説明

衣装

【課題】一つの衣装で多種多様な体格や体形の被着者の身体に容易にフィットさせることができる、着心地の良い衣装を提供すること。
【解決手段】上半身に着用される上衣部2を含む衣装。上衣部2は、略水平方向に配されたゴム紐4を、胴部21から胸部22にかけて複数本取り付けてなる。各ゴム紐4は、長手方向の2個所において上衣部2の本体生地部23に対して留め付けられた留め部5を有する。各ゴム紐4ごとに、留め部5間の自由長を調整できるよう構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェディングドレスなど、上半身に着用される上衣部を含む衣装に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェディングドレスなどの衣装は、それを着る人の体格や体形に合わせて種々のサイズを取り揃えておくことが望ましい。しかし、現実問題として、コストをはじめ種々の事情により充分なバリエーションのサイズを取り揃えることは困難である。
また、着る人の体形は千差万別であり、胴囲と胸囲とのバランスも千差万別である。そのため、特にウェディングドレスなど身体にフィットさせる衣装の場合には、単に衣装の大きさだけではなく、部位ごとの調整が必要となることもある。
被着者の体形に応じて、サイズ直しをすることも考えられるが、その場合には、手間がかかるうえに、衣装に針を入れることとなり衣装が傷みやすくなるという問題もある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1に記載の発明のように、「少ないサイズの設定でも7号から17号までの各サイズの人にピッタリと着付けられるウェディングドレス」が提案されている。この発明においては、ウェディングドレスをドレス上衣とドレス下衣とに分割し、ドレス上衣の背中にスリットを形成し、そのスリットの両側部分をリボンで互いに締め付けることにより、スリット幅を調整してドレス上衣を身体にフィットさせることができるよう構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−217210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の発明においては、リボンで胴囲や胸囲を調整するため、微調整が困難で、ドレス上衣を身体に充分にフィットさせることは困難である。その結果、着姿に違和感を生じたり、着用中に身体に対する衣装のずれが生じたり、また、着心地も悪くなったりするおそれがある。また、サイズ調整は、着付け時に衣装を被着者に着せながら行う必要があり、被着者の負担も大きく、また調整作業もし難いという問題もある。
【0006】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたもので、一つの衣装で多種多様な体格や体形の被着者の身体に容易にフィットさせることができる、着心地の良い衣装を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上半身に着用される上衣部を含む衣装であって、
上記上衣部は、略水平方向に配されたゴム紐を、胴部から胸部にかけて複数本取り付けてなり、
上記各ゴム紐は、長手方向の2個所において上記上衣部の本体生地部に対して留め付けられた留め部を有し、
かつ、上記各ゴム紐ごとに、上記留め部間の自由長を調整できるよう構成されていることを特徴とする衣装にある(請求項1)。
【発明の効果】
【0008】
本発明においては、上記ゴム紐が上衣部の胴部から胸部にかけて複数本取り付けてあり、各ゴム紐は長手方向の2個所において上衣部の本体生地部に対して留め付けられている。そして、各ゴム紐ごとに上記留め部間の自由長を調整できる。そのため、胴部から胸部にかけて、それぞれの部位において上衣部を身体にフィットさせることができる。それゆえ、一つの衣装で、多種多様な被着者の体格、体形に対応することができる。
【0009】
すなわち、上衣部の胴部から胸部にかけて複数本取り付けられた複数本のゴム紐のそれぞれの自由長を個別に調整することができるため、胴部から胸部にかけたそれぞれの部位ごとに各人のサイズに対応させることができる。これにより、多種多様な胴囲と胸囲とのバランスを持った多数の被着者に対応することができる。例えば、胴囲に対して胸囲が大きい被着者の場合には、胴囲に配されたゴム紐における留め部間の自由長を短くし、胸囲に配されたゴム紐における留め部間の自由長を長くする。また、例えば妊婦のように胴囲が大きい被着者の場合には、胴囲に配されたゴム紐における留め部間の自由長を長くし、胸囲に配されたゴム紐における留め部間の自由長を短くする。
