説明

衛生洗浄装置

【課題】用途に適した範囲に洗浄水を着水させて、快適なビデ洗浄を実行することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【解決手段】吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を噴出して女性局部に着水させるノズルを備え、前記ノズルは、前記女性局部の第1の範囲に着水するように前記吐水孔から前記洗浄水を噴出する第1の吐水と、前記第1の範囲よりも広い第2の範囲に万遍なく着水するように前記吐水孔から前記洗浄水を噴出する第2の吐水と、を実行し、前記第2の範囲は、前記第1の範囲を含み、前記第1の範囲の中心位置は、前記第2の範囲の中心位置からずれていることを特徴とする衛生洗浄装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、衛生洗浄装置に関し、具体的には洋式腰掛便器に腰掛けた使用者の女性局部を水で洗浄する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビデ洗浄において、洗浄面積が広いワイド洗浄と、洗浄面積が狭いスポット洗浄と、をボタン操作により変更することができる人体洗浄装置がある(特許文献1)。特許文献1に記載された人体洗浄装置によれば、例えば、吐水態様として、少ない流量で、洗浄力を低減させることなく、広い洗浄面積で洗浄する態様をとることができる。しかしながら、特許文献1に記載された人体洗浄装置は、ノズルを移動させることにより広い範囲を吐水する場合がある。この場合には、使用者は、ビデ洗浄の際に違和感を感ずるおそれがある。そのため、この点においては改善の余地がある。
【0003】
また、給水された洗浄水に吐水孔の軸心回りの旋回力を付与して、洗浄水を吐水孔へ導き、旋回力を持った状態で洗浄水を吐水孔から吐水させる人体洗浄装置がある(特許文献2)。特許文献2に記載された人体洗浄装置は、ノズル移動を伴うことなく洗浄水を旋回吐水でき、洗浄範囲を旋回で定まる2次元的な形状に拡大できる。しかしながら、旋回吐水を行うと、旋回吐水の内部の中空部分、すなわち中抜け部分が着水時に生ずるため、その中抜け部分における洗浄性能については改善の余地がある。すなわち、例えば女性の生理時には、経血汚れが女性局部の周囲の広い範囲に亘って付着するため、広い範囲を一度にさっと洗浄したいという要望に応えるためには、更なる改良が求められている。
【0004】
また、使用者から排出された排泄物の物性に応じて、水勢、洗浄範囲の広さやその形状などを適宜に変更すべく、ノズルから吐出される洗浄水の吐水条件を変更する人体局部洗浄装置がある(特許文献3)。特許文献3に記載された人体局部洗浄装置によれば、複雑で面倒な操作・調整を行うことなく、排泄物の種類や状態に拘わらず、確実で高い洗浄能力を発揮することができる。しかしながら、特許文献3に記載された人体局部洗浄装置は、おりもの洗浄において、「ねばねばモード」では「さらさらモード」より、流速を高くするとともに空気の混入率を減らすことによって強い水勢を得る。また、「ねばねばモード」ではおりものが膣入口付近で広がりにくいのに対し「さらさらモード」では広がり易いから、後者では前者よりも洗浄範囲を広げている。そのため、洗浄範囲の中心部における水勢が強く、女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わるおそれがある。そのため、広い範囲を一度にさっと洗浄したいというビデ洗浄に求められる洗浄感としては課題が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−282545号公報
【特許文献2】特開2001−90155号公報
【特許文献3】特開2001−279779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、用途に適した範囲に洗浄水を着水させて、快適なビデ洗浄を実行することができる衛生洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を噴出して女性局部に着水させるノズルを備え、前記ノズルは、前記女性局部の第1の範囲に着水するように前記吐水孔から前記洗浄水を噴出する第1の吐水と、前記第1の範囲よりも広い第2の範囲に万遍なく着水するように前記吐水孔から前記洗浄水を噴出する第2の吐水と、を実行し、前記第2の範囲は、前記第1の範囲を含み、前記第1の範囲の中心位置は、前記第2の範囲の中心位置からずれていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0008】
この衛生洗浄装置によれば、ノズルは、第1の吐水を実行することができるため、便座に座った使用者の女性局部の狭い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。一方、ノズルは、第2の吐水を実行することができるため、第1の吐水の場合よりも広い範囲を洗浄することができ、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
【0009】
また、第1の吐水の着水範囲である第1の範囲は、第2の吐水の着水範囲である第2の範囲に含まれ、第2の範囲の中心位置は、第1の範囲の中心位置からずれている。そのため、第2の吐水の際には、女性の生理時における経血が付着する広い範囲に洗浄水を着水させることができ、快適なビデ洗浄を実行することができる。つまり、用途に適した範囲に洗浄水を着水させて、快適なビデ洗浄を実行することができる。
【0010】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第2の範囲の中心位置は、前記第1の範囲の中心位置からみて肛門とは反対の側に位置することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0011】
女性の生理時の経血は、女性局部の前方すなわち膣からみて肛門とは反対側に広がる傾向がある。つまり、女性局部の前方すなわち膣からみて肛門とは反対側に、女性の生理時の経血汚れが付着しやすい。これに対して、この衛生洗浄装置では、第2の範囲の中心位置は、第1の範囲の中心位置からみて肛門とは反対側に位置している。そのため、第2の吐水の際には、経血が付着しやすい女性局部の前方の広い範囲を洗浄することができる。また、第2の吐水において、洗浄水が着水する範囲が肛門には広がらないように第2の範囲を広げることができる。そのため、第2の吐水の際には、より一層広い範囲に洗浄水を着水させ、その広い範囲を洗浄することができる。
