説明

衛生薄葉紙

【課題】鼻水の裏抜けに伴う不衛生状態を解消する。
【解決手段】2層または3層の重ね合わせ衛生薄葉紙であって、各層11、12、30がパルプを原料とする紙層であり、人工鼻水の裏抜け試験(無荷重時)での人工鼻水の裏抜け量が10mg以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ティシュペーパーやトイレットペーパー等の衛生薄葉紙に関するものである。より詳しくは、鼻水などのウィルスを含む体液を捕捉するティシュペーパーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の衛生薄葉紙は、鼻水液が裏抜けして手などに付くことがあり、不衛生であるとの問題があった。もちろん、衛生薄葉紙を何重にも重ねれば、かかる裏抜けの問題は回避される。しかしながら、衛生薄葉紙を何重にも重ねるのは、不経済である。しかも、衛生薄葉紙を何重にも重ねると、薄さ、柔らかさが損なわれるため、せっかく薄さ、柔らかさに富むものとなった近年の衛生薄葉紙のメリットが、減殺されてしまう。風邪をひいている場合には、ウィルスを含む裏抜けした鼻水が手に触れ、食物を介して体内感染を引き起こす場合もある。
そこで、不衛生であるとの問題を解決した衛生薄葉紙として、抗ウィルス剤を含んだ衛生薄葉紙が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
しかしながら、抗ウィルス剤の殺菌作用が発現する前に、鼻水などのウィルスを含む液が裏抜けしてしまう場合には、感染の伝播防止の点において根本的な解決と成り得ない。
【特許文献1】特表2003−512542号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の主たる課題は、衛生的であるとともに、柔らかさなどの衛生薄葉紙に要求される特性を兼ね備えた衛生薄葉紙を提供することにある。さらに別の課題は以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
2層以上の重ね合わせ衛生薄葉紙であって、
前記衛生薄葉紙の最外層の少なくとも一方の外層が、パルプを原料とする紙層であり、
人工鼻水の裏抜け試験(無荷重時)での人工鼻水の裏抜け量が10mg以下であることを特徴とする衛生薄葉紙。
【0005】
(作用効果)
人工鼻水の裏抜け量が10mg以下であるので、鼻水などをかんだとき、あるいは汚染された液を清拭したときなどにおいて、衛生的なものとなる。風邪をひいたときなどの場合には、ウィルスとの人体との接触を防止でき、その伝播を防止できる。さらに、ゴミ箱に丸めて廃棄した場合にも、ゴミ箱から廃棄する場合に体との接触を防止できる。かくして公衆衛生の観点から優れたものとなる。
また、最外層の少なくとも一方の外層であるために、一般的なティシュペーパーと同様な感触を示し、違和感がないものとなる。
【0006】
〔請求項2記載の発明〕
3層の重ね合わせ衛生薄葉紙であって、
各層がパルプを原料とする紙層であり、人工鼻水の裏抜け試験(無荷重時)での人工鼻水の裏抜け量が10mg以下であることを特徴とする衛生薄葉紙。
【0007】
(作用効果)
3層の重ね合わせ衛生薄葉紙とし、かつ、両最外層がパルプを原料とする紙層であると、表裏を区別なく使用することができ、肌触りに優れ、しかも、中間層についてもパルプを原料とする紙層であるので、製品全体として柔軟性に富むものとなる。
【0008】
〔請求項3記載の発明〕
荷重条件下(250g荷重で3秒)での人工鼻水の裏抜け試験での人工鼻水の裏抜け量が150mg以下である請求項1または2記載の衛生薄葉紙。
【0009】
(作用効果)
荷重条件下(250g荷重で3秒)での人工鼻水の裏抜け試験は、実際的に鼻をかむときの条件とほぼ一致する。本発明者が調べた限り、市販品のものは最も低い値で153mgであった。この市販品は、実際の鼻水の裏抜け量が少ないことを知見しており、かかる点からも請求項3で規定する人工鼻水の裏抜け量であれば、十分に裏抜けを防止できることが判る。なお、人工鼻水の裏抜け量はより望ましくは90mg以下である。
【0010】
〔請求項4記載の発明〕
両外層より中間層の坪量が大きい請求項2記載の衛生薄葉紙。
【0011】
(作用効果)
両外層より中間層の坪量を大きくすると、中間層での吸液性(吸液量)が高まるから、結果として裏抜け低減効果を高める。
【0012】
〔請求項5記載の発明〕
中間層に抗ウィルス剤が含有されている請求項2記載の衛生薄葉紙。
【0013】
(作用効果)
抗ウィルス剤を添加して殺菌またはその活動抑制を図るのが望ましい。この場合、鼻水成分が浸透可能である中間層に抗ウィルス剤を含有させると、ウィルスを含む液系が抗ウィルス剤と接触するので、殺菌またはその活動抑制を図ることができる。なお、本発明において、後述するように本明細書における「含有させる」とは、当該層全体に分散させ場合のほか、上側または下側に分散している場合、塗布などにより表面部分に存在する場合などすべての形態を含む意味である。
【0014】
〔請求項6記載の発明〕
両外層に液不透過性を高める薬液を含む請求項2記載の衛生薄葉紙。
【0015】
(作用効果)
外層が液不透過性を高める薬液を含むと、いったん中間層中に浸透した液を閉じ込めるようになるので、結果として鼻水などの裏抜け低減効果を高める。
【0016】
〔請求項7記載の発明〕
相互に重なり合う各層が、熱融着、超音波融着、粘着剤及びプライボンディングの群から選ばれたいずれか1つの接合加工により重ね合わされている請求項1〜6のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【0017】
(作用効果)
層を重ね合わせる手段として、熱融着、超音波融着、粘着剤及びプライボンディングなどを挙げることができる。
