説明

衛生薄葉紙

【課題】使用に当たっては、肌に刺激等を与えず、使用後に放置されても不衛生にならない、衛生的な衛生薄葉紙を提供する。
【解決手段】衛生薄葉紙に、抗ウィルス剤を芯材とし、かつ体液と接触すると前記抗ウィルス剤が流出するマイクロカプセルを含ませた。マイクロカプセルの平均粒子径を1〜100μmとし、衛生薄葉紙は、薄葉紙の断面における隣接するパルプ繊維間距離Dが1〜10μmであるパルプ繊維数が、パルプ繊維Fの全数の50〜100%であることが好ましい。さらに、マイクロカプセルの壁材は、主成分が親水性高分子ゲル化剤で、かつ、壁の膜厚が0.2〜2μmであることがより好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパー等の衛生薄葉紙に関するものである。より詳しくは、鼻水などのウィルスを含む体液を処理する衛生薄葉紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の衛生薄葉紙は、鼻水や痰などのウィルスを含む体液を保持した状態で、一定期間、ごみ箱などに放置されることになるため、不衛生であるとの問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主たる課題は、衛生的な衛生薄葉紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
抗ウィルス剤を芯材とし、かつ体液と接触すると前記抗ウィルス剤が流出するマイクロカプセルを含む、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
【0005】
〔請求項2記載の発明〕
前記マイクロカプセルの平均粒子径が1〜100μmで、
かつ、紙の断面における隣接するパルプ繊維間距離が1〜10μmであるパルプ繊維数の割合が、全パルプ繊維数の50〜100%である、請求項1記載の衛生薄葉紙。
【0006】
〔請求項3記載の発明〕
前記マイクロカプセルの平均粒子径が1〜100μmで、
かつ、紙の断面におけるパルプ繊維が占める面積を除く空隙の面積率が、前記紙の断面積の50〜80%である、請求項1記載の衛生薄葉紙。
【0007】
〔請求項4記載の発明〕
前記マイクロカプセルの壁材は、主成分が親水性高分子ゲル化剤で、かつ、膜厚0.2〜2μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【0008】
〔請求項5記載の発明〕
ローション薬液をも含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、衛生的な衛生薄葉紙となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
〔構造〕
本形態の衛生薄葉紙は、抗ウィルス剤を含む、ものである。したがって、鼻水や痰などに含まれるウィルスは、殺菌され、不衛生であるとの問題が生じるおそれがない。
【0011】
また、本形態の衛生薄葉紙は、抗ウィルス剤を芯材とし、かつ体液と接触するとかかる抗ウィルス剤が流出するマイクロカプセルを含む、ものであると、より好ましいものとなる。
【0012】
この点、抗ウィルス剤の中には、殺菌性能に優れているが、肌等への刺激が強いものがある。また、衛生薄葉紙は、使用されるまでに数ヶ月〜数年かかることもあるところ、抗ウィルス剤の中には、殺菌性能に優れているが、揮発性の強いものがある。つまり、抗ウィルス剤の中には、使用するのに好ましくなく、あるいは使用することができないものもある。しかしながら、抗ウィルス剤が、マイクロカプセルで包み込まれていると、肌等への刺激の問題や、揮発性の問題などが生じるおそれがない。したがって、あらゆる抗ウィルス剤を使用することができる。そして、本形態の衛生薄葉紙は、マイクロカプセルで包み込まれているが、かかるマイクロカプセルは、鼻水等の体液と接触すると抗ウィルス剤が流出する性質を有するため、鼻水などに含まれるウィルスは、殺菌され、不衛生であるとの問題が生じるおそれもない。
【0013】
さらに、本衛生薄葉紙においては、抗ウィルス剤とともに、ローション薬液をも含んでも、好ましいものとなる。抗ウィルス剤とともに、ローション薬液をも含んでいると、肌触り性(風合い)や、保湿性、潤い感が高まり、あるいは繊維による肌への刺激が和らげられ、抗ウィルス剤によって、肌への刺激感があるとしても、本衛生薄葉紙としての刺激感は、緩和されるためである。
