路断面積に比べて小さくなるように構成されている。これにより、吐水流路18に比べて、排水流路22の圧力損失が小さくなっている。
【0030】
吐水流路18の分岐部20の下流には、制御部24に通信可能に接続されたポンプ26が設けられている。ポンプ26は、制御部24の指令に基づき吐水流路18を流れる水を加圧する。
【0031】
吐水流路18のポンプ26の下流側には、制御部24に通信可能に接続された洗浄バルブ28が設けられている。洗浄バルブ28は、制御部24の指令に基づいて開閉し、吐水流路18への水の流入を制御する。
【0032】
吐水流路18の洗浄バルブ28の下流側には、洗浄ノズル14が接続されており、吐水流路18を通って供給された殺菌水はこの洗浄ノズル14の吐出口から吐出される。これにより、洗浄ノズル14の胴体を殺菌洗浄することができる。
【0033】
排水流路22の分岐部20の下流側には、制御部24と通信可能に接続された排出バルブ30が設けられている。排出バルブ30は、制御部24の指令に基づいて開閉し、排水流路22への水の流入を制御する。これら排水流路22及び排出バルブ30により排出機構32が構成される。なお、本実施形態では、流路16を分岐して排水流路22を設けているが、これに限らずに、流路16の下面に開口を設けるのみでもよい。また、本実施形態では、排水流路22に排出バルブ30を設けて、これにより排水流路22を流れる水流を制御しているが、これに限らず、ポンプ等を用いて、排水流路22を流れる水流を制御することもできる。
【0034】
制御部24は、電解槽1を駆動させると、電解槽1の電解処理を行った時間の累計である累計電解時間Tを計測する。また、制御部24には、予め、ポールチェンジを実施するタイミングを決定するための所定の累積時間設定値TPCが設定されており、累計電解時間Tがこの累積時間設定値TPCに到達すると、電解槽1のポールチェンジを実施する。したがって、累積時間設定値TPCを短くすることで、電極板へのスケールの付着量を減らすことができる。この累積時間設定値TPCは、例えば、電極板の間に印加する電圧が5Vの場合に60秒程度にするとよい。
【0035】
また、制御部24には、予め、ポールチェンジ直後に、洗浄バルブ28を閉鎖するとともに排出バルブ30を開放する所定の排出時間設定値TOPが設定されている。この排水バルブ30を開放する排出時間設定値TOPは、図1を参照して説明したように、電極板2,4の間に印加する電圧が大きい場合には、ポールチェンジ直後から短時間でスケールが剥離するため、短くするとよく、電極板2,4の間に印加する電圧が小さい場合には、長くするとよい。
【0036】
以下、衛生洗浄装置の殺菌洗浄中の動作について説明する。
図5は、図3に示す衛生洗浄装置における殺菌洗浄中の各要素の動作を説明するための図であり、(A)は、電解槽1の電極板2,4の間に印加される電圧を示すグラフ、(B)は、制御部24により計測された電解槽1の累積電解時間を示すグラフ、(C)は、吐水流路を流れる水量を示すグラフ、(D)は、排水流路を流れる水量を示すグラフである。なお、図5(A)〜(D)のグラフは、横軸(時間軸)が一致するように記載されている。
【0037】
制御部24により計測された累積電解時間が累積時間設定値TPCに達していない状態で、使用者による衛生洗浄装置の操作部(不図示)に殺菌洗浄を実施する旨の入力があると(すなわち、図5におけるt1、t3)、電解槽1を駆動するとともに、制御部24は、洗浄バルブ28を開放し、排出バルブ30を閉鎖する。これにより、図5(C)に示すように、電解槽1で生成された殺菌水は吐水流路18へ流れ込み、洗浄ノズル14の吐出口から排出され、洗浄ノズル14を殺菌洗浄することができる。そして、十分に洗浄ノズル14の殺菌洗浄が完了すると、t2、t4において殺菌洗浄を終了する。このt1〜t2及びt3〜t4の間、図5(B)に示すように、制御部24により測定される電解槽1の累計電解時間Tは増加する。
【0038】
次に、制御部24は、上記のように殺菌洗浄を行っている際に、累積電解時間Tが累積時間設定値TPCに到達すると(すなわち、図5(A)におけるt5)、電解槽1のポールチェンジを実施する。また、制御部24は、これとともに、ポールチェンジ直後(t=t5)から排出時間設定値TOPの間、洗浄バルブ28を閉鎖するとともに、排出バルブ30を開く。また、これとともに、制御部24は、吐水流路18に設けられた加圧ポンプ26は停止させる。
【0039】
電解槽1においてポールチェンジを実施することにより、図5(A)に示すように、電極板2,4に印加される電圧が反転する。これにより、それまで陰極であった側の電極板2に付着していたスケールが剥離することとなる。これに対して、洗浄バルブ28が閉鎖されるとともに、排出バルブ30が開放されているため、殺菌電解水は排水流路22を通り便器のボウルへと排出される。これにより、スケールを含んだ殺菌水は便器のボウルへと排出され、洗浄ノズル14には流れ込まなくなるため、洗浄ノズル14の吐水口がスケールにより閉塞されることを防止できる。
【0040】