【0018】
〔請求項8記載の発明〕
中間層のいずれかの層に着色がなされ、その着色が少なくとも一方の最外層側から視認可能の関係にある請求項2記載の衛生薄葉紙。
【0019】
(作用効果)
中間層のいずれかの層に着色がなされ、その着色が少なくとも一方の最外層側から視認可能の関係にある構成とすると、一般の衛生薄葉紙と簡易に区別することができ、また着色のための成分が肌に接触するものではないから、肌荒れなどを防止できる。
【0020】
〔請求項9記載の発明〕
製品米坪が10〜55g/m2である請求項1〜8のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【0021】
(作用効果)
2層以上、特に3層の重ね合わせ衛生薄葉紙である場合、過度の米坪とするのは柔らかを損なうために55g/m2以下が望ましい。米坪が10g/m2未満であると吸液性が十分とし難いなどの問題を残す。
【発明の効果】
【0022】
衛生的であるとともに、柔らかさなどの衛生薄葉紙に要求される特性を兼ね備えた衛生薄葉紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
図面に示すように、本実施の形態の衛生薄葉紙10は、2層以上の重ね合わせ層構成とされる。ここで、「層」とは平面方向に材料が連続的に展開する所定の厚みを有する構成を意味する。したがって、複数の材料の層が積層され一体なものとされたもの(「積層体」)以外に、一つの層又は積層体を一つの「プライ」として、他方のプライと部分的に接合されたものも含む。よって、本発明は2プライ以上の「プライ接合体」をも含むものである。
【0024】
〔構造例〕
本発明の衛生薄葉紙の構造について、各種の形態例を示しながら説明する。
図1は、使用面側の外層11を、パルプを原料とする液の吸収性層とし、他方の非使用面側の外層12を液不透過性層(ハッチングで示す。)としたものである。ここに、「液不透過性層」とは、液を完全に透過させない層を意味するのではなく、「液の吸収性層」との対比で、液透過性が低い層を意味する。
図3は、外層11と外層12との間に液不透過性の中間層30を介在させたものである。
図4は、外層11と外層12との間に第1中間層31及び第2中間層32の中間層30を介在させたものである。この場合、第1中間層31及び第2中間層32の両者又は一方を液不透過性層とすることができる。
図5は、外層11と外層12との間に第1中間層31、第2中間層32、第3中間層33の中間層30を介在させたものである。この場合、第1中間層31、第2中間層32及び第3中間層33のいずれかの層を液不透過性層とすることができる。
図6は、外層11及び中間層31の積層体と、外層12及び中間層32の積層体とを、熱融着、超音波融着、粘着剤及びプライボンディングなどの接合加工による部分接合部40によりプライ接合したものである。
図7は、外層11及び中間層31の積層体と、単一の外層12とを部分接合部40によりプライ接合したものである。
【0025】
これらの形態は例示であることを改めて説明するが、本発明において、最外層の少なくとも一方の外層が、パルプを原料とする紙層であり、この紙層以外のいずれかの層が液不透過性層とされていれば足りる。しかるに、図3及び図4に形態例を示すように、外層11及び外層12の両者が紙層であるのが鼻水などの液の吸収性の点で望ましい。特に、3層品であるのが、過度の剛性を与えないために最適である。
【0026】
中間層30を着色することができる。着色剤としては、素材そのものが既に着色されているものを使用するほか、衛生薄葉紙の製造過程で、天然や合成を問わない染料や顔料を対象の層中又は層表面に添加することにより着色することができる。また、全体を着色するだけでなく、円形、三角形、四角形などの幾何学模様や花、木、草などの植物、人、動物、魚など、デザイン性のある模様を着色剤で部分的に図案化してもよい。着色は使用者にとって、汎用のティッシュペーパと視覚的に区別化が可能なものとなる。例示的に着色層の例を破線によるハッチングで示した。必要ならば、外層に着色を施すことも可能である。
【0027】
上記例は積層体の例である。この積層手段としては、熱融着接合、超音波融着接合、あるいは粘着剤を介在させる手段などを採用できる。これらの接合部位は全面であるほか、平面的にみてストライプ状、散点状、格子状、スパイラル状など部分的であってもよい。接合部位は全面である場合において、上記の「層」の定義からすれば、異なる材料となる訳ではないので、層とは言えない。これに対し、粘着剤による全面接合の場合には、別の材料たる粘着剤が介在されるので、「粘着剤層」と定義されることになる。
【0028】
本発明において、抗ウィルス剤をいずれかの層の表面又は内部に含有させることができる。また、抗ウィルス剤をいずれかの複数の層の表面又は内部に含有させることもできる。好ましい例は、最外層の両者は紙層とし、中間層の表面又は内部に抗ウィルス剤を含有させる形態である。
【0029】
〔液不透過性の付与及び液不透過性層〕
本発明に衛生薄葉紙10は、液不透過性層を有する。その結果、たとえば図1の衛生薄葉紙10の外層11を使用面として鼻をかんだとき、鼻水Wが裏抜けしない(図3に裏抜け防止形態を概念的に示す。)。そして、使用面を内側にして図2のように丸めあるいは折り畳んで廃棄した場合、鼻水が内部に保持した状態になるので、他人に対しても鼻水W中のウィルスの伝播を防止でき、公衆衛生上、清潔なものとなる。
【0030】
衛生薄葉紙10全体の特性から、本発明の液不透過性層の液不透過度が定められる。すなわち、液不透過性層以外の層の厚みや素材の種類、積層枚数などのより、液不透過性層の液不透過度が定められる。
【0031】