【0014】
本衛生薄葉紙において、抗ウィルス剤、抗ウィルス剤を芯材とするマイクロカプセル、あるいは抗ウィルス剤及びローション薬液(以下、単に抗ウィルス剤等ともいう。)が、いかなる形態で含まれているかは、特に限定されない。例えば、基紙に塗布された形態、基紙に内添された形態などが考えられる。抗ウィルス剤等を塗布(外添)する場合、その塗布方法は、特に限定されない。例えば、スプレー塗布、グラビア塗布、スロット塗布等を、例示することができる。また、この場合、抗ウィルス剤等の塗布量も特に限定されない。例えば、塗布量を、片面あたり、抗ウィルス剤の絶乾質量で、0.0001〜10g/m2とすることができる。一方、抗ウィルス剤等を内添する場合は、例えば、抗ウィルス剤の対パルプ絶乾質量で、0.01〜50質量%とすることができる。以上のほか、抗ウィルス剤等の塗布方法や塗布量などについては、例えば、特開平7−216786号公報等を参考にすることができる。
【0015】
本衛生薄葉紙は、1プライであっても、2プライ(2枚重ねで一組)、3プライ、4プライ又はそれ以上の複数プライであってもよい。複数プライとする場合は、いずれか1枚のシートが抗ウィルス剤等を含むものであっても、2枚以上のシートが抗ウィルス剤等を含むものであってもよい。また、例えば、2プライのティシュペーパーとする場合は、各シート(1枚)のJIS P 8124に基づく米坪(坪量)を、10〜50g/m2とするのが好ましく、11.9〜25.0g/m2とするのがより好ましい。坪量が、10g/m2未満であると、抄造が困難となる。他方、坪量が、50g/m2を超えると、柔らかさが低下し、使用感や収納箱からの引き出し(ポップアップ)性能が低下する。さらに、ティシュペーパーとする場合は、2枚重ね一組での紙厚が、90〜240μmであるのが好ましく、100〜180μmであるのがより好ましい。紙厚が薄すぎると、使用者が感じる紙薄感が顕著になり、また、吸水性に劣りティシュペーパーとしての機能が低下する。他方、紙厚が厚すぎると、所定枚数を収納箱に収めて製品としたときの引き出し(ポップアップ)性能に劣るようになる。
【0016】
〔基紙の原料等〕
本衛生薄葉紙において、基紙の原料は、特に限定されず、ティシュペーパー、トイレットペーパー等の用途に応じて、適宜の原料を使用することができる。原料として、パルプ繊維を使用する場合、このパルプ繊維(原料パルプ)としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、などから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0017】
パルプ繊維等の原料は、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、基紙とする。この抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0018】
〔抗ウィルス剤〕
本衛生薄葉紙において、使用することができる抗ウィルス剤の種類は、特に限定されない。天然(生体(動植物)内の成分中に含まれている)の抗ウィルス剤、非天然の抗ウィルス剤のいずれをも使用することができる。具体的には、例えば、オシメン、カンフェン、リモネン、サビネン、ミルセン、テルピネン、ピネン、シメン等の植物抽出成分中に含まれるモノテルペン炭化水素類や、シトロネロール、ゲラニオール、イソプレゴール、リナロール、テルピネロール等のモノテルペンアルコール類、アネトール、カルバクロール、オイゲノール、チモール、パラクレゾール、カビコール等のフェノール類、t−アネトール、チャビコールメチルエーテル、サフロール等のフェノールエーテル類、アセトアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ゲラニアール、ペリルアルデヒド、バレラナール等のアルデヒド類、アセトフェノン、カンファー、ジャスモン、ノートカトン、メントン、フェンコン、カルボン、プレゴン等のケトン類、カリオレフィンオキサイド、シネオール、ビサボロールオキサイド等の酸化物類、カテキン、プロアントシアニディン、フラボン、フラバノン、アントシアニン、フェノール類、フラボノール等のフラボノイド類、などの薬効成分の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。また、以上のほかにも、例えば、アスコルビン酸、カルボン酸、クエン酸等の有機酸や、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などを使用することもできる。
