衝突回避システム
【課題】後続車両の衝突を確実に防止することができる衝突回避システムを提供する。
【解決手段】 衝突する危険度が小さいものでなくなった場合(S23:NO)、後続車両が自車両に衝突する危険度を算出し(S40)、この危険度が大きくなった時に、自車両に対して先行する先行車両に回避方向及び回避距離に関する情報を送信して(S25、S30)、自車両だけでなく先行車両をも回避させて(S31、S67)、後続車両が自車両に追突することを防止している。このとき、自車両と先行車両で構成する車列の側方に回避スペースを形成するとともに、各車両の車間を詰めさせて、自車両の後方にも回避スペースを形成している。このため、自車両だけで回避制御を行っていた従来の衝突回避システムと比べ、この衝突回避システムを用いると、後続車両の衝突をより確実に防止することができる。
【解決手段】 衝突する危険度が小さいものでなくなった場合(S23:NO)、後続車両が自車両に衝突する危険度を算出し(S40)、この危険度が大きくなった時に、自車両に対して先行する先行車両に回避方向及び回避距離に関する情報を送信して(S25、S30)、自車両だけでなく先行車両をも回避させて(S31、S67)、後続車両が自車両に追突することを防止している。このとき、自車両と先行車両で構成する車列の側方に回避スペースを形成するとともに、各車両の車間を詰めさせて、自車両の後方にも回避スペースを形成している。このため、自車両だけで回避制御を行っていた従来の衝突回避システムと比べ、この衝突回避システムを用いると、後続車両の衝突をより確実に防止することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後続車両の自車両への衝突を回避する衝突回避システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の衝突回避システムが適用された車両には、車両の後方を監視する後方監視カメラと、車両の前方及び側方の空きスペースを探索する探索装置とが備えられている。
そして、このシステムが適用されたある車両(以下「自車両」という)での後方監視カメラによる監視により、自車両に対して後方から接近する後続車両が自車両に衝突する可能性があるとされた場合、探索装置で探索した空きスペースに自車両を移動させる制御を行って、後続車両の自車両への衝突を回避していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−182198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の衝突回避システムは、自車両の周囲の空きスペースに自車両を移動させていただけなので、渋滞や信号待ち等で車間が詰まっていて空きスペースが小さい場合、後続車両の自車両への衝突を回避するのに十分な移動ができない可能性があった。
【0005】
また、従来の衝突回避システムでは、自車両が空きスペースに移動することによって、後続車両が自車両等への衝突を避けるための回避スペースが形成されるが、この回避スペースは、自車両が回避することによってできただけの大きさのものであるので、後続車両の衝突を避けるためには十分な大きさとは言えなかった。
【0006】
そこで、本発明は、後続車両の衝突を確実に防止することができる衝突回避システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の衝突回避システムは、自車両と該自車両に対して先行する先行車両の周囲の移動可能な空きスペースを把握する空間把握手段と、自車両の後方を監視する後方監視手段とを備えている。
【0008】
そして、本発明の衝突回避システムでは、後方監視手段による監視により、前記自車両の後方に位置する後続車両が自車両に衝突する危険度を危険度判定手段が判定し、この危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、回避指示手段が、自車両と先行車両とを空きスペースに移動させて、自車両と先行車両とで形成する車列の側方に、後続車両の衝突を回避するための回避スペースを形成することを指示する。
【0009】
すると、本発明の衝突回避システムでは、自車両及び先行車両の各車両に備えられた回避制御手段により、回避指示手段の指示に従って回避スペースが形成されるように各車両を移動させる回避制御が行われる。
【0010】
このように、本発明の衝突回避システムでは、後続車両が自車両に衝突する虞がある場合、自車両と先行車両とで形成する車列全体を移動させているので、信号待ち等で車間が詰まっていて自車両を移動させただけでは十分な大きさの回避スペースを形成できないときでも、後続車両の自車両への衝突はもちろん先行車両への衝突をも回避可能な十分な大きさの回避スペースを車列の側方に確保することができる。
【0011】
従って、本発明の衝突回避システムを用いれば、後続車両の自車両への衝突ばかりでなく、先行車両への衝突をも確実に防止することができる。
尚、回避指示手段による指示などを伝える手段としては、車車間通信システムを用いても良いし、その他の通信手段を用いても良い。
【0012】
次に、請求項2に記載したように、危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、回避指示手段は、車列を形成する各車両の車間を前方に詰めさせ、車列の側方だけでなく、自車両の後方にも、後続車両が自車両に衝突することを回避するための回避スペースを形成するよう指示してもよい。
【0013】
このようにすると、車列の側方だけでなく自車両の後方にも後続車両の衝突を回避するための回避スペースが形成されるので、車列の側方に回避スペースを形成するだけの場合に比べ、後続車両が自車両及び先行車両に衝突することをより確実に防止することができる。
【0014】
次に、請求項3に記載したように、本発明の衝突回避システムは、自車両及び先行車両の現在位置を検出する位置検出手段を備え、回避指示手段は、各車両の空きスペースと現在位置から、回避スペースを形成する際に自車両及び先行車両を移動させる方向及び距離を算出し、回避スペースを形成する指示として自車両及び先行車両を移動させる方向及び距離を含む指示を行うようにしてもよい。
【0015】
このようにすると、自車両及び先行車両の各車両の周辺状況を把握した上で、各車両が回避する方向と距離を個別に算出しているので、回避方向を示しただけでは障害物があるために回避スペースを作成出来ない車両をも確実に回避させて回避スペースを形成することができる。
【0016】
尚、回避スペースとしては、各車両の空きスペースと現在位置から算出可能な最大のものを算出するようにしてもよいし、最短の時間で形成できるものを算出するようにしてもよい。
【0017】
また、システムの簡略化のため、上述した回避スペースを形成することを指示する場合、単に回避方向(回避スペースが形成される側とは反対側)を示すだけでもよい。
次に、請求項4に記載したように、危険度判定手段で判定された危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、後続車両へ報知する報知手段を備えるようにしてもよい。この報知手段としては、ハザードランプを点滅してもよいし、警報音を発するようにしてもよいし、後続車両と車車間通信等により通信可能であれば、通信によって後続車両に衝突の危険があることを報知するようにしてもよい。その他、どのような方法で報知してもよい。
【0018】
次に、請求項5に記載したように、回避指示手段により回避スペースを形成する指示を行う場合、車列の左右のうちいずれの側に回避スペースを形成するかについては、車列を形成する各車両の移動量が少ない側に移動して、車列の側方に回避スペースを形成するようにしてもよい。
【0019】
このようにすれば、最小の移動量で、後続車両の自車両又は先行車両への衝突を回避することができる。
尚、このような回避スペースの形成方法の具体例としては、自車両、先行車両及び後方車両の進行方向を前方とし、この前方をみたときの左右を左右方向として説明すると、後方監視手段等により、後続車両が自車両に対して左右のいずれかにズレているかを判断できる場合、後続車両が右側にズレていれば車列の右側に第1回避スペースを形成するよう指示し、後続車両が左側にズレている場合は、車列の左側に第1回避スペースを形成することを指示するようにしてもよい。
【0020】
次に、平行な複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、請求項6に記載したように、回避指示手段は、車列に対し回避スペースを形成する側と同じ側方側に位置する第1側方車列について、車列が移動する側とは反対側に移動させて、車列と第1側方車列との間に、回避スペースを形成するよう指示するように構成してもよい。この場合、回避制御手段は、第1側方車列を形成する各車両にも備えられ、回避制御として、指示に従って第1側方車列を形成する各車両を移動させる制御をも行うよう構成する。
【0021】
このようにすると、複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車両を含む車列と、この車列の側方に位置する第1側方車列との間に回避スペースが形成されるので、自車両を含む車列だけで回避スペースを形成する場合に比べ、非常に大きな回避スペースが確保できる。
【0022】
そのため、この請求項6の衝突回避システムを用いると、後続車両の自車両又は先行車両に加えて、第1側方車列を形成する車両への後続車両の衝突をも防止することができる。
【0023】
また、車列が平行な複数の列からなる場合、請求項7に記載したように、回避指示手段は、危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、車列が回避スペースを形成する側とは反対の側方側に位置する第2側方車列についても、車列が移動する側と同じ側に移動させて回避スペースを形成することを指示するように構成してもよい。この場合、回避制御手段は、第2側方車列を形成する各車両にも備えられ、回避制御として、指示に従って第2側方車列を形成する各車両を移動させる制御をも行うよう構成する。
【0024】
このようにすると、複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車両を含む車列と、この車列の側方に位置する第2側方車列とを同じ側に移動させることで、自車両を含む車列だけで回避スペースを形成する場合に比べ、非常に大きな回避スペースが確保できる。
【0025】
そのため、この請求項7の衝突回避システムを用いると、後続車両の自車両又は先行車両に加えて、第2側方車列を形成する車両への後続車両の衝突をも防止することができる。
【0026】
ところで、例えば、回避指示手段の指示を各車両間で通信する手段として車車間通信装置を利用する場合、この車車間通信装置を備えないことによって、本発明の回避制御ができない車両が存在する場合がある。
【0027】
このような場合、請求項8に記載したように回避不能車両を検出する車両検出手段を備え、回避指示手段は、回避不能車両が移動しないものとして前記回避スペースを形成することを指示するようにしてもよい。
【0028】
このようにすれば、例え車両の中に回避制御が行えない車両があっても、その条件下においての最適な回避スペースを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の衝突回避システムを実現するため、各車両が備えている各種装置のブロック図である。
【図2】車車間で通信される車車間通信データと、自車両から各車両に送信される回避指示データについての説明図である。
【図3】自車両制御処理のフローチャートである。
【図4】(a)衝突危険度算出処理(S40)のフローチャートと、(b)危険度について説明する説明図である。
【図5】回避行動作成処理(S50)のフローチャートと、回避方向を決定する方法の説明図である。
【図6】回避行動についての説明図である。
【図7】他車両制御処理のフローチャートである。
【図8】本実施形態の衝突回避システムが動作したときの一例を説明する模式図である。
【図9】本実施形態の衝突回避システムが動作したときの一例を説明する模式図である。
【図10】本実施形態の衝突回避システムが動作したときの一例を説明する模式図で、車車間通信装置を備えていない車両が存在する場合のものである。
【図11】危険度算出処理の他の例について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[各車両に備えられる装置]
本実施形態の衝突回避システムを実現するために各車両が備えている各種装置について説明する。
【0031】
ここで、図1は、本実施形態の衝突回避システムを実現するため、各車両が備えている各種装置のブロック図で、図2は、車車間で通信される車車間通信データと、自車両から各車両に送信される回避指示データについての説明図である。
【0032】
各車両は、図1に示すように、CPU11、ROM12、RAM13等を備えるコンピュータ装置からなるECU10を備えている。このうちROM12には後述する各種処理で用いられるプログラム及び各車両のIDデータが記憶され、RAM13には、後述する各種処理で用いられるデータが一時記憶され、必要に応じ、記憶、更新、削除される。
【0033】
