説明

衛生洗浄装置

【課題】洗浄水が着水する領域を前後方向に往復移動させ洗浄領域を拡大させるビデ洗浄の際に、汚れが飛び散ることを防止することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を噴射して女性局部に着水させるノズルを備え、前記ノズルは、前記吐水孔から円錐状に拡散するように前記洗浄水を噴射して前記女性局部の所定の領域に着水させる吐水手段と、前記所定の領域を前後方向に往復移動させることにより前記所定の領域よりも拡大された領域であって前記洗浄水が着水可能な着水領域を形成する洗浄領域前後拡大手段と、を有し、前記洗浄領域前後拡大手段は、前記所定の領域が前後方向に往復移動する間常に前記洗浄水が着水する常時着水領域を前記着水領域の中央部に形成することを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の女性局部を水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人体の洗浄を行う人体洗浄装置として、ノズル往復動と擬似円錐状吐水形態の洗浄水吐水との同時実行により、擬似円錐状吐水形態での洗浄水吐水がノズル移動に伴って前後に移動する人体洗浄装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された人体洗浄装置によれば、ノズル前後往復範囲に亘って擬似円錐状吐水形態の洗浄水吐水が連なったようにして、例えば女性局部などのムーブ洗浄が行われる。この結果、極めて広範囲に亘り女性局部などが洗浄されているという新たな洗浄感を創出することができ、使用者にこの新たな洗浄感を与えることができる。
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された人体洗浄装置では、疑似円錐状吐水形態の洗浄水吐水が着水する範囲は、比較的狭い。そのため、ムーブ洗浄の間常に洗浄水が着水する領域は、形成されない。そのため、ムーブ洗浄の際に、ノズル前後往復範囲(ムーブ範囲)の中心付近においては、吐水された洗浄水は、女性局部の中心部(膣口)に着水する。一方、ムーブ範囲の前後端部付近においては、吐水された洗浄水は、女性局部の中心部から外れて着水する。つまり、女性局部の中心部には着水しない。そのため、経血汚れが固着していない膣口の上を洗浄水が行き来する場合がある。この場合には、洗浄水が膣口を通過する際に、膣口付近において固着していない経血汚れが、洗浄水の通過に伴って飛び散ることがあり得る。このようにして飛び散った経血汚れは、使用者の身体や、衛生洗浄装置、便器のボウル面などに付着することとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−282545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、洗浄水が着水する領域を前後方向に往復移動させ洗浄領域を拡大させるビデ洗浄の際に、汚れが飛び散ることを防止することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を噴射して女性局部に着水させるノズルを備え、前記ノズルは、前記吐水孔から円錐状に拡散するように前記洗浄水を噴射して前記女性局部の所定の領域に着水させる吐水手段と、前記所定の領域を前後方向に往復移動させることにより前記所定の領域よりも拡大された領域であって前記洗浄水が着水可能な着水領域を形成する洗浄領域前後拡大手段と、を有し、前記洗浄領域前後拡大手段は、前記所定の領域が前後方向に往復移動する間常に前記洗浄水が着水する常時着水領域を前記着水領域の中央部に形成することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0007】
この衛生洗浄装置によれば、洗浄水を円錐状に拡散させつつ、吐水孔から噴射された洗浄水の所定の領域を前後方向に往復移動させ拡大させて、従来よりも前後の広範囲に洗浄水を着水させるワイドムーブビデ洗浄を実行できる。さらに、着水領域の中央部には、所定の領域が前後方向に往復移動する間常に洗浄水が着水する常時着水領域が形成される。そのため、ワイドムーブビデ洗浄の際に、女性局部の膣口付近において固着していない状態の経血汚れが飛び散ることを防止することができる。また、ワイドムーブビデ洗浄の間、膣口付近には洗浄水が常に着水する常時着水領域が形成されているため、なぞられたような感覚を与えるおそれは少ない。これにより、快適なビデ洗浄を行うことができる。
【0008】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端および後端に前記所定の領域が到達すると、前記往復移動を所定時間静止させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0009】
この衛生洗浄装置によれば、洗浄水の所定の領域を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域の前端部および後端部に洗浄水を所定時間着水させることができる。そのため、着水領域の前端部および後端部に、より多い流量の洗浄水を着水させることができる。これにより、常時着水領域の前後方向に位置する前端部および後端部も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【0010】
また、第3の発明は、第1の発明において、前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端領域である着水前端領域および前記着水領域の後端領域である着水後端領域を前記所定の領域が移動するときの前記所定の領域の移動速度を、前記着水領域の中央部を前記所定の領域が移動するときの前記所定の領域の移動速度よりも遅くすることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0011】
この衛生洗浄装置によれば、洗浄水の所定の領域を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域の着水前端領域および着水後端領域に、所定の領域の移動速度を変化させない場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。あるいは、着水領域の着水前端領域および着水後端領域に、所定の領域の移動速度を変化させない場合よりも多い流量の洗浄水を着水させることができる。これにより、常時着水領域の前後方向に位置する着水前端領域および着水後端領域も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【0012】
