説明

衛生洗浄装置

【課題】便器の広い範囲の汚物の付着を防止することができる衛生洗浄装置を提供する。
【解決手段】衛生洗浄装置100は、便器及び便座を備えるトイレ装置に用いられる。衛生洗浄装置100は、便座に着座した被洗浄体に向けて洗浄水を吐出する第1洗浄ノズル1、2と、給水源201に接続されるべき上流端を有し、下流端が第1洗浄ノズルに接続された第1流路202、203と、便器に向けて洗浄水を吐出して便器を洗浄する第2洗浄ノズル40と、第1流路から分岐され、第2洗浄ノズルに接続された第2流路204、205と、第2流路を流れる洗浄水の流量を調整する流量調整弁103と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛生洗浄装置に関し、特に便器を洗浄する洗浄ノズルを有する衛生洗浄装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の衛生洗浄装置では、汚物が便器に付着することを防止するさまざまな方法が知られている。
【0003】
たとえば、水道配管とプレ洗浄用ノズルとを接続する流路に、水道配管側から順に減圧弁および電磁弁が接続される。着座センサにより人体の着座が検出されると、電磁弁が開き、プレ洗浄用ノズルのほぼ全周から洗浄水が噴出される。これにより、便器のボール面が濡れて、汚物が便器に付着することが防止される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−189319号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の衛生洗浄装置では、閉じている電磁弁に、水道配管の給水圧が作用している。このため、電磁弁が開いてから減圧弁によって減圧されるまでの間、プレ洗浄ノズルに高い給水圧が作用する。これにより、プレ洗浄ノズルから洗浄水が勢いよく噴き出し、洗浄水が便座あるいは便器の外に飛び出してしまう可能性がある。
【0006】
これに対し、プレ洗浄ノズルの位置を低くすると、プレ洗浄ノズルから噴出する洗浄水の位置が低くなる。これにより、洗浄水は便器の低い狭い範囲にしか散布されず、洗浄水が便器の広い範囲に行き渡らない。特に、便器の上部にあるリムは汚れが付着しやすい部分の1つである。このリム付近の便器の高い位置まで洗浄水が届かない。このため、便器全体の汚物の付着を防止することができない。
【0007】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、便器の広い範囲の汚物の付着を防止することができる衛生洗浄装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様に係る、衛生洗浄装置は、便器及び便座を備えるトイレ装置に用いられる衛生洗浄装置であって、前記便座に着座した被洗浄体に向けて洗浄水を吐出する第1洗浄ノズルと、給水源に接続されるべき上流端を有し、下流端が前記第1洗浄ノズルに接続された第1流路と、前記便器に向けて洗浄水を吐出して前記便器を洗浄する第2洗浄ノズルと、前記第1流路から分岐され、前記第2洗浄ノズルに接続された第2流路と、前記第2流路を流れる洗浄水の流量を調整する流量調整弁と、前記流量調整弁の動作を制御する制御部と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、以上に説明した構成を有し、便器の広い範囲の汚物の付着を防止することができる衛生洗浄装置を提供することができるという効果を奏する。
【0010】
本発明の上記目的、他の目的、特徴、及び利点は、添付図面参照の下、以下の好適な実施態様の詳細な説明から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態2に係る衛生洗浄装置を示す斜視図である。
【図2】図1の衛生洗浄装置の遠隔操作装置を示す正面図である。
【図3】図1の衛生洗浄装置の構成を示す模式図である。
【図4】図1の衛生洗浄装置を示す縦断面図である。
【図5】図4の衛生洗浄装置の第2洗浄ノズルおよびその周辺部を示す拡大断面図である。
【図6】図1の衛生洗浄装置を示す縦断面図である。
【図7】図6の衛生洗浄装置の第2洗浄ノズルおよびその周辺部を示す拡大断面図である。
【図8】(a)は図4の第2洗浄ノズルの先端部を示す断面図である。(b)は(a)のC14−C14における第2洗浄ノズルの断面図である。
【図9】(a)は第2洗浄ノズルの噴出流速と広がり幅の定義を説明するための模式図である。(b)は噴出流速と広がり幅との関係を示すグラフである。
【図10】入室着座時間に関する調査結果を示すグラフである。
【図11】衛生洗浄装置における動作の一例を示すフローチャートである。
【図12】図1の衛生洗浄装置の流量調整弁を示す正面図である。
【図13】図12に示すB−B線に沿って切断した閉状態の流量調整弁を示す断面図である。
【図14】図12に示すA−A線に沿って切断した閉状態の流量調整弁を示す断面図である。
【図15】図12に示すB−B線に沿って切断した開状態の流量調整弁を示す断面図である。
【図16】図12に示すA−A線に沿って切断した開状態の流量調整弁を示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態1に係る衛生洗浄装置の構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施の形態に係る衛生洗浄装置は、便器及び便座を含むトイレ装置に用いられる衛生洗浄装置であって、前記便座に着座した被洗浄体に向けて洗浄水を吐出する第1洗浄ノズルと、給水源に接続されるべき上流端を有し、下流端が前記第1洗浄ノズルに接続された第1流路と、前記便器に向けて洗浄水を吐出して前記便器を洗浄する第2洗浄ノズルと、前記第1流路から分岐され、前記第2洗浄ノズルに接続された第2流路と、前記第2流路を流れる洗浄水の流量を調整する流量調整弁と、前記流量調整弁の動作を制御する制御部とを備える。ここで「接続される」は、「直接に接続される」形態と「間接に接続される」形態との双方を含む。「被洗浄体」として、人体が例示される。
【0013】
前記制御部は、前記便器の洗浄を開始する時に、前記流量調整弁を弁開度がある弁開度から大きくなるように制御するよう構成されていてもよい。
【0014】
衛生洗浄装置は、前記第1流路において前記上流端と前記第2流路の分岐点との間に設けられ、かつ前記給水源からの洗浄水を減圧する減圧弁をさらに備えていてもよい。
【0015】
衛生洗浄装置では、前記流量調整弁は、一端が開放されかつ他端が閉鎖された円柱状の内部空間と、該内部空間の内周面に開口する第3流路と、該内部空間の他端に開口する第4流路とを含む弁ボディと、前記弁ボディの内部空間に前記一端から回動可能に挿入され、かつ内部流路を含む円柱状の弁体と、を備え、前記弁体は、基端部が前記弁ボディの外部においてモータに接続され、前記内部流路の一方口が前記弁体の先端面に開口し、かつ前記内部流路の他方口が前記弁体の軸方向における前記弁ボディの第3流路の開口に対応する位置に開口するように構成されており、前記弁ボディの内部空間の軸方向における前記他端と前記第3流路の開口との間の部位並びに前記第3流路の開口と前記一端との間に部位に、前記内部空間の内周面と前記弁体の外周面との間隙を該間隙の全周に渡ってシールするシール機構が設けられていてもよい。
