説明

衣服擦れ防止具

【課題】自転車の乗り手が着用している衣服をサドルとの擦れから手軽に保護することを可能とする手段を提供する。
【解決手段】衣服擦れ防止具1は、シート状保護部材11と、右側太股部固定部材12と、左側太股部固定部材13と、腰部固定部材14とを備えている。シート状保護部材11は、ユーザが着用している衣服が自転車のサドルとの摩擦により摩耗することを防ぐためのものであり、自転車に乗ったユーザの身体のうち自転車のサドルに接触する部分をユーザが着用している衣服の上から覆う形状を有している。各固定部材は、シート状保護部材11をユーザの身体に固定するためのものである。シート状保護部材11は、2枚のシート状部材を有しており、これら2枚のシートの間の摩擦係数が相対的に低くなるように各素材が選択されている。そのため、ユーザの衣服とシート状保護部材11との間の擦れが生じることなく当該衣服の摩耗を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衣服の摩耗を防止する手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自転車の乗り手の身体のうち、サドルにあたる股間部、臀部、大腿部のあたりの部分が自転車に乗っている間、擦れたり押しつけられたりする結果、乗り手が痛みを感じる場合がある。特に、スポーツタイプの自転車に広く採用されているサドルは硬いため、乗り手にそのような痛みをもたらす場合が多い。
【0003】
そのような痛みを緩和するため、緩衝用のパッドを設けた自転車用パンツが古くから実用化されている。例えば、特許文献1には、男性の自転車の乗り手が自転車をこぐ際に効果的にその乗り手の生殖器および大腿を保護する形状を備えた自転車用パンツ用の緩衝用パッドが提案されている。
【0004】
自転車の乗り手にとって、上述した身体のサドルとの接触部分に生じる痛みという問題とは別に、自転車の乗り手が着用している衣服がサドルに擦れることにより生じる衣服の損傷、という問題がある。
【0005】
すなわち、自転車に乗る際、自転車の乗り手が着用しているジーンズ等の衣服の股間部、臀部、大腿部のあたりと、サドルとの間に繰り返しの擦れが生じる。その結果、衣服のサドルと接触する部分が擦り切れたり、いわゆる「てかり」と呼ばれる現象が生じたりする。
【0006】
このような自転車をこぐ際に生じる損傷から衣服を保護するための手段に関しては、従来、あまり提案されてこなかった。ジーンズ等の衣服の股間部付近を擦れ等から保護するための手段を提案するものとして本出願人が知るものは、特許文献2があるだけである。
【0007】
特許文献2には、ジーンズ等の股間部付近を擦れから保護するために、その部分を覆うように羽根型の補強布をジーンズ等の外側に取り付ける、というアイデアが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実登3147531号公報
【特許文献2】実登3152923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に提案されているような緩衝用パッドは、自転車の乗り手の身体をサドルとの擦れや衝突から保護することを目的としており、自転車の乗り手の着用している衣服を保護する効果はもたらさない。
【0010】
また、特許文献2に提案されている補強布は衣服に縫い付けられる。そのため、自転車の乗り手はその時々に異なる衣服を着用して自転車に乗りたい場合、それらの衣服の全てに補強布を縫い付ける必要があり手間であるとともに、衣服の美観が損なわれるといった問題も伴う。
【0011】
上記のような事情に鑑み、本発明は、自転車の乗り手が自由に選択し着用している衣服をサドルとの擦れから手軽に保護することを可能とする手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記の目的に鑑みて想到されたものであり、
自転車に乗ったユーザの身体のうち前記自転車のサドルに接触する部分を前記ユーザが着用している衣服の上から覆う形状のシート状保護部材と、
前記シート状保護部材から外側に延伸し、前記ユーザの左太股周りおよび右太股周りを各々締め付けることで、前記シート状保護部材を前記ユーザの身体に対し前記衣服の上から固定する太股部固定部材と、
前記シート状保護部材から外側に延伸し、前記ユーザの腰周りを締め付けることで、もしくは前記ユーザが腰周りに装着しているベルトに取り付けられることで、前記シート状保護部材を前記ユーザの身体に対し前記衣服の上から固定する腰部固定部材と
を備える衣服擦れ防止具を提供する(第1の実施態様)。
【0013】
また、上記の第1の実施態様において、
前記シート状保護部材の前記ユーザの身体に対向する側の表面の素材を内側表面素材とし、前記シート状保護部材の前記サドルに対向する側の表面の素材を外側表面素材とするとき、前記ユーザが前記衣服擦れ防止具を着用して前記自転車に乗った状態において、前記内側表面素材と前記衣服との間の摩擦係数が前記外側表面素材と前記サドルとの間の摩擦係数よりも高くなるように前記内側表面素材と前記外側表面素材の選択がなされている
構成を採用してもよい(第2の実施態様)。
【0014】
また、上記の第1または2の実施態様において、
前記シート状保護部材は互いに積層された2枚以上のシート状部材を有する
構成を採用してもよい(第3の実施態様)。
【0015】
また、上記の第3の実施態様において、
前記シート状保護部材の前記ユーザの身体に対向する側の表面の素材を内側表面素材とするとき、前記ユーザが前記衣服擦れ防止具を着用して前記自転車に乗った状態において、前記2枚以上のシート状部材のうち少なくとも1組の互いに隣接する2枚のシート状部材の間の摩擦係数が、前記内側表面素材と前記衣服との間の摩擦係数よりも低くなるように前記2枚以上のシート状部材および前記内側表面素材の選択がなされている
構成を採用してもよい(第4の実施態様)。
【0016】
また、上記の第3または4の実施態様において、