また、第4の発明は、第3の発明において、前記洗浄領域前後拡大手段は、前記吐水手段を前記前後方向に移動させるノズル駆動部と、前記ノズル駆動部を制御することにより前記吐水手段を前記前後方向に往復移動させる制御部と、を有し、前記制御部は、前記着水前端領域および前記着水後端領域を前記所定の領域が移動するときの前記吐水手段の移動速度を、前記着水領域の中央部を前記所定の領域が移動するときの前記吐水手段の移動速度よりも遅くさせる制御を実行することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0013】
この衛生洗浄装置によれば、吐水手段の移動速度を変化させるという比較的簡単な制御により、着水領域の着水前端領域および着水後端領域に、吐水手段の移動速度を変化させない場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。
【0014】
また、第5の発明は、第1の発明において、前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端領域である着水前端領域および前記着水領域の後端領域である着水後端領域に前記所定の領域が移動するたびに、前記着水前端領域および着水後端領域の範囲において前記所定の領域を前後方向に複数回往復移動させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0015】
この衛生洗浄装置によれば、着水前端領域および着水後端領域に所定の領域が移動するたびに、着水前端領域および着水後端領域の範囲において所定の領域を前後方向に複数回往復移動させる。そのため、着水前端領域および着水後端領域の範囲において、所定の領域を複数回往復移動させない場合よりも多い流量の洗浄水を着水させることができる。あるいは、洗浄水の所定の領域を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水前端領域および着水後端領域の範囲において、吐水手段を複数回往復移動させない場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。これにより、常時着水領域の前後方向に位置する着水前端領域および着水後端領域も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【0016】
また、第6の発明は、第1の発明において、前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端および後端に前記所定の領域が到達すると、前記所定の領域が前記着水領域の中央部を移動するときよりも多い流量の洗浄水を前記吐水孔から噴射させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0017】
この衛生洗浄装置によれば、着水領域の前端部および後端部に、噴射される洗浄水の流量を変化させない場合よりも多い流量の洗浄水を着水させることができる。あるいは、洗浄水の所定の領域を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域の前端部および後端部に、噴射される洗浄水の流量を変化させない場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。これにより、常時着水領域の前後方向に位置する前端部および後端部も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【0018】
また、第7の発明は、第1の発明において、前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端および後端に前記所定の領域が到達すると、前記所定の領域が前記着水領域の中央部を移動するときよりも速い流速の洗浄水を前記吐水孔から噴射させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0019】
この衛生洗浄装置によれば、着水領域の前端部および後端部に、噴射される洗浄水の流速を変化させない場合よりも速い流量の洗浄水を着水させることができる。あるいは、洗浄水の所定の領域を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域の前端部および後端部に、噴射される洗浄水の流速を変化させない場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。これにより、常時着水領域の前後方向に位置する前端部および後端部も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、洗浄水が着水する領域を前後方向に往復移動させ洗浄領域を拡大させるビデ洗浄の際に、汚れが飛び散ることを防止することができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【図2】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
【図3】本実施形態の洗浄水が着水する領域を表す平面模式図である。
【図4】ワイド吐水を説明するための断面模式図である。
【図5】ノズルの吐水孔の軌跡の具体例を表すグラフ図である。
【図6】所定の領域および着水流量の表記方法を説明する概念模式図である。
【図7】比較例の所定の領域と着水流量との関係を表す概念模式図である。
【図8】本具体例の所定の領域と着水流量との関係を表す概念模式図である。
【図9】ノズルの吐水孔の軌跡の他の具体例を表すグラフ図である。
【図10】本具体例の所定の領域と着水流量との関係を表す概念模式図である。
【図11】ノズルの吐水孔の軌跡のさらに他の具体例を表すグラフ図である。
【図12】ノズルの吐水孔の軌跡のさらに他の具体例を表すグラフ図である。
【図13】流量の具体例を例示するグラフ図である。
【図14】流速の具体例を例示するグラフ図である。
【図15】本実施形態のノズルの具体例を例示する斜視模式図である。
【図16】本具体例のノズルを上方から眺めた上面模式図である。
【図17】図16に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【0023】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0024】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の女性局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えば図示しないリモコンなどの操作部を操作すると、ノズル410を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