【0016】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
なお、以下では全ての図面を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複する説明を省略する。
【0018】
(実施の形態1)
図17は、実施の形態1に係る衛生洗浄装置の構成を示す模式図である。
【0019】
衛生洗浄装置100は、便器700及び便座400を含むトイレ装置1000(図1参照)に用いられる。衛生洗浄装置100は、便座400に着座した被洗浄体に向けて洗浄水を吐出する第1洗浄ノズル1、2と、給水源201に接続されるべき上流端を有し、下流端が第1洗浄ノズル1、2に接続された第1流路202、203と、便器700に向けて洗浄水を吐出して便器700を洗浄する第2洗浄ノズル40と、第1流路1、2から分岐され、第2洗浄ノズル40に接続された第2流路204、205と、第2流路204、205を流れる洗浄水の流量を調整する流量調整弁103と、流量調整弁103の動作を制御する制御部4とを備える。衛生洗浄装置100のこれ以外の構成要素は、特に限定されず、任意の公知の構成を採用することができる。
【0020】
上記構成の衛生洗浄装置100において、被洗浄体を洗浄する際には、洗浄水は給水源201から第1流路202、203を通り第1洗浄ノズル1、2に流れる。洗浄水は、第1洗浄ノズル1、2から吐出して、便座400に着座した被洗浄体を洗浄する。
【0021】
また、便器700の洗浄を開始する際、洗浄水は、第1流路202、203から第2流路204、205を通り第2ノズル40に流れる。ここで、「開閉弁」は、一般に「開放」と「閉止」との間で操作量がステップ状に変化され、それに応じて弁開度がステップ状に変化するように設計されている。一方、「流量調整弁」は、流量を調整する機能を有する構造に設計されているため、構造的に、操作量がステップ状に変化しても弁開度はステップ状に変化しない。このため、弁開度が大きくなるに従って洗浄水の吐出量は増加する。従って、制御部4が、流量調整弁103が所定の弁開度となるよう操作量をステップ状に変化させても流量調整弁103の弁開度はステップ状に変化しないため、洗浄初期には、洗浄水の吐出量が少ない。このため、仮に流量調整弁103に給水源からの高い水圧が作用していたとしても、第2洗浄ノズル40から噴出される勢いが抑えられ、洗浄水が便器700に散布される範囲は狭い。これにより、便器700から洗浄水が飛び出すことがないため、第2洗浄ノズル40を便器700の中で高く配置することができる。
【0022】
そして、洗浄水の流量が増えるに伴い、洗浄水の散布範囲が徐々に広がっていく。このため、便器700の上端付近まで洗浄水が行きわたり、便器700の広い範囲に水膜が形成される。これにより、汚物が便器700に付着することが防止される。
【0023】
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2は、実施の形態1の衛生洗浄装置を、便座を備える衛生洗浄装置に適用した形態を例示する。
【0024】
<トイレ装置>
なお、以下、衛生洗浄装置100の本体部200側を後方とし、便座部400の先端側を前方として説明する。
【0025】
図1は、実施の形態1に係る衛生洗浄装置100を含むトイレ装置1000を示す。
【0026】
トイレ装置1000は、便器700を有し、トイレットルーム内に設置される。便器700上に衛生洗浄装置100が装着される。
【0027】
衛生洗浄装置100は、本体部200、遠隔操作装置300、便座部400、蓋部500および入室検知センサ600により構成される。
【0028】
本体部200には、便座部400および蓋部500が開閉自在に取り付けられる。本体部200の正面上部に着座センサ610が設けられる。本体部200の正面下部に後述する便器ノズルカバー40Kが設けられ、便器ノズルカバー40Kの背部に便器ノズル40が位置する。
【0029】
着座センサ610としては、例えば反射型の赤外線センサが用いられる。着座センサ610は、赤外線を便座部400上に照射し、便座部400に着座した人体から反射された赤外線を検出する。着座センサ610が赤外線を検出すると、検出信号を後述する制御部4(図3)に出力する。この制御部4によって便座部400上に使用者が存在すると判断される。
【0030】
遠隔操作装置300には、衛生洗浄装置100を操作するための複数のスイッチが設けられている。遠隔操作装置300は、例えば便座部400上に着座する使用者が操作可能な場所に取り付けられる。
【0031】
入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に取り付けられる。入室検知センサ600としては、例えば反射型の赤外線センサが用いられる。入室検知センサ600は、トイレットルームの入口等に向かって赤外線を照射し、入口へ入ってきた人体から反射された赤外線を検出する。入室検知センサ600が赤外線を検出すると、検出信号を制御部4へ出力する。この制御部4によって、トイレットルーム内に使用者が入室したと判断される。
【0032】
制御部4(図3)は、遠隔操作装置300、入室検知センサ600および着座センサ610から送信される信号に基づいて、衛生洗浄装置100の各部の動作を制御する。また、制御部4は、後述するように、便器部700の洗浄を開始する時に、流量調整弁103を弁開度がある弁開度から大きくなるように制御するよう構成されている。
【0033】
<遠隔操作装置>
図2は、図1の遠隔操作装置300の正面図である。
【0034】
遠隔操作装置300は、コントローラ本体部301の上部には、ワイド洗浄スイッチ305、リズム洗浄スイッチ306、水勢設定スイッチ307、308、ムーブ洗浄スイッチ309、洗浄位置設定スイッチ310、311が設けられている。コントローラ本体部301の下部には、停止スイッチ302、おしり洗浄スイッチ303、ビデ洗浄スイッチ304が設けられている。
【0035】
使用者が遠隔操作装置300の各スイッチを操作すると、各スイッチに応じた信号が遠隔操作装置300から制御部4(図3)に送信される。制御部4が受信すると、各信号に応じて衛生洗浄装置100を制御する。
【0036】
例えば、使用者がおしり洗浄スイッチ303を操作すると、後述のおしりノズル1(図3)が移動し洗浄水を噴出する。また、使用者がビデ洗浄スイッチ304を操作すると、後述のビデノズル2が移動して洗浄水が噴出する。さらに、使用者が停止スイッチ302を操作すると、上記の洗浄水の噴出が停止され、各ノズル1、2が戻される。
【0037】
図3は、衛生洗浄装置100の本体部200の構成を示す模式図である。
【0038】