【0012】
また、第3の発明は、第2の発明において、前記ノズルは、前記第2の吐水を実行する際には、前記第2の範囲における着水力が中心部よりも外周部で大きくなるように前記吐水孔から前記洗浄水を噴出し、前記第2の範囲の中心位置は、前記第1の範囲から前記肛門とは反対の側に外れ、前記外周部は、前記第1の範囲から外れていることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0013】
この衛生洗浄装置によれば、第2の吐水の着水力は、第2の範囲の中心部よりも外周部で大きいため、例えば女性の生理時には、経血汚れが女性局部の周囲の広い範囲に亘って付着する場合があるが、その広い範囲を一度にさっと洗浄したいという要望に応えることができる。また、着水力が大きい第2の範囲の外周部は、第1の範囲から外れているため、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを抑制することができる。そのため、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
【0014】
また、第4の発明は、第2または第3の発明において、前記ノズルは、前記肛門寄りの下方から前記女性局部へ向けて洗浄水を噴射し、前記第2の吐水を実行する際には、前記吐水孔から円錐状に拡散するように前記洗浄水を吐水することにより前後方向を長手方向とする楕円形状に前記第2の範囲を形成することを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0015】
この衛生洗浄装置によれば、洗浄水は、肛門寄りの下方から女性局部へ向けて斜めに噴射されるため、吐水孔から円錐状に拡散させた洗浄水は、女性局部に着水するときには前後方向を長手方向とする楕円形状になる。そのため、女性の生理時における経血が付着する女性局部の前後方向に洗浄水を着水させて経血汚れを洗い流すことができる。この際、左右方向の着水範囲は、前後方向の着水範囲と比べて小さく抑えられるため、洗浄水が所望の洗浄エリア外の部分(例えば、大腿部)にまで不必要に当たることを抑えることができる。そのため、快適なビデ洗浄を実行することができる。
【0016】
また、第5の発明は、第2または第3の発明において、前記ノズルを進退させるノズル駆動部をさらに備え、前記ノズル駆動部は、前記第2の吐水を実行する際の前記ノズルの進出位置が前記第1の吐水を実行する際の前記ノズルの進出位置よりも前方に位置するように前記ノズルを進出させることを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0017】
この衛生洗浄装置によれば、ノズル駆動部は、第2の吐水を実行する際のノズルの進出位置が第1の吐水を実行する際のノズルの進出位置よりも前方に位置するようにノズルを進出させる。これにより、第2の範囲の中心位置を第1の範囲の中心位置からみて肛門とは反対側にずらすことができる。そのため、第2の吐水において洗浄水が女性局部に着水する際の角度が極端に浅くなることがなく、洗浄力が低下するのを防ぐことができる。また、ノズルの位置を変えることによって第1の吐水と第2の吐水とを実行するので、1つの吐水孔で第1の吐水と第2の吐水とを実行することが可能である。そのため、ノズルの構成を簡素化することができる。
【0018】
また、第6の発明は、第2または第3の発明において、前記吐水孔は、前記第1の吐水を実行する際に前記洗浄水を噴射する第1の吐水孔と、前記第2の吐水を実行する際に前記洗浄水を噴射する第2の吐水孔と、を有し、前記第2の吐水孔は、前記第1の吐水孔よりも前方に設けられたことを特徴とする衛生洗浄装置である。
【0019】
この衛生洗浄装置によれば、第1の吐水孔と第2の吐水孔との位置を前後方向にずらすことにより、第1の範囲の中心位置を第2の範囲の中心位置からずらすことができる。そのため、第2の吐水において洗浄水が女性局部に着水する際の角度が極端に浅くなることがなく、洗浄力が低下するのを防ぐことができる。また、別々の吐水孔から第1の吐水と第2の吐水とをそれぞれ実行するので、吐水孔の形状を、第1の吐水および第2の吐水にそれぞれ適した形状にすることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の態様によれば、用途に適した範囲に洗浄水を着水させて、快適なビデ洗浄を実行することができる衛生洗浄装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【図2】洗浄水の着水範囲、着水範囲の中心位置、および洗浄水の着水力を説明するための概念模式図である。
【図3】本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
【図4】ワイド吐水を説明するための断面模式図である。
【図5】スポット吐水を説明するための断面模式図である。
【図6】本実施形態の変形例にかかる洗浄水の着水範囲、着水範囲の中心位置、および洗浄水の着水力を説明するための概念模式図である。
【図7】本実施形態の他の変形例にかかる洗浄水の着水範囲、着水範囲の中心位置、および洗浄水の着水力を説明するための概念模式図である。
【図8】本実施形態のノズルの具体例を例示する斜視模式図である。
【図9】本具体例のノズルを上方から眺めた上面模式図である。
【図10】図9に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態にかかる衛生洗浄装置を備えたトイレ装置を表す斜視模式図である。
【0023】
図1に表したトイレ装置は、洋式腰掛便器(以下説明の便宜上、単に「便器」と称する)800と、その上に設けられた衛生洗浄装置100と、を備える。衛生洗浄装置100は、ケーシング400と、便座200と、便蓋300と、を有する。便座200と便蓋300とは、ケーシング400に対して開閉自在にそれぞれ軸支されている。
【0024】
ケーシング400の内部には、便座200に座った使用者の女性局部の洗浄を実現する局部洗浄機能部などが内蔵されている。また、例えばケーシング400には、使用者が便座200に座ったことを検知する着座検知センサ404が設けられている。着座検知センサ404が便座200に座った使用者を検知している場合において、使用者が例えば図示しないリモコンなどの操作部を操作すると、ノズル410を便器800のボウル801内に進出させることができる。なお、図1に表した衛生洗浄装置100では、ノズル410がボウル801内に進出した状態を表している。