そして、ポールチェンジから排出時間設定値TOP経過すると(すなわち、t=t6)、制御部24は、排出バルブ30を閉鎖するとともに、洗浄バルブ28を開放し、さらに、ポンプ26を作動させる。これにより、再び、洗浄ノズル14に殺菌水が供給され、洗浄ノズル14を殺菌洗浄することができる。
【0041】
このように、本実施形態によれば、ポールチェンジ直後から所定時間、流路16の洗浄ノズル14の上流において、殺菌水を便器へ排出することとしたため、ポールチェンジ直後に電極から剥離した大量のスケールを含む殺菌水が洗浄ノズル14へ流れるのを抑え、洗浄ノズル14の吐水口にスケールが詰まることを抑止できる。
【0042】
これにより、電解槽1においてより頻繁にポールチェンジを行うことが可能となり、長期的に安定して殺菌水を供給することができる。また、洗浄作用を有する殺菌水1が便器に排出されるため、便器を洗浄するための洗浄水を節水するとともに、便器自体の殺菌を行うことができる。
【0043】
また、本実施形態によれば、吐水流路に洗浄バルブ28を設け、ポールチェンジ直後から排出時間設定値TOPの間、この洗浄バルブ28を閉鎖することとしたため、ポールチェンジ直後に電解槽1から供給される電解水が吐水流路18に流れ込むことを確実に防止できる。
【0044】
また、本実施形態によれば、吐水流路18が上方に向かって延びるように構成されているため、吐水流路18に比べて排水流路22の方が圧力損失が小さくなるとともに、吐水流路内18に存在する水が分岐部20に向かって逆流することとなり、吐水流路18に流れ込んだスケールを排出することができる。
【0045】
さらに、本実施形態によれば、分岐部20から下方に延びるように排水流路22を設けることにより、重力により排水流路22へスケールを含む電解水が流れるのを促進することができ、吐水流路18へスケールを含む殺菌水が流れ込むのを抑止できる。
【0046】
なお、上記の実施形態では、ポールチェンジ直後から排出時間設定値TOPの間、洗浄バルブ28により洗浄ノズル14に通じる吐水流路18を閉鎖することとしたが、必ずしも、吐水流路18を閉鎖する必要はない。上記のように、本実施形態の衛生洗浄装置では、吐水流路18に比べて排水流路22の方が最小流路断面が大きくなるように構成されており、吐水流路18に比べて排水流路22の方が圧力損失が小さくなっている。このため、吐水流路18を閉鎖しなくても、排出バルブ30を開放すれば、殺菌水は、吐水流路18排水流路22に流れ込む。
【0047】
さらに、本実施形態の衛生洗浄装置では、吐水流路18に加圧ポンプ26が設けられているため、この加圧ポンプ26をポールチェンジ直後から排出時間設定値TOPの間、停止させることにより、吐水流路18に比べて排水流路22の方が圧力損失がより小さくなる。このため、排出バルブ30を開放させると、吐水流路18に比べて排水流路22に大量の殺菌水が流れ込むこととなり、吐水流路18に流れ込むスケールを含んだ殺菌水を減らすことができる。
【0048】
また、上記の実施形態では、制御部24は、電解槽1のポールチェンジと同時に洗浄バルブ28を閉鎖し、排出バルブ30を開放することとしたが、これに限らず、ポールチェンジから所定時間内に電解槽1で生成された殺菌水を排出機構32により排出できればよい。すなわち、排出機構32が電解槽1から離れて設けられている場合には、ポールチェンジ後、所定時間経過してから洗浄バルブ28を閉鎖し、排出バルブ30を開放してもよい。
【0049】
また、上記の実施形態では、吐水流路18を上方に向かって延びるように構成することにより、吐水流路内18に存在する水を分岐部20に向かって逆流させていたが、本発明はこのような構成に限られない。図6は、本発明による第2実施形態の衛生洗浄装置の殺菌洗浄時の流路系統図である。なお、第1実施形態と同様に、図6には、殺菌洗浄に関連しない要素については図示を省略しているが、本実施形態の衛生洗浄装置は、周知の人体局部を洗浄するために必要な構成を備えている。また、第1実施形態と同様の構成については同じ番号を付して説明を省略する。
【0050】
図6に示すように、本実施形態の衛生洗浄装置における流路系統40では、吐水流路42が水平方向に延びるように設けられており、吐水流路42のポンプ26の上流に空気吸入バルブ44が設けられている。
空気吸入バルブ44は、制御部24と通信可能に接続されており、制御部24からの指令信号に応じて開閉可能であり、空気吸入バルブ44を開放することにより吐水流路42内に外部から空気を送り込むことができる。
【0051】
このような衛生洗浄装置を用いる場合には、電解槽1においてポールチェンジを行った直後から所定時間、排出バルブ30を開放し、洗浄バルブ28を閉鎖するとともに、空気吸入バルブ44を開放する。これにより、吐水流路18内に外部から空気が流れ込み、吐水流路18内に残っていた殺菌洗浄水が逆流し、排水流路22へと流れ込む。このような実施形態によっても、吐水流路18を上方に向けて延びるように構成した場合と同様の効果が得られる。
【0052】