また、各車両は、各種情報の入出系装置として、前方監視カメラ20、後方監視カメラ21、側方監視カメラ22、レーザレーダ23、車速センサ24、車車間通信装置25、GPS受信装置26を備えている。
【0034】
さらに、各車両は、制御系装置として、スロットル制御装置30、ブレーキ制御装置31、ステアリング制御装置32、ライト制御装置33、ウインカー制御装置34、音声出力装置35を備えている。
【0035】
このうち、前方監視カメラ20、後方監視カメラ21は、各車両の前方及び後方を撮影可能な位置に取り付けられている。側方監視カメラ22は、各車両の左右それぞれに少なくとも1台ずつ備えられ、各車両の左方及び右方を撮影可能な位置に取り付けられている。
【0036】
レーザレーダ23は、各車両の前後左右に取り付けられ、各車両の周囲を探索し、各車両の周囲に存在する車両や障害物等の様々な物との距離等を測定する装置である。
これらカメラ20〜22で撮影された画像や、レーザレーダ23を用いた探索結果はECU10に送られて解析され、各車両が移動可能な各車両の周囲(前方・後方・右方・左方)の空きスペースに関するデータや、自車両の後方に位置する後続車両がある場合の後続車両との車間距離や相対速度に関するデータを得て、これらデータはRAM13に記憶される。各車両において、これらデータを得る処理は周知なので詳細については省略する。また、これらのデータは、各車両のエンジンが動作を開始してから停止するまで、常時更新される。
【0037】
車速センサ24は、各車両の絶対速度を測定するセンサである。この車速センサ24で計測された情報は、車速データとしてRAM13に記憶され、各車両のエンジンが動作を開始してから停止するまで、常時更新される。
【0038】
車車間通信装置25は、各車両との間で各種データを無線により送受信する装置で、本実施形態では後述する各種処理において車車間通信データを通信する。
GPS受信装置26は、周知の方法により、複数のGPS衛星から受信した送信時刻情報に基づいて、各車両の現在位置を計測する装置である。このGPS受信装置26を用いて計測された現在位置に関する情報は、現在位置データとしてRAM13に記憶され、各車両のエンジンが動作を開始してから停止するまで、常時更新される。
【0039】
スロットル制御装置30は、各車両のスロットルバルブを制御する装置であり、ブレーキ制御装置31は、各車両のブレーキを制御する装置であり、ステアリング制御装置32は、各車両の操舵装置を制御する装置である。これら制御装置30〜32は、後述する他車両制御処理を実行するとき、ECU10からの指示に従ってスロットルバルブ、ブレーキ、操舵装置を制御して、車両を所定の方向に移動する処理を実行する。
【0040】
ライト制御装置33は、前照灯、テールランプ等を制御する装置であり、ウインカー制御装置34は、図示しない方向指示器レバーの操作により左右いずれかの方向指示ランプを点灯させ、または図示しないハザードボタンの操作により両方の方向指示ランプを同時に点滅させる制御を実行する。両方の方向指示ランプを同時に点滅させると、方向指示ランプは、ハザードランプとして機能する。
【0041】
音声出力装置35は、ECU10で実行される各種処理を実行する際に出力する音声を、図示しない車内用のスピーカを用いて出力する装置である。
さらに、各車両には、上記各種装置の他にも複数のその他装置36を備えている。
【0042】
各車両のECU10は、これら各装置20〜36とCAN用のバス14を介して通信し、各種処理を実行する。
尚、RAM13に一時記憶されるデータとしては、前述した自車両の周囲の空きスペースデータ、後続車両との車間距離データ及び相対速度データ、自車両の車速データ及び現在位置データ、他の車両から受信した車車間通信データ、自車両が後続車両と衝突する危険度を示す危険度データなど、様々なデータが記憶される。
【0043】
また、図2(a)に示すように、本実施形態の衝突回避システムを実行する各車両では、車車間通信装置25を用いて、一定時間毎に車車間通信データとして、各車両のIDデータに、各車両の前後左右の空きスペースデータ、各車両の車速データ、各車両の現在位置データを関連づけた情報が各車両間で送受信されている。
【0044】
この車車間通信データはRAM13に記憶され、先にRAM13に記憶された車車間通信データと同じIDデータを含む車車間通信データを受信する毎に、そのIDデータを含む車車間通信データは更新される。
【0045】
また、図2(b)に示すように、本実施形態の衝突回避システムでは、後述する他車両制御処理が実行されるとき、車車間通信装置25を用いて、回避指示データが自車両から各他車両に送信される。この回避指示データは、この回避指示データの送信先の車両のIDを示すIDデータと、そのIDを有する他車両の回避方向を示す回避方向データと、回避距離を示す回避距離データとが関連付けられたデータである。
[自車両制御処理]
次に、衝突回避システムが適用された車両であって、ある交通状況において、複数の車両が車列を組んでいるときに、この車列の最も後方に位置する車両(以下「自車両」という)のECUで実行される処理(以下「自車両制御処理」という)について、図3を用いて説明する。
【0046】
ここで、図3は、自車両制御処理のフローチャートである。
この自車両制御処理は、自車両のエンジンが始動してから停止するまで繰り返し実行され、以下の説明では、特に示さない限り、ステップ番号の小さいものから順に実行される。
【0047】
この自車両制御処理が開始されると、まずS20の処理が実行される。
このS20では、自車両に対して先行する先行車両と、自車両と先行車両で形成する車列(以下「自車列」とよぶ)の左右の側方に、自車列と同一方向に進む車列(以下「側方車列」と呼ぶ)がある場合、この側方車列を形成する車両との間で車車間通信を行った情報から、車車間通信が不能な車両を特定する処理が実施される。
【0048】
車車間通信データには、各車両の現在位置データと、空きスペースデータとが含まれている。
そのため、ある車両の前方や後方の空きスペースデータを見ると、ある車両の前方又は後方に車両が存在するであろうことが推測されるにも関わらず、各車両から受信した現在位置データのいずれを見ても、その推測される車両が車車間通信装置を備えていたら受信したであろう現在位置データを含む車車間通信データを受信していなければ、ある車両の前方又は後方に、車車間通信装置を搭載していない車両が存在することが把握できる。
【0049】
このS20では、このようにして、自車列又は側方車列中に、車車間通信装置を搭載していない車両が存在するか把握する処理が実行される。
S22では、自車両の後方に後続車両が存在するか判定する処理を実行する。
【0050】
この処理(S22)は、後方監視カメラ21で撮影した画像を解析することで行われ、具体的には、例えば、自車両の後方を撮影した画像から、自車両が走行している車線を把握し、その車線上を走行する後続車両が存在するか否かを判定する。
【0051】
この判定(S22)で、後続車両が存在しないと判定されている間は(S22:NO)、S20〜S22までの処理が繰り返し実行される。
一方、この判定(S22)で、後続車両が存在すると判定された場合(S22:YES)、次に、自車両が後続車両に追突される危険度を算出する処理が実行される(S40)。
【0052】
このS40では、詳細は後述するが、後続車両が自車両に追突する危険度を、「大」「中」「小」の3段階に分け、その危険度を判定した結果をRAM13に記憶する処理が実行される。
【0053】
この処理(S40)が終了すると、次に、S23の処理が実行される。
S23では、後続車両が自車両に追突する危険度が「小」か否かを判定する処理が実行される。具体的には、RAM13に記憶された危険度データが「小」であるか否かを判定する処理を実行する。
【0054】
S23の処理で、追突の危険度が「小」である場合(S23:YES)、再びS20以下の処理が実行される。追突の危険度が「小」でない場合(S23:NO)、次にS24の処理が実行される。
【0055】
S24では、後続車両に対して警報を行う処理を実行する。具体的には、ウインカー制御装置34を制御して、左右の方向指示器を同時に点滅する処理が実行される。いわゆるハザードランプを点滅する処理が実行され、次にS50が実行される。
【0056】
S50では、詳細は後述するが、自車両、及び、自車両に対して先行しかつ自車両と同じ車列を組む先行車両、自車両を含む車列の左右に位置する側方車列を組む側方車両のそれぞれが取るべき回避行動を算出する処理が実行され、S25で、車車間通信装置25を用いて先行車両及び側方車両に取るべき回避行動についての情報である回避指示データ(図2(b)参照)が送信される。
【0057】
S25において回避指示データが送信されると、再度S40の処理の実行によりRAM13に記憶された危険度を更新する処理が実行され、次にS26において、後続車両が自車両に追突する危険度が「中」か否かを判定する処理が実行される。
【0058】
この処理(S26)で、危険度が「中」であると判定されたら(S26:YES)、S24以下の処理が再度実行され、危険度が「中」以外であると判定されたら(S26:NO)、S27の処理が実行される。
【0059】
S27では、危険度が「大」または「小」のいずれかを判定する処理が実行される。危険度が「大」である場合である場合は、S30の処理が実行され、危険度が小である場合は、S28の処理が実行される。
【0060】
S28では、S24で開始したハザードランプの点滅を停止する処理が実行され、続く、S29では、回避指示データを送信した各車両に回避不要であることを通知する処理が車車間通信装置25を用いて実行され、再度S20以下の処理が実行される。
【0061】
一方、S30の処理が実行される場合、S25において、回避指示データを送信した車両に対して、回避指示データに従った動作を各車両が実行するよう命令する回避命令情報を車車間通信装置25を用いて送信する処理を実行する。
【0062】
そして、続くS31では、自車両に対してS50で作成した回避行動に応じた回避行動を取るよう、スロットル制御装置30、ブレーキ制御装置31、ステアリング制御装置32を用いて自車両を制御する。この処理(S31)を実行すると、S50で指定された方向に指定された距離だけ自車両を移動させる処理が実行される。
【0063】
S32では、S31の処理を実行してから一定時間が経過したか否かを判定する処理が実行され、この時間が経過するまで待機する処理が実行される(S32:NO)。
一方、S32において、S31の処理を実行してから一定時間が経過したと判定されたら(S32:YES)、次にS33の処理が実行され、このS33では、前方の車両から順にS30で通知された回避指示データに応じた制御を解除する制限解除通知が実行される。
【0064】
そして、このS33の処理が終了すると、再びS20以下の処理が再開される。
[衝突危険度算出処理(S40)]
次に、衝突危険度算出処理(S40)について説明する。
【0065】
ここで、図4(a)は、衝突危険度算出処理(S40)のフローチャートで、図4(b)は後続車両が他車両に追突する危険度について説明する模式図である。
この衝突危険度算出処理(S40)が開始されると、まず、S41において、レーザレーダ23を用いて、自車両と後続車両との車間距離及び相対速度を計測する処理が実行され、RAM13に記憶される。
【0066】
次に、S42では、車速センサ24を用いて計測された自車両の車速と、S40で計測した相対速度とから後続車両の速度を算出し、その速度から、後続車両が安全に停止するまでの停止距離Y[m]を推定する処理を実行する。
【0067】
この推定は、後続車両の速度と停止距離との関係を示すテーブルを用意しておき行っても良いし、他の方法で推定してもよく、推定の方法はこれに限られるものではない。
また、この推定は、後方監視カメラ21を用いて道路状況を確認し、雨天と晴天とで推定される停止距離Y[m]の長さが変更されるようにしてもよいし、後方監視カメラ21の画像を解析することで、車両の大きさや車種毎に、変更されるようにしてもよい。
【0068】
次に、S43以下では、後続車両が他車両に衝突する危険度を判定する処理が実行されるが、ここで、図4(b)を用いて、危険度の判定方法について説明する。
本実施形態では、後続車両が自車両に追突する危険度を3段階に分け、自車両と後続車両との車間距離X[m]が、後続車両の停止距離Y[m]以下の場合には危険度「大」、車間距離X[m]がY<X≦2Yである場合には危険度「中」、車間距離X[m]が2Y[m]より大きい場合は危険度「小」として判定している。
【0069】
S43ではまず、図4(a)に示すように、後続車両と自車両との車間距離X[m]が、後続車両の停止距離Y[m]の2倍より大きいか否かが判定され、X>2Yと判定されると(S43:YES)、RAM13に危険度「小」を示すデータが記憶される(S47)。
【0070】
一方、X>2Yでないと反対されると(S43:NO)、S44の処理が実行され、車間距離X[m]がY<X≦2Yか否かが判定される。
このS44で、車間距離がY<X≦2Yであると判定されると(S44:YES)、RAM13に危険度「中」を示すデータが記憶され(S46)、車間距離がY<X≦2Yでない、すなわち、Y>Xと判定されると(S44:NO)、RAM13に危険度「大」を示すデータが記憶される(S45)。
【0071】