本体部200は、給水構造および給水構造を制御する制御部4を有する。
【0039】
給水構造は、第1流路および第2流路を含む。第1流路は、給水源である水道配管201からノズル部20へ洗浄水を供給する流路である。第1流路は、たとえば、人体洗浄水流路202および人体洗浄水流路203から構成される。第2流路は、第1流路から分岐され、かつ便器ノズル40に洗浄水を供給する流路である。第2流路は、たとえば、分岐管路204および便器洗浄水流路205から構成される。
【0040】
つまり、水道配管201は、分岐水栓5を介して人体洗浄水流路202(前流路)に接続する。この人体洗浄水流路202は、熱交換器12を介して、人体洗浄水流路203(後流路)に接続する。また、人体洗浄水流路202から、減圧弁8と固定オリフィス9との間で分岐管路204が分岐する。さらに、分岐管路204から第1のバキュームブレーカ31を介して便器洗浄水流路205に接続する。
【0041】
人体洗浄水流路202には、ストレーナ6、止水電磁弁7、減圧弁8、固定オリフィス9、流量センサ11および温度センサ13aが、水道配管201側から熱交換器12側に向かってこの順で設けられる。
【0042】
減圧弁8は、人体洗浄水流路202において上流端と分岐管路204の分岐点との間に設けられる。減圧弁8は、水道配管201からの洗浄水を減圧する。
【0043】
固定オリフィス9は、第1のバキュームブレーカ31と一体的に形成されている。
【0044】
人体洗浄水流路203は、その一端が熱交換器12に接続され、他端がノズル部20に接続される。人体洗浄水流路203には、温度センサ13b、容積型ポンプ14、バッファタンク15および切替弁16が、熱交換器12側からノズル部20に向かってこの順で設けられる。
【0045】
第2のバキュームブレーカ61は、バッファタンク15に設けられ、熱交換器12のケーシングの上壁面よりも高い位置に配置される。これにより、熱交換器12が空になった状態で加熱することを防止する。また、熱交換器12からの高温の水、およびノズル部20の洗浄水噴出口からの汚水が第2のバキュームブレーカ61より上流に逆流することが防止される。
【0046】
ノズル部20は、おしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3を含む。おしりノズル1およびビデノズル2は、便器700の開口に向けて洗浄水を吐出する。切替弁16から3つの配管に分岐し、それぞれの配管の先におしりノズル1、ビデノズル2およびノズル洗浄用ノズル3が接続される。おしりノズル1およびビデノズル2は、使用者の局部の洗浄を行うために用いられる。ノズル洗浄用ノズル3は、おしりノズル1およびビデノズル2のうち便器700内に突出する部分を洗浄するために用いられる。
【0047】
切替弁16は、切替弁モータ16mを含む。切替弁モータ16mは制御部4により制御され、切替弁16が開閉する。切替弁16は、おしりノズル1の配管に流路を開く、ビデノズル2の配管に流路を開く、ノズル洗浄用ノズル3の配管に流路を開く、および流路を閉じる4つの方向に切り替える。
【0048】
分岐管路204は、その一端が人体洗浄水流路202に接続され、他端が第1のバキュームブレーカ31に接続される。
【0049】
第1のバキュームブレーカ31は、熱交換器12および便器ノズル40の洗浄水噴出口よりも上方の位置に配置される。これにより、熱交換器12からの高温の水、および便器ノズル40の洗浄水噴出口からの汚水が第1のバキュームブレーカ31より上流に逆流することが防止される。
【0050】
便器洗浄水流路205は、その一端が第1のバキュームブレーカ31に接続され、他端が便器ノズル40に接続される。便器洗浄水流路205には、流量調整弁103が設けられる。便器ノズル40は便器ノズルモータ40mを含み、流量調整弁103は流量調整弁モータ103mを含む。これらのモータ40m、103mは、制御部4により制御され、便器ノズル40が移動し、流量調整弁103が開閉する。流量調整弁103は、便器洗浄水流路205を流れる流量調整機能を有する。
【0051】
制御部4は、流量センサ11、温度センサ13a、13b、入室検知センサ600(図1)、着座センサ610(図1)からの検出信号、および遠隔操作装置300(図1)からの操作信号を受ける。制御部4は、これらの信号に基づいて、止水電磁弁7、便器ノズルモータ40m、流量調整弁モータ103m、熱交換器12、ポンプ14、切替弁モータ16mを制御する。
【0052】
次に、本体部200における洗浄水の流れを説明する。
【0053】
洗浄水は、水道配管201から分岐水栓5を介して人体洗浄水流路203に流入する。そして、ストレーナ6で洗浄水に含まれるごみや不純物等が除去される。
【0054】
止水電磁弁7が開いていると、洗浄水は、減圧弁8により一定圧力に減圧される。そして、洗浄水は、その流量に応じた圧力に固定オリフィス9によってさらに減圧される。つまり、固定オリフィス9を通過する流量が多いほど、固定オリフィス9を通過する際の圧力損失が大きく、固定オリフィス9を通過後の圧力が小さくなる。
【0055】
人体洗浄水流路202を流れる洗浄水の流量は、流量センサ11により計測される。この計測値は流量センサ11から制御部4へ出力される。また、人体洗浄水流路202を流れる洗浄水の温度は温度センサ13aで検出される。この検出値は温度センサ13aから制御部4へ出力される。
【0056】
洗浄水は、熱交換器12で所定の温度に加熱される。この際、流量センサ11からの流量および温度センサ13aからの温度に基づいて、制御部4は熱交換器12を制御する。
【0057】
洗浄水は、容積型ポンプ14により脈動が与えられて、バッファタンク15に送り出される。バッファタンク15では、加熱された洗浄水の温度が緩衝され、洗浄水の温度むらが抑制される。なお、熱交換器12とバッファタンク15との合計の容量は、15cc〜30ccであることが好ましく、20cc〜25ccであることがより好ましい。
【0058】
切替弁16がノズル1、2、3の配管のいずれかに流路を開くと、洗浄水は、切替弁16により切り替えられた配管に流入し、ノズル1、2、3から吐出する。この切替弁16の切り替えは、主に遠隔操作装置300の操作信号に基づいて、制御される。なお、この際、流量調整弁103は閉じられている。
【0059】
切替弁16が流路を閉じた状態で、流量調整弁103が開かれると、洗浄水は、人体洗浄水流路202から分岐管路204を通り、便器洗浄水流路205へ流れる。洗浄水は、流量調整弁103を通過し、便器ノズル40から噴出する。この便器ノズル40の位置は、便器ノズルモータ40mにより移動される。
【0060】
<便器ノズル>
[構成]
図4は、便器ノズル40が収容されているときの衛生洗浄装置100の縦断面図である。図5は、図4の便器ノズル40およびその周辺部の拡大断面図である。図6は、便器ノズル40が洗浄しているときの衛生洗浄装置100の縦断面図である。図7は、図6の便器ノズル40およびその周辺部の拡大断面図である。図8(a)は、便器ノズル40の先端部を示す断面図である。図8(b)は、図8(a)に示すC14−C14線に沿って切断した便器ノズル40の断面図である。