【0010】
しかも、上記ゴム紐は弾力性を有しているため、各部における胴囲或いは胸囲の微調整はゴム紐の伸縮性に任せることができるとともに、ゴム紐の弾力性によって身体によりフィットさせることができる。すなわち、各ゴム紐の自由長を、被着者の身体の各部の胴囲或いは胸囲に対応する長さよりも若干短めの長さに調整しておき、着用したときにゴム紐が幾分伸びて、ゴム紐の復元力によって上衣部を身体にフィットさせることができる。また、これにより、着用時の衣装のずれを防ぎ、着心地を向上させることができる。
【0011】
逆に、ゴム紐の弾力性のみで種々の体格、体形の被着者の身体にフィットさせることは困難であるところ、本発明では、上記のごとく各ゴム紐の留め部間の自由長をそれぞれ変更することによって、ゴム紐の自由長調整とゴム紐の弾力性、伸縮性との相乗効果によって、より多種多様な被着者の体格、体形に対応することが可能となる。
【0012】
すなわち、仮にゴム紐の両端を共に本体生地部に固定して留め部間の自由長を変更できなくしてしまうと、ゴム紐が自由長(最も縮んだ長さ)にあるときの胴囲や胸囲よりも小さい胴囲や胸囲に対応することはできない。逆にゴム紐の自由長にあるときの胴囲や胸囲を極端に小さくすると、ゴム紐の弾力性のみでは大きな胴囲や胸囲に対応することができない。まして、多種多様な胴囲と胸囲とのバランスを持った多数の被着者に対応することは不可能である。
これに対して、ゴム紐の自由長調整とゴム紐の弾力性とを効果的に利用できる本発明によれば、多種多様なサイズの被着者に対応できると共に、多種多様な胴囲と胸囲とのバランスを持った多数の被着者に対応することもできる。
【0013】
また、サイズ調整は、着用前に各ゴム紐の留め部間の自由長を調整するだけでよいため、調整作業も容易である。しかも、着付け時に衣装を被着者に着せながら行う必要もなく、被着者の負担が少ないし、被着者自身で調整することもできる。
また、衣装のサイズ直しをする必要がないため、衣装に針を入れるなどの必要もなく、衣装を傷める心配もない。
【0014】
また、衣装の販売業者やレンタル業者にとっても、同じデザインの衣装について、多数のサイズを取り揃える必要がないという利点がある。そして、その分、異なるデザインの衣装を安価に取り揃えることも可能となり、購入者等の利用者にとってもデザインの選択の幅が広がるという利点がある。
【0015】
以上のごとく、本発明によれば、一つの衣装で多種多様な体格や体形の被着者の身体に容易にフィットさせることができる、着心地の良い衣装を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例における、複数のゴム紐を取り付けた上衣部の一部の展開図。
【図2】実施例における、被覆生地部を開けた状態の上衣部付近の衣装の斜視図。
【図3】実施例における、被覆生地部を締め上げた状態の上衣部付近の衣装の斜視図。
【図4】実施例における、着用された衣装の後姿の全体斜視図。
【図5】実施例における、着用された衣装の水平断面図。
【図6】実施例における、ゴム紐の長手方向に沿った可動留め部付近の断面図。
【図7】図1のA−A線矢視断面相当図。
【図8】実施例における、可動留め部の斜視図。
【図9】実施例における、ゴム紐の長さ調整の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明において、上記「留め部間の自由長」とは、上記ゴム紐に外力を与えていない状態における留め部間の長さであり、最も縮んだ状態の長さをいう。
また、上記ゴム紐における一方の上記留め部は、上記本体生地部に固定された固定留め部であり、他方の上記留め部は、上記ゴム紐の長手方向に移動可能な可動留め部であることが好ましい(請求項2)。
この場合には、上記ゴム紐の上記本体生地部への取付強度を確保することができる。また、上記衣装の構造を簡素化し、製作容易かつ安価な衣装を得ることができる。
【0018】
また、上記可動留め部は複数のボタン孔と上記本体生地部に固定されたボタンとからなり、該ボタンをいずれかの上記ボタン孔に留めることによって上記留め部間の自由長を調整できるよう構成されていることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記留め部間の自由長調整を容易に行うことができる。
【0019】
