説明

衣服折畳機

【課題】ズボンの裾等に付いた圧痕を伸ばすことができる衣服折畳機を提供する。
【解決手段】搬送ハンガーhのキャッチh2に挟まれた衣服Zが搬入され、衣服Zを折り畳む衣服折畳機Aであって、キャッチh2により付けられた衣服Zの圧痕部分z2に蒸気を噴霧するスチーマ51,52あるいはロールアイロンを備える。コンベアで送られてきた衣服Zの圧痕部分zにスチームを吹き付けたり、アイロン掛けすることで、衣服Zに付いた圧痕を伸ばすことができ、折畳み後の衣服Zに圧痕を残すことがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服折畳機に関する。さらに詳しくは、大量の衣服、たとえばユニフォーム、病院着、寝巻き等の洗濯、乾燥仕上げ、折畳み作業を自動化工程で行うに際し、ハンガー掛けの衣服を折り畳むための衣服折畳機に関する。
【背景技術】
【0002】
リネン工場では、洗濯済みの衣服を搬送ハンガーに掛け、ライン上で搬送しながらトンネルフィニッシャーで乾燥仕上げをし、衣服折畳機で折畳み作業を行う。
この際に用いられる搬送ハンガーとして、本出願人は既に特許文献1に記載の搬送ハンガーを出願している。
【0003】
図4に示すように、上記搬送ハンガーhは、ハンガー体h1,h1にキャッチh2,h2が形成されており、このキャッチh2,h2に衣服の裾等を挟むことができるようになっている。したがって、ハンガー体h1,h1に上衣Yを掛けることができるばかりか(図5(A)参照)、キャッチh2,h2にズボンZの裾を挟んで吊下げることもできる(図5(B)参照)。
【0004】
しかるに、ズボンZの裾をキャッチh2,h2に挟んで吊下げた場合には、乾燥仕上げ、折畳み作業後であっても、キャッチh2,h2による圧痕が残る場合があるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−201079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、ズボンの裾等に付いた圧痕を伸ばすことができる衣服折畳機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の衣服折畳機は、搬送ハンガーのキャッチに挟まれた衣服が搬入され、該衣服を折り畳む衣服折畳機であって、前記キャッチにより付けられた前記衣服の圧痕部分に蒸気を噴霧するスチーマを備えることを特徴とする。
第2発明の衣服折畳機は、第1発明において、前記衣服を、前記圧痕部分を下流側に向けて搬送する搬送手段と、前記衣服の下流側端部を検知する端部検知センサとを備え、前記スチーマは、前記端部検知センサが下流側端部を検知したことをきっかけに、前記圧痕部分に蒸気を噴霧するものであることを特徴とする。
第3発明の衣服折畳機は、第2発明において、前記キャッチに挟まれた衣服か否かを識別する識別手段と、前記識別手段が前記キャッチに挟まれた衣服であると識別した場合に、前記端部検知センサおよび/または前記スチーマを動作させる制御装置とを備えることを特徴とする。
第4発明の衣服折畳機は、第1発明において、前記スチーマの代りに、前記衣服の圧痕部分にアイロンをかけるアイロンを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、スチーマで圧痕部分に蒸気を噴霧するので、衣服に付いた圧痕を伸ばすことができ、折畳み後の衣服に圧痕を残すことがない。
第2発明によれば、端部検知センサで衣服の下流側端部を検知するので、検知センサの検知をきっかけにスチーマを動作させることで、圧痕部分に蒸気を噴霧することができる。
第3発明によれば、識別手段がキャッチに挟まれた衣服であると識別した場合に、端部検知センサおよび/またはスチーマを動作させるので、キャッチに挟まれた衣服の圧痕を伸ばすことができ、キャッチに挟まれていない衣服に無駄に蒸気を噴霧することがない。