【0025】
ノズル410の先端部には、ひとつあるいは複数の吐水孔411が設けられている。そして、ノズル410は、その先端部に設けられた吐水孔411から水を噴射して、便座200に座った使用者の女性局部を洗浄することができる。例えば、図1に表したノズル410では、ふたつの吐水孔411のうちの一方の吐水孔411は、ビデ洗浄用の吐水孔であり、他方の吐水孔411は、おしり洗浄用の吐水孔である。なお、本願明細書において「水」という場合には、冷水のみならず、加熱されたお湯も含むものとする。
【0026】
図2は、洗浄水の着水範囲、着水範囲の中心位置、および洗浄水の着水力を説明するための概念模式図である。
本実施形態のノズル410は、後に詳述するように、女性局部の第1の範囲509に着水するようにノズル410の吐水孔411から洗浄水を噴射するスポット吐水(第1の吐水)と、第1の範囲509よりも広い第2の範囲507に万遍なく着水するようにノズル410の吐水孔411から洗浄水を噴射するワイド吐水(第2の吐水)と、を実行することができる。
【0027】
つまり、スポット吐水の着水範囲(第1の範囲)509は、ワイド吐水の着水範囲(第2の範囲)507よりも狭い。言い換えれば、ワイド吐水の着水範囲(第2の範囲)507は、スポット吐水の着水範囲(第1の範囲)509よりも広い。また、スポット吐水の着水範囲509は、図2に表したように、ワイド吐水の着水範囲507に含まれている。
【0028】
ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cは、図2に表したように、スポット吐水の着水範囲509の中心位置509cからずれている。より具体的には、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cは、スポット吐水の着水範囲509の中心位置509cからみて使用者600の肛門601とは反対側に位置している。
【0029】
ノズル410は、図2に表したように、膣603からみて肛門601寄りの下方から斜めに洗浄水500を噴射する。そうすると、ワイド吐水およびスポット吐水の着水範囲507、509は、肛門601と膣603とを結ぶ方向、あるいは肛門601と尿道605とを結ぶ方向、あるいは膣603と尿道605とを結ぶ方向を長手方向とする楕円形状となる。本願明細書において、「ワイド吐水の着水範囲の中心位置」とは、ワイド吐水の着水範囲507の長軸の中心位置をいうものとする。一方、本願明細書において、「スポット吐水の着水範囲の中心位置」とは、スポット吐水の着水範囲509の長軸の中心位置をいうものとする。
【0030】
また、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置におけるワイド吐水の着水力は、図2に表したように、ワイド吐水の着水範囲507の中心部よりも外周部で大きい。もしくは、ワイド吐水の着水範囲507の中心部と外周部とで着水力を同等とする。
ここで、本願明細書において、「着水力」とは、洗浄水500の着水流速、着水水量、着水圧力の少なくともいずれかを意味し、また、単位面積あたりの洗浄水が有する運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。また、「着水流速」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置における洗浄水500の流速をいう。また、「着水圧力」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置における単位面積あたりの運動量であり、汚れを落としたり、剥いだり、浮かせたりする力をいう。また、「着水水量」とは、着水部あるいは吐水孔411から所定の距離だけ離れた位置において単位時間あたりに着水する水量であり、汚れを洗い流す力をいう。
【0031】
また、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cは、スポット吐水の着水範囲509から外れている。つまり、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cは、スポット吐水の着水範囲509には含まれていない。さらに、着水力が大きいワイド吐水の着水範囲507の外周部は、スポット吐水の着水範囲509には含まれていない。
【0032】
本実施形態によれば、ノズル410は、ワイド吐水を実行することができるため、便座200に座った使用者600の女性局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。一方、ノズル410は、スポット吐水を実行することができるため、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができ、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
【0033】
また、スポット吐水の着水範囲509は、ワイド吐水の着水範囲507に含まれ、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cは、スポット吐水の着水範囲509の中心位置509cからずれている。そのため、ワイド吐水の際には、女性の生理時における経血が付着する広い範囲に洗浄水を着水させることができ、快適なビデ洗浄を実行することができる。つまり、用途に適した範囲に洗浄水を着水させて、快適なビデ洗浄を実行することができる。
【0034】
また、女性の生理時の経血は、女性局部の前方すなわち膣603からみて肛門601とは反対側に広がる傾向がある。つまり、女性局部の前方すなわち膣603からみて肛門601とは反対側に、女性の生理時の経血汚れが付着しやすい。これに対して、本実施形態では、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cは、スポット吐水の着水範囲509の中心位置509cからみて使用者600の肛門601とは反対側に位置している。そのため、ワイド吐水の際には、経血が付着しやすい女性局部の前方の広い範囲に洗浄水を着水させて洗浄することができる。また、ワイド吐水において、洗浄水が着水する範囲が肛門601には広がらないようにワイド吐水の着水範囲507を広げることができる。そのため、ワイド吐水の際には、より一層広い範囲に洗浄水を着水させ、その広い範囲を洗浄することができる。