本発明において、衛生薄葉紙10自体が、鼻水を実質的に裏抜けさせない程度に、液不透過性層が液不透過性を有するものであれば足りる。具体的には、10点法に基づく液不透過度が、0〜9点となっているのが好ましく、0〜5点となっているのがより好ましく、0〜2点となっているのが特に好ましい。また、10点法に基づく液不透過度を、0〜2点とした場合は、液不透過性層に示すように、衛生薄葉紙10を使用後に丸めると、鼻水などのウィルスを含む液Wが包み込まれた状態で保持され続けることになるため、特に好ましいものとなる。
【0032】
ここで、10点法とは、液不透過性の程度を示すための評価方法である。この評価方法においては、まず、ろ紙(東洋濾紙株式会社製「ADVANTEC 1(150mm)」を3枚重ね、その上に試験片、更にその上に図8に示す測定板40を置く。そして、測定板40の各穴41,41…に、蒸留水滴を充填し、2秒以内にろ紙に吸収される数を数え、この数を点数として示す。なお、測定板40は、厚さが8mm、各穴41,41…の直径が10mmである。
【0033】
上記の10点法は、液不透過度の評価法として、必ずしも精度が高いものではない。これに対し、本発明者は、鼻水の完全なる裏抜けを防止することに限定されず、測定対象の衛生薄葉紙の人工鼻水の裏抜け試験で、裏抜けする人工鼻水の量が10mg以下とする限り、実際の使用において衛生的であることを知見している。
【0034】
ここで、人工鼻水の裏抜け試験による裏抜けする人工鼻水の量(mg)は、次記(1)〜(5)の試験過程を経て得た値である。
(1)人工鼻水(生理食塩水(尿素2%、塩化ナトリウム0.8%、塩化カルシウム0.3%、硫酸マグネシウム0.8%、イオン交換水96.1%):CMC(カルボキシルメチルセルロース)4%水溶液=1:2、食紅(微量))を用意。
(2)ろ紙(東洋濾紙株式会社製「ADVANTEC 1(150mm)」)を2枚積層し、質量を測定。
(3)積層したろ紙の上に、半分に折った試験試料を積層。
(4)ろ紙に10mmの高さからマイクロピペットで前記人工鼻水1mlを滴下。
(5)10秒後試験紙を除き、ろ紙の質量を測定し、滴下前との質量差を人工鼻水の裏抜け量(mg)とする。
【0035】
本衛生薄葉紙10においては、外層を構成する紙層の吸水度が5秒以上、特に5〜10秒とするのが望ましい。ここで、外層の紙層の吸水度(秒)は、次記(6)〜(10)の試験過程を経て得た値である。
(6)蒸留水、デジタルマイクロピペット、ストップウォッチ及び三脚台を用意。
(7)試験紙を2枚積層し、直径40mm以上の穴のある支持台に置く。
(8)試験紙に10mmの高さからデジタルマイクロピペットで蒸留水1滴(0.1ml)を滴下。
(9)蒸留水が試験紙に接触した瞬間から水が完全に吸収されて試験紙表面の反射が消えるまでの時間をストップウォッチで測定(0.01秒単位)。
(10)この試験を5回行い、その平均値の小数点以下第1位までを吸水度(秒)とする。
【0036】
他方、両最外層を含む3層以上の場合、中間層は、両最外層より液保持容量を大きくすることで、裏抜け防止効果を高めることができる。中間層の液保持容量を、両最外層の液保持容量より大きくする手段の一つは、米坪を大きくすることである。
【0037】
ちなみに、2層構成の場合、パルプを原料とする液の吸収性層の一方の外層の米坪が10〜20g/m2で、液不透過性層を構成する他方の外層の米坪が15〜35g/m2であるのが望ましい。また、3層構成の場合、パルプを原料とする液の吸収性層の両外層の米坪がそれぞれ10〜20g/m2で、液不透過性層を構成する中間層の米坪が15〜35g/m2、特に15〜25g/m2であるのが望ましい。
【0038】
この場合において、中間層の液保持容量としては、クレム吸水度(JIS P 8141)を指標とすることが望ましく、そのクレム吸水度が30mm以上、特に30〜50mmとするのが望ましい。また、クレム吸水度の測定前後の重量の差から算出した吸水量は30mg以上、特に30〜50mgとするのが望ましい。
【0039】
本発明における「紙層」は、パルプ原料を主体とする限り、他種のセルロース、ヘミセルロース、親水性アセテートセルロース、親水性不織繊維などを含んでいてもよい。
かかる紙層に対して、液不透過性層が設けられ、衛生薄葉紙全体として鼻水の裏抜け防止が図られる。
液不透過性層の形成のための第1の手段は、プラスチックフィルム、撥水性不織布など素材自体が液不透過性に寄与する材料を使用するものである。
液不透過性層の形成のための第2の手段は、パルプ繊維やアセテートセルロースなどの親水性繊維を使用し、液不透過性を付与する薬剤を添加することで、液不透過性を付与する方法である。本発明においては、この第2の手段を採るのが望ましい。
【0040】
液不透過性層を例えば、フィルムなどを原料として形成する場合、かかるフィルムには、微孔が形成されていなくてもよいが、衛生薄葉紙の柔らかさを追及するという観点からは、複数の微孔が形成されている方が、好ましい。この複数の微孔の開口径は、0.1〜40nmとされているのが好ましく、0.5〜30nmとされているのがより好ましく、10〜20nmとされているのが特に好ましい。開口が小さ過ぎると、衛生薄葉紙の柔らかさ増加効果が、十分なものとはならなくなる。他方、開口が大きすぎると、ウィルスが本液不透過性層を抜けてしまうおそれがある。なお、ウィルスの大きさは、20〜250nm程度である。
【0041】
微孔の形成されていないフィルムは、例えば、疎水性の熱可塑性樹脂から形成することができる。他方、微孔の形成されたフィルム(多孔性フィルム)は、疎水性の熱可塑性樹脂と、炭酸カルシウム等からなる微小な無機フィラー又は相溶性のない有機高分子等と、を溶融混練してフィルムを形成し、このフィルムを一軸又は二軸延伸して形成することができる。以上の熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン等を使用することができる。また、このポリオレフィンとしては、例えば、高〜低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテンなどから一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0042】