第4発明によれば、ロールアイロンで圧痕部分にアイロンをかけて圧痕を伸ばして消すことができ、折畳み後の衣服に圧痕を残すことがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る衣服折畳機の側面図である。
【図2】衣服が搬送されている状態の衣服折畳機の側面図である。
【図3】(A)図はズボンの裾が端部検知センサの検知位置に達している状態の平面図、(B)図はズボンの圧痕部分がスチーマの噴霧位置に達している状態の平面図である。
【図4】搬送ハンガーの正面図である。
【図5】搬送ハンガーに衣服を掛けた状態の説明図である。
【図6】リネン設備の全体図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
まず、図6に基づき本発明の一実施形態に係る衣服折畳機Aを備えるリネン設備の全体像について説明する。
図6において、符号Fは洗濯済みのズボンや上衣等の衣服にスチームや熱風を吹きかけて皺をとるトンネルフィニッシャーである。符号P1、P2は衣服投入作業位置であり、それぞれ洗濯済みの衣服の衣服置場(図示せず)が付設されている。各衣服投入作業位置P1,P2から延びる2本の搬送ラインL1,L2は共通の搬送ラインL3にまとめられてトンネルフィニッシャーFに入っている。トンネルフィニッシャーFから出た搬送ラインL3は、衣服折畳機Aに延びている。衣服折畳機Aを出た搬送ラインL4は、分岐して搬送ラインL5,L6となり、それぞれ衣服投入作業位置P1,P2まで延びている。
【0011】
搬送ラインL5,L6の端部では空の搬送ハンガーhがたまっており、衣服投入作業位置P1,P2では作業員が空の搬送ハンガーhに洗濯済みの衣服を掛けるようになっている。搬送ハンガーhに掛けられた衣服は、搬送ラインL1,L2,L3を搬送され、トンネルフィニッシャーFで乾燥仕上げされ、ついで衣服折畳機Aで折り畳まれる。また、再び空となった搬送ハンガーhは、搬送ラインL4,L5,L6を搬送され、再利用される。
【0012】
図4に示すように、搬送ハンガーhは、ハンガー体h1,h1にキャッチh2,h2が形成されており、このキャッチh2,h2に衣服の裾等を挟むことができるようになっている。したがって、ハンガー体h1,h1に上衣Yを掛けることができるばかりか(図5(A)参照)、キャッチh2,h2にズボンZの裾を挟んで吊下げることもできる(図5(B)参照)。
ここで、ズボンZの裾をキャッチh2,h2に挟んで吊下げた場合には、裾にキャッチh2,h2による圧痕が残る場合がある。
【0013】
つぎに、本発明の一実施形態に係る衣服折畳機Aについて説明する。
図1に示すように、衣服折畳機Aは、連続する5つのコンベア11〜15と、第5コンベア15に後続する折畳機構20とを備えている。また、第3コンベア13の周囲には滑り板21と、袖折装置22と、袖整形装置23とが設けられている。滑り板21は第3コンベア13の下面に接触するように設けられた板部材であり、それに載せられた衣服が第3コンベア13の動作によって滑り動くようになっている。また、上衣Yが搬入された場合には、袖折装置22と袖整形装置23とが協働して上衣Yの袖を折り畳むようになっている。
なお、コンベア11〜15が、特許請求の範囲に記載の搬送手段に相当する。
【0014】
衣服折畳機Aは、一台でズボンZも上衣Yも折り畳める装置であって、搬入されてきた衣服の種類によって動作を変えることができる。そのため、衣服折畳機Aには、衣服の種類を識別する識別手段(図示せず)が備えられている。
【0015】
衣服折畳機Aには、搬送ラインL3の終端が接続される部分に、下降傾斜したハンガー掛け棒31が設けられており、そのハンガー掛け棒31の終端にはハンガー移送装置32が設けられている。そのため、搬送ラインL3を搬送されてきた搬送ハンガーhは、ハンガー掛け棒31に引っ掛けられ、ついでハンガー移送装置32のハンガー係止具に受け取られる。そして、搬送ハンガーhがハンガー移送装置32により移送されることにより、搬送ハンガーhに掛けられた衣服が第1コンベアに預け渡される。
【0016】