【0025】
ノズル410の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水孔411が設けられている。そして、ノズル410は、その先端部に設けられた吐水孔411から水を噴射して、便座200に座った使用者の女性局部を洗浄することができる。例えば、図1に表したノズル410では、ふたつの吐水孔411のうちの一方の吐水孔411は、ビデ洗浄用の吐水孔であり、他方の吐水孔411は、おしり洗浄用の吐水孔である。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0026】
図2は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
なお、図2は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、水道や貯水タンクなどの図示しない給水源から供給された水を導く流路10を有する。流路10の上流側には、電磁弁440が設けられている。電磁弁440は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部405からの指令に基づいて、熱交換器450への水の供給を制御する。
【0027】
電磁弁440の下流側には、熱交換器450が設けられている。熱交換器450は、供給された水を加熱し所定の温水にする。なお、熱交換器450は、例えば、シーズヒータなどを用いた瞬間加熱式熱交換器でもよいし、貯湯タンクを用いた貯湯加熱式熱交換器でもよい。
熱交換器450の下流側には、圧力変調装置470が設けられている。この圧力変調装置470は、流路10内の水の流れに脈動を与え、ノズル410の吐水孔411から噴射される水に脈動を与えることができる。
【0028】
圧力変調装置470の下流側には、ノズル410が設けられている。ノズル410は、水勢(流量)の調整を行う流量調整弁480と、吐水孔411から洗浄水を噴射し女性局部の所定の領域に着水させるノズル本体(吐水手段)420と、制御部(洗浄領域前後拡大手段)405からの指令に基づいてノズル410を進退させるノズル駆動部(洗浄領域前後拡大手段)460と、を有する。
【0029】
ノズル本体420は、ノズル駆動部460からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退することができる。そして、ノズル本体420は、ボウル801内に進出した状態で吐水孔411から円錐状に拡散するように洗浄水を噴射することができる。これについては、後に詳述する。
ノズル駆動部460は、ノズル本体420を前後方向(図1参照)に往復移動させることにより、ノズル本体420から噴射された洗浄水が着水する所定の領域を前後方向に往復移動させることができる。これにより、ノズル駆動部460は、ノズル本体420から噴射された洗浄水が着水可能な着水領域を前後方向に拡大させることができる(ムーブ洗浄)。
流量調整弁480は、水勢の調整を行うことができるとともに、ノズル410への給水の開閉や切替を行うことができる。
【0030】
なお、所定の領域を前後方向に往復移動させる方法は、ノズル本体420を前後方向に往復移動させることに限定されるわけではない。例えば、ノズル本体420から噴射させる洗浄水の吐水角度を変えることにより、所定の領域を前後方向に往復移動させてもよい。
【0031】
図3は、本実施形態の洗浄水が着水する領域を表す平面模式図である。
なお、図3(a)は、静止したノズル本体から噴射された洗浄水が着水する所定の領域を表す平面模式図であり、図3(b)は、前後方向に往復移動するノズル本体から噴射された洗浄水が着水可能な着水領域を表す平面模式図である。
【0032】
本実施形態のノズル本体420から噴射された洗浄水は、図3(a)に表したように、便座200に座った使用者の女性局部のより広い範囲に着水する(ワイド洗浄)。ノズル本体420から噴射された洗浄水は、女性局部への着水時には約30〜45mm程度の広がりを有している。そして、ノズル本体420から噴射された洗浄水は、女性局部に対して後方側の斜め下方から女性局部に着水する。そのため、ノズル本体420から噴射された洗浄水が着水する所定の領域540の左右方向の寸法D1は、例えば約30〜45mm(ミリメートル)程度である。また、所定の領域540の前後方向の寸法D2は、例えば約70〜130mm程度である。
本実施形態のノズル駆動部460は、図3(a)に表した矢印A4、A5のように、所定の領域540を前後方向に往復移動させることができる。これにより、ノズル駆動部460は、図3(b)に表したように、ノズル本体420から噴射された洗浄水が着水可能な着水領域550を、所定の領域540よりも前後方向に拡大させることができる。
【0033】
このとき、着水領域550の中央部には、所定の領域540が前後方向に往復移動する間常に洗浄水が着水する常時着水領域551が存在する。
ここで、本願明細書において「常に洗浄水が着水する」という範囲には、水が連続的に常時着水する場合だけではなく、例えば水粒などの着水が所定の時間的間隔を置いて続く場合が含まれるものとする。言い換えれば、本願明細書において「常に洗浄水が着水する」とは、常に着水範囲にあることを意味するものとする。
【0034】
また、常時着水領域551の前後方向に位置する部分には、ノズル本体420から噴射された洗浄水の着水する時間が、全体の吐水時間の約50〜99%程度である着水中間領域553、554が存在する。さらに、着水中間領域553、554の前後方向に位置する部分には、ノズル本体420から噴射された洗浄水の着水する時間が着水中間領域553、554における時間よりも短い着水前端領域557および着水後端領域558が存在する。つまり、図3に表した着水前端領域557は、着水領域550の前端領域における着水領域である。また、図3に表した着水後端領域558は、着水領域550の後端領域における着水領域である。
【0035】
ノズル本体420から噴射された洗浄水は、女性局部への着水時には左右方向で約30〜45mm程度、前後方向で約70〜130mm程度という従来にはない広がりを有する。そのため、ムーブ洗浄における所定の領域540の前後移動の幅も小さくすることができる。そのため、このような常時着水領域551が形成される。
【0036】