前記シート状保護部材の前記サドルに対向する側の表面の素材を外側表面素材とするとき、前記ユーザが前記衣服擦れ防止具を着用して前記自転車に乗った状態において、前記2枚以上のシート状部材のうち少なくとも1組の互いに隣接する2枚のシート状部材の間の摩擦係数が、前記外側表面素材と前記サドルとの間の摩擦係数よりも低くなるように前記2枚以上のシート状部材および前記外側表面素材の選択がなされている
構成を採用してもよい(第5の実施態様)。
【0017】
また、上記の第1乃至5のいずれかの実施態様において、
導電性繊維を有する
構成を採用してもよい(第6の実施態様)。
【0018】
また、上記の第1乃至6のいずれかの実施態様において、
前記腰部固定部材は、前記ユーザの腰周りに巻き付けられる紐状部材である腰周り紐状部材と、前記シート状保護部材と前記腰回り紐状部材とを連結する紐状部材である連結部材とを有する
構成を採用してもよい(第7の実施態様)。
【0019】
また、本発明は、
自転車のサドルを覆うサドルカバーであって、
前記サドルに前記サドルカバーが装着された状態でユーザが前記自転車を漕ぐ際に前記ユーザの衣服のうち前記サドルカバーに接している部分と前記サドルとの間に生じるずれの量に対する前記ユーザの衣服と前記サドルカバーとの間のずれの量が25%未満である
サドルカバー
を提供する(第8の実施態様)。
【0020】
また、上記の第8の実施態様において、
前記サドルカバーの前記衣服に接する素材を外側表面素材とし、前記サドルカバーの前記サドルに接する素材を内側表面素材とするとき、前記ユーザが前記自転車に乗った状態において、前記外側表面素材と前記衣服との間の摩擦係数が前記内側表面素材と前記サドルとの間の摩擦係数よりも高くなるように前記内側表面素材と前記外側表面素材の選択がなされている
という構成を採用してもよい(第9の実施態様)。
【0021】
また、上記の第8または第9の実施態様において、
互いに積層された2枚以上のシート状部材を有し、
前記サドルカバーの前記衣服に接する素材を外側表面素材とし、前記サドルカバーの前記サドルに接する素材を内側表面素材とするとき、前記ユーザが前記自転車に乗った状態において、前記外側表面素材と前記衣服との間の摩擦係数が、前記内側表面素材と前記サドルとの間の摩擦係数と前記2枚以上のシート状部材の間の摩擦係数の少なくとも一方よりも高くなるように前記内側表面素材、前記外側表面素材および前記2枚のシート状部材の選択がなされている
という構成を採用してもよい(第10の実施態様)。
【0022】
また、上記の第10の実施態様において、
前記2以上のシート状部材は積層された状態における周囲の全長の25%未満において互いに連結されている
という構成を採用してもよい(第11の実施態様)。
【0023】
また、上記の第10の実施態様において、
互いに積層された3枚以上のシート状部材を有し、
前記外側表面素材を構成する第1のシート状部材と前記内側表面素材を構成する第2のシート状部材は直接連結されておらず、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材のいずれとも異なる第3のシート状部材を介して互いに連結されている
という構成を採用してもよい(第12の実施態様)。
【0024】
また、上記の第8乃至第12のいずれか実施態様において、
導電性繊維を有する
という構成を採用してもよい(第13の実施態様)。
【発明の効果】
【0025】
本発明の第1の実施態様にかかる衣服擦れ防止具によれば、ユーザは着用しているジーンズ等がサドルと接する部分を覆うようにシート状保護部材を押し当て、太股および腰部にシート状保護部材を固定した後にサドルに乗って自転車をこぐことにより、手軽に自分の着用しているジーンズ等の衣服をサドルとの摩擦による損傷から保護することができる。
【0026】
また、本発明の第2の実施態様にかかる衣服擦れ防止具によれば、衣服とサドルとの間のズレが外側表面部材とサドルとの間の滑りにより吸収され、衣服とそれが接する内側表面部材との間では滑りがさほど生じないので、衣服の摩耗がより効果的に回避される。
【0027】
また、本発明の第3の実施態様にかかる衣服擦れ防止具によれば、シート状保護部材が互いに積層された2枚以上のシート状部材を有するので、衣服とサドルとの間のズレがそれらのシート状部材間の滑りにより吸収され、衣服とそれが接する内側表面素材との間では滑りがさほど生じないので、衣服の摩耗がより効果的に回避される。
【0028】
また、本発明の第4の実施態様にかかる衣服擦れ防止具によれば、シート状保護部材を形成するシート状部材間の摩擦係数が、内側表面素材と衣服との間の摩擦係数よりも低いので、衣服とサドルとの間のズレがシート状保護部材を構成するシート状部材間の滑りにより、より効果的に吸収され、衣服とそれが接する内側表面素材との間では滑りがさほど生じないので、衣服の摩耗がより効果的に回避される。
【0029】
また、本発明の第5の実施態様にかかる衣服擦れ防止具によれば、シート状保護部材を形成するシート状部材間の摩擦係数が、外側表面素材とサドルとの間の滑りがあまり生じないため、サドルの摩耗も回避される。
【0030】
また、本発明の第6の実施態様にかかる衣服擦れ防止具によれば、衣服擦れ防止具が導電性繊維を有するので、ユーザの股間部、臀部および太股部あたりとその部分の衣服や衣服擦れ防止具自体に、擦れにより生じる静電気が溜まることがなく、静電気の放電によりユーザにもたらされる痛みや痒みといった不快感が解消もしくは軽減される。
【0031】
また、本発明の第7の実施態様にかかる衣服擦れ防止具によれば、腰部固定部材が腰周り紐状部材と連結部材とを有するので、ユーザの身体がサドルに接触する部分のみを覆うようにシート状保護部材の形状およびサイズをコンパクトにすることができる。
【0032】
また、本発明の第8の実施態様にかかるサドルカバーによれば、ユーザが自転車を漕ぐ際、衣服とサドルとの間に生じるずれの大部分がサドルカバーとサドルとの間、もしくはサドルカバー内において吸収され、サドルカバーと衣服との間に生じるずれが小さいため、ズレに伴い衣服が損傷を受けにくい。
【0033】
また、本発明の第9の実施態様にかかるサドルカバーによれば、衣服とサドルカバーとの間の摩擦係数が、サドルカバーとサドルとの間の摩擦係数よりも大きいことにより、サドルカバーと衣服との間に生じるずれが小さくなる。