【0035】
さらに、ワイド吐水の着水力を、ワイド吐水の着水範囲507の中心部と外周部とで同等もしくは外周部で大きくするため、例えば女性の生理時には、経血汚れが女性局部の周囲の広い範囲に亘って付着する場合があるが、その広い範囲を一度にさっと洗浄したいという要望に応えることができる。また、特に、着水力が大きいワイド吐水の着水範囲507の外周部は、スポット吐水の着水範囲509には含まれていないため、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを抑制することができる。そのため、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
【0036】
図3は、本実施形態にかかる衛生洗浄装置の要部構成を表すブロック図である。
なお、図3は、水路系と電気系の要部構成を併せて表している。
本実施形態にかかる衛生洗浄装置100は、水道や貯水タンクなどの図示しない給水源から供給された水を導く流路10を有する。流路10の上流側には、電磁弁440が設けられている。電磁弁440は、開閉可能な電磁バルブであり、ケーシング400の内部に設けられた制御部401からの指令に基づいて、熱交換器450への水の供給を制御する。
【0037】
電磁弁440の下流側には、熱交換器450が設けられている。熱交換器450は、供給された水を加熱し所定の温水にする。なお、熱交換器450は、例えば、シーズヒータなどを用いた瞬間加熱式熱交換器でもよいし、貯湯タンクを用いた貯湯加熱式熱交換器でもよい。
【0038】
熱交換器450の下流側には、圧力変調装置470が設けられている。この圧力変調装置470は、流路10内の水の流れに脈動を与え、ノズル410の吐水孔411から吐水される水に脈動を与えることができる。なお、圧力変調装置470は、必ずしも設けられていなくともよい。
【0039】
圧力変調装置470の下流側には、ノズル410が設けられている。ノズル410は、水勢(流量)の調整を行う流量調整弁480と、ワイド吐水の際に通水されるワイド吐水用流路427と、スポット吐水の際に通水されるスポット吐水用流路428と、ノズル本体420と、を有する。流量調整弁480は、水勢の調整を行うことができるとともに、ノズル410への給水の開閉や切替を行うことができる。
【0040】
流量調整弁480は、制御部401からの指令に基づいて、ワイド吐水用流路427へ通水したり、スポット吐水用流路428へ通水することができる。あるいは、流量調整弁480は、所定の比率でワイド吐水用流路427およびスポット吐水用流路428へ通水することができる。これにより、使用者は、ワイド吐水用流路427を通過する洗浄水の流量と、スポット吐水用流路428を通過する洗浄水の流量と、の比率を適宜設定変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。これについては、後に詳述する。
【0041】
ノズル410は、ノズルモータ(ノズル駆動部)490からの駆動力を受け、便器800のボウル801内に進出したり後退することができる。そして、ノズル410は、ボウル801内に進出した状態で吐水孔411から水を噴射して、便座200に座った使用者の女性局部を洗浄することができる。
【0042】
次に、本実施形態のノズル410の構造、ならびにワイド吐水およびスポット吐水の吐水形態について、図面を参照しつつ説明する。
図4は、ワイド吐水を説明するための断面模式図である。
【0043】
本実施形態のノズル410は、ノズル本体420と、スロート430と、を有する。ノズル本体420の内部には、図示しない水源から供給された洗浄水が通過するワイド吐水用流路427と、旋回流を生成可能な旋回室423と、旋回室423からの洗浄水をスロート430へ導く連通路425と、が設けられている。また、旋回室423の中央部には、より安定した旋回力の旋回流を生成する突設部424が設けられている。
【0044】
旋回室423は、底部においてより大きな径を有する大径部内周壁423eと、連通路425へ向かうにつれて収縮した径を有する傾斜内周壁423fと、により形成され、中空室とされている。そして、傾斜内周壁423fは、その一端において連通路425に接続されている。一方、ワイド吐水用流路427は、旋回室423に偏心して接続されている。より具体的には、ワイド吐水用流路427は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。
【0045】
スロート430の内部には、ノズル本体420の連通路425から吐水された洗浄水が通過するスロート流路431が設けられている。そして、スロート流路431の一端には、スロート流路431を通過した洗浄水をスロート430の外部へ吐水する吐水孔433が形成されている。つまり、図4に表したノズル410のように、ノズル410がスロート430を有する場合には、スロート430に設けられた吐水孔433が図1に表した吐水孔411として機能する。吐水孔433の近傍のスロート流路431には、吐水孔433へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されている。
【0046】
なお、本実施形態のノズル410では、ノズル本体420とスロート430との間に隙間が設けられているが、この隙間は必ずしも設けられていなくともよい。すなわち、ノズル本体420とスロート430とが一体的に形成され、連通路425とスロート流路431とが接続されていてもよい。
【0047】
ワイド吐水を実行する場合には、図示しない水源から供給される洗浄水は、ワイド吐水用流路427を通過してノズル410へ供給され、旋回室423へ流入する。ここで、ワイド吐水用流路427は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、旋回室423へ流入した洗浄水は、図4に表した矢印A3のように、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回する。そして、旋回室423において旋回した洗浄水は、旋回力を維持しつつ連通路425を通過し、スロート430のスロート流路431内へ吐水される。このとき、ノズル本体420から吐水された洗浄水は、旋回力を維持しているため、中央部に中空部分を有する液膜として中空円錐状に吐水される。以下、説明の便宜上、このように中空円錐状に吐水された洗浄水を「中空円錐状吐水」と称する。
【0048】