また、上記上衣部は、上記ボタンを被着者の身体側から覆う当て布部を有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、衣装の着用時にボタンが身体に当たることを防ぎ、着心地を向上させることができる。
【0020】
また、下半身に着用される下衣部が上記上衣部と一体的に形成されていることが好ましい(請求項5)。
この場合には、下衣部を含めた衣装全体の重量が大きくなるため、上衣部のゴム紐において、身体に衣装を保持する力を大きくすることが必要となる。そこで、本発明のように、ゴム紐の留め部間の自由長を調整することによって上衣部を上半身にフィットさせることにより、上衣部における上半身への衣装の保持を行うことに特に大きな意義が生じる。
すなわち、仮にゴム紐を使わずに弾力性のない紐等によって胴囲や胸囲の調整をした場合には、身体への衣装の保持力を充分に得ることができず、着用中に衣装がずれ落ちたりするおそれもある。これに対して、ゴム紐を用いることにより、このような心配を解消することができる。
【0021】
また、上記衣装は、上記上衣部における胴部及び胸部のみにおいて被着者の身体に固定されるよう構成されていることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上衣部のゴム紐による、身体へ衣装を保持する力が必要となる。すなわち、肩部分や肩紐がある衣装においては、この肩部分や肩紐によって衣装の重量を支持すればよいが、これらがない場合には、上衣部における胴部及び胸部における上半身への締め付け力によって、衣装を身体に保持する必要がある。そのため、本発明のように、ゴム紐の留め部間の自由長を調整することによって上衣部を上半身にフィットさせることにより、上衣部における上半身への衣装の保持を行うことに特に大きな意義が生じる。
【0022】
上記衣装は、上記本体生地部における上記ゴム紐が取り付けられた部分を外側から覆う被覆生地部を有することが好ましい(請求項7)。
この場合には、外観意匠性に優れた衣装を提供することができる。すなわち、本体生地部におけるゴム紐を取り付けた部分は特に皺ができやすい。デザイン上、皺ができてもよいものであっても、調整の仕方によってはその皺が見苦しい形になる場合もある。そこで、このような部分を上記被覆生地部によって覆うことにより、外観意匠性を向上させることができる。
【0023】
また、上記ゴム紐は、左右の脇部の双方に配置されていることが好ましい(請求項8)。
この場合には、バランスよく上衣部を身体にフィットさせることができる。また、ゴム紐の取り付け部分が外観上目立ちにくいため、衣装全体の外観意匠性を向上させることができる。
【0024】
また、上記衣装は、レンタル用の衣装であることが好ましい(請求項9)。
この場合には、本発明の効果を充分に発揮することができる。すなわち、レンタル用の衣装は一つの衣装を多くの人が着るという性格を有するが、多種多様な体格や体形の被着者に容易に対応することができる本発明の衣装をレンタル用の衣装として提供することにより、レンタル用の衣装の性格上要求されるニーズに充分に応えることができる。
また、レンタル業者にとっても、同じデザインの衣装について多数のサイズを取り揃える必要がなくなる。そして、その分、異なるデザインの衣装を安価に取り揃えることも可能となり、利用者にとってもデザインの選択の幅が広がるという利点がある。
【0025】
また、上記衣装は、ウェディングドレスであることが好ましい(請求項10)。
この場合にも、本発明の効果を充分に発揮することができる。すなわち、ウェディングドレスは、婚礼の際のみに着用するものであると共に高価な衣装であるため、これをオーダーメイドで作ることは通常難しい。そのため、多種多様な体格や体形の被着者に対応できることは、ウェディングドレスにおいては特に要求されることである。
また、婚礼の際には、ウェディングドレスの準備のみならず、花嫁も忙しいことが通常であり、何度も試着して直しの微調整を行うことは困難である。特に挙式直前に花嫁が痩せたり太ったりということもよくあるが、このような場合にも本発明の衣装によれば容易に対応が可能である。また、花嫁が妊婦である場合には日々変化する体形に対して、挙式直前に対応が可能であるという利点もある。
さらには、ウェディングドレスは着姿が特に重視される衣装であるため、花嫁の体形にフィットさせやすい本発明の衣装を採用することにより、その効果を発揮しやすい。
【実施例】
【0026】
本発明の実施例にかかる衣装につき、図1〜図8を用いて説明する。