【0034】
また、本発明の第10の実施態様にかかるサドルカバーによれば、衣服とサドルカバーとの間の摩擦係数が、サドルカバーとサドルとの間の摩擦係数もしくはサドルカバー内のシート状部材間の摩擦係数よりも大きいことにより、サドルカバーと衣服との間に生じるずれが小さくなる。
【0035】
また、本発明の第11の実施態様にかかるサドルカバーによれば、積層された複数のシート状部材が各々独立して移動可能であるため、例えばサドルに接するシート状部材のずれに伴い、衣服に接するシート状部材がずれることが少ない。
【0036】
また、本発明の第12の実施態様にかかるサドルカバーによれば、衣服に接するシート状部材とサドルに接するシート状部材とが直接的に連結されていないため、サドルに接するシート状部材のずれに伴い、衣服に接するシート状部材がずれることが少ない。
【0037】
また、本発明の第13の実施態様にかかるサドルカバーによれば、サドルカバーが導電性繊維を有するので、サドルカバーに擦れにより生じる静電気が溜まりにくく、静電気の放電によりユーザにもたらされる不快感が低減される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】図1は、本発明の第1実施例にかかる衣服擦れ防止具の外観を示す正面図である。
【図2】図2は、本発明の第1実施例にかかるシート状保護部材の構造を説明するための断面図である。
【図3】図3は、ユーザの身体に取付けられた本発明の第1実施例にかかる衣服擦れ防止具を当該ユーザの左側から見た図である。
【図4】図4は、ユーザの身体に取付けられた本発明の第1実施例にかかる衣服擦れ防止具を当該ユーザの正面側から見た図である。
【図5】図5は、ユーザの身体に取付けられた本発明の第1実施例にかかる衣服擦れ防止具を当該ユーザの背面側から見た図である。
【図6】図6は、本発明の第2実施例にかかる衣服擦れ防止具の外観を示した図である。
【図7】図7は、本発明の第2実施例にかかる衣服擦れ防止具が自転車のサドルに装着される様子を示した図である。
【図8】図8は本発明の第3実施例にかかる衣服擦れ防止具の構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(第1実施例)
以下、本発明の一具体例である第1実施例を、図面を用いて説明する。
【0040】
図1は、本実施例にかかる衣服擦れ防止具1の外観を示す正面図である。
【0041】
衣服擦れ防止具1は、シート状保護部材11と、右側太股部固定部材12と、左側太股部固定部材13と、腰部固定部材14とを備えている。
【0042】
シート状保護部材11は、ユーザが自転車を運転する際に当該ユーザが着用している衣服が当該自転車のサドルとの摩擦により摩耗することを防ぐためのものである。
【0043】
シート状保護部材11は、自転車に乗ったユーザの身体のうち当該自転車のサドルに接触する部分を当該ユーザが着用している衣服の上から覆う形状を有している。
【0044】
シート状保護部材11は、台形を逆さまにしたような形状の臀部用部材111と、正三角形を逆さまにしたような形状の右側太股用部材112と、同じく正三角形を逆さまにしたような形状の左側太股用部材113とを有している。そして、臀部用部材111と、右側太股用部材112と、左側太股用部材113とは、一体に成形されている。
【0045】
臀部用部材111は、主としてユーザの臀部を覆う部材である。そして、右側太股用部材112および左側太股用部材113は各々、主としてユーザの右側および左側の太股の内側部分を覆う部材である。
【0046】
シート状保護部材11の一部分の素材は、例えば、ポリビニルアルコール繊維の内部に硫化銅のナノ微粒子を微細に形成させた導電性繊維である。この導電性繊維は、自転車に乗っているユーザと当該自転車のサドルとの間に生じる摩擦により発生する静電気を逐次自転車等を介して外部に放電する役割を果たし、静電気がユーザの身体やその衣服等に溜まることを防止する。
【0047】
以下、シート状保護部材11の構造について簡単に説明する。図2は、シート状保護部材11の断面図であり、シート状保護部材11の持つ積層構造を示している。
【0048】
なお、本願においては、図2に示すように、シート状保護部材11におけるユーザの身体に対向する側の表面の素材を内側表面素材とし、シート状保護部材11における自転車のサドルに対向する側の表面の素材を外側表面素材とする。
【0049】
シート状保護部材11は、互いに積層された2枚のシート状部材を有している。当該2枚のシート状部材のうちの1枚は、上述の内側表面素材に対して同じ形状を有するシート状の低摩擦素材を全面において接着剤により貼り合わせたものである。本実施例においては例として、シート状の低摩擦素材としてポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))を用いるものとする。
【0050】
また、当該2枚のシート状部材のうちの上述の1枚とは異なる他の1枚は、上述の外側表面部材に対して同じ形状を有するシート状の低摩擦素材(ポリテトラフルオロエチレン)を全面において接着剤により貼り合わせたものである。
【0051】
そして、当該2枚のシート状部材をそれらの低摩擦素材の面を内側にして重ね合わせた状態で、その周囲の部分だけを縫合することによって、シート状保護部材11が完成する。
【0052】
すなわち、外側から見ると上述の2枚のシート状部材の表面の一方の素材が内側表面素材であり、当該一方とは異なる他方の素材が外側表面素材であることになる。そして、シート状保護部材11の内側においては、内側表面素材に貼り付けられた低摩擦素材と、外側表面素材に貼り付けられた低摩擦素材とが互いに滑ることが可能な状態で向き合っている。
【0053】
ここで、上述のユーザが衣服擦れ防止具1を着用して自転車に乗った状態において、上述の内側表面素材とユーザの衣服との間の摩擦係数が、上述の外側表面素材と上述のサドルとの間の摩擦係数よりも高くなるように当該内側表面素材と外側表面素材の選択がなされている。そのような構成であれば、外側表面素材とサドルとの間で擦れが生じるから、内側表面素材とユーザの衣服との間でさほど擦れが生じず、ユーザの衣服の摩耗が回避もしくは軽減される。