そして、スロート流路431に流入した洗浄水は、旋回力を維持しつつスロート流路431の内壁に沿って流れ、吐水孔433へ導かれる。すなわち、スロート流路431を通過する洗浄水は、スロート流路431の内壁に付着するように流れる。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水は、スロート流路431の内壁から摩擦力による抵抗を受け、その洗浄水の流速は、吐水孔433へ向かうにつれて遅くなる。これにより、図4に表したように、吐水孔433の近傍の液膜の厚さは、ノズル本体420から吐水されたときの液膜の厚さ、あるいはスロート流路431に流入した直後の液膜の厚さよりも厚い。
【0049】
さらに、スロート流路431を流れる洗浄水の流速は、スロート流路431の内壁の近傍すなわち境界層よりもスロート流路431の中心部の方が速い。そのため、スロート流路431を流れる洗浄水の内部には、図4に表した矢印A1のように、液膜を横断する方向に渦流が発生する。また、吐水孔433の近傍におけるスロート流路431には、吐水孔433へ向かうにつれて流路が拡大するテーパ部432が形成されているため、吐水孔433から吐水される洗浄水は、テーパ部432に沿って流れる。そのため、吐水孔433から吐水される洗浄水の内部には、液膜を横断する方向に渦流がより発生しやすい。
【0050】
そうすると、吐水孔433から吐水された洗浄水は、中央部に中空部分を有する液膜として、すなわち中空円錐状吐水510として吐水されるが、吐水孔433からある程度離間した位置において粒化された水流(以下、説明の便宜上、「粒化水流」と称する)520へ遷移する。より具体的には、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510の内部には、液膜を横断する方向に渦流が発生しているため、吐水孔433からある程度離間した位置において、隣接する渦流同士の間に亀裂が生ずる。そうすると、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、図4に表したように、吐水孔433からある程度離間した位置において破砕される。このようにして、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。そして、中空円錐状吐水510が拡散する領域の内側には、粒化水流520が万遍なく行き渡る。
【0051】
また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さい。これは、中空円錐状吐水510の中空部分には外部から空気が入りにくく、また、その中空部分の空気は中空円錐状吐水510の流れにより引き出されるためである。このようにして中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さいことにより、中空円錐状吐水510は、吐水径(円錐径)が拡大することを抑制される。
【0052】
そのため、本実施形態のノズル410によれば、粒化水流520が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分(例えば、大腿部)が不必要に濡れることを抑制することができる。これにより、便座200に座った使用者が、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることで不快感を感ずることを抑制することができる。
【0053】
さらに、粒化水流520の径は、例えば約1mm程度であり、径が例えば約10〜100μm程度の霧と比較すると大きい。これは、前述したように、スロート流路431を流れる洗浄水の流速は、吐水孔433へ向かうにつれて遅くなり、吐水孔433の近傍の液膜の厚さは、より厚くなるためである。つまり、液膜の厚さがより厚い状態で吐水された中空円錐状吐水510を、スロート430の内部において発生した渦流により強制的に粒化するため、粒化水流520の径は、霧などと比較すると大きい。
【0054】
これによれば、粒化水流520は、空気中を漂うおそれは少なく、所望の洗浄エリアの外部にまで飛散するおそれは少ない。つまり、本実施形態のノズル410によれば、粒化水流520が洗浄エリア外に着水することを抑制することができ、所望の洗浄エリア外の部分が不必要に濡れることを抑制することができる。また、粒化水流520の径は、より大きいため、着水部における着水力をより高めることができる。そのため、例えば女性の生理時における経血汚れなどを、より短時間の間に落としたり浮かせたりすることができ、また、より短時間の間に洗い流すことができる。
【0055】
また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が中空円錐状吐水510の外側の圧力よりも小さいことに関して前述したが、この中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510が破砕されない場合の中空円錐状吐水510の中空部分の圧力よりも大きい。これは、図4に表した矢印A2のように、中空円錐状吐水510の中空部分の外部の空気が、隣接する渦流同士の間に生じた亀裂、あるいは破砕された中空円錐状吐水510の間から中空部分に入り込むためである。これによれば、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力が小さくなりすぎることにより十分な広さの洗浄範囲を確保することができないおそれを抑制することができる。また、中空円錐状吐水510の中空部分の圧力は、中空円錐状吐水510が破砕されない場合の中空円錐状吐水510の中空部分の圧力よりも大きいため、液膜波動が生ずることを抑制することができる。
【0056】
このように、本実施形態のワイド吐水によれば、中空円錐状吐水510の中空部分(洗浄水500が拡散する領域の内側)に粒化水流520を万遍なく行き渡らせた状態で、便座200に座った使用者の女性局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
【0057】
図5は、スポット吐水を説明するための断面模式図である。
ノズル本体420の内部には、ワイド吐水用流路427と同様に、図示しない水源から供給された洗浄水が通過するスポット吐水用流路428が設けられている。スポット吐水用流路428は、旋回室423の軸心へ向かうように旋回室423の大径部内周壁423eに接続されている。
【0058】