そして、S45〜S47のいずれかの処理が終了すると、自車両制御処理に処理が移行する。
[回避行動作成処理(S50)]
次に、自車両制御処理で実行される回避行動作成処理について説明する。
【0072】
ここで図5(a)は回避行動作成処理のフローチャートで、図5(b)(c)は回避方向を決定する方法の説明図、図6(a)〜(c)は回避行動の一例を示す説明図である。尚、図6中、点線で示された車両は回避行動前の車両、実線で示された車両は回避行動後の車両を示している。
【0073】
この回避行動作成処理が実行されると、図5(a)に示すように、まずS51の処理が実行される。
このS51では、後続車両及び自車両の進行方向を前方とした場合、その前方を向く車両の右側を右方、左側を左方とし、後続車両が自車両に対して右方に寄っているか左方に寄っているかを判定する処理を実行する。
【0074】
この処理は、図5(b)(c)に示すように、自車両Aの中心線α(車両の左右の幅方向中央を通る線で、前後方向に沿った線)に対し、後続車両Bの中心線βが左右のいずれにずれているかを、自車両Aの後方監視カメラ21の画像を解析することによって行われる。
【0075】
具体的には、本実施形態の後方監視カメラ21は自車両Aに固定され、後方監視カメラ21が撮影する画像フレームの幅方向のどの位置が自車両Aの中心線αに相当するかを予め定め、後方監視カメラ21に撮影された後続車両Bの幅方向の中心線βが、その画像フレーム中の中心位置よりも左右いずれにずれているかを解析することによって判断する。
【0076】
この処理(S51)で、後続車両が、自車両に対して左右のいずれにずれているかが判定されると、図5(a)に示すように、次のS52では、自車列及び側方車列を構成する各車両の回避行動を決定する処理が実行される。
【0077】
S52では、例えば、図6(a)に示すように、後続車両Bが、自車両Aに対して左方に寄っていた場合には、自車両Aと、自車両Aに対して先行する先行車両C1〜C4で構成する自車列の各車両に対しては、右方に寄って車間を詰め、自車列の左方と後方に回避スペースを形成する回避行動を取るよう指示する回避指示データを各車両毎に作成する処理が実行される。
【0078】
また、図6(b)に示すように、後続車両Bが、自車両Aに対して左方に寄っていた場合に、自車両を含む車列の左方に車列がある場合には、その左方の側方車列(本発明の第1側方車列に相当)を組む車両Dに対しては、左方に寄って車間を詰め、自車列と左方の側方車列との間と自車列及び左方の側方車列の後方に回避スペースを形成する回避行動を取るよう指示する回避指示データを各車両毎に作成する処理が実行される。
【0079】
さらに、図6(c)に示すように、後続車両Bが、自車両Aに対して左方に寄っていた場合に、自車両を含む車列の右方の車列がある場合には、その右方の側方車列(本発明の第2側方車列に相当)を組む車両Eに対しては、右方に寄って車間を詰め、自車列の左方に図6(a)の場合に比べて、より大きな回避スペースを形成し、かつ、右方の側方車列の後方にも回避スペースを形成する回避行動を取るよう指示する回避指示データを各車両毎に作成する処理が実行される。
【0080】
この回避指示データは、各車列を構成するすべての車両について、自車両が、各車両の前方、左方及び右方の空きスペースデータ、各車両の車速データ、各車両の現在位置データを車車間通信により受信した情報と、自車両のこれらに相当する情報を把握しているので、これらの情報に基づいて、各車両が移動すべき回避方向や、その方向に対し移動すべき回避距離を決定する。
【0081】
このうち、回避距離は、各車両が前方の車両に対して衝突しないように先方から距離を詰めていったときに、各車両が直前の車両と予め定められた距離(例えば50cm)を残して車間を詰めることができる位置までの距離、左右に詰めるべき距離は、左右に存在する車両や障害物やガードレール等から予め定められた距離(例えば30cm)を残して詰めることができる位置までの距離を算出する。
【0082】
そして、このS52の処理が終了すると、自車両制御処理に戻り、S50に続く処理が実行される。
以上の処理が終了し、前述した自車両制御処理のS30の処理で回避指示データが各車両に送信され、各車両が回避行動を取ると、図6(a)〜(c)に示すように、状況に応じて、回避スペースが形成される。
【0083】
尚、S52では、具体例として後続車両が自車両に対し左方に寄っている場合を説明したが、右方に寄っている場合も、車列が寄る方向が反対になるだけで、同様の処理が行われる。
【0084】
また、自車列の中に、車車間通信装置25を備えていない車両が存在することが検出された場合は、その車両が動かないものとして、各車両の回避方向及び回避距離を決定する。
[他車両制御処理]
次に、衝突回避システムが適用された車両であって、ある交通状況において、複数の車両が車列を組んでいるときに、自車両に対して先行する先行車両、及び、自車両と先行車両で形成される車列の側方に位置する側方車列を形成する車両(以下「他車両」という)のECUで実行される処理(以下「他車両制御処理」という)について説明する。
【0085】
ここで、図7は、他車両制御処理のフローチャートである。
この他車両制御処理は、他車両のエンジンが始動してから停止するまで繰り返し実行され、以下の説明では、特に示さない限り、ステップ番号の小さいものから順に実行される。
【0086】
この他車両制御処理が開始されると、まずS62の処理が実行される。
S62では、自車両から回避指示データを受信したかを判定する処理が実行される。前述したように、自車両に後続車両が追突する危険度が「中」になると、回避指示データが送信されるので、この回避指示データを受信したか否かが判定される。すなわち、自車両に衝突する可能性のある後続車両が存在することが、他車両に伝達される。
【0087】
この判定(S62)で、回避指示データを受信していなければ待機し(S62:NO)、回避指示データを受信したら(S62:YES)、次にS63の処理が実行される。尚、この回避指示データは、車車間通信装置25で受信すると、各他車両のRAM13に記憶される。
【0088】
S63では、他車両のドライバーに対し、自車両に後続車両が衝突する危険度が「中」であることを通知する処理が実行される。具体的には、車両内に設置された音声出力装置35が備えるスピーカを通じて、「後方において衝突の危険性が高まっております」等の音声メッセージを発しても良いし、車内に設置された光源等を点滅させてもよく、その方法は問わない。
【0089】
次に、S64では、車車間通信装置25を用いて、回避不要通知(S29で自車両から通知されるもの)を受信したか否かが判定される。この回避不要通知を受信すると、S63において実行した通知する処理を終了して(S65)、再びS62以下の処理が開始され、回避不要通知を受信していない場合は、次にS66の処理が実行される。
【0090】
S66では、自車両に後続車両が衝突することが確実になり、危険度が「大」となったときに自車両から送信される回避命令情報(S30で自車両から通知されるもの)を受信したか否かが判定される。この回避命令情報を受信していない間は(S66:NO)、S64とS66の判定が繰り返し実行される。一方、回避命令情報を受信した場合は(S66:YES)、S67の処理が実行される。
【0091】
S67では、他車両を回避させる制御を実行する。具体的には、スロットル開度、ステアリング操作量、ブレーキタイミング等を調整して、S62で受信した回避指示データに基づいて指定された回避方向に回避距離だけ他車両が移動するよう他車両を制御する処理が実行される。
【0092】
S68では、このS67が実行されると、次に、制限解除通知(S33で自車両から通知されるもの)を受けたか否かが判定される。この制限解除通知は、回避命令情報を受信してから一定時間経過すると送信されてくる。
【0093】
このS68において、制御解除通知を受けたと判定されると(S68:YES)、次に、他車両の回避制御を解除する処理が実行され(S69)、他車両は自由に移動させることができるようになる。
【0094】
そして、このS69の処理が終了すると、再びS62以下の処理が開始される。
[各車両の動作]
次に、具体例として、片道3車線の車道で本実施形態の衝突回避システムを実行した場合に想定される各車両の動作について図8〜図9を用いて説明する。
【0095】
尚、自車両を符号A、後続車両をB、自車列の先行車両をCで示し、自車列と併走する車列を構成する車両をそれぞれ符号D,Eで示し、同一符号が振られた車両については、前方から後方に向かって1から順に番号を振って説明する。
【0096】
(1)図8(a)に示すように、自車列が中央の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が右方にずれている場合、図8(b)に示すように、自車列(C1〜C4、A)と自車列の左方に位置する側方車列(E1〜E5)は左側に寄せられ、自車列の右方に位置する側方車列(D1〜D5)は右方に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列と右方の側方車列との間に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0097】
(2)図8(c)に示すように、自車列が中央の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が左方にずれている場合、自車列(C1〜C4、A)と自車列の右方に位置する側方車列(D1〜D5)は右方に寄せられ、自車列の左方に位置する側方車列(E1〜E5)は左側に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列と左方の側方車列との間に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0098】
(3)図9(a)に示すように、自車列が左方の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が右方にずれている場合、自車列(C1〜C4、A)は左側に寄せられ、自車列の右方に位置する2つの側方車列(D1〜D5、E1〜E5)は右方に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列と右方の2つの側方車列のうち左方の側方車列(E1〜E5)との間に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0099】
(4)図9(b)に示すように、自車列が左方の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が左方にずれている場合、すべての車列(C1〜C4、A、D1〜D5、E1〜E5)は左側に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列の左側に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0100】
(5)図9(c)に示すように、自車列が右方の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が左方にずれている場合、自車列(C1〜C4、A)は右側に寄せられ、自車列の左方に位置する2つの側方車列(D1〜D5、E1〜E5)は左方に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列と左方の2つの側方車列のうち右方の側方車列(D1〜D5)との間に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0101】
(4)図9(d)に示すように、自車列が右方の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して右方にずれている場合、すべての車列(C1〜C4、A、D1〜D5、E1〜E5)は左側に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列(C1〜C4、A、)の左側に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0102】
尚、いずれかの車列の中に車車間通信装置を搭載していない車両(本発明の「回避不能車両」に相当)がある場合、図10のように、車車間通信装置を搭載していない車両は動かないものとして回避行動を決定し、車車間通信装置を備えている車両だけで回避行動を行う。
【0103】
例えば、図10(a)に示すように、自車列が中央の車線上にあり、後続車両Bが自車両Aに対して右側に寄っていたため、自車両が左側に寄せる場合、E5は回避行動から取り残されることとなるので、自車両Aは左端まで寄せるようにしてもよい。
【0104】
また、図10(b)に示すように、自車列の5台の車両のうち中央の車両C3が車車間通信装置を備えていない場合、C3が移動しないものとして、後続の車両C4及び自車両Aの回避方向及び回避位置を定める。
【0105】
このように、本実施形態では、車車間通信装置を備えていない車両があることも考慮しつつ、後続車両Bが自車両Aはもちろん、他の車両に対しても衝突しないよう、回避方向及び回避位置を定めている。
[本実施形態の衝突回避システムの特徴]
以上説明した衝突回避システムは以下のような特徴がある。