【0019】
抗ウィルス剤として、植物抽出成分をそのまま使用した場合は、殺菌成分とともに、例えば、香料成分などが含まれてしまい、使用者に違和感を与えてしまうおそれもある。しかしながら、抗ウィルス剤をマイクロカプセルで包む形態としておけば、かかるおそれはない。つまり、抗ウィルス剤をマイクロカプセルで包む形態は、抗ウィルス剤として、植物抽出成分をそのまま使用する場合に、特に有益な形態となる。
【0020】
〔マイクロカプセル〕
本形態のマイクロカプセルは、体液と接触するとかかる抗ウィルス剤が流出する性質を有する。どのような仕組みで抗ウィルス剤が流出するかは、特に限定されない。例えば、体液を吸うと壁材が壊れるもの、体液を吸うと膨潤して、壁材に形成されている細孔が開くもの、体液を吸うと壁材が溶出するもの、などを例示することができる。
【0021】
マイクロカプセルの壁材としては、例えば、ゼラチン、寒天、各種天然ゲル化剤、グリセリン、アラビアゴム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロースなどを例示することができる。また、カプセルの構造も特に限定されず、例えば、単純単核のものを例示することができる。
【0022】
(好ましい形態)
本形態のマイクロカプセルは、平均粒子径が1〜100μmであるのが好ましく、1〜2μmであるのがより好ましい。後述の通り、繊維間に十分にマイクロカプセルが入り込み易くなり、ウィルスを効果的に不活化することができるためである。また、マイクロカプセルの平均粒子径が小さすぎると、必要かつ十分な抗ウィルス剤を含んだ衛生薄葉紙とすることができなくなる。他方、マイクロカプセルの平均粒子径が大きすぎると、塗布液中における混合時や、内添・塗布(外添)時、乾燥時などにおいて、カプセル(壁材)が壊れて、抗ウィルス剤が流出してしまうおそれがある。
【0023】
ここで、マイクロカプセルの平均粒子径が1〜100μmである場合においては、図1に模式的に示すように、紙の断面における、隣接するパルプ繊維F間の距離Dが1〜10μmであるパルプ繊維数の割合が、全パルプ繊維数の50〜100%であるのが好ましく、繊維間距離Dが1〜2.5μmであるパルプ繊維数の割合が、全パルプ繊維数の50〜100%であるのがより好ましい。繊維間距離Dが1μmを下回ると、繊維間に十分にマイクロカプセルが入り込まなくなり、抗ウィルス剤による効果が不十分なものになるおそれがある。他方、繊維間距離Dを10μm以下にすることで、マイクロカプセルが繊維間に入り込んだウィルスを効果的に不活化するようになる。つまり、紙の断面における、隣接するパルプ繊維F間の距離Dが1〜10μmであるパルプ繊維数の割合が、全パルプ繊維数の50〜100%とすることにより、繊維間に入り込むマイクロカプセルの割合が高くなり、ウィルスを効果的に不活化することができる。
【0024】
また、マイクロカプセルの平均粒子径が1〜100μmである場合においては、紙の断面における、パルプ繊維Fが占める面積を除く空隙の面積率(すなわち、図1における紙の断面積S中のパルプ繊維Fを除く非ハッチング領域の面積率。)が、紙の断面積Sの50〜80%であるのが好ましく、50〜70%であるのがより好ましい。面積率を50%以上とすることで、マイクロカプセルの占有率を増やすことができる。他方、面積率を80%以下とすることで、紙自体の強度が低下するのを防止することができる。
【0025】
さらに、マイクロカプセルの壁材は、主成分が親水性高分子ゲル化剤で、かつ、膜厚0.2〜2μmであるのが好ましく、0.2〜1.5μmであるのがより好ましい。膜厚が0.2μm未満であると、塗布液中における混合時や、内添・塗布(外添)時、乾燥時などにおいて、カプセル(壁材)が壊れて、抗ウィルス剤が流出してしまうおそれがある。他方、膜厚が2μm以上超であると、壁材が壊れにくくなり、抗ウィルス剤の流出が遅くなるおそれがある。
【0026】
一方、親水性高分子ゲル化剤は、固化して親水性のゲルを形成するものであり、例えば、化粧品や医薬品などとして通常使用されるものである。具体的には、例えば、ゼラチン、コラーゲン等のタンパク質、寒天、カラギーナン、グルコマンナン、スクレログルカン、シゾフィラン、ジェランガム、アルギン酸、カードラン、ペクチン、ヒアルロン酸、グアーガム等の多糖類などを例示することができる。ただし、これらの中でも、寒天、カラギーナンなどの加熱冷却により固化してゲルを形成するものは、イオンの影響を受けにくく、また、製法が簡便で均一に固化することができるという点で、特に好ましい。