疎水性の不織布をも使用でき、この不織布としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド等の熱可塑性樹脂単独からなる繊維や、これらの樹脂を二種以上用いてなる芯鞘型、サイドバイサイト型の構造を有する複合繊維で形成された不織布などを使用することができる。かかる不織布は、エアースルー法、メルトブローン法、ヒートシール法、スパンボンド法、サクションヒートボンド法等の一般的な製法によって製造されているのが好ましい。の少なくともいずれか1つが原料とされているのが好ましい。
【0043】
パルプ繊維を原料とする場合、サイズ剤を添加することで液不透過性を付与することができる。この場合、サイズ剤は、パルプ絶乾質量に対する固形分質量比で0.02〜0.06%含ませるのが好ましく、0.03〜0.05%含むとより好ましいものとなる。サイズ剤の配合量が、0.02質量%未満であると、液の裏抜けを十分に低減することができなくなる。他方、サイズ剤の配合量が、0.06質量%を超えると、撥水性が強くなり過ぎるとの問題が生じる。
【0044】
サイズ剤としては、例えば、アルキルケテンダイマー、アルケニル無水コハク酸、無水ステアリン酸等の中性サイズ剤、けん化天然ロジン、強化ロジン等の酸性サイズ剤などを、使用することができる。
【0045】
他方、上記構造例では、主に中間層を「液不透過性層」とする例について説明した。これに対し、外層を「液不透過性層」とし、中間層30を「液の吸収性層」とすることができる。具体的には、図9に示すように、3層構造とし、両外層11、12を「液不透過性層」とし、中間層を「液の吸収性層」とすることができる。
【0046】
この例では、外層11、12のうち一方の外層から液、たとえば鼻水が、その吐出圧力も手伝って液不透過性層を透過し、中間層30たる「液の吸収性層」中に移行してしまえば、そこに鼻水が吸収され、そこで留まるようになる。すなわち、他方の外層が「液不透過性層」であるから、「液の吸収性層」たる中間層30中に吸収された鼻水が裏抜けすることが少ない。
【0047】
さらに好適には、外層11、12を、パルプを原料とする紙層とし、柔軟性を確保し、肌触り性を良好なものとし、しかも、外層11、12にグリセリン、多価アルコール、糖類などの保湿性薬液を、不透過性を付与する薬剤として添加することができるので、保湿性に優れた表面を有する衛生薄葉紙製品となり、しかも鼻水の裏抜けすることが少ない製品となる。
【0048】
〔製造方法〕
次に、本衛生薄葉紙10の製造方法について、3層化する場合を例にとって説明する。
本製造方法においては、図13に示すように、まず、リール50から中間層30を繰り出す。この繰り出した中間層30には、次いで、その一方又は両方の表面に、図示例では両方の表面に、抗ウィルス剤塗布手段35,36によって、抗ウィルス剤を外添塗布する。そして、抗ウィルス剤を塗布した中間層30には、その両面にそれぞれ一方の外層11又は他方の外層12を重ねる。本製造例では、一方の外層11は、リール51から、他方の外層12は、リール52から、それぞれ繰り出して、中間層30に重ねるようになっている。このようにして3層となった衛生薄葉紙10は、例えば、リール53に巻き上げて、適宜保管などすることができる。
【0049】
〔使用素材・薬剤など〕
本発明の層の坪量としては、外層11,12の坪量(JIS P 8124)を10〜20g/m2とし、かつ、液保持容量をより大きくした中間層の坪量(JIS P 8124)を15〜35g/m2としておくと、薄さ、柔らかさが損なわれないという点で、特に好ましいものとなる。
【0050】
また、外層11,12の水分率は、外層11,12を構成するパルプ繊維の8〜15質量%とされているのが好ましく、10〜13質量%とされているのが特に好ましい。水分率が8質量%未満であると、しっとり感がなくなり、角質内の水分を奪うおそれがある。他方、水分率が15質量%を超えると、べたつき感につながるおそれがある。
【0051】
本衛生薄葉紙10における好適な例は、外層11,12と中間層30を有する形態である。外層11,12の表面または内部に抗ウィルス剤を含有させることもできるが、抗ウィルス剤は、敏感な肌の使用者においては稀に肌荒れの原因となるので、中間層30の表面30aに、抗ウィルス剤を塗布などによって外添することが望ましい。この形態によると、外層11又は12を透過したウィルスを含む液Wが、外層11又は12を通して浸透し、表面30aにおいて抗ウィルス剤と接するため、抗ウィルス剤の死滅作用が効果的に発現される。
抗ウィルス剤は、中間層30に内添することもできる。
【0052】
抗ウィルス剤を外添する方法は、特に限定されない。例えば、スプレー塗布、グラビア塗布、スロット塗布等を、例示することができる。また、抗ウィルス剤を内添する方法も、特に限定されない。例えば、マイクロカプセル内に充填する方法などを、例示することができる。さらに、抗ウィルス剤の外添及び内添を含めた付与量としては、絶乾質量基準で0.1〜30g/m2とすることができる。
【0053】
本発明に係るプライ接合手段の一つとしてプライボンディングがある。すなわち、シートの縦方向及び横方向の少なくともいずれか1方向の両端縁に沿って層間剥離を防止するエンボス加工によるライン状のプライボンディング加工を施すことができる。プライボンディング加工は、シートの両端縁からそれぞれ5〜40mm離れた位置に施すのが好ましく、10〜20mm離れた位置に施すのがより好ましい。5mm未満であると、プライ剥がれから中層が肌に接するおそれがある。他方、40mmを超えると、端部がめくれ中層が肌に接するおそれがある。