【0106】
本実施形態の衝突回避システムでは、自車両の後方監視カメラ22等を用いて、後方を監視し、自車両の後方に位置する後続車両が、自車両に衝突する危険度を判定している(S40)。
【0107】
そして、その危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものであると判定された場合、すなわち、危険度が「大」と判定された場合、自車両と、自車両に対して先行する先行車両とで形成する自車列の側方に、後続車両の衝突を回避するための回避スペースを形成するよう指示する(S25、S30)。
【0108】
すると、自車両及び先行車両の各車両に備えられたECU10が、回避スペースを形成する側とは反対側に各車両を移動させる回避制御を行う(S67)。
このように、本実施形態の衝突回避システムでは、後続車両が自車両に衝突する虞がある場合、自車両と先行車両とで形成する車列全体を移動させているので、信号待ち等で車間が詰まっていて自車両を移動させただけでは十分な大きさの回避スペースを形成できない場合でも、後続車両の衝突を回避可能な十分な大きさの回避スペースを車列の側方に確保することができる。
【0109】
また、本実施形態の衝突回避システムでは、後続車両が自車両に衝突する虞がある場合、自車両と先行車両とで形成する車列全体を移動させているため、後続車両が先行車両に衝突することをも回避することができる。
【0110】
従って、本実施形態の衝突回避システムを用いれば、後続車両が自車両に衝突することはもちろん、後続車両が先行車両にも衝突することをも確実に防止することができる。
また、本実施形態の衝突回避システムでは、危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合(S27:危険度「大」)、車列を形成する各車両の車間を前方に詰め、車列の側方だけでなく、自車両の後方にも、後続車両が自車両に衝突することを回避するための回避スペースを形成している。
【0111】
そのため、車列の側方だけでなく自車両の後方にも、自車両だけを前方に詰めさせただけの場合に比べて非常に大きな回避スペースを形成することができる。
従って、本実施形態の衝突回避システムを用いれば、車列の側方に回避スペースを形成するだけの場合に比べ、後続車両が自車両及び先行車両に衝突することをより確実に防止することができる。
【0112】
また、本実施形態の衝突回避システムでは、各車両の現在位置や、各車両の周囲の空きスペース等をすべて把握した上で、各車両を個別に制御しているので、各車両の障害物等の個別事情にかかわらず、回避スペースを形成するため各車両を適切に移動させることができる。
【0113】
また、車車間通信装置25を備えていない車両が車列に含まれている場合は、その車両を判別して、その車両が移動しないものとして、車列に含まれる他の車両を移動させる方向及び距離を算出しているので、車車間通信装置25を備えていない車両が車列に含まれている場合でも適切な回避行動を各車両に取らせることができる。
【0114】
また、本実施形態では、後続車両が自車両に追突する危険性が高まったとき、ハザードランプを点滅して後続車両に警報を発している(S24)。そのため、上述した回避動作と合わせることで、後続車両が自車両に追突することをより確実に防止することができる。
【0115】
また、本実施形態では、後続車両が自車両に対して左右のいずれかにズレているかを判断し、後続車両が右側にズレていれば車列の左側に回避スペースを形成するよう指示し、後続車両が左側にズレている場合は、車列の右側に回避スペースを形成するようにして、車列を形成する各車両の移動量が少なくている。そのため、本実施形態のように制御すれば、最小の移動量で、後続車両の自車両又は先行車両への衝突を回避することができる。
【0116】
また、本実施形態では、平行な複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車列に対し回避スペースを形成する側と同じ側方側に位置する側方車列について、自車列が移動する側とは反対方向に移動させて、自車列と側方車列との間に、回避スペースを形成するよう指示している。
【0117】
そのため、このような場合、自車両を含む自車列と、この自車列の側方に位置する側方車列との間に回避スペースが形成されるので、自車両を含む車列だけで回避スペースを形成する場合に比べ、非常に大きな回避スペースが確保でき、後続車両の自車両又は先行車両への衝突に加えて、側方車列を形成する車両への後続車両の衝突をも効果的に防止することができる。
【0118】
また、本実施形態では、平行な複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車列が回避スペースを形成する側とは反対の側方側に位置する側方車列についても、車列が移動する側と同一方向に移動させて回避スペースを形成している。
【0119】
そのため、複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車両を含む車列と、この車列の側方に位置する側方車列とを同一方向に移動させることで、自車両を含む車列だけで回避スペースを形成する場合に比べ、非常に大きな回避スペースが確保でき、後続車両の自車両又は先行車両への衝突をより効果的に防止することができる。
(変形例1)
上記実施形態では、すべての車両について回避行動を取るための情報である回避指示データを自車両で作成し、自車両から送信する例について説明したが、自車両での処理負担が重くなることが懸念される場合は、回避方向だけを伝えるようにしてもよい。そして、回避距離については、各車両で算出するようにしてもよい。
【0120】
また、回避方向については、自車両に対する後続車両の位置に寄ることなく、予め定められた方向に各車両を移動させるようにしてもよい。
(変形例2)
上記実施形態では、図4(a)に示すように、後続車両が自車両に衝突する危険度を、車間距離Xと停止距離Yとを比較して判定したが、図11に示すように、相対速度と車間距離から算出される時間(以下「TTC」:time to collision)=車間距離X/相対速度Zが、3秒以内であれば危険度「小」、3秒未満2秒以上であれば危険度「中」、2秒未満であれば危険度「大」と判定するようにしてもよい。
(変形例3)
上記実施形態では、片道3車線の道路で、自車列が中央の車線に位置している場合、後続車両が自車両に対して左右のいずれかに寄っているかで自車列の回避方向を決定していたが、このような複数車線で回避行動を決定する場合、自車列については、混んでいない車線側に回避させるようにしてもよい。
(変形例4)
上記実施形態では、片道3車線の車道で、自車列が中央の車線に位置している場合、後続車両が自車両に対して左右のいずれかに寄っているかで自車列の回避方向を決定する例について説明したが、後続車両の走行車線できめてもよい。この場合、後続車両が中央より左寄りの車線を走行している場合は、自車両は右側へ回避する。後続車両が中央または右寄りの車線を走行している場合は、自車両は左側へ回避する。
(変形例5)
上記実施形態では、後続車両への警告としてハザードランプを点灯していたが、後続車両に向かって警報音を発する装置を備えている場合は警報音を鳴らしてもよいし、後方に向かってライトをパッシングしてもよい。
【0121】
また、各車両が回避行動を取る場合、各車両は回避方向にウインカーを出すようにしてもよい。
また、歩行者がいる方向には回避行動はとらないようにしてもよい。
【0122】
また、回避距離を決める際には、直行する道路に侵入しないように、決定するとよい。
(変形例6)
上記実施形態では、自車両からすべての車両に対して、回避指示データを送信する例について説明したが、自車両から前方の車両に順送りに情報を送信するようにしてもよい。
(変形例7)
上記実施形態では、回避動作を自動制御で行っていたが、各車両のドライバーに回避方向及び回避距離を音声で伝え、各ドライバーに回避動作を実行させるようにしてもよい。
[対応関係]
特許請求の範囲に記載された後方監視手段は、本実施形態の後方監視カメラ21やレーザレーダ23に対応し、危険度判定手段は、S40の危険度算出処理に対応し、回避指示手段は、自車両制御処理のうちS25やS30、S50の処理に対応する。
【0123】
特許請求の範囲に記載された回避制御手段は、本実施形態の他車両制御処理のS67の処理に対応し、空間把握手段は、前方監視カメラ20や側方監視カメラ22やレーザレーダ23に対応し、位置検出手段は、GPS受信装置26に対応する。
【0124】
特許請求の範囲に記載された回避不能車両の車両検出手段は、本実施形態の自車両制御処理のうちS20の処理に対応し、報知手段は、ウインカー制御手段34及び、自車両制御処理の対後続車両警報(S24)の処理に対応する。
【0125】
尚、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0126】
10…ECU、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…バス、20…前方監視カメラ、21…後方監視カメラ、22…側方監視カメラ、23…レーザレーダ、24…車速センサ、25…車車間通信装置、26…GPS受信装置、30…スロットル制御装置、31…ブレーキ制御装置、32…ステアリング制御装置、33…ライト制御装置、34…ウインカー制御装置、35…音声出力装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、後続車両の自車両への衝突を回避する衝突回避システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の衝突回避システムが適用された車両には、車両の後方を監視する後方監視カメラと、車両の前方及び側方の空きスペースを探索する探索装置とが備えられている。
そして、このシステムが適用されたある車両(以下「自車両」という)での後方監視カメラによる監視により、自車両に対して後方から接近する後続車両が自車両に衝突する可能性があるとされた場合、探索装置で探索した空きスペースに自車両を移動させる制御を行って、後続車両の自車両への衝突を回避していた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−182198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の衝突回避システムは、自車両の周囲の空きスペースに自車両を移動させていただけなので、渋滞や信号待ち等で車間が詰まっていて空きスペースが小さい場合、後続車両の自車両への衝突を回避するのに十分な移動ができない可能性があった。
【0005】
また、従来の衝突回避システムでは、自車両が空きスペースに移動することによって、後続車両が自車両等への衝突を避けるための回避スペースが形成されるが、この回避スペースは、自車両が回避することによってできただけの大きさのものであるので、後続車両の衝突を避けるためには十分な大きさとは言えなかった。
【0006】
そこで、本発明は、後続車両の衝突を確実に防止することができる衝突回避システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明の衝突回避システムは、自車両と該自車両に対して先行する先行車両の周囲の移動可能な空きスペースを把握する空間把握手段と、自車両の後方を監視する後方監視手段とを備えている。
【0008】
そして、本発明の衝突回避システムでは、後方監視手段による監視により、前記自車両の後方に位置する後続車両が自車両に衝突する危険度を危険度判定手段が判定し、この危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、回避指示手段が、自車両と先行車両とを空きスペースに移動させて、自車両と先行車両とで形成する車列の側方に、後続車両の衝突を回避するための回避スペースを形成することを指示する。
【0009】
すると、本発明の衝突回避システムでは、自車両及び先行車両の各車両に備えられた回避制御手段により、回避指示手段の指示に従って回避スペースが形成されるように各車両を移動させる回避制御が行われる。
【0010】
このように、本発明の衝突回避システムでは、後続車両が自車両に衝突する虞がある場合、自車両と先行車両とで形成する車列全体を移動させているので、信号待ち等で車間が詰まっていて自車両を移動させただけでは十分な大きさの回避スペースを形成できないときでも、後続車両の自車両への衝突はもちろん先行車両への衝突をも回避可能な十分な大きさの回避スペースを車列の側方に確保することができる。
【0011】
従って、本発明の衝突回避システムを用いれば、後続車両の自車両への衝突ばかりでなく、先行車両への衝突をも確実に防止することができる。
尚、回避指示手段による指示などを伝える手段としては、車車間通信システムを用いても良いし、その他の通信手段を用いても良い。
【0012】
次に、請求項2に記載したように、危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、回避指示手段は、車列を形成する各車両の車間を前方に詰めさせ、車列の側方だけでなく、自車両の後方にも、後続車両が自車両に衝突することを回避するための回避スペースを形成するよう指示してもよい。