ハンガー移送装置32の終端まで移送された搬送ハンガーhはハンガー引抜き装置33に渡され、ハンガー引抜き装置33により衣服から取り外される。取り外された空の搬送ハンガーhは、ハンガー引抜き装置33とともに上動し(符号33´)、空ハンガー回収装置35により回収される。その後、空の搬送ハンガーhは、空ハンガー回収装置35に接続された搬送ラインL4を搬送され、再利用される。
【0017】
一方、図2に示すように、第1コンベア11に預け渡された衣服は、コンベア11〜15の動作により衣服折畳機Aの内部へ搬送される。ここで、衣服は搬送ハンガーhに掛けられた状態で第1コンベア11に預け渡されるので、搬送ハンガーhと接触していた部分がコンベア11〜15の下流側に向けられる。すなわち、ズボンZが搬入された場合には、キャッチh2,h2による圧痕部分が下流側に向けられて搬送される。
【0018】
第4コンベア14の上方には端部検知センサ40が設けられている。この端部検知センサ40は、第4コンベア14を搬送される衣服の下流側端部を検知するセンサである。端部検知センサ40としては、光学センサ等の非接触センサを用いることができる。
【0019】
また、第4コンベア14と第5コンベア15との接続位置には、その上方に上スチーマ51が設けられ、下方に下スチーマ52が設けられている。上スチーマ51は第4コンベア14の終端と第5コンベア15の始端との隙間であって、衣服の圧痕部分が通る位置にに向けて上から蒸気を噴霧するように設けられている。下スチーマ52は上スチーマ51と同位置に向けて下から蒸気を噴霧するように設けられている。
【0020】
上記端部検知センサ40およびスチーマ51,52は、図示しない制御装置に接続されている。その制御装置は端部検知センサ40が衣服の下流側端部を検知してから所定時間経過後にスチーマ51,52から蒸気を噴霧するように構成されている。
より詳細には、ズボンZが第4コンベア14で搬送されると、所定位置で端部検知センサ40がズボンZの下流側端部である裾z1を検知する(図3(a)参照)。その検知から所定時間経過してズボンZの圧痕部分z2が第4コンベア14の終端と第5コンベア15の始端との隙間に到達したときに、スチーマ51,52から圧痕部分z2に向かって蒸気が噴霧される。すなわち、ここでいう所定時間とは、端部検知センサ40が裾z1を検知してから圧痕部分z2がスチーマ51,52の噴霧位置に移動するまでの時間である。
このように、端部検知センサ40の検知をきっかけにスチーマ51,52を動作させることで、圧痕部分に蒸気を噴霧することができる。
【0021】
また、制御装置は前述の識別手段とも接続されている。そして、制御装置は識別手段が識別した衣服の種類によって、端部検知センサ40を動作させるか否かを制御するように構成されている。
より詳細には、識別手段がズボンZ等のキャッチh2に挟まれる種類の衣服であると識別した場合は、制御装置は端部検知センサ40を動作させる。そのため、端部検知センサ40の検知をきっかけにスチーマ51,52が動作して圧痕部分に蒸気が噴霧される。一方、識別手段が上衣Y等のキャッチh2に挟まれていない種類の衣服であると識別した場合は、制御装置は端部検知センサ40を動作させない。そのため、端部検知センサ40が上衣Yの下流側端部を検知することがなく、スチーマ51,52から蒸気が噴霧されることはない。
そのため、ズボンZ等のキャッチh2に挟まれた衣服の圧痕を伸ばすことができ、上衣Y等のキャッチに挟まれていない衣服に無駄に蒸気を噴霧することがない。
【0022】
第5コンベア15に渡された衣服は、折畳機構20に移送され、折畳機構20で折り畳まれる。
以上のごとく、衣服折畳機Aによれば、スチーマ51,52で圧痕部分に蒸気を噴霧するので、噴霧してから所定時間経過後、例えば折畳機構20による折り畳みが終了したときに、衣服に付いた圧痕は伸ばされ、折畳み後の衣服に圧痕を残すことがない。
【0023】
(その他の実施形態)