プライボンディングとしては、エンボス加工(付与)により接合する処理のほか、スリット形成による処理、接着剤による処理などを例示することができる。
【0054】
本衛生薄葉紙10は、ソフトネスが0.5〜3.0gとされ、かつKES肌触り指数が8〜15とされているのが好ましい。この値を満たせば、衛生薄葉紙10は、十分な柔らかさとなる。
【0055】
ここで、ソフトネスとは、10cm巾の衛生薄葉紙を端子によって巾5.0mmの隙間に押し込んだときの抵抗値(縦横の平均値)であり、値が小さいほど、柔らかいことを意味する。本明細書でソフトネスは、ハンドルオメータ法(JIS L−1096 E法)によって測定した値をいう。ソフトネスは、例えば、坪量、層の数、層を形成する繊維の種類、密着加工条件などを変化させることにより、調節することができる。
【0056】
一方、KES肌触り指数とは、次に示す方法によって測定された値である。
すなわち、この測定においては、通常のMMD試験機、例えば、図10〜図12に示すように、カトーテック株式会社製の摩擦感テスター「KES SE」の基台上に人工皮革(サプラーレ:出光テクノファイン社製)を敷いて固定するとともに、測定端子を人工皮革(サプラーレ:出光テクノファイン社製)にて被覆し、その測定端子の測定面の人工皮革で被覆された部分(接触平面)にオリーブオイル(BOSCOエクストラバージンオイル:日清精油)4mgを均一に塗布し、MMDの測定手順と同様にして行なう。
詳細には、人工皮革で構成される接触平面は、横断面直径0.5mmのピアノ線からなり、先端の曲率半径が0.25mmの単位膨出部を隣接して有し、全幅が10mmの連続した測定面を有し、その測定面の長さが10mmとされるほぼ10mm四方の測定面を有するMMD測定用端子を、前記人工皮革で被覆して形成することができる。人工皮革による前記端子の被覆は、10mm四方の接触平面が形成されるように端子の測定面に対して人工皮革がぴったりと接触するように、あるいは若干の張力をもたせてぴったりと被覆することにより達成することができる。人工皮革を端子に固定するにあたっては、測定時、すなわち紙試料を移動させたときに人工皮革と内部の端子とがずれて人工皮革や接触平面に歪みなどが生じないようにしっかりと固定することが重要である。固定は、例えば、前記接触平面が構成されるように前記端子を被覆したのち、接触平面を構成しない部位を輪ゴム等で装置の測定に影響が出ない部位、例えば端子の支持材等にしっかり固定する。また、MMD試験機の基台上には人工皮革を敷いて接着テープ等で固定する。このとき、測定時に歪まないように基台に人工皮革をしっかりと固定することが重要である。また、基台上に敷く人工皮革は、前記接触平面を構成する人工皮革と同じものを用いる。なお、紙試料は、10cm四方に裁断して用い、人工皮革を敷いた基台に固定する。測定に際しては、紙試料の上に試料押さえ用錘(約100g)で押さえる。また、試験機の測定端子への荷重を50gとして人工皮革で構成される接触平面全体が50gf/cm2の接触圧で紙試料に接触するようにするが、これは、MMD測定と同様に、円盤状の錘を端子上部に取り付けることで達成できる。もちろん、支持材の一方の端部(紙試料の移動方向と反対の端部)の固定の仕方はMMDの測定に準ずる。測定は、紙試料の縦方向について3回、横方向について3回の計6回を行い、測定値(KES肌触り指数)についてはその6回の平均値とする。
このKES肌触り指数は、例えば、外層を形成する繊維の種類、繊維長、繊度等や、外層に付与する液不透過性の薬液の種類、付与量などによって、調節することができる。
【0057】
本発明における層に液不透過性を付与するあるいは高める手段として、前述のように、液不透過性の薬液を使用する手段がある。かかる液不透過性の薬液としては、例えば、保湿性薬液として知られる、シリコーンオイル、シリコーンパウダー等のポリシロキサン、グリセリン、ジグリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等の多価アルコール、ソルビトール、グルコース、キシリトール、マルトース、マルチトール、マンニトール、トレハロース等の糖類、グリコール系溶剤及びその誘導体のうちの少なくとも1種の保湿剤を含むものを用いてなるものを挙げることができる。また、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等の高級アルコール、流動パラフィンなども使用することができる。ただし、液不透過性の薬液としては、少なくとも多価アルコール類を含むのが好ましい。保湿性を有し、使用時の肌へのダメージを軽減するためである。
【0058】
これらの液不透過性の薬液は、絶乾質量基準で対象の層の質量に対し、15〜30%付与されているのが好ましく、20〜25%付与されているのが特に好ましい。15%未満であると薬液付与の効果が十分に得られない。他方、30%を超えると、薬液付与の効果が向上せず不経済である。
【0059】
また、液不透過性の薬液には、グリシン、アスパラギン酸、アルギニン、アラニン、シスチン、システインなどのアミノ酸;アロエエキス、アマチャエキス、カリンエキス、キュウリエキス、アギナエキス、トマトエキス、ノバラエキス、ヘチマエキス、ユリエキス、レンゲソウエキス、などの植物抽出エキス;オリーブ油、ホホバ油、ローズヒップ油、アーモンド油、ユーカリ油、アボガド油、ツバキ油、大豆油、サフラワー油、ゴマ油、月見草油などの植物油;ビタミン、加水分解コラーゲン、加水分解ケラチン、加水分解シルク、キトサン、尿素、はちみつ、ローヤルゼリー、ヒアルロン酸ナトリウム、セラミド、スクワラン、ワセリンなどを、配合することができる。
【0060】