【0054】
また、内側表面素材とユーザの衣服との間の摩擦係数が、上述の2枚のシート状部材の内側の間の摩擦係数よりも高くなるように当該2枚のシート状部材の内側の素材と当該内側表面素材の選択がなされている。そのような構成であれば、2枚のシート状部材の内側の間で擦れが生じるから、内側表面素材とユーザの衣服との間でさほど擦れが生じず、やはりユーザの衣服の摩耗が回避もしくは軽減される。
【0055】
また、外側表面素材と自転車のサドルとの間の摩擦係数が、上述の2枚のシート状部材の内側の間の摩擦係数よりも高くなるように当該2枚のシート状部材の内側の素材と外側表面素材の選択がなされている。そのような構成であれば、2枚のシート状部材の内側の間で擦れが生じるから、外側表面素材と自転車のサドルとの間でさほど擦れが生じず、当該自転車のサドルの摩耗が回避もしくは軽減される。
【0056】
具体的には、例えば、ユーザの衣服がデニム地のジーンズであり、自転車のサドルが合成皮革であると仮定して、内側表面素材を上述のポリビニルアルコール繊維の内部に硫化銅のナノ微粒子を微細に形成させた導電性繊維とし、外側表面素材をナイロンとし、上述のように2枚のシート状部材の内側の各々の素材をポリテトラフルオロエチレンとすることで、上述のような摩擦係数の高低が実現される。以上がシート状保護部材11の構造の説明である。
【0057】
右側太股部固定部材12は、ユーザが衣服擦れ防止具1を衣服の上から身体に装着する際に、当該ユーザの右太股周りに巻き付けられて当該右太股周りを締め付けることによって、衣服擦れ防止具1を当該身体に固定する紐状の部材である。また、左側太股部固定部材13は、ユーザが衣服擦れ防止具1を衣服の上から身体に装着する際に、当該ユーザの左太股周りに巻き付けられて当該左太股周りを締め付けることによって、衣服擦れ防止具1を衣服の上から当該身体に固定する紐状の部材である。
【0058】
また、右側太股部固定部材12および左側太股部固定部材13の素材は、ナイロンの繊維に銅およびニッケルの粉末を練り込んだ導電性素材である。
【0059】
右側太股部固定部材12は、図1に示されるように、長手方向の一端が右側太股用部材112の下端部に固定されており、当該一端とは異なる他端が臀部用部材111の右側下部に固定されている。
【0060】
同様に、左側太股部固定部材13は、図1に示されるように、長手方向の一端が左側太股用部材113の下端部に固定されており、当該一端とは異なる他端が臀部用部材111の左側下部に固定されている。
【0061】
右側太股部固定部材12および左側太股部固定部材13は各々、当該紐状部分の長手方向の中間において着脱可能な合成樹脂製のバックル121およびバックル131を有している。バックル121およびバックル131は各々、オス型の部材とメス型の部材が着脱可能に嵌合される固着具である。
【0062】
腰部固定部材14は、ユーザの腰周りに巻き付けられる紐状部材である腰周り紐状部材141と、シート状保護部材11と腰周り紐状部材141とを連結する連結部材142とを有している。
【0063】
腰周り紐状部材141は、ユーザが衣服擦れ防止具1を身体に装着する際に、腰周りに巻き付けられることによって、衣服擦れ防止具1を衣服の上から当該身体に固定する部材である。
【0064】
また、腰周り紐状部材141の素材は、ナイロンの繊維に銅およびニッケルの粉末を練り込んだ導電性繊維である。
【0065】
腰周り紐状部材141は、当該紐状部分の長手方向の中間において着脱可能な合成樹脂製のバックル1411を有している。
【0066】
連結部材142は、上述のようにシート状保護部材11と腰周り紐状部材141とを適切な配置で連結するための部材である。
【0067】
連結部材142は、補助部分1421と、右補助紐状部分1422と、左補助紐状部分1423とを有している。
【0068】
補助部分1421は、帯状の形状を有しており、図1に示されるように、シート状保護部材11の中央部分から上方にせり出してシート状保護部材11と腰周り紐状部材141とを連結している。補助部分1421があることによって、腰周り紐状部材141をユーザの身体において適切な位置に配置することができる。
【0069】
右補助紐状部分1422は、シート状保護部材11の右上端部と、腰周り紐状部材141における衣服擦れ防止具1を装着したユーザの最も右に位置する右脇腹に対向する位置とを連結している。
【0070】
同様に、左補助紐状部分1423は、シート状保護部材11の左上端部と、腰周り紐状部141における衣服擦れ防止具1を装着したユーザの最も左に位置する左脇腹に対向する位置とを連結している。
【0071】
ユーザが衣服擦れ防止具1を装着する際に、右補助紐状部分1422および左補助紐状部分1423があることによって、腰周り紐状部材141を適切な位置に配置することができる。
【0072】
なお、連結部材142の素材は、ナイロンの繊維に銅およびニッケルの粉末を練り込んだ導電性繊維である。
【0073】
以下、本実施例にかかる衣服擦れ防止具1の使用方法の一例について簡単に説明する。
【0074】
先ず、バックル121、バックル131およびバックル1411のオスとメスとを分離した状態の衣服擦れ防止具1を用意する。
【0075】
次に、表側と裏側とを間違えないように注意しながら、シート状保護部材11を臀部の辺りに持って行き、腰周り紐状部材141のバックル1411のオスとメスとをユーザの身体の前側において嵌合させる。
【0076】
そして、シート状保護部材11が臀部および太股の適切な位置に当たるように注意しながら、右側太股用部材112および左側太股用部材113の各々において、バックル121とバックル131のオスとメスとを嵌合させる。
【0077】
図3は、ユーザの身体に取付けられた衣服擦れ防止具1を当該ユーザの左側から見た図である。また、図4は、ユーザの身体に取付けられた衣服擦れ防止具1を当該ユーザの正面側から見た図である。また、図5は、ユーザの身体に取付けられた衣服擦れ防止具1を当該ユーザの背面側から見た図である。
【0078】