スポット吐水を実行する際には、図示しない水源から供給される洗浄水は、スポット吐水用流路428を通過してノズル410へ供給され、旋回室423へ流入する。ここで、スポット吐水用流路428は、旋回室423の軸心へ向かうように旋回室423の大径部内周壁423eに接続されているため、旋回室423へ流入した洗浄水は、図5に表した矢印A4のように、旋回することなく、あるいは旋回力を低減された状態で連通路425へ流れる。そして、旋回することなく、あるいは旋回力を低減された状態で連通路425へ流れた洗浄水は、連通路425を通過し、スロート430のスロート流路431内へ吐水される。このとき、ノズル本体420から吐水された洗浄水は、旋回力を有してしない、あるいは旋回力を低減されているため、直進流530として吐水される。
【0059】
ノズル本体420から吐水された直進流530の一部は、直進流530から分離して液滴540となる。直進流530から分離した液滴540は、図5に表した矢印A5のように、スロート流路431の内壁において反射される。そして、スロート流路431の内壁において反射された液滴540の一部は、再び直進流530と合流する。これにより、直進流530と周囲の空気との間において気液界面が生成される。そして、ノズル本体420から吐水された洗浄水は、直進流530と液滴540とが混在した状態で吐水孔433から吐水される。つまり、ノズル本体420から吐水された洗浄水は、水粒状に吐水される。
【0060】
スポット吐水の際に吐水孔433から吐水された洗浄水は、ワイド吐水の際に吐水孔433から吐水された洗浄水のようには拡散せず、中空円錐状吐水510として吐水されることはない。つまり、スポット吐水の際に吐水孔433から吐水された洗浄水は、中空の状態ではなく、中実の状態あるいは充填された状態となっている。
【0061】
このように、本実施形態のスポット吐水によれば、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができる。つまり、スポット吐水の着水範囲は、ワイド吐水の着水範囲よりも狭い。言い換えれば、ワイド吐水の着水範囲は、スポット吐水の着水範囲よりも広い。使用者は、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
【0062】
したがって、本実施形態によれば、使用者は、ワイド吐水用流路427を通過する洗浄水の流量と、スポット吐水用流路428を通過する洗浄水の流量と、の比率を適宜設定変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。
【0063】
また、スポット吐水の際には、直進流530および液滴540によりスロート流路431がほぼ満水の状態となる。そのため、前述したように、スポット吐水の際に吐水孔433から吐水された洗浄水は、中実の状態あるいは充填された状態となっている。一方、ワイド吐水の際に吐水孔433から吐水された洗浄水は、図4に関して前述したように、中央部に中空部分を有する液膜、すなわち中空円錐状吐水510となっている。これにより、スポット吐水の際に女性局部に着水する洗浄水の流速は、ワイド吐水の際に女性局部に着水する洗浄水の流速よりも遅い。
【0064】
そのため、本実施形態のスポット吐水によれば、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができるとともに、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることを抑制することができる。そのため、非常に心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
【0065】
また、図4および図5に表したノズル410のように、ノズル本体420とスロート430との間に隙間が設けられた場合には、その隙間を介してスロート流路431に空気を取り込むことができる。これによれば、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水の吐水形態をより容易に形成することができる。さらに、スポット吐水の際に吐水孔433から吐水される洗浄水により多くの空気を混入させることができる。そのため、スポット吐水は、ワイド吐水よりもやわらかい洗浄感を与えることができる。
【0066】
本実施形態では、吐水孔433から吐水される洗浄水に混入させる空気の混入量をワイド吐水よりもスポット吐水において多くすることができる。これによっても、スポット吐水は、ワイド吐水よりもやわらかい洗浄感を与えることができる。そのため、スポット吐水において、女性局部の中心付近に位置する女性のデリケートエリアに強い刺激が必要以上に加わることをより抑制することができ、より心地よい洗浄感のビデ洗浄を実現することができる。
【0067】
次に、ワイド吐水およびスポット吐水の変形例について、図面を参照しつつ説明する。 図6は、本実施形態の変形例にかかる洗浄水の着水範囲、着水範囲の中心位置、および洗浄水の着水力を説明するための概念模式図である。
【0068】
本変形例のノズル410aには、2つのビデ洗浄用の吐水孔411a、411bが設けられている。一方の吐水孔411a(第2の吐水孔)は、ワイド吐水を実行する際に洗浄水を噴射する吐水孔であり、他方の吐水孔411b(第1の吐水孔)は、スポット吐水を実行する際に洗浄水を噴射する吐水孔である。ワイド吐水用の吐水孔411aは、スポット吐水用の吐水孔411bよりも前方すなわちノズル410aの先端側に設けられている。
【0069】
本変形例によれば、ワイド吐水用の吐水孔411aとスポット吐水用の吐水孔411bとの位置を前後方向にずらすことにより、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cをスポット吐水の着水範囲509の中心位置509cからずらすことができる。より具体的には、ワイド吐水用の吐水孔411aをスポット吐水用の吐水孔411bよりも前方に設けることにより、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cをスポット吐水の着水範囲509の中心位置509cからみて使用者600の肛門601とは反対側にずらすことができる。
【0070】
そのため、ワイド吐水において洗浄水が女性局部に着水する際の角度が極端に浅くなることがなく、洗浄力が低下するのを防ぐことができる。また、別々の吐水孔411a、411bから第1の吐水と第2の吐水とをそれぞれ実行するので、吐水孔411a、411bの形状を、第1の吐水および第2の吐水にそれぞれ適した形状にすることが可能となる。また、その他の効果についても、図2に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0071】