さらに、液不透過性の薬液には、ビタミンC、ビタミンE、コラーゲンなども、配合することができる。この種の薬液は、潤い感を高め機能がある。ビタミンC及びビタミンEは、抗酸化剤としても機能する。ビタミンEは、還元力の強い成分で、活性酸素・フリーラジカルを消去し、過酸化脂質の発生を防ぐ抗酸化作用がある。したがって、ビタミンEは、薬液の安定化剤として機能するとともに、薄葉紙を使用した者の肌に付与されると当該肌の皮脂の酸化防止効果及び血行促進効果が発揮される。また、保湿機能もある。ビタミンCは、ビタミンEと同じく皮脂の抗酸化作用がある。さらに、ビタミンCは、ビタミンEを還元する作用があるため、ビタミンC及びビタミンEの両方を用いると、ビタミンCがビタミンEの助剤として働き、活性酸素などにより酸化されたビタミンEを還元し、ビタミンEの強力な皮脂の抗酸化作用を維持する作用が奏せられる。コラーゲンは、肌の真皮の90%を形成しており、これが減少すると肌に潤いや張りがなくなる。したがって、薄葉紙に含有させておくことにより、これが肌と接触したときに肌に潤いを与える保湿効果を発揮するとともに、薄葉紙に対する保湿効果も発揮する。
【0061】
さらに、液不透過性の薬液が、pHが5.0〜6.0の弱酸性とされたものであると、肌に対して接触させても肌がアルカリ性になることがなく、薬液pHの影響による肌荒れを効果的に防止することができる。特に好適なpH範囲は、5.3〜5.7である。pHの調整法は、酸性又は塩基性のpH調整剤を薬液に添加して行うことができ、薬液が強酸性の場合には、水酸化ナトリウム水溶液や水酸化カリウム水溶液を用いることができ、中性・アルカリ性の場合には、クエン酸やリンゴ酸、乳酸を用いることができる。
【0062】
液不透過性の薬液としては、清涼感を得るための薬液、例えば、ソルビトール、アルチトール、キシリトール、エリスリトール、ラクチトール、パラチニット等を、配合することができる。好ましいものは、エリスリトール、キシリトール、ソルビトールであり、より好ましいものは、エリスリトール、キシリトールである。また、これらの薬液には、メントール、サリチル酸、α−シネロール及びこれらの誘導体の群から選ばれた一種又は二種以上の冷感剤を含ませることができる。この場合、清涼感を得るための薬剤をバインダー成分中に分散させた状態で外層に偏在して含ませるのが望ましい。
【0063】
一方、層形成のための抄造段階で添加(内添)することが望ましい薬液としては、湿潤紙力剤、柔軟剤及びカルボキシメチルセルロースなどを、例示することができる。柔軟剤の代表例は、界面活性剤系の柔軟剤である。界面活性剤系の柔軟剤としては、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤及び両性イオン界面活性剤のなかから適宜選択して用いることができる。アニオン系界面活性剤を用いた場合、コシ(曲げ剛性)を低下させることができ、もって保湿剤による潤い感や柔軟剤による柔らか感を助長させることができる。
【0064】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸塩系、スルホン酸塩系、硫酸エステル塩系、燐酸エステル塩系のものなどを、用いることができる。ただし、アルキル燐酸エステル塩が好ましい。
【0065】
非イオン界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ジエチレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノオレエート、グリセリルモノステアレート、グリセリルモノオレート、プロピレングリコールモノステアレートなどの多価アルコールモノ脂肪酸エステル、N−(3−オレイロシキ−2−ヒドロキシプロピル)ジエタノールアミン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビット密ロウ、ポリオキシエチレンソルビタンセスキステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルなどを用いることができる。
【0066】
柔軟剤としては、カチオン界面活性剤を使用するのが望ましい。これはウィルス、特にインフルエンザウィルスの細胞膜(脂肪)がアニオン性であり、カチオン界面活性剤が細胞膜(脂肪)に吸着した後、脂肪を分解しウィルスを死滅(不活化)するのに好適なためである。カチオン界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩、アミン塩、アミンなどを用いることができる。
【0067】
また、両性イオン界面活性剤としては、カルボキシ、スルホネート、サルフェートを含有する第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体、又は複素環式第2級若しくは第3級アミンの脂肪族誘導体などを用いることができる。
【0068】
湿潤紙力(増強)剤としては、メラミン−ホルムアルデヒド付加縮合物、尿素−ホルムアルデヒド付加縮合物のほか、環境を考慮すると、次述するものを好適に使用することができる。すなわち、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、グリオキザール・ポリアクリルアミド共重合物、官能基数を通常の1/10に低減したポリアミドエピクロルヒドリン樹脂、ジアルデヒドスターチ又はカチオン変性デンプン、酸化デンプン等、より具体的にはカチオン性を有するポリビニルアミド共重合体と二価アルデヒドからなる熱硬化性樹脂(例えば、特公昭44−26670号公報、特公昭54−44762号公報、特開昭57−149595号公報参照。)、カチオン性アルデヒド変性ポリアクリルアミド共重合体(例えば、特開平6−184985号公報、特開平8−56868号公報参照。)、カチオン性高分子とアニオン性高分子を含有し、カチオン性高分子及びアニオン性高分子の少なくとも1つの高分子が疎水性を有するもの(例えば、特開2002−275787号公報参照。)等、公知のものを用いることができる。