【0027】
寒天としては、例えば、伊那寒天PS−84、Z−10、AX−30、AX−100、AX−200、T−1、S−5、M−7(以上、伊那食品工業社製)などの市販品を用いることができる。
【0028】
もちろん、親水性高分子ゲル化剤は、2種以上を併用することもできる。例えば、加熱冷却により固化してゲルを形成する親水性高分子ゲル化剤とともに、アルギン酸や、カードラン、ヒアルロン酸等のように、Ca等のイオンや、その他の凝固剤により固化する親水性高分子ゲル化剤を、本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。
【0029】
また、必要に応じて、その他の親水性高分子、例えば、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース等の合成高分子や、キサンタンガム、ローカストビーンガム等の天然高分子などを、本発明の効果を損なわない範囲で配合することもできる。例えば、ケルトロールを寒天と併用すると、壁材が軟らかくなる傾向がある。
【0030】
さらに、親水性高分子には、水や、水に溶解又は分散可能な成分や薬剤を配合することもできる。
【0031】
以上のほか、マイクロカプセルの芯材(抗ウィルス剤)の割合は、85〜90%であるのが好ましい。
【0032】
マイクロカプセルの粒子径や膜厚は、高分子物質を単独又は2種以上混合して、芯材及び壁材の配合成分や配合割合、ゲル化時間などの条件を変更することによって、変更することができる。
【0033】
また、異なる粒子径や膜厚のマイクロカプセルを2種以上混合することにより、抗ウィルス剤の流出速度を任意に制御することもできる。これは、膜厚が薄いと容易に壊れるため、抗ウィルス剤の流出が早くなり、他方、膜厚が厚いと容易に壊れないため、抗ウィルス剤の流出は遅くなる、という原理などを利用するものである。
【0034】
この抗ウィルス剤の流出速度は、マイクロカプセルの粒子径や膜厚のほか、吸水性樹脂粉末の内添又は塗布(外添)によっても、制御することができる。粉末状の吸水性樹脂は、壁材を壊すのに寄与する鼻水などの水分が衛生薄葉紙内に吸収されるのを促進する機能を有しているためである。
【0035】
この吸水性樹脂粉末の種類は、特に限定されない。例えば、デンプン‐ポリアクリル酸塩グラフト共重合体(サンウエット〔三洋化学工業〕)、架橋ポリアクリル酸塩(アラソープ〔荒川化学工業〕、アクアキープ〔製鉄化学工業〕、アクアリック〔日本触媒化学工業〕)、アクリル酸‐ビニルアルコール共重合体(スミカゲルSタイプ〔住友化学工業〕)、ポリエチレンオキサイド架橋体(スミカゲルRタイプ〔住友化学工業〕)、架橋イソブチレン‐マレイン酸塩共重合体系(KIゲル〔クラレ〕)などを例示することができる。これらの吸水性樹脂は、水溶性の樹脂を適度に架橋した三次元構造の樹脂で、分子中の水酸基、カルボン酸基、カルボン酸塩基等の親水性基を有していることにより高い吸水能力を有するものである。
【0036】
吸水性樹脂粉末の水吸収能は、脱イオン水として100g/g以上の高吸収能を有するものが好ましい。また、吸水性樹脂粉末の平均粒子径は、1〜100μm,好ましくは5〜30μmである。さらに、吸水性樹脂粉末は、単独で使用しても、例えば、種類、粒子径などが異なる2種以上の樹脂を混合してしてもよい。
【0037】
吸水性樹脂粉末は、対パルプ絶乾質量で、0〜30質量%、好ましくは3〜18質量%、添加することができる。
【0038】
マイクロカプセルの破断強度は、10〜500g/cm2 、好ましくは30〜400g/cm2 である。破断強度が弱すぎると耐剪断性が十分でなく、また、破断強度が強すぎると、壁材の一部又は全部が壊れず、高ウィルス剤が速やか、かつ十分に流出しないおそれがある。なお、マイクロカプセルそのものの破断強度を直接測定することはできないので、本明細書においては、壁材組成で調製したゲルについて、レオメーターで測定を行い、これをカプセルの破断強度とする。
【0039】
〔ローション薬液〕