図3に表したように、着水領域550の中央部に、洗浄水が常に着水する常時着水領域551を設けることにより、ワイドムーブビデ洗浄の際に、女性局部の膣口付近において固着していない状態の経血汚れが飛び散ることを防止することができる。また、ムーブ洗浄の間常に、膣口付近には洗浄水が着水する常時着水領域551が存在するため、なぞられたような感覚を与えるおそれは少ない。これにより、快適なビデ洗浄を行うことができる。
【0037】
ここで、ワイド吐水(ワイド洗浄)について、図面を参照しつつ説明する。
図4は、ワイド吐水を説明するための断面模式図である。
【0038】
本実施形態のノズル410は、ノズル本体420と、スロート430と、を有する。ノズル本体420の内部には、図示しない水源から供給された洗浄水が通過するワイド吐水用流路427と、旋回流を生成可能な旋回室423と、旋回室423からの洗浄水をスロート430へ導く連通路425と、が設けられている。また、旋回室423の中央部には、より安定した旋回力の旋回流を生成する突設部424が設けられている。
【0039】
旋回室423は、底部においてより大きな径を有する大径部内周壁423eと、連通路425へ向かうにつれて収縮した径を有する傾斜内周壁423fと、により形成され、中空室とされている。そして、傾斜内周壁423fは、その一端において連通路425に接続されている。一方、ワイド吐水用流路427は、旋回室423に偏心して接続されている。より具体的には、ワイド吐水用流路427は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。
【0040】
スロート430の内部には、ノズル本体420の連通路425から噴射された洗浄水が通過するスロート流路431が設けられている。そして、スロート流路431の一端には、スロート流路431を通過した洗浄水をスロート430の外部へ吐水する吐水孔433が形成されている。つまり、図4に表したノズル410のように、ノズル410がスロート430を有する場合には、スロート430に設けられた吐水孔433が図1に表した吐水孔411として機能する。吐水孔433の近傍のスロート流路431には、吐水孔433へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されている。
【0041】
なお、本実施形態のノズル410では、ノズル本体420とスロート430との間に隙間が設けられているが、この隙間は必ずしも設けられていなくともよい。すなわち、ノズル本体420とスロート430とが一体的に形成され、連通路425とスロート流路431とが接続されていてもよい。
【0042】
図示しない水源から供給される洗浄水は、ワイド吐水用流路427を通過してノズル410へ供給され、旋回室423へ流入する。ここで、ワイド吐水用流路427は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、旋回室423へ流入した洗浄水は、図4に表した矢印A3のように、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回する。そして、旋回室423において旋回した洗浄水は、旋回力を維持しつつ連通路425を通過し、スロート430のスロート流路431内へ噴射される。このとき、ノズル本体420から噴射された洗浄水は、旋回力を維持しているため、中央部に中空部分を有する液膜として中空円錐状に噴射される。以下、説明の便宜上、このように中空円錐状に噴射された洗浄水を「中空円錐状吐水」と称する。
【0043】
そして、スロート流路431に流入した洗浄水は、旋回力を維持しつつスロート流路431の内壁に沿って流れ、吐水孔433へ導かれる。すなわち、スロート流路431を通過する洗浄水は、スロート流路431の内壁に付着するように流れる。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水は、スロート流路431の内壁から摩擦力による抵抗を受け、その洗浄水の流速は、吐水孔433へ向かうにつれて小さくなる。これにより、図4に表したように、吐水孔433の近傍の液膜の厚さは、ノズル本体420から噴射されたときの液膜の厚さ、あるいはスロート流路431に流入した直後の液膜の厚さよりも厚い。
【0044】
さらに、スロート流路431を流れる洗浄水の流速は、スロート流路431の内壁の近傍すなわち境界層よりもスロート流路431の中心部の方が速い。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水の内部には、図4に表した矢印A1のように、液膜を横断する方向に渦流が発生する。また、吐水孔433の近傍におけるスロート流路431には、吐水孔433へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されているため、吐水孔433から噴射される洗浄水は、テーパ部432に沿って流れる。そのため、吐水孔433から噴射される洗浄水の内部には、液膜を横断する方向に渦流がより発生しやすい。
【0045】
そうすると、吐水孔433から噴射された洗浄水は、中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として噴射されるが、吐水孔433からある程度離間した位置において粒化された水流(以下、説明の便宜上、「粒化水流」と称する)520へ遷移する。より具体的には、吐水孔433から噴射された中空円錐状吐水510の内部には、液膜を横断する方向に渦流が発生しているため、吐水孔433からある程度離間した位置において、隣接する渦流同士の間に亀裂が生ずる。そうすると、吐水孔433から噴射された中空円錐状吐水510は、図4に表したように、吐水孔433からある程度離間した位置において破砕される。このようにして、吐水孔433から噴射された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。そして、中空円錐状吐水510が拡散する領域の内側には、粒化水流520が万遍なく行き渡る。そのため、便座200に座った使用者の女性局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができ、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
【0046】
ここで、女性の生理時には、しばらくの間、経血が膣口から出続ける場合がある。この場合、ノズル本体420から噴射された洗浄水が膣口付近に着水し続ければ、経血は洗浄水と共に流れる。しかしながら、ムーブ洗浄の際に、ノズル本体420から噴射された洗浄水が膣口付近から外れて着水すると、経血が膣口付近に溜まり付着する。続いて、ノズル本体420から噴射された洗浄水が移動し、経血汚れが固着していない膣口付近に再び着水すると、洗浄水の通過に伴い経血汚れが飛び散る場合がある。