ユーザは、衣服擦れ防止具1を図3乃至図5に示すように適切に装着した後、自転車に跨がり当該自転車を運転する。その際、自転車の運転に伴うユーザの身体とサドルとのずれが、主としてシート状保護部材11を構成する2枚のシート状部材の互いに対向する内側面におけるずれにより吸収され、衣服とその衣服が接触するシート状保護部材11の内側表面との間にあまりずれが生じない。そのため、衣服が擦れによる摩耗から保護される。同様に、サドルとそのサドルが接触するシート状保護部材11の外側表面との間にもあまりずれが生じない。そのため、サドルもまた、擦れによる摩耗から保護される。
【0079】
(第1実施形態の変形例)
上述した第1実施例は本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形が可能である。以下にそれらの変形の例を示す。
【0080】
まず、上述した衣服擦れ防止具1の各構成要素を特定する数値、形状、素材、個数、位置などはあくまでも一例であって、特に問題がなければその他の数値、形状、素材、個数、位置などが用いられてもよい。
【0081】
例えば、腰部固定部材14は、ユーザの腰周りを締め付けることでシート状保護部材11をユーザの身体に対して衣服の上から固定するものとしたが、本発明はこれにより限定されるものではない。したがって、腰部固定部材14は、例えばユーザが腰回りに装着しているベルトに取付けられることでシート状保護部材11をユーザの身体に固定してもよい。
【0082】
また、上述した内側表面素材は、ポリビニルアルコール繊維の内部に硫化銅のナノ微粒子を微細に形成させた導電性繊維であるものとしたが、本発明はこれにより限定されるものではない。したがって、例えば、当該内側表面素材は、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)などの他の素材であってもよい。
【0083】
また、上述した外側表面素材はナイロンであるものとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、外側表面素材はナイロン以外の他の素材であってもよい。
【0084】
また、衣服擦れ防止具1の構成要素の一部分はナイロンの繊維に銅およびニッケルの粉末を練り込んだ導電性繊維であるものとしたが、本発明はこれに限られるものではなく、それらの要素に他の素材が用いられてもよい。
【0085】
また、シート状保護部材11は台形を逆さまにしたような形状の臀部用部材111と正三角形を逆さまにしたような形状の右側太股用部材112と同じく正三角形を逆さまにしたような形状の左側太股用部材113とを有しておりそれらは一体に成形されているものとしたが、本発明はこれによって限定されるものではない。したがって、シート状保護部材11は、特に問題がなければ上述した形状以外のいかなる形状を有していてもよい。
【0086】
また、シート状保護部材11は2枚のシート状部材の周囲の部分だけを縫合することによって完成するものとしたが、当該2枚のシート状部材は周囲の部分だけを接着等により固着してもよい。
【0087】
また、シート状保護部材11は互いに積層された2枚のシート状部材を有しているものとしたが、本発明はこれにより限定されるものではない。したがって、シート状保護部材11は互いに積層された3枚以上のシート状部材を有するものとしてもよいし、1枚のみのシート状部材により構成されるものとしてもよい。
【0088】
シート状保護部材11が1枚のみのシート状部材により構成される場合、シート状保護部材11と衣服との間の摩擦係数がシート状保護部材11とサドルとの間の摩擦係数よりも高くなるようにその素材が選択されることが望ましい。そうすることにより、ユーザの身体と自転車のサドルとの間に生じずズレが、主としてシート状保護部材11とサドルとの間の滑りにより吸収され、衣服とそれに接するシート状保護部材11との間にさほど滑りが生じないため、衣服の摩耗が軽減もしくは回避されるためである。
【0089】
また、上述した摩擦係数の高低は本発明を限定するものではなく、特に問題がなければ上述した各要素間の摩擦係数はいかなる値を有していてもよい。
【0090】
また、ユーザの衣服はデニム地のジーンズであり自転車のサドルは合成皮革であるものとしたが、本発明はこれにより限定されるものではない。ユーザの衣服および自転車のサドルの素材如何によって、内側表面素材および外側表面素材との間の摩擦係数は変化するため、必要に応じて、それらの衣服とサドルの素材に応じたシート状保護部材11の素材の選択が行われることが望ましい。
【0091】
また、右側太股部固定部材12、左側太股部固定部材13および腰周り紐状部材141は各々、長手方向の中間にバックル121、バックル131およびバックル1411を有するものとしたが、当該バックルは例えば面ファスナー等の着脱可能な他の部材によって代替されてもよい。
【0092】
また、右側太股部固定部材12および左側太股部固定部材13は紐状の部材であるものとしたが、本発明はこれに限られない。なお、本願において、紐状の部材とは、その断面が概ね円形をなす細長い形状の部材に限られず、その断面が平板な形状をなす細長い形状の部材(帯状の部材)など、細長い形状の部材を広く含む概念である。
【0093】
また、連結部材142は補助部分1421と右補助紐状部分1422と左補助紐状部分1423とを有しているものとしたが、本発明はこれにより限定されるものではない。したがって、特に問題がなければ連結部材142はなくてもよい。ただし、連結部材142がない場合であっても、腰部固定部材14はシート状保護部材11と連結しておりシート状保護部材11から外側に延伸している必要がある。
【0094】
また、上述した衣服擦れ防止具1の使用方法はあくまでも一例であって、本発明にかかる衣服擦れ防止具1はいかなる方法によって使用されてもよい。
【0095】
(第2実施例)
上述した第1実施例にかかる衣服擦れ防止具1は、衣服の外側を覆うように装着される。これに対し、以下に説明する第2実施例にかかる衣服擦れ防止具2は、自転車のサドルを覆うように装着されるサドルカバーである。
【0096】