【0061】
便器ノズル40は、便器ノズルモータ40mにより移動する。便器ノズル40が収容される場合、図4および図5に示すように、便器ノズル40は便器ノズルカバー40K内の収納位置に収まる。また、便器ノズル40が洗浄水を噴出する場合、図6および図7に示すように、便器ノズル40は便器ノズルカバー40Kから外に出て便器洗浄位置に移動する。
【0062】
便器ノズルカバー40Kは、本体部200の下部に配置される。便器ノズルカバー40Kの内部で便器700の上端より上に、LED(発光ダイオード)等からなるランプ50が設けられている。便器ノズルカバー40Kは、便器700の上端から下方に突出し、便器ノズル40の先端部およびランプ50を覆う。便器ノズルカバー40Kは、透明な樹脂により形成されている。これにより、ランプ50が発光すると、その光は便器ノズルカバー40Kを通して便器700の内部に照射される。
【0063】
便器ノズルカバー40Kは、遮蔽部40kaを含む。便器ノズル40は洗浄水を噴出しながら収納位置へ移動している間に、洗浄水が便器700の外側に飛び出すことを遮蔽部40kaは防止している。これにより、仮に、制御部4による制御が不能となり、便器ノズル40が洗浄水を噴出しながら所定の収納位置や便器洗浄位置以外の位置で停止することがある。このような場合でも、遮蔽部40kaにより洗浄水が便器700から飛び出して、床面に漏水することを防止することができる。
【0064】
便器ノズル本体部41の後端部は、回転片43および便器ノズルモータ40mを介して本体下部ケーシング200Aに固定されている。便器ノズルモータ40mが動作すると、本体下部ケーシング200Aに対して回転片43が回転し、この回転に伴い便器ノズル本体部41の先端部が移動する。回転片43にトーションバネ40Sが挿入されている。
【0065】
回転片43の固定部43aと便器ノズルカバー40Kの固定溝40Kbとにより、トーションバネ40Sは固定されている。これにより、トーションバネ40Sは、回転片43を介して便器ノズル本体部41をノズル収納位置側に押さえ付けている。このため、便器ノズルモータ40mと回転片43との間の駆動系のガタ(backlash)と、便器ノズルモータ40mに減速ギアが用いられている場合の減速ギアのバックラッシュとが存在しても、便器ノズル本体部41が所定の収納位置に固定される。つまり、手動で便器ノズル本体部41を収納位置まで移動させると、便器ノズル本体部41は、所定の収納位置で停止せず、ガタ分だけ戻ってしまう。これに対して、便器ノズル本体部41がトーションバネ40Sによりノズル収納側に付勢されていれば、トーションバネ40Sはガタ分を吸収するため、手動操作によっても便器ノズル本体部41を所定の収納位置に固定することができる。
【0066】
トーションバネ40Sのトルクは、接続管44により生ずる張力と同等以上に設定されている。このため、便器ノズル本体部41が接続管44により引っ張られても、この引っ張る力と同等以上の力で便器ノズル本体部41がノズル収納側に押さえられている。このため、便器ノズルモータ40mにより便器ノズル本体部41を移動させた際に、便器ノズル本体部41の位置を正確に設定することができる。
【0067】
便器ノズル40は、便器ノズル本体部41および噴流形成部材42を有する。
【0068】
便器ノズル本体部41は、筒状の形状を有する。便器ノズル本体部41は、その先端部に棒状の噴流形成部材42が挿入される。便器ノズル本体部41の内面には、段差部41dが形成されている。便器ノズル本体部41の内径は、段差部41dにおいて大きくなる。便器ノズル本体部41は、段差部41d(図8(a))を境に径の小さい小径部および径の大きな大径部を含む。
【0069】
便器ノズル本体部41の後端部に、回転片43の一端が固定されている。回転片43の他端は便器ノズルモータ40mに接続され、便器ノズルモータ40mは後述する本体下部ケーシング200Aに固定されている。便器ノズルモータ40mが動作すると、便器ノズル本体部41の先端部が図5に示す矢印Aの方向に回動する。便器ノズル本体部41の後端部に接続管44が接続される。
【0070】
噴流形成部材42は、図8(a)に示すように、挿入軸部42a、羽根部材42b、径大部42c、拡大部42dおよびフランジ部42eを含む。
【0071】
挿入軸部42aは、棒状の形状を有し、便器ノズル本体部41の内側に挿入される。挿入軸部42aの外径は便器ノズル本体部41の内径より小さく、挿入軸部42aの外周面と便器ノズル本体部41の内周面の間に隙間が形成される。この隙間が洗浄水の流路41sとなる。また、挿入軸部42aはその外周面に3つの羽根部材42bを有する。
【0072】
羽根部材42bは、図8(a)および図8(b)に示すように、平板形状を有する。羽根部材42bは、挿入軸部42aから径方向へ延び、挿入軸部42aの中心から羽根部材42bの先端までの長さは、便器ノズル本体部41の小径部より大きく大径部より小さい。このため、便器ノズル本体部41に噴流形成部材42が挿入されると、段差部41dと羽根部材42bとが当接する。このとき、羽根部材42bは、噴流形成部材42と便器ノズル本体部41との間のスペーサとして機能する。噴流形成部材42が便器ノズル本体部41の内部で位置決めされる。
【0073】
径大部42cは、挿入軸部42aの先端側に設けられる。径大部42cの直径は、挿入軸部42aの直径から徐々に大きくなる。径大部42cは、挿入軸部42aから拡大部42dに向かって緩やかに広がる曲面を形成する。径大部42cの外径が便器ノズル本体部41の内径より小さいため、径大部42cは便器ノズル本体部41の内部に挿入される。径大部42cの外周面と便器ノズル本体部41の内周面との間の隙間は、洗浄水の流路41sと連通する。この隙間は、流路41sより狭く、さらに拡大部42dに向かって狭くなっていく。このため、流路41sから流入する洗浄水は、この隙間で加速される。よって、この隙間は加速流路41tを形成する。また、先端部開口41hにおいて洗浄水の加速流路41tを通った洗浄水が吐出されるため、ここに環状吐出口が形成される。
【0074】
なお、径大部42cの直径が4mmに、加速流路41tの流路幅は約0.3mmに、洗浄流量が1L/minに設定されると、便器ノズル40から洗浄水が噴出する速度は4m/secとなる。これにより、洗浄水は、便器700のボール面に一様に拡がることができる。
【0075】
拡大部42dは、径大部42cの先端側に設けられる。拡大部42dの直径は径大部42cの直径から徐々に大きくなる。拡大部42dは、径大部42cからフランジ部42eに向かって緩やかに広がる曲面を形成する。拡大部42dは、環状吐出口に対して間隔を隔てて対向し、中心から径方向に広がる緩やかな曲面を形成する。
【0076】
フランジ部42eは、円盤形状であって、径大部42cの先端側に設けられる。フランジ部42eの外径は、便器ノズル本体部41の外径よりも大きい。フランジ部42eは便器ノズル本体部41の外部に位置する。
【0077】
[便器ノズルの動き]