【0047】
これに対して、本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、洗浄水を円錐状に拡散させつつ、ノズル本体420から噴射された洗浄水の所定の領域540を前後方向に往復移動させ拡大させて、従来よりも前後の広範囲に洗浄水を着水させるワイドムーブ洗浄を実行できる。さらに、図3に関して前述したように、着水領域550の中央部には、所定の領域540が前後方向に往復移動する間常に洗浄水が着水する常時着水領域551が存在する。そのため、ワイドムーブビデ洗浄の際に、女性局部の膣口付近において固着していない状態の経血汚れが飛び散ることを防止することができる。また、ワイドムーブビデ洗浄の間、膣口付近には洗浄水が常に着水する常時着水領域551が存在するため、なぞられたような感覚を与えるおそれは少ない。これにより、快適なビデ洗浄を行うことができる。
【0048】
次に、本実施形態のノズル410の動作の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図5は、ノズルの吐水孔の軌跡の具体例を表すグラフ図である。
【0049】
本具体例では、着水領域550の前端および後端に洗浄水の所定の領域540が到達すると、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動が所定時間静止する。具体的には、例えば図5に表したグラフ図のように、ノズル本体420あるいは吐水孔411が移動範囲の前端および後端に到達すると、ノズル駆動部460は、制御部405からの指令に基づいてノズル本体420の前後方向への往復移動を静止させる。
【0050】
本具体例によれば、洗浄水の所定の領域540を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に洗浄水を所定時間着水させることができる。そのため、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、より多い流量の洗浄水を着水させることができる。これにより、常時着水領域551の前後方向に位置する着水前端領域557および着水後端領域558も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【0051】
本具体例について、図面を参照しつつさらに説明する。
図6は、所定の領域および着水流量の表記方法を説明する概念模式図である。
また、図7は、比較例の所定の領域と着水流量との関係を表す概念模式図である。
また、図8は、本具体例の所定の領域と着水流量との関係を表す概念模式図である。
【0052】
まず、図6を参照しつつ、所定の領域および着水流量の表記方法について説明する。
図6(a)の上段の図は、ノズル本体420から噴射された洗浄水の所定の領域540を平面的に表している。図6(a)の下段の図は、上段の図に表した所定の領域540のA−A断面における着水流量(着水水量)を表している。つまり、着水流量は、図6(a)の下段の図において高さ方向(同図の上下方向)の幅として表されている。これは、図6(b)および図6(c)に表した概念模式図においても同様である。
なお、本願明細書において「着水流量(着水水量)」とは、例えば女性局部などの所定領域において単位時間あたりに着水する水量をいうものとする。
【0053】
図6(a)に表したように、着水領域550の後端に到達した際の所定の領域541における着水流量は、着水流量571として表されている。図6(b)に表したように、着水領域550の中央部に到達した際の所定の領域543における着水流量は、着水流量573として表されている。図6(c)に表したように、着水領域550の前端に到達した際の所定の領域545における着水流量は、着水流量575として表されている。
【0054】
図6(b)の下段の図では、説明の便宜上、所定の領域541、543におけるそれぞれの着水流量571、573は、重ね合わせることなく積層させて表されている。図6(c)の下段の図では、説明の便宜上、所定の領域541、543、545におけるそれぞれの着水流量571、573、575は、重ね合わせることなく積層させて表されている。
【0055】
図7は、図6に関して前述した表記方法に基づき、比較例の所定の領域と着水流量との関係を表している。つまり、図7(a)および図7(b)の上段の図は、ノズル本体420から噴射された洗浄水の所定の領域540を平面的に表している。また、図7(a)および図7(b)の中段の図は、上段の図に表した所定の領域540のA−A断面における着水流量を表している。また、図7(a)および図7(b)の下段の図は、上段の図に表した所定の領域540のA−A断面における着水流量の積分量を表している。
なお、図7(a)は、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動が、着水領域550の前端から開始した場合を表しており、図7(b)は、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動が、着水領域550の中心から開始した場合を表している。また、図7(a)および図7(b)では、説明および表記方法の便宜上、着水流量および着水流量の積分量を段階的に表しているが、洗浄水の所定の領域540が断続的に往復移動することを表しているわけではない。
【0056】
本比較例では、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動は、静止することなく一定の移動速度を有する。これによれば、図7(a)および図7(b)の下段の図に表したように、常時着水領域551における着水流量の積分量581が最も多い。そして、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に向かうにつれて、着水流量の積分量は、徐々に減少する。本比較例では、着水前端領域557および着水後端領域558における着水流量の積分量587、588がより少ないため、使用者が、着水前端領域557および着水後端領域558を洗浄されていることを実感できない場合がある。
【0057】
これに対して、本具体例では、図5に関して前述したように、着水領域550の前端および後端に洗浄水の所定の領域540が到達すると、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動が所定時間静止する。そのため、図8に表したように、着水領域550の後端および前端に到達した際の所定の領域540におけるそれぞれの着水流量571、575は、着水領域550の中央部に到達した際の所定の領域540における着水流量573よりも多い。なお、図8における表記方法は、図6および図7に関して前述した如くである。