本衛生薄葉紙において、使用するローション薬液とは、肌触り性(風合い)を高め、あるいは保湿性を高め、あるいはパルプ繊維の肌への刺激を和らげ、あるいは潤い感を高めることを主眼とするものであり、その種類は、特に限定されない。例えば、保湿性薬液としては、シリコーンオイル、シリコーンパウダー等のポリシロキサン、グリセリン、プロピレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース等の糖類、グリコール系溶剤及びその誘導体のうちの少なくとも1種の保湿剤を含むものを用いてなるものを、例示することができる。また、以上の薬液には、例えば、ビタミンC、ビタミンE、コラーゲンなどを含む薬液を併用することができる。この種の薬液は、潤い感を高める機能がある。ビタミンCおよびビタミンEは抗酸化剤としても機能する。ビタミンEは、還元力の強い成分で、活性酸素・フリーラジカルを消去し、あるいは過酸化脂質の発生を防ぐ抗酸化作用がある。したがって、ビタミンEは薬液の安定化剤として機能するとともに、肌の皮脂の酸化防止効果および血行促進効果が発揮される。また、保湿機能もある。ビタミンCは、ビタミンEと同じく皮脂の抗酸化作用がある。ビタミンCは、ビタミンEを還元するする作用があるため、ビタミンC,Eの両方を用いると、ビタミンCがビタミンEの助剤として働き、活性酸素などにより酸化されたビタミンEを還元し、ビタミンEの強力な皮脂の抗酸化作用を維持する作用が奏せられる。コラーゲンは、肌の真皮の90%を形成しており、これが減少すると肌に潤いや張りがなくなる。したがって、肌と接触したときに肌に潤いを与える保湿効果を発揮する。また、薬液としては、特にpHが5.0〜6.0の弱酸性とされたものであると、肌に対して接触させても肌がアルカリ性になることがなく、薬液pHの影響による肌荒れを効果的に防止できる。特に好適なpH範囲は5.3〜5.7である。pHの調整法としては、酸性又は塩基性のpH調整剤を薬液に添加することにより行うことができ、薬液が強酸性の場合には水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液を用いることができ、中性・アルカリ性の場合にはクエン酸やリンゴ酸、乳酸を用いることができる。
【0040】
清涼感を得るための薬液としては、ソルビトール、アルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニットを挙げることができる。特に好ましいものは、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールであり、さらに好ましいくはエリスリトール又はキシリトールである。さらに、メントール、サリチル酸、α−シネロール、及びこれらの誘導体の群から選ばれた一種又は二種以上の冷感剤を含ませることができる。
【0041】
柔軟剤の代表例は、界面活性剤系の柔軟剤であり、その柔軟剤としては、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性イオン界面活性剤のなかから適宜選択して用いることができ、特にアニオン系界面活性剤が好適である。アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩系、スルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、燐酸エステル塩系などを用いることができる。特にアルキル燐酸エステル塩が好ましい。
【0042】
非イオン界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレートなどの多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロシキ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット密ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどを用いることができる。
【0043】
カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、アミン塩、またはアミンなどをもちいることができる。また、両性イオン界面活性剤としては、カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体、または複素環式第2級または第3級アミンの脂肪族誘導体などを用いることができる。
【0044】