便器ノズル40が収容位置にある場合、便器ノズル40は便器ノズルカバー40K内に配置される。便器ノズル40の先端部は、便器700の上端より下側に位置し、便器700の中央に向かって下向きに傾斜する。
【0078】
便器ノズル40が収納位置から便器洗浄位置に移動する場合、便器ノズル40の先端部が図5の矢印Aで示す方向に移動する。便器ノズル40は、便器ノズルカバー40Kの外へ突出して、便器700の内部空間に露出する便器洗浄位置へ移動する。
【0079】
洗浄水が接続管44から便器ノズル40に供給されると、図6に示すように、洗浄水は、流路41sを通り、加速流路41tで設定流速まで加速される。洗浄水は、環状吐出口から吐出されて、拡大部42dの緩やかな局面に沿って向きを下側から径方向の外側へ変える。洗浄水は、フランジ部42eの全周に拡がり、フランジ部端42fから放射状に噴出する。
【0080】
<流量調整弁>
[構成]
図12は、流量調整機能を有する流量調整弁103の外観正面図である。図13は、流量調整弁103が全閉状態のときの図12に示すB−B線に沿って切断した断面図である。図14は、流量調整弁103が全閉状態のときの図12に示すA−A線に沿って切断した断面図である。図15は、流量調整弁103が全開状態のときの図12示すB−B線に沿って切断した断面図である。図16は、流量調整弁103が全開状態のときの図12に示すA−A線に沿って切断した断面図である。
【0081】
流量調整弁103は、弁開度を調整することにより、便器洗浄水流路205を流れる洗浄水の流量を調整する弁である。流量調整弁103は、弁ボディ91および弁体95を含む。
【0082】
弁ボディ91は、円筒形状を有し、内部空間と流出路(第3流路)93と流入路(第4流路)92とを含む。内部空間は、円柱状であって、一端が開放され、かつ他端が閉鎖されている。流入路92は、弁ボディ91の下部に設けられ、内部空間の他端に開口する。流出路93は、内部空間の内周面に開口する。弁ボディ91の軸と、流出路93の軸とはほぼ直交する。
【0083】
弁体95は、弁ボディ91内に回動可能に挿入される。弁体95は回転軸部99および内部流路94を有する。
【0084】
回転軸部99は、弁体95の基端部に設けられる。回転軸部99は、弁ボディ91の内周面に臨み、O形断面形状の穴105を介して流量調整弁モータ103mに接続される。
【0085】
内部流路94は、入口部(一方口)および出口部(他方口)を含む。入口部は、弁体95の先端面に開口し、弁ボディ91の流入路92と対向する。出口部96は、流路94と連通し、径方向に延びる。出口部96は、弁体95の軸方向における弁ボディ91の流出路93の開口に対応する位置に開口する。つまり、弁ボディ91に対して弁体95が回転すると、出口部96は、弁ボディ91の流出路93と連通する位置に設けられている。出口部96が流出路93と対向すると、流路94は流入路92および流出路93と連通する。出口部96が流出路93と対向する位置以外の位置にあると、流路94は流入路92および流出路93と遮断される。
【0086】
弁体95の外周面に摺動接触面97およびシール機構が設けられる。摺動接触面97は、弁ボディ91の内周面に沿って接触する。摺動接触面97に流路94の出口部96が設けられる。
【0087】
溝部101および溝部102、およびそれらに収容される弾性シール部材98、108がシール機構として機能する。このシール機構は、弁ボディ91に対して弁体95が回転自在に、弁ボディ91の内周面と弁体95の外周面との間をシールする。1つのシール機構(溝部102、弾性シール部材108)は、弁ボディ91の内部空間の軸方向における他端と流出路93の開口との間の部位に設けられる。もう1つのシール機構(溝部101、弾性シール部材98)は、流出路93の開口と弁ボディ91の内部空間の軸方向における一端との間の部位に設けられる。これらのシール機構は、内部空間の内周面と弁体95の外周面との間隙を該間隙の全周に渡ってシールする。
【0088】
つまり、2本の溝部101と溝部102とは摺動接触面97に設けられ、2本の溝部101、102の間に出口部96が配される。溝部101と溝部102とは、周方向に延び、リング状である。溝部101、102に弾性シール部材98、108が嵌められる。
【0089】
弾性シール部材98、108は、流入路92からの洗浄水が弁ボディ91と弁体95との間隙を通り弁ボディ91の外部に漏れないよう、この間隙に介在する。弾性シール部材98、108は、断面形状がX字形をしたゴムのリングである。弾性シール部材98、108は、弁体95の溝部101と弁ボディ91の内面とにそれぞれ密着する2本のシール帯を形成する。すなわち、1個の弾性シール部材98、108により実質的には二重のシールができ、確実な漏れ防止効果が得られる。
【0090】
しかも、Oリングによるシールのように丸形断面を押しつぶす容積圧縮変形と異なり、弾性シール部材98、108は、X形断面を押し挟むような曲げ変形によるシールである。このため、同じシールつぶししろの場合でも変形に要する力は、Oリングに較べて圧倒的に小さい。すなわち、弾性シール部材98、108と弁ボディ91および溝部101、102との接触摺動摩擦力が小さくなる。弁体95を回転駆動するのに必要なトルクが飛躍的に低減し、固着して作動しずらくなるなどの不都合がない。長期間、安定して弁体95を軽く滑らかに駆動でき、流量調整弁モータ103mが小型低トルクにできることから、流量調整弁103および衛生洗浄装置100を小型安価にすることができる。
【0091】
流量調整弁モータ103mは、正逆転回転可能な駆動手段であって、たとえば、ステッピングモータが用いられる。流量調整弁モータ103mは、出力軸104、取付フランジ106および取付ボス107を含む。
【0092】
出力軸104は、O形断面形状であり、弁体95の回転軸部99内の穴105に挿入される。これにより、出力軸104が回転軸部99に接続され、流量調整弁モータ103mが弁体95に固定される。
【0093】
取付フランジ106と取付ボス107とが接続され、流量調整弁モータ103mが弁ボディ91に固定される。この取付フランジ106の穴径は、弁ボディ91の取付ボス107の径に対し大きい。このため、取付フランジ106と取付ボス107との間に取付スキマガタが形成される。この取付スキマガタにより、弁ボディ91と弁体95との軸心の偏心が吸収される。また、弁ボディ91の取付ボス107の高さ寸法は、流量調整弁モータ103mの取付フランジ106の板厚より大きい。このため、流量調整弁モータ103mが取付ビス(図示せず)で締め付けられた後も、上記した取付スキマガタの範囲内で偏心を補償する動きの自由度を有する構成である。
【0094】
[流量調整弁の作用]
流量調整弁モータ103mにより弁体95が弁ボディ91に対して回転する。出口部96が流出路93に重なると、流入路92、流路94、出口部96および流出路93が連通する。これにより、洗浄水は、流入路92から流路94、出口部96および流出路93を通り、便器洗浄水流路205を流れる。
【0095】