図6は衣服擦れ防止具2の外観を示した図である。衣服擦れ防止具2は各々がサドルカバーの形状をした2つの部材、すなわち下層サドルカバー21と上層サドルカバー22とを図6においてXで示される連結部分において互いに縫い合わせた構造を備えている。なお、連結部分Xの長さは、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22を積層した状態における周囲の全長の25%未満の長さである。
【0097】
下層サドルカバー21は例えば単層のナイロン素材で作られている。一方、上層サドルカバー22は、例えば表面側(自転車に乗るユーザの衣服に触れる側)が伸縮性および柔軟性の高い綿、裏面側(下層サドルカバー21の表面側に対向する側)がナイロンの2層の素材を縫い合わせた素材で作られている。
【0098】
図7は、衣服擦れ防止具2が自転車のサドルに装着される様子を示した図である。ユーザはまず、サドルに下層サドルカバー21を取り付ける(図7(a))。その際、連結部分Xにおいて連結されている上層サドルカバー22の前方もまた、サドルの前方にフックされることになる(図7(b))。続いて、ユーザは上層サドルカバー22の後方をサドルの後方にフックさせることで、既にサドルに装着されている下層サドルカバー21の上に上層サドルカバー22を装着する(図7(c))。
【0099】
上記のように衣服擦れ防止具2が装着されたサドルの上にユーザが乗って自転車を運転する。その際、ユーザが身に付けている衣服は上層サドルカバー22の表面側の素材である伸縮性および柔軟性の高い綿と接することになる。また、サドルは下層サドルカバー21の素材であるナイロンと接することになる。さらに、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22は、ナイロン素材同士で接することになる。
【0100】
上記のような状態でユーザが自転車を漕ぐと、ユーザの衣服とサドルとの間に生じるずれのうち衣服と上層サドルカバー22との間に生じるずれはたかだか50%未満であり、多くの場合、25%未満である。なぜなら、衣服と上層サドルカバー22との間の摩擦係数は、サドルと下層サドルカバー21との間の摩擦係数および下層サドルカバー21と上層サドルカバー22との間の摩擦係数と比べ大きく、衣服とサドルとの間に生ずるずれの大部分はサドルと下層サドルカバー21との間および下層サドルカバー21と上層サドルカバー22との間に生じるためである。
【0101】
また、衣服と上層サドルカバー22との間に生じるずれの一部は、上層サドルカバー22の表面側の素材である綿が伸縮することにより吸収する。さらに、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22はその周囲の全長の25%未満の長さである連結部分Xのみで連結されているため、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22は互いに自由に動くことができる。そのため、下層サドルカバー21のずれに伴い上層サドルカバー22に生じるずれは少ない。
【0102】
このように、衣服擦れ防止具2によれば、衣服と衣服擦れ防止具2との間でずれがほとんど生じないため、ユーザが自転車を漕ぐ際に衣服が擦れにより受ける損傷を、例えば従来技術にかかるサドルカバーを用いる場合と比較し、低減することができる。
【0103】
なぜなら、従来技術にかかるサドルカバーは、衣服とサドルカバーとの間の摩擦係数が低くなるような、いわゆる滑りやすい素材を表面に用いることにより、衣服とサドルカバーとの間にずれが生じてもその際の摩擦力を低減することで、衣服の損傷を低減する。すなわち、従来技術にかかるサドルカバーは、衣服とサドルカバーとの間に滑らかなずれを生じさせることにより衣服の損傷を低減する。その場合、ずれが生じる以上、ある程度以上の衣服の損傷を回避することはできない。
【0104】
一方、衣服擦れ防止具2は、衣服とサドルカバーとの摩擦係数をむしろ高くするとともに、サドルカバーとサドルもしくはサドルカバー内における摩擦係数を低くすることで、衣服とサドルカバーとの間のずれを低減する。その場合、衣服とサドルカバーとの間でそもそもずれがあまり生じないため、衣服の損傷を大きく低減することができる。
【0105】
(第3実施例)
上述した第2実施例にかかる衣服擦れ防止具2は大きく下層サドルカバー21と上層サドルカバー22の2つの部材で構成されている。これに対し、以下に説明する第3実施例にかかる衣服擦れ防止具3は大きく、下層サドルカバー31、中間シート32、上層サドルカバー33の3つの部材で構成されている。
【0106】
図8は衣服擦れ防止具3の構成を説明するための図である。衣服擦れ防止具3が備える下層サドルカバー31の素材は、衣服擦れ防止具2が備える下層サドルカバー21の素材と同様である。また、衣服擦れ防止具3が備える上層サドルカバー33の素材は、衣服擦れ防止具2が備える上層サドルカバー22の素材と同様である。
【0107】
中間シート32は、概ね菱形をしたナイロンのシートを2枚積層して縫い合わせたものである。ナイロンのシートには通常、表面と裏面があり、表面は裏面よりも平滑度が高く、他の素材と接した際の摩擦係数が低い。中間シート32を構成する2枚のナイロンのシートは、各々の裏面が対向するように積層されており、中間シート32の表面側および裏面側のいずれも、ナイロンのシートの表面が露出するようになっている。
【0108】
下層サドルカバー31と中間シート32は、図8においてYで示される連結部分(左側部および右側部)において縫い合わされている。また、上層サドルカバー33と中間シート32は、図8においてZで示される連結部分(前端部および後端部)において縫い合わされている。すなわち、下層サドルカバー31と上層サドルカバー33は中間シート32を介して互いに連結されており、下層サドルカバー31と上層サドルカバー33が直接連結されてはいない。
【0109】
衣服擦れ防止具3をサドルに装着する手順は以下のとおりである。すなわち、ユーザはまず、下層サドルカバー31をサドルに装着する。続いて、中間シート32により下層サドルカバー31に連結されている上層サドルカバー33を、中間シート32を間に挟み込んだ状態で下層サドルカバー31の上からサドルに装着する。
【0110】