【0013】
このようにすると、車列の側方だけでなく自車両の後方にも後続車両の衝突を回避するための回避スペースが形成されるので、車列の側方に回避スペースを形成するだけの場合に比べ、後続車両が自車両及び先行車両に衝突することをより確実に防止することができる。
【0014】
次に、請求項3に記載したように、本発明の衝突回避システムは、自車両及び先行車両の現在位置を検出する位置検出手段を備え、回避指示手段は、各車両の空きスペースと現在位置から、回避スペースを形成する際に自車両及び先行車両を移動させる方向及び距離を算出し、回避スペースを形成する指示として自車両及び先行車両を移動させる方向及び距離を含む指示を行うようにしてもよい。
【0015】
このようにすると、自車両及び先行車両の各車両の周辺状況を把握した上で、各車両が回避する方向と距離を個別に算出しているので、回避方向を示しただけでは障害物があるために回避スペースを作成出来ない車両をも確実に回避させて回避スペースを形成することができる。
【0016】
尚、回避スペースとしては、各車両の空きスペースと現在位置から算出可能な最大のものを算出するようにしてもよいし、最短の時間で形成できるものを算出するようにしてもよい。
【0017】
また、システムの簡略化のため、上述した回避スペースを形成することを指示する場合、単に回避方向(回避スペースが形成される側とは反対側)を示すだけでもよい。
次に、請求項4に記載したように、危険度判定手段で判定された危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、後続車両へ報知する報知手段を備えるようにしてもよい。この報知手段としては、ハザードランプを点滅してもよいし、警報音を発するようにしてもよいし、後続車両と車車間通信等により通信可能であれば、通信によって後続車両に衝突の危険があることを報知するようにしてもよい。その他、どのような方法で報知してもよい。
【0018】
次に、請求項5に記載したように、回避指示手段により回避スペースを形成する指示を行う場合、車列の左右のうちいずれの側に回避スペースを形成するかについては、車列を形成する各車両の移動量が少ない側に移動して、車列の側方に回避スペースを形成するようにしてもよい。
【0019】
このようにすれば、最小の移動量で、後続車両の自車両又は先行車両への衝突を回避することができる。
尚、このような回避スペースの形成方法の具体例としては、自車両、先行車両及び後方車両の進行方向を前方とし、この前方をみたときの左右を左右方向として説明すると、後方監視手段等により、後続車両が自車両に対して左右のいずれかにズレているかを判断できる場合、後続車両が右側にズレていれば車列の右側に第1回避スペースを形成するよう指示し、後続車両が左側にズレている場合は、車列の左側に第1回避スペースを形成することを指示するようにしてもよい。
【0020】
次に、平行な複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、請求項6に記載したように、回避指示手段は、車列に対し回避スペースを形成する側と同じ側方側に位置する第1側方車列について、車列が移動する側とは反対側に移動させて、車列と第1側方車列との間に、回避スペースを形成するよう指示するように構成してもよい。この場合、回避制御手段は、第1側方車列を形成する各車両にも備えられ、回避制御として、指示に従って第1側方車列を形成する各車両を移動させる制御をも行うよう構成する。
【0021】
このようにすると、複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車両を含む車列と、この車列の側方に位置する第1側方車列との間に回避スペースが形成されるので、自車両を含む車列だけで回避スペースを形成する場合に比べ、非常に大きな回避スペースが確保できる。
【0022】
そのため、この請求項6の衝突回避システムを用いると、後続車両の自車両又は先行車両に加えて、第1側方車列を形成する車両への後続車両の衝突をも防止することができる。
【0023】
また、車列が平行な複数の列からなる場合、請求項7に記載したように、回避指示手段は、危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、車列が回避スペースを形成する側とは反対の側方側に位置する第2側方車列についても、車列が移動する側と同じ側に移動させて回避スペースを形成することを指示するように構成してもよい。この場合、回避制御手段は、第2側方車列を形成する各車両にも備えられ、回避制御として、指示に従って第2側方車列を形成する各車両を移動させる制御をも行うよう構成する。
【0024】
このようにすると、複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車両を含む車列と、この車列の側方に位置する第2側方車列とを同じ側に移動させることで、自車両を含む車列だけで回避スペースを形成する場合に比べ、非常に大きな回避スペースが確保できる。
【0025】
そのため、この請求項7の衝突回避システムを用いると、後続車両の自車両又は先行車両に加えて、第2側方車列を形成する車両への後続車両の衝突をも防止することができる。
【0026】
ところで、例えば、回避指示手段の指示を各車両間で通信する手段として車車間通信装置を利用する場合、この車車間通信装置を備えないことによって、本発明の回避制御ができない車両が存在する場合がある。
【0027】
このような場合、請求項8に記載したように回避不能車両を検出する車両検出手段を備え、回避指示手段は、回避不能車両が移動しないものとして前記回避スペースを形成することを指示するようにしてもよい。
【0028】
このようにすれば、例え車両の中に回避制御が行えない車両があっても、その条件下においての最適な回避スペースを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の衝突回避システムを実現するため、各車両が備えている各種装置のブロック図である。
【図2】車車間で通信される車車間通信データと、自車両から各車両に送信される回避指示データについての説明図である。
【図3】自車両制御処理のフローチャートである。
【図4】(a)衝突危険度算出処理(S40)のフローチャートと、(b)危険度について説明する説明図である。
【図5】回避行動作成処理(S50)のフローチャートと、回避方向を決定する方法の説明図である。
【図6】回避行動についての説明図である。
【図7】他車両制御処理のフローチャートである。
【図8】本実施形態の衝突回避システムが動作したときの一例を説明する模式図である。
【図9】本実施形態の衝突回避システムが動作したときの一例を説明する模式図である。
【図10】本実施形態の衝突回避システムが動作したときの一例を説明する模式図で、車車間通信装置を備えていない車両が存在する場合のものである。
【図11】危険度算出処理の他の例について説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に本発明の実施形態を図面と共に説明する。
[各車両に備えられる装置]
本実施形態の衝突回避システムを実現するために各車両が備えている各種装置について説明する。
【0031】
ここで、図1は、本実施形態の衝突回避システムを実現するため、各車両が備えている各種装置のブロック図で、図2は、車車間で通信される車車間通信データと、自車両から各車両に送信される回避指示データについての説明図である。
【0032】
各車両は、図1に示すように、CPU11、ROM12、RAM13等を備えるコンピュータ装置からなるECU10を備えている。このうちROM12には後述する各種処理で用いられるプログラム及び各車両のIDデータが記憶され、RAM13には、後述する各種処理で用いられるデータが一時記憶され、必要に応じ、記憶、更新、削除される。
【0033】
また、各車両は、各種情報の入出系装置として、前方監視カメラ20、後方監視カメラ21、側方監視カメラ22、レーザレーダ23、車速センサ24、車車間通信装置25、GPS受信装置26を備えている。
【0034】
さらに、各車両は、制御系装置として、スロットル制御装置30、ブレーキ制御装置31、ステアリング制御装置32、ライト制御装置33、ウインカー制御装置34、音声出力装置35を備えている。
【0035】
このうち、前方監視カメラ20、後方監視カメラ21は、各車両の前方及び後方を撮影可能な位置に取り付けられている。側方監視カメラ22は、各車両の左右それぞれに少なくとも1台ずつ備えられ、各車両の左方及び右方を撮影可能な位置に取り付けられている。
【0036】
レーザレーダ23は、各車両の前後左右に取り付けられ、各車両の周囲を探索し、各車両の周囲に存在する車両や障害物等の様々な物との距離等を測定する装置である。
これらカメラ20〜22で撮影された画像や、レーザレーダ23を用いた探索結果はECU10に送られて解析され、各車両が移動可能な各車両の周囲(前方・後方・右方・左方)の空きスペースに関するデータや、自車両の後方に位置する後続車両がある場合の後続車両との車間距離や相対速度に関するデータを得て、これらデータはRAM13に記憶される。各車両において、これらデータを得る処理は周知なので詳細については省略する。また、これらのデータは、各車両のエンジンが動作を開始してから停止するまで、常時更新される。
【0037】
車速センサ24は、各車両の絶対速度を測定するセンサである。この車速センサ24で計測された情報は、車速データとしてRAM13に記憶され、各車両のエンジンが動作を開始してから停止するまで、常時更新される。
【0038】
車車間通信装置25は、各車両との間で各種データを無線により送受信する装置で、本実施形態では後述する各種処理において車車間通信データを通信する。
GPS受信装置26は、周知の方法により、複数のGPS衛星から受信した送信時刻情報に基づいて、各車両の現在位置を計測する装置である。このGPS受信装置26を用いて計測された現在位置に関する情報は、現在位置データとしてRAM13に記憶され、各車両のエンジンが動作を開始してから停止するまで、常時更新される。
【0039】
スロットル制御装置30は、各車両のスロットルバルブを制御する装置であり、ブレーキ制御装置31は、各車両のブレーキを制御する装置であり、ステアリング制御装置32は、各車両の操舵装置を制御する装置である。これら制御装置30〜32は、後述する他車両制御処理を実行するとき、ECU10からの指示に従ってスロットルバルブ、ブレーキ、操舵装置を制御して、車両を所定の方向に移動する処理を実行する。
【0040】
ライト制御装置33は、前照灯、テールランプ等を制御する装置であり、ウインカー制御装置34は、図示しない方向指示器レバーの操作により左右いずれかの方向指示ランプを点灯させ、または図示しないハザードボタンの操作により両方の方向指示ランプを同時に点滅させる制御を実行する。両方の方向指示ランプを同時に点滅させると、方向指示ランプは、ハザードランプとして機能する。
【0041】
音声出力装置35は、ECU10で実行される各種処理を実行する際に出力する音声を、図示しない車内用のスピーカを用いて出力する装置である。
さらに、各車両には、上記各種装置の他にも複数のその他装置36を備えている。
【0042】
各車両のECU10は、これら各装置20〜36とCAN用のバス14を介して通信し、各種処理を実行する。
尚、RAM13に一時記憶されるデータとしては、前述した自車両の周囲の空きスペースデータ、後続車両との車間距離データ及び相対速度データ、自車両の車速データ及び現在位置データ、他の車両から受信した車車間通信データ、自車両が後続車両と衝突する危険度を示す危険度データなど、様々なデータが記憶される。
【0043】
また、図2(a)に示すように、本実施形態の衝突回避システムを実行する各車両では、車車間通信装置25を用いて、一定時間毎に車車間通信データとして、各車両のIDデータに、各車両の前後左右の空きスペースデータ、各車両の車速データ、各車両の現在位置データを関連づけた情報が各車両間で送受信されている。
【0044】
この車車間通信データはRAM13に記憶され、先にRAM13に記憶された車車間通信データと同じIDデータを含む車車間通信データを受信する毎に、そのIDデータを含む車車間通信データは更新される。
【0045】
また、図2(b)に示すように、本実施形態の衝突回避システムでは、後述する他車両制御処理が実行されるとき、車車間通信装置25を用いて、回避指示データが自車両から各他車両に送信される。この回避指示データは、この回避指示データの送信先の車両のIDを示すIDデータと、そのIDを有する他車両の回避方向を示す回避方向データと、回避距離を示す回避距離データとが関連付けられたデータである。
[自車両制御処理]
次に、衝突回避システムが適用された車両であって、ある交通状況において、複数の車両が車列を組んでいるときに、この車列の最も後方に位置する車両(以下「自車両」という)のECUで実行される処理(以下「自車両制御処理」という)について、図3を用いて説明する。
【0046】
ここで、図3は、自車両制御処理のフローチャートである。
この自車両制御処理は、自車両のエンジンが始動してから停止するまで繰り返し実行され、以下の説明では、特に示さない限り、ステップ番号の小さいものから順に実行される。
【0047】