この弁体95の回転角度に応じて、出口部96と流出路93との相対位置が変化する。出口部96と流出路93との重なり面積、いわゆる流量調整弁103の弁開度が可変する。これにより、便器洗浄水流路205における断面積が変わり、便器洗浄水流路205を経て便器ノズル40に流れる洗浄水の流量を可変する。
【0096】
また、流入路92および流出路93は各1つであることから、図13および図14で示す流量調整弁103を閉じた絞り状態のとき、流入路92に水道配管201からの水圧が作用していても、弁体95は流出路93側に押し付けられる。これは、流入路92に水圧が作用すれば、大気開放され大気圧である流出路93側が低圧部になり、その反対側が高圧部110となるからである。この弁体95は流出路93側に押し付けられることによって、弁ボディ91の内径と弁体95の外径との隙間であるクリアランスが多少あっても、流入路92から流出路93への内部漏れは、実用的に不都合のない微少な漏れ量にすることができる。
【0097】
しかも、この内部漏れを防止するゴムのような弾性材料を弁ボディ91と、弁体95もしくは摺動接触面97とに設ける必要がない。このような弾性材料によって、流量調整弁モータ103mの駆動トルクが大きくなることがない。また、弁ボディ91および弁体95が、射出成型樹脂など、特に高精度を要さない一般的な成型精度で安価に生産することができる。
【0098】
また、必要駆動トルクが小さくできることにより、駆動手段である流量調整弁モータ103mの減速ギア(図示せず)の減速比を低減できる。これにより切換えや流量調節の応答性を向上できる。そして、流量調整弁103を閉じた絞り状態のときの弁体95の出口部96の位置を、図13のように、弁ボディ91の流出路93までの回転角度を20度〜50度くらいの小さい動作角度にすることによって、制御部4からの指示により便器洗浄を開始するまでの作動応答時間を、より速くすることができる。
【0099】
また、流量調整弁モータ103mにより弁体95の回転角度によって任意に流量が可変できる、いわゆる流量調整機能を有する流量調整弁103である。このため、後述するように、便器洗浄時の弁開度の設定を、便器700の大きさによって調節設定でき、便器の大きさ700や形に適した便器洗浄噴流を実現することができる。
【0100】
図14(a)および図14(b)は、便器ノズル40から噴出される洗浄水の噴出流速と広がり幅との関係を示す図である。なお、図14(b)の縦軸は洗浄水の広がり幅:WW[mm]を示し、横軸は洗浄水の噴出流速:WV[m/s]を示す。
【0101】
図14(a)に示すように、便器ノズル40は、軸心が鉛直方向になるように床面から高さ:100の位置に配置される。この便器ノズル40の先端部からほぼ水平方向に流速:WV[m/s]で洗浄水が噴出する。このとき、洗浄水は、便器ノズル40を中心にほぼ円形に広がり、床面に落下する。この床面における洗浄水の広がり幅がWW[mm]である。
【0102】
図14(b)に示すように、洗浄水の噴出流速:WVが2m/sであるとき、広がり幅:WWが200mmである。また、洗浄水の噴出流速が10m/sであるとき、広がり幅:WWが1000mmである。そして、洗浄水の噴出流速:WVが大きくなるほど、ほぼ比例的に広がり幅:WWが大きくなる。
【0103】
この結果、洗浄水の噴出流速:WVを変えることにより、洗浄水の広がり幅:WWを調整することができる。このため、衛生洗浄装置100を装着する便器700の大きさに洗浄水の広がり幅:WWを合わせて、便器ノズル40から噴出する洗浄水の流速が決定される。さらに、この決定流速に便器ノズル40からの洗浄水の流速がなるように、便器ノズル40に供給される単位時間当たりの流量が設定される。この単位時間当たりの流量は、流量調整弁103の弁開度により決まる。
【0104】
たとえば、一般的な便器の長手方向の長さは、約320〜380mmであるため、洗浄水の噴出流速:WVは、4m/s〜8m/sの範囲になるように、流量調整弁103の弁開度が設定されることがより好ましい。
【0105】
このようにして、広がり幅:WWに応じた流量調整弁103の弁開度が設定されると、洗浄水が便器700の内面の広い範囲に行き渡り、かつ便器700の外方へ飛散することを防止することができる。さらに、洗浄水が便器700の内面で大きく跳ね返ることも防止することができる。
【0106】
[流量調整弁における弁体の回転速度]
便器プレ洗浄は、使用者から排出される汚物が便器700に付着することを防止するために行われる。よって、使用者がトイレットルームに入室してから着座するまでの間に、便器プレ洗浄がなされることが好ましい。この時間時間を、たとえば、以下の調査結果により求めた。
【0107】
図15は、入室着座時間の調査結果を示す図である。なお、横軸は使用者がトイレットルームに入室してから着座するまでの時間(秒)を示し、縦軸は使用者の累積百分率(%)を示す。
【0108】
調査の結果、90%以上の使用者が、トイレットルームに入室してから便座部400に着座するまでに6秒以上かかっていることが明らかとなった。
【0109】
これにより、使用者がトイレットルームに入室してから少なくとも6秒以内に、便器プレ洗浄を開始しかつ終了させる。これにより、使用者が着座して汚物を排出する前に便器ノズル40は便器700の内面を十分に濡らすことができる。また、使用者の汚物により、便器ノズル40が汚染されることも防止することができる。
【0110】
よって、使用者が入室して6秒以内に、便器ノズル40から噴出する洗浄水を止める必要がある。このために、流量調整弁が開いてから閉じるまでの時間が、たとえば6秒以内になるように、弁体95が回転するように便器ノズルモータ40mの回転数などが設定される。
【0111】
<衛生洗浄装置における動作>
図11は、衛生洗浄装置100における動作の一例を示すフローチャートである。
【0112】
入室検知センサ600は、使用者がトイレットルームに入室するか否かを検出する(ステップS1)。
【0113】
入室検知センサ600により使用者の入室が検知されていない間(ステップS1:NO)、図4および図5に示すように、便器ノズル40は便器ノズルカバー40K内の収容位置に配置される。
【0114】
使用者がトイレットルームに入室すると、入室検知センサ600が使用者を検出する(ステップS1)。入室検知センサ600は検出信号を制御部4へ送信する。これにより、制御部4は、便器プレ洗浄を開始し、ランプ50、便器ノズルモータ40m、切替弁モータ16mおよび流量調整弁モータ103mを制御する。
【0115】
ランプ50が点灯する(ステップS2)。これにより、使用者は、便器プレ洗浄が実施されていることがわかる。
【0116】
便器ノズルモータ40mが動作すると、便器ノズル40の先端部が図5の矢印Aで示す方向に移動する(ステップS3)。これにより、図6および図7に示すように、便器ノズル40は、便器ノズルカバー40Kの外へ突出する。そして、便器ノズル40は、便器700の内部空間に露出する便器洗浄位置へ移動する。
【0117】