【0069】
本衛生薄葉紙をティシュペーパーとする場合は、3枚重ね一組(3プライ)での紙厚が、200〜350μmであるのが好ましく、240〜320μmであるのがより好ましい。紙厚が薄すぎると、使用者が感じる紙薄感が顕著になり、また、吸水性に劣りティシュペーパーとしての機能が低下する。他方、紙厚が厚すぎると、所定枚数を収納箱に収めて製品としたときの引き出し性能に劣るようになる。
【0070】
ここで、紙厚測定は、JIS P 8111の条件下で、尾崎製作所ダイヤルシックネスゲージ「PEACOCK G型」を用いて測定する。具体的には、プランジャーと測定台の間にゴミ、チリ等がないことを確認してプランジャーを測定台の上におろし、前記ダイヤルシックネスゲージのメモリを移動させてゼロ点を合わせ、次いで、プランジャーを上げて試料(衛生薄葉紙)を試験台の上におき、プランジャーをゆっくりと下ろしそのときのゲージを読み取る。このとき、プランジャーをのせるだけとする。なお、紙厚は測定を10回行って得られる平均値とする。
【0071】
本衛生薄葉紙10において、各層の原料は、特に限定されず、ティシュペーパー、トイレットペーパー等の用途に応じて、適宜の原料を使用することができる。原料として、パルプ繊維を使用する場合、このパルプ繊維(原料パルプ)としては、例えば、木材パルプ、非木材パルプ、合成パルプ、古紙パルプ、などから、より具体的には、砕木パルプ(GP)、ストーングランドパルプ(SGP)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、加圧式砕木パルプ(PGW)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)、ブリーチケミサーモメカニカルパルプ(BCTMP)等の機械パルプ(MP)、化学的機械パルプ(CGP)、半化学的パルプ(SCP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)等のクラフトパルプ(KP)、ソーダパルプ(AP)、サルファイトパルプ(SP)、溶解パルプ(DP)等の化学的パルプ(CP)、ナイロン、レーヨン、ポリエステル、ポリビニルアルコール(PVA)等を原料とする合成パルプ、脱墨パルプ(DIP)、ウエストパルプ(WP)等の古紙パルプ、かすパルプ(TP)、木綿、アマ、麻、黄麻、マニラ麻、ラミー等を原料とするぼろパルプ、わらパルプ、エスパルトパルプ、バガスパルプ、竹パルプ、ケナフパルプ等の茎稈パルプ、靭皮パルプ等の補助パルプなどから、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。
【0072】
パルプ繊維等の原料は、例えば、公知の抄紙工程、具体的には、ワイヤパート、プレスパート、ドライヤパート、サイズプレス、カレンダパート等を経るなどして、1つの層とする。この抄紙に際しては、例えば、分散剤、苛性ソーダ、アンモニア水等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、蛍光染料、離型剤、耐水化剤、流動変性剤、歩留まり向上剤などの適宜の薬品を添加することができる。
【0073】
本衛生薄葉紙10において、使用することができる抗ウィルス剤の種類は、特に限定されない。例えば、オシメン、カンフェン、リモネン、サビネン、ミルセン、テルピネン、ピネン、シメン等の植物抽出成分中に含まれるモノテルペン炭化水素類や、シトロネロール、ゲラニオール、イソプレゴール、リナロール、テルピネロール等のモノテルペンアルコール類、アネトール、カルバクロール、オイゲノール、チモール、パラクレゾール、カビコール、ローズバッツエキス、緑茶ポリフェノール等のフェノール類、t−アネトール、チャビコールメチルエーテル、サフロール等のフェノールエーテル類、アセトアルデヒド、シトラール、シトロネラール、ゲラニアール、ペリルアルデヒド、パレラナール等のアルデヒド類、アセトフェノン、カンファー、ジャスモン、ノートカトン、メントン、フェンコン、カルボン、プレゴン等のケトン類、カリオレフィンオキサイド、シネオール、ビサボロールオキサイド等の酸化物類、カテキン、プロアントシアニディン、フラボン、フラバノン、アントシアニン、フェノール類、フラボノール等のフラボノイド類、などの薬効成分の中から、一種又は数種を適宜選択して使用することができる。また、例えば、アスコルビン酸、カルボン酸、クエン酸等の有機酸やドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウムなどのアルキルベンゼンスルホン酸及びその塩類、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などを使用することもできる。ただし、本抗ウィルス剤としては、界面活性剤及び多価アルコール類の少なくともいずれか一方を使用するのが好ましい。ウィルス細胞膜に吸着・分解し、ウィルスを不活化するためである。
【0074】
これらの抗ウィルス剤は、絶乾質量基準で液保持容量を大きくされた中間層に対し0.1〜30g/m2付与されているのが好ましく、1〜10g/m2付与されているのが特に好ましい。0.1g/m2未満であると抗ウィルス剤付与の効果が十分に得られない。他方、30g/m2を超えても、抗ウィルス剤付与の効果が十分に向上せず不経済である。
【0075】
また、以上のように抗ウィルス剤を使用する場合は、細胞膜を有するウィルスに対する不活化率が99%以上となるようにするのが好ましい。また、対象となるウィルスを、細胞膜を有するものに限定するのは、界面活性剤が細胞膜に吸着し、分解してウィルスの繁殖を抑えるためである。
【0076】