この自車両制御処理が開始されると、まずS20の処理が実行される。
このS20では、自車両に対して先行する先行車両と、自車両と先行車両で形成する車列(以下「自車列」とよぶ)の左右の側方に、自車列と同一方向に進む車列(以下「側方車列」と呼ぶ)がある場合、この側方車列を形成する車両との間で車車間通信を行った情報から、車車間通信が不能な車両を特定する処理が実施される。
【0048】
車車間通信データには、各車両の現在位置データと、空きスペースデータとが含まれている。
そのため、ある車両の前方や後方の空きスペースデータを見ると、ある車両の前方又は後方に車両が存在するであろうことが推測されるにも関わらず、各車両から受信した現在位置データのいずれを見ても、その推測される車両が車車間通信装置を備えていたら受信したであろう現在位置データを含む車車間通信データを受信していなければ、ある車両の前方又は後方に、車車間通信装置を搭載していない車両が存在することが把握できる。
【0049】
このS20では、このようにして、自車列又は側方車列中に、車車間通信装置を搭載していない車両が存在するか把握する処理が実行される。
S22では、自車両の後方に後続車両が存在するか判定する処理を実行する。
【0050】
この処理(S22)は、後方監視カメラ21で撮影した画像を解析することで行われ、具体的には、例えば、自車両の後方を撮影した画像から、自車両が走行している車線を把握し、その車線上を走行する後続車両が存在するか否かを判定する。
【0051】
この判定(S22)で、後続車両が存在しないと判定されている間は(S22:NO)、S20〜S22までの処理が繰り返し実行される。
一方、この判定(S22)で、後続車両が存在すると判定された場合(S22:YES)、次に、自車両が後続車両に追突される危険度を算出する処理が実行される(S40)。
【0052】
このS40では、詳細は後述するが、後続車両が自車両に追突する危険度を、「大」「中」「小」の3段階に分け、その危険度を判定した結果をRAM13に記憶する処理が実行される。
【0053】
この処理(S40)が終了すると、次に、S23の処理が実行される。
S23では、後続車両が自車両に追突する危険度が「小」か否かを判定する処理が実行される。具体的には、RAM13に記憶された危険度データが「小」であるか否かを判定する処理を実行する。
【0054】
S23の処理で、追突の危険度が「小」である場合(S23:YES)、再びS20以下の処理が実行される。追突の危険度が「小」でない場合(S23:NO)、次にS24の処理が実行される。
【0055】
S24では、後続車両に対して警報を行う処理を実行する。具体的には、ウインカー制御装置34を制御して、左右の方向指示器を同時に点滅する処理が実行される。いわゆるハザードランプを点滅する処理が実行され、次にS50が実行される。
【0056】
S50では、詳細は後述するが、自車両、及び、自車両に対して先行しかつ自車両と同じ車列を組む先行車両、自車両を含む車列の左右に位置する側方車列を組む側方車両のそれぞれが取るべき回避行動を算出する処理が実行され、S25で、車車間通信装置25を用いて先行車両及び側方車両に取るべき回避行動についての情報である回避指示データ(図2(b)参照)が送信される。
【0057】
S25において回避指示データが送信されると、再度S40の処理の実行によりRAM13に記憶された危険度を更新する処理が実行され、次にS26において、後続車両が自車両に追突する危険度が「中」か否かを判定する処理が実行される。
【0058】
この処理(S26)で、危険度が「中」であると判定されたら(S26:YES)、S24以下の処理が再度実行され、危険度が「中」以外であると判定されたら(S26:NO)、S27の処理が実行される。
【0059】
S27では、危険度が「大」または「小」のいずれかを判定する処理が実行される。危険度が「大」である場合である場合は、S30の処理が実行され、危険度が小である場合は、S28の処理が実行される。
【0060】
S28では、S24で開始したハザードランプの点滅を停止する処理が実行され、続く、S29では、回避指示データを送信した各車両に回避不要であることを通知する処理が車車間通信装置25を用いて実行され、再度S20以下の処理が実行される。
【0061】
一方、S30の処理が実行される場合、S25において、回避指示データを送信した車両に対して、回避指示データに従った動作を各車両が実行するよう命令する回避命令情報を車車間通信装置25を用いて送信する処理を実行する。
【0062】
そして、続くS31では、自車両に対してS50で作成した回避行動に応じた回避行動を取るよう、スロットル制御装置30、ブレーキ制御装置31、ステアリング制御装置32を用いて自車両を制御する。この処理(S31)を実行すると、S50で指定された方向に指定された距離だけ自車両を移動させる処理が実行される。
【0063】
S32では、S31の処理を実行してから一定時間が経過したか否かを判定する処理が実行され、この時間が経過するまで待機する処理が実行される(S32:NO)。
一方、S32において、S31の処理を実行してから一定時間が経過したと判定されたら(S32:YES)、次にS33の処理が実行され、このS33では、前方の車両から順にS30で通知された回避指示データに応じた制御を解除する制限解除通知が実行される。
【0064】
そして、このS33の処理が終了すると、再びS20以下の処理が再開される。
[衝突危険度算出処理(S40)]
次に、衝突危険度算出処理(S40)について説明する。
【0065】
ここで、図4(a)は、衝突危険度算出処理(S40)のフローチャートで、図4(b)は後続車両が他車両に追突する危険度について説明する模式図である。
この衝突危険度算出処理(S40)が開始されると、まず、S41において、レーザレーダ23を用いて、自車両と後続車両との車間距離及び相対速度を計測する処理が実行され、RAM13に記憶される。
【0066】
次に、S42では、車速センサ24を用いて計測された自車両の車速と、S40で計測した相対速度とから後続車両の速度を算出し、その速度から、後続車両が安全に停止するまでの停止距離Y[m]を推定する処理を実行する。
【0067】
この推定は、後続車両の速度と停止距離との関係を示すテーブルを用意しておき行っても良いし、他の方法で推定してもよく、推定の方法はこれに限られるものではない。
また、この推定は、後方監視カメラ21を用いて道路状況を確認し、雨天と晴天とで推定される停止距離Y[m]の長さが変更されるようにしてもよいし、後方監視カメラ21の画像を解析することで、車両の大きさや車種毎に、変更されるようにしてもよい。
【0068】
次に、S43以下では、後続車両が他車両に衝突する危険度を判定する処理が実行されるが、ここで、図4(b)を用いて、危険度の判定方法について説明する。
本実施形態では、後続車両が自車両に追突する危険度を3段階に分け、自車両と後続車両との車間距離X[m]が、後続車両の停止距離Y[m]以下の場合には危険度「大」、車間距離X[m]がY<X≦2Yである場合には危険度「中」、車間距離X[m]が2Y[m]より大きい場合は危険度「小」として判定している。
【0069】
S43ではまず、図4(a)に示すように、後続車両と自車両との車間距離X[m]が、後続車両の停止距離Y[m]の2倍より大きいか否かが判定され、X>2Yと判定されると(S43:YES)、RAM13に危険度「小」を示すデータが記憶される(S47)。
【0070】
一方、X>2Yでないと反対されると(S43:NO)、S44の処理が実行され、車間距離X[m]がY<X≦2Yか否かが判定される。
このS44で、車間距離がY<X≦2Yであると判定されると(S44:YES)、RAM13に危険度「中」を示すデータが記憶され(S46)、車間距離がY<X≦2Yでない、すなわち、Y>Xと判定されると(S44:NO)、RAM13に危険度「大」を示すデータが記憶される(S45)。
【0071】
そして、S45〜S47のいずれかの処理が終了すると、自車両制御処理に処理が移行する。
[回避行動作成処理(S50)]
次に、自車両制御処理で実行される回避行動作成処理について説明する。
【0072】
ここで図5(a)は回避行動作成処理のフローチャートで、図5(b)(c)は回避方向を決定する方法の説明図、図6(a)〜(c)は回避行動の一例を示す説明図である。尚、図6中、点線で示された車両は回避行動前の車両、実線で示された車両は回避行動後の車両を示している。
【0073】
この回避行動作成処理が実行されると、図5(a)に示すように、まずS51の処理が実行される。
このS51では、後続車両及び自車両の進行方向を前方とした場合、その前方を向く車両の右側を右方、左側を左方とし、後続車両が自車両に対して右方に寄っているか左方に寄っているかを判定する処理を実行する。
【0074】
この処理は、図5(b)(c)に示すように、自車両Aの中心線α(車両の左右の幅方向中央を通る線で、前後方向に沿った線)に対し、後続車両Bの中心線βが左右のいずれにずれているかを、自車両Aの後方監視カメラ21の画像を解析することによって行われる。
【0075】
具体的には、本実施形態の後方監視カメラ21は自車両Aに固定され、後方監視カメラ21が撮影する画像フレームの幅方向のどの位置が自車両Aの中心線αに相当するかを予め定め、後方監視カメラ21に撮影された後続車両Bの幅方向の中心線βが、その画像フレーム中の中心位置よりも左右いずれにずれているかを解析することによって判断する。
【0076】
この処理(S51)で、後続車両が、自車両に対して左右のいずれにずれているかが判定されると、図5(a)に示すように、次のS52では、自車列及び側方車列を構成する各車両の回避行動を決定する処理が実行される。
【0077】
S52では、例えば、図6(a)に示すように、後続車両Bが、自車両Aに対して左方に寄っていた場合には、自車両Aと、自車両Aに対して先行する先行車両C1〜C4で構成する自車列の各車両に対しては、右方に寄って車間を詰め、自車列の左方と後方に回避スペースを形成する回避行動を取るよう指示する回避指示データを各車両毎に作成する処理が実行される。
【0078】
また、図6(b)に示すように、後続車両Bが、自車両Aに対して左方に寄っていた場合に、自車両を含む車列の左方に車列がある場合には、その左方の側方車列(本発明の第1側方車列に相当)を組む車両Dに対しては、左方に寄って車間を詰め、自車列と左方の側方車列との間と自車列及び左方の側方車列の後方に回避スペースを形成する回避行動を取るよう指示する回避指示データを各車両毎に作成する処理が実行される。
【0079】
さらに、図6(c)に示すように、後続車両Bが、自車両Aに対して左方に寄っていた場合に、自車両を含む車列の右方の車列がある場合には、その右方の側方車列(本発明の第2側方車列に相当)を組む車両Eに対しては、右方に寄って車間を詰め、自車列の左方に図6(a)の場合に比べて、より大きな回避スペースを形成し、かつ、右方の側方車列の後方にも回避スペースを形成する回避行動を取るよう指示する回避指示データを各車両毎に作成する処理が実行される。
【0080】
この回避指示データは、各車列を構成するすべての車両について、自車両が、各車両の前方、左方及び右方の空きスペースデータ、各車両の車速データ、各車両の現在位置データを車車間通信により受信した情報と、自車両のこれらに相当する情報を把握しているので、これらの情報に基づいて、各車両が移動すべき回避方向や、その方向に対し移動すべき回避距離を決定する。
【0081】
このうち、回避距離は、各車両が前方の車両に対して衝突しないように先方から距離を詰めていったときに、各車両が直前の車両と予め定められた距離(例えば50cm)を残して車間を詰めることができる位置までの距離、左右に詰めるべき距離は、左右に存在する車両や障害物やガードレール等から予め定められた距離(例えば30cm)を残して詰めることができる位置までの距離を算出する。
【0082】
そして、このS52の処理が終了すると、自車両制御処理に戻り、S50に続く処理が実行される。
以上の処理が終了し、前述した自車両制御処理のS30の処理で回避指示データが各車両に送信され、各車両が回避行動を取ると、図6(a)〜(c)に示すように、状況に応じて、回避スペースが形成される。
【0083】
尚、S52では、具体例として後続車両が自車両に対し左方に寄っている場合を説明したが、右方に寄っている場合も、車列が寄る方向が反対になるだけで、同様の処理が行われる。
【0084】
また、自車列の中に、車車間通信装置25を備えていない車両が存在することが検出された場合は、その車両が動かないものとして、各車両の回避方向及び回避距離を決定する。
[他車両制御処理]
次に、衝突回避システムが適用された車両であって、ある交通状況において、複数の車両が車列を組んでいるときに、自車両に対して先行する先行車両、及び、自車両と先行車両で形成される車列の側方に位置する側方車列を形成する車両(以下「他車両」という)のECUで実行される処理(以下「他車両制御処理」という)について説明する。
【0085】
ここで、図7は、他車両制御処理のフローチャートである。
この他車両制御処理は、他車両のエンジンが始動してから停止するまで繰り返し実行され、以下の説明では、特に示さない限り、ステップ番号の小さいものから順に実行される。
【0086】
この他車両制御処理が開始されると、まずS62の処理が実行される。