本例の衣装1は、図4に示すごとく、上半身に着用される上衣部2と下半身に着用される下衣部3とが一体的に形成された衣装、いわゆるワンピース型の衣装である。また、本例の衣装1はウェディングドレスである。
また、衣装1は、上衣部2における胴部21及び胸部22のみにおいて被着者の身体に固定されるよう構成されている。すなわち、図2〜図4に示すごとく、衣装1は、肩部分や肩紐がない、いわゆるビスチェドレスである。
【0027】
図1、図2に示すごとく、上衣部2は、略水平方向に配されたゴム紐4を、胴部21から胸部22にかけて複数本取り付けてなる。各ゴム紐4は、長手方向の2個所において上衣部2の本体生地部23に対して留め付けられた留め部5を有する。そして、各ゴム紐4ごとに、留め部5間の自由長を調整できるよう構成されている。
【0028】
ゴム紐4における一方の留め部5は、本体生地部23に固定された固定留め部51であり、他方の留め部5は、ゴム紐4の長手方向に移動可能な可動留め部52である。可動留め部52は複数のボタン孔521からなり、本体生地部23に固定されたボタン6をいずれかのボタン孔521に留めることによって留め部5間の自由長を調整できるよう構成されている。
【0029】
図5に示すごとく、上衣部2は、身体の背面の中央部分に配される背面部24と、身体の前面に配される前面部26と、身体の両脇から背面にかけた部分に配されると共に背面部24と前面部26とを連結する脇部25とからなる。そして、ゴム紐4は、左右の脇部25の双方に配置されている。
【0030】
ゴム紐4は、帯状を呈しており、その一端が本体生地部23に縫い付けてあり固定留め部51となっている。固定留め部51は、背面部24の左右端部にそれぞれ配置され、ゴム紐4は、そこから前面部26側へ伸びている。図1に示すごとく、固定留め部51と反対側のゴム紐4の端部付近から、例えば1〜3cmのピッチで複数のボタン孔521が穿設されている。
また、脇部25における前端部付近に、ボタン孔521に留めるためのボタン6が、各ゴム紐4に対して各1個ずつ縫い付けてある。
【0031】
そして、被着者の各部のサイズに応じて、各ゴム紐4におけるいずれかのボタン孔521を選択して、そのボタン孔521にボタン6を留める。これにより、脇部25における高さ方向の各部の自由長が、各ゴム紐4の留め部5間(固定留め部51と可動留め部52との間)の自由長に対応した長さとして決まる。なお、図6、図8に示すごとく、ゴム紐4の可動留め部52側の端部がボタン6よりも先端側において大きく余る場合には、その部分を折り返して先端側のボタン孔521においてボタン6に留める。
【0032】
また、本体生地部23の脇部25は、図6、図7に示すごとく、一対の生地251の間にゴム紐4を挿通する挿通部231を有する。この挿通部231の中に、ゴム紐4が、固定留め部51から可動留め部52付近まで挿通されている。挿通部231は複数形成されており、各挿通部231に各1本のゴム紐4が挿通されている。挿通部231は、可動留め部52側に開口部232を有し、可動留め部52は挿通部231の外側に配置される。すなわち、ボタン6は、挿通部231の開口部232の外側において、本体生地部23に縫い付けてある。
図5、図6に示すごとく、上衣部2は、ボタン6を被着者の身体側から覆う当て布部27を有する。当て布部27は、挿通部231の開口部232をも覆うように形成されている。
【0033】
また、図2、図3、図5に示すごとく、衣装1は、本体生地部23におけるゴム紐4が取り付けられた部分、すなわち本体生地部23の脇部25を外側から覆う一対の被覆生地部7を有する。図5に示すごとく、被覆生地部7は、前面部26の左右端部に前端が固定されている。また、被覆生地部7の後端には複数のフック71が配設されている。
【0034】
そして、図3に示すごとく、左右の被覆生地部7に設けられたフック71に、リボン72を係合させて、左右の被覆生地部7を互いに締め上げる。このとき、左右の被覆生地部7の間にはスリット11が形成され、このスリット11が被着者の背面の中央に配置される。被着者の体格に応じてスリット11の幅が調整されることにより、被覆生地部7も体形にフィットすることとなる。
また、被覆生地部7の表面に装飾を施して外観意匠性を向上させることができる。
【0035】
次に、本例の作用効果につき説明する。
本例の衣装1においては、図1、図2に示すごとく、ゴム紐4が上衣部2の胴部21から胸部22にかけて複数本取り付けてあり、各ゴム紐4は長手方向の2個所において上衣部2の本体生地部23に対して留め付けられている。そして、各ゴム紐4ごとに留め部5間の自由長を調整できる。そのため、胴部21から胸部22にかけて、それぞれの部位において上衣部2を身体にフィットさせることができる。それゆえ、一つの衣装1で、多種多様な被着者の体格、体形に対応することができる。