便器ノズル40が便器洗浄位置へ移動した後に、止水電磁弁7(図3)が開き、流量調整弁モータ103m(図3)が駆動し、流量調整弁103が開く(ステップS4)。これにより、水道配管201からの洗浄水は、人体洗浄水流路202に流入する。ここで、洗浄水は減圧弁8により減圧される。これにより、便器ノズル40に流入する水圧が下がるため、便器ノズル40から噴出する洗浄水の速度が小さくなる。このため、洗浄水が便器700の外へ飛び出すことが防止される。
【0118】
さらに、洗浄水が人体洗浄水流路202から分岐管路204、便器洗浄水流路205および接続管44に流入する。洗浄水が便器ノズル40から放射状に噴出する。
【0119】
この流量調整弁103は、その弁開度を絞り状態から開状態に移行する。弁開度は、時間と共にほぼ比例し大きくなる。このため、流量調整弁103の動作初期、開度が小さい。このため、仮に、水道配管201からの高い水圧が流量調整弁103に作用しても、便器ノズル40から噴出する洗浄水の量は少ない。よって、便器ノズル40から噴出する洗浄水が便器700の外へ飛び出すことが防止される。また、仮に、流路202、204、205、44に空気が混入していても、便器ノズル40から空気が排出される際、空気が洗浄水を吹き飛ばすことが防止される。よって、便器ノズル40から洗浄水が便器の外が飛び出さない。
【0120】
そして、流量調整弁103の開度は最大になる。この流量調整弁103の最大開度は、上記のとおり、洗浄水の広がり幅:WW[mm]と噴出流速:WV[m/s]との関係から便器のサイズに応じて定められる。図6に示すように、洗浄水は、便器ノズル40の軸心に対してほぼ直交する方向へ放射状に放出される。これにより、便器700の廃棄口700Dを中心とする内面の広い範囲に洗浄水が噴出される。洗浄水が、便器700の内面を濡らし、ここに水膜を一様に形成する。この水膜が、便器700の内面に汚物が付着することを防止する。
【0121】
再び、流量調整弁103の開度は、時間と共にほぼ比例して小さくなる。
【0122】
このように便器プレ洗浄が実施されている間に、制御部4は、使用者がトイレットルームに入室してから所定時間(例えば、6秒)経過したか否かを判別する(ステップS5)。所定時間経過していない場合(ステップS5:NO)、制御部4は、使用者により停止スイッチ302(図2)が押下されたか否かを判別する(ステップS6)。停止スイッチ302が押下されていない場合(ステップS6:NO)、制御部4は、着座センサ610(図1)の出力信号に基づいて、使用者が便座部400(図1)に着座したか否かを判別する(ステップS7)。使用者が便座部400に着座していない場合(ステップS7:NO)、制御部4は、ステップS5の処理に戻る。
【0123】
一方、所定時間が経過した場合(ステップS5:YES)、停止スイッチ302が操作された場合(ステップS6:YES)、使用者が着座した場合(ステップS7)、便器プレ洗浄が終了する。つまり、流量調整弁103が閉じ(ステップS8)、便器ノズル40からの洗浄水の噴出が止まる。また、便器ノズル40が収納位置に戻り、移動が停止する(ステップS9)。さらに、ランプ50が消灯し、便器プレ洗浄の終了が使用者に報知される。
【0124】
<効果>
上記構成の衛生洗浄装置100によれば、使用者がトイレットルームに入室してから所定時間が経過することにより、便器プレ洗浄が終了する。使用者の着座前に便器700の内面を十分に濡らすとともに、便器ノズル40から噴出される洗浄水が使用者に付着することを確実に防止することができる。
【0125】
また、便器洗浄開始時に流量調整弁103が絞り状態から開状態に弁開度を移行する。流量調整弁103は、電磁弁のように閉から開に瞬時に開かず、徐々に開いて便器ノズル40内の水圧が次第に上昇しながら、所定の流量に到達する。このため、電磁弁のように開いた瞬間に水道配管201の高水圧が便器ノズル40に作用して便器から噴流が飛び出すようなことがなく、便器ノズル40から安定して洗浄水が噴流する。
【0126】
さらに、水道配管201から給水された洗浄水を減圧する減圧弁8を便器洗浄水流路205よりも上流側に備えた。これにより、流量調整弁103が徐々に開く間に、便器洗浄水流路205および便器ノズル40に作用する洗浄水の圧力は低く抑えられる。このため、便器ノズル40からの噴流をより安定することができる。
【0127】
また、ステッピングモータを流量調整弁モータ103mに用いることによって、弁体95の回転速度および流量調整弁103の弁開度が精度よくコントロールされる。このため、弁体95の回転速度が制御され、使用者の入室から着座までの所定時間内に、便器プレ洗浄が終了する。これにより、便器ノズル40からの洗浄水が使用者に付着するなどの問題が防止される。また、流量調整弁103の弁開度により、洗浄水が便器ノズル40から散布される範囲を調整することができる。このため、便器700の大きさに応じて、便器ノズル40からの洗浄水の散布範囲を調整することができる。しかも、便器700のリムに便器ノズル40からの洗浄水の散布範囲を調整することができる。これにより、便器ノズル40からの洗浄水が便器700の外に飛び出さず、かつ便器700の広い範囲に散布される。
【0128】
さらに、水道配管201から供給される洗浄水の供給状態を切替える止水電磁弁7を減圧弁8よりも上流側に備えた。これにより、使用者が衛生洗浄装置100を使用しないときは、止水電磁弁7が閉じられる。このため、衛生洗浄装置100を使用していないときに、減圧弁8および熱交換器12に不必要な水圧負荷が作用することをなくすることができる。よって、衛生洗浄装置100を長期間に亘り安心して使用することができる。
【0129】
また、使用者が停止スイッチ302を押下するか、あるいは使用者が便座部400に着座することにより、便器プレ洗浄が終了される。したがって、使用者が上記所定時間内に便座部400に着座した場合にも、便器ノズル40から噴出される洗浄水が使用者に付着することを防止することができる。
【0130】
さらに、縦軸型の流量調整弁103が用いられることにより、流量調整弁103の弁体95を回転するトルクが小さくて済む。よって、流量調整弁103が回転する際の応答性が良く、弁開度がより正確に合わせられる。このため、便器ノズル40からの洗浄水が、便器700の外に飛び出さず、かつ、便器700のリム近くの広い範囲に設定することができる。これにより、便器700の広い範囲に水膜が形成され、汚物の付着が防止される。
【0131】
<変形例>
なお、上記実施の形態では、流量調整弁モータ103mにステッピングモータが用いられた。これに対し、流量調整弁モータ103mとして、サーボモータなども用いることもできるし、小型の直流ギアードモータや交流モータなども用いることもできる。
【0132】