S62では、自車両から回避指示データを受信したかを判定する処理が実行される。前述したように、自車両に後続車両が追突する危険度が「中」になると、回避指示データが送信されるので、この回避指示データを受信したか否かが判定される。すなわち、自車両に衝突する可能性のある後続車両が存在することが、他車両に伝達される。
【0087】
この判定(S62)で、回避指示データを受信していなければ待機し(S62:NO)、回避指示データを受信したら(S62:YES)、次にS63の処理が実行される。尚、この回避指示データは、車車間通信装置25で受信すると、各他車両のRAM13に記憶される。
【0088】
S63では、他車両のドライバーに対し、自車両に後続車両が衝突する危険度が「中」であることを通知する処理が実行される。具体的には、車両内に設置された音声出力装置35が備えるスピーカを通じて、「後方において衝突の危険性が高まっております」等の音声メッセージを発しても良いし、車内に設置された光源等を点滅させてもよく、その方法は問わない。
【0089】
次に、S64では、車車間通信装置25を用いて、回避不要通知(S29で自車両から通知されるもの)を受信したか否かが判定される。この回避不要通知を受信すると、S63において実行した通知する処理を終了して(S65)、再びS62以下の処理が開始され、回避不要通知を受信していない場合は、次にS66の処理が実行される。
【0090】
S66では、自車両に後続車両が衝突することが確実になり、危険度が「大」となったときに自車両から送信される回避命令情報(S30で自車両から通知されるもの)を受信したか否かが判定される。この回避命令情報を受信していない間は(S66:NO)、S64とS66の判定が繰り返し実行される。一方、回避命令情報を受信した場合は(S66:YES)、S67の処理が実行される。
【0091】
S67では、他車両を回避させる制御を実行する。具体的には、スロットル開度、ステアリング操作量、ブレーキタイミング等を調整して、S62で受信した回避指示データに基づいて指定された回避方向に回避距離だけ他車両が移動するよう他車両を制御する処理が実行される。
【0092】
S68では、このS67が実行されると、次に、制限解除通知(S33で自車両から通知されるもの)を受けたか否かが判定される。この制限解除通知は、回避命令情報を受信してから一定時間経過すると送信されてくる。
【0093】
このS68において、制御解除通知を受けたと判定されると(S68:YES)、次に、他車両の回避制御を解除する処理が実行され(S69)、他車両は自由に移動させることができるようになる。
【0094】
そして、このS69の処理が終了すると、再びS62以下の処理が開始される。
[各車両の動作]
次に、具体例として、片道3車線の車道で本実施形態の衝突回避システムを実行した場合に想定される各車両の動作について図8〜図9を用いて説明する。
【0095】
尚、自車両を符号A、後続車両をB、自車列の先行車両をCで示し、自車列と併走する車列を構成する車両をそれぞれ符号D,Eで示し、同一符号が振られた車両については、前方から後方に向かって1から順に番号を振って説明する。
【0096】
(1)図8(a)に示すように、自車列が中央の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が右方にずれている場合、図8(b)に示すように、自車列(C1〜C4、A)と自車列の左方に位置する側方車列(E1〜E5)は左側に寄せられ、自車列の右方に位置する側方車列(D1〜D5)は右方に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列と右方の側方車列との間に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0097】
(2)図8(c)に示すように、自車列が中央の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が左方にずれている場合、自車列(C1〜C4、A)と自車列の右方に位置する側方車列(D1〜D5)は右方に寄せられ、自車列の左方に位置する側方車列(E1〜E5)は左側に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列と左方の側方車列との間に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0098】
(3)図9(a)に示すように、自車列が左方の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が右方にずれている場合、自車列(C1〜C4、A)は左側に寄せられ、自車列の右方に位置する2つの側方車列(D1〜D5、E1〜E5)は右方に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列と右方の2つの側方車列のうち左方の側方車列(E1〜E5)との間に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0099】
(4)図9(b)に示すように、自車列が左方の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が左方にずれている場合、すべての車列(C1〜C4、A、D1〜D5、E1〜E5)は左側に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列の左側に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0100】
(5)図9(c)に示すように、自車列が右方の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して後続車両が左方にずれている場合、自車列(C1〜C4、A)は右側に寄せられ、自車列の左方に位置する2つの側方車列(D1〜D5、E1〜E5)は左方に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列と左方の2つの側方車列のうち右方の側方車列(D1〜D5)との間に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0101】
(4)図9(d)に示すように、自車列が右方の車線に位置しているとき、自車両の後方に位置する後続車両が自車両に対して右方にずれている場合、すべての車列(C1〜C4、A、D1〜D5、E1〜E5)は左側に寄せられる。また、各車列を形成する各車両は直前の車両との車間が前方に詰められる。これにより、自車列(C1〜C4、A、)の左側に回避スペースが形成されると共に、各車列の後方にも回避スペースが形成される。
【0102】
尚、いずれかの車列の中に車車間通信装置を搭載していない車両(本発明の「回避不能車両」に相当)がある場合、図10のように、車車間通信装置を搭載していない車両は動かないものとして回避行動を決定し、車車間通信装置を備えている車両だけで回避行動を行う。
【0103】
例えば、図10(a)に示すように、自車列が中央の車線上にあり、後続車両Bが自車両Aに対して右側に寄っていたため、自車両が左側に寄せる場合、E5は回避行動から取り残されることとなるので、自車両Aは左端まで寄せるようにしてもよい。
【0104】
また、図10(b)に示すように、自車列の5台の車両のうち中央の車両C3が車車間通信装置を備えていない場合、C3が移動しないものとして、後続の車両C4及び自車両Aの回避方向及び回避位置を定める。
【0105】
このように、本実施形態では、車車間通信装置を備えていない車両があることも考慮しつつ、後続車両Bが自車両Aはもちろん、他の車両に対しても衝突しないよう、回避方向及び回避位置を定めている。
[本実施形態の衝突回避システムの特徴]
以上説明した衝突回避システムは以下のような特徴がある。
【0106】
本実施形態の衝突回避システムでは、自車両の後方監視カメラ22等を用いて、後方を監視し、自車両の後方に位置する後続車両が、自車両に衝突する危険度を判定している(S40)。
【0107】
そして、その危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものであると判定された場合、すなわち、危険度が「大」と判定された場合、自車両と、自車両に対して先行する先行車両とで形成する自車列の側方に、後続車両の衝突を回避するための回避スペースを形成するよう指示する(S25、S30)。
【0108】
すると、自車両及び先行車両の各車両に備えられたECU10が、回避スペースを形成する側とは反対側に各車両を移動させる回避制御を行う(S67)。
このように、本実施形態の衝突回避システムでは、後続車両が自車両に衝突する虞がある場合、自車両と先行車両とで形成する車列全体を移動させているので、信号待ち等で車間が詰まっていて自車両を移動させただけでは十分な大きさの回避スペースを形成できない場合でも、後続車両の衝突を回避可能な十分な大きさの回避スペースを車列の側方に確保することができる。
【0109】
また、本実施形態の衝突回避システムでは、後続車両が自車両に衝突する虞がある場合、自車両と先行車両とで形成する車列全体を移動させているため、後続車両が先行車両に衝突することをも回避することができる。
【0110】
従って、本実施形態の衝突回避システムを用いれば、後続車両が自車両に衝突することはもちろん、後続車両が先行車両にも衝突することをも確実に防止することができる。
また、本実施形態の衝突回避システムでは、危険度が、後続車両の自車両への衝突を回避する必要があるものである場合(S27:危険度「大」)、車列を形成する各車両の車間を前方に詰め、車列の側方だけでなく、自車両の後方にも、後続車両が自車両に衝突することを回避するための回避スペースを形成している。
【0111】
そのため、車列の側方だけでなく自車両の後方にも、自車両だけを前方に詰めさせただけの場合に比べて非常に大きな回避スペースを形成することができる。
従って、本実施形態の衝突回避システムを用いれば、車列の側方に回避スペースを形成するだけの場合に比べ、後続車両が自車両及び先行車両に衝突することをより確実に防止することができる。
【0112】
また、本実施形態の衝突回避システムでは、各車両の現在位置や、各車両の周囲の空きスペース等をすべて把握した上で、各車両を個別に制御しているので、各車両の障害物等の個別事情にかかわらず、回避スペースを形成するため各車両を適切に移動させることができる。
【0113】
また、車車間通信装置25を備えていない車両が車列に含まれている場合は、その車両を判別して、その車両が移動しないものとして、車列に含まれる他の車両を移動させる方向及び距離を算出しているので、車車間通信装置25を備えていない車両が車列に含まれている場合でも適切な回避行動を各車両に取らせることができる。
【0114】
また、本実施形態では、後続車両が自車両に追突する危険性が高まったとき、ハザードランプを点滅して後続車両に警報を発している(S24)。そのため、上述した回避動作と合わせることで、後続車両が自車両に追突することをより確実に防止することができる。
【0115】
また、本実施形態では、後続車両が自車両に対して左右のいずれかにズレているかを判断し、後続車両が右側にズレていれば車列の左側に回避スペースを形成するよう指示し、後続車両が左側にズレている場合は、車列の右側に回避スペースを形成するようにして、車列を形成する各車両の移動量が少なくている。そのため、本実施形態のように制御すれば、最小の移動量で、後続車両の自車両又は先行車両への衝突を回避することができる。
【0116】
また、本実施形態では、平行な複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車列に対し回避スペースを形成する側と同じ側方側に位置する側方車列について、自車列が移動する側とは反対方向に移動させて、自車列と側方車列との間に、回避スペースを形成するよう指示している。
【0117】
そのため、このような場合、自車両を含む自車列と、この自車列の側方に位置する側方車列との間に回避スペースが形成されるので、自車両を含む車列だけで回避スペースを形成する場合に比べ、非常に大きな回避スペースが確保でき、後続車両の自車両又は先行車両への衝突に加えて、側方車列を形成する車両への後続車両の衝突をも効果的に防止することができる。
【0118】
また、本実施形態では、平行な複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車列が回避スペースを形成する側とは反対の側方側に位置する側方車列についても、車列が移動する側と同一方向に移動させて回避スペースを形成している。
【0119】
そのため、複数の車列からなる車両群に後続車両が衝突する可能性がある場合、自車両を含む車列と、この車列の側方に位置する側方車列とを同一方向に移動させることで、自車両を含む車列だけで回避スペースを形成する場合に比べ、非常に大きな回避スペースが確保でき、後続車両の自車両又は先行車両への衝突をより効果的に防止することができる。
(変形例1)
上記実施形態では、すべての車両について回避行動を取るための情報である回避指示データを自車両で作成し、自車両から送信する例について説明したが、自車両での処理負担が重くなることが懸念される場合は、回避方向だけを伝えるようにしてもよい。そして、回避距離については、各車両で算出するようにしてもよい。