【0036】
すなわち、上衣部2の胴部21から胸部22にかけて複数本取り付けられた複数本のゴム紐4のそれぞれの自由長を個別に調整することができるため、胴部21から胸部22にかけたそれぞれの部位ごとに各人のサイズに対応させることができる。これにより、多種多様な胴囲と胸囲とのバランスを持った多数の被着者に対応することができる。例えば、胴囲に対して胸囲が大きい被着者の場合には、胴部21に配されたゴム紐4における留め部5間の自由長を、図9(a1)或いは図9(b1)のように短くし、胸部22に配されたゴム紐4における留め部5間の自由長を、図9(c1)のように長くする。また、例えば妊婦のように胴囲が大きい被着者の場合には、胴部21に配されたゴム紐4における留め部5間の自由長を、図9(c1)のように長くし、胸部22に配されたゴム紐4における留め部5間の自由長を、図9(a1)或いは図9(b1)のように短くする。
【0037】
しかも、ゴム紐4は弾力性を有しているため、各部における胴囲或いは胸囲の微調整はゴム紐4の伸縮性に任せることができるとともに、ゴム紐4の弾力性によって身体によりフィットさせることができる。すなわち、各ゴム紐4の自由長(図9(a1)のLa、図9(b1)のLb、図9(c1)のLc)を、被着者の身体の各部の胴囲或いは胸囲に対応する長さよりも若干短めの長さに調整しておき、着用したときにゴム紐4が幾分伸びて(図9(a1)のMa、図9(b1)のMb、図9(c1)のMc参照)、ゴム紐4の復元力によって上衣部2を身体にフィットさせることができる。また、これにより、着用時の衣装1のずれを防ぎ、着心地を向上させることができる。
【0038】
逆に、ゴム紐4の弾力性のみで種々の体格、体形の被着者の身体にフィットさせることは困難であるところ、本発明では、上記のごとく各ゴム紐4の留め部5間の自由長をそれぞれ変更する。これにより、ゴム紐4の自由長調整(例えば図9(a1)と(b1)と(c1)との間の変更)とゴム紐4の弾力性、伸縮性(例えば図9(a1)〜(a2)の伸縮、図9(b1)〜(b2)の伸縮、図9(c1)〜(c2)の伸縮)との相乗効果によって、より多種多様な被着者の体格、体形に対応することが可能となる。
【0039】
すなわち、仮にゴム紐4の両端を共に本体生地部23に固定して留め部5間の自由長を変更できなくしてしまうと、ゴム紐4が自由長にあるときの胴囲や胸囲よりも小さい胴囲や胸囲に対応することはできない。逆にゴム紐4の自由長にあるときの胴囲や胸囲を極端に小さくすると、ゴム紐4の弾力性のみでは大きな胴囲や胸囲に対応することができない。まして、多種多様な胴囲と胸囲とのバランスを持った多数の被着者に対応することは不可能である。
これに対して、ゴム紐4の自由長調整とゴム紐4の弾力性とを効果的に利用できる本発明によれば、多種多様なサイズの被着者に対応できると共に、多種多様な胴囲と胸囲とのバランスを持った多数の被着者に対応することもできる。
【0040】
具体的には、例えば、ゴム紐の伸縮のみで対応する場合には、上下1サイズ(7号基準で製作した衣装であれば6〜8号)弱しか対応できないところ、ゴム紐4の自由長の調整とゴム紐4の伸縮とを利用した本例によれば、上下3サイズ(7号基準で製作した衣装であれば4〜10号)強まで対応することができる。
【0041】
また、サイズ調整は、着用前に各ゴム紐4の留め部5間の自由長を調整するだけでよいため、調整作業も容易である。しかも、着付け時に衣装1を被着者に着せながら行う必要もなく、被着者の負担が少ないし、被着者自身で調整することもできる。
また、衣装のサイズ直しをする必要がないため、衣装1に針を入れるなどの必要もなく、衣装1を傷める心配もない。
【0042】
また、衣装1の販売業者やレンタル業者にとっても、同じデザインの衣装1について、多数のサイズを取り揃える必要がないという利点がある。そして、その分、異なるデザインの衣装1を安価に取り揃えることも可能となり、購入者等の利用者にとってもデザインの選択の幅が広がるという利点がある。
【0043】
また、図1に示すごとく、ゴム紐4における一方の留め部5は固定留め部51であり、他方の留め部5は可動留め部52である。そのため、ゴム紐4の本体生地部23への取付強度を確保することができる。また、衣装1の構造を簡素化し、製作容易かつ安価な衣装1を得ることができる。
【0044】