【0058】
そのため、図8に表した着水流量の積分量と、図7に表した着水流量の積分量と、を比較すると、本具体例の着水前端領域557および着水後端領域558における着水流量の積分量587、588は、比較例のそれよりも多い。つまり、本具体例では、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、比較例の場合よりも多い流量の洗浄水を着水させることができる。これにより、着水前端領域557および着水後端領域558を洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【0059】
図9は、ノズルの吐水孔の軌跡の他の具体例を表すグラフ図である。
図10は、本具体例の所定の領域と着水流量との関係を表す概念模式図である。
なお、図9(a)は、ノズル本体420の移動速度を所定位置において変化させる場合を例示しており、図9(b)は、ノズル本体420の移動速度を連続的に変化させる場合を例示している。
【0060】
本具体例では、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558を洗浄水の所定の領域540が移動するときの移動速度は、着水領域550の中央部を移動するときの移動速度よりも遅い。具体的には、例えば図9(a)に表したグラフ図のように、ノズル駆動部460は、制御部405からの指令に基づいてノズル本体420の往復移動の速度を制御し、吐水孔411から噴射された洗浄水が着水前端領域557および着水後端領域558に着水するときのノズル本体420の移動速度を、着水領域550の中央部を移動するときの移動速度よりも遅くする。
【0061】
図9(a)に表したグラフ図の具体例では、ノズル駆動部460は、ノズル本体420の移動速度を移動中の所定位置において変化させている。ただし、これだけに限定されず、ノズル駆動部460は、図9(b)に表したように、ノズル本体420の移動速度を連続的に変化させてもよい。
【0062】
本具体例によれば、図10に表したように、着水領域550の後端および前端に到達した際の所定の領域540におけるそれぞれの着水流量571、575は、着水領域550の中央部に到達した際の所定の領域540における着水流量573よりも多い。なお、図10における表記方法は、図6および図7に関して前述した如くである。
【0063】
そのため、図10に表した着水流量の積分量と、図7に表した着水流量の積分量と、を比較すると、本具体例の着水前端領域557および着水後端領域558における着水流量の積分量587、588は、比較例のそれよりも多い。つまり、本具体例では、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、比較例の場合よりも多い流量の洗浄水を着水させることができる。あるいは、洗浄水の所定の領域540を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、ノズル本体420が一定速度で移動する場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。
【0064】
これにより、常時着水領域551の前後方向に位置する着水前端領域557および着水後端領域558も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。また、ノズル本体420の移動速度を変化させるという比較的簡単な制御により、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に比較的長い時間洗浄水を着水させることができる。
【0065】
図11は、ノズルの吐水孔の軌跡のさらに他の具体例を表すグラフ図である。
本具体例では、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に所定の領域540が移動するたびに、着水前端領域557および着水後端領域558の範囲において洗浄水の着水する所定の領域540が前後方向に複数回往復移動する。具体的には、例えば図11に表したグラフ図のように、ノズル駆動部460は、制御部405からの指令に基づいて、吐水孔411から噴射された洗浄水が着水前端領域557および着水後端領域558に移動するたびに、着水前端領域557および着水後端領域558に着水する範囲においてノズル本体420を前後方向に複数回往復移動させる。
【0066】
本具体例によれば、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、ノズル本体420を複数回往復移動させない場合よりも多い流量の洗浄水を着水させることができる。あるいは、洗浄水の所定の領域540を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、ノズル本体420を複数回往復移動させない場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。
【0067】
これにより、常時着水領域551の前後方向に位置する着水前端領域557および着水後端領域558も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【0068】
図12は、ノズルの吐水孔の軌跡のさらに他の具体例を表すグラフ図である。
本具体例では、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558において、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動が所定時間静止する。つまり、図5に関して前述した具体例では、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動は、着水領域550の前端および後端で所定時間静止する。これに対して、本具体例では、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動は、着水領域550の前端および後端だけに限定されず着水前端領域557および着水後端領域558の中のいずれかの位置において静止する。
【0069】
洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動は、図12(a)に表したグラフ図のように、着水領域550の中央部から前端および後端へ向かう途中と、着水領域550の前端および後端から中央部へ向かう途中と、の両方において所定時間静止してもよい。あるいは、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動は、図12(b)に表したグラフ図のように、着水領域550の前端および後端から中央部へ向かう途中で所定時間静止してもよい。