【0120】
また、回避方向については、自車両に対する後続車両の位置に寄ることなく、予め定められた方向に各車両を移動させるようにしてもよい。
(変形例2)
上記実施形態では、図4(a)に示すように、後続車両が自車両に衝突する危険度を、車間距離Xと停止距離Yとを比較して判定したが、図11に示すように、相対速度と車間距離から算出される時間(以下「TTC」:time to collision)=車間距離X/相対速度Zが、3秒以内であれば危険度「小」、3秒未満2秒以上であれば危険度「中」、2秒未満であれば危険度「大」と判定するようにしてもよい。
(変形例3)
上記実施形態では、片道3車線の道路で、自車列が中央の車線に位置している場合、後続車両が自車両に対して左右のいずれかに寄っているかで自車列の回避方向を決定していたが、このような複数車線で回避行動を決定する場合、自車列については、混んでいない車線側に回避させるようにしてもよい。
(変形例4)
上記実施形態では、片道3車線の車道で、自車列が中央の車線に位置している場合、後続車両が自車両に対して左右のいずれかに寄っているかで自車列の回避方向を決定する例について説明したが、後続車両の走行車線できめてもよい。この場合、後続車両が中央より左寄りの車線を走行している場合は、自車両は右側へ回避する。後続車両が中央または右寄りの車線を走行している場合は、自車両は左側へ回避する。
(変形例5)
上記実施形態では、後続車両への警告としてハザードランプを点灯していたが、後続車両に向かって警報音を発する装置を備えている場合は警報音を鳴らしてもよいし、後方に向かってライトをパッシングしてもよい。
【0121】
また、各車両が回避行動を取る場合、各車両は回避方向にウインカーを出すようにしてもよい。
また、歩行者がいる方向には回避行動はとらないようにしてもよい。
【0122】
また、回避距離を決める際には、直行する道路に侵入しないように、決定するとよい。
(変形例6)
上記実施形態では、自車両からすべての車両に対して、回避指示データを送信する例について説明したが、自車両から前方の車両に順送りに情報を送信するようにしてもよい。
(変形例7)
上記実施形態では、回避動作を自動制御で行っていたが、各車両のドライバーに回避方向及び回避距離を音声で伝え、各ドライバーに回避動作を実行させるようにしてもよい。
[対応関係]
特許請求の範囲に記載された後方監視手段は、本実施形態の後方監視カメラ21やレーザレーダ23に対応し、危険度判定手段は、S40の危険度算出処理に対応し、回避指示手段は、自車両制御処理のうちS25やS30、S50の処理に対応する。
【0123】
特許請求の範囲に記載された回避制御手段は、本実施形態の他車両制御処理のS67の処理に対応し、空間把握手段は、前方監視カメラ20や側方監視カメラ22やレーザレーダ23に対応し、位置検出手段は、GPS受信装置26に対応する。
【0124】
特許請求の範囲に記載された回避不能車両の車両検出手段は、本実施形態の自車両制御処理のうちS20の処理に対応し、報知手段は、ウインカー制御手段34及び、自車両制御処理の対後続車両警報(S24)の処理に対応する。
【0125】
尚、本発明は、特許請求の範囲に記載された発明の趣旨に合致するものであればよく、上述の実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0126】
10…ECU、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…バス、20…前方監視カメラ、21…後方監視カメラ、22…側方監視カメラ、23…レーザレーダ、24…車速センサ、25…車車間通信装置、26…GPS受信装置、30…スロットル制御装置、31…ブレーキ制御装置、32…ステアリング制御装置、33…ライト制御装置、34…ウインカー制御装置、35…音声出力装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自車両と該自車両に対して先行する先行車両の周囲の移動可能な空きスペースを把握する空間把握手段と、
自車両の後方を監視する後方監視手段と、
該監視により、前記自車両の後方に位置する後続車両が前記自車両に衝突する危険度を判定する危険度判定手段と、
該危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、前記自車両と前記先行車両とを前記空きスペースに移動させて、前記自車両と前記先行車両とで形成する車列の側方に、前記後続車両の衝突を回避するための回避スペースを形成することを指示する回避指示手段と、
前記自車両及び前記先行車両の各車両に備えられ、前記指示に従って前記各車両を移動させる回避制御を行う回避制御手段と、
を備えることを特徴とする衝突回避システム。
【請求項2】
請求項1に記載の衝突回避システムにおいて、
前記回避指示手段は、
前記危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があり、前記自車両と前記先行車両とを前記空きスペースに移動させる際、前記車列を形成する前記自車両及び前記先行車両の車間を前方に詰めさせ、前記自車両の後方にも、前記回避スペースを形成することを指示することを特徴とする衝突回避システム。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記自車両及び前記先行車両の現在位置を検出する位置検出手段を備え、
前記回避指示手段は、
前記各車両の空きスペースと前記現在位置から、前記回避スペースを形成する際に前記自車両及び前記先行車両を移動させる方向及び距離を算出し、前記回避スペースを形成する指示として前記自車両及び前記先行車両を移動させる方向及び距離を含む指示を行うことを特徴とする衝突回避システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記危険度判定手段で判定された危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、後続車両へ報知する報知手段
を備えることを特徴とする衝突回避システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記回避指示手段は、
前記危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、前記車列の左右のうち、前記車列を形成する各車両の移動量が少ない側に移動して、前記車列の側方に回避スペースを形成することを指示することを特徴とする衝突回避システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記回避指示手段は、
前記危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、前記車列に対し前記回避スペースを形成する側と同じ側に位置する第1側方車列について、前記車列が移動する側とは反対側に移動させて、前記車列と前記第1側方車列との間に、前記回避スペースを形成することを指示し、
前記回避制御手段は、
前記第1側方車列を形成する各車両にも備えられ、前記回避制御として、前記指示に従って前記第1側方車列を形成する前記各車両を移動させる制御を行う
ことを特徴とする衝突回避システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記回避指示手段は、
前記危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、前記車列に対し前記回避スペースを形成する側とは反対側に位置する第2側方車列についても、前記車列が移動する側と同じ側に移動させて前記回避スペースを形成することを指示し、
前記回避制御手段は、
前記第2側方車列を形成する各車両にも備えられ、前記回避制御として、前記指示に従って前記第2側方車列を形成する前記各車両を移動させる制御も行う
ことを特徴とする衝突回避システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記各車両の中に、前記回避制御が不能な回避不能車両を検出する車両検出手段を備え、
前記回避指示手段は、
前記回避不能車両が移動しないものとして前記回避スペースを形成することを指示することを特徴とする衝突回避システム。
【請求項1】
自車両と該自車両に対して先行する先行車両の周囲の移動可能な空きスペースを把握する空間把握手段と、
自車両の後方を監視する後方監視手段と、
該監視により、前記自車両の後方に位置する後続車両が前記自車両に衝突する危険度を判定する危険度判定手段と、
該危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、前記自車両と前記先行車両とを前記空きスペースに移動させて、前記自車両と前記先行車両とで形成する車列の側方に、前記後続車両の衝突を回避するための回避スペースを形成することを指示する回避指示手段と、
前記自車両及び前記先行車両の各車両に備えられ、前記指示に従って前記各車両を移動させる回避制御を行う回避制御手段と、
を備えることを特徴とする衝突回避システム。
【請求項2】
請求項1に記載の衝突回避システムにおいて、
前記回避指示手段は、
前記危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があり、前記自車両と前記先行車両とを前記空きスペースに移動させる際、前記車列を形成する前記自車両及び前記先行車両の車間を前方に詰めさせ、前記自車両の後方にも、前記回避スペースを形成することを指示することを特徴とする衝突回避システム。
【請求項3】
請求項1,2のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記自車両及び前記先行車両の現在位置を検出する位置検出手段を備え、
前記回避指示手段は、
前記各車両の空きスペースと前記現在位置から、前記回避スペースを形成する際に前記自車両及び前記先行車両を移動させる方向及び距離を算出し、前記回避スペースを形成する指示として前記自車両及び前記先行車両を移動させる方向及び距離を含む指示を行うことを特徴とする衝突回避システム。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記危険度判定手段で判定された危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、後続車両へ報知する報知手段
を備えることを特徴とする衝突回避システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記回避指示手段は、
前記危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、前記車列の左右のうち、前記車列を形成する各車両の移動量が少ない側に移動して、前記車列の側方に回避スペースを形成することを指示することを特徴とする衝突回避システム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記回避指示手段は、
前記危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、前記車列に対し前記回避スペースを形成する側と同じ側に位置する第1側方車列について、前記車列が移動する側とは反対側に移動させて、前記車列と前記第1側方車列との間に、前記回避スペースを形成することを指示し、
前記回避制御手段は、
前記第1側方車列を形成する各車両にも備えられ、前記回避制御として、前記指示に従って前記第1側方車列を形成する前記各車両を移動させる制御を行う
ことを特徴とする衝突回避システム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記回避指示手段は、
前記危険度が、前記後続車両の前記自車両への衝突を回避する必要があるものである場合、前記車列に対し前記回避スペースを形成する側とは反対側に位置する第2側方車列についても、前記車列が移動する側と同じ側に移動させて前記回避スペースを形成することを指示し、
前記回避制御手段は、
前記第2側方車列を形成する各車両にも備えられ、前記回避制御として、前記指示に従って前記第2側方車列を形成する前記各車両を移動させる制御も行う
ことを特徴とする衝突回避システム。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の衝突回避システムにおいて、
前記各車両の中に、前記回避制御が不能な回避不能車両を検出する車両検出手段を備え、
前記回避指示手段は、
前記回避不能車両が移動しないものとして前記回避スペースを形成することを指示することを特徴とする衝突回避システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−84094(P2013−84094A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223011(P2011−223011)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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