なお、本変形例では、ワイド吐水用の吐水孔411aは、スポット吐水用の吐水孔411bよりも前方に設けられているが、これだけに限定されるわけではない。
【0072】
ワイド吐水用の吐水孔411aおよびスポット吐水用の吐水孔411bの向きを変えてもよい。これによれば、ワイド吐水用の吐水孔411aおよびスポット吐水用の吐水孔411bの設置位置にかかわらず、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cをスポット吐水の着水範囲509の中心位置509cから比較的自由にずらすことができる。
【0073】
図7は、本実施形態の他の変形例にかかる洗浄水の着水範囲、着水範囲の中心位置、および洗浄水の着水力を説明するための概念模式図である。
本変形例のノズル410には、1つのビデ洗浄用の吐水孔411が設けられている。つまり、ワイド吐水を実行する場合でも、スポット吐水を実行する場合でも、洗浄水は、1つの吐水孔411から噴射される。
【0074】
そして、ノズルモータ490は、制御部401からの指令に基づいて、ワイド吐水を実行する際のノズル410の進出位置とスポット吐水を実行する際のノズル410の進出位置とをずらす。より具体的には、スポット吐水を実行する際には、ノズルモータ490は、図7に表した実線のノズル410の進出位置まで進出させる。一方、ワイド吐水を実行する際には、ノズルモータ490は、図7に表した破線のノズル410の進出位置まで進出させる。つまり、ノズルモータ490は、ワイド吐水を実行する際のノズル410の進出位置がスポット吐水を実行する際のノズル410の進出位置よりも前方に位置するように、ノズル410をボウル801内に進出させる。
【0075】
これにより、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cをスポット吐水の着水範囲509の中心位置509cからみて使用者600の肛門601とは反対側にずらすことができる。そのため、ワイド吐水において洗浄水が女性局部に着水する際の角度が極端に浅くなることがなく、洗浄力が低下するのを防ぐことができる。また、ノズルの位置を変えることによってスポット吐水とワイド吐水とを実行するので、1つの吐水孔411によってスポット吐水とワイド吐水とを実行することが可能である。そのため、ノズル410の構成を簡素化することができる。さらに、1つの吐水孔411からスポット吐水とワイド吐水とを実行するので、スポット吐水とワイド吐水との切り替えの際にも、一旦止水する必要はなく、連続して吐水させることが可能である。また、その他の効果についても、図2に関して前述した効果と同様の効果が得られる。
【0076】
次に、本実施形態のノズル410の具体例について、図面を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態のノズルの具体例を例示する斜視模式図である。
また、図9は、本具体例のノズルを上方から眺めた上面模式図である。
また、図10は、図9に表した切断面A−Aにおける断面模式図である。
なお、本具体例では、図2および図7に表したように、ノズル410が1つのビデ洗浄用の吐水孔411を有する場合を例に挙げて説明する。
【0077】
本具体例にかかるノズル410は、ノズル本体420を有する。ノズル本体420の内部には、ワイド吐水用流路427と、スポット吐水用流路428と、が設けられている。ワイド吐水用流路427は、図9に表したように、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されている。一方、スポット吐水用流路428は、図9に表したように、旋回室423の軸心へ向かうように大径部内周壁423eに接続されている。その他の構造は、図4および図5に関して前述したノズル410の構造と同様である。
【0078】
ワイド吐水用流路427は、旋回室423の大径部内周壁423eの接線方向に接続されているため、ワイド吐水用流路427を通過して旋回室423へ流入した洗浄水は、大径部内周壁423eおよび傾斜内周壁423fに沿って旋回する。これは、図4に関して前述した如くである。一方、スポット吐水用流路428は、旋回室423の軸心へ向かうように大径部内周壁423eに接続されているため、スポット吐水用流路428を通過して旋回室423へ流入した洗浄水は、旋回することなく連通路425の一端、すなわち吐水孔426から吐水される。これは、図5に関して前述した如くである。
【0079】
そのため、本具体例のノズル410によれば、ワイド吐水用流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させると、より大きな旋回力を有する中空円錐状吐水510を吐水孔426から吐水することができる。また、本具体例にかかるノズル410が、図4に表したスロート430を有する場合には、吐水孔433から吐水された中空円錐状吐水510は、粒化水流520へ遷移する。そのため、この場合には、使用者は、より広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。
【0080】
これに対して、ワイド吐水用流路427のみではなく、ワイド吐水用流路427とスポット吐水用流路428とを介して旋回室423へ洗浄水を流入させると、旋回室423において生ずる旋回流の旋回力は、ワイド吐水用流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合よりも低減する。これは、ワイド吐水用流路427から旋回室423へ流入した洗浄水による旋回流と、スポット吐水用流路428から旋回室423へ流入した洗浄水による直進流と、が干渉するためである。そのため、この場合には、ワイド吐水用流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合よりも小さな旋回力を有する中空円錐状吐水510が吐水孔426から吐水される。
【0081】
また、これに対して、スポット吐水用流路428のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させると、直進流530と液滴540とを吐水孔426から吐水することができる。そのため、この場合には、使用者は、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