また、各可動留め部52は複数のボタン孔521と一つのボタン6とからなり、ボタン6をいずれかのボタン孔521に留めることによって留め部5間の自由長を調整できるよう構成されている。そのため、留め部5間の自由長調整を容易に行うことができる。
また、図5、図6に示すごとく、上衣部2は、ボタン6を被着者の身体側から覆う当て布部27を有するため、衣装1の着用時にボタン6が身体に当たることを防ぎ、着心地を向上させることができる。
【0045】
また、図4に示すごとく、衣装1は、下衣部3が上衣部2と一体的に形成されているワンピースである。それゆえ、下衣部3を含めた衣装1全体の重量が大きくなるため、上衣部2のゴム紐4において、身体に衣装1を保持する力を大きくすることが必要となる。そこで、本発明のように、ゴム紐4の留め部5間の自由長を調整することによって上衣部2を上半身にフィットさせることにより、上衣部2における上半身への衣装1の保持を行うことに特に大きな意義が生じる。
【0046】
すなわち、仮にゴム紐4を使わずに弾力性のない紐等によって胴囲や胸囲の調整をした場合には、身体への衣装1の保持力を充分に得ることができず、着用中に衣装1がずれ落ちたりするおそれもある。これに対して、ゴム紐4を用いることにより、このような心配を解消することができる。
【0047】
また、衣装1は、上衣部2における胴部21及び胸部22のみにおいて被着者の身体に固定される、いわゆるビスチェドレスであるため、上衣部2のゴム紐4による、身体へ衣装1を保持する力が特に必要となる。すなわち、肩部分や肩紐がある衣装においては、この肩部分や肩紐によって衣装の重量を支持すればよいが、これらがない場合には、上衣部2における胴部21及び胸部22における上半身への締め付け力によって、衣装1を身体に保持する必要がある。そのため、本発明のように、ゴム紐4の留め部5間の自由長を調整することによって上衣部2を上半身にフィットさせることにより、上衣部2における上半身への衣装1の保持を行うことに特に大きな意義が生じる。
【0048】
また、図2〜図5に示すごとく、衣装1は被覆生地部7を有するため、外観意匠性を向上させることができる。すなわち、本体生地部23におけるゴム紐4を取り付けた部分である脇部25は特に皺ができやすい。デザイン上、皺ができてもよいものであっても、調整の仕方によってはその皺が見苦しい形になる場合もある。そこで、このような部分を被覆生地部7によって覆うことにより、衣装1の外観意匠性を向上させることができる。
【0049】
また、ゴム紐4は、左右の脇部25の双方に配置されているため、バランスよく上衣部2を身体にフィットさせることができる。また、ゴム紐4の取り付け部分が外観上目立ちにくいため、衣装1全体の外観意匠性を向上させることができる。
【0050】
また、本例の衣装1は、ウェディングドレスであるため、本発明の効果を充分に発揮することができる。すなわち、ウェディングドレスは、婚礼の際のみに着用するものであると共に高価な衣装であるため、これをオーダーメイドで作ることは通常難しい。そのため、多種多様な体格や体形の被着者に対応できることは、ウェディングドレスにおいては特に要求されることである。
【0051】
また、婚礼の際には、ウェディングドレスの準備のみならず、花嫁も忙しいことが通常であり、何度も試着して直しの微調整を行うことは困難である。特に挙式直前に花嫁が痩せたり太ったりということもよくあるが、このような場合にも本例の衣装1によれば容易に対応が可能である。また、花嫁が妊婦である場合には日々変化する体形に対して、挙式直前に対応が可能であるという利点もある。
さらには、ウェディングドレスは着姿が特に重視される衣装であるため、花嫁の体形にフィットさせやすい本発明の衣装1を採用することにより、その効果を発揮しやすい。
【0052】
また、衣装1をレンタル用の衣装とした場合にも、本発明の効果を充分に発揮することができる。すなわち、レンタル用の衣装は一つの衣装を多くの人が着るという性格を有するが、多種多様な体格や体形の被着者に容易に対応することができる本例の衣装1をレンタル用の衣装として提供することにより、レンタル用の衣装の性格上要求されるニーズに充分に応えることができる。
また、レンタル業者にとっても、同じデザインの衣装について多数のサイズを取り揃える必要がなくなる。そして、その分、異なるデザインの衣装を安価に取り揃えることも可能となり、利用者にとってもデザインの選択の幅が広がるという利点がある。
【0053】
