説明

衝突試験に対する耐性の高い合わせガラス

【課題】 衝突試験に対する耐性を向上させた合わせガラスを提供する。
【解決手段】 挿入接着層(3)によって互いに結合された少なくとも第1の板(1)および第2の板(2)を含み、第1の板(1)が第2の板(2)からはみ出している。挿入接着層(3)は、第1の板(1)の縁の少なくとも一部に延びており、このように構成された挿入接着層(3)の縁が、取付用糊(6)を介してガラスまたはその構成要素(3)と車体(5)とに接着可能な中間要素(4)で少なくとも部分的に覆われている。特に、衝突試験に対する耐性の高い自動車のフロントガラスとして適用される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特に建物、輸送車両または路上施設において多数の用途を有する特定タイプの合わせガラスに関する。
【0002】このガラスは、表面の少なくとも一部が必要な透明度を有し、間に置かれた(挿入)接着層により互いに結合されたシートすなわち板(feuilles)を含み、これらのうちの少なくとも2つの板の縁が互いにずれている積層体として定義できる。
【0003】
【従来の技術】たとえば自動車のフロントガラスとして用いられる合わせガラスは、大抵の場合、ポリビニルブチラール(PVB)の接着層を介して接着される2枚のガラス板からなる。一般に、単一のガラス板を合わせガラスに代えると、周知の安全上の要求に応えられる。事実、積層状のフロントガラスが割れると、ガラス片は、間の接着層に接着されたままになる。従って、ガラスの破片が特に乗員に向かって飛び散ることが低減され、さらには飛び散らなくなる。同様に公知の透明積層体は、一般にもっと複雑で厚く、たとえば遮蔽(シールド)、侵入防止(財産の保護)、弾道保護(防弾、分散防止)の機能を目的としている。上記の材料に加えて、これらの構造は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)等のポリマー板と、接着剤としてポリウレタン(PU)の層とを含むことができる。
【0004】本発明の合わせガラスに共通の特性によれば、その構成板のうちの少なくとも2つの板の縁が互いにずれている。この構成は、様々な要求に応える。縁をずらすと、積層体の周辺部に一定のスペースが空けられる。このスペースは、加熱線またはアンテナといった電気接続手段等の機能を挿入するために利用できる。本発明の有効な実施形態の大部分において、積層体は周辺部が薄くなっている。この特徴により、最大でもそれより厚さの小さい単一のガラス板と同じく、車体の輪郭と同じ高さに取り付けることができる。このようにして、型打ち鍛造または同等の技術による車体の開口部周縁の形成において、車両全体に対して均一な深さを最初に決定することができる。
【0005】しかしながら、積層体で少なくとも2つの構成板の縁をずらすと、衝突試験(crash-tests)に対する耐性が弱くなる。この試験は、周知のように、規格化された条件で車両を障害物に衝突させることからなる。衝突試験に対するガラスの品質、安定性あるいは耐性(tenue)は、ガラスの周辺部の大部分でガラスがフレームから離れなければ離れないほど良くなる。実際、事故の場合には、積層状のフロントガラスが所定の位置に留まり、できるだけそのフレームに保持されることにより、車両外部から入ってくる物体に対して乗員に一定の安全性を提供することが重要である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、車体の製造分野で上記の長所が得られる、縁をずらした少なくとも2つの構成板を有する合わせガラスの、衝突試験に対する耐性を改善することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】このために、本発明は、挿入接着層によって互いに結合された、少なくとも第1の板および第2の板を含み、第1の板が第2の板からはみ出しており、挿入接着層が、第1の板の縁の少なくとも一部に延びており、このように構成された挿入接着層の縁が、取付用糊あるいは接着物質(colle de montage)でガラスまたはその構成要素と車体とに接着可能な中間要素により少なくとも部分的に覆われることを特徴とする合わせガラスを目的とする。こうした措置により、フレームへのガラスの結合が、特に衝突状態で全く申し分のないように強化できることが認められる。
【0008】第1の板は有利には、各用途に対する所望の特性に応じて、フロートすなわち溶融金属上に浮かせ、場合によっては含浸し、焼入れし、あるいは化学的に強化されるガラスから構成される。溶融ガラスの選択で有効に利用される主な特性は、光学特性と剛性である。
【0009】こうした特性から、第2の板を構成する際にも同様にこれらの材料を使用することが勧められる。しかし、第2の板もまた、ポリカーボネート(PC)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透明なポリマーから同じく構成可能である。
【0010】挿入接着層のために使用可能な材料は、このタイプの用途で一般的な接着剤である。周知の使用を挙げると、第2の板がガラス製である場合にはポリビニルブチラール(PVB)、第2の板がポリカーボネート(PC)である場合にはポリウレタン(PU)を用いる。実際、ポリマーPVBとPCを一緒に用いることはできない。