上記実施形態では上下にスチーマ51,52を設けたが、上スチーマ51のみ、もしくは下スチーマ52のみ設けるようにしてもよい。これは、搬送ハンガーhの形態によって必要な構成を選択すればよい。具体的には、搬送ハンガーhの形態が、衣服の表面(第4コンベア14に接しない方の面)にのみ圧痕が付くものであれば、上スチーマ51のみ設ければよい。これに対して、搬送ハンガーhの形態が、衣服の裏面(第4コンベア14に接する方の面)にのみ圧痕が付くものであれば、下スチーマ52のみ設ければよい。また、搬送ハンガーhの形態が、衣服の両面に圧痕が付くものであれば上下のスチーマ51,52を設ければよい。
【0024】
また、衣服の複数個所に圧痕が付く場合には、さらにスチーマの数を増やしてもよいし、全ての圧痕部分を含む範囲に蒸気を噴霧できるスチーマを設けてもよい。
【0025】
また、上記実施形態では、端部検知センサ40の検知位置を、スチーマ51,52の噴霧位置より上流側に設定しているが、これを逆にしてもよい。例えば、衣服の圧痕部分がスチーマ51,52の噴霧位置にあるときの衣服の下流側端部の位置が端部検知センサ40の検知位置となるようにしてもよい。この場合、制御装置は端部検知センサ40が検知したときにスチーマ51,52から蒸気を噴霧するように構成すればよい。
【0026】
さらに、上記実施形態では、制御装置は識別手段が識別した衣服の種類によって、端部検知センサ40を動作させるか否かを制御するように構成されているが、これをスチーマ51,52を動作させるか否かを制御するように構成してもよいし、端部検知センサ40とスチーマ51,52の両方を動作させるか否かを制御するように構成してもよい。これらは、使用する機器によって適したものを選択すればよい。
【0027】
上記実施形態ではスチーマを設けたが、この代りにアイロンを用いてもよい。アイロンとしては、ロールアイロンや平板アイロンを用いることができる。
ロールアイロンを設ける場合は、第4コンベア14の終端と第5コンベア15の始端との間に、上ロールと下ロールからなるロールアイロンを配置すればよい。この上ロールと下ロールでズボンZの圧痕が付いている裾Zが通るとき押圧してアイロンをかけ、裾Zが通り抜けると上ロールと下ロールを開いてズボンZを通過させるようにすればよい。
このようにロールアイロンでアイロンをかければ圧痕Zを伸ばして消すことができるので、折畳み後の衣服に圧痕を残すことはない。
また、ロールアイロンの代りに、平板状のプレス板を2枚上下に動かして衣服を挟んでアイロンがけする平板アイロンを用いてもよい。
なお、ロールアイロンや平板アイロンにスチームを付設しておいて、スチームを吹きかけた後ロールアイロンでアイロンするようにすれば、より早く圧痕を消すことができる。
【符号の説明】
【0028】
h 搬送ハンガー
h2 キャッチ
11〜15 コンベア
40 端部検知センサ
51、52 スチーマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送ハンガーのキャッチに挟まれた衣服が搬入され、該衣服を折り畳む衣服折畳機であって、
前記キャッチにより付けられた前記衣服の圧痕部分に蒸気を噴霧するスチーマを備える
ことを特徴とする衣服折畳機。
【請求項2】
前記衣服を、前記圧痕部分を下流側に向けて搬送する搬送手段と、
前記衣服の下流側端部を検知する端部検知センサとを備え、
前記スチーマは、前記端部検知センサが下流側端部を検知したことをきっかけに、前記圧痕部分に蒸気を噴霧するものである
ことを特徴とする請求項1記載の衣服折畳機。
【請求項3】
前記キャッチに挟まれた衣服か否かを識別する識別手段と、
前記識別手段が前記キャッチに挟まれた衣服であると識別した場合に、前記端部検知センサおよび/または前記スチーマを動作させる制御装置とを備える
ことを特徴とする請求項2記載の衣服折畳機。
【請求項4】
前記スチーマの代りに、前記衣服の圧痕部分にアイロンをかけるアイロンを備えた
ことを特徴とする請求項1記載の衣服折畳機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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