上記のように衣服擦れ防止具3が装着されたサドルの上にユーザが乗って自転車を運転する場合、ユーザが身に付けている衣服は上層サドルカバー33の表面側の素材である伸縮性および柔軟性の高い綿と接することになる。また、サドルは下層サドルカバー31の素材であるナイロンと接することになる。さらに、下層サドルカバー31と上層サドルカバー33は、中間シート32を介して接することになる。その際、下層サドルカバー31の上面側のナイロンと中間シート32の下面側のナイロンが接し、上層サドルカバー33の下面側のナイロンと中間シート32の上面側のナイロンが接することになる。
【0111】
上記のような状態でユーザが自転車を漕ぐと、ユーザの衣服とサドルとの間に生じるずれのうち衣服と上層サドルカバー33との間に生じるずれは、衣服擦れ防止具2の場合と同様に、たかだか50%未満であり、多くの場合、25%未満である。なぜなら、衣服と上層サドルカバー33との間の摩擦係数は、サドルと下層サドルカバー31との間の摩擦係数および下層サドルカバー31と上層サドルカバー33との間の摩擦係数と比べ大きく、衣服とサドルとの間に生ずるずれの大部分はサドルと下層サドルカバー31との間および下層サドルカバー31と上層サドルカバー33との間に生じるためである。従って、衣服擦れ防止具3によっても、衣服擦れ防止具2と同様の理由により、自転車を漕ぐ際の衣服の損傷を従来技術にかかるサドルカバーと比較し、大きく低減することができる。
【0112】
さらに、衣服擦れ防止具3は、衣服擦れ防止具2と比較し、下層サドルカバー31と上層サドルカバー33の間に中間シート32が介在し、さらに下層サドルカバー31と上層サドルカバー33が直接は連結されていないため、衣服擦れ防止具2と比較し、下層サドルカバー31と上層サドルカバー33との間のずれが生じやすい。従って、衣服と上層サドルカバー33との間に生じるずれが衣服擦れ防止具2よりもさらに小さくなり、衣服の損傷をさらに低減することができる。
【0113】
(第2実施例および第3実施例の変形例)
上述した第2実施例および第3実施例は本発明の技術的思想の範囲内において様々に変形可能である。以下にそれらの変形の例を示す。
【0114】
衣服擦れ防止具2において、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22は連結部分Xにおいて連結されている。これに対し、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22が全く連結されていない構成が採用されてもよい。また、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22の連結の位置等は上述した実施例に示したものに限られず、例えば左側部および右側部における連結や、後端部における連結が採用されてもよい。さらに、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22が重ね合せられた状態で周り全体において連結された構成が採用されてもよい。すなわち、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22との間にずれが生じる構成であれば、下層サドルカバー21と上層サドルカバー22の連結の態様としては様々なものが考えられる。
【0115】
衣服擦れ防止具3における下層サドルカバー31と上層サドルカバー33の連結の態様もまた、上述した実施例に記載のものに限られない。例えば、下層サドルカバー31と中間シート32の連結部分の位置と中間シート32と上層サドルカバー33の連結部分の位置とが逆であってもよい。また、下層サドルカバー31と上層サドルカバー33を中間シート32を挟んだ状態で直接連結する構成が採用されてもよい。また、下層サドルカバー31、中間シート32および上層サドルカバー33が積層された状態で、その周り全体において連結された構成が採用されてもよい。すなわち、下層サドルカバー31と中間シート32、中間シート32と上層サドルカバー33との間にずれが生じる構成であれば、下層サドルカバー31と上層サドルカバー33の連結の態様としては様々なものが考えられる。
【0116】
衣服擦れ防止具2および衣服擦れ防止具3を構成する素材の層の数は上述したものに限られない。例えば、衣服擦れ防止具2の上層サドルカバー22および衣服擦れ防止具3の上層サドルカバー33は2層の素材で作られるものとしたが、1層もしくは3層以上の素材で作られてもよい。中間シート32も同様である。また、衣服擦れ防止具2の下層サドルカバー21および衣服擦れ防止具3の下層サドルカバー31は1層の素材で作られるものとしたが、2層以上の素材でつくられてもよい。
【0117】
衣服擦れ防止具2は下層サドルカバー21と上層サドルカバー22の大きく2つの部材、衣服擦れ防止具3は下層サドルカバー31、中間シート32および上層サドルカバー33の大きく3つの部材を備え、それらの部材が積層された状態でサドルに装着される。これらの部材の数は限定されず、例えば1つの部材のみで構成されてもよいし、4以上の部材で構成されてもよい。例えば1つの部材のみで構成される場合、その部材の上面側が衣服に、下面側がサドルに各々接するため、上面側の素材は下面側の素材よりも平滑度が低く衣服との間の摩擦係数が高くなる素材が選択され、下面側の素材は上面側の素材よりも平滑度が高くサドルとの間の摩擦係数が低くなる素材が選択されることにより、上述した衣服擦れ防止具2および衣服擦れ防止具3と同様の効果が得られる。
【0118】
衣服擦れ防止具2もしくは衣服擦れ防止具3を構成するシート状素材のいずれかを導電性繊維を含むものとしてもよい。それにより、衣服擦れ防止具2もしくは衣服擦れ防止具3において摩擦により生じる静電気が溜まりにくく、静電気がユーザの身体に対し放電されることにより生じる不快感が低減される。
【0119】