【0011】取付用糊の特性もまた通例のものである。その例としてポリウレタン(PU)を挙げておく。
【0012】もちろん、本発明の合わせガラスはさらに、通常の機能層または積層(積重ね)を含むことができる。これには、疎水性/疎油性または親水性/親油性の層、場合によっては光触媒反応性の層や外部汚れ防止層、反射層または反射積層、あるいは反対に反射防止層、建物または車両内部への太陽光線による熱伝達を制限する日照防止層もしくは、建物または車両内部に蓄積された熱の冷たい外部への伝達を制限する低放射層といった熱効果積層、装飾層がある。加熱導線またはアンテナは、既知の方法で挿入接着層の中に埋め込み可能である。半導体膜(フィルム)も同様に積層体に挿入することができる。半導体膜は、たとえば準化学量論的な(sous-stoechiometriques)金属酸化物から構成されるか、または出願FR2695117に記載されたようにドープさせるか、あるいはその両方である。このドープは、スズをドープした酸化インジウム(ITO)、インジウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:In)、フッ素をドープした酸化亜鉛(ZnO:F)、アルミニウムをドープした酸化亜鉛(ZnO:Al)、またはスズをドープした酸化亜鉛(ZnO:Sn)および、フッ素をドープした酸化スズ(SnO:F)である。こうした材料群に、アンチモンをドープした酸化スズ(5価または4価)SnO:Sbが加えられる。これらの半導体膜は、加熱され、霜取りや曇り取りのために使用することができる。半導体膜はさらに、特に放射度の低い赤外線で反射特性を有する。
【0013】そのうえ、追加層が、第2の板の自由面に重ねられる。これは、単にポリカーボネート板であるか、または第2の板に重ねた後で、自由面がこのようなポリカーボネート板から構成される積層である。こうした積層はさらに、たとえばガラス板と、自由面をPC層に接着する機能を持つPVB層やPU層とを交互に重ねたものを含むことができる。このタイプの構造は、防弾および分散防止積層体で弾道保護のために使用される。
【0014】本発明の好適な実施形態によれば、挿入接着層の縁は、中間要素で全面的に覆われる。事実、中間要素は、水などの接触可能な要素に対して接着剤を保護する役目をする。
【0015】しかも、接着剤に対する取付用糊の接着力は、場合に応じて弱いか、または持続性がないか、あるいはその両方であり、中間要素により接着剤を覆うことにより、取付用糊と接着剤との境界を制限し、さらにはなくすことによって、この問題を解消できる。
【0016】本発明はさらに、もう1つの特徴、すなわち、中間要素が第2の板の下に入り込んでも入り込まなくてもよいという特徴に関して2つの変形実施形態を備える。中間要素が第2の板の下に入ると、衝突試験に対するガラスの耐性が著しく改善される結果になり、第2の板の縁の領域で水および同等物に対して接着剤の保護が最適化される。そのかわり、この構成の実現は簡単ではない。
【0017】そのため、むしろ、中間要素が第2の板の下に入り込まない方を選ぶことも可能であり、各種の国内認可規則を満たすことができる衝突試験に対する耐性の改善は、こうした条件でも達成できる。
【0018】衝突試験に対する耐性を改善できる他の特徴によれば、・ISO規格527に従って決定される中間要素の引張応力は、少なくとも10,000MPaに等しく、好適には少なくとも15,000MPaに等しい。
【0019】・挿入接着層への中間要素の接着は、少なくとも5daN/cm、好適には少なくとも7daN/cmの90°剥離(pelage)試験の測定値に対応する。
【0020】有利には、中間要素は防水性であり、水から接着層を守る。このため、中間要素を構成する材料の多孔性あるいは多孔度(porosite)は、前記材料が厚さ3mmの層の形で、最大でも30g/日/m、好適には18g/日/mの含水性あるいは吸水性(reprise en eau)に対応する。
【0021】本発明の合わせガラスを車体に固定する好適な実施形態は2つある。
【0022】第1の実施形態によれば、取付用糊は、車体と接触し、また中間要素および第1の板と接触する。換言すれば、取付用糊は、中間要素により覆われた接着層の縁の部分と、第1の板の、合わせガラスの中心を向いた内面とに同時に塗布される。
【0023】固定の第2の実施形態によれば、取付用糊は、中間要素と接触するが第1の板とは接触しない。
【0024】中間要素を構成するために特に適切な材料は、アルミニウム、ステンレス等の金属か、または、たとえばガラスファイバーや、特にカーボンファイバー、芳香性ポリアミドファイバーといった有機ファイバー等の強化添加物を含む、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステルタイプの樹脂である。しかしながら、特に加熱導線などの電気作動付属品が存在する場合、機能を妨害しないように、好適には、このうちの非導電性の材料を選択する。