不活化率の測定方法としては、インフルエンザウィルス(A/Panama/2007/99(H3N2)株)を、最小必須培地にて約105FFU/mlに調整してウィルス液とする。抗ウィルス剤を含浸させた薄葉紙を中層として、3層構造を1組の試験紙とする。この試験紙を1.5cm×1.5cmにカットしたものを3組1サンプル(抗ウィルス剤を含浸させた中層3枚を含む計9枚)とし、ウィルス液0.5mlに浸す。室温(25℃)にて1分、5分、15分及び60分間放置する。放置後の反応溶液を1:1から4倍階段希釈し、溶液中のウィルス感染価(ウィルスの感染力を表す定量値)をマイクロ感染価測定法で測定し、60分後のウィルスの死滅(不活化)の割合(%)を測定値とする。
【実施例】
【0077】
本発明に係る実施例品と、市販の汎用ティシュペーパー、及び保湿性を謳った市販のティシュペーパーについて、人工鼻水の裏抜け性などの各種特性を調査したところ、表1及び表2に示す結果が得られた。ここで、各表中における「吸収層」とは、3層構成の場合には「中間層」を意味し、2層構成の場合には「一方の層」を意味した上で、吸水量及び吸水度の測定値を対応する欄に示してある。
本発明に係る実施例品は、鼻水の裏抜け低減効果がきわめて高いことが知見された。なお、表中には表していないが、実施例品のいずれもソフトネスが0.5〜3.0g、かつKES肌触り指数が8〜15の値を示し、市販品とほぼ同等の柔軟性及び肌触り性を示した。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】

【0080】
なお、荷重条件下(250g荷重で3秒)での人工鼻水の裏抜け試験の条件は、図14を参照して、次記のとおりである。
(11)人工鼻水(生理食塩水(尿素2%、塩化ナトリウム0.8%、塩化カルシウム0.3%、硫酸マグネシウム0.8%、イオン交換水96.1%):CMC(カルボキシルメチルセルロース)4%水溶液=1:2、食紅(微量))を用意。
(12)ろ紙(東洋濾紙株式会社製「ADVANTEC 1(150mm)」)を2枚積層し、質量を測定。このろ紙の中心に谷折目を入れておく。
(13)積層したろ紙の上に、試験試料を積層((a)図)。
(14)ろ紙に10mmの高さからマイクロピペットで前記人工鼻水1mlを滴下((b)図)。
(15)試験試料をろ紙ごと折目に沿って半分に折る((c)図)。
(16)その上に、容量500mlのSUS製ビーカー(東京硝子機器社性)に水を入れ、総重量を250gとしたもの載せる。このとき、ビーカーの底面(直径82mm、底面積52.8cm2)中心が、滴下した人工鼻水の中心の真上になるように載せる。3秒後ビーカーを取り除き、試験試料を除き、ろ紙のみの質量を測定し、滴下前との質量差を荷重条件下(250g荷重で3秒)での人工鼻水の裏抜け量(mg)とする。
【図面の簡単な説明】
【0081】
【図1】衛生薄葉紙の断面模式図である。
【図2】衛生薄葉紙の廃棄時概要説明図である。
【図3】衛生薄葉紙の断面模式図である。
【図4】衛生薄葉紙の断面模式図である。
【図5】衛生薄葉紙の断面模式図である。
【図6】衛生薄葉紙の断面模式図である。
【図7】衛生薄葉紙の断面模式図である。
【図8】測定板の斜視図である。
【図9】他の衛生薄葉紙の断面模式図である。
【図10】KES肌触り指数の測定方法を説明するための図である。
【図11】KES肌触り指数の測定方法を説明するための図である。
【図12】KES肌触り指数の測定方法を説明するための図である。
【図13】衛生薄葉紙の製造フローを示す図である。
【図14】荷重条件下(250g荷重で3秒)での人工鼻水の裏抜け試験の条件の説明図である。
【符号の説明】
【0082】
10…衛生薄葉紙、11,12…外層、30…中間層、W…鼻水。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2層以上の重ね合わせ衛生薄葉紙であって、
前記衛生薄葉紙の最外層の少なくとも一方の外層が、パルプを原料とする紙層であり、
人工鼻水の裏抜け試験(無荷重時)での人工鼻水の裏抜け量が10mg以下であることを特徴とする衛生薄葉紙。
【請求項2】
3層の重ね合わせ衛生薄葉紙であって、
各層がパルプを原料とする紙層であり、人工鼻水の裏抜け試験(無荷重時)での人工鼻水の裏抜け量が10mg以下であることを特徴とする衛生薄葉紙。
【請求項3】
荷重条件下(250g荷重で3秒)での人工鼻水の裏抜け試験での人工鼻水の裏抜け量が150mg以下である請求項1または2記載の衛生薄葉紙。
【請求項4】
両外層より中間層の坪量が大きい請求項2記載の衛生薄葉紙。
【請求項5】
中間層に抗ウィルス剤が含有されている請求項2記載の衛生薄葉紙。
【請求項6】
両外層に液不透過性を高める薬液を含む請求項2記載の衛生薄葉紙。
【請求項7】
相互に重なり合う各層が、熱融着、超音波融着、粘着剤及びプライボンディングの群から選ばれたいずれか1つの接合加工により重ね合わされている請求項1〜6のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。
【請求項8】
中間層のいずれかの層に着色がなされ、その着色が少なくとも一方の最外層側から視認可能の関係にある請求項2記載の衛生薄葉紙。
【請求項9】
製品米坪が10〜55g/m2である請求項1〜8のいずれか1項に記載の衛生薄葉紙。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−21168(P2007−21168A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−274757(P2005−274757)
【出願日】平成17年9月21日(2005.9.21)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】