【0070】
本具体例によれば、図5に関して前述した具体例と同様に、常時着水領域551の前後方向に位置する着水前端領域557および着水後端領域558も洗浄していることを使用者に実感させることができる。また、満足度のより高いワイドムーブビデ洗浄を行うことができる。
【0071】
図13は、流量の具体例を例示するグラフ図である。
なお、図13(a)は、流量を段階的に変化させる場合を例示しており、図13(b)は、流量を連続的に変化させる場合を例示している。
【0072】
本具体例では、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動の速度は、変化することなく略一定である。また、着水領域550の前端および後端に洗浄水の所定の領域540が到達すると、制御部405は、流量調整弁480(図2参照)を制御し、洗浄水の所定の領域540が着水領域550の中央部を移動するときよりも多い流量の洗浄水を噴射させる。あるいは、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558を洗浄水の所定の領域540が移動するときに、制御部405は、流量調整弁480を制御し、洗浄水の所定の領域540が着水領域550の中央部を移動するときよりも多い流量の洗浄水を噴射させる。
本具体例によれば、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、噴射される洗浄水の流量を変化させない場合よりも多い流量の洗浄水を着水させることができる。あるいは、洗浄水の所定の領域540を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、噴射される洗浄水の流量を変化させない場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。これにより、図5に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0073】
図14は、流速の具体例を例示するグラフ図である。
なお、図14(a)は、流速を段階的に変化させる場合を例示しており、図14(b)は、流速を連続的に変化させる場合を例示している。
【0074】
本具体例では、図13に関して前述した具体例と同様に、洗浄水の所定の領域540の前後方向への往復移動の速度は、変化することなく略一定である。また、着水領域550の前端および後端に洗浄水の所定の領域540が到達すると、制御部405は、流量調整弁480を制御し、洗浄水の所定の領域540が着水領域550の中央部を移動するときよりも速い流速を有する洗浄水を噴射させる。あるいは、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558を洗浄水の所定の領域540が移動するときに、制御部405は、流量調整弁480を制御し、洗浄水の所定の領域540が着水領域550の中央部を移動するときよりも速い流速を有する洗浄水を噴射させる。
本具体例によれば、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、噴射される洗浄水の流速を変化させない場合よりも速い流速を有する洗浄水を着水させることができる。あるいは、洗浄水の所定の領域540を前後方向に往復移動させて拡大させる際に、着水領域550の着水前端領域557および着水後端領域558に、噴射される洗浄水の流速を変化させない場合よりも長い時間洗浄水を着水させることができる。これにより、図5に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0075】
次に、本実施形態のノズル410の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図15は、本実施形態のノズルの具体例を例示する斜視模式図である。
また、図16は、本具体例のノズルを上方から眺めた上面模式図である。
また、図17は、図16に表した切断面B−Bにおける断面模式図である。
【0076】
本具体例にかかるノズル410は、ノズル本体420を有する。ノズル本体420の内部には、ワイド吐水用流路427と、スポット吐水用流路428と、が設けられている。ワイド吐水用流路427は、図16に表したように、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。一方、スポット吐水用流路428は、図16に表したように、旋回室423の軸心へ向かうように大径部内周壁423eに接続されている。その他の構造は、図4に関して前述したノズル410の構造と同様である。
【0077】
ワイド吐水用流路427は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、ワイド吐水用流路427を通過して旋回室423へ流入した洗浄水は、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回する。これは、図4に関して前述した如くである。一方、スポット吐水用流路428は、旋回室423の軸心へ向かうように大径部内周壁423eに接続されているため、スポット吐水用流路428を通過して旋回室423へ流入した洗浄水は、旋回することなく連通路425の一端、すなわち吐水孔426から噴射される。
【0078】
そのため、本具体例のノズル410によれば、ワイド吐水用流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させると、より大きな旋回力を有する中空円錐状吐水510を吐水孔426から吐水することができる。また、本具体例にかかるノズル410が、図4に表したスロート430を有する場合には、吐水孔433から噴射された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。そのため、この場合には、使用者は、より広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
【0079】