なお、上述した第2実施例および第3実施例において説明に用いた素材、形状、連結方法、サドルへの装着方法等はあくまで例示であって、他の素材、他の連結方法、他のサドルへの装着方法等が用いられてもよい。例えば、複数のシート状素材を互いに連結する方法は縫い合わせに限られず、例えば接着や溶着などの他の方法が採用されてもよい。また、綿に代えて麻等の素材を、ナイロンに代えてポリエステル等の素材が採用されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明の衣服擦れ防止具は、自転車を運転する際のユーザの衣服とサドルとの擦れによる当該衣服の摩耗を防止することができるというメリットを有する。したがって、広く一般消費者に利用され得るため、大量に製造・販売されいわゆる製造業や小売業などのサービス業において利用可能である。
【符号の説明】
【0121】
1…衣服擦れ防止具、11…シート状保護部材、111…臀部用部材、112…右側太股用部材、113…左側太股用部材、12…右側太股部固定部材、121…バックル、13…左側太股部固定部材、131…バックル、14…腰部固定部材、141…腰周り紐状部材、1411…バックル、142…連結部材、1421…補助部分、1422…右補助紐状部分、1423…左補助紐状部分、2…衣服擦れ防止具、3…衣服擦れ防止具、21…下層サドルカバー、22…上層サドルカバー、31…下層サドルカバー、32…中間シート、33…上層サドルカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車に乗ったユーザの身体のうち前記自転車のサドルに接触する部分を前記ユーザが着用している衣服の上から覆う形状のシート状保護部材と、
前記シート状保護部材から外側に延伸し、前記ユーザの左太股周りおよび右太股周りを各々締め付けることで、前記シート状保護部材を前記ユーザの身体に対し前記衣服の上から固定する太股部固定部材と、
前記シート状保護部材から外側に延伸し、前記ユーザの腰周りを締め付けることで、もしくは前記ユーザが腰周りに装着しているベルトに取り付けられることで、前記シート状保護部材を前記ユーザの身体に対し前記衣服の上から固定する腰部固定部材と
を備える衣服擦れ防止具。
【請求項2】
前記シート状保護部材の前記ユーザの身体に対向する側の表面の素材を内側表面素材とし、前記シート状保護部材の前記サドルに対向する側の表面の素材を外側表面素材とするとき、前記ユーザが前記衣服擦れ防止具を着用して前記自転車に乗った状態において、前記内側表面素材と前記衣服との間の摩擦係数が前記外側表面素材と前記サドルとの間の摩擦係数よりも高くなるように前記内側表面素材と前記外側表面素材の選択がなされている
請求項1に記載の衣服擦れ防止具。
【請求項3】
前記シート状保護部材は互いに積層された2枚以上のシート状部材を有する
請求項1または2に記載の衣服擦れ防止具。
【請求項4】
前記シート状保護部材の前記ユーザの身体に対向する側の表面の素材を内側表面素材とするとき、前記ユーザが前記衣服擦れ防止具を着用して前記自転車に乗った状態において、前記2枚以上のシート状部材のうち少なくとも1組の互いに隣接する2枚のシート状部材の間の摩擦係数が、前記内側表面素材と前記衣服との間の摩擦係数よりも低くなるように前記2枚以上のシート状部材および前記内側表面素材の選択がなされている
請求項3に記載の衣服擦れ防止具。
【請求項5】
前記シート状保護部材の前記サドルに対向する側の表面の素材を外側表面素材とするとき、前記ユーザが前記衣服擦れ防止具を着用して前記自転車に乗った状態において、前記2枚以上のシート状部材のうち少なくとも1組の互いに隣接する2枚のシート状部材の間の摩擦係数が、前記外側表面素材と前記サドルとの間の摩擦係数よりも低くなるように前記2枚以上のシート状部材および前記外側表面素材の選択がなされている
請求項3または4に記載の衣服擦れ防止具。
【請求項6】
導電性繊維を有する
請求項1乃至5のいずれかに記載の衣服擦れ防止具。
【請求項7】
前記腰部固定部材は、前記ユーザの腰周りに巻き付けられる紐状部材である腰周り紐状部材と、前記シート状保護部材と前記腰回り紐状部材とを連結する紐状部材である連結部材とを有する
請求項1乃至6のいずれかに記載の衣服擦れ防止具。
【請求項8】
自転車のサドルを覆うサドルカバーであって、
前記サドルに前記サドルカバーが装着された状態でユーザが前記自転車を漕ぐ際に前記ユーザの衣服のうち前記サドルカバーに接している部分と前記サドルとの間に生じるずれの量に対する前記ユーザの衣服と前記サドルカバーとの間のずれの量が25%未満である
サドルカバー。
【請求項9】
前記サドルカバーの前記衣服に接する素材を外側表面素材とし、前記サドルカバーの前記サドルに接する素材を内側表面素材とするとき、前記ユーザが前記自転車に乗った状態において、前記外側表面素材と前記衣服との間の摩擦係数が前記内側表面素材と前記サドルとの間の摩擦係数よりも高くなるように前記内側表面素材と前記外側表面素材の選択がなされている
請求項8に記載のサドルカバー。
【請求項10】
互いに積層された2枚以上のシート状部材を有し、
前記サドルカバーの前記衣服に接する素材を外側表面素材とし、前記サドルカバーの前記サドルに接する素材を内側表面素材とするとき、前記ユーザが前記自転車に乗った状態において、前記外側表面素材と前記衣服との間の摩擦係数が、前記内側表面素材と前記サドルとの間の摩擦係数と前記2枚以上のシート状部材の間の摩擦係数の少なくとも一方よりも高くなるように前記内側表面素材、前記外側表面素材および前記2枚のシート状部材の選択がなされている
請求項8または9に記載のサドルカバー。
【請求項11】
前記2以上のシート状部材は積層された状態における周囲の全長の25%未満において互いに連結されている
請求項10に記載のサドルカバー。
【請求項12】
互いに積層された3枚以上のシート状部材を有し、
前記外側表面素材を構成する第1のシート状部材と前記内側表面素材を構成する第2のシート状部材は直接連結されておらず、前記第1のシート状部材と前記第2のシート状部材のいずれとも異なる第3のシート状部材を介して互いに連結されている
請求項10に記載のサドルカバー。
【請求項13】
導電性繊維を有する
請求項8乃至12のいずれかに記載のサドルカバー。

【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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