また、上記の第1実施形態では、吐水流路18の最小流路断面積が、排水流路22の最小流路断面積に比べて小さくなるように構成することにより、吐水流路18に比べて、排水流路22の圧力損失が小さくなるため、殺菌水が排水流路22へ流れ込みやすくなっていたが、これに限らず、吐水流路における動圧よりも排水流路における動圧が大きくなるように構成しても、殺菌水が排水流路へ流れ込みやすくなる。
【0053】
図7は、本発明の第3実施形態による衛生洗浄装置の殺菌洗浄時の流路系統図である。なお、第1実施形態と同様に、図7には、殺菌洗浄に関連しない要素については図示を省略しているが、本実施形態の衛生洗浄装置は、周知の人体局部を洗浄するために必要な構成を備えている。また、第1実施形態と同様の構成については同じ番号を付して説明を省略する。
【0054】
図7に示すように、本実施形態の衛生洗浄装置の流路系統50では、排水流路52の断面積と吐水流路54の断面積とが略等しくなるように構成されている。また、排水流路52と、電解槽1から延びる流路16とが一直線に並ぶように配置されており、吐水流路54は流路16に対して直角に分岐している。なお、本実施形態では、吐水流路54は下方に向かって直角に分岐しているが、水平方向やその他の方向に直角に分岐してもよく、さらに、その角度は直角に限られない。
【0055】
本実施形態の構成によれば、排出バルブ30を開放した状態において、流路16を流れる殺菌水は流速を落とすことなく排水流路52に流れ込むのに対して、吐水流路54へは大きく流速を落として流れ込む。したがって、排水流路52における動圧が吐水流路54の動圧に比べて大きくなる。このように排水流路52における動圧が吐水流路54の動圧に比べて大きく構成することによっても、殺菌水が吐水流路54に比べて排水流路52へ流れ込みやすくなり、第1実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0056】
1 電解槽
2,4 電極
10 流路系統
14 洗浄ノズル
16 流路
18,42,52 吐水流路
20 分岐部
22、52 排水流路
26 ポンプ
28 洗浄バルブ
30 排出バルブ
32 排出機構
44 空気吸入バルブ
100 衛生洗浄装置
110 洋式便器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗大便器に取り付けられ、人体局部を洗浄する衛生洗浄装置であって、
人体局部に向けて洗浄水を吐出する吐水口を備えた洗浄ノズルと、
給水源から供給された水を前記洗浄ノズルの吐水口まで導く流路と、
この流路に設けられ、少なくとも一対の電極を有し、これらの電極の間に電圧を印加して、水を電解処理することにより、殺菌水を生成するとともに、これらの電極の間に印加する電圧極性を反転する電解槽と、
この電解槽が電圧極性を反転してから所定時間内に生成した殺菌水を、前記流路の電解槽と吐水口の間から前記水洗大便器に排出する排出機構と、
を有することを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記排出機構は、前記流路の電解槽と吐水口の間から分岐した排水流路を備え、
前記排出流路は、この排水流路から殺菌水を排出している状態において、前記流路の前記排水流路が分岐した箇所から吐出口までの吐水流路よりも、前記排水流路のほうが、圧力損失が小さくなるようになっている請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記排出機構の前記排水流路は、前記吐水流路よりも最小流路断面積が大きくなるようになっている請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
さらに、前記吐水流路に設けられた流路遮断機構を、有し、
前記流路遮断機構は、前記排出機構から殺菌水を排出する際に前記吐水流路を遮断するようになっている請求項3記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
さらに、前記吐水流路に設けられた加圧ポンプを、有する請求項3記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記排出機構の前記排水流路は下方に向かって延びている請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記吐水流路は、前記排水流路から殺菌水を排出している状態において、前記吐水流路内の水が逆流し、前記排水流路との分岐箇所まで逆流するようになっている請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項8】
前記吐水流路は、上方に向かって延びている請求項7記載の衛生洗浄装置。
【請求項9】
前記吐水流路は、前記排水流路から殺菌水を排出している状態において、前記排水流路における動圧が前記吐水流路における動圧よりも大きくなるように構成されている請求項2記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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