これに対して、ワイド吐水用流路427のみではなく、ワイド吐水用流路427とスポット吐水用流路428とを介して旋回室423へ洗浄水を流入させると、旋回室423において生ずる旋回流の旋回力は、ワイド吐水用流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合よりも低減する。これは、ワイド吐水用流路427から旋回室423へ流入した洗浄水による旋回流と、スポット吐水用流路428から旋回室423へ流入した洗浄水による直進流と、が干渉するためである。そのため、この場合には、ワイド吐水用流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合よりも小さな旋回力を有する中空円錐状吐水510が吐水孔426から噴射される。
【0080】
また、これに対して、スポット吐水用流路428のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させると、直進流と液滴とを吐水孔426から吐水することができる。そのため、この場合には、使用者は、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
【0081】
本具体例にかかるノズル410によれば、使用者は、ワイド吐水用流路427を通過する洗浄水の流量と、スポット吐水用流路428を通過する洗浄水の流量と、の比率を適宜設定変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。
【0082】
以上説明したように、本実施形態によれば、洗浄水を円錐状に拡散させつつ、ノズル本体420から噴射された洗浄水の所定の領域540を前後方向に往復移動させ拡大させて、従来よりも前後の広範囲に洗浄水を着水させるワイドムーブ洗浄を実行できる。さらに、着水領域550の中央部には、所定の領域540が前後方向に往復移動する間常に洗浄水が着水する常時着水領域551が存在する。そのため、ワイドムーブビデ洗浄の際に、女性局部の膣口付近において固着していない状態の経血汚れが飛び散ることを防止することができる。また、ワイドムーブビデ洗浄の間、膣口付近には洗浄水が常に着水する常時着水領域551が存在するため、なぞられたような感覚を与えるおそれは少ない。これにより、快適なビデ洗浄を行うことができる。
【0083】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ノズル410などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0084】
10 流路、 100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 400 ケーシング、 404 着座検知センサ、 405 制御部、 410 ノズル、 411 吐水孔、 420 ノズル本体、 423 旋回室、 423e 大径部内周壁、 423f 傾斜内周壁、 424 突設部、 425 連通路、 426 吐水孔、 427 ワイド吐水用流路、 428 スポット吐水用流路、 430 スロート、 431 スロート流路、 432 テーパ部、 433 吐水孔、 440 電磁弁、 450 熱交換器、 460 ノズル駆動部、 470 圧力変調装置、 480 流量調整弁、 510 中空円錐状吐水、 520 粒化水流、 540、541、543、545 所定の領域、 550 着水領域、 551 常時着水領域、 553、554 着水中間領域、 557 着水前端領域、 558 着水後端領域、 571、573、575 着水流量、 581、587、588 着水流量の積分量、 800 便器、 801 ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を噴射して女性局部に着水させるノズルを備え、
前記ノズルは、
前記吐水孔から円錐状に拡散するように前記洗浄水を噴射して前記女性局部の所定の領域に着水させる吐水手段と、
前記所定の領域を前後方向に往復移動させることにより前記所定の領域よりも拡大された領域であって前記洗浄水が着水可能な着水領域を形成する洗浄領域前後拡大手段と、
を有し、
前記洗浄領域前後拡大手段は、前記所定の領域が前後方向に往復移動する間常に前記洗浄水が着水する常時着水領域を前記着水領域の中央部に形成することを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端および後端に前記所定の領域が到達すると、前記往復移動を所定時間静止させることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端領域である着水前端領域および前記着水領域の後端領域である着水後端領域を前記所定の領域が移動するときの前記所定の領域の移動速度を、前記着水領域の中央部を前記所定の領域が移動するときの前記所定の領域の移動速度よりも遅くすることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄領域前後拡大手段は、
前記吐水手段を前記前後方向に移動させるノズル駆動部と、
前記ノズル駆動部を制御することにより前記吐水手段を前記前後方向に往復移動させる制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記着水前端領域および前記着水後端領域を前記所定の領域が移動するときの前記吐水手段の移動速度を、前記着水領域の中央部を前記所定の領域が移動するときの前記吐水手段の移動速度よりも遅くさせる制御を実行することを特徴とする請求項3記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端領域である着水前端領域および前記着水領域の後端領域である着水後端領域に前記所定の領域が移動するたびに、前記着水前端領域および着水後端領域の範囲において前記所定の領域を前後方向に複数回往復移動させることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端および後端に前記所定の領域が到達すると、前記所定の領域が前記着水領域の中央部を移動するときよりも多い流量の洗浄水を前記吐水孔から噴射させることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項7】
前記洗浄領域前後拡大手段は、前記着水領域の前端および後端に前記所定の領域が到達すると、前記所定の領域が前記着水領域の中央部を移動するときよりも速い流速の洗浄水を前記吐水孔から噴射させることを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−72611(P2012−72611A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−218834(P2010−218834)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】