【0025】本発明はまた、衝突試験に対する耐性の高い自動車のフロントガラスとしての、上記の合わせガラスの用途を目的とする。
【0026】次に、車体に取り付けられた本発明による合わせガラスの概略的な一部断面図である単一の添付図に関して本発明を説明する。
【0027】
【発明の実施の形態】合わせガラスは、厚さ6mmの第1のフロートガラス板(1)と、同一材料で厚さ12mmの第2の板(2)とを含む。板(1)および(2)は、厚さ1.14mmのPVB層(3)により相互に結合されている。
【0028】板(1)は、板(2)からはみ出しており、層(3)は、板(1)の縁の一部に延びている。
【0029】ガラスファイバーで強化した厚さ0.25mmのエポキシ樹脂製の中間要素(4)は、第2の板(2)の下に入り込みながら層(3)の縁全体を覆っている。
【0030】第2の板(2)の下に配置される中間要素(4)は、層(3)の中に埋め込まれている。
【0031】合わせガラスは、中間要素(4)と、第1の板(1)の縁の内側とに同時に塗布されるポリウレタン糊(6)により車体(5)に固定される。
【0032】エチレン−プロピレン−ジエンモノマー(EPDM)のエラストマーからなる美的な耐密シールあるいはパッキン(joint)(7)が、第1の板(1)の側面(chant)と、車体(5)の表面とを覆っている。
【0033】この実施形態の変形実施形態によれば、防弾および分散(破片化)防止特性をこのガラスに与えるために、上記の第2の板(2)の代わりに、厚さ6mmのフロートガラス板を用い、ポリウレタン接着層を介在させながら、ここに厚さ3mmのポリカーボネート板を重ねる。
【0034】このように形成されたフロントガラスは、事故の場合、縁をずらしているが本発明による構成ではない2つの板を含むフロントガラスよりも、それが固定されている車体の開口部から離れる傾向がずっと少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】車体に取り付けられた本発明による合わせガラスの概略的な一部断面図である。
【符号の説明】
1 第1の板
2 第2の板
3 中間層
4 中間要素
5 車体
6 取付用糊

【特許請求の範囲】
【請求項1】 挿入接着層(3)によって互いに結合された少なくとも第1の板(1)および第2の板(2)を含み、第1の板(1)が第2の板(2)からはみ出しており、挿入接着層(3)が、第1の板(1)の縁の少なくとも一部に延びており、このように構成された挿入接着層(3)の縁が、取付用糊(6)でガラスまたはその構成要素(3)と車体(5)とに接着可能な中間要素(4)により少なくとも部分的に覆われることを特徴とする、車体(5)に取り付けられる合わせガラス。
【請求項2】 挿入接着層(3)の縁が、中間要素(4)により全面的に覆われていることを特徴とする請求項1に記載の合わせガラス。
【請求項3】 中間要素(4)が、第2の板(2)の下に入り込まないことを特徴とする請求項1または2に記載の合わせガラス。
【請求項4】 中間要素(4)が、第2の板(2)の下に入り込むことを特徴とする請求項1または2に記載の合わせガラス。
【請求項5】 ISO規格527に従って決定される中間要素(4)の引張応力は、少なくとも10,000MPaに等しく、好適には少なくとも15,000MPaに等しいことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項6】 挿入接着層(3)への中間要素(4)の接着は、少なくとも5daN/cm、好適には少なくとも7daN/cmの90゜剥離試験の測定値に対応することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項7】 中間要素(4)を構成する材料の多孔性は、前記材料が厚さ3mmの層の形で、最大でも30g/日/m、好適には18g/日/mの含水性に対応することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項8】 取付用糊(6)は、中間要素(4)および第1の板(1)と接触することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項9】 取付用糊(6)は、中間要素(4)と接触するが、第1の板(1)とは接触しないことを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項10】 中間要素(4)は、アルミニウム、ステンレス等の金属であるか、または、ガラスファイバーや、特にカーボンファイバー、芳香性ポリアミドファイバーといった有機ファイバー等の強化添加物を含む、エポキシ、フェノール、不飽和ポリエステルタイプの樹脂から構成されることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の合わせガラス。
【請求項11】 中間要素(4)は、導電体ではないことを特徴とする請求項10に記載の合わせガラス。
【請求項12】 衝突試験に対する耐性の高い自動車のフロントガラスとして、請求項1から11のいずれか一項に記載の合わせガラスを適用する方法。

【図1】
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