以上、本衛生薄葉紙においては、さまざまなローション薬液を使用することができるが、特に、流動パラフィン5〜20%と、多価アルコール類50〜85%と、糖類3〜30%と、さらに必要ならば5%以下の非イオン界面活性剤とを主剤とする薬液を用いると、好ましいものとなる。流動パラフィンの添加量が5%未満であると、しっとり感が低下し、また滑らかさが低下し、ざらつく。逆に20%を超えると、ねばつき感(べとつき感)を与えるとともに、ざらつき、さらに硬い感じを与えるようになる。より好適な範囲は、8〜15%である。本形態では、例えば、特開平2−104511号公報に示されるような、多価アルコールによる皮膚の油分の除去特性を過度にすることなく、流動パラフィンを混入することにより、皮膚の油分の除去特性を抑制しているために、ほどよいしっとり感を得ることができる。
【0045】
多価アルコール類の添加量は50〜85%とされる。50%未満では、清拭効果としっとり感が劣る。85%を超えると、他の成分の添加量が少なくなり、全体の特性のバランスが悪くなる。また、強度の劣化が起こり、破れ易くなるとともに、べたついた感じを与えるようになる。多価アルコール類としては、特にグリセリン又はプロピレングリコールあるいはそれらの混合物からなるのが好ましい。
【0046】
糖類の添加量は3〜30%とされる。3%未満では、しっとり感とやわらかさが低下し、30%を超えると、全体の特性のバランスが悪くなり、強度劣化が起こり、破れ易くなる。糖類としては、特にソルビトール又はグルコースあるいはそれらの混合物からなるものが好適である。
【0047】
さらに必要ならば5%以下の非イオン界面活性剤を添加することができる。非イオン活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレート等の多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロキシ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット蜜ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレングリセリルモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等を挙げることができる。
【0048】
これらの薬液に対して、陰イオン界面活性剤、香料、着色料、防腐剤、酸化防止剤などの副次的添加剤を、1%以下の割合で添加することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、ティシュペーパーやトイレットペーパー等の衛生薄葉紙として、適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】衛生薄葉紙の断面図である。
【符号の説明】
【0051】
D…繊維間距離、F…パルプ繊維、S…断面積。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗ウィルス剤を芯材とし、かつ体液と接触すると前記抗ウィルス剤が流出するマイクロカプセルを含む、ことを特徴とする衛生薄葉紙。
【請求項2】
前記マイクロカプセルの平均粒子径が1〜100μmで、
かつ、紙の断面における隣接するパルプ繊維間距離が1〜10μmであるパルプ繊維数の割合が、全パルプ繊維数の50〜100%である、請求項1記載の衛生薄葉紙。
【請求項3】
前記マイクロカプセルの平均粒子径が1〜100μmで、
かつ、紙の断面におけるパルプ繊維が占める面積を除く空隙の面積率が、前記紙の断面積の50〜80%である、請求項1記載の衛生薄葉紙。
【請求項4】
前記マイクロカプセルの壁材は、主成分が親水性高分子ゲル化剤で、かつ、膜厚0.2〜2μmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項5】
ローション薬液をも含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。

【図1】
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【公開番号】特開2006−122672(P2006−122672A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−286903(P2005−286903)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】