【0082】
これによれば、ワイド吐水用流路427とスポット吐水用流路428とを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合、およびスポット吐水用流路428のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合には、ワイド吐水用流路427のみを介して旋回室423へ洗浄水を流入させる場合よりも狭い範囲を洗浄することができる。つまり、使用者は、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
【0083】
したがって、本具体例によれば、使用者は、ワイド吐水用流路427を通過する洗浄水の流量と、スポット吐水用流路428を通過する洗浄水の流量と、の比率を適宜設定変更することにより、より広い範囲を一度にさっと洗浄するワイド吐水と、より狭い範囲を重点的に洗浄するスポット吐水と、を好みに応じて切り替えることができる。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、ノズル410は、ワイド吐水を実行することができるため、便座200に座った使用者600の女性局部のより広い範囲に洗浄水を着水させることができる。そのため、所望の広い範囲を一度にさっと洗浄することができる。一方、ノズル410は、スポット吐水を実行することができるため、ワイド吐水の場合よりも狭い範囲を洗浄することができ、洗浄したい洗浄箇所を好みに応じて重点的に洗浄することができる。
【0085】
また、スポット吐水の着水範囲509は、ワイド吐水の着水範囲507に含まれ、ワイド吐水の着水範囲507の中心位置507cは、スポット吐水の着水範囲509の中心位置509cからずれている。そのため、ワイド吐水の際には、女性の生理時における経血が付着する広い範囲に洗浄水を着水させることができ、快適なビデ洗浄を実行することができる。つまり、用途に適した範囲に洗浄水を着水させて、快適なビデ洗浄を実行することができる。
【0086】
以上、本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの記述に限定されるものではない。前述の実施の形態に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ノズル410などが備える各要素の形状、寸法、材質、配置などや吐水孔411、411a、411bの設置形態などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0087】
10 流路、 100 衛生洗浄装置、 200 便座、 300 便蓋、 400 ケーシング、 401 制御部、 404 着座検知センサ、 410、410a ノズル、 411、411a、411b 吐水孔、 420 ノズル本体、 423 旋回室、 423e 大径部内周壁、 423f 傾斜内周壁、 424 突設部、 425 連通路、 426 吐水孔、 427 ワイド吐水用流路、 428 スポット吐水用流路、 430 スロート、 431 スロート流路、 432 テーパ部、 433 吐水孔、 440 電磁弁、 450 熱交換器、 470 圧力変調装置、 480 流量調整弁、 490 ノズルモータ、 500 洗浄水、 507 ワイド吐水の着水範囲、 507c 中心位置、 509 スポット吐水の着水範囲、 509c 中心位置、 510 中空円錐状吐水、 520 粒化水流、 530 直進流、 540 液滴、 600 使用者、 601 肛門、 603 膣、 605 尿道、 800 便器、 801 ボウル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吐水孔を有し、前記吐水孔から洗浄水を噴出して女性局部に着水させるノズルを備え、
前記ノズルは、前記女性局部の第1の範囲に着水するように前記吐水孔から前記洗浄水を噴出する第1の吐水と、前記第1の範囲よりも広い第2の範囲に万遍なく着水するように前記吐水孔から前記洗浄水を噴出する第2の吐水と、を実行し、
前記第2の範囲は、前記第1の範囲を含み、
前記第1の範囲の中心位置は、前記第2の範囲の中心位置からずれていることを特徴とする衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記第2の範囲の中心位置は、前記第1の範囲の中心位置からみて肛門とは反対の側に位置することを特徴とする請求項1記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記ノズルは、前記第2の吐水を実行する際には、前記第2の範囲における着水力が中心部よりも外周部で大きくなるように前記吐水孔から前記洗浄水を噴出し、
前記第2の範囲の中心位置は、前記第1の範囲から前記肛門とは反対の側に外れ、
前記外周部は、前記第1の範囲から外れていることを特徴とする請求項2記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記ノズルは、前記肛門寄りの下方から前記女性局部へ向けて洗浄水を噴射し、前記第2の吐水を実行する際には、前記吐水孔から円錐状に拡散するように前記洗浄水を吐水することにより前後方向を長手方向とする楕円形状に前記第2の範囲を形成することを特徴とする請求項2または3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項5】
前記ノズルを進退させるノズル駆動部をさらに備え、
前記ノズル駆動部は、前記第2の吐水を実行する際の前記ノズルの進出位置が前記第1の吐水を実行する際の前記ノズルの進出位置よりも前方に位置するように前記ノズルを進出させることを特徴とする請求項2または3に記載の衛生洗浄装置。
【請求項6】
前記吐水孔は、
前記第1の吐水を実行する際に前記洗浄水を噴射する第1の吐水孔と、
前記第2の吐水を実行する際に前記洗浄水を噴射する第2の吐水孔と、
を有し、
前記第2の吐水孔は、前記第1の吐水孔よりも前方に設けられたことを特徴とする請求項2または3に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−77497(P2012−77497A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222594(P2010−222594)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】