以上のごとく、本例によれば、一つの衣装で多種多様な体格や体形の被着者の身体に容易にフィットさせることができる、着心地の良い衣装を提供することができる。
【0054】
なお、上記実施例においては、ウェディングドレスについて説明したが、本発明の衣装は、これに限らず、例えば、舞台衣装、イブニングドレス、或いはユニフォームの他、特に着姿が重視される衣装や、少ないサイズで多種多様な体格や体形の被着者に対応させる必要性の高い衣装に採用することにより、本発明の効果を充分に発揮することができる。さらには、体形の変化に対応できるという点では、一般のマタニティ服に採用することも効果的である。ただし、これらに限らず、本発明は一般の婦人服や子供服など種々の衣装に適用することができる。
また、多種多様な体格や体形の被着者に対応できる本発明の衣装は、販売形態等の観点からも、インターネット等を利用した通信販売用や通信レンタル用、或いは贈答用などにも適している。
【0055】
また、上記ゴム紐4の可動留め部52を、ボタン孔521とボタン6とによって構成した例を示したが、これ以外にも、例えばフックを用いるなどの手段を用いてもよい。
また、胴部21から胸部22にかけて配置される上記ゴム紐4の本数は、左右それぞれ6本としたが、この本数は、衣装1のデザイン等によって適宜変更されるものである。
【符号の説明】
【0056】
1 衣装
2 上衣部
21 胴部
22 胸部
23 本体生地部
3 下衣部
4 ゴム紐
5 留め部
51 固定留め部
52 可動留め部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上半身に着用される上衣部を含む衣装であって、
上記上衣部は、略水平方向に配されたゴム紐を、胴部から胸部にかけて複数本取り付けてなり、
上記各ゴム紐は、長手方向の2個所において上記上衣部の本体生地部に対して留め付けられた留め部を有し、
かつ、上記各ゴム紐ごとに、上記留め部間の自由長を調整できるよう構成されていることを特徴とする衣装。
【請求項2】
請求項1において、上記ゴム紐における一方の上記留め部は、上記本体生地部に固定された固定留め部であり、他方の上記留め部は、上記ゴム紐の長手方向に移動可能な可動留め部であることを特徴とする衣装。
【請求項3】
請求項2において、上記可動留め部は複数のボタン孔と上記本体生地部に固定されたボタンとからなり、該ボタンをいずれかの上記ボタン孔に留めることによって上記留め部間の自由長を調整できるよう構成されていることを特徴とする衣装。
【請求項4】
請求項3において、上記上衣部は、上記ボタンを被着者の身体側から覆う当て布部を有することを特徴とする衣装。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、下半身に着用される下衣部が上記上衣部と一体的に形成されていることを特徴とする衣装。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項において、上記衣装は、上記上衣部における胴部及び胸部のみにおいて被着者の身体に固定されるよう構成されていることを特徴とする衣装。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項において、上記本体生地部における上記ゴム紐が取り付けられた部分を外側から覆う被覆生地部を有することを特徴とする衣装。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項において、上記ゴム紐は、左右の脇部の双方に配置されていることを特徴とする衣装。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項において、レンタル用の衣装であることを特徴とする衣装。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項において、ウェディングドレスであることを特徴とする衣装。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−196193(P2010−196193A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−41936(P2009−41936)
【出願日】平成21年2月25日(2009.2.25)
【特許番号】特許第4394157号(P4394157)
【特許公報発行日】平成22年1月6日(2010.1.6)
【出願人】(509055415)有限会社ATSU CREATION (1)
【Fターム(参考)】