また、上記実施の形態では、図16のステップS3において便器ノズル40が便器洗浄位置に移動した後に、ステップS4において洗浄水の噴出が開始した。これに対し、便器ノズル40が便器洗浄位置に移動すると同時またはその前に、洗浄水の噴出が開始してもよい。特に、便器ノズル40が収納位置から移動し始めると同時に、洗浄水の噴出を開始してもよい。この場合、便器ノズル40が収納位置から便器洗浄位置に移動する間に、便器ノズル40から洗浄水が出る。しかし、便器プレ洗浄の初期では、流量調整弁103の弁開度が小さく、便器ノズル40から出る洗浄水が少ない。このため、洗浄水が便器700から飛び出すことがない。また、便器ノズル40から洗浄水の噴出開始時間が早まり、便器プレ洗浄の終了時刻も早まる。よって、使用者は少しでも早いタイミングで便座および便器を利用できるようになる。また、使用者が着座する前に便器プレ洗浄を終了することができ、便器ノズル40の汚染をより確実に防止することができる。
【0133】
また、図16のステップS2において使用者の入室が検出された場合、便器ノズル40が便器洗浄位置に移動した。これに対し、便器ノズル40を予め便器洗浄位置で待機させてもよい。この場合、便器プレ洗浄を迅速に開始することができるので、十分な量の洗浄水を便器700に供給することができる。それにより、便器700に汚物が付着することをより確実に防止することができる。なお、便器ノズル40を予め便器洗浄位置で待機させる場合には、例えば、使用者がトイレ装置1000の使用を終えた後、所定時間経過した時点で便器ノズル40を便器洗浄位置に移動させてもよい。
【0134】
さらに、上記実施の形態において、便器ノズル40から洗浄水を噴出させる場合には、人体洗浄ノズルであるノズル部20への切替弁16の切替弁モータ16mを制御することによりノズル部20(図3)への洗浄水の供給を停止してもよい。この場合、便器ノズル40に十分な量の洗浄水を供給することができるので、便器700を洗浄水で十分に濡らすことができる。その結果、便器700に汚物が付着することを十分に防止できる。
【0135】
また、上記実施の形態では、所定時間以内で、停止スイッチ302の押下や、使用者の着座により便器プレ洗浄が終了した。これに共にまたは代えて、便器ノズル40に外力が作用した場合、便器プレ洗浄が終了してもよい。この場合、便器ノズル40が便器ノズルカバー40Kの内側の収納位置に移動するため、便器ノズル40に外力に対して過負荷が作用することはない。
【0136】
さらに、上記実施の形態2では、流量調整弁103に縦軸形の流量調整弁が用いられた。これに対し、流量調整弁103にディスク型の流路調整弁を用いることもできる
また、上記実施の形態では、衛生洗浄装置100は便器700上に配置され、主に人体の洗浄に用いられた。これに限らず、顔や頭、手、足などの洗浄、ペット等の動物の洗浄、または生き物以外の洗浄などにも衛生洗浄装置100が用いられる。
【0137】
さらに、上記実施の形態2では、弁体95の外周面に設けられた溝部101、102および弾性シール部材98、108がシール機構として機能した。これに対して、溝部101、102および弾性シール部材98、108が弁ボディ91の内周面に設けられていてもよい。
【0138】
また、上記実施の形態2では、流出路93を第3流路とし流入路92を第4流路とした。これに対し、流出路93を第4流路とし流入路92を第3流路とすることもできる。
【0139】
また、上記全実施の形態は、互いに相手を排除しない限り、互いに組合わせてもよい。
【0140】
上記説明から、当業者にとっては、本発明の多くの改良や他の実施形態が明らかである。従って、上記説明は、例示としてのみ解釈されるべきであり、本発明を実行する最良の態様を当業者に教示する目的で提供されたものである。本発明の精神を逸脱することなく、その構造及び/又は機能の詳細を実質的に変更できる。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の衛生洗浄装置は、便器の広い範囲の汚物の付着を防止することができる衛生洗浄装置等として有用である。
【符号の説明】
【0142】
1 おしりノズル(第1洗浄ノズル)
2 ビデノズル(第1洗浄ノズル)
4 制御部
8 減圧弁
40 便器ノズル(第2洗浄ノズル)
91 弁ボディ
92 流入路(第4流路)
93 流出路(第3流路)
94 流路(内部流路)
95 弁体
96 出口部
97 摺動接触面
98 弾性シール部材(シール機構)
99 回転軸部
100 衛生洗浄装置
101 溝部(シール機構)
102 溝部(シール機構)
103 流量調整弁
108 弾性シール部材(シール機構)
201 水道配管(給水源)
202 人体洗浄水流路(第1流路)
203 人体洗浄水流路(第1流路)
204 分岐管路(第2流路)
205 便器洗浄水流路(第2流路)
700 便器
400 便座
1000 トイレ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
便器及び便座を含むトイレ装置に用いられる衛生洗浄装置であって、
前記便座に着座した被洗浄体に向けて洗浄水を吐出する第1洗浄ノズルと、
給水源に接続されるべき上流端を有し、下流端が前記第1洗浄ノズルに接続された第1流路と、
前記便器に向けて洗浄水を吐出して前記便器を洗浄する第2洗浄ノズルと、
前記第1流路から分岐され、前記第2洗浄ノズルに接続された第2流路と、
前記第2流路を流れる洗浄水の流量を調整する流量調整弁と、
前記流量調整弁の動作を制御する制御部と、を備える、衛生洗浄装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記便器の洗浄を開始する時に、前記流量調整弁を弁開度がある弁開度から大きくなるように制御するよう構成されている、請求項1に記載の衛生洗浄装置。
【請求項3】
前記第1流路において前記上流端と前記第2流路の分岐点との間に設けられ、かつ前記給水源からの洗浄水を減圧する減圧弁をさらに備える、請求項1または2に記載の衛生洗浄装置。
【請求項4】
前記流量調整弁は、
一端が開放されかつ他端が閉鎖された円柱状の内部空間と、該内部空間の内周面に開口する第3流路と、該内部空間の他端に開口する第4流路とを含む弁ボディと、
前記弁ボディの内部空間に前記一端から回動可能に挿入され、かつ内部流路を含む円柱状の弁体と、を備え、
前記弁体は、基端部が前記弁ボディの外部においてモータに接続され、前記内部流路の一方口が前記弁体の先端面に開口し、かつ前記内部流路の他方口が前記弁体の軸方向における前記弁ボディの第3流路の開口に対応する位置に開口するように構成されており、
前記弁ボディの内部空間の軸方向における前記他端と前記第3流路の開口との間の部位並びに前記第3流路の開口と前記一端との間に部位に、前記内部空間の内周面と前記弁体の外周面との間隙を該間隙の全周に渡ってシールするシール機構が設けられている、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の衛生洗浄装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−60800(P2013−60800A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−39004(P2012−39004)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】